(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20241216BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G03G9/087 325
G03G9/097 365
G03G9/087 331
(21)【出願番号】P 2021035002
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 仁思
(72)【発明者】
【氏名】中島 良
(72)【発明者】
【氏名】松尾 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 吉寛
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-032981(JP,A)
【文献】特開2017-116810(JP,A)
【文献】特開平08-076413(JP,A)
【文献】特開2016-057434(JP,A)
【文献】特開2017-045048(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0227020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/087
G03G 9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、炭化水素ワックス、スチレンアクリル系樹脂組成物を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂を30質量%以上含有し、
該スチレンアクリル系樹脂組成物は、下記式(1)で表されるユニットを4質量%~25質量%含有し、
該スチレンアクリル系樹脂組成物は、ATR法を用い、ATR結晶としてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定して得られたFT-IRスペクトルにおいて
、芳香環のC=C結合に由来する1570cm
-1~1630cm
-1の範囲の最大吸収ピーク強度をA
、炭化水素のC-H結合に由来する2800cm
-1~2900cm
-1の範囲の最大吸収ピーク強度をB、としたとき、
Aに対するBの比(B/A)
の値が1.8~4.0であり、
該トナーは、該結着樹脂100質量部に対して、該炭化水素ワックスを3質量部~15質量部含有することを特徴とするトナー。
【化1】
(式(1)中、nは10~36の整数を示し、RはHまたはCH
3を示す。)
【請求項2】
前記スチレンアクリル系樹脂組成物は、炭化水素化合物を幹部位として、スチレンアクリル系樹脂を枝部位として有するグラフト重合体である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記炭化水素化合物は、ポリオレフィンである請求項
2に記載のトナー。
【請求項4】
前記結着樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂を50質量%以上含有する請求項
1~3のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項5】
前記スチレンアクリル系樹脂組成物は、炭化水素化合物ユニットを10質量%~30質量%含有する請求項
1~4のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項6】
前記スチレンアクリル系樹脂組成物は、スチレンユニットを50質量%以上含有する請求項
1~5のいずれか
1項に記載のトナー。
【請求項7】
前記トナー中の
前記スチレンアクリル系樹脂組成物の含有量をX(質量%)とし、
前記炭化水素ワックスの含有量をY(質量%)としたとき、
Yに対するXの比(X/Y)
の値が0.8~1.5である請求項
1~6のいずれか
1項に記載のトナー。
【請求項8】
前記スチレンアクリル系樹脂組成物の酸価が10.0mgKOH/g~30.0mgKOH/gである請求項
1~7のいずれか
1項に記載のトナー。
【請求項9】
前記スチレンアクリル系樹脂組成物の重量平均分子量が1.5×10
4~1.0×10
5である請求項
1~8のいずれか
1項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真法、及び静電記録法などに用いられる静電荷像を現像するためのトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及し、印刷市場への適用も始まっている。印刷市場では、幅広いメディア(紙種)に対応しながら、高速、高画質、高生産性が要求されるようになってきている。
例えば、厚紙から薄紙へ紙種が変更されても、紙種に合わせてプロセススピードの変更や定着器の加熱設定温度の変更を行わずに印刷が継続可能な、メディア等速性が求められている。メディア等速の観点から、トナーには、低温から高温まで幅広い定着温度範囲で適正に定着を完了することが求められている。
【0003】
幅広い定着温度範囲で適正にトナーを定着させるために、トナー中にワックスを含有させトナーに離型性を持たせ、耐ホットオフセット性を向上させる方法がある。この場合、トナー中のワックスの分散状態は、トナーの性質に重大な影響を及ぼすため、微細かつ均一であることが望まれる。
しかしながら、ワックスを含有するトナーは、分散状態を制御しても、トナーを高温高湿下に静置すると、ワックスがトナー表面に溶けだし、トナーの流動性が悪化するために、帯電性に劣る場合がある。
【0004】
そこで、特許文献1のように、トナー中のワックスの状態を制御するために、長鎖アルキル基を有するスチレンアクリル系樹脂を含有させることで、耐ホットオフセット性や高温高湿下における帯電維持性を向上させる技術が提案されている。
一方で、印刷市場では、印刷された後の成果物品位に対する要求も高くなってきている。使用するメディアによっては、印刷物を運搬する際の振動によりメディア間で画像表面の摺擦が発生した場合、トナー像が擦りとられて、メディアの裏汚れが発生する場合があった。
そこで、特許文献2では、トナーの表面ワックス量を制御することで印刷物の耐摩擦性を向上させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-116810号公報
【文献】特開2020-8818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2で提案されている耐摩擦性は、定着後の画像表面にトナー中から染み出したワックスが存在することで、画像表面の摩擦係数を低くすることができ、分離爪等で擦られても、画像が擦りとられることを抑制することができる。
しかしながら、非晶性ポリエステル樹脂に炭化水素ワックスを含有したトナーにおいて、特に低印字率の画像において、耐摩擦性が低下し、メディアへの裏汚れが発生する場合があることが分かった。これは、印字率が低い画像の場合、トナー画像の面積が小さいため、定着時に画像表面に染み出したワックスが、画像表面にとどまることができず、メディアへ流れてしまうためと考えられる。その結果、画像の耐摩擦性が低下し、メディアへの裏汚れが発生する場合があった。そのため、メディアの裏汚れは、特許文献1及び特許文献2に開示されているトナーでは不十分な場合があり、更なる改善が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のトナーは、
結着樹脂、炭化水素ワックス、スチレンアクリル系樹脂組成物を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂を30質量%以上含有し、
該スチレンアクリル系樹脂組成物は、下記式(1)で表されるユニットを4質量%~25質量%含有し、
該スチレンアクリル系樹脂組成物は、ATR法を用い、ATR結晶としてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定して得られたFT-IRスペクトルにおいて、
芳香環のC=C結合に由来する1570cm-1~1630cm-1の範囲の最大吸収ピーク強度をA、
炭化水素のC-H結合に由来する2800cm-1~2900cm-1の範囲の最大吸収ピーク強度をB、としたとき、
比(B/A)が1.8~4.0であり、
該トナーは、該結着樹脂100質量部に対して、該炭化水素ワックスを3質量部~15質量部含有することを特徴とするトナーに関する。
【0008】
【化1】
(式(1)中、nは10~36の整数を示し、RはHまたはCH
3を示す。)
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、耐ホットオフセット性や高温高湿下における帯電維持性が良好で、低印字率の画像においても耐摩擦性が良好なトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示において、数値範囲を示す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特
に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
本発明者らは、低印字率の画像における耐摩擦性向上を目的として、鋭意検討を行った。その結果、下記のトナーを用いることで、低印字率の画像においても、従来にない優れた耐摩擦性が得られることを見出した。
すなわち、本開示のトナーは、
結着樹脂、炭化水素ワックス、スチレンアクリル系樹脂組成物を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂を30質量%以上含有し、
該スチレンアクリル系樹脂組成物は、下記式(1)で表されるユニットを4質量%~25質量%含有し、
該スチレンアクリル系樹脂組成物は、ATR法を用い、ATR結晶としてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定して得られたFT-IRスペクトルにおいて、
芳香環のC=C結合に由来する1570cm-1~1630cm-1の範囲の最大吸収ピーク強度をA、
炭化水素のC-H結合に由来する2800cm-1~2900cm-1の範囲の最大吸収ピーク強度をB、としたとき、
比(B/A)が1.8~4.0であり、
該トナーは、該結着樹脂100質量部に対して、該炭化水素ワックスを3質量部~15質量部含有することを特徴とする。
【0011】
【化2】
(式(1)中、nは10~36の整数を示し、RはHまたはCH
3を示す。)
【0012】
本発明者らは、本開示の効果が得られた理由を以下のように考えている。
低印字率の画像において、耐摩擦性が悪化する主な原因は、上述した通り、定着時に染み出した炭化水素ワックスが画像表面にとどまることができず、メディアに流れるため、画像表面の摩擦係数が高くなるためである。
炭化水素ワックスが画像表面にとどまることができない理由は、結着樹脂として含有する非晶性ポリエステル樹脂と、離型剤として含有する炭化水素ワックスとは極性が異なるためである。
トナー中に含まれる炭化水素ワックスは、定着時に画像表面に染み出して、離型剤として機能し、耐ホットオフセット性が良好となる。
【0013】
しかしながら、その極性の差によって、染み出した炭化水素ワックスは、画像表面に留まるエネルギーを有していない。その結果、低印字率の画像においては、炭化水素ワックスが画像表面からメディアへ流れることで、画像表面ワックス量が減少し、耐摩擦性が悪化する。
よって、耐摩擦性を改善するためには、低印字率の画像においても、定着時に画像表面に染み出したワックスを画像表面上に留める必要がある。
【0014】
本発明者らは、ポリエステル樹脂と炭化水素ワックスと特定のスチレンアクリル系樹脂組成物を含有するトナーにおいて、該スチレンアクリル系樹脂組成物が定着時に炭化水素ワックスを画像表面に留める効果を発揮することを見出し、本開示に至った。
本開示におけるスチレンアクリル系樹脂組成物は、下記式(1)で表されるユニットを4質量%~25質量%含有し、
ATR法を用い、ATR結晶としてGe(ゲルマニウム)、赤外光入射角として45°の条件で測定して得られたFT-IRスペクトルにおいて、
芳香環のC=C結合に由来する1570cm-1~1630cm-1の範囲の最大吸収ピーク強度をA、
炭化水素のC-H結合に由来する2800cm-1~2900cm-1の範囲の最大吸収ピーク強度をB、としたとき、
比(B/A)が1.8~4.0であることが特徴である。
【0015】
【化3】
(式(1)中、nは10~36の整数を示し、RはHまたはCH
3を示す。)
【0016】
該スチレンアクリル系樹脂組成物は、式(1)で表されるユニットを含有することを特徴とする。式(1)で表されるユニットは、nが10~36の炭化水素基を有するため、炭化水素ワックスとの親和性が向上し、画像表面に炭化水素ワックスを留める効果が得られる。
式(1)で表され、nが10~36であるユニットとしては、例えば以下のモノマーに由来するユニットが挙げられる。
アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ノナデシル、メタクリル酸ノナデシル、アクリル酸エイコシル、メタクリル酸エイコシル、アクリル酸ヘンエイコサニル、メタクリル酸ヘンエイコサニル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ベヘニル、アクリル酸リグノセリル、メタクリル酸リグノセリル、アクリル酸セリル、メタクリル酸セリル、アクリル酸オクタコサ、メタクリル酸オクタコサ、アクリル酸ミリシル、メタクリル酸ミリシル、アクリル酸ドドリアコンタ、メタクリル酸ドドリアコンタ等が挙げられる。
【0017】
式(1)中、nは、好ましくは12~30であり、より好ましくは18~22であり、さらに好ましくはnが22である。すなわち、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ベヘニルに由来する構造が好ましい。
nで表される炭素数が上記範囲となることで炭化水素ワックスとの親和性が向上し、画像表面に炭化水素ワックスを留める効果が高くなるため、耐摩擦性が向上する。
【0018】
式(1)のユニットを、該スチレンアクリル系樹脂組成物中に、4質量%~25質量%含有することで、定着時に炭化水素ワックスと染み出しやすくなる。しかも、ポリエステル樹脂と炭化水素ワックスとの界面に存在して、画像表面に炭化水素ワックスをとどめることが可能となり、耐摩擦性及び耐ホットオフセット性が良好となる。
式(1)のユニットの含有量は、4質量%~20質量%が好ましく、4質量%~15質量%がより好ましい。
【0019】
該スチレンアクリル系樹脂組成物のFT-IRスペクトルにおいて、1570cm-1~1630cm-1の範囲の最大吸収ピーク強度Aは、芳香環のC=C結合に由来するピークであり、スチレンユニットに由来するピークである。
一方、該スチレンアクリル系樹脂組成物のFT-IRスペクトルにおいて、2800cm-1~2900cm-1の範囲の最大吸収ピーク強度Bは、炭化水素のC-H結合に由来するピークである。C-H結合は、上記式(1)で表されるユニット中に存在すると共に、スチレンアクリル系樹脂組成物中のその他の部位にも複数存在するため、C-H結合に由来するピークはそれらが合わさったピークである。
【0020】
すなわち、最大吸収ピーク強度AとBとの比(B/A)とは、該スチレンアクリル系樹脂組成物中のスチレンユニットに対する炭化水素ユニットの比率を示している。
スチレンユニットに対する炭化水素ユニットの比(B/A)が1.8~4.0であることにより、該スチレンアクリル系樹脂組成物は、下記の分子運動性と親和性を高める効果とを得ることができる。
・定着時に画像表面に染み出すために必要な分子運動性。
・ポリエステル樹脂と炭化水素ワックスとの界面に介在して、炭化水素ワックスとの親和性を高める効果。
【0021】
該スチレンアクリル系樹脂組成物における炭化水素ユニットは、炭化水素ワックスとの親和性を高めるために必要であるが、分子運動性が高い。分子運動性が高すぎると、定着時に染み出した際、該スチレンアクリル系樹脂組成物が画像表面にとどまる効果が得られず、炭化水素ワックスと共にメディアへ流れてしまうため、耐摩擦性向上の効果は得られない。更に、分子運動性が高いスチレンアクリル系樹脂組成物は、トナーにおいて、帯電のリークサイトとして機能する。高温高湿下において、分子運動性が高いスチレンアクリル系樹脂組成物を含有すると、帯電維持性が悪化するおそれがある。
【0022】
一方で、スチレンユニットは、該スチレンアクリル系樹脂組成物の分子運動性を抑制する効果が得られる。そのため、スチレンユニットによって、分子運動性を制御することで、画像表面にとどまりやすくなり、耐摩擦性が向上し、かつ帯電維持性が良好となる。
すなわち、炭化水素ユニットで、炭化水素ワックスとの親和性を高めつつ、スチレンユニットで分子運動性を制御することが必要であり、それらの比(B/A)が1.8~4.0となることで、耐摩擦性及び帯電維持性が向上する。
スチレンユニットに対する炭化水素ユニットの比(B/A)は、2.0~3.5がより好ましく、2.0~3.0がさらに好ましい。上記範囲となることで、炭化水素ワックスとの親和性及び分子運動性がより良好となり、耐摩擦性及び帯電維持性が良好となる。
【0023】
<ATR法によるFT-IRスペクトルの測定>
ATR法によるFT-IRスペクトルの測定は、下記の装置を用いて行った。
・Universal ATR Sampling Accessory(ユニバーサルATR測定アクセサリー)を装着したフーリエ変換赤外分光分析装置(商品名:Spectrum One、PerkinElmer社製)
赤外光の入射角は45°に設定した。
ATR測定に使用するプリズムとしては、GeのATR結晶(屈折率=4.0)を用いて行った。
【0024】
その他の測定条件は以下の通りである。
Range
Start:4000cm-1
End:600cm-1(GeのATR結晶)
Duration
Scan number:4
Resolution:4.00cm-1
Advanced:CO2/H2O補正あり
【0025】
具体的な測定手順は以下の通りである。
比(B/A)の算出方法
(1)GeのATR結晶(屈折率=4.0)を装置に装着する。
(2)Scan typeをBackground、UnitsをEGYに設定し、バックグラウンドを測定する。
(3)Scan typeをSample、UnitsをAに設定する。
(4)サンプルをATR結晶の上に、0.01g精秤する。
(5)圧力アームでサンプルを加圧する。(Force Gaugeは100)
【0026】
(6)サンプルを測定する。
(7)得られたFT-IRスペクトルを、Automatic Correctionでベースライン補正をする。
(8)1570cm-1~1630cm-1の範囲の吸収ピーク強度の最大値を算出する。(A)
(9)2800cm-1~2900cm-1の範囲の吸収ピーク強度の最大値を算出する。(B)
(10)比(B/A)を計算する。
【0027】
該トナーは、結着樹脂100質量部に対して、炭化水素ワックスを3質量部~15質量部含有することを特徴とする。炭化水素ワックスは、摩擦係数が低い材料であるため、耐摩擦性を向上させる上で必要であると共に、離型剤として耐ホットオフセット性が良好となる。本開示におけるトナーは、結着樹脂100質量部に対して、炭化水素ワックスを3質量部~15質量部含有することで耐摩擦性及び耐ホットオフセット性が良好となる。
炭化水素ワックスの含有量は、5質量部~10質量部であることが上記効果を得る上でより好ましい。
【0028】
炭化水素ワックスとしては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスが挙げられる。中でも、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスは耐摩擦性が良好となるため、好ましい。
【0029】
スチレンアクリル系樹脂組成物は、炭化水素化合物を幹部位とし、スチレンアクリル系樹脂を枝部位とするグラフト重合体であることが好ましい。該グラフト重合体とすることにより、炭化水素ワックスとの親和性が向上し、画像表面に炭化水素ワックスを留める効果が高くなり、耐ホットオフセット性及び耐摩擦性が向上する。
【0030】
該炭化水素化合物は、ポリオレフィンであることが好ましい。ポリオレフィンであることにより、炭化水素化合物とスチレンアクリル系樹脂とのグラフト重合の反応性が良好となり、より均一なスチレンアクリル系樹脂組成物が得られやすくなる。その結果、炭化水素ワックスとの親和性を高めつつ、スチレンユニットで分子運動性を制御する効果が向上し、画像表面に炭化水素ワックスを留める効果が高くなり、耐ホットオフセット性及び耐摩擦性が向上する。
なおグラフト変性する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
【0031】
該スチレンアクリル系樹脂組成物は、炭化水素化合物ユニットを10質量%~30質量%含有することが好ましく、10質量%~20質量%含有することがより好ましい。上記範囲内であることにより、該スチレンアクリル系樹脂組成物は、定着時に炭化水素ワックスと共に画像表面に染み出しやすくなるため、画像表面に炭化水素ワックスを留める効果が高くなり、耐摩擦性が向上する。
【0032】
該炭化水素化合物ユニットは、ポリエチレン、ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスのような炭化水素ワックスからなる群から選択される少なくとも一であることが好ましい。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンが炭化水素ユニットの分子運動性を抑えられるため、帯電維持性の観点でより好ましい。
【0033】
該スチレンアクリル系樹脂組成物は、式(1)で表されるユニット及びスチレンユニットと共にその他のモノマーとの共重合体であってもよい。
該スチレンアクリル系樹脂組成物は、該スチレンユニットを50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上がより好ましい。上記範囲とすることにより、スチレンアクリル系樹脂組成物の分子運動性が抑制され、帯電維持性が向上する。
【0034】
スチレンユニットを形成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。スチレン、α―メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、p-アセトキシスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、フェニルスチレン、ベンジルスチレンなどのスチレン系モノマー。
その他のモノマーとしては、以下のものが挙げられる。酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;ビニルメチルエーテルのようなビニルエーテル系モノマー:塩化ビニルのようなハロゲン元素含有ビニル系モノマー:ブタジエン、イソブチレンなどのジエン系モノマー;シクロヘキシルアクリレートなどのシクロアルキル基含有ビニル系モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸ハーフエステルなどの酸価を付加するモノマー及びこれらの併用。
【0035】
該スチレンアクリル系樹脂組成物の酸価は、10.0mgKOH/g~30.0mgKOH/gであることが好ましく、15.0mgKOH/g~30.0mgKOH/gであることがより好ましい。
該酸価が上記範囲内であることにより、帯電維持性が良好となり、非晶性ポリエステル樹脂中のスチレンアクリル系樹脂組成物の分散性が良好となる。
該酸価は、上述した酸価を付与するモノマーの含有量を調整することで制御可能である。なお、上記酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。樹脂の酸価は、JISK0070-1992に準じて測定する。
【0036】
該スチレンアクリル系樹脂組成物の重量平均分子量は、1.5×104~1.0×105であることが好ましく、1.5×104~5.0×104であることがより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であることにより、ポリエステル樹脂中への分散性が良好になると共に、定着時に画像表面へ染み出しやすくなるため、耐摩擦性が良好となる。
【0037】
<重量平均分子量の測定>
スチレンアクリル系樹脂組成物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下のようにして測定する。
まず、試料をテトラヒドロフラン(THF)中に入れ、25℃で数時間静置した後、十分に振とうし、THFとよく混ぜ、試料の合一体が無くなるまで、さらに12時間以上静置する。
その時、THF中への静置時間が24時間となるようにする。その後、得られた溶液をサンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2μm~0.5μm、例えばマイショリディスクH-25-2(東ソー社製))を通過させたものをGPCの試料とする。
【0038】
また、試料濃度は、0.5mg/mL~5.0mg/mLとなるように調製する。この試料溶液を用いて、以下の条件で測定する。
温度40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mLの流速で流し、前記試料溶液を約100μL注入して測定する。
【0039】
カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせる。
昭和電工社製のshodex GPC KF-801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合せ、又は、
東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合せを用いる。
【0040】
試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出する。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、東ソー社製又は昭和電工社製の分子量が1×102~1×107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いる。なお、検出器はRI(屈折率)検出器を用いる。
【0041】
本開示におけるトナーは、結着樹脂中に非晶性ポリエステル樹脂を30質量%以上含有することが特徴であり、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。非晶性ポリエステル樹脂の含有量が上記範囲内であると、結着樹脂、炭化水素ワックス及びスチレンアクリル系樹脂組成物との親和性の観点から、定着画像上の炭化水素ワックスを制御しやすくなり、耐摩擦性が向上し、かつ耐ホットオフセット性も良好となる。
【0042】
本開示における結着樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂が上記範囲内であれば、その他の樹脂を併用してもよい。
その他の樹脂としては、公知の結着樹脂を用いることができる。例えば、結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。
スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂。
好ましく用いられる樹脂として、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリエステル樹脂とスチレン系共重合樹脂が混合又は両者が一部反応したハイブリッド樹脂が挙げられる。
【0043】
また、本開示におけるトナー粒子は、結晶性ポリエステル樹脂を含有していても良い。結晶性ポリエステル樹脂は公知の樹脂を用いることができる。
非晶性ポリエステル樹脂を構成する成分について詳述する。なお、以下の成分は種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
非晶性ポリエステル樹脂を構成する2価の酸成分としては、以下のジカルボン酸又はその誘導体が挙げられる。
【0044】
フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸のようなベンゼンジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸のようなアルキルジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;炭素数の平均値が1~50のアルケニルコハク酸類又はアルキルコハク酸類、又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル。
該低級アルキルエステル中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。
【0045】
一方、非晶性ポリエステル樹脂を構成する2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。
エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、水素化ビスフェノールA、式(I-1)で表されるビスフェノール及びその誘導体:及び式(I-2)で示されるジオール類。
【0046】
【化4】
該式(I-1)中、Rはエチレン基又はプロピレン基を示し、x、yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0~10である。
【0047】
【化5】
該式(I-2)中、R’はエチレン基又はプロピレン基を示し、x’、y’はそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x’+y’の平均値は0~10である。
該非晶性ポリエステル樹脂の構成成分は、上述の2価のカルボン酸化合物及び2価のアルコール化合物以外に、3価以上のカルボン酸化合物、3価以上のアルコール化合物を構成成分として含有してもよい。
【0048】
3価以上のカルボン酸化合物としては、特に制限されないが、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
また、3価以上のアルコール化合物としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリンなどが挙げられる。
非晶性ポリエステル樹脂の構成成分は、上述した化合物以外に、1価のカルボン酸化合物及び1価のアルコール化合物を構成成分として含有してもよい。具体的には、1価のカルボン酸化合物としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などが挙げられる。また、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、テトラコンタン酸、ペンタコンタン酸なども挙げられる。
【0049】
また、1価のアルコール化合物としては、ベヘニルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、テトラコンタノールなどが挙げられる。
該非晶性ポリエステル樹脂の製造方法については、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
例えば、前述の2価のカルボン酸化合物及び2価のアルコール化合物をエステル化反応又はエステル交換反応、及び縮合反応を経て重合し、非晶性ポリエステル樹脂を製造するとよい。
【0050】
重合温度は、特に制限されないが、180℃~290℃の範囲が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の重合に際しては、例えば、チタン系触媒、スズ系触媒、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなどの重合触媒を用いることができる。
本開示における結着樹脂の軟化点(以下単に、Tmともいう)は、85℃~150℃であることが好ましく、100℃~150℃であることがより好ましい。
該結着樹脂の軟化点が上記範囲であることにより、耐ホットオフセット性が良好となる。
また、該結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃~65℃であることが好ましく、55℃~60℃であることがより好ましい。
該結着樹脂のガラス転移温度(Tg)が上記範囲であることにより、トナーの帯電維持性が良好となる。
【0051】
<結着樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定>
結着樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、樹脂組成物5mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、リファレンスとして空の銀製のパンを用い、測定範囲30℃~180℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。
【0052】
一度、180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、30℃~180℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、DSC曲線におけるガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度を、樹脂のガラス転移温度(Tg:℃)とする。
【0053】
<結着樹脂の軟化点(Tm)の測定>
本開示において、樹脂の軟化点(Tm)は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」(島津製作所社製)を用いて測定することができる。
なお、CFT-500Dは、上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させながら溶融してシリンダ底部の細管孔から押し出し、この際のピストンの降下量(mm)と温度(℃)から流動曲線をグラフ化できる装置である。
【0054】
本開示においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点(Tm)とする。
なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。
【0055】
まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量(流出終了点、Smaxとする)と、流出が開始した時点におけるピストンの降下量(最低点、Sminとする)との差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax-Smin)/2)。そして、ピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度を、1/2法における溶融温度とする。
測定試料は、1.2gの樹脂を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、標準手動式ニュートンプレス NT-100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて10MPaで、60秒間圧縮成型し、直径8mmの円柱状としたものを用いる。
【0056】
測定における具体的な操作は、装置に付属のマニュアルに従って行う。
CFT-500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:40℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):5.0kgf
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
【0057】
本開示のトナーは、磁性一成分トナー、非磁性一成分トナー、非磁性二成分トナーのいずれのトナーとしても使用できる。
磁性一成分トナーとして用いる場合、着色剤としては、磁性酸化鉄粒子が好ましく用いられる。磁性一成分トナーに含まれる磁性酸化鉄粒子としては、以下のものが挙げられる。マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む磁性酸化鉄;Fe,Co,Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl,Co,Cu,Pb,Mg,Ni,Sn,Zn,Sb,Be,Bi,Cd,Ca,Mn,Se,Ti,W,Vのような金属との合金、及びこれらの混合物。
【0058】
磁性酸化鉄粒子の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、30質量部~150質量部以下が好ましい。
非磁性一成分トナー、及び非磁性二成分トナーとして用いる場合の着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色の顔料としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラックが用いられ、また、マグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0059】
イエロー色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12、13、14、15、17、23、62、65、73、74、81、83、93、94、95、97、98、109、110、111、117、120、127、128、129、137、138、139、147、151、154、155、167、168、173、174、176、180、181、183、191、C.I.バットイエロー1,3,20。染料としては、C.I.ソルベントイエロー19、44、77、79、81、82、93、98、103、104、112、162等が挙げられる。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いる。
【0060】
シアン色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15;1、15;2、15;3、15;4、16、17、60、62、66等、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントブルー25、36、60、70、93、95等が挙げられる。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いる。
【0061】
マゼンタ色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,48;2、48;3、48;4、49,50,51,52,53,54,55,57,57;1、58,60,63,64,68,81,81;1、83,87,88,89,90,112,114,122,123,144、146,150,163,166、169、177、184,185,202,206,207,209,220、221、238、254等、C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35。マゼンタ用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,52、58、63、81,82,83,84,100,109,111、121、122等、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27等、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40等、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28等の塩基性染料等。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いる。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、1質量部~20質量部が好ましい。
【0062】
トナーに離型性を与えるために、炭化水素ワックス以外のワックスを併用してもよい。本開示に用いられるワックスの一例としては、次のものが挙げられる。酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化型ワックス;カルナバワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部または全部を脱酸化したものなど。さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系共重合モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物。
ワックスを添加するタイミングは、トナー製造時に添加してもよいし、結着樹脂の製造時に添加してもよい。
【0063】
本開示のトナーは、該トナー中のスチレンアクリル系樹脂組成物の含有量をX(質量%)とし、該炭化水素ワックスの含有量をY(質量%)としたとき、比(X/Y)が0.8~1.5であることが好ましく、1.0~1.3であることがより好ましい。
比(X/Y)が上記範囲であることにより、結着樹脂、炭化水素ワックス、スチレンアクリル系樹脂組成物の親和性のバランスが良好となり、炭化水素ワックスが定着時に画像表面に染み出しやすく、かつとどまりやすくなる。その結果、耐ホットオフセット性及び耐摩擦性が良好となる。
【0064】
本開示のトナーは、荷電制御剤として、既知の荷電制御剤を用いることができる。既知の荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。アゾ系鉄化合物、アゾ系クロム化合物、アゾ系マンガン化合物、アゾ系コバルト化合物、アゾ系ジルコニウム化合物、カルボン酸誘導体のクロム化合物、カルボン酸誘導体の亜鉛化合物、カルボン酸誘導体のアルミ化合物、カルボン酸誘導体のジルコニウム化合物。前記カルボン酸誘導体は、芳香族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。また、荷電制御樹脂も用いることもできる。必要に応じて一種類又は二種類以上の荷電制御剤を併用してもかまわない。荷電制御剤は結着樹脂100質量部に対して0.1質量部~10質量部添加することが好ましい。
【0065】
本開示のトナーは、磁性キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。磁性キャリアとしては、通常のフェライト、マグネタイト等の磁性キャリアや樹脂コートキャリアを使用することができる。また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型の磁性キャリアコアも用いることができる。
【0066】
樹脂コートキャリアは、磁性キャリアコア粒子と磁性キャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂被覆層からなる。樹脂被覆層に用いられる樹脂としては、以下のものが挙げられる。スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン-アクリル系樹脂;アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリビニルブチラール;アミノアクリレート樹脂。その他には、アイオモノマー樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は複数を併用して用いることができる。
【0067】
本開示のトナーにおいては、帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上のために、シリカ微粉体をトナー粒子に外添することが好ましい。シリカ微粉体は、窒素吸着によるBET法による比表面積が30m2/g~500m2/gであることが好ましく、50m2/g~400m2/gであることがさらに好ましい。また、トナー粒子100質量部に対して、シリカ微粉体を0.01質量部~8.00質量部用いることが好ましく、0.10質量部~5.00質量部用いることがより好ましい。
【0068】
シリカ微粉体のBET比表面積は、例えば下記の比表面積測定装置を用いてシリカ微粉体の表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することができる。
比表面積測定装置:オートソーブ1(商品名、湯浅アイオニクス社製)、GEMINI2360/2375(商品名、マイクロメティリック社製)、トライスター3000(商品名、マイクロメティリック社製)
シリカ微粉体は、必要に応じ、疎水化、摩擦帯電性コントロールの目的で下記のような処理剤で、あるいは種々の処理剤を併用して処理されていることも好ましい。
・処理剤:未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシラン化合物又は、その他の有機ケイ素化合物
【0069】
さらに本開示のトナーには、必要に応じて他の外添剤を添加してもよい。このような外添剤としては、例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラ定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粉体が挙げられる。帯電補助剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなどの金属酸化物が挙げられる。滑剤としては、ポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末が挙げられる。研磨剤としては、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末が挙げられる。
【0070】
該トナー粒子の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いるとよい。例えば、粉砕法、乳化凝集法、懸濁重合法、溶解懸濁法などが挙げられる。
粉砕法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。結着樹脂、着色剤及び必要に応じてその他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミルのような混合機により充分に混合する。混合物を二軸混練押出機、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練する。その際、ワックス、磁性酸化鉄粒子及び含金属化合物を添加することもできる。溶融混練物を冷却固化した後、粉砕及び分級を行い、トナー粒子を得る。この際、微粉砕時の排気温度を調整することで、トナー粒子の平均円形度を制御することができる。さらに必要に応じて、トナー粒子と外添剤をヘンシェルミキサーのような混合機により混合し、トナーを得ることができる。
【0071】
混合機としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。
【0072】
粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)。
また、必要に応じて、粉砕後に、以下に挙げる装置を用いて、トナー粒子の表面処理を行い、トナー粒子の平均円形度を制御することもできる。ハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)、イノマイザ(ホソカワミクロン社製)、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)、メカノミル(岡田精工社製)、メテオレインボー MR Type(日本ニューマチック社製)。
【0073】
分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
【0074】
粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、以下のものが挙げられる。ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボエ業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い。
【0075】
<トナー粒子の粒度分布の測定方法>
次に本開示に関わるトナー粒子の粒度分布の測定方法に関して記載する。
細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置(商品名:コールターカウンター Multisizer 3)と、専用ソフト(商品名:ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51、ベックマン・コールター社製)を用いる。
アパーチャー径は100μmを用い、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、ベックマン・コールター社製のISOTON II(商品名)が使用できる。なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
【0076】
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0077】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤として下記の「コンタミノンN」をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
・コンタミノンN:非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製
【0078】
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
【0079】
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃~40℃となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【実施例】
【0080】
以上、本開示の基本的な構成と特色について述べたが、以下、実施例に基づいて具体的に本願発明について説明する。しかしながら、本開示は何らこれに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り部及び%は、質量基準である。
【0081】
<結着樹脂1の製造例>
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2モル付加物): 50.0モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2モル付加物): 50.0モル部
・テレフタル酸: 90.0モル部
・無水トリメリット酸: 10.0モル部
【0082】
上記ポリエステルユニットを構成するモノマー100質量部をチタンテトラブトキシド500ppmと共に5リットルオートクレーブに混合した。
そこに、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管、温度計及び攪拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら230℃で縮重合反応を行った。所望の軟化点になるように反応時間を調整し、反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して非晶性ポリエステル樹脂を100質量%含有する結着樹脂1を得た。表1Aに示すように、結着樹脂1のTmは130℃、Tgは57℃であった。
【0083】
<結着樹脂2の製造例>
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2モル付加物): 50.0モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2モル付加物): 50.0モル部
・テレフタル酸: 65.0モル部
・無水トリメリット酸: 25.0モル部
・アクリル酸: 10.0モル部
【0084】
上記ポリエステル樹脂を生成するモノマーの混合物70部を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて160℃で攪拌した。
そこに、ビニル系樹脂を生成するビニル系モノマー(スチレン90.0モル部、及び2-エチルヘキシルアクリレート10.0モル部)30部及び重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド1部を滴下ロートから4時間かけて滴下した。そして、温度160℃で5時間反応させた。
その後、230℃に昇温して、ポリエステル樹脂を生成するモノマーの総量に対して0.2部のチタンテトラブトキシドを添加し、Tmが130℃になるまで重合を行った。
反応終了後、容器から取り出し、冷却、粉砕して結着樹脂2を得た。表1Aに示すように、Tgは55℃であった。
【0085】
<結着樹脂3の製造例>
ポリエステル樹脂を生成するモノマーの混合物を50部、ビニル系樹脂を生成するビニル系モノマーを50部に変更した以外は、結着樹脂2と同様にして、結着樹脂3を得た。表1Aに示すように、Tmは135℃、Tgは56℃であった。
<結着樹脂4の製造例>
ポリエステル樹脂を生成するモノマーの混合物を25部、ビニル系樹脂を生成するビニル系モノマーを75部に変更した以外は、結着樹脂2と同様にして、結着樹脂4を得た。表1Aに示すように、Tmは130℃、Tgは53℃であった。
【0086】
<スチレンアクリル系樹脂組成物1の製造例>
温度計及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン300.0部、ポリプロピレン15.0部を入れ充分に溶解し、窒素置換した。その後、スチレン69.0部、メタクリル酸シクロヘキシル4.5部、メタクリル酸3.5部、アクリル酸ベヘニル8.0部、及びキシレン250.0部の混合溶液を温度180℃で3時間滴下し重合した。さらにこの温度で30分間保持し、脱溶剤を行い、スチレンアクリル系樹脂組成物1を得た。得られたスチレンアクリル系樹脂組成物のATR指数(B/A)、酸価、重量平均分子量を表1Bに示す。
【0087】
<スチレンアクリル系樹脂組成物2~12の製造例>
炭化水素化合物種、その量などを表1Bに示すように変更した以外は、スチレンアクリル系樹脂組成物1と同様にして、スチレンアクリル系樹脂組成物2~12を得た。得られたスチレンアクリル系樹脂組成物のATR指数(B/A)、酸価、重量平均分子量を表1Bに示す。
【0088】
【0089】
【0090】
<実施例1>
(トナー1の製造例)
・結着樹脂1 100部
・フィッシャートロプシュワックス(融点90℃) 7部
・スチレンアクリル系樹脂組成物1 8.4部
・C.I.ピグメントブルー 15:3 4部
上記材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、二軸混練押し出し機によって、160℃で溶融混練した。
【0091】
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミルで微粉砕した。
得られた微粉砕物を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)6.0μmのトナー粒子1を得た。
該100部のトナー粒子1に対して、疎水化処理したシリカ微粒子(BET法で測定した窒素吸着による比表面積が140m2/g)2.0部を外添混合し、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。
【0092】
上記トナー1と磁性キャリアとを、トナーの濃度が7質量%になるように、V型混合機(商品名:V-10型、(株)徳寿製作所)を用い、0.5s-1および回転時間5分間という条件で混合した。用いた磁性キャリアは、アクリル樹脂で表面被覆してなる磁性フェライトキャリア粒子(個数平均粒径:35μm)である。
以上のようにして、二成分系現像剤1を得た。
二成分系現像剤1を用い、後述する評価を行った。
【0093】
画像形成装置として、キヤノン製デジタル商業印刷用プリンターimageRUNNER ADVANCE C9075 PRO改造機を用い、シアン位置の現像器に二成分系現像剤1を入れた。静電潜像担持体または紙上のトナーの載り量が所望になるよう現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、レーザーパワーを調整し、後述の評価を行った。改造点としては、定着温度、プロセススピードを自由に設定できるように変更した。
【0094】
(耐摩擦性)
紙 :OKトップコート+(128.0g/m2)
評価画像 :反射濃度が0.15となる10cm2のハーフトーン画像
定着試験環境 :常温常湿度環境(温度23℃/相対湿度50%)
プロセススピード:350mm/sec
上記画像形成装置を用い、上記条件でハーフトーン画像を出力した。
耐摩擦性の評価は、下記方法により求めた。
まず、ハーフトーン画像を印字した部分に対し、0.2kgf/cm2の荷重をかけて、白紙の上記コート紙により定着画像を摺擦(10往復)した。
リフレクトメータ(REFLECTOMETER MODEL TC-6DS:東京電色製)を用いて、上記コート紙の白地部の平均反射率Ds(%)を測定した。
次に、摺擦に用いた上記コート紙の摺擦部の平均反射率Dr(%)を測定した。そして下記式を用いてカブリ(%)を算出した。得られたカブリを下記の評価基準に従って評価した。
カブリ(%)=Dr(%)-Ds(%)
【0095】
(評価基準)
A: 2.0%未満
B: 2.0%以上、5.0%未満
C: 5.0%以上、10.0%未満
D:10.0%以上、15.0%未満
E:15.0%以上
【0096】
(耐ホットオフセット性)
評価紙 :A4用紙 CS-680(68.0g/m2)
(キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)
評価紙上のトナーの載り量 :0.08mg/cm2
評価画像 :上記A4用紙の中心にハーフトーン画像(2cm×2cm)を配置
定着試験環境 :常温低湿環境:温度23℃/相対湿度5%(以下「N/L」)
プロセススピード:321mm/sec
定着温度 :200℃
【0097】
上記評価画像(未定着画像)を作製した。次に、定着ベルトの中心位置に無地のはがき(日本郵便(株)が販売している、サイズが100mm×148mmの裏面無地の通常はがき)を10枚通紙した後に、上記未定着画像が配置された評価紙を1枚通紙して定着させた。そして、リフレクトメータ(REFLECTOMETER MODEL TC-6DS:東京電色製)によって画像出力前の評価紙の平均反射率Dr(%)と定着試験後の白地部の反射率Ds(%)を測定し、下記式を用いてカブリを算出した。得られたカブリを下記の評価基準に従って評価した。
カブリ(%)=Dr(%)-Ds(%)
【0098】
(評価基準)
A:0.2%未満
B:0.2%以上、0.5%未満
C:0.5%以上、1.0%未満
D:1.0%以上
【0099】
(帯電維持性)
高温高湿環境下(温度32.5℃、相対湿度80%)で静電潜像担持体へのトナーの載り量が0.35mg/cm2となるように調整し、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集した。その際、金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた電荷量Q、及び捕集されたトナー質量Mを測定し、単位質量当たりの電荷量Q/M(mC/kg)を計算し、静電潜像担持体上Q/M(mC/kg)とした。
上記の評価を行った後に、現像器を機外に取り外し、温度32.5℃、相対湿度80%の環境下に72時間静置し、現像器を機内に再度装着し、初期評価と同じ直流電圧VDCで静電潜像担持体上の単位質量当たりの電荷量Q/Mを測定した。
上記の初期の静電潜像担持体上Q/Mを100%とし、72時間静置後の感光体上Q/Mの維持率([72時間静置後のQ/M]/[初期のQ/M]×100)を算出して以下の基準で判断した。
【0100】
(評価基準)
A:維持率が80%以上
B:維持率が70%以上80%未満
C:維持率が60%以上70%未満
D:維持率が60%未満
二成分系現像剤1は耐摩擦性、耐ホットオフセット性、帯電維持性に対して、いずれもAランクであった。
【0101】
<実施例2~9、比較例1~4>
(トナー2~13の製造例)
結着樹脂、スチレンアクリル系樹脂組成物、炭化水素ワックスの種類及び添加量を表2のように変更した以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー2~13を得た。
【0102】
【表2】
PES比率=(P/(P+V))×100(%)
P:ポリエステル樹脂を生成するモノマーの総量(質量部)
V:ビニル系樹脂を生成するモノマーの総量(質量部)
【0103】
(現像剤2~13の製造例)
トナーを表3のように変更した以外は、現像剤1の製造例と同様にして、現像剤2~13を得た。さらに、現像剤1と同様に評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0104】
【0105】
現像剤1~13は、常温常湿度環境(温度23℃/相対湿度50%)における耐摩擦性評価条件の評価画像をベタ画像に変更し、反射濃度を測定した所、いずれも1.40以上が得られた。なお、反射濃度の測定には、分光濃度計500シリーズ(X-Rite社製)を使用し、10枚出力したベタ画像の、1枚目、5枚目、10枚目の画像中の任意の5点を測定して、その平均値とした。