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  • 特許-樹脂組成物、及び、熱伝導性シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】樹脂組成物、及び、熱伝導性シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20241216BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20241216BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20241216BHJP
   H01B 3/40 20060101ALI20241216BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
C08L63/00 Z
C08L53/00
C08K3/28
H01B3/40 C
H01L23/36 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021005800
(22)【出願日】2021-01-18
(65)【公開番号】P2022110408
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田渕 聡寛
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-123050(JP,A)
【文献】特開2009-231249(JP,A)
【文献】特開2018-039909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、シランカップリング剤と、硬化剤と、無機フィラーとを含有し、前記無機フィラーが前記エポキシ樹脂中に分散されている樹脂組成物であって、
前記シランカップリング剤は、ポリブタジエン構造を有し、且つ、複数のブロックを有するブロック共重合体であり、
前記ブロック共重合体は、ポリブタジエンブロックを含み、
分子両末端に、ビニル基とアルコキシシリル基とを備えた化合物の付加重合物で構成されたブロックをさらに含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記ブロック共重合体は、
官能基を有していない非置換のブタジエンの付加重合物で構成された第1のポリブタジエンブロックと、
酸無水物基を有するブタジエンの付加重合物で構成された第2のポリブタジエンブロックと、を含む
請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機フィラーが、窒化ホウ素フィラーを含む
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂と、シランカップリング剤と、硬化剤と、無機フィラーとを含有し、前記無機フィラーが前記エポキシ樹脂中に分散されている樹脂組成物で構成された樹脂層を備えた熱伝導性シートであって、
前記シランカップリング剤は、ポリブタジエン構造を有し、且つ、複数のブロックを有するブロック共重合体であり、
前記ブロック共重合体は、ポリブタジエンブロックを含み、
分子両末端に、ビニル基とアルコキシシリル基とを備えた化合物の付加重合物で構成されたブロックをさらに含む熱伝導性シート。
【請求項5】
前記ブロック共重合体は、
官能基を有していない非置換のブタジエンの付加重合物で構成された第1のポリブタジエンブロックと、
酸無水物基を有するブタジエンの付加重合物で構成された第2のポリブタジエンブロックと、を含む
請求項に記載の熱伝導性シート。
【請求項6】
前記無機フィラーが、窒化ホウ素フィラーを含む
請求項4又は5に記載の熱伝導性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、及び、熱伝導性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロニクス分野において、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機フィラーとを含有する樹脂組成物が用いられている。
【0003】
下記特許文献1には、エポキシ樹脂と硬化剤と無機フィラーとを含有する樹脂組成物が硬化した硬化物を放熱シートとして使用することが開示されている。
このような放熱シートは、窒化ホウ素フィラーなどの無機フィラーを比較的多量に含有することから、放熱性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-94887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂組成物は、上記のように比較的多量の無機フィラーを含有するものの、硬化物となったときの熱伝導性(放熱性)は必ずしも十分ではないという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に記載された樹脂組成物は、金属ベース回路基板などの被着体に接着されて用いられるため、硬化物となったときに、前記被着体に対して高い接着性を示すことが要求されるものの、これについての検討は、未だ十分になされているとは言い難い。
【0007】
そこで、本発明は、硬化物となったときに、十分な熱伝導性を示すとともに、被着体に対して高い接着性を示すことができる樹脂組成物、及び、該樹脂組成物で構成された樹脂層を備えた熱伝導性シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討したところ、エポキシ樹脂と、カップリング剤と、硬化剤と、無機フィラーとを含有し、前記無機フィラーが前記エポキシ樹脂中に分散されている樹脂組成物において、前記無機フィラーとして、特定のシランカップリング剤で処理されたものを用いることにより、硬化物となったときに、該硬化物の熱伝導性が十分に高くなるとともに、被着体に対する前記硬化物の接着性が十分に高くなることを見出して、本発明を想到するに至った。
【0009】
即ち、本発明に係る樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、カップリング剤と、硬化剤と、無機フィラーとを含有し、前記無機フィラーが前記エポキシ樹脂中に分散されている樹脂組成物であって、
前記シランカップリング剤は、ポリブタジエン構造を有する。
【0010】
斯かる構成によれば、前記樹脂組成物は、硬化物となったときに、十分な熱伝導性を示すとともに、金属ベース回路基板などの被着体に対して高い接着性を示すものとなる。
【0011】
また、本発明に係る樹脂組成物においては、
前記シランカップリング剤は、複数のブロックを有するブロック共重合体であり、
前記ブロック共重合体は、ポリブタジエンブロックを含み、
分子両末端に、ビニル基とアルコキシシリル基とを備えた化合物の付加重合物で構成されたブロックをさらに含む、ことが好ましい。
【0012】
斯かる構成によれば、前記樹脂組成物は、硬化物となったときに、より一層十分な熱伝導性を示すとともに、金属ベース回路基板などの被着体に対してより一層高い接着性を示すものとなる。
【0013】
前記ブロック共重合体は、
官能基を有していない非置換のブタジエンの付加重合物で構成された第1のポリブタジエンブロックと、
酸無水物基を有するブタジエンの付加重合物で構成された第2のポリブタジエンブロックと、を含む、ことが好ましい。
【0014】
斯かる構成によれば、前記樹脂組成物は、硬化物となったときに、より一層十分な熱伝導性を示すものとなる。
【0015】
また、本発明に係る樹脂組成物においては、
前記無機フィラーが、窒化ホウ素フィラーを含む、ことが好ましい。
【0016】
斯かる構成によれば、前記樹脂組成物は、硬化物となったときに、より一層十分な熱伝導性を示すとともに、金属ベース回路基板などの被着体に対してより一層高い接着性を示すものとなる。
【0017】
本発明に係る熱伝導性シートは、エポキシ樹脂と、カップリング剤と、硬化剤と、無機フィラーとを含有し、前記無機フィラーが前記エポキシ樹脂中に分散されている樹脂組成物で構成された樹脂層を備えた熱伝導性シートであって、
前記シランカップリング剤は、ポリブタジエン構造を有する。
【0018】
斯かる構成によれば、前記熱伝導性シートは、前記樹脂組成物が硬化物となったときに、十分な熱伝導性を示すとともに、金属ベース回路基板などの被着体に対して高い接着性を示すものとなる。
【0019】
また、本実施形態に係る熱伝導性シートにおいては、
前記シランカップリング剤は、複数のブロックを有するブロック共重合体であり、
前記ブロック共重合体は、ポリブタジエンブロックを含み、
分子両末端に、ビニル基とアルコキシシリル基とを備えた化合物の付加重合物で構成されたブロックをさらに含む、ことが好ましい。
【0020】
斯かる構成によれば、前記熱伝導性シートは、前記樹脂組成物が硬化物となったときに、より一層十分な熱伝導性を示すとともに、金属ベース回路基板などの被着体に対してより一層高い接着性を示すものとなる。
【0021】
また、本実施形態に係る熱伝導性シートにおいては、
前記ブロック共重合体は、
官能基を有していない非置換のブタジエンの付加重合物で構成された第1のポリブタジエンブロックと、
酸無水物基を有するブタジエンの付加重合物で構成された第2のポリブタジエンブロックと、を含む、ことが好ましい。
【0022】
斯かる構成によれば、前記熱伝導性シートは、前記樹脂組成物が硬化物となったときに、より一層十分な熱伝導性を示すものとなる。
【0023】
また、本発明に係る熱伝導性シートにおいては、
前記無機フィラーが、窒化ホウ素フィラーを含む、ことが好ましい。
【0024】
斯かる構成によれば、前記熱伝導性シートは、前記樹脂組成物が硬化物となったときに、より一層十分な熱伝導性を示すとともに、金属ベース回路基板などの被着体に対してより一層高い接着性を示すものとなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、硬化物となったときに、十分な熱伝導性を示すとともに、被着体に対して高い接着性を示すことができる樹脂組成物、及び、該樹脂組成物で構成された樹脂層を備えた熱伝導性シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】エッチングされた積層体を示す上面図。
図2】耐電圧の測定における配置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0028】
(樹脂組成物)
本実施形態に係る樹脂組成物は、最終的に硬化物を構成することとなる成分を含む。すなわち、本実施形態に係る樹脂組成物は、重合によって硬化樹脂となる重合性成分を含有する。
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、硬化後の硬化物が良好な熱伝導性を有するように、無機フィラーを含有する。
さらに、本実施形態に係る樹脂組成物は、前記重合性成分と前記無機フィラーとをつなぐ役割を果たすカップリング剤として、シランカップリング剤を含有する。
なお、本実施形態に係る樹脂組成物は、プラスチック配合薬品として一般に用いられる添加剤を本発明の効果を損なわない範囲において含有してもよい。
【0029】
本実施形態に係る樹脂組成物では、硬化後の硬化物の100質量部に占める前記重合性成分の含有割合は、好ましくは10質量部以上70質量部以下、より好ましくは30質量部以上40質量部以下である。
【0030】
本実施形態に係る樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、その固形分を100体積部としたときに、無機フィラーを、好ましくは10体積部以上60体積部以下含有することが好ましく、30体積部以上60体積部以下含有することがより好ましく、50体積部以上60体積部以下含有することがさらに好ましい。
また、前記硬化物における前記無機フィラーの含有割合が上記のような範囲内となり易くなるという観点から、本実施形態に係る樹脂組成物は、前記重合性成分100質量部に対して、前記無機フィラーを、30質量部以上90質量部以下含有することが好ましく、60質量部以上80質量部以下含有することがより好ましい。
【0031】
本実施形態に係る樹脂組成物は、無機フィラーの100質量部に対して、前記シランカップリング剤を、0.01質量部以上0.03質量部以下含有する。
【0032】
さらに、本実施形態に係る樹脂組成物は、無機フィラー100質量部に対して、前記添加剤を、0.005質量部以上0.05質量部以下含有することが好ましく、0.01質量部以上0.03質量部以下含有することがより好ましい。
【0033】
本実施形態に係る樹脂組成物は、前記重合性成分として、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有する。本実施形態では、エポキシ樹脂が硬化剤とともに硬化することにより、硬化樹脂となる。
【0034】
前記重合性成分に占める、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計量の割合は、80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
前記エポキシ樹脂の当量に対する前記硬化剤の当量の比は、1/2以上2/1以下であることが好ましく、2/3以上3/2以下であることがより好ましい。
【0036】
前記エポキシ樹脂は、分子構造中にエポキシ基を複数有する。前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0037】
前記硬化剤としては、例えば、アミン型硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物などが挙げられる。
前記アミン系硬化剤としては、例えば、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアミンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
前記フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、ビスフェノール系フェノール樹脂などが挙げられる。
前記酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0038】
前記無機フィラーとしては、窒化ホウ素フィラー(BNフィラー)、窒化アルミニウムフィラー、窒化ケイ素フィラー、窒化ガリウムフィラー、アルミナフィラー、炭化ケイ素フィラー、二酸化ケイ素フィラー、酸化マグネシウムフィラー、ダイヤモンドフィラーなどが挙げられる。
【0039】
本実施形態に係る樹脂組成物は、前記無機フィラーとして、熱伝導性に優れる窒化ホウ素フィラーを含有することが好ましい。
窒化ホウ素フィラーは、熱伝導性に優れるものの、重合に関わる表面官能基(OH等)が比較的少ない。そのため、窒化ホウ素フィラーを含有し、かつ、前記シランカップリング剤を含有しない樹脂組成物においては、窒化ホウ素フィラーの表面官能基が少ないために、前記重合性成分と窒化ホウ素フィラーとの親和性を高めることが難しい。
ところが、本実施形態に係る樹脂組成物は、前記シランカップリング剤を含有している。前記シランカップリング剤は、後述するように、前記無機フィラーの表面官能基への親和性を有する官能基と、前記重合性成分に対する親和性を有する官能基と、を有している。そのため、前記樹脂組成物が、表面官能基が比較的少ない窒化ホウ素フィラーを含有している場合であっても、前記シランカップリング剤が前記重合性成分と窒化ホウ素フィラーとをつなぐ役割を果たすことができる。その結果、本実施形態に係る樹脂組成物が硬化物となったときに、該硬化物の凝集破壊強度が高められる。
これにより、前記無機フィラーとして、熱伝導性に優れる窒化ホウ素フィラーを含有させた場合には、本実施形態に係る樹脂組成物が硬化物となったときに、該硬化物の熱伝導性を高めつつ、凝集破壊強度を高めることができる。
また、窒化ホウ素フィラーの含有量を変化させることによって、硬化物となったときの熱伝導率及び凝集破壊強度を調整することができる。
【0040】
また、前記無機フィラーは、複数の一次粒子が凝集した凝集粒子を含むことが好ましい
【0041】
本実施形態に係る樹脂組成物では、前記シランカップリング剤は、ポリブタジエン構造を有している。
即ち、前記シランカップリング剤は、ブタジエン由来の構成単位と、重合性官能基を備えたシランカップリング剤由来の構成単位とを備えたポリマーである。
前記シランカップリング剤は、前記重合性官能基として縮重合が可能な官能基よりも付加重合が可能な官能基を有することが好ましい。
該付加重合可能な官能基としては、例えば、ビニル基が挙げられる。
ビニル基は、エテニル基の形態で設けられていなくてもよく、イソプロペニル基の形態でシランカップリング剤の分子鎖に備わっていてもよい。
更に、エテニル基は、ビニルフェニル基やアクリル基の一部となってシランカップリング剤の分子鎖に備わっていてもよい。
イソプロペニル基は、メタクリル基の一部となってシランカップリング剤の分子鎖に備わっていてもよい。
従って、前記シランカップリング剤は、下記(1a)に示す構造を有する化合物であることが好ましい。
下記化合物は、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよい。
(1a)に示す構造を有する化合物は、分子末端(Rx、Ry)が水素原子、水酸基、炭素数1~3の炭化水素基、カルボニル基の何れかであってもよい。
分子末端(Rx、Ry)は一端側(Rx)と他端側(Ry)とで同じ構造を有していても異なっていてもよい。
【0042】
【化1】
(ただし、式(1a)において、Rは、メチル基またはエチル基であり、aは、1以上25以下の整数であり、bは、1以上25以下の整数であり、Zは、アルコキシシリル基が主鎖に直接又はヘテロ原子を介して結合しているか、有機基を介して接合されていることを示している。)
【0043】
なお、ゴム弾性をより好適に発現させるためには、前記aは、2以上の整数であることが好ましい。
【0044】
(1a)に示す構造を有する化合物は、構造単位の合計繰り返し数(a+b)が、例えば、15以上40以下であってもよい。
また、式中のZが有機基である場合、例えば、該有機基の炭素数は1以上20以下とすることができる。
【0045】
前記シランカップリング剤は、複数のブロックを有するブロック共重合体であることが好ましく、前記ブロック共重合体は、ポリブタジエンブロックを含み、分子両末端に、ビニル基とアルコキシシリル基(Si(OR))とを備えた化合物の付加重合物で構成されたブロックをさらに含むことが好ましい。
また、前記シランカップリング剤は、下記式(1b)で示されたような、ポリブタジエンブロックと、ビニル基とアルコキシシリル基とを備えた化合物の付加重合物で構成されたブロックと、のブロック共重合体であることがより好ましい。
下記式(1b)で示されたようなシランカップリング剤の市販品としては、例えば、商品名「X-12-1267B」(信越シリコーン社製)、商品名「X-12-1267B-ES」(信越シリコーン社製)などが挙げられる。
【0046】
【化2】
(ただし、式(1b)において、Rは、メチル基またはエチル基であり、aは、2以上25以下の整数であり、bは、2以上25以下の整数であり、Zは、アルコキシシリル基が主鎖に直接又はヘテロ原子を介して結合しているか、有機基を介して接合されていることを示している。)
【0047】
なお、上記のように、前記aが2以上の整数であることにより、ゴム弾性を好適に発現させることができる。
【0048】
また、前記シランカップリング剤では、前記ブロック共重合体は、官能基を有していない非置換のブタジエンの付加重合物で構成された第1のポリブタジエンブロックと、酸無水物基を有するブタジエンの付加重合物で構成された第2のポリブタジエンブロックと、を含んでいてもよい。
さらに、前記シランカップリング剤は、下記式(2a)で示されたような、前記第1のポリブタジエンブロックと、前記第2のポリブタジエンブロックと、ビニル基とアルコキシシリル基とを備えた化合物の付加重合物で構成されたブロックと、のブロック共重合体であってもよい。
下記式(2a)で示されたようなシランカップリング剤の市販品としては、例えば、商品名「X-12-1287A」(信越シリコーン社製)などが挙げられる。
【0049】
【化3】
(ただし、式(2a)において、Rは、メチル基またはエチル基であり、aは、1以上20以下の整数であり、bは、2以上8以下の整数であり、cは、1以上25以下の整数であり、Zは、アルコキシシリル基が主鎖に直接又はヘテロ原子を介して結合しているか、有機基を介して接合されていることを示している。)
【0050】
なお、ゴム弾性をより好適に発現させるためには、前記aは、2以上の整数であることが好ましい。
【0051】
ところで、本実施形態に係る樹脂組成物が硬化体となったときに十分な熱伝導性を示し、かつ、金属ベース板などの被着体に対して高い接着性を示す理由は、必ずしも解明されていないが、本発明者は、その理由について以下のように考えている。
【0052】
ポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤は、上記式(1a)に示されているように、その構造中に、ポリブタジエン構造に由来する二重結合を有している。また、エポキシ樹脂は、芳香環を有している。すなわち、エポキシ樹脂も、芳香環に由来する二重結合を有している。
そのため、上記のごとく、本実施形態に係る樹脂組成物が、前記重合性成分としてエポキシ樹脂を含有し、前記シランカップリング剤として、ポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤を含有していると、前記樹脂組成物中において、前記重合性成分とポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤との親和性が高められて、前記重合性成分に対するポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤の相溶性が高められると考えられる。これにより、前記樹脂組成物中においては、前記重合性成分中にポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤が十分に分散されていると考えられる。
また、ポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤は、ポリブタジエン構造に由来して、ゴムに近い特性、すなわち、ゴム弾性を示すようになると考えられる。
すなわち、本実施形態に係る樹脂組成物では、前記重合性成分中にゴム弾性を示すと考えられるポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤が十分に分散されていると考えられるので、硬化体とされたときに、該硬化体中で凝集破壊が生じることを抑制でき、これにより、金属ベース回路基板などの被着体に対する接着性に優れるものになると考えられる。
【0053】
さらに、本実施形態に係る樹脂組成物は、上記式(1a)で示されるようなシランカップリング剤を含有している。前記シランカップリング剤では、Si原子に結合されたOR基が前記無機フィラーの表面官能基に対する親和性を示し、ポリブタジエンブロック(第1のポリブタジエンブロック及び第2のポリブタジエンブロックを含む)が前記重合性成分に対する親和性を示す。そのため、本実施形態に係る樹脂組成物では、前記OR基を介して前記無機フィラーと前記シランカップリング剤とがつながれ、前記ポリブタジエンブロックを介して前記重合性成分とが繋がれるようになる。すなわち、前記シランカップリング剤を介して、前記無機フィラーと前記重合性成分とがつながれるようになる。このように、前記シランカップリング剤を介して、前記無機フィラーと前記重合性成分とがつながれることにより、前記樹脂組成物が硬化されて硬化体となったときに、十分な熱伝導性を示すものになっていると考えられる。
【0054】
上記により、本実施形態に係る樹脂組成物は、硬化体となったときに、十分な熱伝導性を示すとともに、金属リード基板などの被着体に対して高い接着性を示すことができていると、本発明者は考えている。
【0055】
前記添加剤としては、例えば、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との硬化反応を促進する硬化促進剤が挙げられ、また、分散剤、粘着性付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、加工助剤、安定剤、消泡剤、難燃剤、増粘剤、顔料なども挙げられる。
【0056】
前記硬化促進剤としては、例えば、テトラフェニルホスホニウム テトラフェニルボレート(Tetraphenylphosphonium tetraphenylborate)、イミダゾール類、トリフェニルフォスフェイト(TPP)、アミン系硬化促進剤などが挙げられる。該アミン系硬化促進剤としては、例えば、三フッ化ホウ素モノエチルアミンなどが挙げられる。
【0057】
本実施形態に係る樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計100質量部に対して、前記硬化促進剤を、0.5質量部以上1.5質量部以下含有することが好ましく、0.5質量部以上1.0質量部以下含有することがより好ましい。
【0058】
本実施形態に係る樹脂組成物は、ある程度硬化反応が進んだものの、完全に硬化していない状態であってもよい。換言すると、樹脂組成物中の一部で硬化反応が進行した状態であってもよい。例えば、樹脂組成物は、流動性を有した状態でシート状に塗工され、その後、部分的に硬化された状態であってもよい。一部で硬化反応が進行した状態であっても、本実施形態に係る樹脂組成物は、上記のエポキシ樹脂と、上記の硬化剤と、上記の無機フィラーとを含有する。
【0059】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、ポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤とを一次混練して一次混練液を得る一次混練工程と、前記一次混練液に無機フィラーを添加して、前記無機フィラーと前記一次混練液とを二次混練して二次混練液を得る二次混練工程と、を含む。
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法では、エポキシ樹脂などの重合性成分と混練する前に、無機フィラーとシランカップリング剤とをつなぐための前処理工程を要さずに、すなわち、前処理工程に供する設備を要さずに、前記一次混練工程と前記二次混練工程とを一設備にて行うことができる。
そのため、比較的簡便な方法で、樹脂組成物を得ることができる。
なお、ポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤は、適度な粘性を有する液状物であるので、前記一次混練工程において、エポキシ樹脂などの重合性成分と十分に混練されて、ポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤とエポキシ樹脂などの重合性成分とが十分につながれるとともに、前記二次混練工程において、エポキシ樹脂などの重合性成分に十分につながれたポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤を無機フィラーにも十分につなぐことができる。
【0060】
また、本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法では、前記一次混練工程において、エポキシ樹脂などの重合性成分中にシランカップリング剤を十分に分散させた状態で、無機フィラーを添加して前記二次混練工程を行うので、樹脂組成物中において、エポキシ樹脂などの重合性成分と無機フィラーとを、シランカップリング剤を介して満遍なくつなぐことができる。
【0061】
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法では、ポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤は、複数のブロックを有するブロック共重合体であることが好ましく、前記ブロック共重合体は、ポリブタジエンブロックを含み、分子両末端に、ビニル基とアルコキシシリル基(Si(OR))とを備えた化合物の付加重合物で構成されたブロックをさらに含むことが好ましい。
また、前記シランカップリング剤は、下記式(1b)で示されたような、ポリブタジエンブロックと、ビニル基とアルコキシシリル基とを備えた化合物の付加重合物で構成されたブロックと、のブロック共重合体であることがより好ましい。
【0062】
【化4】
(ただし、式(1b)において、Rは、メチル基またはエチル基であり、aは、1以上25以下の整数であり、bは、1以上25以下の整数であり、Zは、アルコキシシリル基が主鎖に直接又はヘテロ原子を介して結合しているか、有機基を介して接合されていることを示している。)
【0063】
また、ポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤では、前記ブロック共重合体は、官能基を有していない非置換のブタジエンの付加重合物で構成された第1のポリブタジエンブロックと、酸無水物基を有するブタジエンの付加重合物で構成された第2のポリブタジエンブロックと、を含んでいてもよい。
さらに、前記シランカップリング剤は、下記式(2a)で示されたような、前記第1のポリブタジエンブロックと、前記第2のポリブタジエンブロックと、ビニル基とアルコキシシリル基とを備えた化合物の付加重合物で構成されたブロックと、のブロック共重合体であってもよい。
【0064】
【化5】
(ただし、式(2a)において、Rは、メチル基またはエチル基であり、aは、1以上20以下の整数であり、bは、2以上8以下の整数であり、cは、1以上25以下の整数であり、Zは、アルコキシシリル基が主鎖に直接又はヘテロ原子を介して結合しているか、有機基を介して接合されていることを示している。)
【0065】
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法では、無機フィラーは、窒化ホウ素フィラーを含んでいることが好ましい。
また、無機フィラーは、複数の一次粒子が凝集した凝集粒子を含むことが好ましい。
【0066】
(熱伝導性シート)
本実施形態に係る熱伝導性シートは、上記した樹脂組成物で構成された樹脂層を備えている。そのため、本実施形態に係る熱伝導性シートは、熱伝導性が向上されたものとなる。
【0067】
前記熱伝導性シートの被着体の材質としては、金属が好ましい。詳しくは、銅又はアルミニウムを含む金属が好ましい。
【0068】
本実施形態に係る熱伝導性シートは、金属ベース回路基板に用いられうる。該金属ベース回路基板は、例えば、熱伝導性シートに回路層が接着されて構成される。斯かる構成からなる金属ベース回路基板は、本実施形態に係る熱伝導性シートを有しているため、この金属ベース回路基板も熱伝導性が向上されたものとなる。
【0069】
更に、本実施形態に係る熱伝導性シートは、例えばパワーモジュールに用いられる。該パワーモジュールは、例えば、前記金属ベース回路基板の回路層の上に、半導体チップやパワーICなどの発熱素子が実装され、これらの素子が一旦シリコーンゲルにて封止され、さらにシリコーンゲル上に樹脂モールドが実施されて構成される。斯かる構成からなるパワーモジュールは、本実施形態に係る熱伝導性シートを有しているため、このパワーモジュールも熱伝導性が向上されたものとなる。
【0070】
なお、本発明に係る樹脂組成物、及び、熱伝導性シートは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る樹脂組成物、及び、熱伝導性シートは、上記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係る樹脂組成物、及び、熱伝導性シートは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例
【0071】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0072】
(実施例1)
エポキシ樹脂A、フェノール樹脂A、シランカップリング剤A、及び、硬化促進剤とを混練して一次混練液を得た後、該一次混練液に無機フィラーを添加して、前記一次混練液と前記無機フィラーとを混練して二次混練液を得ることにより、実施例1に係る樹脂組成物を得た。
なお、前記エポキシ樹脂A、前記フェノール樹脂A、前記硬化促進剤、前記無機フィラー、及び、前記シランカップリング剤Aは、以下の通りのものである。

・エポキシ樹脂A:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「JER(登録商標)1001」、三菱ケミカル社製)
・フェノール樹脂A(硬化剤):ノボラック型フェノール樹脂(商品名「GS-200」、群栄化学社製)
・硬化促進剤:テトラフェニルホスホニウム テトラフェニルボレート(Tetraphenylphosphonium tetraphenylborate)(TPP-K(登録商標)、北興化学工業社製)
・無機フィラー:窒化ホウ素フィラー(BNフィラー)
・シランカップリング剤A:官能基を有していない非置換のブタジエンの付加重合物で構成された第1のポリブタジエンブロックと、酸無水物基を有するブタジエンの付加重合物で構成された第2のポリブタジエンブロックと、ビニル基とアルコキシシリル基とを備えた化合物の付加重合物で構成されたブロックと、のブロック共重合体(商品名「X-12-1287A」、信越シリコーン社製)

エポキシ樹脂A及びフェノール樹脂Aは、当量比1:1で樹脂組成物に含有させた。
また、硬化促進剤は、エポキシ樹脂Aとフェノール樹脂Aとの合計100質量部に対して0.01質量部で樹脂組成物に含有させた。
さらに、樹脂組成物の硬化後において該樹脂組成物の硬化物の固形分を100体積部としたときの無機フィラーの含有割合が59.0体積部となるように、無機フィラーを樹脂組成物に含有させた。
また、シランカップリング剤Aは、樹脂組成物中に含有させる無機フィラーの質量に対して、0.015質量%で含有させた。
【0073】
(実施例2)
混練前に前記無機フィラーを処理するシランカップリング剤として、シランカップリング剤Aに代えて、シランカップリング剤Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る樹脂組成物を得た。
シランカップリング剤Bとしては、ポリブタジエンブロックと、ビニル基とアルコキシシリル基とを備えた化合物の付加重合物で構成されたブロックと、のブロック共重合体(商品名「X-12-1267B」、信越シリコーン社製)を用いた。
【0074】
(実施例3)
混練前に前記無機フィラーを処理するシランカップリング剤として、シランカップリング剤Aに代えて、シランカップリング剤Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る樹脂組成物を得た。
シランカップリング剤Cとしては、ポリブタジエンブロックと、ビニル基とアルコキシシリル基とを備えた化合物の付加重合物で構成されたブロックと、のブロック共重合体(商品名「X-12-1267B-ES」、信越シリコーン社製)を用いた。
【0075】
(比較例1)
混練前に前記無機フィラーを処理するシランカップリング剤として、シランカップリング剤Aに代えて、シランカップリング剤Dを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る樹脂組成物を得た。
シランカップリング剤Dとしては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM-403」、信越シリコーン社製)を用いた。
【0076】
(比較例2)
混練前の前記無機フィラーを処理するシランカップリング剤として、シランカップリング剤Aに代えて、シランカップリング剤Eを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係る樹脂組成物を得た。
シランカップリング剤Eとしては、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン(商品名「KBM-4803」、信越シリコーン社製。長鎖スペーサー型シランカップリング剤)を用いた。
【0077】
(比較例3)
混練前の前記無機フィラーを処理するシランカップリング剤として、シランカップリング剤Aに代えて、シランカップリング剤Fを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係る樹脂組成物を得た。
シランカップリング剤Fとしては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM-603」、信越シリコーン社製)を用いた。
【0078】
(比較例4)
混練前の前記無機フィラーを処理するシランカップリング剤として、シランカップリング剤Aに代えて、シランカップリング剤Gを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例4に係る樹脂組成物を得た。
シランカップリング剤Gとしては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM-903」、信越シリコーン社製)を用いた。
【0079】
<熱伝導率>
熱伝導率の測定にあたって、以下のようにして絶縁放熱シートを作製した。
まず、基材たる銅箔(面積:2500cm)に、各例に係る樹脂組成物(厚み:約200μm)をそれぞれ塗工した。塗工方法としては、コーター方式、ロール トゥ ロールを採用し、乾燥条件としては、120℃で5分間とした。このようにして各例に係る樹脂組成物について樹脂シートをそれぞれ作製した。
次に、各例に係る樹脂シートのそれぞれについて、基材と接していない面同士が向かい合うように、2枚の同種の樹脂シートを重ね合わせて、温度100℃、圧力8Mpa、時間20分の条件で熱プレスし、金属箔を備えた絶縁放熱シート(絶縁層厚さ0.22±0.04mm)を作製した。
【0080】
上記絶縁放熱シートの両面から金属箔である銅箔をエッチングにより除去し、この絶縁放熱シートから1辺が10mm±0.5mmとなるように樹脂硬化体を矩形状に切り出し、切り出した樹脂硬化体の両面に反射防止剤(ファインケミカルジャパン株式会社製、品番:FC-153)を塗布したものを熱拡散率測定試料とした。
熱伝導度の値は、キセノンフラッシュアナライザー(NETZSCH社製、LFA-447型)を用いて上記熱拡散率測定試料について測定した熱拡散率の値に、JIS 7123:1987に準拠して熱流束DSCにて測定した比熱の値、及び、JIS K 7122:1999に準拠して水中置換法にて測定した密度の値を乗じて算出した。上記熱拡散率の値は、3個の測定試料について測定した熱拡散率の値を算術平均して求めた。また、上記熱拡散率の測定は、測定試料1個について5点行い、各測定試料について、最大値と最小値を除外した3点の値を算術平均したものを測定値とした。
熱伝導率を測定した結果を、以下の表1に示した。
【0081】
<ピール強度>
上記各例に係る樹脂組成物を電解銅箔(厚み:35μm)の片面に塗布し、樹脂層(厚み:145μm)を有するシートを2枚作製した。
次に、2枚のシートを熱プレス(3.0MPa、120℃、20min)して樹脂層どうしを貼り合わせ、シートの背面から銅箔を1枚剥離した。
そして、この銅箔を剥離した面にアルミニウム板を配置させ、熱プレス(2.0MPa、120℃、20min)によってシートをアルミニウム板に転着させ、さらに該シートから銅箔を剥がすことによって、半硬化状態のシートを得た。
次に、この半硬化状態のシートに被着体(銅箔1oz)を積層し、熱プレス(2.0MPa、180℃、120min)によって樹脂層と被着体を一体化させるとともに、樹脂層を十分に硬化させた後、20mm×100mmのサイズに切り出し、切り出したものの被着体を幅10mm幅に加工(エッチング)し剥離試験用テストピースを作製した。
該テストピースを50mm/minの剥離速度で90°ピール試験を実施し、被着体と樹脂層との接着強度をピール強度によって評価した。
ピール強度を測定した結果を、以下の表1に示した。
【0082】
<絶縁破壊強さ(BDV)>
絶縁破壊強さは、波高率が1.34~1.48の間にあり、50または60Hzの周波数の電圧を印加でき、最大電圧がAC10kV(実効値)である絶縁破壊装置により測定した。測定方法の詳細について、図1及び2を参照しながら説明する。
75±1mm×65±1mmの熱伝導性シートの片側の銅箔を剥離して、樹脂シートを得て、該樹脂シートにおける銅箔13が剥離された面にアルミ板を積層して加熱し、樹脂シートにアルミ板が一体化された積層シートを得た。次に、前記積層シートをさらに過熱して樹脂シートを完全に硬化させて、図1に示す絶縁破壊強さ測定試料14を得た。なお、樹脂シートは、各例に係る樹脂組成物を用いて作製した。
次に、図2に示したように、絶縁破壊強さ測定試料14を油槽15の絶縁油16(JIS C2320:1999)中でアルミ板側を下にして黄銅性円板電極17(Φ:40mm)上に置き、絶縁破壊強さ測定試料14の上に、絶縁破壊強さ測定試料14の略中央部分で接するように黄銅性球状電極18(Φ:15mm、重さ:50g)を置いた。絶縁油16は20±10℃に保ち、絶縁破壊強さ測定試料14に、絶縁破壊が生じるまで昇圧速度1kV(実効値)/secで連続的に電圧を印加した。
なお、絶縁破壊の判断基準として、カットオフ電流を25mAとした。そして、絶縁破壊生じた電圧(単位:kV)を、絶縁破壊強さ測定試料14の厚さ(単位:mm)で除することにより、絶縁破壊強さを求めた。
絶縁破壊強さ(BDV)を測定した結果を、以下の表1に示した。
【0083】
<耐電圧>
耐電圧は、波高率が1.34~1.48の間にあり、50または60Hzの周波数の電圧を印加でき、最大電圧がAC10kV(実効値)である絶縁破壊装置により測定した。測定方法の詳細については、図1及び2を参照しながら説明する。
75±1mm×65±1mmの絶縁放熱シートの片側の銅箔13を剥離し、その剥離面にアルミ板を積層し加熱して、アルミ板を絶縁放熱シートに一体化させ、さらに過熱して積層体を完全に硬化させて、図1に示す耐電圧測定試料14を得た。なお、上記絶縁放熱シートは、各例に係る樹脂組成物を備えたものをそれぞれ作製した。図2に示すように、耐電圧測定試料14を油槽15の絶縁油16(JIS C2320:1999)中でアルミ板側を下にして黄銅性円板電極17(Φ:40mm)上に置き、耐電圧測定試料14の上に、耐電圧測定試料14の略中央部分で接するように黄銅性球状電極18(Φ:15mm、重さ:50g)を置いた。絶縁油16は20±10℃に保ち、耐電圧測定試料14にAC3.0kV(実効値)を1分間印加した。そして、絶縁破壊が生じていない場合には、速やかにAC0.5kV(実効値)上げて1分間印加し、絶縁破壊が生じるまでAC0.5kV(実効値)間隔(0.5kV(実効値)ステップ、1分間印加)で昇圧した。
なお、絶縁破壊の判断基準として、カットオフ電流を10mAとした。そして、絶縁破壊が生じた電圧より0.5kV(実効値)低い印加電圧を、耐電圧測定試料14の厚さ(単位:mm)で除することにより、耐電圧を求めた。
各例について、耐電圧を測定した結果を、以下の表1に示した。
【0084】
【表1】
【0085】
<熱伝導性>
表1に示すように、実施例1に係る樹脂組成物では、各比較例に係る樹脂組成物と比べて、硬化物の熱伝導率が向上しており、また、実施例2及び3に係る樹脂組成物では、各比較例に係る樹脂組成物と比べて、硬化物の熱伝導率が同程度であることが分かる。
なお、各例に係る樹脂組成物において、硬化物の熱伝導率は、いずれも、10W/(m・K)を上回る極めて高い値であった。
このことから、ポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤を用いることにより、硬化物の熱伝導率を十分に高くできることが分かる。
【0086】
<ピール強度>
表1に示すように、各実施例に係る樹脂組成物では、各比較例に係る樹脂組成物と比べて、ピール強度が顕著に向上していることが分かる。
特に、実施例2及び3に係る樹脂組成物では、ピール強度の値は、3N/cmを上回る高い値を示していた。
なお、各比較例に係る樹脂組成物では、凝集破壊が生じている様子が看守された。
このことから、ポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤を用いることにより、ピール強度を顕著に向上できることが分かる。
【0087】
<絶縁破壊強さ(BDV)及び耐電圧>
また、表1に示すように、各実施例に係る樹脂組成物は、絶縁破壊強さ(BDV)または耐電圧の少なくとも一方について、各比較例に係る樹脂組成物と同等程度の値を示すものとなることが分かる。
このことから、ポリブタジエン構造を有するシランカップリング剤を用いることにより、絶縁破壊強さ(BDV)及び耐電圧を比較的高い値を示すものとなることが分かる。
【符号の説明】
【0088】
13 銅箔、14 測定試料(絶縁破壊強さ測定試料、耐電圧測定試料)、15 油槽、16 絶縁油、17 黄銅性円板電極、18 黄銅性球状電極。
図1
図2