(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】薬品包装用複合フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20241216BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20241216BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B32B15/08 F
B32B27/36
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2021078362
(22)【出願日】2021-05-06
【審査請求日】2021-05-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-19
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】廖徳超
(72)【発明者】
【氏名】袁敬堯
(72)【発明者】
【氏名】鄭文瑞
(72)【発明者】
【氏名】鐘敏帆
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】武市 匡紘
【審判官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/138048(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
130
oC~180
oCの融点を有するヒートシール層と、前記ヒートシール層上に設置されるアルミニウム箔層と、前記アルミニウム箔層上に設置される耐衝撃層と、を含み、
前記ヒートシール層は、10モル%のイソペンチルジオールから誘導された残基、及び4モル%のイソプロパノールから誘導された残基を含有する変性ポリエステル
のみを含む変性ポリエステル層である、ことを特徴とする薬品包装用複合フィルム。
【請求項2】
前記耐衝撃層の組成は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンテレフタレート-1,4-シクロヘキサンジメタノールからなる群から選択される耐衝撃性高分子を含む、請求項1に記載の薬品包装用複合フィルム。
【請求項3】
前記耐衝撃層は、前記耐衝撃性高分子を含むポリエステル組成物で形成され、100重量%の前記ポリエステル組成物に基づいて、前記耐衝撃性高分子の含量は1~70重量%である、請求項2に記載の薬品包装用複合フィルム。
【請求項4】
前記ポリエステル組成物は、一般ポリエステルをさらに含み、100重量%の前記ポリエステル組成物に基づいて、前記一般ポリエステルの含量は、30~99重量%である、請求項3に記載の薬品包装用複合フィルム。
【請求項5】
前記一般ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートである、請求項4に記載の薬品包装用複合フィルム。
【請求項6】
前記ヒートシール層の厚さは、10μm~200μmであり、前記アルミニウム箔層の厚さは、5μm~20μmであり、前記耐衝撃層の厚さは10μm~100μmである、請求項1に記載の薬品包装用複合フィルム。
【請求項7】
前記薬品包装用複合フィルムは、第一貼合層、及び第二貼合層をさらに含み、前記ヒートシール層は、前記第一貼合層を介して前記アルミニウム箔層における片面に結合され、前記耐衝撃層は、前記第二貼合層を介して前記アルミニウム箔層における前記片面と反対側の別の表面に結合される、請求項1に記載の薬品包装用複合フィルム。
【請求項8】
前記第一貼合層及び前記第二貼合層は、それぞれポリオレフィンホットメルト接着剤で形成され、前記第一貼合層及び前記第二貼合層の厚さは、それぞれ2μm~5μmである、請求項7に記載の薬品包装用複合フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬品包装材料に関し、特に、薬品包装用複合フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬品は、疾病の予防及び治療に用いられる特殊な商品であり、消費者の健康や命の安全に関わるものである。包装材料は、薬品に直接接触するため、有害物質を含有した場合には、経時においてブリードアウトしてくることによって、薬品を汚染してしまい、薬品の安全性に影響する恐れがあり、また、包装材料のバリア性能が良くなければ、水蒸気、酸素、及び光線が透過することによって、薬品の化学変化が引き起こされ、保存期限が短縮される恐れがある。そのため、薬品包装材料の使用性能に注意する必要がある。
【0003】
従来の薬品包装材料の多くは、アルミニウム箔と、内側のヒートシール性を有するポリ塩化ビニル(PVC)層と、外側のプラスチック層とが複合してなるが、PVCは、有毒物質の可塑剤を含有するため、人の健康に危害を加え、安全上の懸念がある。また、PVCの代わりに、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer、COC)、又は非PVCプラスチックを使用する包装材料は市販されているが、環状オレフィン共重合体は、そのコストが比較的に高く、非PVCプラスチックも、完全に無毒であるわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術の問題は、従来技術の不足に対し、安全で無毒の薬品包装用複合フィルムを提供することである。
【0005】
上記の技術的問題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、薬品包装用複合フィルムを提供することである。前記薬品包装用複合フィルムは、ヒートシール層、アルミニウム箔層、及び耐衝撃層を含む。前記ヒートシール層は、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、イソペンチルジオール、及びイソプロパノールのうちの少なくとも一種から誘導された残基を含有し、130oC~180oCの融点を有し、前記アルミニウム箔層は、前記ヒートシール層上に設置され、前記耐衝撃層は、前記アルミニウム箔層上に設置される。
【0006】
本発明の一実施形態において、前記ヒートシール層は、1~50モル%の1,4-ブタンジオールから誘導された残基、1~50モル%のイソフタル酸から誘導された残基、1~50モル%のイソペンチルジオールから誘導された残基、及び/又は1~50モル%のイソプロパノールから誘導された残基を含有する。
【0007】
本発明の一実施形態において、前記ヒートシール層は、10モル%のイソペンチルジオールから誘導された残基、及び4モル%のイソプロパノールから誘導された残基を含有する。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記耐衝撃層の組成は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンテレフタレート-1,4-シクロヘキサンジメタノールからなる群から選択される耐衝撃性高分子を含む。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記耐衝撃層は、前記耐衝撃性高分子を含むポリエステル組成物で形成され、100重量%の前記ポリエステル組成物に基づいて、前記耐衝撃性高分子の含量は1~70重量%である。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記ポリエステル組成物は、一般ポリエステルをさらに含み、100重量%の前記ポリエステル組成物に基づいて、前記一般ポリエステルの含量は、30~99重量%である。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記一般ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記ヒートシール層の厚さは、10μm~200μmであり、前記アルミニウム箔層の厚さは、5μm~20μmであり、前記耐衝撃層の厚さは10μm~100μmである。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記薬品包装用複合フィルムは、第一貼合層、及び第二貼合層をさらに含み、前記ヒートシール層は、前記第一貼合層を介して前記アルミニウム箔層における片面に結合され、前記耐衝撃層は、前記第二貼合層を介して前記アルミニウム箔層における前記片面と反対側の別の表面に結合される。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記第一貼合層及び前記第二貼合層は、それぞれポリオレフィンホットメルト接着剤で形成され、前記第一貼合層及び前記第二貼合層の厚さは、それぞれ2μm~5μmである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一つの有利な効果として、本発明が提供する薬品包装用複合フィルムは、「ヒートシール層は、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、イソペンチルジオール、及びイソプロパノールのうちの少なくとも一種から誘導された残基を含有する変性ポリエステル層である」、及び「アルミニウム箔層はヒートシール層上に設置され、耐衝撃層はアルミニウム箔層上に設置される」といった技術的特徴によって、薬品の品質及び安全性を確保でき、かつ、形成された薬品包装は、保存及び運送の過程において完全性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の薬品包装用複合フィルムを示す構造模式図である。
【
図2】本発明の薬品包装用複合フィルムに係る実施形態を示す模式図である。
【0017】
本発明の特徴及び技術内容をより一層理解できるように、以下の本発明に係る詳細な説明と図面を参照するが、提供される図面は、ただ参照と説明のためのものであり、本発明を制限することはない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明が開示した「薬品包装用複合フィルム」に係る実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行又は適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本文に使用される「又は」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含む可能性がある。
【0019】
本文に使用される全ての技術及び科学用語は、別に定義しない限り、当業者が通常に理解する意味と同じ意味を有する。単数の形で現れる用語は、この用語の複数の形を含む。
【0020】
本文に言及される「%」は、別に指示しない限り、いずれも重量%である。一連の上限、下限の範囲が与えられる場合、各組み合わせを明らかに挙げるように、言及される範囲の全ての組み合わせを含むようになる。
【0021】
図1に示すように、本発明の一実施形態は、薬品包装用複合フィルムZを提供し、薬品包装用複合フィルムZは、主要に、ヒートシール層1、アルミニウム箔層2、及び耐衝撃層3を含み、アルミニウム箔層2はヒートシール層1上に設置され、耐衝撃層3はアルミニウム箔層2上に設置される。使用する際、ヒートシール層1は、熱環境において(例えば、加圧した熱環境において)溶融でき、アルミニウム箔層2は、優れたバリア性能を有し、それによって、水分、気体(酸素)又は光線との接触による、薬品の変質を回避することができ、耐衝撃層3は、外部の衝撃に抵抗し、それによって、薬品包装の完全性を維持することができる。
【0022】
ヒートシール層1は、変性ポリエステル層であり、前記変性ポリエステル層は、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、イソペンチルジオール、及びイソプロパノールのうちの少なくとも一種から誘導された残基を含有する。説明すべきことは、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、イソペンチルジオール、及びイソプロパノールは、すべて重合過程においてオリゴマー混合物を形成することができ、それによって、ポリエステルのヒートシール層1は、130oC~180oCという、より低い融点を有し、それによって、本発明の複合フィルムZは、この温度範囲でヒートシールできる。また、ヒートシール層1の厚さは、複合フィルムZのヒートシール強度に影響し、ヒートシール層1が厚いほど、複合フィルムZのヒートシール強度が強く、実用性とコストの観点から、ヒートシール層1の厚さは、10μm~200μmであることができる。
【0023】
図2に示すように、実際に応用する際、一又は複数の薬品を二枚の複合フィルムZの間に入れ、ヒートシール層1が内側となるように二枚の複合フィルムZを重ね、熱圧着を行い融点の低いヒートシール層1を溶融させて互いに一体化させることで、薬品の包装を完了することができる。
【0024】
本実施形態において、ヒートシール層1は、1~50モル%の1,4-ブタンジオールから誘導された残基、1~50モル%のイソフタル酸から誘導された残基、1~50モル%のイソペンチルジオールから誘導された残基、及び/又は1~50モル%のイソプロパノールから誘導された残基を含有することができ、好ましくは、10モル%のイソペンチルジオールから誘導された残基、及び4モル%のイソプロパノールから誘導された残基を同時に含有する。本明細書に用いられる用語「残基」とは、化学反応の生成物における、特定の化合物から誘導された基又はユニットのことを言い、例えば、エステル化(esterification)、又は重縮合(polycondensation)反応で合成されたポリエステル、又は共重合ポリエステルにおける、二酸又はジオール成分から誘導された基が挙げられる。
【0025】
さらには、ヒートシール層1は、第一ポリエステル組成物で形成することができ、第一ポリエステル組成物は、主要に、一般ポリエステル、及び変性剤を含み、例えば、第一ポリエステル組成物を溶融押出して溶融層を形成し、溶融層を冷卻して定形することでヒートシール層1を形成することができる。第一ポリエステル組成物において、一般ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)であり、変性剤は、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、イソペンチルジオール、及びイソプロパノールのうちの少なくとも一種から選択され、100重量%の第一ポリエステル組成物に基づいて、一般ポリエステルの含量は、30~99重量%であることができ、かつ、変性剤の含量は1~50重量%であることができる。しかしながら、上述した内容は可能な実施形態に過ぎず、本発明を制限するためのものではない。一部の実施形態において、一般ポリエステルは、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、又はポリブチレンナフタレート(PBN)であることができる。
【0026】
アルミニウム箔層2は、高純度アルミニウム箔(99%以上のアルミニウムを含有する)、又は金属及び非金属元素がドープされた変性アルミニウムからなることができ、アルミニウム箔層2の厚さは、5μm~20μmであることができ、好ましくは、10μmであり、アルミニウム箔層2が厚すぎると(即ち、アルミニウム箔層の厚さが20μm以上である)、生産コストが増し、アルミニウム箔層2が薄すぎると(即ち、アルミニウム箔層の厚さが5μm以下である)、必須のバリア効果に達することができない。説明すべきことは、アルミニウム箔層2の存在下、水分、酸素、光線などは薬品と直接接触し不良な影響を引き起こすことができないため、薬品の品質及び安全性を確保し、薬品の保存期限を延長することができる。一部の実施形態において、アルミニウム箔層2の耐ピンポール性、及び伸展性を高めるために、アルミニウム箔層2には鉄とケイ素がドープされ、なかでも、鉄の含量は、0.1~5重量%であることができ、好ましくは、0.3~1重量%であり、ケイ素の含量は、0.1~5重量%であることができ、好ましくは、0.3~1重量%である。
【0027】
耐衝撃層3は、ポリエステル層であり、その組成は、耐衝撃性高分子を含む。説明すべきことは、耐衝撃層3の存在下、本発明の複合フィルムZの耐衝撃強度は1倍近く向上しており、それによって、形成された薬品包装は、保存及び輸送の過程において完全性を維持することができる。必須の耐衝撃効果に達するために、耐衝撃層3の厚さは、50μm~100μmであることができる。一部の実施形態において、耐衝撃層3の厚さは、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、又は95μmである。
【0028】
さらには、耐衝撃層3は、第二ポリエステル組成物で形成することができ、第二ポリエステル組成物は、主要に、一般ポリエステル、及び耐衝撃性高分子を含み、例えば、第二ポリエステル組成物を溶融押出して溶融層を形成し、溶融層を冷卻して定形することで耐衝撃層3を形成することができる。第二ポリエステル組成物において、一般ポリエステルは、PET、PPT、PBT、PEN、又はPBNであり、好ましくは、PETであり、耐衝撃性高分子は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ナイロン(例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン66、又はナイロン12)、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンテレフタレート-1,4-シクロヘキサンジメタノール(Polyethylene Terephthalate-Glycol、PETG)からなる群から選択され、100重量%の第二ポリエステル組成物に基づいて、一般ポリエステルの含量は、30~99重量%であることができ、耐衝撃性高分子の存在量は1~70重量%であることができる。しかしながら、上述した内容は可能な実施形態に過ぎず、本発明を制限するためのものではない。
【0029】
実際の応用によって、第二ポリエステル組成物は、少なくとも一種の機能性添加剤を含んでもよく、機能性添加剤は、例えば、色料、無機類ポリエステル改質剤、流動性加工助剤、結晶核剤、及び/又は抗酸化剤が挙げられる。さらに言えば、色料を添加することによって、複合フィルムZの外観色彩を変更することができ、色料は、例えば、カーボンブラック、二酸化チタン、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウムが挙げられる。
【0030】
無機類ポリエステル改質剤は、耐衝撃層3の耐熱性を高めることができ、かつ、無機類ポリエステル改質剤の存在下、耐衝撃層3は、所定の表面粗さ及びヘイズ度を有することができる。無機類ポリエステル改質剤の具体例としては、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、酸化アルミニウム(Al2O3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ホウ素(B2O3)、酸化カルシウム(CaO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸マグネシウム(2MgO・TiO2)、二酸化セリウム(CeO2)、ヒュームドシリカ(fumed silica)、タルク、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、カーボンブラック、及びカオリンが挙げられ、無機類ポリエステル改質剤は、粒子として存在してもよく、100重量%の第二ポリエステル組成物に基づいて、無機類ポリエステル改質剤の含量は、0.01~2重量%であることができる。
【0031】
流動性加工助剤は、ポリエステル原料を溶融押出するときの機械トルクを低減し、重合体の分子鎖切断を減少させることができる。流動性加工助剤は、ペンタエリスリトールテトラステアレート(PETS)、又はその類似物であることができ、ペンタエリスリトールテトラステアレート(PETS)は、高温において、良好な熱安定性及び低揮発性、ならびにより高い流動性及び離型性を有し、かつ、一部の結晶性ポリエステルに対して良好な核生成効果を有し、100重量%の第二ポリエステル組成物に基づいて、流動性加工助剤の含量は、0.01~2重量%であることができる。
【0032】
結晶核剤は、結晶化度を高めることによって、耐衝撃層3の耐熱性を改善でき、なお、結晶核剤は、結晶の成長を促進することによって、結晶のサイズを微細化し、粗大球晶の生成を減少させることができると共に、フィルム表面の脆化を避けることができる。結晶核剤は、鉱物材料、金属酸化物、ケイ素化合物、有機酸又は無機酸の金属塩、リン酸エステル金属塩、ポリオール誘導体、スルフィミド化合物、ガラス粉末、金属粉末、又はそれらを任意に組み合わせたものであることができ、100重量%の第二ポリエステル組成物に基づいて、結晶核剤の含量は0.0003~2重量%であることができる。
【0033】
鉱物材料は、結晶核剤として、グラファイト、タルク、及びカオリンが挙げられ、金属酸化物は、結晶核剤として、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、及び酸化マグネシウムが挙げられ、ケイ素化合物は、結晶核剤として、酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、及びケイ酸マグネシウムが挙げられ、有機酸又は無機酸の金属塩は、結晶核剤として、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸金属塩、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、及びp-t-ブチル安息香酸アルミニウムが挙げられ、リン酸エステル金属塩は、結晶核剤として、芳香族リン酸エステル金属塩が挙げられ、ポリオール誘導体は、結晶核剤として、ジベンジリデンソルビトールが挙げられる。
【0034】
耐衝撃層3を形成する第二ポリエステル組成物の抗酸化剤として、単独で又は同時に一次抗酸化剤及び二次抗酸化剤を使用することができ、一次抗酸化剤は、ペルオキシラジカル(peroxy radical、ROO・)と速やかに反応することによって、ラジカル連鎖を停止することができ、二次抗酸化剤は、ヒドロペルオキシド(ROOH)と反応することによって、それを非ラジカルの不活性な生成物にさせることができ、説明すべきことは、一次抗酸化剤及び二次抗酸化剤は、良好な相乗効果を発揮し、より良い抗酸化効果を提供することができる。
【0035】
一次抗酸化剤は、フェノール類化合物、又はアミン類化合物から選択することができ、具体例としては、商標名Irganox 1010、Irganox 1425、Irganox 245、Anox 1315、Anox PP18、Anox 20、Lowinox 1790、Lowinox TBM-68、及びNaugard 445の市販品が挙げられ、100重量%の第二ポリエステル組成物に基づいて、一次抗酸化剤の含量は0.01~1重量%であることができる。二次抗酸化剤は、亜リン類化合物、又はチオエステル類化合物から選択することができ、具体例としては、商標名Sandostab P-EPQ、Irgafos 168、及びNaugard 412Sの市販品が挙げられ、100重量%の第二ポリエステル組成物に基づいて、二次抗酸化剤の含量は0.01~1重量%であることができる。
【0036】
また、未延伸の耐衝撃層3に対して延伸加工を行い、より良い機械的性能を付与することができる。一部の実施形態において、実施する延伸加工方式は、逐次二軸延伸加工であることができ、即ち、未延伸の耐衝撃層3に対して、所定の温度及び延伸倍率で流れ方向(又は「長手方向」、MD)の延伸加工を行い、次いで、所定の温度及び延伸倍率で垂直方向(又は「短手方向」、TD)の延伸加工を行い、実際のニーズによって、流れ方向の延伸加工及び垂直方向の延伸加工の実施順序を逆にしても構わない。一部の実施形態において、実施する延伸加工方式は同時二軸延伸加工であることができ、即ち、未延伸の耐衝撃層3に対しては、所定の温度及び延伸倍率で同時に流れ方向の延伸加工及び垂直方向の延伸加工を行うことができる。
【0037】
再度
図1を参照されたい。
図1に示すように、本実施形態において、ヒートシール層1は、第一貼合層4を介してアルミニウム箔層2における片面(例えば、内面)に結合でき、かつ、耐衝撃層3は、第二貼合層5を介してアルミニウム箔層2における前記片面と反対側の表面(例えば、外面)に結合できる。第一貼合層4及び第二貼合層5は、それぞれポリオレフィン接着剤層であることができ、その組成は、ポリオレフィン(polyolefin、PO)、及びホットメルト接着剤を含み、第一貼合層4及び第二貼合層5の厚さは、2μm~5μmであることができる。
【実施例】
【0038】
表1には、本発明の薬品包装用複合フィルムZに係る幾つの代表的な実施例を示しているが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【表1】
◎:非常に良い(very good)
○:良い(good)
△:悪い(poor)
×:かなり悪い(very poor)
[実施形態による有利な効果]
【0039】
本発明の一つの有利な効果として、本発明が提供する薬品包装用複合フィルムは、「ヒートシール層は、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、イソペンチルジオール、及びイソプロパノールのうちの少なくとも一種から誘導された残基を含有する」、及び「アルミニウム箔層はヒートシール層上に設置され、耐衝撃層はアルミニウム箔層上に設置される」といった技術的特徴によって、薬品の品質及び安全性を確保でき、かつ、形成された薬品包装は、保存及び運送の過程において完全性を維持できる。
【0040】
さらに言えば、ヒートシール層は、変性ポリエステル層であり、それ自体が安全で毒性が無く、環境汚染を引き起こさないため、当業界で常用のポリ塩化ビニル(PVC)ヒートシール層の代わりに用いられる。さらに、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、イソペンチルジオール、及びイソプロパノールはいずれも、重合過程においてオリゴマー混合物を形成することができ、それによって、ポリエステルのヒートシール層1は、130oC~180oCという、より低い融点を有し、それによって、本発明の複合フィルムは、より低い温度範囲でヒートシールでき、そのため、コストを削減でき、また、実際に応用する際、ヒートシール層の厚さを調整することによって、ヒートシール強度を制御することができる。
【0041】
さらには、耐衝撃層の組成は、耐衝撃性高分子を含み、かかる耐衝撃性高分子は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ナイロン(例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン66、又はナイロン12)、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンテレフタレート-1,4-シクロヘキサンジメタノール(Polyethylene Terephthalate-Glycol、PETG)からなる群から選択され、そのため、本発明の複合フィルムZの耐衝撃強度は、1倍近く高めることができる。
【0042】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
Z…複合フィルム
1…ヒートシール層
2…アルミニウム箔層
3…耐衝撃層
4…第一貼合層
5…第二貼合層
D…薬品