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特許7604254リモート触診サポートシステム、情報処理装置、およびリモート触診サポート方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】リモート触診サポートシステム、情報処理装置、およびリモート触診サポート方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20241216BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G16H50/20
G06F3/01 510
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021016767
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119551
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【弁理士】
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】三上 誠二
(72)【発明者】
【氏名】高木 真吾
(72)【発明者】
【氏名】山地 圭
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 清人
(72)【発明者】
【氏名】室井 規雅
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 寛史
(72)【発明者】
【氏名】奥山 哲志
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-530886(JP,A)
【文献】国際公開第2015/121957(WO,A1)
【文献】特開2002-085353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の触覚センサでそれぞれ計測され、患者の診察対象部位に加わった圧力を示す複数の触診データを作成するデータ作成部と、前記複数の触診データを送信する送信部と、を有する患者用情報処理装置と、
前記複数の触診データを受信する受信部と、前記複数の触診データに示された前記複数の触覚センサそれぞれの計測結果に基づいて、前記診察対象部位に対する触診方法を、複数の触診方法の中から選択するデータ処理部と、を有する医師用情報処理装置と、
を備えるリモート触診サポートシステム。
【請求項2】
記複数の触覚センサが、前記診察対象部位を触る手に装着され
記データ処理部は、前記複数の触診データをしきい値と比較した結果に基づいて前記触診方法を、前記複数の触診方法の中から選択する、請求項1に記載のリモート触診サポートシステム。
【請求項3】
前記データ処理部は、前記複数の触診データを周波数変換した変換データを作成し、
前記医師用情報処理装置は、前記変換データを表示する表示部をさらに有する、請求項1または2に記載のリモート触診サポートシステム。
【請求項4】
前記患者用情報処理装置は、触診を行った時に前記患者から発せられた音声を録音する録音部をさらに有し、
前記データ作成部は、前記録音部に録音された音声に基づいて録音データを作成し、
前記送信部は、前記複数の触診データと同時に前記録音データを前記医師用情報処理装置へ送信し、
前記データ処理部は、前記録音データの音量に基づいて圧痛音声を検出し、
前記表示部は、前記圧痛音声が検出された録音データに関連する触覚センサの装着箇所を強調表示する、請求項3に記載のリモート触診サポートシステム。
【請求項5】
前記送信部は、触診を行った時に計測された前記診察対象部位の位置を示す診察位置データを前記複数の触診データと同時に前記医師用情報処理装置へ送信し、
前記医師用情報処理装置は、前記診察位置データおよび前記複数の触診データを対応付けて格納する記憶部をさらに有する、請求項3または4に記載のリモート触診サポートシステム。
【請求項6】
前記記憶部は、患者側の位置座標系で計測された前記診察位置データと、医師側の位置座標系で計測され、前記診察対象部位と同じ部位の位置を示す観察位置データと、を対応付けて格納し、
前記データ処理部は、前記観察位置データに基づいて前記診察対象部位を特定し、特定した診察対象部位の変換データを前記記憶部から読み出す、請求項5に記載のリモート触診サポートシステム。
【請求項7】
前記データ処理部は、前記診察位置データに基づいて前記複数の触診データをプロットした分布図における前記複数の触診データの密度に基づいて、前記触診データの数の適否を判定する、請求項5または6に記載のリモート触診サポートシステム。
【請求項8】
触診を撮影する撮像部をさらに備え、
前記データ作成部は、前記撮像部の撮像内容を示す画像データを作成し、
前記送信部は、前記画像データを前記複数の触診データと同時に前記医師用情報処理装置へ送信する、請求項1から7のいずれか1項に記載のリモート触診サポートシステム。
【請求項9】
複数の触覚センサでそれぞれ計測され、患者の診察対象部位に加わった圧力を示す複数の触診データを受信する受信部と、
前記複数の触診データに示された前記複数の触覚センサそれぞれの計測結果に基づいて、前記診察対象部位に対する触診方法を、複数の触診方法の中から選択するデータ処理部と、
を備える情報処理装置。
【請求項10】
患者用情報処理装置が、複数の触覚センサでそれぞれ計測され、患者の診察対象部位に加わった圧力を示す複数の触診データを作成し、
前記患者用情報処理装置が、前記複数の触診データを医師用情報処理装置送信し、
記医師用情報処理装置前記複数の触診データを受信し、
前記医師用情報処理装置が、前記複数の触診データに示された前記複数の触覚センサそれぞれの計測結果に基づいて、前記診察対象部位に対する触診方法を、複数の触診方法の中から選択する、リモート触診サポート方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、リモート触診サポートシステム、情報処理装置、およびリモート触診サポート方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者の増加や、新型ウイルスの感染防止の観点から、オンライン診療の需要が高まっている。オンライン診療では、例えば腫瘍等の病気を発見するために、リモート触診が必要な場合がある。リモート触診では、患者の診察対象部位に加わった圧力を示す触診データを医師側へ送信する。医師は、触診データを見て診断する。
【0003】
しかし、触診データは、医師が直接患者に触れたデータではない。そのため、触診データが医師の求める触診方法で取得されているか判断できない。したがって、データの信憑性に不安が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001‐100879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、触診データの信憑性を高めることができるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るリモート触診サポートシステムは、患者用情報処理装置および医師用情報処理装置を備える。患者用情報処理装置は、患者の診察対象部位に加わった圧力を示す触診データを作成するデータ作成部と、触診データを送信する送信部と、を有する。医師用情報処理装置は、触診データを受信する受信部と、触診データを処理した結果に基づいて触診方法を特定するデータ処理部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係るリモート触診サポートシステムの構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係るリモート触診サポートシステム1の動作手順を示すフローチャートである。
図3】位置合わせステップの手順を示すシーケンス図である。
図4】診察対象部位を指定する画像の一例を示す図である。
図5】記憶回路に格納された位置合わせデータベースの一例を示す図である。
図6】データ取得ステップの手順を示すシーケンス図である。
図7】触診方法の一例を示す図である。
図8】触診方法の他の一例を示す図である。
図9】触診データの一例を示す波形図である。
図10】送信データの構造例を示す図である。
図11】触診データをプロットした分布図である。
図12】触診方法特定ステップの手順を示すフローチャートである。
図13】深達性触診の表示画像の一例である。
図14】医師により指定された触診結果の表示画像の一例である。
図15】医師により指定された触診結果の表示画像の他の一例である。
図16】第2実施形態に係るリモート触診サポートシステムの構成を示すブロック図である。
図17】録音データの一例を示す波形図である。
図18】圧痛音声が録音された変換データを強調表示した図である。
図19】第3実施形態に係るリモート触診サポートシステムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るリモート触診サポートシステムの構成を示すブロック図である。本実施形態に係るリモート触診サポートシステム1は、患者用情報処理装置10および医師用情報処理装置20を有する。患者用情報処理装置10および医師用情報処理装置20は、通信ネットワーク100を介して互いに通信可能に接続される。また、患者用情報処理装置10は、例えば患者の自宅や介護施設等に設置される。一方、医師用情報処理装置20は病院や診療所等に設置される。以下、各装置の構成について説明する。
【0010】
まず、患者用情報処理装置10の構成を説明する。図1に示すように、患者用情報処理装置10は、受信回路11と、送信回路12と、入力回路13と、表示回路14と、制御回路15と、を有する。
【0011】
受信回路11は、医師用情報処理装置20から通信ネットワーク100を介して種々のデータを受信する。送信回路12は、制御回路15で作成された種々のデータを、通信ネットワーク100を介して医師用情報処理装置20へ送信する。
【0012】
入力回路13は、患者または介護者からの各種指令を受け付ける。入力回路13には、キーボード、マウス、タッチパネル等が利用可能である。入力回路13は、受け付けた各種指令に対応する出力信号を、制御回路15に送出する。
【0013】
表示回路14は、患者の診察対象部位を触る触診に関する種々の画像を表示する。例えば、表示回路14は、医師の操作によって医師用情報処理装置20から指示された触診の診察対象部位や触診方法等を示す画像を表示する。
【0014】
表示回路14は、表示インタフェース回路と表示機器とを有する。表示インタフェース回路は、表示像を表すデータ(表示情報)を映像信号に変換する。表示信号は、表示機器に供給される。表示機器は、表示対象を表す映像信号を表示する。表示機器には、種々の任意の1又は2以上のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。例えば表示機器として、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ又はプラズマディスプレイが適宜利用可能である。
【0015】
制御回路15は、ハードウェア資源として、Central Processing Unit(CPU)、Micro Processing Unit(MPU)、Graphics Processing Unit(GPU)等のプロセッサと、Read Only Memory(ROM)やRandom Access Memory(RAM)等のメモリとを有する。制御回路15は、ROMに格納されたプログラムに基づいて、データ作成機能151を実行する。
【0016】
データ作成機能151は、触覚センサ30の計測結果に基づいて触診データおよび位置データを作成する。触覚センサ30は、患者や介護者等の触診者に装着される。触診者が、診察対象部位を触診すると圧力が発生する。触覚センサ30は、触診で発生した圧力を計測する。触覚センサ30には、低周波(200Hz以下)の圧力振動を感知して電気信号に変換可能な圧電素子が設けられている。データ作成機能151は、この電気信号に基づいて触診データを作成する。
【0017】
また、触覚センサ30には、発信器も設けられている。発信器は、触覚センサ30を識別するセンサIDを含んだ識別信号を発信する。この識別信号は、受信回路11で受信される。識別信号の強度や受信方向は、触覚センサ30の位置、換言すると診察対象部位の位置に応じて異なる。そのため、データ作成機能151は、識別信号の受信強度や受信方向に基づいて診察対象部位の位置を示す診察位置データを作成する。
【0018】
表示制御機能152は、表示回路14の表示動作を制御する。また、表示制御機能152は、表示回路14に表示される画像データを作成する。
次に、医師用情報処理装置20の構成を説明する。図1に示すように、医師用情報処理装置20は、受信回路21と、送信回路22と、入力回路23と、表示回路24と、記憶回路25と、制御回路26と、を有する。
【0019】
受信回路21は、患者用情報処理装置10から通信ネットワーク100を介して触診データなど種々のデータを受信する。送信回路22は、通信ネットワーク100を介して、医師の触診に関する指示内容など種々のデータを患者用情報処理装置10へ送信する。
【0020】
入力回路23は、医師からの各種指令を受け付ける。入力回路23には、入力回路13と同様に、キーボード、マウス、タッチパネル等が利用可能である。入力回路23は、受け付けた各種指令に対応する出力信号を、制御回路26に送出する。
【0021】
表示回路24は、触診に関する種々の画像を表示する表示部の一例である。例えば、表示回路24は、患者用情報処理装置10から伝送された触診に関するデータを画像表示する。表示回路24は、表示回路14と同様に、表示インタフェース回路と表示機器とを有する。表示インタフェース回路は、表示像を表すデータ(表示情報)を映像信号に変換する。表示信号は、表示機器に供給される。表示機器は、表示対象を表す映像信号を表示する。表示機器には、種々の任意の1又は2以上のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。例えば表示機器として、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ又はプラズマディスプレイが適宜利用可能である。
【0022】
記憶回路25には、患者側と医師側の位置合わせに必要なデータ、患者用情報処理装置10から伝送されたデータ、表示回路24に表示される画像データ等が格納される。
【0023】
制御回路26は、制御回路15と同様に、ハードウェア資源として、プロセッサおよびメモリを有する。制御回路26は、メモリに格納されたプログラムに基づいて、データ処理機能261と、表示制御機能262と、触診指示機能263と、を実行する。
【0024】
データ処理機能261は、記憶回路25に格納されたデータを処理する。データ処理機能261によるデータ処理の内容については後述する。表示制御機能262は、表示回路24の表示動作を制御する。また、表示制御機能262は、表示回路24に表示される画像データを作成する。触診指示機能263は、診察対象部位や触診方法等の触診に関する種々の指示を表示回路24に表示させたり、患者用情報処理装置10に伝送したりする。
【0025】
以下、上述したリモート触診サポートシステム1の動作について図面を参照して説明する。
【0026】
図2は、本実施形態に係るリモート触診サポートシステム1の動作手順を示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態では、まず、リモート触診サポートシステム1は、患者側の位置座標系(x,y,z)と、医師側の位置座標系(a,b,c)との間で触診の診察対象部位の位置合わせを行う(ステップS1)。次に、リモート触診サポートシステム1は、触覚センサ30の計測結果に基づいて診察対象部位の触診データを取得する(ステップS2)。最後に、リモート触診サポートシステム1は、触診データに基づいて、触診方法を特定する(ステップS3)。以下、図面を参照しながら、各ステップについて説明する。
【0027】
図3は、位置合わせステップ(ステップS1)の手順を示すシーケンス図である。位置合わせステップでは、まず、医師用情報処理装置20において、制御回路26の触診指示機能263が、表示制御機能262に対して、診察対象部位の表示を指示する(ステップS11)。表示制御機能262は、触診指示機能263に指定された診察対象部位を表示回路24に表示させる。
【0028】
図4は、診察対象部位を指定する画像の一例を示す図である。図4に示すように、医師用情報処理装置20の表示回路24には、頭頂部を診察対象部位Pとして指定する画像が表示される。この場合、医師は、自身の頭頂部を手で触る。このとき、医師の手には、発信器(不図示)が装着されており、発信器から発信された信号は、受信回路21で受信されて制御回路26のデータ処理機能261に入力される。
【0029】
上記信号の受信強度や受信方向は、上記発信器の位置に応じて異なる。そのため、データ処理機能261は、この信号の受信強度や受信方向に基づいて、医師が触った部位の位置を示す観察位置データを作成する(ステップS12)。観察位置データには、医師が触った部位の位置が、医師側の位置座標系(a,b,c)で特定されている。
【0030】
続いて、送信回路22が、触診指示機能263の制御に基づいて、通信ネットワーク100を介して患者用情報処理装置10へ診察対象部位の指示を送信する(ステップS13)。患者用情報処理装置10において、この指示は、受信回路11で受信されて制御回路15に入力される。
【0031】
制御回路15では、表示制御機能152が、図4と同様に、触診指示機能263によって指示された診察対象部位を示す画像を表示回路14に表示させる。なお、患者用情報処理装置10と医師用情報処理装置20との間で映像通信が可能な場合には、送信回路22は、医師が口頭で診察対象部位を指示した映像データを患者用情報処理装置10へ送信してもよい。
【0032】
診察対象部位を示す画像が表示回路14に表示されると、触診者(患者または介護者)は、自身の手に装着された触覚センサ30で診察対象部位を触る。このとき、触覚センサ30は識別信号を発信する。識別信号は、受信回路11で受信されて制御回路15へ入力される。制御回路15のデータ作成機能151は、識別信号の受信強度や受信方向に基づいて、診察対象部位の位置を示す診察位置データを作成する(ステップS14)。診察位置データには、触診者が触った診察対象部位の位置が、患者側の位置座標系(x,y,z)で特定されている。
【0033】
続いて、送信回路12が、通信ネットワーク100を介して医師用情報処理装置20へ診察位置データを送信する(ステップS15)。医師用情報処理装置20において、診察位置データは、受信回路21で受信されて記憶回路25に格納される(ステップS16)。その後、ステップS11~ステップS16の動作は、全ての診察対象部位の診察位置データおよび観察位置データを取得するまで繰り返される。
【0034】
図5は、記憶回路25に格納された位置合わせデータベースの一例を示す図である。図5に示す位置合わせデータベースは、各診察対象部位の位置を、患者側の位置座標系(x,y,z)で特定される診察位置データと、医師側の位置座標系(a,b,c)で特定される観察位置データの両方で示し、2つの位置データは互いに対応付けられている。また、各位置座標系では、頭頂部の位置が基準位置として設定されている。この位置合わせデータベースによれば、医師側と患者側で診察対象部位の位置を同定することができる。なお、全ての診察対象部位について診察位置データおよび観察位置データを取得する必要はない。例えば、頭頂部およびつま先の診察位置データおよび観察位置データを取得し、残りの診察対象部位の位置は、各位置データの比率で計算して求めてもよい。
【0035】
次に、データ取得ステップ(ステップS2)を説明する。
【0036】
図6は、データ取得ステップの手順を示すシーケンス図である。データ取得ステップでは、まず、患者用情報処理装置10において、制御回路15のデータ作成機能151が触診データおよび診察位置データを作成する(ステップS21)。ここで、ステップS21について詳しく説明する。
【0037】
図7は、触診方法の一例を示す図である。図8は、触診方法の他の一例を示す図である。図7および図8に示すように、触診は、複数の触覚センサ30が触診者の手に装着された状態で行われる。触覚センサ30は、例えば触診者の五指と手の平に装着される。触診者は、データ取得ステップまたは上述した位置合わせステップにおいて医師から指示された触診方法で診察対象部位を触診する。例えば、診察対象部位が腹部の場合、表在性触診および深達性触診の2種類の触診方法がある。
【0038】
表在性触診は、図7に示すように、呼吸によって腹壁が持ち上がるのを手の平で感じ取れるように軽く触れる触診方法である。一方、深達性触診は、図8に示すように、片方の指や手は感じることに専念し、もう片方の手で上から腹部を押す触診方法である。
【0039】
触診者が、表在性触診または深達性触診を行うと、各触覚センサ30の識別信号および各触覚センサ30で計測された圧力が、受信回路11で受信されてデータ作成機能151に入力される。データ作成機能151は、この圧力に基づいて触診データを作成する。
【0040】
図9は、触診データの一例を示す波形図である。図9では横軸は時間を示し、縦軸は触覚センサ30で計測された圧力を示す。触診データは、患者の診察対象部位に加わった圧力を示す。
【0041】
また、データ作成機能151は、識別信号の受信強度や受信方向に基づいて診察位置データも作成する。これにより、ステップS21が終了する。続いて、図6に示すように、送信回路12が、データ作成機能151で作成された触診データおよび診察位置データを医師用情報処理装置20へ同時に送信する(ステップS22)。
【0042】
図10は、送信データの構造例を示す図である。図10に示すように、触診データおよび診察位置データは、各触覚センサ30のセンサIDをヘッダとして同時に送信される。センサIDは、各触覚センサ30から発信される識別信号に含まれている。センサIDによって、各触覚センサ30の触診データおよび診察位置データを識別することができる。
【0043】
患者用情報処理装置10から送信された触診データおよび診察位置データは、医師用情報処理装置20の受信回路21で受信され(ステップS23)、記憶回路25に格納される(ステップS24)。記憶回路25は、センサID、診察位置データ、および触診データを計測時刻に対応付けた時系列データとして格納する。
【0044】
続いて、制御回路26のデータ処理機能261が、触診データを周波数変換した変換データを作成する(ステップS25)。ステップS25では、データ処理機能261は、触診データをフーリエ変換することによって変換データを作成する。変換データは、周波数(Hz)とパワースペクトル密度(nm/Hz)とを関連付けて示す。変換データは、触診データに対応付けて記憶回路25に格納される。
【0045】
その後、ステップS21~ステップS25の動作は、触診データが十分に取得されるまで行われる。触診データ数の適否は、データ処理機能261によって判定される。ここで、図11を参照して触診データ数の適否の判定方法について説明する。
【0046】
図11は、触診データをプロットした分布図である。図11に示す分布図では、触診データが、診察対象部位を中心とする表面座標上にプロットされている。表面座標は、患者側の位置座標系(x,y,z)を用いてもよいし、医師側の位置座標系(a,b,c)を用いてもよい。医師側の位置座標系(a,b,c)を用いる場合、図5に示す位置合わせデータベースを用いて診察位置データを変換する。
【0047】
データ処理機能261は、図11に示す分布図を作成し、作成した分布図に基づいて触診データの密度を算出する。算出された密度が基準値を超えると、データ処理機能261は、触診データ数が適正であると判定する。このように、触診データの取得が終了すると、データ処理機能261は、触診方法を特定する。
【0048】
以下、触診方法特定ステップ(ステップS3)を説明する。
【0049】
図12は、触診方法特定ステップの手順を示すフローチャートである。触診方法特定ステップでは、まず、データ処理機能261は、記憶回路25に格納された各触覚センサ30で同時刻に計測された触診データ(換言すると圧力データ)をしきい値と比較する(ステップS31)。データ処理機能261は、しきい値を超えた触診データである高圧データの数をカウントする。
【0050】
続いて、データ処理機能261は、上記高圧データの数が所定数よりも多いか否かを判定する(ステップS32)。図8に示す深達性触診では、2つの手を重ね合わせて診察対象部位を押圧する触診方法であるため、高圧データが発生しやすい傾向である。一方、図7に示す表在性触診では、1つの手を診察対象部位に軽く触れる触診方法であるため、高圧データが発生しにくい傾向である。
【0051】
そのため、高圧データの数が所定数よりも多い場合には、データ処理機能261は、触診方法を深達性触診と特定する(ステップS33)。一方、高圧データの数が所定数以下である場合には、データ処理機能261は、触診方法を表在性触診と特定する(ステップS34)。
【0052】
続いて、表示制御機能262は、データ処理機能261によって特定された触診方法を表示する(ステップS35)。
【0053】
図13は、深達性触診の表示画像の一例である。図13では、高圧データとして判定された触覚センサ30の装着箇所、具体的には、人差し指と中指に装着された触覚センサ30が、他の触覚センサ30に対して強調表示されている。図13に示すように、各触覚センサ30の計測結果を装着箇所と関連付けて表示することによって、医師は、自身の要求に合った触診が患者側で行われているか確認することができる。なお、触診方法は、触診データを周波数変換した変換データを用いて特定してもよい。この場合、例えば、データ処理機能261は、各触覚センサ30の同じ周波数領域におけるパワースペクトル密度を比較した結果に基づいて触診方法を特定する。
【0054】
全ての診察対象部位について、位置合わせステップ(ステップS1)、データ取得ステップ(ステップS2)、および触診方法特定ステップ(ステップS3)が終了すると、医師が、リモート触診サポートシステム1を用いて触診結果を観察する。ここで、医師による観察方法を説明する。
【0055】
医師が、上述した位置合わせステップで用いた発信器を手に装着した状態で、観察したい部位を触ると、データ処理機能261が、発信器の信号に基づいて観察位置データを作成する。
【0056】
次に、データ処理機能261は、記憶回路25に格納された位置合わせデータベース(図5参照)に基づいて、観察位置データに対応する診察対象部位を特定する。次に、表示制御機能262が、データ処理機能261によって特定された診察対象部位の変換データを記憶回路25から読み出して表示回路24に表示させる。
【0057】
図14は、医師により指定された触診結果の表示画像の一例である。図15は、医師により指定された触診結果の表示画像の他の一例である。
【0058】
図14および図15の表示画像は、画像領域R11、画像領域R12、および画像領域R13を有する。画像領域R11には、各触覚センサ30に対応する変換データの波形図が表示される。画像領域R12には、データ処理機能261によって特定された触診方法を示す画像が表示される。図14には表在性触診を示す画像が表示され、図15には深達性触診を示す画像が表示されている。画像領域R13には、画像領域R11に表示された複数の波形図のうち、医師が入力回路23へ操作することによって選択された波形の拡大図が表示されている。
【0059】
図15の画像領域R13に表示された変換データの波形図を参照すると、低周波領域でパワースペクトル密度が低下している。そのため、医師は、診察対象部位に浮腫が存在する可能性があると診断できる。なお、本実施形態では、画像領域R13に表示された変換データに対応する触診データを医師側で再現できるようにしてもよい。具体的には、医師にも触覚センサ30を装着し、この触覚センサ30に触診データに示された電気信号を入力する。この場合、医師に装着された触覚センサ30に設けられた圧電素子が、電気信号を圧力振動に変換する。これにより、医師は触診を体感できる。そのため、より高い診断精度を実現することができる。
【0060】
以上説明した本実施形態によれば、データ処理機能261によって触診方法が特定されるため、触診データが医師の求める触診方法で取得されているか判断できる。このように触診方法に応じた触診データが取得されることによって、診察対象部位の特徴を把握しやすくなる。その結果、触診データの信憑性が高くなるため、クオリティーの高いリモート触診診断が可能となる。
【0061】
また、本実施形態では、医師側と患者側で位置が同定され、触診データに基づいて触診方法が判別され、診断に必要な変換データが表示される。そのため、患者側で対象部位をどのように触診しているか医師側で目視確認しなくても触診診断できる。これにより、医師に見られたり触れられたりしたくない部位も触診することができる。
【0062】
さらに、触診時に得られたデータを記憶回路25に格納することによって、触診を再現できる。これにより、医師は、時間差をおいて所見や診断を行うことができる。
【0063】
(第2実施形態)
図16は、第2実施形態に係るリモート触診サポートシステムの構成を示すブロック図である。上述した第1実施形態に係るリモート触診サポートシステム1と同様の構成要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0064】
図16に示すように、本実施形態に係るリモート触診サポートシステム2では、患者用情報処理装置10が、新たに録音回路16を有する。録音回路16は、触診時に患者から発せられた音声を録音して制御回路15へ出力する。制御回路15では、データ作成機能151が録音データを作成する。
【0065】
図17は、録音データの一例を示す波形図である。図17に示すように、録音データは、録音回路16で録音された患者の音量の時系列変化を示す。データ作成機能151が録音データを作成すると、送信回路12が、触診データおよび診察位置データと同時に録音データを医師用情報処理装置20へ送信する。
【0066】
医師用情報処理装置20において、録音データは、受信回路21で受信され、触診データおよび診察位置データとともに記憶回路25に格納される。その後、データ処理機能261は、録音データの音量に基づいて圧痛音声を検出する。患者が触診時に痛みを感じると、患者の音声は、通常よりも大きくなる。そのため、録音データの音量が標準値よりも大きい場合、データ処理機能261は、その音量を圧痛音声と認識する。なお、圧痛音声の認識方法は特に制限されない。例えば、データ処理機能261が、録音データから「痛い」といったキーワードを検索した場合、その録音データは圧痛音声を含んでいると認識されてもよい。
【0067】
また、記憶回路25には、圧痛音声の有無を示す圧痛フラグも格納されていてもよい。さらに、表示回路24は、図18に示すように、圧痛音声が録音された変換データを強調表示してもよい。強調表示は、例えば画像領域R13の枠を特定の色(例えば赤色)で表示してもよいし、点灯表示してもよい。これにより、医者に注意を喚起することができる。
【0068】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、データ処理機能261によって触診方法が特定されるため、触診データが医師の求める触診方法で取得されているか判断できる。これにより、触診データの信憑性が高くなり、その結果、クオリティーの高いリモート触診診断が可能となる。
【0069】
さらに本実施形態によれば、触診時に圧痛を感じた時点の変換データを強調表示することによって、注視すべき患者の診断箇所を絞り込みやすくなる。その結果、診断時間を短縮することが可能となる。
【0070】
(第3実施形態)
図19は、第3実施形態に係るリモート触診サポートシステムの構成を示すブロック図である。上述した第1実施形態に係るリモート触診サポートシステム1と同様の構成要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0071】
図19に示すように、本実施形態に係るリモート触診サポートシステム3では、患者用情報処理装置10が、新たに撮像回路17を有する。撮像回路17は、カメラ等で構成され、触診時の様子を撮影して制御回路15へ出力する。制御回路15では、データ作成機能151が、撮像回路17の撮影内容を示す画像データを作成する。
【0072】
データ作成機能151が画像データを作成すると、送信回路12が、触診データおよび診察位置データと同時に画像データを医師用情報処理装置20へ送信する。医師用情報処理装置20において、画像データは、受信回路21で受信され、触診データおよび診察位置データとともに記憶回路25に格納される。
【0073】
その後、データ処理機能261は、画像データを分析して触診方法を特定する。図7および図8に示すように、表在性触診と深達性触診とでは、診察対象部位を押圧する手の動作が異なる。そのため、データ処理機能261は、触診データの分析結果だけでなく、画像データの分析結果も用いて触診方法を特定する。また、表示回路24が、画像データを表示することによって、医師は、自身の要求に合った触診が患者側で行われているか目視確認することができる。
【0074】
以上説明した本実施形態によれば、触診データだけでなく触診時の様子を撮影した画像データも用いて触診方法を特定する。そのため、より高精度に触診方法を判別することが可能となる。その結果、リモート触診診断のクオリティーをより一層向上させることが可能となる。
【0075】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0076】
1~3:リモート触診サポートシステム
10:患者用情報処理装置
12:送信回路
16:録音回路
17:撮像回路
20:医師用情報処理装置
21:受信回路
24:表示回路
25:記憶回路
30:触覚センサ
151:データ作成機能
261:データ処理機能
図1
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