(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】磁性キャリア、二成分現像剤、及び補給用現像剤
(51)【国際特許分類】
G03G 9/107 20060101AFI20241216BHJP
G03G 9/113 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G03G9/107 331
G03G9/113 351
(21)【出願番号】P 2021038670
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】村山 隆二
(72)【発明者】
【氏名】小松 望
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宜弘
(72)【発明者】
【氏名】小野▲崎▼ 裕斗
(72)【発明者】
【氏名】辻本 大祐
(72)【発明者】
【氏名】藤田 信幸
(72)【発明者】
【氏名】満生 健太
(72)【発明者】
【氏名】椎野 萌
(72)【発明者】
【氏名】皆川 浩範
(72)【発明者】
【氏名】小堀 尚邦
【審査官】河内 悠
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/113
G03G 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性コア粒子と、前記磁性コア粒子の表面を被覆する樹脂層を有する磁性キャリアであって、
前記樹脂層は、樹脂及びポリロタキサンを含有し、
前記ポリロタキサンは、
(i)複数の環状分子と、
(ii)前記環状分子が有する環に串刺し状に包接される鎖状分子と
を有し、
(iii)前記鎖状分子が、前記環状分子が前記鎖状分子から脱離することを防止する、2つ以上の封鎖基を有する
ことを特徴とする磁性キャリア。
【請求項2】
前記環状分子が、シクロデキストリン骨格を有する分子である請求項1に記載の磁性キャリア。
【請求項3】
前記シクロデキストリン骨格を有する分子の重量平均分子量が、1000~50000である請求項2に記載の磁性キャリア。
【請求項4】
前記シクロデキストリン骨格を有する分子が、シクロデキストリンと、前記シクロデキストリンに結合した側鎖と、を有する請求項2又は3に記載の磁性キャリア。
【請求項5】
前記側鎖が、ポリエステル構造又はビニルポリマー構造を有する請求項4に記載の磁性キャリア。
【請求項6】
前記ポリエステル構造が、ポリカプロラクトン構造である請求項5に記載の磁性キャリア。
【請求項7】
前記ポリロタキサンの含有割合が、前記樹脂の質量に対して0.2質量%以上30.0質量%以下である請求項1~6の何れか一項に記載の磁性キャリア。
【請求項8】
前記ポリロタキサンが、第1のポリロタキサン及び第2のポリロタキサンを含み、
前記樹脂層が、前記第1のポリロタキサンと前記第2のポリロタキサンとが結合してなる、結合ポリロタキサンを含み、
前記第1のポリロタキサンと前記第2のポリロタキサンとは、前記第1のポリロタキサンが有する環状分子と、前記第2のポリロタキサンが有する環状分子とが、化学結合によって結合されている請求項1~7の何れか一項に記載の磁性キャリア。
【請求項9】
前記環状分子が、シクロデキストリン骨格を有する分子であり、
前記シクロデキストリン骨格を有する分子の重量平均分子量が、1000~50000であり、
前記シクロデキストリン骨格を有する分子が、シクロデキストリンと、前記シクロデキストリンに結合した側鎖と、を有し、
前記樹脂が、樹脂Aを含有し、
前記樹脂層中に含有される樹脂の全質量に対する、前記樹脂Aの質量の割合が、50質量%以上であり、
前記樹脂AのSP値をSPa(J/cm
3)
1/2とし、
前記側鎖のSP値をSPb(J/cm
3)
1/2としたとき、
下記式(1)を満たす請求項1~8の何れか一項に記載の磁性キャリア。
|SPb-SPa|≦2.0(J/cm
3)
1/2 ・・・ (1)
【請求項10】
前記樹脂Aが、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つである請求項9に記載の磁性キャリア。
【請求項11】
前記鎖状分子が、ポリアルキレングリコール鎖を有する分子である請求項1~10の何れか一項に記載の磁性キャリア。
【請求項12】
前記磁性コア粒子の質量に対する、前記樹脂の質量の割合が、1.0~5.0質量%である請求項1~11の何れか一項に記載の磁性キャリア。
【請求項13】
トナーと磁性キャリアとを含有する二成分現像剤であって、
前記磁性キャリアが、請求項1~12の何れか一項に記載の磁性キャリアである
ことを特徴とする二成分現像剤。
【請求項14】
トナーと磁性キャリアとを含有する補給用現像剤であって、
前記磁性キャリアが、請求項1~12の何れか一項に記載の磁性キャリアである
ことを特徴とする補給用現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁性キャリア、二成分現像剤、及び補給用現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置の現像剤において、磁性キャリアとトナーとを混合し、摩擦帯電させて、トナーに適当量の正または負の電荷を付与し、その電荷をドライビングフォースとして現像させる二成分現像剤が知られている。トナーを十分に帯電させ、感光体ドラム上に現像させる観点から、磁性キャリアを十分に帯電させるために、磁性キャリアコア粒子の表面に被覆樹脂を有する磁性キャリアが広く採用されており、また、被覆樹脂についても様々な検討が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、被覆樹脂を含有する磁性キャリアであり、被覆樹脂中に特定の化合物を添加することにより、長期の連続画像形成後及び放置後のハーフトーン画質、白点の発生の抑制、細線再現性に優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-170216号公報
【文献】WO01/083566
【文献】特開2017-31258号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】polym.Eng.Sci.,14(2),147-154(1974)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一態様は、低湿環境において画像濃度を低下させにくい磁性キャリアの提供に向けたものである。
【0007】
また、本開示の他の態様は、本開示に係る磁性キャリアを有する二成分現像剤の提供に向けたものである。
【0008】
また、本開示の他の態様は、本開示に係る磁性キャリアを有する補給用現像剤の提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様によれば、磁性コア粒子と、前記磁性コア粒子の表面を被覆する樹脂層を有する磁性キャリアであって、
前記樹脂層は、樹脂及びポリロタキサンを含有し、
前記ポリロタキサンは、
(i)複数の環状分子と、
(ii)前記環状分子が有する環に串刺し状に包接される鎖状分子と
を有し、
(iii)前記鎖状分子が、前記環状分子が前記鎖状分子から脱離することを防止する、2つ以上の封鎖基を有する
ことを特徴とする磁性キャリアが提供される。
【0010】
また、本開示の他の態様によれば、トナーと磁性キャリアとを含有する二成分現像剤であって、
前記磁性キャリアが、本開示に係る磁性キャリアである
ことを特徴とする二成分現像剤が提供される。
【0011】
また、本開示の他の態様によれば、トナーと磁性キャリアとを含有する補給用現像剤であって、
前記磁性キャリアが、本開示に係る磁性キャリアである
ことを特徴とする補給用現像剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、低湿環境において画像濃度を低下させにくい磁性キャリアを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示に係る磁性キャリアの断面の1つの態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限および上限を含む数値範囲を意味する。
【0015】
<発明に至った経緯>
近年の画像形成装置には、厳しい環境においても画像弊害が生じにくいことが要求されている。この画像弊害の一例として、特に低湿環境において、トナーや磁性キャリアの過剰帯電が生じやすくなることで、形成される画像の濃度が低下しやすくなる現象が挙げられる。この画像濃度低下に対して様々な検討が行われているが、未だ改善の余地があると、本発明者らは考えている。
【0016】
本発明者らは、低湿環境における磁性キャリアの過剰帯電に着目し、磁性キャリアに広く用いられる構成である被覆樹脂層の工夫によって磁性キャリアの過剰帯電を低減させ、低湿環境における画像濃度低下を生じさせにくくするための検討が必要であると考えた。
【0017】
上記の考えに基づき本発明者らは、低湿環境において画像濃度を低下させにくい磁性キャリアを得るため、種々の材料を含有させた樹脂層を有する磁性キャリアを検討した。その結果、ポリロタキサンを含有させた樹脂層を有するキャリアが、上記の如き特性を備えたキャリアの実現に有効であることを見出した。
【0018】
ポリロタキサンに含有される環状分子が、鎖状分子に沿って回転、移動することができるため、ポリロタキサンは分子運動性が大きい材料である。このような分子運動性が高い材料を磁性キャリア表面の樹脂層に含有させることで、樹脂層中に生じる電荷が移動しやすくなると本発明者らは考えており、これによって磁性キャリア中に生じる過剰な電荷を逃がしやすくなると考えられる。その結果、低湿環境においても磁性キャリアの過剰な帯電が生じにくく、画像濃度の低下が生じにくくなると本発明者らは推測している。
【0019】
<ポリロタキサン>
本開示に係る被覆樹脂層は、ポリロタキサンを含有する。また、該ポリロタキサンは、(i)複数の環状分子と、(ii)該環状分子が有する環に串刺し状に包接される鎖状分子とを有し、(iii)該鎖状分子が、該環状分子が該鎖状分子から脱離することを防止する2つ以上の封鎖基を有する。
【0020】
一般的に、環状分子の環内部を鎖状分子が貫通し,軸の両末端に嵩高い分子を結合することで鎖状分子上に環状分子が束縛された構造の分子集合体は、ロタキサンと呼ばれる。また、1つの鎖状分子上に多数の環状分子が連なった分子集合体は、ポリロタキサンと呼ばれる。環状分子は、鎖状分子とは結合しておらず、鎖状分子上で回転することができ、鎖状分子上を移動することができる。
【0021】
また、現像性の観点から、被覆樹脂の質量に対するポリロタキサンの含有割合が、0.2質量%以上30.0質量%以下含有されることが好ましい。該含有割合の下限は、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、該含有割合の上限は、15.0質量%以下であることがより好ましく、10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0022】
本開示のポリロタキサンは、既に公知の方法、例えば特許文献2や特許文献3に記載の方法により製造することもできるし、一般市販品(商品名:セルム スーパーポリマー、ASM社製)を入手し使用することもできる。
【0023】
本開示のポリロタキサンは、1分子の鎖状分子に貫通される環状分子の個数(包接量)は、特に制限されない。該包接量は、ポリロタキサンを製造する際に用いる鎖状分子と環状分子とのモル比などにより制御することができる。
【0024】
<結合ポリロタキサン>
2つ以上のポリロタキサンが有するそれぞれの環状分子が、単結合または連結基を介して化学結合した構造を有していてもよい。
【0025】
即ち、樹脂層が、第1のポリロタキサンと第2のポリロタキサンとが結合してなる、結合ポリロタキサンを含み、
第1のポリロタキサンと第2のポリロタキサンとは、第1のポリロタキサンが有する環状分子と、第2のポリロタキサンが有する環状分子との間で化学結合を形成することによって結合していてもよい。
【0026】
また、1つのポリロタキサンが有する複数の環状分子同士が、単結合または連結基を介して結合した構造を有していてもよい。
【0027】
本開示において、化学結合とは、単結合であっても、種々の原子又は分子を介する結合(連結基を介する結合)であってもよい。
【0028】
<環状分子>
ポリロタキサンが有する環状分子は、鎖状分子を包接可能であり、鎖状分子が串刺し状に貫通可能である環状構造を有するものであれば、特に限定されずに用いることができる。
【0029】
本開示の環状分子としては、例えば、シクロデキストリン類、クラウンエーテル類、ベンゾクラウン類、ジベンゾクラウン類、ジシクロヘキサノクラウン類及びこれらの誘導体、又は変性体を挙げられる。これらの中でも、シクロデキストリン類であることが鎖状分子を包接し易いため好ましい。即ち、環状分子が、シクロデキストリン骨格を有する分子であることが好ましい。より好ましくは、α-シクロデキストリン骨格、β-シクロデキストリン骨格、及びγ-シクロデキストリン骨格からなる群から選択される少なくとも1つのシクロデキストリン骨格を有する分子である。また、上記環状分子は1種でも構わないが、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本開示において、シクロデキストリン骨格を有する分子とは、シクロデキストリン分子、及び/又は、シクロデキストリン化合物が有するヒドロキシ基に対して誘導化反応を行った場合に、合成される構造を有する分子であると取り扱う。
【0031】
<シクロデキストリンに結合した側鎖>
ポリロタキサンが有する環状分子が、シクロデキストリン骨格を有する分子であり、該シクロデキストリン骨格を有する分子が、シクロデキストリンと該シクロデキストリンに結合した側鎖とを有することが好ましい。ここで、本開示におけるシクロデキストリンに結合した側鎖とは、シクロデキストリンが有するヒドロキシ基に対して誘導化反応を行った場合に導入される部分構造であると取り扱う。該側鎖は直鎖状の構造であってもよく、分岐状の構造であってもよい。
【0032】
上述の側鎖により、ポリロタキサンと樹脂との親和性が大きくなりやすいと考えられる。その結果、樹脂層中に均一に分散された状態で含有されやすいと考えられるため好ましい。また、該側鎖が、ポリマー構造を有することがより好ましく、ポリエステル構造又はビニルポリマー構造を有することがより好ましい。ポリエステル構造の例としては、ジオールとジカルボン酸とが縮合したポリマー構造や、ポリカプロラクトン構造などが挙げられる。また、ビニルポリマー構造とは、ビニルモノマーが重合したポリマー構造であり、例えばスチレン-メタクリル酸メチルポリマー構造などが挙げられる。
【0033】
また、上述の側鎖を有する、シクロデキストリン骨格を有する分子の重量平均分子量が、1000~50000であることが好ましい。重量平均分子量が1000以上であることにより、高温高湿環境における画像カブリが生じにくくなることが分かった。画像カブリが生じにくくなるのは、ポリロタキサンと樹脂とが絡み合い、ポリロタキサンの自己修復機能により樹脂層の耐傷性が優れやすくなることで、磁性体粒子が露出しにくくなるためであると、本発明者らは考えている。そのため、1000以上であることが好ましく、2500以上であることがより好ましく、7000以上であることがさらに好ましい。また、50000以下であることにより、環状分子の分子運動性が過小になりにくく、磁性キャリア中の過剰な電荷を十分逃がしやすいと考えられ、画像濃度が低下しにくくなることが分かった。そのため50000以下であることが好ましく、20000以下であることがより好ましく、10000以下であることがさらに好ましい。
【0034】
上記の重量平均分子量を満たす、シクロデキストリン骨格を有する分子は、例えば、シクロデキストリンにポリマー構造を結合させることによって製造することができる。例えば、シクロデキストリンが有するヒドロキシ基に、ポリエステル構造を導入することによって製造することができる。また、ビニル重合性の二重結合を有するシクロデキストリン誘導体と、ビニル系のモノマーとのビニル重合反応によっても、製造することができる。
【0035】
ポリロタキサン中の環状分子の分子量は、環状分子を単離したのち、GPCなどの分析装置により測定できる。環状分子を単離するためには、第一段階として、ポリロタキサンの末端封止基を除去する必要がある。例えば、アミド基やカルボニル基で結合された末端封止基を有するポリロタキサンの場合には、酸または塩基条件下で加熱させ、加水分解させる手法などがあげられる。次いで、再沈殿、濾過、遠心分離、膜分離などの通常の方法によって環状分子を単離できる。
【0036】
<鎖状分子>
ポリロタキサンが有する鎖状分子は、上記環状分子を串刺し状に貫通することができ、環状分子に包接され、環状分子が自由に回転、摺動、又は移動が可能である鎖状の分子であれば、特に限定されない。また、直鎖の長さも特に制限されない。また、直鎖状分子であることが好ましい。本開示における直鎖状分子とは、分子の主鎖に分岐がない分子であると取り扱う。
【0037】
鎖状分子としては、ポリアルキレン類、ポリエステル類、ポリエーテル類、ポリアミド類、及びポリアクリル類からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、これらの中でも、ポリエーテル類であることがより好ましい。即ち、鎖状分子が、ポリエーテル鎖を有する分子であることが好ましい。より好ましくは、ポリアルキレングリコール鎖を有する分子であり、さらに好ましくはポリエチレングリコール鎖を有する分子である。
【0038】
<封鎖基>
上記の鎖状分子は、その末端に、環状分子の脱離を防止する2つ以上の封鎖基を有する。ポリロタキサンが有する封鎖基は、環状分子の脱離を防止できる構造でさえあれば、特に限定されずに用いることができる。本開示に係る封鎖基としては、例えば、環状分子の脱離を物理的に防止するための嵩高さを有する基、電気的に防止するイオン性の基が挙げられる。具体的には、ジニトロフェニル基類、アダマンチル基類、トリチル基類、及びピレニル基類などが挙げられる。また、鎖状分子の末端に置換基として導入される、シクロデキストリン類、及びフルオレセイン類も具体例として挙げられる。また上記の誘導体や変性体であってもよい。
【0039】
<樹脂層>
本開示の樹脂層は、樹脂を含有する。樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよいが、上述した環状分子の運動性を阻害しにくいと考えられるため、熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、アクリル樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する樹脂層であることが好ましい。さらに、該群より選ばれる少なくとも1種の樹脂の質量の総和が、樹脂層中に含有される樹脂の全質量に対して50質量%以上であることが好ましい。
【0040】
熱可塑性樹脂としては、上記以外にも例えば、以下のものが挙げられる。ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフルオロカーボン樹脂、溶剤可溶性パーフルオロカーボン樹脂、ポリビニルピロリドン、石油樹脂、ノボラック樹脂、飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレートといった芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂。
【0041】
熱硬化性樹脂としては、例えば、以下のものが挙げられる。
フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、無水マレイン酸とテレフタル酸と多価アルコールとの重縮合によって得られる不飽和ポリエステル、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素-メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-グアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、グリプタール樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂。
【0042】
また、磁性コア粒子の質量に対する、樹脂の質量の割合は、1.0~5.0質量%であることが好ましい。
【0043】
また、本開示において、樹脂層とは、磁性コア粒子を被覆している全ての樹脂層を意味する。即ち、
図1に示されるように、磁性コア粒子1を被覆する樹脂層2は、複数の樹脂層から成っていてもよい(例えば、2つの層である場合は、樹脂層3及び樹脂層4から成っていてもよい)。
【0044】
<樹脂A>
樹脂層が樹脂Aを含有し、樹脂層中に含有される樹脂の全質量に対する、樹脂Aの質量の割合が、50質量%以上であり、樹脂Aが以下の関係を満足することが好ましい。即ち、樹脂AのSP値をSPa(J/cm3)1/2とし、上述のシクロデキストリン骨格を有する分子中の側鎖のSP値をSPb(J/cm3)1/2としたとき、下記式(1)を満たすことが好ましい。
|SPb-SPa|≦2.0(J/cm3)1/2 ・・・ (1)
SP値は、下記式(2)より算出される。
SP値(J/cm3)1/2=√(Ev/v)=√(ΣΔei/ΣΔvi) ・・・ (2)
(式(2)中の略号は以下の通り。
・Ev:蒸発エネルギー(J/mol)、
・v:モル体積(cm3/mol)、
・Δei:各々の原子又は原子団の蒸発エネルギー、
・Δvi:各々の原子又は原子団のモル体積)
【0045】
樹脂AのSP値は、樹脂Aを構成するモノマーユニットのSP値をそれぞれ算出し、樹脂A中におけるmol%をかけ、それらを合計することで算出できる。例えば、樹脂Aが単一のモノマーユニットで構成される場合は、モノマーユニットのSP値が、そのまま樹脂AのSP値であるとする。樹脂Aが二種のモノマーユニット(50:50のmol比)で構成されている場合は、二種のモノマーユニットのSP値をそれぞれ算出し、それらの平均値が樹脂AのSP値であるとする。また、上記側鎖がポリマー部分を有する場合も同様に、該ポリマー部分を構成するモノマーユニット及びそのモル比を用いて、側鎖のSP値を算出する。
【0046】
上記式(1)を満たすことにより、ポリロタキサンと樹脂との相溶性が高まりやすくなり、ポリロタキサンが樹脂層中で分散された状態で含有されやすいと考えられるため好ましい。
【0047】
また、上記式(2)における、蒸発エネルギー及びモル体積は、非特許文献1に記載の表の値を用いる。
【0048】
また、上記の樹脂Aが、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、又はシリコーン樹脂であることが好ましい。さらに好ましくは、アクリル樹脂又はポリエステル樹脂である。
【0049】
<磁性コア粒子>
本開示に係る磁性コア粒子としては、マグネタイト粒子、フェライト粒子、磁性体分散型樹脂粒子等の公知の磁性粒子を用いることができる。
【0050】
磁性コア粒子の体積平均粒径(D50)が20μm以上80μm以下であることが、樹脂を均一に被覆でき、キャリア付着防止及び高画質画像を得るための現像剤磁気ブラシの密度を適度にする上で好ましい。より好ましくは20μm以上50μm以下である。
【0051】
また、磁性コア粒子の比抵抗値は、電界強度2000(V/cm)における比抵抗値が1.0×105(Ω・cm)以上1.0×1014(Ω・cm)以下であると良好な現像性が得られやすい。より好ましくは、1.0×1010(Ω・cm)以下である。該比抵抗値は、磁性体の種類、多孔質磁性コア粒子の場合その磁化量、充填樹脂の含有量などにより制御することができる。
【0052】
磁性コア粒子の表面に樹脂を被覆させる方法については、特に制限されず、公知の方法で行うことができる。例えば、キャリアコアと樹脂溶液を撹拌しながら溶剤を揮発させ、キャリアコア表面に樹脂を被覆する、所謂、浸漬法がある。撹拌を行う装置の具体例としては、万能混合撹拌機(不二パウダル社製)、ナウターミキサ(ホソカワミクロン社製)等が挙げられる。
【0053】
また、流動層を形成しながらスプレーノズルから被覆樹脂溶液を吹きつけ、磁性コア粒子の表面に樹脂を被覆させる方法もある。用いられる装置の具体例としては、スピラコーター(岡田精工社製)、スパイラフロー(フロイント産業社製)が挙げられる。
【0054】
また、被覆樹脂を粒子の状態で磁性キャリアコアに対して、乾式で被覆を行う方法もある。具体的には、ハイブリダイザー(奈良機械製作所社製)、メカノフュージョン(ホソカワミクロン社製)、ハイフレックスグラル(深江パウテック製)、シータ・コンポーザ(徳寿工作所社製)等の装置を用いた処理方法を挙げることができる。
【0055】
<二成分現像剤及び補給用現像剤>
本開示に係る磁性キャリアは、二成分現像剤として用いられることが好ましい。即ち、本開示の好ましい態様として、トナーと磁性キャリアとを含有する二成分現像剤であって、磁性キャリアが、本開示に係る磁性キャリアであることが好ましい。二成分現像剤とは、静電潜像担持体に形成された静電潜像を現像するため現像剤である。
【0056】
同様に、本開示に係る磁性キャリアは、補給用現像剤として用いられることが好ましい。即ち、本開示の好ましい態様として、トナーと磁性キャリアとを含有する補給用現像剤であって、磁性キャリアが、本開示に係る磁性キャリアであることが好ましい。補給用現像剤とは、現像器内の二成分現像剤におけるトナー濃度の低下に応じて該現像器に補給するための現像剤である。
【0057】
<トナー>
本開示におけるトナーはトナー粒子を有するトナーであることが好ましい。以下、好ましいトナーの構成を以下に記載する。
【0058】
<結着樹脂>
本開示のトナー粒子は結着樹脂を含有することが好ましい。結着樹脂としては、例えば、以下の樹脂が挙げられる。
ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;
スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体などのスチレン系共重合体;
ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂。
【0059】
これらの中でも、トナーの低温定着性及び帯電性の観点から、ポリエステルを用いることが好ましい。
【0060】
また、必要により、着色剤、ワックス、荷電制御剤及び無機微粒子などから選ばれる1種以上の添加剤を含有してもよい。トナーに用いられる各種添加剤について具体的に記載する。
【0061】
<ワックス>
ワックスとしては、例えば、以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス。酸化ポリエチレンワックスなどの炭化水素系ワックスの酸化物またはそれらのブロック共重合物。カルナバワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したもの。
【0062】
これらの中でも、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性の観点から、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックスや、カルナバワックスなどの脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。本開示においては、トナーの耐ホットオフセット性の観点から、炭化水素系ワックスがより好ましい。
【0063】
トナー粒子中のワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
【0064】
また、トナーの保存性と耐ホットオフセット性の観点から、トナーを測定試料とした、示差走査熱量分析装置(DSC)で測定される昇温時の吸熱曲線において、ワックスに由来する吸熱ピークのピーク温度が、50℃以上110℃以下であることが好ましい。
【0065】
<着色剤>
着色剤としては、例えば以下のものが挙げられる。着色剤としては、顔料単独で使用してもよく、染料と顔料とを併用してもよい。
【0066】
黒色着色剤として、カーボンブラック;イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調整したもの。
【0067】
マゼンタトナー用着色顔料しては、例えば以下のものが挙げられる。
縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。
具体的には、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、150、163、166、169、177、184、185、202、206、207、209、220、221、238、254、269;C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
【0068】
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。
C.Iソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27、C.I.ディスパースバイオレット1などの油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28などの塩基性染料。
【0069】
シアントナー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントブルー1、2、3、7、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66;C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチルを1~5個置換した銅フタロシアニン顔料。
【0070】
イエロー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。
縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物。
具体的には、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74,83、93、95、97,109、110、111、120、127、128、129、147、155、168、174、180、181、185、191;C.I.バットイエロー1、3、20が挙げられる。また、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、ソルベントイエロー162などの染料も使用することができる。
【0071】
トナー粒子中の着色剤の含有量は、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上30.0質量部以下であることが好ましい。
【0072】
<磁性体>
本開示のトナーは、磁性トナーであっても非磁性トナーであってもよいが、磁性トナーとして用いる場合、トナー粒子に含有させる磁性体として磁性酸化鉄を用いることが好ましい。磁性酸化鉄としては、例えば、マグネタイト、マグヘマタイト、フェライトなどが挙げられる。
【0073】
トナー粒子中の磁性体の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、25質量部以上95質量部以下であることが好ましく、より好ましくは30質量部以上45質量部以下である。
【0074】
<荷電制御剤>
本開示のトナーには、荷電制御剤を含有させてもよい。荷電制御剤としては、ネガ系荷電制御剤及びポジ系荷電制御剤が挙げられる。
【0075】
ネガ系荷電制御剤としては、例えば、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸もしくはカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩もしくはスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩もしくはカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンなどが挙げられる。
【0076】
トナーに荷電制御剤を含有させる場合、荷電制御剤は、トナー粒子に対して内添してもよいし、外添してもよい。
【0077】
トナー中の荷電制御剤の含有量は、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。
【0078】
<外添剤>
本開示のトナーには、トナーの流動性の向上や摩擦帯電量の調整のために、外添剤が添加されていてもよい。無機微粒子の外添剤としては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウムなどの無機微粒子が好ましい。無機微粒子以外の外添剤としては、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂などの樹脂微粒子などが挙げられる。
【0079】
これらの無機微粒子や樹脂微粒子は、トナーの帯電性の制御や、流動性やクリーニングの助剤として機能する。
【0080】
<トナー粒子の製造方法>
本開示のトナー粒子は、溶融混練法、乳化凝集法、溶解懸濁法など、公知のトナー粒子の製造方法で製造することができる。
【0081】
以下、粉砕法でのトナー製造手順について説明する。
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、例えば、結着樹脂、離型剤、着色剤、結晶性ポリエステル、必要に応じて荷電制御剤等の他の成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の1例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス工業社製)などが挙げられる。
【0082】
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中にワックス等を分散させる。その溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーの如きバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業社製)などが挙げられる。更に、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
【0083】
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルの如き粉砕機で粗粉砕した後、更に、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
【0084】
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)の如き分級機や篩分機を用いて分級する。
【0085】
外添処理する方法としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス工業社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)等の混合装置を外添機として用いて、撹拌・混合する方法が挙げられる。その際、必要に応じて、流動化剤等のシリカ微粒子以外の外添剤を外添処理しても良い。
【0086】
<各種測定方法>
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
【0087】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムを脱イオン水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0088】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように上記専用ソフトの設定を行う。
【0089】
上記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0090】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
【0091】
具体的な測定法は以下の(1)~(7)の通りである。
【0092】
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに上記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去する。
【0093】
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに上記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を脱イオン水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
【0094】
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量の脱イオン水を入れ、この水槽中に上記コンタミノンNを約2ml添加する。
【0095】
(4)上記(2)のビーカーを上記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
【0096】
(5)上記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ上記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
【0097】
(6)サンプルスタンド内に設置した上記(1)の丸底ビーカー内に、ピペットを用いてトナー粒子を分散した上記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
【0098】
(7)測定データを装置付属の上記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0099】
<磁性コア粒子の体積平均粒径(D50)の測定>
体積平均粒径(D50)の測定には、乾式測定用の試料供給機「ワンショットドライ型サンプルコンディショナーTurbotrac」(日機装社製)を装着して行う。制御は、ソフトウエア上で自動的に行う。粒径は体積平均の累積値である50%粒径(D50)を求める。制御及び解析は付属ソフト(バージョン10.3.3-202D)を用いて行う。測定条件は下記の通りである。
・SetZero時間 :10秒
・測定時間 :10秒
・測定回数 :1回
・粒子屈折率 :1.81%
・粒子形状 :非球形
・測定上限 :1408μm
・測定下限 :0.243μm
・測定環境 :23℃、50%RH
【0100】
<GPCによる重量平均分子量測定>
試料の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
【0101】
まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
・装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
・カラム:Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0ml/min
・オーブン温度:40.0℃
・試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソ-社製)を用いて作製した分子量校正曲線を使用する。
【0102】
<比抵抗値の測定>
試料の比抵抗値は、
図2に概略される測定装置を用いて測定する。なお、電界強度2000(V/cm)における比抵抗値を測定する。
【0103】
抵抗測定セルAは、断面積2.4cm
2の穴の開いた円筒状容器(PTFE樹脂製)17、下部電極(ステンレス製)18、支持台座(PTFE樹脂製)19、上部電極(ステンレス製)20から構成される。支持台座19上に円筒状容器18を載せ、粉末状の試料21を厚さ約1mmになるように充填し、充填された試料21に上部電極20を載せ、試料の厚みを測定する。
図2(a)に示す如く、試料のないときの間隙をd1とし、
図2(b)に示す如く、厚さ約1mmになるように試料を充填したときの間隙d2とすると、試料の厚みdは下記式で算出される。
d=d2-d1(mm)
【0104】
この時、試料の厚みdが0.95mm以上1.04mm以下となるように試料の質量を適宜変える。
【0105】
電極間に直流電圧を印加し、そのときに流れる電流を測定することによって試料の比抵抗を求めることができる。測定には、エレクトロメーター22(ケスレー6517A ケスレー社製)及び制御用に処理コンピュータ23を用いる。制御用の処理コンピュータにナショナルインスツルメンツ社製の制御系と制御ソフトウエア(LabVEIW ナショナルインスツルメンツ社製)を用いた。
【0106】
測定条件として、試料と電極との接触面積S=2.4cm2、試料の厚み0.95mm以上1.04mm以下になるように実測した値dを入力する。また、上部電極の荷重270g、最大印加電圧1000Vとする。
・比抵抗値(Ω・cm)=(印加電圧(V)/測定電流(A))×S(cm2)/d(cm)
・電界強度(V/cm)=印加電圧(V)/d(cm)
磁性キャリア及び多孔質磁性コアの電界強度2000(V/cm)における比抵抗値は、比抵抗値を縦軸、電界強度を横軸にとったグラフから読み取る。
【実施例】
【0107】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、これらに限定されない。まず、実施例において用いた、各種ポリロタキサン及び被覆樹脂の調製、磁性コア粒子の製造例について記載する。
【0108】
<トナー1の製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:100.0mol%
・テレフタル酸:多価カルボン酸総モル数に対して80.0mol%
・無水トリメリット酸:多価カルボン酸総モル数に対して20.0mol%
上記モノマー材料を、冷却管、攪拌機、窒素導入管および熱電対を備える反応槽に投入した。そして、上記モノマー材料の総量100質量部に対して、触媒(エステル化触媒)として2-エチルヘキサン酸スズを1.5質量部添加した。次に、反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。
【0109】
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180まで冷却し、そのまま反応させ、ASTM D36-86に従って測定した軟化点が122℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、ポリエステル1を得た。
【0110】
得られたポリエステル1の軟化点(Tm)は112℃であり、ガラス転移温度(Tg)は63℃であった。
・上記ポリエステル1 100.0質量部
・3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.1質量部
・フィッシャートロプシュワックス(DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度:90℃) 5.0質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 5.0質量部
【0111】
次に上記材料をヘンシェルミキサー(商品名:FM75J型、日本コークス工業社製)を用いて、回転数20s-1および回転時間5分の条件で混合した後、温度125℃に設定した二軸混練機(商品名:PCM-30型、池貝社製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(商品名:T-250、ターボ工業社製)にて微粉砕した。さらに、回転型分級機(商品名:200TSP、ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子を得た。回転型分級機(商品名:200TSP、ホソカワミクロン社製)の運転条件は、分級ローター回転数を50.0s-1とした。
【0112】
得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)は、6.2μmであった。
【0113】
得られたトナー粒子100.0質量部に対し、ヘキサメチルジシラザン20.0質量%で表面処理された、一次平均粒径15nmの疎水性のシリカ微粒子1.0質量部を添加した。それらを、ヘンシェルミキサー(商品名:FM75J型、日本コークス工業社製)で混合し、目開き54μmの超音波振動篩を通過させ、トナー1を得た。
【0114】
<磁性コア粒子の製造例>
工程1(秤量・混合工程)
以下のフェライト原材料を秤量して用意した。
Fe2O3 61.7質量部
MnCO3 34.2質量部
Mg(OH)2 3.0質量部
SrCO3 1.1質量部
【0115】
これらを、ジルコニアのボール(φ10mm)を用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0116】
工程2(仮焼成工程)
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で、温度950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。フェライトの組成は、下記の通りである。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe2O3)d
上記式において、a=0.40、b=0.07、c=0.01、d=0.52
【0117】
工程3(粉砕工程)
クラッシャーで0.5mm程度に粉砕した後に、ジルコニアのボール(φ1.0mm)を用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで2時間粉砕した。ボールを分離後、ジルコニアのビーズ(φ1.0mm)を用い、湿式ビーズミルで3時間粉砕し、フェライトスラリーを得た。
【0118】
工程4(造粒工程)
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100質量部に対してポリビニルアルコール2.0質量部をバインダーとして添加し、スプレードライヤー(大川原化工機社製)で、40μmの球状粒子に造粒した。
【0119】
工程5(本焼成工程)
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.0体積%)で、温度1150℃で4時間焼成した。
【0120】
工程6(選別工程)
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、多孔質の磁性粒子を得た。該磁性粒子の体積平均粒径(D50)は、38μm、比抵抗値は、4.0×107Ω・cmであった。
【0121】
工程7(樹脂充填工程)
上記の磁性粒子を100.0質量部、混合撹拌機(商品名:万能撹拌機NDMV型、ダルトン社製)の撹拌容器内に入れ、60℃に温度を保ちつつ、2.3kPaまで減圧しながら窒素を導入した。さらに、シリコーン樹脂溶液を磁性粒子に対して樹脂成分が7.5質量部となるように減圧下で滴下し、滴下終了後2時間そのまま撹拌を続けた。
【0122】
その後、70℃まで温度を上げ、減圧下で溶剤を除去して、シリコーン樹脂溶液に含まれるシリコーン樹脂組成物を多孔質の磁性粒子に充填して充填コア粒子を得た。
【0123】
冷却後、回転可能な混合容器内にスパイラル羽根を有する混合機(商品名:ドラムミキサーUD-AT型、杉山重工業社製)に、上記で得られた充填コア粒子を移し、窒素雰囲気、常圧下で、2(℃/min)の昇温速度で、220℃に昇温した。さらに220℃で60分間加熱撹拌を行い、樹脂を硬化させた。
【0124】
熱処理した後、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口150μmの篩で分級して、磁性コア粒子を得た。該磁性コア粒子の体積平均粒径(D50)は、40μm、比抵抗値は、4.4×107Ω・cmであった。
【0125】
<ポリロタキサンB1の調製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、を備えた反応容器に、下記材料を添加して撹拌した。
・下記のポリロタキサン1 10.0g
(ポリロタキサン1:セルムスーパーポリマーSA1305P-20(商品名)、ASM社製。鎖状分子がポリエチレングリコール構造を有し、鎖状分子末端にアダマンチル基を有し、環状分子として、ポリカプロラクトン構造を側鎖に有するαシクロデキストリンを複数個有する。また、側鎖の末端にアクリル骨格を有するため、ビニル重合性の炭素-炭素二重結合を有する。)
・40mLの1.0N-NaOH水溶液
・1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(東京化成製) 1.2mL
【0126】
温度23℃において上記を24時間攪拌させ、シクロデキストリン同士を架橋させたポリロタキサンを得た。次いで、単離したのち、キシレンを600.0g、スチレンを150.0g、メタクリル酸メチルを50.0gと開始剤t-ブチルパーオキシピバレート1.5gを添加し、撹拌機を回転させながら90℃の温度を保持して3時間重合を行い、反応生成物を得た。得られた反応生成物を洗浄・乾燥することで、シクロデキストリン同士が化学結合しており、ポリカプロラクトン構造及びスチレン-メタクリル酸メチルポリマー構造を有する側鎖がシクロデキストリンに結合している、ポリロタキサンB1を得た。
【0127】
<ポリロタキサンB2の調製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、を備えた反応容器に、下記材料を添加して撹拌した。
・下記のポリロタキサン2 10.0g
(ポリロタキサン2:セルムスーパーポリマーSM1305P-20(商品名)、ASM社製。鎖状分子がポリエチレングリコール構造を有し、鎖状分子末端にアダマンチル基を有し、環状分子として、ポリカプロラクトン構造を側鎖に有するαシクロデキストリンを複数個有する。また、側鎖の末端にメタクリル骨格を有するため、ビニル重合性の炭素-炭素二重結合を有する。)
・40mLの1.0N-NaOH水溶液
・1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(東京化成製)1.2mL
温度23℃において24時間攪拌させたことにより、環状分子同士を架橋させたポリロタキサンを得た。次いで、単離したのち、キシレンを600.0g、スチレンを250.0g、メタクリル酸メチルを75.0gと開始剤t-ブチルパーオキシピバレート1.5gを添加し、撹拌機を回転させながら90℃の温度を保持して5時間重合を行い、反応生成物を得た。得られた反応生成物を洗浄・乾燥することで、シクロデキストリン同士が化学結合しており、ポリカプロラクトン構造及びスチレン-メタクリル酸メチルポリマー構造を有する側鎖がシクロデキストリンに結合している、ポリロタキサンB2を得た。
【0128】
<ポリロタキサンB3の調製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、を備えた反応容器に、下記材料を添加して撹拌した。
・上記のポリロタキサン2 10.0g
・1.0N-NaOH水溶液 40mL
・1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(東京化成製)1.2mL
温度23℃において24時間攪拌させたことにより、環状分子同士を架橋させたポリロタキサンを得た。次いで、単離したのち、キシレンを600.0g、スチレンを300.0g、メタクリル酸メチルを100.0gと開始剤t-ブチルパーオキシピバレート1.5gを添加し、撹拌機を回転させながら90℃の温度を保持して8時間重合を行い、反応生成物を得た。得られた反応生成物を洗浄・乾燥することで、シクロデキストリン同士が化学結合しており、ポリカプロラクトン構造及びスチレン-メタクリル酸メチルポリマー構造を有する側鎖がシクロデキストリンに結合している、ポリロタキサンB3を得た。
【0129】
<ポリロタキサンB4の調製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、を備えた反応容器に、下記材料を添加して撹拌した。
・メタクリル酸 5.0g
・メタクリル酸メチル 45.0g
・スチレン 150.0g
・キシレン600.0g
・t-ブチルパーオキシピバレート1.5g
上記を温度60℃で24時間反応させることにより、ポリマー1 を得た。次いで、溶媒留去後、ここに上記ポリロタキサン2を10.0g、40mLの濃硫酸(98質量%)を添加して均一に撹拌した。次に、温度100℃において1時間攪拌させ、環状分子が有するヒドロキシ基とポリマー1中のカルボキシ基とをエステル結合させたポリロタキサンを得た。
【0130】
次いで、単離したのち、キシレンを600.0g、スチレンを300.0g、メタクリル酸メチルを100.0gと開始剤t-ブチルパーオキシピバレート1.5gを添加し、撹拌機を回転させながら90℃の温度を保持して8時間重合を行い、反応生成物を得た。得られた反応生成物を洗浄・乾燥することで、ポリカプロラクトン構造及びスチレン-メタクリル酸メチルポリマー構造を有する側鎖がシクロデキストリンに結合している、ポリロタキサンB4を得た。
【0131】
<ポリロタキサンB5の調製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、を備えた反応容器に、キシレンを600.0g、上記ポリロタキサン2を10.0gとスチレンを150.0g、メタクリル酸メチルを50.0gと開始剤t-ブチルパーオキシピバレート1.5gを添加し、撹拌機を回転させながら90℃の温度を保持して3時間重合を行い、反応生成物を得た。得られた反応生成物を洗浄・乾燥することで、ポリカプロラクトン構造及びスチレン-メタクリル酸メチルポリマー構造を有する側鎖がシクロデキストリンに結合している、ポリロタキサンB5を得た。
【0132】
<ポリロタキサンB6の調製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、を備えた反応容器に、下記材料を添加した。
・キシレン 600.0g
・下記のポリロタキサン3 10.0g
(ポリロタキサン3:セルムスーパーポリマーSH1310P(商品名)、ASM社製。鎖状分子がポリエチレングリコール構造を有し、鎖状分子末端にアダマンチル基を有し、環状分子として、ポリカプロラクトン構造を側鎖に有するαシクロデキストリンを複数個有する。また、側鎖の末端にヒドロキシ基を有する。)
・エポキシ変性シリコーン樹脂(ES1001N;信越化学社製) 15.0g。
撹拌機を回転させながら60℃の温度を保持することにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物を洗浄・乾燥することで、ポリカプロラクトン構造及びシリコーンポリマー構造を有する側鎖がシクロデキストリンに結合している、ポリロタキサンB6を得た。
【0133】
<ポリロタキサンB7>
ポリロタキサンB7は上記ポリロタキサン2を用いた。
【0134】
<ポリロタキサンB8の調製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、を備えた反応容器に、下記材料を添加した。
・キシレン 1200.0g
・上記ポリロタキサン2 10.0g
・スチレン 1000.0g
・メタクリル酸メチル 350.0g
・t-ブチルパーオキシピバレート 1.5g
次いで、撹拌機を回転させながら温度90℃を保持して24時間重合を行い、反応生成物を得た。得られた反応生成物を洗浄・乾燥することで、ポリカプロラクトン構造及びスチレン-メタクリル酸メチルポリマー構造を有する側鎖がシクロデキストリンに結合している、ポリロタキサンB8を得た。
【0135】
<ポリロタキサンB9>
ポリロタキサンB9は、上記ポリロタキサン3を用いた。
【0136】
<ポリロタキサンB10の調製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、を備えた反応容器に、下記材料を添加して撹拌した。
・キシレン 1200.0g
・上記ポリロタキサン2 10.0g
・スチレン 1000.0g
・メタクリル酸メチル 500.0g
・t-ブチルパーオキシピバレート 1.5g
撹拌機を回転させながら温度90℃を保持して24時間重合を行い、反応生成物を得た。得られた反応生成物を洗浄・乾燥することで、ポリカプロラクトン構造及びスチレン-メタクリル酸メチルポリマー構造を有する側鎖がシクロデキストリンに結合している、ポリロタキサンB10を得た。
【0137】
<ポリロタキサンB11の調製>
純水100mLに、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペロジニロキシラジカル(TEMPO)(6.4×10-4mol)を加えた後、pH10~11に調整した。この溶液に下記材料を加えて10~15分室温で撹拌し、ポリエチレングリコールの末端を酸化させた。
・臭化ナトリウム 9.7×10-4mol
・13質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液 10mL
・n=35,000のポリエチレングリコール(Aldrich社) 7.0×10-4mol
その後、エタノールを10ml加えた後、pH2に調整し、ジクロロメタン100mLを用い、3回に分けてジクロロメタン抽出を行った。
【0138】
ジクロロメタン抽出液を減圧乾固し、温度40~50℃のエタノールで溶解後、1昼夜冷凍保存した後、末端基がカルボン酸となったポリエチレングリコール(以下、PEG-COOH)を遠心分離して回収した。得られたPEG-COOHを凍結乾燥した。
【0139】
得られたPEG-COOHを8.6×10-5molと、αシクロデキストリンを1.2×10-2molとを純水100mLに溶解し、一昼夜冷凍庫内に静置した後に得られる、白いペースト状の合成物を凍結乾燥し、粉末状の包接錯体を得た。
【0140】
無水ジメチルホルムアミド100mLに、下記材料を溶解し、温度4℃で24時間反応させた。
・得られた包接錯体 14g
・アダマンタンアミン 1.1×10-3mol
・ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリスジメチルアミノホスホニウム塩 1.1×10-3mol
・エチルイソプロピルアミン 1.2×10-3mol
その後,ジメチルホルムアミド/メタノール溶液(1:1,v/v)及びメタノールで、それぞれ2回洗浄した。さらに無水ジメチルスルホキシド80mLと純水800mLを混合した溶液で洗浄し、凍結乾燥することで、αシクロデキストリンが包接されたポリロタキサンB11を得た。
【0141】
<被覆樹脂1の調製>
下記で示される材料を、還流冷却器、温度計、窒素吸い込み管、及びすり合わせ方式撹拌装置を有する四つ口フラスコに加えた。
・メタクリル酸シクロヘキシル・・・74.5質量部
・メタクリル酸メチル・・・0.5質量部
・メタクリル酸マクロモノマー・・・25質量部
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
さらにトルエン100質量部、メチルエチルケトン100質量部、及びアゾビスイソバレロニトリル2.0質量部を加えた。得られた混合物を、窒素気流下、70℃の温度で10時間保持し、重合反応終了後、洗浄を繰り返し、被覆樹脂1溶液(固形分35質量%)を得た。被覆樹脂1のSP値(SPa)は10.2(J/cm3)1/2であった。
【0142】
<被覆樹脂2の調製>
被覆樹脂2として、シリコーン樹脂(信越化学社製:KR242A(固形分50%))の溶媒を留去したものを用いた。被覆樹脂2のSP値(SPa)は8.1(J/cm3)1/2であった。
【0143】
<実施例1>
[被覆樹脂溶液の製造例]
・被覆樹脂1 9.80質量部
・トルエン 60.00質量部
・メチルエチルケトン 30.00質量部
・ポリロタキサンB1 0.20質量部
上記材料を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過をおこない、被覆樹脂溶液を得た。
【0144】
[樹脂被覆工程]
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに、上記の磁性コア粒子及び被覆樹脂溶液を投入した(被覆樹脂溶液の投入量は、100部の磁性コア粒子1に対して被覆樹脂1が2.5部になる量)。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後冷却した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)38μmの磁性キャリア1を得た。
【0145】
<二成分現像剤の製造例>
上記トナー1と磁性キャリア1とを、トナーの濃度が9質量%になるように、V型混合機(商品名:V-10型、徳寿製作所)を用い、0.5s-1および5分の条件で混合し、二成分現像剤を得た。
【0146】
<補給用現像剤の製造例>
上記トナー1と磁性キャリア1とを、トナーの濃度が90質量%になるように、V型混合機(商品名:V-10型、(株)徳寿製作所)を用い、0.5s-1および5分の条件で混合し、補給用現像剤を得た。
【0147】
<評価>
得られた二成分現像剤及び補給用現像剤を用いて下記の評価を行った。まず、画像形成装置として、フルカラー複写機(商品名:imagePRESS C10000VP、キヤノン社製)の改造機を用い、シアンステーションの現像器に二成分現像剤1を投入した。上記複写機の改造点としては、現像バイアスを調整できるようにした点であった。
【0148】
上記装置を用い、常温低湿環境下(23℃/5%RH、以下N/L環境)、及び高温高湿環境下(30℃/80%RH、以下H/H環境)において、それぞれ3万枚の画像出力耐久試験、及びこの画像出力耐久試験の前後に下記の評価を行った。
【0149】
なお、耐久試験中は、1枚目と同じ現像条件及び転写条件(ただし、キャリブレーションは無し)で通紙を行うこととした。出力画像の印字比率は30%とし、初期の画像濃度が1.55となるように現像バイアスを調整した。評価用の紙としては、コピー用のA4サイズの普通紙(商品名:CF-C081、坪量:81.4g/m2、キヤノンマーケティングジャパン社)を用いた。
【0150】
尚、画像形成に際しては、シアン色の現像器に入っている現像剤を上記の二成分現像剤に入れ替え、また、シアン色の補給用現像剤容器に入っている現像剤を上記の補給用現像剤に入れ替えた。該評価において二成分現像剤と補給用現像剤を用いているのは、この両者を用いることが、上記画像形成装置を使用する際の通常の態様であるためである。
【0151】
<画像濃度の評価>
上記のN/L環境における耐久試験の後、A3サイズの紙全面に、ベタ画像を3枚出力した。3枚目の画像に対して、X-Rite社製の分光濃度計(商品名:500シリーズ)を用いて出力画像の濃度を5点測定し、5点の平均値を耐久後の画像濃度とした。初期の画像濃度1.55に対する耐久後の画像濃度の維持率で、画像濃度の評価を行った。結果を表3に示す。
【0152】
該画像濃度の維持率が大きいほど、キャリアの帯電性の変化が少ないと考えられるため、該画像濃度の維持率が70%以上であったものを本開示の効果が得られているものと判断した。
【0153】
<カブリの評価>
上記のH/H環境における耐久試験の前後において、下記の評価を行った。
【0154】
00h画像を10枚出力し、10枚目の紙上の画像部の平均反射率Dr(%)をリフレクトメーター(東京電色社製の「REFLECTOMETER MODEL TC-6DS」)によって測定した。また、非画像部に対しても同様の測定を行い、紙上の平均反射率Ds(%)を測定した。そして、上記のDr(%)とDs(%)を下記式に代入し、カブリ(%)を算出した。結果を表3に示す。耐久試験前後の両方において、該算出値が1.5%以下であったものを、本開示の効果が得られているものと判断した。
カブリ(%)=Dr(%)-Ds(%)
【0155】
<実施例2~17及び比較例1>
実施例1において、材料の種類及び部数を表1に記載の様に変更した以外は、同様の操作を行って、磁性キャリア2~18を得た後、同様に二成分現像剤及び補給用現像剤を製造し、それらを用いて評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0156】
【0157】
表1において、MEKとは、メチルエチルケトンである。また、環状分子の分子量は、上述した方法で測定した値であり、各種SP値は上述した方法で算出した値である。
【0158】