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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】紡糸装置及び紡糸方法
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/04 20060101AFI20241216BHJP
   D04H 1/736 20120101ALI20241216BHJP
   B65H 18/00 20060101ALI20241216BHJP
   B65H 39/14 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
D01D5/04
D04H1/736
B65H18/00
B65H39/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021031754
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2022132980
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 静雄
(72)【発明者】
【氏名】中 具道
(72)【発明者】
【氏名】菊地 佑磨
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174083(JP,A)
【文献】実開昭60-151845(JP,U)
【文献】特開平01-040655(JP,A)
【文献】特開2015-057358(JP,A)
【文献】特開2020-004684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00-13/02
D04H 1/00-18/04
B65H 18/00-18/28,
39/00-39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料液を基材に吐出することにより、幅方向について前記基材の一方側の縁である第1の縁を覆う状態で、前記基材の表面に膜を形成する紡糸ヘッドと、
前記膜が前記基材の前記表面に形成された帯状体を巻取る巻取り芯を備える巻取り部と、
前記帯状体において前記巻取り芯に巻取られた部分の外周面と前記帯状体において前記巻取り芯へ搬入されている部分との間にシートを挿入するとともに、前記帯状体の前記巻取り芯に巻取られた部分の前記外周面に形成される局所的な隆起に対して前記幅方向にずれた範囲に、前記シートを挿入するシート挿入部と、
を具備する、紡糸装置。
【請求項2】
前記帯状体の前記巻取り芯に巻取られた部分の前記外周面での前記局所的な隆起について検知する検知部と、
前記検知部での検知結果に基づいて、前記シート挿入部による前記シートの挿入を制御する制御部と、
をさらに具備する、請求項1の紡糸装置。
【請求項3】
前記シート挿入部は、前記基材の前記第1の縁とは反対側の縁である第2の縁から前記幅方向の外側に突出する状態で、前記シートを挿入する、請求項1又は2の紡糸装置。
【請求項4】
紡糸ヘッドから原料液を基材に吐出することにより、幅方向について前記基材の一方側の縁を覆う状態で、前記基材の表面に膜を形成することと、
前記膜が前記基材の前記表面に形成された帯状体を巻取り芯に巻取ることと、
前記帯状体において前記巻取り芯に巻取られた部分の外周面と前記帯状体において前記巻取り芯へ搬入されている部分との間にシートを挿入するとともに、前記帯状体の前記巻取り芯に巻取られた部分の前記外周面に形成される局所的な隆起に対して前記幅方向にずれた範囲に、前記シートを挿入することと、
を具備する、紡糸方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紡糸装置及び紡糸方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料が溶媒に溶解された原料液を電界紡糸法等によって基材の表面に吐出させ、基材の表面に有機繊維の膜を形成する製造方法が、広く用いられている。例えば、電池の電極群において、正極と負極との間を絶縁するセパレータを、正極又は負極と一体に形成することがある。この場合、セパレータと一体に形成される電極(正極又は負極)の表面に、電界紡糸法等によって有機繊維の膜を形成し、形成された膜がセパレータとなる。前述のようにして基材の表面に膜が形成された帯状体は、巻取り芯に巻取られる。
【0003】
例えば、セパレータと一体の電極を帯状体として形成する場合は、短絡を防止する観点から、幅方向について基材である電極の一方側の縁を膜が覆う状態に、膜が形成される。このように基材の一方側の縁を膜が覆う帯状体を巻取り芯に巻取る作業では、膜の縁を覆う部分が、巻取り芯の外周側へ折曲げられたり、幅方向の内側へ折返されたりすることがある。帯状体の巻取りにおいて膜の縁を覆う部分に前述した折曲げ及び/又は折返しが発生することにより、帯状体において巻取り芯に巻取られた部分の外周面には、膜が基材の縁を覆う部分及びその近傍に、局所的な隆起が形成される。帯状体の巻取りにおいては、帯状体の巻取られた部分の外周面に形成される前述の局所的な隆起の影響を低減することが、求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/014422号
【文献】特開2008-150769号公報
【文献】国際公開第2004/080681号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、基材の表面に膜が形成された帯状体の巻取りにおいて、帯状体の巻取られた部分の外周面に形成される局所的な隆起の影響を低減する紡糸装置及び紡糸方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、紡糸装置は、紡糸ヘッド、巻取り部及びシート挿入部を備える。紡糸ヘッドは、原料液を基材に吐出することにより、幅方向について基材の一方側の縁を覆う状態で、基材の表面に膜を形成する。巻取り部は、膜が基材の表面に形成された帯状体を巻取る巻取り芯を備える。シート挿入部は、帯状体において巻取り芯に巻取られた部分の外周面と帯状体において巻取り芯へ搬入されている部分との間にシートを挿入するとともに、帯状体の巻取り芯に巻取られた部分の外周面に形成される局所的な隆起に対して幅方向にずれた範囲に、シートを挿入する
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る紡糸装置を示す概略図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る紡糸装置の搬送経路を通って搬送される基材の一例を示す概略図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る紡糸装置の紡糸部によって基材の表面に膜を形成している状態を示す概略図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る紡糸装置の搬送経路を通って搬送される帯状体において、剥取り部による剥取りが行われた部位の一例を示す概略図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る紡糸装置において、巻取り芯に帯状体が巻取られている状態を示す概略図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る紡糸装置のシート挿入部によって、帯状体において巻取り芯に巻取られた部分の外周面と帯状体において巻取り芯へ搬入されている部分との間にシートが挿入された状態を示す概略図である。
図7図7は、図6でシート挿入部がシートを挿入した後において、帯状体の巻取り芯への巻取りをある程度の期間継続した状態を示す概略図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る紡糸装置の制御部によって行われる、シートの挿入に関連する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、第1の実施形態に係る紡糸装置1を示す概略図である。図1に示すように、紡糸装置1は、送出し部2、紡糸部3、剥取り部4、巻取り部5、シート挿入部6、検知部7、制御部8及び搬送経路9を備える。搬送経路9は、送出し部2から巻取り部5まで、紡糸部3及び剥取り部4を順に通って延設される。紡糸装置1では、基材10が、送出し部2から巻取り部5まで、搬送経路9に沿って搬送される。
【0010】
搬送経路9では、基材10が搬送される搬送方向、すなわち、巻取り部5へ向かう方向が下流側となる。そして、搬送経路9では、搬送方向とは反対方向、すなわち、送出し部2へ向かう方向が上流側となる。また、搬送経路9では、搬送方向に対して交差する(直交又は略直交する)幅方向となる第1の方向、及び、搬送方向及び第1の方向の両方に対して交差する(直交又は略直交する)第2の方向が規定される。図1では、搬送経路9の第1の方向(幅方向)は、紙面に対して直交する方向と一致又は略一致する。
【0011】
なお、搬送経路9には、送出し部2から巻取り部5へ基材10をガイドするガイドローラ(図示しない)が、1つ以上設けられてもよい。この場合、搬送経路9において、送出し部2と紡糸部3との間、紡糸部3と剥取り部4との間、及び、剥取り部4と巻取り部5との間の少なくともいずれかに、ガイドローラが配置される。また、紡糸部3の内部及び剥取り部4の内部のいずれかに、ガイドローラが配置されてもよい。
【0012】
また、送出し部2から巻取り部5までの搬送経路9の延設状態は、特に限定されない。ある一例では、搬送経路9は、水平方向に沿って延設され、別のある一例では、搬送経路9は、鉛直方向に沿って延設される。また、送出し部2と巻取り部5との間に、搬送経路9の折曲がり部分又は折返し部分等が1箇所以上設けられ、折曲がり部分又は折返し部分等において、搬送経路9の延設方向が変更されてもよい。ある一例では、紡糸部3と剥取り部4との間に、搬送経路9の折返し部分が設けられ、別のある一例では、紡糸部3の内部及び剥取り部4の内部のいずれかに、搬送経路9の折返し部分が設けられる。
【0013】
図2は、紡糸装置1において搬送経路9を通って搬送される基材10の一例を示す。図2等に示すように、本実施形態では、電池の電極群の電極(正極又は負極)が、基材10として用いられる。基材10では、長手方向(図2の紙面に直交又は略直交する方向)、長手方向に対して交差する(直交又は略直交する)幅方向(矢印W1及び矢印W2で示す方向)、及び、長手方向及び幅方向の両方に対して交差する(直交又は略直交する)厚さ方向(矢印T1及び矢印T2で示す方向)が規定される。基材10では、幅方向に沿った寸法(幅)が、長手方向に沿った寸法に比べて小さく、厚さ方向に沿った寸法が、幅方向に沿った寸法に比べて小さい。また、基材10は、縁17,18を備える。基材10では、縁(第1の縁)17が、幅方向について一方側の縁となり、縁(第2の縁)18が、幅方向について縁17とは反対側の縁となる。そして、基材10では、縁17,18が、長手方向に沿った一対の長辺縁となる。
【0014】
基材10は、集電体13、及び、集電体13の表面に担持される活物質含有層14を備える。集電体13は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等の導電性を有する金属から形成され、活物質含有層14は、活物質を含む。図2の一例では、活物質含有層14は、集電体13の両面に担持される。また、基材10では、長手方向の全長又は略全長に渡って、集電体13の表面に活物質含有層14が担持される。活物質含有層14は、集電体13の縁(第1の縁)17まで、幅方向に沿って形成される。ただし、基材10の集電体13では、縁(第2の縁)18及びその近傍部位に、活物質含有層14を担持していない未担持部分15が形成される。基材10では、長手方向について全長又は略全長に渡って、未担持部分15が形成される。
【0015】
図1等に示すように、送出し部2は、送出し芯21を備える。送出し芯21は、例えば、リールによって形成される。送出し芯21は、中心軸を有し、送出し芯21には、基材10がロール状に巻かれる。送出し芯21には、基材10の幅方向が送出し芯21の中心軸に沿う方向と一致又は略一致し、かつ、基材10の長手方向が送出し芯21の周方向に沿う状態で、基材10が巻かれる。送出し部2では、モータ等の駆動部材(図示しない)の駆動によって送出し芯21を矢印R1の方向へ回転させることにより、搬送経路9に基材10が送出され、搬送経路9に基材10が供給される。
【0016】
搬送経路9では、送出し部2から送出された基材10が、巻取り部5へ向かって搬送される。基材10は、基材10の幅方向が搬送経路9の第1の方向(幅方向)と一致又は略一致し、かつ、基材10の厚さ方向が搬送経路9の第2の方向と一致又は略一致する状態で、搬送される。
【0017】
紡糸部3は、搬送経路9を搬送される基材10の表面に有機繊維の膜11を形成する。これにより、基材10及び膜11を備える帯状体12が形成される。図3は、紡糸部3によって基材10の表面に膜11を形成している状態が示される。図3では、搬送経路9の搬送方向に対して直交又は略直交する断面が示され、基材10は、長手方向に対して直交又は略直交する断面で示される。図1及び図3等に示すように、紡糸部3は、1つ以上の紡糸ヘッド31を備え、図1の一例では、紡糸部3に、6つの紡糸ヘッド31が設けられる。紡糸ヘッド31のそれぞれは、ヘッド本体32と、ヘッド本体から突出するノズル33と、を備える。紡糸ヘッド31のそれぞれでは、ヘッド本体32の内部に、例えば有機材料が溶媒に溶解された原料液を、貯留可能である。
【0018】
紡糸ヘッド31のそれぞれでは、ヘッド本体32の内部に貯留されている原料液が、ノズル33から基材10に吐出される。基材10は、紡糸ヘッド31のそれぞれに対して、原料液が吐出される側を通って搬送される。紡糸ヘッド31のそれぞれには、1つのノズル33が設けられてもよく、複数のノズル33が設けられてもよい。図3の一例では、紡糸ヘッド31のそれぞれに、4つのノズル33が設けられる。また、本実施形態では、紡糸部3に、電源35が設けられる。ある一例では、電源35は直流電源である。本実施形態では、電源35は、紡糸ヘッド31に電圧を印加し、搬送経路9において搬送される基材10とノズル33との間に電位差を発生させる。そして、ノズル33への電圧の印加によって帯電した原料液が、ノズル33のそれぞれから基材10に向かって吐出され、基材10の表面に膜11が形成される。なお、原料液は、プラスの極性に帯電してもよく、マイナスの極性に帯電してもよい。
【0019】
原料液に用いられる有機物質としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリケトン、ポリスルホン、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリフッ化ビニリデンのいずれか1つ以上が選択される。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン及びポリエチレン等が挙げられる。
【0020】
紡糸ヘッド31のそれぞれのノズル33と基材10との間の電圧は、原料液における溶媒及び溶質の種類、原料液の溶媒の沸点及び蒸気圧曲線、原料液の濃度及び温度、ノズル33の形状、及び基材10とノズル33との距離等に対応して、適宜設定される。ある一例では、紡糸ヘッド31のそれぞれのノズル33と基材10との間に印加される電圧(電位差)は、1kV~100kVの間で適宜設定される。紡糸ヘッド31のそれぞれのノズル33からの原料液の吐出速度は、原料液の濃度、粘度及び温度、紡糸ヘッド31のそれぞれのノズル33と基材10との間に印加される電圧、及び、ノズル33の形状等に対応する大きさになる。
【0021】
前述のように、本実施形態の紡糸部3は、電界紡糸法(電荷紡糸法及び電荷誘導紡糸法等とも称される)により、基材10の表面に有機繊維の膜11を形成し、基材10及び膜11を備える帯状体12を形成する。なお、図1及び図3の一例では、基材10の両面に原料液が吐出されるが、ある一例では、搬送される基材10の片面のみに原料液が吐出されてもよい。この場合、基材10の片面のみに、膜11が形成される。また、別のある一例では、電源35等によって、紡糸ヘッド31への原料液の供給源、及び、供給源と紡糸ヘッド31との間の原料液の供給経路のいずれかに電圧を印加し、原料液を帯電させてもよい。この場合も、帯電した原料液が、ノズル33のそれぞれから基材10に向かって吐出される。
【0022】
また、ある一例では、紡糸部3において、搬送される基材10が収集体(図示しない)上に配置されてもよい。そして、前述のように紡糸ヘッド31のノズル33から収集体及び基材10に向かって原料液が吐出される。これにより、収集体上に設置される基材10の表面に有機繊維の膜11が形成される。この場合、基材10が電気的絶縁性を有する場合でも、基材10の表面に膜11を形成できる。また、紡糸部3では、基材10の表面への有機繊維の膜11の形成が、電界紡糸法以外の方法によって行われてもよい。ある一例では、電界紡糸法の代わりに、インクジェット法、ジェットディスペンサー法及びスプレー塗布法のいずれかによって、基材10の表面に有機繊維の膜11が形成される。この場合も、紡糸部3では、紡糸ヘッド31から基材10の表面へ、有機材料を溶媒に溶解した原料液が吐出される。
【0023】
図3等の一例では、前述した電極(正極又は負極)が基材10となり、基材10の表面に、有機繊維の膜11としセパレータが形成される。このため、膜11が基材10の表面に形成された帯状体12は、セパレータが一体の電極(正極又は負極)である。電池の電極群では、セパレータによって、正極と負極との間が電気的に絶縁される。また、図3等の一例では、紡糸部3において、縁(第1の縁)17及び縁(第2の縁)18の両方が膜11で覆われる状態に、膜11が形成される。
【0024】
前述のようにして基材10の表面に膜11が形成された帯状体12は、搬送経路9を通して、剥取り部4に搬送される。剥取り部4は、紡糸部3で形成された膜11の一部を、基材10から剥取る。剥取り部4によって膜11が剥取られた部分では、基材10が膜11で覆われない状態になる。剥取り部4では、例えば、回転ブラシを用いて、膜11が剥取られる。
【0025】
図4は、帯状体12において剥取り部4による剥取りが行われた部位の一例を示す。図4では、基材10(帯状体12)の長手方向に対して直交又は略直交する断面が、示される。図4の一例では、前述したセパレータが一体の電極が、帯状体12として剥取り部4に搬送される。この場合、剥取り部4は、基材10の縁18及びその近傍において、膜11を基材10から剥取る。このため、帯状体12において剥取り部4による剥取りが行われた部位では、縁(第2の縁)18及びその近傍が、膜11で覆われない状態になる。例えば、剥取り部4による剥取りよって、集電体13において活物質含有層14を担持していない未担持部分15の少なくとも一部が、膜11で覆われない状態になる。ただし、帯状体12において剥取り部4による剥取りが行われた部位でも、縁(第1の縁)17及びその近傍は、膜11で覆われた状態で維持される。
【0026】
なお、ある一例では、剥取り部4が設けられなくてもよい。この場合、搬送される基材10の縁18及びその近傍に原料液が吐出されない状態に、紡糸ヘッド31のそれぞれからの原料液の吐出範囲が、調整される。これにより、縁18及びその近傍が膜11によって覆われない状態に、基材10の表面に膜11が形成される。
【0027】
図1等に示すように、巻取り部5は、巻取り芯51を備える。巻取り芯51は、例えば、リールによって形成される。巻取り芯51は、中心軸を有し、巻取り芯51には、搬送経路9を通して搬送された帯状体12が搬入される。巻取り芯51には、例えば、基材10の縁(第1の縁)17が膜11に覆われ、かつ、基材10の縁(第2の縁)18が膜11に覆われていない状態で、帯状体12が搬入される。巻取り部5では、モータ等の駆動部材(図示しない)の駆動によって巻取り芯51を矢印R2の方向へ回転させることにより、搬送経路9から巻取り芯51に搬入される帯状体12が、巻取り芯51の外周部に巻取られる。巻取り芯51には、巻取り芯51を中心とするロール状に、帯状体12が巻取られる。また、巻取り芯51には、基材10(帯状体12)の幅方向が巻取り芯51の中心軸に沿う方向と一致又は略一致し、かつ、基材10(帯状体12)の長手方向が巻取り芯51の周方向に沿う状態で、帯状体12が巻取られる。
【0028】
シート挿入部6は、巻取り芯51の近傍に配置され、巻取り芯51に対して帯状体12が搬入される側に配置される。巻取り芯51によって帯状体12が巻取られている状態では、シート挿入部6が作動されることにより、帯状体12において巻取り芯51に巻取られた部分の外周面と帯状体12において巻取り芯51へ搬入されている部分との間に、シート61を挿入する。この際、搬送経路9が位置する側から、すなわち、帯状体12が巻取り芯51へ搬入される側から、シート61が挿入される。シート挿入部6は、作動機構を備え、作動機構は、作動されることにより、プリンタの紙送り機構と同様にしてシートを移動させ、シート61を挿入する。また、シート挿入部6は、モータ等の駆動部材(図示しない)を備え、駆動部材の駆動によって、作動機構が作動される。
【0029】
シート61を前述のように挿入した後において、帯状体12の巻取り芯51への巻取りをある程度の期間継続すると、帯状体12の巻取り芯51へ巻取られた部分において、内周側及び外周側の両方から帯状体12が挿入されたシート61に当接する状態になる。この際、帯状体12の巻取り芯51へ巻取られた部分では、ある1つの一周回部分が、シート61に内周側から当接する。そして、シート61に内周側から当接する一周回部分に対して外周側に隣接して重ねられる一周回部分が、シート61に外周側から当接する。
【0030】
シート61では、長さ方向、長さ方向に対して直交又は略直交する幅方向、及び、長さ方向及び幅方向の両方に対して直交又は略直交する厚さ方向が、規定される。シート61は、シート61の幅方向が基材10の幅方向と一致又は略一致し、かつ、シート61の厚さ方向が基材10の厚さ方向と一致又は略一致する状態で、挿入される。シート61では、厚さ方向に沿った寸法は、長さ方向に沿った寸法、及び、幅方向に沿った寸法のそれぞれに比べて、小さい。また、長さ方向に沿ったシート61の寸法(長さ)は、ある一例では、30cm程度である。また、ある一例では、幅方向に沿ったシート61の寸法(幅)は、幅方向に沿った基材10の寸法(幅)と同程度である。
【0031】
検知部7は、巻取り芯51の近傍に配置され、例えば巻取り芯51に対して帯状体12が搬入される側とは反対側に、すなわち、この一例では巻取り芯51に対してシート挿入部6が位置する側とは反対側に、配置される。検知部7は、帯状体12が搬入される側とは反対側から、帯状体12の巻取り芯51に巻取られた部分の外周面を観察する。そして、検知部7は、帯状体12の巻取り芯51に巻取られた部分の外周面での局所的な隆起について、検知する。検知部7では、例えば、CCDカメラ又はレーザ変位計等を用いて、検知を行う。
【0032】
図5は、巻取り芯51に帯状体12が巻取られている状態を示す。ここで、本実施形態では、前述のように、基材10の縁(第1の縁)17が膜11に覆われた帯状体12が、巻取り芯51に巻取られる。この場合、巻取り芯51への帯状体12の巻取りにおいて、膜11の縁17を覆う部分が、巻取り芯51の外周側へ折曲げられたり、幅方向の内側へ折返されたりすることがある。
【0033】
帯状体12の巻取りにおいて膜11の縁17を覆う部分に折曲げ及び/又は折返しが発生することにより、帯状体12が巻取り芯51にある程度巻取られると、帯状体12において巻取り芯51に巻取られた部分の外周面に、図5等に示す局所的な隆起62が形成される。帯状体12の巻取られた部分の外周面では、膜11が基材10の縁(第1の縁)17を覆う部分及びその近傍に、局所的な隆起62が形成される。検知部7は、隆起62等を含む帯状体12の巻取られた部分の外周面に形成される局所的な隆起を、検知する。なお、以下の説明では、隆起62等の局所的な隆起の隆起量εを規定する。
【0034】
制御部8は、例えば、コンピュータ等の処理装置から構成される。制御部8は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイコン又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含むプロセッサ又は集積回路(制御回路)、及び、メモリ等の記憶媒体を備える。制御部8は、集積回路等を1つのみ備えてもよく、集積回路等を複数備えてもよい。制御部8は、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を行う。制御部8は、紡糸装置1において、構成要素のそれぞれの動作等を制御する。また、紡糸装置1は、構成要素のそれぞれについての動作指令が作業者等によって入力される入力部、及び、紡糸装置1に関する情報及び警告情報等を告知する告知部を備えてもよい。告知部では、例えば、音声又は画面表示等によって、情報が告知される。
【0035】
制御部8は、局所的な隆起についての検知部7での検知結果に基づいて、シート挿入部6の作動を制御し、シート挿入部6によるシート61の挿入を制御する。制御部8は、検知部7での検知結果に基づいて、帯状体12の巻取られた部分の外周面に局所的な隆起が存在するか否かを判定する。そして、局所的な隆起が存在する場合は、制御部8は、検知部7での検知結果に基づいて、局所的な隆起の隆起量εを算出する。そして、制御部8は、帯状体12の巻取られた部分の外周面での局所的な隆起の隆起量εが基準範囲を超えていることに基づいて、シート挿入部6を作動し、帯状体12において巻取り芯51に巻取られた部分の外周面と帯状体12において巻取り芯51へ搬入されている部分との間に、シート61を挿入させる。この際、制御部8は、例えば、局所的な隆起の隆起量εが閾値εth以上であることに基づいて、局所的な隆起の隆起量εが基準範囲を超えていると判定する。
【0036】
図6は、帯状体12において巻取り芯51に巻取られた部分の外周面と帯状体12において巻取り芯51へ搬入されている部分との間にシート61が挿入された状態を示す。図6に示すように、シート挿入部6は、帯状体12の巻取り芯51に巻取られた部分の外周面において、局所的な隆起62に対して基材10(帯状体12)の幅方向にずれた範囲に、シート61を挿入する。したがって、シート61は、基材10の幅方向について縁(第1の縁)及びその近傍から外れた位置に、挿入される。また、シート挿入部6は、基材10の縁17とは反対側の縁(第2の縁)18から幅方向の外側に突出する状態で、シート61を帯状体12の巻取られた部分の外周面に挿入する。
【0037】
図7は、シート61を挿入した後において、帯状体12の巻取り芯51への巻取りをある程度の期間継続した状態を示す。図7で示す状態は、例えば、図6に示す状態から帯状体12が一周回分だけ巻取られた状態である。本実施形態では、前述のようにシート61が挿入されることにより、巻取り芯の周方向についてシート61が挿入された範囲では、局所的な隆起と隆起以外の部分との間の段差が、解消又は低減される。このため、図7に示すように、シート61を挿入した後に帯状体12の巻取り芯51への巻取りをある程度の期間継続した状態では、帯状体12の巻取られた部分の外周面の局所的な隆起は、解消又は低減される。また、シート61を挿入した後に帯状体12の巻取り芯51への巻取りをある程度の期間継続した状態でも、挿入されたシート61は、縁18から幅方向の外側に突出する。
【0038】
図8は、制御部8によって行われる、シート61の挿入に関連する処理を示す。本実施形態では、巻取り部5の巻取り芯51に巻取られている状態において、制御部8は、図8に示す処理を、経時的に繰返し実施する。図8に示す処理では、制御部8は、帯状体12の巻取られた部分の外周面の局所的な隆起について、検知部7での検知結果を取得する(S101)。そして、制御部8は、取得した検知結果に基づいて、帯状体12の巻取られた部分の外周面に局所的な隆起が存在するか否かを判定する(S102)。局所的な隆起が存在しない場合は(S102-No)、制御部8は、シート挿入部6を作動させず、帯状体12の巻取られた部分の外周面にシート61は挿入されない。
【0039】
局所的な隆起が存在する場合は(S102-Yes)、制御部8は、局所的な隆起の隆起量εが基準範囲内であるか否かを判定する(S103)。隆起量εが基準範囲内である場合は(S103-Yes)、制御部8は、シート挿入部6を作動させず、帯状体12の巻取られた部分の外周面にシート61は挿入されない。一方、隆起量εが基準範囲を超えている場合は(S103-No)、制御部8は、シート挿入部6を作動させ、帯状体12の巻取られた部分の外周面にシート61は挿入させる(S104)。
【0040】
本実施形態では、前述のように、シート挿入部6が、帯状体12において巻取り芯51に巻取られた部分の外周面と帯状体12において巻取り芯51へ搬入されている部分との間に、シート61を挿入する。帯状体12の巻取られた部分の外周面に局所的な隆起が形成されている状態では、シート61を巻取られた部分の外周面に挿入することにより、前述のように局所的な隆起が解消又は低減される。このため、本実施形態では、帯状体12の巻取り芯51への巻取りにおいて、帯状体12の巻取られた部分の外周面に形成される局所的な隆起の影響が、低減される。帯状体12の巻取り芯51への巻取りにおいて前述した局所的な隆起の影響が低減されることにより、帯状体12の巻取りにおいて、帯状体12に歪み等が発生し難くなり、帯状体12の損傷等が有効に防止される。これにより、セパレータと一体の電極等を含む帯状体12の製造において、歩留まりが向上する。
【0041】
また、電池の製造等では、セパレータと一体の電極である帯状体12を用いて電極群が製造される。電極群の製造においては、巻取られた帯状体12を巻解いて、帯状体12を搬送する。本実施形態では、帯状体12の巻取りにおいて、前述のように巻取られた部分の外周面の局所的な隆起が低減される。このため、巻取られた帯状体12を使用する場合等において、帯状体12を巻解く作業の作業性が、向上する。
【0042】
また、本実施形態では、制御部8は、局所的な隆起についての検知部7での検知結果に基づいて、シート挿入部6によるシート61の挿入を制御する。そして、制御部8は、帯状体12の巻取られた部分の外周面での局所的な隆起の隆起量εが基準範囲を超えていることに基づいて、シート挿入部6にシート61を挿入させる。このため、帯状体12が巻取られている状態において、巻取られた部分の外周面に、適切なタイミングでシート61が挿入される。したがって、帯状体12の巻取り芯51への巻取りにおいて、帯状体12の巻取られた部分の外周面に形成される局所的な隆起の影響が、さらに有効に低減される。
【0043】
また、シート挿入部6は、局所的な隆起に対して基材10の幅方向にずれた範囲に、シート61を挿入する。このため、帯状体12が巻取られている状態では、巻取られた部分の外周面において適切な位置に、シート61が挿入される。したがって、帯状体12の巻取られた部分の外周面に形成される局所的な隆起が、シート61の挿入によって、適切に解消又は低減される。
【0044】
また、シート挿入部6は、基材10の縁(第2の縁)18から幅方向の外側に突出する状態で、シート61を挿入する。このため、作業者等は、挿入されたシート61の位置等に基づいて、帯状体12において局所的な隆起が形成されている位置を、適切に認識可能になる。また、このようにシート61が基材10の縁(第2の縁)18から幅方向の外側に突出する状態で挿入されることで、これ以降の帯状体12を巻解く工程において、挿入されたシート61を簡単かつ確実に除去することが可能となる。
【0045】
なお、前述の実施形態等では、帯状体12としてセパレータと一体の電極を例に挙げたが、帯状体12は、これに限るものではない。帯状体12では、幅方向について基材10の一方側の縁(17)を覆う状態で、基材10の表面に膜11が形成されていればよい。ただし、いずれの場合も、帯状体12の巻取り芯51への巻取りにおいて、帯状体12において巻取り芯51に巻取られた部分の外周面と帯状体において巻取り芯51に導入されている部分との間に、シート61を挿入可能である。
【0046】
これらの少なくとも一つの実施形態又は実施例によれば、帯状体において巻取り芯に巻取られた部分の外周面と帯状体において巻取り芯へ搬入されている部分との間に、シートが挿入される。これにより、基材の表面に膜が形成された帯状体の巻取りにおいて、帯状体の巻取られた部分の外周面に形成される局所的な隆起の影響を低減する紡糸装置及び紡糸方法を提供することができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、付記を記載する。
[1]原料液を基材に吐出することにより、幅方向について前記基材の一方側の縁である第1の縁を覆う状態で、前記基材の表面に膜を形成する紡糸ヘッドと、
前記膜が前記基材の前記表面に形成された帯状体を巻取る巻取り芯を備える巻取り部と、
前記帯状体において前記巻取り芯に巻取られた部分の外周面と前記帯状体において前記巻取り芯へ搬入されている部分との間にシートを挿入するシート挿入部と、
を具備する、紡糸装置。
[2]前記帯状体の前記巻取り芯に巻取られた部分の前記外周面での局所的な隆起について検知する検知部と、
前記検知部での検知結果に基づいて、前記シート挿入部による前記シートの挿入を制御する制御部と、
をさらに具備する、[1]の紡糸装置。
[3]前記シート挿入部は、前記帯状体の前記巻取り芯に巻取られた部分の前記外周面に形成される局所的な隆起に対して前記幅方向にずれた範囲に、前記シートを挿入する、[1]又は[2]の紡糸装置。
[4]前記シート挿入部は、前記基材の前記第1の縁とは反対側の縁である第2の縁から前記幅方向の外側に突出する状態で、前記シートを挿入する、[1]乃至[3]のいずれか1つの紡糸装置。
[5]紡糸ヘッドから原料液を基材に吐出することにより、幅方向について前記基材の一方側の縁を覆う状態で、前記基材の表面に膜を形成することと、
前記膜が前記基材の前記表面に形成された帯状体を巻取り芯に巻取ることと、
前記帯状体において前記巻取り芯に巻取られた部分の外周面と前記帯状体において前記巻取り芯へ搬入されている部分との間にシートを挿入することと、
を具備する、紡糸方法。
【符号の説明】
【0048】
1…紡糸装置、3…紡糸部、4…剥取り部、5…巻取り部、6…シート挿入部、7…検知部、8…制御部、9…搬送経路、10…基材、11…膜、12…帯状体、17…縁(第1の縁)、18…縁(第2の縁)、31…紡糸ヘッド、51…巻取り芯、61…シート、62…隆起。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8