(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】コネクタ、コネクタユニット、及び、コネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 12/51 20110101AFI20241216BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20241216BHJP
H01R 43/24 20060101ALI20241216BHJP
H01R 43/16 20060101ALI20241216BHJP
H05K 5/06 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
H01R12/51
H01R13/52 301E
H01R43/24
H01R43/16
H05K5/06 D
H01R13/52 301H
(21)【出願番号】P 2021106370
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】石井 賢治
(72)【発明者】
【氏名】荒井 淳一
(72)【発明者】
【氏名】浅野 貴生
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-234142(JP,A)
【文献】特開2019-003724(JP,A)
【文献】特開2012-134130(JP,A)
【文献】特開平08-096905(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0357745(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R13/40-13/533
H01R13/56-13/72
H01R24/00-24/86
H01R43/00-43/02
H01R43/027-43/28
H05K5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成されたランドと電気的に接続される複数の棒状の端子と、
前記端子が収容されたハウジングと、を備え、
前記ハウジングの下面は、環状の防水パッキンが密着配置される環状のパッキン密着部を有し、
前記端子のうち前記ランドと接続される接続部が、前記ハウジングの前記下面
と面一になる状態で且つ前記パッキン密着部より内側で露出しており、
前記端子の両側の端部は、前記ハウジングの内部に位置しているコネクタ。
【請求項2】
前記端子は、延出方向において前記接続部の両側で前記下面から前記ハウジングの前記内部に向かう上方向に折り曲げられており、
両側の前記端部は、前記下面よりも高いところに位置している請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記下面は凹部を有しており、前記接続部は前記凹部に収容されている請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記パッキン密着部は傾斜面を有しており、前記傾斜面の一部は前記凹部の側面に隣接し、前記傾斜面の前記一部と前記側面とのなす角が鋭角で、前記傾斜面の前記一部と前記側面との境界部分が尖っている請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のコネクタと、
前記ハウジングの前記パッキン密着部に密着するように配置された前記防水パッキンと、
前記防水パッキンより内側に配置されると共に前記ハウジングの前記下面に当接して配置され、前記端子の前記接続部と電気的に接続された前記ランドを有する前記基板と、
前記ハウジングの前記防水パッキンが配置された側と反対側に配置されたホルダと、
前記防水パッキンと、前記基板と、前記コネクタと、前記ホルダとがこの順で搭載された筐体と、を備えたコネクタユニット。
【請求項6】
前記筐体と前記ホルダとを締結して、前記防水パッキンを前記筐体と前記コネクタとに密着させる請求項5に記載のコネクタユニット。
【請求項7】
前記筐体には前記防水パッキンより内側で貫通孔が形成されており、前記基板の引出し部が前記貫通孔から前記筐体の外部に引き出されている請求項5又は6に記載のコネクタユニット。
【請求項8】
請求項1から4の何れか一項に記載のコネクタを製造する方法であって、
一方側の端部がキャリアと繋がった複数の棒状の端子を金型内に載置する端子載置工程と、
前記金型内に樹脂を流し込んで、複数の前記端子が収容されたハウジングを成形するハウジング形成工程と、
前記キャリアを切断して複数の前記端子から前記キャリアを分離するキャリア分離工程と、
前記ハウジングの一部を溶融させた溶融樹脂により、複数の前記端子の一方側の前記端部を覆って前記溶融樹脂を硬化させる端子封止工程と、を含むコネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ、コネクタユニット、及び、コネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ等の撮像装置においては、外付けの電子ビューファインダ(EVF)、ストロボ、又は、その他の電子制御アクセサリを装着して使用する機会が多い。そのため、撮像装置と電子制御アクセサリとの間で電気通信を可能にする、複数の金属接点を有する端子(コネクタ端子)を備えたコネクタ構造のアクセサリシューを備えた撮像装置がある。例えば特許文献1には、カメラに着脱可能な電子制御アクセサリと接続されるコネクタ構造のアクセサリシュー(特許文献1では「シュー座」)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメラ等の撮像装置は屋外で用いられることがあるので、装置内部に水が浸入しないような防水性が求められる。特に、外付けの電子制御アクセサリが装着されるコネクタ構造のアクセサリシューは、端子から水が浸入すると、装置内部にまで水が浸入するおそれがあるので、端子から水を浸入させないようにする必要がある。しかし、特許文献1に開示されたアクセサリシューは、撮像装置側の基板と接続される端子の接続部が外方に露出しており、十分な防水性が確保されているとは言い難い。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板と接続される端子の接続部への水の浸入を防止できる防水性を有するコネクタ、コネクタユニット、及び、コネクタの製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコネクタの一つの実施態様は、基板に形成されたランドと電気的に接続される複数の棒状の端子と、前記端子が収容されたハウジングと、を備え、前記ハウジングの下面は、環状の防水パッキンが密着配置される環状のパッキン密着部を有し、前記端子のうち前記ランドと接続される接続部が、前記ハウジングの前記下面と面一になる状態で且つ前記パッキン密着部より内側で露出しており、前記端子の両側の端部は、前記ハウジングの内部に位置している。
【0007】
本実施態様によると、端子の接続部が環状のパッキン密着部より内側で露出しているので、パッキン密着部に環状の防水パッキンを配置すると、端子の接続部は防水パッキンに囲まれることとなり、これにより、接続部への水の浸入が防止され、接続部の防水性を確保することができる。また、端子の両側の端部はハウジングの内部に位置しているので、端子の端部への水の浸入を防止することができる。
【0008】
本発明に係るコネクタの他の一つの実施態様において、前記端子は、延出方向において前記接続部の両側で前記下面から前記ハウジングの前記内部に向かう上方向に折り曲げられており、両側の前記端部は、前記下面よりも高いところに位置している。
【0009】
本実施態様によると、端子は、延出方向において接続部の両側で下面からハウジングの内部に向かう上方向に折り曲げられ、両側の端部は下面よりも高いところに位置しているので、露出部位を最小限にして、より確実に接続部への水の浸入を防止することができる。
【0010】
本発明に係るコネクタの他の一つの実施態様において、前記下面は凹部を有しており、前記接続部は前記凹部に収容されている。
【0011】
本実施態様によると、下面は凹部を有しており、接続部は凹部に収容されているので、仮にパッキン密着部から内部に水が浸入したとしても、接続部に水が到達し難くなり、より確実に接続部の防水性を確保することができる。
【0012】
本発明に係るコネクタの他の一つの実施態様において、前記パッキン密着部は傾斜面を有しており、前記傾斜面の一部は前記凹部の側面に隣接し、前記傾斜面の前記一部と前記側面とのなす角が鋭角で、前記傾斜面の前記一部と前記側面との境界部分が尖っている。
【0013】
本実施態様によると、傾斜面の一部と凹部の側面とのなす角が鋭角で、傾斜面の一部と凹部の側面との境界部分が尖っているので、パッキン密着部に防水パッキンを密着配置したときに、境界部分の防水パッキンに作用する圧力が大きくなり、境界部分が防水パッキンに食い込むことで、より確実に接続部への水の浸入を防止することができる。
【0014】
本発明に係るコネクタユニットの一つの実施態様は、上記の何れかに記載のコネクタと、前記ハウジングの前記パッキン密着部に密着するように配置された前記防水パッキンと、前記防水パッキンより内側に配置されると共に前記ハウジングの前記下面に当接して配置され、前記端子の前記接続部と電気的に接続された前記ランドを有する前記基板と、前記ハウジングの前記防水パッキンが配置された側と反対側に配置されたホルダと、前記防水パッキンと、前記基板と、前記コネクタと、前記ホルダとがこの順で搭載された筐体と、を備えている。
【0015】
本実施態様によると、環状のパッキン密着部に環状の防水パッキンが配置されることにより、端子の接続部が環状の防水パッキンに囲まれるので、接続部への水の浸入が防止され、接続部の防水性を確保することができる。また、端子の両側の端部はハウジングの内部に位置しているので、端子の端部からの水の浸入を防止することができる。
【0016】
本発明に係るコネクタユニットの他の一つの実施態様において、前記筐体と前記ホルダとを締結して、前記防水パッキンを前記筐体と前記コネクタとに密着させる。
【0017】
本実施態様によると、環状の防水パッキンとコネクタが筐体とホルダとに挟まれて配置されており、筐体とホルダとを締結して、防水パッキンを筐体とコネクタとに密着させるので、簡便な方法で、接続部への水の浸入が防止され、接続部の防水性を確保することができる。
【0018】
本発明に係るコネクタユニットの他の一つの実施態様において、前記筐体には前記防水パッキンより内側で貫通孔が形成されており、前記基板の引出し部が前記貫通孔から前記筐体の外部に引き出されている。
【0019】
本実施態様によると、基板及び筐体の貫通孔は環状の防水パッキンより内側に配置されているので、筐体の貫通孔から基板の引出し部を筐体の外部に引き出すことにより、コネクタユニットと外部との間で電気通信が可能になる。
【0020】
本発明に係るコネクタの製造方法の一つの実施態様は、上記の何れかに記載のコネクタを製造する方法であって、一方側の端部がキャリアと繋がった複数の棒状の端子を金型内に載置する端子載置工程と、前記金型内に樹脂を流し込んで、複数の前記端子が収容されたハウジングを成形するハウジング形成工程と、前記キャリアを切断して複数の前記端子から前記キャリアを分離するキャリア分離工程と、前記ハウジングの一部を溶融させた溶融樹脂により、複数の前記端子の一方側の前記端部を覆って前記溶融樹脂を硬化させる端子封止工程と、を含んでいる。
【0021】
本実施態様によると、ハウジングの一部を溶融させた溶融樹脂により、複数の端子の一方側の端部を覆って溶融樹脂を硬化させる端子封止工程を有することにより、別部材を用いることなく複数の端子の一方側の端部を覆って、端子の端部からの水の浸入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係るコネクタユニットの外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るコネクタ、コネクタユニット、及び、コネクタの製造方法の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0024】
〔コネクタユニットの構成〕
図1から
図4に示すように、コネクタユニットAは、コネクタ1、防水パッキン(以下、単に「パッキン」という)2、フレキシブルプリント基板(基板の一例。以下、単に「基板」という)3、筐体4、ホルダ5を含んで構成されている。コネクタユニットAは、例えば、カメラ等の撮像装置に電子ビューファインダ(EVF)、ストロボ、又は、その他の電子制御アクセサリ(不図示)を外付けするときのアクセサリシューとして用いられる。
【0025】
コネクタユニットA及びその構成部品において、コネクタ1の複数(本実施形態では21本)の端子10の配列方向をY方向、Y方向に垂直且つ筐体4、パッキン2、基板3、コネクタ1、ホルダ5の積層方向(高さ方向)をZ方向、Y方向とZ方向に垂直な方向をX方向と定義する。更に、X方向のうち、コネクタユニットAの筐体4において、側部4Bの後壁87から側壁88が延出する方向をX1方向(若しくは前方)、その逆をX2方向(若しくは後方)と定義し、コネクタユニットAにおいて筐体4からホルダ5に向かう方向をZ1方向(若しくは上方)、その逆をZ2方向(若しくは下方)と定義する(
図1参照)。
【0026】
コネクタ1は、複数の棒状の端子10とハウジング30とから構成されている。複数の端子10は、ハウジング30をインサート成形により形成することにより、ハウジング30内に収容される。コネクタ1の製造方法については後述する。
【0027】
端子10は、例えば、銅や銅合金等の金属条材を、プレス機により打ち抜き加工や曲げ加工(以下、まとめて「プレス加工」ともいう)を行うことにより、棒状且つ折り曲げられた形状に形成されている(
図2参照)。端子10は、棒状の延出方向の中程で、
図4に示すように、基板3のランド76(
図2も参照)と電気的に接続されるX方向に平行な接続部12を有する。また、端子10は、延出方向において接続部12の両側でZ1方向(ハウジング30の内部に向かう上方向)に折り曲げられ、更にその先で、外側に開いてX方向に平行になるように折り曲げられている。
【0028】
図4に示すように、外側に開いてX方向に平行である端子10の2つの部分のうち、X2方向に延出する部分を第1部分14、X1方向に延出する部分を第2部分16と夫々称する。第1部分14の端部を一方側の端部15(以下、単に「端部15」という)と称し、第2部分16の端部を他方側の端部17(以下、単に「端部17」という)と称する。また、端部15と端部17とをまとめて、「両側の端部」と称する。第1部分14はX方向に平行であり、その端部15はハウジング30の内部に位置しており、直接視認できない。第2部分16はX1方向の先で端部17がZ2方向に折り曲げられている。このため、端部17はハウジング30の内部に位置しており直接視認できない。第2部分16のうちX方向に平行な部分は、電子制御アクセサリが有する端子と接触して電気的に接続される接触面18になる。
【0029】
端部15、端部17の夫々が「ハウジング30の内部に位置して」とは、端部15、端部17の全体がハウジング30の樹脂に覆われて埋没しておりコネクタ1単体で何れの方向からも視認できない状態、及び、端部15、端部17の全体が埋没しておらずコネクタ1単体では何れかの方向から直接視認できるが、コネクタユニットAの状態では何れの方向からも直接視認できない状態、の両方の意味を含んでいる。端部15は、全体がハウジング30の樹脂に覆われて埋没しておりコネクタ1単体で何れの方向からも視認できないので、ハウジング30の内部に位置している。端部17は、コネクタ1単体では下面52の側に形成された第3端子支持穴57の内壁から露出しているので直接視認できるが、コネクタユニットAの状態では何れの方向からも直接視認できないので、ハウジング30の内部に位置している。第3端子支持穴57については後述する。
【0030】
ハウジング30は、
図2、
図3に示すように、Z方向視で矩形状の下面52を有し、下面52と反対側には、ホルダ5を固定するホルダ固定面32と、複数の端子10をインサート成形により収容するコネクタ収容部42とを有する。ハウジング30において、ホルダ固定面32はコネクタ収容部42に対してX1方向に位置する。ハウジング30は、PPS(Poly Phenylene Sulfide)やLCP(Liquid Crystal Polymer)のような耐熱性を有する樹脂材料からなる。
【0031】
ホルダ固定面32は、Z方向視で矩形状であり、ホルダ5が載置される平面部33と、X1方向寄りに位置してZ1方向に突出した四角柱状の凸部34を有している。凸部34の平面部33からの高さ(厚さ)は、後述するホルダ5の下板部93の板厚と同じである(
図1、
図4参照)。凸部34の上面からはZ2方向に向けて座ぐりが形成され、座ぐりの底面からハウジング30を貫通する接点挿通孔36が形成されている。接点挿通孔36には、頭部接点39Aと軸部39Bとを有するリベット接点39の軸部39Bが挿通されている。リベット接点39は、銅合金等の金属材料からなる。リベット接点39の頭部接点39Aは、電子制御アクセサリが有する端子と接触して電気的に接続される。軸部39Bは後述する基板3に形成された孔77Bのランド(不図示)に半田付けされて電気的に接続される。すなわち、リベット接点39を介して、電子制御アクセサリが有する端子と基板3の配線パターン(不図示)とが電気的に接続される。
【0032】
ホルダ固定面32は、平面部33からZ2方向にハウジング30を貫通する第1係合孔38が形成されている。4つの第1係合孔38の内径は同径であり、接点挿通孔36の内径よりも大きい。
【0033】
コネクタ収容部42はホルダ固定面32に隣接してX2方向に位置し、平面部33に対してZ2方向に突出して形成されている。コネクタ収容部42はZ方向視で矩形状である。
図1、
図4に示すように、コネクタ収容部42においては、複数の端子10の夫々を絶縁壁で仕切られた複数の端子収容溝43に収容している。このとき、複数の端子10の夫々の第2部分16の接触面18は露出した状態であるが、端部17はハウジング30の内部に位置しており直接視認できない。
【0034】
図4に示すように、コネクタ収容部42には、接触面18にX2方向で隣接して第1端子支持穴45が形成され、第1端子支持穴45にX2方向で壁を挟んで第2端子支持穴46が形成されている。コネクタ収容部42のZ方向視の周縁には、ホルダ固定面32に隣接する側を除いて、当接面47Cを有するホルダ支持壁47が、Z1方向に立設して形成されている。ホルダ支持壁47は、第2端子支持穴46にX2方向で隣接しY方向に沿って形成された後壁部47Aと、後壁部47Aの両端からX1方向に延出した一対の側壁部47BとからなるZ方向視でU字形を有しており、当接面47Cは後壁部47Aから側壁部47Bに亘って面一である(
図2も参照)。当接面47Cには、ホルダ5の上板部92の内面92Aが当接する。また、一対の側壁部47Bの夫々のY方向の外側には、ホルダ5の側板部94の側面94Aが当接するホルダ支持部48が形成されている。平面部33と、ホルダ支持部48と、ホルダ支持壁47の当接面47Cとは互いに平行であり、Z1方向に沿って、平面部33、ホルダ支持部48、当接面47Cの順で位置している。
【0035】
ハウジング30の下面52は、ホルダ固定面32の平面部33と平行で、下面52の周囲には、パッキン密着部54が形成されている。パッキン密着部54は、下面52のうち環状のパッキン2が密着配置される箇所であり、下面52の周縁に環状に形成されている。パッキン密着部54は、下面52に段差を設けて形成されており、段差のある二平面は互いに平行で、環状の傾斜面55により繋がっている。
【0036】
図4に示すように、傾斜面55の内側のうち、最もX2方向寄りには、傾斜面55に隣接して下面52からZ1方向に窪んだ凹部56が形成され、凹部56にX1方向で隣接して凹部56よりも更にZ1方向に窪んだ第3端子支持穴57が形成されている。凹部56の底面56Bからは複数の端子10が露出しており、夫々の接続部12が下面52と面一になるように突出した状態で、凹部56に収容されている。すなわち、夫々の接続部12は、パッキン密着部54の内側で露出している。端子10のうち凹部56の底面56Bから露出している部分は、延出方向において接続部12の両側で凹部56の底面56B(ハウジング30の内部)に向かう上方向(Z1方向)に折り曲げられて、Y方向視でU字状になっている。なお、上述したように、複数の端子10の第2部分16の端部17は、第3端子支持穴57の内壁から露出している。
【0037】
傾斜面55のうち凹部56と隣接する傾斜面(傾斜面の一部の一例)55Aと凹部56のうち傾斜面55Aに最も近い側面56Aとのなす角は鋭角になっており、傾斜面55Aと側面56Aとの境界部分53は尖っている。境界部分53が尖っていると、後述するパッキン2をハウジング30のパッキン密着部54に密着配置したときに、境界部分53のパッキン2の平面72に作用する圧力が大きくなり、境界部分53がパッキン2に食い込むことで、凹部56が傾斜面55に隣接して形成されていたとしても、パッキン2による十分な防水機能を発揮し、接続部12への水の浸入を防止することができる。
【0038】
図3に示すように、ハウジング30の下面52から視認できる接点挿通孔36の周囲には下面52からZ1方向に向けて凹んだ角丸正方形状の窪み58が形成されている。窪み58の下面52からの深さは、凹部56の深さよりも浅い。また、ハウジング30の下面52から視認できる4つの第1係合孔38の周囲には下面52からZ2方向に向けて円柱状に突出したストッパ部59が形成されている。ストッパ部59の下面52からの高さは、後述する基板3の厚さよりもやや高い。
【0039】
下面52の第3端子支持穴57のY方向の両側には、一対の円柱状の突起62,62が形成されている。突起62の直径はストッパ部59の直径よりも小さく、突起62の下面52からの高さはストッパ部59の高さよりも高い。
【0040】
ハウジング30の背面64には、下面52と当接面47Cとの間の距離(Z方向高さ)の下面52から3分の1程度まで、且つ、背面64からX1方向に向かって切り欠かれた背面切欠き66が形成されている。
図4に示すように、背面切欠き66により露出した面のうちX方向に垂直な底面68と背面64との境界近傍には、複数の端子10の端部15が封止された封止部67が形成されている。封止部67により、端部15はハウジング30の樹脂に覆われて埋没した状態になっており、端部15はハウジング30の内部に位置している。また、端部15と端部17は、下面52に対して高いところ(Z1方向)に位置している。
【0041】
このように、複数の端子10の夫々の接続部12が環状のパッキン密着部54の内側で露出しているので、パッキン密着部54に後述するパッキン2を配置すると、端子10の接続部12はパッキン2に囲まれることとなり、接続部12への水の浸入が防止され、接続部12の防水性を確保することができる。また、端子10の両側の端部(端部15、端部17)はハウジング30の内部に位置しているので、端子10の端部15、端部17への水の浸入を防止することができる。
【0042】
また、複数の端子10の夫々は、延出方向において接続部12の両側で下面52からハウジング30の内部に向かう上方向(Z1方向)に折り曲げられ、その結果、端部15、端部17は何れも下面52よりも高いところに位置することになるので、接続部12が最小限の露出部位となり、より確実に接続部12への水の浸入を防止することができる。
【0043】
更に、下面52は凹部56を有しており、複数の端子10の夫々の接続部12は凹部56に収容されているので、仮にパッキン密着部54から内部に水が浸入したとしても、接続部12に水が到達し難くなり、より確実に接続部12の防水性を確保することができる。
【0044】
環状のパッキン2は、ゴムやエラストマ、スポンジ等の弾性変形可能で防水性を有する材料からなり、
図2から
図4に示すように、コネクタ1のハウジング30の下面52と筐体4の底部4Aの搭載面82との間に位置している。パッキン2は、下面52の環状のパッキン密着部54、及び、搭載面82に密着して、パッキン2の内側にある接続部12及び基板3に水が浸入するのを防止して、コネクタユニットAにおける接続部12及び基板3の防水性を確保する。パッキン2は、ハウジング30のパッキン密着部54に密着するように、段差のある平行な二つの平面71,72と平面71,72を繋ぐ傾斜面73とを有している。環状のパッキン2の外縁から内縁に向かって、平面71、傾斜面73、平面72の順に配置されている。平面71,72がハウジング30の下面52のうち段差のある平行な二面であるパッキン密着部54に密着し、傾斜面73がハウジング30の傾斜面55に密着する。なお、ハウジング30と筐体4とが、互いに精緻に位置合わせをして密着等させることにより接続部12及び基板3に対する防水性を確保することができる形状を有しているのであれば、必ずしもパッキン2を用いる必要はない。
【0045】
パッキン2の平面72の厚さ(Z方向高さ)は、ストッパ部59の高さよりもやや厚い。ハウジング30の下面52と筐体4の搭載面82との間でパッキン2を押し潰して下面52と搭載面82とに密着させることでコネクタユニットAにおける接続部12及び基板3の防水性を確保するが、ストッパ部59の高さよりも押し潰されることはない。すなわち、ストッパ部59は、パッキン2の過度の変形を防止するストッパとして機能する。また、平面72のうち、傾斜面55Aと凹部56の側面56Aとの境界部分53と密着する部分は、傾斜面73から内側へのはみ出し量が小さく、Z方向視で凹部56とオーバーラップする量が小さい。これは、後述する基板3をハウジング30のパッキン密着部54より内側に取り付けるスペースを確保するためである。
【0046】
基板3は、ハウジング30の下面52に当接した状態でパッキン密着部54(パッキン2)の内側に配置され、Y方向に沿う横長部3Aと、横長部3Aの中央からX1方向に沿う縦長部3Bとを含んでおり、全体としてZ方向視で略T字形を有している。また、基板3は、縦長部3Bの先端近傍から横方向(Y方向)に延出する引出し部3Cを有している。引出し部3Cは、折り返されて縦長部3Bの先端近傍からZ2方向に延出している。基板3の横長部3Aには、複数の端子10の接続部12と電気的に接続されるランド76が形成されている(
図2参照)。本実施形態においては、基板3の全体がフレキシブルプリント基板であり、ランド76から引出し部3Cに亘って引き回される配線パターンがフィルム上に形成されている。ただし、基板3の全体がフレキシブルプリント基板である必要はない。例えば、基板3において、T字形の一部又は全部がリジットな基板であってもよく、引出し部3Cに形成された配線は、リジットな基板に半田付けされたFFC(Flexible Flat Cable)等により構成されていてもよい。
【0047】
基板3は、ハウジング30に取り付けられている。具体的には、基板3には、横長部3Aの端部2箇所に一対の孔77A,77Aが形成されており、縦長部3Bの端部1箇所にランドを有する孔77Bが形成されている。横長部3Aは、ハウジング30の下面52に一体形成された一対の突起62,62が一対の孔77A,77Aに入り込むことにより、ハウジング30に対して位置決めされている。また、縦長部3Bは、ハウジング30の凸部34の座ぐりに形成された接点挿通孔36に挿通されると共に孔77Bを貫通するリベット接点39の軸部39Bを孔77Bのランドに半田付けすることにより、ハウジング30に固定されている。また、これにより、基板3の配線パターンとリベット接点39とが電気的に接続されている。
【0048】
筐体4は、
図1に示すように、パッキン2、基板3、コネクタ1、ホルダ5をこの順でZ1方向に積層して搭載している。筐体4は、PPS(Poly Phenylene Sulfide)やLCP(Liquid Crystal Polymer)のような樹脂材料やアルミ合金等の金属材料からなり、
図2、
図3に示すように、パッキン2が密着して搭載される搭載面82を有する矩形状の底部4Aと、底部4Aの前方(X1方向)の周縁を除く三方の周縁にZ1方向に立設した側部4Bとを有する。側部4Bは底部4AのX2方向の縁に形成された後壁87と後壁87の両端からX1方向に延出した側壁88とからなる。すなわち、側部4Bは、Z方向視でU字形を有する。
【0049】
筐体4の底部4Aの裏面(搭載面82と反対側の面)は、矩形状に窪んでおり、窪みの底面83には、底部4Aを貫通する矩形状の引出し孔84(貫通孔の一例)と、引出し孔84の四隅の近傍の4つの座ぐりと、4つの座ぐりの夫々の底面から底部4Aを貫通する第2係合孔86とが形成されている。引出し孔84と第2係合孔86は、底部4Aの搭載面82の側においては、パッキン2の内側に位置している。4つの第2係合孔86の夫々は、第1係合孔38と同径且つ同心になるように配置されている。また、引出し孔84からは、基板3の引出し部3Cが引き出される。
【0050】
ホルダ5は、電子制御アクセサリの複数の金属接点がコネクタ1の複数の端子10の接触面18と確実に電気的接続を確立するように電子制御アクセサリを案内すると共に、接続確立後の電子制御アクセサリを保持するためのものである。ホルダ5は、アルミや鉄、ステンレス等の金属板をプレス機で加工したり、金属粉末射出成形法(MIM法)を用いたりすることにより形成されている。ホルダ5は、Z方向視で、コネクタ1の大きさに一致した矩形状である。ホルダ5は、
図2、
図3に示すように、X方向視で環状に形成されており、上板部92、上板部92と平行な下板部93、及び、上板部92と下板部93の両端と繋がった一対の側板部94を有する。
【0051】
ホルダ5の上板部92には、X1方向の端からX2方向に向かう矩形状の上板切欠き95が形成されている。下板部93にも、X1方向の端からX2方向に向かう矩形状の下板切欠き96が形成されている。下板切欠き96の切欠き幅(Y方向の長さ)及び切欠き深さ(X方向の長さ)は、何れも上板切欠き95よりも小さい。下板部93の下板切欠き96の周囲には、筐体4の第2係合孔86、コネクタ1の第1係合孔38と同心で第2係合孔86の側から挿入されたボルト6と締結される雌ねじが形成されたねじ孔98が4つ形成されている。また、側板部94から下板部93にかけて、X2方向の端からX1方向に向かう後部切欠き97が形成されている。
【0052】
ホルダ5の下板部93は、外面93Aがコネクタ1の平面部33に当接すると共に、下板切欠き96がホルダ固定面32の凸部34に嵌まり込んだ状態で(
図1参照)、平面部33に載置されている。このとき、上板部92の内面92Aはコネクタ収容部42の当接面47Cに当接し、側板部94の側面94Aはホルダ支持部48に当接している。
【0053】
ボルト6は、
図4に示すように、筐体4の底面83から第2係合孔86、ハウジング30(コネクタ1)の第1係合孔38を挿通して、ホルダ5のねじ孔98に螺合することにより、筐体4、パッキン2、基板3が取り付けられたコネクタ1、ホルダ5を積層配置した状態で一体化して、コネクタユニットAを形成している。
【0054】
このように、コネクタユニットAにおいては、パッキン密着部54にパッキン2が配置されることにより、複数の端子10の夫々の接続部12がパッキン2に囲まれるので、接続部12への水の浸入が防止され、接続部12の防水性を確保することができる。また、端子10の両側の端部である端部15、端部17はハウジング30の内部に位置しているので、端子10の端部15、端部17からの水の浸入を防止することができる。
【0055】
また、パッキン2とコネクタ1が筐体4とホルダ5とに挟まれて配置されており、筐体4とホルダ5とをボルト6により締結して、パッキン2を筐体4とコネクタ1とに密着させるので、簡便な方法で、接続部12への水の浸入が防止され、接続部12の防水性を確保することができる。なお、パッキン2を筐体4とコネクタ1とに密着させる方法として、必ずしもボルト6を用いる必要はない。例えば、金属リベットを用いてかしめる等、ボルト以外の任意の方法を用いることができる。本実施形態のハウジング30はストッパ部59を有しているので、どのような方法で密着させたとしても、パッキン2の過度の変形を防止して、コネクタユニットAの防水性を確保することができる。
【0056】
更に、基板3及び筐体4の引出し孔84はパッキン2の内側に配置されているので、筐体4の引出し孔84から基板3の引出し部3Cを筐体4の外部に引き出すことにより、防水性を確保しつつコネクタユニットAと外部との間で電気通信が可能になる。例えば、コネクタユニットAがカメラ(不図示)のアクセサリシューとして用いられた場合、引出し部3Cがカメラ外装に設けられた開口部を通ってカメラ内部の基板に電気的に接続されることにより、コネクタユニットAとカメラとの間で電気通信が可能になる。
【0057】
〔コネクタユニットの製造方法〕
次に、コネクタ1の製造方法を含むコネクタユニットAの製造方法について説明する。まず、金属条材をプレス加工により形成した複数の端子10をキャリア19と繋がった状態でハウジング30の成形金型(以下、単に「金型」という)内に載置する(端子載置工程)。次に金型を閉じて、端子10を金型内で押さえて固定し、樹脂を充填してハウジング30を形成する(ハウジング形成工程)。これにより、複数の端子10は、ハウジング30内に収容される。ハウジング形成工程が完了してハウジング30を金型から取り出した状態を
図5aに示す。このとき、複数の端子10の端部15とキャリア19とが繋がった箇所は、ハウジング30の下面52よりもZ1方向(上方)で背面切欠き66と背面64との境界近傍に位置している。なお、複数の端子10を金型内で押さえた結果、ハウジング30には、第1端子支持穴45、第2端子支持穴46、凹部56、第3端子支持穴57、背面切欠き66が形成される(
図4参照)。
【0058】
次に、複数の端子10からキャリア19を折って分離する(キャリア分離工程)。端部15とキャリア19との間にはVノッチが形成されているので、キャリア19を容易に端子10から分離することができる。キャリア19が分離された後の複数の端子10の端部15は、背面64よりもX1方向で、背面切欠き66のX方向に垂直な底面68の近傍に位置している(
図5b参照)。
【0059】
次に、複数の端子10の端部15の近傍のハウジング30の一部の樹脂を加熱して溶融させて溶融樹脂31とし、端部15を溶融樹脂31で覆った状態で溶融樹脂31を硬化させることにより封止して、封止部67を形成する(端子封止工程)。封止部67により、端部15はハウジング30の樹脂(溶融樹脂31が硬化した樹脂)に覆われて埋没した状態になり、端部15はハウジング30の内部に位置することとなる。これにより、コネクタ1が完成する(
図5c参照)。
【0060】
次に、
図3に示すように、コネクタ1の下面52に基板3を取り付ける。具体的には、ハウジング30の凸部34の接点挿通孔36と基板3の孔77Bとにリベット接点39の軸部39Bを挿通して、孔77Bのランドに半田付けする。同時に基板3の一対の孔77A,77Aをハウジング30の一対の突起62,62に挿通する。
【0061】
次に、筐体4の底部4Aの搭載面82に、パッキン2、基板3が取り付けられたコネクタ1、ホルダ5をこの順で搭載し、筐体4の底面83から、ボルト6を第2係合孔86、ハウジング30(コネクタ1)の第1係合孔38を挿通させて、ホルダ5のねじ孔98に螺合し、筐体4、パッキン2、基板3が取り付けられたコネクタ1、ホルダ5を一体化する。これにより、コネクタユニットAが完成する。
【0062】
このように、複数の端子10の端部15の近傍にあるハウジング30の一部を溶融させた溶融樹脂31により、複数の端子10の端部15を覆って溶融樹脂31を硬化させて封止部67を形成する端子封止工程を有することにより、別部材を用いることなく複数の端子10の端部15を覆って、端子10の端部15からの水の浸入を防止することができる。
【0063】
〔別実施形態〕
上記実施形態では、リベット接点39を介して、電子制御アクセサリが有する端子と基板3の配線パターンとを電気的に接続していたが、リベット接点39が不要な場合には、ハウジング30の凸部34に座ぐりや接点挿通孔36を形成したり、下面52に窪み58を形成する必要はない。また、この場合には、基板3に孔77Bを形成する必要もない。ただし、そのままでは、基板3の縦長部3Bをハウジング30の下面52に当接させておくことができないので、必要があれば、接着等の手段により、基板3の縦長部3Bをハウジング30の下面52に当接させることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、コネクタ、コネクタユニット、及び、コネクタの製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
A コネクタユニット
1 コネクタ
2 防水パッキン
3 フレキシブルプリント基板(基板)
3C 引出し部
4 筐体
5 ホルダ
10 端子
12 接続部
15 端部
17 端部
19 キャリア
30 ハウジング
52 下面
53 境界部分
54 パッキン密着部
55 傾斜面
55A 傾斜面(傾斜面の一部)
56 凹部
56A 側面
56B 底面
76 ランド
84 引出し孔(貫通孔)