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特許7604314画像読取装置、画像読取システム、画像読取装置の制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】画像読取装置、画像読取システム、画像読取装置の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
H04N1/00 002C
H04N1/00 127A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021074087
(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公開番号】P2022168547
(43)【公開日】2022-11-08
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 尚樹
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-212985(JP,A)
【文献】特開2020-191557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00 - 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿をラインごとにスキャンして得られたラインデータを順次バッファに格納し、格納した前記ラインデータをラインごとに順次ホストコンピュータに送信することで原稿画像データを送信するように構成された画像読取装置であって、
前記ホストコンピュータから受信したスキャンのコマンドに応じた処理を実行中に、前記画像読取装置の装置状態が正常でないことを検知した場合、エラーが発生したことを通知するための通知画像データを含む原稿画像データを前記ホストコンピュータに送信するように制御する制御手段を有
前記画像読取装置は、前記バッファに前記ラインデータを格納するごとに、格納した前記ラインデータを前記ホストコンピュータに送信するように構成され、
前記制御手段は、
前記画像読取装置の装置状態が正常でないことを検知した時点で前記通知画像データを前記バッファに格納し、
画像読取装置の装置状態が正常でないことを検知した時点までに前記ホストコンピュータに送信した前記ラインデータに続けて、前記バッファに格納した前記通知画像データを送信する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
原稿をラインごとにスキャンして得られたラインデータを順次バッファに格納し、格納した前記ラインデータをラインごとに順次ホストコンピュータに送信することで原稿画像データを送信するように構成された画像読取装置であって、
前記ホストコンピュータから受信したスキャンのコマンドに応じた処理を実行中に、前記画像読取装置の装置状態が正常でないことを検知した場合、エラーが発生したことを通知するための通知画像データを含む原稿画像データを前記ホストコンピュータに送信するように制御する制御手段を有し、
前記画像読取装置は、前記スキャンのコマンドに応じた処理が完了した時点で、前記バッファに格納されている複数の前記ラインデータをラインごとに順次前記ホストコンピュータに送信するように構成され、
前記制御手段は、前記通知画像データを構成する前記ラインデータを前記ホストコンピュータに順次送信した後に、前記バッファに格納されている前記ラインデータの送信を開始する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
前記画像読取装置は、前記バッファに前記ラインデータを格納するごとに、格納した前記ラインデータを前記ホストコンピュータに送信するように構成され、
前記制御手段は、
前記画像読取装置の装置状態が正常でないことを検知した時点で前記通知画像データを前記バッファに格納し、
画像読取装置の装置状態が正常でないことを検知した時点までに前記ホストコンピュータに送信した前記ラインデータに続けて、前記バッファに格納した前記通知画像データを送信する、
ことを特徴とする請求項に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記画像読取装置のスキャナセンサにエラーが発生したことを検知した場合、前記通知画像データを含む原稿画像データを前記ホストコンピュータに送信する制御を実行する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記画像読取装置のモータにエラーが発生したことを検知した場合、前記通知画像データを含む原稿画像データを前記ホストコンピュータに送信する制御を実行する、
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記画像読取装置のロック部材がロック受け口に挿し込まれていることによるエラーが発生したことを検知した場合、前記通知画像データを含む原稿画像データを前記ホストコンピュータに送信する制御を実行する、
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記制御手段は、電気回路の異常によるエラーが発生したことを検知した場合、前記通知画像データを含む原稿画像データを前記ホストコンピュータに送信する制御を実行する、
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像読取装置と、ホストコンピュータと、有する画像読取システムであって、
前記ホストコンピュータは、前記画像読取装置に送信した前記スキャンのコマンドに応じて受信した前記原稿画像データに基づく画像を表示手段に表示させることを特徴とする画像読取システム。
【請求項9】
原稿をラインごとにスキャンして得られたラインデータを順次バッファに格納し、格納した前記ラインデータをラインごとに順次ホストコンピュータに送信することで原稿画像データを送信するように構成された画像読取装置を制御するための方法であって、
前記ホストコンピュータから受信したスキャンのコマンドに応じた処理を実行中に、前記画像読取装置の装置状態が正常でないことを検知した場合、エラーが発生したことを通知するための通知画像データを含む原稿画像データを前記ホストコンピュータに送信するように制御する制御ステップを含
前記画像読取装置は、前記バッファに前記ラインデータを格納するごとに、格納した前記ラインデータを前記ホストコンピュータに送信するように構成され、
前記制御ステップにおいて、
前記画像読取装置の装置状態が正常でないことを検知した時点で前記通知画像データを前記バッファに格納し、
画像読取装置の装置状態が正常でないことを検知した時点までに前記ホストコンピュータに送信した前記ラインデータに続けて、前記バッファに格納した前記通知画像データを送信する、
ことを特徴とする画像読取装置を制御するための方法。
【請求項10】
原稿をラインごとにスキャンして得られたラインデータを順次バッファに格納し、格納した前記ラインデータをラインごとに順次ホストコンピュータに送信することで原稿画像データを送信するように構成された画像読取装置を制御するための方法であって、
前記ホストコンピュータから受信したスキャンのコマンドに応じた処理を実行中に、前記画像読取装置の装置状態が正常でないことを検知した場合、エラーが発生したことを通知するための通知画像データを含む原稿画像データを前記ホストコンピュータに送信するように制御する制御ステップを含み、
前記画像読取装置は、前記スキャンのコマンドに応じた処理が完了した時点で、前記バッファに格納されている複数の前記ラインデータをラインごとに順次前記ホストコンピュータに送信するように構成され、
前記制御ステップにおいて、前記通知画像データを構成する前記ラインデータを前記ホストコンピュータに順次送信した後に、前記バッファに格納されている前記ラインデータの送信を開始する、
ことを特徴とする画像読取装置を制御するための方法。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1乃至7何れか1項に記載の画像読取装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像読取装置に関連する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二次元コードが画像読取装置のディスプレイに表示され、ユーザがこの二次元コードを携帯電話で読み取ることで画像読取装置のエラーを確認できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-124648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、画像読取処理における操作性の向上が求められている。
【0005】
本開示の技術は、画像読取装置の状態をユーザが容易に確認できるようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る画像読取装置は、原稿をラインごとにスキャンして得られたラインデータを順次バッファに格納し、格納した前記ラインデータをラインごとに順次ホストコンピュータに送信することで原稿画像データを送信するように構成された画像読取装置であって、前記ホストコンピュータから受信したスキャンのコマンドに応じた処理を実行中に、前記画像読取装置の装置状態が正常でないことを検知した場合、エラーが発生したことを通知するための通知画像データを含む原稿画像データを前記ホストコンピュータに送信するように制御する制御手段を有前記画像読取装置は、前記バッファに前記ラインデータを格納するごとに、格納した前記ラインデータを前記ホストコンピュータに送信するように構成され、前記制御手段は、前記画像読取装置の装置状態が正常でないことを検知した時点で前記通知画像データを前記バッファに格納し、画像読取装置の装置状態が正常でないことを検知した時点までに前記ホストコンピュータに送信した前記ラインデータに続けて、前記バッファに格納した前記通知画像データを送信する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、画像読取装置の状態をユーザが容易に確認できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】画像読取装置の一例を模式的に示した図である。
図2】画像読取装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】画像読取装置の一部を示したブロック図である。
図4】ハードモジュールを制御する制御プログラムのソフトウェア構成図である。
図5】ホストコンピュータと画像読取装置が接続されたシステムの構成図である。
図6】スキャン処理を示したフローチャートの一例である。
図7】ホストコンピュータに送信する説明画像データの画像を示した図である。
図8】スキャン処理を示したフローチャートの一例である。
図9】ホストコンピュータに送信する通知画像データの画像を示した図の一例である。
図10】スキャン処理を示したフローチャートの一例である。
図11】ホストコンピュータに送信する通知画像データの画像を示した図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の技術を実施するための形態について図面を用いて説明する。尚、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0010】
[実施形態1]
<画像読取装置について>
以下、図面を参照して本開示の技術に係る実施形態1について説明する。図1は、本実施形態に係る画像読取装置の一例を模式的に示した図である。図1(a)は、画像読取装置100の外観斜視図である。図1(b)は、画像読取装置100の側面断面図である。図1(c)は、画像読取装置100の上面断面図である。
【0011】
まず、画像読取装置100の外観について説明する。画像読取装置100は、原稿台101と、原稿台カバー102と、を備えている。そして、原稿台101には、スキャンの対象となる原稿119をセットすることができる。原稿台カバー102は、原稿119を押さえて原稿台101に固定することができる圧板であり、外光の影響を軽減することができる。更に、原稿台カバー102は、ヒンジ116を介して基準側壁133と連結されており、開閉自在に設けられている。
【0012】
続いて、画像読取装置100の内部について説明する。原稿台カバー102には、原稿以外の部分が白画像として形成されるように白色シート103が取り付けられており、原稿台101には、コンタクトガラス115が設けられている。画像読取装置100で原稿119をスキャンする場合には、原稿台カバー102を閉じて、原稿119を原稿台カバー102と、コンタクトガラス115とで挟む。そして、コンタクトイメージセンサ(以下、CISという)ユニット117が移動しながら原稿119をスキャンする。原稿119をスキャンすることにより、原稿119のスキャン画像を得ることができる。原稿119を原稿台カバー102によってコンタクトガラス115に押圧することによって、CISユニット117と、原稿119との間の距離を一定に保つことができる。
【0013】
CISユニット117は、光を発生して原稿119を照らすLED導光体ユニット111と、光電変換により電気信号を発生するイメージセンサアレイ113とを備えている。LED導光体ユニット111から発生した光は、原稿119にあたり反射され、ロッドレンズアレイ112によってイメージセンサアレイ113へと導かれる。イメージセンサアレイ113は、入射光に対して光電変換を行い、電流として出力できるセンサが±x方向の主走査方向に一次元に並んだ構成となっている。画像読取装置100は、イメージセンサアレイ113を構成している各センサから、センサの配置順に出力を得てA/D変換する。
【0014】
また、CISユニット117は、ロック部材140が挿し込まれるロック受け口141を備えている。CISユニット117がホームポジション120に配置されている場合、ユーザは、画像読取装置100のフレーム118に設けられたロック部材140をロック受け口141に挿し込むことができる。その結果、CISユニット117はホームポジション120の位置に固定されることになり、移動が規制される。ホームポジション120は、CISユニット117の基準位置であり、動作待機中にCISユニット117を停止させ待機させる位置である。基準位置マーク114とフレームの基準側壁133とは、原稿台101に搭載された原稿119のy方向における位置を画像読取装置100が認識するための基準として用いられる。図1(c)に示した画像読取装置100は、原稿119に対してスキャンを実行している状態を示しているため、CISユニット117は、ホームポジション120以外の位置にある。また、図1(b)と、図1(c)とでは、CISユニット117は別々の位置にある状態を示している。
【0015】
<画像読取装置のハードウェア構成>
図2は、画像読取装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。画像読取装置100は、制御部201と、スキャナ部210と、UI(User Interface)部211とを備える。そして、制御部201は、CPU202と、RAM203と、ROM204と、画像処理部205と、バス206と、スキャナ部I/F207と、UI部I/F208と、USB I/F209とを備える。
【0016】
制御部201は、バス206で各部の情報を仲介することで、画像読取装置100全体の動作を制御する。CPU202は、スキャナ部210でスキャンした原稿119のデジタル画像データをRAM203に記憶する。また、CPU202は、ROM204に記憶された制御プログラムをRAM203に展開し、必要な時に読み出して各種制御を行う。そして、CPU202は、デジタル画像データがホストコンピュータ212に転送されたことを確認すると、RAM203に記憶されたデジタル画像データを削除する。全てのデジタル画像データの転送と、削除とが終了することで、ホストコンピュータ212から依頼されたスキャン動作も終了する。RAM203は、CPU202の主記憶メモリであり、ワークエリアやROM204に記憶された各種プログラムを展開する為の一時記憶領域として用いられる。また、RAM203には、スキャナ部210で読み取ったデジタル画像データが記憶される。ROM204は、所定の画像データ、各種プログラムおよび各種設定情報を記憶する。本実施形態ではROM204としてフラッシュストレージなどを想定しているが、ハードディスクなどの補助記憶装置でもよい。尚、後述する説明画像データ(図7)、および通知画像データ(図9および図11)は、例えば、ユーザの操作を受け付ける前からROM204に記憶されている。尚、画像読取装置100は、1つのCPU202が1つのメモリ(RAM203)を用いて後述するフローチャートに示す各処理を実行するが、他の様態であってもよい。例えば、複数のCPUや複数のRAM、ROMおよびストレージを協働させて後述するフローチャートに示す各処理を実行してもよい。また、ハードウェア回路を用いて一部の処理を実行してもよい。
【0017】
画像処理部205は、スキャン動作によって得られたデジタル画像データに画像処理または補正を行う場合に使用される。画像処理部205は、主に、RAM203に展開された制御プログラムによる画像処理または補正では時間が掛かってしまうような処理を、ハード機能で処理する場合に用いられる。スキャナ部I/F207は、スキャナ部210と、制御部201とを接続するインターフェースである。UI部I/F208は、UI部211と、制御部201とを接続するインターフェースである。USB I/F209は、画像読取装置100と、情報処理装置であるホストコンピュータ212とを接続するインターフェースであり、画像読取装置100と、ホストコンピュータ212との通信を制御する。例えば、ホストコンピュータ212からUSBケーブルを経由してスキャン動作命令が依頼された場合、USB I/F209が依頼信号を受け取り、RAM203に記憶する。スキャナ部210は、画像読取装置100にセットされた原稿119をスキャンしてデジタル画像データを生成し、制御部201のスキャナ部I/F207を介してRAM203に転送する。UI部211は、高価な構成においては、タッチパネル機能を有する液晶表示部や操作キーなどが備えられ、ユーザの操作を受け付ける受付部として機能する。UI部211は、安価な構成においては、プッシュスキャンを行うための操作キーしか備えられていないこともある。本実施形態の画像読取装置100は安価な構成であると仮定して、以下、説明する。
【0018】
<画像読取装置のブロック図>
図3は、画像読取装置100全体のブロック図の一部であり、スキャン動作を実行してデジタル画像データを形成する際に使用する部分を示したブロック図である。
【0019】
スキャナ部210は、センサ制御部301と、点灯制御部302と、駆動モータ制御部303とを備える。センサ制御部301は、前述のイメージセンサアレイ113の動作を制御する。点灯制御部302は、前述のLED導光体ユニット111の点灯を制御する。スキャナ部I/F207は、A/D変換回路311と、スキャナ制御回路312とを備える。A/D変換回路311は、センサ制御部301から取得したアナログデータをデジタル変換する。スキャナ制御回路312は、後述するスキャナ制御モジュール411によって駆動モータ制御部303を制御してモータを駆動させる。RAM203内には、スキャン画像データ保管領域322および制御プログラム展開領域323が設けられている。
【0020】
<画像読取装置のソフトウェア構成図>
図4は、画像読取装置100のRAM203に展開された、各ハードモジュールを制御する制御プログラムのソフトウェア構成図である。制御プログラムは、アプリケーション400と、ハードウェア制御モジュール410と、画像読取装置100のオペレーティングシステム420とを備える。アプリケーション400は、機能管理アプリケーション401と、ジョブ管理アプリケーション402とを備える。ハードウェア制御モジュール410は、物理的なデバイスとのI/Fを制御するソフトウェア群を備える。例えば、ハードウェア制御モジュール410は、スキャナ制御モジュール411と、I/F制御モジュール412と、UI制御モジュール413とを備える。尚、ハードウェア制御モジュール410は、必要に応じてこれら以外の制御モジュールを備えていてもよい。オペレーティングシステム420は、前述の制御部201で制御プログラムを実行する基本的な機能を提供する。
【0021】
以下、原稿をスキャンする場合における各ソフトウェアの機能について説明する。アプリケーション400は、ハードウェア制御モジュール410を介して各デバイスを動作させる。例えば、I/F制御モジュール412から入力された情報が解析され、当該情報がスキャン動作命令である場合、スキャンを実行するための機能管理アプリケーション401が実行される。機能管理アプリケーション401は、スキャンジョブをジョブ管理アプリケーション402にて実行する。ジョブ管理アプリケーション402は、ハードウェア制御モジュール410のスキャナ制御モジュール411を用いて、スキャナ部210によるスキャン動作を実行し、その結果取得したデジタル画像データをRAM203に記憶する。RAM203に記憶する際、何らかの画像処理または補正もしくはこの両方が必要な場合は、スキャナ制御モジュール411は、画像処理部205を用いて必要な処理を実行する。デジタル画像データは、RAM203に蓄積された後、I/F制御モジュール412を介してホストコンピュータ212に返送される。
【0022】
前述のイメージセンサアレイ113における各センサからの出力は、RAM203に記憶される。1列のイメージセンサアレイ113における各センサの出力は、ジョブ管理アプリケーション402によって指定された解像度によって、スキャンしたデータとして使用されるか否かが変化する。スキャン動作範囲が指定されると、スキャナ制御モジュール411は、まずイメージセンサアレイ113における主走査方向のスキャン動作範囲を指定する。これにより、イメージセンサアレイ113における出力のうち、どの範囲のセンサの出力が使用されるかが決定する。
【0023】
また、スキャナ制御モジュール411は、CISユニット117における駆動方向のスキャン動作範囲を指定する。これにより、CISユニット117が駆動方向のうちどれだけ移動しながらスキャンを行うかが決定する。スキャナ部210は、スキャナ部I/F207を介してスキャナ制御モジュール411からスキャン動作命令を受け取ると、LED導光体ユニット111を点灯する。そして、CISユニット117は、移動しながらコンタクトガラス115にセットされた原稿119をスキャンする。本実施形態のCISユニット117は、センサ部分が1列のイメージセンサアレイ113から構成されている。
【0024】
スキャナ制御モジュール411が、入射光をR(Red)、G(Green)、B(Blue)と変化させて各色に対応した出力を取得し、取得した出力を合成することで、カラーのデジタル画像データを取得する。その際、原稿119に対するスキャンの実行中に点灯色がR、G、Bと切り替わり、原稿119からの反射光はロッドレンズアレイ112を介してイメージセンサアレイ113へ導かれる。原稿119からの反射光がイメージセンサアレイ113に入射することで、各色に対応した出力が得られ、スキャナ制御モジュール411は得られた出力をRAM203に記憶する。
【0025】
スキャナ制御モジュール411は、画像処理部205を用いて得られた出力からデジタル画像データを生成する。コンタクトガラス115にセットされた原稿119のスキャンが完了し、原稿119のデジタル画像データの生成が終了すると、スキャナ制御モジュール411は、次の原稿のスキャンに向けてCISユニット117を待機位置に移動させる。
【0026】
以上が、原稿をスキャンする場合における各ソフトウェアの機能について説明である。
【0027】
<システム全体の構成>
図5は、ホストコンピュータ212と、画像読取装置100と、表示装置511とが接続されたシステム(画像読取システム)を示した構成図である。
【0028】
まず、各装置の構成について説明する。ホストコンピュータ212は、オペレーティングシステム501を備える。そして、オペレーティングシステム501は、アプリケーション502と、スキャナドライバ503とを備える。また、画像読取装置100は、USB I/F209を介してオペレーティングシステム501のスキャナドライバ503と接続されている。また、表示装置511は、オペレーティングシステム501のアプリケーション502と接続されている。
【0029】
次に、ホストコンピュータ212が備えるソフトウェアの機能について説明する。アプリケーション502は、オペレーティングシステム501上で動作するソフトウェアである。アプリケーション502は、所定のAPI(アプリケーションプログラムインターフェース)仕様504により、スキャナドライバ503にスキャン動作命令などの命令を送る。そして、アプリケーション502は、その命令のレスポンスとしてデジタル画像データおよび画像読取装置100の状態情報を受け取る。更にアプリケーション502は、スキャンされたデジタル画像データまたは状態情報を表示装置511に表示したり、スキャンされたデジタル画像データをファイルとしてホストコンピュータ212に記憶したりするなどの処理を行う。スキャナドライバ503は、オペレーティングシステム501上で動作するソフトウェアであり、アプリケーション502からの命令を受け取ると、所定の通信プロトコル505によりUSB I/F209を介して画像読取装置100と通信を行う。これにより画像読取装置100へのスキャン動作命令などの命令の送信、ならびに、画像読取装置100からのデジタル画像データおよび状態情報の受信を行うことができる。
【0030】
ところで、近年多く用いられているオペレーティングシステム標準のドライバソフトウェアは、画像読取装置100が備える個別のハードウェア構成に関する機能選択および状態表現などには対応していない。よって、このようなオペレーティングシステム標準のドライバソフトウェアがスキャナドライバ503として用いられる場合、スキャナドライバ503は適切に情報を得ることができない場合がある。即ち、スキャナドライバ503は、画像読取装置100の個別のハードウェア構成に対応する情報を、オペレーティングシステム標準のドライバソフトウェアで規定されているAPI仕様504および通信プロトコル505によって受信できないケースが発生する。
【0031】
尚、この点、画像読取装置100における一般的なハードウェア構成に関する機能選択および状態表現などであれば、当初よりオペレーティングシステムにインストールされている標準のドライバソフトウェアで対応できる。しかし、画像読取装置100固有の構成に関する機能選択および状態表現などとなると、専用のドライバソフトウェアを用いなければ対応できない。ここで、本実施形態の画像読取装置100が備えるロック部材140は、一般的に画像読取装置に備えられているハードウェア構成ではない。つまり、本実施形態のロック部材140は、オペレーティングシステム標準のドライバソフトウェアに非対応の部材である。このため、ロック部材140に関する機能選択および状態表現はオペレーティングシステム標準のドライバソフトウェアでは対応できない。ロック部材140がロック受け口141に挿し込まれている状態にユーザが気付かずに画像読取装置100を用いてスキャン作業を開始した場合、CISユニット117が動かずにエラーが発生する。この際、ユーザが画像読取装置100の状態を全く見ていないような場合、ユーザはエラーが発生したことに気付かないこともある。また、ユーザが、画像読取装置100固有の構成について詳しくない場合、エラーの原因を確認することができないおそれもある。
【0032】
そこで、本実施形態における画像読取装置100は、エラーが発生した場合、原稿画像データの代わりに、発生したエラーを図または文字などを用いて説明する画像である説明画像データをホストコンピュータ212に送信する。つまり、画像読取装置100は、原稿画像データを送信する仕組みと同様の仕組みで説明画像データをホストコンピュータ212に送信する。ホストコンピュータ212では、画像読取装置100から送信された画像データに基づいてスキャン画像のプレビュー表示を行うことで、説明画像データに基づく説明画像が表示装置511に表示されることになる。このように、ホストコンピュータ212側としては、送信されてきた画像データに基づく画像を表示する処理自体は、通常通りの処理となる。このため、ホストコンピュータ212側で専用のドライバソフトウェアに相当する仕組みを取り入れることなく、画像読取装置100から送信されてきた説明画像データに基づく説明画像を表示装置511に表示させることができる。
【0033】
<スキャン処理の流れについて>
本実施形態のスキャン処理について、図6を用いて説明する。図6は、画像読取装置100が制御部201で行うスキャン処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートによる処理は、画像読取装置100が有するROM204などに記憶されたプログラムコードがRAM203に展開され、CPU202によって実行される。尚、本フローチャートで説明する各種の変数は、RAM203に設けられる変数である。
【0034】
S601において、CPU202は、ユーザによって画像読取装置100の電源がオンされたことを検知する。S602において、CPU202は、画像読取装置100がユーザの操作を受け付ける状態(パワーオン状態)となるように画像読取装置100を起動するため処理であるパワーオン処理を開始する。
【0035】
S603において、CPU202は、正常にパワーオンできたか否かの判定を行う。例えば、CPU202は、公知のエラー検知手段を使用して、USBケーブルの接続エラーなどを検知することにより、正常にパワーオンできたか否かの判定を行う。正常にパワーオンできている場合は、S604へ進む。一方、正常にパワーオンできていない場合は、S605へ進む。
【0036】
S604において、CPU202は、画像読取装置100の状態を示す変数deviceConditionに、正常にパワーオンできたことを意味するNORMALを代入する。本ステップの処理が終わると、S609へ進む。
【0037】
S606において、CPU202は、発生したエラーがパワーオン処理においてロック部材140が挿し込まれ、CISユニット117が固定されていることで発生するエラー(以下、「ロックエラー」と呼ぶ)であるか否かの判定を行う。ロックエラーが発生している場合は、S607へ進む。一方、ロックエラーが発生していない場合は、S608へ進む。
【0038】
S607において、CPU202は、パワーオン処理中にロックエラーが発生したことを示す説明画像データ701の先頭アドレスを、画像データの参照に用いられる変数adrImgBufに格納する。ここで、本実施形態の説明画像データ701について、図7(a)を用いて説明する。図7(a)は、ロックエラーが発生した場合に、画像読取装置100からホストコンピュータ212に送信される説明画像データの一例を示した図である。この例は、ユーザがロックスイッチを左から右にスライドさせると、CISユニット117のロックが解除されることを示している。変数adrImgBufに説明画像データ701の先頭アドレスが格納されると、後述するS614の処理において、CPU202は、当該先頭アドレスのデータを画像ラインバッファに格納することになる。この結果、画像ラインバッファを読み出して、説明画像データ701をスキャン画像データとして表示装置511に表示させることができるようになる。詳細は、S614で説明する。S607の処理が終わると、S609に処理が進む。
【0039】
S608において、CPU202は、パワーオン処理中に電気回路の異常によるエラーが発生したことを示す説明画像データ702の先頭アドレスをスキャン画像データの記憶領域である変数adrImgBufに格納する。以下、電気回路の異常によるエラーを「電気回路エラー」と呼ぶ。例えば、電気回路エラーは、画像読取装置100と、ホストコンピュータ212とを接続するUSBケーブルが抜けていることなどによって発生する。ここで、本実施形態の説明画像データ702について、図7(b)を用いて説明する。図7(b)は、電気回路エラーが発生した場合に、画像読取装置100からホストコンピュータ212に送信される説明画像データの一例を示した図である。この例は、ユーザがUSBケーブルを接続し直すと、電気回路エラーが解決される可能性があることを示している。S608の処理が終わると、S609に処理が進む。
【0040】
S609でパワーオン処理が完了すると、S610で、CPU202は、スキャンを実行するコマンドを受信したか否かを判定する。当該判定は、スキャンを実行するコマンドを受信するまで繰り返し行われ、当該コマンドを受信するとS611へ進む。
【0041】
S611において、CPU202は、イメージセンサアレイ113から主走査方向のラインの出力データが出力されるごとにカウントアップするlineCountに初期値である1を代入する。そして、CPU202は、ユーザの指定した副走査方向の長さ情報を取得し、変数docLengthに設定する。
【0042】
S612において、CPU202は、deviceConditionがNORMALであるか否かの判定を行う。deviceConditionがNORMALである場合は、S613へ進む。一方、deviceConditionがNORMALでない場合は、S614へ進む。
【0043】
S613において、CPU202は、原稿119の副走査lineCountライン目の主走査方向1ラインの出力データを、RAM203内の画像ラインバッファに格納する。具体的には、CISユニット117が副走査方向に走査して、当該副走査方向のラインカウントに対応する主走査方向における原稿119の1ラインのスキャン画像データを、RAM203内の画像ラインバッファに格納する。つまり、本ステップは、画像読取装置100が原稿119をスキャンした際における通常のスキャン処理である。S613の処理が終わると、S615に処理が進む。なお、この処理により1ラインのスキャン画像データが順次バッファに格納される。
【0044】
S614において、CPU202は、変数adrImgBufの先頭アドレスに格納された説明画像データについて、副走査方向のラインカウントに対応する主走査方向1ラインの出力データを、RAM203内の画像ラインバッファに格納する。本ステップの処理により、ロックエラーが発生した場合は、説明画像データ701の1ライン分のラインデータがRAM203内の画像ラインバッファに格納される。他方、電気回路エラーが発生した場合は、説明画像データ702の1ライン分のラインデータがRAM203内の画像ラインバッファに格納される。つまり、deviceConditionがNORMALでない場合でも、S613の処理と同様に、1ライン分のデータが画像ラインバッファに格納される。S614の処理が終わると、S615に処理が進む。
【0045】
S615において、CPU202は、画像ラインバッファ内のデータを、USB I/F209を介してホストコンピュータ212に送信する。つまり、S613またはS614の処理によって画像ラインバッファに格納されているデータ(ラインデータ)を、ホストコンピュータ212に送信する。このように、本実施形態の画像読取装置100は、スキャンコマンドに応じてラインごとにホストコンピュータ212にラインデータを順次送信するように構成されている。
【0046】
S616において、CPU202は、lineCountをインクリメント(+1)する。S617において、CPU202は、lineCountと、docLengthとを比較して、ユーザの指定した副走査方向の長さ分のラインのデータをホストコンピュータ212に全て送信したか否かを判定する。当該判定処理がされることにより、原稿の長さについてユーザが指定した長さの分だけスキャンを行ったか否かが分かるようになる。尚、S614の処理を行う場合、CPU202は、説明画像データのサイズ(長さ)をdocLengthに代入する。なぜならば、説明画像データにおける縦方向の長さと、原稿119についてユーザが指定した縦方向の長さとは一致していないことがあるからである。
【0047】
ユーザの指定した副走査方向の長さ分のラインのデータをホストコンピュータ212に全て送信した場合、S618へ進む。一方、ユーザの指定した副走査方向の長さ分のラインのデータをホストコンピュータ212に全て送信していない場合、S612に戻り、副走査方向の長さ分のラインのデータを送信するまでS612からS617までの処理を繰り返す。S612からS617の処理を繰り返すことで、docLength分のラインデータが順次ホストコンピュータに送信されることになる。
【0048】
S618において、CPU202は、次のスキャンジョブがあるか否かを判定する。次のスキャンジョブがある場合、S610へ戻り、S610からS618までの処理を繰り返す。一方、次のスキャンジョブが無い場合、CPU202は、スキャン処理を終了する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、画像読取装置100の異常を検知した場合に、原稿画像データの代わりに説明画像データをホストコンピュータに送信する。即ち、画像読取装置100は、通常のスキャン処理によって原稿画像データをホストコンピュータに送る仕組みをそのまま利用し、説明画像データを、あたかもスキャンして得られた結果の画像データとして送信する。つまり、ホストコンピュータ212のスキャナドライバ503では、スキャンジョブに応じて画像読取装置100から、スキャンして得られた画像として説明画像を取得することになる。これによって、ホストコンピュータ212の表示装置511に、スキャンした結果の画像として説明画像が表示される。その結果、画像読取装置固有のハードウェア構成に関する情報を扱えないようなオペレーティングシステムにおける標準のドライバソフトウェアを用いて画像読取装置にエラーが発生した旨をユーザに伝達することができるようになる。
【0050】
このためアプリケーション502の機能を拡張することなくユーザに画像読取装置の状態を伝達する機能を実現でき設計コストを下げることができる。また、表示手段を備えていない画像読取装置でも、装置の状態をユーザに知らせることができ、安価な画像読取装置の提供が可能となる。また、表示手段を備えた画像読取装置においても、ホストコンピュータ212に接続したより高スペックの表示装置511で画像読取装置の状態を表現することができ、ユーザの利便性を高めることができる。またユーザにとっても、専用のステータス管理画面およびアプリケーションの表示の遷移に注意しなくても画像読取装置の状態を確認することができ、高い利便性を実現することができる。
【0051】
つまり、本実施形態によれば、画像読取装置の状態をユーザが容易に確認できるようになる。そして、コストアップをすることなく、画像読取装置の状態をユーザに理解できる形態で伝達することができるようになる。
【0052】
[実施形態2]
実施形態1では、パワーオン処理中における画像読取装置100の状態を確認する形態について説明したが、本実施形態2では、パワーオン処理中の状態確認に限定しない説明を行う。具体的には、スキャンの実行中にエラーが発生した場合に、エラーが発生したことをユーザに伝達(通知)するための実施形態について、以下、説明する。尚、画像読取システムの構成は、実施形態1で説明した例と同様であるので、説明を省略する。
【0053】
本実施形態のスキャン処理について、図8を用いて説明する。図8は、画像読取装置100が制御部201で行うスキャン処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートによる処理は、画像読取装置100が有するROM204に記憶されたプログラムコードがRAM203に展開され、CPU202によって実行される。以下、実施形態1と共通する構成については説明を省略し、実施形態1と異なる点を中心に説明する。
【0054】
<実施形態2のスキャン処理の流れについて>
S801において、CPU202は、ユーザによって画像読取装置100の電源がオンされたことを検知する。S802において、CPU202は、パワーオン処理を開始する。S803において、CPU202は、スキャンを実行するコマンドを受信したか否かを判定する。当該コマンドを受信した場合は、S804へ進む。一方、当該コマンドを受信していない場合、CPU202は、当該コマンドを受信するまで本ステップの処理を繰り返す。
【0055】
S804において、CPU202は、主走査方向1ラインの出力が出るごとにカウントアップする副走査のカウンタlineCountと、エラー発生時に送信される通知画像データ901の副走査のカウンタerrlineCountとを1で初期化する。更に、CPU202は、ユーザの指定した副走査の長さ情報を取得し、変数docLengthに設定する。
【0056】
S805において、CPU202は、スキャン開始後にエラーが発生した場合にホストコンピュータ212に送信される画像データである通知画像データをerrImgBufにコピーする。errImgBufは、後述するように、装置状態が正常でない場合に使われる変数である。
【0057】
図9は、スキャンの実行中にエラーが発生した場合に、ホストコンピュータ212に送信される通知画像データの画像および原稿画像データの画像を示した図である。図9を用いて、本実施形態の通知画像データを説明する。図9(a)の通知画像データ901は、スキャンの実行中にエラーが発生した旨をユーザに通知するための通知画像データの一例である。例えば、通知画像データ901の例として、「スキャン中にエラーが発生しました(エラーコード:E001)」のように、エラーが発生した旨をユーザに通知するためのテキストとそのエラーコードとが示された画像データを用いる例が挙げられる。また、通知画像データ901における縦方向の長さは、1ライン分の長さでもよいし、複数ライン分の長さでもよい。
【0058】
図8の説明に戻る。S806において、CPU202は、画像読取装置100の装置状態(deviceCondition)が正常(NORMAL)であるか否かの判定を行う。装置状態が正常である場合は、S807へ進む。一方、装置状態が正常ではない場合は、S808へ進む。例えば、スキャン中に、スキャナセンサの異常によるエラー、モータの異常によるエラーといったエラーが発生した場合、装置状態が正常ではないと判定され、S808へ進むこととなる。
【0059】
S807において、CPU202は、原稿119の副走査におけるlineCountライン目の主走査方向1ラインの出力データを、RAM203内の画像ラインバッファに格納する。つまり、原稿119について、副走査方向のラインカウントに対応する主走査方向のラインデータが、RAM203内の画像ラインバッファに格納される。本ステップの処理が終了すると、S810へ進む。
【0060】
S808において、CPU202は、errImgBufのerrlineCountライン目のデータをRAM203内の画像ラインバッファに格納する。具体的には、CPU202は、errImgBufに格納された通知画像データ901のerrlineCountラインに対応する主走査方向1ラインの出力データを、RAM203内の画像ラインバッファに格納する。本ステップの処理が終了すると、S809へ進む。
【0061】
S809において、CPU202は、errlineCountをインクリメント(+1)する。本ステップの処理が終了すると、S810へ進む。S810において、CPU202は、前記画像ラインバッファ内のデータを読み出して、USB I/F209を介してホストコンピュータ212に送信する。S811において、CPU202は、lineCountをインクリメント(+1)する。
【0062】
S812において、CPU202は、lineCountとdocLengthとを比較して、ユーザの指定した副走査方向の長さ分のラインのデータをホストコンピュータ212に全て送信したか否かを判定する。ユーザの指定した副走査方向の長さ分のラインのデータを順次ホストコンピュータ212に全て送信した場合、S813へ進む。一方、ユーザの指定した副走査方向の長さ分のラインのデータをホストコンピュータ212に全て送信していない場合、S806に戻り、副走査方向の長さ分のラインのデータを順次送信するまでS806からS812まで処理を繰り返す。
【0063】
具体例を用いて説明する。図9(b)の原稿画像データ902は、スキャンを開始した時点からエラーが発生した時点までにスキャンすることができていた原稿画像データの一例である。つまり、S806、S807、S810の処理を繰り替えした結果、ホストコンピュータに送信された原稿画像データ902を示している。この時点において、エラーが発生した場合、S806からS808に進み、通知画像データ901の送信が完了するまで、処理が繰り返される。図9(b)は、平仮名の「あ」の文字をスキャンしている途中でエラーが発生し、そのエラーが発生した時点までに得られた原稿画像データ(スキャン画像データ)を示している。図9(c)の原稿画像903は、S806からS808の結果、図9(b)の原稿画像データ902に続いて通知画像データ901が原稿画像データとして送信され、表示装置511で表示されている例を示している。図9(c)に示すように、表示装置511では、原稿画像データ902の下端のラインデータと、通知画像データ901の上端のラインデータとが空間的な空白を空けないように続けて表示されることになる。その結果、図9(c)に示したように、表示装置511には、原稿画像903が、あたかも1枚の原稿画像のように表示されることとなる。即ち、通知画像データを含む原稿画像データがホストコンピュータ212に送信され、このデータに基づいて通知画像を含む原稿画像が表示装置511で表示されることになる。尚、S808で通知画像データが全て送信された後は、S811でのカウント値が条件に達したこともって、繰り返し処理を終了して、S813に進むことになる。
【0064】
S813において、CPU202は、次のスキャンジョブがあるか否かを判定する。次のスキャンジョブがある場合、S803に戻り、S803からS813までの処理が繰り返される。一方、次のスキャンジョブがない場合、スキャン処理を終了する。
【0065】
ホストコンピュータ212では、スキャンして得られたラインデータを表示装置511に表示するための制御が実行される。ホストコンピュータ212が原稿画像データを表示装置511に表示する制御のパターンとしては、例えば以下の2パターンがある。
【0066】
1つ目は、ホストコンピュータ212が、画像読取装置100から送信されたラインデータを表示装置511に1ラインずつ画像データを表示させる構成となっているパターンである。この場合、原稿119をスキャンして得られたラインデータが、1ラインずつ表示装置511に表示される。2つ目は、ホストコンピュータ212が、画像読取装置100から送信されたラインデータを記憶して、後からまとめて表示装置511に画像データを表示させる構成となっているパターンである。何れの場合であっても、本実施形態では、通知画像が表示装置511で表示されるので、スキャンの実行中にエラーが発生した場合でも、ユーザにエラーを通知することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、画像読取装置の状態をユーザが容易に確認できるようになる。そして、コストアップをすることなく、画像読取装置の状態をユーザに理解できる形態で伝達することができるようになる。
【0068】
[実施形態3]
本実施形態3のスキャン処理について、図10を用いて説明する。図10は、画像読取装置100が制御部201で行うスキャン処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートによる処理は、画像読取装置100が有するROM204に記憶されたプログラムコードがRAM203に展開され、CPU202によって実行される。以下、実施形態1と共通する構成については説明を省略し、実施形態1と異なる点を中心に説明する。
【0069】
実施形態2では、原稿画像データに続けて通知画像データが表示される技術について説明した。本実施形態3では、1ライン目に通知画像データが表示され、2ライン目以降にスキャン中の原稿画像データが表示される技術について説明する。
【0070】
<実施形態3のスキャン処理の流れについて>
S1001において、CPU202は、ユーザによって画像読取装置100の電源がオンされたことを検知する。S1002において、CPU202は、パワーオン処理を開始する。
【0071】
S1003において、CPU202は、スキャンを実行するコマンドを受信したか否かを判定する。当該コマンドを受信した場合は、S1004へ進む。一方、当該コマンドを受信していない場合、CPU202は、当該コマンドを受信するまで本ステップの処理を繰り返す。
【0072】
S1004において、CPU202は、主走査方向1ラインの出力が出るごとにカウントアップする副走査のカウンタlineCountを1で初期化し、エラー発生時にセットされるフラグであるerrFlagを0で初期化する。そして、CPU202は、ユーザの指定した副走査の長さ情報を取得し、変数docLengthに設定する。
【0073】
S1005において、CPU202は、通知画像データをerrImgBufにコピーする。通知画像データは、実施形態2で説明した例と同様である。S1006において、CPU202は、画像読取装置100の装置状態(deviceCondition)が正常(NORMAL)であるか否かの判定を行う。装置状態が正常である場合は、S1007へ進む。一方、装置状態が正常ではない場合は、S1008へ進む。例えば、スキャン中に、スキャナセンサの異常によるエラー、モータの異常によるエラーといったエラーが発生した場合、装置状態が正常ではないと判定され、S1008へ進むこととなる。
【0074】
S1007において、CPU202は、原稿119をラインごとにスキャンして得られたラインデータを、ラインバッファに格納する。具体的には、CPU202は、原稿119の副走査lineCountライン目の主走査方向1ラインの出力データを、RAM203内のページバッファに格納する。
【0075】
S1008において、CPU202は、画像読取装置100にエラーが発生したことを示す情報として、errFlagに1をセットする。S1009において、CPU202は、lineCountをインクリメント(+1)する。S1010において、CPU202は、lineCountとdocLengthとを比較して、ユーザが指定した副走査の長さ分の画像について、スキャンが完了した否かを判定する。スキャンが完了した場合、S1011に進む。一方、スキャンが完了していない場合、S1006に戻り、次の主走査方向1ラインに対する処理を続ける。つまり、本実施形態では、画像ラインバッファにラインデータを格納して順次送信する実施形態2とは異なり、ページバッファにラインごとのデータを格納する処理が行われる。尚、エラーが発生している場合には、S1009でインクリメントが繰り返された後に、S1011に処理が進むことになる。つまり、エラーが発生している場合には、その時点までに読み込んだデータがページバッファに格納されている状態となる。
【0076】
S1011において、CPU202は、画像読取装置100にエラーが発生したことを示す情報が生成されているか否かを判定する。例えば、S1008で生成されたフラグを参照して、errFlagに1がセットされているか否かを判定する。画像読取装置100にエラーが発生したことを示す情報が生成されている場合(例えば、errFlagに1がセットされている場合)、S1012に進む。一方、画像読取装置100にエラーが発生したことを示す情報が生成されていない場合(例えば、errFlagに1がセットされていない場合)、S1013に進む。
【0077】
S1012において、CPU202は、通知画像データ1101を1ラインごとにホストコンピュータ212に送信する。具体的には、CPU202は、errImgBufに格納された通知画像データ1101を1ライン目から順にUSB I/F209を介してホストコンピュータ212に送信する。S1012の処理が終了すると、S1013の処理に進む。
【0078】
S1013において、CPU202は、ページバッファに格納したラインデータを読み出して、順次ホストコンピュータに送信する。具体的には、CPU202は、ページバッファに格納された通知画像データ1101を1ライン目から順にUSB I/F209を介してホストコンピュータ212に送信する。尚、S1012からS1013に進んだ場合、CPU202は、通知画像データ1101を1ライン目から順次ホストコンピュータ212に送信した後に、ページバッファに格納したデータを1ライン目から順次ホストコンピュータ212に送信することとなる。
【0079】
図11は、具体例を示す図である。通知画像データ1101および正常に読み込めた原稿画像データ1102は、図9の通知画像データ901および原稿画像データ902と同じである。本実施形態では、エラーが発生した場合には、図11(c)に示すように、まず、通知画像データ1101がホストコンピュータ212に送信される。続いて、ページバッファ内に格納されている原稿画像データ1102が送信される。その結果、図11(c)に示すような画像が、表示装置511に表示されることになる。
【0080】
S1014において、CPU202は、次のスキャンジョブがあるか否かを判定する。次のスキャンジョブがある場合、S1003に戻り、S1003からS1014までの処理が繰り返される。一方、次のスキャンジョブがない場合、スキャン処理を終了する。
【0081】
以上説明したように、本実施形態では、スキャンの実行中にエラーが発生した場合、まず、通知画像データがホストコンピュータに送信され、それに続けて原稿画像データがホストコンピュータに送信される。つまり、通知画像データが、スキャン画像の最初(先頭)の画像として表示装置に表示されることとなる。このため、ユーザは、エラーが発生していることを直ぐに把握することができる。
【0082】
また、ホストコンピュータが原稿画像データを1ラインずつ表示装置に表示させる制御を実行している場合、一番上のラインに通知画像データが表示されることとなるので、ユーザがエラーの発生に気付きやすくなる。
【0083】
[その他の実施形態]
画像読取装置100の例として、原稿台101の上に原稿119を置く標準的な画像読取装置の例を挙げたが、画像読取装置の例はこれに限られない。画像読取装置100の他の例として、オートドキュメントフィーダ(ADF)を備えた画像読取装置や、非接触タイプの画像読取装置が挙げられる。尚、ADFを備えた画像読取装置を使用する場合、画像データの転送方法については、1ラインごとにスキャンして得られた画像データがホストコンピュータ212に転送される。
【0084】
エラーの例として、スキャナセンサの異常によるエラー、モータの異常によるエラーなどを挙げたが、エラーの例は、これらに限られない。エラーの他の例として、ADFを備えた画像読取装置における原稿ジャムエラーなどの例が挙げられる。
【0085】
説明画像データの例として、説明画像データ701、説明画像データ702を挙げたが、説明画像データの例は、この例に限られない。例えば、画像読取装置100に発生し得る個々のエラーの原因に対応した個々の説明画像データが、ROM204に格納されていてもよい。
【0086】
通知画像データの例として通知画像データ901および通知画像データ1101を挙げたが、通知画像データの例は、これらに限られない。例えば、画像読取装置100に発生し得る個々のエラーの原因に対応した個々の通知画像データが、ROM204に格納されていてもよい。
【0087】
スキャナドライバ503の例として、当初よりオペレーティングシステムにインストールされている標準のドライバソフトウェアの例を挙げたが、スキャナドライバ503の例はこれに限られない。スキャナドライバ503として、画像読取装置固有の構成に関する専用のドライバソフトウェアを用いてもよい。
【0088】
ユーザにエラーが発生したことを伝達するための画像データの例として、原稿画像903および原稿画像データ1103を挙げたが、ユーザにエラーが発生したことを伝達するための画像データの例は、これらに限られない。例えば、2つの通知画像データでスキャン中の原稿画像データを挟むように、通知画像データが表示装置511に表示されてもよい。これとは反対に、2つのスキャン中の原稿画像データに1つの通知画像データが挟まれるように、通知画像データが表示装置511に表示されてもよい。更には、原稿画像データと、通知画像データとが複数ライン分の間隔を空けて表示されてもよい。
【0089】
本開示の技術は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
図1
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