(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】シロキサン組成物、電子写真用部材、電子写真用部材の製造方法、プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20241216BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241216BHJP
G03G 21/18 20060101ALI20241216BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G03G15/08 220
G03G15/00 551
G03G21/18 103
F16C13/00 B
F16C13/00 A
(21)【出願番号】P 2021090060
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2024-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】漆原 聖平
(72)【発明者】
【氏名】山田 真樹
(72)【発明者】
【氏名】須藤 拓哉
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-008970(JP,A)
【文献】特開2009-085436(JP,A)
【文献】特開2020-020895(JP,A)
【文献】特開2008-287230(JP,A)
【文献】特開2009-109745(JP,A)
【文献】特開2013-045012(JP,A)
【文献】特開2016-023215(JP,A)
【文献】特開2006-084726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0329261(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110249269(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第03525545(DE,A1)
【文献】特開昭61-027574(JP,A)
【文献】特開2001-056018(JP,A)
【文献】特開平04-139258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 15/00
G03G 21/18
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D)を含むシロキサン組成物であって:
(A)下記(A-1)成分及び(A-2)成分からなるオルガノポリシロキサン、
(A-1)下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン
【化1】
(平均組成式(1)中、R
1はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示し、R
2はそれぞれ独立に炭素数2~8のアルケニル基を示し、mは1000以上2000以下の数である。)
(A-2)下記平均組成式(2)で表されるオルガノポリシロキサン
【化2】
(平均組成式(2)中、R
3はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示し、R
4は繰り返し単位ごとに独立に炭素数2~8のアルケニル基を示し、оは10以上45以下の数であり、n+оは300以上500以下の数である。)
(B)比表面積が60m
2/g以上100m
2/g以下である第1のカーボンブラック、
(C)比表面積が12m
2/g以上30m
2/g以下である第2のカーボンブラック、
(D)下記平均組成式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化3】
(平均組成式(3)中、R
5はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示し、pは3以上20以下の数であり、qは4以上20以下の数である。)、
該(A)成分における該(A-2)成分の比率が0.1質量%以上5.0質量%以下であり、
該第1のカーボンブラックの含有量C1に対する該第2のカーボンブラックの含有量C2の比率(C2/C1)が2.0以上25.0以下であり、
該シロキサン組成物に対する該第1のカーボンブラック及び該第2のカーボンブラックの総量が10質量%以上30質量%以下である、ことを特徴とするシロキサン組成物。
【請求項2】
前記第2のカーボンブラックの比表面積が20m
2/g以上30m
2/g以下である請求項1に記載のシロキサン組成物。
【請求項3】
前記平均組成式(2)において、оが15以上25以下の数である請求項1または2に記載のシロキサン組成物。
【請求項4】
前記C2/C1が5.0以上10.0以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のシロキサン組成物。
【請求項5】
前記シロキサン組成物に対する前記第1のカーボンブラック及び前記第2のカーボンブラックの総量が10質量%以上20質量%以下である請求項1~4のいずれか一項に記載のシロキサン組成物。
【請求項6】
前記シロキサン組成物に対する前記第2のカーボンブラックの含有量が、11質量%以上15質量%以下である請求項1~5のいずれか一項に記載のシロキサン組成物。
【請求項7】
前記平均組成式(1)において、R
1がメチル基である請求項1~6のいずれか一項に記載のシロキサン組成物。
【請求項8】
基体と該基体上の弾性層とを有する電子写真用部材であって、該弾性層が、請求項1~7のいずれか一項に記載のシロキサン組成物の硬化物であることを特徴とする電子写真用部材。
【請求項9】
基体と該基体上の弾性層とを有する電子写真用部材の製造方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載のシロキサン組成物の層を硬化させて該弾性層を形成する工程を有することを特徴とする電子写真用部材の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の電子写真用部材を具備し、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項11】
静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された該像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像装置と、該トナー像を転写材に転写するための転写装置と、を有する電子写真画像形成装置であって、該現像装置が、請求項8に記載の電子写真用部材を有することを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シロキサン組成物、電子写真用部材、電子写真用部材の製造方法、プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、天然ゴムや他の合成ゴムと比較して広い温度範囲で安定したゴム弾性を有し、温度による物性の変化が小さい。また、シリコーンゴムは、耐熱性、耐寒性、耐候性及び耐紫外線性にも優れることから、電気・電子産業や建築・土木、自動車、一般家庭用製品等の分野において幅広く応用されている。特に、ヒドロシリル化により硬化させる付加硬化型液状シリコーンゴムは、短時間で硬化が可能で、硬化収縮が小さいため、高い寸法精度が要求される電子写真分野の各種部材に利用されている。このため、電子写真用部材として、シリコーンゴムを用いた弾性層と、該弾性層外周に、耐久性を付与するために耐摩耗性の高い表面層とを有する電子写真用部材が好ましく用いられる。
【0003】
電子写真用部材として導電性が必要とされる場合には、シリコーンゴム弾性層を、導電剤を添加した導電性シリコーンゴムで形成する場合がある。このような構成を有する電子写真用部材として、特許文献1には、DBP吸収量の異なる2種のカーボンブラックを含有させたシリコーンゴム弾性層を具備する現像ローラが開示されている。そして、このような現像ローラにおいては、比表面積の低いカーボンブラックが弾性層の表面近傍に分布することで弾性層の表面における導電経路が設けられること、また、比表面積の高いカーボンブラックが弾性層の表面から導電性の軸芯体に至るまでの導電経路の形成に寄与すること、その結果として、当該現像ローラのチャージアップが抑制できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る現像ローラは、温度40℃、相対湿度95%の如き高温高湿環境下において、トナー規制ブレードの如き当接部材を現像ローラの表面の特定の位置に長期に亘って当接させた場合、その当接部分に、容易に回復しない塑性変形(以降、「Cセット」ともいう)が生じることがあった。Cセットが生じた部分は、他の部分とトナーの搬送性が異なる。そのため、かかる現像ローラを用いて電子写真画像を形成したときに、電子写真画像にCセットに由来する濃度ムラが生じることがあった。
【0006】
本開示の一態様は、長期の当接によってもCセットが生じにくい導電性の弾性層を与えるシロキサン組成物の提供に向けたものである。また、本開示の他の態様は、長期の当接によってもCセットを生じにくい導電性弾性層を備えた電子写真用部材の提供に向けたものである。さらに、本開示の他の態様は、高品位な電子写真画像の安定的な形成に資するプロセスカートリッジの提供に向けたものである。本開示の更に他の態様は、高品位な電子写真画像を安定して形成することができる電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、下記成分(A)~(D)を含むシロキサン組成物であって:
(A)下記(A-1)成分及び(A-2)成分からなるオルガノポリシロキサン、
(A-1)下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン
【0008】
【0009】
(平均組成式(1)中、R1はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示し、R2はそれぞれ独立に炭素数2~8のアルケニル基を示し、mは1000以上2000以下の数である。)
【0010】
(A-2)下記平均組成式(2)で表されるオルガノポリシロキサン
【0011】
【0012】
(平均組成式(2)中、R3はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示し、R4は繰り返し単位ごとに独立に炭素数2~8のアルケニル基を示し、оは10以上45以下の数であり、n+оは300以上500以下の数である。)
(B)比表面積が60m2/g以上100m2/g以下である第1のカーボンブラック、
(C)比表面積が12m2/g以上30m2/g以下である第2のカーボンブラック、
(D)下記平均組成式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【0013】
【0014】
(平均組成式(3)中、R5はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示し、pは3以上20以下の数であり、qは4以上20以下の数である。)、
該(A)成分における該(A-2)成分の比率が0.1質量%以上5.0質量%以下であり、該第1のカーボンブラックの含有量C1に対する該第2のカーボンブラックの含有量C2の比率(C2/C1)が2.0以上25.0以下であり、該シロキサン組成物に対する該第1のカーボンブラック及び該第2のカーボンブラックの総量が10質量%以上30質量%以下であるシロキサン組成物が提供される。
【0015】
また、本開示の他の態様によれば、基体と該基体上の弾性層とを有する電子写真用部材であって、該弾性層が、上記のシロキサン組成物の硬化物である電子写真用部材が提供される。
また、本開示の他の態様によれば、基体と該基体上の弾性層とを有する電子写真用部材の製造方法であって、上記のシロキサン組成物の層を硬化させて該弾性層を形成する工程を有する電子写真用部材の製造方法が提供される。
【0016】
また、本開示の他の態様によれば、上記の電子写真用部材を具備し、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジが提供される。
また、本開示の更に他の態様によれば、静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された該像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像装置と、該トナー像を転写材に転写するための転写装置と、を有する電子写真画像形成装置であって、該現像装置が、上記の電子写真用部材を有する電子写真画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一態様によれば、長期の当接によってもCセットが生じにくい導電性の弾性層を与えるシロキサン組成物を得ることができる。また、本開示の他の態様によれば、長期の当接によってもCセットを生じにくい導電性弾性層を備えた電子写真用部材を得ることができる。さらに、本開示の他の態様によれば、高品位な電子写真画像の安定的な形成に資するプロセスカートリッジを得ることができる。本開示の更に他の態様によれば、高品位な電子写真画像を安定して形成することができる電子写真画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示に係る電子写真用部材の一例を示す模式断面図である。
【
図2】本開示に係るプロセスカートリッジの一例を示す模式断面図である。
【
図3】本開示に係る電子写真画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図4】本開示に係る電子写真用部材の電気抵抗測定器の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者らの検討によれば、特許文献1に係る現像ローラにCセットが生じる原因が、特許文献1に係る現像ローラの弾性層中に含まれている、比表面積の低いカーボンブラックによるものと推定した。すなわち、特許文献1にも記載されている通り、DBP吸収量が20ml/100g~50ml/100gであるような比表面積の低いカーボンブラックは、液状シリコーンゴムとの親和性が低く、弾性層中においてはその表面側に偏在し易い。また、当該カーボンブラックは、液状シリコーンゴムとの親和性が低いため、弾性層中においても、周囲のシリコーンゴムが、当該カーボンブラックのアグリゲートの空隙に入り込めず、微小な空隙が存在していると考えられる。このような弾性層に他部材が当接することで押圧力が加わった場合、当該間隙にシリコーンゴムが押し込まれた状態となる。この状態は、押圧力が除去された後も維持される結果、当接部にCセットが生じるものと考えられる。
【0020】
本発明者らは、弾性層に優れた導電性をもたらす比表面積の異なる2種のカーボンブラックを使用するうえでは、Cセットの原因と考えられる、弾性層中における比表面積が低いカーボンブラックのアグリゲートとシリコーンゴムとの間隙をなくすための技術開発が必要であることを認識した。そこで、比表面積の低いカーボンブラックのアグリゲートとシリコーンゴムとの間の間隙の発生を阻止すべく検討を重ねた結果、下記の硬化性の液状シロキサン組成物がその目的をよく達成し得ることを見出した。
【0021】
すなわち、下記成分(A)~(D)を含むシロキサン組成物であって:
(A)下記(A-1)成分及び(A-2)成分からなるオルガノポリシロキサン、
(A-1)下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン
【0022】
【0023】
(平均組成式(1)中、R1はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示し、R2はそれぞれ独立に炭素数2~8のアルケニル基を示し、mは1000以上2000以下の数である。)
(A-2)下記平均組成式(2)で表されるオルガノポリシロキサン
【0024】
【0025】
(平均組成式(2)中、R3はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示し、R4は繰り返し単位ごとに独立に炭素数2~8のアルケニル基を示し、оは10以上45以下の数であり、n+оは300以上500以下の数である。)
(B)比表面積が60m2/g以上100m2/g以下である第1のカーボンブラック、
(C)比表面積が12m2/g以上30m2/g以下である第2のカーボンブラック、
(D)下記平均組成式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【0026】
【0027】
(平均組成式(3)中、R5はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示し、pは3以上20以下の数であり、qは4以上20以下の数である。)、
該(A)成分における該(A-2)成分の比率が0.1質量%以上5.0質量%以下であり、
該第1のカーボンブラックの含有量C1に対する該第2のカーボンブラックの含有量C2の比率(C2/C1)が2.0以上25.0以下であり、
該シロキサン組成物に対する該第1のカーボンブラック及び該第2のカーボンブラックの総量が10質量%以上30質量%以下であるシロキサン組成物。
【0028】
上記のシロキサン組成物の硬化物において、シリコーンゴムと比表面積の低いカーボンブラックのアグリゲートとの間隙の発生を抑制でき、その結果として、当該硬化物にCセットが生じにくくなる理由を、本発明者らは以下のように推測している。
【0029】
上記した本開示の一態様に係るシロキサン組成物は、平均組成式(2)で示される成分(A-2)を一定量含む。当該成分は、側鎖部分(R4)にアルケニル基を有し、両末端にトリアルキルシロキシ基(-OSi(R3)3)を有するオルガノポリシロキサンである。かかるオルガノポリシロキサンを含むシロキサン組成物を硬化させた場合、成分(A-2)のアルケニル基は、架橋剤である成分(D)のヒドロシリル基(SiH)とヒドロシリル化反応を生じて重合体の架橋点を形成する。また、平均組成式(2)において、n+оは、300以上500以下であり、当該シロキサン組成物の硬化物中では、当該アルケニル基に起因する架橋点と両末端のトリアルキルシロキシ基とは比較的近接している。そのため、架橋点の近傍にトリアルキルシロキシ基を高い密度で存在させ得ると考えられる。また、トリアルキルシロキシ基は疎水性が高いため、カーボンブラック表面付近との間で疎水性相互作用が生じ易い。すなわち、当該硬化物中のシリコーン樹脂においては、成分(A-2)のアルケニル基に由来する架橋点近傍に、カーボンブラックとの親和性の高いトリアルキルシロキシ基が高密度に存在していると考えられる。その結果、当該シリコーン樹脂とカーボンブラックとの間の親和性が高まり、カーボンブラックのアグリゲートの空隙が、周囲のシリコーンゴムによって埋められやすくなっていると考えられる。このことにより、本開示の一態様に係るシロキサン組成物の硬化物においてはCセットの発生が有効に抑制されるものと考えられるのである。
【0030】
<シロキサン組成物>
[(A)(A-1)成分及び(A-2)成分からなるオルガノポリシロキサン]
((A-1)下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン)
【0031】
【0032】
平均組成式(1)において、R1はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示す。立体障害を抑制することで、分子の絡み合いによる塑性変形を抑制する観点から、R1は炭素数1~4の直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。なお、複数のmに対して、繰り返し単位((R1)2SiO)ごとに、R1が異なっていてもよい。
R2はそれぞれ独立に炭素数2~8のアルケニル基を示す。R2としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。これらの中でも、R2としてはビニル基が好ましい。反応性官能基であるアルケニル基が末端にあることで、側鎖に比較して硬化後の架橋点間距離がほぼ一定となり、規則的な分子構造になる。そのため、分子の絡み合いが少なく、塑性変形を抑制することができる。
【0033】
平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサンの平均重合度mは、1000以上2000以下の数である。平均重合度mは、より好ましくは、1500以上2000以下の数である。平均重合度mが上記範囲内にあることで、弾性層として必要な柔軟性を得ることができる。
【0034】
ここで、平均重合度は、Gel Permeation Chromatography(GPC:ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いた測定から得られる重量平均分子量(Mw)から算出した値とする。具体的には、GPCカラム(商品名:TSKgel SuperHM-m、東ソー社製)2本を直列につないだ高速液体クロマトグラフ分析装置(製品名:HLC-8120GPC、東ソー社製)を用いる。測定条件は、温度40℃、流速0.6ml/min、RI(屈折率)とし、測定サンプルを0.1質量%含むテトラヒドロフラン(THF)溶液を調製して測定する。標準試料として単分散標準ポリスチレン(商品名:TSK標準ポリスチレンF-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500、東ソー社製)を準備する。該標準試料を用いて、検量線を作成する。測定サンプルの保持時間、又はカウント数から分子量分布を得る。この分子量分布から重量平均分子量Mwを求め、平均重合度を算出することができる。
【0035】
(A-1)成分としては市販品を使用することができる。具体的には、両末端ビニルポリジメチルシロキサンとして、例えば以下の如き製品が挙げられる。DMS-V41、DMS-V42、DMS-V43、DMS-V46、DMS-V51(何れも商品名、Gelest社製)。
また、(A-1)成分は、公知の方法によって得ることができる。例えば、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルビニルシクロポリシロキサン等のオルガノシクロポリシロキサンと、ヘキサメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン等のヘキサオルガノジシロキサンとを用いる。これらを用いて、アルカリ触媒または酸触媒の存在下にて平衡化反応を行うことによって、(A-1)成分を得ることができる。
【0036】
なお、本明細書において、平均組成式とは、オルガノポリシロキサンが互いに異なる構造を有するものの混合物である場合において、該混合物を構成する複数のオルガノポリシロキサンについて組成の平均をとったときに表される組成式を意味する。
【0037】
(A-1)成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。そして、(A-1)成分が、2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物で構成される場合において、各々のオルガノポリシロキサンとしては、混合物の平均重合度mが1000以上2000以下の数となる限りにおいては、いかなるものでも用いることができる。具体的には、例えば、R1及びR2は平均組成式(1)に係る規定の範囲内であるものの、平均重合度mが2000を超えるオルガノポリシロキサン(例えば、「DMS-V52」、商品名、Gelest社製)であっても、他のオルガノポリシロキサンと組み合わせて平均重合度mを1000以上2000以下とすることで、(A-1)成分の構成成分として用いることができる。なお、(A-1)成分が、2種以上のオルガノポリシロキサンで構成されている場合の平均重合度mは、上述した方法と同様の方法によって算出することができる。具体的には、上記測定サンプルとして、2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物を使用することにより、平均重合度mを算出することができる。
【0038】
((A-2)下記平均組成式(2)で表されるオルガノポリシロキサン)
【0039】
【0040】
平均組成式(2)において、R3はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示す。R3は炭素数1~4の直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。なお、複数のnに対して、繰り返し単位((R3)2SiO)ごとにR3が異なっていてもよい。また、複数のoに対して、繰り返し単位(R3R4SiO)ごとにR3が異なっていてもよい。
R4は繰り返し単位ごとに独立に炭素数2~8のアルケニル基を示す。R4としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。これらの中でも、R4としてはビニル基が好ましい。反応性官能基であるアルケニル基が側鎖にあることで、末端に比較して硬化後の架橋点間距離が短くなり、末端トリアルキルシロキシ基を密集させやすい傾向にある。
【0041】
平均組成式(2)で表されるオルガノポリシロキサンの平均重合度n+оは、300以上500以下の数である。n+оが上記範囲内にあることで、架橋点付近に末端トリアルキルシロキシ基を密集させることができる。そのうち、оは10以上45以下の数である。оが10以上であることで、架橋点間距離を近づけることができるため、末端トリアルキルシロキシ基が必要以上に動かないように固定できる。また、оが45以下であることで、架橋点間距離が短くなり過ぎず、柔軟性を保持できるため、塑性変形を抑制することができる。特に、оが15以上25以下の数であることで、末端トリアルキルシロキシ基の自由度が高く、カーボンブラックに近接しやすくなるためより好ましい。
ここで、平均重合度n及びоは、1H-NMRから得られるアルケニル基由来のピークの積分値とケイ素原子に結合するアルキル基由来のピークの積分値の積分比と、前記GPCから得られる重量平均分子量(Mw)から算出した値とする。
【0042】
(A-2)成分としては市販品を使用することができる。具体的には、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体として、例えば以下の如き製品が挙げられる。VDT-431、VDT-731(何れも商品名、Gelest社製)等。
【0043】
(A)成分における(A-2)成分の比率は、0.1質量%以上5.0質量%以下である。(A-2)成分の比率が0.1質量%以上であることで、シリコーン樹脂の分子構造中に、近傍にトリアルキルシロキシ基が高密度に存在する架橋点を一定量導入することができる。また、(A-2)成分の比率が5.0質量%以下であることで、末端トリアルキルシロキシ基が過剰に存在せず、分子の絡み合いによる塑性変形の悪化を抑制できる。
【0044】
(A-2)成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。そして、(A-2)成分が2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物で構成される場合において、各々のオルガノポリシロキサンとしては、混合物の平均重合度оが10以上45以下の数、n+oが300以上500以下の数となる限りにおいてはいかなるものでも用いることができる。また、(A-2)成分が2種以上のオルガノポリシロキサンで構成されている場合の平均重合度n+oは、上述した方法と同様の方法によって算出することができる。
【0045】
[(B)第1のカーボンブラック、(C)第2のカーボンブラック]
第1のカーボンブラックは、比表面積が、60m2/g以上100m2/g以下の範囲内であり、第2のカーボンブラックは、比表面積が、12m2/g以上30m2/g以下、より好ましくは20m2/g以上30m2/g以下の範囲内である。
第1のカーボンブラックの比表面積が上記範囲内にあることで、弾性層を全体として中抵抗領域の導電特性にすることができる。ここで、中抵抗領域とは、電気抵抗率で表すと1.0×10-9Ω・cm以上1.0×10-6Ω・cm以下であることが好ましい。また、第2のカーボンブラックの比表面積が上記範囲内にあることで、弾性層表面近傍にカーボンブラックを存在させることができるため、弾性層の表面電位を低くすることができる。
【0046】
ここで、比表面積とは、日本産業規格(JIS)K6217-7:2013「ゴム用カーボンブラック-基本特性-第7部:ゴム配合物-多点法窒素比表面積(NSA)及び統計的厚さ比表面積(STSA)の求め方」で定められた、BETのガス吸着理論の多点法に基づく窒素比表面積(NSA)をいう。当該規格に記載されているように、カーボンブラックの細孔を含む全比表面積を測定する方法であり、一次粒子径と反比例し、一般的にカーボンブラックの空隙が多いほど吸着窒素量が増加し、比表面積が大きくなる傾向がある。
【0047】
当該第1及び第2のカーボンブラックは、各々市販品を使用することができる。具体的には、第1のカーボンブラックとしては例えば、旭#70、旭#70L、SUNBLACK735、SUNBLACK200、SUNBLACK280、SUNBLACK285、SUNBLACK335、SUNBLACK605、SUNBLACK X55(何れも商品名、旭カーボン社製);デンカブラック粉状品、デンカブラックプレス品100%、デンカブラック粒状品、デンカブラックLi-100(何れも商品名、デンカ社製);シースト5H、シーストKH、シースト3H、シーストNH、シースト3、シーストN、シースト300(何れも商品名、東海カーボン社製);#52、#33、#32、#30、#85、#24、MA11、MA230、#4000B(何れも商品名、三菱カーボン社製)が挙げられる。
第2のカーボンブラックとしては例えば、旭#55、旭#50HG、旭#52、旭#50、旭#50U、旭#35、旭#22K、旭#15HS、旭#15、旭#8、アサヒサーマル、SUNBLACK235、SUNBLACK250(何れも商品名、旭カーボン社製);シーストV、シーストFY、シーストS、シーストSP、シーストTA(何れも商品名、東海カーボン社製)が挙げられる。
また、各種表面処理を行い、比表面積を調整したカーボンブラックも使用することができる。
【0048】
第2のカーボンブラックの含有量は、シロキサン組成物に対して、11質量%以上15質量%以下が好ましい。第2のカーボンブラックの含有量が上記範囲内にあることで、表面電位を低く維持しながら、空隙を抑制することができるため、塑性変形をより抑制できる。
【0049】
第1のカーボンブラックの含有量C1に対する第2のカーボンブラックの含有量C2の比率(C2/C1)は、2.0以上25.0以下である。C2/C1が上記範囲内にあることで、シロキサンとカーボンブラック間の空隙を抑制することができる。特に、C2/C1が5.0以上10.0以下である場合、表面電位を低く維持しながら、空隙を抑制することができるため、塑性変形をより抑制できる。
【0050】
シロキサン組成物に対するカーボンブラックの総量、すなわち、第1のカーボンブラック及び第2のカーボンブラックの含有量の総量は10質量%以上30質量%以下であり、10質量%以上20質量%以下が好ましい。第1のカーボンブラック及び第2のカーボンブラックの総量が上記範囲内にあることで、弾性層を中抵抗領域の導電性としながら、ゴム弾性を維持することで塑性変形を抑制することができる。
【0051】
なお、本開示のシロキサン組成物から、カーボンブラックの比表面積及びカーボンブラックの含有量の比率C2/C1を測定する方法を以下に例示する。
シロキサン組成物をキシレン等の有機溶媒で希釈し、超音波照射することにより、シロキサン成分とカーボンブラックを分離する。静置後、沈降したカーボンブラックを採取し、エタノール溶液などで希釈し、密度勾配沈降速度法を利用した超遠心機(エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ社製など)により分級を行う。分離したカーボンブラックを採取し、乾固した後、上記JIS K6217-7:2013に従って、比表面積を測定する。また、分離したカーボンブラックの質量を測定することで、カーボンブラックの含有量の比率C2/C1を導出することができる。
また、カーボンブラックの総量は、公知の熱重量分析を用いてシロキサン組成物を測定することで導出することができる。
【0052】
[(D)下記平均組成式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン]
【0053】
【0054】
平均組成式(3)において、R5はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示す。R5は炭素数1~4の直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。なお、複数のpに対して、繰り返し単位((R5)2SiO)ごとにR5が異なっていてもよい。また、複数のqに対して、繰り返し単位(R5HSiO)ごとにR5が異なっていてもよい。
【0055】
平均重合度pは3以上20以下の数であり、qは4以上20以下の数である。平均重合度p及びqが上記範囲内にあることで、末端トリアルキルシロキシ基を架橋点付近に密集させることができる。また、p及びqが上記範囲内にあることで、弾性層に必要な柔軟性を付与することができる。
ここで、平均重合度p及びqは、1H-NMRから得られるケイ素原子に結合した水素原子由来のピークの積分値とケイ素原子に結合するアルキル基由来のピークの積分値の積分比と前記GPCから得られる重量平均分子量(Mw)から算出した値とする。
【0056】
(D)成分であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A-1)及び(A-2)成分からなるオルガノポリシロキサンとの付加硬化反応に用いられる架橋剤である。例えば、(D)成分としては、以下のようなものを挙げることができる。分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、該共重合体2種以上の混合物、及び該共重合体と分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルハイドロジェンシロキサンとの混合物。
(D)成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。そして(D)成分が2種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの混合物で構成される場合において、各々のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、混合物の平均重合度p、qが上記した値となる限りにおいては、いかなるものでも用いることができる。具体的には、例えば、前記分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルハイドロジェンシロキサンは、平均組成式(3)中のpが0であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、単独では平均組成式(3)を満たさない。ただし、他の分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体と組み合わせて用いることにより、平均組成式(3)を満たす(D)成分として用いることができる。
【0057】
(D)成分としては市販品を使用することができる。具体的には、分子鎖両末端トリメチルシリル基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体として、例えば、HMS-151、HMS-301、HMS-501(何れも商品名、Gelest社製)が挙げられる。
【0058】
また、シリコーン組成物における(D)成分の含有量は、(A-1)及び(A-2)成分からなるオルガノポリシロキサンに含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基に対する、(D)成分のケイ素原子に結合した水素原子のモル比が1.0以上6.0以下となる量が好ましい。また、前記モル比は、1.0以上5.0以下であることがより好ましい。前記モル比が上記範囲内にあることで、未反応物を抑制し、粘性成分の低減により塑性変形をより抑制することができる。
【0059】
[触媒化合物]
触媒化合物は、(A-1)及び(A-2)成分と(D)成分との付加硬化反応を促進するために用いる触媒である。触媒化合物としては、以下のようなものを挙げることができる。白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、白金とアルケニルシロキサンとの錯体等が挙げられる。
触媒化合物は市販品を使用することができ、具体的には、SIP6829.2、SIP6832.2、SIP6830.3、SIP6831.2、SIP6833.2(何れも商品名、Gelest社製)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シロキサン組成物における触媒化合物の含有量としては、硬化反応性の観点から、1質量ppm以上100質量ppm以下となる量が好ましい。
【0060】
[その他の成分]
本開示に係るシロキサン組成物は、上記以外にも、上記組成の機能を阻害しない範囲で、必要に応じて補強性付与剤、硬化制御剤、導電剤、可塑剤、加硫剤、加硫助剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤等の各種添加剤を含有することができる。
【0061】
[シロキサン組成物の調製方法]
本開示に係るシロキサン組成物は、上記各成分を公知の混合装置を用いて混合することにより調製することができる。混合装置としては、以下の装置が挙げられる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダーミキサー、2本ロールミル、3本ロールミル、バンバリーミキサー、連続ミキサー、プラネタリーミキサー、3軸ミキサー、自転・公転ミキサーの如き動的混合装置や、スタティックミキサーの如き静的混合装置が挙げられる。
特に、(A-1)成分などのオルガノシロキサンとカーボンブラックの濡れ性が低く、分散が困難な場合には、特開2005-113031号公報に挙げられるような、いわゆる「固練り」による分散手段を用いることが好ましい。「固練り」によれば、分散体の粘度を高くすることで、せん断応力を高め、カーボンブラックの凝集物を解砕することができる。
【0062】
<電子写真用部材>
本開示に係る電子写真用部材は、基体と該基体上の弾性層とを有し、該弾性層が、本開示に係るシロキサン組成物の硬化物から形成されている。電子写真用部材としては、電子写真画像形成装置において使用される導電性ローラが代表例として挙げられる。導電性ローラとしては、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等が挙げられる。以下、必要に応じて、本開示に係る電子写真用部材を代表例である現像ローラによって説明するが、本開示はこれに限定されない。
【0063】
本開示の電子写真用部材は、磁性一成分現像剤や非磁性一成分現像剤を用いた非接触型現像装置及び接触型現像装置や、二成分現像剤を用いた現像装置等いずれにも適用することができる。本開示の電子写真用部材の一例として、現像ローラを、
図1(a)、(b)に示す。
図1(a)に示す電子写真用部材1は、基体2と、その外周に設けられた弾性層3とからなる。電子写真用部材1は、
図1(b)に示すように、基体2と弾性層3、さらに必要に応じて表面層4を設けていてもよい。
【0064】
〔基体〕
基体2は、特に制限されるものではなく、中空状あるいは中実状のものが使用できる。基体2は、導電性の外表面を有し、その上に設けられる弾性層3を支持する機能を有する。材質としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケルの如き金属;これらの金属を含むステンレス鋼、ジュラルミン、真鍮、青銅及び快削鋼の如き合金等を挙げることができる。導電性の基体の外表面には、導電性を損なわない範囲で、クロムやニッケルでメッキ処理を施すことができる。さらに、導電性の基体としては、樹脂製の基体の表面を金属で被覆して表面導電性としたものや、導電性樹脂組成物から製造されたものも使用可能である。導電性の基体2の表面には、その外周面に設けられる弾性層3との接着性を向上させる目的で、適宜公知の接着剤を塗布してもよい。基体2の大きさは特に限定されないが、例えば、外径4mm以上、20mm以下、長さ200mm以上、380mm以下とすることができる。
【0065】
〔弾性層〕
上記基体2の外周上に、本開示に係るシロキサン組成物の硬化物からなる弾性層3を形成する。
弾性層は、電子写真用部材に要求される弾性を有しており、基体の外周面上に直接または間接的に設けられてなる。弾性層の硬度としては、例えば、アスカーC硬度で20度以上、80度以下とすることができる。弾性層の厚さとしては、例えば、0.3mm以上、6.0mm以下とすることができる。弾性層の厚さは、断面を光学顕微鏡で観察・測定することにより求めることができる。
基体上に弾性層を形成する方法としては、型成形法、押出成形法、射出成形法、塗工成形法等を挙げることができる。
【0066】
〔表面層〕
表面層4の材質としては、以下のものを挙げることができる。スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、繊維素系樹脂、アクリル系樹脂の如き熱可塑性樹脂。エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、光硬化性樹脂等。本開示に係る電子写真用部材を現像ローラとして使用する場合は、トナーの摩擦帯電付与能が優れているなどの点から、ポリウレタン樹脂が特に好ましい。これらの樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
表面粗度が必要な場合は、表面層4中に粗さ制御用微粒子を含有させることができる。粗さ制御用微粒子の体積平均粒径は3μm以上、20μm以下であることが好ましい。また、表面層4中に含有される該微粒子の量は、上記樹脂成分100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。粗さ制御用微粒子としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の微粒子を用いることができる。
【0068】
上記各種樹脂に電子導電性物質やイオン導電性物質のような導電性付与剤を配合することにより、表面層4に導電性を付与し、適切な抵抗領域に調整することができる。電子導電性物質としては、以下のものを挙げることができる。ケッチェンブラックEC、アセチレンブラックの如き導電性カーボンブラック;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MTの如きゴム用カーボンブラック;酸化処理を施したカラー(インク)用カーボンブラック;銅、銀、ゲルマニウムの如き金属及び金属酸化物。これらの中でも、少量で導電性を制御しやすいことから、導電性カーボンブラックが好ましい。表面層4中の導電性カーボンブラックの含有量は、上記樹脂成分に対して3質量%以上、30質量%以下であることが好ましい。これら電子導電性物質は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、イオン導電性物質としては、以下のものを挙げることができる。過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウムの如き無機イオン導電性物質;変性脂肪族ジメチルアンモニウムエトサルフェート、ステアリルアンモニウムアセテートの如き有機イオン導電性物質。表面層4中のイオン導電性物質の含有量は、上記樹脂成分に対して0.1質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。これらイオン導電性物質は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
表面層4は、上記以外にも、機能を阻害しない範囲で、架橋剤、可塑剤、充填剤、増量剤、加硫剤、加硫助剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤、レベリング剤等を含有することができる。
【0070】
表面層4の厚さは1μm以上、100μm以下が好ましい。表面層の厚さが1μm以上であることにより、磨耗等による劣化を抑制することができる。また、表面層の厚さが100μm以下であることにより、電子写真用部材の表面が高硬度になることを抑制し、トナーの劣化を抑制し、電子写真用部材の表面へのトナー由来の固着を抑制することができる。トナーへのダメージを考慮すると、表面層の厚さは1μm以上、50μm以下であることがより好ましい。
【0071】
表面層4の形成方法としては特に限定されるものではないが、例えば、表面層4の各成分を溶剤中に分散混合して塗料化し、表面層形成用塗布液を調製する。該表面層形成用塗布液を弾性層3上に塗工し、乾燥固化又は硬化することにより表面層4を形成することが可能である。分散混合には、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミルの如きビーズを利用した公知の分散装置を用いることが好ましい。塗工方法としては、浸漬塗工、リング塗工、スプレー塗工又はロールコート等を採用することができる。
【0072】
<プロセスカートリッジ>
本開示に係るプロセスカートリッジは、本開示に係る電子写真用部材を具備し、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されている。本開示に係る電子写真用部材を現像ローラ1として用いた本開示のプロセスカートリッジの一例を
図2に示す。
図2に示すプロセスカートリッジは、現像ローラ1と現像ブレード9とを備える現像装置10、電子写真感光体5、クリーニングブレード6、廃トナー収容容器13及び帯電ローラ12を有し、これらが一体化されて電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に設けられている。現像装置10は、さらにトナー8が充填されたトナー容器を含む。トナー8は、トナー供給ローラ7によって現像ローラ1の表面に供給され、現像ブレード9によって、現像ローラ1の表面に所定の厚みのトナー8の層が形成される。
本開示のプロセスカートリッジは、上記の他、電子写真感光体5上のトナー像を記録材に転写する転写部材などを上記部材と共に一体的に設けたものであってもよい。また、本開示に係るプロセスカートリッジは、現像装置10のみが着脱可能に構成されていてもよい。
【0073】
<電子写真画像形成装置>
本開示に係る電子写真画像形成装置は、静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された該像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像装置と、該トナー像を転写材に転写するための転写装置と、を有する。そして、該現像装置が、本開示に係る電子写真用部材を有する。
図3は、本開示に係る電子写真用部材を、一成分トナーを用いた接触型現像装置の現像ローラとして搭載した電子写真画像形成装置の一例を示す概略断面図である。この電子写真画像形成装置においては、不図示の回転機構により回転する電子写真感光体5の周囲に、電子写真感光体5の表面を所定の極性・電位に帯電する帯電部材(帯電ローラ)12が配置される。さらに、帯電された電子写真感光体5の表面に画像露光を行って静電潜像を形成する、不図示の画像露光装置が配置される。さらに、電子写真感光体5の周囲には、形成された静電潜像上にトナー8を付着させて現像する本開示に係る現像ローラ1を備える現像装置10が配置される。さらに、紙22にトナー像を転写した後、電子写真感光体5上をクリーニングするクリーニング装置13が設けられる。紙22の搬送経路上には、転写されたトナー像を紙22上に定着させる定着装置15が配置される。
【0074】
以下、電子写真画像形成装置のプリント動作を説明する。電子写真感光体5は矢印方向に回転し、該電子写真感光体5を帯電処理するための帯電ローラ12によって一様に帯電される。次いで、露光手段であるレーザー光11により、電子写真感光体5の表面に静電潜像が形成される。該静電潜像に、電子写真感光体5に対して接触配置される現像ローラ1から、トナー供給ローラ7から供給されたトナー8が付与されることにより、該静電潜像がトナー像として可視化される(現像)。現像は、露光部にトナー像を形成する、いわゆる反転現像である。電子写真感光体5上に形成されたトナー像は、転写部材である転写ローラ17によって記録媒体である紙22に転写される。なお、転写ローラ17には、バイアス電源18から電圧が印加されている。紙22は、給紙ローラ23及び吸着ローラ24を経て装置内に給紙され、エンドレスベルト状の転写搬送ベルト20によって、電子写真感光体5と転写ローラ17の間に搬送される。転写搬送ベルト20は、従動ローラ21、駆動ローラ16及びテンションローラ19によって稼働している。トナー像が転写された紙22は、剥離装置14によって転写搬送ベルト20から剥離され、定着装置15に送られる。そして、定着装置15により定着処理された後、装置外に排紙されて、プリント動作が終了する。一方、転写されずに電子写真感光体5上に残存した転写残トナーは、電子写真感光体表面をクリーニングするためのクリーニング部材であるクリーニングブレード6により掻き取られ、廃トナー収容容器13に収納される。クリーニングされた電子写真感光体5は、以上のプリント動作を繰り返し行う。
【実施例】
【0075】
以下に、具体的な製造例、実施例及び比較例により、本開示を説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0076】
<カーボンブラック>
カーボンブラックとして、表1に示す市販のカーボンブラックを使用した。JIS K6217-7:2013に準じて測定した比表面積を表1に示す。
【0077】
【0078】
<実施例1に係るシロキサン組成物1の製造例>
表2に示す原料をプラネタリーミキサー(製品名:PLM-2、井上製作所社製)に投入し、回転数:自転60rpm/公転19rpmで1時間分散し、シロキサン-カーボンブラック分散中間体を調製した。その後、表2に示す(A-1)成分をさらに60質量部(合計で100質量部)添加し、2時間分散し、シロキサン-カーボンブラック分散体を得た。
【0079】
【0080】
シロキサン-カーボンブラック分散体と表3に示す原料を自転・公転ミキサー(製品名:ARE-500、シンキー社製)に投入し、回転数2000rpmで3分間分散し、シロキサン組成物1を製造した。
なお、(A-1)、(A-2)及び(D)成分の平均重合度はそれぞれ、m=1700、n=370、о=20、p=20、q=10であった。
【0081】
【0082】
<実施例2~19、比較例1~18に係るシロキサン組成物2~37の製造例>
<シロキサン組成物2~18、20~36の製造例>
(A-1)、(A-2)、(B)並びに(C)成分の種類及び添加量を、それぞれ表4-1、4-2に示すとおりに変更した以外は、シロキサン組成物1と同様の方法でシロキサン組成物2~18、20~36を製造した。
【0083】
【0084】
【0085】
<シロキサン組成物19の製造例>
(A-1)成分として、表5に示す2種類のオルガノポリシロキサンを用いた以外は、シロキサン組成物1と同様の方法でシロキサン組成物19を製造した。なお、(A-1)成分の平均重合度mは1100であった。
【0086】
【0087】
<シロキサン組成物37の製造例>
表6に示す原料を自転・公転ミキサー(製品名:ARE-500、シンキー社製)に投入し、回転数2000rpmで3分間分散し、シロキサン組成物37を製造した。なお、(A-1)成分の平均重合度mは1200であった。また、(A-2)及び(D)成分の平均重合度はそれぞれ、n=370、о=20、p=7、q=7であった。
【0088】
【0089】
〔実施例1〕
<電子写真用部材1の製造>
[基体の準備]
外径6mm、長さ250mmのSUS304製の基体に、プライマー(商品名:DY39-051、デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル社製)100質量部と添加剤(商品名:VDT-431、GELEST社製)5質量部を混合したプライマー塗料を塗布し、170℃で20分間焼き付けしたものを準備した。
【0090】
[弾性層の形成]
準備した基体を内径12mmの円筒状金型内に同心となるように設置した。上記で得たシロキサン組成物1を金型内に注入した。115℃で5分加熱成型した後、金型を50℃まで冷却し、基体と一体となった弾性層を金型から取り出した。これにより、基体の外周に直径12mmの弾性層を設けた。
【0091】
〔表面電位の測定〕
弾性層を設けた部材の表面電位の測定には、誘電緩和解析装置(商品名:DRA-2000L、Quality Engineering Associates,Inc.製)を用いた。この装置は、スキャナと、非接触の静電電位計等から構成されており、コロナ荷電器と静電プローブを内蔵したキャリッジを軸方向へ走査することにより、弾性層を設けた部材表面の任意の位置における表面電位を測定できる。ここで測定される表面電位とは、荷電器による荷電後、荷電器の進行方向に対して後方に位置するプローブによって測定される部材表面の残留電位を指す。測定は、表面層の長手方向へ1mm間隔に240点、周方向へ10°間隔に36点の合計8640点について行った。表面層とプローブの距離は0.76mm、キャリッジの走査速度は400mm/秒、コロナ荷電器への印加電圧は6kVとした。前記8640点の相加平均値を表面電位とした。得られた評価結果を表11に示す。
【0092】
[表面層の形成]
(表面層原料の合成)
(ポリウレタンポリオールの合成)
ポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG1000SN、保土谷化学工業社製)100.0質量部に、イソシアネート化合物(商品名:コスモネートMDI、三井化学社製)28.2質量部をメチルエチルケトン(MEK)溶媒中で段階的に混合し、窒素雰囲気下、温度80℃にて3時間反応させて、重量平均分子量Mw=9000、水酸基価22のポリウレタンポリオールを得た。
【0093】
(イソシアネート基末端プレポリマーの合成)
窒素雰囲気下、反応容器中でpure-MDI(商品名:ミリオネートMT、日本ポリウレタン工業社製)73.5質量部に対し、ポリプロピレングリコール系ポリオール(商品名:サンニックスPP-1000、三洋化成工業社製)100.0質量部を、反応容器内の温度を65℃に保持しつつ、徐々に滴下した。滴下終了後、温度65℃で2.5時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却し、イソシアネート基含有量5.1質量%のイソシアネート基末端プレポリマーを得た。
【0094】
(表面層の形成)
表面層の材料として、表7に示す材料を混合し、撹拌した。
【0095】
【0096】
次に、総固形分比が30質量%となるようにメチルエチルケトンを加えた後、サンドミルにて混合した。次いで、さらに、メチルエチルケトンで粘度10~12cps(mPa・s)に調整して、表面層形成用塗料を調製した。
前記基体の外周に設けられた弾性層を該表面層形成用塗料に浸漬して、弾性層の表面に当該塗料の塗膜を形成し、乾燥させた。さらに、温度150℃にて1時間加熱処理することにより、弾性層の外周に膜厚約15μmの表面層を設け、実施例1に係る電子写真用部材1を作製した。
【0097】
〔評価1:電気抵抗率の測定〕
得られた電子写真用部材1を温度23℃、湿度55%RHの環境下に24時間放置し、電気抵抗率を以下に示す測定方法により求めた。
電子写真用部材の電気抵抗測定器の概略構成図を
図4に示す。電子写真用部材1の基体2の両端部に、4.9Nの加重Fを印加し、電子写真用部材1を外径30mmの金属ドラム25に押し当てた。そして、金属ドラム25のローラ回転数1rpsにて電子写真用部材1を従動回転させながら、電源26により50Vの電圧を電子写真用部材1に印加した。このとき電圧計27に示される、内部抵抗28(1kΩ)にかかる電圧を30秒間で3000点記録し、その相加平均値を求めた。得られた値より、オームの法則に則して電子写真用部材1の電気抵抗率を求めた。得られた評価結果を表11に示す。
【0098】
〔評価2:濃淡ムラの評価〕
以下の方法にて濃淡ムラの評価を行った。
図2に示すプロセスカートリッジ(商品名:EP-85トナーカートリッジ(ブラック)、キヤノン社製)を用意した。このプロセスカートリッジに、現像ローラとして実施例1に係る電子写真用部材1を装填し、温度10℃、湿度10%RHの環境下に24時間以上放置した。同環境下において、
図3に示す構成を有する電子写真画像形成装置(商品名:LBP5500、キヤノン社製)に、エージングが終了したプロセスカートリッジを組み込んだ。その後、厚口用紙(商品名:CS-814 A4、キヤノン社製)に、平均画像濃度0.6の均一なハーフトーン画像を10枚印刷した。
ここで、平均画像濃度は、以下のように求めた。
得られた画像について、左上から順に5cm×5cmの領域に分割し、各領域の中心における濃度を、反射濃度計(商品名:X-Rite504、X-Rite社製)で測定した。なお、画像右側及び下側で5cmに満たない部分については測定しなかった。各領域における測定値を相加平均して得られた値をその画像の平均画像濃度とした。
この評価用画像において、10枚目のハーフトーン画像について、以下の表8に記載の基準により濃淡ムラの評価を行った。得られた評価結果を、表11に示す。
【0099】
【0100】
〔評価3:リークの評価〕
上述した濃淡ムラの評価で得られた計10枚のハーフトーン画像について、以下の表9に記載の基準により、目視にてリークの評価を行った。得られた評価結果を、表11に示す。
【0101】
【0102】
〔評価4:変形量の測定及び横スジの評価〕
上述のプロセスカートリッジの現像容器に、現像ローラとして電子写真用部材1を装着し、電子写真用部材1とトナー量規制部材とを当接した状態で、40℃、相対湿度95%RHの環境下に1ヶ月間静置した。なお、電子写真用部材1とトナー量規制部材との当接圧力は0.6N/cmに調整し、Cセットに対して厳しい設定に変更した。その後、23℃、相対湿度55%RHの環境下に2時間静置した。これを前記電子写真画像形成装置中に装填してハーフトーン画像を出力し、以下の表10に記載の基準により、目視にて横スジの評価を行った。また、評価を行ったプロセスカートリッジから電子写真用部材1を取り出し、23℃、相対湿度55%RHの環境下に2時間静置した後、電子写真用部材1表面の変形量(μm)を測定した。なお、電子写真用部材1表面の変形量は、レーザ変位センサ(商品名:LT-9500V、キーエンス社製)を用いて測定した。エアーブローでトナーを除去した電子写真用部材1の表面に対して、垂直方向にレーザ変位センサを設置し、電子写真用部材1を任意の回転数で回転駆動して電子写真用部材1表面の周方向の変位を読み取り、変形量を測定した。長手方向に43mmピッチで5点測定を行い、5点の平均値を変形量とした。得られた評価結果を、表11に示す。
【0103】
【0104】
〔実施例2~19、比較例1~18〕
シロキサン組成物1をシロキサン組成物2~37に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例2~19、比較例1~18に係る電子写真用部材2~19及びC1~C18を作製した。
得られた電子写真用部材2~19、C1~C18について、実施例1と同様にして電気抵抗率、リーク画像、表面電位、濃淡ムラ画像、変形量及び横スジ画像の測定・評価を行った。測定・評価結果を表11に示す。
【0105】
【0106】
実施例1~19で使用したシロキサン組成物は、第1、第2のカーボンブラックの比表面積がそれぞれ60m2/g以上100m2/g以下、12m2/g以上30m2/g以下の範囲内である。また、(A-2)成分の平均重合度оは10以上45以下の数であり、n+оは300以上500以下の数であるため、シロキサン-カーボンブラック間の間隙を埋めやすく、Cセットが抑制され、良好な結果が得られた。
【0107】
特に、実施例1で用いたシロキサン組成物1は、比表面積が20~30m2/gの範囲内である第2のカーボンブラックを配合している。このため、比表面積がその範囲外である第2のカーボンブラックを含むシロキサン組成物を用いた実施例8や15よりも、シロキサン-カーボンブラック間の間隙を埋めやすい傾向にあり、Cセットの抑制に優れている。
なお、実施例1で用いたシロキサン組成物1には、第2のカーボンブラックが11~15質量%の範囲内で配合されている。このため、第2のカーボンブラックの含有量がその範囲外であるシロキサン組成物を用いた実施例2、16~18よりも、シロキサン-カーボンブラック間の間隙の数を抑制できるため、Cセットの抑制に優れている。
また、実施例1で用いたシロキサン組成物1は、(A-2)成分の平均重合度оが15以上25以下の数である。このため、(A-2)成分の平均重合度оがその範囲外であるシロキサン組成物14を用いた実施例14よりも、未反応の官能基が抑制できるため、Cセットの抑制に優れている。
また、実施例1で用いたシロキサン組成物1は、C2/C1が5.0~10.0の範囲内である。このため、C2/C1がその範囲外であるシロキサン組成物を用いた実施例3、5よりも、電気特性のバランスが良く、表面電位、濃淡ムラの評価結果が優れている。
また、実施例1で用いたシロキサン組成物1は、カーボンブラックの総量が10~20質量%の範囲内となるように配合されている。このため、カーボンブラックの総量がその範囲外であるシロキサン組成物を用いた実施例2、18よりも、ゴム弾性を低下させるフィラー成分となるカーボンブラック量が少なく、Cセットの抑制に優れている。
そして、実施例1で用いたシロキサン組成物1に含まれる(A-1)成分はR1がメチル基である。このため、R1がメチル基でない(A-1)成分を含むシロキサン組成物19を用いた実施例19よりも、分子の立体障害を抑制でき、末端トリアルキルシロキシ基がカーボンブラック表面と疎水性相互作用を生じやすくなっている。そのため、Cセットの抑制に優れている。
【0108】
一方で、比較例1~3で用いたシロキサン組成物は、平均重合度n、оが本開示の範囲外であるため、末端トリアルキルシロキシ基の量が適切ではなく、Cセットに起因する横スジの発生が確認された。
また、比較例4~6で用いたシロキサン組成物は、(A-2)成分の含有量が本開示の範囲外であるため、末端トリアルキルシロキシ基による間隙の低減効果が弱い。その結果、Cセットに起因する横スジの発生が確認された。
また、比較例7~15で用いたシロキサン組成物は、カーボンブラックの比表面積や含有量が本開示の範囲外であり適正ではない。そのため、電気特性とCセットの抑制のバランスが悪くなり、リーク、濃淡ムラ、横スジのいずれかの評価が劣っていた。
また、比較例16、17で用いたシロキサン組成物は、(A-1)成分の平均重合度mが本開示の範囲外である。そのため、ゴムの柔軟性及び分子の絡み合いが適切ではなく、Cセットに起因する横スジの発生が確認された。
さらに、比較例18で用いたシロキサン組成物は、カーボンブラックの含有量が本開示の範囲外である。そのため、Cセットに起因する横スジの発生が確認された。
【符号の説明】
【0109】
1:現像ローラ
2:基体
3:弾性層