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特許7604279フレキシブルプリント配線板、電子ユニット、電子機器、及びフレキシブルプリント配線板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板、電子ユニット、電子機器、及びフレキシブルプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20241216BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
H05K1/02 P
H05K9/00 R
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021043263
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022142965
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 季行
(72)【発明者】
【氏名】小川 優
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-206188(JP,A)
【文献】特開2012-227211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/010270(US,A1)
【文献】特開2015-065252(JP,A)
【文献】特開2010-212438(JP,A)
【文献】特開2000-077802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる絶縁体部と、
前記絶縁体部の内部に配置された信号線と、
前記絶縁体部の主面上に配置され、複数の第1開口を有する導電層と、
前記導電層上に配置され、複数の第2開口を有する絶縁層と、を備え
前記複数の第1開口のうち2つ以上の第1開口は、前記絶縁体部の主面と垂直な方向に視て前記絶縁層と重なる位置に配置されている、
ことを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
第1方向に延びる絶縁体部と、
前記絶縁体部の内部に配置された信号線と、
前記絶縁体部の主面上に配置され、複数の第1開口を有する導電層と、
前記導電層上に配置され、複数の第2開口を有する絶縁層と、を備え、
前記複数の第2開口のうち2つ以上の第2開口は、前記絶縁体部の主面と垂直な方向に視て前記導電層と重なる位置に配置されている、
ことを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記複数の第1開口のうち2つ以上の第1開口は、前記絶縁体部の主面と垂直な方向に視て前記信号線と重なる位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記複数の第1開口の各々は、前記第1方向の長さが前記第1方向と直交する第2方向の長さよりも長い、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
前記複数の第1開口の各々は、菱形形状である、
ことを特徴とする請求項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
前記複数の第1開口は、マトリックス状に配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
前記導電層は、網目状である、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項8】
前記絶縁体部の主面と垂直な方向に視て、前記複数の第2開口のうち2つ以上の第2開口は、前記信号線と重なる位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項9】
前記複数の第2開口の各々は、矩形形状である、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項10】
前記複数の第2開口は、マトリックス状に配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項11】
前記絶縁層は、網目状である、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項12】
前記絶縁体部の主面と垂直な方向に視て、前記複数の第2開口のうち1つの第2開口の面積は、前記複数の第1開口のうち1つの第1開口の面積よりも狭い、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項13】
前記1つの第1開口は、前記複数の第1開口のうち面積が最小のものであり、
前記1つの第2開口は、前記複数の第2開口のうち面積が最大のものである、
ことを特徴とする請求項12に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項14】
前記導電層の開口率は、40%以上90%以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板と、
前記フレキシブルプリント配線板の前記第1方向の第1端が接続される第1リジッドプリント配線板と、
前記第1リジッドプリント配線板に実装される第1電子部品と、を備える、
ことを特徴とする電子ユニット。
【請求項16】
前記フレキシブルプリント配線板の前記第1方向の第2端が接続される第2リジッドプリント配線板と、
前記第2リジッドプリント配線板に実装される第2電子部品と、を備える、
ことを特徴とする請求項15に記載の電子ユニット。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の電子ユニットと、
前記電子ユニットが収納される筐体と、を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項18】
内部に信号線が配置された絶縁体部を用意し、
前記絶縁体部の主面上に、複数の第1開口を有する導電層を形成し、
前記導電層上に、複数の第2開口を有する絶縁層を形成する、
ことを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、及びデジタルカメラにおいては、デジタル信号の伝送路となるフレキシブルプリント配線板を有する。電子機器の高性能化及び高機能化に伴い、電子機器において取り扱われるデータ量も飛躍的に増大しており、フレキシブルプリント配線板を通るデジタル信号の伝送速度も速くなっている。したがって、電子機器内のリジッドプリント配線板又はリジッドプリント配線板に実装された電子部品から発生した電磁波ノイズによって、フレキシブルプリント配線板を通るデジタル信号の品質が低下する虞があった。また、フレキシブルプリント配線板から放射される電磁波ノイズによって、周囲の半導体装置が誤動作する虞もあった。
【0003】
これに対し、特許文献1には、電磁波ノイズを遮蔽する機能を有するグラウンド層を備えるフレキシブルプリント配線板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-077802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電子機器には、小型化が要求されてきており、そのため、フレキシブルプリント配線板においては、狭い空間に収納できるよう、高い柔軟性が求められるようになってきている。
【0006】
本発明は、フレキシブルプリント配線板において電磁波ノイズの遮蔽効果と高い柔軟性とを両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の第1態様は、第1方向に延びる絶縁体部と、前記絶縁体部の内部に配置された信号線と、前記絶縁体部の主面上に配置され、複数の第1開口を有する導電層と、前記導電層上に配置され、複数の第2開口を有する絶縁層と、を備え、前記複数の第1開口のうち2つ以上の第1開口は、前記絶縁体部の主面と垂直な方向に視て前記絶縁層と重なる位置に配置されている、ことを特徴とするフレキシブルプリント配線板である
本開示の第2態様は、第1方向に延びる絶縁体部と、前記絶縁体部の内部に配置された信号線と、前記絶縁体部の主面上に配置され、複数の第1開口を有する導電層と、前記導電層上に配置され、複数の第2開口を有する絶縁層と、を備え、前記複数の第2開口のうち2つ以上の第2開口は、前記絶縁体部の主面と垂直な方向に視て前記導電層と重なる位置に配置されている、ことを特徴とするフレキシブルプリント配線板である。
【0008】
開示の第3態様は、内部に信号線が配置された絶縁体部を用意し、前記絶縁体部の主面上に、複数の第1開口を有する導電層を形成し、前記導電層上に、複数の第2開口を有する絶縁層を形成する、ことを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法である
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電磁波ノイズの遮蔽効果と高い柔軟性とを両立させたフレキシブルプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る電子機器の一例としての撮像装置であるデジタルカメラの説明図である。
図2】(a)は実施形態に係る撮像ユニットの説明図である。(b)は(a)のIIB-IIB線に沿うフレキシブルプリント配線板の断面図である。
図3】実施形態に係る絶縁層の主面側からフレキシブルプリント配線板を視たフレキシブルプリント配線板の説明図である。
図4】(a)は実施形態に係る導電層の説明図である。(b)は実施形態に係る絶縁層の説明図である。
図5】(a)~(c)は実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法の一例を示す説明図である。
図6】(a)~(c)は実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法の一例を示す説明図である。
図7】(a)は実施例のフレキシブルプリント配線板及び比較例のフレキシブルプリント配線板の柔軟性を評価するのに用いた装置の模式図である。(b)は実施例のフレキシブルプリント配線板及び比較例のフレキシブルプリント配線板の伝送特性を評価するのに用いたシステムの模式図である。
図8】実施例1~3及び比較例1~2における評価結果を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、実施形態に係る電子機器の一例としての撮像装置であるデジタルカメラ600の説明図である。デジタルカメラ600は、レンズ交換式のデジタルカメラであり、カメラ本体601を備える。カメラ本体601は、レンズを含むレンズユニット(レンズ鏡筒)602が着脱可能となっている。カメラ本体601は、筐体611と、電子ユニットの一例である撮像ユニット100と、無線通信ユニット150と、を備える。撮像ユニット100及び無線通信ユニット150は、筐体611の内部に収納されている。
【0012】
撮像ユニット100は、プリント回路板101と、プリント回路板102と、プリント回路板101とプリント回路板102とを電気的に接続するフレキシブルプリント配線板200と、を備える。プリント回路板101は、第1電子モジュールの一例である。プリント回路板102は、第2電子モジュールの一例である。プリント回路板101とプリント回路板102との接続にフレキシブルプリント配線板200を用いることにより、同軸ケーブルよりも配線構造を軽量化することができる。
【0013】
プリント回路板101は、リジッドプリント配線板110と、リジッドプリント配線板110に実装された半導体装置111と、を備える。プリント回路板102は、リジッドプリント配線板120と、リジッドプリント配線板120に実装される半導体装置121と、を備える。リジッドプリント配線板110は、第1リジッドプリント配線板の一例である。半導体装置111は、第1電子部品の一例である。リジッドプリント配線板120は、第2リジッドプリント配線板の一例である。半導体装置121は、第2電子部品の一例である。
【0014】
半導体装置111は、本実施形態ではイメージセンサである。イメージセンサは、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。イメージセンサは、レンズユニット602を介して入射した光を電気信号に変換する機能を有する。半導体装置121は、本実施形態ではデジタルシグナルプロセッサである。デジタルシグナルプロセッサは、イメージセンサである半導体装置111から画像データを示す電気信号を取得し、取得した電気信号を補正する処理を行い、補正された画像データを生成する機能を有する。本実施形態では、撮像ユニット100は、手振れ補正機能を有しており、プリント回路板101を駆動する駆動源の一例であるモータ160を備える。このように、プリント回路板101が駆動されるので、フレキシブルプリント配線板200には、柔軟性が要求される。
【0015】
無線通信ユニット150は、GHz帯域の無線通信を行うものであり、モジュール化されている。無線通信ユニット150は、アンテナ(不図示)を含むリジッドプリント配線板151と、リジッドプリント配線板151に実装された無線通信IC152と、を有する。アンテナは無線通信IC152と同じ面内に設けられて、外部と通信しやすいように筐体611に近い位置に配置される。無線通信IC152は、アンテナを介して、例えばPC又は無線ルータなどの外部機器と無線通信を行うことで、画像データの送信及び/又は受信を行うことが可能であるのが好ましい。本実施形態では、無線通信IC152は、アンテナを介して、データの送信及び受信を行うことが可能である。具体的には、無線通信IC152は、半導体装置121から取得した画像データを示すデジタル信号を変調し、アンテナから無線規格の通信周波数の電波として送信する。また、無線通信IC152は、アンテナにて受信された電波を、画像データを示すデジタル信号に復調する。無線通信IC152は、例えばWi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)といった規格に準拠して外部機器と無線通信する。
【0016】
図2(a)は、実施形態に係る撮像ユニット100の説明図である。図2(a)に示すように、フレキシブルプリント配線板200は、長手方向であるX方向に延びている。X方向は、第1方向の一例である。フレキシブルプリント配線板200は、複数の信号線22を有する。各信号線22は、X方向に延びている。X方向は、配線方向でもある。複数の信号線22は、X方向と直交する、短手方向であるY方向に間隔をあけて配置されている。Y方向は、第2方向の一例である。X方向及びY方向と直交するZ方向は、フレキシブルプリント配線板200の厚さ方向である。フレキシブルプリント配線板200は、可撓性を有し、屈曲変形可能である。
【0017】
フレキシブルプリント配線板200は、X方向の第1端の一例である端201と、X方向の第2端の一例である端202とを有する。端202は、フレキシブルプリント配線板200において、端201とは反対側に位置している。
【0018】
リジッドプリント配線板110には、コネクタ112が実装されている。コネクタ112は、リジッドプリント配線板110に含まれる導体で半導体装置111に電気的に接続される。コネクタ112には、フレキシブルプリント配線板200の端201が装着されている。これにより、フレキシブルプリント配線板200の端201は、リジッドプリント配線板110に電気的及び機械的に接続されている。
【0019】
リジッドプリント配線板120には、コネクタ122が実装されている。コネクタ122は、リジッドプリント配線板120に含まれる導体で半導体装置121に電気的に接続される。コネクタ122には、フレキシブルプリント配線板200の端202が装着されている。これにより、フレキシブルプリント配線板200の端202は、リジッドプリント配線板120に電気的及び機械的に接続されている。
【0020】
以上の構成により、半導体装置111と半導体装置121とは、リジッドプリント配線板110、フレキシブルプリント配線板200及びリジッドプリント配線板120を介して、互いに通信可能に電気的に接続されている。
【0021】
図2(b)は、図2(a)のIIB-IIB線に沿うフレキシブルプリント配線板200の断面図である。図2(b)に示すように、フレキシブルプリント配線板200は、配線板本体210と、シールド部材220と、を有する。
【0022】
配線板本体210は、絶縁体部230と、上述した複数の信号線22とを有する。絶縁体部230は、電気絶縁性を有する物質で構成されている。各信号線22は、導電性を有する物質で構成されている。配線板本体210、即ち絶縁体部230及び複数の信号線22は、X方向に延びて形成されている。複数の信号線22は、絶縁体部230の内部にY方向に間隔をあけて配置されている。なお、図2(b)には、複数の信号線22のうちの2つを図示している。絶縁体部230は、シート状に形成されており、一対の主面231,232を有する。シールド部材220は、一対の主面231,232のいずれか一方に配置されていればよく、本実施形態では主面231上に配置されている。なお、一対の主面231,232のそれぞれにシールド部材220が配置されていてもよい。
【0023】
絶縁体部230は、複数の絶縁層240,251,252を含む。複数の絶縁層240,251,252は、互いに接触している。絶縁層240は、絶縁基板であり、一対の主面241,242を有する。複数の信号線22は、主面241上に配置されている。絶縁層251は、主面241上であって、複数の信号線22上に配置されている。
【0024】
本実施形態では、絶縁体部230は、絶縁層240と絶縁層251との間に配置された絶縁層252を有する。絶縁層252は、絶縁層240と絶縁層251とを接着する機能を有する。なお、絶縁層251が接着機能を有していれば、絶縁層252を省略してもよい。
【0025】
以下、絶縁層240について詳細に説明する。絶縁基板である絶縁層240の材質は、樹脂であるのが好ましい。樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等のポリイミド系樹脂、エポキシ等の熱硬化性樹脂や液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの中でもポリイミドまたは液晶ポリマーが好ましい。ポリイミドは、耐熱性や機械特性に優れ、かつ商業的に入手するのが容易である。また、液晶ポリマーは、比誘電率が低いため高速信号伝送用途に好適であり、かつ、吸湿性が低く寸法安定性に優れる。
【0026】
絶縁層240のZ方向の厚さは、10μm以上100μm以下が好ましい。絶縁層240のZ方向の厚さが10μm以上であることで、信号線22と周囲の電子部品との離間距離を確保することができ、信号線22における特性インピーダンスが変更されるのを抑制することができる。また、絶縁層240のZ方向の厚さが100μm以下であることで、絶縁層240における剛性を低くすることができ、フレキシブルプリント配線板200において十分な可撓性が得られる。以上の観点から、絶縁層240のZ方向の厚さは、12μm以上75μm以下がより好ましい。
【0027】
次に、各信号線22について詳細に説明する。各信号線22は、デジタルデータ信号を伝送するのに用いることができる配線である。信号伝送量の増加に伴い、複数の信号線22のうち一対の信号線22を1組とする差動信号配線を構成するのが好ましい。なお、複数の信号線22に、制御信号や応答信号といったシングルエンド信号を伝送する配線が含まれていてもよい。また、フレキシブルプリント配線板200は、信号線22のほかに不図示のグラウンド線を有していてもよい。
【0028】
信号線22の形成方法は特に限定されないが、例えば金属箔の貼り合せ、金属メッキ、インクジェットプロセス等の方法により信号線22を形成することができる。金属箔として銅箔を用いる場合は、接着剤等で貼り合わせたフィルムを用い、フォトリソ・エッチングプロセスで必要な伝送線路パターンを形成することができる。また、インクジェットプロセスを用いる場合は、金属粒子を含む高分子インクを必要なパターンに描画し、絶縁層240のガラス転移点(Tg)以下の温度で当該パターンを焼成して形成できる。信号線22の厚さは特に限定されないが、例えば、0.1μm以上20μm以下であるのが好ましい。
【0029】
次に、絶縁層251について詳細に説明する。絶縁層251としては、プラスチック及び/又は絶縁樹脂を使用することができる。絶縁層251に用いられるプラスチックとしては、いわゆるエンジニアリングプラスチックが挙げられる。即ち、絶縁層251に用いられるプラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミドが挙げられる。また、絶縁層251に用いられるプラスチックとしては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が挙げられる。低コストという観点においては、ポリエステルフィルムを用いることが好ましい。難燃性に優れるという観点においては、ポリフェニレンサルファイドフィルムを用いることが好ましい。さらに耐熱性が要求される場合には、アラミドフィルムやポリイミドフィルムを使用することが好ましい。
【0030】
絶縁層251に用いられる絶縁樹脂としては、電気絶縁性を有する樹脂であればよく、例えば、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂などが挙げられる。紫外線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、及びそれらのメタクリレート変性品などが挙げられる。なお、硬化形態としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化などいずれでもよい。また、必要に応じて、着色顔料や、難燃剤、酸化防止剤、潤滑剤、脱塵防止剤、硬化促進剤等の、その他の添加剤を配合してもよい。
【0031】
絶縁層251の形成方法は特に限定されないが、絶縁樹脂をプラスチックにコーティングする際には、以下の方法で実施できる。例えば絶縁性樹脂を溶媒に溶解させた溶解液を、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、ブレード方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式で塗工できる。溶媒は、使用する樹脂の種類により適宜選択できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶媒を用いることができる。また、酢酸などの酸、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、アセトニトリル、プロピロニトリルなどのニトリル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶媒を用いることができる。また、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶媒なども用いることができる。塗工の際、必要に応じて溶媒を揮発させるための、加熱あるいは乾燥工程を設けてもよい。加熱及び乾燥は、熱風乾燥機及び赤外線ヒーター等、加熱装置及び乾燥装置が使用でき、加熱温度及び乾燥温度や加熱時間及び乾燥時間は、適宜選択できる。
【0032】
絶縁層251のZ方向の厚さは、5μm以上50μm以下であることが好ましい。絶縁層251のZ方向の厚さが5μm以上であると、絶縁層251において十分な強度を確保することができる。絶縁層251のZ方向の厚さが50μm以下であると、摺動性や屈曲性が向上する。以上の観点から、絶縁層251のZ方向の厚さは、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。また、絶縁層251の体積抵抗値は、10Ω・cm以上が好ましく、1013Ω・cm以上であるのがより好ましい。
【0033】
次に、絶縁層252について詳細に説明する。絶縁層252は、絶縁層251と、絶縁層240及び信号線22との間に設けられた接着層である。即ち、絶縁層252は、接着剤の硬化物である。絶縁層252は、電気絶縁性が高いことが好ましい。絶縁層252を形成するのに用いられる接着剤として、例えばアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステルポリウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤が挙げられる。
【0034】
絶縁層252は、伝送線路である各信号線22を十分に被覆でき、かつ、平滑となることが好ましい。よって、絶縁層252のZ方向の厚さは、2μm以上50μm以下であることが好ましい。絶縁層252の厚さが2μm以上であると、接着剤の信号線22間への埋め込みが十分となり、絶縁層252により強固に接着することができる。また、絶縁層252の厚さが50μm以下であると、絶縁層240,251間から側方へ接着剤が染み出すのを抑制することができる。以上の観点から、絶縁層252のZ方向の厚さは、5μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0035】
絶縁層252の形成方法は特に限定されないが、例えばシート状の接着剤を貼り合わせて硬化させる方法、液状の接着剤をディスペンサまたは印刷法等により塗布して熱または紫外線によって硬化させる方法などが挙げられる。
【0036】
以上、配線板本体210について説明したが、以下、シールド部材220について詳細に説明する。シールド部材220は、シート状の部材であり、導電層221と絶縁層222とを含む。導電層221は、絶縁体部230の主面231上に配置されている。絶縁層222は、導電層221上に配置されている。導電層221は、電磁波ノイズを遮蔽するシールド層であり、導電性を有する部材で構成されている。絶縁層222は、導電層221がフレキシブルプリント配線板200の周囲の部材と接触しないように保護する保護層であり、電気絶縁性を有する部材で構成されている。
【0037】
導電層221は、どの部材にも電気的に接続されていなくてもよいが、本実施形態では、信号線22を通過する信号のリターン電流の経路として用いられ、グラウンド線の一部となっている。即ち、導電層221は、リジッドプリント配線板110,120のグラウンド線と電気的に接続されている。
【0038】
フレキシブルプリント配線板200が導電層221を有することにより、フレキシブルプリント配線板200から放射される電磁波ノイズ、及びフレキシブルプリント配線板200に伝わる外来の電磁波ノイズに対して遮蔽効果を確保することができる。本実施形態では、導電層221は、複数の開口2210を有する。各開口2210は、第1開口である。各開口2210は、貫通孔である。導電層221が複数の開口2210を有するので、導電層221の柔軟性、即ちフレキシブルプリント配線板200の柔軟性を確保することができる。
【0039】
図3は、実施形態に係る絶縁層240の主面241側からフレキシブルプリント配線板200を視たフレキシブルプリント配線板200の説明図である。図3において、絶縁層222、導電層221、信号線22及び絶縁層240を図示し、説明の都合上、絶縁層251,252の図示は省略している。また、説明の都合上、絶縁層222及び導電層221の一部の図示を省略している。Z方向は、主面231と垂直な方向でもある。
【0040】
複数の信号線22のうちの1つの信号線22に着目して説明する。Z方向に視て、複数の開口2210のうち、2つ以上の開口2210は、1つの信号線22と重なる位置に配置されている。これら2つ以上の開口2210について説明すると、2つ以上の開口2210の各々の一部又は全部がZ方向に視て1つの信号線22の一部と重なるように、2つ以上の開口2210が1つの信号線22と対向して配置されている。
【0041】
図4(a)は、実施形態に係る導電層221の説明図である。図4(a)には、Z方向に視た導電層221の一部分を図示している。フレキシブルプリント配線板200において高い柔軟性を確保する観点から、複数の開口2210は、マトリックス状に配置されているのが好ましい。本実施形態では、導電層221が網目状に形成されることにより、複数の開口2210がマトリックス状に配置されている。
【0042】
各開口2210の形状は、任意に設定することができる。各開口2210のZ方向に視た形状は、例えば矩形、多角形、円形、及び楕円形などが好ましい。多角形の中でも六角形が好ましい。矩形としては、例えば、台形、平行四辺形、菱形、長方形、及び正方形などが挙げられる。
【0043】
ここで、各開口2210のX方向の長さをL1とする。各開口2210のY方向の長さをL2とする。各開口2210は、X方向の長さL1がY方向の長さL2よりも長い形状であるのが好ましい。これにより、導電層221においてノイズを打消す電流であるリターン電流が流れやすくなり、フレキシブルプリント配線板200から放射される電磁波ノイズを抑制することができる。
【0044】
特に、各開口2210は、X方向に伸長した菱形形状であるのが好ましい。各長さL1,L2は、菱形の4つの内角のうち互いに対向する2つの内角を通る対角線の長さである。つまり、長さL1の対角線の延びる方向がX方向であり、長さL2の対角線の延びる方向がY方向である。また、各開口2210が菱形形状であると、2つ以上の開口2210を1つの信号線22に沿って配列しやすくなる。各開口2210がX方向に伸長した菱形形状であることにより、導電層221においてリターン電流がより流れやすくなり、フレキシブルプリント配線板200から放射される電磁波ノイズをより効果的に抑制することができる。
【0045】
導電層221の形成方法は特に限定されないが、以下の方法で導電層221を形成することができる。例えば主面231側に開口の形状に即したマスクを配置し、サブトラクティブ法、無電解メッキ法、電解メッキ法、又は物理蒸着法により導電層221を形成する方法が挙げられる。物理蒸着法としては、真空蒸着法やスパッタリング法などが挙げられる。また、例えば主面231側に開口の形状に即したマスクを配置し、バーコート又はスリットコートなどの塗液コーティング法により導電膜を形成した後にマスクを除去することで、導電層221を形成する方法が挙げられる。また、例えば予め開口パターンを有したスクリーン版などで導電ペーストを印刷するスクリーン印刷法、所定のパターンに沿って塗液を吐出するインクジェット法又はドットディスペンサ法により導電層221を形成する方法が挙げられる。
【0046】
導電層221の開口率は、40%以上90%以下であることが好ましい。導電層221の開口率とは、導電層221をZ方向に視たときの単位面積当たりの開口2210の面積の割合である。単位面積には、導電層221の一部と複数の開口2210の一部とが含まれる。導電層221の開口率が40%以上であると、信号伝送におけるアイパターンの開口振幅値を十分に大きくすることができ、信号線22を伝送されるデジタル信号の伝送不良を低減することができる。また、導電層221の開口率が90%以下であると、電磁波ノイズを十分に遮蔽することができる。よって、信号線22、即ちフレキシブルプリント配線板200から放射される電磁波ノイズを効果的に低減することができる。即ち、無線通信ユニット150の無線通信に影響を及ぼす電磁波ノイズを効果的に低減することができる。以上の観点から、導電層221の開口率は50%以上85%以下であることがより好ましい。
【0047】
また、各開口2210において、長さL1は、長さL2の1.5倍以上であることが好ましい。また、長さL1は、1.5mm以下であることが好ましい。長径L1が1.5mm以下であると、信号線22、即ちフレキシブルプリント配線板200から放射される電磁波ノイズの遮蔽効果が高くなる。これにより、無線通信ユニット150の無線通信に影響を及ぼす電磁波ノイズを効果的に低減することができる。以上の観点から、長さL1が1.2mm以下であることがより好ましい。
【0048】
2つの信号線22が差動信号配線である場合、各開口2210の長さL2は2つの信号線22間の距離よりも短いことが好ましい。これにより、2つの信号線22にコモンモードノイズが発生するのを抑制することができ、信号伝送に不良が生じるのを抑制することができる。
【0049】
導電層221を構成する導電性材料の材質としては、金、銀、銅、アルミニウム、及びニッケル等の金属が挙げられる。また、導電層221を構成する導電性材料としては、金属粒子及び金属繊維が挙げられる。また、導電層221を構成する導電性材料の材質は、金属のほかに、導電性フィラーを樹脂に混合したカーボンナノチューブ等の導電性樹脂組成物、並びにポリチオフェン及びポリピロール等の導電性高分子が挙げられる。
【0050】
導電層221を塗膜形成する場合、導電性材料として、導電性の高い銀粒子と樹脂バインダとを含む銀ペーストを用いるのが好適である。銀ペースト以外にも、金ペースト、銅ペースト、カーボンペースト等を用いてもよい。
【0051】
導電層221の電気抵抗値は、電磁波ノイズの遮蔽能力の観点から、0.01Ω以上5Ω以下が好ましく、0.01Ω以上1Ω以下がより好ましい。
【0052】
導電層221のZ方向の厚さは、1μm以上20μm以下であることが好ましい。導電層221の厚さが1μm以上であると、導電層221の電気抵抗値を低くすることができる。そのため、コモンモードノイズ発生時のリターン電流が導電層221を流れやすくなり、放射ノイズ量を低減することができる。導電層221のZ方向の厚さが20μm以下であると、表面を平滑にすることができる。以上の観点から、導電層221のZ方向の厚さは、2μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0053】
図4(b)は、実施形態に係る絶縁層222の説明図である。図4(b)には、Z方向に視た絶縁層222の一部分を図示している。本実施形態では、絶縁層222は、複数の開口2220を有する。各開口2220は、第2開口である。各開口2220は、貫通孔である。絶縁層222が複数の開口2220を有することにより、フレキシブルプリント配線板200において、より高い柔軟性を確保することができる。
【0054】
また、Z方向に視て、複数の開口2220のうち、2つ以上の開口2220は、1つの信号線22と重なる位置に配置されている。これら2つ以上の開口2220について説明すると、2つ以上の開口2220の各々の一部又は全部がZ方向に視て1つの信号線22の一部と重なるように、2つ以上の開口2220が1つの信号線22と対向して配置されている。
【0055】
フレキシブルプリント配線板200において高い柔軟性を確保する観点から、複数の開口2220は、マトリックス状に配置されているのが好ましい。本実施形態では、絶縁層222が網目状に形成されることにより、複数の開口2220がマトリックス状に配置されている。複数の開口2220がマトリックス状に配置されることにより、絶縁層222が変形応力によって塑性変形する、即ちフレキシブルプリント配線板200がカールするのを抑制することができる。
【0056】
Z方向に視て、複数の開口2210のうちの1つの開口2210の面積をS1とする。1つの開口2210は、複数の開口2210のうち面積が最小のものである。また、Z方向に視て、複数の開口2220のうちの1つの開口2220の面積をS2とする。1つの開口2220は、複数の開口2220のうち面積が最大のものである。
【0057】
Z方向に視て、絶縁層222の開口2220の面積S2は、導電層221の開口2210の面積S1よりも狭いのが好ましい。これにより、絶縁層222の下層に位置する導電層221がフレキシブルプリント配線板200の周囲に配置された部材と接触するのを効果的に抑制することができる。
【0058】
各開口2220の形状は、任意に設定することができる。各開口2220のZ方向に視た形状は、例えば矩形、多角形、円形、及び楕円形などが好ましい。多角形の中でも六角形が好ましい。矩形としては、例えば、台形、平行四辺形、菱形、長方形、及び正方形などが挙げられる。フレキシブルプリント配線板200の屈曲性を考慮すると、各開口2220のZ方向に視た形状は、矩形形状であるのが好ましい。
【0059】
絶縁層222に用いられる絶縁樹脂としては、電気絶縁性を有する樹脂であればよく、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、硬化膜成分を溶剤に分散させた樹脂溶液からなるコーティング剤などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂などが挙げられる。紫外線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、及びそれらのメタクリレート変性品などが挙げられる。樹脂溶液としては、ポリエステルウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂を有機溶媒に溶解させたものが挙げられる。また、必要に応じて、着色顔料や、難燃剤、酸化防止剤、潤滑剤、可塑剤、粘度調整剤、脱塵防止剤、硬化促進剤、シリカやカーボンブラックなどの無機フィラー、シリコーン粒子やポリエステル粒子などの有機フィラー、その他の添加剤を配合してもよい。絶縁層222の絶縁樹脂として、硬化膜成分を溶剤に分散させた樹脂溶液からなるコーティング剤を使用するのが好ましい。絶縁層222の絶縁樹脂としてこのコーティング剤を使用することで、硬化反応による収縮が小さく、フレキシブルプリント配線板200の反りを抑制することができる。さらに、絶縁層222の絶縁樹脂として、可撓性及び耐熱性を有するポリアミドイミド樹脂を溶媒に溶解させたコーティング剤を用いることがより好ましい。
【0060】
絶縁層222の形成方法としては、以下の方法が挙げられる。例えば導電層221上に開口2220の形状に即したマスクを配置し、バーコート又はスリットコートなどの塗液コーティング法により絶縁膜を形成した後にマスクを除去することで、絶縁層222を形成する方法が挙げられる。また、例えば予め開口パターンを有したスクリーン版などで絶縁ペーストを印刷するスクリーン印刷法、所定のパターンに沿って塗液を吐出するインクジェット法又はドットディスペンサ法により絶縁層222を形成する方法が挙げられる。
【0061】
絶縁層222のZ方向の厚さは、導電層221がフレキシブルプリント配線板200の周囲の部材と接触するのを防止する観点から、導電層221のZ方向の厚さよりも厚いことが好ましい。また、絶縁層222のZ方向の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。絶縁層222のZ方向の厚さが5μm以上であることにより、導電層221がフレキシブルプリント配線板200の周囲の部材と接触するのを効果的に防止することができる。また、絶縁層222のZ方向の厚さが20μm以下であることにより、フレキシブルプリント配線板200の柔軟性をより効果的に高めることができる。以上の観点から、絶縁層222のZ方向の厚さは、6μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0062】
以下、フレキシブルプリント配線板200の製造方法の好適な例について詳細に説明する。導電層221及び絶縁層222を絶縁体部230上に形成する方法としては、常温及び常圧下で形成できるスクリーン印刷法が好ましい。図5(a)~図5(c)及び図6(a)~図6(c)は、実施形態に係るフレキシブルプリント配線板200の製造方法の一例を示す説明図である。
【0063】
まず、図5(a)に示すように、配線板本体210を用意する。配線板本体210は、図2(b)に示すように、絶縁体部230と、絶縁体部230の内部に配置された複数の信号線22とを含む。絶縁体部230の主面上である主面231上に、スクリーン版301を配置する。スクリーン版301には、形成しようとする導電層221の形状の開口パターンが形成されている。スクリーン版301上に、導電層221の材料となる導電ペーストP1を配置する。
【0064】
次に、図5(b)に示すように、スクレーパ302により導電ペーストP1をスクリーン版301上に所定厚さに広げる。次に、図5(c)に示すように、スキージゴム303により主面231上に導電ペーストP1を転写する。主面231上に転写された導電ペーストP1が固化することで、主面231上に導電層221が形成される。
【0065】
次に、図6(a)に示すように、導電層上である導電層221上に、スクリーン版311を配置する。スクリーン版311には、形成しようとする絶縁層222の形状の開口パターンが形成されている。スクリーン版311上に、絶縁層222の材料となる絶縁ペーストP2を配置する。
【0066】
次に、図6(b)に示すように、スクレーパ312により絶縁ペーストP2をスクリーン版311上に所定厚さに広げる。次に、図6(c)に示すように、スキージゴム313により導電層221上に絶縁ペーストP2を転写する。導電層221上に転写された絶縁ペーストP2が固化することで、導電層221上に絶縁層222が形成される。
【0067】
以上の製造方法によれば、簡単に導電層221及び絶縁層222を形成することができ、製造時間を短縮することができる。
【0068】
(実施例)
次に、実施例、及び実施例と比較する比較例について説明する。実施例のフレキシブルプリント配線板は、上記実施形態のフレキシブルプリント配線板200に相当する。以下、実施例のフレキシブルプリント配線板および比較例のフレキシブルプリント配線板の柔軟性および伝送特性について評価する。
【0069】
実施例及び比較例のそれぞれについて、X方向の長さが150mm、Y方向の幅が20mmのサイズであり、20組の差動信号配線を有する片面のフレキシブルプリント配線板を用いた。
【0070】
以下、実施例及び比較例に係るフレキシブルプリント配線板の評価方法について説明する。
【0071】
(1)屈曲荷重
実施例のフレキシブルプリント配線板及び比較例のフレキシブルプリント配線板のそれぞれを屈曲させた際の反発荷重にて、それぞれの柔軟性を評価した。
【0072】
図7(a)は、実施例のフレキシブルプリント配線板200及び比較例のフレキシブルプリント配線板200Xの柔軟性を評価するのに用いた装置の模式図である。実施例のフレキシブルプリント配線板200は、配線板本体210とシールド部材220とを有する。比較例のフレキシブルプリント配線板200Xは、配線板本体210とシールド部材220Xとを有する。
【0073】
図7(a)に示すように、フレキシブルプリント配線板200,200Xを、シールド部材220,220Xが内側に来るように水平に配置する。フレキシブルプリント配線板200,200Xの長手方向の一端を曲率3mmで180度、折り曲げた際の一端の垂直方向への反発力を、(株)イマダ製「ZTA-2N」のデジタルフォースゲージ41にて評価した。
【0074】
屈曲荷重は、フレキシブルプリント配線板の柔軟性を定量的に判断する指標である。一般に、フレキシブルプリント配線板の屈曲荷重が大きいほど、フレキシブルプリント配線板の柔軟性が低い、即ちフレキシブルプリント配線板が硬くコシの強いということになる。また、一般に、フレキシブルプリント配線板の柔軟性が低くいほど、電子モジュールへのフレキシブルプリント配線板の取り付けが困難になる。また、フレキシブルプリント配線板を2つの電子モジュールに接続した場合、一方の電子モジュールが他方の電子モジュールに対して相対的に駆動される際に、駆動が阻害される要因となる。
【0075】
以下、屈曲荷重をA,B,Cの3段階で評価した。Aは、屈曲荷重が200mN未満である。Bは、屈曲荷重が200mN以上300mN未満である。Cは、屈曲荷重が300mN以上である。屈曲荷重について、BはCよりも優れ、AはBよりも優れている。
【0076】
(2)伝送特性(アイパターン)
図7(b)は、実施例のフレキシブルプリント配線板200及び比較例のフレキシブルプリント配線板200Xの伝送特性を評価するのに用いたシステム500の模式図である。このシステム500は、アジレントテクノロジーズ社製 M8041Aの信号発生器51と、アジレントテクノロジーズ社製 92504Aのオシロスコープ52と、1対の接続基板53とで構成される。各接続基板53は、信号の入出力が可能な一対の端子を有する。
【0077】
1対の接続基板53の間に、実施例のフレキシブルプリント配線板200及び比較例のフレキシブルプリント配線板200Xをそれぞれ空中に浮かした状態で接続した。また、信号発生器51と一方の接続基板53とを接続して、一方の接続基板53にビットレート5.3GbpsのPRBS23の疑似ランダム信号を入力した。一方の接続基板53の各端子への入力信号の振幅は、150mV/sideとした。すなわち、一方の接続基板53の一対の端子へ入力した差動信号の振幅は、300mVとした。また、他方の接続基板53には、オシロスコープ52を接続した。オシロスコープ52により、他方の接続基板53から出力される信号のアイパターンの開口振幅を観測した。アイパターンの開口振幅の測定は、温度25℃、相対湿度30~50%の雰囲気で行った。
【0078】
以下、伝送特性、即ちアイパターンの開口振幅をA,B,Cの3段階で評価した。Aは、開口振幅が110mV以上である。Bは、開口振幅100mV以上110mV未満である。Cは、開口振幅100mV未満である。伝送特性において、BはCよりも優れ、AはBよりも優れている。
【0079】
(3)絶縁層222の開口2220の面積及び導電層221の開口2210の面積
絶縁層222の各開口2220の面積、および各導電層221の開口2210の面積は、例えば、以下の手法により測定することができる。絶縁体部230の主面231に対して垂直なZ方向から、光学顕微鏡、走査型白色干渉顕微鏡、レーザー顕微鏡、又は走査型電子顕微鏡(SEM)などで撮像した撮像画像を用いて測定することができる。撮像画像の領域は25mmとする。
【0080】
取得した矩形の撮像画像を2値化処理して、各開口2210および各開口2220を抽出し、そのピクセル数によりの各開口2210の面積および各開口2220の面積を求めることができる。そして、各開口2210の面積の中から最小の面積を求めることができ、各開口2210の面積の中から最大の面積を求めることができる。
【0081】
なお、導電層221は、絶縁層222の下に位置するため、絶縁層222が着色されている場合などにおいて、光学系測定機器では観測できないことがある。その場合、例えば3DマイクロX線CTによって3次元画像を取得し、導電層221について、先述の画像解析を施すことで、導電層221の各開口2210の面積を求めることができる。
【0082】
ここで、配線板本体210として、日本メクトロン株式会社製造の片面フレキシブルプリント配線板を用いた。配線板本体210の寸法は、幅20mm、長さ150mmであった。配線板本体210の絶縁基板である絶縁層240は、厚さ12.5μmのポリイミドフィルムであった。この絶縁層240の主面241上には、各信号線22として、厚さ12μmの銅箔が形成されていた。一対の信号線22で1組の差動信号配線が構成されており、主面241上には、20組の作動信号配線が形成されていた。複数の信号線22上には、厚さ15μmの接着層である絶縁層252と、厚さ12.5μmの絶縁層251とが配置されていた。絶縁層251は、ポリイミドフィルムからなるカバーレイにより構成されていた。以上の構成により、配線板本体210の厚さは52μmであった。
【0083】
実施例として、実施例1、実施例2、及び実施例3の3種類のフレキシブルプリント配線板200を製造した。
【0084】
(実施例1)
配線板本体210の絶縁層251上に、電磁波ノイズ遮蔽層である導電層221を形成した。導電層221は、京都エレックス(株)製の銀ペースト(製品名:DD-1630L-245)を、スクリーン印刷機(マイクロ・テック(株)製:MT-320T)にて、厚さが3~5μmとなるような条件で絶縁層251上に印刷することで形成した。
【0085】
実施例1の導電層221は、網目状の導体パターンであり、線幅が50μmであった。導電層221に形成された各開口2210は、X方向に延びる対角線の長さがY方向に延びる対角線よりも長い菱形形状であった。各開口2210は、Y方向に延びる対角線の長さが500μm、及びX方向に延びる対角線の長さが2000μmであった。導電層221の開口率は81%であった。導電層221における各開口2210の面積のうち最小面積は0.5mmであった。導電層221の厚さは4μmであった。
【0086】
導電層221上に絶縁層222を形成した。絶縁層222は、東洋紡株式会社製のポリアミドイミド樹脂溶解コーティング剤(製品名:HR-16NN)を、スクリーン印刷機(マイクロ・テック(株)製:MT-320T)にて形成した。
【0087】
実施例1の絶縁層222は、網目状の樹脂パターンであり、線幅が50μmであった。絶縁層222に形成された各開口2220は、X方向に延びる一対の辺と、Y方向に延びる一対の辺を有する正方形状であった。各開口2220の各辺は、0.7mmであった。複数の開口2220は、X方向及びY方向に正方格子状に配列されていた。絶縁層222における各開口2220の面積のうち最大面積は0.49mmであった。絶縁層222の厚さは6μmであった。
【0088】
(実施例2)
実施例2における配線板本体210、及び導電層221は、実施例1と同じ構成のものを用いた。
【0089】
絶縁層222は、実施例1と同じ材料、及び同じ装置を用いて形成した。実施例2における絶縁層222は、網目状の樹脂パターンであった。絶縁層222に形成された各開口2220は、X方向に延びる対角線の長さがY方向に延びる対角線よりも長い菱形形状であった。各開口2220は、Y方向に延びる対角線の長さが600μm、及びX方向に延びる対角線の長さが1200μmであった。絶縁層222における各開口2220の面積のうち最大面積は0.36mmであった。絶縁層222の厚さは7μmであった。
【0090】
(実施例3)
実施例3における配線板本体210は、実施例1と同じ構成のものを用いた。
【0091】
導電層221は、実施例1と同じ材料、及び同じ装置を用いて形成した。実施例3の導電層221は、網目状の導体パターンであり、線幅が60μmであった。導電層221に形成された各開口2210は、X方向に延びる対角線の長さがY方向に延びる対角線よりも長い菱形形状であった。各開口2210は、Y方向に延びる対角線の長さが260μm、及びX方向に延びる対角線の長さが1500μmであった。導電層221の開口率は66%であった。導電層221における各開口2210の面積のうち最小面積は0.2mmであった。導電層221の厚さは7μmであった。
【0092】
絶縁層222は、実施例1と同じ材料、及び同じ装置を用いて形成した。実施例3における絶縁層222は、網目状の樹脂パターンであった。絶縁層222に形成された各開口2220は、X方向に延びる対角線の長さがY方向に延びる対角線よりも長い菱形形状であった。各開口2220は、Y方向に延びる対角線の長さが190μm、及びX方向に延びる対角線の長さが850μmであった。絶縁層222における各開口2220の面積のうち最大面積は0.08mmであった。絶縁層222の厚さは10μmであった。
【0093】
比較例として、比較例1及び比較例2の2種類のフレキシブルプリント配線板200Xを製造した。
【0094】
(比較例1)
比較例1においては、シールド部材220Xにおける導電層が、開口を有しない厚さ5μmのベタパターンである以外、実施例1と同じ構成であった。
【0095】
(比較例2)
比較例2においては、シールド部材220Xにおける絶縁層が、開口を有しない厚さ8μmのベタパターンである以外、実施例1と同じ構成であった。
【0096】
(評価結果)
【0097】
図8は、実施例1~3及び比較例1~2における評価結果を示すテーブルである。
【0098】
比較例1においては、シールド部材220Xにおける導電層がベタパターンであるため、電気容量が大きく、ビットレート5.3Gbpsにおける伝送特性は、実施例1~3と比べ、著しく損なわれていることが示された。比較例1の場合、通信エラーの頻発により、適正なデータ通信ができなくなる虞がある。
【0099】
比較例2においては、シールド部材220Xにおける絶縁層がベタパターンであるため、フレキシブルプリント配線板200Xの剛性が大きくなってしまい、屈曲荷重、即ち柔軟性が損なわれてしまう結果となった。
【0100】
これに対し、実施例1~3においては、フレキシブルプリント配線板200の屈曲荷重は小さく、ビットレート5.3Gbpsにおける伝送特性も良好なものであった。
【0101】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。また、実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0102】
22…信号線、200…フレキシブルプリント配線板、221…導電層、222…絶縁層、230…絶縁体部、2210…開口(第1開口)、2220…開口(第2開口)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8