(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/06 20060101AFI20241216BHJP
G03G 15/09 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G03G15/06 101
G03G15/09 A
(21)【出願番号】P 2021020827
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 智幸
(72)【発明者】
【氏名】藤田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】有泉 修
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 昌志
(72)【発明者】
【氏名】田中 智博
(72)【発明者】
【氏名】阿部 将士
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-209788(JP,A)
【文献】特開2010-048839(JP,A)
【文献】特開2015-075729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/06
G03G 13/08
G03G 13/095
G03G 15/06
G03G 15/08
G03G 15/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する現像位置に前記トナーを担持搬送する現像ローラと、前記現像ローラに対向して配置され且つ前記現像容器から供給された前記現像剤を担持搬送し且つ前記現像ローラに前記トナーのみを供給するトナー供給ローラと、前記現像ローラの回転方向に関して前記現像位置よりも下流且つ前記現像ローラに前記トナー供給ローラが最も近接する前記現像ローラ上の最近接位置よりも上流において前記トナー供給ローラと前記現像ローラのそれぞれに対向して配置された導電
ローラと、を有し、前記最近接位置において前記現像ローラの回転方向が前記トナー供給ローラの回転方向とは逆方向である現像装置と、
前記トナー供給ローラ、前記現像ローラ、及び前記導電
ローラのそれぞれにバイアスを印加するバイアス印加手段と
、
を備え、
画像形成動作中において、
前記トナー供給ローラの直流電位の極性、前記現像ローラの直流電位の極性、及び前記導電
ローラの直流電位の極性は、トナーの正規帯電極性と同じであり、
前記トナー供給ローラの直流電位の絶対値は、前記現像ローラの直流電位の絶対値よりも大きく、
前記導電
ローラの直流電位の絶対値は、前記現像ローラの直流電位の絶対値よりも大きく、
前記導電
ローラの直流電位の絶対値は、前記トナー供給ローラの直流電位の絶対値よりも大きく、
前記導電
ローラの直流電位と前記現像ローラの直流電位との差分の絶対値は、前記トナー供給ローラの直流電位と前記現像ローラの直流電位との差分の絶対値よりも大きく、且つ、前記導電
ローラの直流電位と前記トナー供給ローラの直流電位との差分の絶対値よりも大き
く、
前記現像ローラと前記導電ローラの間の最短距離は、0.3mm以下である
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成動作中において、
前記トナー供給ローラには、直流成分と交流成分とが重畳されたバイアスが印加されており、
前記現像ローラには、直流成分と交流成分とが重畳されたバイアスが印加されており、
前記導電
ローラには、直流成分と交流成分とが重畳されたバイアスが印加されている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記導電
ローラに印加されるバイアスの交流成分は、前記トナー供給ローラに印加されるバイアスの交流成分と同じである
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記導電
ローラに印加されるバイアスの交流成分は、前記現像ローラに印加されるバイアスの交流成分と同じである
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成動作中において、
前記トナー供給ローラには、直流成分と交流成分とが重畳されたバイアスが印加されており、
前記現像ローラには、直流成分と交流成分とが重畳されたバイアスが印加されており、
前記導電
ローラには、直流成分のみのバイアスが印加されている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記導電
ローラの直流電位の絶対値は、前記トナー供給ローラに印加されるバイアスの交流成分のうちトナーの正規帯電極性と同極側のピーク電位の絶対値よりも小さい
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記導電
ローラの直流電位の絶対値は、前記現像ローラに印加されるバイアスの交流成分のうちトナーの正規帯電極性と同極側のピーク電位の絶対値よりも小さい
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記バイアス印加手段は、直流電圧を生成する直流電源と、交流電圧を生成する交流電源と、前記交流電源により生成された交流電圧から直流電圧を生成する整流回路と、を有し、
前記画像形成動作中において、
前記トナー供給ローラには、前記直流電源により生成された直流電圧及び前記交流電源により生成された交流電圧が印加されており、
前記導電ローラには、前記直流電源により生成された直流電圧及び前記整流回路により生成された直流電圧が印加されている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記バイアス印加手段は、直流電圧を生成する直流電源と、交流電圧を生成する交流電源と、前記交流電源により生成された交流電圧から直流電圧を生成する整流回路と、を有し、
前記画像形成動作中において、
前記現像ローラには、前記直流電源により生成された直流電圧及び前記交流電源により生成された交流電圧が印加されており、
前記導電ローラには、前記直流電源により生成された直流電圧及び前記整流回路により生成された直流電圧が印加されている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記バイアス印加手段は、直流電圧を生成する第1の直流電源と、直流電圧を生成する第2の直流電源と、交流電圧を生成する交流電源と、を有し、
前記画像形成動作中において、
前記トナー供給ローラには、前記第1の直流電源により生成された直流電圧及び前記交流電源により生成された交流電圧が印加されており、
前記導電ローラには、前記第1の直流電源により生成された直流電圧及び前記第2の直流電源により生成された直流電圧が印加されている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記バイアス印加手段は、直流電圧を生成する第1の直流電源と、直流電圧を生成する第2の直流電源と、交流電圧を生成する交流電源と、を有し、
前記画像形成動作中において、
前記現像ローラには、前記第1の直流電源により生成された直流電圧及び前記交流電源により生成された交流電圧が印加されており、
前記導電ローラには、前記第1の直流電源により生成された直流電圧及び前記第2の直流電源により生成された直流電圧が印加されている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記トナー供給ローラの内部には、第1磁極を含む複数の磁極を有する第1マグネットが非回転に固定して配置されており、
前記現像ローラの内部には、前記第1磁極に対向して配置され且つ前記第1磁極とは異極の第2磁極のみの1つの磁極を有する第2マグネットが非回転に固定して配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至
11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記現像ローラと前記導電ローラの間の最短距離は、前記トナー供給ローラと前記導電ローラの間の最短距離よりも短い
ことを特徴とする請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記トナー供給ローラと前記導電ローラの間の最短距離は、2mm以下である
ことを特徴とする請求項1乃至
13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記導電ローラの直径は、4mm以上である
ことを特徴とする請求項
1乃至14のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記導電
ローラの表面は、絶縁されている
ことを特徴とする請求項1乃至
15のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラにトナーのみを供給するトナー供給ローラを有する現像装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の現像装置は、トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、現像位置にトナーを担持搬送する現像ローラと、現像剤の循環経路から供給された現像剤を担持搬送し且つ現像ローラにトナーのみを供給するトナー供給ローラを有する。この現像装置は、現像に用いられることなく現像ローラから離脱したトナーであって、トナー供給ローラと現像ローラと現像容器の壁部との間の空間に浮遊しているトナーを遮断するためのトナー遮断部材が設けられている。この遮断部材は、トナー供給ローラと現像ローラとの最近接位置よりもトナー供給ローラの回転方向下流側におけるマグネットローラと現像ローラと現像容器の壁部との間の空間において、現像ローラに近接して配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、画像形成動作中において、トナー供給ローラと現像ローラとの間で正規帯電トナーがトナー供給ローラから現像ローラに向かうような電位差が形成されており、トナー遮断部材とトナー供給ローラには同一の電位が印加されている。
【0005】
このような特許文献1に記載の構成では、画像形成動作中において、現像に用いられることなく現像ローラから離脱した浮遊トナーのうち、トナー遮断部材と現像ローラとの隙間に存在する浮遊トナーを電界的に捕集することはできる。しかしながら、特許文献1に記載の構成では、画像形成動作中において、トナー遮断部材とトナー供給ローラには同一の電位が印加されているので、トナー遮断部材とトナー供給ローラとの隙間に存在する浮遊トナーを電界的に捕集することはできない。その結果、画像形成動作中において、現像に用いられることなく現像ローラから離脱したトナーであって、トナー供給ローラと現像ローラと現像容器の壁部との間の空間に浮遊しているトナーの一部が、気流に乗って現像装置の外部に飛散してしまう虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、現像ローラにトナーのみを供給するトナー供給ローラを有する現像装置に関して、画像形成動作中において、現像に用いられる事なく現像ローラから離脱したトナーが現像装置の外部に飛散する事を抑制することが可能な装置を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る画像形成装置は以下のような構成を備える。即ち、像担持体と、トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する現像位置に前記トナーを担持搬送する現像ローラと、前記現像ローラに対向して配置され且つ前記現像容器から供給された前記現像剤を担持搬送し且つ前記現像ローラに前記トナーのみを供給するトナー供給ローラと、前記現像ローラの回転方向に関して前記現像位置よりも下流且つ前記現像ローラに前記トナー供給ローラが最も近接する前記現像ローラ上の最近接位置よりも上流において前記トナー供給ローラと前記現像ローラのそれぞれに対向して配置された導電ローラと、を有し、前記最近接位置において前記現像ローラの回転方向が前記トナー供給ローラの回転方向とは逆方向である現像装置と、前記トナー供給ローラ、前記現像ローラ、及び前記導電ローラのそれぞれにバイアスを印加するバイアス印加手段と、を備え、画像形成動作中において、前記トナー供給ローラの直流電位の極性、前記現像ローラの直流電位の極性、及び前記導電ローラの直流電位の極性は、トナーの正規帯電極性と同じであり、前記トナー供給ローラの直流電位の絶対値は、前記現像ローラの直流電位の絶対値よりも大きく、前記導電ローラの直流電位の絶対値は、前記現像ローラの直流電位の絶対値よりも大きく、前記導電ローラの直流電位の絶対値は、前記トナー供給ローラの直流電位の絶対値よりも大きく、前記導電ローラの直流電位と前記現像ローラの直流電位との差分の絶対値は、前記トナー供給ローラの直流電位と前記現像ローラの直流電位との差分の絶対値よりも大きく、且つ、前記導電ローラの直流電位と前記トナー供給ローラの直流電位との差分の絶対値よりも大きく、前記現像ローラと前記導電ローラの間の最短距離は、0.3mm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、現像ローラにトナーのみを供給するトナー供給ローラを有する現像装置に関して、画像形成動作中において、現像に用いられる事なく現像ローラから離脱したトナーが現像装置の外部に飛散する事を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る現像装置の構成を示す断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る現像装置の構成を示す断面図(拡大図)である。
【
図4】第1の実施形態において現像ローラ、マグネットローラ、及びトナー遮蔽部材のそれぞれに印加されるバイアスの波形を示す模式図である。
【
図5】バイアスの波形のデューティ比を説明するための模式図である。
【
図6】第2の実施形態において現像ローラ、マグネットローラ、及びトナー遮蔽部材のそれぞれに印加されるバイアスの波形を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものではなく、また、第1の実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。本発明は、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。尚、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、X軸とY軸とZ軸とは互いに直交し、Z軸は鉛直方向に略平行であり、Y軸とZ軸とは水平方向に略平行である。
【0011】
[第1の実施形態]
(画像形成装置の構成)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置1について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1を示す断面図である。画像形成装置1はシートPに画像を形成する。第1の実施形態では、画像形成装置1はプリンタである。画像形成装置1は、タンデム方式を採用し、給送部10、搬送部20、画像形成部30、および排出部100を備える。
【0012】
給送部10は、複数のシートPを収容するカセット11を含む。シートPは、例えば、紙製または合成樹脂製のシートである。給送部10は、カセット11から搬送部20へシートPを給送する。搬送部20は、画像形成部30にシートPを搬送する。画像形成部30はシートPに画像を形成する。搬送部20は、画像の形成されたシートPを排出部100に搬送する。排出部100は画像形成装置1の外部にシートPを排出する。
【0013】
画像形成部30は、露光ユニット31、ユニット32a、ユニット32b、ユニット32c、ユニット32d、中間転写ベルト33、2次転写ローラ34、および定着ユニット35を含む。
【0014】
露光ユニット31は、画像データに基づく光をユニット32a~ユニット32dの各々に照射し、ユニット32a~ユニット32dの各々に静電潜像を形成する。
【0015】
ユニット32aは、静電潜像に基づきイエロー色のトナー像を形成する。ユニット32bは、静電潜像に基づきマゼンタ色のトナー像を形成する。ユニット32cは、静電潜像に基づきシアン色のトナー像を形成する。ユニット32dは、静電潜像に基づきブラック色のトナー像を形成する。
【0016】
中間転写ベルト33は回転方向R1に回転する。中間転写ベルト33の外表面には、ユニット32a~ユニット32dから4色のトナー像が重畳して転写され、画像が形成される。2次転写ローラ34は、中間転写ベルト33の外表面に形成された画像をシートPに転写する。定着ユニット35はシートPを加熱および加圧して、画像をシートPに定着させる。
【0017】
ユニット32a~ユニット32dの各々は、感光体ドラム50(像担持体)、帯電装置51、現像装置60、1次転写ローラ53、除電器54、およびクリーナー55を含む。複数の感光体ドラム50は、中間転写ベルト33の外表面に当接し、中間転写ベルト33の回転方向R1に沿って配置される。複数の1次転写ローラ53は、複数の感光体ドラム50に対応して設けられ、中間転写ベルト33を介して、複数の感光体ドラム50に対向する。
【0018】
ユニット32a~ユニット32dの各々において、帯電装置51、現像装置60、1次転写ローラ53、除電器54、およびクリーナー55は、感光体ドラム50の周面に沿って順に配置される。
【0019】
感光体ドラム50は回転方向R2に回転する。帯電装置51は感光体ドラム50の周面を帯電する。感光体ドラム50の周面には、露光ユニット31によって光が照射され、静電潜像が形成される。
【0020】
現像装置60は、感光体ドラム50の周面に形成された静電潜像にトナーを付着させて、静電潜像を現像し、感光体ドラム50の周面にトナー像を形成する。つまり、感光体ドラム50はトナー像を担持する。
【0021】
1次転写ローラ53は、感光体ドラム50が担持するトナー像を中間転写ベルト33の外表面に転写する。
【0022】
除電器54は、感光体ドラム50の周面を除電する。クリーナー55は、感光体ドラム50の周面に残留しているトナー像を除去する。
【0023】
尚、画像形成装置1は、プリンタであったが、複写機またはファクシミリであってもよく、複合機であってもよい。複合機は、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ、およびスキャナのうち少なくとも2つの機器を備える。また、画像形成装置1は、カラー対応であったが、モノクロ対応であってもよい。
【0024】
次に、
図2および
図3を参照して、本発明の実施形態に係る現像装置60について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る現像装置60の断面図である。
図3は、
図2に示した現像装置60の断面におけるトナー遮断部材65の近傍の拡大図である。
【0025】
図2に示すように、現像装置60は、ハウジング70(現像容器)と、現像剤収容部80(現像容器)と、マグネットローラ63(トナー供給ローラ)と、現像ローラ64(トナー担持体)と、トナー遮断部材65(導電部材)と、規制ブレード66とを備える。
【0026】
ハウジング70内には、現像剤収容部80と、マグネットローラ63と、現像ローラ64と、トナー遮断部材65と、規制ブレード66とが設けられている。ハウジング70は、壁部71と開口72とを有する。
【0027】
現像剤収容部80には、トナーとキャリアを含む二成分現像剤(以降、単に現像剤と呼ぶ)が収容される。現像剤収容部80は、第1搬送室81と、第2搬送室82と、仕切壁83とを有する。現像剤収容部80は、仕切壁83によって、第1搬送室81と、第2搬送室82とに区画されている。
【0028】
第1搬送室81は、第1搬送スクリュー811を有する。第2搬送室82は、第2搬送スクリュー812を有する。第1搬送スクリュー811は、回転方向R3に回転し、第1搬送室81において、現像剤を攪拌しながら搬送する。加えて、第2搬送スクリュー812は、回転方向R3と同じ回転方向R4に回転し、第2搬送室82において、現像剤を攪拌しながら搬送する。その結果、現像剤は、第1搬送室81と第2搬送室82との間を循環しながら搬送される。即ち、第1搬送室81と第2搬送室82との間で現像剤の循環経路が形成されている。
【0029】
第1搬送スクリュー811および第2搬送スクリュー812によって現像剤が攪拌されることによってトナーは帯電する。第1の実施形態では、トナーは正帯電性のトナーである。即ち、第1の実施形態では、正規帯電トナーは、正に帯電している。
【0030】
第2搬送スクリュー812は、マグネットローラ63に現像剤を供給する。
【0031】
マグネットローラ63は、ハウジング70の内部に配置される。マグネットローラ63は、現像剤を表面に担持する。
【0032】
マグネットローラ63は、第2搬送室82に対向し、ハウジング70に回転可能に支持される。マグネットローラ63は、マグネット631と、スリーブ632とを含む。スリーブ632は、回転可能であり、円筒形状を有する。マグネット631は、スリーブ632の内部に非回転に固定して配置される。つまり、スリーブ632は、マグネット631を静止させたまま、回転方向R5に回転する。マグネット631は、磁極N1,S1,S2,N2,S3の5つの磁極から構成されている。第1の実施形態では、磁極N1,S1,S2,N2,S3の5つの磁極の磁束密度(マグネットローラ63の法線方向における磁束密度Brのピーク値)として、それぞれ、100mT,50mT,50mT,60mT,60mTのものを使用した。
【0033】
規制ブレード66は、マグネットローラ63の長手方向に沿ってハウジング70に取り付けられている。規制ブレード66は、マグネットローラ63の回転方向R5において、マグネットローラ63と現像ローラ64との最近接位置P1(現像ローラ64がマグネットローラ63に最も近接する現像ローラ上の位置)よりも上流側に配置されている。規制ブレード66の先端部とマグネットローラ63との間には僅かな隙間が形成されている。規制ブレード66は、マグネットローラ63に対向して配置され、マグネットローラ63に担持される現像剤の層の厚さ(マグネットローラ63に担持される現像剤の量)を規制する。
【0034】
現像ローラ64は、ハウジング70の内部でマグネットローラ63に対向して配置される。現像ローラ64は、マグネットローラ63からトナーが受け渡される。現像ローラ64は、感光体ドラム50に形成された静電潜像を現像する位置(現像位置)にトナーを担持搬送する。現像ローラ64は、ハウジング70に回転可能に支持される。現像ローラ64は、マグネット641と、スリーブ642とを含む。スリーブ642は、回転可能であり、円筒形状を有する。マグネット641は、スリーブ642の内部に非回転に固定して配置される。つまり、スリーブ642は、マグネット641を静止させたまま、回転方向R6に回転する。
【0035】
マグネット641は、磁極S4の1つの磁極から構成されている。マグネットローラ63と現像ローラ64とはその対向位置(最近接位置P1)において所定のギャップをもって対向している。第1の実施形態では、所定のギャップを250μmとした。マグネット641の磁極S4極は、マグネット631の対向する磁極(N1極)と異極性である。第1の実施形態では、S4極の磁束密度(現像ローラ64の法線方向における磁束密度Brのピーク値)は、50mTのものを使用した。
【0036】
マグネットローラ63は、マグネットローラ63と現像ローラ64との対向部(最近接位置P1)において、マグネットローラ63と現像ローラ64との間に形成された電界によって、現像ローラ64にトナーのみを供給する。尚、マグネットローラ63と現像ローラ64との対向部において、マグネットローラ63に担持された現像剤のうちの微量のキャリアが現像ローラ64上に付着することがある。この場合でも、マグネットローラ63は、マグネットローラ63に担持された現像剤のうちのトナーのみを現像ローラ64に供給するものとみなす。
【0037】
マグネットローラ63には、直流電圧および交流電圧が印加される。また、現像ローラ64にも、直流電圧および交流電圧が印加される。直流電圧および交流電圧は、直流電源および交流電源としての現像バイアス電源(バイアス印加手段)からバイアス制御回路を経由して、マグネットローラ63および現像ローラ64に印加される。マグネットローラ63に印加される電圧と現像ローラ64に印加される電圧との電位差によって、正規帯電トナーはマグネットローラ63から現像ローラ64に供給される。また、マグネットローラ63に印加される電圧と現像ローラ64に印加される電圧との間の電位差における交流成分の効果により、現像終了後の現像ローラ64上のトナーがマグネットローラ63に回収される。
【0038】
ここで、第1の実施形態において現像ローラ、マグネットローラ、及びトナー遮蔽部材のそれぞれに印加されるバイアスの波形を示す模式図を、
図4に示す。
図4に示した通り、現像ローラ64には、周波数f1=4kHz、ピーク間電圧Vpp1=1.4kV、デューティ比Dslv=40%からなる交流成分とVdc1=70Vからなる直流成分とが重畳された現像バイアスが印加されている。
【0039】
また、第1の実施形態では、マグネットローラ63には、周波数f2=10kHz、ピーク間電圧Vpp2=1.75kV、デューティ比Dmag=30%からなる現像バイアスが印加されている。この現像バイアスは、正(+)成分終了直後に毎回1.5周期分休止期間を設けた所謂ブランクパルス波形の交流成分と、Vdc2=340Vからなる直流成分とが重畳された現像バイアスが印加されている。
【0040】
ここで、バイアスの波形のデューティ比について、
図5の模式図を用いて説明する。尚、ここでは、デューティ比Dslvは、現像ローラ64から感光体ドラム50にトナーを飛翔させる側(トナーと同極性側)の時間軸のデューティ比を示す。また、デューティ比Dmagは、マグネットローラ63から現像ローラ64にトナーを飛翔させる側(トナーと同極性側)の時間軸のデューティ比を示す。
【0041】
例えば、正帯電トナーを用い、
図5の上方向を正電位、下方向を負電位とする場合において、トナーが飛翔する電界が印加される時間をa、トナーを引き戻す電界が印加される時間をbとすると、デューティ比Dpは、Dp={a/(a+b)}×100で表される。すなわち、全体の印加時間に対する正電位が印加されている時間の百分率で表される。尚、負帯電トナーを用いた場合には、デューティ比は、Dp={b/(a+b)}×100となる。
【0042】
前述したように、第1の実施形態で用いられるトナーは正帯電性のトナーであるため、Vdc1よりVdc2の値を大きく設定することにより、トナーはマグネットローラ63から現像ローラ64に移動する。また、第1の実施形態においては、現像ローラ64のバイアスの正(+)成分印加のタイミングとマグネットローラ63のバイアスの負(-)成分印加のタイミングが合うように位相を合わせている。こうすることで、交流成分も含めてみれば現像ローラ64の電位とマグネットローラ63の電位の大小関係が周期的に逆転するので、現像終了後の現像ローラ64上のトナーをマグネットローラ63に回収する効果も生まれる。一方、このように現像バイアスにより現像ローラ64とマグネットローラ63の間でトナーを受け渡しすることにより、トナーが浮遊しやすくなる。
【0043】
これにより、画像形成動作中(現像装置4の駆動時)において、マグネットローラ63や現像ローラ64の回転により、マグネットローラ63、現像ローラ64、及び、マグネットローラ63と現像ローラ64の対向部からはトナーが飛散して浮遊トナーとなる。この浮遊トナーは、マグネットローラ63と現像ローラ64とハウジング70の壁部71との間の空間Sを浮遊する。
【0044】
図4に示したように、第1の実施形態においては、現像ローラ64のバイアスの負(-)成分印加中はマグネットローラ63のバイアスの交流成分はおおむね休止している。これは、現像ローラ64とマグネットローラ63の電位差が大きくなり、リーク(放電)が発生することを抑制するためである。
【0045】
一般的に、マグネットローラ63と、現像ローラ64と、ハウジング70の壁部71との間の空間Sにおいて、マグネットローラ63の回転と現像ローラ64の回転とによって空気の流れが発生する。したがって、ハウジング70内の圧力が、ハウジング70外の圧力よりも高くなる。これにより、ハウジング70内からハウジング70外へ空気が移動するように気流が生じる。その結果、空間Sでは、現像に用いられなかったトナーが磁気ブラシによって現像ローラ64から離され、現像ローラ64から離されたトナーは浮遊し、気流に乗ってハウジング70の開口から現像装置60の外部に飛散する虞がある。とりわけ、感光体ドラム50の周速が定められた周速以上(例えば、180mm/秒以上)である場合、気流の流速が大きくなる為、マグネットローラ63、現像ローラ64、及びマグネットローラ63と現像ローラ64の対向部からのトナーの飛散が顕著になる。
【0046】
この対策として第1の実施形態では、トナー遮断部材65を、マグネットローラ63と現像ローラ64との最近接位置P1よりもマグネットローラ63の回転方向下流側において、現像ローラ64とマグネットローラ63の双方に略対向するように配置している。また、トナー遮断部材65は、現像ローラ64が感光体ドラム50に形成された静電潜像を現像する位置よりも現像ローラ64の回転方向下流、且つマグネットローラ63と現像ローラ64の最近接位置P1よりも現像ローラ64の回転方向上流に配置されている。また、トナー遮断部材65は、マグネットローラ63よりも現像ローラ64に近い位置に配置される。即ち、トナー遮断部材65と現像ローラ64との最短距離が、トナー遮断部材65とマグネットローラ63との最短距離よりも短くなるように、トナー遮断部材65が、マグネットローラ63と現像ローラ64と壁部71との間の空間Sに配置されている。
【0047】
トナー遮断部材65は、円筒形状または円柱形状に形成されることが好ましい。角を有する直方体状の形状に比べて、円筒形状または円柱形状である方が、表面に反りが出にくく精度よくトナー遮断部材65を製造することができる。第1の実施形態では、トナー遮断部材65は、円柱形状に形成される。トナー遮断部材65は、ハウジング70に支持される。トナー遮断部材65は、弱磁性または非磁性の金属部材である。トナー遮断部材65が弱磁性である場合、トナー遮断部材65は、オーステナイト系のステンレスであることが好ましい。トナー遮断部材65は、導電性材料からなる導電部材である。トナー遮断部材65の直径は、例えば、4mm以上である。
【0048】
図3に示すように、トナー遮断部材65と現像ローラ64との距離d1(最短距離)は、予め定められた寸法以下であることが好ましい。第1の実施形態では、トナー遮断部材65と現像ローラ64との距離d1は、0.3mm以下である。また、トナー遮断部材65とマグネットローラ63との距離d2(最短距離)も、予め定められた寸法以下であることが好ましい。
【0049】
第1の実施形態では、トナー遮断部材65とマグネットローラ63との距離d2は、2mm以下である。マグネットローラ63にはキャリアを含む現像剤が担持されており、距離d2をトナー遮断部材65とマグネットローラ63の対向部における最大磁気穂長の距離程度に設定することで、トナーの遮蔽効果を高めることができる。距離d2が最大磁気穂長よりも1.0mm以上広いと遮蔽効果が弱まる。一方、最大磁気穂長よりも1.0mm以上狭いと対向部で現像剤が滞留してしまう虞がある。
【0050】
尚、ここでいう最大磁気穂長とはトナー遮断部材65との対向部におけるマグネットローラ63の表面から鉛直方向で磁気穂の先端までの距離の最大値を指す。現像ローラ64に関してはトナーのみコートされているので、より狭くすることが可能であり、逆に遮蔽効果を高めるためには、トナー遮断部材65とマグネットローラ63との距離d2を近づけることが好ましい。
【0051】
マグネットローラ63と現像ローラ64と壁部71との間の空間Sにトナー遮蔽部材65を設けただけでは、トナーの流動を完全に遮断することはできないので、隙間から漏れ出したトナーが現像装置60の外部に飛散してしまう。また、トナーがトナー遮蔽部材65に付着してしまい、付着したトナーがボタ落ちして画像に影響を与えかねない。特に、トナー遮蔽部材65がマグネットローラ63の鉛直方向上方に配置されている場合、ボタ落ちしたトナーがマグネットローラ63上に落下するため、その部分のみトナー濃度が高くなり、1周後に画像濃度が高くなるという影響が発生しやすい。
【0052】
そこで、第1の実施形態では、マグネットローラ63及び現像ローラ64が駆動されている際、トナー遮断部材65には、正規帯電トナーと同一極性で、現像ローラ64やマグネットローラ63よりも絶対値の大きい直流電位Vdc3を印加している。
【0053】
即ち、画像形成動作中において、マグネットローラ63と現像ローラ64との間で正規帯電トナーがマグネットローラ63から現像ローラ64に向かうような電位差(第1の電位差)を形成する。また、画像形成動作中において、トナー遮断部材65と現像ローラ64との間で正規帯電トナーがトナー遮断部材65から現像ローラ64に向かうような電位差(第2の電位差)を形成する。また、画像形成動作中において、トナー遮断部材65とマグネットローラ63との間で正規帯電トナーがトナー遮断部材65からマグネットローラ63に向かうような電位差(第3の電位差)を形成する。尚、第2の電位差は、第1の電位差よりも大きく、且つ、第3の電位差よりも大きくなっている。このように、バイアス印加手段は、マグネットローラ63、現像ローラ64、及びトナー遮断部材65のそれぞれにバイアスを印加して、第1の電位差、第2の電位差、第3の電位差を形成する。
【0054】
このように設定することで、トナー遮断部材65と現像ローラ64との間に形成された電位差により、トナー遮蔽部材65から現像ローラ64方向にトナーが押し付けられる。また、このように設定することで、トナー遮断部材65とマグネットローラ63との間に形成された電位差により、トナー遮蔽部材65からマグネットローラ63方向にトナーが押し付けられる。
【0055】
その結果、トナー遮断部材65と現像ローラ64との隙間に浮遊しているトナーは現像ローラ64によって回収され、且つ、トナー遮断部材65とマグネットローラ63との隙間に浮遊しているトナーはマグネットローラ63によって回収される。これにより、マグネットローラ63と、現像ローラ64と、壁部71との間の空間Sに浮遊しているトナーが、現像装置70の外部に飛散してしまうことを抑制することができる。また、トナー遮断部材65の表面にトナーが付着しボタ落ちに至ることを抑制することができる。
【0056】
第1の実施形態では、トナー遮蔽部材65の印加電圧Vdc3=800Vと設定した。そして、トナー遮蔽部材65の印加電圧Vdc3を、現像ローラ64のバイアスの直流成分Vdc1=70V、マグネットローラ63のバイアスの直流成分Vdc2=350Vよりも大きくしており、これにより前述した効果が得られる。
【0057】
さらに、第1の実施形態では、トナー遮蔽部材65の印加電圧Vdc3=800Vを、現像ローラ64の交流成分と直流成分を重畳したバイアスの正(+)成分の最大値Vpp1(max)=910Vよりも小さくしている。即ち、トナー遮断部材65に印加されるバイアスの直流成分の電位の絶対値を、現像ローラ64に印加されるバイアスの交流成分のうち正規帯電トナーの極性と同極側のピーク電位の絶対値よりも小さくしている。
【0058】
また、第1の実施形態では、トナー遮蔽部材65の印加電圧Vdc3=800Vを、マグネットローラ63の交流成分と直流成分を重畳したバイアスの正(+)成分の最大値Vpp2(max)=1565Vよりも小さくしている。即ち、トナー遮断部材65に印加されるバイアスの直流成分の電位の絶対値を、マグネットローラ63に印加されるバイアスの交流成分のうち正規帯電トナーの極性と同極側のピーク電位の絶対値よりも小さくしている。
【0059】
このように設定しているのは、以下に述べる二つの理由がある。一つ目の理由は、現像ローラ64に印加されるバイアスの交流成分によってトナー遮断部材65と現像ローラ64との間の電位差が大きくなりすぎることによるリークを抑制するためである。また、マグネットローラ63に印加されるバイアスの交流成分によってトナー遮断部材65とマグネットローラ63との間の電位差が大きくなりすぎることによるリークを抑制するためである。
【0060】
二つ目の理由は、このような設定にすることで、トナー遮蔽部材65への印加電圧と現像ローラ64やマグネットローラ63の印加電圧の大小関係が逆転する時間が生じるので、トナー遮蔽部材65からのトナー引き剥がしが促進される。第1の実施形態では、トナー遮蔽部材65の印加電圧Vdc3を、現像ローラ64とマグネットローラ63の双方のバイアスの正(+)成分の最大値Vpp1(max)、Vpp2(max)よりも小さくしており、より好ましい設定としている。一方で、トナー遮蔽部材65からのトナー引き剥がしが促進する効果を得るには、トナー遮蔽部材65の印加電圧Vdc3を、現像ローラ64のバイアスの正(+)成分の最大値Vpp1(max)よりも小さくする。もしくは、マグネットローラ63のバイアスの正(+)成分の最大値Vpp1(max)よりも小さくする。このどちらか一方だけを適用することでも、その分の効果は得られる。尚、負帯電性トナーの場合は、トナー遮蔽部材65の印加電圧Vdc3の絶対値を、現像ローラ64とマグネットローラ63の双方のバイアスの負(-)成分の絶対値の最大値Vpp1(max)、Vpp2(max)よりも小さくすることで同様の効果が得られる。以降、負帯電性トナーの場合は、絶対値で考えれば同様の効果が得られる。
【0061】
ここで、放電(リーク)について述べる。トナー遮蔽部材65の印加電圧Vdc3をより大きくすれば、現像ローラ64のバイアスの直流成分Vdc1や、マグネットローラ63のバイアスの直流成分Vdc2との電位差をより大きくできるので、トナーを遮蔽する効果をより高めることができる。しかしながら、電位差が大きすぎると、リークが発生する虞がある。リークが発生した場合、バイアスが乱れる虞があり、バイアスが乱れると画像不良が生じる虞がある。
【0062】
前述したように、第1の実施形態では、正規帯電トナーは正帯電のトナーである。そこで、第1の実施形態では、マグネットローラ63のバイアスの直流成分Vdc2は、現像ローラ64のバイアスの直流成分Vdc1よりも大きくしている。また、トナー遮蔽部材65の印加電圧Vdc3は、マグネットローラ63のバイアスの直流成分Vdc2よりも大きくしている。即ち、「現像ローラ64のバイアスの直流成分Vdc1の絶対値」<「マグネットローラ63のバイアスの直流成分Vdc2の絶対値」<「トナー遮蔽部材65の印加電圧Vdc3の絶対値」の関係が成り立つ。ただし、現像ローラ64のバイアスの直流成分Vdc1、マグネットローラ63のバイアスの直流成分Vdc2、トナー遮蔽部材65の印加電圧Vdc3の極性は、正規帯電トナーと同極性である。
【0063】
このように第1の実施形態では、トナー遮蔽部材65の印加電圧Vdc3を大きくしているので、とりわけ、現像ローラ64とトナー遮蔽部材65との間に形成された電位差が大きくなりやすい。
【0064】
そこで、第1の実施形態では、トナー遮蔽部材65の表面に絶縁層を設けている。このように、トナー遮断部材65の表面を絶縁することにより、リークを抑制することができる。絶縁層は絶縁性の材質であれば、リークを抑制する効果が得られる。正帯電性のトナーを用いる場合、絶縁層の帯電極性としてトナーと同じ正(+)に帯電しやすい材質を選ぶことにより、同極性同士は反発しやすく絶縁層の表面にトナーが付着しづらくなる。そこで、第1の実施形態では、正(+)に帯電しやすいポリイミドチューブを用い、熱収縮を利用してトナー遮蔽部材65の表面に絶縁層を設けた。負帯電性トナーの場合は、負(-)に帯電しやすいPFA(フッ素)チューブ等を用いるのがよい。
【0065】
尚、トナー遮蔽部材65に印加電圧Vdc3を印加するために、新たに高圧電源部(別電源)を設けてもよいが、現像ローラ64に印加するバイアスやマグネットローラ63に印加するバイアスから生成すれば、個別の高圧電源部(別電源)を設ける必要がなくなる。例えば、倍電圧整流回路を用いれば、入力バイアスの交流成分のピーク・トゥ・ピークに略等しい直流バイアスまで出力可能である。第1の実施形態では、現像ローラ64にはピーク間電圧Vpp1=1.4kVの交流成分、マグネットローラ63にはピーク間電圧Vpp2=1.75kVの交流成分が印加されている。
【0066】
このため、ピーク間電圧Vpp1、Vpp2のどちらを用いても、トナー遮蔽部材65の印加電圧Vdc3=800Vを、倍電圧整流回路を用いて生成することができる。尚、入力バイアスの交流成分のピーク・トゥ・ピークが小さい場合や、抵抗等での電圧降下の影響が大きい場合など倍電圧整流回路を用いても所望の電圧が得られない場合は、ピークホールド回路等を用いてもよい。
【0067】
トナー遮蔽部材65への印加電圧Vdc3を現像ローラ64やマグネットローラ63に印加するバイアスから生成する利点の一つは、新たな高圧電源部を設ける必要がないことである。もう一つの利点は、現像ローラ64やマグネットローラ63と独立に高圧電源部を設けると、故障等でトナー遮蔽部材65への印加電圧Vdc3が印加されない状態(=0V)になった場合がある。この場合、現像ローラ64やマグネットローラ63との電位関係が逆転してしまい、トナーがトナー遮蔽部材65に移動してしまう虞がある。また、現像ローラ64やマグネットローラ63と独立に高圧電源部を設けて、故障等でトナー遮蔽部材65への印加電圧Vdc3が印加されない状態(=0V)になった場合、現像ローラ64やマグネットローラ63との電位差が必要以上に大きくなりかねない。第1の実施形態の場合、現像ローラ64よりもマグネットローラ63の印加電圧の最大値が大きく、マグネットローラ63とトナー遮蔽部材65の電位差が1565Vとなるので、リークが発生する虞がある。
【0068】
そのため、第1の実施形態では、マグネットローラ63に印加するバイアスから倍電圧整流回路を用い、トナー遮蔽部材65に印加するバイアスを生成している。前述した二つの利点から、マグネットローラ63に印加するバイアスを生成する電源(直流電源)と、トナー遮断部材65に印加するバイアスを生成する電源(直流電源)とを、別電源にするよりも、同一電源にすることが好ましい。一方で、マグネットローラ63に印加するバイアスを生成する電源(直流電源)と、トナー遮断部材65に印加するバイアスを生成する電源(直流電源)とを別電源にする変形例であっても、第1の実施形態に係る発明を同様に適用することができることは言うまでもない。
【0069】
以上説明したように第1の実施形態では、トナー遮断部材65を、マグネットローラ63と現像ローラ64との最近接位置P1よりもマグネットローラ63の回転方向下流側における、マグネットローラ63と現像ローラ64と壁部71との間の空間Sに配置した。また、トナー遮断部材65を、現像ローラ64が感光体ドラム50に形成された静電潜像を現像する位置よりも現像ローラ64の回転方向下流、且つ、マグネットローラ63と現像ローラ64との最近接位置P1よりも現像ローラ64の回転方向上流に配置した。
【0070】
そして、トナー遮断部材65と現像ローラ64との間に形成された電位差によって、トナー遮蔽部材65から現像ローラ64方向にトナーが押し付けられるようにした。且つ、トナー遮断部材65とマグネットローラ63との間に形成された電位差によって、トナー遮蔽部材65からマグネットローラ63方向にトナーが押し付けられるようにした。その結果、トナー遮断部材65と現像ローラ64との隙間に浮遊しているトナーは現像ローラ64によって回収され、且つ、トナー遮断部材65とマグネットローラ63との隙間に浮遊しているトナーはマグネットローラ63によって回収されるようにした。これにより、マグネットローラ63と、現像ローラ64と、ハウジング70の壁部71との間の空間Sに浮遊しているトナーが、気流に乗って現像装置70の外部に飛散してしまうことを抑制することができる。
【0071】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、トナー遮蔽部材65に印加するバイアスは直流成分のみを印加する例について説明した。一方、第2の実施形態では、トナー遮蔽部材65に印加するバイアスとして、直流成分と交流成分を重畳したバイアスを印加している点が異なる。第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明し、同じ点はその他の構成及び作用は、第2の実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0072】
トナー遮蔽部材65に直流バイアスを印加することにより、トナー遮断部材65とマグネットローラ63との間の電界による遮断効果を高めること、及び、トナー遮断部材65と現像ローラ64との間の電界による遮蔽効果を高めることができる。一方で、バイアス間の電位の大小関係が時々刻々と変化することで、新たな浮遊トナーが生じる可能性がある。また、電位差が大きくなりすぎることによるリーク等の懸念も高まる。
【0073】
そこで第2の実施形態では、現像ローラ64の交流成分と同じ交流成分、周波数f1=4kHz、ピーク間電圧Vpp1=1.4kV、デューティ比Dslv=40%を持ち、直流成分(Vdc3=800V)のみ異なるバイアスをトナー遮蔽部材65に印加する。こうすることで、少なくとも現像ローラ64とトナー遮蔽部材65との間では電位の大小関係が変化することがなく、正規帯電トナーは現像ローラ64方向の力を常に受けることとなる。また、現像ローラ64とトナー遮断部材65との間で電位差が大きくなりすぎることもないので、リークも抑制される。
【0074】
第2の実施形態では、トナー遮蔽部材65に印加するバイアスの交流成分を現像ローラ64の交流成分と同じ交流成分としたが、マグネットローラ63の交流成分と同じ交流成分としてもよい。この場合は、少なくともマグネットローラ63とトナー遮蔽部材65との間では電位の大小関係が変化することがなく、正規帯電トナーはマグネットローラ63方向の力を常に受けることとなる。また、マグネットローラ63とトナー遮断部材65との間で電位差が大きくなりすぎることもないので、リークも抑制される。
【0075】
ただし、トナー遮蔽部材65に印加するバイアスの直流成分、現像ローラ64に印加するバイアスの直流成分、及び、マグネットローラ63に印加するバイアスの直流成分のうち、トナー遮蔽部材65に印加するバイアスの直流成分の絶対値を一番大きくしている。このため、現像ローラ64に印加するバイアスの最小値Vpp1(min)、マグネットローラ63に印加するバイアスのVpp2(min)のうち、より小さい値を持つ現像ローラ64との間でリークの懸念が高い。このことから、トナー遮蔽部材65に印加するバイアスの交流成分を現像ローラー64の交流成分と同じ交流成分とすることがより好ましい。
【0076】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施形態の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0077】
上記実施形態では、
図1に示したように、中間転写ベルト33を用いる構成の画像形成装置を例に説明したが、これに限られない。感光体ドラム50に順に用紙Pを直接接触させて転写を行う構成の画像形成装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 画像形成装置
50 感光体ドラム
60 現像装置
63 マグネットローラ
64 現像ローラ
65 トナー遮断部材
70 ハウジング