(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】ダイス、ダイスの製造方法、押出装置およびペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/30 20190101AFI20241216BHJP
【FI】
B29C48/30
(21)【出願番号】P 2021052668
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 知典
(72)【発明者】
【氏名】河野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】松田 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】山邊 郁也
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-179734(JP,A)
【文献】特公昭51-032660(JP,B1)
【文献】特開平11-277528(JP,A)
【文献】国際公開第2019/103686(WO,A1)
【文献】特表2012-500131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出面および前記押出面と反対側の注入面を有し、以下を含むダイス:
第1金属材料からなる第1部材;
前記注入面側における前記第1部材の表面から前記第1部材の内部にわたって形成された注入孔;
前記押出面側における前記第1部材の表面から前記第1部材の内部にわたって形成され、かつ、前記注入孔に接続された複数のノズル;
前記第1部材の内部に設けられた熱源;および
前記第1部材の内部に設けられた複数の第1断熱部、
ここで、前記複数の第1断熱部は、平面視において前記第1部材の外周側から前記第1部材の内側に向かって延在
し、
前記複数の第1断熱部の断面形状は、隣り合う前記第1断熱部の間の間隔が、前記押出面側から前記注入面側に向かうにしたがって徐々に大きくなるような形状である。
【請求項2】
押出面および前記押出面と反対側の注入面を有し、以下を含むダイス:
第1金属材料からなる第1部材;
前記注入面側における前記第1部材の表面から前記第1部材の内部にわたって形成された注入孔;
前記押出面側における前記第1部材の表面から前記第1部材の内部にわたって形成され、かつ、前記注入孔に接続された複数のノズル;
前記第1部材の内部に設けられた熱源;および
前記第1部材の内部に設けられた複数の第1断熱部、
ここで、前記複数の第1断熱部は、平面視において前記第1部材の外周側から前記第1部材の内側に向かって延在し、
前記複数の第1断熱部の断面形状は、前記押出面側から前記注入面側に向かうにしたがって幅が徐々に小さくなる形状であ
る。
【請求項3】
押出面および前記押出面と反対側の注入面を有し、以下を含むダイス:
第1金属材料からなる第1部材;
前記注入面側における前記第1部材の表面から前記第1部材の内部にわたって形成された注入孔;
前記押出面側における前記第1部材の表面から前記第1部材の内部にわたって形成され、かつ、前記注入孔に接続された複数のノズル;
前記第1部材の内部に設けられた熱源;および
前記第1部材の内部に設けられた複数の第1断熱部、
ここで、前記複数の第1断熱部は、平面視において前記第1部材の外周側から前記第1部材の内側に向かって延在し、
前記第1部材を貫通するように、前記第1部材の中央部には第1連結孔が設けられており、
前記複数の第1断熱部は、第1群に属する前記複数の第1断熱部と、第2群に属する前記複数の第1断熱部と、第3群に属する前記複数の第1断熱部と、第4群に属する前記複数の第1断熱部とを含み、
前記第1群に属する前記複数の第1断熱部は、平面視において、第1方向に延在し、かつ前記第1方向と直交する第2方向に配列し、
前記第2群に属する前記複数の第1断熱部は、平面視において、前記第2方向に延在し、かつ前記第1方向に配列し、
前記第3群に属する前記複数の第1断熱部は、平面視において、前記第1方向に延在し、前記第2方向に配列し、かつ、前記第1群とは前記第1連結孔を間に挟んで反対側に位置し、
前記第4群に属する前記複数の第1断熱部は、平面視において、前記第2方向に延在し、前記第1方向に配列し、かつ、前記第2群とは前記第1連結孔を間に挟んで反対側に位置
し、
前記第1群、前記第2群、前記第3群および前記第4群のそれぞれにおいて、前記複数の第1断熱部の延在方向に垂直な断面視における前記複数の第1断熱部の配列は、前記押出面側に凸となる曲線状の配列となっている。
【請求項4】
押出面および前記押出面と反対側の注入面を有し、以下を含むダイス:
第1金属材料からなる第1部材;
前記注入面側における前記第1部材の表面から前記第1部材の内部にわたって形成された注入孔;
前記押出面側における前記第1部材の表面から前記第1部材の内部にわたって形成され、かつ、前記注入孔に接続された複数のノズル;
前記第1部材の内部に設けられた熱源;および
前記第1部材の内部に設けられた複数の第1断熱部、
ここで、前記複数の第1断熱部は、平面視において前記第1部材の外周側から前記第1部材の内側に向かって延在し、
前記第1部材の内部に設けられた複数の第2断熱部を更に含み、
前記複数の第2断熱部は、前記複数の第1断熱部の内側端部にそれぞれ接続され、かつ、前記第1部材の厚さ方向に延在す
る。
【請求項5】
請求項1
~4のいずれか1項に記載のダイスにおいて、
前記複数の第1断熱部は放射状に延在する、ダイス。
【請求項6】
請求項1
~4のいずれか1項に記載のダイスにおいて、
前記複数の第1断熱部のそれぞれは、前記第1部材に設けられた孔と、前記孔の内部に存在するガスとからなる、ダイス。
【請求項7】
請求項
6に記載のダイスにおいて、
前記孔の内部に存在する前記ガスの圧力は、大気圧、または、大気圧よりも低い圧力である減圧もしくは真空である、ダイス。
【請求項8】
請求項1
~4のいずれか1項に記載のダイスにおいて、
前記押出面側における前記第1部材の表面に設けられ、かつ、前記第1金属材料よりも高い硬度を有するプレート部材を更に有し、
前記ノズルは前記プレート部材を貫通している、ダイス。
【請求項9】
請求項1
~4のいずれか1項に記載のダイスにおいて、
第2金属材料からなり、かつ、前記平面視において前記第1部材を囲むように前記第1部材に接合された第2部材を更に有する、ダイス。
【請求項10】
請求項
9に記載のダイスにおいて、
前記第1部材と前記第2部材との間に、第3断熱部が設けられ、
前記複数の第1断熱部の外周側端部は、前記第3断熱部と接続されている、ダイス。
【請求項11】
請求項
9に記載のダイスにおいて、
前記第2金属材料のじん性は、前記第1金属材料のじん性よりも高い、ダイス。
【請求項12】
請求項1
~4のいずれか1項に記載のダイスにおいて、
前記注入孔は、前記注入面側における前記第1部材の表面と前記複数の第1断熱部との間に位置する、ダイス。
【請求項13】
請求項
12に記載のダイスにおいて、
前記複数のノズルは、前記複数の第1断熱部の間を通過している、ダイス。
【請求項14】
請求項1
~4のいずれか1項に記載のダイスにおいて、
前記熱源は、前記注入面側における前記第1部材の表面と前記複数の第1断熱部との間に位置する、ダイス。
【請求項15】
請求項1
~4のいずれか1項に記載のダイスを備えた押出装置であって、
その内部にスクリュが設けられたシリンダと、
前記シリンダが前記注入面に接続された前記ダイスと、
前記ダイスの前記押出面に対向するように設けられた複数のカッタを有するカッタホルダと、
を有する、押出装置。
【請求項16】
請求項
15に記載の押出装置を用いたペレットの製造方法であって、
(a)前記シリンダの内部へ樹脂材料を供給する工程、
(b)前記シリンダ内で混練した前記樹脂材料を前記注入面側から前記ダイスの前記注入孔へ注入する工程、
(c)前記注入孔へ注入された前記樹脂材料を前記複数のノズルから押し出す工程、
(d)前記ノズルから押し出された前記樹脂材料を前記カッタによって切断することで、前記樹脂材料からなる複数のペレットを取得する工程、
を有し、
前記(c)工程および前記(d)工程は、前記熱源が駆動された状態で行われる、ペレットの製造方法。
【請求項17】
以下の工程を含む、ダイスの製造方法:
(a)3Dプリンタを用いて製造され、押出面および前記押出面と反対側の注入面を有し、かつ、第1金属材料からなる第1部材を用意する工程;
(b)第2金属材料からなる第2部材を用意する工程;
(c)前記第1金属材料よりも高い硬度を有するプレート部材を用意する工程;
(d)前記押出面側から見た平面視において前記第1部材を囲むように、前記第1部材に第2部材を接合する工程;および
(e)前記押出面側における前記第1部材の表面に、前記プレート部材を接合する工程、
ここで、前記第1部材は、
前記注入面側における前記第1部材の表面から前記第1部材の内部にわたって形成された注入孔と、
前記押出面側における前記第1部材の表面から前記第1部材の内部にわたって形成され、かつ、前記注入孔に接続された複数のノズルと、
前記第1部材の内部に設けられた熱源と、
前記第1部材の内部に設けられた複数の第1断熱部と、
を有し、
前記複数の第1断熱部は、平面視において前記第1部材の外周側から前記第1部材の内側に向かって延在
し、
前記複数の第1断熱部の断面形状は、隣り合う前記第1断熱部の間の間隔が、前記押出面側から前記注入面側に向かうにしたがって徐々に大きくなるような形状である。
【請求項18】
押出面および前記押出面と反対側の注入面を有し、以下を含むダイス:
前記注入面から前記ダイスの内部にわたって形成された注入孔;
前記押出面から前記ダイスの内部にわたって形成され、かつ、前記注入孔に接続された複数のノズル;
前記ダイスの内部に設けられた熱源;および
前記ダイスの内部に設けられた複数の第1断熱部、
ここで、前記複数の第1断熱部は、平面視において前記ダイスの中央部から外周側に向かって延在
し、
前記複数の第1断熱部の断面形状は、隣り合う前記第1断熱部の間の間隔が、前記押出面側から前記注入面側に向かうにしたがって徐々に大きくなるような形状である。
【請求項19】
押出面および前記押出面と反対側の注入面を有し、以下を含むダイス:
前記注入面から前記ダイスの内部にわたって形成された注入孔;
前記押出面から前記ダイスの内部にわたって形成され、かつ、前記注入孔に接続された複数のノズル;
前記ダイスの内部に設けられた熱源;および
前記ダイスの内部に設けられた複数の第1断熱部、
ここで、前記複数の第1断熱部は、平面視において前記ダイスの中央部から外周側に向かって延在し、
前記複数の第1断熱部の断面形状は、前記押出面側から前記注入面側に向かうにしたがって幅が徐々に小さくなる形状であ
る。
【請求項20】
押出面および前記押出面と反対側の注入面を有し、以下を含むダイス:
前記注入面から前記ダイスの内部にわたって形成された注入孔;
前記押出面から前記ダイスの内部にわたって形成され、かつ、前記注入孔に接続された複数のノズル;
前記ダイスの内部に設けられた熱源;および
前記ダイスの内部に設けられた複数の第1断熱部、
こ
こで、前記複数の第1断熱部は、平面視において前記ダイスの中央部から外周側に向かって延在し、
前記ダイスを貫通するように、前記ダイスの中央部には第1連結孔が設けられており、
前記複数の第1断熱部は、第1群に属する前記複数の第1断熱部と、第2群に属する前記複数の第1断熱部と、第3群に属する前記複数の第1断熱部と、第4群に属する前記複数の第1断熱部とを含み、
前記第1群に属する前記複数の第1断熱部は、平面視において、第1方向に延在し、かつ前記第1方向と直交する第2方向に配列し、
前記第2群に属する前記複数の第1断熱部は、平面視において、前記第2方向に延在し、かつ前記第1方向に配列し、
前記第3群に属する前記複数の第1断熱部は、平面視において、前記第1方向に延在し、前記第2方向に配列し、かつ、前記第1群とは前記第1連結孔を間に挟んで反対側に位置し、
前記第4群に属する前記複数の第1断熱部は、平面視において、前記第2方向に延在し、前記第1方向に配列し、かつ、前記第2群とは前記第1連結孔を間に挟んで反対側に位置
し、
前記第1群、前記第2群、前記第3群および前記第4群のそれぞれにおいて、前記複数の第1断熱部の延在方向に垂直な断面視における前記複数の第1断熱部の配列は、前記押出面側に凸となる曲線状の配列となっている。
【請求項21】
押出面および前記押出面と反対側の注入面を有し、以下を含むダイス:
前記注入面から前記ダイスの内部にわたって形成された注入孔;
前記押出面から前記ダイスの内部にわたって形成され、かつ、前記注入孔に接続された複数のノズル;
前記ダイスの内部に設けられた熱源;および
前記ダイスの内部に設けられた複数の第1断熱部、
ここで、前記複数の第1断熱部は、平面視において前記ダイスの中央部から外周側に向かって延在し、
前記ダイスの内部に設けられた複数の第2断熱部を更に含み、
前記複数の第2断熱部は、前記複数の第1断熱部の内側端部にそれぞれ接続され、かつ、前記ダイスの厚さ方向に延在す
る。
【請求項22】
押出面および前記押出面と反対側の注入面を有し、以下を含むダイス:
前記注入面から前記ダイスの内部にわたって形成された注入孔;
前記押出面から前記ダイスの内部にわたって形成され、かつ、前記注入孔に接続された複数のノズル;
前記ダイスの内部に設けられた熱源;および
前記ダイスの内部に設けられた複数の第1断熱部、
ここで、前記複数の第1断熱部は、平面視において前記ダイスの中央部から外周側に向かって延在し、
前記ダイスの内部に設けられ、かつ前記ダイスの厚さ方向に延在する第3断熱部を更に含み、
前記複数の第1断熱部の外周側端部は、前記第3断熱部と接続されてい
る。
【請求項23】
請求項
18~22のいずれか1項に記載のダイスにおいて、
前記複数の第1断熱部は放射状に延在する、ダイス。
【請求項24】
請求項
18~22のいずれか1項に記載のダイスにおいて、
前記複数の第1断熱部のそれぞれは、前記ダイスに設けられた孔と、前記孔の内部に存在するガスとからなる、ダイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイス、ダイスの製造方法、ダイスを備える押出装置および押出装置を用いたペレットの製造方法に関し、例えば、断熱層を有するダイスに好適に利用できる。
【背景技術】
【0002】
従来から、フィラー含有の熱可塑性樹脂(一例としてポリプロピレン(PP)コンパウンド等)のペレット製造において、ダイスの内部に設けられているノズル穴を溶融樹脂が通過する際に、ノズル穴中で溶融樹脂が固化する現象(目詰まり)が問題となっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ダイプレート本体の内部に設けられているノズル穴の周囲において、ダイ面とカバープレートとの間に、断熱のための空気チャンバを設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダイスの内部に断熱層を設けることにより、ダイスの内部のノズル穴を溶融樹脂が通過する際に、ノズル穴中で樹脂が固化する現象(目詰まり)を抑制することが期待される。しかしながら、ダイスの内部に設けられる断熱層が少ないと、ノズル穴中で樹脂が固化する現象を抑制する効果が小さくなる。一方、ダイスの内部に設けられる断熱層が多いと、ダイスの強度が低下してしまい、それに伴う不具合が生じる虞がある。したがって、ダイスの性能、および、強度を両立させることが望まれる。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態におけるダイスは、第1金属材料からなる第1部材と、前記第1部材の表面から前記第1部材の内部にわたって形成された注入孔と、前記表面とは反対側の表面から前記第1部材の内部にわたって形成され、かつ、前記注入孔に接続された複数のノズルと、前記第1部材の内部に設けられた熱源と、前記第1部材の内部に設けられた複数の第1断熱部と、を含む。前記複数の第1断熱部は、平面視において前記第1部材の外周側から前記第1部材の内側に向かって延在する。
【発明の効果】
【0008】
一実施の形態によれば、ダイスの性能、および、ダイスを備える押出装置の性能を向上させることができる。また、押出装置を用いて製造されるペレットの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施の形態における押出装置を示す模式図である。
【
図2】一実施の形態におけるダイスを示す平面図である。
【
図3】一実施の形態におけるダイスを示す平面透視図である。
【
図4】一実施の形態におけるダイスを示す平面透視図である。
【
図5】一実施の形態におけるダイスを示す断面図である。
【
図6】
図3の一部を拡大して示す部分拡大図である。
【
図7】一実施の形態におけるダイスを示す断面図である。
【
図8】
図7の一部を拡大して示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0011】
また、実施の形態で用いられる図面では、図面を見易くするために、断面図であってもハッチングが省略されている場合もあり、平面図であってもハッチングが付されている場合もある。
【0012】
(実施の形態)
<押出装置の構成例について>
図1は、本実施の形態における押出装置(押出機)1を示す模式図である。なお、
図1においては、理解を簡単にするために、シリンダ2に内蔵されたスクリュ3を透視して示してある。
【0013】
まず、
図1を参照して、押出装置1の概略構成について説明する。
図1に示される押出装置1は、シリンダ(バレル)2と、シリンダ2内に回転可能(回転自在)に配置されたスクリュ3と、シリンダ2内のスクリュ3を回転させるための回転駆動機構4と、シリンダ2の上流側(後端側)に配置されたホッパ(樹脂投入部)5と、シリンダ2の先端部(下流側端部)に取り付けられたダイス(ダイ、金型)6と、を有している。ホッパ5は、シリンダ2の上面に接続されており、ホッパ5を介してシリンダ2内に樹脂材料を供給できるようになっている。シリンダ2は、ヒータなどの図示しない温度調整手段(温度調節機構)によって、温度制御される。押出装置1は、更に、シリンダ2に接続されたフィラー供給装置(図示せず)を有する場合もあり得るが、その場合は、そのフィラー供給装置からシリンダ2内に所望のフィラーを供給することができる。また、押出装置1は、更に、シリンダ2に接続された注液ノズル(図示せず)を有する場合もあり得るが、その場合は、その注液ノズルからシリンダ2内に所望の添加剤などを供給することができる。
【0014】
なお、押出装置1に関して「下流側」および「上流側」と称する場合、「下流側」とは、押出装置1における樹脂の流れの下流側を意味し、「上流側」とは、押出装置1における樹脂の流れの上流側を意味する。このため、押出装置1において、ダイス6の押出面21bに近い側が下流側であり、ダイス6の押出面21bから遠い側、すなわちホッパ5に近い側が上流側である。
【0015】
シリンダ2の内部には、2本のスクリュ3が回転可能(回転自在)に挿入されて内蔵されている。このため、押出装置1は、二軸押出装置(二軸押出機)とみなすこともできる。シリンダ2内において、2本のスクリュ3は、互いに噛み合うように配置されて回転する。シリンダ2の長手方向(長辺方向、軸方向、延在方向)と、シリンダ2内のスクリュの長手方向(長辺方向、軸方向、延在方向)とは、同じである。
【0016】
なお、本実施の形態では、シリンダ2内のスクリュ3の数が2本の場合について説明しているが、他の形態として、シリンダ2内のスクリュ3の数を1本とすることもできる。しかしながら、シリンダ2内のスクリュ3の数を2本とした場合には、空間容積を大きくとれるため、同一スクリュ口径の場合、単軸(スクリュ3が1本)よりも二軸(スクリュ3が2本)の方が原料の供給能力を高くすることができる。
【0017】
ダイス6は、押出装置1のシリンダ2から押し出されてくる溶融樹脂を、所定の断面形状(ここでは紐状)に成形して吐出するように機能することができる。このため、ダイス6は、押出成形用のダイス(ダイ、金型)である。
【0018】
なお、本願において、「溶融」とは、熱で溶かす場合に限定されず、溶剤などで溶かす場合も含むものとする。このため、加熱により樹脂を溶かした場合だけでなく、溶剤で樹脂を溶かした場合や、マイクロ波により樹脂を溶かした場合なども、「溶融樹脂」に含まれ得る。また、液状樹脂も、「溶融樹脂」に含まれ得る。
【0019】
シリンダ2の先端部(下流側の端部)は、ダイス6に接続されている。押出装置1のダイス6は、水槽(循環箱)11およびカッタホルダ12を含むペレタイザー13に取り付けられている。ペレタイザー13を押出装置1の一部とみなすこともできる。
【0020】
ダイス6は、互いに反対側に位置する面である注入面(上流面)21aと押出面(下流面)21bとを有しており、ダイス6の注入面21aはシリンダ2の先端部に接続され、ダイス6の押出面21bは水槽11内に配置されている。水槽11の内部は、ペレット循環水(PCW)と称する液体で満たされている。ペレット循環水を構成する液体は、例えば水である。
【0021】
カッタホルダ12は、水槽11の内部に設けられ、ダイス6の押出面21bの近傍に配置されている。ダイス6の押出面21bに対向するように、カッタホルダ12には複数のカッタ(切断刃)が設けられており、押出面21bから押し出されてくる樹脂材料が、ペレット循環水中においてカッタによって切断され、複数のペレット(樹脂ペレット)14として個片化される。
【0022】
<ペレットの製造方法>
図1を参照して、ペレットの製造方法について説明する。
【0023】
押出装置1において、ホッパ5からシリンダ2内に供給された樹脂材料(熱可塑性樹脂)は、シリンダ2内でスクリュ3の回転により前方へ送られながら溶融される(すなわち溶融樹脂となる)。フィラー供給装置(図示せず)からシリンダ2内にフィラーが供給される場合は、押出装置1のシリンダ2内において、樹脂(溶融樹脂)とフィラーとがスクリュ3の回転により混練されるため、シリンダ2内の溶融樹脂は、フィラーを含有した状態になる。
【0024】
押出装置1において、スクリュ3の回転によりシリンダ2内を前方に送られた溶融樹脂(樹脂材料)は、シリンダ2の先端に取り付けられたダイス6から押し出される。なお、ダイス6は、溶融樹脂を吐出するための後出するノズル24を有しており、ダイス6のノズル24から溶融樹脂が押し出される(吐出される)。押出装置1のダイス6は、水槽11に接続されており、水槽11内にはペレット循環水が充填されている。このため、押出装置1のダイス6のノズル24から水槽11内のペレット循環水中に溶融樹脂が押し出される。ダイス6のノズル24から水槽11内のペレット循環水中に押し出された溶融樹脂(樹脂材料)は、カッタホルダ12に装着されたカッタよって次々に切断されるとともに、ペレット循環水で冷却されて凝固(固化)する。これにより、ペレット(樹脂ペレット)14が形成(成形)される。その後、ペレット14は、水槽11の外部へ移送される。このようにして、本実施の形態の押出装置1を用いて、複数のペレット14を取得することができる。
【0025】
また、本実施の形態では、ダイス6のノズル24から溶融樹脂(樹脂材料)を水槽11(ペレット循環水)中へ押し出してカッタで切断する場合について説明した。他の形態として、水槽11を設けずに、ダイス6のノズル24から溶融樹脂(樹脂材料)を空気中(ダイス6の外部)へ押し出してカッタで切断する場合もあり得る。
【0026】
<ダイスの構造について>
図2~
図8を参照して、本実施の形態におけるダイス6の構造について説明する。
図2は、押出面21b側から見たダイス6の平面図である。
図2は、平面図であるが、図面を見やすくするために、硬質プレート6cにドットのハッチングを付してある。
図3および
図4は、押出面21b側から見たダイス6の平面透視図である。
図3では、ダイス6内の断熱層31をドットのハッチングを付して示してある。また、
図4では、ダイス6内の熱源26および熱センサ27をドットのハッチングを付して示してある。
図5は、ダイス6の断面図である。
図2~
図4に示されるA-A線の位置での断面図が、
図5にほぼ対応している。
図6は、
図3の一部を拡大して示す部分拡大図である。
図7は、ダイス6の断面図であり、
図8は、
図7の一部を拡大して示す部分拡大図(部分拡大断面図)である。
【0027】
なお、本願でダイス6の構造を説明する場合、「平面」とは、押出面21bまたは注入面21aに平行な面を意味し、「平面視」とは、押出面21b側または注入面21a側から見ることを意味する。また、「断面」とは、押出面21bまたは注入面21aに略垂直な面を意味し、「断面視」とは、前記垂直な面を見ることを意味する。また、本願では説明の便宜上、断面視において、注入面21a側を下方とし、押出面21b側を上方として各構成を説明する場合もある。
【0028】
また、本願では、「注入面21a」はシリンダ2に接続する側(すなわち上流側)におけるダイス6の表面全体を指し、「押出面21b」は水槽11に接続する側(すなわち下流側)におけるダイス6の表面全体を指している。より特定的には、「注入面21a」は、ダイス6のうち注入孔25が開口している面であり、「押出面21b」は、ダイス6のうちノズル24が開口している面、または、硬質プレート6cのうちノズル24が開口している面である。
【0029】
図2~
図8に示されるように、ダイス6は、中央部材6aと、中央部材6aを囲む外周部材6bと、を有している。外周部材6bは、平面視において中央部材6aを囲んでいる。中央部材6aと外周部材6bとは、別々に製造された部材であり、溶接などによって互いに接合されて、一体化している。すなわち、外周部材6bは、平面視において中央部材6aを囲むように中央部材6aに接合されている。また、中央部材6aおよび外周部材6bは、それぞれ金属材料(例えばステンレス鋼)からなるが、互いに異なる素材(異なる種類のステンレス鋼)でもよい。
【0030】
ダイス6には、他部材(例えばシリンダ2)と接続するための連結孔22,23が設けられている。ここでは、中央部材6aの中央部には、中央部材6aを貫通するように、1個の連結孔22が設けられ、また、外周部材6bには、外周部材6bを貫通するように、4個の連結孔23が設けられている。
図5において破線で示されるように、各々の連結孔22,23に、ボルト等の連結部材22a,23aを設けることで、ダイス6とシリンダ2とが連結される。
【0031】
なお、押出面21b側では、カッタホルダ12に備えられたカッタが可動するので、連結部材22a,23aがダイス6から突出して削られる事がないように、連結孔22,23の周辺箇所は、他の箇所よりも注入面21a側へ窪むように形成されている。
【0032】
また、ダイス6は、押出面21b側における中央部材6aの表面に設けられた硬質プレート(プレート部材)6cを、更に有する。硬質プレート6cは、中央部材6aを構成する材料(金属材料)よりも硬度の高い材料からなる。すなわち、硬質プレート6cは、中央部材6a(を構成する金属材料)よりも高い硬度を有している。また、硬質プレート6cは、外周部材6bを構成する材料(金属材料)よりも硬度の高い材料からなる。硬質プレート6cは、例えば炭化チタン(TiC)を含む素材からなり、例えば1~5mmの厚さを有している。硬質プレート6cおよび中央部材6aは、例えば自溶化合金を用いてロウ付けすることで、互いに接合されている。このような硬度の高い硬質プレート6cが押出面21b側に設けられていることによって、中央部材6aが、カッタホルダ12に備えられたカッタによって削られる虞を抑制できる。
【0033】
また、中央部材6aおよび硬質プレート6cには、複数のノズル(孔部)24が設けられている。各ノズル24は、中央部材6aに形成された部分と、硬質プレート6cに形成された部分とを有しており、両者は連通している。すなわち、中央部材6aにおけるノズル24と、硬質プレート6cにおけるノズル24とは、互いに連通しており、一体化したノズルを構成する。このため、ノズル24は、硬質プレート6cを貫通している。また、中央部材6aには、複数の注入孔25が設けられており、各注入孔25に対して、複数のノズル24が連通している(空間的につながっている)。このため、各ノズル24の端部(上流側端部)は、注入孔25に接続されている(つながっている)。
【0034】
図2~
図4の場合は、中央部材6aには、注入孔25が4つ設けられており、各注入孔25に11個のノズル24が連通しているため、全部で44個のノズル24が設けられている。なお、各注入孔25に連通するノズル24の数は、11個に限定されず、任意の数(好ましくは複数)とすることができる。また、中央部材6aに設ける注入孔25の数は、4つが好ましいが、4つ以外の任意の数(単数または複数)とすることもできる。
【0035】
押出装置1において、スクリュ3の回転によりシリンダ2内を前方(下流側)に送られた溶融樹脂は、シリンダ2からダイス6に注入される。この際、溶融樹脂は、注入面21a側において注入孔25に注入される。シリンダ2から注入孔25に注入された溶融樹脂は、注入孔25に連通するノズル24を通って押出面21bからダイス6の外部(具体的には水槽11)へ押し出される。
【0036】
注入孔25は、注入面21a側における中央部材6aの表面から中央部材6aの内部にわたって形成され、相対的に広い開口面積を有し、複数のノズル24に接続されている。
【0037】
ノズル24は、硬質プレート6cを貫通し、押出面21b側における中央部材6aの表面から中央部材6aの内部にわたって形成され、注入孔25に接続されている。ノズル24の開口面積(開口径)は、注入面21aの開口面積よりも小さい。
【0038】
また、
図4および
図5に示されるように、ダイス6には、主に注入孔25およびノズル24の周囲を加熱するための複数の熱源(ヒータ)26と、複数の熱源26による加熱温度を測定するための熱センサ27とが設けられている。
【0039】
各熱源26は、注入孔25およびノズル24に直接接しないように設けられており、従って、各熱源26は、平面視において注入孔25およびノズル24に重ならない位置に設けられている。また、平面視において、隣り合う熱源26が注入孔25を挟むようにすれば、熱源26からの熱により、注入孔25およびノズル24を通過する溶融樹脂を効率的に加熱することができる。
【0040】
熱源26は、外周部材6bおよび中央部材6aに形成された孔と、前記孔の内部に設けられた加熱機構とによって構成される。そのような加熱機構としては、コイル若しくは伝熱棒などを用いた電気ヒータ、ホットオイル、または、スチームなどが挙げられる。
図4および
図5では、熱源26の例として、電気ヒータ(カートリッジヒータ)の使用を想定した構造を採用している。ホットオイルまたはスチームを加熱機構として用いる場合は、例えば、熱センサ27を介して隣接する2つの上記孔(熱源26を構成する孔)の先端を連通させ、これらを循環経路とすることもできる。その場合、一方の上記孔を注入口とし、他方の上記孔を排出口としてもよい。このような連通した上記孔、および、その上記孔の内部を循環するホットオイルまたはスチームも、熱源26として採用することができる。
【0041】
図3および
図5~
図8に示されるように、ダイス6には、断熱層(断熱部)31が設けられている。
【0042】
断熱層31は、ダイス6に設けられた孔により構成されている。すなわち、断熱層31は、ダイス6を構成する金属材料が存在しない空洞(空間)により構成されている。断熱層31を構成する孔(空洞)内のガスの圧力は、大気圧であるか、あるいは、大気圧よりも低くした減圧または真空であることが好ましい。断熱層31を構成する孔(空洞)内のガスの圧力を大気圧よりも大きくすることも可能であるが、その場合は、断熱層31を形成しにくくなる。また、断熱層31を構成する孔(空洞)内のガスの圧力を減圧または真空とした場合には、大気圧とした場合よりも、断熱層31による断熱効果を高めることができる。
【0043】
断熱層31を構成する孔(空洞)内には、所定のガス(気体)が存在(充填)しており、断熱層31を構成する孔(空洞)内のガスとしては、空気、窒素ガス、または不活性ガス(例えばアルゴンガス)などを適用することができる。断熱層31を構成する孔(空洞)は、ダイス6の外部の空間にはつながらずに、密閉されていることが好ましい。
【0044】
また、断熱層31を構成する孔(空洞)内に、ガスの代わりに液体または固体を充填することも可能である。但し、断熱層31を構成する孔(空洞)内に、液体または固体を充填させる場合よりも、ガスを充填する場合の方が、断熱層31を形成しやすく、また、断熱層31による断熱効果も高めやすいため、より好ましい。いずれにしても、断熱層31は、中央部材6aを構成する材料、外周部材6bを構成する材料、および硬質プレート6cを構成する材料よりも、低い熱伝導率を有する。断熱層31は、その断熱層31の周囲の材料よりも低い熱伝導率を有しているため、ダイス6における熱の移動(伝導)を妨げるように機能することができる。つまり、ダイス6において、断熱層31を通過して熱が移動(伝導)するのを、抑制または防止することができる。
【0045】
本実施の形態における主な特徴は、ダイス6に設けられた断熱層31の配置および形状であるが、これについては後でより詳細に説明する。本実施の形態では、ダイス6に設けられた断熱層31の配置および形状を工夫したことにより、断熱層31による断熱効果を高めるとともに、断熱層31を設けたことによるダイス6の強度の低下を抑制することができる。これにより、ダイス6のノズル24の内部において樹脂材料の温度が低下して目詰まりが生じるのを的確に抑制または防止することができるとともに、ダイス6の強度が低下した場合に生じ得る不具合を防止することができる。従って、ダイス6の性能、および、ダイス6を備える押出装置1の性能を向上させることができる。また、押出装置1を用いて製造される樹脂製品(ここではペレット)の品質を向上させることができる。
【0046】
<検討の経緯について>
上述のように、シリンダ2の内部で混練された樹脂材料は、ダイス6の押出面21bから(具体的にはノズル24から)水槽11へ押し出され、カッタホルダ12に設けられたカッタによって複数のペレット14へ個片化される。この際、水槽11の内部はペレット循環水(例えば水)で満たされており、そのペレット循環水の温度は例えば60℃程度である。ダイス6のノズル24から水槽11へ押し出された樹脂材料は、押出面21b付近において、ペレット循環水によって冷却されることで、ある程度の硬さに硬化されるか、あるいは、粘度が高くなるので、カッタによって容易に切断され得る。
【0047】
一方で、ダイス6のノズル24から水槽11へ樹脂材料が安定して押し出されるように、ダイス6の注入孔25およびノズル24の各々の内部においては、樹脂材料の粘度はある程度低いことが好ましい。このため、ダイス6には複数の熱源26が設けられており、各熱源26の温度は、樹脂の種類に適した温度に設定されている。樹脂材料の粘度はその樹脂材料の温度に依存して変化する。
【0048】
ここで、硬質プレート6cは水槽11に直接接するので、硬質プレート6cの表面からある程度の深さに亘る領域では、熱源26からの加熱効果よりも、水槽11からの冷却効果の方が顕著となる。そして、ペレット14のサイズをほぼ決定することになるノズル24の開口径(押出面21bにおける開口径)は、かなり小さく、例えば1~4mm程度である。従って、ノズル24の内部において樹脂材料が硬化すると、樹脂材料がノズル24から押し出され難くなり、ノズル24の内部において目詰まりが発生する。
【0049】
また、ダイス6には複数のノズル24が設けられているが、各ノズル24の周辺温度にバラつきがあると、各ノズル24における目詰まりの程度にバラつきが発生しやすい。目詰まりの無いノズル24と、目詰まりの有るノズル24とが混在する場合もあり得る。そうすると、ダイス6のノズル24から押し出されるペレット14のサイズがバラつくことになり、均一なサイズを有するペレット14を製造することが困難となる。このため、ダイス6の各ノズル24における目詰まりの発生を抑制またが防止することが求められる。
【0050】
従って、ダイス6内においては、できるだけ水槽11に近い領域まで、樹脂材料の粘度が低くなっていることが好ましく、水槽11に押し出される直前に、樹脂材料が硬化されるか、あるいは、切断に好適な程度まで樹脂材料の粘度が高くなっていることが好ましい。例えば、ダイス6のノズル24内において、注入孔25に近い領域では、樹脂材料の粘度は低いことが好ましく、押出面21bに近い領域(すなわちノズル24における先端部近傍領域)では、樹脂材料の粘度が切断に好適な程度まで高くなるか、あるいは樹脂材料が硬化されることが好ましい。
【0051】
そこで、本発明者は、ダイス6に断熱層(上記断熱層31に対応)を設けることを検討している。断熱層を設けることにより、水槽11からの冷却作用を断熱層によって遮断することができるため、ダイス6内において、水槽11に近い領域まで、樹脂材料の粘度を低くすることができるようになる。ダイス6において、断熱層を設ける場合には、断熱層による断熱作用を高めることが望まれる。なぜなら、ダイス6に断熱層を設けたとしても、断熱層による断熱作用が低ければ、ダイス6内において、水槽11に近い領域まで樹脂材料の粘度を低くすることが困難になるため、ノズル24の目詰まりを防止することができなくなるからである。
【0052】
このように、ダイス6の内部に断熱層を設けることにより、ダイス6の内部のノズル24を溶融樹脂が通過する際に、ノズル24中で樹脂が固化する現象(目詰まり)を抑制することが期待される。しかしながら、ダイス6の内部に設けられる断熱層が少ないと、ノズル24中で樹脂が固化する現象(目詰まり)を抑制する効果が小さくなる。一方、ダイス6の内部に設けられる断熱層が多いと、ダイス6の強度が低下してしまい、それに伴う不具合が生じることが懸念される。
【0053】
<主要な特徴と効果について>
ダイス6は、中央部材6aと、注入面21a側における中央部材6aの表面から中央部材6aの内部にわたって形成された注入孔25と、押出面21b側における中央部材6aの表面から中央部材6aの内部にわたって形成され、かつ、注入孔25に接続された複数のノズル24と、中央部材6aの内部に設けられた熱源26と、中央部材6aの内部に設けられた断熱層31と、を含んでいる。
【0054】
本実施の形態の第1の特徴は、断熱層31は、平面視において中央部材6aの外周側から中央部材6aの内側に向かって延在する複数の断熱部31aを含んでいることである。すなわち、平面視において中央部材6aの外周側から中央部材6aの内側に向かって延在する複数の断熱部31aが、中央部材6aの内部に設けられている。具体的には、平面視において中央部材6aの中央側から中央部材6aの外周側に向かって、複数の断熱部31aが放射状に延在している。中央部材6aの内部に設けられた複数の断熱部31aは、互いに(空間的に)つながっていてもよい。
【0055】
第1の特徴を適用したことにより、ダイス6の中央部材6aに複数の断熱部31aを効率的に配置することができる。このため、平面視におけるダイス6の中央部材6aに占める断熱層31のトータル面積を増大させることができ、断熱層31による断熱作用を高めることができる。従って、各ノズル24における目詰まりの発生を、的確に抑制または防止することができる。
【0056】
また、第1の特徴を適用したことにより、中央部材6aに複数の断熱部31aを偏りなく均等に配置することができるため、各ノズル24の周辺温度にバラつきが生じにくくなり、その結果、各ノズル24における目詰まりの程度にバラつきが発生しにくくなる。従って、均一なサイズを有するペレット14を製造することができる。
【0057】
従って、ダイス6の性能、および、ダイス6を備える押出装置1の性能を向上させることができる。また、押出装置を用いて製造されるペレット14の品質を向上させることができる。
【0058】
また、ダイス6の中央部材6aにおいて、注入孔25は、注入面21a側における中央部材6aの表面と複数の断熱部31aとの間に位置している。また、平面視において、注入孔25は複数の断熱部31aの少なくとも一部と重なっていることが好ましい。これにより、水槽11からの冷却作用を複数の断熱部31aによって遮断して、注入孔25内の樹脂材料の温度を適切な温度に維持することできる。このため、注入孔25内の樹脂材料の粘度を、適切な粘度(低粘度)とすることができ、それによって、各ノズル24における目詰まりを抑制または防止することができる。
【0059】
また、ダイス6の中央部材6aにおいて、熱源26は、注入面21a側における中央部材6aの表面と複数の断熱部31aとの間に位置している。これにより、ダイス6の中央部材6aにおいて、複数の断熱部31aよりも注入面21a側の領域を熱源26によって的確に加熱することができる。このため、ダイス6の中央部材6aにおいて、複数の断熱部31aよりも注入面21a側の領域では、樹脂材料の粘度を、適切な粘度(低粘度)とすることができ、それによって、各ノズル24における目詰まりを抑制または防止することができる。
【0060】
また、ダイス6の中央部材6aにおいて、複数のノズル24は、複数の断熱部31aの間を通過している。別の見方をすると、ダイス6の中央部材6aにおいて、複数の断熱部31aは、複数のノズル24と重ならないように、ノズル24を避けるように配置されている。これにより、ノズル24の内部において、複数の断熱部31aよりも注入面21a側の領域では、水槽11からの冷却作用を断熱層31によって遮断して、ノズル24内の樹脂材料の温度を適温に維持することできる。このため、複数の断熱部31aよりも注入面21a側の領域では、ノズル24内の樹脂材料の粘度を、適切な粘度(低粘度)とすることができ、それによって、各ノズル24における目詰まりを抑制または防止することができる。
【0061】
ところで、押出装置1を用いてペレット14を製造する際には、ダイス6には、押出面21b側から注入面21a側に向かって荷重が発生する。すなわち、
図7および
図8に示される矢印YGの向きで荷重が発生する。なぜなら、押出装置1のダイス6のノズル24から押し出された樹脂材料(溶融樹脂)を、カッタホルダ12に装着されたカッタよって切断してペレット14を製造するが、その際、カッタをダイス6の押出面21bに押し付けながらカッタを回転させるからである。このため、カッタをダイス6の押出面21b側に押し付けたことに伴う荷重が、ダイス6に発生してしまうため、ダイス6には、押出面21b側から注入面21a側に向かって荷重が発生する。
【0062】
しかしながら、第1の特徴を採用した場合、断熱部31aによる断熱作用を効率的に得ることができる反面、断熱部31aを設けたことに伴い中央部材6aの機械的強度が低下して、ダイス6に押出面21b側から注入面21a側に向かって荷重が発生したときに、中央部材6aが変形することが懸念される。なぜなら、断熱層31は、従って断熱層31に含まれる断熱部31aは、中央部材6aに設けられた孔(空洞)により構成されている、より具体的には、中央部材6aに設けられた孔(空洞)と、その孔(空洞)の内部に存在するガスとにより構成されているからである。平面視におけるダイス6の中央部材6aに占める断熱部31aのトータルの面積が増大することは、中央部材6aの機械的強度の低下につながる。機械的強度の低下に起因して中央部材6aが変形すると、押出装置を用いて製造されるペレット14の品質の低下を招く虞もある。
【0063】
そこで、本実施の形態では、断熱部31aを設けたことに伴う中央部材6aの機械的強度の低下を抑制または防止するために、中央部材6aに設けた断熱部31aの断面形状を工夫している。すなわち、本実施の形態の第2の特徴として、中央部材6aに設けた複数の断熱部31aのそれぞれの断面形状は、隣り合う断熱部31aの間の間隔S1(
図8参照)が、押出面21b側から注入面21a側に向かうにしたがって徐々に大きくなるような形状となっている。この場合、隣り合う断熱部31aの間の間隔S1は、押出面21bに近い側の位置での間隔S1aよりも、注入面21aに近い側の位置での間隔S1bの方が大きくなる(すなわちS1a<S1b)。
【0064】
別の見方をすると、第2の特徴は、次のように表現することもできる。すなわち、中央部材6aに設けた複数の断熱部31aのそれぞれの断面形状は、押出面21b側から注入面21a側に向かうにしたがって断熱部31aの幅W1(
図8参照)が徐々に小さくなるような形状である。この場合、断熱部31aの幅W1は、押出面21bに近い側の位置での幅W1aよりも、注入面21aに近い側の位置での幅W1bの方が小さくなる(すなわちW1a>W1b)。押出面21b側から注入面21a側に向かうにしたがって断熱部31aの幅W1が徐々に小さくなっていれば、それに伴って、隣り合う断熱部31aの間の間隔S1は、押出面21b側から注入面21a側に向かうにしたがって徐々に大きくなる。
【0065】
ここで、隣り合う断熱部31aの間の間隔S1は、断熱部31aの延在方向に略垂直な方向における間隔(距離)に対応している。また、断熱部31aの幅W1は、断熱部31aの延在方向に略垂直な方向における幅(寸法)に対応している。断熱部31aの延在方向に略垂直な方向は、中央部材6aの厚さ方向に概ね平行である。なお、中央部材6aの厚さ方向とは、押出面21bまたは注入面21aに略垂直な方向に対応しており、
図2~
図4、
図6および
図7に示されるZ方向が、中央部材6aの厚さ方向であり、従ってダイス6の厚さ方向である。
【0066】
隣り合う断熱部31aの間の間隔S1は、隣り合う断熱部31aの間の金属領域の幅に対応する。このため、第2の特徴である隣り合う断熱部31aの間の間隔S1が、押出面21b側から注入面21a側に向かうにしたがって徐々に大きくなることは、隣り合う断熱部31aの間の金属領域の幅が、押出面21b側から注入面21a側に向かうにしたがって徐々に大きくなることを意味する。このような構造(隣り合う断熱部31aの間の金属領域の幅が押出面21b側から注入面21a側に向かうにしたがって徐々に大きくなる構造)は、ダイス6において押出面21b側から注入面21a側に向かって荷重が発生したときに、隣り合う断熱部31aの間の金属領域において、力の集中を緩和(分散)させ、局所的な応力の発生を抑制するのに適している。
【0067】
本実施の形態では、第2の特徴を適用することにより、断熱部31aを設けたことに伴う中央部材6aの機械的強度の低下を抑制または防止することができ、ダイス6において押出面21b側から注入面21a側に向かって荷重が発生したときに、中央部材6aが変形するのを抑制または防止することができる。従って、ダイス6の性能、および、ダイス6を備える押出装置1の性能を向上させることができる。また、押出装置1を用いて製造されるペレット14の品質を向上させることができる。
【0068】
断熱部31aの寸法の一例を挙げると以下の通りであるが、これに限定されず、適宜変更可能である。各断熱部31aの厚さT1(
図8参照)は、例えば3~7mm程度である。また、各断熱部31aの幅W1は、最も大きい箇所(すなわち押出面21bに近い側の位置)で、例えば5~10mm程度である。また、隣り合う断熱部31aの最近接距離S2(最も近づいた箇所の間隔S1に対応)は、0.2~5mm程度が好適であり、1mm程度が更に好適である。隣り合う断熱部31aの最近接距離S2を小さくしすぎると、中央部材6aの強度が低くなり、また、隣り合う断熱部31aの最近接距離S2を大きくしすぎると、断熱作用が低下してしまう。
【0069】
また、断熱部31aの断面形状は、押出面21b側から注入面21a側に向かうにしたがって断熱部31aの幅W1が徐々に小さくなる形状であるが、例えば、注入面21a側が円弧側(凸側)となる半円形状または半楕円形状とすることができ、
図8にはその場合が示してある。
【0070】
また、中央部材6aに設けられた複数の断熱部31aの配列を更に具体的に説明すると、次のようになっている。すなわち、中央部材6aに設けられた複数の断熱部31aは、グループG1(第1群)に属する複数の断熱部31aと、グループG2(第2群)に属する複数の断熱部31aと、グループG3(第3群)に属する複数の断熱部31aと、グループG4(第4群)に属する複数の断熱部31aとを含んでいる(
図6参照)。
【0071】
グループG1の複数の断熱部31aは、平面視において、X方向にそれぞれ延在し、かつY方向に配列している。グループG2の複数の断熱部31aは、平面視において、Y方向にそれぞれ延在し、かつX方向に配列している。グループG3の複数の断熱部31aは、平面視において、X方向にそれぞれ延在し、Y方向に配列し、かつ、グループG1とは連結孔22を間に挟んで反対側に位置している。グループG4の複数の断熱部31aは、平面視において、Y方向にそれぞれ延在し、X方向に配列し、かつ、グループG2とは連結孔22を間に挟んで反対側に位置している。ここで、X方向およびY方向は、
図2~
図4、
図6および
図7に示されている。X方向およびY方向は、押出面21bまたは注入面21aに略平行な方向であり、かつ、X方向とY方向とは、互いに直交する方向である。また、Z方向は、X方向およびY方向と直交する方向であり、すなわち、中央部材6aの厚さ方向である。
【0072】
中央部材6aに設けられた複数の断熱部31aを、このような配列とすることにより、ダイス6の中央部材6aに複数の断熱部31aを更に効率的に配置することができる。
【0073】
本実施の形態では、断熱部31aを設けたことに伴う中央部材6aの機械的強度の低下を更に抑制または防止するために、中央部材6aに設けられた複数の断熱部31aの配列も工夫している。
【0074】
すなわち、本実施の形態の第3の特徴として、グループG1,G2,G3,G4のそれぞれにおいて、断面視(断熱部31aの延在方向に略垂直な断面視)における複数の断熱部31aの配列は、配列の略中央部が押出面21b側に凸となる曲線状(アーチ状、弓形)の配列となっている(
図7参照)。別の見方をすると、グループG1,G2,G3,G4のそれぞれにおいて、押出面21b側における中央部材6aの表面から複数の断熱部31aのそれぞれまでの距離L1(
図7参照)は、複数の断熱部31aの配列の中央から両側に行くにしたがって徐々に大きくなっている。この場合、押出面21b側における中央部材6aの表面から断熱部31aまでの距離L1は、断熱部31aの配列の中央に近い位置での距離L1aよりも、断熱部31aの配列の両側に近い位置での距離L1bの方が大きくなる(すなわちL1a<L1b)。このような複数の断熱部31aの配列は、ダイス6において押出面21b側から注入面21a側に向かって荷重が発生したときに、力の集中を緩和(分散)させ、局所的な応力の発生を抑制するのに適している。
【0075】
なお、
図7は、グループG4の複数の断熱部31aを横切る断面が示されており、Z方向に垂直で、かつグループG4の複数の断熱部31aの延在方向(ここではY方向)に略垂直な断面に対応している。グループG1の複数の断熱部31aを横切る断面、グループG2の複数の断熱部31aを横切る断面、およびグループG3の複数の断熱部31aを横切る断面についても、
図7とほぼ同様となる。また、
図7は、断熱部31aの配列を示すための模式図であるため、断熱部(31a)以外については、記載を省略している場合もある。
【0076】
本実施の形態では、第3の特徴を適用することにより、断熱部31aを設けたことに伴う中央部材6aの機械的強度の低下を抑制または防止することができ、ダイス6において押出面21b側から注入面21a側に向かって荷重が発生したときに、中央部材6aが変形するのを抑制または防止することができる。従って、ダイス6の性能、および、ダイス6を備える押出装置1の性能を向上させることができる。また、押出装置1を用いて製造されるペレット14の品質を向上させることができる。
【0077】
また、断熱層31は、中央部材6aの内部において中央部材6aの厚さ方向(Z方向)に延在する複数の断熱部31bを更に含んでいる。断熱部31aと同様に、断熱部31bも、中央部材6aに設けられた孔(空洞)と、その孔(空洞)の内部に存在するガスとにより構成されている。中央部材6aの内部設けられた複数の断熱部31bは、複数の断熱部31aの内側端部(連結孔22に近い側の端部)にそれぞれ接続されている。具体的には、複数の断熱部31aのそれぞれの内側端部が、複数の断熱部31bのそれぞれの端部(押出面21bに近い側の端部)に接続(連結)されている。このため、各断熱部31bは、断熱部31aに連結される端部から、注入面21aに向かって、中央部材6aの厚さ方向(Z方向)に沿って延在している。複数の断熱部31bは、環状の断熱部などで連結してもよい。
【0078】
断熱層31が、断熱部31aだけでなく、断熱部31bも有していることにより、断熱層31による断熱効果を高めることができる。また、断熱部31aと断熱部31bとが接続されている(空間的につながっている)ことにより、断熱部31a,31b内の圧力を大気圧よりも低い減圧または真空とすることが容易になる。
【0079】
また、断熱部31bを構成する孔は、注入面21a側における中央部材6aの表面に到達していてもよいが、その場合、注入面21a側における中央部材6aの表面において、断熱部31bを構成する孔は、塞がれている(閉鎖されている)ことが好ましい。
【0080】
また、断熱層31は、各断熱部31aの外周側端部が接続された断熱部31cを更に含んでいる。すなわち、断熱部31aの両方の端部のうち、ダイス6の中央部(連結孔22)に近い側の端部である内側端部が、断熱部31bに接続(連結)され、ダイス6の中央部(連結孔22)から遠い側(言い換えるとダイス6の外周に近い側)の端部である外周側端部が、断熱部31cに接続(連結)されている。このため、断熱部31aと、断熱部31aの内側端部に接続された断熱部31bと、断熱部31aの外周側端部に接続された断熱部31cとは、空間的につながっている。断熱部31cは、平面視において複数の断熱部31aを囲んでいる。ダイス6において、断熱部31cは、単数または複数、設けられている。ダイス6において、断熱部31cは、中央部材6aに設けられていてもよいし、外周部材6bに設けられていてもよいし、あるいは、中央部材6aの側面と外周部材6bとの間に設けられていてもよい。断熱部31cは、断熱部31aに連結される端部から、注入面21aに向かって、ダイス6の厚さ方向(Z方向)に沿って延在している。
【0081】
断熱層31が、断熱部31aだけでなく、断熱部31cも有していることにより、断熱層31による断熱効果を高めることができる。また、断熱部31aと断熱部31bと断熱部31cとが接続されている(空間的につながっている)ことにより、断熱部31a,31b,31c内の圧力を大気圧よりも低い減圧または真空とすることが容易になる。
【0082】
また、断熱部31a,31b,31cによって注入孔25および熱源26を囲むことにより、水槽11からの冷却作用を断熱部31a,31b,31cによって遮断するとともに、熱源26によって注入孔25内の樹脂材料を適切な温度に制御しやすくなる。このため、注入孔25内の樹脂材料の粘度を、適切な粘度(低粘度)に制御しやすくなり、それによって、各ノズル24における目詰まりを更に的確に抑制または防止することができる。
【0083】
また、中央部材6aは、上述のようにカッタによる荷重が加わることなどから、強度が高い金属材料を用いることが好ましい。しかしながら、金属材料は、強度が高いとじん性が低くなって割れやすくなる傾向にある。また、中央部材6aは、熱源26による加熱によって高温になるため、ある程度の熱膨張が発生する。そこで、本実施の形態では、好ましくは、外周部材6bのじん性を、中央部材6aのじん性よりも高くする。すなわち、外周部材6bを構成する金属材料のじん性は、中央部材6aを構成する金属材料のじん性よりも高いことが好ましい。これにより、中央部材6a用の金属材料として、強度を優先することで、じん性が比較的低い金属材料が選ばれたとしても、じん性が高い金属材料により外周部材6bを構成することで、ダイス6の破損を防止しやすくなる。また、熱源26による加熱によって中央部材6aが熱膨張した場合でも、その膨張は外周部材6bの高いじん性により吸収できるため、ダイス6の破損を防止しやすくなる。なお、じん性については、引張試験で伸びが大きい、あるいは衝撃試験で衝撃値が大きいと、じん性が高いと判断することができる。
【0084】
<ダイス6の製造方法について>
本実施の形態におけるダイス6の中央部材6aは、種々の手法によって製造することができるが、3Dプリンタによって製造されるのが特に好適である。3Dプリンタを用いた製造方法としては、例えば、金属材料からなる粉末を層状に敷き詰め、高出力のレーザービームまたは電子ビームなどによって、粉末を直接焼結する粉末床溶融積層法、または、インクジェット方式によって粉末にバインダを添加し、これらを固める粉末固着式積層法、ノズルから吐出した金属を溶融させて積層する熱溶解積層法などが挙げられる。
【0085】
なお、中央部材6aを製造した直後においては、断熱層31、熱源26および熱センサ27は、それぞれ中央部材6aの内部に形成された単なる孔(空間)である。しかしながら、説明の理解を容易にするため、以下ではこれらの孔を上記の各構成として説明する。
【0086】
3Dプリンタを用いて中央部材6aを製造する前または後に、外周部材6bおよび硬質プレート6cを用意する。外周部材6bおよび硬質プレート6cは、中央部材6aとは別々に製造されるが、これらも3Dプリンタを用いて製造されてもよい。
【0087】
中央部材6a、外周部材6bおよび硬質プレート6cが用意された後、上述のように、中央部材6aと外周部材6bとは互いに接合され、中央部材6aが外周部材6bに囲まれる。
【0088】
また、中央部材6aと硬質プレート6cとは、互いに接続(接合)され、押出面21b側における中央部材6aの表面に硬質プレート6cが設けられる。
【0089】
このようにして、本実施の形態におけるダイス6が製造される。
【0090】
中央部材6aを3Dプリンタによって製造することで、中央部材6aの内部に中空となる断熱層31(断熱部31a,31b)を容易に形成することができる。また、断熱層31を含む中央部材6aが一体成型されるため、中央部材6a全体の強度を高めることができる。
【0091】
特に、中央部材6aを3Dプリンタによって製造する場合には、上述のような複数の断熱部31aを有する中央部材6aを、容易かつ的確に製造することができる。
【0092】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0093】
例えば、中央部材6aを単一の部材で形成する場合だけでなく、中央部材6aを複数の部材で形成する場合もあり得る。また、外周部材6bを単一の部材で形成する場合だけでなく、外周部材6bを複数の部材で形成する場合もあり得る。また、中央部材6aと外周部材6bとを別部材として形成する場合だけでなく、中央部材6aと外周部材6bとを合わせたものを一体的な部材として形成する場合もあり得る。
【符号の説明】
【0094】
1 押出装置
2 シリンダ
3 スクリュ
4 回転駆動機構
5 ホッパ
6 ダイス
6a 中央部材
6b 外周部材
6c 硬質プレート
11 水槽
12 カッタホルダ
13 ペレタイザー
14 ペレット
21a 注入面
21b 押出面
22,23 連結孔
22a,23a 連結部材
24 ノズル
25 注入孔
26 熱源
27 熱センサ
31 断熱層
31a,31b,31c 断熱部
L1 距離
S1 間隔
W1 幅