(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】テクスチャ付与した豆果タンパク質を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A23J 3/14 20060101AFI20241216BHJP
A23J 3/26 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
A23J3/14
A23J3/26 502
(21)【出願番号】P 2021531012
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 FR2019053049
(87)【国際公開番号】W WO2020120915
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-01
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュ、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ドゥウバク、シャルロッテ
(72)【発明者】
【氏名】エンゲル、アンドレ
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0226811(US,A1)
【文献】国際公開第2013/036149(WO,A1)
【文献】特開平04-228037(JP,A)
【文献】特開2013-078347(JP,A)
【文献】特開2015-144593(JP,A)
【文献】特公昭48-044869(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J 3/14
A23J 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のa.~e.のプロトコルで与えられる試験A、
a.試料20gをビーカーに秤量する。
b.試料を完全に浸漬するまで、周囲温度(20℃±1℃)で飲料水を加える。
c.静的に接触させたまま30分間放置する。
d.ふるいを用いて残留水と試料とを分離する。
e.再水和された試料の最終重量Pを秤量する。
によって計算される保水力[=(P-20)/20]が、乾燥タンパク質1g当たり水4g超である、乾燥プロセスでテクスチャ付与された豆果タンパク質を含む組成物の製造方法であって、
1.豆果タンパク質及び豆果繊維を含む粉末を準備する工程であって、豆果タンパク質/豆果繊維の乾燥重量比が70/30~90/10である粉末を準備する工程と、
2.前記粉末を押出成形することにより40g/L~120g/Lの密度を有するテクスチャを付与した豆果タンパク質組成物を製造する工程と、
3.前記工程2.で得られた前記テクスチャ付与した豆果タンパク質組成物を圧縮する工程と、
4.任意で、前記圧縮された組成物を乾燥する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記工程1.の前記粉末は、豆果タンパク質/豆果繊維の乾燥重量比が75/25~85/15である粉末である、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程2.で得られる前記豆果タンパク質組成物が、60g/L~90g/Lの密度を有する、請求項
1又は
2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程2.が、前記粉末に、20kWh/kg~30kWh/kgの比エネルギーを加え、出口圧力を70バール~90バールの範囲に調節することによって、二軸押出機内でエクストルージョン・クッキングすることによって実施される、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程2.で得られた豆果タンパク質組成物の温度が、前記工程3.の間、30℃~50℃の間である、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程2.で得られた豆果タンパク質組成物の温度が、前記工程3.の間、40℃である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程3.で実施される圧縮が、ドラム乾燥機で実施され、前記ドラム乾燥機が、300mmの直径を有し、10~20rpmの速度で回転し、75mmの4個の衛星シリンダを装備し、前記衛星シリンダと主シリンダ間の間隙が0.5mm~1.5mmの範囲内である、請求項
1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、テクスチャ付与したエンドウタンパク質を含む特定の組成物、及びその製造プロセスに関する。
【0002】
代用肉及び代用魚を製造することを意図した繊維構造体で製品を調製することを目的とした、特にエクストルージョン・クッキングによってタンパク質IIテクスチャ付与する技術が、多数の植物素材に適用されている。
【0003】
タンパク質のエクストルージョン・クッキングのプロセスは、プロセスで使用される水の量によって大きく2つの群に分類することができる。水の量が30重量%超である場合、「湿潤」エクストルージョン・クッキングと称され、得られる製品は、動物肉、例えば牛肉又は鶏肉ナゲットを模した、時間を置かずに消費する加工品を製造することをより意図される。水の量が30重量%未満である場合には、「乾燥」エクストルージョン・クッキングと称され、得られる製品は、他の成分と混合することによって肉代替物を配合するために、食品加工製造業者によって使用されることがより意図される。本発明の分野は、「乾燥」エクストルージョン・クッキングの分野である。
【0004】
歴史的に、代用肉として使用された最初のタンパク質は、大豆及び小麦から抽出されていた。その後急速に、大豆が、この応用分野における主要な素材となった。
【0005】
その後の研究のほとんどは明らかに大豆タンパク質に関連するものであるが、落花生、ゴマ、綿実、ヒマワリ、トウモロコシ、小麦タンパク質、微生物由来タンパク質、食肉処理場又は水産業の副産物などといった、その他の動物性タンパク質源及び植物性タンパク質源もテクスチャ付与されている。
【0006】
エンドウ由来及びソラマメ由来のものなどの豆果タンパク質も、その分離及び「乾燥」エクストルージョン・クッキングの両方の観点から研究対象とされてきた。
【0007】
エンドウタンパク質については、それらが特定の機能及び栄養特性を有するだけでなく、それらの性質が遺伝子組み換えによるものではないことから、数多くの研究がなされてきた。
【0008】
近年の研究努力及び成長率にもかかわらず、これらのエンドウタンパク質系製品は、依然として市場浸透度が極めて限定的である。
【0009】
この拡大を制限する理由の1つは、テクスチャ付与したエンドウタンパク質を配合物に添加する前に、このタンパク質を再水和するのに必要とされる、プロセスに関係する。
【0010】
実際に、当該タンパク質は乾燥していることから、満足のいく最終結果を得るためには、それらを成形すること、並びに、配合物の他の成分と緊密に混合すること、ができるように再水和されなければならない。
【0011】
再水和のため、乾燥プロセスでテクスチャ付与されたエンドウタンパク質を水溶液と接触させる。残念なことに、再水和を目的として吸収される水の量は、十分に有効な量ではなく、これに合わせて人による介入がなければ、それ以降の配合工程に必要とされる量のわずか50%ほどである。
【0012】
これにともなって、再水和されたテクスチャ付与した繊維を切り刻むことからなる、「細断」又は「切断」と称される追加の工程が、一般的に実施される。このようにして得られた繊維を水溶液と接触させると、かかる繊維が切り刻んであることによって、必要とされる乾燥分の水が再吸収され得る。
【0013】
切断の管理が十分でないと、テクスチャ付与したエンドウタンパク質を損傷する恐れがあることから、この工程は複雑なものである。加えて、これは追加の調製工程であるため、実施がより複雑になる。
【0014】
出願人の功績は、上記の課題を解決し、実施に「細断」や「切断」を必要としない乾燥エクストルージョン・クッキングによって得られる、テクスチャ付与されたエンドウタンパク質を含む、新規の特定の組成物を開発したことである。
【0015】
本発明は、一般的な説明を開示することを目的とする以下の項でより良く理解されるであろう。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、乾燥プロセスでテクスチャ付与された豆果タンパク質を含む組成物に関し、試験Aによって測定される保水力が、乾燥タンパク質1g当たり水3g超、好ましくは乾燥タンパク質1g当たり水4g超、より好ましくは水4g~5gであることを特徴とする。
【0017】
豆果タンパク質は、好ましくは、ソラマメ及びエンドウからなる群から選択される。エンドウが特に好ましい。
【0018】
最後に、本発明による乾燥プロセスでテクスチャ付与された豆果タンパク質の乾物は、80重量%超、好ましくは90重量%超である。
【0019】
本発明はまた、上記のような豆果タンパク質組成物を製造するためのプロセスに関し、プロセスが以下の工程を含むことを特徴とする。
1)豆果タンパク質及び豆果繊維を含む粉末を準備する工程であって、豆果タンパク質/豆果繊維の乾燥重量比が70/30~90/10、好ましくは75/25~85/15である粉末を準備する工程、
2)工程1で得られた粉末から、40g/L~120g/L、好ましくは60g/L~90g/Lの密度を有するテクスチャ付与した豆果タンパク質組成物を製造する工程、
3)工程2で得られたテクスチャ付与したエンドウタンパク質組成物を圧縮する工程、
4)任意で、このようにして得られた組成物を乾燥させる工程。
【0020】
工程1で使用される豆果タンパク質及び豆果繊維を含む粉末は、当該タンパク質及び繊維を混合することによって調製することができる。粉末は、豆果タンパク質及び豆果繊維から本質的になることができる。用語「から本質的になる」は、粉末が、タンパク質及び繊維を調製するプロセスに関連する不純物、例えば微量のデンプンを含み得ることを意味する。豆果タンパク質及び繊維は、好ましくは、ソラマメ及びエンドウからなる群から選択される。エンドウが特に好ましい。
【0021】
好ましくは、工程2は、混合物に、20kWh/kg~30kWh/kgの比エネルギーを加え、出口圧力を70バール~90バールの範囲に調節することによって、二軸押出機内でエクストルージョン・クッキングすることによって実施される。更により好ましくは、二軸押出成形機は、直径27mmの出口ダイを有し、長さ/直径比が60であることによって特徴付けられる。
【0022】
好ましくは、テクスチャ付与したエンドウタンパク質組成物の温度は、工程3の圧縮中、30℃~50℃、好ましくは40℃でなければならない。
【0023】
好ましくは、工程3の圧縮は、圧縮後のテクスチャ付与されたタンパク質が、100g/L~170g/L、好ましくは130g/L~150g/Lの密度を有することを特徴とする。
【0024】
好ましくは、工程3で実施される圧縮は、ドラム乾燥機で実施され、ドラム乾燥機は、具体的には、300mmの直径を有し、10rpm~20rpm、好ましくは16rpmの速度で回転し、75mmの4個の衛星シリンダを装備し、衛星シリンダと主シリンダ間の間隙は0.5mm~1.5mmの範囲内、好ましくは1mmである。
【0025】
最後に、本発明は、工業用途、例えば、ヒト及び動物の食品産業、産業用医薬品、又は化粧品における、上述したような乾燥プロセスでテクスチャ付与された豆果タンパク質組成物の使用に関する。
【0026】
本発明は、以下の詳細な説明を読むことにより、より良く理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、乾燥プロセスでテクスチャ付与された豆果タンパク質を含む組成物に関し、試験Aによって測定される保水力が、乾燥タンパク質1g当たり水3g超、好ましくは乾燥タンパク質1g当たり水4g超、より好ましくは水4g~5gであることを特徴とする。
【0028】
豆果タンパク質は、好ましくは、ソラマメタンパク質及びエンドウタンパク質からなる群から選択される。エンドウタンパク質が特に好ましい。
【0029】
用語「豆果」又は「マメ科植物」は、本明細書では、マメ目の双子葉植物の科を意味すると考えられる。マメ科は、種の数がラン科及びキク科に次いで3番目に多い顕花植物科である。マメ科には約765属、19,500種超が含まれる。いくつかのマメ科の植物は、大豆、莢豆、エンドウ、ソラマメ、ヒヨコマメ、ピーナッツ、栽培レンズマメ、栽培アルファルファ、各種クローバー、カラスノエンドウ、イナゴマメ、及びカンゾウなどの重要な作物植物である。
【0030】
用語「エンドウ」は、本明細書においてその最も広く許容される使用法により考慮され、特に、その品種の通常の使用目的(ヒトの食品、動物用飼料及び/又は他の用途)に関わらず、「丸エンドウ」及び「しわのあるエンドウ」の全ての品種、並びに「丸エンドウ」及び「しわのあるエンドウ」の全ての変異品種を含む。
【0031】
本出願において用語「エンドウ」は、エンドウ属、より詳細には、sativum種及びaestivum種に属するエンドウ品種を含む。当該変異品種は、C-L HEYDLEYらによる論文、題名「Developing novel pea starches.」Proceedings of the Symposium of the Industrial Biochemistry and Biotechnology Group of the Biochemical Society,1996,pp.77-87に記載されているように、特に、「変異体r」、「変異体rb」、「突然変異体rug3」、「変異体rug4」、「変異体rug5」及び「変異体lam」と命名されたものである。
【0032】
「テクスチャ付与された」又は「テクスチャ付与する」は、本願では、特定の規則的構造を与えるためにタンパク質を含む組成物を改変することを目的とする、任意の物理的及び/又は化学的加工を意味することを意図する。本発明の文脈において、タンパク質のテクスチャ付与は、動物性の肉において示されるような繊維の外観を与えることを目的とする。
【0033】
保水力を測定するために、使用は試験Aからなる。そのプロトコルを以下に記載する。
a.分析する試料20gをビーカーに秤量する。
b.試料を完全に浸漬するまで、周囲温度(20℃±1℃)で飲料水を加える。
c.静的に接触させたまま30分間放置する。
d.ふるいを用いて残留水と試料とを分離する。
d.再水和された試料の最終重量Pを秤量する。
【0034】
分析されたタンパク質1g当たりの水の重量(g)として表される保水力は、以下のように計算する。
保水力=(P-20)/20
【0035】
「飲料水」とは、本発明において、飲むことができる水、又は健康リスクを生じさせずに家庭及び産業上の目的に使用され得る水を意味することを意図する。好ましくは、この水は、250mg/L未満の硫酸含有量、200mg/L未満の塩化物含有量、12mg/L未満のカリウム含有量、pH6.5~9、及び全硬度(TH、水のカルシウムイオン含有量及びマグネシウムイオン含有量の測定値がフランス硬度で15超であることに相当する)を有することが理解されるであろう。換言すれば、飲料水が含むカルシウムは60mg/L未満又はマグネシウムは36mg/L未満でなければならない。
【0036】
上記のように、従来技術のテクスチャ付与したエンドウタンパク質組成物は、既に周知であり、食品産業、特に代用肉に使用されている。レシピにそれらの組成物を使用するために必要な含水量は、タンパク質1g当たり少なくとも3g、好ましくは4gであることが知られている。この再水和により、肉繊維の機能特性を最良に模して配合物に含まれる繊維を調製すること、並びに再水和が不十分な部分の存在感が強くなりすぎるのを回避しながら、最終的な消費中に硬さの知覚を引き起こすこと、が可能になる。この再水和は、単一の工程で実施することができないことも知られている。
【0037】
当業者であれば、まず、テクスチャ付与したエンドウタンパク質を水性溶媒と合わせて、タンパク質1g当たり約2gの水に到達させることによって最初の再水和を実行するであろう。次に、再水和されたタンパク質繊維を細断する。特定の理論に束縛されるものではないが、この細断により繊維が破壊されることで内部部分が露出し、その水和が可能になる。したがって、再水和及び破壊されたタンパク質繊維を水性溶媒と接触させれば十分であり、保水力は、タンパク質1g当たり少なくとも4gである。
【0038】
このプロトコルは、例えば、出願人によって製造及び販売されているNUTRALYS(登録商標)T70Sの技術文書に記載されている。
【0039】
タンパク質の細断は周知の解決策であるが、最終配合プロセスをより複雑にし、コストを増加させる工程を追加する。更に、この細断の管理が不十分であると、繊維の破壊が過度に大きくなり、所望の機能効果が失われる。植物繊維は短くなっているため、肉繊維を良好に模していない。
【0040】
最後に、本発明による乾燥プロセスでテクスチャ付与された豆果タンパク質の乾物は、80重量%超、好ましくは90重量%超である。
【0041】
乾物は、当業者に周知の任意の技術によって測定される。好ましくは、「脱水」法が使用される。この方法は、重量が既知の試料を、量を把握して加熱することによって、蒸発させる水の量を決定することを含む。
【0042】
本発明による組成物のタンパク質含有量は、有利には、全乾物に対して、60重量%~80重量%、好ましくは70重量%~80重量%である。当業者に周知の任意の方法を使用して、このタンパク質含有量を分析することができる。好ましくは、全窒素量を分析し、この含有量に係数6.25を乗算する。この方法は特に知られており、植物タンパク質に使用される。
【0043】
本発明はまた、上記のような豆果タンパク質組成物を製造するためのプロセスに関し、当該プロセスが以下の工程を含むことを特徴とする。
1.豆果タンパク質及び豆果繊維を含む粉末を準備する工程であって、豆果タンパク質/豆果繊維の乾燥重量比が70/30~90/10、好ましくは75/25~85/15である粉末を準備する工程、
2.工程1で得られた粉末から、40g/L~120g/L、好ましくは60g/L~90g/Lの密度を有するテクスチャ付与したエンドウタンパク質組成物を製造する工程、
3.工程2で得られたテクスチャ付与したエンドウタンパク質組成物を圧縮する工程、
4.任意で、このようにして得られた組成物を乾燥させる工程。
【0044】
工程1の豆果タンパク質及び繊維は、好ましくは、ソラマメタンパク質及びエンドウタンパク質からなる群から選択される。エンドウタンパク質が特に好ましい。
【0045】
工程1で使用される豆果タンパク質及び豆果繊維を含む粉末は、当該タンパク質及び繊維を混合することによって調製することができる。粉末は、豆果タンパク質及び豆果繊維から本質的になるものとすることができる。用語「から本質的になる」は、粉末が、タンパク質及び繊維を調製するプロセスに関連する不純物、例えば微量のデンプンを含み得ることを意味する。混合は、工程2の間に植物繊維を合成するのに必要とされる様々な成分の乾燥混合物を取得することを含む。
【0046】
「豆果繊維」とは、マメ科の植物から抽出された、ヒトの消化系では比較的消化されにくい又は消化されにくい多糖類を含む、任意の組成物を意味することを意図している。このような繊維は、当業者に周知の任意のプロセスによって抽出される。このような繊維の市販例は、例えば、ROQUETTE社製の繊維Pea Fober I50である。
【0047】
混合は、工程2の上流で、又は供給時に直接実施されてもよい。この混合中、風味剤又は染料などの当業者に周知の添加剤を添加することができる。
【0048】
代替の実施形態では、繊維/タンパク質混合物は、豆果粉の遠心気流式分級(turboseparation)によって自然に得られる。マメ科植物種子を洗浄し、それらの外側の繊維を除去して、粉へと粉砕する。次に、空気の上昇流により粉末を遠心気流式に分級することで、異なる粒子を密度に基づいて分離することができる。これにより、豆果粉中のタンパク質の含有量を約20%から60%超へ濃縮することが可能となる。このような粉末は、「濃縮物」と称される。これらの濃縮物はまた、10%~20%の豆果粉を含有する。
【0049】
タンパク質と繊維との乾燥重量比は、有利には、70/30~90/10、好ましくは75/25~85/15である。
【0050】
次に工程2の間に、この粉末混合物はテクスチャ付与される。テクスチャ付与とは、真っ直ぐな平行線状に連続的に延びる繊維を形成することにより、肉に存在する繊維を模すよう、タンパク質及び繊維が熱分解を受け及び再編成されることと同義である。特に押出成形において用いられる、当業者に周知の全てのプロセスが適する。
【0051】
押出成形は、1つ又は2つのアルキメデススクリューの回転を利用して、高圧力及び剪断力の作用下で、ダイの小径の孔に生成物を強制的に通すことを含む。生じる熱が、生成物の調理及び/又は変性を引き起こすため、押出成形は「エクストルージョン・クッキング」と呼ばれることもあり、次いで、生成物はダイ出口での水の蒸発により膨張する。この技術により、組成、構造(製品の膨張及び泡状形態)、並びに機能的及び栄養的特性(例えば、抗栄養因子又は毒性因子の変性、食品の滅菌)を幅広く変化させた製品を開発することが可能になる。タンパク質の加工は、多くの場合、繊維の外観を有することで動物製の肉繊維を模す生成物を得ることによって反映される、構造的改変をもたらす。
【0052】
当業者は、自身の知識及び装置の選択を通じて、40g/L~120g/L、好ましくは60g/L~90g/Lの密度のテクスチャ付与した植物タンパク質を得るために、このテクスチャ付与を実行するであろう。
【0053】
この密度を測定するために、試験Bと称される以下のプロトコルが適用される。
2リットルのメスシリンダの風袋を差し引く。
分析する製品をシリンダに充填する。場合によっては、製品が確実に2リットルの容積を満たすように、シリンダの壁を細かくタップしてしっかりと充填する必要がある。
製品の重量(重量P(グラム))。
密度=(P(g)/2(L))
【0054】
好ましくは、工程2は、混合物に、20kWh/kg~30kWh/kgの比エネルギーを加え、出口圧力を70バール~90バールの範囲に調節することによって、二軸押出機においてエクストルージョン・クッキングすることによって実施される。更により好ましくは、二軸押出成形機は、27mmのダイ径を有し、60の長さ/直径比によって特徴付けられる。
【0055】
これらの条件下で、約35kg/hの物質流量に対して、水も5kg/h~7kg/h、好ましくは5.5kg/h~6.5kg/hの流量で投入される。
使用される好適なスクリュープロファイルは、以下の要素分布を有する。
80%~95%の供給要素、
2.5%~10%の混練要素、
2.5%~10%の逆ねじ要素。
【0056】
当業者であれば、この技術の基本知識を通じて、所望の密度を得るための完全な設定を知る方法を把握しているであろう。
【0057】
これらの手順の条件により、市販のエクストルージョン調理器の大半に適した密度を有するテクスチャ付与したタンパク質を容易に得ることができる。当業者であれば、必要に応じて、これらの条件を容易に調整する方法を知っているであろう。
【0058】
好ましくは、圧縮の工程3中のテクスチャ付与したエンドウタンパク質組成物の温度は、30℃~50℃、好ましくは40℃でなければならない。
【0059】
エクストルージョン・クッキングされるタンパク質の密度が上記範囲未満である場合、以下の工程3が、効果的に実施され得ない場合がある。
【0060】
好ましくは、工程3の圧縮は、テクスチャ付与したタンパク質が、圧縮後に100g/L~170g/L、好ましくは130g/L~150g/Lの密度を有することを特徴とする。
【0061】
工程3は、工程2で押出成形されたタンパク質に機械的を圧力をかけて圧縮することを目的とする。驚くべきことに、この圧縮が、40g/L~120g/L、好ましくは60g/L~90g/Lの密度を有するテクスチャ付与したタンパク質に対して実施されることにより、細断を行わずに最終的な保水力が最適なものとなるテクスチャ付与したタンパク質を得ることができる。実際に、当業者であれば、圧縮後には、テクスチャ付与したタンパク質がこの機械的圧縮により完全に破壊されることで、その機能を消失することになると予想したはずである。本出願人は、実際には本願に記載されているプロトコルに従う限り、かかる予想とは真逆のことが真であることを立証した。
【0062】
密度を100g/L~170g/L、好ましくは130g/L~150g/Lの値まで上昇させるために、テクスチャ付与したタンパク質を機械的に圧縮することを可能にする、任意の種類の装置が好適である。
【0063】
好ましくは、工程3で実施される圧縮は、ドラム乾燥機で実施され、ドラム乾燥機は、具体的には、300mmの直径を有し、10rpm~20rpm、好ましくは16rpmの速度で回転し、75mmの4個の衛星シリンダを装備し、衛星シリンダと主シリンダ間の間隙は0.5mm~1.5mmの範囲内、好ましくは1mmである。特に好ましい装置は、Tummers Machinebrouw B.V.社製350323型である。
【0064】
最後に、本発明は、工業用途、例えば、ヒト及び動物の食品産業、産業用医薬品、又は化粧品における、上述したような乾燥プロセスでテクスチャ付与された豆果タンパク質組成物の使用に関する。特定の用途は、代用肉、特に挽肉の製造のための、本発明による組成物の使用に関する。
【0065】
本発明は、以下の非限定的な実施例を読むことで、より良く理解されるであろう。
【実施例】
【0066】
実施例1A:本発明による乾燥プロセスでテクスチャ付与される豆果タンパク質組成物の製造
【0067】
ROQUETTE社製のNUTRALYS(登録商標)F85M87%及びl50Mエンドウ繊維13%からなる粉末混合物を生成する。
【0068】
この混合物を、重力によってLEISTRITZ社製LEISTRITZ ZSE 27 MAXX押出機内へ投入する。
【0069】
混合物を、35kg/hの調節された流量で投入する。水も5.5kg/hの量で投入する。
【0070】
85%の供給要素、5%の混練要素、及び10%の逆ピッチ要素から構成される押出スクリューを、1100rpm~1200rpmの速度で回転させて、混合物をダイに送る。
【0071】
この特定の手順は、91バールの出口圧力の42%の機械トルクを生成する。システムの比エネルギーは、約24kWh/kgである。
【0072】
生成物は、3mmの円筒孔からなるダイに向かう出口へと進み、ダイからテクスチャ付与したタンパク質が排出され、次いで切れ刃により約1mmずつ切断される。
【0073】
試験Bを用いて押出成形されたタンパク質の密度測定値は、59g/Lである。
【0074】
次いで、このようにして生成された押出成形タンパク質を、Tummers Machinebouw BV社製3500323型ドラム乾燥機の主シリンダ(300mm径)上に堆積させる。
【0075】
このシリンダを16rpmの速度で回転させる。当該回転は4つの周辺シリンダ(直径75mm)も駆動する。主シリンダと周辺シリンダとの間の間隙又は距離は1mmである。
【0076】
タンパク質は、約40℃の温度で堆積され、異なるシリンダ間で圧縮され、次いでドラム乾燥機の底部で容器に入る。
【0077】
実施例1B:本発明による乾燥プロセスでテクスチャ付与される豆果タンパク質組成物の製造
【0078】
タンパク質65%及び繊維15%を含有する、100%VESTKORN「Faba Protein」ソラマメ濃縮物からなる粉末混合物が生成される。
【0079】
この混合物を、重力によってCOPERION社製COPERION ZSK 54 MV押出機内に投入する。
【0080】
混合物を、350kg/hの調節された流量で投入する。水も65kg/hの量で投入する。
【0081】
85%供給要素、5%の混練要素、及び10%の逆ピッチ要素から構成される押出スクリューを、950rpm~1100rpmの速度で回転させて、混合物をダイに送る。
【0082】
この特定の手順は、82±2バールの出口圧力の50±2%の機械トルクを生成する。システムの比エネルギーは、約24kWh/kgである。
【0083】
生成物は5mmの円筒孔からなるダイに向かう出口へと進み、ダイからテクスチャ付与したタンパク質が排出され、次いで切れ刃により約3cmずつ切断される。
【0084】
試験Bを用いて押出成形されたタンパク質の密度測定値は、84g/Lである。
【0085】
次いで、このようにして生成された押出成形タンパク質を、Tummers Machinebouw BV社製3500323型ドラム乾燥機の主シリンダ(300mm径)上に堆積させる。
【0086】
このシリンダを16rpmの速度で回転させる。当該回転は4つの周辺シリンダ(直径75mm)も駆動する。主シリンダと周辺シリンダとの間の間隙又は距離は1mmである。
【0087】
タンパク質を、約40℃の温度で堆積され、異なるシリンダ間で圧縮され、次いでドラム乾燥機の底部で容器に入る。
【0088】
実施例2:従来技術による乾燥プロセスでテクスチャ付与される豆果タンパク質組成物の製造
【0089】
ROQUETTE社製のNUTRALYS(登録商標)F85M87重量%及びl50Mエンドウ繊維重量13%からなる粉末混合物を生成する。
【0090】
この混合物を、重力によってLEISTRITZ社製LEISTRITZ ZSE 27 MAXX押出機内へ投入する。
【0091】
混合物を、35kg/hの調節された流量で投入する。水も6.5kg/hの量で投入する。
【0092】
85%の供給要素、5%の混練要素、及び10%の逆ピッチ要素から構成される押出スクリューを、1100rpm~1200rpmの速度で回転させて、混合物をダイに送る。
【0093】
この特定の手順は、70バールの出口圧力の41%の機械トルクを生成する。システムの比エネルギーは、約220kWh/kgである。
【0094】
生成物は、2つの3mm円筒孔からなるダイに向かう出口へと進み、ダイからテクスチャ付与したタンパク質が排出され、次いで切れ刃により約1mmずつ切断される。
【0095】
押出成形されたタンパク質の密度測定値は、100g/Lの値を呈する。
【0096】
実施例3:上記実施例で得られた乾燥プロセスでテクスチャ付与される豆果タンパク質組成物と従来技術に由来する組成物との比較
【0097】
本明細書で上述したプロトコルが、試験Bによる密度及び試験Aによる保水を測定するために実施される。
【0098】
「細断を伴う」保水も、以下に示されるように試験Aを修正することによって測定される。
a.分析する試料40gをビーカーに秤量する。
b.試料を完全に浸漬するまで、周囲温度(20℃±1℃)で飲料水を加える。
c.静的に接触させたまま30分間放置する。
d.水+テクスチャ付与したタンパク質を、切断用ではないペストリアタッチメントを装備したKENWOODブレンダに注ぎ込み、速度1で45秒間粉砕する。
e.ふるいを用いて残留水及び試料を分離する。
f.再水和した試料の最終重量Pを秤量する。
【0099】
分析したタンパク質1g当たりの水の重量(g)として表される保水力は、以下のように計算する。
保水力(g単位)=(P-40)/40
【0100】
【0101】
したがって、本発明の1A及び1Bによる製品のみが組成物を得ることが可能なものであり、(細断を伴わない)試験Aによる保水力は、テクスチャ付与したタンパク質を含む組成物1g当たり水3g超であることがわかる。
【0102】
この性能レベルを達成するために、従来技術による組成物は、細断又は切断工程を必要とする。
【0103】
実施例4:本発明による乾燥プロセスでテクスチャ付与された豆果タンパク質組成物の、代用肉における使用
【0104】
実施例1A及び実施例2に示される組成物を使用して、ハンバーガー又はバーガーパテを製造する。
【0105】
使用される材料は以下のとおりである(以下の表に示す量は、完成したバーガー100g当たりのグラム単位とする):
【0106】
【0107】
製造手順は以下のとおりである。
1.テクスチャ付与したタンパク質を、飲料水中で30分間水和させる。
2.バーガー2及びバーガー3(本発明のものではないもの)でのみ、KENWOOD自動ミキサーを使用して、テクスチャ付与したタンパク質/水混合物を45秒間粉砕した後、更に30分間接触させる。
3.メチルセルロースと砕氷とを容器内で混合し、次に冷蔵庫内に5分間定置する。
4.他の容器内で他の全ての成分を混合する。
5.工程1(又は2)、3、及び4で得られた混合物を同じ容器内で合わせ、混合して均質な組成物を得る。
6.約150gの量の最終混合物を手でバーガーパテに成形する。
【0108】
10名のパネルによる試食後で、バーガー#1が動物性肉のバーガーに最も近く、試食中に繊維がよりはっきりと知覚されることが認められた。