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特許7604308電子写真用ベルト及びそれを用いた電子写真画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】電子写真用ベルト及びそれを用いた電子写真画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20241216BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/00 552
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021064773
(22)【出願日】2021-04-06
(65)【公開番号】P2021177234
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2020081497
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】亀山 直人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 薫
(72)【発明者】
【氏名】堀 篤史
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-97195(JP,A)
【文献】特開2018-101108(JP,A)
【文献】特開2010-15143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレス形状を有する電子写真用ベルトであって、
エンドレス形状の基層、
該基層の外周面上の弾性層、および
該弾性層の外周面上の表面層を具備し、
該表面層は、
バインダーとしてのウレタン樹脂と、
ポリテトラフルオロエチレン粒子と、
パーフルオロポリエーテル構造及びオキシアルキレン構造を有する化合物と、
を含むことを特徴とする電子写真用ベルト。
【請求項2】
前記オキシアルキレン構造が、オキシエチレン構造又はオキシプロピレン構造である請求項1に記載の電子写真用ベルト。
【請求項3】
前記パーフルオロポリエーテル構造の数平均分子量が500~10,000である請求項1又は2に記載の電子写真用ベルト。
【請求項4】
前記パーフルオロポリエーテル構造が、下記構造式(i)~(iv)で示される構造からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1~3のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト:
-CFO- (i)
-CFCFO- (ii)
-CFCFCFO- (iii)
-CF(CF)CFO- (iv)。
【請求項5】
前記オキシアルキレン構造の数平均分子量をMn1とし、前記パーフルオロポリエーテル構造の数平均分子量をMn2としたとき、(Mn1/Mn2)の値が、0.3~2.0である請求項1~4のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項6】
前記((Mn1/Mn2)の値が、0.5~1.0である請求項5に記載の電子写真用ベルト。
【請求項7】
前記基層の厚さが10μm~500μmである請求項1~6のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項8】
前記弾性層の膜厚が100μm~1000μmである請求項1~7のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項9】
前記表面層の膜厚が0.5μm~20.0μmである請求項1~8のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項10】
前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の個数平均粒子径が、0.05μm~1.80μmの範囲内である請求項1~9のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項11】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体から1次転写されたトナー像を転写材に2次転写するために担持して搬送する中間転写ベルトと、を具備し、
該中間転写ベルトが、
エンドレス形状の基層、
該基層の外周面上の弾性層、および
該弾性層の外周面上の表面層を具備し、
該表面層は、
バインダーとしてのウレタン樹脂と、
ポリテトラフルオロエチレン粒子と、
パーフルオロポリエーテル構造及びオキシアルキレン構造を有する化合物と、
を含む、エンドレス形状を有する電子写真用ベルトである、ことを特徴とする電子写真画像形成装置。
【請求項12】
前記電子写真画像形成装置が、クリーニング部材を更に具備し、
該クリーニング部材の少なくとも一部が前記電子写真用ベルトの前記表面層の外表面に接するように配置されている請求項11に記載の電子写真画像形成装置。
【請求項13】
前記クリーニング部材が、クリーニングローラである請求項12に記載の電子写真画像形成装置。
【請求項14】
前記クリーニング部材が、クリーニングブレードである請求項12に記載の電子写真画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複写機やプリンタなどの電子写真画像形成装置において例えば、中間転写ベルトに用い得る電子写真用ベルト、及び電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置においては、中間転写ベルト上にYMCKの各色のトナー像を重ね合わせた後に、紙等の上に一括転写することで、フルカラー画像を得るタンデム方式が広く採用されている。
このような電子写真画像形成装置において、電子写真画像の、より一層の高画質化のために、弾性層を有する電子写真用ベルトを中間転写ベルトとして用いる場合がある。このような電子写真用ベルトは、2次転写部においてトナーに作用する圧力を低くすることでき、所謂、中抜け現象と称される画像弊害の発生を抑制し得る。また、2次転写部における電子写真用ベルトと紙との密着性に優れるため、厚紙や凹凸を有する紙へのトナーの二次転写性の向上にも有効である。
【0003】
また、2次転写部におけるトナーの紙への転写効率をさらに高めるために電子写真用ベルトのトナー担持面(以降、「外表面」ともいう)を、トナー離型性に優れた表面層で構成することがある。
ここで、特許文献1は、導電性のゴム基材と、該ゴム基材上に設けられた保護層としての離型層と、該ゴム基材と該離型層との間に設けられ、該離型層よりもマルテンス硬度の低い中間層とを有する導電性弾性ベルトを開示している。そして、該離型層中の樹脂としては、ベルト基材の使用環境の変化に伴う伸長に追従しやすくなる点でウレタン樹脂を用いることが好ましいことが開示されている。さらに、該離型層には、潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いることが好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-114907号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】LOPEZ, Gerald, et al. An amphiphilic PEG-b-PFPE-b-PEG triblock copolymer: synthesis by CuAAC click chemistry and self-assembly in water. Polymer Chemistry, 2016, 7.2: 402-409.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、弾性層と表面層とを有し、該表面層が、PTFE粒子と、バインダー樹脂としてのウレタン樹脂とを含む電子写真用ベルトにおいては、表面層中のPTFE粒子が、該表面層の弾性層に近い側に偏在していた。これは、PTFE粒子がウレタン樹脂と比較して比重が重いことに起因するものと考えられる。そして、このような表面層を備えた電子写真用ベルトは、使用に伴って表面層が摩耗していくに連れてPTFE粒子の含有率が変化し、それに伴って、電子写真用ベルトの外表面のトナー離型性やクリーニング性が変化する場合があった。
本開示の一態様は、長期間に亘る使用によってもトナー離型性やクリーニング性が変化しにくい電子写真用ベルトの提供に向けたものである。また、本開示の他の態様は、高品位な電子写真画像を安定して形成することができる電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、エンドレス形状を有する電子写真用ベルトであって、エンドレス形状の基層、該基層の外周面上の弾性層、および該弾性層の外周面上の表面層を具備し、該表面層は、バインダーとしてのウレタン樹脂と、ポリテトラフルオロエチレン粒子と、パーフルオロポリエーテル構造及びオキシアルキレン構造を有する化合物と、を含む電子写真用ベルトが提供される。
また、本開示の他の態様によれば、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体から1次転写されたトナー像を転写材に2次転写するために担持して搬送する中間転写ベルトと、を具備し、該中間転写ベルトが、上記の電子写真用ベルトである電子写真画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、長期に亘る使用によってもトナー離型性やクリーニング性が変化しにくい外面層を有する電子写真用ベルトを得ることができる。また、本開示の他の態様によれば、長期に亘って高品位な電子写真画像を形成することができる電子写真画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一態様に係る電子写真用ベルトを用いた電子写真画像形成装置の一例を示す断面図である。
図2】本開示の一態様に係る電子写真用ベルトの断面図である。
図3】ブレードのめくれを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施態様に係る、エンドレスベルト形状を有する電子写真用ベルトについて説明する。なお、本開示の技術的範囲は以下の説明に限定されるものではない。
該電子写真用ベルトは、例えば、図1に示す電子写真画像形成装置内において中間転写ベルト7として用いられる。
該電子写真用ベルトの周方向に直交する方向の断面を図2に示す。該電子写真用ベルトは、基層21、弾性層22、及び表面層23が積層されてなる構造を有する。しかしながらこれらの3層に限定するものではなく、各層の間に密着性向上のためのプライマー層や、表面層23の割れを抑制するための応力緩和層やブリード物を抑制するための中間層を追加してもよい。
【0011】
(基層)
基層21は、エンドレスベルト形状を有する。
基層21に適する材料としては、例えば、以下のものが挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン等。
【0012】
なお、基層21用の樹脂には金属粉末、導電性酸化物粉末、導電性カーボン、リチウム塩、イオン液体等の導電性化合物を添加して導電性を付与しておいても良い。下記の実施例においては、優れた生産性及び導電性を得ることができるという観点からポリアルキレングリコールとリチウム塩を添加したポリフッ化ビニリデンを使用したが、例示した他の樹脂と導電剤との組み合わせを使用しても良い。
基層21の厚さは、10μm~500μmが好ましい。この範囲であることにより、エンドレス形状を有する電子写真用ベルトに、その柔軟性を維持しつつ、十分な機械的強度を付与し得る。
【0013】
(弾性層)
弾性層22は記録媒体の表面形状に追従するため、適度な柔軟性を有することが必要である。このような弾性層に適する材料としては、以下のものが挙げられる。シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、オレフィンエラストマー、スチレンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等のゴム材料、エラストマー材料。
【0014】
なお、弾性層22には金属粉末、導電性酸化物粉末、導電性カーボン、リチウム塩、イオン液体等の導電性化合物を添加して導電性を付与しておいても良い。下記の実施例においては、優れた生産性を得ることができるという観点から熱可塑性エラストマーであるポリアルキレングリコールとリチウム塩を添加したポリウレタンエラストマーを使用したが、例示した他の樹脂と導電剤との組み合わせを使用しても良い。
【0015】
弾性層22の膜厚は100μm~1000μmが好ましく、200μm~500μmがさらに好ましい。また、弾性層22のJIS-A硬度は80度以下が好ましい。
弾性層22に対する導電剤の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましい。これにより電子写真用ベルトに適した安定した導電性が弾性層22に付与される。
【0016】
また、弾性層22には、他にも充填剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、架橋助剤、スコーチ防止剤、老化防止剤、軟化剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、防錆剤などの添加剤を含んでいてもよい。
電子写真用ベルトは転写部で通電するため難燃性が求められる。各種エラストマー、ゴムは難燃剤を添加しない場合には必要な難燃性を確保することは難しい。難燃剤としては、吸熱作用を利用する水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、熱分解を抑制する白金化合物やフェノール系化合物、酸素遮断効果を有するイントメンセット系化合物、リン酸エステル縮合系化合物がある。
【0017】
また、充填剤としては、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、湿式シリカ、ヒュームド酸化チタン、セルロースナノファイバーなどの補強性充填剤が挙げられる。
更に、基層21と弾性層22との間には必要に応じて接着性向上のためにプライマー層(不図示)を設けても良い。プライマー層の厚みはプライマー層内の凝集破壊を低減する観点から、0.1μm以上、2μm以下が好ましい。
【0018】
(表面層)
表面層23は、バインダー樹脂としてのウレタン樹脂23-1と、PTFE粒子23-2と、不図示のパーフルオロポリエーテル構造とオキシアルキレン構造とを有する化合物とを含む。
PTFE粒子23-2は、表面層23の弾性層21と対向する側とは反対側の表面(以降、「外表面」ともいう)23-5に、優れたトナー離型性や優れたクリーニング性を付与する。なお、表面層の外表面23-5は、電子写真用ベルト7のトナー担持面を構成する。
表面層23の膜厚としては、0.5μm~20.0μmが好ましい。電子写真用ベルトを電子写真画像の形成に供したときの弾性層の変形に表面層がよく追従し、表面層が弾性層から剥離することを防止し得るためである。
【0019】
<ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子>
ポリテトラフルオロエチレン粒子の個数平均粒子径は、表面層23の外表面、すなわち電子写真用ベルトの外表面にPTFE粒子に起因する凸を生じさせないことを前提として、2.00μm未満のものを適宜選択して用いる。特には、0.05μm~1.80μm(50nm~1800nm)の範囲内にあるものを適宜選択して用いることが好ましい。
PTFE粒子としては、具体的には、例えば、「Fluon(登録商標) PTFE Lubシリーズ」(商品名、AGC(株)製)、「TLP 10F-1」(商品名、三井・ケマーズ フロロプロダクツ(株)製)が挙げられる。
【0020】
<ウレタン樹脂>
ウレタン樹脂とはウレタン結合(-NH-(C=O)-O-)を含む樹脂である。
ウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む表面層は、弾性層に対する密着性が優れ、また、弾性層の弾性変形に表面層をよく追従させ得る。
ウレタン樹脂の原料としては特に限定されず、公知のポリウレタン樹脂液を用いることができる。市販のポリウレタン樹脂液としては、例えば、「ハイドランWLS-201」(商品名、DIC社製)、「UCECOAT 7850」(商品名、ダイセル・オルネクス社製)を挙げられる。
【0021】
<パーフルオロポリエーテル構造とオキシアルキレン構造とを有する化合物>
表面層23は、不図示のパーフルオロポリエーテル構造(以降、「PFPE構造」ともいう)とオキシアルキレン構造(以降、「OR構造」ともいう)とを有する化合物(以降、「PFPE/OR化合物」と記載する場合がある)を更に含む。
オキシアルキレン構造は、オキシエチレン構造又はオキシプロピレン構造を含む。
PFPE/OR化合物は、PTFE粒子をウレタン樹脂中に分散させるための分散剤として機能する。PFPE/OR化合物によって、PTFE粒子を、表面層23の厚み方向に均一に存在させ得る。そのため、電子写真用ベルトの外表面には、新品の状態のときからPTFE粒子の少なくとも一部が露出しているか、または、画像形成の極めて初期の段階でPTFE粒子の少なくとも一部が露出する。そのため、使い始めたばかりの電子写真用ベルトであっても、その外表面とクリーニングブレードの如き当接部材との間の摺動性が高く、初期から安定した電子者写真画像の形成を行うことができる。
また、表面層の厚み方向にPTFE粒子が均一に存在しているため、電子写真用ベルトの外表面が、当接部材との摺擦により摩耗しても、外表面には常にPTFE粒子の少なくとも一部が露出した状態とすることができる。そのため、電子写真用ベルトの外表面と当接部材との優れた摺動性が長期に亘り維持される。
【0022】
PFPE/OR化合物において、PFPE構造の数平均分子量は500~10,000が好ましく、1,200~4,000がより好ましい。
PFPE構造としては、直鎖構造のみからなるものでも、分岐構造を一部有するものでもよい。PFPE構造の具体例としては、下記構造式(i)~(iv)で示される構造からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。
-CFO- (i)
-CFCFO- (ii)
-CFCFCFO- (iii)
-CF(CF)CFO- (iv)
【0023】
OR構造は、例えば、下記構造式(v)で示される構造を含む。

-[(CH)n-O]m- (v)

式(v)中、nは、例えば1~5の整数を示し、mは、1以上の整数を示す。
nの好ましい数としては、2~3である。
そして、オキシアルキレン構造の数平均分子量をMn1とし、パーフルオロポリエーテル構造の数平均分子量をMn2としたとき、(Mn1/Mn2)の値は、0.3~2.0が好ましく、0.5~1.0がより好ましい。ウレタン樹脂中にPTFE粒子をより均一に分散させることができる。
【0024】
PFPE/OR化合物としては、例えば、ポリアルキレンオキシドのアジド化合物と、パーフルオロポリエーテルのジインとの銅触媒の存在下での反応(アジド-アルキン環化付加反応)によって合成される三元共重合体を用いることができる。かかる三元共重合体の合成方法は、例えば、非特許文献1に記載されている。
【0025】
<表面層の形成方法>
表面層23の製造方法としては、例えば、ウレタン樹脂23-1の原料、PTFE粒子23-2及びPFPE構造とオキシアルキレン構造とを有する化合物を含む表面層用塗料を、塗布して、弾性層22上に表面層塗料の塗膜を形成する。
塗布の方法としては、スプレー法や浸漬法の如き公知の方法を採用しうる。
次いで、該塗膜を加熱や電子線、紫外線の如き放射線の照射により硬化することによって形成することができる。
【0026】
(電子写真画像形成装置)
図1を用いて本実施形態に係る電子写真用ベルトを中間転写ベルトとして用いた電子写真画像形成装置の例について説明する。図1に示す電子写真画像形成装置100は、カラー電子写真画像形成装置(カラーレーザープリンタ)である。この電子写真画像形成装置には、中間転写体である中間転写ベルト7の平坦部分に沿って、その移動方向に順にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成ユニット(Py、Pm、Pc、Pk)が配設されている。各色の画像形成ユニットは、各々電子写真感光体(1Y、1M、1C、1K)、帯電ローラ(2Y、2M、2C、2K)、レーザー露光装置(3Y、3M、3C、3K)、及び現像器(4Y、4M、4C、4K)を具備している。また、電子写真画像形成装置100は、、中間転写ベルト7を挟んで感光体の各々に対向する位置に1次転写ローラ(5Y、5M、5C、5K)を具備している。各画像形成ユニットの基本的な構成は同一であるので、画像形成ユニットの詳細については、イエロー画像形成ユニットPyについて説明する。
【0027】
イエロー画像形成ユニットPyは、像担持体としてドラム型の電子写真感光体(以下、「感光ドラム」又は「第1の画像担持体」とも称する)1Yを有する。感光ドラム1Yは、アルミニウム製のシリンダを基体として、その上に電荷発生層、電荷輸送層及び表面保護層を順に積層して形成したものである。
また、イエロー画像形成ユニットPyは、帯電手段としての帯電ローラ2Yを備えている。帯電ローラ2Yに帯電バイアスを印加することで、感光ドラム1Yの表面は一様に帯電される。
【0028】
感光ドラム1Yの上方には、画像露光手段としてのレーザー露光装置3Yが配設されている。レーザー露光装置3Yは、一様に帯電された感光ドラム1Yの表面を画像情報に応じて走査露光して、イエロー色成分の静電潜像をその感光ドラム1Yの表面に形成する。感光ドラム1Yに形成された静電潜像は、現像手段としての現像器4Yによって現像剤であるトナーによって現像される。現像器4Yは、現像剤担持体である現像ローラ4Ya、現像剤量規制部材である規制ブレード4Ybを備えており、また現像剤であるイエロートナーを収容している。イエロートナーが供給された現像ローラ4Yaは、現像部において感光ドラム1Yと軽圧接されており、感光ドラム1Yと順方向に速度差を持って回転される。現像ローラ4Yaによって現像部に搬送されたイエロートナーは、現像ローラ4Yaに現像バイアスを印加することで、感光ドラム1Yに形成された静電潜像に付着する。これにより、感光ドラム1Yに可視像(イエロートナー画像)が形成される。
【0029】
中間転写ベルト7は、駆動ローラ71、テンションローラ72、従動ローラ73に張架されており、感光ドラム1Yと接触して図中矢印の方向に移動(回転駆動)される。1次転写部Tyに到達した感光ドラム上(第1の画像担持体上)のイエロートナー画像は、中間転写ベルト7を介して感光ドラム1Yに対向して配置されている1次転写体(1次転写ローラ5Y)によって中間転写ベルト7上に1次転写される。
【0030】
イエロートナー画像と同様に、マゼンタ(M)トナー画像、シアン(C)トナー画像、ブラック(K)トナー画像が、中間転写ベルト7の移動に伴って、1次転写部(Tm、Tc、Tk)において中間転写ベルト7上に転写される。こうして中間転写ベルト7上に転写された4色のトナー画像は、中間転写ベルト7の移動に従って搬送される。そして、2次転写部T’において、2次転写手段としての2次転写外ローラ8及び2次転写内ローラ73により、所定のタイミングで搬送されてくる転写材S(以下、「第2の画像担持体」とも称する)上に一括転写される。このような2次転写においては通常十分な転写率を確保するために数kVの転写電圧を印加する。
【0031】
転写材Sは、転写材Sが収納されているカセット12から、ピックアップローラ13によって搬送路に供給される。搬送路に供給された転写材Sは、搬送ローラ対14及びレジストローラ対15によって中間転写ベルト7に転写された4色のトナー画像と同期をとられて2次転写部T’まで搬送される。
転写材Sに転写されたトナー画像は、定着器9によって定着されて、例えばフルカラーの画像となる。定着器9は、加熱手段を備えた定着ローラ91と加圧ローラ92とを有し、転写材S上の未定着トナー画像を加熱、加圧することで定着する。その後、転写材Sは搬送ローラ対16、排出ローラ対17などによって機外に排出される。
【0032】
中間転写ベルト7のクリーニングユニット11が、中間転写ベルト7の駆動方向の2次転写部T’の下流に配設されており、2次転写部T’において転写材Sに転写されずに中間転写ベルト7に残った転写残トナーを除去する。なお、図1に示したクリーニングユニット11の例は、クリーニング部材として、中間転写ベルト7の外周面に接して配置されてなるクリーニングローラを具備しているものである。但し、本開示に係る電子写真画像形成装置におけるクリーニング部材は、かかる形態に限定されるものではない。例えば、図3に示すように、中間転写ベルト7の外周面に少なくとも一部が接するように配置されてなるクリーニングブレード32をクリーニング部材として具備するものであることができる。
以上説明したように感光体から中間転写ベルト、中間転写ベルトから転写材へトナー画像の電気的転写プロセスが繰り返し行われる。また、多数の転写材へ記録を繰り返すことで電気的転写プロセスが更に繰り返し行われることになる。
【実施例
【0033】
(基層形成用樹脂ペレット体の作製)
下記表1に記載の材料を、2軸混練機(商品名:PCM30、(株)池貝製)を用いて混練し、樹脂ペレット体を得た。
【0034】
【表1】
【0035】
(弾性層形成用樹脂ペレット体の作製)
下記表2に記載の材料を、2軸混練機(商品名:PCM30、(株)池貝製)を用いて混練し、樹脂ペレット体を得た。
【0036】
【表2】
【0037】
なお、「Pluronic F-127」は、下記構造式で示される非イオン性界面活性剤である。なお、下記構造式中、a、b及びcは各々1以上の整数である。
HO-(CHCHO)a-(CH(CH(CH)O)b-(CHCHO)c-H
【0038】
(基層と弾性層とからなる2層ベルトの作製)
上記で調製した基層形成用樹脂ペレット体、及び弾性層形成用樹脂ペレット体を用いて2層構成の積層ベルトを共押出により作製した。
具体的には、2台の単軸押出機(商品名:GT40、(株)プラスチック工学研究所製)を用意した。これらの単軸押出機を共押出用の円筒ダイに接続した。そして、各々の短軸押出機に基層形成用樹脂ペレット体、及び弾性層形成用樹脂ペレット体を入れ、円筒ダイから基層形成用樹脂、及び弾性層形成用樹脂を共押出しした。このようにして、内層がポリフッ化ビニリデン、外層が熱可塑性ポリウレタンであり、幅が460mmである、エンドレス形状の積層ベルトを得た。
【0039】
(弾性層の表面改質)
弾性層と表面層との接着性を向上させるため、弾性層の外周面に、エキシマUV照射ユニットとして172nmの単一波長を発するエキシマランプ((株)エム・ディ・コム製)を用いて紫外線を照射して、表面改質を行った。具体的には、該積層ベルトを円柱状中子に嵌め、エキシマランプ表面から1mmの距離に存在する中子を5rpmの回転速度で回転させながら、窒素ガスを流入させた空間内で30分間照射を行った。
【0040】
(PFPE共重合体の調製)
・PFPE共重合体Aの調製
直鎖パーフルオロポリエーテルの両末端に-CH-OHを有する原料パーフルオロポリエーテル((商品名:Fluorolink D10H、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、数平均分子量1200) 16.7mmolを、水酸化ナトリウム3.2gを溶かしたアセトニトリル80ml、テトラヒドロフラン 80mlの混合溶媒中に滴下した。次いで、窒素雰囲気下、温度55℃に加温した。窒素雰囲気を維持したまま攪拌しながら3-ブロモ-1-プロピンの80%トルエン溶液を10ml加えた。そして、温度55℃にて3日間反応させた。次いで、得られた反応液を室温(温度25℃)に冷却し、孔径7μmのろ紙で固形物を除去した。得られた溶液から溶媒を除去し、減圧オーブンを用いて温度100℃、圧力1Paで6時間乾燥させた。次いで、粒子保持能が0.22μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルターでフィルタリングを行い下記構造式で示される化合物S1を得た。
【0041】
【化1】
【0042】
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量2000) 1mmolを、ジクロロメタン(超脱水) 25mlとトリエチルアミン 1.5moの混合溶液中に加えた。この溶液中にさらにp-トルエンスルホニルクロリド1.91gを加え、窒素置換して、温度25℃で2日間攪拌した。得られた溶液をイオン交換水で2回洗浄し、有機層を取り出し、硫酸マグネシウムを加えて脱水した。次いで、孔径7μmのろ紙で固形物を除去し、得られた溶液から溶媒を除去した。得られた固形物をジクロロメタンに溶かし、ジエチルエーテルを加えて再沈殿させる工程を2回行って、下記構造式で示される化合物T1を得た。
【0043】
【化2】
【0044】
化合物T1、0.5mmolの上記化合物T1を、N,N-ジメチルホルムアミド40mlに溶解し、アジ化ナトリウム0.325gを加え、温度25℃で2日間攪拌した。反応液にジクロロメタンと水を入れ、有機層を取り出しイオン交換水で3回洗浄した。洗浄した有機層に硫酸マグネシウムを加え脱水した後、孔径7μmのろ紙で固形物を除去し、得られたろ液から溶媒を除去した。得られた固形物をジクロロメタンに溶かし、ジエチルエーテルを加えて再沈殿させ工程を2回行って、下記構造式の化合物U1を得た。
【0045】
【化3】
【0046】
0.42mmolの化合物S1、及び0.84mmolの化合物U1をN,N-ジメチルホルムアミド20mlに加え、攪拌しながら30分間窒素置換を行った。更に、臭化銅(I)を6.0mg、及びN,N,N′,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミンを7.0mg窒素置換した状態で加え、温度25℃で24時間攪拌した。得られた溶液に、温度5℃のジエチルエーテルを滴下し、固形物を濾別した。温度25℃、圧力1Paで24時間乾燥させ、化学構造式(1)で示すPEG-PFPE-PEG共重合体Aを調製した。
なお、PFPEとはパーフルオロポリエーテルの略称、PEGとはポリエチレングリコールの略称である。
【0047】
【化4】
(p、m、nは各繰り返し構造単位の数を示す正の整数である。特に元素記号の記載がない部分は炭素原子と水素原子のみで構成されている。)
【0048】
・PFPE共重合体Bの調製
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量2000)をポリ(プロピレングリコール)モノブチルエーテル(分子量2000)に変えた以外はPFPE共重合体Aと同様にしてPFPE共重合体Bを調製した。

・PFPE共重合体Cの調製
直鎖パーフルオロポリエーテルの両末端に-CH-OHを有する原料パーフルオロポリエーテルとして、「Fomblin Z-DOL4000」(商品名、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、数平均分子=4000)に変えた以外はPFPE共重合体Aと同様にしてPFPE共重合体Cを作製した。

・PFPE共重合体Dの調製
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量2000)を、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量1000)に変えた以外はPFPE共重合体Aと同様にしてPFPE共重合体Dを作製した。

・PFPE共重合体Eの調製
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量2000)を、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量4000)に変えた以外はPFPE共重合体Cと同様にしてPFPE共重合体Eを作製した。

PFPE共重合体A~Eの一覧を表1に示した。
【0049】
【表3】
【0050】
(表面層用塗料の調製)
・PTFE分散液I-Aの調製
表面層用塗料を調製する前段階として、PTFE分散液I-Aを調製した。具体的には、下記表4に記載の材料をホモジナイザーでプレ混合後、高圧ホモジナイザーで分散処理をしてPTFE分散液I-Aを得た。
【0051】
【表4】
【0052】
・PTFE分散液I-B~I-Eの調製
表5に示すPFPE共重合体を分散剤として使用した以外はPTFE分散液I-Aと同様に分散液を作製し、PTFE分散液I-B~I-Eを得た。
【0053】
【表5】
【0054】
・表面層用塗料1-Aの調製
PTFE分散液I-Aとポリウレタン樹脂液(商品名:ハイドランWLS-201、DIC(株)製 固形分比率35%、25℃における粘度 150mPa・s)とを以下の比率で混合し、表面層用塗料1-Aを得た。
・PTFE分散液I-A 30質量部
・ポリウレタン樹脂液 70質量部
【0055】
・表面層用塗料1-Bの調製
PTFE分散液I-AをPTFE分散液I-Bに変えた以外は表面層用塗料1-Aと同様にして表面層用塗料1-Bを得た。

・表面層用塗料1-Cの調製
PTFE分散液I-AをPTFE分散液I-Cに変えた以外は表面層用塗料1-Aと同様にして表面層用塗料1-Cを得た。

・表面層用塗料1-Dの調製
PTFE分散液I-AをPTFE分散液I-Dに変えた以外は表面層用塗料1-Aと同様にして表面層用塗料1-Dを得た。

・表面層用塗料1-Eの調製
PTFE分散液I-AをPTFE分散液I-Eに変えた以外は表面層用塗料1-Aと同様にして表面層用塗料1-Eを得た。
【0056】
・表面層用塗料2-Aの調製
ポリウレタン樹脂液を、「UCECOAT 7850」(商品名、ダイセル・オルネクス社製)に変えた以外は表面層用塗料1-Aと同様にして表面層用塗料2-Aを調製した。
なお、「UCECOAT 7850」は、下記物性を備えたディスパーションタイプの水分散樹脂である。
・固形分比率35%、・平均粒子径100nm未満、・25℃における粘度200mPa・s、・重量平均分子量10,000。
【0057】
・表面層用塗料3-Aの調製
PTFE分散液として「Fluon PTFE AD915E」(商品名、AGC社製)を使用し、ポリウレタン樹脂液(商品名:ハイドランWLS-201、DIC(株)製固形分比率30%)を以下の比率で混合して表面層用塗料3-Aを調製した。なお、「Fluon PTFE AD915E」の固形分比率は、61%、PTFE粒子の平均粒子径は0.25μm、温度23℃における粘度は19mPa・sであった。また、「Fluon PTFE AD915E」に含まれているPTFE粒子の分散剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルであった。すなわち、パーフルオロポリエーテル構造を有さないものであった。

・PTFE分散液 20質量部
・ポリウレタン樹脂液 80質量部
【0058】
(実施例1)
上記で作製した弾性層の外周面が表面改質された積層ベルトを中子に嵌め、90rpmで回転させながら、スプレーガン(商品名:W-101、アネスト岩田(株)製)を用いて弾性層の外周面上に表面層用塗料1-Aを塗布した。塗布時の塗料の吐出量は、表面層用塗料1-Aの塗膜の乾燥膜厚が3μmとなるように設定した。表面層用塗料1-Aの塗膜が形成された積層ベルトを加熱炉中で、温度130℃で30分間加熱した。その後、加熱炉から取出して、電子写真用ベルト1を得た。
【0059】
得られた電子写真用ベルト1を、中間転写ベルトとして電子写真画像形成装置(商品名:imageRUNNER ADVANCE C7580;キヤノン社製)に装着し、下記の条件で連続して3万枚の電子写真画像を形成した。
・温度:23℃、相対湿度:50%
・使用した紙:GF-C081 A3サイズ(坪量81.4g/m、厚さ 97μm、白色度 約100%、キヤノン(株)製)
・印刷画像:中間転写ベルト上へのCMYKトナーの載り量がそれぞれ0.4mg/cm、画像比率100%
評価は以下の2点について行った。
【0060】
[(評価1)クリーニングユニット部の異音・めくれ]
3万枚の画像形成過程において、転写ユニットのクリーニングユニット部(以下CLN部と表記)から通常の印刷では発生しない音が聞こえた場合、異音発生とした。
また、図3に示すように、ブレード保持部材31はクリーニングブレード32の上側面32aを保持する。通常は、クリーニングブレード32の上側面32aとは反対側の下側面32bの先端付近が中間転写ベルト7の外周面に接触し、中間転写ベルト7が矢印34の方向に進行している間、中間転写ベルト7の外周面をクリーニングしている。クリーニングブレード32の上側面32aの先端付近が中間転写ベルト7の外周面に接触する状態となったとき「ブレードがめくれた」と判断した。これらの観察結果を下記基準で評価した。
ランクA:異音の発生もブレードのめくれも観察されなかった。
ランクB:異音の発生、およびブレードのめくれのいずれかが観察された。
【0061】
[(評価2)電子写真用ベルトの外表面]
3万枚印刷後に電子写真画像形成装置から電子写真用ベルトを取り出し、その外表面の全面をクリーニングワイパー(商品名:ダスパーμ;小津産業社製)を用いてクリーニングを行った。その後、外表面を光学顕微鏡で倍率50倍、倍率200倍及び倍率1000倍にて観察し、下記の基準によって評価した。
ランクA:最大フェレ径が20μm以上のトナーの塊を確認しなかった。
ランクB:最大フェレ径が20μm以上のトナーの塊を確認した。
【0062】
(実施例2~5)
表6に示す表面層用塗料を用いた以外は実施例1と同様にして電子写真用ベルト2~5を作製し、評価した。
【0063】
(実施例6)
表面層用塗料2-Aを用いた以外は、実施例1と同様にして積層ベルトの外周面上に表面層用塗料2-Aの塗膜を形成した。次いで、表面層用塗料2-Aの塗膜に対して、高圧水銀ランプを用いて波長365nmの紫外光を積算光量2J/cmとなるように照射して該塗膜を硬化させ、本実施例に係る電子写真用ベルト6を作製した。得られた電子写真用ベルト6を実施例1と同様に評価した。
【0064】
(比較例1)
表面層用塗料1-Aを表面層用塗料3-Aに変えた以外は実施例1と同様に電子写真用ベルトを作製し、評価を行った。評価結果を表6に示した。
【0065】
【表6】
【0066】
表6に示した評価結果からパーフルオロポリエーテル構造と、オキシアルキレン構造とを有する化合物を使用することによってクリーニングユニット部での不具合やITB表面へのトナーの固着が発生しないことがわかった。パーフルオロポリエーテル構造と、オキシアルキレン構造とを有する化合物を含有する表面層中のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子の分散状態が良いためと推定される。PTFE粒子の分散状態が良いと、多量の紙に印字を行った結果、電子写真用ベルトの表面層が少し削れて、より弾性層に近い部分が最表面となっても、PTFE粒子の分散状態が変化しないためトナー離型性やクリーニング性が変化しないものと推定される。
【符号の説明】
【0067】
Py:イエロー画像形成部
Pm:マゼンタ画像形成部
Pc:シアン画像形成部
Pk:ブラック画像形成部
1Y:イエロー感光ドラム
1M:マゼンタ感光ドラム
1C:シアン感光ドラム
1K:ブラック感光ドラム
4Y:イエロー現像装置
4M:マゼンタ現像装置
4C:シアン現像装置
4K:ブラック現像装置
5Y、5M、5C,5K:1次転写ローラ
Ty、Tm、Tc、Tk:1次転写部
73:2次転写内ローラ
100:画像形成装置
2Y、2M、2C、2K:帯電器
3Y、3M、3C、3K:レーザスキャナ
11:転写ベルトクリーニングユニット
12:給紙カセット
15:レジストローラ対
7:中間転写ベルト
8:2次転写外ローラ
9:定着器
91:定着フィルム
92:加圧ローラ
S:転写材
21:基層
22:弾性層
23:表面層

図1
図2
図3