(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出方法、成形装置及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241216BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20241216BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20241216BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20241216BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20241216BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20241216BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241216BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B05C5/00 101
B05C11/10
B05D1/26 Z
B05D3/12 C
B05D3/00 D
B05D7/24 301R
B05D7/24 301T
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2021151161
(22)【出願日】2021-09-16
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太郎
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-222705(JP,A)
【文献】特開2021-044407(JP,A)
【文献】特開2019-075421(JP,A)
【文献】特開2019-177690(JP,A)
【文献】特表2017-512120(JP,A)
【文献】特開2014-103189(JP,A)
【文献】特開2012-045503(JP,A)
【文献】特開2010-100069(JP,A)
【文献】特開2006-205718(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0069976(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B05C 5/00
B05C 11/00
B05D 1/00-7/26
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持
する基板ステージと、
液体を吐出するノズルを有する吐出部と、
前記ノズルから
前記液体を吐出させる
ための信号を前記吐出部に与え
る制御部と、
前記基板の上に吐出された液滴の大きさ
に関する情報を取得する取得部と、を有
し、
前記制御部は、
互いに異なる液滴量を吐出するための複数
の信号を前記吐出部に与え
て、前記ノズルから前記基板の上に複数の液滴が吐出されるように制御
し、
前記取得部により取得され
た前
記液滴の大きさ
に関する情報に基づいて、前記基板の上の
前記複数の液滴
それぞれに対応す
る信号を
前記複数の信号のうちから特定することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、特定された前
記信号に対応する液滴の目標位置からのずれ量に基づいて、着弾位置を補正するための補正条件を決定することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記取得部は、液滴の着弾位置
を取得
し、
前記制御部は、前記取得部で取得される
前記液体の着弾位置を用いて、前記目標位置からのずれ量を特定することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記補正条件として、前記ノズルに前
記信号を与えるタイミングを決定することを特徴とする請求項2または3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記補正条件として、前記基板ステージの駆動条件を決定することを特徴とする請求項2または3に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御部は
、所定の液滴量が吐出され
る信号に対応する液滴の目標位置からのずれ量に基づいて、着弾位置が補正されるように前記補正条件を決定することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記基板の上に吐出された液滴は
、所定の速度で移動
している前記基板ステージに保持された前記基板に対して、前記吐出部か
ら吐出された
液滴であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記吐出部は、複数のノズルを有し、
前記制御部は、隣接するノズルから、互いに異なる液滴量
の液滴が隣接して着弾するよう
に信号を与え
ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液体吐出装置と、
型を保持する型保持部と、
硬化性組成物を硬化させる硬化部と、を有する成膜装置であって、
前記吐出部から吐出される液体は硬化性組成物であり、
前記制御部は、前記基板と前記型とが前記硬化性組成物を介して接触している状態で前記硬化部により前記硬化性組成物を硬化させ、膜を形成することを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
請求項9に記載の成膜装置を用いて基板上に膜を形成する工程と、
前記工程で形成された前記基板を加工する工程と、
加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項11】
互いに異なる液滴量を吐出するための複数
の信号を吐出部に与え
て、液体を吐出するノズルから基板の上に複数の液滴を吐出する吐出工程と、
前記吐出工程で吐出された前記基板の上の液滴の大きさ
に関する情報を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得された前
記液滴の大きさ
に関する情報に基づいて、前記基板の上の
前記複数の液滴
それぞれに対応す
る信号を
前記複数の信号のうちから特定する特定工程と、
を有することを特徴とする液体吐出方法。
【請求項12】
前記特定工程で特定され
た信号に対応する液滴の目標位置からのずれ量に基づいて、着弾位置を補正するための補正条件を決定する決定工程をさらに有することを特徴とする請求項11に記載の液体吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出方法、成形装置及び物品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSなどの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィー技術に加えて、基板上に数ナノメートルオーダーの微細なパターン(構造体)を形成することができるインプリント技術が注目されている。インプリント技術は、基板上に未硬化のインプリント材を供給(塗布)し、基板上に供給されたインプリント材とモールド(型)とを接触させて、モールドに形成された微細な凹凸パターンに対応するインプリント材のパターンを基板上に形成する微細加工技術である。
【0003】
このようなインプリント材の基板上への供給工程では、ノズル(吐出口)から液滴状のインプリント材を、インクジェット方式を用いて供給する吐出装置を用いることができる。具体的には、ディスペンサの吐出口面に基板上のショット領域が対向するように、基板ステージを往復走査駆動させながら行われる。このような状態で吐出口からインプリント材(液体)を吐出して基板上に液滴を配置している。
【0004】
基板上に正確な凹凸パターンを形成するためには、インプリント材の液滴を所望の位置に着弾させることが必要である。具体的には、ショット領域内に着弾する各液滴の着弾誤差を、数μm以内に収めることが必要とされている。インプリント材の着弾誤差が許容値を超えて着弾した状態でインプリント処理が行われた場合、押印工程でインプリント材がモールドの領域外にはみ出してしまい、はみ出したインプリント材が異物としてトラブルを生じさせる要因となることが懸念される。あるいは、押印工程でインプリント領域全面にインプリント材が行き渡らず、未充填欠陥が発生する可能性も考えられる。
【0005】
特許文献1には、基板上の所定領域に吐出されたインプリント材の液滴を撮像することで着弾位置を検出し、着弾位置と目標位置とのずれ量に応じて、基板を保持して駆動する基板ステージの駆動制御を行い、着弾位置の精度を向上させる技術が開示されている。
【0006】
特許文献2には、吐出角度や吐出速度が他のノズルと比較してずれている異常ノズルの吐出タイミングを正常ノズルの吐出タイミングに対してずらすことで、異常ノズルによる着弾精度の悪化を防ぐ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-222705号公報
【文献】特開2021-44407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような特許文献1や特許文献2で開示されている着弾位置と目標位置とのずれ量に応じて、基板ステージ駆動や吐出タイミングを補正して着弾精度を向上させる手法では、液滴の着弾位置と当該液滴の目標位置との対応付けが正しくされていることが必要である。このような対応付けの方法として、目標位置の最も近くに着弾しているインプリント材の液滴が、当該目標位置に着弾すべき液滴と認識する方法がある。
【0009】
しかしながら、上記方法ではノズル付近に異物などが付着して着弾位置が大きくずれるような場合や、ノズルから吐出が行えないような場合には、正しい対応付けができず、着弾精度を向上させるような補正を行うことができないことも懸念される。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、所定の目標位置に着弾すべき液滴を正しく特定でき、液滴の着弾位置の精度を向上させるのに有利な構成を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の液体吐出装置は、基板を保持する基板ステージと、液体を吐出するノズルを有する吐出部と、前記ノズルから前記液体を吐出させるための信号を前記吐出部に与える制御部と、前記基板の上に吐出された液滴の大きさに関する情報を取得する取得部と、を有し、前記制御部は、互いに異なる液滴量を吐出するための複数の信号を前記吐出部に与えて、前記ノズルから前記基板の上に複数の液滴が吐出されるように制御し、前記取得部により取得された前記液滴の大きさに関する情報に基づいて、前記基板の上の前記複数の液滴それぞれに対応する信号を前記複数の信号のうちから特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定の目標位置に着弾すべき液滴を正しく特定でき、液滴の着弾位置の精度を向上させるのに有利な構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態にかかるインプリント装置の構成を示す概略図である。
【
図2】インプリント処理を説明するためのフローチャートである。
【
図3】液滴の着弾位置を調整する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図4】所定の吐出条件(レシピ)で吐出される液滴パターンの目標位置の一例を示す図である。
【
図5】
図4に示す吐出条件で吐出された液滴の基板上の着弾位置を示す図である。
【
図6】
図4に示す目標位置と
図5に示す着弾位置とを重ねて表示した図である。
【
図7】実施例1に示す調整用レシピで吐出される液滴パターンの目標位置を示す図である。
【
図8】
図7に示す吐出条件で吐出された液滴の基板上の着弾位置を示す図である。
【
図9】
図7に示す調整用レシピにおける吐出量ごとの液滴の目標位置を示した図である。
【
図10】
図9に示す各吐出量の目標位置と
図8(b)に示す着弾位置とを重ねて表示した図である。
【
図11】実施例2に示す調整用レシピで吐出される液滴パターンの目標位置を示す図である。
【
図12】
図11に示す調整用レシピにおける吐出量ごとの液滴の目標位置を示した図である。
【
図13】物品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
<第1実施形態>
本実施形態では成形装置の一例としてインプリント装置を用いて説明する。本実施形態に係るインプリント装置は、未硬化の液体インプリント材(液体)やインクを基板上に吐出(供給)し、基板上にパターンを形成(転写)するリソグラフィ装置である。なお、本発明の液体吐出装置を適用可能な成形装置としては、インプリント装置に限定されず、半導体基板上の凹凸を平坦化する平坦化装置にも用いることもできる。さらに、半導体デバイスや液晶表示デバイス等の製造装置のような産業機器や、プリンター等のコンシューマー製品も含め、液滴を吐出する機構を持つ装置等、広く適用可能である。
【0016】
図1は、本実施形態に係る液体吐出装置を備えたインプリント装置100の構成を示す概略図である。インプリント装置は定盤101と、フレーム102と、基板ステージ駆動部13と、基板ステージ6と、モールドチャック2と、モールド駆動部3と、ディスペンサ11と、アライメントスコープ110と、制御部20とを有する。定盤101は基板ステージ駆動部13とフレーム102を支持している。フレーム102はモールド駆動部3とディスペンサ11とアライメントスコープ110を支持している。
【0017】
インプリント装置100は、物品としての半導体デバイスなどの製造に用いられ、基板4上(物体上)に塗布された未硬化の硬化性組成物すなわちインプリント材の液滴8とモールド1とを接触させて成形し、基板4上に液滴8のパターンを形成する。なお、インプリント装置100は、一例として、紫外光の照射によってインプリント材を硬化させる光硬化法を採用するものとする。なお、本発明は、他のエネルギー(例えば、熱)によりインプリント材を硬化させるインプリント装置にも適用可能である。また、以下の図において、上下方向(鉛直方向)にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内に互いに直交するX軸およびY軸を取っている。
【0018】
基板ステージ駆動部13はリニアモータ等のアクチュエータを有する。基板ステージ駆動部13は、基板4を保持した基板ステージ6を定盤の上面に平行な面内、すなわちX方向及びY方向に駆動させる。すなわち、基板ステージ6と基板ステージ駆動部13が基板保持した状態で移動可能な基板保持機構(基板保持部)として機能する。そして基板ステージ駆動部13は、モールド1と基板4上のインプリント材との接触の際には、モールド1と基板4との位置合わせを実施する。さらにインプリント材を基板上に塗布する際には、所定のタイミングにおいてあらかじめ定められた目標位置に位置するように、ステージ駆動制御が行われる。すなわち、基板ステージ駆動部13により基板4とディスペンサ11との相対位置を移動させることで、基板上の任意の位置にインプリント材が着弾するようにステージ駆動制御を行うことができる。
【0019】
モールドチャック2は、モールド1における紫外光9の照射面の外周領域を真空吸着力や静電力により引き付けることで表面に凹凸パターン形状を有するモールド1を保持する。モールド駆動部3はリニアモータやエアシリンダ等のアクチュエータを有する。モールド駆動部3は、モールドチャック2を基板に垂直な方向、すなわちZ方向に駆動させ、モールド1を基板4に押しつけたり、モールド1を基板4から離したりすることができる。すなわち、モールドチャック2とモールド駆動部3が モールド保持機構(型保持部)として機能する。なお、インプリント処理の際の接触および引き離し動作は、基板ステージ6を駆動させて基板4をZ軸方向に移動させることで実現してもよく、モールド1と基板4との双方を相対的に移動させてもよい。
【0020】
光照射部7は、不図示の光源から発せられた紫外線を、インプリント材を硬化させるに適切な光(紫外光9)に調整し、モールド1を通過しインプリント材に照射する硬化部である。ここで、光源としては、例えばi線、g線を発生する水銀ランプとし得る。ただし、光源は、紫外線に限らず、モールド1を透過し、かつ、インプリント材が硬化する波長の光を発するものであればよい。なお、熱硬化法を採用する場合には、硬化手段として、光照射部7に換えて、例えば、基板ステージ6の近傍に硬化性組成物を硬化させるための加熱手段を設置すればよい。
【0021】
モールド(型)1は矩形で、基板4と対向する面の中央部に3次元状に形成された微細な凹凸パターンを有する。モールド1の材質は、石英等、紫外線を透過させることが可能な材料である。
【0022】
基板4は、例えば単結晶シリコンからなる被処理基板(物体)である。なお、半導体デバイス以外の物品の製造用途であれば、基板の材質として、例えば、光学素子であれば石英等の光学ガラス、発光素子であればGaNやSiCなどを採用し得る。また、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。
【0023】
カメラ10(スプレッドカメラ)は、モールドチャックに保持されたモールド1のパターン領域を視野に含むように構成(配置)され、モールド1及び基板4の少なくとも一方を撮像して画像を取得する。カメラ10は、インプリント処理において、モールド1と基板4上のインプリント材との接触状態を観察する撮像部として用いることができる。また、カメラ10は、基板4上に吐出されたインプリント材により形成される液滴を画像情報として取得し、取得した画像を画像処理することによって基板上の液滴の着弾位置や液滴のサイズを取得することができる。
【0024】
ディスペンサ11(吐出部)は、基板4上に予め設定されているショット領域(パターン形成領域)上に、所望の塗布パターンで未硬化のインプリント材を塗布する(インプリント材の液滴を吐出する)。具体的にはディスペンサ11は、未硬化状態のインプリント材を滴状に吐出して基板1上に付与する複数のノズル31が設けられている。各ノズル31には、インクが存在する領域を形成する部分と、領域内のインクを開口部(吐出口)から吐出させる吐出エネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子とが設けられている。この吐出エネルギー発生素子が夫々駆動制御されることにより、各ノズルから液滴が吐出されることになる。ノズルはY方向に並んで配置され、列を成している。Y方向に並ぶノズルの列は、X方向に複数列配置されていてもよい。本実施形態では、各ノズルの吐出エネルギー発生素子としてピエゾ素子の例で以下説明を行う。ピエゾ素子は、圧電効果によりインプリント材を吐出することができ、ピエゾ素子に印加する電圧波形を変化させることで、吐出するインプリント材の吐出量を変化させることができる。すなわち、ピエゾ素子に印加される電圧波形を決定する駆動信号を適宜制御することで、吐出タイミングや吐出量はノズル毎に独立に制御可能である。
【0025】
インプリント材は、モールド1と基板4との間に充填される際には流動性を持ち、成形後には形状を維持する固体であることが求められる。特に本実施形態では、インプリント材は、紫外光9を受光することにより硬化する性質を有する紫外線硬化樹脂(光硬化性樹脂)であるが、物品の製造工程などの各種条件によっては、光硬化樹脂に換えて熱硬化樹脂や熱可塑樹脂等が用いられ得る。紫外線効果樹脂は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて、非重合性化合物又は溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0026】
アライメントスコープ110は、基板1に設けられたアラインメントマークを検出する。また、アライメントスコープ110も撮像部として機能し、基板4上に吐出されたインプリント材により形成される液滴を画像情報として取得し、取得した画像を画像処理することによって基板上の液滴の着弾位置や液滴のサイズを取得することができる。
【0027】
制御部(制御手段)20は、インプリント装置100の各構成要素の動作および補正などを制御し得る。制御部20は、例えば、CPU、ROM、およびRAMなどを含むコンピュータなどで構成され、CPUによって種々の演算処理が行われる。制御部20は、インプリント装置100の各構成要素に回線を介して接続され、ROMに格納されたプログラムなどに従って各構成要素の制御を実行する。
【0028】
なお、制御部20は、インプリント装置100の他の部分と一体で構成してもよいし、インプリント装置100の他の部分とは別体で構成してもよい。また、1台のコンピュータではなく複数台のコンピュータ、およびASICなどを含む構成としてもよい。
【0029】
次に、本実施形態におけるインプリント処理およびインプリント材の液滴の着弾位置の調整処理について
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、インプリント処理を説明するためのフローチャートである。
図3は、液滴の着弾位置を調整する処理を説明するためのフローチャートである。
図2及び
図3のフローチャートに示す処理は、CUP201が記憶媒体などのメモリに記憶されている制御プログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0030】
図2のS201では、制御部20は、インプリント材の着弾位置の調整処理の実施が必要か否かを判断する。例えば、インプリント装置を設置後の最初のインプリント処理、基板ステージ交換後の最初のインプリント処理、ディスペンサ交換後の最初のインプリント処理、インプリント装置の経時変化が予想される場合等に実施が必要と判断される。S201で実施が必要と判断された場合には、S202に進み後述する着弾位置の調整処理を実施する。なお、S202の着弾位置の調整処理は、S202で判断された場合だけでなく、必要なタイミングで行わせることもできる。
【0031】
S203では、制御部20は、基板ステージ6を所定(略一定)の速度で駆動させながら、所定のタイミングでディスペンサ11からインプリント材を吐出させ、基板4上にインプリント材の液滴パターンを形成する。液滴パターンは、記憶媒体等のメモリに記憶されるレシピと呼ばれる吐出条件を制御部20が読みだして実行することにより形成される。
図4は、所定の吐出条件(レシピ)で吐出される液滴パターンの目標位置の一例を示す図である。
図4のR0_1~R0_9は液滴の目標位置(基準位置)を示す。レシピには、各液滴の目標位置と吐出量の情報、すなわち所定の目標位置に所定の吐出量で吐出されるようにピエゾ素子を駆動する駆動条件(駆動信号)、基板ステージの駆動条件が含まれる。
【0032】
吐出量を多くする程、基板上に着弾した液滴のサイズは大きくなる。
図4は、0.8pLの液滴を格子状に配置した液滴パターンの例を示している。目標位置のY座標が等しい液滴は同一のノズルから吐出される。
図4のレシピの例では、R0_1とR0_2とR0_3、R0_4とR0_5とR0_6、R0_7とR0_8とR0_9はそれぞれ同一のノズルから吐出される。ディスペンサ11のY方向に並んだ各ノズルから、X方向に駆動する基板4上に適切なタイミングで液滴を吐出することで、
図3のレシピのような格子状の液滴パターンが形成される。
【0033】
S204では、制御部20は、モールド駆動部3を駆動するように制御し、基板4上のインプリント材の液滴8にモールド1を押し付ける。この処理により、インプリント材はモールド1の凹凸パターンに充填される。
【0034】
S205では、制御部20は、モールド1を基板4側に押し付けたまま、光照射部7から光を照射させ、インプリント材を硬化させる。その後、S206にて制御部20は、モールド駆動部3を駆動し、モールド1を基板4上の硬化したインプリント材から引き離し、インプリント処理は完了する。
【0035】
次に、
図3を参照してS202の着弾位置の調整処理について説明する。S301では、制御部20は、調整用レシピを用いて、基板ステージ6を所定の速度で駆動させながら、所定のタイミングでディスペンサ11からインプリント材を吐出させ、基板4上に調整用のインプリント材の液滴パターンを形成する。なお、S301で調整用にインプリント材を着弾する位置は、S203でインプリント材を付与する予定の位置とは別の位置、好ましくは調整用の基板であることが望ましい。着弾位置の調整処理に用いられる調整用レシピにも、各液滴の目標位置と吐出量の情報、すなわち所定の目標位置に所定の吐出量で吐出されるようにピエゾ素子を駆動する駆動条件(駆動信号)、基板ステージの駆動条件が含まれる。
【0036】
調整用レシピは、少なくとも同じノズルから吐出される目標位置がX軸方向に隣接している液滴同士の吐出量が異なるように設定されている。このように隣接する液滴同士の吐出量を異ならせておけば、基板上の液滴のサイズも差が生じるため、ノズル付近に異物などが付着して着弾位置が大きくずれるような場合でも、対応する液滴を容易に特定することができる。なお、インプリント材の吐出量を変えると、インプリント材の吐出速度が変化し、インプリント材の付与位置がずれる。そのため、調整用レシピでは、着弾位置に吐出量の差による影響がないように、吐出量を加味した吐出タイミングとしておくことが好ましい。
【0037】
また、調整用レシピでは、同じノズルから吐出される液滴のみならず、隣接するノズルから吐出される目標位置がY軸方向に隣接している液滴同士も吐出量が異なるように設定しておいてもよい。これにより、Y軸方向に着弾位置のずれが生じた場合にも、対応する液滴を容易に特定することができる。
【0038】
すなわち、S301では、制御部20は、調整用レシピを用いて、基板ステージ6を一定速度で駆動させながら、互いに異なる液滴量がノズルから吐出されるように複数の駆動信号を順次与えることにより、基板上に調整用の液滴パターンを形成する。
【0039】
S302では、制御部20は、S207で調整用レシピにより吐出された液滴が着弾した基板4上の領域が、撮像部により撮像できるように基板ステージを駆動し、基板上の液滴を撮像する。撮像部としては、上述のようにアライメントスコープ110やスプレッドカメラ10を用いることができる。さらに制御部20は、撮像部により撮像された画像から、各液滴の着弾位置とサイズ(大きさ)を算出し、取得する。すなわち制御部20は、基板上に吐出された液滴の着弾位置とサイズとを取得する取得部として機能する。
【0040】
S303では、制御部20は、S301での液滴を吐出する際に使用した調整用レシピを吐出量毎に分け、液滴の目標位置、すなわち当該液滴を吐出する際に用いた駆動信号がいずれであるかを特定するための複数の調整用データを生成し、メモリに記憶させておく。すなわち、調整用レシピにおける吐出量ごとの液滴の目標位置と対応する駆動信号を特定しておく。例えば、S301で使用した調整用レシピに吐出量が0.7pLの液滴と0.9pLの液滴の2種類が含まれる場合には、吐出量が0.7pLの液滴の目標位置を抽出した調整用データと吐出量が0.9pLの液滴の目標位置を抽出した調整用データが生成される。なお、S303の工程は必須の工程ではなく、S305で目標位置を特定する際に、調整用レシピから直接特定してもよい。
【0041】
以下、S304乃至S305の処理については、調整用レシピで基板上に着弾している液滴の回数繰り返す。なお、S304乃至S305の繰り返し処理は、基板上の全液滴に対して行う必要はなく、処理時間に応じて適宜調整してもよい。
【0042】
S304では、制御部20は、S302で取得した対象の液滴のサイズをもとに、当該液滴の吐出時の吐出量を特定する。液滴の吐出量とサイズとの関係は、ディスペンサ11と基板4の距離、S301でインプリント材を付与してからS302で撮像するまでの時間、基板4の表面状態等によって異なる。そのため、事前準備として調整レシピで用いられる各吐出量の液滴を撮像した際の液滴のサイズを計測しておき、液滴の吐出量とサイズの関係をメモリに記憶しておき、この関係を用いて、S304では吐出量を特定できるようにしておくことが望ましい。本実施例のインプリント装置のある条件では、吐出量が0.7pLの液滴のサイズが4300μm2程度の場合、吐出量が0.9pLの液滴のサイズは4800μm2程度になる。
【0043】
S305では、制御部20は、S303で生成した複数の調整データの中からS304で特定した吐出量に対応する調整データを選択し、選択した調整データの中から液滴の着弾位置に最も近い目標位置の液滴を、着弾液滴に対応する目標液滴として特定する。これにより、当該液滴を吐出する際に用いられた駆動信号も特定される。すなわち目標位置の最も近くに着弾しているインプリント材の液滴が、当該目標位置に着弾すべき液滴と特定する。
【0044】
S306では、制御部20は、S302で取得された液滴の着弾位置とS305で特定された目標位置との差を算出する。このとき、X方向とY方向の差をそれぞれ算出しておくことが好ましい。
【0045】
S307では、制御部20は、S304乃至S305で求めた複数の液滴の目標位置と着弾位置のX方向及びY方向の差を算出し、その平均とばらつきを算出し、平均値とばらつきが許容値以内か否かを判断する。具体的には、目標位置と着弾位置の差の平均はX方向、Y方向ともに3μm程度以内、ばらつき3σは10μm程度以内であると押印時の不良は生じにくいといえるため、これらの範囲内であるか否かを判断する。S307の判断の結果、平均とばらつきがともに許容値以内である場合、S311に進み、許容値以内でないと判断した場合には、S308に進む。
【0046】
S308では、制御部20は、Y座標が同じ液滴、つまり同じノズルから吐出された液滴の着弾位置と目標位置のX方向の差の平均値を算出し、この平均値に基づいて液滴のY座標に対応するノズルの吐出タイミングを補正する補正条件(駆動条件)を求める。例えば、あるノズルから吐出された液滴の着弾位置と目標位置のX方向の差の平均値が+10μmである場合を考える。液滴吐出時の基板ステージ6の移動速度は、Xの正方向に1mm/Sとする。この場合、そのノズルから液滴を吐出する吐出タイミングを10mSec早くすることで、インプリント材の着弾位置を目標位置に近づけることができ、着弾精度を向上させることができる。
【0047】
S309では、制御部20は、S304乃至S305で求めた複数の液滴の着弾位置と目標位置のY方向の差の平均を算出し、算出した平均値を基板ステージ6の駆動位置の補正値とすることもできる。例えば、液滴の着弾位置と目標位置のY方向の差が+5μmである場合を考える。この場合、所定のタイミングにおける基板ステージ6の駆動目標座標をY方向に+5μm補正することで液滴の着弾精度を向上させることができる。なお、ステージ駆動位置の制御によりX方向のずれも補正することができるので、S308のような吐出タイミングの補正と、ステージ制御による補正を組み合わせてX方向の着弾位置の補正を行うこともできる。
【0048】
S310では、制御部20は、調整用レシピに対してS308及びS309で求めた補正条件を反映し、S301に戻り、再度行われる着弾位置調整処理では補正条件が適用された状態で行われるようにする。具体的には、S301で用いられる調整用レシピのピエゾ素子を駆動する駆動信号を、S308で求めた吐出タイミングとなるように補正し、基板ステージの駆動目標座標がS309で求めた位置となるように補正する。
【0049】
その後、S301に戻り、S307で着弾位置と目標位置との差の平均とばらつきが許容値以内になるまで、着弾位置調整処理を繰り返す。
【0050】
S311では、制御部20は、着弾位置と目標位置との差の平均とばらつきが許容値以内となっている調整レシピの条件をS203で用いられるレシピに反映して処理を終了する。
【0051】
すなわちインプリント時の液滴の着弾位置が目標位置に近づくように、ピエゾ素子を駆動する駆動信号や基板ステージの駆動目標座標といった吐出条件を設定する。
【0052】
これにより着弾位置の精度が向上された吐出条件でインプリント処理が行えるため、押印工程でのインプリント材のはみ出しや未充填欠陥の発生を防止することができます。
【0053】
次に、様々な調整用レシピを用いて上述の着弾位置調整を行った場合の具体例について図を用いて説明する。
【0054】
(比較例)
まず、
図4乃至6を用いて比較例として調整用レシピで全ての液滴の吐出量を同じにした場合について説明する。インプリント時に使うレシピを用いて、
図4に示すようなすべて同じ吐出量の吐出条件を用いて、着弾位置の調整処理の液滴吐出(S301)を行うと、基板上には
図5に示すような液滴パターンが形成される。D0_1~D0_9は基板上に着弾した液滴を示しいている。
図5(a)はインプリント材の液滴の着弾位置と目標位置の差がない理想的な液滴パターン、(b)は吐出角度がずれたノズルが存在するような場合に生じる、目標位置からずれて着弾した液滴のパターンを示している。
図5(a)の液滴パターンが形成された場合は、インプリント材の着弾位置を調整する必要はない。一方、
図5(b)では液滴D0_4、D0_5、D0_6を吐出したノズルは、吐出角度がずれており着弾位置がXの正方向にずれているため、インプリント材の液滴を吐出するタイミングを補正する必要がある。
【0055】
図6は
図5(b)の液滴パターンの着弾位置と
図4の目標位置とを重ね合わせた図である。
図4乃至
図6の比較例では全液滴の吐出量が等しいため、各液滴に対し着弾位置に最も近い目標位置を対応する位置として紐づけると、液滴D0_4の基準位置はR0_5、液滴D0_5の基準位置はR0_6が選択される。しかし、液滴D0_4の本来の基準位置はR0_4、液滴D0_5の本来の基準位置はR0_5である。つまり液滴の着弾位置と目標位置の対応付けが誤っているため、S308のような工程で補正条件を算出したとしても、正しい補正条件を算出することはできず、吐出角度がずれたノズルの吐出タイミングを正しく補正することができない。また、吐出角度がずれたノズルが他にも複数存在し、それらのノズルから吐出された液滴に対しても同様に正しくない目標位置が選択された場合、S309のステージ駆動の補正にも影響がでてしまう。そのため、液滴の着弾位置のずれがレシピ内の基準位置同士の間隔よりも大きいような場合には、同じ液滴量の調整レシピだと液滴の着弾位置と当該液滴の目標位置との対応付けが正しくできない可能性が生じる。
【0056】
(実施例1)
次に
図7乃至10を用いて調整用レシピで液滴の吐出量を0.7pLの液滴と0.9pLの液滴の2種類が含まれる場合の実施例を説明する。
図7は、調整用レシピで吐出される液滴パターンの目標位置の一例を示す図である。
【0057】
図7のR1_1、R1_3、R1_5、R1_7、R1_9は、吐出量0.7pLの液滴の目標位置を示し、R1_2、R1_4、R1_6、R1_8は、吐出量0.9pLの液滴の目標位置を示す。このように
図7の調整用レシピでは、目標位置が隣接している液滴の吐出量は、互いに異なっている。
【0058】
この調整用レシピを使用して、着弾位置の調整処理の液滴吐出(S301)を行うと、
図8に示すような液滴パターンが形成される。0.7pLで吐出された液滴は0.9pLで吐出された液滴と比較して小さくなる。ただし、
図8では吐出量の差による液滴のサイズの差を分かりやすいよう誇張して表示して説明する。
図8(a)はインプリント材の液滴の着弾位置と目標位置の差がない理想的な液滴パターン、(b)は吐出角度がずれたノズルが存在するような場合に生じる、目標位置からずれて着弾した液滴のパターンを示している。
図8(a)の液滴パターンが形成された場合は、インプリント材の着弾位置を調整する必要はない。一方、
図8(b)では液滴D1_4、D1_5、D1_6を吐出したノズルは、吐出角度がずれており着弾位置がXの正方向にずれているため、インプリント材の液滴を吐出するタイミングを補正する必要がある。
【0059】
図9は、
図7の調整用レシピにおける吐出量ごとの液滴の目標位置を示した図である。
図9(a)はS303で調整用レシピから生成された調整用データにおける吐出量が0.7pLの液滴の目標位置を示した図であり、
図9(b)は調整用データにおける吐出量が0.9pLの液滴の目標位置を示した図である。S302で
図8のような液滴が撮像された場合、液滴D1_1、D1_3、D1_5、D1_7、D1_9の吐出量は0.7pLであると特定され(S304)、
図9(a)の調整用データから目標位置が特定される(S305)。同様に、液滴D1_2、D1_4、D1_6、D1_8の吐出量は0.9pLであると特定され(S304)、
図9(a)の調整用データから目標位置が特定される(S305)。
【0060】
図10(a)は
図9(a)の調整用データ(吐出量が0.7pLの目標位置)と、
図8(b)に示す着弾位置とを重ね合わせた図である。
図10(a)ではS304で吐出量が0.7pLであると特定された液滴を実線で示し、それ以外の液滴を点線で示している。S305では、選択した調整データの中から液滴の着弾位置に最も近い目標位置の液滴を、着弾液滴に対応する目標液滴として特定する。つまり、液滴D1_1、D1_3、D1_5、D1_7、D1_9の目標位置としてR1_1、R1_3、R1_5、R1_7,R1_9がそれぞれ特定される。
【0061】
図10(b)は
図9(b)の調整用データ(吐出量が0.9pLの目標位置)と、
図8(b)に示す着弾位置とを重ね合わせた図である。
図10(b)ではS304で吐出量が0.9pLであると特定された液滴を実線で示し、それ以外の液滴を点線で示している。そして、S305により、液滴D1_2、D1_4、D1_6、D1_8の目標位置として、R1_2、R1_4、R1_6、R1_8がそれぞれ特定される。
【0062】
このように、目標位置が隣接している液滴の吐出量を異なる吐出量にし、吐出量ごとに目標位置と着弾位置との対応付け(紐づけ)を行うことで、目標位置同士の間隔が広がり、液滴の目標位置と着弾位置の対応付けを誤る可能性を減らすことができる。従って吐出タイミングの補正等を正しく行えるため、着弾位置の精度が向上された吐出条件でインプリント処理が行え、押印工程でのインプリント材のはみ出しや未充填欠陥の発生を防止することができる。
【0063】
(実施例2)
次に
図11乃至12を用いて調整用レシピで液滴の吐出量が0.4pLの液滴と0.6pLの液滴と0.8pLの液滴と1.0pLの液滴の4種類が含まれる場合の実施例を説明する。
図11は、調整用レシピで吐出される液滴パターンの目標位置の一例を示す図である。
図11のR2_5は吐出量0.4pLの液滴の目標位置、R2_1、R2_6、R2_7は吐出量0.6pLの液滴の目標位置、R2_2、R2_8は吐出量0.8pLの液滴の目標位置、R2_3、R2_4、R2_9は吐出量1.0pLの液滴の目標位置を示す。
【0064】
図11の調整用レシピから調整用データを生成すると(S303)、
図12のような吐出量ごとの液滴の目標位置となる。
図12の(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、吐出量が0.4pL、0.6pL、0.8pL、1.0pLの液滴の目的位置を抽出した図である。
【0065】
本実施例のように、調整用データの吐出量の種類を増やすことによって、目標位置同士の間隔が広がるため、液滴の目標位置と着弾位置の対応付けを誤る可能性を減らすことができる。本実施例では調整用レシピ内の吐出量の種類を4種類としたが、さらに種類を増やしてもよい。
【0066】
(物品の製造について)
以上説明したインプリント装置100を用いて形成される硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。
【0067】
物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0068】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0069】
次に、
図13を用いて、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。まず
図13(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0070】
図13(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図13(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0071】
図13(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0072】
図13(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図13(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0073】
そして物品の製造方法には、基板に供給(塗布)されたインプリント材に上記のインプリント装置(インプリント方法)を用いてパターンを形成する工程と、かかる工程でパターンを形成された基板を加工する工程も含まれる。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利であるといえる。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 モールド
4 基板
6 基板ステージ
20 制御部
100 インプリント装置