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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】光電変換装置および機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
H01L27/146 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021007474
(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公開番号】P2022111806
(43)【公開日】2022-08-01
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】田中 芳栄
(72)【発明者】
【氏名】荻野 拓海
(72)【発明者】
【氏名】丹下 勉
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-219189(JP,A)
【文献】特開2020-010062(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146973(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H01L 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光電変換部を有し、第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面と、を有する半導体層と、
前記半導体層の前記第2面の側に配置された配線構造と、
前記半導体層の前記第1面の側に配置された金属化合物膜と、を備える光電変換装置であって、
前記金属化合物膜は、水素および炭素を含有しており、
前記金属化合物膜の前記半導体層側の界面における前記水素の濃度は、1×1021atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であり、
前記金属化合物膜の前記半導体層側の前記界面における前記炭素の濃度は、5×1020atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下である
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記金属化合物膜は、酸化ハフニウム層、酸化ジルコニウム層、酸化アルミニウム層、酸化チタン層、酸化タンタル層、の少なくとも一層を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記金属化合物膜は、負の固定電荷を有する固定電荷膜である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記金属化合物膜の前記半導体層側の前記界面における前記炭素の濃度に対する前記水素の濃度の比(水素濃度/炭素濃度)が、1.5以下である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記金属化合物膜の膜中における前記炭素の濃度に対する前記水素の濃度の比(水素濃度/炭素濃度)が、10以下である
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記金属化合物膜の膜中における前記水素の濃度が、5×1020atoms/cm以上2×1021atoms/cm以下である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記金属化合物膜の膜中における前記炭素の濃度が、1×1019atoms/cm以上1×1021atoms/cm以下である
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記金属化合物膜の前記半導体層側の前記界面における前記炭素の濃度は、2×1021atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下である
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記金属化合物膜は、前記半導体層に近い側から、第1金属化合物層と、第2金属化合物層と、を有する複層膜である
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記第1金属化合物層は、前記金属化合物膜を構成する複数の層のうち前記半導体層に最も近い層であり、
前記第1金属化合物層の前記半導体層側の界面における前記水素の濃度は、1×1021atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であり、
前記第1金属化合物層の前記半導体層側の前記界面における前記炭素の濃度は、2×1021atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下である
ことを特徴とする請求項9に記載の光電変換装置。
【請求項11】
複数の光電変換部を有し、第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面と、を有する半導体層と、
前記半導体層の前記第2面の側に配置された配線構造と、
前記半導体層前記第1面の側に配置された金属化合物膜と、を備える光電変換装置であって、
前記金属化合物膜は、前記半導体層に近い側から、第1金属化合物層と、第2金属化合物層と、を有する複層膜であり、
前記第1金属化合物層は、前記金属化合物膜を構成する複数の層のうち前記半導体層に最も近い層であり、
前記第1金属化合物層は、水素および炭素を含有しており、
前記第1金属化合物層の前記半導体層側の界面における前記水素の濃度は、1×1021atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であり、
前記第1金属化合物層の前記半導体層側の前記界面における前記炭素の濃度は、5×1020atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下である
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項12】
前記第1金属化合物層の前記半導体層側の前記界面における前記炭素の濃度は、2×1021atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下である
ことを特徴とする請求項11に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記第1金属化合物層は、酸化ハフニウム層、酸化ジルコニウム層、酸化アルミニウム層、酸化チタン層、酸化タンタル層、のいずれかである
ことを特徴とする請求項9~12のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項14】
前記第1金属化合物層は、酸化アルミニウム層である
ことを特徴とする請求項9~13のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項15】
前記第2金属化合物層は、酸化ハフニウム層、酸化ジルコニウム層、酸化アルミニウム層、酸化チタン層、酸化タンタル層、のいずれかである
ことを特徴とする請求項9~14のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項16】
前記第2金属化合物層は、酸化ハフニウム層または酸化タンタル層である
ことを特徴とする請求項9~15のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項17】
前記半導体層と前記金属化合物膜との間に、絶縁層をさらに有し、
前記金属化合物膜の前記半導体層側の界面は、前記金属化合物膜と前記絶縁層との間の界面である
ことを特徴とする請求項1~16のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項18】
前記絶縁層の厚さは、0.1nm以上10nm以下である
ことを特徴とする請求項17に記載の光電変換装置。
【請求項19】
前記絶縁層は、酸化シリコン層である
ことを特徴とする請求項17または18に記載の光電変換装置。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の光電変換装置を備える機器であって、
前記光電変換装置に対応付けられた光学系、
前記光電変換装置を制御する制御装置、
前記光電変換装置から出力された信号を処理する処理装置、
前記光電変換装置で得られた情報を表示する表示装置、
前記光電変換装置で得られた情報を記憶する記憶装置、および、
前記光電変換装置で得られた情報に基づいて前記光電変換装置を移動させる機械装置、
の少なくともいずれかをさらに備える
ことを特徴とする機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置および機器に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換層を備えたシリコン基板の上に、酸化アルミニウムからなる保護膜を設けた光電変換素子が提案されている。特許文献1には、シリコン基板上の保護膜に水素を含ませることで、シリコン基板の界面付近に存在するダングリングボンド(未結合手)が終端化されやすくなるため、シリコン基板の界面におけるキャリアの再結合が抑制されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/115275号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、シリコン基板上に設けた酸化アルミニウムからなる保護膜に含まれる水素の濃度を調整することが記載されている。しかしながら、水素の濃度の調整だけでは暗電流の抑制が不十分であった。
【0005】
そこで本発明は、上述の課題に鑑み、暗電流を抑制した光電変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての光電変換装置は、複数の光電変換部を有し、第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面と、を有する半導体層と、前記半導体層の前記第2面の側に配置された配線構造と、前記半導体層の前記第1面の側に配置された金属化合物膜と、を備える光電変換装置であって、前記金属化合物膜は、水素および炭素を含有しており、前記金属化合物膜の前記半導体層側の界面における前記水素の濃度は、1×1021atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であり、前記金属化合物膜の前記半導体層側の前記界面における前記炭素の濃度は、5×1020atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、暗電流を抑制した光電変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】光電変換装置を説明するための断面模式図。
図2】光電変換装置を説明するための、水素濃度および炭素濃度と暗電流の関係のグラフ。
図3】光電変換装置を説明するための、水素濃度および炭素濃度の比と暗電流の関係のグラフ。
図4】光電変換装置を備えた機器を説明するための模式図。
図5】光電変換装置の製造方法を説明するための断面模式図。
図6】光電変換装置の製造方法を説明するための断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の説明および図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。そのため、複数の図面を相互に参照して共通する構成を説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。なお、同様の名称で異なる符号を付した構成については、適宜、第1構成、第2構成、第3構成などと、「第○」をつけて区別してよい。また、本明細書において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限および上限を含む数値範囲を意味する。
【0010】
[光電変換装置の構成]
図1は、本実施形態に係る光電変換装置930の光電変換エリア(撮像エリア)の断面図である。光電変換装置930は、複数の光電変換部101、102、103を有する半導体層100を備える。
【0011】
半導体層100は、例えば1μm~10μm、好ましくは2μm~5μmの厚さを有する単結晶シリコン層である。半導体層100が複数の光電変換部101、102、103の各々の受光面(光入射面)を成す裏面1001を有する。複数の光電変換部101、102、103の各々はフォトダイオードでありうる。
【0012】
裏面1001は半導体層100の2つの主面の一方であり、半導体層100は、半導体層100の2つの主面の他方である表面1002を有する。以下、裏面1001を第1面、表面1002を第2面と称することもある。表面1002にはゲート電極400を含むトランジスタが設けられており、表面1002の上には複数の配線層410、420と層間絶縁膜430とで構成された配線構造440が設けられている。すなわち、半導体層100の第2面の側には、配線構造440が設けられている。ゲート電極400を含むトランジスタには、転送トランジスタ、増幅トランジスタ、リセットトランジスタ、選択トランジスタなどが含まれ、これらのトランジスタによって画素回路が構成される。
【0013】
光電変換部101、102、103の受光面の上には、シリコン酸化物膜、シリコン窒化物膜、シリコン炭化物膜などの、ケイ素と、酸素、窒素および炭素のうちの少なくとも1つと、の化合物であるシリコン化合物膜300が設けられている。シリコン化合物膜300の組成はSiOと表現できる。ここで、x、y、zのうちのいずれかは0よりも大きく、x、y、zのうちの0よりも大きいもの以外は0でもよいし、0でなくてもよい。シリコン化合物膜はケイ素(Si)、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)の他に、水素(H)、ホウ素(B)、フッ素(F)、リン(P)、塩素(Cl)、アルゴン(Ar)などを含むことができる。x>0かつx≧y≧0かつx≧z≧0の場合にシリコン化合物膜300はシリコン酸化物膜である。y>0かつy≧x≧0かつy≧z≧0の場合にシリコン化合物膜300はシリコン窒化物膜である。z>0かつz≧x≧0かつz≧y≧0の場合にシリコン化合物膜300はシリコン炭化物膜である。例えば、SiON膜はOとNの多寡に応じてシリコン酸化物膜またはシリコン窒化物膜に分類できる。
【0014】
さらに、光電変換部101、102、103の受光面の上には、受光面側から、絶縁層150と、金属化合物膜200と、がこの順で積層されている。換言すれば、絶縁層150および金属化合物膜200は、半導体層100の第1の面の側に配置されている。本実施形態において、絶縁層150および金属化合物膜200は、シリコン化合物膜300と半導体層100との間に配置されている。金属化合物膜200の詳細については後述する。なお、本実施形態においては半導体層100と金属化合物膜200との間に絶縁層150が配置されているものとしたが、これに限定はされず、絶縁層150が配置されずに金属化合物膜200が半導体層100の上に直接配置されていてもよい。すなわち、金属化合物膜200が半導体層100と接するように、半導体層100の上に配置されていてもよい。
【0015】
絶縁層150は、光電変換部101、102、103の第1面の側に配されている。絶縁層150は界面準位を下げる機能を有していてもよく、したがって、界面準位を下げる層とも称することができる。絶縁層150は半導体層100の裏面1001を酸化することで形成してもよく、本実施形態においては酸化シリコン(SiO)で構成される。なお、後述するように、金属化合物膜200は原子層堆積(ALD:Atmic Layer Deposition)法によって形成することができる。絶縁層150は、金属化合物膜200をALD法によって形成する際に、半導体層100の裏面1001に副次的に形成することもできる。絶縁層150の厚さは特に限定はされないが、1原子層以上50nm以下であってもよく、0.1nm以上10nm以下であることが好ましく、0.2nm以上5nm以下であることがより好ましく、0.3nm以上2nm以下であることが特に好ましい。絶縁層150の厚さを10nm以下、好ましくは1nm以下とすることで、金属化合物膜200の有する水素を透過しやすくなる。これにより、半導体層100と金属化合物膜200との間に絶縁層150を形成しても、金属化合物膜200の有する水素による半導体層100の界面のダングリングボンドの終端化作用を低下させにくくなるため好ましい。
【0016】
裏面1001の上には複数のマイクロレンズ871、872、873を含むマイクロレンズアレイが設けられている。複数のマイクロレンズ871、872、873のうちの1つのマイクロレンズ871が、光電変換部101の上に配されている。複数のマイクロレンズ871、872、873のうちの1つのマイクロレンズ872が、光電変換部102の上に配されている。複数のマイクロレンズ871、872、873のうちの1つのマイクロレンズ873が、光電変換部103との上に配されている。裏面1001に垂直な方向からの平面視において、マイクロレンズ871は光電変換部101と重なっており、マイクロレンズ872は光電変換部102と重なっており、マイクロレンズ873は光電変換部103と重なっている、と言うこともできる。複数のマイクロレンズ871、872、873の各々は、例えば樹脂からなる。
【0017】
複数のマイクロレンズ871、872、873を含むマイクロレンズアレイと半導体層100との間には、複数の層内レンズ831、832、833を含む別の層内レンズアレイが設けられている。複数の層内レンズ831、832、833の各々は、例えば、窒化シリコン膜などの誘電体膜820に設けられる。本例の層内レンズ831、832、833は上凸レンズであるが、下凸レンズでも両凸レンズでもよい。
【0018】
層内レンズ831、832、833とシリコン化合物膜300との間には酸化シリコン膜などの絶縁体膜810が設けられる。層内レンズ831、832、833とマイクロレンズ871、872、873との間には酸化シリコン膜などの絶縁体膜840が設けられる。絶縁体膜840と窒化シリコンからなる層内レンズ831、832、833との屈折率差によって、層内レンズ831、832、833による集光が行われる。層内レンズ831、832、833とマイクロレンズ871、872、873との間には、カラーフィルタ861、862、863を含むカラーフィルタアレイが設けられている。裏面1001に垂直な方向からの平面視において、カラーフィルタ861は光電変換部101と重なっており、カラーフィルタ862は光電変換部102と重なっており、カラーフィルタ863は光電変換部103と重なっている、と言うこともできる。例えば、カラーフィルタ861は赤色フィルタ、カラーフィルタ862は緑色フィルタ、カラーフィルタ863は青色フィルタである。カラーフィルタ861、862、863と層内レンズ831、832、833との間、および/または、カラーフィルタ861、862、863とマイクロレンズ871、872、873との間には、平坦化膜850が設けられる。平坦化膜850は、例えば樹脂からなる。
【0019】
酸化シリコン膜などの絶縁体膜810とシリコン化合物膜300との間には遮光部材710が設けられている。遮光部材710の上には遮光壁720が設けられている。遮光壁720は絶縁体膜810、誘電体膜820および絶縁体膜840の少なくとも1つを貫通するように設けられうる。遮光壁720は層内レンズ831、832、833を囲むように配置されうる。
【0020】
一つの画素の光学的な構造は、主に、マイクロレンズとカラーフィルタと層内レンズと光電変換部によって定義される。例えば、光電変換部102を有する画素の光学的な構造は、マイクロレンズ872とカラーフィルタ862と層内レンズ832と光電変換部102によって定義される。ただし、マイクロレンズとカラーフィルタと層内レンズのうちのいくつかは省略可能である。
【0021】
半導体層100には半導体基板600が積層されている。半導体基板600の表面にはゲート電極500を含むトランジスタが設けられている。半導体基板600の表面の上(半導体基板600と配線構造440との間)には、配線構造540が設けられている。配線構造540は複数の配線層510、520と層間絶縁膜530とで構成されている。ゲート電極500を含むトランジスタは、光電変換部を含む画素回路を駆動するための駆動回路や、光電変換装置930の制御を行う制御回路を構成する。また、ゲート電極500を含むトランジスタは、画素回路から得られたアナログ信号をアナログデジタル(AD)変換するAD変換回路を構成する。また、ゲート電極500を含むトランジスタは、AD変換によって得られたデジタル信号を処理するデジタル信号処理回路を構成する。配線構造440と配線構造540との電気的な接続は、配線層の直接接合による配線や、半導体層100を貫通する貫通ビアによってなされる。配線構造440と配線構造540との電気的な接続は、配線構造440と配線構造540との間のバンプによってなされてもよいし、ワイヤボンディングによってなされてもよい。半導体基板600を単なる支持基板として用いる場合には、ゲート電極500を含むトランジスタや配線構造540を省略することができる。
【0022】
<金属化合物層>
金属化合物膜200は、金属化合物層の単層膜あるいは複層膜である。金属化合物膜200を構成する金属化合物層は、金属酸化物層、金属窒化物層および金属炭化物層のいずれかである。中でも、金属化合物層は、光透過率が高い点から金属酸化物層であることが好ましい。金属化合物層を構成する具体的な材料としては、例えば、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)およびチタン(Ti)のうち少なくとも1つの元素を含む酸化物または窒化物または炭化物を適用することができる。金属化合物層を構成する材料は、MOで表される化合物であってもよい。ここで、l、m、nのうちのいずれかは0よりも大きく、l、m、nのうちの0よりも大きいもの以外は0でもよいし、0でなくてもよい。このなかでも、lは0よりも大きいことが好ましい。Mはハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)およびチタン(Ti)のいずれかであってもよい。また、金属化合物層を構成する具体的な材料としては、上記以外には、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)およびイットリウム(Y)のうち少なくとも1つの元素を含む酸化物または窒化物または炭化物等が挙げられる。金属化合物層は、酸化ハフニウム層、酸化ジルコニウム層、酸化アルミニウム層、酸化チタン層、酸化タンタル層、の少なくとも一層を有することが好ましい。
【0023】
金属化合物膜200は、負の固定電荷を有する層を含むことが好ましい。換言すれば、金属化合物膜200は、負の固定電荷を有する固定電荷膜であることが好ましい。金属化合物膜200が複数の金属化合物層からなる場合には、複数の金属化合物層のうちの、半導体層100に最も近い金属化合物層が、負の固定電荷を有する層であることが好ましい。金属化合物膜200が負の固定電荷を有することで、半導体層100の裏面1001側(金属化合物膜200に接する面の側)に反転層が形成される。これにより、半導体層100の界面が反転層によりピニングされるため、暗電流の発生が抑制される。
【0024】
金属酸化物層における金属および酸素の組成を化学量論比から外れた組成とすることで、金属酸化物層が固定電荷を有するようにすることができる。化学量論比に対して金属が少ないか、または、酸素が多い組成とすることで、金属酸化物層が負の固定電荷を有するようにすることができる。例えば、金属化合物膜200を構成する層のうちの半導体層100に最も近い金属酸化物層として酸化アルミニウムを用いる場合には、化学量論比に対してアルミニウムが少ないか、または、酸素が多い組成とすることが好ましい。
【0025】
本例の金属化合物膜200は、半導体層100に近い側から、第1金属化合物層210と、第2金属化合物層220と、を含む積層膜である。金属化合物膜200の厚さは、第1金属化合物層210の厚さと第2金属化合物層220の厚さとの和である。第1金属化合物層210の厚さは第2金属化合物層220の厚さよりも小さいことが好ましい。
【0026】
第1金属化合物層210は、上述のように負の固定電荷を有することが好ましく、半導体層100の非信号電荷を固定するための電荷固定層として機能しうる。第2金属化合物層220は半導体層100へ入射する光の反射防止層として機能しうる。第1金属化合物層210は、金属化合物膜200を構成する複数の層のうち半導体層100に最も近い層である。第1金属化合物層210は、酸化ハフニウム層、酸化ジルコニウム層、酸化アルミニウム層、酸化チタン層、酸化タンタル層、のいずれかであることが好ましく、酸化アルミニウムであることが特に好ましい。第2金属化合物層220は、酸化ハフニウム層、酸化ジルコニウム層、酸化アルミニウム層、酸化チタン層、酸化タンタル層、のいずれかであることが好ましく、酸化ハフニウム層または酸化タンタル層であることが特に好ましい。
【0027】
半導体層100がシリコン層であり可視光を光電変換する場合に、金属化合物膜200は次のような構成が好適である。すなわち、第1金属化合物層210は、例えば、厚さ5nm~20nmの酸化アルミニウム(Al)層であり、第2金属化合物層220は、例えば、厚さ25nm~100nmの酸化タンタル(Ta)層である。さらに、半導体層100と第1金属化合物層210との間には、絶縁層150が配されており、絶縁層150は、例えば、厚さ0.1nm~5nmの酸化シリコン(SiO)層であることが好ましい。
【0028】
本実施形態では、裏面1001が受光面を成す、裏面照射型の光電変換装置を説明したが、本発明は表面1002が受光面を成す、表面照射型の光電変換装置にも適用可能である。また、本実施形態では光電変換装置としてCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを説明したが、本発明はこれに限定はされない。光電変換装置としては、CCD(Charge Copled Device)イメージセンサ等の任意のセンサにも適用可能である。
【0029】
<金属化合物層の水素濃度および炭素濃度>
金属化合物膜200は、水素および炭素を含有する。本実施形態では、第1金属化合物層210が、水素および炭素を含有する。また、本実施形態では第1金属化合物層210は酸化アルミニウムで構成されており、負の固定電荷を有する。
【0030】
(水素濃度)
第1金属化合物層210に水素が含まれていることにより、半導体層100の裏面1001の界面において存在しうる半導体層100を構成する材料のダングリングボンドが終端化される。ダングリングボンドが終端化されることで、半導体層100の裏面1001におけるキャリアの再結合が抑制され、その結果、暗電流が抑制される。なお、第1金属化合物層210と半導体基板100との間に、絶縁層150などの別の層が介在している場合であっても、当該別の層が十分に薄い層である場合には、水素は当該別の層を透過してダングリングボンドを終端化することができる。
【0031】
したがって、半導体層100の裏面1001の界面のダングリングボンドを終端化して暗電流を抑制する観点から、第1金属化合物層210に含まれる水素の濃度はある程度高いことが好ましい。特に、第1金属化合物層210の界面のうち、半導体層100に近い方の界面(すなわち、半導体層側の界面)に存在する水素がダングリングボンドの終端化に大きく寄与するため、半導体層100に近い方の界面における水素濃度が高いことが好ましい。具体的には、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面における水素濃度は、1×1021atoms/cm以上であることが好ましい。
【0032】
一方、第1金属化合物層210に水素が過剰に含まれていると、半導体層100のダングリングボンドの終端化に寄与せず、かつ、第1金属化合物層210を構成する金属化合物とも結合していない、遊離した水素が多く存在しうる。このような水素は、第1金属化合物層210中において水素イオン(H)として存在すると考えられる。第1金属化合物層210中に多量の水素イオンが存在すると、第1金属化合物層210が有する負の固定電荷が減少してしまい、暗電流を抑制する効果が低下してしまいうる。そのため、第1金属化合物層210に含まれる水素の濃度はある程度低いことが好ましい。特に、第1金属化合物層210の界面のうち、半導体層100に近い方の界面において水素イオンが存在していると負の固定電荷の減少が生じやすくなるため、半導体層100に近い方の界面における水素濃度が低いことが好ましい。具体的には、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面における水素濃度は、1×1022atoms/cm以下であることが好ましい。また、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面における水素濃度は、5×1021atoms/cm以下であることがより好ましく、3×1021atoms/cm未満であることがさらに好ましい。
【0033】
以上を総合すると、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面における水素濃度は、1×1021atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であることが好ましい。また、当該水素濃度は、1×1021atoms/cm以上5×1021atoms/cm以下であることがより好ましく、1×1021atoms/cm以上3×1021atoms/cm未満であることがさらに好ましい。上記水素濃度を上記の数値範囲内の値とすることで、暗電流を抑制することができるため好ましい。
【0034】
なお、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面における水素濃度は、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面を基準高さ(0nm)として、高さが0nm~3nmの領域の水素濃度としてよい。ここで、半導体層100から第1金属化合物層210に向かう方向を正方向とする。
【0035】
第1金属化合物層210は、層厚方向に水素濃度分布が不均一であってもよい。換言すれば、第1金属化合物層210は、層厚方向に沿って水素濃度が変化していてもよい。すなわち、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面における水素濃度と、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面から離れた部分における水素濃度と、は異なっていてもよい。なお、以下の説明において、前者の水素濃度を界面水素濃度、後者の水素濃度を膜中水素濃度、とそれぞれ称する。膜中水素濃度は、第1金属化合物層210のうちの、半導体層100側の界面から3nm以上離れた領域の水素濃度としてよい。
【0036】
膜中水素濃度は、界面水素濃度よりも低いことが好ましい。水素濃度が低いと、第1金属化合物層210の結晶性を高くすることができる。これにより、機械的強度を高めるとともに、耐湿性を向上させることができる。第1金属化合物層210の水素濃度は、半導体層100側の界面と、半導体層100とは反対側の界面から3nm離れた面と、の間の領域において、半導体層100側の界面から離れるにつれて単調減少することが好ましい。このようにすることで、半導体層100の界面のダングリングボンドの終端化による暗電流の抑制と、第1金属化合物層210の高耐湿性および高機械強度と、を両立することができる。第1金属化合物層210の膜中水素濃度は、5×1020atoms/cm以上2×1021atoms/cm以下であることが好ましい。なお、第1金属化合物層210等の金属化合物膜200の水素および炭素の濃度は、成膜雰囲気や成膜温度、成膜後の熱処理条件により調整することができる。
【0037】
図2に、半導体層100をシリコンで構成し、第1金属化合物層210を酸化アルミニウムで構成した際の、第1金属化合物層210中の水素濃度と暗電流の平均値の関係と、炭素濃度と暗電流の平均値の関係を表すグラフを示す。図2(a)は、界面水素濃度と暗電流の平均値の関係を示しており、図2(b)は、膜中水素濃度と暗電流の平均値の関係を示している。図2(a)に示すように、界面水素濃度が高いほど、暗電流が抑制される傾向がある。そして、界面水素濃度が1×1021atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下である場合に、暗電流が低い値となる。また、図2(b)に示すように、膜中水素濃度についても、膜中水素濃度が高いほど、暗電流が抑制される傾向がある。そして、膜中水素濃度が、5×1020atoms/cm以上2×1021atoms/cm以下である場合に、暗電流が低い値となる。なお、ここでは半導体層100をシリコンで構成し、第1金属化合物層210を酸化アルミニウムで構成した場合について検討したが、半導体層100や第1金属化合物層210を別の材料で構成した場合においても、同様である。
【0038】
(炭素濃度)
上述のように、第1金属化合物層210に水素が過剰に含有されていると、第1金属化合物層210中に遊離した水素が多く存在しうる。このような遊離した水素は、暗電流抑制の効果を低下させうる。そこで本実施形態では、第1金属化合物層210に炭素を含有させている。第1金属化合物層210に含まれる炭素は、Mを金属元素として、M-CH-やM-C-O-等で表されるように、金属元素と結合して存在しうる。第1金属化合物層210は後述するように、ALD法や有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法などの有機金属を原料とした成膜方法によって成膜しうる。特にこれらの成膜方法によって成膜した場合には、炭素は上記のような形態で、金属元素と結合して存在しやすい。第1金属化合物層210に炭素をある程度多く含有させることで、水素を多く含有し半導体層100の界面におけるダングリングボンドの終端化に寄与しない水素が多く存在する場合であっても、そのような水素が炭素によって捕捉される。これにより、第1金属化合物層210内で水素が遊離して負の固定電荷を減少させることを抑制することができる。
【0039】
一方、第1金属化合物層210の炭素を含有させると、第1金属化合物層210の屈折率が低くなる。第1金属化合物層210の炭素濃度と第1金属化合物層210の屈折率は反比例し、第1金属化合物層210の炭素濃度が高くなるほど、第1金属化合物層210の屈折率は低くなる。一般に、半導体層100は高い屈折率を有しており、半導体層100の屈折率は第1金属化合物層210の屈折率よりも高い。第1金属化合物層210の屈折率が低くなりすぎると、第1金属化合物層210と半導体層100の屈折率差が大きくなり、第1金属化合物層210と半導体層100との間における反射率が大きくなってしまう。そのため、半導体層100への光の入射効率の観点から、第1金属化合物層210の屈折率はあまり低くないことが好ましく、したがって、第1金属化合物層210の炭素濃度はある程度低いことが好ましい。なお、半導体層100と第1金属化合物層210との間に絶縁層150が配置されている場合であっても、絶縁層150の厚さが十分に薄い場合には、半導体層100と第1金属化合物層210との間における光の反射に対する絶縁層150の影響は無視できる。例えば、絶縁層150の厚さが50nm以下である場合には、半導体層100と第1金属化合物層210との間における光の反射は、半導体層100の屈折率と第1金属化合物層210の屈折率によって支配されうる。
【0040】
以上より、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面における炭素濃度は、5×1020atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であることが好ましい。また、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面における炭素濃度は、1×1021atoms/cm以上であることがより好ましく、2×1021atoms/cm以上であることがより好ましい。第1金属化合物層210の半導体層100側の界面における炭素濃度を5×1020atoms/cm以上とすることで、水素の遊離を抑制し、暗電流の抑制効果を高めることができる。また、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面における炭素濃度を1×1022atoms/cm以下とすることで、第1金属化合物層210の結晶性の低下を抑制することができる。なお、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面における炭素濃度は、界面水素濃度と同様に、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面を基準高さ(0nm)として、高さが0nm~3nmの領域の炭素濃度としてよい。
【0041】
第1金属化合物層210は、層厚方向に炭素濃度分布が不均一であってもよい。換言すれば、第1金属化合物層210は、層厚方向に沿って炭素濃度が変化していてもよい。すなわち、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面における炭素濃度と、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面から離れた部分における炭素濃度と、は異なっていてもよい。なお、以下の説明において、水素濃度の場合と同様に、前者の炭素濃度を界面炭素濃度、後者の炭素濃度を膜中炭素濃度、とそれぞれ称する。膜中炭素濃度は、第1金属化合物層210のうちの、半導体層100側の界面から3nm以上離れた領域の炭素濃度としてよい。
【0042】
第1金属化合物層210の膜中炭素濃度は、1×1019atoms/cm以上1×1021atoms/cm以下であることが好ましい。
【0043】
図2(c)は、界面炭素濃度と暗電流の平均値の関係を示しており、図2(d)は、膜中炭素濃度と暗電流の平均値の関係を示している。図2(c)に示すように、界面炭素濃度が高いほど、暗電流が抑制される傾向がある。そして、界面炭素濃度が5×1020atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下である場合に、暗電流が低い値となる。また、図2(d)に示すように、膜中炭素濃度についても、膜中炭素濃度が高いほど、暗電流が抑制される傾向がある。そして、膜中炭素濃度が、1×1019atoms/cm以上1×1021atoms/cm以下である場合に、暗電流が低い値となる。なお、ここでは半導体層100をシリコンで構成し、第1金属化合物層210を酸化アルミニウムで構成した場合について検討したが、半導体層100や第1金属化合物層210を別の材料で構成した場合においても、同様である。
【0044】
(水素濃度と炭素濃度の比)
上述のように、第1金属化合物層210に含有される炭素は、第1金属化合物層210中の過剰な水素を捕捉する機能を有しているため、暗電流を抑制する観点では、第1金属化合物層210中の炭素濃度と水素濃度の比率も重要である。第1金属化合物層210の水素濃度と炭素濃度の比率を適切な値とすることで、炭素による水素の補足効果を発揮して暗電流を抑制しつつ、第1金属化合物層210の屈折率の低下を抑制することができる。以下、第1金属化合物層210の炭素濃度に対する水素濃度の比(水素濃度/炭素濃度)を考える。
【0045】
水素濃度/炭素濃度が高すぎると、半導体層100の界面のダングリングボンドの終端化に寄与しない余剰な水素を炭素によって捕捉しきれず、第1金属化合物層210内に遊離した水素が生じやすくなる。この結果、上述のように、第1金属化合物層210が有する負の固定電荷が減少してしまい、暗電流を抑制する効果が低下してしまう。そのため、水素濃度/炭素濃度はある程度低いことが好ましい。具体的には、第1金属化合物層210の半導体層100側の界面における水素濃度/炭素濃度は、1.5以下とすることが好ましい。また、第1金属化合物層210の膜中における水素濃度/炭素濃度は、10以下とすることが好ましい。これにより、暗電流を効果的に抑制することができる。
【0046】
図3に、半導体層100をシリコンで構成し、第1金属化合物層210を酸化アルミニウムで構成した際の、第1金属化合物層210中の炭素濃度に対する水素濃度の比(水素濃度/炭素濃度)と暗電流の関係を表すグラフを示す。図3(a)は第1金属化合物層210の半導体層100側の界面における水素濃度/炭素濃度と暗電流の最大値の関係を表し、図3(b)は第1金属化合物層210の半導体層100側の界面における水素濃度/炭素濃度と暗電流の最小値の関係を表している。図3(a)に示されるように、界面における水素濃度/炭素濃度が1.5を超えると暗電流の最大値が顕著に増大し、水素濃度/炭素濃度を1.5以下とすることで暗電流を抑制できる。図3(c)は第1金属化合物層210の膜中における水素濃度/炭素濃度と暗電流の最大値の関係を表し、図3(d)は第1金属化合物層210の膜中における水素濃度/炭素濃度と暗電流の最大値の関係を表している。図3(c)に示されるように、膜中における水素濃度/炭素濃度が20を超えると暗電流の最大値が顕著に増大し、水素濃度/炭素濃度を10以下とすることで暗電流を抑制できる。なお、ここでは半導体層100をシリコンで構成し、第1金属化合物層210を酸化アルミニウムで構成した場合について検討したが、半導体層100や第1金属化合物層210を別の材料で構成した場合においても、同様である。
【0047】
[その他の実施形態]
図4は、光電変換装置930を備える機器9191の模式図である。機器9191は、光電変換装置930に加えて、光学系940、制御装置950、処理装置960、記憶装置970、表示装置980、および、機械装置990の少なくともいずれかを更に備える。光学系940は光電変換装置930に対応付けられて、光電変換装置に結像する。制御装置950は光電変換装置930を制御する。処理装置960は光電変換装置930から出力された信号を処理する。記憶装置970は光電変換装置930で得られた情報を記憶する。表示装置980は光電変換装置930で得られた情報を表示する。機械装置990は光電変換装置930で得られた情報に基づいて動作する。機械装置990は光電変換装置930を機器9191の中で、あるいは機器9191ごと移動させる移動装置であってもよい。機器9191の中で光電変換装置930を移動させることで防振(イメージスタビライザー)機能を実現できる。
【0048】
光電変換装置930は、電子デバイス910と実装部材920とを含みうるが、実装部材920は無くてもよい。電子デバイス910は半導体層を有する半導体デバイスである。電子デバイス910は、光電変換部が配列された光電変換エリア901と、周辺回路(不図示)が配列された周辺回路エリア902を含む。周辺回路には、上述の駆動回路やAD変換回路、デジタル信号処理回路や制御回路などが含まれる。光電変換エリア901と周辺回路エリア902は、同一の半導体層に配されてもよいが、本例では、互いに積層された別々の半導体層(半導体基板)に配されてもよい。
【0049】
実装部材920は、セラミックパッケージやプラスチックパッケージ、プリント配線板、フレキシブルケーブル、半田、ワイヤボンディングなどを含む。光学系940は、例えばレンズやシャッター、フィルター、ミラーである。制御装置950、例えばASICなどの半導体デバイスである。処理装置960は、例えばAFE(アナログフロントエンド)あるいはDFE(デジタルフロントエンド)を構成する、例えばCPU(中央処理装置)やASIC(特定用途向け集積回路)などの半導体デバイスである。表示装置980は、例えばEL表示装置や液晶表示装置である。記憶装置970は、SRAMやDRAMなどの揮発性メモリ、あるいは、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性メモリであり、例えば磁気デバイスや半導体デバイスである。機械装置MCHNはモーターやエンジン等の可動部あるいは推進部を有する。
【0050】
図4に示した機器9191は、撮影機能を有する情報端末(例えばスマートフォンやウエアラブル端末)やカメラ(例えばレンズ交換式カメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ)などの電子機器でありうる。カメラにおける機械装置990はズーミングや合焦、シャッター動作のために光学系940の部品を駆動することができる。また、機器9191は、車両や船舶、飛行体、人工衛星などの輸送機器(移動体)でありうる。輸送機器における機械装置990は移動装置として用いられうる。輸送機器としての機器9191は、光電変換装置930を輸送するものや、撮影機能により運転(操縦)の補助および/または自動化を行うものに好適である。運転(操縦)の補助および/または自動化のための処理装置960は、光電変換装置930で得られた情報に基づいて移動装置としての機械装置990を操作するための処理を行うことができる。また、機器9191は、分析機器や、医療機器でありうる。
【0051】
本実施形態による光電変換装置930は、その設計者、製造者、販売者、購入者および/または使用者に、高い価値を提供することができる。そのため、光電変換装置930を機器9191に搭載すれば、機器9191の価値も高めることができる。よって、機器9191の製造、販売を行う上で、本実施形態の光電変換装置930の機器9191への搭載を決定することは、機器9191の価値を高める上で有利である。
【0052】
[光電変換装置の製造方法]
図5、6を用いて光電変換装置の製造方法を説明する。
【0053】
図5(a)に示すとおり、光電変換部やゲート電極400を含むトランジスタ、配線構造(不図示)が形成された半導体基板1000を反転させて、半導体基板1000を支持基板(不図示)に接合する。支持基板は半導体基板600であってよい。半導体基板1000には表面1002側にSTI構造を有する素子分離部201が設けられている。また、半導体基板1000には表面1002側に、素子分離部201よりも深い溝に絶縁体が埋められた絶縁領域216が設けられている。
【0054】
次に図5(b)に示すとおり、半導体基板1000を絶縁領域216が貫通する数十~数μm程度の厚さになるまで表面1002とは反対側から薄化して、表面1002と裏面1001を有する半導体層100を形成する。薄化の方法としては、バックグラインド、化学機械研磨、エッチング等がある。
【0055】
次に図5(c)に示すとおり、半導体層100の裏面1001の上に、第1金属化合物層210、第2金属化合物層220、シリコン化合物膜300を形成する。第1金属化合物層210の成膜方法は、例えばALD法やMOCVD法等の、有機金属ガスを原料として用いる成膜方法を用いうる。本実施形態では金属化合物210は酸化アルミニウム層である。酸化アルミニウム層の成膜条件により、酸化アルミニウム膜中および半導体層100との界面における水素濃度および炭素濃度を調整することができる。なお、図5および図6には示されていないが、半導体層100の裏面1001と第1金属化合物層210との間には、厚さ1nm程度の絶縁層150が形成されている。本実施形態では絶縁層150は酸化シリコン層であり、第1金属化合物層210をALD法によって形成する際に、半導体層100であるシリコンの裏面1001が酸化されることで形成される。
【0056】
第2金属化合物層220の成膜方法は、例えば、ALD法、MOCVD法、PVD法、CVD法を用いる。第2金属化合物層220は、例えば、酸化タンタル層、酸化チタニウム層等である。
【0057】
シリコン化合物膜300は、半導体装置において一般的に使用されている材質の中から任意に選択しうる。例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、炭素含有シリコン酸化膜、フッ素含有シリコン酸化膜等である。またシリコン化合物膜300の層構成としては、1種類の材質からなる単層構成であってもよいし、複数の材質からなる積層構成であってもよい。
【0058】
次に、金属構造体を埋め込むための溝をシリコン化合物膜300に形成する。次に図5(d)に示すとおり、導電体膜700をシリコン化合物膜300の上の全面にわたって形成する。その際、シリコン化合物膜300の溝は導電体膜700で埋め込まれる。導電体膜700は、例えばタングステン膜やアルミニウム膜、銅膜である。
【0059】
次に図5(e)に示すとおり、導電体膜700をパターニングする。パターニングはフォトリソグラフィとエッチングにより行う。パターニングによって、導電体膜700の一部は遮光部材710、711となり、また一部はガードリング714となる。遮光部材711はオプティカルブラック画素や周辺回路に対する遮光体となる。なお、遮光部材710とガードリング714の形成と同時に遮光部材710およびガードリング714を半導体層100と接続するビア713およびガードリング712をシリコン化合物膜300の溝の中に形成する。ガードリング712、714は、表面1001に対する平面視において絶縁領域216の外側を取り囲むように配置する。
【0060】
次に図5(e)に示すとおり、絶縁体膜810を形成する。絶縁体膜810は半導体装置において一般的に使用されている材質の中から任意に選択しうる。例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、炭素含有シリコン酸化膜、フッ素含有シリコン酸化膜等である。また膜の層構成としては、1種類の材質からなる単層構成であってもよいし、複数の材質からなる積層構成であってもよい。
【0061】
次に絶縁体膜810の表面からエッチングにより溝を形成して、次にPVD法やCVD法により導電体を形成して溝を導電体で埋め込み、化学機械研磨やエッチバック等により基板表面の導電体を除去する。これにより、図5(f)に示すとおり、絶縁体膜810に遮光壁721を形成する。また金属膜の層数は任意に選択可能である。
【0062】
次に絶縁体膜810上に誘電体膜820を形成し、例えばフォトリソグラフィとエッチングにより誘電体膜820を加工して、図6(g)に示すとおり、誘電体膜820に層内レンズ832を形成する。誘電体膜820は半導体装置において一般的に使用されている材質の中から任意に選択しうる。例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、炭素含有シリコン酸化膜、フッ素含有シリコン酸化膜等である。また膜の層構成としては、1種類の材質からなる単層構成であってもよいし、複数の材質からなる積層構成であってもよい。
【0063】
次に絶縁体膜840を形成し、絶縁体膜840の表面からエッチングにより溝を形成して、次にPVD法やCVD法により基板表面の前面にわたり溝を導電体で埋め込む。化学機械研磨やエッチバック等により基板表面の導電体を除去することで、図6(h)に示す通り、絶縁体膜840の中に遮光壁722を形成する。遮光壁721と遮光壁722とは互いに接触しており、遮光壁721と遮光壁722が図1に示した遮光壁720として機能する。絶縁体膜840は半導体装置において一般的に使用されている材質の中から任意に選択しうる。例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、炭素含有シリコン酸化膜、フッ素含有シリコン酸化膜等である。また膜の層構成としては、1種類の材質からなる単層構成であってもよいし、複数の材質からなる積層構成であってもよい。また、遮光壁722の材質としては、タングステンなどがあり得る。
【0064】
次に図6(i)に示すとおり、平坦化膜850、カラーフィルタ862、863、マイクロレンンズ872を形成する。青色のカラーフィルタ863は遮光部材711を覆う。平坦化膜850は半導体装置において一般的に使用されている材質の中から任意に選択しうる。例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、炭素含有シリコン酸化膜、フッ素含有シリコン酸化膜、あるいは樹脂膜である。また膜の層構成としては、1種類の材質からなる単層構成であってもよいし、複数の材質からなる積層構成であってもよい。
【0065】
次に図6(j)に示すとおり、半導体層100に開口888をドライエッチングで形成する。開口888の底には図1に示した配線構造440あるいは配線構造540に予め設けられたアルミニウムからなる不図示のパッドが露出する。その後、半導体層100を含むウエハをダイシングしてチップ化し、開口888を介したパッドにワイヤボンディングチップを接続するようにパッケージングして光電変換装置が得られる。
【0066】
本開示に含まれる実施形態には、文章として記載したことだけでなく、文章から読み取れるすべての事項および添付した図面から読み取れるすべての事項を含む。本実施形態は、発明の思想を逸脱しない範囲で構成要素の追加、削除あるいは置換が可能である。
【符号の説明】
【0067】
100 半導体層
101、102、103 光電変換部
1001 裏面(第1面)
1002 表面(第2面)
200 金属化合物膜
210 第1金属化合物層
300 シリコン化合物膜
440 配線構造
930 光電変換装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6