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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】地図生成装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 17/05 20110101AFI20241216BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20241216BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241216BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20241216BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20241216BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G06T17/05
G01C21/26 A
G06T7/00 650A
G09B29/00 Z
G09B29/10 A
B60W40/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021030150
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131285
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】池田 隼人
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-187472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 17/05
G01C 21/26
G06T 7/00
G09B 29/00
G09B 29/10
B60W 40/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の位置の取得に用いられる地図を生成する地図生成装置であって、
自車両の周囲の状況を検出する車載検出器と、
前記車載検出器により取得された検出データから特徴点を抽出する特徴点抽出部と、
前記検出データから抽出された特徴点を用いて地図を生成する地図生成部と、
前記地図生成部により生成された地図上のランドマークを認識する認識部と、
前記認識部により認識されたランドマークの重要度を決定する重要度決定部と、
前記重要度決定部により決定された重要度に基づいて、前記地図生成部により生成される地図に含まれる特徴点の数を修正する修正部と、を備え
前記修正部は、前記重要度決定部により決定された重要度が低いほど特徴点の数が少なくなるように、前記地図生成部により生成される地図に含まれるキーフレームの間隔を大きくすることを特徴とする地図生成装置。
【請求項2】
自車両の位置の取得に用いられる地図を生成する地図生成装置であって、
自車両の周囲の状況を検出する車載検出器と、
前記車載検出器により取得された検出データから特徴点を抽出する特徴点抽出部と、
前記検出データから抽出された特徴点を用いて地図を生成する地図生成部と、
前記地図生成部により生成された地図上のランドマークを認識する認識部と、
前記認識部により認識されたランドマークの重要度を決定する重要度決定部と、
前記重要度決定部により決定された重要度に基づいて、前記地図生成部により生成される地図に含まれる特徴点の数を修正する修正部と、を備え、
前記修正部は、自車両が走行中の道路に設定された制限速度に基づいて前記重要度を適用する前記道路上の区間を設定し、前記地図生成部により生成される地図に含まれる特徴点のうち、設定した区間に対応する特徴点の数を、前記重要度に基づいて修正することを特徴とする地図生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の地図生成装置において、
前記修正部は、自車両が走行中の道路に設定された制限速度に基づいて前記重要度を適用する前記道路上の区間を設定し、前記地図生成部により生成される地図に含まれる特徴点のうち、設定した区間に対応する特徴点の数を、前記重要度に基づいて修正することを特徴とする地図生成装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の地図生成装置において、
前記修正部は、前記重要度決定部により決定された重要度が低いほど特徴点の数が少なくなるように、前記地図生成部により生成される地図に含まれる特徴点の数を削減することを特徴とする地図生成装置。
【請求項5】
請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の地図生成装置において、
前記重要度決定部は、前記認識部により認識されたランドマークの種別に応じて、前記ランドマークの重要度を決定することを特徴とする地図生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の位置の取得に用いられる地図を生成する地図生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、従来、自車両が走行中に車載カメラにより取得された撮像画像から特徴点を抽出し、抽出した特徴点を含む特徴点画像を自車両の位置の取得に用いる参照データとして記憶するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-32953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車載カメラの画角に含まれる物体の数や背景によっては特徴点画像に含まれる特徴点の数が多くなり、それに伴って特徴点画像のデータサイズも大きくなる。したがって、上記特許文献1記載の装置のように、単に特徴点画像を記憶するようにしたのでは、記憶装置の容量が大きく奪われる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である地図生成装置は、自車両の位置の取得に用いられる地図を生成する地図生成装置である。地図生成装置は、自車両の周囲の状況を検出する車載検出器と、車載検出器により取得された検出データから特徴点を抽出する特徴点抽出部と、検出データから抽出された特徴点を用いて地図を生成する地図生成部と、地図生成部により生成された地図上のランドマークを認識する認識部と、認識部により認識されたランドマークの重要度を決定する重要度決定部と、重要度決定部により決定された重要度に基づいて、地図生成部により生成される地図に含まれる特徴点の数を修正する修正部と、を備える。修正部は、重要度決定部により決定された重要度が低いほど特徴点の数が少なくなるように、地図生成部により生成される地図に含まれるキーフレームの間隔を大きくする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、地図情報の精度の低下を抑制しつつ、地図情報のデータ量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る車両制御システムの全体構成を概略的に示すブロック図。
図2】本発明の実施形態に係る地図生成装置の要部構成を示すブロック図。
図3A】カメラにより取得された撮像画像の一例を示す図。
図3B】カメラにより取得された撮像画像の他の例を示す図。
図4図2のコントローラのCPUで実行される処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図4を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る地図生成装置は、自動運転機能を有する車両、すなわち自動運転車両に適用することができる。なお、本実施形態に係る地図生成装置が適用される車両を、他車両と区別して自車両と呼ぶことがある。自車両は、内燃機関(エンジン)を走行駆動源として有するエンジン車両、走行モータを走行駆動源として有する電気自動車、エンジンと走行モータとを走行駆動源として有するハイブリッド車両のいずれであってもよい。自車両は、ドライバによる運転操作が不要な自動運転モードでの走行だけでなく、ドライバの運転操作による手動運転モードでの走行も可能である。
【0009】
まず、自動運転に係る概略構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る地図生成装置を有する車両制御システム100の全体構成を概略的に示すブロック図である。図1に示すように、車両制御システム100は、コントローラ10と、コントローラ10にそれぞれ通信可能に接続された外部センサ群1と、内部センサ群2と、入出力装置3と、測位ユニット4と、地図データベース5と、ナビゲーション装置6と、通信ユニット7と、走行用のアクチュエータACとを主に有する。
【0010】
外部センサ群1は、自車両の周辺情報である外部状況を検出する複数のセンサ(外部センサ)の総称である。例えば外部センサ群1には、自車両の全方位の照射光に対する散乱光を測定して自車両から周辺の障害物までの距離を測定するライダ、電磁波を照射し反射波を検出することで自車両の周辺の他車両や障害物等を検出するレーダ、自車両に搭載され、CCDやCMOS等の撮像素子を有して自車両の周辺(前方、後方および側方)を撮像するカメラなどが含まれる。
【0011】
内部センサ群2は、自車両の走行状態を検出する複数のセンサ(内部センサ)の総称である。例えば内部センサ群2には、自車両の車速を検出する車速センサ、自車両の前後方向の加速度および左右方向の加速度(横加速度)をそれぞれ検出する加速度センサ、走行駆動源の回転数を検出する回転数センサ、自車両の重心の鉛直軸回りの回転角速度を検出するヨーレートセンサなどが含まれる。手動運転モードでのドライバの運転操作、例えばアクセルペダルの操作、ブレーキペダルの操作、ステアリングホイールの操作等を検出するセンサも内部センサ群2に含まれる。
【0012】
入出力装置3は、ドライバから指令が入力されたり、ドライバに対し情報が出力されたりする装置の総称である。例えば入出力装置3には、操作部材の操作によりドライバが各種指令を入力する各種スイッチ、ドライバが音声で指令を入力するマイク、ドライバに表示画像を介して情報を提供するディスプレイ、ドライバに音声で情報を提供するスピーカなどが含まれる。
【0013】
測位ユニット(GNSSユニット)4は、測位衛星から送信された測位用の信号を受信する測位センサを有する。測位衛星は、GPS衛星や準天頂衛星などの人工衛星である。測位ユニット4は、測位センサが受信した測位情報を利用して、自車両の現在位置(緯度、経度、高度)を測定する。
【0014】
地図データベース5は、ナビゲーション装置6に用いられる一般的な地図情報を記憶する装置であり、例えばハードディスクや半導体素子により構成される。地図情報には、道路の位置情報、道路形状(曲率など)の情報、交差点や分岐点の位置情報、道路に設定された制限速度の情報が含まれる。なお、地図データベース5に記憶される地図情報は、コントローラ10の記憶部12に記憶される高精度な地図情報とは異なる。
【0015】
ナビゲーション装置6は、ドライバにより入力された目的地までの道路上の目標経路を探索するとともに、目標経路に沿った案内を行う装置である。目的地の入力および目標経路に沿った案内は、入出力装置3を介して行われる。目標経路は、測位ユニット4により測定された自車両の現在位置と、地図データベース5に記憶された地図情報とに基づいて演算される。外部センサ群1の検出値を用いて自車両の現在位置を測定することもでき、この現在位置と記憶部12に記憶される高精度な地図情報とに基づいて目標経路を演算するようにしてもよい。
【0016】
通信ユニット7は、インターネット網や携帯電話網に代表される無線通信網を含むネットワークを介して図示しない各種サーバと通信し、地図情報、走行履歴情報および交通情報などを定期的に、あるいは任意のタイミングでサーバから取得する。ネットワークには、公衆無線通信網だけでなく、所定の管理地域ごとに設けられた閉鎖的な通信網、例えば無線LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等も含まれる。取得した地図情報は、地図データベース5や記憶部12に出力され、地図情報が更新される。
【0017】
アクチュエータACは、自車両の走行を制御するための走行用アクチュエータである。走行駆動源がエンジンである場合、アクチュエータACには、エンジンのスロットルバルブの開度(スロットル開度)を調整するスロットル用アクチュエータが含まれる。走行駆動源が走行モータである場合、走行モータがアクチュエータACに含まれる。自車両の制動装置を作動するブレーキ用アクチュエータと転舵装置を駆動する転舵用アクチュエータもアクチュエータACに含まれる。
【0018】
コントローラ10は、電子制御ユニット(ECU)により構成される。より具体的には、コントローラ10は、CPU(マイクロプロセッサ)等の演算部11と、ROM,RAM等の記憶部12と、I/Oインターフェース等の図示しないその他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。なお、エンジン制御用ECU、走行モータ制御用ECU、制動装置用ECU等、機能の異なる複数のECUを別々に設けることができるが、図1では、便宜上、これらECUの集合としてコントローラ10が示される。
【0019】
記憶部12には、高精度の詳細な地図情報(高精度地図情報と呼ぶ)が記憶される。高精度地図情報には、道路の位置情報、道路形状(曲率など)の情報、道路の勾配の情報、交差点や分岐点の位置情報、車線数の情報、車線の幅員および車線毎の位置情報(車線の中央位置や車線位置の境界線の情報)、地図上の目印としてのランドマーク(信号機、標識、建物等)の位置情報、路面の凹凸などの路面プロファイルの情報が含まれる。記憶部12に記憶される高精度地図情報には、通信ユニット7を介して車両の外部から取得した地図情報、例えばクラウドサーバを介して取得した地図(クラウド地図と呼ぶ)の情報と、外部センサ群1による検出値を用いて自車両自体で作成される地図、例えばSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の技術を用いてマッピングにより生成される点群データからなる地図(環境地図と呼ぶ)の情報とが含まれる。記憶部12には、各種制御のプログラム、プログラムで用いられる閾値等の情報についての情報も記憶される。
【0020】
演算部11は、機能的構成として、自車位置認識部13と、外界認識部14と、行動計画生成部15と、走行制御部16と、地図生成部17とを有する。
【0021】
自車位置認識部13は、測位ユニット4で得られた自車両の位置情報および地図データベース5の地図情報に基づいて、地図上の自車両の位置(自車位置)を認識する。記憶部12に記憶された地図情報と、外部センサ群1が検出した自車両の周辺情報とを用いて自車位置を認識してもよく、これにより自車位置を高精度に認識することができる。なお、道路上や道路脇の外部に設置されたセンサで自車位置を測定可能であるとき、そのセンサと通信ユニット7を介して通信することにより、自車位置を認識することもできる。
【0022】
外界認識部14は、ライダ、レーダ、カメラ等の外部センサ群1からの信号に基づいて自車両の周囲の外部状況を認識する。例えば自車両の周辺を走行する周辺車両(前方車両や後方車両)の位置や走行速度や加速度、自車両の周囲に停車または駐車している周辺車両の位置、および他の物体の位置や状態などを認識する。他の物体には、標識、信号機、道路の区画線や停止線等の標示(路面標示)、建物、ガードレール、電柱、看板、歩行者、自転車等が含まれる。他の物体の状態には、信号機の色(赤、青、黄)、歩行者や自転車の移動速度や向きなどが含まれる。他の物体のうち静止している物体の一部は、地図上の位置の指標となるランドマークを構成し、外界認識部14は、ランドマークの位置と種別も認識する。
【0023】
行動計画生成部15は、例えばナビゲーション装置6で演算された目標経路と、自車位置認識部13で認識された自車位置と、外界認識部14で認識された外部状況とに基づいて、現時点から所定時間先までの自車両の走行軌道(目標軌道)を生成する。目標経路上に目標軌道の候補となる複数の軌道が存在するときには、行動計画生成部15は、その中から法令を順守し、かつ効率よく安全に走行する等の基準を満たす最適な軌道を選択し、選択した軌道を目標軌道とする。そして、行動計画生成部15は、生成した目標軌道に応じた行動計画を生成する。行動計画生成部15は、先行車両を追い越すための追い越し走行、走行車線を変更する車線変更走行、先行車両に追従する追従走行、走行車線を逸脱しないように車線を維持するレーンキープ走行、減速走行または加速走行等の走行態様に対応した種々の行動計画を生成する。行動計画生成部15は、目標軌道を生成する際に、まず走行態様を決定し、走行態様に基づいて目標軌道を生成する。
【0024】
走行制御部16は、自動運転モードにおいて、行動計画生成部15で生成された目標軌道に沿って自車両が走行するように各アクチュエータACを制御する。より具体的には、走行制御部16は、自動運転モードにおいて道路勾配などにより定まる走行抵抗を考慮して、行動計画生成部15で算出された単位時間毎の目標加速度を得るための要求駆動力を算出する。そして、例えば内部センサ群2により検出された実加速度が目標加速度となるようにアクチュエータACをフィードバック制御する。すなわち、自車両が目標車速および目標加速度で走行するようにアクチュエータACを制御する。なお、手動運転モードでは、走行制御部16は、内部センサ群2により取得されたドライバからの走行指令(ステアリング操作等)に応じて各アクチュエータACを制御する。
【0025】
地図生成部17は、手動運転モードで走行しながら、外部センサ群1により検出された検出値を用いて、3次元の点群データからなる環境地図を生成する。具体的には、カメラ1aにより取得された撮像画像から、画素ごとの輝度や色の情報に基づいて物体の輪郭を示すエッジを抽出するとともに、そのエッジ情報を用いて特徴点を抽出する。特徴点は例えばエッジの交点であり、建物の角や道路標識の角などに対応する。地図生成部17は、抽出された特徴点を順次、環境地図上にプロットし、これにより自車両が走行した道路周辺の環境地図が生成される。カメラに代えて、レーダやライダにより取得されたデータを用いて自車両の周囲の物体の特徴点を抽出し、環境地図を生成するようにしてもよい。また、地図生成部17は、環境地図を生成する際に、地図上の目印としての信号機、標識、建物等のランドマークがカメラにより取得された撮像画像に含まれているか否かを、例えばパターンマッチングの処理により判定する。そして、ランドマークが含まれていると判定すると、撮像画像に基づいて、環境地図上におけるランドマークの位置および種別を認識する。これらランドマーク情報は環境地図に含まれ、記憶部12に記憶される。
【0026】
自車位置認識部13は、地図生成部17による地図作成処理と並行して、自車両の位置推定処理を行う。すなわち、特徴点の時間経過に伴う位置の変化に基づいて、自車両の位置を取得する。また、自車位置認識部13は、自車両の周囲のランドマークとの相対的な位置関係に基づいて自車位置を推定する。地図作成処理と位置推定処理とは、例えばSLAMのアルゴリズムにしたがって同時に行われる。地図生成部17は、手動運転モードで走行するときだけでなく、自動運転モードで走行するときにも同様に環境地図を生成することができる。既に環境地図が生成されて記憶部12に記憶されている場合、地図生成部17は、新たに得られた特徴点により環境地図を更新してもよい。
【0027】
ところで、自車位置を認識(推定)するとき、自車位置認識部13は、まず、カメラ1aにより取得された画角内にランドマークが含まれる撮像画像から特徴点を抽出する。そして、抽出した特徴点と環境地図(点群データ)とを照合(マッチング)して、環境地図上のランドマーク(ランドマークに対応する特徴点)を認識する。次いで、自車位置認識部13は、撮像画像上のランドマークの位置に基づいて自車両とそのランドマークとの距離を算出し、算出した距離と環境地図上のランドマークの位置とに基づいて、環境地図上の自車両の位置を推定する。このとき、環境地図を構成する特徴点の数がより多いほどマッチングの精度が向上し、より精度よく自車位置を推定できる。一方で、環境地図を構成する特徴点の数が増えると環境地図のデータ量が大きくなり、記憶装置の容量が大きく奪われる。そこで、自車位置の推定精度の低下を抑制しつつ環境地図のデータ量を低減するように、本実施形態では、以下のように地図生成装置を構成する。
【0028】
図2は、本発明の実施形態に係る地図生成装置50の要部構成を示すブロック図である。この地図生成装置50は、カメラ1aの撮像画像から抽出された特徴点に基づいて点群地図(環境地図)を生成するものであり、図1の車両制御システム100の一部を構成する。図2に示すように、地図生成装置50は、コントローラ10と、カメラ1aと、レーダ1bと、ライダ1cとを有する。
【0029】
カメラ1aは、CCDやCMOS等の撮像素子(イメージセンサ)を有する単眼カメラであり、図1の外部センサ群1の一部を構成する。カメラ1aはステレオカメラであってもよい。カメラ1aは、自車両の周囲を撮像する。カメラ1aは、例えば自車両の前部の所定位置に取り付けられ、自車両の前方空間を連続的に撮像し、対象物の画像データ(以下、撮像画像データまたは単に撮像画像と呼ぶ)を取得する。カメラ1aは、撮像画像をコントローラ10に出力する。レーダ1bは、自車両に搭載され、電磁波を照射し反射波を検出することで自車両の周辺の他車両や障害物等を検出する。レーダ1bは、検出値(検出データ)をコントローラ10に出力する。ライダ1cは、自車両に搭載され、自車両の全方位の照射光に対する散乱光を測定して自車両から周辺の障害物までの距離を検出する。ライダ1cは、検出値(検出データ)をコントローラ10に出力する。
【0030】
コントローラ10は、演算部11(図1)が担う機能的構成として、特徴点抽出部141と、認識部142と、重要度決定部143と、修正部144と、地図生成部17とを有する。特徴点抽出部141と認識部142と重要度決定部143と修正部144とは、例えば図1の外界認識部14により構成される。
【0031】
特徴点抽出部141は、カメラ1aにより取得された撮像画像から特徴点を抽出する。より詳細には、特徴点抽出部141は、カメラ1aによりフレーム単位で取得された撮像画像(以下、フレーム画像または単にフレームと呼ぶ場合がある)のそれぞれから特徴点を抽出する。図3Aおよび図3Bは、カメラ1aにより取得された撮像画像の一例を示す図である。認識部142は、カメラ1aにより取得された撮像画像に含まれる、地図上のランドマークを認識する。例えば、カメラ1aにより取得された撮像画像が図3Aに示す画像であるとき、交差点ISや信号機SG、停止線SL、横断歩道CWなどがランドマークとして認識される。
【0032】
重要度決定部143は、認識部142により認識されたランドマークの重要度を決定する。図3Aに示すような、交差点ISや信号機SG、停止線SL、横断歩道CWなどが存在する地点を走行する場合には、安全性の観点からより高い位置推定精度が要求される。つまり、それらのランドマークと自車両との距離がより正確に算出されることが要求される。したがって、重要度決定部143は、それらのランドマークの重要度を最も高いレベル「高」に設定する。一方、図3Bに示すような樹木TRや道路脇の植え込みなどランドマークとして扱われない物体の重要度を最も低いレベル「低」に設定する。また、道路標識や建物など、交差点や信号機などに含まれないランドマークの重要度を「高」と「低」の間のレベル「中」に設定する。なお、説明の簡略化のため、重要度のレベルが「高」「中」「低」の3段階で設定される例を用いたが、重要度のレベルは3段階以外であってもよい。
【0033】
重要度決定部143は、地図データベース5に記憶された地図情報などに基づいて、自車両が現在走行中の道路に設定されている制限速度を認識する。重要度決定部143は、認識した制限速度に基づいて、決定した重要度を適用する範囲(道路上の区間)を設定する。このとき、重要度決定部143は、自車両の現在位置から、制限速度に応じて決定した距離分だけ進行方向に離れた地点までの区間を、重要度を適用する範囲として設定する。一般に、自車両の走行速度が速くなるほど撮影画像上の特徴点の移動速度が速くなり、撮像画像上の特徴点と環境地図上の特徴点との照合がしづらくなる。そこで、重要度決定部143は、特徴点の照合が精度よく行われるように、制限速度が高いほど重要度を適用する範囲(区間)を広く設定する。重要度決定部143は、決定した重要度とその重要度の適用範囲とを示す情報(以下、重要度情報と呼ぶ)を、環境地図に含ませて記憶部12に記憶する。
【0034】
修正部144は、記憶部12に記憶された重要度情報に基づいて、環境地図上の特徴点を間引くことで、特徴点の数を修正する。具体的には、修正部144は、重要度が低いほど、その重要度が適用される区間における特徴点の数が少なくなるように、特徴点の数を修正する。より具体的には、修正部144は、その重要度が適用される区間においてカメラ1aにより取得された各フレームの特徴点(特徴点抽出部141により各フレームから抽出された特徴点)の数を削減する。また、修正部144は、記憶部12に記憶された重要度情報に基づいて、キーフレーム間のフレーム数、すなわちキーフレーム間隔Dを設定する。キーフレームは、カメラ1aにより取得された各フレームの中から、キーフレーム間隔Dに基づいて選択されるフレームであり、特徴点抽出部141により各フレームから抽出された特徴点のうち、キーフレームから抽出された特徴点が環境地図に記憶される。したがって、キーフレーム間隔が小さくなるほど、特徴点の数が増大する。具体的には、修正部144は、重要度が高いほど、その重要度が適用される区間におけるキーフレーム間隔Dが小さくなるように、キーフレーム間隔Dを設定する。
【0035】
図4は、予め定められたプログラムに従い図2のコントローラ10で実行される処理の一例、特に地図生成に関する処理の一例を示すフローチャートである。以下では、自車両が経路RTを走行するときを例にして説明する。経路RTは、例えば、ユーザの自宅から所定地点(例えば、職場や病院)までの経路である。図4のフローチャートに示す処理は、自車両が経路RTを手動運転モードで走行している間、所定周期で繰り返される。
【0036】
まず、ステップS11で、経路RTを自車両101が過去に走行したことがあるか否か、すなわち1回目の走行であるか否かを判定する。ステップS11で肯定されると、ステップS12で、カメラ1aにより取得された撮像画像を取得する。次いで、ステップS13で、ステップS12で取得された撮像画像から特徴点を抽出し、抽出した特徴点に基づいて、環境地図を生成する。具体的には、抽出した特徴点を環境地図にプロットする。このとき、重要度の初期値「低」に対応するキーフレーム間隔Dで特徴点の抽出が行われる。ステップS14で、ステップS12で取得された撮像画像に地図上の位置の指標としての信号機、標識、建物等のランドマークが含まれているか否かを、例えばパターンマッチングの処理により判定する。
【0037】
ステップS14で否定されるとステップS16に進む。ステップS14で肯定されると、ステップS15で、ステップS12で取得された撮像画像に基づいて、環境地図上におけるランドマークの位置および種別(交差点や信号機など)を認識する。このとき、ランドマークの位置および種別を示す情報(ランドマーク情報)が生成され、環境地図の一部としてまたは環境地図の付随データとして記憶部12に記憶される。ステップS16で、ステップS15で認識されたランドマークの種別に基づいてランドマークの重要度を決定する。なお、ステップS12で取得された撮像画像が図3Bに示すような画像、すなわちランドマークを含まない画像であるときには、ステップS15でランドマークが認識されないので重要度が「低」に決定される。
【0038】
ステップS17で、自車両が現在走行中の道路に設定された制限速度に基づいて、ステップS16で決定された重要度の適用範囲を設定する。ステップS18で、ステップS16で決定された重要度とステップS17で設定した適用範囲とを示す情報(重要度情報)を生成し、環境地図の一部または環境地図の付随データとして記憶部12に記憶する。なお、ステップS14を実行する際に、自車両の現在の走行位置を適用範囲に含む重要度情報が記憶部12にすでに記憶されているときには、ステップS14~S18の処理(重要度情報の生成処理)をスキップしてもよい。
【0039】
ステップS19で、自車両が所定地点、すなわち経路RTの終点に到達したか否かを判定する。ステップS19で否定されると処理を終了する。ステップS19で肯定されると、ステップS20で、記憶部12に記憶された重要度情報に基づいて、経路RTを走行中に生成された環境地図上の特徴点を間引いて、環境地図を構成する特徴点の数を修正する。例えば、重要度「低」が適用されている区間においてカメラ1aにより取得された各フレームに対応する特徴点の数が1/3になるように特徴点を削除する。重要度「中」が適用されている区間においてカメラ1aにより取得された各フレームに対応する特徴点の数が1/2になるように特徴点を削除する。一方、重要度「高」が適用されている区間の特徴点の数は変更しない。また例えば、重要度「低」が適用されている区間のキーフレーム間隔Dが3倍になるようにキーフレームを削除する。重要度「中」が適用されている区間のキーフレーム間隔Dが2倍になるようにキーフレームを削除する。一方、重要度「高」が適用されている区間のキーフレーム間隔Dは変更しない。
【0040】
なお、図4のフローチャートでは、経路RTの1回目の走行時にステップS12~S18の処理を実行するようにしたが、経路RTの2回目以降の走行時にもステップS12~S18の処理を行うようにしてもよい。それにより、経路RTの環境地図および重要度情報を最新の状態に更新することができる。また、図4のフローチャートでは、自車両が経路RTの終点に到達したときにステップS20を実行するようにしたが、経路RTを走行中に所定のタイミングでステップS20を実行するようにしてもよい。例えば、自車両が経路RTを走行中に所定距離走行するごとにステップS20を実行するようにしてもよい。また例えば、自車両が経路RTを走行中に所定時間走行するごとにステップS20を実行するようにしてもよい。
【0041】
また、図4のフローチャートでは、ステップS14~S15でランドマーク情報を生成し、ステップS16~S18で重要度情報を記憶するようにした。しかし、経路RTに対応するランドマーク情報が自車両の外部から取得され記憶部12にすでに記憶されている場合には、ステップS14~ステップS18の処理をスキップしてもよい。その場合、ステップS19で肯定されたとき、すなわち、経路RTに対応する環境地図が生成されたときに、経路RTに対応するランドマーク情報に基づいてステップS16~ステップS18の処理を実行し、その後ステップS20に進むようにすればよい。このように既存のランドマーク情報を利用することにより処理を簡略化できる。
【0042】
本発明の実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)自車両の位置の取得に用いられる地図を生成する地図生成装置50は、自車両の周囲の状況を検出するカメラ1aと、カメラ1aにより取得された検出データ(撮像画像)から特徴点を抽出する特徴点抽出部141と、撮像画像から抽出された特徴点を用いて地図を生成する地図生成部17と、地図生成部17により生成された地図上のランドマークを認識する認識部142と、認識部142により認識されたランドマークの重要度を決定する重要度決定部143と、重要度決定部143により決定された重要度に基づいて、地図生成部17により生成される地図に含まれる特徴点の数を修正する修正部144と、を備える。これにより、地図情報の精度の低下を抑制しつつ、地図情報のデータ量を低減することができる。
【0043】
(2)修正部144は、重要度決定部143により決定された重要度に基づいて、地図生成部17により生成される地図に含まれる特徴点の数を削減する。また、修正部144は、重要度決定部143により決定された重要度が低いほど特徴点の数が少なくなるように、地図生成部17により生成される地図に含まれるキーフレームの間隔を大きくする。さらに、重要度決定部143は、認識部142により認識されたランドマークの種別に応じて、ランドマークの重要度を決定する。これにより、地図情報の精度の低下をより抑制することができる。
【0044】
(3)修正部144は、自車両が走行中の道路に設定された制限速度に基づいて重要度を適用する道路上の区間を設定し、地図生成部17により生成される地図に含まれる特徴点のうち、設定した区間に対応する特徴点の数を、重要度に基づいて修正する。これにより、自車両の走行速度が速くなり、カメラ1aの撮影画像上の特徴点の移動速度が速くなると想定される区間においても、撮像画像上の特徴点と環境地図上の特徴点との照合を精度よく行うことができ、特徴点の数の修正を適切に行うことができる。
【0045】
上記実施形態は種々の形態に変形することができる。以下、いくつかの変形例について説明する。上記実施形態では、カメラ1aにより自車両の周囲の状況を検出するようにしたが、自車両の周囲の状況を検出するのであれば、車載検出器の構成はいかなるものでもよい。例えば、車載検出器は、レーダ1bやライダ1cであってもよい。また、上記実施形態では、手動運転モードで走行しながら図4に示す処理を実行するようにしたが、自動運転モードで走行しながら図4に示す処理を実行してもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、ステップS15で認識されたランドマークの種別に応じて、ステップS16で重要度を決定するようにしたが、重要度の決定方法はこれに限らない。例えば、ステップS15で複数のランドマークが認識されたとき、それぞれのランドマークの種別を認識して、各ランドマークの重要度を決定してもよい。そして、各ランドマークの重要度の統計量を、重要度情報に含ませてもよい。例えば、重要度「高」を3とし、重要度「中」を2とし、重要度「低」を1として、各ランドマークの重要度の統計量(平均値や中央値)を算出して、その算出結果を重要度情報に含ませてもよい。また、そのようにして算出された各ランドマークの重要度の統計量に基づいて、ステップS20で特徴点の数の修正を行うようにしてもよい。さらに、上記実施形態では、地図生成装置50を自動運転車両に適用したが、地図生成装置50は、自動運転車両以外の車両にも適用可能である。例えば、ADAS(Advanced driver-assistance systems)を備える手動運転車両にも地図生成装置50を適用することができる。
【0047】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の一つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1a カメラ、1b レーダ、1c ライダ、10 コントローラ、50 地図生成装置、141 特徴点抽出部、142 認識部、143 重要度決定部、144 修正部、17 地図生成部、100 車両制御システム
図1
図2
図3A
図3B
図4