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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】畔塗り方法
(51)【国際特許分類】
   A01M 21/00 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
A01M21/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021061178
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157126
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】須藤 俊吉
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-191527(JP,A)
【文献】特開平11-046508(JP,A)
【文献】特開2019-176755(JP,A)
【文献】特開2019-062872(JP,A)
【文献】特開2003-193050(JP,A)
【文献】特開2003-193462(JP,A)
【文献】特開2013-189766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 27/00-49/06
A01M 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
畔塗り機を用いた畔塗り方法であって、
上記畔塗り機は、畔塗り前の畔を耕耘して畔状に盛り上げるための耕耘手段、及び、上記耕耘手段によって耕耘された土壌を畔に成形するための成形手段を有するものであり、
上記畔塗り方法が、
畔塗り前の畔の表面に、軽焼マグネシアからなる、ブレーン比表面積が2,000cm/g以上の粉体を散布して、粉体層を形成させる粉体散布工程と、
上記粉体層の上に、300μm以上の粒度を有するものを80質量%以上の割合で含む、軽焼マグネシアからなる粒体を散布して、粒体層を形成させる粒体散布工程と、
上記粉体層及び上記粒体層が形成された、上記畔塗り前の畔に対して、上記畔塗り機を用いて、耕耘及び成形を行い、畔塗り後の畔を形成させる耕耘及び成形工程、
を含むことを特徴とする畔塗り方法。
【請求項2】
上記粉体と上記粒体の合計量100質量部中の上記粉体の量が、20~80質量部である請求項に記載の畔塗り方法。
【請求項3】
上記粉体及び上記粒体の各散布量は、上記粉体及び上記粒体を含む部分の一軸圧縮強さが、「JGS 0821-2009(安定処理土の締固めをしない供試体作製方法)」及び「JIS A 1216:2020(土の一軸圧縮試験方法)」に準拠して測定される7日後の値として、100kN/m以上となるように定められる請求項1又は2に記載の畔塗り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畔塗り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水田において、水を張る前に、畔の修理を行う畔塗りという作業が、知られている。
この畔塗りは、通常、畔塗り機と称されるトラクターで行われる。
畔塗り機として、畔塗り前の畔を耕耘して畔状に盛り上げるための耕耘手段(前処理手段)、及び、耕耘手段(前処理手段)によって耕耘された土壌を畔に成形するための成形手段(整畔手段)を有するものが、知られている。
一例として、特許文献1に、走行機体の後部に装着され、該走行機体から動力を受け、元畦及び圃場を耕耘して畦状に盛り上げる前処理体、及びこの前処理体により耕耘された土壌を畦に成形する整畦体を備え、該前処理体に土飛散防止のためのサイドカバーを設けた畦塗り機において、上記サイドカバーを平行リンクにより上下動自在に支持して、該サイドカバーの高さ調整が自動的に行われるようにしたことを特徴とする畦塗り機が、記載されている。
【0003】
他の例として、特許文献2に、機体に支持されて、畔の法面部及び畔際部を耕耘して膨軟にするための複数本の耕耘爪が、片持支持構造の耕耘軸に取付けられた耕耘ユニットと、前記機体における当該耕耘ユニットの後方に配置されたドラム軸に畔塗りドラムが一体に取付けられて、耕耘された膨軟な土壌を前記畔の法面部及び上面部に塗り付けるための畔塗りドラムユニットと、タンクに収容された土壌固化材をホースにより、前記耕耘ユニットの耕耘爪により膨軟にされた土壌に添加させるための土壌固化材供給ユニットとを備えた畔塗り機であって、前記耕耘軸は、畔の長手方向と直交する方向に沿った長さを有し、当該耕耘軸における前記機体に近い部分に、前記畔際の土を切り起こして畔側に移送させるスクリューコンベアが取付けられて、前記耕耘軸における当該スクリューコンベアに対して自由端側に複数本の前記耕耘爪が取付けられていることを特徴とする畔塗り機が、記載されている。
【0004】
一方、畔の造成において、軽焼酸化マグネシウム粉末からなる固化材を用いることが、知られている。
一例として、特許文献3に、畦の造成に使用する土壌を採掘する地盤から、土壌の試料を採取する土壌採取工程、上記土壌の試料と、使用予定の固化材(軽焼酸化マグネシウム粉末)を混合して、混合物を得た後、上記混合物について固化後の強度を測定し、得られた測定値に基いて、雑草の生育を抑制するための固化材の種類及び量を定める固化材決定工程、及び、上記固化材決定工程で定めた固化材の種類及び量で、地盤に畦を造成する畦造成工程、を含むことを特徴とする畦造成方法が、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-46508号公報
【文献】特開2018-191527号公報
【文献】特開2019-176755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている畦塗り機は、土飛散防止のためのサイドカバーを有する。
しかし、サイドカバーは、特定の方向に飛散する大きな粒度を有する土粒子に比べて、舞い上がる粉塵状の土粒子に対しては、その飛散防止効果が小さいと考えられる。
特許文献2には、特許文献1のサイドカバーのような土飛散防止手段は、記載されていない。
一方、特許文献3に記載されている、畔の造成に用いられる軽焼酸化マグネシウム粉末からなる固化材は、実施例でのブレーン比表面積が5,500cm/gであり、耕耘時に、舞い上がるなどの問題が生じる可能性がある。
本発明の目的は、畔塗り機を用いた畔塗り方法であって、畔塗りの作業中に、粉塵状の粒子が舞い上がるのを抑制して、作業環境を良好に維持することができ、かつ、畔塗りによって、畔として十分な強度(例えば、一軸圧縮強さ)を有する畔を形成させることができる畔塗り方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、畔塗り機として、特定の構造を有するものを用い、かつ、畔塗り方法として、特定の粉体の散布と、特定の粒体の散布と、畔塗り機を用いた耕耘及び成形とを組み合わせた方法を採用することによって、上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下の[1]~[5]を提供するものである。
【0008】
[1] 畔塗り機を用いた畔塗り方法であって、上記畔塗り機は、畔塗り前の畔を耕耘して畔状に盛り上げるための耕耘手段、及び、上記耕耘手段によって耕耘された土壌を畔に成形するための成形手段を有するものであり、上記畔塗り方法が、畔塗り前の畔の表面に、マグネシウム系固化材からなる、ブレーン比表面積が2,000cm/g以上の粉体を散布して、粉体層を形成させる粉体散布工程と、上記粉体層の上に、300μm以上の粒度を有するものを80質量%以上の割合で含む粒体を散布して、粒体層を形成させる粒体散布工程と、上記粉体層及び上記粒体層が形成された、上記畔塗り前の畔に対して、上記畔塗り機を用いて、耕耘及び成形を行い、畔塗り後の畔を形成させる耕耘及び成形工程、を含むことを特徴とする畔塗り方法。
[2] 上記粒体散布工程で散布される上記粒体が、マグネシウム系固化材(ただし、上記粒体を構成するマグネシウム系固化材は、上記粉体散布工程で散布される粉体を構成するマグネシウム系固化材と同じでも異なってもよい。)からなる、上記[1]に記載の畔塗り方法。
[3] 上記粉体を構成する上記マグネシウム系固化材、及び、上記粒体を構成する上記マグネシウム系固化材が、軽焼マグネシアである、上記[2]に記載の畔塗り方法。
[4] 上記粉体と上記粒体の合計量100質量部中の上記粉体の量が、20~80質量部である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の畔塗り方法。
[5] 上記粉体及び上記粒体の各散布量は、上記粉体及び上記粒体を含む部分の一軸圧縮強さが、「JGS 0821-2009(安定処理土の締固めをしない供試体作製方法)」及び「JIS A 1216:2020(土の一軸圧縮試験方法)」に準拠して測定される7日後の値として、100kN/m以上となるように定められる、上記[1]~[4]のいずれかに記載の畔塗り方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、畔塗りの作業中に、粉塵状の粒子(マグネシウム系固化材からなる粉体)が舞い上がるのを抑制して、作業環境を良好に維持することができる。
また、本発明によれば、畔塗りによって、畔として十分な強度(例えば、一軸圧縮強さ)を有する畔を形成させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の畔塗り方法で用いる畔塗り機は、畔塗り前の畔を耕耘して畔状に盛り上げるための耕耘手段、及び、上記耕耘手段によって耕耘された土壌を畔に成形するための成形手段を有するものである。
畔塗り機の構成部分である耕耘手段は、畔塗り機の進行方向に対して垂直の方向(畔塗り機の側方の方向)に延びる耕耘用の軸と、この耕耘用の軸の周面に固着された複数(例えば、3~4個)の耕耘用の爪とを有する。約1年前の畔塗り作業以来修理されていない畔は、複数の耕耘用の爪によって耕耘されて、畔状に盛り上げられる。
なお、耕耘用の爪は、水平面である上面を耕耘するための上面用の爪と、傾斜面である側面(法面)を耕耘するための法面用の爪とで構成することもできる。この場合、法面用の爪は、上面用の爪よりも大きな長さ寸法を有する。
【0011】
畔塗り機の構成部分である成形手段は、畔の上面を成形するための円柱状の部分(上面形成用の部分)と、該円柱状の部分の端部から拡径して形成された円錐台形状の部分であって、畔の法面を形成するための部分(法面形成用の部分)とを有する。
本発明で用いる畔塗り機に該当する畔塗り機は、複数の製造元で市販されており、容易に入手可能である。例えば、小橋工業株式会社製の畔塗り機、松山株式会社製の畔塗り機、株式会社クボタ製の畔塗り機等が挙げられる。
【0012】
次に、本発明の畔塗り方法を構成する各工程について説明する。
[粉体散布工程]
粉体散布工程は、畔塗り前の畔の表面に、マグネシウム系固化材からなる、ブレーン比表面積が2,000cm/g以上の粉体を散布して、粉体層を形成させる工程である。
ここで、上記「畔塗り前の畔の表面」とは、少なくとも、畔の表面の一部であればよい。
本発明において、上記「畔塗り前の畔の表面」は、好ましくは、法面の全面、さらに好ましくは、上面及び法面の全面である。このような好ましい面を対象にして、粉体を散布することによって、畔の強度(一軸圧縮強さ)をより高めることができる。
本発明で用いられるマグネシウム系固化材としては、酸化マグネシウム等が挙げられる。
酸化マグネシウム(マグネシアとも称される。)は、土壌に添加してもpHが強アルカリ性にならず、かつ、硫黄分を含まないため硫化水素の発生のおそれもない点で、好ましい。
中でも、軽焼マグネシアは、比表面積が大きく、高い反応性を有する点で、特に好ましい。
軽焼マグネシアは、炭酸マグネシウムと水酸化マグネシウムの少なくとも1種を主成分とする鉱物を、650~1,000℃で焼成することによって製造される。
【0013】
粉体散布工程で用いられるマグネシウム系固化材のブレーン比表面積は、2,000cm/g以上、好ましくは3,000~10,000cm/g、より好ましくは3,500~8,000cm/g、さらに好ましくは4,000~7,000cm/g、特に好ましくは4,500~6,500cm/gである。
該ブレーン比表面積が2,000cm/g以上であれば、畔塗り後の畔の強度(一軸圧縮強さ)が、より高くなる。該ブレーン比表面積が10,000cm/g以下であれば、畔塗り作業時における粉塵状の粒子の飛散の量が、より少なくなる。
粉体の散布量は、畔塗り後の畔の強度(一軸圧縮強さ)を高める観点から、畔の長さ1m当たり、好ましくは1kg以上、より好ましくは2kg以上、特に好ましくは3kg以上である。該散布量の上限は、特に設定する理由はないものの、畔が過剰な強度を有する必要はなく、また、材料のコストを抑える観点からは、好ましくは10kgである。
【0014】
[粒体散布工程]
粒体散布工程は、粉体散布工程で形成された粉体層の上に、300μm以上の粒度を有するものを80質量%以上の割合で含む粒体を散布して、粒体層を形成させる工程である。
粒体散布工程で用いられる粒体の粒度分布は、好ましくは、600μm以上の粒度を有するものを80質量%以上の割合で含むものであり、より好ましくは、600μm以上の粒度を有するものを80質量%以上の割合で含み、かつ850μm以上の粒度を有するものを50質量%以上の割合で含むものである。
また、該粒体の粒度分布は、畔塗り後の畔の強度(一軸圧縮強さ)の低下を避ける観点から、好ましくは、10mm以上の粒度を有するものを含まない、または20質量%以下(好ましくは10質量%以下)の割合で含むものであり、より好ましくは、8mm以上の粒度を有するものを含まない、または20質量%以下(好ましくは10質量%以下)の割合で含むものであり、特に好ましくは、6mm以上の粒度を有するものを含まない、または20質量%以下(好ましくは10質量%以下)の割合で含むものである。
【0015】
粒体散布工程で用いられる粒体としては、砂、セラミックス粒体、マグネシウム系固化材からなる粒体等が挙げられる。
中でも、畔塗り後の畔の強度を向上させる観点から、マグネシウム系固化材からなる粒体が、好ましい。例えば、上述の粉体散布工程で用いる粉体と同じマグネシウム系固化材を用いる場合、まず、塊状等のマグネシウム系固化材を破砕して、粒体散布工程で用いられる粒体を得た後、その一部をさらに粉砕して、粉体散布工程で用いられる粉体を得てもよい。あるいは、粒体散布工程で用いる粒体として、マグネシウム系固化材からなる成形物を用いてもよい。
粒体散布工程で用いられるマグネシウム系固化材は、粉体散布工程で用いられるマグネシウム系固化材と同じもの(例えば、軽焼マグネシア)でもよいし、異なるもの(例えば、重焼マグネシア、軽焼ドロマイト等)でもよい。
ここで、重焼マグネシアとは、焼成温度が1,000℃を超えること以外は軽焼マグネシアと同様にして製造されるものをいう。
【0016】
粒体の散布量は、畔塗り作業時における粉塵状の粒子の飛散の量を、より低減させる観点から、畔の長さ1m当たり、好ましくは1kg以上、より好ましくは2kg以上、特に好ましくは3kg以上である。該散布量の上限は、特に設定する理由はないものの、散布量が過大であると、粉塵状の粒子の飛散量を抑制する効果が飽和すること、及び、材料のコストの観点から、好ましくは10kgである。
粉体散布工程で散布される粉体と、粒体散布工程で散布される粒体の合計量は、畔の長さ1m当たり、好ましくは2kg以上、より好ましくは4kg以上、特に好ましくは6kg以上である。該合計量の上限は、特に限定されないが、材料のコスト等の観点から、好ましくは20kgである。
粉体散布工程で散布される粉体と、粒体散布工程で散布される粒体の合計量100質量部中の上記粉体の量は、畔塗り作業時における粉塵状の粒子の飛散の防止と、畔塗り後の畔の強度(一軸圧縮強さ)の向上をバランス良く両立させる観点から、好ましくは20~80質量部、より好ましくは25~75質量部、さらに好ましくは30~70質量部、特に好ましくは35~65質量部である。
【0017】
上記粉体及び上記粒体の各散布量は、後述の耕耘及び成形工程における耕耘及び成形を行った時を基準時として、上記粉体及び上記粒体を含む部分(換言すると、耕耘及び成形によって形成された、土壌、上記粉体、及び上記粒体の混合物)の一軸圧縮強さが、「JGS 0821-2009(安定処理土の締固めをしない供試体作製方法)」及び「JIS A 1216:2020(土の一軸圧縮試験方法)」に準拠して測定される7日後の値として、好ましくは100kN/m以上、より好ましくは150kN/m以上、さらに好ましくは200kN/m以上、特に好ましくは250kN/m以上となるように、定めればよい。
一軸圧縮強さは、畔塗り後の畔をコア抜きしたり、一部採取して削り出しなどにより成形した供試体を対象にして、測定することができる。
該一軸圧縮強さの上限は、特に設定する理由はないものの、畔が過剰な強度を有する必要はない観点から、通常、400kN/mである
【0018】
[耕耘及び成形工程]
耕耘及び成形工程は、粉体層及び粒体層が形成された、畔塗り前の畔に対して、上述の畔塗り機を用いて、耕耘及び成形を行い、畔塗り後の畔を形成させる工程である。
ここで、「耕耘」とは、畔塗り機の耕耘手段を構成する耕耘用の爪によって、畔塗り前の畔を切り崩して、畔状に盛り上げることをいう。
また、「成形」とは、耕耘によって畔状に盛り上げた膨軟な土壌を加圧して、特定の形状を有する畔を形成させることをいう。ここで、畔の特定の形状は、畔塗り機の成形手段を構成する2つの部分(上面形成用の部分、及び法面形成用の部分)の形状によって定まる。
【0019】
本発明において、粉塵状の粒子の舞い上がり(飛散)の抑制効果は、後述の実施例における試験方法による飛散量の減少割合で示すと、以下のものが好ましい。
粉体と粒体の併用(合計量:100質量部)による粉塵状の粒子の飛散量の減少割合は、粉体100質量部のみを用いた場合に比べて、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
【実施例
【0020】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)土壌:荒木田土(含水率:35%)
(2)粉体:軽焼マグネシア粉体(マグネサイトを850℃で焼成してなる軽焼マグネシアの粉砕物;ブレーン比表面積:5,500cm/g;表1中の「粉体」)
(3)粒体A:軽焼マグネシア粒体(マグネサイトを850℃で焼成してなる軽焼マグネシアの破砕物の分級品;目開き850μm~2.36mmの範囲内の粒度を有するもの;表1中の「粒体A」)
(4)粒体B:軽焼マグネシア粒体(マグネサイトを850℃で焼成してなる軽焼マグネシアの破砕物の分級品;目開き2.36mm~4mmの範囲内の粒度を有するもの;表1中の「粒体B」)
【0021】
[実施例1]
粉体7.5質量部、「粒体A」2.5質量部、及び、土壌90質量部を用いて、以下の試験を行った。
(A)一軸圧縮強さ
「JGS 0821-2009(安定処理土の締固めをしない供試体作製方法)」に準拠して、供試体を作製した。この供試体の作製において、ホバート型ミキサに各材料(粉体7.5質量部、「粒体A」2.5質量部、及び、土壌90質量部)を投入し、10分間混合した後、7日間密封養生を行った。
養生後の供試体について、「JIS A 1216:2020(土の一軸圧縮試験方法)」に準拠して、一軸圧縮強さを測定した。
【0022】
(B)粉塵状の粒子の飛散割合
以下の手順で、固化材(軽焼マグネシアからなる粉体及び粒体)の全量中の飛散した固化材の割合(飛散割合)を算出した。
a) 練り鉢(容量:1.3リットル)に、0.36リットルの土壌90質量部を収容した。
b) 練り鉢の中の土壌の上面全体に、粉体7.5質量部を散布し、粉体層を形成させた。
c) さらに、練り鉢の中の粉体層の上面全体に、「粒体A」2.5質量部を散布し、粒体層を形成させた。
d) 練り鉢中の収容物(土壌に粉体及び粒体Aを散布してなるもの)を均一に混合するためのパドルを、練り鉢とパドルとを接触させた状態でホバート型ミキサ本体に設置した後、1分間、上記の収容物を撹拌した。
e) 上記d)における撹拌によって練り鉢から舞い上がって飛散した固化材の質量を測定した。上記c)において練り鉢の中に収容されていた固化材の全量(10質量部)に対する飛散した固化材の割合(質量%)を算出し、得られた値を「飛散割合(質量%)」とした。
【0023】
[実施例2~11、比較例1~2]
表1に示す材料を用いる以外は実施例1と同様にして、試験を行った。
以上の結果を表1に示す。
表1から、実施例1~11では、一軸圧縮強さが131~345kN/mであり、比較例2の一軸圧縮強さ(98kN/m)に比べて、雑草の根の生長を抑制しうる土壌の強度を得ていることがわかる。
また、実施例1~11では、粉塵状の粒子(固化材)の飛散割合が0.01~0.85質量%であり、比較例1の飛散割合(1.40質量%)に比べて、粉塵状の粒子(固化材)の飛散量を大幅に低減させたことがわかる。
軽焼マグネシア粉体を投入した場合の一軸圧縮強さは、投入量にほぼ比例するので、例えば、粉体の量が2.5質量部である実施例5または実施例10において、粒体A(実施例5)または粒体B(実施例10)に代えて、砂を用いた場合であっても、粉塵状の粒子(マグネシウム系固化材)の飛散量が低減され、所定の一軸圧縮強さ(100kN/m以上)を得ることができる。
【0024】
【表1】