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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】運転能力評価システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/00 20060101AFI20241216BHJP
   G09B 9/05 20060101ALI20241216BHJP
   A61B 5/18 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G09B19/00 H
G09B9/05 A
A61B5/18
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021078424
(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公開番号】P2022172560
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小野 浩
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 貴通
【審査官】池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-045066(JP,A)
【文献】特開2016-064097(JP,A)
【文献】特開2003-150038(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0202964(US,A1)
【文献】簡易自動車運転シミュレーター(Simple Driving Simulator)を用いて判定した中高年健常者の運転特性,日本職業・災害医学会会誌,Vol. 66, No. 1,2018年,p.45-50,<URL:http://www.jsomt.jp/journal/pdf/066010045>,[2024年8月22日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56,
17/00-19/26,
23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力インターフェースと出力インターフェースとを備えるドライビングシミュレータを用いて、車両についての対象者の運転能力を評価する運転能力評価システムであって、
前記ドライビングシミュレータにおける前記対象者による仮想運転に先立ち、前記対象者に前記ドライビングシミュレータの模擬操作機器を操作させて、前記対象者について前記車両の操作機器に対する高次脳機能の評価に関連する操作能力を検査する操作能力検査部と、
前記ドライビングシミュレータにおける前記対象者による仮想運転に先立ち、前記対象者について前記高次脳機能の評価に関連する感覚機能を検査する感覚機能検査部と、
前記操作能力検査部および前記感覚機能検査部による検査の終了後、前記ドライビングシミュレータの出力インターフェースに高次脳機能の評価に関連する仮想走行環境であって、危険予測体験の第1仮想走行環境と、環境別走行体験の第2仮想走行環境と、複数の市街地走行を間に郊外走行を挟んで連結した仮想走行環境としてのロングドライブ体験の第3仮想走行環境と、総合学習体験の第4仮想走行環境とが、その順番に含まれている市街地走行の仮想走行環境を出力する仮想走行環境出力部と、
前記仮想走行環境出力部が出力した前記仮想走行環境に対する前記対象者による仮想運転に基づいて行われた前記対象者について前記高次脳機能の評価に関連する複数の評価項目についての評価情報を把握して、保持する評価情報保持部と、
を備えることを特徴とする運転能力評価システム。
【請求項2】
請求項1記載の運転能力評価システムにおいて、
前記操作能力検査部が検査する前記操作能力には、アクセルペダル及びブレーキペダルに操作についての反応速度が含まれ、
前記感覚機能検査部が検査する前記感覚機能には、有効視野が含まれていることを特徴とする運転能力評価システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の運転能力評価システムにおいて、
前記仮想走行環境出力部が前記入力インターフェースに出力する前記第1仮想走行環境には、上級のレベルほど前記対象者に練度の高い運転能力を要求する複数のレベルの仮想走行環境が含まれていることを特徴とする運転能力評価システム。
【請求項4】
請求項記載の運転能力評価システムにおいて、
前記仮想走行環境出力部は、前記第1仮想走行環境を前記出力インターフェースに出力するときは、前記評価情報保持部からの評価情報に基づいて下級レベルの仮想走行環境に合格した前記対象者に限定して、上級のレベルの仮想走行環境を前記出力インターフェースに出力することを特徴とする運転能力評価システム。
【請求項5】
請求項記載の運転能力評価システムにおいて、
前記評価情報保持部は、前記第4仮想走行環境に対する前記対象者の仮想運転についての前記評価項目を、前記第1仮想走行環境、前記第2仮想走行環境および前記第3仮想走行環境に対する前記対象者の仮想運転についての前記評価項目とは異なる評価項目としていることを特徴とする運転能力評価システム。
【請求項6】
請求項記載の運転能力評価システムにおいて、
前記仮想走行環境出力部は、前記第1仮想走行環境、前記第2仮想走行環境、前記第3仮想走行環境および前記第4仮想走行環境を、その順番に前記出力インターフェースに出力するときは、順番が前の仮想走行環境の合格者に限定して、順番が次の仮想走行環境を前記出力インターフェースに出力することを特徴とする運転能力評価システム。
【請求項7】
請求項記載の運転能力評価システムにおいて、
前記仮想走行環境出力部は、前記対象者の前記総合学習体験の期間では、前記対象者が前記第4仮想走行環境に対して実施した仮想運転の再現情報を前記出力インターフェースに出力することを特徴とする運転能力評価システム。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の運転能力評価システムにおいて、
前記対象者について全部の評価項目の評価が終了する前に、すでに評価が終了した評価項目についての評価情報を、中間評価結果として関係者に提示する評価情報提示部、
を備えることを特徴とする運転能力評価システム。
【請求項9】
請求項記載の運転能力評価システムにおいて、
前記複数の評価項目は、前記関係者に含まれる医療機関の関係者により設定されたものであることを特徴とする運転能力評価システム。
【請求項10】
入力インターフェースと出力インターフェースとを備えるドライビングシミュレータを用いて、車両についての対象者の運転能力を評価する運転能力評価方法であって、
前記ドライビングシミュレータにおける前記対象者による仮想運転に先立ち、前記対象者に前記ドライビングシミュレータの模擬操作機器を操作させて、前記対象者について前記車両の操作機器に対する高次脳機能の評価に関連する操作能力を検査する操作能力検査ステップと、
前記ドライビングシミュレータにおける前記対象者による仮想運転に先立ち、前記対象者について前記高次脳機能の評価に関連する感覚機能を検査する感覚機能検査ステップと、
前記操作能力検査ステップおよび前記感覚機能検査ステップの終了後、前記ドライビングシミュレータの出力インターフェースに高次脳機能の評価に関連する仮想走行環境であって、危険予測体験の第1仮想走行環境と、環境別走行体験の第2仮想走行環境と、複数の市街地走行を間に郊外走行を挟んで連結した仮想走行環境としてのロングドライブ体験の第3仮想走行環境と、総合学習体験の第4仮想走行環境とが、その順番に含まれている市街地走行の仮想走行環境を出力する仮想走行環境出力ステップと、
前記仮想走行環境出力ステップにおいて出力した前記仮想走行環境に対する前記対象者による仮想運転に基づいて行われた前記対象者について前記高次脳機能の評価に関連する複数の評価項目についての評価情報を把握して、保持する評価情報保持ステップと、
を備えることを特徴とする運転能力評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高次脳障に関連する観点で対象者の運転能力を評価する運転能力評価システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、高次脳機能障害者に対して種々の仮想走行環境を体験させるドライビングシミュレータを開示する。特許文献1のドライビングシミュレータは、さらに、高次脳機能障害者が模擬走行に対して行った仮想運転に基づいて運転操作能力や高次脳機能障害の状態も検査している。
【0003】
特許文献2,3は、高次脳機能障害者が、停止中の実車に対して、車内及び車外で実車に装備されている機器の操作能力(例:ドアの開閉、座席の位置調整、ブレーキ)や、確認能力(例:車両の四隅の確認)がどの程度であるかを評価する運転能力評価システムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-64097号公報
【文献】特開2018-205578号公報
【文献】特開2018-205579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、高次脳機能障害者に対し、ドライビングシミュレータを使って検査を行うことを包括的に開示するのみで、具体的に何をどのような手順で実施するかを開示していない。
【0006】
特許文献2,3は、停止状態の実車に対して対象者がどの程度の操作能力および確認能力を有するかを評価するのみであり、評価可能な評価項目は制限されている。
【0007】
本発明の目的は、車両についての対象者の運転能力を総合的に評価可能にして、運転復帰の可否を的確に判断できる運転能力評価システムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の運転能力評価システムは、
入力インターフェースと出力インターフェースとを備えるドライビングシミュレータを用いて、車両についての対象者の運転能力を評価する運転能力評価システムであって、
前記ドライビングシミュレータにおける前記対象者による仮想運転に先立ち、前記対象者に前記ドライビングシミュレータの模擬操作機器を操作させて、前記対象者について前記車両の操作機器に対する高次脳機能障害の評価に関連する操作能力を検査する操作能力検査部と、
前記ドライビングシミュレータにおける前記対象者による仮想運転に先立ち、前記対象者について前記高次脳機能障害の評価に関連する感覚機能を検査する感覚機能検査部と、
前記操作能力検査部および前記感覚機能検査部による検査の終了後、前記ドライビングシミュレータの出力インターフェースに高次脳機能障害の評価に関連する仮想走行環境を出力する仮想走行環境出力部と、
前記仮想走行環境出力部が出力した前記仮想走行環境に対する前記対象者による仮想運転に基づいて行われた前記対象者について前記高次脳機能障害の評価に関連する複数の評価項目についての評価情報を把握して、保持する評価情報保持部と、
を備える。
【0009】
本発明の運転能力評価方法は、
入力インターフェースと出力インターフェースとを備えるドライビングシミュレータを用いて、車両についての対象者の運転能力を評価する、コンピュータが実施する運転能力評価方法であって、
前記対象者に前記ドライビングシミュレータの模擬操作機器を操作させて、前記対象者について前記車両の操作機器に対する高次脳機能障害の評価に関連する操作能力を検査する操作能力検査ステップと、
前記対象者について前記高次脳機能障害の評価に関連する感覚機能を検査する感覚機能検査ステップと、
前記操作能力検査ステップおよび前記感覚機能検査ステップにおける検査の終了後、前記ドライビングシミュレータの出力インターフェースに高次脳機能障害の評価に関連する仮想走行環境を出力する仮想走行環境出力ステップと、
前記仮想走行環境出力ステップにおいて出力された前記仮想走行環境に対する前記対象者による仮想運転に基づいて行われた前記対象者について前記高次脳機能障害の評価に関連する複数の評価項目についての評価情報を把握して、保持する評価情報保持ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ドライビングシミュレータにおいて、対象者について高次脳機能障害の評価に関連する、車両の操作機器に対する操作能力および感覚機能の検査の終了後、高次脳機能障害に関連する仮想走行環境をドライビングシミュレータの出力インターフェースに出力して、対象者に該仮想走行環境に対する仮想運転を、ドライビングシミュレータの模擬操作機器の操作により行わせる。そして、対象者による仮想運転に基づいて該対象者についての高次脳機能障害に関連した複数の評価項目についての評価情報が把握、保持される。こうして、保持された評価情報に基づいて、高次脳機能障害者の運転能力を総合的に評価可能にして、運転復帰の可否を的確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】運転能力評価システムの全体図である。
図2】運転能力評価システムの主要部の詳細図である。
図3】高機能障害を発症した対象者が、医療機関にて医師に診断書に従って車両の運転に復帰するためのスケジュールをフローチャートで表わしたものである。
図4図3のステップにおけるドライビングシミュレータによる評価の詳細なフローチャートである。
図5図4の市街地走行のステップにおいて対象者に提供される市街地走行の種類を示す図である。
図6A図5の危険予測体験の種類を示す図である。
図6B図5の危険予測体験のフローチャートである。
図7図4の環境別走行体験の種類を示す図である。
図8図5のロングドライブの詳細なフローチャートである。
図9A図5の総合学習体験の詳細なフローチャートである。
図9B図9Aの走行のステップにおける詳細なフローチャートである。
図10】検査員が対象者に対して評価した評価結果に基づいてドライビングシミュレータまたはサーバが作成した運転能力測定結果のシート情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、本発明の好適な複数の実施形態を詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されないことは言うまでもない。本発明は、以下の実施形態以外にも、本発明の技術的思想の範囲内で種々の構成態様を包含する。
【0013】
(システムの全体)
図1は、運転能力評価システム10の全体図である。運転能力評価システム10は、対象者11が、高次脳機能障害を有し、所定のリハビリテーションを行いつつ、車両12(例:普通四輪自動車)の運転に復帰するときに、車両12の運転復帰に必要な運転能力の回復を評価するシステムである。
【0014】
対象者11は、脳卒中を発症したため(P1)、現在、車両12の運転が禁止されている。免許センターは、このような対象者11に対し、運転適性相談を行う(P2)。対象者11は、運転適性相談に基づき所定の医療機関で医師の診断を受けて、診断書を発行してもらう(P3)。対象者11は、医師の診断書に基づいて、車両12の運転再開または保留、返納が決められる(P4)。
【0015】
対象者11は、医師に運転復帰に当たり、運転再開が可能と判断された意見として診断書を発行して貰う必要がある。医師は、後述の運転能力測定結果55(図10)における所定の評価項目について検査員が行った評価結果としての評価情報に基づいて診断書を作成する。
【0016】
端末Te2,Te3,Te4は、それぞれ免許センター、医療機関、および運転再開または保留、返納の場所に配備されている。ドライビングシミュレータ15は、端末Te5を含む。端末Te2~端末Te5とサーバ17とは、インターネット19を介して相互にデータを送受自在になっている。サーバ17は、演算要素16を内蔵し、外付けのデータベース18には後述の評価情報等のデータを蓄積する。
【0017】
図2は、運転能力評価システム10の主要部の詳細図である。ドライビングシミュレータ15は、後述の検査員が対象者11の仮想運転に対して立ち会うことのできる所定の施設の屋内に設置される。
【0018】
なお、ドライビングシミュレータ15自体は、高次脳機能障害の評価に使用する特殊のものではなく、対象者11の自宅にも配備することのできる汎用的なものである。ドライビングシミュレータ15は、運転能力評価システム10のドライビングシミュレータ15として使用するために所定のアプリが実装される。該所定のアプリが実装されていないドライビングシミュレータ15は、高次脳機能障害の評価に関連しない種々の走行アプリ(ゲーム用の走行アプリも含む。)を実装して、それらアプリを実行することができる。
【0019】
テーブル20及び椅子21は、室内家具として汎用な製品であり、ドライビングシミュレータ15を設置するための器具として使用される。対象者11は、ドライビングシミュレータ15において仮想運転を行うとき、テーブル20に向かいつつ、椅子21に腰掛ける。
【0020】
ドライビングシミュレータ15は、端末Te5の他に、表示部25、ステアリングホィール26、アクセルペダル27およびブレーキペダル28を備えている。端末Te5および表示部25は、例えば、それぞれ汎用のデスクトップパソコンの本体およびディプレイである。
【0021】
ステアリングホィール26、アクセルペダル27およびブレーキペダル28も、市販されているものが利用される。ステアリングホィール26、アクセルペダル27およびブレーキペダル28は、ドライビングシミュレータ15の模擬操作機器を構成する。端末Te5は、ハードウェア30として、入力インターフェース31、演算要素32および出力インターフェース33を備えている。
【0022】
入力インターフェース31は、具体的には、ステアリングホィール26、アクセルペダル27およびブレーキペダル28の模擬操作機器である。出力インターフェース33は、具体的には、表示部25である。なお、表示部25は、後述の仮想走行環境の視覚環境部分としての画像を出力する出力インターフェースである。
【0023】
出力インターフェース33として、スピーカを追加することができる。この場合、スピーカは、仮想走行環境の聴覚環境部分としての音響を出力する出力インターフェースとなる。
【0024】
ソフトウェア36は、端末Te5またはサーバ17に実装される。ソフトウェア36は、操作能力検査部38、感覚機能検査部39、仮想走行環境出力部40、評価情報保持部41および評価情報提示部42を備えている。操作能力検査部38、感覚機能検査部39、仮想走行環境出力部40、評価情報保持部41および評価情報提示部42の全部が端末Teおよびサーバ17の一方に実装されるのではなく、幾つかが端末Teに実装され、残りがサーバ17に実装されるようになっていてもよい。したがって、ソフトウェア36の実行主体は、ドライビングシミュレータ15の演算要素32およびサーバ17の演算要素16の一方または両方となる。
【0025】
運転能力評価システム10は、端末Te5のハードウェア30と、端末Te5またはサーバ17のソフトウェア36とが連携して作用を実行する。具体的には、ソフトウェア36の各機能要素(操作能力検査部38、感覚機能検査部39、仮想走行環境出力部40、評価情報保持部41および評価情報提示部42)は、演算要素16または32が、ソフトウェア36を実行するのに伴い、ソフトウェア36の各機能要素の機能のうち、対象者11または検査員に対して出力の必要な機能については、演算要素16は、出力インターフェース33から出力して、該機能を達成する。また、対象者11または検査員からの入力の必要な機能については、演算要素16は、入力インターフェース31からの入力を受け付けて、該機能を達成する。
【0026】
(診断書の復帰スケジュール)
図3は、高機能障害を発症した対象者11が、医療機関にて医師に診断書に従って車両12の運転に復帰するためのスケジュールをフローチャートで表わしたものである。
【0027】
ステップS30~S32は、対象者11に対して医療機関内の、高機能障害に関係する科、例えばリハビリテーション科や眼科で行う検査である。ステップS33は、対象者11に対して、ドライビングシミュレータ15を使って行う評価である。ステップS33は、医療機関内のリハビリテーション科で実施しもよいし、ドライビングシミュレータ15がある所ならば、教習所や、保健施設、教習所や、さらには自宅でも実施できる。
【0028】
なお、評価を行う検査員は、リモートアクセスでドライビングシミュレータ15にアクセスして、対象者11の行う仮想運転を自分の端末から視聴することができる。また、検査員は、オンラインで対象者11の仮想運転を監視する必要はなく、対象者11が行った仮想運転の再現情報をドライビングシミュレータ15やサーバ17等の記憶装置に記憶し、オフラインで該再現情報を再現して、複数の評価項目の各々について評価することも可能である。
【0029】
特許文献2,3の運転能力評価システムは、ステップS34における評価に関する。ステップS35の評価では、対象者11は、教習所の走行コースで実車を実際に走行して、評価される。
【0030】
ステップS30~S35の評価は、医師が所定の診断書を作成するために、対象者11が高次脳機能障害を有することを前提に、所定の運転能力を回復しているかを判断する際の基にするものである。運転能力評価システム10は、ステップS30~S35の全部を網羅してもよいし、この実施形態のように、ステップS33の実施に特化していてもよい。
【0031】
ステップS30では、対象者11に対して身体機能が評価される。ステップS31では、対象者11に対し、神経心理学的検査(TMT: Trail Making Test)等が行われる。ステップS32では、対象者11に対し、視機能検査が行われる。具体的には、眼科においてゴールドマン等の視野計を用いて行う視野検査となる。
【0032】
ステップS33では、運転能力評価システム10に対してドライビングシミュレータ15を用いて評価が行われる。ステップS34では、対象者11に対し、停止車両(停止状態の実車)を用いて評価が行われる。ステップS35では、教習所等において、対象者11に実車を走行させて、運転能力の評価が行われる。
【0033】
(ドライビングシミュレータにおける評価項目の評価)
図4は、図3のステップS33におけるドライビングシミュレータ15による評価の詳細なフローチャートである。ステップS40~S42は、対象者11が仮想運転席としての椅子21に腰掛けて、表示部25と正対して行われる。
【0034】
なお、図4のフローチャートは、運転能力評価方法のフローチャートでもある。図4のステップは、コンピュータとしての端末Te4およびサーバ17の一方または両方により実施される。
【0035】
ステップS40は、操作能力検査部38が実施する。ステップS41は、感覚機能検査部39が実施する。ステップS42は、仮想走行環境出力部40、評価情報保持部41および評価情報提示部42が実施する。
【0036】
ステップS40では、対象者11は、出力インターフェース33の1つとしての表示部25に突発的に出現した操作開始指示に対して直ちに模擬操作機器としてのアクセルペダル27およびブレーキペダル28を踏み込む。所定量だけペダルを踏み込むまでに要した時間から、車両12の操作機器としての反応、具体的にはアクセルペダルおよびブレーキペダルの反応速度(対象者11が操作開始の指示を受けてから実際に操作開始するまでの所要時間)が検査(計測)される。
【0037】
ステップS41では、対象者11に対し、車両12の運転時に必要な感覚機能としての有効視野を検査する。有効視野の検査は、具体的には、表示部25に表示されるマークを対象者11がどの範囲まで視認できるか(対象者11の最大視認範囲の両端位置)に基づいて検査される。
【0038】
ステップS42では。対象者11に対し、ドライビングシミュレータ15上の仮想走行環境としての市街地走行を運転能力評価システム10を実行する。詳細には、出力インターフェース33の1つとしての表示部25から市街地走行の仮想走行環境としての映像が出力される。
【0039】
表示部25に表示される画面には、対象者11が運転する仮想車両の運転席から見た前方の画像が含まれている。画像には、対象者11が運転する仮想車両が進んでいこうとする道路の他に、他の通行車両、歩行者、交差点、建物および信号等の環境画像が含まれている。
【0040】
対象者11は、ドライビングシミュレータ15からの進行指示に基づいて、指示された道路から外れることなく、かつ安全運転で、模擬操作機器としての表示部25、ステアリングホィール26、アクセルペダル27およびブレーキペダル28を操作して、仮想車両を進ませる。表示部25の画像は、仮想車両の走行速度に応じて、展開速度が変化する。仮想車両の走行速度は、対象者11によるアクセルペダル27およびブレーキペダル28の踏込み量に応じて制御される。
【0041】
図5は、図4の市街地走行のステップにおいて対象者11に提供される市街地走行の種類を示している。図4に示すように、市街地走行には、危険予測体験、環境別走行体験、ロングドライブおよび総合学習体験の4種類が含まれている。
【0042】
対象者11は、車両12の運転能力の回復に従って、危険予測体験、環境別走行体験、ロングドライブおよび総合学習体験の順に進む。
【0043】
どの種類の市街地走行を対象者11に課すかは、対象者11の住居のある地域性(対象者11が運転復帰後、車両12で走行する地域環境)および対象者11の病状等により決定される。診断書を作成する病院が市街地走行の種類を独自に決定することもある。市街地走行を対象者11に数多く課す病院では、病院が、種類ごとに走行路をあらかじめ決めて、決めた走行路に対する評価情報保持部41の運転能力を評価項目の評価について検査員に求めることがある。
【0044】
図6Aは、図5の危険予測体験の種類を示している。危険予測体験の市街地走行では、「初級」、「中級」および「上級」の3種類がある。上の級ほど、対象者11の運転能力について、高い練度が要求される。
【0045】
「初級」では、安全な対向車のみ、すなわち対向車がレーンを保持して走行している市街地走行となる。「初級」は、対象者11がドライビングシミュレータ15の市街地走行に慣れるねらいがある。
【0046】
「中級」では、「注意場面」が市街地走行に含められる。「上級」では、「注意場面」にさらに「危険場面」が追加される。
【0047】
危険予測体験の評価項目には、ステップS63の認知・判断の評価項目について5個、ステップS64の運転・操作の評価項目について5個の計10個がある。
【0048】
認知・判断の評価項目は、次のとおりである。
・標識、標示を把握したか
・車両の陰や死角に対する予測をしたか
・安全確認を実施したか
・事前に状況を把握したか
・適切に状況を判断したか
【0049】
運転・操作の評価項目は、次のとおりである。
・安全車間を確保したか
・走行位置(走行ライン)が適切だったか
・合図のタイミングは適切だったか
・適切に速度コントロールしたか
・確実にブレーキを操作したか
【0050】
検査員は、各評価項目の良否について、良であれば、1点、否ければ、0点と採点する。
【0051】
図6Bは、図5の危険予測体験のフローチャートである。対象者11がドライビングシミュレータ15において危険予測体験の仮想運転を行う時、検査員が立ち会って対象者11の仮想運転に対して各評価項目で採点する。
【0052】
ステップS61では、「初級」、「中級」および「上級」の中からコース(種類)が検査員により選択される。
【0053】
ステップS62では、ステップS61で選択されたコースに対して対象者11が運転を開始する。具体的には、ドライビングシミュレータ15の演算要素32またはサーバ17の演算要素16が、選択されたコースの市街地走行の仮想走行環境を入力インターフェース31から出力する。これに対し、対象者11は、ステアリングホィール26、アクセルペダル27およびブレーキペダル28等の模擬操作機器を操作して、表示部25に映った道路に沿って仮想車を、事故を起こさないように、進ませる。
【0054】
ステップS63では、検査員が対象者11の運転に基づいて対象者11の認知および判断の能力について採点する。対象者11の認知および判断の能力は、対象者11の運転能力の評価に関連する評価項目である。
【0055】
ステップS64では、検査員が対象者11の運転に基づいて対象者11の運転および操作の能力について採点する。対象者11の認知および操作の能力は、対象者11の運転能力の評価に関連する評価項目である。
【0056】
ステップS63およびステップS64の採点結果は、検査員の端末(図示せず)や、ドライビングシミュレータ15の入力インターフェース31に含まれているキーボード(図示せず)を介して入力される。入力された採点結果は、評価情報として、ドライビングシミュレータ15の記憶装置に記憶されるか、サーバ17に送られてから、データベース18に記憶される。
【0057】
ステップS65では、検査員が危険予測体験の各評価項目で採点した点数が集計される。集計は、ドライビングシミュレータ15またはサーバ17が行う。該集計の結果も、評価情報としてドライビングシミュレータ15の記憶装置またはデータベース18に記憶される。
【0058】
ステップS63,S64では、各項目を10点満点で採点する。危険予測体験における各レベルの合格点は、例えば、次のように設定されている。
初級:7点以上合格
中級:8点以上合格
上級:9点以上合格
【0059】
なお、危険予測体験の後に実施する走行体験において、環境別走行体験(図7)は、危険予測体験上級合格者のみ実施する。ロングドライブ(図8)は、環境別走行体験合格者のみ実施する。
【0060】
図7は、図4の環境別走行体験の種類を示している。各種の環境として、「高速」、「雨」、「雪」および「夜間」の4つが用意されている。
【0061】
高速は、高速道路の走行であり、2コース、用意されている。「雨」は、雨天時の市街地走行であり、1コース、用意されている。「雪」は、降雪時の市街地走行であり、2コース、用意されている。「夜間」は、夜間時の市街地走行であり、1コース用意されている。
【0062】
図8は、図5のロングドライブの詳細なフローチャートである。ステップS81では、市街地走行A,B,Cの3種から1つが選択されるとともに、リフレッシュゾーンを10分以上とする長距離とするか、5分の短距離とするかが選択される。ここでは、短距離と呼んでいるが、短距離もロングドライブとして定義される。すなわち、ロングドライブとは、複数の市街地走行が間に郊外走行(リフレッシュゾーン)を挟んで連結している仮想走行環境である。
【0063】
市街地走行A,B,Cは、長距離のA1,B1,C1と、短距離のA2,B2,C3とが含まれる。ステップS81で長距離が選択されたときは、ステップS82においてA1,B1,C1のいずれかが選択される。ステップS81で短距離が選択されたときは、ステップS83においてA2,B2,C2のいずれかが選択される。
【0064】
ステップS84では、ステップS82,S83の選択に従って、市街地走行の仮想走行環境がドライビングシミュレータ15の出力インターフェース33から出力される。
【0065】
ロングドライブでは、1回の走行コースを長く設定することで、対象者11に、走行時の運転感覚、ハンドルやペダル操作感覚等を十分に習熟させることをねらいとしている。対象者11が、30分ほどと、長く走行することは、対象者11の運転上の癖や弱点を見出すのに役立つ。市街地と市街地を結ぶ道(複数の市街地走行が間ら挟む走行道)は、郊外路となり、他車両の登場もないことにし、「リフレッシュゾーン(RZ)」と定義する。
【0066】
図9Aは、図5の総合学習体験の詳細なフローチャートである。総合学習体験は、ドライビングシミュレータ15における訓練の仕上げとして、最終評価を確認する走行として、対象者11に対して課すものである。対象者11が、総合学習体験前の各体験走行に十分慣熟した後で実施する。
【0067】
したがって、総合学習体験は、対象者11が車両12を実際に運転する上での認知・判断・操作が、訓練前と後でどの程度向上したかを確認するものとなる。日常走行する交通環境(市街地走行が多い、郊外の交通量の少ない道路のみ等)なども考慮の上で、対象者11の運転能力を評価する。
【0068】
総合学習体験の重要点は、特に挙げると、次の3点である。
・総合学習体験終了後、運転能力判定結果を参照して、振り返り学習を行う。
(リプレイ〔体験を録画し、結果を見ながら)講師と結果をフィードバック学習する)
・受講者が結果について納得したか否かを反応を見ながら再評価する。
・講師は、セラピスト(医師・リハビリ関係者等含む)で、彼らの観察視点を大事にする。
【0069】
ステップS91では、所定の(市街地)走行が実施される。具体的には、所定の市街地走行の仮想走行環境が出力インターフェース33から出力される。対象者11は、該仮想走行環境に含まれる仮想進行道路に対し、模擬操作機器としてのステアリングホィール26等を操作して、自分の仮想車両が逸脱したり、事故を起こさないようにして、進行させる。
【0070】
ステップS92では、ステップS91で実施した走行(仮想走行環境に対して対象者11が行った仮想運転の再現情報)をドライビングシミュレータ15の表示部25にリプレイする。詳しくは、ドライビングシミュレータ15においてリプレイに必要なデータをドライビングシミュレータ15またはサーバ17の記憶装置から出力インターフェース33に送信し、出力インターフェース33から出力する。
【0071】
リプレイは、対象者11に指導員が立ち会う。そして、対象者11は、ステップS91の走行における運転操作について検査員から助言され、自分の今後の運転にフィードバックすることになる。
【0072】
なお、対象者11に対する総合学習体験における運転にフィードバックでは、後述の運転能力測定結果55(図10)におけるU10のレーダーチャートの活用が有益である。対象者11は、自分の運転についての総合データチャートおよび運転特性チャートのレーダーチャートから複数の評価項目間の対比から自分の特に劣っている評価項目や、前回と今回との対比から改善が進まなかった評価項目を知ることができる。対象者11は、レーダーチャートから分かった、特に劣っている評価項目や、前回と今回との対比から改善が進まなかった評価項目を、重点改善目標として次の運転にフィードバックする。
【0073】
ステップS93では、検査員は、対象者11の反応に基づいて総合学習体験に係る所定の評価項目について評価する。評価内容は、ドライビングシミュレータ15の入力インターフェース31または検査員の端末(図示せず)を介してサーバ17に送信され、データベース18に記憶される。
【0074】
図9Bは、図9Aの走行のステップにおける詳細なフローチャートである。なお、対象者11の仮想運転に、検査員が横で立ち会う。
【0075】
ステップS911では、総合学習体験用の走行を仮想走行環境として入力インターフェース31から出力する。これに対し、対象者11は、ドライビングシミュレータ15において仮想的に運転している仮想車両を、ステアリングホィール26、アクセルペダル27およびブレーキペダル28を操作して、仮想運転する。
【0076】
ステップS912では、検査員は、対象者11の仮想運転に対して各観察ポイントで採点する。各観察ポイントは、総合学習体験の各評価項目の評価に相当する。
【0077】
ステップS913では、ステップS912の採点を合計した合計点を集計する。検査員は、自分の端末から各評価項目の点数を入力して、サーバ17へ送信する。これに対し、サーバ17は、合計点を集計し、各評価項目に対応付けた点数と合計点とを対象者11のID(識別子)に対応付けてデータベース18に記憶する。
【0078】
ステップS913における集計主体は、サーバ17の演算要素16に代えてドライビングシミュレータ15の演算要素32が実施することもできる。その場合、検査員は、対象者11に対する各評価項目の点数をドライビングシミュレータ15の入力インターフェース31としてのキーボード(図示せず)から入力する。
【0079】
ステップS912における評価項目は、具体的には、観察ポイントとして次の10個となる。
・走行結果表から、どこに問題点があるかを事前にチェックする
・事故やヒヤリハットした場面を中心に見る
・ハンドルとアクセルペダルで、見やすい視点位置をさがす
・一時停止や見通しの悪い交差点で停止し、安全確認しているか
・交差点での出合頭等の事故状況での原因を探る
・車両の死角の存在とその危険性の理解
・速度に応じた車間距離の重要性
・周囲の交通状況に応じた走行ポジションの確保
・常に危険を予測しながらの運転
・ブレーキ等の反応の速さをチェックする
【0080】
上記の各項目を10点満点で採点し、9点以上を合格とする。
【0081】
(評価情報)
図10は、検査員が対象者11に対して評価した評価結果に基づいてドライビングシミュレータ15またはサーバ17が作成した運転能力測定結果のシート情報である。該シート情報は、対象者11のリハビリおよび運転復帰に関与し、閲覧を許可されている関係者が端末Te2-端末Te5を介して閲覧したり、適宜プリント可能になっている。なお、対象者11本人も、閲覧を許可されたときには、閲覧やプリントが可能である。
【0082】
運転能力測定結果55に記載されている項目について概略的に説明すると、次のとおりである。
【0083】
U1:受講者情報/氏名(任意)、性別、年齢、識別番号、検査日が明記される。
U2:評価ランク凡例/「優秀 A、良好 B、普通 C、注意 D、不安 E」を表している。
U3:単純反応測定健常者 30 ~ 59 歳比較/健常者 30 ~ 59 歳(一般成人)との比較を表している。
U4:単純反応測定~健常者同年代比較/健常者同年代との比較を表している。
U5:単純反応測定~コメント/コメントが明記される。
U6:選択反応測定~健常者 30 ~ 59 歳比較/健常者 30 ~ 59 歳(一般成人)との比較を表している。
U7:選択反応測定~健常者同年代比較/健常者同年代との比較を表している。
U8:選択反応測定~コメント/コメントが明記される。
U9:走行データ/項目ごとの数値データと評価を表している。
U10:走行データチャート/走行データを分かりやすくレーダーチャートで表している。面積が広く、全体のバランスが良いのが理想的なチャートである。
U11:運転特性チャート/運転特性別に分類してレーダーチャートで表示している。
U12:担当者総合コメント/担当者が自筆でコメントとサインを記入する。
【0084】
なお、総合学習体験も10点法で、8点以上が合格とするのが望ましい。
【0085】
(変形例)
実施形態では、運転能力評価システム10は、対象者11は、高次脳機能障害者となっている。しかしながら、本発明の運転能力評価システム及び運転能力評価方法は、高次脳機能障害を有していない普通人に対して、高次脳機能の兆候の有無を評価することにも適用可能である。
【0086】
運転能力評価システム10では、対象者11の運転復帰する車両として普通四輪自動車を例として述べているが、普通四輪自動車以外の車両(例:自動二輪車)であってもよい。
【0087】
実施形態のドライビングシミュレータ15は、市販の汎用製品を利用している。本発明のドライビングシミュレータは、リハビリの対象者用に特化されたものであってもよい。
【0088】
実施形態では、対象者11の運転能力を評価項目について評価する検査者は、ドライビングシミュレータ15の31としてのキーボードや音声入力等を使って、入力している。本発明では、検査者は、所定のスマートホンやタブレットに評価情報(評価点を含む)を入力して、インターネット19を介してサーバ17のデータベース18に保存、保持することができる。
【0089】
補足すると、評価情報保持部41は、検査員が被検査者としての対象者11の運転能力について評価した各評価項目の評価情報(例:各評価項目について良ければ1点、悪ければ0点。)を端末Te4の記憶装置やデータベース18に保持させる。
【0090】
評価情報提示部42は、s22において、対象者11対象者について全部の評価項目の評価が終了する前に、すでに評価が終了した評価項目についての評価情報を、中間評価結果として関係者の例としてのセラピスト(医師、リハビリ関係者を含む)に提示する。
【0091】
実施形態では、ドライビングシミュレータ15において仮想走行環境を出力する出力インターフェース33として主に表示部25が果たしている。しかしながら、出力インターフェース33にスピーカを加えて、音響により仮想走行環境の臨場感を高めたり、対象者11に対する仮想運転中の指示を視覚表示に代えてまたは視覚表示に追加して聴覚音で出すことも可能である。
【0092】
実施形態の運転能力評価システム10の特徴の1つは、対象者11が高次脳機能障害者であったとき、該高次脳機能障害者が、車両の運転の復帰または再開するためにリハビリテーションの一環としてドライビングシミュレータで複数の市街地走行体験を所定の順番(例:危険予測体験→環境別走行体験→ロングドライブ→総合学習体験)に従って行うことである。また、所定の市街地走行体験(例:危険予測体験)は、さらに、細かいサブの市街地走行体験を含み(例:危険予測体験の初級、中級および上級の市街地走行)、そのサブの市街地走行が、所定の順番で対象者11に課せられる。こうして、評価者(検査者)および高次脳機能障害者が、効率良く、それぞれ検査および練習を行って、高次脳機能障害者が運転復帰するまでの時間が短縮される。
【符号の説明】
【0093】
10・・・運転能力評価システム、11・・・対象者、12・・・車両、13・・・表示部(出力インターフェース)、14・・・ステアリングホィール(模擬操作機器)、15・・・ドライビングシミュレータ、27・・・アクセルペダル(模擬操作機器)、28・・・ブレーキペダル(模擬操作機器)、31・・・入力インターフェース、33・・・出力インターフェース、38・・・操作能力検査部、39・・・感覚機能検査部、40・・・仮想走行環境出力部、41・・・評価情報保持部、42・・・評価情報提示部、55・・・運転能力測定結果。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10