(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】導波管接続構造
(51)【国際特許分類】
H01P 1/04 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
H01P1/04
(21)【出願番号】P 2021023029
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 一禎
(72)【発明者】
【氏名】旗谷 充彦
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-238948(JP,A)
【文献】国際公開第2000/005778(WO,A1)
【文献】英国特許出願公告第618446(GB,A)
【文献】特開2017-139516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波を伝送する挿口管路と、前記挿口管路の開口端から管径方向外側に延びるフランジと、を有する挿口導波管と、
前記挿口管路に突き合わされる受口管路と、前記挿口導波管が挿入可能な受口構造と、前記受口管路の管径方向外側の両方に配置されるスタブ溝と、を有する受口導波管と、
を備え、
前記受口構造は、管径方向に延びて前記フランジの端面に対面する受口端面と、前記受口端面から管軸方向に沿って前記挿口導波管側へ延び且つ前記フランジの管径方向外側に配置される環状の受口内周面と、を有し、
前記スタブ溝は、それぞれ、前記受口端面に開口する第1端と前記受口導波管内で閉塞する第2端と、を有し、
前記スタブ溝それぞれの管軸方向に沿った前記第1端から前記第2端までの電気長が前記スタブ溝の管内波長の2分の1である、導波管接続構造。
【請求項2】
前記スタブ溝は、それぞれ、管径方向における前記受口管路と前記受口内周面の中間よりも前記受口管路側に配置されている、請求項1に記載の導波管接続構造。
【請求項3】
前記挿口管路の内周面から前記受口内周面までの管径方向に沿った電気長は、自由空間波長の2分の1の整数倍である、請求項1又は2に記載の導波管接続構造。
【請求項4】
前記スタブ溝は、前記受口管路の管径方向外側の両方にそれぞれ複数配置されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の導波管接続構造。
【請求項5】
前記受口管路は、管断面が長辺および短辺を有する矩形導波管路であり、
前記スタブ溝は、それぞれ、対の前記長辺に沿って配置されている、請求項1から請求項4のいずれかに記載の導波管接続構造。
【請求項6】
前記受口管路は、管断面が円形である円形導波管路であり、
前記スタブ溝は、それぞれ、前記受口管路の管軸を対称軸として線対称の位置に形成されている、請求項1から請求項4のいずれかに記載の導波管接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波を伝送する導波管同士を接続する導波管接続構造に関する。
【0002】
気象レーダー等の高周波(例えばマイクロ波)を使用する装置には、電波の伝送路として導波管が用いられる。第1導波管に第2導波管を接続する場合には、第1導波管と第2導波管とを隙間なく接続する必要がある。第1導波管と第2導波管との間に隙間があれば、その隙間から電波が漏洩してしまう。導波管接続構造の一例として、非特許文献1が挙げられる。導波管同士の接続は、非特許文献1の
図3・32に示すように、第1導波管のフランジと第2導波管のフランジとを隙間がないように接触させ、フランジ同士をボルトなどの締結具で締結して接合することが一般的である。
【0003】
しかしながら、導波管は金属であり、機械部品としての公差を有する。伝送路を構成する全ての導波管同士を隙間なく接続しようとしても、伝送路におけるいずれかの導波管接続部分において、互いに突き合わされる導波管同士の間に公差としての隙間が生じてしまう。この公差は、フランジ同士を締結具で締結することで低減可能であるが、締結具を用いることでフランジに応力が付加された状態となる。また、締結具で締結したとしても公差が大きい場合には、隙間を完全に無くすことが難しい場合がある。
【0004】
フランジに応力をかけてはいけないといった制約のある導波管を使用する場合には、フランジを締結する締結具を用いることができない。その結果、フランジに制約がある第1導波管と、第1導波管に接続される第2導波管の間に隙間が発生し、そこから電波の漏洩が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】日本財団助成事業、平成14年6月、社団法人 日本船舶電装協会、通信講習用 船舶電気装備技術講座[レーダー]機器保全整備偏、「第3章 レーダー用の特殊電子管・半導体及びマイクロ波伝送回路」の「3・9 マイクロ波伝送回路」の「3・9・4 導波管」における
図3・32、https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2002/00403/contents/017.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、公差によって導波管同士が管軸方向に離間する状態であっても、電波の漏洩を抑制する導波管接続構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の導波管接続構造は、高周波を伝送する挿口管路と、前記挿口管路の開口端から管径方向外側に延びるフランジと、を有する挿口導波管と、前記挿口管路に突き合わされる受口管路と、前記挿口導波管が挿入可能な受口構造と、前記受口管路の管径方向外側の両方に配置されるスタブ溝と、を有する受口導波管と、を備え、前記受口構造は、管径方向に延びて前記フランジの端面に対面する受口端面と、前記受口端面から管軸方向に沿って前記挿口導波管側へ延び且つ前記フランジの管径方向外側に配置される環状の受口内周面と、を有し、前記スタブ溝は、それぞれ、前記受口端面に開口する第1端と前記受口導波管内で閉塞する第2端とを有し、前記スタブ溝それぞれの管軸方向に沿った前記第1端から前記第2端までの電気長が前記スタブ溝の管内波長の2分の1である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の接続前および接続後の導波管接続構造を示す斜視図。
【
図3】受口導波管を管軸に平行な視線で見た正面図。
【
図5】第1実施形態の変形例の受口導波管を管軸に平行な視線で見た正面図。
【
図6】第1実施形態の更に別の変形例の受口導波管を管軸に平行な視線で見た正面図。
【
図7】第2実施形態の接続前および接続後の導波管接続構造を示す斜視図。
【
図8】
図9におけるVIII-VIII部位断面図。
【
図9】第2実施形態の受口導波管を管軸に平行な視線で見た正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態の導波管接続構造を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1~3に示すように、第1実施形態の導波管接続構造は、挿口導波管1および受口導波管2を有する。挿口導波管1が受口導波管2に挿入された状態で挿口導波管1と受口導波管2との位置関係が固定される。挿口導波管1は、高周波を伝送する挿口管路10を有する。受口導波管2は、高周波を伝送する受口管路20を有する。接続状態において受口管路20と挿口管路10とが突き合わされる。接続状態は、挿口導波管1と受口導波管2の位置関係が固定された状態である。挿口導波管1及び受口導波管2は、中空の金属管であり、導体で形成される。挿口導波管1及び受口導波管2は、電気的にショートしており、グランドに設定される。高周波は、挿口導波管1及び受口導波管2を管軸方向ADの一方側から他方側に向けて伝送される。本明細書でいう高周波は、300MHz以上の電波、好ましくは、2GHz以上の電波、更に好ましくは3GHz以上の電波である。また、上限値として、高周波は、例えば、50GHz以下の電波であればよい。さらに好ましくは、40GHz以下の電波であればよい。高周波はマイクロ波またはミリ波であってもよい。本実施形態では、導体としてアルミニウム又はステンレスを用いているが、導体であれば、これらに限定されない。
【0011】
第1実施形態の管路(挿口管路10,受口管路20)は、
図4に示すように、管断面が長辺31および短辺32を有する矩形導波管路3である。長辺31同士は互いに平行であり、短辺32同士は互いに平行である。
図2は、
図1におけるII-II部位断面図である。II-II部位断面は、長辺31の中央31s及び管軸A1を通る断面である。管路内には、進行波と反射波によって振動電界が発生する。
図4は、管軸方向ADにおいて振動電界が強い部分である管軸A1に直交する模式的な断面図である。
図4に示すように、振動電界Eは、長辺31の中央31s同士を結ぶ部分において腹となり、最も支配的となる。一方、短辺32には、振動電界Eが発生しない。このような矩形導波管路3の基本モードであるTE10モード(Transverse Electric Mode)で高周波が矩形導波管路3内を伝送される。TE10モードでは、電界が、長辺31に平行な方向に発生せず、短辺32に平行な方向に発生する。なお、基本モード(TE10モード)以外のモードにおいては、これに限定されず、TE10以外を使用することも可能である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、挿口導波管1は、挿口管路10の開口端から管径方向RD外側に延びるフランジ11を有する。フランジ11は、管周方向に連続して繋がっており、環状をなしている。第1実施形態のフランジ11は、管軸A1を中心とする円盤形状であるが、これに限定されず、種々変更可能である。第1実施形態のフランジ11の端面12は、管径方向RDに平行である。端面12は、フランジ11の受口導波管2を向く面であり、以降、ただ単にフランジ端面12と表記する場合がある。
【0013】
図1、
図2及び
図3に示すように、受口導波管2は、挿口導波管1が挿入可能な受口構造21を有する。受口構造21は、管径方向RDに延びてフランジ11の端面12に対面する受口端面210と、受口端面210から管軸方向ADに沿って挿口導波管1側へ延びる環状の受口内周面211と、を有する。受口端面210は、受口管路20の開口端から管径方向外側に延び且つ管周方向に連続して繋がっている。受口内周面211は、フランジ11の管径方向RD外側に配置される。
このように、挿口導波管1のフランジ11の端面12と、受口導波管2の受口端面210とが平行であるので、両方の面(12,210)を突き合わせて面接触させることができる。また、受口内周面211が管軸方向ADと平行であるので、挿口導波管1と受口導波管2とを管軸方向ADに平行にスライド移動可能になり、挿口導波管1の端面12と受口導波管2の受口端面210とを接触状態にしたり、離間状態にしたりすることが可能となる。これにより、伝送路を構成する複数の機械部品の公差の累積値が、フランジ端面12と受口端面210との間の距離D1となる。この距離D1は、電波漏洩抑制の観点から10mm以下であることが好ましい。すなわち、機械部品の公差が10mmという非常に大きな値となるので、導波管の機械設計の自由度が向上すると共に、組立作業が容易となる。
【0014】
図2に示す挿口管路10を通る高周波の大半は受口管路20を通るが、高周波の一部が、挿口導波管1のフランジの端面12と受口導波管2の受口端面210との間の隙間S1に侵入し、管径方向外側へ向かう。しかし、受口内周面211がフランジ11を管径方向外側から覆ってる(包み込んでいる)ので、管径方向外側に向かう高周波の漏洩を抑制可能となる。フランジ11の管径方向外側面13と受口内周面211の間に隙間があっても、隙間S1を通る電波は管径方向RD外側に向かう成分が支配的であるため、フランジ11の管径方向外側面13と受口内周面211の間の隙間からの電波漏洩は限定的となる。フランジ11の管径方向外側面13と受口内周面211の間の隙間は、0mm以上且つ2.0mm以下であることが好ましい。この隙間が2.0mmを超えると電波漏洩が問題となると共に導波管の軸ずれによる導波管性能の低下が問題となるからである。フランジ11の管径方向両方にある管径方向外側面13のうち一方の管径方向外側面13が受口内周面211に接触する場合には、他方の管径方向外側面13と受口内周面211の間の隙間が2.0mm以下であることが好ましい。フランジ11の管径方向両方にある管径方向外側面13がそれぞれ受口内周面211から離間している場合には、各々の管径方向外側面13と受口内周面211との間の隙間が1.0mm以下であることが好ましい。導波管の軸ずれを低減して導波管性能を確保するためである。
【0015】
さらに、フランジ端面12と受口端面210の間の隙間の高周波を低減するために、次の説明するスタブ溝22を設けるとしてもよい。
図1及び
図2に示すように、受口導波管2は、受口管路20の管径方向外側の両方に配置されるスタブ溝22を有する。スタブ溝22は、それぞれ、受口端面210に開口する第1端22aと、受口導波管2内で閉塞する第2端22bとを有する。第1実施形態では、矩形導波管路3の対の長辺31に沿ってそれぞれ直線状に配置されている。複数のスタブ溝22は、対の長辺31が現れる断面において受口管路20を挟む位置に配置されている。第1実施形態では、スタブ溝22の長辺31に沿った長さが、矩形導波管路3の長辺よりも長いが、これに限定されない。
図4に示すように、長辺31の中央31s同士の間が最も支配的であるので、対のスタブ溝22が、長辺31の中央31s及びその近傍を挟んでいることが好ましい。具体的には、スタブ溝22は、長辺31の中央31sを中心として長辺31の最大幅W1の24%となる領域Ar1を少なくとも管径方向外側から挟んでいることが好ましい。この24%の領域Ar1に電力の60%が分布するからである。更に、スタブ溝22は、長辺31の中央31sを中心として長辺31の最大幅W1の36%となる領域Ar1を少なくとも管径方向外側から挟んでいることが好ましい。この36%の領域Ar1に電力の81%が分布するからである。
【0016】
図2に示すように、スタブ溝22それぞれの管軸方向ADに沿った第1端22aから第2端22bまでの電気長EL1は、スタブ溝22の管内波長λgの2分の1である。スタブ溝22の管内波長λgは、スタブ溝22の管軸方向に直交する断面において導波管の長辺に応じて定まる。これにより、スタブ溝22における振動電界が第1端22a及び第2端22bにおいて節(ショート)となり、フランジ端面12と受口端面210の間の隙間S1において振動電界が節(ショート)となる部位が形成される。その結果、前記隙間S1を介して管径方向外側へ向かう電界の漏れを抑制可能となる。
また、スタブ溝22は、それぞれ、管径方向RDにおける受口管路20と受口内周面211との間の中間P1よりも受口管路20側に配置されていることが好ましい。フランジ端面12と受口端面210の間の隙間S1において振動電界が節(ショート)となる部位が、受口管路20に近い方がより電界の漏れを抑制可能となるからである。すなわち、スタブ溝22は可能な限り受口管路20に近い方がよい。
【0017】
さらに、
図2に示すように、挿口管路10の内周面から受口内周面211までの管径方向RDに沿った電気長EL2は、自由空間波長λ0の2分の1の整数倍である、としても。整数倍であるので、電気長EL2=λ0×1/2、λ0×2/2、λ0×3/2、…、λ0×N/2、となる。Nは1以上の自然数である。第1実施形態の隙間S1は、円盤状に形成されている。隙間S1の管軸方向ADに直交する断面積は、挿口管路10の管軸方向ADに直交する断面積よりも大きく、管径方向に広がっているため、自由空間と評価できる。これにより、隙間S1における受口内周面211で振動電界が節(ショート)となる。また、隙間S1における挿口管路10の内周面の付近(内周面の延長部分)で振動電界が節(ショート)となる。隙間S1を介した電波の漏れを更に抑制可能となる。さらに、管路(挿口管路10、受口管路20)の内周面付近が振動電界の節(ショート)となるので、導波路特性の悪化を抑制可能となる。
【0018】
第1実施形態のフランジ11は、応力をくわえてはいけない制約があるため、フランジ11と受口導波管2とをボルト等の締結具で締結していない。その代わりに、挿口管路10を形成する管本体部を締結具で図示しないベースに固定し、受口導波管2を締結具(図示せず)で図示しないベースに固定している。これにより、挿口導波管1と受口導波管2との位置関係が固定され、接続状態となる。
【0019】
<変形例>
(1)
図1~4に示す第1実施形態では、受口管路20の片側に1つのスタブ溝22が配置されているが、これに限定されない。例えば、
図5に示すように、スタブ溝22は、受口管路20の管径方向RD外側の両方にそれぞれ複数(2つ)配置されていてもよい。受口管路20の片側それぞれに2つ、合計で4つのスタブ溝22が配置されている。これにより、スタブ溝による電波の漏れの抑制効果を高めることが可能となる。
この場合、少なくとも1つのスタブ溝22が、管径方向RDにおける受口管路20と受口内周面211との間の中間P1よりも受口管路20側に配置されている、としてもよい。
【0020】
(2)
図1~5に示す実施形態において、受口内周面211は、管軸A1に平行な視線で見て円形に配置されているが、これに限定されない。例えば、
図6に示すように、受口内周面211が、管軸A1に平行な視線で見て多角形状であってもよい。
【0021】
(3)上記実施形態において、スタブ溝22は、管径方向RDにおける受口管路20と受口内周面211との間の中間P1よりも受口管路20側に配置されているが、これに限定されない。スタブ溝22が、上記中間P1に配置されていてもよいし、スタブ溝22が、上記中間P1よりも管径方向RD外側に配置されていてもよい。スタブ溝22が受口管路20に近ければ近いほど導波管性能が向上する。スタブ溝22が受口管路20から離れるほど導波管性能が若干悪化する。いずれにしてもスタブ溝22による電波漏洩低減効果は発揮される。
【0022】
(4)上記実施形態において、電気長EL2は、自由空間波長λ0の2分の1の整数倍であるが、これに限定されない。導波管性能よりも電波漏洩を問題とする場合には、電気長EL2は、自由空間波長λ0の2分の1の整数倍でなくてもよい。
【0023】
[第2実施形態]
(3)
図1~6に示す第1実施形態及びその変形例では、管路は、管断面が長辺31および短辺32を有する矩形導波管路3であるが、これに限定されない。例えば、
図7~9に示すように、管断面が円形である円形導波管路103としてもよい。
図9に示すように、スタブ溝22は、受口管路20の管軸A1を対称軸として線対称の位置に形成されている。管軸A1を通る断面(
図8)において、対のスタブ溝22それぞれが受口管路20を挟む位置に配置されている。
図9に示す例では、管軸A1に平行な視線で見て、スタブ溝22が受口管路20の円弧状の内周面に沿うように、円弧状に湾曲して形成されているが、これに限定されない。スタブ溝22が、
図3に示すように、管軸A1に平行な視線で見て、直線状に形成されていてもよい。
【0024】
以上のように、
図1~
図9に示す実施形態のように、導波管接続構造は、高周波を伝送する挿口管路10と、挿口管路10の開口端から管径方向RD外側に延びるフランジ11と、を有する挿口導波管1と、挿口管路10に突き合わされる受口管路20と、挿口導波管1が挿入可能な受口構造21と、受口管路20の管径方向RD外側の両方に配置されるスタブ溝22と、を有する受口導波管2と、を備え、受口構造21は、管径方向RDに延びてフランジ11の端面12に対面する受口端面210と、受口端面210から管軸方向ADに沿って挿口導波管1側へ延び且つフランジ11の管径方向RD外側に配置される環状の受口内周面211と、を有し、スタブ溝22は、それぞれ、受口端面210に開口する第1端22aと受口導波管2内で閉塞する第2端22bとを有し、スタブ溝22それぞれの管軸方向ADに沿った第1端22aから第2端22bまでの電気長EL1がスタブ溝22の管内波長λgの2分の1である、としてもよい。
【0025】
このように、受口端面210及び受口内周面211を有する受口構造21に対して、挿口導波管1が挿入可能であるので、受口端面210とフランジ11とが接触する状態と離間する状態の両方の状態が許容可能となる。よって、離間状態が許容されるので、導波管1,2を構成する機械部品の公差が吸収可能となる。
さらに、受口導波管2の受口内周面211が挿口導波管1のフランジ11を管径方向RD外側から包み込む構造であるので、受口端面210とフランジ端面12とが離間する公差が生じても、その隙間S1を介して管径方向RD外側に向かう電波の漏れを抑制可能となる。
さらに、スタブ溝22の電気長EL1をスタブ溝22の管内波長λgの2分の1にすることで、スタブ溝22内に生じる振動電界Eが受口端面210において節(ショート)となる。受口端面210とフランジ端面12との間の隙間S1に振動電界Eが節(ショート)となる部位を形成することで、隙間S1を介して管径方向RD外側に向かう電波の漏れを抑制可能となる。
【0026】
特に限定されないが、
図1~
図9に示す実施形態のように、スタブ溝22は、それぞれ、管径方向RDにおける受口管路20と受口内周面211の中間P1よりも受口管路20側に配置されている、としてもよい。
このように、受口端面210とフランジ端面12の間の隙間S1における受口管路20に近い部位に振動電界Eが節(ショート)となる部位が形成されるので、管径方向RD外側に向かう電波の漏れを抑制可能となる。
【0027】
特に限定されないが、
図1~
図9に示す実施形態のように、挿口管路10の内周面から受口内周面211までの管径方向RDに沿った電気長EL2は、自由空間波長λ0の2分の1の整数倍である、としてもよい。
この構成によれば、受口端面210とフランジ端面12の間の隙間S1に発生し得る振動電界Eの節(ショート)を挿口管路10の内周面付近に発生させることができ、隙間S1を介した電波の漏れを更に抑制することが可能となる。さらに、挿口管路10及び受口管路20の内周面付近が振動電界Eの節(ショート)となるので、導波路特性の悪化を抑制可能となる。
【0028】
特に限定されないが、
図5に示す実施形態のように、スタブ溝22は、受口管路20の管径方向RD外側の両方にそれぞれ複数配置されている、としてもよい。
この構成によれば、スタブ溝22による電波漏れの抑制効果を高めることが可能となる。
【0029】
特に限定されないが、
図1~6に示す実施形態のように、受口管路20は、管断面が長辺31および短辺32を有する矩形導波管路3であり、スタブ溝22は、それぞれ、対の長辺31に沿って配置されている、としてもよい。
この構成によれば、矩形導波管路3での高周波の漏洩を適切に抑制可能となる。
【0030】
特に限定されないが、
図7~9に示す実施形態のように、受口管路20は、管断面が円形である円形導波管路103であり、スタブ溝22は、それぞれ、受口管路20の管軸A1を対称軸として線対称の位置に形成されている、としてもよい。
この構成によれば、円形導波管路103は、管軸A1を通る任意の管径方向RDに沿って最も電界が大きくなるので、高周波の漏洩を適切に抑制可能となる。
【0031】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0032】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。
【0033】
各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0034】
[他の導波管接続構造]
上記以外の導波管接続構造を
図10及び
図11に示す。この導波管接続構造は、第1導波管501の管路503と第2導波管502の管路504の接続構造である。第1導波管501及び第2導波管502は、共に管軸方向ADの端面に接続用のネジ孔510が形成されている。端面にネジ孔510を有する雌型導波管501,502同士をそのまま接続することができない。
そこで、第1導波管501の軸端面に第1スペーサ521が取り付けられている。第1スペーサ521は、頭付きボルトで第1導波管501のネジ孔510に締結される。第1スペーサ521は、頭付きボルトの頭部を収容する座繰り511(凹部)が形成されている。座繰り511は、ボルトの頭部が完全に収容可能となる深さに設定されている。
また、第2導波管502の管軸方向ADの端面に第2スペーサ522が取り付けられている。第2スペーサ522は、頭付きボルトで第2導波管502のネジ孔510に締結される。第2スペーサ522は、頭付きボルトの頭部を収容する座繰り511(凹部)が形成されている。座繰り511は、ボルトの頭部が完全に収容可能となる深さに設定されている。
第1スペーサ521及び第2スペーサ522はいずれも、第1導波管501及び第2導波管502よりも管径方向RD外側に突出する突出部521a,522aを有する。各々の突出部521a,522aには、第1スペーサ521と第2スペーサ522とを締結するためのボルト孔512が形成されている。ボルト孔512は、馬鹿穴でもよいし、ねじ溝付き孔でもよい。第1スペーサ521及び第2スペーサ522は、ボルトなどの締結具により締結されている。
これにより、雌型導波管501,502であっても、接続可能となる。また、
図11に示すように、第1導波管501と第2導波管502の管路のサイズが異なる場合には、第1導波管501または第2スペーサ522の少なくとも1つに、高周波回路変換部を設けてもよい。高周波変換部は、管路503と管路504の間の断面積の管路が介在するように、管路の内面に設けられた段差である。この段差は、λ/4整合構造となっている。段差部の管軸方向に沿った電気長は、変換元の管内波長の4分の1に設定されている。管軸方向に直交する断面における長辺長さは、変換元のインピーダンスZ1、変換先のインピーダンスZ2とすると、√(Z1*Z2)となるように決定される。管軸方向に直交する断面における短辺の長さは、変換元導波管の縦横軸比に合わせって決定される。
【符号の説明】
【0035】
1 挿口導波管
10 挿口管路
103 円形導波管路
11 フランジ
12 フランジ端面
2 受口導波管
20 受口管路
21 受口構造
210 受口端面
211 受口内周面
22 スタブ溝
22a 第1端
22b 第2端
3 矩形導波管路
λg 管内波長
λ0 自由空間波長