(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】樹脂含有材料の加工装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20241216BHJP
B29C 43/52 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C43/52
(21)【出願番号】P 2021138868
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 了太
(72)【発明者】
【氏名】内田 晃輝
(72)【発明者】
【氏名】可児 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-161725(JP,U)
【文献】特表平11-515058(JP,A)
【文献】特開2019-123164(JP,A)
【文献】特開2016-215398(JP,A)
【文献】特開2015-101030(JP,A)
【文献】特開2008-179016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 43/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂を含む樹脂含有材料を押圧する押圧面を有する金型を備え、
前記金型の内部には、冷媒が流通する冷媒孔が形成され、
前記冷媒孔の表面の少なくとも上流側領域は被覆部で覆われていて、
前記金型と前記冷媒孔を流通する前記冷媒との間の熱伝達率は、前記上流側領域よりも下流側領域の方が高い樹脂含有材料の加工装置。
【請求項2】
前記被覆部は、外周面が前記冷媒孔の前記表面と接触する筒形状であって、
前記冷媒孔の前記表面と前記被覆部の前記外周面との接触面積は、前記上流側領域よりも前記下流側領域の方が大きい請求項1に記載の樹脂含有材料の加工装置。
【請求項3】
前記被覆部の前記外周面における表面粗さは、前記上流側領域よりも前記下流側領域の方が小さい請求項2に記載の樹脂含有材料の加工装置。
【請求項4】
前記被覆部は、外周面が前記冷媒孔の前記表面と当接する筒形状であって、
前記被覆部の熱伝導率は、前記上流側領域よりも前記下流側領域の方が高い請求項1に記載の樹脂含有材料の加工装置。
【請求項5】
前記被覆部は、前記金型よりも熱伝導率が低い請求項1から請求項4のいずれかに記載の樹脂含有材料の加工装置。
【請求項6】
前記冷媒孔は、所定方向に延在し、複数形成されていて、
複数の前記冷媒孔は、前記所定方向と交差する方向である交差方向に所定の間隔で並んで配置されており、
前記金型と前記冷媒孔を流通する前記冷媒との間の熱伝達率は、前記交差方向の端部領域に形成される前記冷媒孔よりも、前記交差方向の中央領域に形成される前記冷媒孔の方が高い請求項1から請求項5のいずれかに記載の樹脂含有材料の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂含有材料の加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機の胴体、主翼等の航空機部品は、例えば熱可塑性の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の樹脂を含有する複合材が用いられる場合がある。このような熱可塑性の複合材を所望の形状に加工する方法として、プレス成形が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、雌型を備える成形金型が記載されている。この雌型には、冷却媒体をこの雌型内で流し雌型の冷却を行う複数本の冷却用流路が形成されている。この冷却用流路の略中心部には、ヒートパイプが冷却用流路の内面と接触しないように配設されている。つまり、冷却用流路の内面とヒートパイプの周面との間には適宜な隙間が形成されており、この隙間に冷水や温水等の冷却媒体を流し雌型の冷却を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の金型は、冷却孔(冷却用流路)が金型(雌型)に形成されている。冷却孔を流通する冷媒は、流通しながら金型と熱交換を行う。このため、冷却孔を流通する冷媒は、上流側領域よりも下流側領域を流通する冷媒の方が、温度が高い。このため、金型において、上流側領域は冷却され易く、下流側領域において冷却され難い。よって、金型内で温度差が生じる可能性がある。金型内で温度差が生じると、金型内で熱膨張差が生じ、押圧面(複合材等の被加工部材を押圧する面)が変形する可能性がある。押圧面が変形してしまうと、被加工部材を均一に押圧することができず、加工後の成形品に、ボイドや層間剥離等が発生し内部品質が悪化する可能性があった。また、表面樹脂剥離等が発生し表面品質が悪化する可能性があった。このように、加工後の成形品の品質が悪化する可能性があった。
【0006】
また、金型の温度が不均一となると、金型の温度が伝達する被加工部材(樹脂含有材料)にも温度のバラつきが生じる。特に、樹脂含有材料の冷却時に金型の温度が不均一となると、樹脂含有材料の温度のバラつきによって、樹脂含有材料の凝固進行が場所によって不均一となる。樹脂含有材料の凝固進行が不均一となると、樹脂含有材料に、凝固済みの箇所と凝固していない箇所(以下、「未凝固箇所」と称する)とが生じることとなる。これにより、凝固済みの箇所が金型と当接することで、未凝固箇所への圧力の印加を阻害する。これにより、未凝固箇所において、加圧不足や複合材と金型との接触不良を引き起こし、好適に樹脂含有材料を押圧することができない可能性があった。樹脂含有材料を好適に押圧することができないことで、加工後の成形品に、ボイドや層間剥離等が発生し内部品質が悪化する可能性があった。また、表面樹脂剥離等が発生し表面品質が悪化する可能性があった。このように、加工後の成形品の品質が悪化する可能性があった。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、好適に樹脂含有材料を押圧することができる樹脂含有材料の加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の樹脂含有材料の加工装置は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る樹脂含有材料の加工装置は、少なくとも樹脂を含む樹脂含有材料を押圧する押圧面を有する金型を備え、前記金型の内部には、冷媒が流通する冷媒孔が形成され、前記冷媒孔の表面の少なくとも上流側領域は、被覆部で覆われていて、前記金型と前記冷媒孔を流通する前記冷媒との間の熱伝達率は、前記上流側領域よりも下流側領域の方が高い。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、好適に樹脂含有材料を押圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る加工装置を示す模式的な縦断面図である。
【
図3】本開示の第2実施形態に係る加工装置を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る樹脂含有材料の加工装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明において、押圧装置が金型11を押圧する方向をZ軸方向と称し、冷却水孔14及び冷却水配管15が延在する方向をX軸方向と称し、Z軸方向及びX軸方向と直交する方向をY軸方向と称する。
【0012】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の第1実施形態について、
図1及び
図2を用いて説明する。
本実施形態に係る加工装置10は、航空機構造体を構成する航空機部品であるストリンガ、スパー、フレーム、リブ等を製造するために、その材料となる図示省略の複合材(樹脂含有材料)を所望の形状へ成形するための装置である。すなわち、加工装置10は、複合材に対してプレス成形を行う装置である。被加工物である複合材の例として、例えば、熱可塑性の樹脂と繊維とが複合した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が挙げられる。具体的には、複合材は、繊維に樹脂が含浸している繊維強化シートを複数枚積層した積層体であってもよい。なお、複合材は、繊維と樹脂とが複合した複合材であればよく、熱可塑性の炭素繊維強化プラスチックに限定されない。
【0013】
本実施形態に係る複合材の加工装置10は、
図1に示すように、複合材を押圧する金型11と、金型11を押圧する押圧装置(図示省略)と、を備えている。
【0014】
金型11は、複合材の押圧方向(Z軸方向)の一方側に配置される第1金型12と、複合材のZ軸方向の他方側に配置される第2金型13と、を有している。第1金型12と第2金型13とは、複合材を挟むように配置されている。本実施形態では、第1金型12と第2金型13とは、略同一の構成であるので、以下の説明では、第1金型12と第2金型13とを分けて説明する必要がある場合を除き、第1金型12及び第2金型13を単に「金型11」として説明する。
【0015】
金型11は、金属材料で形成されている。金型11を形成する金属材料の例として、例えば、S50C等の炭素鋼やSUS304などの合金鋼やインバー等が挙げられる。金型11は、複合材が配置される側の面が押圧面11aとされている。本実施形態では、押圧面11aは、平面とされている。
【0016】
押圧装置は、
図1の矢印Pで示すように、第1金型12を第2金型13方向へ移動させる。すなわち、押圧装置は、押圧面11aが複合材を押圧するように、金型11を移動させる。押圧装置の駆動力によって、第1金型12と第2金型13との間で複合材が押圧され変形する。なお、押圧装置は、第1金型12及び第2金型13の両方を互いに近付くように移動させてもよい。
【0017】
冷却水孔(冷媒孔)14は、金型11の内部に形成されている。冷却水孔14は、X軸方向に金型11を貫通している。冷却水孔14は、
図2に示すように、X軸方向(所定方向)に沿って直線状に延在している。冷却水孔14は、
図1に示すように、X軸方向に直交する面で切断した際の断面が略円形状を為している。複数の冷却水孔14は、Y軸方向(交差方向)に所定の間隔で並んで配置されている。冷却水孔14は、内部を流通する冷却水(冷媒)によって金型11を冷却する。詳細には、冷却水孔14は、後述する冷却水配管15を介して、金型11を冷却する。
【0018】
冷却水孔14は、内部に冷却水配管(被覆部)15が設けられている。冷却水配管15は、金属材料で形成されている。冷却水配管15を形成する金属材料の例として、例えば、ステンレスや銅合金等の金属材料が挙げられる。
冷却水配管15は、X軸方向に延在する円筒状の部材である。冷却水配管15は、冷却水孔14に嵌め込まれるように設けられている。すなわち、冷却水孔14の表面(内周面)と冷却水配管15の外周面とは当接している。換言すれば、冷却水配管15は、冷却水孔14の表面を覆っている。
冷却水配管15は、冷却水孔14の略全域に亘って設けられている。冷却水配管15の内部には、
図2の矢印で示すように、冷却水が流通している。詳細には、冷却水は、冷却水配管15のX軸方向の一端に形成された入口15aから冷却水配管15内に流入し、X軸方向の他端に形成された出口15bから排出される。
【0019】
加工装置10は、金型11と冷却水との間で、冷却水配管15を介して熱交換を行うことで、金型11を冷却する。また、加工装置10は、金型11を冷却することで金型11に加圧された状態の複合材を冷却する。
【0020】
また、本実施形態に係る加工装置10では、金型11と冷却水との間の熱伝達率が、冷却水流れにおける上流側(入口15a側)の領域よりも、下流側(出口15b側)の領域の方が高くなっている。
【0021】
具体的には、冷却水配管15の外周面における表面粗さが、上流側領域よりも下流側領域の方が小さい。すなわち、上流側領域の方が下流側領域よりも外周面が粗く形成されている。換言すれば、上流側領域における表面粗さをRa1とし、下流側領域における表面粗さをRa2とした場合に、Ra1>Ra2の関係を満たす。
表面粗さが小さい(細かい)外周面は、表面粗さが大きい(粗い)外周面と比較して、冷却水孔14との接触面積が大きい。このため、表面粗さが大きい外周面を有する下流側領域の方が、上流側領域よりも、熱伝達率が高くなっている。
【0022】
上流側領域の外周面の表面粗さ及び下流側領域の外周面の表面粗さは、例えば、Ra0.2以上Ra25以下の範囲内で設定する。すなわち、上流側領域と下流側領域とで、Ra0.2以上Ra25以下の範囲内で表面粗さを相違させる。各領域の具体的な表面粗さは、金型11の温度や、複合材の性質等によって適宜設定される。なお、上記数値範囲は一例であって、当該数値範囲に限定されない。
また、冷却水配管15の外周面に表面粗さを付ける方法は、特に限定されないが、例えば、ヤスリで削る方法や、サンドブラスト等が挙げられる。
【0023】
また、上流側領域の外周面の表面粗さを下流側領域の外周面の表面粗さよりも大きくする態様は、特定の態様に限定されない。例えば、下流側領域から上流側領域に向かうにしたがって漸次表面粗さが大きくなるようにしてもよい。また、例えば、配管の全域を所定方向にいくつかの領域に分割し、同じ領域においては一律な所定の表面粗さとし、下流側の領域ほど表面粗さが小さくなるようにしてもよい。この時の分割によって形成される領域の数は、2以上であればよい。
【0024】
また、本実施形態では、冷却水配管15を設けることで、冷却水配管15を設けない場合(すなわち、冷却水と冷却水孔14とが直接接触する場合)と比較して、X軸方向の略全域において金型11と冷却水との間の熱伝達率が低くなっている。
【0025】
次に、本実施形態に係る複合材の加工方法について説明する。
まず、金型11に設けられたヒータ(図示省略)で所定の温度となるように金型11を加熱する。次に、加熱された状態の第1金型12及び第2金型13との間に複合材をセットする。複合材をセットすると、
図1の矢印Pで示すように、押圧装置によって第1金型12を第2金型13方向へ移動させ複合材を押圧する。上述のように、金型11は加熱された状態であるので、複合材は、金型11の熱によって加熱されながら加圧されることとなる。このように、複合材を加熱した状態で押圧することで、複合材を金型11の押圧面11aの形状に応じた所望の形状に変形させる。
【0026】
次に、冷却水配管15内に冷却水を流通させて、所定の温度となるように、金型11を冷却する。これにより、複合材は、加圧されながら冷却されることとなる。これにより、複合材が加圧状態の中で固化する。複合材が固化したら、複合材に対する金型11の押圧をやめる。そして、金型11から複合材(成形品)を取出し、加工を終了する。
【0027】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
冷却水孔14が金型11に形成される場合、冷却水孔14を流通する冷却水は、流通しながら金型11と熱交換を行う。このため、冷却水孔14を流通する冷却水は、上流側領域よりも下流側領域を流通する冷却水の方が、温度が高い。このため、金型11において、上流側領域は冷却され易く、下流側領域において冷却され難い。よって、金型11内で温度差が生じる可能性がある。金型11内で温度差が生じると、金型11内で熱膨張差が生じ、押圧面11aが変形する可能性がある。押圧面11aが変形してしまうと、複合材を均一に押圧することができず、加工後の成形品の品質が悪化する可能性があった。
本実施形態では、金型11と冷却水孔14を流通する冷却水との間の熱伝達率は、上流側領域よりも下流側領域の方が高い。これにより、温度の低い冷却水が流通する上流側領域において熱伝達率が低くなり、温度の高い冷却水が流通する下流側領域において熱伝達率が高くなる。したがって、上流側領域と下流側領域との間において伝熱量が均一化される。よって、金型11において、上流側領域と下流側領域との温度差を小さくすることができる。これにより、押圧面11aの変形を抑制することができる。したがって、複合材に作用する押圧力を均一化することができるので、好適に複合材を押圧することができる。よって、加工後の複合材の品質を向上させることができる。
【0028】
また、本実施形態では、上述のように金型11の温度を均一化することができるので、金型11から複合材に伝達する熱も均一化することができる。よって、冷却水の流通方向(X軸方向)における複合材の固化度合いを均一化することができる。よって、複合材の一部が早く固化することで、他の部分に作用する押圧力が低下する事態を抑制することができる。よって、複合材に作用する押圧力を均一化することができるので、好適に複合材を押圧することができる。よって、加工後の複合材の品質を向上させることができる。
【0029】
具体的には、本実施形態では、冷却水配管15の外周面における表面粗さは、上流側領域よりも下流側領域の方が小さい。これにより、冷却水孔14の表面と冷却水配管15の外周面との接触面積が、上流側領域よりも下流側領域の方が大きくなる。したがって、温度の高い冷却水が流通する下流側領域において熱伝達率が高くなるので、上流側領域と下流側領域との間において伝熱量が均一化される。これにより、金型11において、上流側領域と下流側領域との温度差を小さくすることができる。したがって、金型11の押圧面11aの変形を抑制するとともに、複合材の固化度合いを均一化することができる。よって、複合材に作用する押圧力を均一化することができるので、好適に複合材を押圧することができる。よって、加工後の複合材の品質を向上させることができる。
【0030】
また、複合材は、冷却する温度が速すぎると、複合材に含まれる樹脂の結晶化に要する時間を確保できずに、樹脂の結晶化度が低くなる。
一方、本実施形態では、冷却水配管15が金型11よりも熱伝導率が低い。これにより、冷却水孔14を流通する冷却水によって金型11を冷却し難くすることができるので、これに伴って、複合材も冷却し難くすることができる。したがって、冷却水配管15を設けない場合と比較して、複合材を冷却する速度を遅くすることができる。よって、複合材に含まれる樹脂の結晶化度を高くすることができる。これにより、加工後の複合材の品質を向上させることができる。
【0031】
なお、上記説明では、表面粗さを相違させることで、冷却水孔14の表面と冷却水配管15の外周面との接触面積を相違させる例について説明したが、接触面積を相違させる方法はこれに限定されない。例えば、冷却水孔14の表面及び/又は冷却水配管15の外周面に細い溝等を形成することで、接触面積を相違させてもよい。
【0032】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係る加工装置について
図3を用いて説明する。本実施形態に係る加工装置20は、冷却水配管の構造が上記第1実施形態と異なっている。その他の点は、第1実施形態と同様であるので、同様の構成について同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0033】
図3に示すように、本実施形態に係る加工装置20に設けられる冷却水配管25は、冷却水流れの上流側領域に設けられる上流配管25aと、中央領域に設けられる中央配管25bと、下流側領域に設けられる下流配管25cと、を有している。上流配管25a、中央配管25b及び下流配管25cは、各々、X軸方向に延在する円筒状の部材である。
【0034】
上流配管25a、中央配管25b及び下流配管25cは、各々、熱伝導率が異なる材料によって形成されている。具体的には、上流配管25a、中央配管25b及び下流配管25cは、上流側に設けられる配管よりも、下流側に設けられる配管の方が、熱伝導率が高い材料で形成される。すなわち、上流配管25aの熱伝導率をT1とし、中央配管25bの熱伝導率をT2とし、下流配管25cの熱伝導率をT3とした場合に、T1<T2<T3の関係を満たす。
【0035】
上流配管25aの材料は、例えば、ガラスファイバ等が挙げられる。また、中央配管25bの材料は、例えば、鉄等の金属が挙げられる。また、下流配管25cの材料は、例えば、銅やアルミ等の熱伝導率の高い金属が挙げられる。各配管を形成する具体的な材料は、金型11の温度や、複合材の性質等によって適宜選択される。なお、上記の材料は一例であって、これらに限定されない。
【0036】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、冷却水配管25の熱伝導率は、上流側領域よりも下流側領域の方が高い。これにより、上流側領域よりも下流側領域において、金型11の熱が冷却水配管25を介して冷媒に伝達され易い。したがって、上流側領域よりも下流側領域において、熱伝達率を高くすることができる。このように、温度の高い冷媒が流通する下流側領域において熱伝達率が高くなるので、上流側領域と下流側領域との間において伝熱量が均一化される。これにより、金型11において、上流側領域と下流側領域との温度差を小さくすることができる。したがって、金型11の押圧面11aの変形を抑制するとともに、複合材の固化度合いを均一化することができる。よって、複合材に作用する押圧力を均一化することができるので、好適に複合材を押圧することができる。よって、加工後の複合材の品質を向上させることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、冷却水配管25をX軸方向に3分割する例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、冷却水配管25を2分割にしてもよい。また、4分割以上にしてもよい。
【0038】
なお、本開示は、上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
【0039】
例えば、上記各実施形態では、冷却水孔14のX軸方向の全域に亘って冷却水配管を設ける例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、上流側領域のみに金型11よりも熱伝導率が低い冷却水配管を設けてもよい。すなわち、この場合には、下流側領域には冷却水配管を設けない。このような方法で、金型11と冷却水との間の熱伝達率を、上流側領域よりも下流側領域の方が高くしてもよい。
【0040】
また、例えば、金型11と冷却水との間の熱伝達率は、Y軸方向(交差方向)の端部領域に形成される冷却水孔14よりも、Y軸方向の中央領域に形成される冷却水孔14の方が高くしてもよい。
金型11において、Y軸方向の端部領域は外気によって冷却され易い。これにより、端部領域の温度は低くなり易い。反対に、Y軸方向の中央領域は、端部領域と比較して、外気によって冷却され難い。これにより、中央領域の温度は高くなり易い。
この構成では、温度が高い中央領域において、金型11と冷媒との熱伝達率が高くなる。すなわち、冷却水による吸熱量が多くなる。また、温度が低い端部領域において、金型11と冷媒との熱伝達率が低くなる。すなわち、冷媒による吸熱量が少なくなる。したがって、金型11のY軸方向における温度のバラつきを抑制することができる。
【0041】
以上説明した実施形態に記載の樹脂含有材料の加工装置は、例えば以下のように把握される。
本開示の一態様に係る複合材の加工装置は、少なくとも樹脂を含む樹脂含有材料を押圧する押圧面(11a)を有する金型(11)を備え、前記金型の内部には、冷媒が流通する冷媒孔(14)が形成され、前記冷媒孔の表面の少なくとも上流側領域は、被覆部(15)で覆われていて、前記金型と前記冷媒孔を流通する前記冷媒との間の熱伝達率は、前記上流側領域よりも下流側領域の方が高い。
【0042】
上記構成では、冷媒孔が金型に形成されている。冷媒孔を流通する冷媒は、流通しながら金型と熱交換を行う。このため、冷媒孔を流通する冷媒は、上流側領域よりも下流側領域を流通する冷媒の方が、温度が高い。このため、金型において、上流側領域は冷却され易く、下流側領域において冷却され難い。よって、金型内で温度差が生じる可能性がある。金型内で温度差が生じると、金型内で熱膨張差が生じ、押圧面が変形する可能性がある。押圧面が変形してしまうと、樹脂含有材料を均一に押圧することができず、加工後の成形品の品質が悪化する可能性があった。
上記構成では、金型と冷媒孔を流通する冷媒との間の熱伝達率は、上流側領域よりも下流側領域の方が高い。これにより、温度の低い冷媒が流通する上流側領域において熱伝達率が低くなり、温度の高い冷媒が流通する下流側領域において熱伝達率が高くなる。したがって、上流側領域と下流側領域との間において伝熱量が均一化される。よって、金型において、上流側領域と下流側領域との温度差を小さくすることができる。これにより、押圧面の変形を抑制することができる。したがって、樹脂含有材料に作用する押圧力を均一化することができるので、好適に樹脂含有材料を押圧することができる。よって、加工後の樹脂含有材料の品質を向上させることができる。
また、上記構成では、上述のように金型の温度を均一化することができるので、金型から樹脂含有材料に伝達する熱も均一化することができる。よって、冷媒の流通方向における樹脂含有材料の固化度合いを均一化することができる。よって、樹脂含有材料の一部が早く固化することで、他の部分に作用する押圧力が低下する事態を抑制することができる。よって、樹脂含有材料に作用する押圧力を均一化することができるので、好適に樹脂含有材料を押圧することができる。よって、加工後の樹脂含有材料の品質を向上させることができる。
なお、金型と冷媒孔を流通する冷媒との間の熱伝達率を、上流側領域よりも下流側領域の方が高くする方法の一例としては、例えば、上流側領域のみに金型よりも熱伝導率が低い被覆部を設ける方法が挙げられる。
【0043】
また、本開示の一態様に係る樹脂含有材料の加工装置は、前記被覆部は、外周面が前記冷媒孔の前記表面と接触する筒形状であって、前記冷媒孔の前記表面と前記被覆部の前記外周面との接触面積は、前記上流側領域よりも前記下流側領域の方が大きい。
【0044】
上記構成では、冷媒孔の表面と被覆部の外周面との接触面積は、上流側領域よりも下流側領域の方が大きい。これにより、上流側領域よりも下流側領域において熱伝達率を高くすることができる。このように、温度の高い冷媒が流通する下流側領域において熱伝達率が高くなるので、上流側領域と下流側領域との間において伝熱量が均一化される。これにより、金型において、上流側領域と下流側領域との温度差を小さくすることができる。したがって、金型の押圧面の変形を抑制するとともに、樹脂含有材料の固化度合いを均一化することができる。よって、樹脂含有材料に作用する押圧力を均一化することができるので、好適に樹脂含有材料を押圧することができる。よって、加工後の樹脂含有材料の品質を向上させることができる。
【0045】
また、本開示の一態様に係る樹脂含有材料の加工装置は、前記被覆部の前記外周面における表面粗さは、前記上流側領域よりも前記下流側領域の方が小さい。
【0046】
上記構成では、被覆部の外周面における表面粗さは、上流側領域よりも下流側領域の方が小さい。これにより、冷媒孔の表面と被覆部の外周面との接触面積が、上流側領域よりも下流側領域の方が大きくなる。したがって、温度の高い冷媒が流通する下流側領域において熱伝達率が高くなるので、上流側領域と下流側領域との間において伝熱量が均一化される。これにより、金型において、上流側領域と下流側領域との温度差を小さくすることができる。したがって、金型の押圧面の変形を抑制するとともに、樹脂含有材料の固化度合いを均一化することができる。よって、樹脂含有材料に作用する押圧力を均一化することができるので、好適に樹脂含有材料を押圧することができる。よって、加工後の樹脂含有材料の品質を向上させることができる。
【0047】
また、本開示の一態様に係る樹脂含有材料の加工装置は、前記被覆部は、外周面が前記冷媒孔の前記表面と当接する筒形状であって、前記被覆部の熱伝導率は、前記上流側領域よりも前記下流側領域の方が高い。
【0048】
上記構成では、被覆部の熱伝導率は、上流側領域よりも下流側領域の方が高い。これにより、上流側領域よりも下流側領域において、金型の熱が被覆部を介して冷媒に伝達され易い。したがって、上流側領域よりも下流側領域において、熱伝達率を高くすることができる。このように、温度の高い冷媒が流通する下流側領域において熱伝達率が高くなるので、上流側領域と下流側領域との間において伝熱量が均一化される。これにより、金型において、上流側領域と下流側領域との温度差を小さくすることができる。したがって、金型の押圧面の変形を抑制するとともに、樹脂含有材料の固化度合いを均一化することができる。よって、樹脂含有材料に作用する押圧力を均一化することができるので、好適に樹脂含有材料を押圧することができる。よって、加工後の樹脂含有材料の品質を向上させることができる。
なお、上流側領域と下流側領域とで熱伝導率を異ならせる方法の一例としては、例えば、上流側領域と下流側領域とで熱伝導率の異なる材料で被覆部を形成する方法が挙げられる。
【0049】
また、本開示の一態様に係る樹脂含有材料の加工装置は、前記被覆部は、前記金型よりも熱伝導率が低い。
【0050】
樹脂含有材料は、冷却する温度が速すぎると、樹脂含有材料に含まれる樹脂の結晶化度が低くなる。
一方、上記構成では、被覆部が金型よりも熱伝導率が低い。これにより、冷媒孔を流通する冷媒によって金型を冷却し難くすることができるので、これに伴って、樹脂含有材料も冷却し難くすることができる。したがって、被覆部を設けない場合と比較して、樹脂含有材料を冷却する速度を遅くすることができる。よって、樹脂含有材料に含まれる樹脂の結晶化度を高くすることができる。
【0051】
また、本開示の一態様に係る樹脂含有材料の加工装置は、前記冷媒孔は、所定方向(X軸方向)に延在し、複数形成されていて、複数の前記冷媒孔は、前記所定方向と交差する方向である交差方向(Y軸方向)に所定の間隔で並んで配置されており、前記金型と前記冷媒孔を流通する前記冷媒との間の熱伝達率は、前記交差方向の端部領域に形成される前記冷媒孔よりも、前記交差方向の中央領域に形成される前記冷媒孔の方が高い。
【0052】
金型において、交差方向の端部領域は外気によって冷却され易い。これにより、端部領域の温度は低くなり易い。反対に、交差方向の中央領域は、端部領域と比較して、外気によって冷却され難い。これにより、中央領域の温度は高くなり易い。
上記構成では、金型と冷媒孔を流通する冷媒との間の熱伝達率は、端部領域に形成される冷媒孔よりも、交差方向の中央領域に形成される冷媒孔の方が高い。これにより、温度が高い中央領域において、金型と冷媒との熱伝達率が高くなる。すなわち、冷媒による吸熱量が多くなる。また、温度が低い端部領域において、金型と冷媒との熱交換率が低くなる。すなわち、冷媒による吸熱量が少なくなる。したがって、交差方向における温度のバラつきを抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 :加工装置
11 :金型
11a :押圧面
12 :第1金型
13 :第2金型
14 :冷却水孔(冷却孔)
15 :冷却水配管(被覆部)
15a :入口
15b :出口
20 :加工装置
25 :冷却水配管
25a :上流配管
25b :中央配管
25c :下流配管