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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/18 20060101AFI20241216BHJP
   B43K 25/02 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B43K24/18 100
B43K25/02 190
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021049386
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022147917
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】細木 真百合
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-145680(JP,U)
【文献】特開2014-024272(JP,A)
【文献】特開2005-231148(JP,A)
【文献】特開2009-126075(JP,A)
【文献】特開2012-111040(JP,A)
【文献】実開昭53-147944(JP,U)
【文献】米国特許第04919556(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00-21/26
24/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、前記軸筒内に設けられるとともに収容した鉛芯を前方へ繰出すシャープペンシル用中芯と、前記シャープペンシル用中芯への鉛芯補給路を軸筒径方向に開閉するように設けられた鉛芯補給路開閉部材と、前記軸筒の外周側で前後方向へスライドする開閉操作体とを備え、
前記開閉操作体のスライドに連動して、前記鉛芯補給路開閉部材を開閉動作させるようにしたことを特徴とする筆記具。
【請求項2】
軸筒と、前記軸筒内に設けられるとともに収容した鉛芯を前方へ繰出すシャープペンシル用中芯と、前記シャープペンシル用中芯への鉛芯補給路を開閉するように設けられた鉛芯補給路開閉部材と、前記軸筒の外周側で前後方向へスライドする開閉操作体とを備え、前記開閉操作体のスライドに連動して、前記鉛芯補給路開閉部材を開閉動作させるようにした筆記具であって、
前記開閉操作体と前記鉛芯補給路開閉部材とのうちの一方には、軸筒軸方向に対し傾斜した傾斜係合部が設けられ、その他方には、前記開閉操作体のスライドに伴い前記傾斜係合部に摺接して、前記鉛芯補給路を開閉する方向へ移動する滑動部が設けられていることを特徴とする筆記具。
【請求項3】
軸筒と、前記軸筒内に設けられるとともに収容した鉛芯を前方へ繰出すシャープペンシル用中芯と、前記シャープペンシル用中芯への鉛芯補給路を開閉するように設けられた鉛芯補給路開閉部材と、前記軸筒の外周側で前後方向へスライドする開閉操作体とを備え、前記開閉操作体のスライドに連動して、前記鉛芯補給路開閉部材を開閉動作させるようにし、
前記軸筒の外周部に設けられて前後方向へスライド操作可能な中芯出没操作体と、前記シャープペンシル用中芯を後方へ付勢する付勢部材とを備え、前記中芯出没操作体を前記付勢部材の付勢力に抗して前方へ押動する操作により前記シャープペンシル用中芯を前記軸筒の前端から突出させるようにした筆記具であって、
前記開閉操作体は、前記中芯出没操作体に設けられ、前寄り位置で前記鉛芯補給路を閉鎖し、後寄り位置で前記鉛芯補給路を開放することを特徴とする筆記具。
【請求項4】
前記開閉操作体と前記鉛芯補給路開閉部材とのうちの一方には、軸筒軸方向に対し傾斜した傾斜係合部が設けられ、その他方には、前記開閉操作体のスライドに伴い前記傾斜係合部に摺接して、前記鉛芯補給路を開閉する方向へ移動する滑動部が設けられていることを特徴とする請求項1又は3記載の筆記具。
【請求項5】
前記傾斜係合部が長孔状に形成され、前記滑動部は、前記傾斜係合部に嵌り合って前記傾斜係合部の延設方向へ滑動するように設けられていることを特徴とする請求項2又は4記載の筆記具。
【請求項6】
前記軸筒の外周部に設けられて前後方向へスライド操作可能な中芯出没操作体と、前記シャープペンシル用中芯を後方へ付勢する付勢部材とを備え、前記中芯出没操作体を前記付勢部材の付勢力に抗して前方へ押動する操作により前記シャープペンシル用中芯を前記軸筒の前端から突出させるようにした筆記具であって、
前記開閉操作体は、前記中芯出没操作体に設けられ、
前記中芯出没操作体は、支点部よりも後側が軸筒径方向内側へ押動される操作により同支点部よりも前側を軸筒外周面から離隔する開閉操作機能付きのクリップ体を具備し、
前記傾斜係合部には、前記クリップ体を開放した際に前記滑動部に嵌り合う逃げ部が設けられていることを特徴とする請求項2、4、5何れか1項記載の筆記具。
【請求項7】
前記クリップ体には、前記支点部よりも後側の部分が軸筒径方向内側へ押動された場合に前記鉛芯補給路の後方の延長線上に位置するように、鉛芯抜け防止部が設けられていることを特徴とする請求項6記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャープペンシル用中芯を備えた筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の筆記具には、例えば特許文献1に記載されるように、軸筒と、収容した鉛芯を前方へ繰出すシャープペンシル筆記体と、軸筒の外周部に設けられて前後方向へスライド操作可能なノック棒と、ノック棒の後端側に回転自在に設けられた蓋部材とを備え、蓋部材を回転させる操作により、シャープペンシル筆記体への芯補充路を開閉するようにした筆記具がある。
この筆記具によれば、芯補充路の開閉のために着脱されるキャップ等を具備しないため、前記キャップ等を紛失してしまう心配がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-111040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によれば、蓋部材を同前後位置で回転させて操作する構造であるため、この蓋部材が、開放状態にあるのか閉鎖状態にあるのかを目視確認し難い。このため、筆記者等が、蓋部材の開放状態に気が付かずに、軸筒の後端側を下方へ向けてしまい、意図せずに鉛芯を抜け落としてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
軸筒と、前記軸筒内に設けられるとともに収容した鉛芯を前方へ繰出すシャープペンシル用中芯と、前記シャープペンシル用中芯への鉛芯補給路を軸筒径方向に開閉するように設けられた鉛芯補給路開閉部材と、前記軸筒の外周側で前後方向へスライドする開閉操作体とを備え、前記開閉操作体のスライドに連動して、前記鉛芯補給路開閉部材を開閉動作させるようにしたことを特徴とする筆記具。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、鉛芯補給路の開閉状態を容易に把握でき、操作性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る筆記具の一例を示す全断面図である。
図2】同筆記具の要部分解斜視図であり、クリップ体のみを縦断面斜視図で示している。
図3】開閉操作体を下面側から視た斜視図である。
図4】同筆記具の動作説明図であり、(a)(a’)は鉛芯補給路を閉鎖した状態の縦断面図と後端面図、(b)(b’)は鉛芯補給路を開放した状態の縦断面図と後端面図である。
図5】(c)は鉛芯補給路を開放してクリップ前端側を軸筒外周面から引き離した状態の縦断面図であり、(c’)は同状態の後端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、軸筒と、前記軸筒内に設けられるとともに収容した鉛芯を前方へ繰出すシャープペンシル用中芯と、前記シャープペンシル用中芯への鉛芯補給路を開閉するように設けられた鉛芯補給路開閉部材と、前記軸筒の外周側で前後方向へスライドする開閉操作体とを備え、前記開閉操作体のスライドに連動して、前記鉛芯補給路開閉部材を開閉動作させるようにした(図1図5参照)。
【0009】
第2の特徴として、前記開閉操作体と前記鉛芯補給路開閉部材とのうちの一方には、軸筒軸方向に対し傾斜した傾斜係合部が設けられ、その他方には、前記開閉操作体のスライドに伴い前記傾斜係合部に摺接して、前記鉛芯補給路を開閉する方向へ移動する滑動部が設けられている(図1図5参照)。
【0010】
第3の特徴として、前記傾斜係合部が長孔状に形成され、前記滑動部は、前記傾斜係合部に嵌り合って前記傾斜係合部の延設方向へ滑動するように設けられている(図1図5参照)。
【0011】
第4の特徴として、前記軸筒の外周部に設けられて前後方向へスライド操作可能な中芯出没操作体と、前記シャープペンシル用中芯を後方へ付勢する付勢部材とを備え、前記中芯出没操作体を前記付勢部材の付勢力に抗して前方へ押動する操作により前記シャープペンシル用中芯を前記軸筒の前端から突出させるようにした筆記具であって、前記開閉操作体は、前記中芯出没操作体に設けられ、前寄り位置で前記鉛芯補給路を閉鎖し、後寄り位置で前記鉛芯補給路を開放する(図1図5参照)。
【0012】
第5の特徴として、前記軸筒の外周部に設けられて前後方向へスライド操作可能な中芯出没操作体と、前記シャープペンシル用中芯を後方へ付勢する付勢部材とを備え、前記中芯出没操作体を前記付勢部材の付勢力に抗して前方へ押動する操作により前記シャープペンシル用中芯を前記軸筒の前端から突出させるようにした筆記具であって、前記開閉操作体は、前記中芯出没操作体に設けられ、前記中芯出没操作体は、支点部よりも後側が軸筒径方向内側へ押動される操作により同支点部よりも前側を軸筒外周面から離隔する開閉操作機能付きのクリップ体を具備し、前記傾斜係合部には、前記クリップ体を開放した際に前記滑動部に嵌り合う逃げ部が設けられている(図5参照)。
【0013】
第6の特徴として、前記クリップ体には、前記支点部よりも後側の部分が軸筒径方向内側へ押動された場合に前記鉛芯補給路の後方の延長線上に位置するように、鉛芯抜け防止部が設けられている(図5参照)。
【0014】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
本明細書中、軸筒軸方向とは軸筒の中心線の延びる方向を意味し、軸筒周方向とは軸筒中心線の周囲を回る方向を意味する。また、「前」とは、軸筒軸方向の一方側であってシャープペンシル用中芯の前端部が突出する方向を意味し、「後」とは、前記一方側に対する逆方向側を意味する。
また、本明細書中、軸筒径方向とは軸筒の中心線に直交する軸筒の直径方向を意味し、軸筒径方向外側とは軸筒径方向に沿って軸筒中心から離れる方向を意味し、軸筒径方向内側とは軸筒径方向に沿って軸筒中心に向かう方向を意味する。
【0016】
筆記具Aは、軸筒10と、軸筒10内で進退可能なシャープペンシル用中芯20及びボールペン用中芯30と、シャープペンシル用中芯20及びボールペン用中芯30をそれぞれ後方へ付勢する付勢部材40と、軸筒10の外周部に設けられて前後方向へスライド操作可能な中芯出没操作体50,60と、シャープペンシル用中芯20への鉛芯補給路51eを開閉する鉛芯補給路開閉部材70と、軸筒10の外周側で前後方向へスライドするように設けられた開閉操作体80とを備える。
この筆記具Aは、中芯出没操作体50,60を付勢部材40の付勢力に抗して選択的に前方へ押動する操作によりシャープペンシル用中芯20又はボールペン用中芯30を軸筒10の前端から突出させる。また、開閉操作体80のスライドに連動して、鉛芯補給路開閉部材70を開閉動作させる。
【0017】
軸筒10は、単数又は複数の筒状部材から前後方向へわたる長尺筒状に構成される。図示例の軸筒10は、前端側に先細筒状の先口部11aを有する前軸11と、この前軸11の後端側に螺合接続されて後方へ延設された後軸12とを備える。なお、図中符号13は、前軸11の外周部に嵌め合わせられた筒状の弾性グリップである。
【0018】
後軸12は、前端部を開口するとともに、後端部を閉鎖された底部とした有底筒状に形成される。
この後軸12の後端側の周壁には、シャープペンシル用中芯20用の中芯出没操作体50と、ボールペン用中芯30用の中芯出没操作体60とを、それぞれ、径方向へ挿通して前後方向へスライド可能にする開口部12a,12bが、周方向に所定の間隔を置いて設けられる。
【0019】
図示例によれば、シャープペンシル用中芯20とボールペン用中芯30の数に応じて、開口部12aを一つ、開口部12bを二つ設けているが、ボールペン用中芯30及び開口部12bの数を三以上にすることも可能である。
【0020】
各開口部12a,12bの内側面には、中芯出没操作体50(又は60)を前後方向へ案内する直線状の案内面(図示せず)と、この案内面に沿って前進した中芯出没操作体50(又は60)を軸筒径方向内側へ沈み込ませてする段状の被係止部(図示せず)とが設けられる。
これら案内面及び被係止部等の構造は、例えば、特開2005-111876号公報に開示されるものを適用することが可能である。
【0021】
後軸12の前端側の内周面には、シャープペンシル用中芯20とボールペン用中芯30をそれぞれ進退自在に挿通するように、中芯保持部材14が進退不能且つ回転不能に固定される。この中芯保持部材14は、デバイダーと呼称される場合もある。
【0022】
また、シャープペンシル用中芯20は、円筒状の芯タンク21の前端側に、収容した鉛芯xを前方へ繰り出す鉛芯繰出し機構22を接続してなる。
このシャープペンシル用中芯20は、中芯出没操作体50におけるスライド体51の前端側に接続されている。シャープペンシル用中芯20は、筆記部22aを先口部11aの前端開口に挿通し係止した状態で、中芯出没操作体50の進退操作に伴う芯タンク21の進退運動により、筆記部22aから鉛芯を繰り出す。
【0023】
また、ボールペン用中芯30は、インクが充填されたインクタンク31の前端側に、最前端部に転写ボールを抱持した筆記部32(ボールペンチップ)を接続してなる。このボールペン用中芯30は、中芯出没操作体60の前端に接続されており、中芯出没操作体60の前進に伴い前進して、筆記部32を先口部11aから突出する。
なお、複数のボールペン用中芯30のうち、その一部又は全部は、電子ペン用筆記芯等、図示例以外の機能を有する中芯(リフィール)や筆記芯に置換することが可能である。
【0024】
付勢部材40は、シャープペンシル用中芯20とボールペン用中芯30の後端側に、それぞれ環状に装着された圧縮コイルバネである。
この付勢部材40の前端部は、中芯保持部材14によって受けられる。また、付勢部材40の後端部は、中芯出没操作体50又は中芯出没操作体60における軸筒内前端側の部分に環状に嵌め合わせられる。
【0025】
一方の中芯出没操作体50は、開口部12aに嵌り合って前後へ進退するスライド体51と、該スライド体51に支持されて軸筒外へ露出したクリップ体52と、クリップ体52を閉鎖方向へ付勢する付勢部材53と、後述する鉛芯補給路開閉部材70及び開閉操作体80とを備え、支点部Pよりも後側の部分が軸筒径内方向へ押動されることによって、支点部Pよりも前側の部分を軸筒外周面から離隔させて開放する開閉操作機能付クリップを構成している。
【0026】
スライド体51は、長孔状の開口部12aに沿って前後へスライドするように形成される。
このスライド体51は、開口部12a内で軸筒10周壁の被係止部(図示せず)に係止されるように後方へ突出した被係止部51a(図2参照)や、クリップ体52を回動可能に支持する支持部51b、支持部51bよりも後側で付勢部材53を伸縮自在に保持する付勢部材保持部51c、支持部51bと付勢部材保持部51cの間に設けられ鉛芯補給路開閉部材70の軸筒径方向へのスライドを案内するガイド部51d、シャープペンシル用中芯20へ鉛芯xを補給するための鉛芯補給路51e等を一体に具備する。
【0027】
支持部51bは、クリップ幅方向(図4(a’)(b’)及び図5(c’)の左右方向)の両側にそれぞれ設けられ、クリップ体52の軸部52a2と協働してクリップ体52を回動させる際の支点部Pを構成する。各支持部51bは、クリップ体52の軸部52a2を回転可能に抱持する凹状に形成される。
付勢部材保持部51cは、クリップ体52の後端側を弾発する付勢部材53(図示例によれば圧縮コイルバネ)の一端側を抱持して受けるように凹状に形成される。
【0028】
ガイド部51dは、軸筒径方向外側を開口するとともに、軸筒径方向内側を後述する鉛芯補給路51eに連通した貫通孔状(図示例によれば、スリット孔状)に形成される。
【0029】
鉛芯補給路51eは、支持部51bよりも軸筒径方向内側に位置し、軸筒軸方向へ延設された貫通孔状に形成される。
この鉛芯補給路51eの前端側は、円筒状の内周面に形成され、シャープペンシル用中芯20の後端部に環状に嵌り合う。
鉛芯補給路51eの最後端部は、後方向きに開口しており、鉛芯供給口51e1として機能する(図4参照)。
【0030】
また、鉛芯補給路51eにおける前後方向の途中部分には、上述したガイド部51dに連通する開口51e2が形成される。
【0031】
クリップ体52は、逆凹状の横断面を、軸筒10の外周面に沿って前後方向へ延設した長尺状の部材であり、その後部側に、軸筒径方向へ貫通する貫通係合部52aと、貫通係合部52aよりも後側で付勢部材53を受ける受部52bと、鉛芯抜け防止部52cとを有する。
また、クリップ体52の表面側において、貫通係合部52aよりも前側と後側の部分は、それぞれ、凹状に形成される。そして、前側の凹状部分の底面には、開閉操作体80を前方へ乗り越えさせて係止する前側係脱突起52eが設けられ、後側の凹状部分の底面には、開閉操作体80を後方へ乗り越えさせて係止する後側係脱突起52fが設けられる。前側係脱突起52eと後側係脱突起52fは、それぞれ、クリップ幅方向へわたる突起である。
【0032】
貫通係合部52aは、軸筒径方向外側から鉛芯補給路開閉部材70の開閉片部71を挿入するとともに、軸筒径方向内側からスライド体51の支持部51b及びガイド部51d等を挿入するように形成される(図2参照)。
【0033】
この貫通係合部52aは、開閉操作体80を前後方向へスライド可能であってかつ軸筒径方向外側へ抜けないように保持している。
詳細に説明すれば、この貫通係合部52aの内側には、開閉操作体80を前後方向へスライド可能にする収納空間が確保される。また、貫通係合部52aの内側面には、開閉操作体80を前後スライド可能かつ引き抜け不能に係合する被係合部52a1が複数設けられる。そして、これら被係合部52a1よりも軸筒径方向内側には、軸部52a2が設けられる。
【0034】
被係合部52a1は、クリップ体52における両側の内側面にそれぞれ設けられる。
各被係合部52a1は、開閉操作体80の前後複数のスライド突起82aに対応するように、前後方向に間隔を置いて複数設けられる。
各被係合部52a1は、前後方向へわたって貫通係合部52aの内側面から突出する長尺突起状に形成される。
【0035】
軸部52a2は、スライド体51の両側の支持部51bに嵌り合うように、貫通係合部52aの両側の内側面にそれぞれ設けられる。
この軸部52a2及び支持部51bは、クリップ体52を開閉回動させる支点部Pとして機能する。
【0036】
受部52bは、貫通係合部52aよりも後側で、付勢部材53(図示例によれば、圧縮コイルバネ)の軸筒径方向外側の端面を受けるように、平坦面状に形成される。
【0037】
鉛芯抜け防止部52cは、クリップ体52における支点部Pよりも後側部分が軸筒径方向内側へ押動された場合に(図5参照)、鉛芯補給路51eの後方の延長線上に位置するように設けられる。
図示例によれば、この鉛芯抜け防止部52cは、クリップ体52の平板状の後端壁を軸筒径方向内側へ延設してなる。
【0038】
また、他方の中芯出没操作体60は、開口部12bに嵌り合って前後へ進退するように設けられる。この中芯出没操作体60は、軸筒径方向外側へ突出する操作部61(図4参照)が前方へ押圧されることで前進し、後端側の被係止部(図示せず)を軸筒10周壁の被係止部(図示せず)に係止して、筆記部32の突出状態を保持する。
なお、選択されたシャープペンシル用中芯20又はボールペン用中芯30を軸筒10前端から突出させたり没入したりする構造は、周知の多機能筆記具の構造を適用することが可能である。
【0039】
また、鉛芯補給路開閉部材70は、軸筒径方向へ延設された開閉片部71と、この開閉片部の径方向外側の端部から前方へ延設された係合片部72とを一体に具備した側面視略L字状に構成される。
【0040】
開閉片部71は、ガイド部51dに嵌り合って軸筒径方向へ移動可能な板状に形成される。この開閉片部71の一端側は、鉛芯補給路開閉部材70全体が軸筒径方向内側へスライドするのに伴い、鉛芯補給路51eへ侵入して該鉛芯補給路51eを閉鎖する。この閉鎖状態では、鉛芯補給路51e内における鉛芯xの移動が、開閉片部71の先端側部分によって阻まれる。
【0041】
また、開閉片部71の前記一端側は、鉛芯補給路開閉部材70全体が軸筒径方向外側へスライドするのに伴い、鉛芯補給路51eを開放する。この開放状態では、鉛芯補給路51e内を鉛芯xが自由に進退可能である。
【0042】
係合片部72は、支点部Pの上方側で前方へ板状に延設され、開閉操作体80の内側に嵌り合っている。
【0043】
この係合片部72の両側面には、それぞれ、開閉操作体80の傾斜係合部82bに嵌り合って滑動する滑動部73が設けられる。
滑動部73は、クリップ幅方向へ突出する円柱状の突起である。この滑動部73は、開閉操作体80の前後方向のスライドに伴い、傾斜係合部82bに摺接して、鉛芯補給路51eの開閉方向(図示例によれば、軸筒径方向)へ移動する。
【0044】
開閉操作体80は、一方の中芯出没操作体50に設けられ、前方へ押動されることで鉛芯補給路51eを閉鎖し、後方へ押動されることで鉛芯補給路51eを開放する。
この開閉操作体80は、クリップ体52の表面側に露出する操作片部81と、この操作片部81から軸筒径方向内側へ突出する係合片部82とを有し、図示例によれば、横断面逆凹状に形成される。
【0045】
操作片部81は、平板状に形成され、その表面に、指先等を掛け易くするための突起81aを有する(図2参照)。
操作片部81の裏面には、その前端側と後端側に、係止突起81b,81cが設けられる(図3参照)。
【0046】
前側の乗越え係止突起81bは、開閉操作体80の前進時に、クリップ体52の前側係脱突起52e(図2参照)を前方へ乗り越えて、開閉操作体80を前寄り位置(図4(a)参照)に保持し、開閉操作体80の後退時には前側係脱突起52eを後方へ乗り越える。
【0047】
後側の乗越え係止突起81cは、開閉操作体80の後退時に、クリップ体52の後側係脱突起52fを後方へ乗り越えて、開閉操作体80を後寄り位置(図4(b))に保持し、開閉操作体80の前進時には後側係脱突起52fを前方へ乗り越える。
【0048】
また、係合片部82は、操作片部81におけるクリップ幅方向の一方側と他方側から軸筒径内方向へ突出するように二つ設けられる。
【0049】
各係合片部82における軸筒径方向内側の端部には、前後方向へわたってクリップ幅方向へ突出するスライド突起82aが設けられる。このスライド突起82aは、前後方向に間隔を置いて二つ設けられる。
各スライド突起82aは、クリップ体52の被係合部52a1に対し、軸筒径方向内側へ乗り越えるようにして係止される。
この係止状態において、各係合片部82は、クリップ体52に相対し、前後方向へスライド可能であって且つ引抜けることのないように保持される。
【0050】
また、各係合片部82には、軸筒軸方向に対し傾斜した傾斜係合部82bが設けられる。そして、この傾斜係合部82bの端部側には、逃げ部82cが設けられる。
【0051】
傾斜係合部82bは、前方へ行くにしたがって軸筒10の外周面から離れるように傾斜した貫通状の長孔である。この傾斜係合部82bには、内側から鉛芯補給路開閉部材70の滑動部73が挿入される。
図3中の符号82dは、鉛芯補給路開閉部材70と開閉操作体80を嵌め合わせる際に、滑動部73を傾斜係合部82bへ導く凹溝である。
【0052】
逃げ部82cは、各傾斜係合部82bの前端に連続して前方へ延設された貫通状の長孔である。この逃げ部82cは、開閉操作体80が後寄り位置にある状態でクリップ体52が開放方向へ回動した場合に、滑動部73に嵌り合うように形成される(図5参照)。
この逃げ部82cは、図示例によれば、前方へ行くにしたがって軸筒10の外周面から離れるように傾斜しており、その傾斜角度は、傾斜係合部82bの傾斜角度よりも小さい。
【0053】
上記構成の中芯出没操作体50の組み立て手順について説明すれば、先ず、鉛芯補給路開閉部材70を開閉操作体80に組付け、次に、これら開閉操作体80及び鉛芯補給路開閉部材70を、クリップ体52に組み込む。
そして、付勢部材53をスライド体51に組付け、一体的な開閉操作体80、鉛芯補給路開閉部材70及びクリップ体52を、スライド体51に組付ける。
【0054】
次に上記構成の筆記具Aについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
図4(a)(a’)に示すように、開閉操作体80が前寄り位置にある初期状態では、滑動部73が傾斜係合部82b内の後端側に位置し、鉛芯補給路開閉部材70の開閉片部71が鉛芯補給路51eを閉鎖し、芯タンク21及び鉛芯補給路51e内にある鉛芯xが後方へ抜けないように保持される。
【0055】
開閉操作体80が、クリップ体52に対し後方へ移動すると、傾斜係合部82bが滑動部73に摺動して、滑動部73が軸筒径方向外側へ移動する。
開閉操作体80が図4(b)に示す後寄り位置まで移動した状態では、滑動部73が傾斜係合部82b内の前端側に位置し、鉛芯補給路開閉部材70の開閉片部71が鉛芯補給路51eを開放する。したがって、この状態では、鉛芯補給路51e内へ、その後方側から鉛芯xを供給することができる。
【0056】
このように、筆記具Aによれば、開閉操作体80を前後にスライドする操作により鉛芯補給路51eを容易に開閉することができる上、鉛芯補給路51eの開閉状態を、開閉操作体80が前寄り位置にあるか後寄り位置にあるかによって容易に把握することができる。
【0057】
しかも、開閉操作体80を前方へスライドする操作により鉛芯補給路51eが閉鎖するため、開閉操作体80を前進させてシャープペンシル用中芯20を軸筒10前端から突出させる操作や、開閉操作体80をノックしてシャープペンシル用中芯20から鉛芯xを繰り出す操作などの際に、手指が開閉操作体80に触れて、鉛芯補給路開閉部材70が開動してしまう誤操作を防ぐことができる。
【0058】
また、前記後寄り位置のまま、クリップ体52の後端側が軸筒径方向内側へ押圧されたり、クリップ体52前端側と軸筒10の間に物が挟まれたりして、クリップ体52の前端側が軸筒10から離れるようにして回動した場合、滑動部73は、傾斜係合部82b内から逃げ部82c内へ移動する(図5(c)参照)。
このため、略逆L字状の鉛芯補給路開閉部材70が、クリップ体52の回動力を受けて損傷するのを防ぐことができる。
【0059】
また、クリップ体52の開放状態においては、クリップ体52後端の鉛芯抜け防止部52cが、鉛芯補給路51eの後方の延長線上に位置する。このため、鉛芯xが開放状態の鉛芯補給路51e内を後方へ移動して、外部へ抜け出してしまうのを、鉛芯抜け防止部52cによって阻むことができる(図5(c)(c’)参照)。
【0060】
<変形例>
上記実施態様によれば、開閉操作体80に傾斜係合部82bを設け、鉛芯補給路開閉部材70に滑動部73を設けたが、他例としては、前記とは逆に、開閉操作体に滑動部を設け、鉛芯補給路開閉部材に傾斜係合部を設けることも可能である。
【0061】
上記実施態様によれば、中芯出没操作体50に開閉操作体80及び鉛芯補給路開閉部材70を設けたが、他例としては、軸筒の周壁に開閉操作体及び鉛芯補給路開閉部材を設けることも可能である。
【0062】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
10:軸筒
20:シャープペンシル用中芯
30:ボールペン用中芯
40:付勢部材
50,60:中芯出没操作体
51:スライド体
51b:支持部(支点部P)
51e:鉛芯補給路
52:クリップ体
52a2:軸部(支点部P)
52c:鉛芯抜け防止部
70:鉛芯補給路開閉部材
73:滑動部
80:開閉操作体
82b:傾斜係合部
82c:逃げ部
A:筆記具
x:鉛芯
図1
図2
図3
図4
図5