IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ネイルプリント装置、および制御方法 図1
  • 特許-ネイルプリント装置、および制御方法 図2
  • 特許-ネイルプリント装置、および制御方法 図3
  • 特許-ネイルプリント装置、および制御方法 図4
  • 特許-ネイルプリント装置、および制御方法 図5
  • 特許-ネイルプリント装置、および制御方法 図6
  • 特許-ネイルプリント装置、および制御方法 図7
  • 特許-ネイルプリント装置、および制御方法 図8
  • 特許-ネイルプリント装置、および制御方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】ネイルプリント装置、および制御方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/00 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
A45D29/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021053239
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150576
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飛松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 憲市
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-118663(JP,A)
【文献】特開2013-067085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査方向に移動してノズルからインクを吐出することにより被印刷者の爪に画像の印刷をする印刷動作を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの移動を制御する制御手段と、を有するネイルプリント装置であって、
前記制御手段は、
前記印刷動作に伴う前記印刷ヘッドの移動の制御とは関係なく前記印刷ヘッドの移動が停止した際の前記印刷ヘッドの停止位置が所定の位置以外の位置である場合、前記ノズルの乾燥を抑制するための所定の場所へ、前記印刷ヘッドを移動させ、
前記所定の位置は、前記ネイルプリント装置における前記被印刷者の指が含まれる領域内の位置である
ことを特徴とするネイルプリント装置。
【請求項2】
走査方向に移動してノズルからインクを吐出することにより被印刷者の爪に画像の印刷をする印刷動作を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの移動を制御する制御手段と、を有するネイルプリント装置であって、
前記制御手段は、
前記印刷動作に伴う前記印刷ヘッドの移動の制御とは関係なく前記印刷ヘッドの移動が停止した際の前記印刷ヘッドの停止位置が所定の位置以外の位置である場合、前記ノズルの乾燥を抑制するための所定の場所へ、前記印刷ヘッドを移動させ、
前記印刷ヘッドが前記停止をする前に移動していた方向が前記走査方向の一方の端部から他方の端部へ向かう第1の方向である場合、前記所定の位置は、前記ネイルプリント装置における前記被印刷者の指が含まれる領域が前記第1の方向にある位置である
ことを特徴とするネイルプリント装置。
【請求項3】
前記ノズルに装着されるキャップをさらに有し、
前記所定の場所は前記キャップの配されている場所である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のネイルプリント装置。
【請求項4】
前記ノズルから予備吐出されたインクを受ける受け口をさらに有し、
前記所定の場所は、前記受け口が配されている場所である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のネイルプリント装置。
【請求項5】
前記受け口は、前記走査方向の両端に配されている
ことを特徴とする請求項4に記載のネイルプリント装置。
【請求項6】
前記爪に印刷が行われる際の前記印刷ヘッドは前記被印刷者の指の上方に位置しており、
前記制御手段は、
前記停止位置が前記所定の位置である場合、前記停止した後、前記被印刷者の指が下方に移動されるまで前記印刷ヘッドを前記停止位置から移動させない
ことを特徴とする請求項から5のいずれか1項に記載のネイルプリント装置。
【請求項7】
前記被印刷者の指を置く指置台をさらに有し、
前記印刷ヘッドは、前記指置台に置かれた指の爪に対して画像の印刷を行う
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のネイルプリント装置。
【請求項8】
前記領域は、前記指置台のある領域である
ことを特徴とする請求項に記載のネイルプリント装置。
【請求項9】
前記指置台に置かれた指を撮影する撮影手段をさらに有し、
前記領域は、前記撮影手段によって取得された撮影画像に基づき決定された領域である
ことを特徴とする請求項に記載のネイルプリント装置。
【請求項10】
前記印刷ヘッドによって爪に印刷される指が置かれた前記指置台は、前記印刷の前に、前記爪に印刷が行われる際の前記印刷ヘッドに対向する方向の静止位置まで移動する
ことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載のネイルプリント装置。
【請求項11】
前記静止位置を検知するセンサをさらに有する
ことを特徴とする請求項10に記載のネイルプリント装置。
【請求項12】
前記印刷ヘッドは、インクジェットヘッドである
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のネイルプリント装置。
【請求項13】
走査方向に移動してノズルからインクを吐出することにより被印刷者の爪に画像の印刷をする印刷動作を行う印刷ヘッドを有するネイルプリント装置の制御方法であって、
前記印刷動作に伴う前記印刷ヘッドの移動の制御とは関係なく前記印刷ヘッドの移動が停止した際の前記印刷ヘッドの停止位置が所定の位置以外の位置である場合、前記ノズルの乾燥を抑制するための所定の場所へ、前記印刷ヘッドを移動させる制御ステップを有し、
前記所定の位置は、前記ネイルプリント装置における前記被印刷者の指が含まれる領域内の位置である
ことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
走査方向に移動してノズルからインクを吐出することにより被印刷者の爪に画像の印刷をする印刷動作を行う印刷ヘッドを有するネイルプリント装置の制御方法であって、
前記印刷動作に伴う前記印刷ヘッドの移動の制御とは関係なく前記印刷ヘッドの移動が停止した際の前記印刷ヘッドの停止位置が所定の位置以外の位置である場合、前記ノズルの乾燥を抑制するための所定の場所へ、前記印刷ヘッドを移動させる制御ステップを有し、
前記印刷ヘッドが前記停止をする前に移動していた方向が前記走査方向の一方の端部から他方の端部へ向かう第1の方向である場合、前記所定の位置は、前記ネイルプリント装置における前記被印刷者の指が含まれる領域が前記第1の方向にある位置である
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ネイルプリント装置、および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタを使用して被印刷者の爪にネイルアートを印刷する方法がある。以下、爪にネイルアートを印刷するプリンタをネイルプリント装置と称する。
【0003】
特許文献1には、プリントヘッドに支持された検出体の位置変化を検出した場合、プリントヘッドの駆動を停止させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-23202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法によって、印刷動作が進行中の印刷ヘッドの駆動を停止させると、印刷ヘッドのノズルからインクが吐出されなくなるためノズルに付着したインクの乾燥が発生してしまうことがある。このため、印刷動作の再開時に不具合が発生してしまう虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のネイルプリント装置は、走査方向に移動してノズルからインクを吐出することにより被印刷者の爪に画像の印刷をする印刷動作を行う印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドの移動を制御する制御手段と、を有するネイルプリント装置であって、前記制御手段は、前記印刷動作に伴う前記印刷ヘッドの移動の制御とは関係なく前記印刷ヘッドの移動が停止した際の前記印刷ヘッドの停止位置が所定の位置以外の位置である場合、前記ノズルの乾燥を抑制するための所定の場所へ、前記印刷ヘッドを移動させ、前記所定の位置は、前記ネイルプリント装置における前記被印刷者の指が含まれる領域内の位置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、印刷動作の進行中に印刷ヘッドの駆動が停止した場合でも、印刷時の不具合の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】印刷システムの構成を示すブロック図。
図2】ネイルプリント装置の構成を示す上面図。
図3】ネイルプリント装置の構成を示す正面図。
図4】ネイルプリント装置の構成を示す側面図。
図5】印刷システムで行われる処理フローの例を示す図。
図6】ディスプレイに表示されるデザインの選択画面の例を示す図。
図7】指置台の高さ調整および爪画像の印刷処理を説明するフローチャート。
図8】爪領域を説明するための図。
図9】爪領域を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の技術の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本開示の技術を説明するための例示であり、本開示の技術をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。また、本開示の技術は、その要旨を逸脱しない限り、様々な変形が可能である。尚、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。また、以下の実施形態に記載されている構成要素の相対配置および形状などは、あくまで例示である。
【0010】
<第1の実施形態>
本実施形態では、被印刷者の爪にネイルデザインを印刷するネイルプリント装置について説明する。ネイルプリント装置では、ネイルデザインの印刷のための動作の進行中に印刷ヘッドの駆動を停止させる緊急停止が実行されることがある。本実施形態では、印刷ヘッドが緊急停止した後の印刷ヘッドの移動の制御方法について説明を行う。
【0011】
[システム構成]
図1は、本実施形態の印刷システムの構成を示すブロック図である。印刷システムは、ホスト100と、ネイルプリント装置110とを有する。ネイルプリント装置110は、被印刷者の手の爪に直接画像を描画する機能を有する装置である。なお本実施形態では手の爪を印刷対象とする例を示すが、手に限らず足の爪を印刷対象としてもよい。
【0012】
ホスト100は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置である。ホスト100は、スマートフォンなどの携帯端末であってもよい。ホスト100は、ネイルプリント装置110と通信可能に構成されている。ホスト100とネイルプリント装置110とは、所定のネットワークを介して接続され、または、ネットワークを介さずに直接接続され、互いに情報のやり取りが可能である。なお、本実施形態では、ホスト100とネイルプリント装置110とを別の装置として説明するが、両者の機能を一体的に含む装置を用いる形態でもよい。
【0013】
ホスト100は、CPU101、RAM102、HDD103、データ転送I/F104、キーボード・マウスI/F105、ディスプレイI/F106、およびカメラI/F108を有する。
【0014】
CPU101は、HDD103またはRAM102に保持されているプログラムに従って後述する処理を実行する。プログラムは、ネイルプリント装置110で爪にネイルアートなどのデザイン画像を印刷するためのアプリケーションプログラムを含む。例えば、ユーザからの操作に応じて、印刷画像を印刷させるための印刷ジョブを、ネイルプリント装置110に送信するアプリケーションプログラムを含む。このような機能を有するアプリケーションを、以後ネイルアプリまたは単にアプリとよぶ。なお、アプリは、印刷機能以外に、他の機能を備えていてもよい。例えば、本実施形態におけるアプリは、カメラ240を起動する機能を備えていてもよい。すなわち、アプリは、印刷ジョブ以外に、カメラ起動ジョブを送信する機能等を有していてもよい。また、HDD103またはRAM102に保持されているアプリケーションは、ネイルアプリに限定されず、印刷以外の機能を備えているアプリケーションプログラムであってもよい。以下、ネイルアートなどのデザイン画像のことを、爪画像とも称する。
【0015】
RAM102は、揮発性のストレージであり、プログラムおよびデータを一時的に保持する。HDD103は、不揮発性のストレージであり、プログラムおよびデータを保持する。
【0016】
データ転送I/F(インタフェース)104は、ネイルプリント装置110との間におけるデータの送受信を制御する。このデータ送受信の接続方式としては、USB、IEEE1394、およびLAN等の有線接続、ならびに、Bluetooth(登録商標)およびWiFi(登録商標)等の無線接続を用いることができる。ネイルプリント装置110との間で送受信されるデータには、各種の制御データが含まれる。また、ネイルプリント装置110との間で送受信されるデータには、ホスト100からネイルプリント装置110に出力される印刷画像の画像データも含まれる。
【0017】
キーボード・マウスI/F(インタフェース)105は、不図示のキーボードおよびマウス等のHID(Human Interface Device)を制御するI/Fである。ユーザは、このI/Fを介して各種の情報を入力することができる。CPU101は、キーボード・マウスI/F105を通じてユーザから指示を受付可能に構成されている。
【0018】
ディスプレイI/F(ディスプレイインタフェース)106は、ディスプレイ107における表示を制御する。ディスプレイ107は、例えば液晶または有機ELなどのディスプレイである。ディスプレイ107は、ホスト100の構成に含めてもよい。CPU101は、ディスプレイI/F106を介してディスプレイ107を表示制御可能である。また、ディスプレイ107は、タッチパネルディスプレイとして入力部を兼ねていてもよい。カメラI/F106は、カメラ240と接続するためのI/Fである。
【0019】
ネイルプリント装置110は、CPU111、RAM112、ROM113、データ転送I/F114、ヘッドコントローラ115、レーザコントローラ116、画像処理アクセラレータ117、モータコントローラ118、およびカメラI/F119を有する。
【0020】
CPU111は、ROM113またはRAM112に保持されているプログラムに従い、後述する処理を実行する。RAM112は、揮発性のストレージであり、プログラムおよびデータを一時的に保持する。ROM113は、不揮発性のストレージであり、各種のテーブルデータおよびプログラムを保持することができる。
【0021】
データ転送I/F(インタフェース)114は、ホスト100との間におけるデータの送受信を制御する。
【0022】
ヘッドコントローラ115は、記録データに基づいて、印刷ヘッド230(図2参照)に搭載されたヒーターボード231(図2参照)の加熱動作を制御することで、印刷ヘッド230のノズルからインクを吐出させる。具体的には、ヘッドコントローラ115は、RAM102の所定のアドレスから制御パラメータと記録データとを読み込む構成とすることができる。そして、CPU111が、制御パラメータと記録データとをRAM112の上記所定のアドレスに書き込むと、ヘッドコントローラ115により処理が起動され、印刷ヘッド230に搭載されたヒーターボード231の加熱動作が行われる。
【0023】
レーザコントローラ116は、レーザセンサ発光部221(図2参照)がレーザを発光する制御を行う。レーザセンサ発光部221は、爪が印刷される被印刷者の指を置く指置台251~254(図2参照)の高さ調整する際に用いられるセンサである。詳細は後述する。
【0024】
画像処理アクセラレータ117は、ハードウェアによって構成され、CPU111よりも高速に画像処理を実行するものである。具体的には、画像処理アクセラレータ117は、RAM112の所定のアドレスから画像処理に必要なパラメータとデータとを読み込む構成とすることができる。そして、CPU111が上記パラメータとデータとをRAM112の上記所定のアドレスに書き込むと、画像処理アクセラレータ117が起動され、所定の画像処理が行われる。なお、画像処理アクセラレータ117は、任意な構成とすることができる。ネイルプリント装置110の仕様などに応じて、CPU111による処理のみで上記のテーブルパラメータの作成処理および画像処理を実行してもよい。
【0025】
モータコントローラ118は、不図示の複数のモータユニットのモータ動作を制御する制御部である。本実施形態では、印刷ヘッド230を印刷対象の爪に対して相対的に二次元移動させる為にモータユニットが用いられる。また、指置台251~254は上方向および下方向に移動可能に構成されており、モータユニットは、指置台251~254を上昇または下降するための機構としても用いられる。即ち、モータコントローラ118は、モータユニットを制御することで指置台251~254の高さを制御することができる。なお、指置台の上昇または下降するための方法は、モータユニットによる方法以外の方法でも行われてもよい。プリンタの種類によっては、印刷ヘッドのメンテナンス用のモータを具備してもよい。
【0026】
カメラI/F119は、カメラ240と接続し、カメラ240が撮影して得られた画像データを取得するためのI/Fである。カメラ240は、カメラI/F108を介してホスト100と接続されていてもよい。その場合、カメラ240が撮影して得られた撮影画像の画像データを、例えば、データ転送I/F114を介してホスト100から受信してもよい。なお、カメラ240をネイルプリント装置110の構成に含めてもよい。
【0027】
ネイルプリント装置110には、例えば、インクを液滴として噴射して画像を記録するインクジェットヘッドを印刷ヘッドとするインクジェットプリンタなどを適用することができる。また、本実施形態のネイルプリント装置は、複写機能、FAX機能、および印刷機能などの複数の機能を備える複合機であってもよい。
【0028】
[ネイルプリント装置の構成]
図2は、本実施形態におけるネイルプリント装置110の構成を示す上面図である。図2は、ネイルプリント装置110の筐体内の上面を模式的に示した図である。本明細書では、X軸に沿う方向を左右方向、Y軸に沿う方向を前後方向、X軸およびY軸に垂直なZ軸に沿う方向を上下方向とする。また、プラスY方向を手前側、マイナスY方向を奥側、プラスZ方向を下方向、マイナスZ方向を上方向とする。
【0029】
ネイルプリント装置110は、印刷ヘッド230を前後方向に移動させる為のY方向レールガイド211、212を有する。また、印刷ヘッド230を前後方向と交差する左右方向に移動させる為のX方向レールガイド220を有する。
【0030】
印刷ヘッド230の下方には、ヒーターボード231が装着されている。ヒーターボード231上には、以下のインク吐出用ノズルが配置されている。
・シアンインク吐出用ノズル232
・マゼンタインク吐出用ノズル233
・イエローインク吐出用ノズル234
【0031】
本実施形態の印刷ヘッド230が移動可能な移動方向は、左右方向だけでなく前後方向も含まれる。例えば、走査方向を左右方向とした場合、印刷ヘッド230が左右方向に移動しながら各色のインク吐出用ノズル232~234からインクを吐出して1回分の記録走査を行う。次に印刷ヘッド230が前後方向に移動してから次の記録走査を行うことで爪に画像を印刷することができる。このため本実施形態のネイルプリント装置110は、印刷対象の爪の位置は固定した状態で、印刷対象の爪へ画像を印刷することができる。
【0032】
X方向レールガイド220の一端にはレーザセンサ発光部221が設けられており、X方向レールガイド220の他端にはレーザセンサ受光部222が備えつけられている。このため、レーザセンサ発光部221およびレーザセンサ受光部222は、印刷ヘッド230の前後方向への移動に同期して、前後方向に移動するように構成されている。またレーザセンサ発光部221およびレーザセンサ受光部222は、インク吐出用ノズル232~234から下方向に離れた位置に備えられている。レーザセンサ発光部221はX方向のレーザセンサ受光部222に向けてレーザを発光する。レーザセンサ発光部221およびレーザセンサ受光部222をまとめてレーザセンサ206とよぶことがある。
【0033】
ネイルプリント装置110の天井部の内側には、指を撮影する為のカメラ240が設置されている。カメラ240の下部側にはレンズ241が配置されている。
【0034】
ネイルプリント装置110の床側には、手のひらを置くための手置台250と、指位置を固定する為の指置台251~254とが配置されている。ネイルプリント装置110は、指置台251~254のZ軸方向の位置(高さ)を、それぞれ独立して調整する制御を行うことが可能である。即ち、指置台251~254は、爪に印刷を行っている印刷ヘッド230に対向する方向にそれぞれ独立して移動可能に構成されている。
【0035】
図2では、被印刷者の手の甲260と指261~264とを模式的に示している。指置台251~254には被印刷者の指が前後方向に延在するように置かれる。図2の例では、被印刷者の手は、右手とする。右手の甲260は、手置台250上に置かれる。右手の人差し指261が指置台251に、中指262が指置台252に、薬指263が指置台253に、および小指264が指置台254に、それぞれ置かれるものとする。
【0036】
印刷ヘッド230が移動可能な領域のうち、X方向における一方の側(左側)には予備吐口271が、他方の側(右側)には予備吐口272が、それぞれ配置されている。X方向の両端に配された予備吐口271、272は、インク吐出用ノズル232~234から吐出されたインクを受ける受け口である。印刷ヘッド230は、予備吐口271、272が配されている場所に移動して、インク吐出用ノズル232~234からインクを吐出することができる。予備吐口271、272へインク吐出用ノズル232~234から微量のインクを吐出する予備吐出を行うことにより、インク吐出用ノズル232~234のインクが固着を抑制することができる。
【0037】
キャップ290は、印刷動作を行っていない印刷ヘッド230が待機する待機位置に配されている。印刷ヘッド230のインク吐出用ノズル232~234は待機位置でキャップ290を装着することができる。インク吐出用ノズル232~234にキャップをすることで、待機の際のインク吐出用ノズル232~234の保護およびインク吐出用ノズル232~234のインクの固着を抑制することができる。また、キャップ290のある待機場所に印刷ヘッド230が移動する前に、インク吐出用ノズル232~234に付着したインクを拭き取るワイパー部材であるブレード280が配置されている。
【0038】
図3は、本実施形態のネイルプリント装置110の構成を示す正面図である。図4は、本実施形態のネイルプリント装置110の構成を示す側面図である。図3および図4も、図2と同様に、ネイルプリント装置110の筐体内を模式的に示した図である。図3および図4の参照符号は、図2と同じ構成を示している。
【0039】
[指置台の高さ調整について]
ここで、図2~4を用いて、指置台251~254の高さ調整について説明する。指置台251~254の高さを調整することで、印刷時の印刷ヘッド230の各インク吐出用ノズル232~234に対する爪のZ方向の位置を調整することができる。
【0040】
より高品位な画像を爪に印刷するには、各インク吐出用ノズル232~234から吐出されるインクが適切に着弾できる位置に、印刷対象である爪が位置していることが望まれる。このため、指置台251~254の高さを調整することで、爪とインク吐出用ノズル232~234との間のZ方向の相対距離を調整する。
【0041】
それぞれの指置台251~254は独立して上昇または下降可能に構成されており、モータコントローラ118は、指置台251~254の高さ(Z軸方向の位置)を、指置台251~254ごとに独立して調整する制御を行うことが可能である。本実施形態では、指置台251~254のうちの1つの指置台が選択されて選択された指置台ごとに高さ調整が行われる。例えば、右手の人差し指261、中指262、薬指263、小指264がそれぞれ指置台251~254におかれた場合、人差し指261が置かれた指置台251から順に高さ調整を行う。人差し指261が置かれた指置台251を高さ調整が完了すると、次に指置台252が選択されて同様の高さ調整が行われる。この順番は、高さ調整する指置台の順番の一例であり、どの指置台から高さ調整を行われてもよい。
【0042】
指置台251~254の夫々の高さ調整には、ネイルプリント装置110に搭載された可動型のレーザセンサ206(レーザセンサ発光部221およびレーザセンサ受光部222)が用いられる。被印刷者が指を指置台251~254に置く際は、指置台251~254は初期位置まで下降した後の位置にある。この場合、レーザセンサ発光部221からレーザを発光すると、発光されたレーザは遮断されずにレーザセンサ受光部222はレーザを受光する。このため、高さ調整の開始時には、レーザセンサ発光部221から発光されたレーザは遮断されずにレーザセンサ受光部222が受光することになる。
【0043】
指置台251~254を上昇し続けると、指置台251~254に置かれた被印刷者の指の一部によってレーザセンサ発光部221から発光されているレーザが遮断される。レーザが遮断されレーザセンサ受光部222がレーザを受光していないと判定されると、モータコントローラ118は指置台の上昇を停止させる制御をする。このようにレーザセンサ206が検知した位置を指置台の上昇の静止位置とすることで指置台251~254の高さ調整することができる。
【0044】
レーザセンサ発光部221およびレーザセンサ受光部222は、印刷ヘッド230のノズルよりも下方に位置しており、レーザセンサ発光部221から発光されるレーザのZ方向の位置は、印刷ヘッド230によってインクが適切に着弾できる位置である。このため、指置台251~254に置かれた指の爪がレーザを遮ることに応じて指置台251~254の上昇を停止することができれば、インクの着弾位置に爪が適切に位置するように指置台251~254の高さを調整するこができることになる。このため、高さ調整を行う際のレーザセンサ発光部221およびレーザセンサ受光部222のY方向における位置は、高さ調整対象の指置台に置かれた指の爪領域のある位置であることが好ましい。
【0045】
このため、指置台251~254の高さ調整を行う前に、指置台251~254に置かれた指の撮影画像から爪領域の検出が行われる。撮影画像中の爪領域の座標(X座標,Y座標)を、ネイルプリント装置110内のY方向の座標位置に適宜変換することで、爪領域に対応するY方向の位置にレーザセンサ206を移動させることができる。例えば、高さ調整対象の指置台を指置台251とした場合、指置台251を上昇させる前に指置台251に置かれた指の爪がある位置までレーザセンサ発光部221およびレーザセンサ受光部222をY方向に移動させることができる。その後、指置台251を上昇させると、指置台251に置かれた指の爪によってレーザが遮断される。レーザが遮断されるまで指置台251を上昇させることで、指置台251に置かれた指の爪の高さが適切な位置になるように指置台251の高さ調整を行うことができる。なお、高さ調整対象外の指置台252~254は、レーザが遮断されないように初期位置まで下降した状態に制御される。
【0046】
[処理フロー]
図5は、本実施形態における印刷システムで行われる指置台251~254に置かれた指の爪に画像を印刷するための処理フローの例を示した図である。アプリ500は、図1のホスト100で実行される処理である。即ち、ホスト100で起動されるネイルアプリによる処理である。カメラ240は、指の撮影を行い撮影画像の画像データをアプリ500に送出する。ネイルプリント装置110は、爪への印刷に用いられる印刷画像をアプリ500から取得し、印刷ヘッド230は被印刷者の実際の指上の爪部分に印刷するためにモータコントローラ118およびヘッドコントローラ115等によって制御される。モータコントローラ118は、レーザセンサ206の移動の制御および指置台251~254を上昇および下降させる制御も行う。なお、ネイルプリント装置110によって爪に画像が印刷されるユーザ(被印刷者)と、アプリを操作するユーザとは、同一人であるものとして説明するが、異なるユーザであってもよい。
【0047】
図5のアプリ500の処理は、ホスト100のCPU101がHDD103に記憶されているプログラムコードをRAM102に展開し実行することにより行われる。または、図5におけるステップの一部または全部の機能をASICまたは電子回路などのハードウェアで実現してもよい。なお、各処理の説明における記号「S」は、シーケンス図におけるステップであることを意味する。
【0048】
S510においてアプリ500は、処理を開始する。例えば、アプリ500のユーザが、ネイルアプリを起動することなどに応じてS510の処理が開始される。また、必要に応じて、カメラ240、ヘッドコントローラ115、およびモータコントローラ118の開始処理も行われる。
【0049】
次に、S520~S523で指設置処理が行われる。まず、S520においてアプリ500は、被印刷者に対して、手を手置台250及び指置台251に設置するように指示する画面をディスプレイ107上に表示する。被印刷者は、図2で説明したように、自身の指を指置台251~254に置く。次に、アプリ500は全体画像撮影メッセージM520をカメラ240に出力する。なお、図2~4では、指置台251~254には4本の指が置かれる例を示したが、人差し指、中指、薬指、小指のうちの少なくとも1本の指が置かれればよい。また、親指の爪に印刷する場合は親指だけが置かれる。
【0050】
S521においてカメラ240は、指置台251~254に置かれた指の全体を撮影し、全体画像撮影情報メッセージM521をアプリ500に送る。全体画像撮影情報メッセージM521には、本ステップで撮影して得られた全体画像の画像データが含まれる。例えば、指置台251~254に4本の指が置かれた場合、カメラ240は、その4本の指を撮影する。
【0051】
S522においてアプリ500は、S521で撮影して得られた全体画像を取得し、ディスプレイ107に取得した全体画像を表示する。またアプリ500は、指の設置が終了した場合に被印刷者が押下すべき「指設置完了ボタン」もディスプレイ107に表示する。
【0052】
S523においてアプリ500は、「指設置完了ボタン」が押下されたか否かを判定する。被印刷者が全体画像を確認して「指設置完了ボタン」を押下した場合、S530へ進む。「指設置完了ボタン」が押下されない場合はS520へ戻り、S520~S523の指設置処理を再度実行する。
【0053】
次に、S530~S531の爪領域検出処理が行われる。まず、S530においてアプリ500は、S521の撮影の結果取得された指の全体画像の画像データを解析する。そして、全体画像中に含まれる爪の数と、それぞれの爪領域のX位置、Y位置、X方向幅、Y方向幅、及び爪領域の形状を示す情報を検出する。ここで得られる位置および形状の情報は、全体画像中(即ち、2次元平面)における爪領域の位置および形状である。X方向は図2中のX方向レールガイド220の長手方向に沿った方向であり、Y方向は図2中のY方向レールガイド211、212の長手方向に沿った方向である。
【0054】
実際の被印刷者の爪領域の位置および形状を撮影画像から決定するのは、被印刷者の爪の位置および形状は被印刷者によってそれぞれ異なるためである。そして実際の爪の位置および形状に合わせて画像を印刷するためである。
【0055】
爪領域の検出の一手法として、爪に塗布されたベースコートの白色を画像処理で検出する方法がある。具体的には撮影画像のRGB値から所定の閾値(例えばR>200、G>200、B>200)を超える画素を検出し、検出した領域を爪領域と判定する。爪検出の際に、指の下にある指置台251~254を爪と誤検出しないように、指置台251~254は黒などの白以外の色にするとよい。またライトの反射で撮影画像が白飛びした部分を誤検知しないように、光が乱反射する素材で指置台251~254を構成するのが望ましい。または、撮影画像に対してエッジ検出処理を行い、その結果得られた情報を用いて爪領域の検出を行ってもよい。または、画像処理による検出ではベースコートが半透明の場合に検出が困難になるため、別の検出方法として機械学習を用いてもよい。機械学習で学習させる画像に、白または半透明のベースコートが塗布された爪画像を用いることで、白だけでなく半透明のベースコートであっても爪領域の検出が可能になる。機械学習では、用意した学習画像のどこに爪があるかを学習させていき、学習モデルを構築する。構築した学習モデルはアプリ500に組み込まれ、CPU101によって処理され、撮影画像から爪領域を検出するのに利用される。肌の色および爪の形は個人によって異なるため、学習画像に多くの手のパターンを用意し学習させるとよい。機械学習には数多くのフレームワークが存在しており、既存のフレームワークを利用することで機械学習を実現することができる。
【0056】
S531でアプリ500は、爪領域が正しく検出されたか否かを判定する。爪領域が正しく検出されたと判定した場合にはS540に進み、正しく検出されていないと判定した場合にはS520に戻って、指設置処理および爪領域検出処理を繰り返す。
【0057】
爪領域が正しく検出されたかの判定方法は、例えば以下の条件を満たす場合、正しく検出がされたと判定する。検出された爪領域の個数が4個であり、X座標ではそれぞれ略均等間隔に存在しており、中指の爪の位置がY方向奥側に、小指の爪の位置がY方向手前側に存在していれば、爪領域の位置および形状の検出が正しく行われたと判定する。逆に、取得された爪領域の個数が0個である場合もしくは5個以上である場合、または、ほぼ同じX位置に爪が複数個検出された場合等には、爪領域が正しく行われなかったと判定する。それ以外の場合には、例えば取得された爪領域の個数が1個~3個である場合に、未検出の指の爪を印刷対象外とするか、または、標準的な爪領域の位置および形状を未検出の指の爪として登録してS540に進む方法でもよい。
【0058】
次に、アプリ500は、S540~S541で爪画像の設定処理を行う。まず、S540でアプリ500は、被印刷者に対して爪画像の設定処理を行う旨をディスプレイ107上に表示する。また、アプリ500は、爪画像の設定が終了した場合に押下すべき「爪画像設定完了ボタン」も併せて表示する。
【0059】
このS540の結果、被印刷者は、少なくとも「爪に印刷する画像デザイン」の選択をする。即ち、被印刷者は、ディスプレイI/F106を通じ、爪に印刷するデザインを選択する。
【0060】
図6は、ディスプレイ107に表示されるデザインの選択画面601の例を示す図である。図6(a)は、デザイン未設定時の画面の例であり、図6(b)は、デザイン設定済みの画面の例である。図6(a)の選択画面601において、指のモデル602と爪のモデル603とが表示されている。選択画面601では、どの指の爪に、どのデザインを選択するかを被印刷者が選択する。尚、本実施形態では、デザインの選択を実行する者と被印刷者とが同一である例を説明するが、例えばネイルサロン等で用いられる場合には、両者が異なっていてもよい。
【0061】
被印刷者は、選択画面601に表示されているデザインリスト604から、爪への印刷に用いるデザインを選択する。デザインリスト604は、個々のデザイン画像605を含む。デザインリスト604に含まれている各デザイン画像605は、ホスト100内のHDD103に予め保存されていてもよいし、データ転送I/F104を用いてネットワークから取得されたものでもよい。被印刷者がデザインを選択する場合、まず爪のモデル603から任意の一つを押下する。押下された爪のモデル603は、選択状態となり、図6(b)に示すように、選択されていることを示す枠線607が表示される。この状態で、デザインリスト604に含まれている個々のデザイン画像605を押下することで、選択状態の爪のモデル603に、押下されたデザイン画像605が設定される。
【0062】
爪画像設定完了ボタン606は、次のステップへ遷移するためのボタンである。デザイン選択後に爪画像設定完了ボタン606を押下することで次へ進む。尚、爪画像設定完了ボタン606は、デザイン画像が一つも選択されていない場合は、図6(a)に示すようにグレーアウトされ、無効化されている。爪画像設定完了ボタン606は、少なくとも一つデザイン画像が設定されるまでは、図6(b)に示すような有効化の状態にはならない。
【0063】
S541においてアプリ500は、被印刷者が爪画像設定完了ボタン606を押下したか否かを判定する。判定結果がNoの場合には、S540に戻って爪画像の設定処理を継続し、判定結果がYesの場合にはS550に進む。これらのS540~S541の一連の処理フローをリアルタイムに繰り返すことにより、被印刷者は簡易に爪領域への画像設定を行うことができる。
【0064】
S550~S552は1つの指置台を選択して高さ調整を行う処理である。S550~S552の高さ調整処理は、指置台251~254のうちから選択された調整対象の指置台ごとに行われ、指が置かれた指置台の数だけS550~S552の処理が繰り返される。以下の説明では、調整対象の指置台は指置台251であるものとして説明する。
【0065】
S550においてアプリ500は、S521の撮影で得られた全体画像に基づき検出された爪領域の位置および形状から、調整対象の指置台251の「第1の調整位置」を決定する。そして、決定された第1の調整位置の位置情報が含まれる、第1の高さ調整メッセージM550をネイルプリント装置110に出力する。「第1の調整位置」は、例えば、調整対象の指置台251に置かれた指の爪領域のY方向の奥側(指先側)の先端の位置であるものとして説明するが、第1の調整位置は爪領域の先端に限られない。また、第1の調整位置として爪領域の複数の位置を指定してもよい。
【0066】
S551では、はじめに、モータコントローラ118はレーザセンサ発光部221におけるY方向の位置が受信した第1の調整位置におけるY方向の位置になるように、レーザセンサ発光部221を移動させる。そして、モータコントローラ118は、調整対象の指置台251の高さ調整を行う。本ステップにおける高さ調整を第1の高さ調整とよぶ。モータコントローラ118は、調整対象の指置台251を上昇させ、レーザセンサ受光部222がレーザを受光している状態から受光していない状態に変わったと判定されたら調整対象の指置台251の上昇を停止する。高さ調整が完了したらネイルプリント装置110は第1の高さ調整完了メッセージM551をアプリ500へ出力する。調整対象ではない指置台252~254は、指置台252~254に置かれた指によってレーザを遮断してしまう虞があるため、下降した状態のままにしておく。
【0067】
アプリ500は、第1の高さ調整完了メッセージM551を受信すると、第1の高さ調整後の指置台251に置かれた指の爪の撮影を指示するため、指画像撮影メッセージM552をカメラ240に出力する。
【0068】
S552においてカメラ240は、第1の高さ調整がされた位置にある調整対象の指置台251に置かれた指の爪を撮影し、撮影完了後、その撮影画像データが含まれる指画像撮影情報メッセージM553をアプリ500に出力する。
【0069】
次に、S560~S566で爪への画像印刷処理が行われる。画像印刷処理は、指置台251~254に置かれた指の爪ごとに行われ、爪画像が印刷される爪の数だけ画像印刷処理を繰り返す。本実施形態では、S550~S552の処理のために選択された調整対象の指置台が、そのままS560~S565の印刷対象として選択されるものとして説明する。他にも、S550~S552の処理を全ての指置台251~254に対して行った後にS560に進み、S560であらためて印刷対象の指置台を選択してもよい。以下の説明では、印刷対象の指置台として、指置台251が選択された場合を例に説明する。
【0070】
S560では、はじめに、アプリ500はS552の撮影の結果得られた撮影画像に基づき爪領域を検出する。即ち、本ステップでは、第1の高さ調整がされた後の位置にある指置台251に置かれた指を撮影して得られた画像から、印刷対象の指の爪領域を検出する。検出方法はS530と同様である。
【0071】
次いで、アプリ500は、検出された爪領域に基づき、印刷対象の指の「第2の調整位置」を決定する。そして、決定された第2の調整位置の位置情報が含まれる、第2の高さ調整メッセージM560をネイルプリント装置110に出力する。「第2の調整位置」の決定方法は、「第1の調整位置」と同様の方法により決定される。例えば、検出された爪領域のY方向先端の位置とする。
【0072】
S561においてモータコントローラ118は、受信した第2の調整位置へレーザセンサ発光部221を移動させる。第2の高さ調整メッセージM560で通知された第2の調整位置のY方向の位置が、第1の高さ調整メッセージM550で通知された第1の調整位置のY方向の位置と同じ場合、S561ではレーザセンサ発光部221の移動は行わなくてよい。
【0073】
次いで、モータコントローラ118は、印刷対象の指置台251の高さ調整を行う。本ステップにおける高さ調整を第2の高さ調整とよぶ。モータコントローラ118は、印刷対象の指置台251を上昇させ、レーザセンサ受光部222がレーザを受光している状態から受光していない状態に変わったと判定されたら、印刷対象の指置台251の上昇を停止する。
【0074】
第1の高さ調整が行われた後の指置台251に置かれた指の爪は、S521の撮影の際の爪の位置よりも、カメラ240に近い位置に置かれている。カメラ240に近い位置の爪を撮影して得られた撮影画像に基づき爪検出を行う方が爪の検出精度が高くなる。このため、S560で検出された爪領域は、S530で検出された爪領域よりも精度が高く検出されている。このため精度が高い爪領域に基づき決定された第2の調整位置に基づき、印刷前に、より精度が高い指置台251の高さ調整を行うことが可能となる。
【0075】
印刷対象ではない指置台252~254は、指置台252~254に置かれた指によってレーザを遮断してしまう虞があるため、下降した状態のままにしておく。第2の高さ調整が完了したら第2の高さ調整完了メッセージM561をアプリ500に出力する。
【0076】
S562においてアプリ500は、爪に印刷するための印刷画像の生成を行う。本実施形態ではアプリ500は、第1の高さ調整後の指置台251に置かれた指の撮影画像の爪領域に基づき画像領域を決定する。そして、画像領域に爪画像を設定することにより印刷画像を生成する。第1の高さ調整後の指置台251に置かれた指の爪の位置は、実際に印刷が行われる際の高さである第2の高さ調整後の高さに近い位置である。このため、本実施形態では、実際に印刷が行われる際の高さに近い位置に置かれた爪を撮影して得られた撮影画像から印刷画像を生成できるため、より精度の高い印刷を行うための印刷画像を生成することができる。
【0077】
そして、アプリ500は、「印刷を開始する」旨をディスプレイ107に表示し、生成した印刷画像の画像データを含む印刷メッセージM562をネイルプリント装置110に出力する。
【0078】
S563において印刷ヘッド230は、受信した印刷画像の画像データを記録データとして用いて印刷対象の指の爪の上に印刷するように制御される。印刷が完了した場合、ネイルプリント装置110は、印刷完了情報を含むメッセージをアプリ500に送る。
【0079】
本シーケンス図では、S563の印刷動作においてエラーが発生した場合の処理について説明する。具体的には、印刷ヘッド230が被印刷者の指などの物体に当接したことによりエラーが発生したものとして説明する。印刷動作の進行中に印刷ヘッド230が被印刷者の指などの物体に当接した場合、S563において印刷ヘッド230に物体が当接したことが検知される。そして印刷動作は緊急停止され印刷ヘッド230は移動を停止する。そして、ネイルプリント装置110は、印刷ヘッド230が物体と当接したため、ネイルプリント装置110が正常な状態でないことを示すエラーメッセージM563をアプリ500に送る。S561~S564におけるネイルプリント装置110における処理の詳細は、後述する。
【0080】
S565においてアプリ500は、エラー状態を解除するための処理を行う。エラー解除の方法は、例えば、被印刷者にエラーを解消する方法を通知し、ネイルプリント装置110でエラーが解消したことが確認できた場合、エラーが解除される。なお、S563の印刷動作においてエラーが発生しなかった場合、S564およびS565の処理はスキップされる。
【0081】
S566においてアプリ500は、検出された爪の個数分の印刷が完了したか判定する。全ての爪への印刷が完了している場合、S570へ進む。全ての爪への印刷が完了していない場合、調整対象の指置台を選択し、全ての爪への印刷が完了するまでS550~S565の処理を繰り返す。
【0082】
S570において、アプリ500は、「印刷を完了した」旨をディスプレイ107に表示する。最後に、S580においてアプリ500は、終了処理を行って処理を終了する。必要に応じてカメラ240、ヘッドコントローラ115、およびモータコントローラ118の終了処理も行う。以上がアプリ500およびネイルプリント装置110によって行われる一連の処理の説明である。
【0083】
なお、本シーケンス図の説明では、高さ調整を2回行うものとして説明したが、高さ調整は1回だけでもよい。高さ調整を1回だけ行う場合、S551、S552、S560はスキップされ、M551~M553、およびM560のメッセージの送受信もスキップされる。この場合、S561では、第1の調整位置に基づき高さ調整を行い、S562では、S521の撮影で得られた全体画像に基づき印刷画像を生成する。
【0084】
[ネイルプリント装置の高さ調整および印刷処理]
図7は、ネイルプリント装置110において実行される指置台251~254の高さ調整処理および印刷処理の詳細を説明するためのフローチャートである。図5のS561の処理が開始された際に図7のフローチャートの処理が開始される。
【0085】
図7のフローチャートで示される一連の処理は、ネイルプリント装置110のCPU111がROM113に記憶されているプログラムコードをRAM112に展開し実行することにより行われる。図7におけるステップの一部または全部の機能をASICまたは電子回路などのハードウェアで実現してもよい。なお、前述したように指置台251~254の上昇および下降、レーザセンサ206の移動はモータコントローラ118を介して行われる。印刷動作を行うための印刷ヘッド230の移動はモータコントローラ118を介して行われ、インク吐出用ノズル232~234からのインクの吐出はヘッドコントローラ115を介して行われる。なお、各処理の説明における記号「S」は、フローチャートにおけるステップであることを意味する。
【0086】
S701~S709はループ処理であり、印刷対象の爪の数だけS701~S709を繰り返す。即ち、未印刷の爪から印刷対象の爪が選択され、選択された爪に対するS701~709の処理が行われる。印刷対象への爪の印刷処理が終了すると、未印刷の爪の中から印刷対象の爪が選択される。未印刷の爪がなくなったら、ループ処理を終了する。
【0087】
指置台251~254に人差し指、中指、薬指、小指が置かれた場合、指置台251~254に置かれた4本の指の爪への印刷が完了するまでS701~S709の処理を繰り返す。親指の爪への印刷を行うために指置台251または指置台254に親指が置かれた場合は、親指の爪に対してのみS701~S709の処理が行われる。印刷対象の爪は、アプリ500が決定して、印刷対象の爪の調整位置と共にネイルプリント装置110に通知される。
【0088】
以下、本フローチャートの説明では、指置台251~254に人差し指、中指、薬指、小指が置かれた場合であって、S701で印刷対象の爪として指置台251に置かれた人差し指の爪が選択された場合について説明する。
【0089】
S702において指置台251は上昇を開始する。この際、調整位置に移動した後のレーザセンサ発光部221からレーザが発光されている。指置台251の上昇開始時には、レーザセンサ受光部222はレーザセンサ発光部221から発光されたレーザを受光するものとして説明する。
【0090】
S703においてCPU111は、レーザセンサ受光部222がレーザを受光しなくなったか判定する。判定結果がNoの場合には、S702に戻って指置台251の上昇処理を継続する。レーザセンサ発光部221からレーザセンサ受光部222へ発光しているレーザが、上昇している指置台251に置かれた人差し指261の爪によって遮られた場合、レーザセンサ受光部222はレーザを受光しなくなる。この時、レーザセンサ受光部222がレーザを受光しなくなったと判定され、Yesと判定される。判定結果がYesの場合にはS704に進む。
【0091】
S704において指置台251は上昇を停止する。指置台251に置かれた人差し指261の爪によってレーザが遮られたことに応じて指置台251の上昇を停止することで、印刷対象の人差し指261の爪に対する印刷ヘッド230の距離が適切な距離になるように指置台251の高さが調整される。
【0092】
S705では印刷動作が行われ、印刷ヘッド230は、指置台251に置かれた印刷対象の指の爪に爪画像を印刷するための動作を行う。
【0093】
S706においてCPU111は、印刷動作の進行中の印刷ヘッド230が被印刷者の指等の物体に当接したか判定する。印刷ヘッド230が物体に当接したと判定されない場合(S706がNO)、S707に進む。
【0094】
S707においてCPU111は、印刷対象の爪への爪画像の印刷が終了したか判定する。判定結果がNoの場合には、S705に戻って印刷動作を継続し、判定結果がYesの場合にはS708に進む。S708において指置台251は初期位置まで下降する。
【0095】
S709においてCPU111は、指置台251~254に置かれた全ての指の爪に対して画像の印刷が完了したかを判定する。未印刷の爪がある場合は、S701に戻り、未印刷の爪の中から印刷対象の爪がアプリ500から通知されてS701~708を繰り返す。全ての爪に対する印刷が完了したら本フローチャートを終了する。または、指置台251~254に親指のみが置かれた場合は、親指の爪への印刷が終了したのであれば本フローチャートは終了する。
【0096】
一方、S706において印刷動作の進行中に印刷ヘッド230が物体に当接したと判定された場合(S706がYES)、S701~S709のループ処理を離脱して、S710に進む。原則として、印刷動作では、印刷ヘッド230が被印刷者の指等の物体に当接することはない。しかしながら、例えば、被印刷者が印刷中の爪の指を、S704で指置台251が停止した位置より高く上げると、印刷ヘッド230が被印刷者の指に当接する可能性がある。
【0097】
印刷動作中に印刷ヘッド230が指等の物体に当接したかを判定する方法は、例えば、印刷動作の進行中の印刷ヘッド230の物理的な動作ができなくなった場合、物体に当接したと判定する。例えば、印刷動作の進行中の印刷ヘッド230が停止する予定ではなかった位置で停止した場合、当接したと判定する。
【0098】
S710においてCPU111は、印刷動作を緊急停止する制御を行う。緊急停止が行われると印刷ヘッド230の移動が停止し、インク吐出用ノズル232~234からのインクの吐出も停止するように制御される。このように印刷動作の進行中に、印刷動作に伴う印刷ヘッドの制御とは関係なく印刷ヘッド230の駆動を停止させることを緊急停止とよぶ。
【0099】
なお、先のS706のステップは、緊急停止が実行されるエラーが発生したかを判定するためのステップである。本フローチャートの説明では、S706で説明したように、印刷動作中の印刷ヘッド230への物体の当接が、緊急停止が実行されるエラーであるものとして説明する。他にも、例えば、印刷動作の進行中にネイルプリント装置110の不図示のカバーが開いた場合も、緊急停止が実行されるエラーとしてもよい。
【0100】
S711においてCPU111は、印刷ヘッド230の現在の位置が、指領域内の位置であるか、または、印刷ヘッド230の現在の位置が、走査方向に指領域がある位置であるか判定する。走査方向は、緊急停止の直前の記録走査として印刷ヘッド230が移動していた方向である。本ステップの処理時における印刷ヘッド230の現在の位置とは、緊急停止によって印刷ヘッド230の移動が停止した際の停止位置である。
【0101】
図8は、指領域を説明するためのネイルプリント装置110の正面図である。図9は、指領域を説明するためのネイルプリント装置110の上面図である。図8および図9の一点鎖線の枠で示す指領域800は、実際に被印刷者の指がある領域を少なくとも含む領域であり、印刷ヘッド230が被印刷者の手の一部に当接する可能性のある範囲を表す領域である。印刷ヘッド230が指領域800に位置すると判定された場合、安全性を考慮し、緊急停止後に印刷ヘッド230が移動しないように制御される。指領域は、図8のように指置台251~254の位置に基づき予め決定された領域でもよいし、図5のS530の指領域検出の結果に基づき被印刷者の手に応じた領域として決定されてもよい。
【0102】
例えば、図9に示す印刷ヘッド230の位置が緊急停止による停止位置である場合、停止位置のXY平面上の位置が、指領域800のXY平面上の領域に含まれる。この場合、S711では印刷ヘッド230が指領域800に位置すると判定される(S711でYESと判定される)。または、図8に示す印刷ヘッド230の位置が緊急停止による停止位置である場合であって、緊急停止の直前の印刷動作における印刷ヘッド230の走査方向が図8の左から右への方向であった場合、走査方向に指領域800がある。このため走査方向に指領域があると判定される(S711でYESと判定される)。
【0103】
S711でYESと判定された場合、安全のため、印刷ヘッド230は停止した状態に制御される。例えば、被印刷者に緊急停止が実行された旨を通知する場合、印刷ヘッド230は停止した状態のまま、印刷ヘッド230が物体に当接したことにより緊急停止したことが通知される。
【0104】
そして、S712においてCPU111は被印刷者の指が安全な場所に移動されたかを判定する。例えば、S712においてCPU111は、全ての指置台251~254が、印刷ヘッド230のある方向とは反対の方向である初期位置に下降したかを判定する。なお、S711においてYESと判定された場合、指置台251~254は下降動作に入る。そして、指置台251~254の下降開始の後、S712における判定ステップが行われる。
【0105】
S712でYESと判定された場合は、S713に進む。また、S711においてCPU111は、印刷ヘッド230の緊急停止時の停止位置が指領域内の位置以外の位置であり、かつ、走査方向に指領域がない位置である場合(S711がNO)、S713に進む。
【0106】
S713において印刷ヘッド230は、予備吐口271、272またはキャップ290が配されている待機場所へ移動するように制御される。予備吐口271、272では、印刷ヘッド230は、インク吐出用ノズル232~234から予備吐出を行うことができる。また待機場所では、印刷ヘッド230のインク吐出用ノズル232~234にキャップ290が装着される。このため、予備吐口271、272または待機場所のいずれの場所に印刷ヘッド230が移動しても、インク吐出用ノズル232~234の乾燥または付着しているインクの固着を抑制することができる。
【0107】
例えば、緊急停止時における印刷ヘッド230の停止位置が図8の指領域800より左の位置であり、印刷ヘッド230の緊急停止直前の走査方向が右から左の方向であれば、印刷ヘッド230は指領域の外に位置しており走査方向に指領域がない。このためS711ではNOと判定され、S713では印刷ヘッド230は、予備吐口271またはキャップ290のある待機場所へ移動する。
【0108】
または、緊急停止時の印刷ヘッド230の停止位置が指領域800より右の位置であり、印刷ヘッド230の緊急停止直前の走査方向が左から右の方向であれば、印刷ヘッド230は指領域の外に位置しており走査方向に指領域がない。このためS711ではNOと判定され、S713では印刷ヘッド230は、予備吐口272またはキャップ290のある待機場所へ移動する。
【0109】
緊急停止後、印刷ヘッド230が予備吐口271、272またはキャップ290に移動したら、本フローチャートの処理は終了する。緊急停止後のエラー解除処理が終了すると、印刷動作が再開されることになるため、原則として、S713では印刷ヘッド230は予備吐口271、272に移動するように制御される。印刷動作の再開が行われない場合、印刷ヘッド230はキャップ290のある待機場所に移動するように制御される。
【0110】
その後、アプリ500は、図5のS565でエラー解除の処理を行う。エラー解除の方法は、例えば、アプリ500は、被印刷者にディスプレイ107を介して緊急停止に伴うエラーを解消する方法を通知する。そして、ネイルプリント装置110でエラーが解消したことが確認できた場合、ネイルプリント装置110はその旨のメッセージをアプリ500に出力する。アプリ500は、そのメッセージを受けてS565でエラー解除を行う。
【0111】
以上説明したように本実施形態では、緊急停止した際の印刷ヘッドの停止位置に基づき、緊急停止後の印刷ヘッドの移動の制御が行われる。このため本実施形態によれば、緊急停止後に、被印刷者の安全を配慮しながら、印刷ヘッドのインク吐出用ノズル232~234に付着したインクの乾燥を低減する処理を行うことができる。このため、印刷動作の進行中に印刷ヘッドの駆動が停止した場合でも、乾燥によるインクの吐出が適切に行われないことによる印刷不良の発生を低減することができる。
【0112】
<その他の実施形態>
本開示は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0113】
110 ネイルプリント装置
230 印刷ヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9