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特許7604250自動車衝突模擬試験用台車及び自動車衝突模擬試験装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】自動車衝突模擬試験用台車及び自動車衝突模擬試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/08 20060101AFI20241216BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G01M7/08 A
G01M17/007 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021011001
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114632
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 將之
(72)【発明者】
【氏名】西村 信一郎
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/174803(WO,A1)
【文献】特開2013-224832(JP,A)
【文献】特開2015-201380(JP,A)
【文献】特開2011-117229(JP,A)
【文献】中国実用新案第212229116(CN,U)
【文献】中国実用新案第211696959(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/08
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール上を移動可能な台車本体と、
前記台車本体に設けられ、前記台車本体に載置される試験体を収容する収容部を有し、前記試験体を収容した状態で前記収容部に液体を保持可能な液体槽と
を備え
前記液体槽は、前記台車本体のうち前記試験体を収容する収容位置と、前記試験体を収容しない待機位置との間で移動可能であり、
前記液体槽を移動させる駆動部を更に備える
自動車衝突模擬試験用台車。
【請求項2】
前記液体槽の前記収容部に前記液体を供給する液体供給部を更に備える
請求項1に記載の自動車衝突模擬試験用台車。
【請求項3】
前記液体槽は、前記収容部が前記試験体を収容する収容位置に設置される
請求項1又は請求項2に記載の自動車衝突模擬試験用台車。
【請求項4】
前記液体槽は、前記液体槽に保持される前記液体のうち所定の液位を超える部分を排出する排出部を有する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自動車衝突模擬試験用台車。
【請求項5】
前記液体槽は、前記台車本体に載置される底部に前記液体の流出を抑制するシール部を有する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の自動車衝突模擬試験用台車。
【請求項6】
前記台車本体は、前記試験体を装着するための装着穴を有し、
前記装着穴は、前記台車本体を貫通しない状態で設けられる
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の自動車衝突模擬試験用台車。
【請求項7】
前記液体槽は、前記台車本体のうち前記試験体が載置される載置面に直交する方向に移動可能である
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の自動車衝突模擬試験用台車。
【請求項8】
前記台車本体のうち前記試験体が載置される載置面上の所定の中心軸を中心として回動するように移動可能である
請求項に記載の自動車衝突模擬試験用台車。
【請求項9】
一方向に延びるレールと、
前記レール上を移動可能な請求項1から請求項のいずれか一項に記載の自動車衝突模擬試験用台車と、
前記自動車衝突模擬試験用台車を前記一方向に打ち出す発射装置と、
前記自動車衝突模擬試験用台車の前記液体槽に前記液体が供給されるように液体供給部を制御する制御装置と
を備える自動車衝突模擬試験装置。
【請求項10】
前記自動車衝突模擬試験用台車の前記台車本体に載置される前記試験体の温度を検出する温度検出部を更に備え、
前記制御装置は、前記温度検出部により検出された前記試験体の温度が閾値以上となる場合に前記液体が供給されるように制御する
請求項に記載の自動車衝突模擬試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車衝突模擬試験用台車及び自動車衝突模擬試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車衝突模擬試験装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載の自動車衝突模擬試験装置は、試験体を搭載可能であり、水平な前後方向に沿ったレール上を移動する台車と、当該台車に向けてピストンを打ち出し可能な発射装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-002699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、電気自動車等に使用されるバッテリ等を試験体として衝突模擬試験が実施される場合がある。このようなバッテリは、衝撃を受けると発熱又は発火の可能性がある。台車上で試験体が発熱又は発火した場合、速やかに試験体を冷却又は消火することが求められる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、載置される試験体を速やかに冷却又は消火することが可能な自動車衝突模擬試験用台車及び自動車衝突模擬試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る自動車衝突模擬試験用台車は、レール上を移動可能な台車本体と、前記台車本体に設けられ、前記台車本体に載置される試験体を収容する収容部を有し、前記試験体を収容した状態で前記収容部に液体を保持可能な液体槽とを備える。
【0007】
本開示に係る自動車衝突模擬試験装置は、一方向に延びるレールと、前記レール上を移動可能な上記の自動車衝突模擬試験用台車と、前記自動車衝突模擬試験用台車を前記一方向に打ち出す発射装置と、前記自動車衝突模擬試験用台車の前記液体槽に前記液体が供給されるように液体供給部を制御する制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、載置される試験体を速やかに冷却又は消火することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る自動車衝突模擬試験装置の一例を示す概略構成図である。
図2図2は、スレッドを左方から見た場合の一例を示す図である。
図3図3は、スレッドを上方から見た場合の一例を示す図である。
図4図4は、スレッドを後方から見た場合の一例を示す図である。
図5図5は、液体槽の底部の一例を示す図である。
図6図6は、自動車衝突模擬試験装置の動作の手順の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第2実施形態に係るスレッドの一例を示す概略構成図である。
図8図8は、スレッドの液体槽を収容位置に配置した状態を示す図である。
図9図9は、変形例に係るスレッドの一例を示す概略構成図である。
図10図10は、スレッドの液体槽を収容位置に配置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る自動車衝突模擬試験用台車及び自動車衝突模擬試験装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。本実施形態では、発射装置20によるスレッド10の打ち出し方向を前後方向の後方とし、後方の反対方向を前方とする。また、後方から前方を見た場合の左右を左右方向とし、左手方向を左方、右手方向を右方とする。また、水平面に直交する方向を上下方向とし、上側を上方、下側を下方とする。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る自動車衝突模擬試験装置100の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、自動車衝突模擬試験装置100は、スレッド(自動車模擬試験用台車)10と、発射装置20と、レール部30と、制御装置60とを備えている。
【0012】
図2は、スレッド10を左方から見た場合の一例を示す図である。図3は、スレッド10を上方から見た場合の一例を示す図である。図4は、スレッド10を後方から見た場合の一例を示す図である。図2から図4に示すように、スレッド10は、スレッド本体(台車本体)11と、スライダ12と、液体槽13と、液体供給部14と、排出部15と、撮影部16とを備えている。
【0013】
スレッド本体11は、所定厚さを有する板材を有する骨組材である。スレッド本体11は、上面に試験体17を搭載可能となっている。試験体17は、例えば自動車に搭載されるリチウム電池等のバッテリである。なお、スレッド本体11は、試験体17として、例えば骨格のみを有する自動車、所謂、ホワイトボディであって、シート、ステアリング、エアバッグ、シートベルトなどの装備品がダミーと共に装着されてもよい。
【0014】
試験体17には、例えば当該試験体17の温度を検出する温度検出部64が設けられる。なお、温度検出部64は、例えば赤外線カメラ等により試験体17を撮影し、撮影データを解析して温度を検出する等、非接触で試験体17の温度を検出可能な構成であってもよい。
【0015】
スレッド本体11は、下面に連結部11j(図4参照)を有する。連結部11jは、スレッド本体11の下方に突出した状態で、後述するチェーン32aに連結される。スレッド本体11は、連結部11jがチェーン32aに対して連結されることで、チェーン32aと一体で移動可能となる。
【0016】
スライダ12は、スレッド本体11の底面に配置される。スライダ12は、レール部30の2本のレール31上を滑りながら移動する。スライダ12は、例えばスレッド本体11の底面において4つの角部に対応する位置に1つずつ配置されるが、これに限定されない。
【0017】
液体槽13は、スレッド本体11に設けられる。液体槽13は、例えば矩形の筒状であり、頂部13mと底部13nとが開口された構成である。液体槽13は、矩形の筒状に限定されず、試験体17を収容し液体Wを保持可能な形状であれば、円筒状、多角筒状等の他の形状であってもよい。液体槽13は、不図示の固定部によりスレッド本体11に固定される。
【0018】
液体槽13は、内部に収容部13vを有する。液体槽13は、収容部13vが試験体17を収容する収容位置P1に配置される。液体槽13は、底部13nがスレッド本体11に載置された状態で配置される。本実施形態において、底部13nとスレッド本体11との間は、液体槽13の自重により閉塞された状態となる。液体槽13は、試験体17を収容した状態で収容部13vに液体Wを保持可能である。
【0019】
液体供給部14は、液体槽13の収容部13vに液体Wを供給する。液体供給部14は、供給源から配管を介して収容部13vに液体Wを供給する。液体Wの供給源は、例えばスレッド本体11に設けられてもよいし、スレッド本体11の外部に設けられてもよい。液体Wは、試験体17を冷却又は消火可能な液体であればよい。このような液体Wとしては、例えば水であってもよいし、水等の溶媒に消火用の薬剤を混合させた液体であってもよい。
【0020】
排出部15は、液体槽13に保持される液体Wのうち所定の液位を超える部分を排出する。排出部15は、例えば配管であり、液体槽13の所定の高さ位置に接続される。排出部15は、例えばレール31の下側の凹部の底面35に形成される排液溝35aに液体Wを排出する。
【0021】
撮影部16は、試験を行う試験体17を撮影する。撮影部16は、撮影したデータを制御装置60に送信する。撮影部16は、例えば液体槽13に取り付けられる。この場合、撮影部16は、液体槽13のうち排出部15が設けられる高さ位置よりも高い位置に取り付けられる。なお、撮影部16が液体槽13の外部に配置され、当該撮影部16から試験体17を撮影するための窓部が液体槽13に設けられた構成としてもよい。
【0022】
発射装置20は、装置本体21と、ピストンロッド22とを有する。装置本体21は、例えば油圧によりピストンロッド22を駆動する油圧機構を有する。ピストンロッド22は、装置本体21の駆動によって前後方向に移動し、スレッド本体11に対して後方に加速度を付与する。
【0023】
レール部30は、上述の2本のレール31を有する。レール31は、スレッド本体11を案内する。レール31は、エアパレット33に接続される。エアパレット33は、レール31にそれぞれ接続される接続レール34を有する。エアパレット33は、接続レール34上にスレッド本体11を載置した状態で外部との間で搬送可能である。また、エアパレット33の後方には、ストッパ36が配置される。ストッパ36は、スレッド本体11の後方への移動を規制する。
【0024】
制御装置60は、自動車衝突模擬試験装置100の各部を統括的に制御する。制御装置60は、発射装置制御部61と、スレッド制御部62と、液体供給制御部63とを有する。発射装置制御部61は、発射装置20の装置本体21の動作を制御する。スレッド制御部62は、スレッド10の各動作を制御する。
【0025】
液体供給制御部63は、例えば入力装置65に所定の入力操作が行われた場合、又は試験体17の温度を検出する温度検出部64(図1参照)の検出結果が閾値以上となる場合等に、液体槽13に液体Wが供給されるように液体供給部14を制御する。制御装置60には、例えば作業者が自動車衝突模擬試験装置100を操作したり、情報の入力を行ったりするための入力装置65が接続される。
【0026】
図5は、液体槽13の底部13nの一例を示す図である。液体槽13の底部13nには、シール部13pが設けられる。シール部13pは、底部13nの周方向の1周に亘って環状に設けられる。シール部13pは、底部13nにおいて二重環状に配置される。シール部13pは、例えば水密パッキン等が用いられる。
【0027】
底部13nは、内側のシール部13pと外側のシール部13pとの間に、凹部13sを有する。凹部13sは、例えば内側のシール部13pから液体が漏れ出される場合に、当該漏れ出された液体を収容可能である。このように、二重環状のシール部13pと凹部13sとが設けられるため、収容部13vに保持される液体の漏出が十分に抑制される。
【0028】
また、図5に示すように、スレッド本体11は、試験体17を装着するための装着穴11aを有する。装着穴11aは、スレッド本体11に1箇所以上配置される。装着穴11aは、スレッド本体11を貫通しない状態で設けられる。つまり、図5に示す例では、装着穴11aは、底部11bを有する構成である。この構成により、収容部13vに液体を保持させる際、液体がスレッド本体11の装着穴11aから漏出することを回避できる。
【0029】
次に、上記のように構成された自動車衝突模擬試験装置100の動作を説明する。図6は、自動車衝突模擬試験装置100の動作の手順の一例を示すフローチャートである。図6に示すように、まず、試験体17をスレッド10のスレッド本体11に載置し、試験体17を収容するように液体槽13をスレッド本体11に配置する(ステップS10)。その後、スレッド10を開始位置に配置させる(ステップS20)。
【0030】
発射装置制御部61は、発射装置20の装置本体21を制御し、開始位置に配置されるスレッド本体11に対して後方に加速度を付与することで、スレッド本体11を打ち出す(ステップS30)。スレッド本体11は、ブレーキ装置のブレーキピストンによりレール31が上下からクランプされた状態で後方に移動する。このスレッド本体11は、ブレーキパッドとレール31との間の摩擦により、徐々に速度が低下して停止する。
【0031】
打ち出しの衝撃により、例えばスレッド本体11に搭載される試験体17が発熱又は発火する場合がある。例えば発熱又は発火を確認した作業者により入力装置65に所定の入力操作が行われた場合、又は試験体17の温度を検出する温度検出部64(図1参照)の検出結果が閾値以上となる場合に、(ステップS40のYes)、制御装置60は、液体槽13の収容部13vに液体Wを供給するための動作を行う。
【0032】
具体的には、液体供給制御部63は、液体供給部14から液体槽13の収容部13vに液体Wを供給するように制御する(ステップS50)。この制御により、供給された液体Wが収容部13vに貯留され、当該液体Wにより試験体17が冷却又は消火される。液体Wの液位が排出部15の高さ位置まで到達した場合、液体Wが排出部15から順次排出される。このため、液体Wが液体槽13から溢れ出すことを抑制できる。液体Wが供給され、一方、発熱又は発火等が確認されず、作業者による入力操作が行われない場合(ステップS40のNo)、試験を終了してもよい。
【0033】
以上のように、本実施形態に係るスレッド10は、レール31上を移動可能なスレッド本体11と、スレッド本体11に設けられ、スレッド本体11に載置される試験体17を収容する収容部13vを有し、試験体17を収容した状態で収容部13vに液体Wを保持可能な液体槽13とを備える。
【0034】
また、本実施形態に係る自動車衝突模擬試験装置100は、一方向に延びるレール31と、レール31上を移動可能な上記のスレッド10と、スレッド10を一方向に打ち出す発射装置と、スレッド10の液体槽13に液体Wが供給されるように液体供給部14を制御する制御装置60とを備える。
【0035】
従って、スレッド10上で試験体17が発熱又は発火した場合、液体槽13の収容部13vに液体Wを供給し、収容部13vに液体Wを保持させることで、当該液体Wにより速やかに試験体17を冷却又は消火することができる。
【0036】
本実施形態に係るスレッド10において、液体槽13の収容部13vに液体Wを供給する液体供給部14を更に備える。従って、液体供給部14から液体槽13の収容部13vに液体Wを速やかに供給することができる。
【0037】
本実施形態に係るスレッド10において、液体槽13は、収容部13vが試験体17を収容する収容位置P1に設置される。従って、収容部13vが試験体17を収容した状態で試験を行うことができるため、スレッド10上で試験体17が発熱又は発火した場合、液体Wにより速やかに試験体17を冷却又は消火することができる。
【0038】
本実施形態に係るスレッド10において、液体槽13は、液体槽13に保持される液体Wのうち所定の液位を超える部分を排出する排出部15を有する。従って、液体槽13から液体Wが溢れ出すことを抑制できる。
【0039】
本実施形態に係るスレッド10において、液体槽13は、スレッド本体11に載置される底部13nに液体Wの流出を抑制するシール部13pを有する。従って、液体槽13から液体Wが漏れ出すことを抑制できる。
【0040】
本実施形態に係るスレッド10において、スレッド本体11は、試験体17を装着するための装着穴11aを有し、装着穴11aは、スレッド本体11を貫通しない状態で設けられる。従って、液体Wがスレッド本体11の装着穴11aを貫通して漏れ出すことを回避できる。
【0041】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を説明する。上記した第1実施形態では、液体槽13が試験体17を収容する収容位置P1に配置される構成を例に挙げて説明した。これに対して、第2実施形態では、液体槽13Aが、スレッド本体11のうち試験体17を収容する収容位置P1と、試験体17を収容しない待機位置P2との間で移動可能な構成である。以下、具体的に説明する。
【0042】
図7は、第2実施形態に係るスレッド10Aの構成を示す図である。図7では、排出部15の図示を省略している。図7に示すように、スレッド10Aは、液体槽13Aがスレッド本体11の収容位置P1と、試験体17を収容しない待機位置P2との間で移動可能となっている。図7の例において、液体槽13Aは、スレッド本体11のうち試験体17が載置される載置面11fに直交する方向(上下方向)に移動可能である。
【0043】
スレッド本体11には、液体槽13Aの移動を案内するガイド部材18が設けられる。ガイド部材18は、載置面11fに直交する方向(上下方向)に延びた状態で配置される。また、スレッド本体11には、液体槽13Aを移動させる駆動部19が設けられる。駆動部19は、例えばエアシリンダ等が用いられる。駆動部19は、制御装置60のスレッド制御部62等の制御により上下方向に伸縮可能である。駆動部19は、スレッド本体11と液体槽13Aの接続部18aとの間に接続される。駆動部19が上下方向に伸縮することにより、液体槽13Aが上下方向に昇降可能となっている。
【0044】
また、スレッド本体11には、撮影部16Aが設けられる。撮影部16Aは、例えば試験体17の側方(前方、後方、左方又は右方)に配置される。撮影部16Aは、液体槽13Aが待機位置P2に配置される場合には、スレッド本体11と液体槽13Aとの間の部分を介して試験体17を撮影可能である。また、撮影部16Aは、液体槽13Aが収容位置P1に配置される場合には、例えば液体槽13Aに窓部等を形成しておくことで、当該窓部を介して試験体17を撮影可能である。
【0045】
図8は、スレッド10Aの液体槽13Aを収容位置P1に配置した状態を示す図である。図7に示す状態において、発熱又は発火を確認した作業者により入力装置65に所定の入力操作が行われた場合、又は、試験体17の温度を検出する温度検出部64(図1参照)の検出結果が閾値以上となる場合に、制御装置60は、液体槽13Aに液体が供給されるように制御する。
【0046】
この際、まず、制御装置60のスレッド制御部62は、液体槽13Aが待機位置P2から収容位置P1に移動するように駆動部19を制御する。駆動部19の駆動により、液体槽13Aが下降し、収容位置P1に載置される。このとき、スレッド制御部62は、液体槽13Aの底部13nをスレッド本体11側に押し付けた状態を維持するように駆動部19を制御する。この制御により、底部13nとスレッド本体11とのシール性が高められる。液体槽13Aを移動させた後、液体供給制御部63は、液体供給部14から液体槽13Aの収容部13vに液体Wを供給するように制御する。この制御により、収容部13vに液体Wが保持され、当該保持された液体Wにより試験体17が冷却又は消火される。
【0047】
このように、第2実施形態に係るスレッド10Aにおいて、液体槽13Aは、スレッド本体11のうち試験体17を収容する収容位置P1と、試験体17を収容しない待機位置P2との間で移動可能である。従って、液体槽13Aが試験体17を収容しない状態で試験を行うことができる。
【0048】
また、第2実施形態に係るスレッド10Aにおいて、液体槽13Aは、スレッド本体11のうち試験体17が載置される載置面11fに直交する方向に移動可能である。従って、液体槽13Aを載置面11fに直交する方向に移動させることで、収容位置P1と待機位置P2との間で液体槽13Aの配置を容易に切り替えることができる。
【0049】
図9は、変形例に係るスレッド10Bの構成を示す図である。第2実施形態において、図7及び図8に示す例では、液体槽13Aを載置面11fに直交する方向に移動させる構成を示したが、これに限定されない。図9に示すように、スレッド10Bにおいて、液体槽13Bは、スレッド本体11のうち試験体17が載置される載置面11f上の所定の中心軸AX1を中心として回動するように移動可能な構成であってもよい。
【0050】
液体槽13Bは、底部13nの一辺と載置面11fとが接する直線部分を中心軸AX1として、当該中心軸AX1を中心として回動することで、収容位置P1と待機位置P2との間で移動可能である。
【0051】
スレッド本体11には、液体槽13Bを移動させる駆動部19Bが設けられる。駆動部19Bは、例えばエアシリンダ等が用いられる。駆動部19Bは、制御装置60のスレッド制御部62等の制御により伸縮可能であり、回動軸AX2を中心として回動可能である。駆動部19Bは、リンク機構19Lを介して、スレッド本体11と液体槽13Bの壁部との間に接続される。駆動部19Bが伸縮及び回動軸AX2を中心として回動することにより、リンク機構19Lを介して液体槽13Bが中心軸AX1を中心として回動可能となっている。
【0052】
また、スレッド本体11には、撮影部16Bが設けられる。撮影部16Bは、撮影部16Aと同様、例えば試験体17の側方(前方、後方、左方又は右方)に配置される。撮影部16Bは、液体槽13Bが待機位置P2に配置される場合には、スレッド本体11と液体槽13Bとの間の部分を介して試験体17を撮影可能である。また、撮影部16Bは、液体槽13Bが収容位置P1に配置される場合には、例えば液体槽13Bに窓部等を形成しておくことで、当該窓部を介して試験体17を撮影可能である。
【0053】
図10は、スレッド10Bの液体槽13Bを収容位置P1に配置した状態を示す図である。図9に示す状態において、発熱又は発火を確認した作業者により入力装置65に所定の入力操作が行われた場合、又は、試験体17の温度を検出する温度検出部64(図1参照)の検出結果が閾値以上となる場合に、制御装置60は、液体槽13Bに液体が供給されるように制御する。
【0054】
この際、まず、制御装置60のスレッド制御部62は、液体槽13Bが待機位置P2から収容位置P1に移動するように駆動部19Bを制御する。駆動部19Bの駆動により、液体槽13Bが回動し、収容位置P1に載置される。このとき、スレッド制御部62は、液体槽13Bの底部13nをスレッド本体11側に押し付けた状態を維持するように駆動部19Bを制御する。この制御により、底部13nとスレッド本体11とのシール性が高められる。液体槽13Bを移動させた後、液体供給制御部63は、液体供給部14から液体槽13Bの収容部13vに液体Wを供給するように制御する。この制御により、収容部13vに液体Wが保持され、当該保持された液体Wにより試験体17が冷却又は消火される。
【0055】
このように、スレッド10Bにおいて、液体槽13Bは、スレッド本体11のうち試験体17が載置される載置面11f上の所定の中心軸AX1を中心として回動するように移動可能である。従って、中心軸AX1を中心として液体槽13Bを回動させることで、収容位置P1と待機位置P2との間で液体槽13Bの配置を容易に切り替えることができる。
【0056】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、液体槽13に液体Wを供給する液体供給部14がスレッド10に設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えばスレッド10の外部に液体供給部が配置され、放水等により液体槽13に液体を供給する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
10,10A,10B スレッド
11 スレッド本体
11a 装着穴
11b,13n 底部
11f 載置面
11j 連結部
12 スライダ
13,13A,13B 液体槽
13m 頂部
13p シール部
13s 凹部
13v 収容部
14 液体供給部
15 排出部
16,16A,16B 撮影部
17 試験体
18 ガイド部材
18a 接続部
19,19B 駆動部
19L リンク機構
20 発射装置
21 装置本体
30 レール部
31 レール
32a チェーン
35 底面
35a 排液溝
60 制御装置
61 発射装置制御部
62 スレッド制御部
63 液体供給制御部
64 温度検出部
65 入力装置
100 自動車衝突模擬試験装置
AX1 中心軸
AX2 回動軸
P1 収容位置
P2 待機位置
W 液体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10