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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】高さ調整方法及び高さ調整構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 12/34 20060101AFI20241216BHJP
   E04H 12/00 20060101ALI20241216BHJP
   F03D 13/10 20160101ALI20241216BHJP
   F03D 80/50 20160101ALI20241216BHJP
【FI】
E04H12/34
E04H12/00 Z
F03D13/10
F03D80/50
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021190946
(22)【出願日】2021-11-25
(65)【公開番号】P2023077608
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2024-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】浅香 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中島 与博
(72)【発明者】
【氏名】長崎 耕欣
【審査官】岡崎 彦哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0113027(US,A1)
【文献】国際公開第2013/057459(WO,A1)
【文献】特開2018-040172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 12/00、12/34
F03D 13/10、13/20-25
F03D 80/50
E02B 17/02-04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎に筒状のトランジションピースを設置するときにおける前記トランジションピースの高さを、4つ以上の高さ調整装置を用いて調整する高さ調整方法であって、
前記4つ以上の高さ調整装置は、前記基礎が当接する1つ以上の第1高さ調整装置と、前記第1高さ調整装置よりも低い位置で前記基礎が当接する3つの第2高さ調整装置とを含んでおり、
前記トランジションピースのプラットフォームに、前記トランジションピースの周方向に沿って並ぶように1つ以上の前記第1高さ調整装置、及び3つの前記第2高さ調整装置を設置する工程と、
3つの前記第2高さ調整装置に下から前記基礎を当接させる工程と、
前記第1高さ調整装置及び前記第2高さ調整装置を前記基礎に当接させて前記トランジションピースの傾斜を調整する工程と、
を備える高さ調整方法。
【請求項2】
前記第1高さ調整装置及び前記第2高さ調整装置のそれぞれは、鉛直下方に延びるブラケットを有し、
前記基礎を当接させる工程では、3つの前記第2高さ調整装置のそれぞれの前記ブラケットの下面に前記基礎が当接する、
請求項1に記載の高さ調整方法。
【請求項3】
前記設置する工程では、前記トランジションピースの周方向に沿って並ぶように3つ以上の前記第1高さ調整装置、及び3つの前記第2高さ調整装置を設置する、
請求項1又は2に記載の高さ調整方法。
【請求項4】
前記第1高さ調整装置及び前記第2高さ調整装置のそれぞれは、鉛直方向に移動可能な当接部材を有し、
前記傾斜を調整する工程では、前記第1高さ調整装置の前記当接部材、及び前記第2高さ調整装置の前記当接部材を前記基礎に当接させて前記トランジションピースの傾斜を調整する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の高さ調整方法。
【請求項5】
前記第1高さ調整装置及び前記第2高さ調整装置のそれぞれは、前記当接部材を鉛直方向に移動させるジャッキと、前記当接部材の高さを固定する高さ固定手段とを有し、
前記トランジションピースの傾斜を調整する工程の後に、前記高さ固定手段により、前記第1高さ調整装置及び前記第2高さ調整装置のそれぞれの前記当接部材の高さを固定する工程を更に備える、
請求項4に記載の高さ調整方法。
【請求項6】
基礎に筒状のトランジションピースを設置するときにおける前記トランジションピースの高さを、4つ以上の高さ調整装置を用いて調整する高さ調整構造であって、
前記4つ以上の高さ調整装置は、前記基礎に対向するブラケットを有する1つ以上の第1高さ調整装置と、前記基礎が当接するブラケットを有する3つの第2高さ調整装置とを含んでおり、
1つ以上の前記第1高さ調整装置、及び3つの前記第2高さ調整装置は、前記トランジションピースのプラットフォームにおいて前記トランジションピースの周方向に沿って並ぶように設置され、
前記第2高さ調整装置の前記ブラケットの下面の高さが前記第1高さ調整装置の前記ブラケットの下面の高さよりも低い、
高さ調整構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基礎に設置されるトランジションピースの高さを調整する高さ調整方法及び高さ調整構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5993756号公報には、洋上構造物の設置方法が記載されている。洋上構造物は、海底の地盤に貫入されて設けられた基礎と、基礎の上部に設けられた上部工と、基礎及び上部工の間に設けられる艤装部材とを備えた海上風力発電設備である。艤装部材は、トランジションピースとも称される。海上風力発電設備は、鉛直方向に対する上部工の傾斜角度を調整可能な角度調整部材を備える。
【0003】
角度調整部材は、基礎と上部工との間に介在する2枚のシム板と、各シム板に形成された貫通孔に挿通される複数のボルト及び複数のナットとを備える。鉛直方向に対する基礎の傾斜角度は、光波測距儀、又はGPS等を用いて計測される。シム板は、計測された傾斜角度を矯正する傾斜面を有するように予め作製される。この設置方法では、基礎と上部工との間に当該傾斜面を有する2枚のシム板を介在させることにより、鉛直方向に対する上部工の傾斜が矯正される。
【0004】
特許第6839524号公報には、水上構造物における脚部の鋼管杭への支持構造及び支持方法が記載されている。水上構造物は、径方向内側に突出するフランジを天端面に有する鋼管杭と、鉛直上方から鋼管杭に載せられるトランジションピースである筒状の脚部とを備える。脚部は径方向内側に突出する円環状のブラケットを有し、ブラケットがフランジに載せられることによって鋼管杭に脚部が設置される。
【0005】
鋼管杭のフランジの上面と脚部のブラケットの下面との間には、鉛直方向に対する脚部の傾きを調整するための調整材が設けられる。鋼管杭のフランジの上面の水平面に対する傾斜角度が予め計測され、調整材は当該計測された傾斜角度を有する傾斜面を有するように作製される。この傾斜面を有する調整材を鋼管杭のフランジの上面と脚部のブラケットの下面との間に介在させることにより、鉛直方向に対する脚部の傾斜を矯正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5993756号公報
【文献】特許第6839524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した洋上構造物の設置方法、及び水上構造物における脚部の鋼管杭への支持方法では、予め傾斜角度を計測し、予め傾斜面を有するシム板又は調整材を作製しなければならないので、トランジションピースの傾斜を効率よく調整できない。また、トランジションピースが複数の高さ調整部材を備え、複数の高さ調整部材を基礎に載せてトランジションピースの傾きを調整する方法が知られている。しかしながら、寸法誤差等により複数の高さ調整部材の基礎が当てられる部分の高さにバラツキがあるので、複数の高さ調整部材を基礎に安定して載せられないという問題が生じうる。その結果、基礎にトランジションピースを安定して設置できないことが懸念される。
【0008】
本開示は、基礎にトランジションピースを安定して設置できる高さ調整方法及び高さ調整構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る高さ調整方法は、基礎に筒状のトランジションピースを設置するときにおけるトランジションピースの高さを、4つ以上の高さ調整装置を用いて調整する高さ調整方法である。4つ以上の高さ調整装置は、基礎が当接する1つ以上の第1高さ調整装置と、第1高さ調整装置よりも低い位置で基礎が当接する3つの第2高さ調整装置とを含んでいる。この高さ調整方法は、トランジションピースのプラットフォームに、トランジションピースの周方向に沿って並ぶように1つ以上の第1高さ調整装置、及び3つの第2高さ調整装置を設置する工程と、3つの第2高さ調整装置に下から基礎を当接させる工程と、第1高さ調整装置及び第2高さ調整装置を基礎に当接させてトランジションピースの傾斜を調整する工程と、を備える。
【0010】
この高さ調整方法では、トランジションピースの高さ及び傾斜が4つ以上の高さ調整装置を用いて調整される。4つ以上の高さ調整装置を用いて高さ及び傾斜が調整されることにより、トランジションピースの高さ及び傾斜を高精度に調整することができる。4つ以上の高さ調整装置は、基礎が当接する第1高さ調整装置と、第1高さ調整装置よりも低い位置で基礎が当接する第2高さ調整装置とを含んでいる。トランジションピースのプラットフォームの周方向に沿って並ぶように1つ以上の第1高さ調整装置、及び3つの第2高さ調整装置が設置され、当該3つの第2高さ調整装置に下から基礎が当接する。その後、第1高さ調整装置及び第2高さ調整装置が基礎に当接してトランジションピースの傾斜が調整される。よって、傾斜の調整の前に、プラットフォームの周方向に沿って並ぶ3つの第2高さ調整装置に基礎を当接させることができるので、3点支持によってトランジションピースを安定して基礎に載せることができる。そして、トランジションピースが安定して基礎に載せられた状態でトランジションピースの傾斜が調整されるので、基礎にトランジションピースを安定して設置して傾斜の調整を安定した状態で行うことができる。
【0011】
第1高さ調整装置及び第2高さ調整装置のそれぞれは、鉛直下方に延びるブラケットを有してもよい。基礎を当接させる工程では、3つの第2高さ調整装置のそれぞれのブラケットの下面に基礎が当接してもよい。この場合、第1高さ調整装置及び第2高さ調整装置のそれぞれのブラケットを基礎が当接する部分として有効利用できる。また、第1高さ調整装置及び第2高さ調整装置がジャッキを有する場合に、ジャッキよりも先にブラケットの下面に基礎を当接させることができるので、トランジションピースを基礎に載せるときにおけるジャッキへの負荷を軽減させることができる。
【0012】
高さ調整装置を設置する工程では、トランジションピースの周方向に沿って並ぶように3つ以上の第1高さ調整装置、及び3つの第2高さ調整装置を設置してもよい。この場合、トランジションピースの周方向に沿って、3つ以上の第1高さ調整装置、及び3つの第2高さ調整装置が設置されるので、合計6つ以上の高さ調整装置を用いてトランジションピースの高さ及び傾斜を一層高精度に調整できる。
【0013】
第1高さ調整装置及び第2高さ調整装置のそれぞれは、鉛直方向に移動可能な当接部材を有してもよい。傾斜を調整する工程では、第1高さ調整装置の当接部材、及び第2高さ調整装置の当接部材を基礎に当接させてトランジションピースの傾斜を調整してもよい。この場合、鉛直方向に移動可能な複数の当接部材によってトランジションピースの傾斜が調整されるので、トランジションピースの高さ及び傾斜を一層高精度に調整できる。
【0014】
第1高さ調整装置及び第2高さ調整装置のそれぞれは、当接部材を鉛直方向に移動させるジャッキと、当接部材の高さを固定する高さ固定手段とを有してもよい。この高さ調整方法は、トランジションピースの傾斜を調整する工程の後に、高さ固定手段により、第1高さ調整装置及び第2高さ調整装置のそれぞれの当接部材の高さを固定する工程を更に備えてもよい。この場合、基礎に当接部材を当接させてトランジションピースの傾斜を調整した後に、高さ固定手段によって基礎に当接している当接部材の高さが固定される。よって、基礎に当接する当接部材の高さを高さ固定手段によって固定できるので、当接部材を鉛直方向に移動させるジャッキに万が一不具合が生じた場合であっても、当接部材の高さが変わってしまうことを抑制できる。従って、トランジションピースが安定した状態をより確実に維持することができる。
【0015】
本開示に係る高さ調整構造は、基礎に筒状のトランジションピースを設置するときにおけるトランジションピースの高さを、4つ以上の高さ調整装置を用いて調整する高さ調整構造である。4つ以上の高さ調整装置は、基礎に対向するブラケットを有する1つ以上の第1高さ調整装置と、基礎が当接するブラケットを有する3つの第2高さ調整装置とを含んでいる。1つ以上の第1高さ調整装置、及び3つの第2高さ調整装置は、トランジションピースのプラットフォームにおいてトランジションピースの周方向に沿って並ぶように設置され、第2高さ調整装置のブラケットの下面の高さが第1高さ調整装置のブラケットの下面の高さよりも低い。
【0016】
この高さ調整構造は4つ以上の高さ調整装置を備え、4つ以上の高さ調整装置は1つ以上の第1高さ調整装置と3つの第2高さ調整装置とを含む。4つ以上の高さ調整装置によってトランジションピースの高さ及び傾斜が調整されるので、トランジションピースの高さ及び傾斜の調整を高精度に行うことができる。第1高さ調整装置は基礎に対向するブラケットを備え、第2高さ調整装置は基礎に当接するブラケットを備える。トランジションピースのプラットフォームの周方向に沿って並ぶように1つ以上の第1高さ調整装置及び3つの第2高さ調整装置が設置され、第2高さ調整装置のブラケットの下面の高さは第1高さ調整装置のブラケットの下面の高さよりも低い。よって、プラットフォームの周方向に沿って並ぶ3つの第2高さ調整装置のブラケットの下面に基礎を当接させることができるので、前述した高さ調整方法と同様、3点支持によってトランジションピースを安定して基礎に載せることができる。従って、基礎にトランジションピースを安定して設置してトランジションピースの傾斜の調整を安定した状態で行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、基礎にトランジションピースを安定して設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る高さ調整方法及び高さ調整装置が適用される対象の一例である洋上風力発電装置を示す側面図である。
図2図1の洋上風力発電装置の基礎及びトランジションピースを示す側面図である。
図3図2のトランジションピースを示す斜視図である。
図4図2のトランジションピースの着船設備を示す斜視図である。
図5図2のトランジションピースの外部プラットフォームを示す斜視図である。
図6図2のトランジションピースの各プラットフォームを模式的に示す断面斜視図である。
図7図2のトランジションピースのずれ矯正ジャッキを示す斜視図である。
図8図2のトランジションピースの下部プラットフォームを示す斜視図である。
図9図8の下部プラットフォーム及び基礎を模式的に示す部分断面図である。
図10図8の下部プラットフォームに配置された高さ調整装置を示す斜視図である。
図11図10の高さ調整装置を図10とは異なる方向から見た斜視図である。
図12】実施形態に係る第1高さ調整装置及び第2高さ調整装置の設置状態を模式的に示す斜視図である。
図13】実施形態に係る第1高さ調整装置及び第2高さ調整装置の設置状態を模式的に示す平面図である。
図14】(a)及び(b)は、変形例に係る第1高さ調整装置及び第2高さ調整装置の設置状態を模式的に示す平面図である。
図15】(a)及び(b)は、実施形態に係るずれ矯正ジャッキの具体例を示す斜視図である。
図16】(a)及び(b)は、実施形態に係るずれ矯正ジャッキの固定構造の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照しながら、本開示に係る高さ調整方法及び高さ調整構造の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0020】
本実施形態に係る高さ調整方法及び高さ調整装置は、洋上構造物の基礎に筒状のトランジションピースを設置するときにおけるトランジションピースの高さを、4つ以上の高さ調整装置を用いて調整する。洋上構造物は、例えば、風力発電機である。以下では、風力発電機に高さ調整方法及び高さ調整装置が適用される例について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る高さ調整方法及び高さ調整装置が適用される一例としての風力発電機1を示す側面図である。図2は、風力発電機1の基礎2及びトランジションピース3を示す側面図である。図1及び図2に示されるように、風力発電機1は、例えば、海底Bに設けられており、洋上風力発電を行う。但し、風力発電機1は、海洋に限られず、例えば、湖又は河川等、海洋とは異なる水中に設けられていてもよい。
【0022】
風力発電機1は、基礎2と、基礎2に設置されるトランジションピース3と、トランジションピース3に固定されるタワー4と、タワー4の上部に取り付けられたナセル5と、ナセル5に取り付けられたブレード6と、を備える。タワー4は、例えば、コンクリート製又は鋼製である。ナセル5の内部には発電機及び増速器等が収容されており、例えば、増速器からはローター軸がナセル5の外部に突出している。
【0023】
ブレード6は、ナセル5のローター軸に固定されている。風力発電機1は、例えば、3枚のブレード6を備える。ブレード6が風を受けて回転すると、この回転はナセル5の内部の増幅器により一定の回転数に上げられて、この回転運動はナセル5の内部の発電機によって電力に変換される。例えば、ナセル5は、風向風速計を備えており、風速及び風向に対応してローターの向きとブレード6の角度を制御することにより、効率的な発電を行う。
【0024】
風力発電機1は、例えば、モノパイルの基礎形式を備えており、モノパイルである基礎2の上方にトランジションピース3が設けられる。風力発電機1は、水中Wに打設されたモノパイルである基礎2と、基礎2から上方に延びると共にタワー4の下端に接続されたトランジションピース3とを備える。なお、基礎2は、モノパイルの基礎形式に代えて、トリパイル式の洋上風力基礎、又はジャケット式の洋上風力基礎を備えていてもよく、基礎2の形式は特に限定されない。
【0025】
例えば、海底Bにおける基礎2の周辺には、洗掘防止工7が設けられており、洗掘防止工7により海底Bの基礎2の周辺における地盤の洗掘が防止されている。例えば、水平面で切断したときの基礎2の断面形状は円形状とされている。一例として、基礎2は筒状を呈する。
【0026】
基礎2は、例えば、基礎2の内外に水が流出入する孔部2bを有する。基礎2の直径は、例えば、4m以上(一例として6m)である。基礎2は、例えば、水中Wに打ち込まれる円筒状の下部2cと、下部2cの上端から上方に向かうに従って徐々に縮径する上部2dとを有する。上部2dにはトランジションピース3が設置される。
【0027】
図3は、トランジションピース3を示す斜視図である。トランジションピース3は、風力発電機1の鉛直度を確保するために設けられる。図2及び図3に示されるように、トランジションピース3は、鉛直方向D1に沿って延びる筒状の柱状部分3bと、柱状部分3bの上端に位置する外部プラットフォーム10とを有する。
【0028】
柱状部分3bは、例えば、外部プラットフォーム10が載せられる上部3dと、上部3dの下端から下方に向かうに従って徐々に拡径する下部3fとを有する。外部プラットフォーム10は、柱状部分3bの上端から水平方向に突出するように柱状部分3bに設置されている。
【0029】
トランジションピース3の下部3fは基礎2の上部2dが通される部位である。例えば、下部3fと基礎2の上部2dの間にグラウトが充填されることによって基礎2にトランジションピース3が接合(グラウト接合)する。なお、基礎にトランジションピースを接合する手段は、上記のグラウト接合に限られない。基礎にトランジションピースを接合する手段は、例えば、ボルト接合であってもよく特に限定されない。また、基礎に予め(例えば海底Bに打ち込まれる前に)トランジションピースが接合されていてもよい。
【0030】
例えば、トランジションピース3は、柱状部分3bに作業者が乗り降りするための梯子3hと、作業者が休むためのレストプラットフォーム3jとを備える。梯子3hは、例えば、柱状部分3bの下部3fから柱状部分3bの上端まで延在している。トランジションピース3は、例えば、複数のレストプラットフォーム3jを有し、複数のレストプラットフォーム3jのそれぞれが梯子3hの複数の途中部分のそれぞれに設けられる。
【0031】
図4は、トランジションピース3の柱状部分3bの一部を拡大した斜視図である。図3及び図4に示されるように、トランジションピース3は電線配管3kとグラウト配管3mとを有する。電線配管3kは、例えば、ICCP(Impressed Current Cathodic Protection:陰極防食)用の電線を収容する。
【0032】
トランジションピース3は、例えば、柱状部分3bから突出するように配置された電極3rを有する。電極3rは、水中Wに配置される陽極(ICCPシステムの外部陽極)である。電極3rに電流が流れることにより、トランジションピース3の各部の電位差によって生じる電食を抑制する。グラウト配管3mは、基礎2にトランジションピース3を固定するグラウトが通る配管である。
【0033】
トランジションピース3は柱状部分3bに着船設備3gを有する。着船設備3gには、トランジションピース3に上ってトランジションピース3で作業をする作業者が乗る船が到着する。着船設備3gは、例えば、鉛直方向D1に沿って延びる2本のポール3pと、ポール3pを柱状部分3bに接合する複数の接合部材3qとを備える。
【0034】
2本のポール3pの間には、作業者を乗せた船の船首が入り込む。例えば、2本のポール3pの間隔は、当該船から作業者がアクセスできる程度の広さとされている。2本のポール3pの間には梯子3hが設けられる。よって、船から下りた作業者が梯子3hを使ってトランジションピース3の外部プラットフォーム10に上ることが可能である。
【0035】
例えば、ポール3pの上方にはレストプラットフォーム3jが設けられる。例えば、着船設備3gの複数の接合部材3qは、ポール3pに沿って並ぶように配置されている。接合部材3qは、例えば、柱状部分3bから突出する柱状とされており、各ポール3pと柱状部分3bとを互いに接続する。ポール3p及び複数の接合部材3qは、例えば、一体化されている。
【0036】
図5は、トランジションピース3の外部プラットフォーム10を示す斜視図である。外部プラットフォーム10は、上部プラットフォームとも称される。外部プラットフォーム10は、タワー4の下端が接合されると共に、荷物が載置されるプラットフォームである。外部プラットフォーム10は、例えば、クレーン10bと、電源装置10cと、階段10dとを備える。
【0037】
外部プラットフォーム10は梯子3hの上端に設けられており、作業者が梯子3hを上って外部プラットフォーム10に入ることが可能である。例えば、クレーン10bはダビッドクレーンであり、電源装置10cはクレーン10bに電力を供給するクレーン電源装置である。
【0038】
タワー4は、外部プラットフォーム10からトランジションピース3及びタワー4の内部に出入り可能とされた開口4bを有する。作業者は開口4bからトランジションピース3の内部に移動することが可能である。タワー4の開口4bは、例えば、タワー4の下端よりも高い位置に設けられており、作業者は開口4bの前にある階段10dを上って開口4bに入ることが可能である。
【0039】
トランジションピース3は、例えば、柱状部分3bの上端部分に位置するフランジ部を有し、タワー4はその下端に位置するフランジ部4cを有する。例えば、トランジションピース3のフランジ部は柱状部分3bの上端において柱状部分3bの径方向外側及び径方向内側に突出する部位であり、タワー4のフランジ部4cはタワー4の下端においてタワー4の径方向外側及び径方向内側に突出する部位である。しかしながら、例えば、トランジションピース3のフランジ部は柱状部分3bの上端において柱状部分3bの径方向内側のみに突出する部位であってもよく、タワー4のフランジ部4cはタワー4の下端においてタワー4の径方向内側のみに突出する部位であってもよい。トランジションピース3及びタワー4の内部には、トランジションピース3及びタワー4の各機器を操作するコンピュータ等が配置されている。
【0040】
トランジションピース3のフランジ部及びタワー4のフランジ部4cは、トランジションピース3の周方向D2に沿って並ぶと共に鉛直方向D1に貫通する複数の貫通孔(不図示)を有する。トランジションピース3のフランジ部の各貫通孔、及びタワー4のフランジ部4cの各貫通孔にボルトが挿通され当該ボルトがナットで締め付けられることにより、トランジションピース3にタワー4が接合される。
【0041】
図6は、トランジションピース3の内部構造を示す分解斜視図である。図6に示されるように、トランジションピース3は、水平方向に延在する部位を有するプラットフォーム3cを備える。プラットフォーム3cは、前述した外部プラットフォーム10と、複数のケーブルがまとめられるケーブルターミネーションプラットフォーム20と、鉛直上方への空気の流入を遮断するエアタイトプラットフォーム30と、基礎2が接合される接合部40Aの上側に位置する下部プラットフォーム40とを備える。トランジションピース3の内部には梯子3xが設けられており、梯子3xを用いて外部プラットフォーム10からケーブルターミネーションプラットフォーム20、エアタイトプラットフォーム30及び下部プラットフォーム40に降りることが可能である。
【0042】
ケーブルターミネーションプラットフォーム20は、外部プラットフォーム10の下方且つエアタイトプラットフォーム30の上方に設けられる。ケーブルターミネーションプラットフォーム20は、水中Wからのケーブルがタワー4のケーブルに接続されるプラットフォームである。
【0043】
エアタイトプラットフォーム30は、ケーブルターミネーションプラットフォーム20の下方且つ下部プラットフォーム40の上方に設けられる。エアタイトプラットフォーム30は、トランジションピース3の上部と下部との空気流通を遮断するプラットフォームである。エアタイトプラットフォーム30は、海水からの空気を遮断する機能を有する。
【0044】
エアタイトプラットフォーム30は、例えば、炭素鋼で構成されており、錆が生じないように塗装されている。このエアタイトプラットフォーム30が海水からの空気を遮断することにより、エアタイトプラットフォーム30より上方におけるトランジションピース3の内部空間を腐食しにくい(錆等が生じにくい)環境とすることが可能である。
【0045】
下部プラットフォーム40は、例えば、基礎2にトランジションピース3を設置する作業が行われるプラットフォームである。一例として、下部プラットフォーム40では、基礎2の上部2dとトランジションピース3の下部3fとの間(接合部40A)にグラウトが充填され、当該グラウトが硬化することによって基礎2にトランジションピース3をグラウト接合させる作業が行われる。例えば、トランジションピース3の下部プラットフォーム40より下方の部位が基礎2に接合される接合部40Aに相当する。
【0046】
図7は、トランジションピース3の下端を拡大した斜視図である。図6及び図7に示されるように、トランジションピース3は、トランジションピース3の下端において柱状部分3bの径方向外側に突出する下フランジ3yと、下フランジ3yの下面に取り付けられたずれ矯正ジャッキ90とを有する。
【0047】
ずれ矯正ジャッキ90は、柱状部分3bの径方向に沿って伸縮し、柱状部分3bの径方向内側に位置する基礎2の外面に当接することによって基礎2に対するトランジションピース3の水平度(鉛直方向D1に対するトランジションピース3の傾き)を調整する。例えば、トランジションピース3は複数(一例として6つ)のずれ矯正ジャッキ90を備える。複数のずれ矯正ジャッキ90は柱状部分3bの周方向D2に沿って並ぶように配置されていてもよい。この場合、複数のずれ矯正ジャッキ90が基礎2に対して径方向に移動することにより、鉛直方向D1に対するトランジションピース3の傾き(トランジションピース3の鉛直度)を微調整することができる。
【0048】
図8は、下部プラットフォーム40を示す斜視図である。図9は、下部プラットフォーム40と基礎2を模式的に示す断面図である。図8及び図9に示されるように、下部プラットフォーム40は、鉛直方向D1に貫通する孔部40bが形成された環状を呈する。例えば、下部プラットフォーム40の直下に基礎2の環状の上端面2fが位置する。
【0049】
下部プラットフォーム40は、孔部40bから上方に延びる第1手摺41と、平面視における下部プラットフォーム40の外縁を構成する第2手摺42と、平面視における第1手摺41及び第2手摺42の間に位置する環状の床部43とを有する。更に、下部プラットフォーム40は、基礎2に対するトランジションピース3の傾斜及び高さを調整する複数の高さ調整装置50を備える。
【0050】
複数の高さ調整装置50は、基礎2に設置されるトランジションピース3の鉛直度を確保するために設けられる。高さ調整装置50は、鉛直方向D1に対するトランジションピース3の傾きを減少するセントラライザーとも称される。複数の高さ調整装置50は下部プラットフォーム40の周方向D2に沿って並ぶように配置されている。
【0051】
高さ調整装置50は鉛直下方を向く下面50bを有し、基礎2にトランジションピース3が載せられたときには下面50bに基礎2の上端面2fが当接する。しかしながら、基礎2が傾いていたり、複数の高さ調整装置50の下面50bの高さに公差があったりする場合には、上端面2fから複数の高さ調整装置50の下面50bのいずれかが浮く可能性があり、トランジションピース3が不安定になるという問題が生じうる。
【0052】
本実施形態に係る高さ調整方法及び後述する高さ調整構造100では、複数の高さ調整装置50が後述する1つ以上の第1高さ調整装置60及び3つの第2高さ調整装置70を含み、第2高さ調整装置70の下面50bの高さが第1高さ調整装置60の下面50bの高さよりも低いことにより、トランジションピース3を安定させて上記の問題の発生を抑制することが可能である。以下では、本実施形態に係る高さ調整構造100について説明する。
【0053】
高さ調整構造100は、1つ以上の第1高さ調整装置60と、3つの第2高さ調整装置70とを備え、1つ以上の第1高さ調整装置60、及び3つの第2高さ調整装置70は、下部プラットフォーム40において周方向D2に沿って並ぶように設置される。本実施形態では、3つの第1高さ調整装置60と3つの第2高さ調整装置70が周方向D2に沿って並ぶように設置される。例えば、周方向D2に沿って第1高さ調整装置60及び第2高さ調整装置70が交互に配置される。
【0054】
図10は、第1高さ調整装置60を示す斜視図である。図11は、第1高さ調整装置60を図10とは異なる方向から見た斜視図である。図10及び図11に示されるように、第1高さ調整装置60は、鉛直下方に延びるブラケット51と、鉛直方向D1に沿って移動可能な当接部材52と、当接部材52を鉛直方向D1に移動させるジャッキ53と、当接部材52の高さを固定する高さ固定手段54とを備える。
【0055】
ブラケット51は、一対の側部51bと、一対の側部51bを互いに接続する接続部51cと、一対の側部51bを互いに接続すると共にジャッキ53及び高さ固定手段54が設置される設置部51zとを備える。第1高さ調整装置60は、一対の側部51bが周方向D2に沿って並ぶように配置される。
【0056】
例えば、側部51bは、鉛直方向D1、及び下部プラットフォーム40の径方向D3に延在する板状を呈する。一例として、側部51bは、下部プラットフォーム40の床部43に固定される固定部51dと、固定部51dの斜め上部において径方向D3の外側に突出する突出部51fとを含む。
【0057】
一例として、固定部51dは、周方向D2に沿って並ぶ一対の主面51jを有する。固定部51dは、径方向D3に沿って延在する底面51gと、底面51gの径方向D3の内側から上方に延びる第1端面51hと、底面51gの径方向D3の外側から斜め上方に延びる第2端面51kとを有する。更に、固定部51dは、第1端面51hの上端から径方向D3の外側に斜め上方に延びる第3端面51mと、第2端面51kから上方に延びる第4端面51pとを有する。
【0058】
突出部51fは、第3端面51mの上端、及び第4端面51pの上端から径方向D3の外側に突出する板状の部位である。突出部51fは、周方向D2に沿って並ぶ一対の主面51qと、第4端面51pの上端から径方向D3の外側に延びる下面50bと、第3端面51mの上端から径方向D3の外側に延びる上面51sとを有する。更に、突出部51fは、下面50bの径方向D3の外側、及び上面51sの径方向D3の外側の間において鉛直方向D1に延びる第5端面51tを有する。
【0059】
上面51sは、第3端面51mの上端から径方向D3の外側に延びる平坦面51vと、平坦面51vの第3端面51mとは反対側の端部から斜め上方に延びる湾曲面51wとを含む。下面50bは、第4端面51pの上端から径方向D3の外側に延びる平坦面51xと、平坦面51xの第4端面51pとは反対側の端部から斜め下方に延びる湾曲面51yとを含む。下面50bは、基礎2の上端面2fが対向、又は基礎2の上端面2fが当接する部位である。例えば、基礎2にトランジションピース3が載せられるときに、下面50bの平坦面51xが基礎2の上端面2fに対向(又は当接)する。
【0060】
接続部51cは、周方向D2に沿って並ぶ一対の側部51bの間において周方向D2に延在する。例えば、接続部51cは鉛直方向D1に厚みを有すると共に周方向D2に沿って延びる長辺を有する板状を呈する。接続部51cは、一対の側部51bの主面51jの間において周方向D2に延在する。
【0061】
設置部51zは、周方向D2に沿って並ぶ一対の突出部51fの間において周方向D2に延在する。例えば、設置部51zは周方向D2に沿って延びる長辺を有する直方体状を呈する。設置部51zは、一対の突出部51fの主面51qの間において周方向D2に延在する。以上、ブラケット51の形状等の例について説明した。しかしながら、ブラケットの形状等は上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0062】
ジャッキ53は、例えば、設置部51zの下面にボルトナット接合によって固定されている。ジャッキ53は、例えば、油圧ジャッキである。当接部材52は、ジャッキ53の下端に固定されており、ジャッキ53の伸縮に伴って鉛直方向D1に沿って移動する。当接部材52は、例えば、板状を呈する。
【0063】
当接部材52は、ジャッキ53が固定された上面52bと、基礎2の上端面2fに当接する下面52cと、径方向D3の内側を向く第1端面52dと、径方向D3の外側を向く第2端面52fと、ブラケット51の各主面51qに対向する一対の第3端面52gとを有する。例えば、上面52b、下面52c、第2端面52f及び各第3端面52gは平坦面である。第1端面52dは、例えば、周方向D2の中央を含む領域において径方向D3の内側に突出する突出部52hを有する。上面52bには、高さ固定手段54の一部が固定されている。
【0064】
高さ固定手段54は、ブラケット51(設置部51z)に対して上下移動するボルト54bと、設置部51zの下面においてボルト54bに締結される第1ナット54cと、設置部51zの上面においてボルト54bに締結される第2ナット54dと、設置部51zの上面及び第2ナット54dの間に介在するワッシャ54fとを有する。更に、高さ固定手段54は、当接部材52の上面52bに固定されると共に上方からボルト54bが当接する当接部54gを有する。
【0065】
設置部51zはボルト54bが挿通される貫通孔を有し、当該貫通孔においてボルト54bは鉛直方向D1に沿って延在する。ボルト54bは、例えば、六角ボルトであり、ボルト54bの頭部54hは上方を向いている。ボルト54bは、設置部51zの上部に位置する第2ナット54d、及び設置部51zの下部に位置する第1ナット54cに締結される。
【0066】
当接部54gは、ボルト54bの下方に設けられる。第1ナット54c及び第2ナット54dに対するボルト54bのねじ込み度合を調整することによって、当接部54gにボルト54bの下端を当接させることが可能である。当接部54gにボルト54bが当接した状態では、ブラケット51に対する当接部材52の高さが固定された状態となる。以上の高さ固定手段54は、例えば、周方向D2に沿って並ぶように2つ設けられる。周方向D2に沿って並ぶ2つの高さ固定手段54を備えることより、より確実に当接部材52の高さを固定させることが可能である。
【0067】
以上、第1高さ調整装置60の各部材の構成の具体例について説明した。しかしながら、第1高さ調整装置60の各部材の構成は上記の例に限られず適宜変更可能である。第2高さ調整装置70の各部材の構成は、例えば、第1高さ調整装置60の各部材の構成と同様である。従って、第2高さ調整装置70について、第1高さ調整装置60と重複する内容の説明を省略する。また、第1高さ調整装置60及び第2高さ調整装置70を識別する必要がないときには、第1高さ調整装置60及び第2高さ調整装置70をまとめて高さ調整装置50と称することがある。
【0068】
図12に示されるように、第2高さ調整装置70の下面50bの高さは第1高さ調整装置60の下面50bの高さよりも低い。従って、最初に基礎2にトランジションピース3を載せたときに、第2高さ調整装置70の下面50bには基礎2の上端面2fが接触するが、第1高さ調整装置60の下面50bには基礎2の上端面2fは接触しない。
【0069】
図13は、平面視における高さ調整装置50(第1高さ調整装置60及び第2高さ調整装置70)の配置を模式的に示す図である。図12及び図13に示されるように、第1高さ調整装置60及び第2高さ調整装置70は、例えば、周方向D2に沿って交互に配置される。
【0070】
例えば、高さ調整構造100は、3つの第1高さ調整装置60及び3つの第2高さ調整装置70を備える。各第2高さ調整装置70の下端は、3つの第1高さ調整装置60の下端を含む仮想水平面Sよりも下方に位置する。一例として、各第2高さ調整装置70の下端の高さは、仮想水平面Sの高さよりも10cm程度低い。
【0071】
3つの第2高さ調整装置70は、平面視においてトランジションピース3の重心Gが3つの第2高さ調整装置70を結ぶ仮想の三角形Tの内部に入る位置に配置される。3つの第2高さ調整装置70は、三角形Tが鋭角三角形又は直角三角形となる位置に配置されてもよい。この場合、基礎2にトランジションピース3が載せられたときに、基礎2の上端面2fに3つの第2高さ調整装置70の3点の下面50bが当接するので、トランジションピース3を安定して基礎2に載せることが可能となる。
【0072】
次に、基礎2にトランジションピース3を設置するときにトランジションピース3の高さを調整する本実施形態の高さ調整方法について説明する。まず、1つ以上の第1高さ調整装置60、及び3つの第2高さ調整装置70を周方向D2に沿うように設置する(高さ調整装置を設置する工程)。
【0073】
例えば、第1高さ調整装置60及び第2高さ調整装置70が周方向D2に沿って交互に並ぶように3つの第1高さ調整装置60及び3つの第2高さ調整装置70を設置する。次に、3つの第2高さ調整装置70に下から基礎2を当接させる(基礎を当接させる工程)。このとき、3つの第2高さ調整装置70のそれぞれのブラケット51の下面50bに基礎2の上端面2fが当接するように、基礎2にトランジションピース3を載置する。なお、この時点では、各第1高さ調整装置60の下面50bには基礎2の上端面2fが当接しておらず、第1高さ調整装置60の下面50bに基礎2の上端面2fが対向している。
【0074】
その後、第1高さ調整装置60及び第2高さ調整装置70を基礎2に当接させてトランジションピース3の傾斜を調整する(トランジションピースの傾斜を調整する工程)。具体的には、第1高さ調整装置60の当接部材52、及び第2高さ調整装置70の当接部材52を鉛直下方に下げて、各当接部材52を基礎2の上端面2fに当接させることによって基礎2に対するトランジションピース3の傾斜を調整する。このとき、トランジションピース3が鉛直方向D1に沿って延びるようにトランジションピース3の傾斜が調整される。
【0075】
トランジションピース3の傾斜が調整された後には、高さ固定手段54により各当接部材52の高さを固定する(当接部材の高さを固定する工程)。具体的には、高さ固定手段54のボルト54bを下ろしてボルト54bを当接部54gに当接させた状態で第1ナット54c及び第2ナット54dをボルト54bに締結することにより、強固に当接部材52の高さを固定する。以上の工程を経て一連の工程が完了する。
【0076】
次に、本実施形態に係る高さ調整方法及び高さ調整構造100から得られる作用効果について説明する。本実施形態に係る高さ調整方法では、トランジションピース3の高さ及び傾斜が4つ以上の高さ調整装置50を用いて調整される。4つ以上の高さ調整装置50を用いて高さ及び傾斜が調整されることにより、トランジションピース3の高さ及び傾斜を高精度に調整することができる。
【0077】
4つ以上の高さ調整装置50は、基礎2が当接する第1高さ調整装置60と、第1高さ調整装置60よりも低い位置で基礎2が当接する第2高さ調整装置70とを含んでいる。トランジションピース3のプラットフォーム3c(下部プラットフォーム40)の周方向D2に沿って並ぶように1つ以上の第1高さ調整装置60、及び3つの第2高さ調整装置70が設置され、3つの第2高さ調整装置70に下から基礎2が当接する。その後、第1高さ調整装置60及び第2高さ調整装置70が基礎2に当接してトランジションピース3の傾斜が調整される。
【0078】
よって、傾斜の調整の前に、プラットフォーム3cの周方向D2に沿って並ぶ3つの第2高さ調整装置70に基礎を当接させることができるので、3点支持によってトランジションピース3を安定して基礎2に載せることができる。そして、トランジションピース3が安定して基礎2に載せられた状態でトランジションピース3の傾斜が調整されるので、基礎2にトランジションピース3を安定して設置して傾斜の調整を安定した状態で行うことができる。
【0079】
本実施形態において、第1高さ調整装置60及び第2高さ調整装置70のそれぞれは、鉛直下方に延びるブラケット51を有する。基礎2を当接させる工程では、3つの第2高さ調整装置70のそれぞれのブラケット51の下面50bに基礎2が当接する。よって、第1高さ調整装置60及び第2高さ調整装置70のそれぞれのブラケット51を基礎2が当接する部分として有効利用できる。
【0080】
また、第1高さ調整装置60及び第2高さ調整装置70がジャッキ53を有する場合に、ジャッキ53よりも先にブラケット51の下面50bに基礎2を当接させることができるので、トランジションピース3を基礎2に載せるときにおけるジャッキ53への負荷を軽減させることができる。
【0081】
本実施形態において、高さ調整装置50を設置する工程では、トランジションピース3の周方向D2に沿って並ぶように3つ以上の第1高さ調整装置60、及び3つの第2高さ調整装置70を設置する。この場合、トランジションピース3の周方向D2に沿って、3つ以上の第1高さ調整装置60、及び3つの第2高さ調整装置70が設置されるので、合計6つ以上の高さ調整装置50を用いてトランジションピース3の高さ及び傾斜を一層高精度に調整できる。
【0082】
第1高さ調整装置60及び第2高さ調整装置70のそれぞれは、鉛直方向D1に移動可能な当接部材52を有してもよい。傾斜を調整する工程では、第1高さ調整装置60の当接部材52、及び第2高さ調整装置70の当接部材52を基礎2に当接させてトランジションピース3の傾斜を調整してもよい。この場合、鉛直方向D1に移動可能な複数の当接部材52によってトランジションピース3の傾斜が調整されるので、トランジションピース3の高さ及び傾斜を一層高精度に調整できる。
【0083】
本実施形態において、第1高さ調整装置60及び第2高さ調整装置70のそれぞれは、当接部材52を鉛直方向D1に移動させるジャッキ53と、当接部材52の高さを固定する高さ固定手段54とを有する。本実施形態に係る高さ調整方法は、トランジションピース3の傾斜を調整する工程の後に、高さ固定手段54により、第1高さ調整装置60及び第2高さ調整装置70のそれぞれの当接部材52の高さを固定する工程を更に備える。従って、基礎2に当接部材52を当接させてトランジションピース3の傾斜を調整した後に、高さ固定手段54によって基礎2に当接している当接部材52の高さが固定される。よって、基礎2に当接する当接部材52の高さを高さ固定手段54によって固定できるので、当接部材52を鉛直方向D1に移動させるジャッキ53に万が一不具合が生じた場合であっても、当接部材52の高さが変わってしまうことを抑制できる。従って、トランジションピース3が安定した状態をより確実に維持することができる。
【0084】
本実施形態に係る高さ調整構造100は4つ以上の高さ調整装置50を備え、4つ以上の高さ調整装置50は1つ以上の第1高さ調整装置60と3つの第2高さ調整装置70とを含む。4つ以上の高さ調整装置50によってトランジションピース3の高さ及び傾斜が調整されるので、トランジションピース3の高さ及び傾斜の調整を高精度に行うことができる。
【0085】
第1高さ調整装置60は基礎2に対向するブラケット51を備え、第2高さ調整装置70は基礎2に当接するブラケット51を備える。トランジションピース3のプラットフォーム3cの周方向D2に沿って並ぶように1つ以上の第1高さ調整装置60及び3つの第2高さ調整装置70が設置され、第2高さ調整装置70のブラケット51の下面50bの高さは第1高さ調整装置60のブラケット51の下面50bの高さよりも低い。よって、プラットフォーム3cの周方向D2に沿って並ぶ3つの第2高さ調整装置70のブラケット51の下面50bに基礎2を当接させることができるので、前述した高さ調整方法と同様、3点支持によってトランジションピース3を安定して基礎2に載せることができる。従って、基礎2にトランジションピース3を安定して設置してトランジションピース3の傾斜の調整を安定した状態で行うことができる。
【0086】
以上、本開示に係る高さ調整方法及び高さ調整構造の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る高さ調整方法及び高さ調整構造は、前述した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更されたものであってもよい。すなわち、高さ調整方法の工程の内容及び順序、並びに、高さ調整構造の各部の構成、形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、前述の実施形態に限られず適宜変更可能である。
【0087】
例えば、前述の実施形態では、3つの第1高さ調整装置60、及び3つの第2高さ調整装置70を備える高さ調整構造100について説明した。しかしながら、前述したように、例えば第1高さ調整装置60の数は適宜変更可能である。図14(a)に示されるように、1つの第1高さ調整装置60と3つの第2高さ調整装置70とを備えた高さ調整構造100Aであってもよい。また、図14(b)に示されるように、9つの第1高さ調整装置60と3つの第2高さ調整装置70とを備えた高さ調整構造100Bであってもよい。図14(b)の例では、周方向D2に互いに隣り合う2つの第2高さ調整装置70の間に3つの第1高さ調整装置60が配置されている。しかしながら、第1高さ調整装置60の配置についても上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0088】
前述の実施形態では、トランジションピース3のずれ矯正ジャッキ90について説明した。以下では、図15(a)及び図15(b)を参照しながら矯正ジャッキ90の具体例について説明する。図15(a)及び図15(b)に示されるように、矯正ジャッキ90は、ジャッキ本体91と、ジャッキ本体91を固定する固定構造92とを備える。
【0089】
ジャッキ本体91は、トランジションピース3の径方向D4に沿って伸縮し、トランジションピース3の径方向D4の内側に位置する基礎2の外面に当接することによって基礎2に対するトランジションピース3の水平度(鉛直方向D1に対するトランジションピース3の傾き)を調整する。ジャッキ本体91は、例えば、トランジションピース3の径方向D4に沿って延びる円柱状を呈する。
【0090】
固定構造92は、トランジションピース3の周方向D5に沿って並ぶと共にジャッキ本体91を挟むように配置される一対の外壁部93と、一対の外壁部93の間で径方向D4に沿って並ぶ第1プレート94及び第2プレート96とを有する。固定構造92は、更に、ジャッキ本体91が載せられる台部98と、台部98に載せられたジャッキ本体91を固定する固定部材95とを有する。
【0091】
外壁部93は、例えば、鉛直方向D1及び径方向D4及び板状を呈する。第1プレート94は、第2プレート96よりもトランジションピース3の径方向D4の外側に位置する。第1プレート94及び第2プレート96は、鉛直方向D1及び周方向D5に延在している。第1プレート94はジャッキ本体91が通される貫通孔94bを有し、貫通孔94bは第1プレート94を径方向D4に貫通している。本実施形態では、貫通孔94bの直径は、後述するネジ孔96bの直径より大きく、且つ後述する凹部98bの直径より大きい。従って、貫通孔94bへのジャッキ本体91の挿通を容易に行うことができる。
【0092】
台部98は、ジャッキ本体91の外周に沿って窪む凹部98bを有する。一例として、ジャッキ本体91は円筒状を呈しており、凹部98bは円弧状に窪んでいる。固定部材95は、ジャッキ本体91の外周面に沿ってジャッキ本体91の周方向D6に延在するクランプ部95bと、クランプ部95bの周方向D6の端部を台部98に固定するボルト95cと、ボルト95cとクランプ部95bの間に介在するワッシャ95dとを有する。
【0093】
ボルト95c及びワッシャ95dは、クランプ部95bの周方向D6の両端のそれぞれに設けられる。クランプ部95bの両端のそれぞれには孔部が形成されており、当該孔部にボルト95cが通されて台部98にねじ込まれる。これにより、固定部材95によってジャッキ本体91を強固に台部98に固定できる。
【0094】
図15(a)、図15(b)、図16(a)及び図16(b)に示されるように、第2プレート96は、第1プレート94に通されたジャッキ本体91がねじ込まれるネジ孔96bを有する。ジャッキ本体91は外周面にネジ部91bを有し、ネジ部91bはネジ孔96bにねじ込まれる。前述した台部98の凹部98bの上面、及びネジ孔96bを画成する内周面は水平方向に延在している。よって、凹部98bに載せられてネジ孔96bにねじ込まれたジャッキ本体91は、水平方向に延在する。以上、矯正ジャッキ90では、水平方向に延在する状態でジャッキ本体91を固定構造92によって固定することができる。更に、固定構造92に対するジャッキ本体91の取り付けを容易に行うことができると共に、ジャッキ本体91の位置及び向きを安定させることができる。
【0095】
前述の実施形態では、図10及び図11に示されるように、ブラケット51、当接部材52、ジャッキ53及び高さ固定手段54を備える高さ調整装置50について説明した。ブラケット51、当接部材52、ジャッキ53及び高さ固定手段54の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、前述した高さ調整装置50に限られず適宜変更可能である。例えば、高さ固定手段54については省略することも可能である。
【0096】
前述の実施形態では、先に第2高さ調整装置70の下面50bに基礎2の上端面2fが当接し、その後、当接部材52が上端面2fに当接する例について説明した。しかしながら、最初に第2高さ調整装置70の当接部材52が基礎2の上端面2fに当接するようにしてもよく、基礎2の上端面2fが当接する部分の構成は適宜変更可能である。
【0097】
前述の実施形態では、着船設備3g、梯子3h、電線配管3k及びグラウト配管3mを有するトランジションピース3について説明した。しかしながら、トランジションピースの構成要素については、トランジションピース3の前述した例に限られず適宜変更可能である。トランジションピース3のプラットフォーム3cの構造についても適宜変更可能である。
【0098】
前述の実施形態では、基礎2、トランジションピース3、タワー4、ナセル5及びブレード6を備える風力発電機1のトランジションピース3について説明した。しかしながら、基礎、トランジションピース、タワー、ナセル及びブレードの構成は、前述した実施形態に限られず適宜変更可能である。更に、本開示に係る高さ調整方法及び高さ調整構造は、風力発電機1のトランジションピース3以外の構造物にも適用可能である。本開示に係る高さ調整方法及び高さ調整装置は、例えば、石油プラットフォーム等の他の洋上構造物、又は洋上構造物以外の構造物にも適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1…風力発電機、2…基礎、2b…孔部、2f…上端面、3…トランジションピース、3b…柱状部分、3c…プラットフォーム、3g…着船設備、3h…梯子、3j…レストプラットフォーム、3k…電線配管、3m…グラウト配管、3p…ポール、3q…接合部材、3r…電極、3x…梯子、3y…下フランジ、4…タワー、4b…開口、4c…フランジ部、5…ナセル、6…ブレード、7…洗掘防止工、10…外部プラットフォーム、10b…クレーン、10c…電源装置、10d…階段、20…ケーブルターミネーションプラットフォーム、30…エアタイトプラットフォーム、40…下部プラットフォーム、40A…接合部、40b…孔部、41…第1手摺、42…第2手摺、43…床部、50…調整装置、50b…下面、51…ブラケット、51b…側部、51c…接続部、51d…固定部、51f…突出部、51g…底面、51h…第1端面、51j…主面、51k…第2端面、51m…第3端面、51p…第4端面、51q…主面、51s…上面、51t…第5端面、51v…平坦面、51w…湾曲面、51x…平坦面、51y…湾曲面、51z…設置部、52…当接部材、52b…上面、52c…下面、52d…第1端面、52f…第2端面、52g…第3端面、52h…突出部、53…ジャッキ、54…高さ固定手段、54b…ボルト、54c…第1ナット、54d…第2ナット、54f…ワッシャ、54g…当接部、54h…頭部、60…第1高さ調整装置、70…第2高さ調整装置、90…ずれ矯正ジャッキ、91…ジャッキ本体、92…固定構造、93…外壁部、94…第1プレート、94b…貫通孔、95…固定部材、95b…クランプ部、95c…ボルト、95d…ワッシャ、96…第2プレート、96b…ネジ孔、98…台部、98b…凹部、100,100A,100B…高さ調整構造、B…海底、D1…鉛直方向、D2…周方向、D3…径方向、G…重心、S…仮想水平面、T…三角形、W…水中。

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