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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】表示装置及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/155 20230101AFI20241216BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20241216BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241216BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241216BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20241216BHJP
   H10K 59/124 20230101ALI20241216BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20241216BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20241216BHJP
【FI】
H10K50/155
H10K50/12
H10K59/10
G09F9/30 365
C23C14/24 S
H10K59/124
H10K71/16 164
H10K59/122
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021005018
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109619
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 逸
(72)【発明者】
【氏名】西村 眞澄
(72)【発明者】
【氏名】新田 淳
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101761(JP,A)
【文献】特開2010-033972(JP,A)
【文献】特開2009-054582(JP,A)
【文献】特開2011-176190(JP,A)
【文献】特開2019-192448(JP,A)
【文献】特開2016-160481(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0161383(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111710792(CN,A)
【文献】特表2020-510615(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0096637(US,A1)
【文献】特開2020-193368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00 -99/00
H05B 33/00 -33/22
G09F 9/30
C23C 14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上に配置された第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上に配置された下部電極と、
前記第1絶縁層の上に配置され、前記下部電極に重畳する開口部を有する第2絶縁層と、
発光層及び機能層を有し、前記開口部に配置され、前記下部電極を覆う有機層と、
前記有機層を覆う上部電極と、を備え、
前記機能層は、前記下部電極と前記発光層との間に位置する第1領域と、前記第2絶縁層の直上に位置する端面を含む第2領域と、を有し、
前記端面は、前記第2絶縁層の上面に対して傾斜した傾斜面であり、
前記第2領域の厚さは、前記第1領域から離れるほど薄く、
前記発光層は、前記第2領域を覆い、前記第2絶縁層の前記上面の上に位置する縁部を有し、
前記上部電極は、前記第2絶縁層の前記上面の上に位置する縁部を有し、
前記第2領域におけるゲスト材料のドーパント濃度は、前記第1領域におけるゲスト材料のドーパント濃度より低い、表示装置。
【請求項2】
前記機能層は、ホール注入層またはキャリア発生層であり、ゲスト材料としてp型ドーパントを含んでいる、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
基材と、
前記基材の上に配置された第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上に配置された下部電極と、
前記第1絶縁層の上に配置され、前記下部電極に重畳する開口部を有する第2絶縁層と、
発光層、第1キャリア調整層、及び、第2キャリア調整層を有し、前記開口部に配置され、前記下部電極を覆う有機層と、
前記有機層を覆う上部電極と、を備え、
前記第1キャリア調整層は、前記下部電極と前記発光層との間に位置し、
前記第2キャリア調整層は、前記上部電極と前記発光層との間に位置し、
前記発光層は、消光層を含まず、前記下部電極と前記上部電極との間に位置する第1領域と、前記第2絶縁層の直上に位置する端面を含む第2領域と、を有し、
前記端面は、前記第2絶縁層の上面に対して傾斜した傾斜面であり、
前記第2領域の厚さは、前記第1領域から離れるほど薄く、
前記第2キャリア調整層は、前記第2領域を覆い、前記第2領域の外側において前記第1キャリア調整層に接し、
前記第2領域における発光材料のドーパント濃度は、前記第1領域における発光材料のドーパント濃度より高い、表示装置。
【請求項4】
下部電極と、
前記下部電極に重畳する開口部を有する第2絶縁層と、
前記下部電極の上に配置された有機層と、
前記有機層の上に配置された上部電極と、を備えた表示装置の製造方法であって、
前記有機層を形成する工程は、機能層を形成する工程と、機能層の上に発光層を形成する工程と、を有し、
前記機能層を形成する工程は、第1放射角で放射されたホスト材料を蒸着するとともに、前記第1放射角より小さい第2放射角で放射されたゲスト材料を蒸着し、
前記第2放射角で放射された前記ゲスト材料及び前記ホスト材料の混合物が堆積した領域として、前記下部電極と前記発光層との間に位置する前記機能層の第1領域を形成し、
前記第1放射角で放射された前記ホスト材料が堆積した領域として、前記第2絶縁層の直上に位置する前記機能層の第2領域を形成し、
前記第2領域の厚さは、前記第1領域から離れるほど薄い、表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記ゲスト材料として、p型ドーパントを蒸着する、請求項4に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
下部電極と、
前記下部電極に重畳する開口部を有する第2絶縁層と、
前記下部電極の上に配置された有機層と、
前記有機層の上に配置された上部電極と、を備えた表示装置の製造方法であって、
前記有機層を形成する工程は、発光層を形成する工程を有し、
前記発光層を形成する工程は、第1放射角で放射されたホスト材料を蒸着するとともに、前記第1放射角より大きい第2放射角でゲスト材料である発光材料を蒸着し、
前記第1放射角で放射された前記ホスト材料及び前記ゲスト材料の混合物が堆積した領域として、前記発光層の第1領域を形成し、
前記第2放射角で放射された前記ゲスト材料が堆積した領域として、前記第2絶縁層の直上に位置する前記発光層の第2領域を形成し、
前記第2領域の厚さは、前記第1領域から離れるほど薄い、表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記ホスト材料を放射するノズルの形状は、前記ゲスト材料を放射するノズルの形状とは異なる、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記ホスト材料を加熱する坩堝の温度分布は、前記ゲスト材料を加熱する坩堝の温度分とは異なる、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。表示素子は、画素電極と共通電極との間に有機層を備えている。有機層は、発光層の他に、正孔輸送層や電子輸送層などの機能層を含んでいる。このような有機層は、例えば真空蒸着法によって形成される。
【0003】
例えば、マスク蒸着の場合、各画素に対応した開口を有するファインマスクが適用される。しかしながら、ファインマスクの加工精度、開口形状の変形等に起因して、蒸着によって形成される薄膜の形成精度が低下するおそれがある。例えば、複数の機能層を積層した有機層を形成する場合、有機層の端面が所望の位置に形成されず、表示素子の性能劣化を招くおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-195677号公報
【文献】特開2004-207217号公報
【文献】特開2008-135325号公報
【文献】特開2009-32673号公報
【文献】特開2010-118191号公報
【文献】国際公開第2019/026511号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、表示素子の性能劣化を抑制することが可能な表示装置及び表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る表示装置は、
基材と、前記基材の上に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上に配置された下部電極と、前記第1絶縁層の上に配置され、前記下部電極に重畳する開口部を有する第2絶縁層と、発光層及び機能層を有し、前記開口部に配置され、前記下部電極を覆う有機層と、前記有機層を覆う上部電極と、を備え、前記機能層は、前記下部電極と前記発光層との間に位置する第1領域と、前記第2絶縁層の直上に位置する端面を含む第2領域と、を有し、前記第2領域におけるゲスト材料のドーパント濃度は、前記第1領域におけるゲスト材料のドーパント濃度より低い。
【0007】
一実施形態に係る表示装置は、
基材と、前記基材の上に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上に配置された下部電極と、前記第1絶縁層の上に配置され、前記下部電極に重畳する開口部を有する第2絶縁層と、発光層を有し、前記開口部に配置され、前記下部電極を覆う有機層と、前記有機層を覆う上部電極と、を備え、前記発光層は、前記下部電極と前記上部電極との間に位置する第1領域と、前記第2絶縁層の直上に位置する端面を含む第2領域と、を有し、前記第2領域における発光材料のドーパント濃度は、前記第1領域における発光材料のドーパント濃度より高い。
【0008】
一実施形態に係る表示装置の製造方法は、
下部電極と、前記下部電極の上に配置された有機層と、前記有機層の上に配置された上部電極と、を備えた表示装置の製造方法であって、前記有機層を形成する工程は、機能層を形成する工程を有し、前記機能層を形成する工程は、第1放射角で放射されたホスト材料を蒸着するとともに、前記第1放射角より小さい第2放射角で放射されたゲスト材料を蒸着する。
【0009】
一実施形態に係る表示装置の製造方法は、
下部電極と、前記下部電極の上に配置された有機層と、前記有機層の上に配置された上部電極と、を備えた表示装置の製造方法であって、前記有機層を形成する工程は、発光層を形成する工程を有し、前記発光層を形成する工程は、第1放射角で放射されたホスト材料を蒸着するとともに、前記第1放射角より大きい第2放射角でゲスト材料である発光材料を蒸着する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る表示装置DSPの一構成例を示す図である。
図2図2は、表示素子20の構成の一例を示す図である。
図3図3は、図1に示した画素PXの一例を示す平面図である。
図4図4は、表示素子20の一例を示す断面図である。
図5図5は、図4に示した表示素子20の製造方法を説明するための図である。
図6図6は、放射角を制御する一手法を説明するための図である。
図7図7は、放射角を制御する他の手法を説明するための図である。
図8図8は、放射角を制御する他の手法を説明するための図である。
図9図9は、表示素子の他の例を示す断面図である。
図10図10は、図9に示した表示素子21及び22の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。X軸に沿った方向をX方向または第1方向と称し、Y軸に沿った方向をY方向または第2方向と称し、Z軸に沿った方向をZ方向または第3方向と称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称する。X-Y平面を見ることを平面視という。
【0013】
本実施形態に係る表示装置DSPは、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パソコン、携帯端末、携帯電話等に搭載される。なお、以下に説明する表示素子は照明装置の発光素子として適用することができ、表示装置DSPは照明装置等の他の電子機器に転用することができる。
【0014】
図1は、本実施形態に係る表示装置DSPの一構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基材10の上に、画像を表示する表示部DAを備えている。基材10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0015】
表示部DAは、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SP1、SP2、SP3を備えている。一例では、画素PXは、赤色の副画素SP1、緑色の副画素SP2、及び、青色の副画素SP3を備えている。なお、画素PXは、上記の3色の副画素の他に、白色などの他の色の副画素を加えた4個以上の副画素を備えていてもよい。
【0016】
画素PXに含まれる1つの副画素SPの一構成例について簡単に説明する。
すなわち、副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動制御される表示素子20と、を備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4と、を備えている。画素スイッチ2及び駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチ素子である。
【0017】
画素スイッチ2について、ゲート電極は走査線GLに接続され、ソース電極は信号線SLに接続され、ドレイン電極はキャパシタ4を構成する一方の電極及び駆動トランジスタ3のゲート電極に接続されている。駆動トランジスタ3について、ソース電極はキャパシタ4を構成する他方の電極及び電源線PLに接続され、ドレイン電極は表示素子20のアノードに接続されている。表示素子20のカソードは、給電線FLに接続されている。なお、画素回路1の構成は、図示した例に限らない。
【0018】
表示素子20は、発光素子である有機発光ダイオード(OLED)である。例えば、副画素SP1は赤波長に対応した光を出射する表示素子を備え、副画素SP2は緑波長に対応した光を出射する表示素子を備え、副画素SP3は青波長に対応した光を出射する表示素子を備えている。画素PXが表示色の異なる複数の副画素SP1、SP2、SP3を備えることで、多色表示を実現できる。
【0019】
但し、副画素SP1、SP2、SP3の各々の表示素子20が同一色の光を出射するように構成されてもよい。これにより、単色表示を実現できる。
【0020】
また、副画素SP1、SP2、SP3の各々の表示素子20が白色の光を出射するように構成された場合、表示素子20に対向するカラーフィルタが配置されてもよい。例えば、副画素SP1は表示素子20に対向する赤カラーフィルタを備え、副画素SP2は表示素子20に対向する緑カラーフィルタを備え、副画素SP3は表示素子20に対向する青カラーフィルタを備える。これにより、多色表示を実現できる。
【0021】
あるいは、副画素SP1、SP2、SP3の各々の表示素子20が紫外光を出射するように構成された場合、表示素子20に対向する光変換層が配置されることで、多色表示を実現できる。
【0022】
図2は、表示素子20の構成の一例を示す図である。
表示素子20は、下部電極(第1電極)E1と、有機層ORと、上部電極(第2電極)E2と、を備えている。有機層ORは、キャリア調整層(第1キャリア調整層)CA1と、発光層ELと、キャリア調整層(第2キャリア調整層)CA2と、を有している。キャリア調整層CA1は下部電極E1と発光層ELとの間に位置し、キャリア調整層CA2は発光層ELと上部電極E2との間に位置している。キャリア調整層CA1及びCA2は、複数の機能層を含んでいる。
ここでは、下部電極E1がアノードに相当し、上部電極E2がカソードに相当する場合を例に説明する。
【0023】
キャリア調整層CA1は、機能層として、ホール注入層F11、ホール輸送層F12、キャリア発生層F13、電子ブロック層F14などを含んでいる。ホール注入層F11は下部電極E1の上に配置され、ホール輸送層F12はホール注入層F11の上に配置され、キャリア発生層F13はホール輸送層F12の上に配置され、電子ブロック層F14はキャリア発生層F13の上に配置され、発光層ELは電子ブロック層F14の上に配置されている。
【0024】
キャリア調整層CA2は、機能層として、ホールブロック層F21、電子輸送層F22、電子注入層F23などを含んでいる。ホールブロック層F21は発光層ELの上に配置され、電子輸送層F22はホールブロック層F21の上に配置され、電子注入層F23は電子輸送層F22の上に配置され、上部電極E2は電子注入層F23の上に配置されている。
【0025】
なお、キャリア調整層CA1及びCA2は、上記した機能層の他に、必要に応じて他の機能層を含んでいてもよいし、キャリア調整層CA1及びCA2において、上記した機能層の少なくとも1つが省略されてもよい。
【0026】
図3は、図1に示した画素PXの一例を示す平面図である。
1個の画素PXを構成する副画素SP1、SP2、SP3は、それぞれ第2方向Yに延びた略長方形状に形成され、第1方向Xに並んでいる。各副画素の外形は、表示素子20における発光領域EAの外形に相当するが、簡略化して示したものであり、必ずしも実際の形状を反映したものとは限らない。ここでは、発光領域EAが、第1方向Xに延びた短辺と、第2方向Yに延びた長辺とを有する長方形状に形成されている場合を想定している。
【0027】
後に詳述する絶縁層12は、平面視において、第1方向X及び第2方向Yにそれぞれ延びた格子状に形成され、副画素SP1、SP2、SP3の各々、あるいは、各副画素の表示素子20を囲んでいる。このような絶縁層12は、リブ、隔壁、バンクなどと称される場合がある。発光領域EAは、絶縁層12の開口部OPに形成され、下部電極E1と上部電極E2との間に有機層ORが介在する領域に相当する。
【0028】
一例として、副画素SP1、SP2、SP3の各々の表示素子20が互いに異なる色の光を出射するように構成されている場合、第1方向Xは互いに異なる表示色の副画素が並ぶ方向に相当し、第2方向Yは同一の表示色の副画素が並ぶ方向に相当する。あるいは、同一の表示色の副画素が第1方向X及び第2方向Yとは異なる斜め方向に並ぶ場合もあり得る。
【0029】
図4は、表示素子20の一例を示す断面図である。
図1に示した画素回路1は、基材10の上に配置され、絶縁層11によって覆われている。図4では、画素回路1に含まれる駆動トランジスタ3のみを簡略化して図示している。絶縁層(第1絶縁層)11は、表示素子20の下地層に相当する。絶縁層(第2絶縁層)12は、絶縁層11の上に配置されている。絶縁層11及び12は、例えば、有機絶縁層である。
【0030】
下部電極E1は、絶縁層11の上に配置されている。下部電極E1は、副画素毎あるいは表示素子毎に配置された電極であり、駆動トランジスタ3と電気的に接続されている。このような下部電極E1は、画素電極、アノードなどと称される場合がある。
【0031】
下部電極E1は、例えば、銀、アルミニウムなどの金属材料によって形成された金属電極である。なお、下部電極E1は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電材料によって形成された透明電極であってもよい。また、下部電極E1は、透明電極及び金属電極の積層体であってもよい。例えば、下部電極E1は、透明電極、金属電極、及び、透明電極の順に積層された積層体として構成されてもよいし、3層以上の積層体として構成されてもよい。トップエミッションタイプの表示素子20においては、下部電極E1は、反射電極として金属電極を含んでいる。
【0032】
絶縁層12は、開口部OPを有している。開口部OPは、下部電極E1に重畳する領域に形成され、絶縁層12を下部電極E1まで貫通した貫通孔である。下部電極E1の周縁部は絶縁層12によって覆われ、下部電極E1の中央部は開口部OPにおいて絶縁層12から露出している。
【0033】
有機層ORは、機能層F1、及び、発光層ELを含んでいる。有機層ORは、開口部OPに配置され、下部電極E1を覆っている。機能層F1は、図2に示したキャリア調整層CA1を構成する少なくとも1つの層であり、例えば、ホール注入層F11、あるいは、キャリア発生層F13である。なお、図4では、有機層ORに含まれる他の機能層の図示を省略している。
【0034】
機能層F1は、下部電極E1と発光層ELとの間に位置する領域(第1領域)A1と、絶縁層12と発光層ELとの間に位置する領域A2と、を有している。領域A2のうち、周縁部の領域(第2領域)A2Eは、絶縁層12の直上に位置する端面SSを含む領域である。端面SSは、傾斜面である。領域A2Eにおける第3方向Zに沿った厚さは、外側ほど(領域A1から離れるほど)薄い。
【0035】
機能層F1は、ホスト材料及びゲスト材料を含む混合層である。すなわち、機能層F1は、ホスト材料にゲスト材料がドーピングされることで形成される。機能層F1がホール注入層あるいはキャリア発生層である場合、機能層F1は、ゲスト材料として、p型ドーパントを含んでいる。領域A2Eにおけるゲスト材料のドーパント濃度は、領域A1におけるゲスト材料のドーパント濃度より低い。つまり、機能層F1におけるゲスト材料のドーパント濃度は、外側ほど低下する濃度勾配を有している。このような機能層F1は、後述するように、ホスト材料及びゲスト材料を共蒸着することで形成される。また、機能層F1は、発光層ELによって覆われている。
【0036】
上部電極E2は、有機層ORを覆っている。上部電極E2は、共通電極、対向電極、カソードなどと称される場合がある。
【0037】
上部電極E2は、例えば、マグネシウム、銀などの金属材料によって形成された半透過性の金属電極である。なお、上部電極E2は、ITOやIZOなどの透明導電材料によって形成された透明電極であってもよい。また、上部電極E2は、透明電極及び金属電極の積層体であってもよい。上部電極E2は、表示部DAに配置された給電線、あるいは、表示部DAの外側に配置された給電線と電気的に接続されている。
【0038】
有機層ORのうち、絶縁層12を介することなく、下部電極E1と上部電極E2との間に位置する部分は、表示素子20の発光領域を形成することができる。一例では、有機層ORの第3方向Zに沿った厚さは、発光層ELにおける発光スペクトルのピーク波長と、下部電極E1と上部電極E2との間の実効的な光路長とが一致するように設定される。これにより、共振効果を得るためのマイクロキャビティ構造が実現される。
【0039】
上部電極E2の上には、図示しないが、光取出効率を改善するための光学調整層や、表示素子20を水分等から保護するための封止層などが設けられる。
【0040】
以上説明したように、有機層ORを構成するホール注入層F11やキャリア発生層F13などの機能層F1は、周縁部である領域A2Eにおけるゲスト材料のドーパント濃度が極端に小さくなるように構成されている。このため、周縁部でのキャリア発生が抑制される。これにより、周縁部と上部電極E2との間での不所望な電流リークが抑制される。したがって、表示素子20の性能劣化を抑制することができる。
【0041】
図5は、図4に示した表示素子20の製造方法を説明するための図である。
まず、処理対象基板SUBを用意する。処理対象基板SUBは、基材10の上に絶縁層11を形成した後に、絶縁層11の上に下部電極E1を形成し、さらに、その後、下部電極E1に重畳する開口部OPを有する絶縁層12を形成することで得られる。
【0042】
そして、処理対象基板SUBは、絶縁層12と蒸着源VSとが互いに対向するように設置される。その後、蒸着法により、有機層ORを構成する各層を形成する。有機層ORの蒸着は、蒸着源VSが処理対象基板SUBに対して相対的に移動しながら行う。つまり、固定された処理対象基板SUBに対して蒸着源VSが移動してもよいし、固定された蒸着源VSに対して処理対象基板SUBが移動してもよいし、処理対象基板SUB及び蒸着源VSの双方が移動してもよい。例えば、図2に示した副画素のレイアウトにおいて、第2方向Yに並んだ副画素の表示色が同一である場合、移動方向は、第2方向Yに設定される。また、第1方向X及び第2方向Yとは異なる斜め方向に並んだ副画素の表示色が同一である場合、移動方向は、斜め方向に設定される。
【0043】
図5では、有機層ORのうち、機能層F1を形成する工程が示されている。蒸着源VSは、ホスト材料を収容する坩堝50と、ゲスト材料(p型ドーパント)を収容する坩堝60と、を備えている。これらの坩堝50及び60は、加熱機構によって加熱される。坩堝50を加熱することで発生するホスト材料の蒸気は、第1放射角θ1で放射される。また、坩堝60を加熱することで発生するゲスト材料の蒸気は、第2放射角θ2で放射される。このとき、第2放射角θ2は、第1放射角θ1より小さい(θ1>θ2)。
【0044】
このため、蒸着源VSのほぼ正面では、ホスト材料とゲスト材料とが適度に混ざり合い、外側ほど、ホスト材料に対するゲスト材料の混合比が低下する。これにより、ホスト材料及びゲスト材料の混合物が堆積した領域として領域A1が形成され、ゲスト材料がほとんど含まれず、ほぼホスト材料のみが堆積した領域として領域A2Eが形成される。
【0045】
図6は、放射角を制御する一手法を説明するための図である。
図6に示す例では、坩堝に接続されるノズルの形状によって放射角(あるいは蒸気の指向性)が制御される。坩堝50に接続されたノズル51の形状は、坩堝60に接続されたノズル61の形状とは異なる。ここでは、ノズル51は、ノズル61と比較して、太く、且つ、短い。ノズル51と処理対象基板SUBとの距離L11がノズル61と処理対象基板SUBとの距離L12と同一である場合、ノズル51から放射されるホスト材料の蒸気の第1放射角θ1は、ノズル61から放射されるゲスト材料の蒸気の第2放射角θ2より大きい(θ1>θ2)。つまり、ノズル51から放射されるホスト材料の蒸気は広がりやすい(指向性が小さい)。一方で、ノズル61から放射されるゲスト材料の蒸気は広がりにくい(指向性が高い)。
【0046】
図7は、放射角を制御する他の手法を説明するための図である。
図7に示す例でも、ノズル51の形状は、ノズル61の形状とな異なる。ここでは、ノズル51の開口径D1は、ノズル61の開口径D2より小さい(D1<D2)。このような例においても、ノズル51から放射されるホスト材料の蒸気は広がりやすく、ノズル61から放射されるゲスト材料の蒸気は広がりにくい。
【0047】
図8は、放射角を制御する他の手法を説明するための図である。
図8に示す例では、ホスト材料を加熱する坩堝50の温度分布は、ゲスト材料を加熱する坩堝60の温度分とは異なる。例えば、坩堝50の底部側の加熱温度をノズル側の加熱温度より高く設定し、坩堝60の底部側の加熱温度をノズル側の加熱温度より低く設定する。このように、坩堝の温度分布を調整することでも、蒸気の放射角を制御することができる。図8に示す例では、ノズル51から放射されるホスト材料の蒸気は広がりやすく、ノズル61から放射されるゲスト材料の蒸気は広がりにくい。
図6乃至図8に示した各手法は、適宜組み合わせることができる。
【0048】
図9は、表示素子の他の例を示す断面図である。
図9に示す例は、図4に示した例と比較して、発光層ELに含まれるゲスト材料としての発光材料のドーパント濃度が濃度勾配を有している点で相違している。
【0049】
ここで、隣接する2つの表示素子に着目する。便宜上、図の左側に位置する表示素子を表示素子21と表記し、図の右側に位置する表示素子を表示素子22と表記する。
【0050】
表示素子21は、下部電極(第1下部電極)E11、有機層(第1有機層)OR1、及び、上部電極E2を備えている。有機層OR1は、キャリア調整層CA1及びCA2、及び、発光層EL1を有している。
表示素子22は、下部電極(第2下部電極)E12、有機層(第2有機層)OR2、及び、上部電極E2を備えている。有機層OR2は、キャリア調整層CA1及びCA2、及び、発光層EL2を有している。
キャリア調整層CA1及びCA2、及び、上部電極E2は、表示素子21及び22に亘って連続的に形成された共通層である。発光層EL1は、発光層EL2から離間している。
【0051】
発光層EL1は、下部電極E11と上部電極E2との間に位置する領域(第1領域)A11と、絶縁層12と上部電極E2との間に位置する領域A21と、を有している。領域A21のうち、周縁部の領域(第2領域)A21Eは、絶縁層12の直上に位置し、第3方向Zに沿った厚さは、外側ほど(領域A11から離れるほど)薄い。
発光層EL2は、下部電極E12と上部電極E2との間に位置する領域(第1領域)A12と、絶縁層12と上部電極E2との間に位置する領域A22と、を有している。領域A22のうち、周縁部の領域(第2領域)A22Eは、絶縁層12の直上に位置し、第3方向Zに沿った厚さは、外側ほど(領域A12から離れるほど)薄い。
【0052】
発光層EL1及びEL2は、ホスト材料と、ゲスト材料である発光材料と、を含む混合層である。すなわち、発光層EL1及びEL2は、ホスト材料に発光材料がドーピングされることで形成される。なお、発光層EL1に含まれる発光材料は、発光層EL2に含まれる発光材料と同一材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。つまり、発光層EL1の発光色は、発光層EL2の発光色と同一でもよいし、発光層EL2の発光色と異なっていてもよい。
【0053】
領域A21Eにおける発光材料のドーパント濃度は、領域A11における発光材料のドーパント濃度より高い。つまり、発光層EL1における発光材料のドーパント濃度は、外側ほど増加する濃度勾配を有している。
同様に、領域A22Eにおける発光材料のドーパント濃度は、領域A12における発光材料のドーパント濃度より高い。つまり、発光層EL2における発光材料のドーパント濃度は、外側ほど増加する濃度勾配を有している。領域A21E及びA22Eは、キャリア調整層CA2によって覆われており、隣接する領域A21Eと領域A22Eとの間では、キャリア調整層CA2がキャリア調整層CA1に接している。
【0054】
このように、隣接する表示素子に亘ってキャリア調整層CA1が共通層として形成されている場合、例えば、表示素子21からキャリア調整層CA1を介して表示素子22に移動したキャリアは、発光層EL2にて再結合し、不所望な発光の原因となり得る。
【0055】
そこで、上記のように、発光層の周縁部に、発光材料のドーパント濃度が極端に高い領域を設けている。例えば、発光層EL1において、領域A21Eは領域A11と比較して発光材料のドーパント濃度が高い。領域A21Eは領域A11と比較してしきい値電圧が低いが、領域A21Eの発光効率は領域A11の発光効率より低い。このため、領域A21Eにおいては、表示素子21から表示素子22へ向かうキャリアの再結合が促進され、キャリアが消費される。これにより、表示素子21から表示素子22に到達するキャリアが低減し、発光層EL2における不所望な発光が抑制される。
【0056】
また、表示素子21の発光色が表示素子22の発光色とは異なる場合、隣接する表示素子の不所望な発光が抑制されるため、所望の色度を得ることができる。
【0057】
図10は、図9に示した表示素子21及び22の製造方法を説明するための図である。
まず、処理対象基板SUBを用意する。そして、処理対象基板SUBは、絶縁層12と蒸着源VS1及びVS2とが互いに対向するように設置される。その後、蒸着法により、有機層ORを構成する各層を形成する。
【0058】
図10では、有機層ORのうち、キャリア調整層CA1を形成した後の発光層EL1及びEL2を形成する工程が示されている。蒸着源VS1は、ホスト材料を収容する坩堝501と、ゲスト材料である第1発光材料を収容する坩堝601と、を備えている。蒸着源VS2は、ホスト材料を収容する坩堝502と、ゲスト材料である第2発光材料を収容する坩堝602と、を備えている。
【0059】
坩堝501を加熱することで発生するホスト材料の蒸気は、放射角θ11で放射される。また、坩堝601を加熱することで発生する第1発光材料の蒸気は、放射角θ21で放射される。このとき、放射角θ21は、放射角θ11より大きい(θ21>θ11)。
【0060】
このため、蒸着源VS1のほぼ正面では、ホスト材料と第1発光材料とが適度に混ざり合い、外側ほど、ホスト材料に対する第1発光材料の混合比が低下する。これにより、ホスト材料及び第1発光材料の混合物が堆積した領域として領域A11が形成され、ホスト材料がほとんど含まれず、ほぼ第1発光材料のみが堆積した領域として領域A21Eが形成される。
【0061】
同様に、坩堝502を加熱することで発生するホスト材料の蒸気は、放射角θ12で放射される。また、坩堝602を加熱することで発生する第2発光材料の蒸気は、放射角θ22で放射される。このとき、放射角θ22は、放射角θ12より大きい(θ22>θ12)。
【0062】
このため、蒸着源VS2のほぼ正面では、ホスト材料と第2発光材料とが適度に混ざり合い、外側ほど、ホスト材料に対する第2発光材料の混合比が低下する。これにより、ホスト材料及び第2発光材料の混合物が堆積した領域として領域A12が形成され、ホスト材料がほとんど含まれず、ほぼ第2発光材料のみが堆積した領域として領域A22Eが形成される。
【0063】
上記した本実施形態によれば、表示素子の性能劣化を抑制することが可能な表示装置及び表示装置の製造方法を提供することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態として説明した表示装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0065】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0066】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0067】
DSP…表示装置 10…基材 11…絶縁層(第1絶縁層)
12…絶縁層(第2絶縁層) OP…開口部
20…表示素子 E1…下部電極 E2…上部電極 OR…有機層
F1…機能層 A1…第1領域 A2E…第2領域
EL…発光層 A11…第1領域 A21E…第2領域
図1
図2
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