(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ、および電子写真装置
(51)【国際特許分類】
G03G 5/147 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
G03G5/147 504
(21)【出願番号】P 2021102050
(22)【出願日】2021-06-18
【審査請求日】2024-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】時光 亮一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 アイリーン
(72)【発明者】
【氏名】森 春樹
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-90605(JP,A)
【文献】特開2003-186233(JP,A)
【文献】特開2011-53689(JP,A)
【文献】特開2003-5416(JP,A)
【文献】特開2021-86078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、感光層、および表面層をこの順に有する電子写真感光体であって、
前記表面層が、
下記式(1)で示される電荷輸送性化合物と、
下記式(2)で示される電荷輸送性化合物と、
ポリテトラフルオロエチレン粒子と、
を含有する組成物の硬化物を含有し、
前記組成物における、下記式(1)で示される電荷輸送性化合物と、下記式(2)で示される電荷輸送性化合物との含有比率(式(1)で示される電荷輸送性化合物:式(2)で示される電荷輸送性化合物)が、40:60から60:40の範囲内であり、
前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の1次粒子の個数平均粒子径が、110nm以上130nm以下であり、
前記表面層における、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有割合が、前記表面層の全質量に対して16質量%以上である
ことを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
(式(1)中、Ar
11~Ar
13は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいフェニル基を示す。Ar
11~Ar
13で示されるフェニル基が有してもよい置換基は、メチル基、エチル基、メトキシ基、ヒドロキシアルキル基、およびアルコキシアルキル基からなる群より選ばれる基であり、置換基が複数存在するとき、複数の置換基は互いに同一でも異なってもいてもよい。但し、Ar
11~Ar
13で示されるフェニル基のうち2つは置換基として、ヒドロキシアルキル基、またはアルコキシアルキル基を有し、式(1)で示される電荷輸送性化合物が有するヒドロキシアルキル基と、アルコキシアルキル基とを合わせた総数は2である。)
【化2】
(式(2)中、Ar
21~Ar
24はそれぞれ独立に置換基を有するフェニル基を示し、Ar
25~Ar
26はそれぞれ独立に置換基を有してもよいフェニレン基を示す。Ar
21~Ar
24で示されるフェニル基は、それぞれ置換基としてヒドロキシアルキル基またはアルコキシアルキル基のいずれかの置換基を1つ有し、Ar
21~Ar
24で示されるフェニル基は、メチル基、エチル基、およびメトキシ基からなる群より選ばれる置換基をさらに1つ以上有してもよい。また、Ar
25~Ar
26で示されるフェニレン基が有してもよい置換基は、メチル基およびエチル基からなる群より選ばれる基である。)
【請求項2】
前記式(2)中のAr
21~Ar
24のそれぞれが、置換基としてヒドロキシメチル基を1つ有するフェニル基である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記表面層における前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有割合が、前記表面層の全質量に対して20質量%以上40質量%以下である、請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記表面層において、140nm以上の1次粒子径を有する前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の存在比率が、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の総数に対して10個数%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の結晶化度が、70%以上75%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段と、を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有する電子写真装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ、および該電子写真感光体を有する電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置に搭載される電子写真感光体には、有機光導電性物質(電荷発生物質)を含有する有機電子写真感光体(以下、「電子写真感光体」という。)がある。近年、電子写真感光体の長寿命化や電子写真装置の単位時間あたりの出力可能なプリント枚数の増加が求められており、これに伴って電子写真感光体の表面層には、良好な電気特性を維持しつつ優れた耐摩耗性を有することが求められている。
【0003】
特許文献1には、電子写真感光体の表面層が、特定の化合物の架橋物から構成され、良好な電気特性を維持しつつ、電子写真感光体の耐摩耗性を向上させる技術が開示されている。そして、架橋物を構成する特定の化合物として、重合性官能基としてヒドロキシアルキル基、およびアルコキシアルキル基を有する電荷輸送性化合物が開示されている。
【0004】
一方、電子写真感光体の耐摩耗性が高くなるのに伴い、電子写真感光体の表面においては、クリーニングブレード(以下、「ブレード」ともいう。)との摺擦に伴う、化学的に劣化した表面層表層の除去が進みにくくなる。その結果、長期間の使用を通じてブレードと電子写真感光体の表面との摩擦力が上昇するため、その摩擦力の上昇を抑制することがより求められる。
【0005】
電子写真感光体表面の摩擦力を低下させるため、たとえば特許文献2には、ポリテトラフルオロエチレン粒子を表面層に含有させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-8117号公報
【文献】特開平06-332219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らの検討の結果、特許文献1に記載の電子写真感光体の表面層に、特許文献2に記載のポリテトラフルオロエチレン粒子を含有させることで、電子写真感光体の表面が耐摩耗性を有しつつ、さらにブレードとの摩擦力を低下させることができた。しかし、一方で、高温高湿環境下においては、ゴースト(出力画像中、前の回転時に光が照射された部分のみ濃度が高くなるポジゴースト、あるいは前の回転時に光が照射された部分のみ濃度が低くなるネガゴースト)が発生する場合があった。また、高温高湿環境下においては、電気特性が低下する場合があった。
【0008】
したがって本発明の目的は、表面の耐摩耗性に優れ、さらに高温高湿環境下でもゴーストの発生を抑制しつつ、良好な電気特性を維持可能な電子写真感光体を提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記特性を有する電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび上記特性を有する電子写真感光体を有する電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明の一態様に係る電子写真感光体は、支持体、感光層、および表面層をこの順に有する電子写真感光体であって、前記表面層が、下記式(1)で示される電荷輸送性化合物と、下記式(2)で示される電荷輸送性化合物と、ポリテトラフルオロエチレン粒子と、を含有する組成物の硬化物を含有し、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の1次粒子の個数平均粒子径が110nm以上130nm以下であり、前記組成物の中における、下記式(1)で示される電荷輸送性化合物と、下記式(2)で示される電荷輸送性化合物との含有比率が40:60から60:40の範囲内であり、前記表面層の中における、前記表面層の全質量に対する前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有割合が16質量%以上であることを特徴とする。
【化1】
(式(1)中、Ar
11~Ar
13はそれぞれ独立に置換基を有してもよいフェニル基を示す。Ar
11~Ar
13で示されるフェニル基が有してもよい置換基は、メチル基、エチル基、メトキシ基、ヒドロキシアルキル基、およびアルコキシアルキル基からなる群より選ばれる基であり、置換基が複数存在するとき、複数の置換基は互いに同一でも異なってもいてもよい。但し、Ar
11~Ar
13で示されるフェニル基のうち2つは置換基として、ヒドロキシアルキル基、またはアルコキシアルキル基を有し、式(1)で示される電荷輸送性化合物が有するヒドロキシアルキル基と、アルコキシアルキル基とを合わせた総数は2である。)
【化2】
(式(2)中、Ar
21~Ar
24はそれぞれ独立に置換基を有するフェニル基を示し、Ar
25~Ar
26はそれぞれ独立に置換基を有してもよいフェニレン基を示す。Ar
21~Ar
24で示されるフェニル基は、それぞれ置換基としてヒドロキシアルキル基またはアルコキシアルキル基のいずれかの置換基を1つ有し、Ar
21~Ar
24で示されるフェニル基は、メチル基、エチル基、およびメトキシ基からなる群より選ばれる置換基をさらに1つ以上有してもよい。また、Ar
25~Ar
26で示されるフェニレン基が有してもよい置換基は、メチル基およびエチル基からなる群より選ばれる基である。)
【0010】
また、本発明の別の態様に係るプロセスカートリッジは、上記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のさらに別の態様に係る電子写真装置は、上記電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表面の耐摩耗性に優れ、さらに高温高湿環境下でもゴーストの発生を抑制しつつ、良好な電気特性を維持可能な電子写真感光体を提供することができる。また、本発明によれば、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ、および上記電子写真感光体を有する電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。
【
図2】電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図3】実施例で用いたゴースト評価用画像を模式的に示す図であり、(a)は、ゴースト評価用画像の全体の構成を示す図であり、(b)はゴースト評価用画像中の1ドット桂馬パターン画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る電子写真感光体は、支持体、感光層、および表面層をこの順に有する電子写真感光体であって、前記表面層が、下記式(1)で示される電荷輸送性化合物と、下記式(2)で示される電荷輸送性化合物と、ポリテトラフルオロエチレン粒子とを含有する組成物の硬化物を含有し、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の1次粒子の個数平均粒子径が110nm以上130nm以下であり、前記組成物の中における、下記式(1)で示される電荷輸送性化合物と、下記式(2)で示される電荷輸送性化合物との含有比率が40:60から60:40の範囲内であり、前記表面層の中における、前記表面層の全質量に対する前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有割合が16質量%以上である。
【化3】
(式(1)中、Ar
11~Ar
13はそれぞれ独立に置換基を有してもよいフェニル基を示す。Ar
11~Ar
13で示されるフェニル基が有してもよい置換基は、メチル基、エチル基、メトキシ基、ヒドロキシアルキル基、およびアルコキシアルキル基からなる群より選ばれる基であり、置換基が複数存在するとき、複数の置換基は互いに同一でも異なってもいてもよい。但し、Ar
11~Ar
13で示されるフェニル基のうち2つは置換基として、ヒドロキシアルキル基、またはアルコキシアルキル基を有し、式(1)で示される電荷輸送性化合物が有するヒドロキシアルキル基と、アルコキシアルキル基とを合わせた総数は2である。)
【化4】
(式(2)中、Ar
21~Ar
24はそれぞれ独立に置換基を有するフェニル基を示し、Ar
25~Ar
26はそれぞれ独立に置換基を有してもよいフェニレン基を示す。Ar
21~Ar
24で示されるフェニル基は、それぞれ置換基としてヒドロキシアルキル基またはアルコキシアルキル基のいずれかの置換基を1つ有し、Ar
21~Ar
24で示されるフェニル基は、メチル基、エチル基、およびメトキシ基からなる群より選ばれる置換基をさらに1つ以上有してもよい。また、Ar
25~Ar
26で示されるフェニレン基が有してもよい置換基は、メチル基およびエチル基からなる群より選ばれる基である。)
【0015】
本発明者らは、本発明に係る特定な構成を有する電子写真感光体において、機械的耐久性を損なわずに、画像不良抑制と良好な電気特性を維持できる理由を以下のように推測している。
【0016】
重合性官能基としてヒドロキシアルキル基およびアルコキシアルキル基を有する電荷輸送性化合物の硬化膜には、未反応のヒドロキシアルキル基、およびアルコキシアルキル基が存在する。そのため、高温高湿環境下では極性が高いヒドロキシアルキル基およびアルコキシメチル基に水分が吸着し、電荷が感光層中に滞留しやすくなる。これによりゴーストが生じやすくなり、また、電気特性が低下しやすくなる。
【0017】
本発明において、電子写真感光体の表面層は、重合性官能基を2つ有する電荷輸送性化合物と重合性官能基を4つ有する電荷輸送性化合物とを特定の割合で含有する組成物の硬化物を有する。この硬化物には、110~130nmの粒子が存在可能な大きさの隙間が存在すると考えられる。
【0018】
そして、疎水性であるポリテトラフルオロエチレン粒子がその隙間に存在しやすい粒子径を有することで、硬化物の分子間の隙間に入り込む。これによりヒドロキシアルキル基およびアルコキシアルキル基への水分吸着を防ぎ、感光層における電荷の滞留を抑制していると考えられる。
【0019】
以上により、本発明に係る電子写真感光体においては、優れた耐摩耗性を有するだけでなく、ゴーストの発生および電気特性の低下を抑制する効果が発揮されていると推測される。
【0020】
表面層中の、式(1)で示される電荷輸送性化合物と、式(2)で示される電荷輸送性化合とを合わせた含有割合は、表面層の全質量に対して50質量%以上84質量%以下であることが好ましい。
【0021】
また、式(2)で示される電荷輸送性化合物は、Ar21~Ar24がそれぞれ置換基としてヒドロキシメチル基を1つ有する電荷輸送性化合物であることがより好ましい。
【0022】
以下に、式(1)で示される電荷輸送性化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけではない。
【化5】
【0023】
式(1)で示される電荷輸送性化合物としては、式(1-1)~(1-14)で示される化合物のうち、特に式(1-1)~(1-4)、(1-9)~(1-12)で示される化合物が好ましい。
【0024】
以下に、式(2)で示される電荷輸送性化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけではない。
【化6】
【0025】
式(2)で示される電荷輸送性化合物としては、式(2-1)~(2-16)で示される化合物のうち、特に式(2-1)~(2-3)で示される化合物が好ましい。
【0026】
電子写真感光体の表面層において、140nm以上の1次粒子径を有するポリテトラフルオロエチレン粒子の存在比率が、ポリテトラフルオロエチレン粒子の総数に対して10個数%以下であることが好ましい。これにより、表面層中の硬化物が有する隙間の中に存在するポリテトラフルオロエチレン粒子の割合が高くなり、電荷の滞留を抑制する効果をより高く得ることができる。
【0027】
電子写真感光体の表面層におけるポリテトラフルオロエチレン粒子の含有割合は、表面層の全質量に対して16質量%以上45質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることが、電気特性抑制に対しより好ましい。
【0028】
ポリテトラフルオロエチレン粒子の結晶化度が、70%以上75%以下であることが、電荷の滞留を抑制する上で好ましい。この理由としては、以下のように推測している。
ポリテトラフルオロエチレン粒子の結晶化度が高すぎると分散剤が吸着しにくくなり、ポリテトラフルオロエチレン粒子の分散性が低下する。そのため、ポリテトラフルオロエチレン粒子が硬化物の分子間の隙間に入り込みにくくなる。これにより高温高湿環境下で電荷輸送性化合物が有するヒドロキシアルキル基およびアルコキシアルキル基に水分が吸着しやすくなり、電荷の滞留が生じやすくなると考えられる。一方、ポリテトラフルオロエチレン粒子の結晶化度が低すぎるとポリテトラフルオロエチレン粒子内に隙間が増えて水分が粒子内に吸着しやすくなり、電荷の滞留が生じやすくなる。この兼ね合いによりポリテトラフルオロエチレン粒子の結晶化度が、70%以上75%以下であることが、電荷の滞留を抑制する上で好ましい。
【0029】
本発明において、式(1)で示される電荷輸送性化合物、および式(2)で示される電荷輸送性化合物、およびポリテトラフルオロエチレン粒子を含有する組成物の硬化物とは、上記組成物を硬化して得られる生成物を意味する。上記組成物は、式(1)で示される電荷輸送性化合物、および式(2)で示される電荷輸送性化合物、およびポリテトラフルオロエチレン粒子以外の要素を有するものであってもよい。
【0030】
次に、本発明に係る電子写真感光体の構成について説明する。
[電子写真感光体]
電子写真感光体は、支持体、感光層、および表面層をこの順に有する。
図1は、電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。
図1中、電子写真感光体は、支持体111、下引き層112、電荷発生層113、電荷輸送層114、および、表面層115を有する。
そして、電子写真感光体の表面層は、上述したように、式(1)で示される電荷輸送性化合物と、式(2)で示される電荷輸送性化合物と、ポリテトラフルオロエチレン粒子と、を含有する組成物の硬化物を含有する。
【0031】
電子写真感光体を製造する方法としては、後述する各層の塗布液を調製し、所望の層の順番に支持体上に塗布して、乾燥させる方法が挙げられる。このとき、塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、インクジェット塗布、ロール塗布、ダイ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、ワイヤーバー塗布、リング塗布、スピンナー塗布、ビード塗布、ビーム塗布等が挙げられる。これらの中でも、効率性および生産性の観点から、浸漬塗布が好ましい。
【0032】
以下、支持体および各層について説明する。
<支持体>
本発明において、電子写真感光体は支持体を有する。支持体は導電性を有するもの(導電性支持体)が好ましい。支持体の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状等が挙げられる。中でも、円筒状支持体であることが好ましい。また、支持体の表面に、陽極酸化等の電気化学的な処理や、ブラスト処理、切削処理等を施してもよい。
支持体の材質としては、金属、樹脂、ガラス等が好ましい。
金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレスや、これらの合金等が挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。
また、樹脂やガラスには、導電性材料を混合または被覆する等の処理によって、導電性を付与してもよい。
【0033】
<導電層>
本発明において、支持体の上に、導電層を設けてもよい。導電層を設けることで、支持体表面の傷や凹凸を隠蔽することや、支持体表面における光の反射を制御することができる。
導電層は、導電性粒子と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0034】
導電性粒子の材質としては、金属酸化物、金属、カーボンブラック等が挙げられる。
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス等が挙げられる。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等が挙げられる。
これらの中でも、導電性粒子として、金属酸化物を用いることが好ましく、特に、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の表面をシランカップリング剤等で処理したり、金属酸化物にリンやアルミニウム等の元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。
また、導電性粒子は、芯材粒子と、その粒子を被覆する被覆層とを有する積層構成としてもよい。芯材粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛等が挙げられる。被覆層としては、酸化スズ等の金属酸化物が挙げられる。
また、導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その体積平均粒子径が、1nm以上500nm以下であることが好ましく、3nm以上400nm以下であることがより好ましい。
【0035】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられる。
また、導電層は、シリコーンオイル、樹脂粒子、酸化チタン等の隠蔽剤等をさらに含有してもよい。
【0036】
導電層の膜厚は、1μm以上50μm以下であることが好ましく、3μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
【0037】
導電層は、上記の各材料および溶剤を含有する導電層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。導電層用塗布液中で導電性粒子を分散させるための分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
【0038】
<下引き層>
本発明において、支持体または導電層の上に、下引き層を設けてもよい。下引き層を設けることで、層間の接着機能が高まり、電荷注入阻止機能を付与することができる。
下引き層は、樹脂を含有することが好ましい。また、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0039】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂等が挙げられる。
【0040】
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基等が挙げられる。
【0041】
また、下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子等をさらに含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
電子輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物等が挙げられる。電子輸送物質として、重合性官能基を有する電子輸送物質を用い、上記の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等が挙げられる。金属としては、金、銀、アルミ等が挙げられる。
また、下引き層は、添加剤をさらに含有してもよい。
【0042】
下引き層の膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.2μm以上40μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0043】
下引き層は、上記の各材料および溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を支持体または導電層の上に形成し、乾燥および/または硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0044】
<感光層>
電子写真感光体の感光層は、主に、(1)積層型感光層と、(2)単層型感光層とに分類される。(1)積層型感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、を有する。(2)単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を共に含有する感光層を有する。
【0045】
(1)積層型感光層
積層型感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有する。
【0046】
(1-1)電荷発生層
電荷発生層は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0047】
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料等が挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生層中の電荷発生物質の含有量は、電荷発生層の全質量に対して、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0048】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂がより好ましい。
【0049】
また、電荷発生層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤をさらに含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、等が挙げられる。
【0050】
電荷発生層の膜厚は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。
【0051】
電荷発生層は、上記の各材料および溶剤を含有する電荷発生層用塗布液を調製し、この塗膜を例えば、上記の下引き層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0052】
(1-2)電荷輸送層
電荷輸送層は、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0053】
電荷輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂等が挙げられる。
電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【0054】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特にポリアリレート樹脂が好ましい。
電荷輸送物質と樹脂との含有量比(質量比)は、4:10~20:10が好ましく、5:10~12:10がより好ましい。
【0055】
また、電荷輸送層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤等の添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子等が挙げられる。
【0056】
電荷輸送層の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、8μm以上40μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0057】
電荷輸送層は、上記の各材料および溶剤を含有する電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗膜を例えば上記の電荷発生層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤または芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
【0058】
(2)単層型感光層
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂および溶剤を含有する感光層用塗布液を調製し、この塗膜を例えば、上記の下引き層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂としては、上記「(1)積層型感光層」における材料の例示と同様である。
【0059】
<表面層>
本発明において、積層型感光層の場合は、積層型感光層の電荷輸送層上に、表面層を設けてもよいし、単層型感光層の場合は、感光層上に表面層を設けることができる。本発明に係る電子写真感光体の表面層の構成は、上述したとおりである。
【0060】
表面層は、上述した構成要素の他に酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤、等の添加剤を含有してもよい。具体的には、添加剤としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子等が挙げられる。
表面層中の添加剤の含有割合は、表面層の全質量に対して0.02質量%以上30質量%以下が好ましい。
【0061】
さらに、式(1)で示される電荷輸送性化合物および式(2)で示される電荷輸送性化合物以外の電荷輸送性化合物を含有してもよい。電荷輸送性化合物としては、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂等が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物およびベンジジン化合物が好ましい。
【0062】
さらに表面層は、テトラフルオロエチレン粒子の分散剤として、フッ化アルキル基含有共重合体を含有することが好ましい。特に、テトラフルオロエチレン粒子の分散剤としては、下記式(3)で示される構造単位および下記式(4)で示される構造単位を有する重合体が好ましい。
【化7】
(式(3)中のR
31は、水素原子またはメチル基を示す。R
32は、アルキレン基を示す。R
33は、炭素原子数4以上7以下のパーフルオロアルキル基を示す。)
【化8】
(式(4)中、R
41は、水素原子またはメチル基を示す。Yは、少なくとも下記式(5)で示される構造を有する2価の有機基を示す。Zは、下記式(6)で示される構造を有する。)
【化9】
(式(5)中、Y
1およびY
2はそれぞれ独立に置換基を有してもよいアルキレン基を示し、Y
2は式(4)中の酸素原子と結合しており、硫黄原子は下記式(6)で示される構造と結合している。)
【化10】
(式(6)中のR
61は、水素原子またはメチル基を示す。R
62は、水素原子、またはアルキル基を示す。)
【0063】
式(3)で示される構造単位において、R32で示されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等の直鎖アルキレン基や、イソプロピレン基、イソブチレン基等の分岐アルキレン基等が挙げられる。これらの中でも、R32で示されるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、およびブチレン基が好ましい。
【0064】
また、式(5)で示される構造単位において、Y1およびY2で示されるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。これらの中でも、Y1およびY2で示されるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が好ましい。Y1およびY2で示されるアルキレン基が有してもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシル基、ヒドロキシ基、アリール基等が挙げられる。Y1およびY2で示されるアルキレン基が有してもよい置換基としてのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましい。Y1およびY2で示されるアルキレン基が有してもよい置換基としてのアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メトキシ基が好ましい。Y1およびY2で示されるアルキレン基が有してもよい置換基としてのアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。また、特に、Y1およびY2で示されるアルキレン基が有してもよい置換基としては、メチル基およびヒドロキシ基が好ましい。
【0065】
また、式(6)で示される構造単位において、R62で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。これらの中でも、R62で示されるアルキル基としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が好ましい。
【0066】
式(3)で示される構造単位および式(4)で示される構造単位を有する重合体における共重合の形態は任意であるが、前記式(4)で示される構造単位を側鎖に有する櫛型グラフト構造であることが好ましい。分散剤中の式(3)で示される構造単位が有するフルオロアルキル部位は、ポリテトラフルオロエチレン粒子と親和性が高く、ポリテトラフルオロエチレン粒子に吸着してこれを分散させる。さらに、分散剤中の式(4)で示される構造単位が櫛型グラフト構造の側鎖にあることで、分散剤が吸着したポリテトラフルオロエチレン粒子間で立体反発が増す。これにより、ポリテトラフルオロエチレン粒子の分散性をさらに高くすることができる。
【0067】
また、式(3)で示される構造単位と式(4)で示される構造単位との共重合比(式(3)で示される構造単位:式(4)で示される構造単位)は、モル比で、99:1~20:80の範囲内にあることが好ましい。さらには、95:5~30:70の範囲内にあることがより好ましい。
【0068】
また、式(3)で示される構造単位および式(4)で示される構造単位を有する重合体の重量平均分子量は、50,000以上150,000以下であることが好ましい。さらには、80,000以上130,000以下であることがより好ましい。
【0069】
以下に、式(3)で示される構造単位の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけではない。
【化11】
【0070】
また、以下に、式(4)で示される構造単位の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけではない。
【化12】
【化13】
【0071】
表面層中における、ポリテトラフルオロエチレン粒子の分散剤の含有割合は、ポリテトラフルオロエチレン粒子の全質量に対して、好ましくは2.0質量%以上15.0質量%以下であり、より好ましくは3.0質量%以上10.0質量%以下である。
【0072】
さらに、表面層は、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を有するグアナミン化合物、メラミン化合物、またはそれらの単独重合体を含有しても良い。特に、表面層は、下記式(A)で示されるグアナミン化合物、下記式(B)で示されるメラミン化合物、またはそれらの単独重合体を含有することが好ましい。
【化14】
(式(A)中、R
101~R
104は、水素原子、ヒドロキシメチル基、またはアルコキシメチル基を示し、R
101~R
104の少なくとも1つはヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基である。R
105は、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、または置換基を有してもよいシクロアルキル基を示す。)
式(A)において、R
105で示されるアルキル基、フェニル基、およびシクロアルキル基がそれぞれ有してもよい置換基としては、アルキル基およびアルコキシ基が挙げられる。
【化15】
(式(B)中、R
201~R
206は、水素原子、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、またはアルコキシ基を示し、R
201~R
206の少なくとも1つはヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、またはアルコキシ基である。)
【0073】
表面層がヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を有するグアナミン化合物、メラミン化合物、またはそれらの単独重合体を含有することにより、膜強度が向上する。さらに、これらの化合物は、電子搬送性に寄与する窒素原子を有するため、表面層における電子の搬送性が向上する。
表面層中の、グアナミン化合物、および/または、メラミン化合物、あるいはそれらの単独重合体の含有割合は、表面層の全質量に対して0.5質量%以上20質量%以下が好ましい。
【0074】
グアナミン化合物の市販品としては、スーパーベッカミンL-148-55、スーパーベッカミン13-535、スーパーベッカミン、L-145-60、スーパーベッカミンTD-126(いずれもDIC社製)、ニカラックBL-60、ニカラックBX-4000(いずれも三和ケミカル社製)が挙げられる。
【0075】
メラミン化合物の市販品としては、スーパーメラミNo.90(日油社製)、スーパーベッカミンTD-139-60(DIC社製)、ユーバン2020(三井化学社製)、スミテックスレジンM-3(住友化学工業社製)、ニカラックMW-30(三和ケミカル社製)が挙げられる。
【0076】
表面層の膜厚は、0.5μm以上10.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上7.0μm以下であることが好ましい。
【0077】
表面層は、これまで述べた各材料および溶剤を含有する表面層用塗布液を調製し、この塗膜を感光層上に形成し、乾燥および/または硬化させることで形成することができる。
【0078】
硬化膜を形成する場合には、硬化触媒を、表面層用塗布液に含有させることができる。硬化触媒としては、酢酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸、等の脂肪族カルボン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、等の芳香族カルボン酸、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、等の脂肪族、および芳香族スルホン酸類、およびその誘導体等が好ましく用いられる。
【0079】
塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族ハロゲン化炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0080】
表面層用塗布液の塗膜を硬化させる手段としては、熱、紫外線、および/または、電子線によって硬化させる方法が挙げられる。
電子線を照射する場合、加速器としては、例えば、スキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型、ラミナー型等が挙げられる。電子線の加速電圧は、重合効率を損なわずに電子線による材料特性の劣化を抑制できる観点から、120kV以下であることが好ましい。また、表面層用塗布液の塗膜の表面での電子線吸収線量は、1kGy以上50kGy以下であることが好ましく、5kGy以上10kGy以下であることがより好ましい。
【0081】
また、電子線を用いて上記組成物を硬化(重合)させる場合、酸素による重合阻害作用を抑制する観点から、不活性ガス雰囲気で電子線を照射した後、不活性ガス雰囲気で加熱することが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムが挙げられる。
【0082】
また、紫外線または電子線の照射後に、電子写真感光体を100℃以上140℃以下に加熱することが好ましい。こうすることで、さらに高い耐久性を有し、画像不良を抑制する表面層が得られる。
【0083】
表面層の表面は、研磨シート、形状転写型部材、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ等用いて表面加工を施されてもよい。また、塗布液の構成材料を使って表面に凹凸を形成させてもよい。
【0084】
[プロセスカートリッジ、電子写真装置]
本発明に係るプロセスカートリッジは、これまで述べてきた電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在である。
また、本発明に係る電子写真装置は、これまで述べてきた電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、および転写手段を有する。
【0085】
図2に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1の表面は、帯電手段3により、正または負の所定電位に帯電される。なお、図においては、ローラ型帯電部材によるローラ帯電方式を示しているが、コロナ帯電方式、近接帯電方式、注入帯電方式等の帯電方式を採用してもよい。帯電された電子写真感光体1の表面には、露光手段(不図示)から露光光4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内に収容されたトナーで現像され、電子写真感光体1の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により、転写材7に転写される。トナー像が転写された転写材7は、定着手段8へ搬送され、トナー像の定着処理を受け、電子写真装置の外へプリントアウトされる。電子写真装置は、転写後の電子写真感光体1の表面に残ったトナー等の付着物を除去するための、クリーニング手段9を有していてもよい。また、クリーニング手段9を別途設けず、上記付着物を現像手段5等で除去する、所謂、クリーナーレスシステムを用いてもよい。電子写真装置は、電子写真感光体1の表面を、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理する除電機構を有していてもよい。また、本発明に係るプロセスカートリッジ11を電子写真装置本体に着脱するために、レール等の案内手段12を設けてもよい。
【0086】
本発明に係る電子写真感光体は、レーザービームプリンター、LEDプリンター、複写機、ファクシミリ、および、これらの複合機等に用いることができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
実施例中、ポリテトラフルオロエチレン粒子は特開2009-1745号公報、および特開2010-180364号公報をもとに作製し、1次粒子の個数平均粒子径(以下、1次粒子径ともいう)、存在比率、結晶化度は以下の測定方法により算出した。
【0088】
(ポリテトラフルオロエチレン粒子の1次粒子径、存在比率の測定)
ポリテトラフルオロエチレン粒子の1次粒子径、存在比率の測定は電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて行った。ポリテトラフルオロエチレン粒子を市販のカーボン導電テープにつけ、圧縮エアで導電テープについていないポリテトラフルオロエチレン粒子を取り除き、白金蒸着を行った。蒸着したポリテトラフルオロエチレン粒子を日立ハイテクノロジー社製FE-SEM(S-4700)を使用して観察した。
得られた画像からImageJ(アメリカ国立衛生研究所(NIH)製のオープンソースソフトウェア)を使用して200個分の1次粒子に対して楕円フィッティングを行って最長径を求めた。得られた最長径を1次粒子径とし、また、得られた結果から1次粒子径に対するポリテトラフルオロエチレン粒子の存在比率を算出した。
【0089】
(ポリテトラフルオロエチレン粒子の結晶化度の測定)
ポリテトラフルオロエチレン粒子の結晶化度は、広角X線回折法により以下の条件で測定した。
X線回折装置:Bruker AXS製 D8 ADVANCE
X線源 :Cu-Kα線(波長0.15418nm)
出力:40kV、40mA
スリット系:スリットDS、SS=1°、RS=0.2mm
測定範囲:2θ=5°~60°
ステップ間隔:0.02°
スキャン速度:1°/min
上記測定条件により得られた広角X線回折プロファイルを結晶ピークと非晶散乱に分離し、それらの面積から結晶化度を、下記式(a-1)より算出した。
結晶化度(%)=Ic/(Ic+Ia)×100 式(a-1)
Ic:5≦2θ≦60の範囲にて検出された結晶ピークの総面積
Ia:5≦2θ≦60の範囲にて検出された非晶散乱の総面積
【0090】
(実施例1)
直径30mm、長さ370.0mm、肉厚1mmのアルミニウムシリンダーを支持体(導電性支持体)とした。
【0091】
<下引き層>
金属酸化物として酸化亜鉛粒子(比表面積:19m2/g、粉体抵抗:4.7×106Ω・cm)100部をトルエン500部と撹拌混合した。これにシランカップリング剤N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM603、信越化学工業社製)0.8部を添加し、6時間攪拌した。その後、トルエンを減圧留去して、130℃で6時間加熱乾燥し、表面処理された酸化亜鉛粒子を得た。
次に、以下の材料を用意した。
・ポリオール樹脂としてブチラール樹脂(商品名:BM-1、積水化学工業(株)製)15部
・ブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルウレタン社製)15部
これらをメチルエチルケトン73.5部と1-ブタノール73.5部との混合溶液に溶解させた。この溶液に前記表面処理された酸化亜鉛粒子80.8部、アリザリン0.81部を加え、これを直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で23±3℃雰囲気下で3時間分散した。続いて以下の材料を用意した。
・シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レダウコーニングシリコーン社製)0.01部
・触媒としてジオクチルスズジラウレート0.007質量部
・シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)5.4質量部
これらを上記分散後の溶液に加えて攪拌し、下引き層用塗布液を得た。この下引き層用塗布液を上記支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間160℃で乾燥させて、膜厚が18μmの下引き層を形成した。
【0092】
<電荷発生層>
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°が少なくとも7.3゜、16.0゜、24.9゜および28.0゜の位置に回折ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニンを用意した。このヒドロキシガリウムフタロシアニンの15部を、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10部および酢酸n-ブチル300部と混合した。これを直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で23±3℃雰囲気下で4時間分散した。この塗布液を上記の下引き層上に浸漬塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0093】
<電荷輸送層>
以下の材料を用意した。
・下記構造式(A)で示される化合物2部
・ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ビスフェノールZ型のポリカーボネート)2.5部
・酸化防止剤として2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.05部
これらを、クロロベンゼン35部に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を前記電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を40分間120℃で乾燥させることによって、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【化16】
【0094】
<表面層>
以下の材料を用意した。
・式(2-2)で示される電荷輸送性化合物52部
・式(1-1)で示される電荷輸送性化合物36部
・式(1-9)で示される電荷輸送性化合物12部
・ベンゾグアナミン樹脂(ニカラックBL-60、三和ケミカル社製)1.5部
・式(3-9)で示される構造単位および式(4―2)で示される構造単位を有する重合体(共重合比 式(3-9)/式(4―2)=1/1(モル比)、重量平均分子量100,000)2.23部
・シクロペンタノン500部
これらを混合し、溶解させた。その後、ポリテトラフルオロエチレン粒子(1次粒子径が140nm以上の存在比率、結晶化度、は表2に記載)44.5部を加え、攪拌混合した。次いで高圧分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM-110EH、米Microfluidics社製)に通し、分散液を得た。
次に、ドデシルベンゼンスルホン酸触媒(NACURE5225、キングインダストリー社製)0.2部を混合溶解して、調合液を得た。
この調合液に前記分散液を加えて攪拌混合した後、ポリテトラフルオロエチレン製フィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋社製)でろ過し、表面層用塗布液を調製した。この塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布して、得られた塗膜を155℃で60分間加熱処理を行い、膜厚が5.0μmである表面層を形成した。
このようにして、支持体(導電性支持体)上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層、および表面層をこの順に有する電子写真感光体を製造した。
【0095】
(実施例2)
実施例1において、表面層用塗布液の調製に用いた、式(3-9)で示される構造単位および式(4―2)で示される構造単位を有する重合体を、式(3-5)で示される構造単位および式(4―6)で示される構造単位を有する重合体に変更した。式(3-5)で示される構造単位および式(4―6)で示される構造単位を有する重合体は、共重合比が式(3-5)/式(4―6)=1/1(モル比)、重量平均分子量が110,000であるものを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0096】
(実施例3)
実施例1において、表面層用塗布液の調製に用いたベンゾグアナミン樹脂(ニカラックBL-60、三和ケミカル社製)1.5部を、メラミン化合物(ニカラックMW-30HM、三和ケミカル社製)1.5部に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0097】
(実施例4~19、比較例1~7)
実施例1において、表面層用塗布液のうち式(1)で示される電荷輸送性化合物および式(2)で示される電荷輸送性化合物それぞれの種類と使用量を表1に記載のとおりとした。また、ポリテトラフルオロエチレン粒子の1次粒子径が140nm以上の粒子の存在比率、結晶化度、表面層中の含有量を表2に記載のとおりとした。それ以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0098】
【0099】
【0100】
[評価]
実施例1~19、比較例1~7で作製した電子写真感光体のゴースト画像評価、電気特性評価を以下のように実施した。
【0101】
(ゴースト画像評価)
評価用の電子写真装置として、複写機(商品名:imagePRESS C910、キヤノン社製)を用いた。
電子写真感光体を上記複写機とともに温度32℃湿度82%RHの高温高湿環境下で3日間放置した。その後、初期の明部電位が-300[V]、暗部電位が-800[V]となるようにレーザー光量および印加電圧を調整した。そして、同環境下で10000枚および30000枚および50000枚の通紙使用を行った。上記レーザー光量条件の下で通紙使用直後、10000枚および30000枚および50000枚の通紙使用直後でのゴースト画像評価を行った。
なお、電子写真感光体の通紙使用は、50枚連続通紙したのちに10秒間通紙を止めることを繰り返し行う間欠モードで、0.5mm幅のラインを縦10mmおきに印字する条件で行った。
また、ゴースト画像評価は、以下のように行った。通紙使用終了後、ゴースト画像評価用画像および全面白画像を印字した。ゴースト画像評価用画像としては、
図3(a)に示すように、画像の先頭部に、白地(白画像31)中に四角のベタ画像32を出した後、1ドット桂馬パターン画像33を作製した。
図3(a)の1ドット桂馬パターン画像は、
図3(b)に示されるようなパターン画像である。
図3(a)中、ゴースト評価部34は、ベタ画像起因のゴーストの出現の有無を評価する部分である。ゴーストが出現する場合は
図3(a)中のゴースト評価部34に出現する。
ゴースト画像の評価においては、1ドット桂馬パターン画像33の画像濃度とゴースト評価部34の画像濃度との濃度差を、分光濃度計(商品名:X-Rite504/508、X-Rite社製)にて測定した。この濃度差の値が小さいほど、ゴースト現象の程度が小さく、良好であることを意味する。濃度差に応じて以下の基準によりゴースト画像評価を行った。
ランク5:画像濃度差が0.000より大きく0.015以下
ランク4:画像濃度差が0.016以上0.025以下
ランク3:画像濃度差が0.026以上0.035以下
ランク2:画像濃度差が0.036以上0.050以下
ランク1:画像濃度差が0.051以上
得られた評価結果を表3に示す。
【0102】
(電気特性評価)
評価用の電子写真装置として、上記複写機を用いた。この複写機のドラムカートリッジに、電子写真感光体を装着して、以下のように評価した。
温度32℃、湿度82%RHの高温高湿環境下で、画像印字比率5%の画像をA4サイズの普通紙にて、20000枚、30000枚、および50000枚の連続画像形成を行った。
20000枚の画像出力後、得られた電子写真感光体の暗部電位(Vd)が-850[V]、明部電位(Vl)が-300[V]になるように、印加電圧の条件(印加電圧設定C)と、露光装置の露光光量の条件(露光光量C)を設定した。電子写真感光体の表面電位の測定は、複写機から現像用カートリッジを抜き取り、そこに電位プローブ(商品名:model60006-8、トレック社製)を固定し、表面電位計(model344、トレック社製)を使用して行った。
現像用カートリッジを上記電位プローブおよび表面電位計からなる電位測定装置に付け替え、上記印加電圧設定Cを印加し、上記露光光量Cで露光した際の電子写真感光体の表面の明部電位(Vla)を測定した。
その後、印加電圧の条件(印加電圧設定C)と、露光装置の露光光量の条件(露光光量C)を設定のまま、ベタ黒画像の設定で1000枚連続出力を行った。
その後、1000枚連続出力中の表面の明部電位の最大値(ΔVlmax)と最小値(ΔVlmin)の差分から、1000枚連続出力中の明部電位変動差|ΔVl|を算出した。
また、30000枚および50000枚の画像出力後にも、20000枚の画像出力後と同様の操作をおこなった。
明部電位変動差は、値が小さいほど、電位変動の程度が小さく、良好であることを意味する。明部電位変動差|ΔVl|に応じて以下の基準により電気特性評価を行った。
ランク4:|ΔVl|が10以内
ランク3:|ΔVl|が10より大きく15以内
ランク2:|ΔVl|が15より大きく20以内
ランク1:|ΔVl|が20より大きい
【0103】
【符号の説明】
【0104】
111 支持体
112 下引き層
113 電荷発生層
114 電荷輸送層
115 表面層
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段