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特許7604331石炭膨張圧測定装置、及び石炭膨張圧測定方法
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  • 特許-石炭膨張圧測定装置、及び石炭膨張圧測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】石炭膨張圧測定装置、及び石炭膨張圧測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
G01L5/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021105455
(22)【出願日】2021-06-25
(65)【公開番号】P2023004004
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000156961
【氏名又は名称】関西熱化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北尾 政人
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】岩切 俊憲
(72)【発明者】
【氏名】石本 航太郎
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-143928(JP,A)
【文献】特開2010-190761(JP,A)
【文献】特開平07-034069(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0037822(US,A1)
【文献】特開平06-074659(JP,A)
【文献】特開平04-132791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00 ~ 5/28
G01N 3/00 ~ 3/38
C10B 1/00 ~ 57/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を収容する直方体形状の収容室を有し、前記収容室の第1水平方向の辺の長さが第2水平方向の辺の長さ及び垂直方向の辺の長さよりも短いレトルトと、
前記レトルトを収容する断熱室と、
前記断熱室内で且つ前記レトルトの外に配置される電気ヒータと、
前記断熱室外に配置される圧力計測装置と、
先端に受圧板を有する受圧棒と、
を備え、
前記レトルトは、前記第2水平方向の辺と前記垂直方向の辺とで構成される一対の第1レトルト側壁を有し、
前記電気ヒータは、前記一対の第1レトルト側壁よりも第1水平方向の外側にそれぞれ配置され、前記一対の第1レトルト側壁に向けてそれぞれ放熱し、
前記受圧棒は、前記圧力計測装置から前記第1水平方向に延びて前記第1レトルト側壁に形成された孔を介して前記収容室内に面し、石炭側からの圧力を前記圧力計測装置に伝達可能に構成されている、石炭膨張圧測定装置。
【請求項2】
前記レトルトの前記収容室の内面に、前記第1レトルト側壁に形成された孔及び前記受圧板を覆うシートが設けられている、請求項1に記載の石炭膨張圧測定装置。
【請求項3】
前記第1レトルト側壁に形成された孔及び前記受圧板は、前記第1水平方向と平行な視線で見て円形状である、請求項1又は2に記載の石炭膨張圧測定装置。
【請求項4】
前記受圧板及び前記受圧棒は、融点が600℃より大きい物質で形成されている、請求項1~3のいずれかに記載の石炭膨張圧測定装置。
【請求項5】
前記受圧板及び前記受圧棒は、SUSよりも熱膨張率が低いセラミック製である、請求項1~4のいずれかに記載の石炭膨張圧測定装置。
【請求項6】
前記受圧板及び前記受圧棒は、窒化ケイ素、ジルコニア、アルミナのいずれかで形成されている、請求項5に記載の石炭膨張圧測定装置。
【請求項7】
前記受圧棒と共に前記レトルトを挟む位置に配置される支持棒と、前記支持棒及び前記圧力計測装置を支持する支持フレームを備え、
前記支持フレームは、前記圧力計測装置を支持する第1支持部と、前記支持棒を支持する第2支持部とを有し、前記第1支持部と前記第2支持部が互いの位置関係が不変となるように連結されている、請求項1~6のいずれかに記載の石炭膨張圧測定装置。
【請求項8】
前記電気ヒータは、前記レトルトの前記第1レトルト側壁から離間して配置されている、請求項1~7のいずれかに記載の石炭膨張圧測定装置。
【請求項9】
前記レトルトは、前記第1水平方向の辺と前記垂直方向の辺とで構成される一対の第2レトルト側壁を有し、前記一対の第2レトルト側壁は、断熱材で覆われている、請求項1~8のいずれかに記載の石炭膨張圧測定装置。
【請求項10】
石炭膨張圧測定装置を用いた石炭膨張圧測定方法であって、
前記石炭膨張圧測定装置は、
石炭を収容する直方体形状の収容室を有し、前記収容室の第1水平方向の辺の長さが第2水平方向の辺の長さ及び垂直方向の辺の長さよりも短いレトルトと、
前記レトルトを収容する断熱室と、
前記断熱室内で且つ前記レトルトの外に配置される電気ヒータと、
前記断熱室外に配置される圧力計測装置と、先端に受圧板を有する受圧棒と、を備え、
前記レトルトは、前記第2水平方向の辺と前記垂直方向の辺とで構成される一対の第1レトルト側壁を有し、
前記電気ヒータは、前記一対の第1レトルト側壁よりも第1水平方向の外側にそれぞれ配置され、
前記受圧棒は、前記圧力計測装置から前記第1水平方向に延びて前記第1レトルト側壁に形成された孔を介して前記収容室内に面し、石炭側からの圧力を前記圧力計測装置に伝達可能に構成されており、
前記石炭膨張圧測定方法は、
前記レトルトの前記収容室に石炭を収容し、
前記電気ヒータから前記一対の第1レトルト側壁に向けて放熱し、前記レトルトの前記収容室に収容された前記石炭を加熱し、
加熱によって発生する前記石炭の膨張圧を、前記受圧棒を介して前記圧力計測装置に伝達させて計測する、石炭膨張圧測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、石炭膨張圧測定装置、及び石炭膨張圧測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭の膨張圧は、石炭の軟化溶融過程において発生するガスのガス圧に起因するといわれている。実操業炉に近い条件で石炭の膨張圧を計測可能な試験用の装置が求められる。特許文献1には、実炉よりも小さい試験炉が開示されている。この試験炉は、石炭を入れる箱状の炭化室を上下左右4つの炉壁で構成し、左右の一方の炉壁が固定式炉壁であり、左右の他方の炉壁が車輪を介して水平方向に移動可能な可動式炉壁であり、可動式炉壁にロードセルを接続して膨張圧を計測可能にする。左右の炉壁に電気ヒータが設けられ、炭化室内の石炭が左右から加熱される。箱状の炭化室を構成する炉壁を包囲するように、ガス用シールが設けられている、との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-74659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記装置では、石炭の膨張圧は、可動式炉壁を介してロードセルに接続されているので、車輪での抵抗などの可動式炉壁を動かすための力の損失が考えられ、膨張圧の計測精度に改善の余地が考えられる。
【0005】
また、電気ヒータがガス用シールの内側にガス発生源となる石炭と共に配置されているため、ガス発生量が多い石炭の場合には、発生したガスが電気ヒータに接触してヒータが短絡し、必要な加熱ができず、膨張圧が計測不能となるおそれがある。
【0006】
本開示は、膨張圧の計測精度を向上させると共に、ヒータの短絡を抑制可能な石炭膨張圧測定装置、及び石炭膨張圧測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の石炭膨張圧測定装置は、石炭を収容する直方体形状の収容室を有し、前記収容室の第1水平方向の辺の長さが第2水平方向の辺の長さ及び垂直方向の辺の長さよりも短いレトルトと、前記レトルトを収容する断熱室と、前記断熱室内で且つ前記レトルトの外に配置される電気ヒータと、前記断熱室外に配置される圧力計測装置と、先端に受圧板を有する受圧棒と、を備え、前記レトルトは、前記第2水平方向の辺と前記垂直方向の辺とで構成される一対の第1レトルト側壁を有し、前記電気ヒータは、前記一対の第1レトルト側壁よりも第1水平方向の外側にそれぞれ配置され、前記一対の第1レトルト側壁に向けてそれぞれ放熱し、前記受圧棒は、前記圧力計測装置から前記第1水平方向に延びて前記第1レトルト側壁に形成された孔を介して前記収容室内に面し、石炭側からの圧力を前記圧力計測装置に伝達可能に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の石炭膨張圧計測装置を一部断面図と共に示す側面図。
図2】石炭膨張圧計測装置を一部断面図と共に示す平面図。
図3】レトルトに関する斜視図。
図4A】対の第1断熱側壁の一方を第1水平方向と平行な視線で見た図。
図4B】対の第1断熱側壁の他方を第1水平方向と平行な視線で見た図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態の石炭膨張圧計測装置を、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の石炭膨張圧計測装置を一部断面図と共に示す側面図である。図2は、石炭膨張圧計測装置を一部断面図と共に示す平面図である。図3は、レトルト1に関する斜視図である。図4Aは、対の第1断熱側壁41の一方を第1水平方向Xと平行な視線で見た図である。図4Bは、対の第1断熱側壁41の他方を第1水平方向Xと平行な視線で見た図である。
【0010】
図1~3に示すように、本実施形態の石炭膨張圧計測装置は、石炭を収容する収容室10を有するレトルト1と、レトルト1内の石炭を加熱する電気ヒータ2と、石炭の膨張圧を計測するための圧力計測装置3と、を有する。本明細書における高温は、石炭を加熱する温度であり、摂氏150度以上をいい、好ましくは、350度以上600度以下をいう。
【0011】
レトルト1は、石炭を収容室10に収容すると共に、石炭及び石炭の加熱による発生するガスが所望の場所以外に漏れないようにする目的で設けられる。所望の場所は、例えば、排気ダクトを介した排気先が挙げられる。所望の場所以外とは、例えば、電気ヒータが挙げられる。図3に示すように、収容室10は、実操業炉の直方体形状を模擬して、直方体形状に形成されている。収容室10は石炭が収容可能な空間を意味する。収容室10の第1水平方向Xの辺の長さW1は第2水平方向Yの辺の長さL1及び垂直方向Zの辺の長さH1により短い。第1水平方向X及び第2水平方向Yは、互いに直交する。垂直方向Zは、第1水平方向X及び第2水平方向Yに対して直交する。本実施形態では、W1=60mm、H1=180mm、L1=140mmであるが、一例であり、これに限定されない。本実施形態では、W1<L1<H1となっているが、H1=L1でもよく、また、W1<H1≦L1としてもよい。
【0012】
図1及び図3に示すように、レトルト1の収容室10の上部には、ガスを排気するための排気ダクト11が設けられ、石炭の加熱により発生したガスは排気ダクト11を介して排気可能に構成されている。レトルト1は、電気ヒータ2からの熱を伝熱させる伝熱性を有し且つ剛性を有し、摂氏600度で変形しなければ(融点が摂氏600度よりも大きければ)、どのような材料で形成されていてもよい。例えば、SUS等の金属やセラミックが挙げられる。本実施形態では、SUS310Sであるが、これに限定されず、種々変更可能である。計測したい現象の反応(膨張圧)が摂氏600度で完了するため、摂氏600度で熱により融解しなければよいという意味である。
【0013】
図1~3に示すように、レトルト1は、一対の第1レトルト側壁12と、一対の第2レトルト側壁13と、レトルト底壁14と、レトルト天壁15とを有する。第1レトルト側壁12は、第2水平方向Yの辺と垂直方向Zの辺とで構成される。第2レトルト側壁13は、第1水平方向Xの辺と垂直方向Zの辺とで構成される。レトルト天壁15には上方へ延びる排気ダクト11が設けられている。第1レトルト側壁12、第2レトルト側壁13及びレトルト底壁14は互いに固定されており、蓋無しの有底箱を形成している。試験時には、有底箱に石炭が投入され、排気ダクト11を有するレトルト天壁15が蓋として断熱材を間に挟んで有底箱に固定される。固定方法は、ボルト等の締結具を介したフランジ同士の締結である。
【0014】
第2レトルト側壁13、レトルト天壁15及びレトルト底壁14は、断熱材16で覆われており、電気ヒータ2からの熱が第1レトルト側壁12を介して石炭に伝熱するように構成されている。実操業炉を模擬するためである。
【0015】
石炭膨張圧計測装置は、レトルト1内の石炭を効果的に加熱するために、レトルト1を収容する断熱室4を有する。断熱室4は、断熱材で四方を包囲されることで形成される。断熱室4は、一対の第1断熱側壁41、一対の第2断熱側壁42、断熱底壁43及び断熱天壁44で形成される。レトルト1は、第1断熱側壁41同士の中間に配置されており、第1断熱側壁41と第1レトルト側壁12は、第1水平方向Xにて等距離に離間している。
【0016】
電気ヒータ2は、断熱室4内に配置されると共にレトルト1の外に配置される。電気ヒータ2をレトルト1の外に配置することで、レトルト1内の石炭から発生するガスが電気ヒータ2に至ることを抑制又は防止可能となる。電気ヒータ2を断熱室4内に配置することで効果的に石炭を加熱可能となる。電気ヒータ2は、一対の第1レトルト側壁12よりも第1水平方向Xの外側にそれぞれ配置されて対をなしている。これにより、電気ヒータ2は、それぞれ、第1レトルト側壁12に向けて放熱する。本実施形態では、図4A及び図4Bに示すように、一対の第1断熱側壁41のそれぞれに電気ヒータ2が設けられており、各々の電気ヒータ2から第1レトルト側壁12までの第1水平方向Xに沿った距離が等距離になるようにしている。電気ヒータ2からレトルト1を離間させることにより石炭の均一加熱が可能となる。図4A及び図4Bに示すように、電気ヒータ2は線状であるので、第1レトルト側壁12を介して石炭を均一に加熱するために、電気ヒータ2は、第2水平方向Yの一方に延びて折り返して第2水平方向Yの他方に延びて折り返し、また、第2水平方向Yの一方に延びることを繰り返して、配置されている。
【0017】
圧力計測装置3は、断熱室4外に配置されている。圧力計測装置3は、レトルト1よりも第1水平方向Xの外側に配置されている。圧力計測装置3は、第1水平方向Xに平行な視線で見て、レトルト1と重なる位置に配置されている。圧力計測装置3は、ひずみゲージなどを用いたロードセルを有し、ロードセルに対して受圧棒50が接続されている。受圧棒50は、第1水平方向Xに延びており、その先端に受圧板51を有する。一対の第1レトルト側壁12のうちの一方には、受圧棒50を挿入するための孔12hが形成されている。受圧棒50は、断熱室4外にある圧力計測装置3から第1水平方向Xに延びて、断熱室4内に至り、第1レトルト側壁12に形成された孔12hを介して収容室10内に面する。これにより、受圧棒50は、収容室10内部の石炭側からの圧力を圧力計測装置3に伝達可能に構成されている。
【0018】
受圧板51及び受圧棒50の先端部は高温に晒されるために、両者の接続構造に、第1水平方向Xに沿った膨張圧の伝達を阻害する構造を採用することは避けた方がよい。そこで、本実施形態では、受圧棒50の先端と同形状の凹部51h(図1参照)を受圧板51に設け、当該凹部51hに受圧棒50の先端を差し込むことで、ボルトなどの締結具を使用することなく、受圧棒50と受圧板51とを接続している。受圧棒50の先端面50aと、この先端面50aに接触する受圧板51の凹部51hの底面とは、共に垂直方向Zに平行である。これにより、第1水平方向Xに向かう力を適切に伝達できるようにしている。
【0019】
また、本実施形態では、受圧棒50が後述の通りセラミック製であり、ロードセル側の部材(金属製;非図示)と別材料であり、セラミックは柔軟性に欠ける材料であり、両者をねじ止めできない。そこで、ロードセル側の部材と受圧棒50の基端の接続構造も同様に、ロードセル側の部材に形成した凹部に受圧棒50の基端を差し込む構造にし、第1水平方向Xに向かう力を適切に伝達できるようにしている。
【0020】
第1レトルト側壁12及び受圧板51は、高温に晒されるために膨張により応力が作用する。本実施形態では、第1レトルト側壁12に形成された孔12h及び受圧板51は、第1水平方向Xと平行な視線で見て円形状(真円が好ましい)に形成されている。これにより、熱膨張で発生する応力が特定箇所(例えば屈曲部など)に集中することを回避でき、耐久性を向上可能となる。
【0021】
第1レトルト側壁12に形成された孔12hと受圧板51の間の隙間は、一方向において合計1mm以下であることが好ましい。この値を超えると隙間からガスが漏れやすくなるからである。例えば、垂直方向Zで言えば、上下の二箇所に隙間が存在するが、両方の隙間の合計が1mm以下であることが好ましい。第2水平方向Yについても同様である。
【0022】
本実施形態では、レトルト1は、SUS製である。受圧板51及び受圧棒50も融点が600℃より大きい物質であるSUS等の金属製にしてもよいが、SUSは比較的熱膨張率が高く、受圧板51及び受圧棒50の熱膨張が石炭の膨張圧の計測に影響を与えることを抑制することが好ましい。そこで、本実施形態では、受圧板51及び受圧棒50は、SUSよりも熱膨張率が低いセラミック製にしている。受圧棒50及び受圧板51は同じ材料で形成されている。さらに具体的には、受圧板51及び受圧棒50は、窒化ケイ素で形成されている。窒化ケイ素は、全ての温度で膨張率[%]がSUSよりも低いからである。また、窒化ケイ素は、全ての温度での熱伝導率[W/(m・K)]がSUSよりも低いからである。
窒化ケイ素の他に利用可能なセラミックは、炭化ケイ素、フォルステライト、ジルコニア、アルミナが挙げられる。
受圧板51及び受圧棒50の材料は、次の(1)~(4)のうち少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(1)摂氏400度から800度までの熱膨張率が前記レトルトの材質よりも低い。
(2)水中投下時の熱衝撃温度差摂氏400度から800度までの耐熱衝撃性が200Mpa以上である。
(3)摂氏400度から800度までの高温強度が200Mpa以上である。
(4)摂氏400度から800度までの熱伝導率がレトルトの材質より低い。
上記(1)は、摂氏0の長さを基準とした熱膨張率である。
上記(2)は、急冷後の3点曲げ強さ[MPa]である。
上記(3)は、3点曲げ強さ[MPa]である。
上記(4)の計測方法は、JIS R1611-1997に基づく。
【0023】
上記構造においても、ガスの発生が少ない石炭について膨張圧の計測が可能である。しかし、ガスの発生が多い石炭については、第1レトルト側壁12に形成された孔12hと受圧板51の間の隙間からガス漏れが発生し、当該ガスが電気ヒータ2に至る場合がある。
そこで、本実施形態では、レトルト1の収容室10の内面(本実施形態では第1レトルト側壁12の内面)に、第1レトルト側壁12の孔12hおよび受圧板51の全てを覆うシート6が設けられている。シート6は、高温でも利用でき且つ柔軟性があれば、どのような材質でもよい。本実施形態のシート6は、SUSの金属箔である。厚みは10μmであるが、柔軟性を確保できれば、この厚みに限定されない。シート6は、第1レトルト側壁12に対して接着剤や粘着シートなどの粘着手段で貼り付けることが好ましい。本実施形態では、接着手段としてセロハンテープを用いているが、これに限定されない。本実施形態のシート6は、第1水平方向Xに平行な視線で見て矩形状であるが、これに限定されない。例えば円形であってもよい。
このシートにより、ガスの発生が多い石炭であってもガスが漏れて電気ヒータに至ることを防止可能となる。
【0024】
本実施形態では、膨張圧の計測精度を向上させるために更に次の手段を講じている。石炭膨張圧計測装置は、受圧棒50と共にレトルト1を挟む位置に配置される支持棒60と、支持棒60及び圧力計測装置3を支持する支持フレーム62と、を更に有する。支持棒60は、先端に支持板61を有する。支持棒60及び支持板61の材質及び形状は、受圧棒50と同じであるが、特に限定されない。後述する支持フレーム62の第2支持部62bと、支持棒60との接続構造は、受圧棒50とロードセル側の部材の接続構造と同じである。
支持フレームは、金属製である。支持フレーム62は、圧力計測装置3を支持する第1支持部62aと、支持棒60を支持する第2支持部62bと、ベース62cとを有する。ベース62cによって第1支持部62aと第2支持部62bが連結され、第1支持部62aと第2支持部62bが互いの位置関係が不変となる。その結果、受圧棒50と圧力計測装置3の位置関係が固定され、膨張圧の計測の精度を向上可能となる。
【0025】
上記以外は、通常の試験炉と同様に、断熱室4内に配置された熱電対などの第1温度センサ(非図示)と、レトルト1内には配置され且つ石炭の温度を計測する熱電対などの第2温度センサ(非図示)と、これらの温度センサの検出結果に基づいて電気ヒータ2を制御するための制御部(非図示)と、が設けられている。第1温度センサは、第1断熱側壁41から断熱室4内に差し込まれている。第2温度センサは、第1レトルト天壁15から収容室10内の石炭の中心部付近に至るように差し込まれている。運転開始後、石炭の温度が、コークス化する温度(最低600℃以上)、好ましくは800℃になるまで加熱する。膨張圧の現象は、600℃で完了するため600℃に加熱できれば足りる。
【0026】
以上のように、本実施形態のように、石炭膨張圧測定装置は、石炭を収容する直方体形状の収容室10を有し、収容室10の第1水平方向Xの辺の長さW1が第2水平方向Yの辺の長さL1及び垂直方向Zの辺の長さH1よりも短いレトルト1と、レトルト1を収容する断熱室4と、断熱室4内で且つレトルト1の外に配置される電気ヒータ2と、断熱室4外に配置される圧力計測装置3と、先端に受圧板51を有する受圧棒50と、を備え、レトルト1は、第2水平方向Yの辺と垂直方向Zの辺とで構成される一対の第1レトルト側壁12を有し、電気ヒータ2は、一対の第1レトルト側壁12よりも第1水平方向Xの外側にそれぞれ配置され、一対の第1レトルト側壁12に向けてそれぞれ放熱し、受圧棒50は、圧力計測装置3から第1水平方向Xに延びて第1レトルト側壁12に形成された孔12hを介して収容室10内に面し、石炭側からの圧力を圧力計測装置3に伝達可能に構成されている、としてもよい。
【0027】
この構成によれば、石炭を収容する収容室10が直方体形状であり、収容室10の第1水平方向Xの辺が第2水平方向Yの辺および垂直方向Zの辺よりも短いので、円柱形状の試験炉に比べて、実炉の形状に近い試験炉を提供可能となる。また、第2水平方向Yの辺と垂直方向Zの辺とで構成される第1レトルト側壁12に対して電気ヒータ2が放熱するので、第1レトルト側壁12が石炭を加熱する加熱壁となり、実炉の左右両側加熱方式を再現可能となる。
また、電気ヒータ2は、石炭が収容されるレトルト1の外に配置されるので、電気ヒータ2がガスにさらされる可能性が低く、電気ヒータ2の短絡を抑制又は防止して、適切な加熱が可能となる。
さらに、受圧棒50が圧力計測装置3から第1水平方向Xに延びてレトルト1の収容室10内に面し、圧力を直接受ける構造であるので、レトルト側壁を受圧面とする構成に比べて、力の損失を低減でき、膨張圧の計測精度を向上可能となる。
【0028】
本実施形態のように、レトルト1の収容室10の内面に、第1レトルト側壁12に形成された孔12h及び受圧板51を覆うシート6が設けられている、としてもよい。
この構成によれば、第1レトルト側壁12に形成された孔12hと受圧板51の間を通じて石炭から発生したガスが抜けることをシート6が防止する。よって、ガス発生量が多い石炭であっても電気ヒータ2を短絡させずに適切な加熱を実現でき、膨張圧の計測が可能となる。
【0029】
本実施形態のように、第1レトルト側壁12に形成された孔12h及び受圧板51は、第1水平方向Xと平行な視線で見て円形状である、としてもよい。
レトルト1及び受圧板51は、石炭が加熱されることに併せて高温になるが、応力に強い円形状にすることで、耐久性を向上可能となる。
【0030】
本実施形態のように、受圧板51及び受圧棒50は、SUSよりも熱膨張率が低いセラミック製である、としてもよい。
この構成によれば、レトルトを堅固な構成としつつも、受圧板51及び受圧棒50の熱膨張による膨張圧測定への影響を低減可能となる。
【0031】
本実施形態のように、受圧板51及び受圧棒50は、窒化ケイ素、ジルコニア、アルミナのいずれかで形成されている、としてもよい。
この構成によれば、高温環境にて適切に膨張圧を計測可能となる。この中では、窒化ケイ素が最適であると考えられる。
【0032】
本実施形態のように、受圧棒50と共にレトルト1を挟む位置に配置される支持棒60と、支持棒60及び圧力計測装置3を支持する支持フレーム62を備え、支持フレーム62は、圧力計測装置3を支持する第1支持部62aと、支持棒60を支持する第2支持部62bとを有し、第1支持部62aと第2支持部62bが互いの位置関係が不変となるように連結されている、としてもよい。
この構成によれば、膨張圧の計測精度を向上可能となる。
【0033】
本実施形態のように、電気ヒータ2は、レトルト1の第1レトルト側壁12から離間して配置されている、としてもよい。
この構成によれば、電気ヒータ2からの熱が断熱室4内の空間を介して第1レトルト側壁12に至るので、均一な加熱が可能となる。
【0034】
本実施形態のように、レトルト1は、第1水平方向Xの辺と垂直方向Zの辺とで構成される一対の第2レトルト側壁13を有し、一対の第2レトルト側壁13は、断熱材で覆われている、としてもよい。
この構成によれば、対の第1レトルト側壁12が主に石炭に熱を伝えるので、実操業炉に近い加熱方式を提供でき、石炭の膨張圧の計測精度を向上可能となる。
【0035】
本実施形態の石炭膨張圧測定方法は、上記石炭膨張圧測定装置を用いた石炭膨張圧測定方法であり、レトルト1の収容室10に石炭を収容し、電気ヒータ2から一対の第1レトルト側壁12に向けて放熱し、レトルト1の収容室10に収容された石炭を加熱し、加熱によって発生する石炭の膨張圧を、受圧棒50を介して圧力計測装置3に伝達させて計測する。
【0036】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0037】
[変形例]
(1)前記実施形態では、電気ヒータ2は第1断熱側壁41に取り付けられているが、これに限定されない。例えば、電気ヒータ2を第1レトルト側壁12と第1断熱側壁41の間に設けてもよい。
【0038】
(2)前記実施形態では、第1レトルト側壁12に形成された孔12h及び受圧板51は、第1水平方向Xに平行な視線で見て円形状であるが、これに限定されない。形状は種々変更可能である。
【0039】
(3)前記実施形態における支持フレーム62は省略可能である。
【0040】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。
【0041】
各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…レトルト
10…収容室
12…第1レトルト側壁
12h…孔
13…第2レトルト側壁
2…電気ヒータ
3…圧力計測装置
4…断熱室
50…受圧棒
51…受圧板
6…シート
60…支持棒
61…支持板
62…支持フレーム
62a…第1支持部
62b…第2支持部
62c…ベース
X…第1水平方向
Y…第2水平方向
Z…垂直方向
図1
図2
図3
図4A
図4B