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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】車軸計数装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 1/16 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
B61L1/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021041881
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141528
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】布施 卓也
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-092771(JP,A)
【文献】特開2018-091694(JP,A)
【文献】特開2017-142159(JP,A)
【文献】特開2020-075540(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0126954(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路の対象区間の端部に設けられた複数の車軸検出子それぞれに対応させて複数のカウンタが設けられており、前記カウンタが何れも前記車軸検出子のうち対応するものから送出された車軸検出信号に基づいて輪軸の来去を計数するものであり、前記の複数のカウンタのうち対をなすカウンタについて何れか一方だけが計数値を単調に連続して更新した回数を計る連続カウンタが設けられており、前記連続カウンタの値と所定の判定基準値とを比較して前記車軸検出子に係る故障の有無を判別するようになっている、ことを特徴とする車軸計数装置。
【請求項2】
前記の対をなすカウンタは、前記の複数のカウンタのうち前記線路の長手方向において隣りに位置するもの同士である、ことを特徴とする請求項1記載の車軸計数装置。
【請求項3】
前記判定基準値が整数の「3」であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された車軸計数装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道の線路の区間に係る列車在線の有無判別に役立つ車軸計数装置に関し、詳しくは、監視や計数の対象になっている区間の端部に設置された車軸検出子の出力に基づいて対象区間の出入りに関わった車軸(輪軸)を数える車軸計数装置に関し、更に詳しくは、車軸検出子の故障を検出する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道用の車軸計数装置は、アクスルカウンタとも呼ばれ、基本的には、対象区間に進入した車軸と、区間から進出した車軸とについて、個数を数え上げるものである。
車軸検出子の所を車軸が通過(来去)したことを検出する車軸検知器をも含めて車軸計数装置と呼ぶこともあれば、車軸検知器を含めない構成部分だけを車軸計数装置と呼ぶこともあるが、本願では、車軸検出子や車軸検知器による車軸検知結果に基づいて車軸の個数を数える構成部分が含まれていれば車軸計数装置に該当するものとする。
すなわち、対象区間の一端部に係る車軸の来去に応じて個数を数えるものであれば、本願の対象の車軸計数装置に該当する。
【0003】
車軸検出子と車軸検知器とを先に述べると、車軸検出子には車軸検知子や車輪検出子と呼ばれるものも該当する。また、車軸検知器には、車軸検知装置や,車軸検出器,車軸検出装置,車輪検知器,車輪検出器,車輪検知装置,車輪検出装置と呼ばれるものも該当する。このような車軸検出子や車軸検知器として多用されてきたものは、対をなす送信器と受信器とをレールの内側と外側とに分けて配置し、両器間の信号が車輪によって遮断されることを利用して、車輪ひいては車軸(輪軸)を検出するようになっているが、送信器と受信器とをレールの片側に設けてレール長手方向に並べるようになったものもある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
送信器と受信器との対が明確であればその対を車軸検出子とするのが基本であるが、送信器と受信器とが同数でなくても良くなっているので(例えば特許文献1参照)、その場合は、検出結果を出す受信器の方を重視してそれを車軸検出子とする。
車軸検知器は、線路区間の複数の端部のうち何れか一つの端部に配設された通常は複数個の車軸検出子を駆動しながら夫々の車軸検出子から車軸検出状態・車軸検出結果を取得して、該当端部に係る車軸の通過有無(来去有無)を検出するようになっている。進行方向(前進後退)まで検出するものもある。
【0005】
かかる車軸検知器には、信号レベルやパルス発現状態などに基づき個々の車軸検出子について故障の有無を検出するようになったものもあるが(例えば特許文献1~3参照)、そのような瞬時毎のセンサ故障検出に代えて又は加えて、輪軸に感応した時のパルスのカウント数(計数値)といった経時的な要素に基づいて車軸検出子に係る故障の有無を検出する謂わば経時的センサ故障検出手法も発案されている。
そのようなセンサ故障検出手法を具備した車軸計数装置を具体例で説明する。
【0006】
図7は、線路の対象区間8に対して設置された車軸計数装置20に係る全体構成のブロック図であり、図8(a)は、対象区間8の一端部の拡大図であり、図8(b)は、四つの輪軸(車軸)を装備した車両の模式図であり、典型的な鉄道用車両の側面図である。
この構成例では(図7参照)、レール(線路)の対象区間8の両端部のうち第1隣接区間寄り端部に車軸検知器11(区間端ユニット)が設置され、対象区間8の両端部のうち第2隣接区間寄り端部に車軸検知器31(区間端ユニット)が設置され、それらの検出信号A1,A2,A3に基づいて、車軸計数装置20により、対象区間8に係る列車在線の判別(21,22)、車軸検知器11に係るセンサ故障の有無判定(23~26)、車軸検知器31に係るセンサ故障の有無判定(33~36)が行われるようになっている。
【0007】
車軸検知器11は、レール長手方向に配設された複数の車軸検出子を具備したものであり、この例では(図7図8(a)参照)、A1センサ,A2センサ,A3センサという三つの車軸検出子が、細い一点鎖線で図示した輪軸検出範囲が隣のセンサのものと部分的に重複する近接状態で(図8(a)参照)、レール長手方向に列設されている。
A1センサの車軸検出信号A1や,A2センサの車軸検出信号A2,さらにはA3センサの車軸検出信号A3について、それぞれの信号に係る信号レベルやパルス発現状態などを監視することで、計数前に可能な範囲で車軸検出子の故障を検出するセンサ故障検出部12も付設されているが、その詳細な説明は割愛する。
車軸検知器31やセンサ故障検出部32は、設置箇所こそ異なるが、車軸検知器11やセンサ故障検出部12と同様のもので良いので、繰り返しとなる説明は割愛する。
【0008】
車軸計数装置20は(図7図8(a)参照)、総ての端部に係る進入車軸数と進出車軸数との差である入出差を算出する入出差算出部21と、その入出差に基づいて対象区間8に列車が在線しているか否かを判別する判定部22とを具備しており、対象区間8について条件[入出差=“0”]が成り立っていれば非在線と判定し、そうでなければ在線と判定するようになっている。また、車軸計数装置20は、車軸検知器11設置先の端部に係る進入車軸数と進出車軸数とを算出するために、車軸検知器11の車軸検出信号A1についてパルスを計数するA1カウンタ23と、車軸検知器11の車軸検出信号A2についてパルスを計数するA2カウンタ24と、車軸検知器11の車軸検出信号A3についてパルスを計数するA3カウンタ25とを具備している。
【0009】
さらに、車軸計数装置20は、それらのカウンタ23~25の計数値に基づいて即ち計数後に車軸検知器11の車軸検出子(A1,A2,A3センサ)について正常なのか故障しているのかを判別するセンサ故障判定手段26も具備している。
なお、車軸計数装置20は、車軸検知器31設置先の端部に係る進入車軸数と進出車軸数とを算出するためにカウンタ23,24,25と同様のカウンタ33,34,35を具備しており、更にはセンサ故障判定手段26と同様のセンサ故障判定手段36をも具備しているが、その詳細な説明は繰り返しとなるので割愛する。
【0010】
センサ故障判定手段26による判定基準は(図8(a)参照)、A1カウンタ23の計数値とA2カウンタ24の計数値との差の絶対値を|A1-A2|とし、A1カウンタ23の計数値とA3カウンタ25の計数値との差の絶対値を|A1-A3|とし、A2カウンタ24の計数値とA3カウンタ25の計数値との差の絶対値を|A2-A3|として、[ |A1-A2|≧3 又は |A1-A3|≧3 又は |A2-A3|≧3 ]が成立すれば「異常」と判別し、そうでなければ「正常」と判別するというものである。
以下、この判定基準を適用したときの動作例を三つほど説明する。
【0011】
[先行技術の動作態様1]
先ず、第1隣接区間と対象区間8との境界に設置された車軸検知器11のA1センサ,A2センサ,A3センサが総て正常に動作しているときの動作例について説明する。
【0012】
図8は、A1センサ,A2センサ,A3センサが総て正常に動作している状態の下で、車両が第1隣接区間から対象区間8へ折り返すことなく単純に走行したときの動作状態を示しており、(a)が要部のブロック図、(b)が車両と輪軸との配置図、(c)がA1カウンタ23とA2カウンタ24とA3カウンタ25の計数状態やそれらに基づいて得られた差および判定に係る遷移図である。
【0013】
この場合、車両の輪軸1の車輪がA1センサの検知範囲を通るとA1カウンタ23の値が「1」だけ増え、車両の輪軸1の車輪がA2センサの検知範囲を通るとA2カウンタ24の値が「1」だけ増え、車両の輪軸1の車輪がA3センサの検知範囲を通るとA3カウンタ25の値が「1」だけ増える。
また、車両の輪軸2の車輪がA1センサの検知範囲を通るとA1カウンタ23の値が更に「1」だけ増え、車両の輪軸2の車輪がA2センサの検知範囲を通るとA2カウンタ24の値が更に「1」だけ増え、車両の輪軸2の車輪がA3センサの検知範囲を通るとA3カウンタ25の値が更に「1」だけ増える。
【0014】
それから、煩雑な繰り返しとなる説明を避けて、簡潔に述べると、車両の輪軸3が車軸検知器11を通過すると、通過による時間差を伴って上記のカウンタ23,24,25の値が更に「1」づつ増える。
さらに、車両の輪軸4が車軸検知器11を通過すると、通過による時間差を伴って上記のカウンタ23,24,25の値が更に「1」づつ増える。
なお、通過列車が複数の車両を連ねたものの場合、上述の計数動作が車両の数だけ繰り返されるが、簡潔な説明のため、ここでは車両が単一の場合について説明する。
【0015】
そうすると(図8(c)上段3行分を参照)、車両が車軸検知器11の検知範囲を通過したことに応じて、A1カウンタ値すなわちカウンタ23の値と,A2カウンタ値すなわちカウンタ24の値と,A3カウンタ値すなわちカウンタ25の値が、輪軸1の通過時間差を伴って順に「1」,「1」,「1」となり、その後、輪軸2の通過時間差を伴って順に「2」,「2」,「2」になり、輪軸3の通過時間差を伴って順に「3」,「3」,「3」になり、輪軸4の通過時間差を伴って順に「4」,「4」,「4」になる。
なお、図8等では、図示の都合により車軸検知器11を拡大表示しているため、センサA1,A3間の距離が輪軸1,2間の距離に近く感じられるが、実際には、センサA1,A3間の距離は輪軸1,2間の距離より桁違いに小さい。
【0016】
そして、そのようにA1,A2,A3カウンタ値が変化する度に、差|A1-A2|と差|A1-A3|と差|A2-A3|の値が、「0」から「1」になるが、速やかに「0」に戻る(図8(c)四段目から六段目までの3行分を参照)。
このようにカウンタ値の差|A1-A2|,|A1-A3|,|A2-A3|が何れも判定基準値の「3」に達しないので、センサ故障判定手段26によって、「正常」という適正な判定が行われる(図8(a)と同図(c)の最下行とを参照)。
【0017】
[先行技術の動作態様2]
次に、第1隣接区間と対象区間8との境界に設置された車軸検知器11におけるA1センサ,A2センサ,A3センサのうちA1センサだけが故障して車軸検出信号A1が変化しなくなったときの動作例について説明する。
【0018】
図9は、A1センサが故障した状態の下で、車両が第1隣接区間から対象区間8へ折り返すことなく単純に走行したときの動作状態を示しており、(a)が要部のブロック図、(b)が車両と輪軸との配置図、(c)がA1カウンタ23とA2カウンタ24とA3カウンタ25の計数状態やそれらに基づいて得られた差および判定に係る遷移図である。
【0019】
この場合、車両の輪軸1~4が車軸検知器11を単純に通過したとき、故障しているA1センサについては車軸検出信号A1が変化しないためA1カウンタ23の値はずっと初期値「0」のままであり続ける(図9(c)最上段の行を参照)。
これに対し、正常なA2カウンタ24とA3カウンタ25は、輪軸1~4が通過する度に、通過による時間差を伴って値が「1」づつ増える。そして(図9(c)二段目と三段目の2行分を参照)、車両が車軸検知器11の検知範囲を通過したことに応じて、A2,A3カウンタ値が、輪軸の通過時間差を伴って順に、「1」,「1」になり、「2」,「2」になり、「3」,「3」になり、「4」,「4」になる。
【0020】
そして、そのようにA1,A2,A3カウンタ値が変化する度に、差|A2-A3|の値は「0」から「1」になった後に「0」に戻るが(図9(c)六段目の1行分を参照)、差|A1-A2|と差|A1-A3|の値は、「0」から「1」になってから「0」に戻ることなく「2」,「3」,「4」と増え続ける(図9(c)四段目から五段目までの2行分を参照)。そして、増加の早い方の差|A1-A2|が判定基準値の「3」に達したときに(図9(c)四段目の行を参照)、センサ故障判定手段26によって、「異常」という適正な判定が行われる(図9(a)と同図(c)の最下行とを参照)。同様にして、A2センサやA3センサの故障も、輪軸が三個通過した時点で検出される。
【0021】
[先行技術の動作態様3]
最後に、第1隣接区間と対象区間8との境界に設置された車軸検知器11のA1センサ,A2センサ,A3センサが総て正常に動作している状態の下で、車両が第1隣接区間から対象区間8へ走行した際に車両の先頭の輪軸1がA1センサの直前でA1センサの検出範囲だけに出入りする態様で二回ほど折り返した車両来去時の動作について説明する。
図10は、そのような車両来去時の車軸計数装置20の動作状態を示しており、(a)が要部のブロック図、(b)がA1カウンタ23とA2カウンタ24とA3カウンタ25の計数状態やそれらに基づいて得られた差および判定に係る遷移図である。
【0022】
この場合、車両の輪軸1が前進してA1センサの検出範囲に入る度にA1カウンタ23の値だけが「1」づつ増えるので、A1カウンタ値が、最初の前進で「1」になり、その後の後退1と前進で「2」になり、その後の後退2と前進で「3」になり、更なる前進で「4」,「5」,「6」になる(図10(b)一段目と二段目の2行分を参照)。
一方、A2カウンタ24とA3カウンタ25は、輪軸1の接近が無い後退2の時期までは変化が無く、その後の前進で輪軸1がA1センサの検出範囲に入って初めて増えるので、A1カウンタ値が「3」になった後で、A2カウンタ値が「1」になり、更に少し遅れてA3カウンタ値も「1」になる(図10(b)三段目と四段目の2行分を参照)。
【0023】
そのため、A1カウンタ値が判定基準値の「3」に達した時点で、差|A1-A2|と差|A1-A3|が共に「3」になってしまうので(図10(b)五段目と六段目の2行分を参照)、センサ故障判定手段26によって、「異常」という判定が行われるが(図10(a)と同図(b)の最下行とを参照)、この判定結果は、誤りである。
そして、このような誤判定の発出を遅延させて抑制する安直な対策として、センサ故障判定手段26の判定に際して差|A1-A2|,差|A1-A3|,差|A2-A3|と比較される判定基準値として、値「3」より大きな値である「4」や「5」を採用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【文献】特開2018-091694号公報
【文献】特開2018-167715号公報
【文献】特開2019-131084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、車軸検知器の端部における車両進退の繰り返しによる誤判定を回避するために判定基準値を大きくすると、本来の役目であるセンサ故障の検出時に適切な判定を出すタイミングが遅れてしまうという不都合がある。
特に判定基準値が車両の輪軸の個数より大きいとセンサ故障判定のタイミングが次の車両の到来や通過の時期まで遅れてしまう。
そこで、車軸検知器の端部における車両進退の繰り返しによる誤判定を回避する機能を判定基準値の増加なしでも向上させられるように改良することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の車軸計数装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、線路の対象区間の端部に設けられた複数の車軸検出子それぞれに対応させて複数のカウンタが設けられており、前記カウンタが何れも前記車軸検出子のうち対応するものから送出された車軸検出信号に基づいて輪軸の来去を計数するものであり、前記の複数のカウンタのうち対をなすカウンタについて何れか一方だけが計数値を単調に連続して更新した回数を計る連続カウンタが設けられており、前記連続カウンタの値と所定の判定基準値とを比較して前記車軸検出子に係る故障の有無を判別するようになっている、ことを特徴とする。
【0027】
また、本発明の車軸計数装置は(解決手段2)、上記解決手段1の車軸計数装置であって、前記の対をなすカウンタは、前記の複数のカウンタのうち前記線路の長手方向において隣りに位置するもの同士である、ことを特徴とする。
【0028】
さらに、本発明の車軸計数装置は(解決手段3)、上記解決手段1,2の車軸計数装置であって、前記判定基準値が整数の「3」であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
このような本発明の車軸計数装置にあっては(解決手段1,2)、車軸検出子それぞれに対応した複数のカウンタの計数値を監視して差の算出にて直ちに故障判定を行うのでなく、複数のカウンタのうち対をなすものに係る連続カウンタを追設したうえで、一方的な計数値の変遷状態すなわち大きく偏った計数状態が発現したか否かを調べることで故障判定を行うようにしたことにより、車軸検知器の端部における車両進退の繰り返しによる誤判定を回避する機能を、判定基準値を増加させなくても、向上させることができる。
【0030】
また、本発明の車軸計数装置にあっては(解決手段3)、判定基準値を「3」にしたことにより、センサ故障の検出タイミングを早めたいという要望と、車軸検知器の端部における車両進退の繰り返しに起因した誤判定を回避できる車両進退の繰り返し数を高めたいという相反する要望とを、実用的なレベルで折り合いをつけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施例1について、車軸計数装置の構成を示し、(a)が要部のブロック図、(b)が連続カウンタの値更新手法と故障判定手法とのうち片方のカウンタに係る部分を示すフローチャートである。
図2】(a),(b)何れも計数状態の遷移図である。
図3】(a),(b)何れも計数状態の遷移図である。
図4】(a),(b)何れも計数状態の遷移図である。
図5】(a)が実施例1の要部のブロック図であり、(b)は、センサ(車軸検出子)が2個の構成例を示す要部ブロック図である。
図6】(a)は、センサ(車軸検出子)が4個の構成例を示す要部ブロック図であり、(b)は、センサ(車軸検出子)が5個の構成例を示す要部ブロック図である。
図7】従来の車軸計数装置について、全体構成のブロック図である。
図8】全センサが正常な状態であって車両が単純に通過したときの動作状態を示し、(a)が要部のブロック図、(b)が車両と輪軸との配置図、(c)が計数状態の遷移図である。
図9】一部のセンサが故障した状態で車両が単純に通過したときの動作状態を示し、(a)が要部のブロック図、(b)が車両と輪軸との配置図、(c)が計数状態の遷移図である。
図10】全センサが正常状態のときに車両が進入側で二回ほど折り返してから通過したときの動作状態を示し、(a)が要部のブロック図、(b)が計数状態の遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
このような本発明の車軸計数装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1~4により説明する。
図1図5(a)に示した実施例1は、上述した解決手段1~3(出願当初の請求項1~3)を総て具現化したものであり、図5(b)に示した実施例2や、図6(a)に示した実施例3、図6(b)に示した実施例4は、実施例1の変形例である。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ブロック図や遷移表を多用した。また、背景技術の欄で述べたことの多くが各実施例についても共通するので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0033】
本発明の車軸計数装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、車軸計数装置50の構成を示しており、(a)が要部のブロック図、(b)が、連続カウンタ51,52の値更新手法と該カウンタ値に基づく故障判定手法とのうち半分(すなわちA1カウンタ23のカウントアップ時に行われる部分)を示すフローチャートである。図5(a)は、車軸計数装置50の要部構成を示している。
【0034】
車軸計数装置50は(図1(a)参照)、既述した車軸計数装置20を改良したものであり、車軸計数装置20と同じく、線路の対象区間の一端部に設けられた車軸検知器11のA1センサの車軸検出信号A1についてパルスを計数するA1カウンタ23と、車軸検知器11の車軸検出信号A2についてパルスを計数するA2カウンタ24と、車軸検知器11の車軸検出信号A3についてパルスを計数するA3カウンタ25とを引き継いでいる。センサ故障判定手段26を改造したセンサ故障判定手段53も具備している。なお、車軸計数装置20に在った他の構成要素たとえば入出差算出部21や判定部22さらには対象区間の他端部に対応した要素33~36等は、必須でないので、省かれている。
【0035】
また、車軸計数装置50には、A1-A2連続カウンタ51とA2-A3連続カウンタ52とが新たに導入されている。
A1-A2連続カウンタ51は、線路の長手方向において隣りに位置するA1センサ及びA2センサに係る一対のA1カウンタ23及びA2カウンタ24について何れか一方のカウンタだけが計数値を単調に連続して更新した回数を計るためのものである。
A2-A3連続カウンタ52は、線路の長手方向において隣りに位置するA2センサ及びA3センサに係る一対のA2カウンタ24及びA3カウンタ25について何れか一方のカウンタだけが計数値を単調に連続して更新した回数を計るためのものである。
【0036】
センサ故障判定手段53は、A1-A2連続カウンタ51の値と判定基準値の整数値「3」とを比較して、A1センサ(車軸検出子)とA2センサ(車軸検出子)に係る故障の有無を判別するようになっている。具体的には(図1(b)参照)、A1カウンタ23やA2カウンタ24の値を確認した後などに随時(ステップS1~S4)、A1-A2連続カウンタ51の値と判定基準値の整数値「3」とを比較して(ステップS5)、A1-A2連続カウンタ51の値が判定基準値の整数値「3」以上であれば(ステップS5のY)、車軸検知器11の車軸検出子(A1,A2センサ)について故障が生じているという判定を出すようになっている(ステップS6)。
【0037】
また、センサ故障判定手段53は、A2-A3連続カウンタ52の値と判定基準値の整数値「3」とを比較して、A2センサ(車軸検出子)とA3センサ(車軸検出子)に係る故障の有無を判別するようにもなっている。繰り返しとなる図示は割愛したが、具体的には、A2カウンタ24やA3カウンタ25の値を確認した後などに随時、A2-A3連続カウンタ52の値と判定基準値の整数値「3」とを比較して、A2-A3連続カウンタ52の値が判定基準値の整数値「3」以上であれば、車軸検知器11の車軸検出子(A2,A3センサ)について故障が生じているという判定を出すようになっている。
【0038】
さらに、センサ故障判定手段53がA1-A2連続カウンタ51の値を更新する処理については、図1(a)では図示を割愛した内部のメモリやレジスタなど適宜なデータ保持手段に確保されたA1カウンタメモリとA2カウンタメモリも使用することで比較的容易に具体化がなされている。
そして、それらのA1,A2カウンタメモリに加え、上述した総てのカウンタ23~25,51,52が、初期化によって、値が「0」に統一されたところから、A1-A2連続カウンタ51の値を更新しようとする処理が始まる(図1(b)参照)。
【0039】
具体的には(ステップS1~S4)、A1カウンタ23の値に変動がないときにはA1カウンタ23の値変動に応じたA1-A2連続カウンタ51の更新は行われず(ステップS1のN)、A1カウンタ23の値に変動が有ったとき具体的には値が増加(+1)したときに限って(ステップS1のY)、A1-A2連続カウンタ51の値の更新が行われる(ステップS2~S4)。
その更新の内容はA2カウンタ24の値がA2カウンタメモリの値に一致するか否かで二つに場合分けされる(ステップS2)。
【0040】
そして、一致していなかった場合は(ステップS2のN)、A2カウンタ24の値の増加後にA1カウンタ23の値が増加した場合になる。言い換えると、A1カウンタ23が単独で単調にカウントアップし続けている場合ではない、ということになる。
この場合(ステップS3)、A1-A2連続カウンタ51が改めて初期化され、その値が「0」にされる。また、以後の判別に備えて、A2カウンタ24の値が後の参照のためにA2カウンタメモリに代入されて保持される。
【0041】
これに対し、上記の場合分けでA2カウンタ24の値とA2カウンタメモリの値とが一致していた場合は(ステップS2のY)、A2カウンタ24の値の増加前にA1カウンタ23の値が増加したことになる。言い換えると、A1カウンタ23が単独で単調にカウントアップし続けている場合に当たる、ということになる。
この場合(ステップS4)、A1-A2連続カウンタ51の値が更新される。具体的には、A2カウンタ24の増加を挟むことなくA1カウンタ23が単調に増加した回数を計るために、A1-A2連続カウンタ51の値が増加(+1)させられる。
【0042】
以上の説明は(図1(b)参照)、車軸計数装置50が、A1-A2連続カウンタ51やA2カウンタメモリを利用することで、A2カウンタ24の値の増加を挟むことなくA1カウンタ23の値が単調に増加したことを検出するようになっていることを詳述したものであるところ、A1センサ及びA1カウンタ23とA2センサ及びA2カウンタ24とがA1-A2連続カウンタ51に対して対称な関係となっていることから、図1(b)のステップS1~S3において「A1カウンタ…」と「A2カウンタ…」とを入れ替えた図面の提示や繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、次のことが言える。
すなわち、車軸計数装置50は、A1-A2連続カウンタ51や別のカウンタメモリを利用することで、A1カウンタ23の値の増加を挟むことなくA2カウンタ24の値が単調に増加したことを検出するようにもなっている。
【0043】
また、やはり図示や繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、車軸計数装置50は、A2-A3連続カウンタ52や更に別のカウンタメモリを利用することで、A2カウンタ24の値の増加を挟むことなくA3カウンタ25の値が単調に増加したことを検出するようにもなっている
さらに、やはり図示や繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、車軸計数装置50は、A2-A3連続カウンタ52等の利用によって、A3カウンタ25の値の増加を挟むことなくA2カウンタ24の値が単調に増加したことを検出するようにもなっている。
【0044】
このような実施例1の車軸計数装置について、その使用態様及び動作を、図2(a)~図4(b)の図面を引用して説明する。図2(a)~図4(b)は、何れも、計数状態の遷移図である。
以下、既述した車軸計数装置20の動作説明の後半部分と同様、車両の通過(来去)に伴う車軸計数装置50の動作状況を簡潔に説明する。
【0045】
[実施例1の動作態様1]
図2(a)は、第1隣接区間と対象区間8との境界に設置された車軸検知器11のA1センサ,A2センサ,A3センサが総て正常に動作している状態の下で、車両が第1隣接区間から対象区間8へ折り返すことなく単純に走行したときの動作状態に係り、車両走行状態と、A1カウンタ23の値とA2カウンタ24の値とA3カウンタ25の値の変化状態と、A1-A2連続カウンタ51の値とA2-A3連続カウンタ52の値の変化状態と、故障判定条件と判定結果とを、時系列的なリストで表示した遷移図である。
【0046】
第1隣接区間と対象区間8との境界に設置された車軸検知器11のA1センサ,A2センサ,A3センサが総て正常に動作している状態の下で(全センサ正常)、車両が第1隣接区間から対象区間8へ折り返すことなく単純に走行した場合(車両通常前進,図2(a)の最上段の1行分を参照)、A1カウンタ23も、A2カウンタ24も、A3カウンタ25も、初期値の「0」から、輪軸1~4が通過する度に、通過による時間差を伴って値が「1」づつ増える。そして(図2(a)二段目から四段目の3行分を参照)、車両が車軸検知器11の検知範囲を通過したことに応じて、A1,A2,A3カウンタ値が、輪軸の通過時間差を伴って順に、「1」,「1」,「1」になり、「2」,「2」,「2」になり、「3」,「3」,「3」になり、「4」,「4」,「4」になる。
【0047】
そして、そのようにA1,A2,A3カウンタ値が変化した場合、A1-A2連続カウンタ51も、A2-A3連続カウンタ52も、「0」の値を採り続ける(図2(a)五段目から六段目の2行分を参照)。そのため、故障判定条件(図2(a)七段目の1行分を参照)が成立しないので、具体的には論理式{(A1-A2連続カウンタの値)≧3又は(A2-A3連続カウンタ)≧3}が成立しないので、センサ故障判定手段53によって、「正常」という適正な判定が行われる(図2(a)の最下段の1行分を参照)。
このようにして全センサ正常状態下での車両通常前進には適切な判定が出る。
【0048】
[実施例1の動作態様2]
次に車軸検知器11においてA1センサが故障し他のA2,A3センサが正常に動作している状態の下で(A1センサ故障)、車両が第1隣接区間から対象区間8へ折り返すことなく単純に走行した場合(車両通常前進,図2(b)の最上段の1行分を参照)、故障のA1カウンタ23の値は初期値の「0」のまま変化しないのに対し(図2(b)二段目の1行分を参照)、A2カウンタ24とA3カウンタ25は、初期値の「0」から、輪軸1~4が通過する度に、通過による時間差を伴って値が「1」づつ増える。そして(図2(b)三段目から四段目の2行分を参照)、車両が車軸検知器11の検知範囲を通過したことに応じて、A2,A3カウンタ値が、輪軸の通過時間差を伴って順に、「1」,「1」になり、「2」,「2」になり、「3」,「3」になり、「4」,「4」になる。
【0049】
そして、そのようにA1,A2,A3カウンタ値が変化した場合、A2-A3連続カウンタ52は、「0」の値を採り続けるが(図2(b)六段目の1行分を参照)、A1-A2連続カウンタ51の値は、「0」から増加して「1」,「2」,「3」と変化する(図2(b)五段目の1行分を参照)。A1-A2連続カウンタ51の値が「3」に至ると、故障判定条件(図2(b)七段目の1行分を参照)が成立するので、具体的には論理式{(A1-A2連続カウンタの値)≧3又は(A2-A3連続カウンタ)≧3}が成立するので、センサ故障判定手段53によって、「異常」という適正な判定が行われる(図2(b)の最下段の1行分の右側部分を参照)。
このようにしてA1センサ故障状態下での車両通常前進にも適切な判定が出る。
【0050】
[実施例1の動作態様3]
さらに、車軸検知器11のA1センサ,A2センサ,A3センサが総て正常に動作している状態の下で(全センサ正常)、車両が第1隣接区間から対象区間8へ移動するときに車両の輪軸1がA1センサの輪軸検出範囲だけを二回ほど出入り(来去)した場合(A1センサ近傍で車両が二回後退,図3(a)の最上段の1行分を参照)、A1カウンタ23は、初期値の「0」から、輪軸1が進退して接近する度に値が「1」づつ増えて、輪軸1が通過するときには「3」になる(図3(a)二段目の1行分を参照)。
【0051】
その間、A2カウンタ24と、A3カウンタ25は、初期値の「0」を維持する(図3(a)三段目と四段目の2行分を参照)。
そして、そのようなA1,A2,A3カウンタ値の変化に応じて、A1カウンタ値が「2」になったときにはA1-A2連続カウンタ51の値が初期値「0」から「1」になり、A1カウンタ値が「3」になったときにはA1-A2連続カウンタ51の値が「2」になる(図3(a)五段目の1行分を参照)。なお、A2-A3連続カウンタ52は初期値「0」を維持している(図3(a)六段目の1行分を参照)。
【0052】
そして、その後は車両が折り返すことなく更に前進すると、A2カウンタ24も、A3カウンタ25も、輪軸1が通過する度に、通過による時間差を伴って値が「1」になる(図3(a)三段目と四段目の2行分を参照)。
また、A1カウンタ値が「3」になった後、A2カウンタ値が「0」から「1」に更新されたことから、A1-A2連続カウンタ51の値が再初期化されて「0」になる(図3(a)五段目の1行分を参照)。なお、このときも、A2-A3連続カウンタ52は初期値「0」を維持し続ける(図3(a)六段目の1行分を参照)。
【0053】
それからは、車両が前進し続けるのに伴って、輪軸1に加え後続の輪軸2~4も車軸検知器11を通過すると、その度に、通過による時間差を伴ってA1,A2,A3カウンタ値が「1」づつ増える。そして(図3(a)二段目から四段目の3行分を参照)、A1,A2,A3カウンタ値が、輪軸の通過時間差を伴って順に、「4」,「2」,「2」になり、後続の車両が有ってそれも通過すると、「5」,「3」,「3」になり、更に「6」,「4」,「4」になり、以後同様に変化する。
そのようにA1,A2,A3カウンタ値が変化した場合、A1-A2連続カウンタ51は最大値が「2」にとどまり、A2-A3連続カウンタ52は「0」の値を採り続ける(図3(a)五段目から六段目の2行分を参照)。
【0054】
そのため、故障判定条件(図3(a)七段目の1行分を参照)が成立しないので、具体的には論理式{(A1-A2連続カウンタの値)≧3又は(A2-A3連続カウンタの値)≧3}が成立しないので、センサ故障判定手段53によって、「正常」という適正な判定が行われる(図3(a)の最下段の1行分を参照)。
このようにして、車軸計数装置50にあっては、A1,A2,A3センサが総て正常であれば、車両が進入側で二回ほど折り返してから通過した場合でも、既述した車軸計数装置20の動作と異なり、適切な判定が出る。
【0055】
[実施例1の動作態様4]
さらに、そのように車両の進入時二回折り返し通過時に「正常」の判定が出るようにしたことが故障検出の機能を損なうものでは無いことも、以下の動作説明で裏付ける。
先ず、車軸検知器11においてA1センサが故障し他のA2,A3センサが正常に動作している状態の下で(A1センサ故障)、車両が第1隣接区間から対象区間8へ移動するときに車両の輪軸1がA1センサの輪軸検出範囲だけを二回ほど出入り(来去)した場合(A1センサ近傍で車両が二回後退,図3(b)の最上段の1行分を参照)の動作を説明する。
【0056】
この場合、故障のA1カウンタ23の値は初期値の「0」のまま変化しないのに対し(図3(b)二段目の1行分を参照)、A2カウンタ24とA3カウンタ25は、初期値の「0」から、輪軸1~4が通過する度に、通過による時間差を伴って値が「1」づつ増える。そして(図3(b)三段目から四段目の2行分を参照)、車両が車軸検知器11の検知範囲を通過したことに応じて、A2,A3カウンタ値が、輪軸の通過時間差を伴って順に、「1」,「1」になり、「2」,「2」になり、「3」,「3」になり、「4」,「4」になる。
【0057】
そして、そのようにA1,A2,A3カウンタ値が変化した場合、A2-A3連続カウンタ52は、「0」の値を採り続けるが(図3(b)六段目の1行分を参照)、A1-A2連続カウンタ51の値は、「0」から増加して「1」,「2」,「3」と変化する(図3(b)五段目の1行分を参照)。A1-A2連続カウンタ51の値が「3」に至ると、故障判定条件(図3(b)七段目の1行分を参照)が成立するので、具体的には論理式{(A1-A2連続カウンタの値)≧3又は(A2-A3連続カウンタの値)≧3}が成立するので、センサ故障判定手段53によって、「異常」という適正な判定が行われる(図3(b)の最下段の1行分の右側部分を参照)。
このようにしてA1センサ故障状態下での車両二回進退にも適切な判定が出る。
【0058】
[実施例1の動作態様5]
次に、車軸検知器11においてA2センサが故障し他のA1,A3センサが正常に動作している状態の下で(A2センサ故障)、車両が第1隣接区間から対象区間8へ移動するときに車両の輪軸1がA1センサの輪軸検出範囲だけを二回ほど出入り(来去)した場合(A1センサ近傍で車両が二回後退,図4(a)の最上段の1行分を参照)の動作を説明する。
【0059】
この場合、故障のA2センサに対応したA2カウンタ24の値は初期値の「0」のまま最後まで変化しない(図4(a)三段目の1行分を参照)。
これに対し、A1カウンタ23は、初期値の「0」から、輪軸1が進退して接近する度に値が「1」づつ増えて、輪軸1が通過するときには「3」になる(図4(a)二段目の1行分を参照)。
その間、A3カウンタ25は、初期値の「0」を維持する(図4(a)四段目の1行分を参照)。
【0060】
そして、そのようなA1,A2,A3カウンタ値の変化に応じて、A1カウンタ値が「2」になったときにはA1-A2連続カウンタ51の値が初期値「0」から「1」になり、A1カウンタ値が「3」になったときにはA1-A2連続カウンタ51の値が「2」になる(図4(a)五段目の1行分を参照)。A2-A3連続カウンタ52は初期値「0」を維持する(図4(a)六段目の1行分を参照)。
そして、その後は車両が折り返すことなく更に前進すると、A3カウンタ25は、輪軸1の通過に応じて値が「1」になる(図4(a)四段目の1行分を参照)。
【0061】
それからは、車両が前進し続けるのに伴って、輪軸1に加え後続の輪軸2~4も車軸検知器11を通過すると、その度に、通過による時間差を伴ってA1,A3カウンタ値が「1」づつ増える。ただし、A2カウンタ値は「0」のままである。
そして(図4(a)二段目と四段目の2行分を参照)、A1,A3カウンタ値が、輪軸の通過時間差を伴って順に、「4」,「2」になり、後続の車両が有ってそれも通過すると、「5」,「3」になり、更に「6」,「4」になり、以後同様に変化する。
【0062】
そのようにA1,A2,A3カウンタ値が変化した場合、A1カウンタ値が「4」になったときに、A1-A2連続カウンタ51の値が「3」になる(図4(a)二段目と五段目の2行分を参照)。そうすると、故障判定条件(図4(a)七段目の1行分を参照)が成立するので、具体的には論理式{(A1-A2連続カウンタの値)≧3又は(A2-A3連続カウンタの値)≧3}が成立するので、センサ故障判定手段53によって、「異常」という適正な判定が行われる(図4(a)の最下段の1行分の右側部分を参照)。
このようにしてA2センサ故障状態下での車両二回進退にも適切な判定が出る。なお、A2-A3連続カウンタ52の値も後続の車両の通過時には「3」に到達する。
【0063】
[実施例1の動作態様6]
更に、車軸検知器11においてA3センサが故障し他のA1,A2センサが正常に動作している状態の下で(A3センサ故障)、車両が第1隣接区間から対象区間8へ移動するときに車両の輪軸1がA1センサの輪軸検出範囲だけを二回ほど出入り(来去)した場合(A1センサ近傍で車両が二回後退,図4(b)の最上段の1行分を参照)の動作についても説明する。
【0064】
この場合も、車両の輪軸1がA1センサの輪軸検出範囲だけを二回ほど出入りしてからA1センサを通過するところまでは、上述した全センサ正常時やA2センサ故障時と同様に(図3(a)や図4(a)を参照)、A1カウンタ23は初期値の「0」から「1」ずつ増えて「3」になり(図4(b)二段目の1行分を参照)、A2カウンタ24とA3カウンタ25は初期値の「0」を維持する(図4(b)三段目から四段目の2行分を参照)。その後、続く輪軸1の通過に応じて直ぐにA2カウンタ値は初期値の「0」から「1」になるが、故障のA3センサに対応したA3カウンタ25の値は変わることなく初期値「0」を維持する。
【0065】
それから、輪軸1に続けて輪軸2~4が通過する度に、通過による時間差を伴ってA1,A2カウンタ値は値が「1」づつ増える。そして(図4(b)二段目から三段目の2行分を参照)、車両が車軸検知器11の検知範囲を通過したことに応じて、A1,A2カウンタ値は、輪軸の通過時間差を伴って順に、上述の「3」,「1」から、「4」,「2」になり、後続の車両が有ってそれも通過すると、「5」,「3」になり、更に「6」,「4」になり、以後同様に変化する。
その間も、A3カウンタ値は変わることなく初期値「0」を維持する。
【0066】
そして、そのようにA1,A2,A3カウンタ値が変化した場合、A1-A2連続カウンタ51の値は(図3(a)五段目の1行分を参照)、A1カウンタ値が「3」になったときに、「2」になるが、その直後にA2カウンタ値が「1」に変化したことを受けて、「0」に戻される。その後はA1,A2カウンタ値が交互に増えるので、A1-A2連続カウンタ51は、値「0」を維持する。
これに対し、A2-A3連続カウンタ52の値は(図4(b)六段目の1行分を参照)、A3カウンタ値が変わらないのにA2カウンタ値だけが続けて増加して「0」から「2」なったときに、「1」になる。
【0067】
さらに(図4(b)六段目の1行分を参照)、A3カウンタ値が変わらない状態でA2カウンタ値が「3」,「4」と増加するので、それに伴って、A2-A3連続カウンタ52の値も「2」,「3」と増加する。そして、A2-A3連続カウンタ52の値が「3」に至ると、故障判定条件(図4(b)七段目の1行分を参照)が成立するので、具体的には論理式{(A1-A2連続カウンタの値)≧3又は(A2-A3連続カウンタの値)≧3}が成立するので、センサ故障判定手段53によって、「異常」という適正な判定が行われる(図4(b)の最下段の1行分の右側部分を参照)。
このようにしてA3センサ故障状態下での車両二回進退にも適切な判定が出る。
【0068】
このような六つの動作態様より、本発明の実施例1の車軸計数装置50について、車両の進入時二回折り返し通過時に「正常」の判定が出るようにしたことが故障検出の機能を損なうものでは無いことが、判明する。
【0069】
[実施例1に基づく付加事項]
上述の動作例から明らかなように、A1,A2,A3センサのうちA1センサだけが故障したときには車両通過に応じてA1センサ対応のA1-A2連続カウンタ51の値は判定基準値の「3」以上になるがA1センサ非対応のA2-A3連続カウンタ52の値は判定基準値に達しない。
また、A1,A2,A3センサのうちA3センサだけが故障したときには車両通過に応じてA3センサ対応のA2-A3連続カウンタ52の値は判定基準値以上になるがA3センサ非対応のA1-A2連続カウンタ51の値は判定基準値に達しない。
【0070】
さらに、A1,A2,A3センサのうちA2センサだけが故障したときには車両通過に応じてA2センサ対応のA1-A2連続カウンタ51の値もA2-A3連続カウンタ52の値も判定基準値以上になる。
そこで、値が判定基準値以上になった連続カウンタの参照先のカウンタの入力先のセンサであり且つ値が判定基準値以下の連続カウンタの参照先のカウンタの入力先のセンサでないセンサに故障が生じたと推定する手段を車軸計数装置50に組込や付加することが、故障診断や修繕作業などに役立つと見込まれる。
【実施例2】
【0071】
図5(b)に要部のブロック図を示した本発明の車軸計数装置が上述した実施例1の車軸計数装置50(図5(a)参照)と相違するのは、車軸検知器に含まれているセンサ(車軸検出子)がA1センサとA2センサとの二つになっていることと、それに対応して連続カウンタが一個のA1-A2連続カウンタだけになっていることと、故障判定条件の論理式に含まれる比較式も一つだけの{(A1-A2連続カウンタの値)≧3}になっていることである。
この場合、センサ個数が最少の二個で、冗長性は小さいが、実施例1の車軸計数装置50と同様に機能する。
【実施例3】
【0072】
図6(a)に要部のブロック図を示した本発明の車軸計数装置が上述した実施例1のものと相違するのは、車軸検知器に含まれているセンサ(車軸検出子)がA1,A2,A3,A4センサの四つになっていることと、それに対応して連続カウンタが三個のA1-A2連続カウンタとA2-A3連続カウンタとA3-A4連続カウンタになっていることと、故障判定条件の論理式に含まれる比較式も三つの{(A1-A2連続カウンタの値)≧3又は(A2-A3連続カウンタの値)≧3又は(A3-A4連続カウンタの値)≧3}になっていることである。
この場合、センサ個数が四個に増えて、冗長性が増加している。
【実施例4】
【0073】
図6(b)に要部のブロック図を示した本発明の車軸計数装置が上述した実施例1,3のものと相違するのは、車軸検知器に含まれているセンサ(車軸検出子)がA1,A2,A3,A4,A5センサの五つになっていることと、それに対応して連続カウンタが四個のA1-A2連続カウンタとA2-A3連続カウンタとA3-A4連続カウンタとA4-A5連続カウンタになっていることと、故障判定条件の論理式に含まれる比較式も四つの{(A1-A2連続カウンタの値)≧3又は(A2-A3連続カウンタの値)≧3又は(A3-A4連続カウンタの値)≧3又は(A4-A5連続カウンタの値)≧3}になっていることである。
この場合、センサ個数が五個で、冗長性が更に増加している。
【0074】
[その他]
上記実施例では、既述したセンサ故障検出部12が設けられていなかったが、瞬時毎センサ故障検出手法のセンサ故障検出部12と経時的センサ故障検出手法のセンサ故障判定手段53とは排他的なものではないので、センサ故障判定手段53に加えてセンサ故障検出部12が設けられていても良い。
また、入出差算出部21や判定部22が同一装置内に設けられていても良く、その場合、入出差算出部21等がカウンタ23~25等を参照するようになっていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の車軸計数装置は、上記の実施例で示した如く端部を二つ持つ対象区間に適用が限定されるものでなく、三つ以上の端部を持った対象区間にも適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
8…対象区間(線路)、
11…車軸検知器、A1,A2,A3…車軸検出信号、
A1センサ,A2センサ,A3センサ…車軸検出子、
12…センサ故障検出部(計数前)、
20…車軸計数装置、
21…入出差算出部、22…判定部、
23…A1カウンタ、24…A2カウンタ、25…A3カウンタ、
26…センサ故障判定手段(計数後)、
31…車軸検知器、32…センサ故障検出部(計数前)
33…A1カウンタ、34…A2カウンタ、35…A3カウンタ、
36…センサ故障判定手段(計数後)、
50…車軸計数装置、
51…A1-A2連続カウンタ、52…A2-A3連続カウンタ、
53…センサ故障判定手段(計数後)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10