(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】タイミングに敏感な回路のための磁界パルス電流検知
(51)【国際特許分類】
G01R 19/175 20060101AFI20241216BHJP
G01R 15/18 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G01R19/175
G01R15/18 A
(21)【出願番号】P 2021524209
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(86)【国際出願番号】 US2019059780
(87)【国際公開番号】W WO2020097019
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-08-10
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-21
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521085021
【氏名又は名称】エフィシェント・パワー・コンバージョン・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エス・グレイザー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エー・デ・ローイ
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】濱本 禎広
【審判官】貝沼 憲司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0032113号明細書(US,A1)
【文献】特開平8-29458号公報(JP,A)
【文献】特開平5-60802号公報(JP,A)
【文献】特開昭60-179665号公報(JP,A)
【文献】国際公開第2007/075617号(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0074929号明細書(US,A1)
【文献】特開昭56-19462号公報(JP,A)
【文献】特開昭54-12436号公報(JP,A)
【文献】米国特許第4339712号明細書(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00-19/32
G01R 15/00-15/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流導体を通過する電流パルスの特性を測定するための電流測定回路であって、
前記電流導体の周りの磁界
の時間についての導関数に比例した電圧V
SENSE'を発生させるためのピックアップコイルであって、前記磁界が、前記電流導体を通る電
流に比例している、ピックアップコイルと、
前記ピックアップコイルに接続された2つのリード線と、
前記2つのリード線を介して前記ピックアップコイルに接続された、増幅されたV
SENSE'を発生させるようにV
SENSE'を増幅するための増幅器と、
前記増幅されたV
SENSE'を基準しきい値電圧と比較し、前記比較に基づいて出力信号を生成するための、少なくとも1つのしきい値交差検出器であって、前記出力信号が、前記電流パルスのピーク振幅時間(t
MAX)
と、V
SENSE
'の勾配が正であるかそれとも負であるかとを示す、少なくとも1つのしきい値交差検出器と、
電圧出力の導関数を計算するための回路を使用することなく、V
SENSE'を経時的に積分し、前記積分された電圧に基づいて積分信号V
SENSEを生成するための積分器と、
前記電流パルスの前記ピーク振幅時間(t
MAX)におけるV
SENSEをサンプリングし、前記電流パルスの測定に使用することができる第2の出力信号を生成するためのサンプルホールド回路と
を備える、電流測定回路。
【請求項2】
前記
基準しきい値電圧がグランドである、請求項1に記載の電流測定回路。
【請求項3】
前記ピックアップコイルが、前記電流導体の付近に配置されるように構成された単一のループを備える、請求項1に記載の電流測定回路。
【請求項4】
前記ピックアップコイルが、前記電流導体を取り囲まないように構成されている、請求項1に記載の電流測定回路。
【請求項5】
前記ピックアップコイルがロゴスキー型コイルを備える、請求項1に記載の電流測定回路。
【請求項6】
単一の半導体チップ上に集積されている、請求項1に記載の電流測定回路。
【請求項7】
前記単一の半導体チップが前記電流導体をさらに備える、請求項
6に記載の電流測定回路。
【請求項8】
前記少なくとも1つのしきい値交差検出器と前記ピックアップコイルの第1の部分とが、半導体チップ上に集積されており、前記ピックアップコイルの第2の部分が、少なくとも2つのダイ端子および外部導体によって形成されている、請求項1に記載の電流測定回路。
【請求項9】
前記外部導体が実装基板の一部をなす、請求項
8に記載の電流測定回路。
【請求項10】
前記実装基板が、前記電流導体の一部分をさらに備える、請求項
9に記載の電流測定回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、磁界検知に基づく電流測定回路に関し、より詳細には、電流パルスの開始時間および終了時間を特定するための電流測定回路に関する。
【背景技術】
【0002】
パルス電流ジェネレータの多くの応用では、出力電流パルスが、精密な開始時間および終了時間、ならびに最大または最小の電流値など、特定の仕様を満足させなければならない。例えば、自律車両用の飛行時間(ToF)式光検出測距(ライダ)システムでは、パルス電流ジェネレータがレーザドライバとして働く。レーザパルスの送信とその反射の検出との間の時間遅延を使用して、レーザと環境内の物体との間の距離を特定することが可能である。光の速度は1ナノ秒(ns)あたり30センチメートル(cm)であるので、距離測定分解能要件が厳しいとき、短レーザパルスは有利である。一例として、センチメートル規模の分解能の場合、レーザパルス幅はしばしば、数nsから数十ns程度であり、近くの物体からの反射の時間遅延は、わずか数nsであり得る。
【0003】
したがって、ToF式ライダシステムは、レーザパルス幅、およびレーザパルスの送信とその反射の検出との間の時間遅延を正確に特定するために、レーザパルスの開始時間および終了時間を1ns以下で、しばしば100ピコ秒(ps)以下という精密さで、精密に特定できなければならない。ToF式ライダシステムの性能は、レーザパルスの振幅によっても影響を受け、パルス振幅が増大するにつれて、ますます長い距離を移動した後のその反射が検出可能になる。しかし、レーザパルスの最大振幅は、眼の安全性に関する規制を順守しなければならず、レーザドライバは、それに応じて電流パルスのピーク振幅を制限しなければならない。したがって、レーザパルスを安全性上の考慮事項を満足する最大振幅で送信することが有利である。
【0004】
多くのパルス電流ジェネレータは、出力電流パルスを測定して適切な調整を行うためのフィードバックシステムを含んでいる。これらのフィードバックシステムは、電流測定回路と、パルス電流ジェネレータ用のコントローラとを含む。電流測定回路は、測定されている電流に比例した信号を、典型的には電圧の形態で生成する。この信号から、電流パルスの開始時間および終了時間、ならびに電流パルスのピーク振幅を特定することが可能であり、それらをコントローラが使用して、電流パルスジェネレータのパラメータを調整する。しかし、出力電流パルスは、一部の応用では数十から数百アンペア(A)程度となることがあり、そのことが電流検知をより複雑にしている。前述のnsパルスなどの極短パルスが要求される場合、電流検知回路の寄生効果は、ドライバの動作にとって有害となる場合がある。
【0005】
図1は、シャント抵抗器120を用いた従来の電流測定回路100の概略図を示す。パルスジェネレータ110が電流パルスI
PULSEを出力し、それがシャント抵抗器120を通って負荷130に供給される。シャント抵抗値R
SHUNTが与えられると、オームの法則に従って電圧V
SHUNTが発生する。シャント抵抗器がパルスジェネレータに及ぼす影響を低減させるために、R
SHUNTは通常は、ミリオーム(mΩ)程度の非常に小さいものである。この結果、V
SHUNTの値は小さく、したがってしばしば、差動増幅器140がシャント抵抗器120の端子に接続され、増幅された電圧V
SENSEを出力し、これはI
PULSEに比例している。一部の応用では、短パルスにより、増幅器140に高帯域幅などの厳しい要求が課される。
【0006】
mΩ値のRSHUNTをもってしても、非常に大きな振幅の電流パルスはシャント抵抗器120に大量の電力を熱として損失させ、そのため、回路上の他のコンポーネントに損傷が及ぶか、またはシステムの電源もしくはバッテリが不必要に酷使されることがある。さらに、シャント抵抗器120は、昇温すると熱ドリフトを受けて、その抵抗値およびVSENSEが変化し、それによって、電流パルスの開始時間および終了時間ならびにピーク振幅を精密に特定するために、計算コストの高い補償が必要になることがある。シャント抵抗器120はIPULSEを直接測定するが、それはシャント抵抗器120が、主ドライバ信号チェーン内に配置され、不利なことには、主ドライバ回路のインダクタンスを増加させる、ということを意味する。
【0007】
一部の電流測定回路では、シャント電流測定に付随する電力損失およびインダクタンスの増加を、結果として生じる磁気誘導または磁束密度を通じて電流パルスを間接的に測定することによって回避している。導体を通る電流によって誘起される磁束密度は、数ある中でも、ホール効果センサ、フラックスゲートセンサ、マグネトレジスタ、またはジャイアントマグネトレジスタによって測定され得る。
図2A~
図2Bは、電流パルスI
PULSEを伝導する電流導体210に対するホールセンサ220の配置、およびホールセンサ220を用いた従来の電流測定回路200の概略図を示す。
図2Aでは、ホールセンサ220は、I
PULSEによって引き起こされる電流導体210の周りの磁束密度の変化がホールセンサ220によって検出されるように、導体210の付近に配置されている。
【0008】
図2Bでは、ホールセンサ220が電圧を高利得増幅器240に出力している。高利得増幅器は、ホールセンサ220からの小さな出力電圧をより大きな電圧V
SENSEに増幅し、この電圧V
SENSEは、I
PULSEによる導体210の周りの磁束密度に比例している。しかし、ホールセンサ220、および磁束密度に基づく他の電流検知方法は、熱ドリフトを受けるかまたは非線形挙動を呈する、半導体材料に依存する。熱ドリフトと非線形挙動のどちらにも、デバイス特性の変化を再較正および補償し、非線形応答を解析するための能動回路が必要である。さらに、ホールセンサに必要な能動回路の大多数は、
図1に示す差動増幅器140に課される厳しい要件に類似した、特に短パルス応用の場合の高帯域幅という厳しい要件を有する。
【0009】
一部の電流測定回路では、磁気誘導を通じた電流パルスの測定に付随する能動回路要件のいくつかを、その代わりに磁束すなわち磁界の変化の度合いを測定することによって、回避しようと試みている。磁界は、例えば変流器またはロゴスキーコイルによって測定され得る。変流器は、二次巻線が周りに配置された磁心を含む。磁心は、大電流において飽和する場合があり、システムのインダクタンスを増加させ、それによって、他のコンポーネントの動作に影響が及ぶ。高透磁率をもつ一部の磁心は、高飽和磁束密度を有するが、高周波数応答に乏しい。
【0010】
ロゴスキーコイルは磁心を含まず、したがって、飽和の影響を受けず、大きな帯域幅を有することができるが、その他の点では、磁化インダクタンスが小さく、巻線端子にほぼ開回路負荷(approximately open circuit burden)のある変流器とみなすことができる。
図3は、ロゴスキーコイル320を使用した従来の電流測定回路300の概略図を示す。ロゴスキーコイル320は、電流パルスI
PULSEを伝導する導体310の周りに配置され、コイルの一端からのリード線330がコイルの中心を通って他方のリード線340に至る、らせんコイルを備えている。リード線330および340は、積分器350に接続されており、積分器350は、ロゴスキーコイル320の出力を経時的に積分し、I
PULSEに比例した電圧V
SENSEを得る。
【0011】
ロゴスキーコイルと変流器はどちらも、地球からなど、他の磁界の影響を低減させるために、IPULSEを伝導する導体を取り囲む。しかし、導体を取り囲む必要性が、ロゴスキーコイルまたは変流器を含む半導体ダイの構築を困難にしている。特に、変流器は、半導体ダイの大きな面積を占有することがあり、例えば、レーザダイオードとそれらのドライバとが互いに近くに配置され、精密に位置整合されて、レンズなどの光学素子の位置整合が簡単になるようにしているライダシステムにおいては、それが欠点となる。同様に、ロゴスキーコイルをプリント回路板に集積すると、板の複数の層に影響が及び、多数のビアが必要になる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上で論じた電力損失、主要ドライバ回路内のインダクタンスの増加、能動回路、大きな面積、および複雑な構築という欠点に、電流導体を取り囲む必要のないピックアップコイルを備える電流測定回路を提供することによって対処する。より具体的には、本発明は、本明細書において説明するように、ピックアップコイルと、少なくとも1つのしきい値交差検出器(threshold crossing detector)とを備える。ピックアップコイルは、電流導体の周りの磁界に比例した電圧を発生させ、この磁界は、電流導体を通る電流の経時的な変化に比例している。しきい値交差検出器は、磁界に比例した電圧を少なくとも1つのしきい値電圧と比較し、比較に基づいて、選択されたしきい値電圧を基に、電流パルスの遷移時間(例えば開始時間、終了時間、またはピーク振幅時間)と、磁界に比例した電圧の経時的な勾配が正であるか、それとも負であるかとを示す、出力信号を生成する。
【0013】
さらなる一実施形態では、電流測定回路はまた、積分器と、サンプルホールド回路(sample and hold circuit)とを含む。積分器は、磁界に比例した電圧を経時的に積分し、積分電圧に基づいて積分信号を生成し、結果として生じるこの信号は、測定すべき電流に比例している。サンプルホールド回路は、ピーク振幅時間を示す信号によってトリガされる。
【0014】
さらなる実施形態では、ピックアップコイルが、電流導体の付近に配置されるように構成された単一のループであり、単一の半導体チップ上にこれをモノリシックに集積することができる。さらなる一実施形態では、ピックアップコイルが、測定すべき電流から生じる合計磁束をコイル全体を通じて増大させるとともに他の発生源からの合計磁束を低減させるように構成された、1つまたは複数の巻きを有してよい。他の実施形態では、ピックアップコイルの一部分が、半導体チップ上に少なくとも1つのしきい値交差検出器とともに集積されており、ピックアップコイルの一部分が、ダイ端子および外部導体によって形成されている。外部導体は、電流導体を含むプリント回路板などの実装基板の一部をなしてよい。
【0015】
次に、実装のさまざまな新規な詳細および要素の組合せを含む、本明細書において説明する上記および他の好ましい特徴について、添付の図面を参照してより詳細に説明し、特許請求の範囲において明らかにする。具体的な方法および装置は、説明のために示されているにすぎず、特許請求の範囲を限定するものとして示されているのではないことを理解されたい。当業者には理解されるように、本明細書における教示の原理および特徴は、特許請求の範囲に記載の範囲から逸脱することなく、さまざまな多数の実施形態において用いることができる。
【0016】
本開示の特徴、目的、および利点は、下に記載の詳細な説明を、全体を通して同様の参照文字がそれに相応して同一のものとされる図面と併せ読めば、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】シャント抵抗器を用いた従来の電流測定回路の概略図である。
【
図2A】電流導体に対するホールセンサの配置を示す図である。
【
図2B】ホールセンサを用いた従来の電流測定回路の概略図である。
【
図3】ロゴスキーコイルを用いた従来の電流測定回路の概略図である。
【
図4A】
図1~
図3に示す回路など、従来の電流測定回路からの電圧出力であって、同じ概略形状をもつ電流パルスから生じる電圧出力のグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態による電流測定回路を示す図である。
【
図6】ダイ端子とプリント回路板などの実装基板の一部をなしてよい外部導体とによって形成されたピックアップコイルの残りの部分と部分的に集積されている、本発明の一実施形態による電流測定回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な説明では、いくつかの実施形態を参照されたい。これらの実施形態については、当業者がそれらを実施できるようにするのに十分な程度に詳しく説明される。他の実施形態を用いることができること、またさまざまな構造的、論理的、および電気的な変更を加えることができることを、理解されたい。以下の詳細な説明の中で開示する特徴の組合せは、最も広い意味での教示の実施には必要ではないことがあり、この特徴の組合せは、そうではなく、本教示の特に代表的な例について説明するために教示されているにすぎない。
【0019】
図4Aは、
図1~
図3に示す回路など、従来の電流測定回路からの電圧出力のグラフを示し、
図4Bは、従来の電流測定回路からの電圧出力の導関数を示す。グラフ400は、従来の電流測定回路からの経時的な出力電圧V
SENSEを示し、ただしV
SENSEは、検知されている電流パルスI
PULSEに実質的に比例している。電流パルスI
PULSEの開始時間t
STARTおよび終了時間t
ENDを特定するために、一部のシステムでは、V
SENSEを所定のしきい値V
REFと比較し、V
SENSEがV
REFより上に増加したことに応答して開始時間t
START
*を、またV
SENSEがV
REFより下に減少したことに応答して終了時間t
END
*を特定している。グラフ400に示すように、正弦半波V
SENSEは、方形波よりも緩やかな勾配を有しており、t
STARTからある時間期間後またはt
ENDよりある時間期間前でないと、V
REFより上または下に変化することはできない。
【0020】
したがって、不正確なtSTART
*およびtEND
*が、それらを使用した計算、例えばレーザパルスの送信と環境からのその反射の検出との間の時間遅延に基づく距離計算に、誤差を導入する。さらに、tSTART
*およびtEND
*の正確さは、IPULSEの勾配およびピーク振幅に依存し、それによって、IPULSEのピーク振幅の変化を補償するための追加の計算が必要となる。tSTARTおよびtENDを特定するためのこの方法は、VSENSEが方形パルスであるときは許容できる程度に正確となり得るが、VSENSEが正弦半波などの非方形パルスであるときは、要求される1ns以下の正確さを満足させることはできない。
【0021】
IPULSEのtSTARTまたはtENDをより正確にかつ一貫して特定するために、一部のシステムでは、グラフ450に示す、VSENSEの時間についての導関数VSENSE'を計算しており、このVSENSE'には、VSENSEの勾配の変化のため、IPULSEのtSTARTにおいてゼロからの、またIPULSEのtENDにおいてゼロへの、急激な増加がある。次いでそれらのシステムでは、導関数VSENSE'を、別の所定のしきい値VREF2と比較している。IPULSEのtSTARTおよびtENDにおけるVSENSE'の値の劇的な変化が、特定された開始時間tSTART
*および終了時間tEND
*の誤差を低減させ、IPULSEのピーク振幅およびVREF2の選択された値への依存を取り除く。一部のシステムでは、VREF2をゼロに設定しており、それによって、IPULSEがそのピーク振幅に到達する時間tMAXを、システムが特定することも可能になっている。しかし、導関数VSENSE'を計算すると、VSENSEに対するノイズが強調され、しばしば、このノイズを低減させるためのフィルタリングが必要になる。ノイズの導入および追加のフィルタリングステップが、システムをさらに複雑にし、システムの性能および正確さを低下させる。しきい値が交差される時点および交差の勾配の符号を特定するプロセスは、エッジ検出、ゼロ交差検出、およびしきい値交差検出など、さまざまな術語で知られている。それは一般に、比較器とデジタル論理回路との組合せを用いて実現される。そのような回路および方法は一般に、当業者によって認識されている。
【0022】
図5は、本発明の一実施形態による電流測定回路500を示す。ピックアップコイル520が、電流パルスI
PULSEを伝導する導体510の付近に配置されており、それによって、I
PULSEによって誘起された時間変化する磁界をピックアップコイル520が検出するようになっている。リード線524および528には、関心周波数帯域内でコイルインピーダンスよりもずっと大きなインピーダンスが負荷されており、それによって、リード線524および528における電圧が、磁界強度の導関数に比例し、この磁界強度はそれ自体がI
PULSEに比例している。リード線524および528における電圧は、
図4Bのグラフ450に示した導関数V
SENSE'として、任意選択の増幅器530によって増幅されるかまたは直接出力されてよく、この導関数V
SENSE'は、I
PULSEの導関数に比例しており、すなわち
【0023】
【0024】
であり、上式で、Kは、ループの面積、巻き数、またはIPULSEを伝導する導体510に対する巻きの位置など、ピックアップコイル520の特性に依存する定数である。
【0025】
リード線524および528からの、または任意選択の増幅器530の出力からのVSENSE'は、しきい値交差検出器540に供給され、しきい値交差検出器540は、参照電圧VREF2も受領し、出力信号550を生成する。VREF2を適切に設定することによって、導関数を計算するための回路または方法を使用することも、結果として生じるノイズ増幅もなく、出力信号550がtSTART、tEND、またはtMAXを示すことができる。電流測定回路500はまた、tSTARTおよびtENDをデジタル計算すべくVSENSEをサンプリングするための高速アナログ-デジタル変換器に付随する面積、電力消費、およびコンポーネントのコストも回避する。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、積分器560を使用してVSENSE'を積分し、それによってVSENSEを、他の計算、すなわち
【0027】
【0028】
を目的として得ることができる。この例では、VSENSEは、サンプリング回路(sampler)またはサンプルホールド回路570に供給され、サンプリング回路またはサンプルホールド回路570は、(出力550からの)tMAXも受領し、パルス電流の測定に使用することができる出力信号580を生成する。
【0029】
ピックアップコイル520は、磁心を含まず、またロゴスキーコイルとすることができる。非常に大きな振幅のIPULSEの場合、結果として生じる磁界は非常に大きく、より少ない巻きおよびより小さなループ面積、さらには導体510に近接した単一のループでさえもが、磁界を検出するのに十分となり得る。非常に大きなIPULSEの場合の磁界は、IPULSE以外の電流の場合の磁界または周囲磁界よりもずっと大きく、それによって、他の磁界によって導入される誤差は無視することができ、またピックアップコイル520は導体510を取り囲む必要がない。ピックアップコイルの1つまたは複数の巻きは、測定すべき導体510内の電流から生じる合計磁束をコイル全体を通じて最大にするとともに他の発生源からの合計磁束を最小限に抑えるように構成されてよい。ピックアップコイル520が磁心を含まないので、ピックアップコイル520は、大電流において飽和するのでもなければ、磁心の誘電率に基づく帯域幅制限を受けるのでもない。ピックアップコイル520は、ホールセンサやシャント抵抗器などの半導体コンポーネントに付随する熱ドリフトも回避する。
【0030】
ピックアップコイル520は、半導体ダイにモノリシックに集積することができ、というのも、それがロゴスキーコイルよりも小さなループ面積および少ない巻きを有してよく、また導体510を取り囲む必要がないためである。同様に、ピックアップコイル520は、負荷またはバスコンデンサの付近の戦略的な位置に配置することができる。加えて、電流測定回路500は、主ドライバ信号チェーンから分離されており、無視できるほどわずかなインピーダンスしか主ドライバ回路に追加せず、したがって、電流測定回路500は、主ドライバ回路の動作に実質的に影響を及ぼさない。電流測定回路500と主ドライバ回路とを分離すると、電流測定回路500が、ゼロボルト最小供給電圧を有する回路においてさえ正の電流と負の電流をどちらも検知することが可能になり、それによって、VSENSE'のゼロ交差検出が簡単になる。
【0031】
図6は、本発明の一実施形態による、電流測定回路500に類似した電流測定回路の部分600を示す。集積回路ダイ640が、実装基板などの他の基板に、端子650などの端子によって接続されている。集積回路ダイ640は、積分器、しきい値交差検出器、およびサンプルホールド回路など、電流測定回路の残りの部分を含む。部分600は、ダイ端子624および628と実装基板の一部をなしてよい外部導体626とによって形成されたピックアップコイル620の一部を含む。導体626を含む実装基板はまた、電流パルスI
PULSEを伝導する導体610を含んでよい。ピックアップコイル620の端子は、集積回路ダイ640自体内にあってよく、電流測定回路の残りの部分に接続されてよい。
【0032】
上の説明および図面は、本明細書において説明した特徴および利点を達成する特定の実施形態の単なる例示とみなされたい。特定のプロセス条件に対して修正および置換を行うことができる。したがって、本発明の実施形態は、先の説明および図面により限定されるものとはみなされない。
【符号の説明】
【0033】
100 電流測定回路
110 パルスジェネレータ
120 シャント抵抗器
140 差動増幅器
200 電流測定回路
210 電流導体
220 ホールセンサ
300 電流測定回路
310 導体
320 ロゴスキーコイル
330 リード線
340 リード線
350 積分器
400 グラフ
450 グラフ
500 電流測定回路
510 導体
520 ピックアップコイル
524 リード線
528 リード線
530 任意選択の増幅器
540 しきい値交差検出器
550 出力信号、出力
560 積分器
570 サンプリング回路またはサンプルホールド回路
580 出力信号
600 部分
610 導体
620 ピックアップコイル
624 ダイ端子
626 外部導体
628 ダイ端子
640 集積回路ダイ
650 端子
IPULSE 電流パルス
RSHUNT シャント抵抗値
VSHUNT電圧
tEND 終了時間
tEND
* 終了時間
tMAX ピーク時間
tSTART 開始時間
tSTART
* 開始時間
VREF 所定のしきい値
VREF2 別の所定のしきい値、参照電圧
VSENSE 出力電圧、正弦半波、積分信号
VSENSE' 導関数、電圧