(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】抗PD-1抗体、その抗原結合フラグメントおよびそれらの医薬用途
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241216BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241216BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241216BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241216BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241216BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241216BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241216BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241216BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241216BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241216BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20241216BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20241216BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 D
G01N33/574 A
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2021544436
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(86)【国際出願番号】 CN2020074098
(87)【国際公開番号】W WO2020156509
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】201910108743.3
(32)【優先日】2019-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010052351.2
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510166892
【氏名又は名称】ジエンス ヘンルイ メデイシンカンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI MEDICINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】508209602
【氏名又は名称】シャンハイ ヘンルイ ファーマスーティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】グ シャオリン
(72)【発明者】
【氏名】イェ シン
(72)【発明者】
【氏名】グォ フー
(72)【発明者】
【氏名】タオ ウェイカン
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-524394(JP,A)
【文献】特表2016-523265(JP,A)
【文献】特表2017-530722(JP,A)
【文献】特開2012-158605(JP,A)
【文献】Current Opinion in Immunology,2015年,Vol.33,pp.23-35
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00-19/00
C12N 15/00-15/90
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域の組み合わせは、以下に示される通りである、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント:
(a)配列番号8、配列番号9および配列番号10にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号12および配列番号13にそれぞれ示されるLCDR2およびLCDR3、ならびに配列番号11、47、48、49、50、51または52に示されるLCDR1を含む軽鎖可変領域。
【請求項2】
以下に示される前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域の組み合わせを含む、請求項1に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント:
(a1)配列番号8、配列番号9および配列番号10にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む前記重鎖可変領域と、
配列番号49、配列番号12および配列番号13にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む前記軽鎖可変領域。
【請求項3】
マウス抗体もしくはその抗原結合フラグメント、キメラ抗体もしくはその抗原結合フラグメン
ト、またはヒト化抗体もしくはその抗原結合フラグメントである、請求項1または2に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
請求項3に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記抗PD-1抗体はヒト化抗体であり、前記ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来するフレームワーク領域またはそのフレームワーク領域バリアントを含み、
前記フレームワーク領域バリアントは、以下に示す変異を含む:
(f)前記軽鎖可変領域に含まれる2Gアミノ酸復帰変異、および/または
以下の(f1)~(f3)の何れか一つから選択される、前記重鎖可変領域に含まれるアミノ酸復帰変異:
(f1)前記重鎖可変領域に含まれる27Yおよび69Lアミノ酸復帰変異;または
(f2)前記重鎖可変領域に含まれる27Y、48I、67T、69Lおよび82Fアミノ酸復帰変異;または
(f3)前記重鎖可変領域に含まれる27Y、48I、67T、69L、82Fおよび93Tアミノ酸復帰変異;
ここで、前記アミノ酸の位置は、Kabat基準に従って番号付けおよび決定される。
【請求項5】
請求項3に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記抗体の前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域の前記組み合わせは、以下の(i)および(l):
(i)重鎖可変領域であって、その配列は、配列番号4に示されるとおりである、重鎖可変領域、および
軽鎖可変領域であって、その配列は、配列番号5に示されるとおりである、軽鎖可変領域;
(l)重鎖可変領域であって、その配列は、配列番号27、30、31もしくは32に示されるとおりである、重鎖可変領域、および
軽鎖可変領域であって、その配列は、配列番号28、29、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63もしくは64に示されるとおりである、軽鎖可変領域;
から選択される、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
請求項5に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域は、以下に示される通りである、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント:
(p)重鎖可変領域であって、その配列は、配列番号27に示されるとおりである、重鎖可変領域、および
軽鎖可変領域であって、その配列は、配列番号55に示されるとおりである、軽鎖可変領域。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記抗体は抗体定常領域を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗体定常領域の前記重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4定常領域ならびにそれらの従来のバリアントからなる群から選択され、前記抗体定常領域の前記軽鎖定常領域は、ヒト抗体κおよびλ鎖定常領域ならびにそれらの従来のバリアントからなる群から選択される、請求項7に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記抗体は、配列番号72または79に示される前記重鎖定常領域、および配列番号73に示される前記軽鎖定常領域を含む、請求項8に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記抗PD-1抗体は、配列番号75に示される軽鎖および配列番号74または80に示される重鎖を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記抗PD-1抗体は、配列番号74に示される重鎖および配列番号75に示される軽鎖を含む、請求項10に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
前記抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)
2、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(ダイアボディ)およびジスルフィド結合安定化V領域(dsFv)からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
前記抗体は、二重特異性抗体、多重特異性抗体または抗体融合タンパク質である、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
治療有効量の請求項1~13のいずれか1項に記載の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメントと、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、緩衝液または賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメントをコードする、核酸分子。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか1項に記載の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメントを含む、キット。
【請求項18】
PD-1に関連する疾患を処置するための、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記疾患は腫瘍である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記疾患は、頭頸部扁平上皮癌(head and neck squamous cell carcinoma)、頭頸部癌、脳腫瘍、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系癌、神経内分泌腫瘍、咽頭癌、鼻咽頭癌、食道癌、甲状腺癌、悪性胸膜中皮腫、肺癌、乳癌、肝臓癌、ヘパトーマ(hepatoma)、肝細胞癌、肝胆道癌、膵臓癌、胃癌、胃腸癌、腸癌、結腸癌、結腸直腸癌、腎臓癌、淡明細胞型腎細胞癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、皮膚癌、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨肉腫、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮癌、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイドーシスおよびメルケル細胞癌からなる群から選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫(T-cell/histiocyte rich large B-cell lymphoma)およびリンパ形質細胞性リンパ腫からなる群から選択され、前記肺癌は、非小細胞肺癌および小細胞肺癌からなる群から選択され、前記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病および骨髄性白血病からなる群から選択される、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記疾患は、PD-L1陽性黒色腫(PD-L1 positive melanoma)、肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、腸癌および結腸癌からなる群から選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイオテクノロジーの分野に属する。より具体的には、本開示は、抗PD-1抗体およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書の記載は、本発明に関連する背景情報を提供するだけであり、必ずしも先行技術を構成するものではない。
【0003】
腫瘍免疫療法は、腫瘍患者のキラーT細胞を十分に活用および動員して、腫瘍を殺傷する処置方法である。同時に、腫瘍細胞の回避は、腫瘍免疫療法にとって大きな障害である。腫瘍細胞は、免疫系に対する独自の抑制効果を利用して、腫瘍の急速な成長を促進する。腫瘍の免疫回避メカニズムと腫瘍に対する体の免疫応答との間には、非常に複雑な関係がある。腫瘍免疫療法の初期段階では、腫瘍特異的キラーT細胞は生物学的活性を有するが、腫瘍が成長するにつれて、後期段階で殺傷機能を失う。
【0004】
人体におけるT細胞の活性化は、2つのシグナル伝達経路システムを採用している。抗原提示細胞によるMHC-抗原ペプチドの提示によってT細胞に提供される最初のシグナルに加えて、一連の共刺激分子によって提供される第二のシグナルも、T細胞が正常な免疫応答を生成できるようにするために必要である。この二重シグナル伝達経路システムは、体内の免疫系のバランスにおいて重要な役割を果たしている。それは、自己抗原および非自己抗原に対する体の異なる免疫応答を厳密に調節する。共刺激分子によって提供される第2のシグナルが存在しない場合、T細胞の非応答または持続的な特異的免疫応答を引き起こし、したがって免疫寛容(tolerance)をもたらす。したがって、第2のシグナル伝達経路は、体の免疫応答の全過程において非常に重要な調節的役割を果たしている。
【0005】
Programmed death-l(PD-l)は、1992年に発見されたT細胞の表面に発現するタンパク質受容体であり、細胞アポトーシスの過程に関与している。PD-lはCD28ファミリーに属する。PD-lは細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)と23%のアミノ酸相同性を有するが、その発現はCTLAの発現とは異なり、主に活性化T細胞、B細胞および骨髄細胞に発現している。PD-1には、PD-L1とPD-L2という2つのリガンドがある。PD‐L1は主にT細胞、B細胞、マクロファージおよび樹状細胞(DC)で発現し、細胞での発現は活性化された後にアップレギュレーションされ得る。PD-L2の発現は比較的制限されており、主に活性化されたマクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞で発現している。
【0006】
PD-L1は、PD-1およびB7-1に結合することによって免疫系を阻害する。腫瘍組織微小環境の多くの腫瘍細胞および免疫細胞はPD-L1を発現する。新しい研究により、PD-L1タンパク質の高発現が、乳癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、胃癌、腸癌、腎臓癌、黒色腫、結腸癌、膀胱癌、卵巣癌、膵臓癌および肝臓癌ならびにその他のヒト腫瘍組織で検出され、PD-L1の発現レベルが患者の臨床症状および予後と密接に関連していることが明らかになった。
【0007】
抗PD-1モノクローナル抗体は、PD-L1/PD-1の結合を遮断することにより、腫瘍に対する患者自身の免疫系の反応を最大限に高めることができ、腫瘍細胞を殺傷するという目的を達成する。現在、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(Merckキイトルーダ、キイトルーダ、Merck-Pemb、Merck-キイトルーダ、Merck-PD-1、ペムブロリズマブとしても知られる)およびノビルマブ(BMSオプジーボ、オプジーボ、BMS-ニボルマブ、ノビルマブとしても知られる)が、黒色腫、ホジキンリンパ腫患者、非小細胞肺癌およびその他の腫瘍の処置用に米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。さらに、WO200139722、WO2006121168、WO2010036959、WO2010089411、WO2011110604、WO2013173223、WO2013181634、US2014335093、US6803192B1、US8617546B2、WO2015085847などの特許文献も、さまざまな抗PD-1モノクローナル抗体を開示している。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、新規な抗PD-1抗体、その抗原結合フラグメント、およびそれらの医学的使用を提供する。
【0009】
いくつかの代替の実施形態では、本開示は、以下のi)~iii)のいずれか1つから選択される、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
i)抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントであって、その重鎖可変領域は、配列番号8に示されるか配列番号8に対して最大で3、2または1個のアミノ酸変異を有するHCDR1、配列番号9に示されるか配列番号9に対して最大で3、2または1個のアミノ酸変異を有するHCDR2、および配列番号10に示されるか配列番号10に対して最大で8、3、2または1個のアミノ酸変異を有するHCDR3を含み、その軽鎖可変領域は、配列番号11に示されるか配列番号11に対して最大で4、3、2または1個のアミノ酸変異を有するLCDR1、配列番号12に示されるか配列番号12に対して最大で3、2または1個のアミノ酸変異を有するLCDR2、および配列番号13に示されるか配列番号13に対して最大で3、2または1個のアミノ酸変異を有するLCDR3を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント;
ii)抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントであって、その重鎖可変領域は、配列番号14に示されるか配列番号14に対して最大で3、2または1個のアミノ酸変異を有するHCDR1、配列番号15に示されるか配列番号15に対して最大で3、2または1個のアミノ酸変異を有するHCDR2、および配列番号16に示されるか配列番号16に対して最大で8、3、2または1個のアミノ酸変異を有するHCDR3を含み、その軽鎖可変領域は、配列番号17に示されるか配列番号17に対して最大で4、3、2または1個のアミノ酸変異を有するLCDR1、配列番号12に示されるか配列番号12に対して最大で3、2または1個のアミノ酸変異を有するLCDR2、および配列番号18に示されるか配列番号18に対して最大で3、2または1個のアミノ酸変異を有するLCDR3を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント;および
iii)抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントであって、その重鎖可変領域は、配列番号21に示されるか配列番号21に対して最大で3、2または1個のアミノ酸変異を有するHCDR1、配列番号22に示されるか配列番号22に対して最大で3、2または1個のアミノ酸変異を有するHCDR2、および配列番号23に示されるか配列番号23に対して最大で3、2または1個のアミノ酸変異を有するHCDR3を含み、その軽鎖可変領域は、配列番号24に示されるか配列番号24に対して最大で3、2または1個のアミノ酸変異を有するLCDR1、配列番号25に示されるか配列番号25に対して最大で3、2または1個のアミノ酸変異を有するLCDR2、および配列番号26に示されるか配列番号26に対して最大で3、2または1個のアミノ酸変異を有するLCDR3を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示の前述の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントは、10-7M以下の解離平衡定数でヒトPD-1に結合する。いくつかの実施形態では、それは、10-8M、10-9M、10-10Mまたは10-11M以下の解離平衡定数でヒトPD-1に結合する。
【0011】
いくつかの代替の実施形態では、本開示は、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントであって、その重鎖可変領域は、配列番号65に示されるHCDR1、配列番号66に示されるHCDR2、および配列番号67に示されるHCDR3を含み、その軽鎖可変領域は、配列番号68に示されるLCDR1、配列番号12に示されるLCDR2、および配列番号69に示されるLCDR3を含み、それらの配列は以下の表1に示される、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する:
【0012】
【0013】
いくつかの代替の実施形態では、前述の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントにおいて、前記重鎖可変領域は、配列番号8に示されるHCDR1、配列番号9に示されるHCDR2、および配列番号10に示されるHCDR3を含み、かつ前記軽鎖可変領域は、配列番号12に示されるLCDR2、配列番号13に示されるLCDR3、および一般式RSSQSX13VHSX14X15X16TYLE(配列番号68)に示されるLCDR1を含み、式中、X13はLであり、X14はN、Q、L、TおよびDからなる群から選択され、X15はG、AおよびVからなる群から選択され、X16はNである。
【0014】
いくつかの代替の実施形態では、前記抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下の(a)~(e)のいずれか1つから選択される:
(a)配列番号8、配列番号9および配列番号10にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号12および配列番号13にそれぞれ示されるLCDR2およびLCDR3、ならびに配列番号11、47、48、49、50、51または52に示されるLCDR1を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント;
(b)配列番号14、配列番号15および配列番号16にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号17、配列番号12および配列番号18にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント;
(c)配列番号21、配列番号22および配列番号23にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号24、配列番号25および配列番号26にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント;
(d)配列番号14、配列番号15および配列番号16にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号12および配列番号13にそれぞれ示されるLCDR2およびLCDR3、ならびに配列番号11、47、48、49、50、51または52に示されるLCDR1を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント;および
(e)配列番号8、配列番号9および配列番号10にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号17、配列番号12および配列番号18にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、当該重鎖可変領域は、配列番号8、配列番号9および配列番号10にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、当該軽鎖可変領域は、配列番号49、配列番号12および配列番号13にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、当該重鎖可変領域は、配列番号21、配列番号22および配列番号23にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、当該軽鎖可変領域は、配列番号24、配列番号25および配列番号26にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む。
【0017】
いくつかの代替の実施形態では、本開示は、以下のiv)~vi)のいずれか1つから選択される、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する:
iv)抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントであって、その重鎖可変領域は、配列番号4の配列に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3と同じ配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、その軽鎖可変領域は、配列番号5の配列に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3と同じ配列を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント;
v)抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントであって、その重鎖可変領域は、配列番号6の配列に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3と同じ配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、その軽鎖可変領域は、配列番号7の配列に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3と同じ配列を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント;および
vi)抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントであって、その重鎖可変領域は、配列番号19の配列に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3と同じ配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、その軽鎖可変領域は、配列番号20の配列に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3と同じ配列を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0018】
前述の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントのいくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントは、マウス抗体もしくはその抗原結合フラグメント、キメラ抗体もしくはその抗原結合フラグメント、完全ヒト抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはヒト化抗体もしくはその抗原結合フラグメントである。
【0019】
前述の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントのいくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来するフレームワーク領域またはそのフレームワーク領域バリアントを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記フレームワーク領域バリアントは、ヒト抗体の前記軽鎖フレームワーク領域および/または前記重鎖フレームワーク領域のそれぞれに最大11個のアミノ酸復帰変異を有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記フレームワーク領域バリアントは、以下の(f)~(h)のいずれか1つから選択される変異を含む:
(f)前記軽鎖可変領域に含まれる2Gアミノ酸復帰変異、および/または、前記重鎖可変領域に含まれる27Y、48I、67T、69L、82Fおよび93Tからなる群から選択される1個以上のアミノ酸復帰変異;
(g)前記軽鎖可変領域に含まれる2Vアミノ酸復帰変異、および/または、前記重鎖可変領域に含まれる26D、27F、30T、38K、43H、48I、66K、67A、69L、82Fおよび93Tからなる群から選択される1個以上のアミノ酸復帰変異;および
(h)前記軽鎖可変領域に含まれる42G、44Vおよび71Yからなる群から選択される1個以上のアミノ酸復帰変異、および/または、前記重鎖可変領域に含まれる1Kおよび/または94Sアミノ酸復帰変異。
【0023】
前述の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントのいくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下からなる群から選択される抗体可変領域を含む:
(a2)配列番号8、配列番号9および配列番号10にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに前記重鎖フレームワーク領域に含まれる27Y、48I、67T、69L、82Fおよび93Tのうちの1個以上のアミノ酸復帰変異を含む、重鎖可変領域と、
配列番号12および配列番号13にそれぞれ示されるLCDR2およびLCDR3、ならびに配列番号11、47、48、49、50、51または52に示されるLCDR1、ならびに前記軽鎖フレームワーク領域に含まれる2Gアミノ酸復帰変異を含む、軽鎖可変領域;
(b2)配列番号14、配列番号15および配列番号16にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに前記重鎖可変領域に含まれる26D、27F、30T、38K、43H、48I、66K、67A、69L、82Fおよび93Tから選択される1個以上のアミノ酸復帰変異を含む、重鎖可変領域と、
配列番号17、配列番号12および配列番号18にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3、ならびに前記軽鎖フレームワーク領域に含まれる2Vアミノ酸復帰変異を含む、軽鎖可変領域;
(c2)配列番号21、配列番号22および配列番号23にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに前記重鎖フレームワーク領域に含まれる1Kおよび/または94Sアミノ酸復帰変異を含む、重鎖可変領域と、
配列番号24、配列番号25および配列番号26にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3、ならびに前記軽鎖フレームワーク領域に含まれる42G、44Vおよび71Yから選択される1個以上のアミノ酸復帰変異を含む、軽鎖可変領域。
【0024】
前述の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントのいくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下の(i)~(o)のいずれか1つから選択される抗体可変領域を含む:
(i)重鎖可変領域であって、その配列は、配列番号4に示されるとおりであるか、または配列番号4と少なくとも90%の配列同一性を有する、重鎖可変領域、および/または
軽鎖可変領域であって、その配列は、配列番号5に示されるとおりであるか、または配列番号5と少なくとも90%の配列同一性を有する、軽鎖可変領域;
(j)重鎖可変領域であって、その配列は、配列番号6に示されるとおりであるか、または配列番号6と少なくとも90%の配列同一性を有する、重鎖可変領域、および/または
軽鎖可変領域であって、その配列は、配列番号7に示されるとおりであるか、または配列番号7と少なくとも90%の配列同一性を有する、軽鎖可変領域;
(k)重鎖可変領域であって、その配列は、配列番号19に示されるとおりであるか、または配列番号19と少なくとも90%の配列同一性を有する、重鎖可変領域、および/または
軽鎖可変領域であって、その配列は、配列番号20に示されるとおりであるか、または配列番号20と少なくとも90%の配列同一性を有する、軽鎖可変領域;
(l)重鎖可変領域であって、その配列は、配列番号27、30、31もしくは32に示されるとおりであるか、または配列番号27、30、31もしくは32とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性を有する、重鎖可変領域、および/または
軽鎖可変領域であって、その配列は、配列番号28、29、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63もしくは64に示されるとおりであるか、または配列番号28、29、34、35、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63もしくは64とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性を有する、軽鎖可変領域;
(m)重鎖可変領域であって、その配列は、配列番号33、36、37、38、39もしくは40に示されるとおりであるか、または配列番号33、36、37、38、39もしくは40とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性を有する、重鎖可変領域、および/または
軽鎖可変領域であって、その配列は、配列番号34、35、28、29、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63もしくは64に示されるとおりであるか、または配列番号34、35、28、29、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63もしくは64とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性を有する、軽鎖可変領域;
(n)重鎖可変領域であって、その配列は、配列番号41、45もしくは46に示されるとおりであるか、または配列番号41、45もしくは46とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性を有する、重鎖可変領域、および/または
軽鎖可変領域であって、その配列は、配列番号42、43もしくは44に示されるとおりであるか、または配列番号42、43もしくは44とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性を有する、軽鎖可変領域;
(o)重鎖可変領域であって、その配列は、配列番号70に示されるとおりであるか、または配列番号70と少なくとも90%の配列同一性を有する、重鎖可変領域、および/または
軽鎖可変領域であって、その配列は、配列番号71に示されるとおりであるか、または配列番号71と少なくとも90%の配列同一性を有する、軽鎖可変領域;および
(p)重鎖可変領域であって、その配列は、配列番号27、30、31もしくは32に示されるとおりであるか、または配列番号27、30、31もしくは32とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性を有する、重鎖可変領域、および/または
軽鎖可変領域であって、その配列は、配列番号34もしくは35に示されるとおりであるか、または配列番号34もしくは35とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性を有する、軽鎖可変領域;
ここで、配列番号70および配列番号71の配列は、表2に示される一般式の配列で表される。
【0025】
【0026】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体の前記重鎖可変領域は、配列番号27に示されるとおりであるか、または配列番号27と少なくとも90%の同一性を有し、前記抗PD-1抗体の前記軽鎖可変領域の配列は、配列番号55に示されるとおりであるか、または配列番号55と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体の前記重鎖可変領域は、配列番号46に示されるとおりであるか、または配列番号46と少なくとも90%の同一性を有し、前記抗PD-1抗体の前記軽鎖可変領域の配列は、配列番号43に示されるとおりであるか、または配列番号43と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0028】
前述の「少なくとも90%の同一性」には、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性が含まれる。
【0029】
前述の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントのいくつかの他の実施形態では、前記抗体は抗体定常領域をさらに含む;いくつかの他の実施形態では、前記抗体定常領域の前記重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4定常領域ならびにそれらの従来のバリアントからなる群から選択され、前記抗体定常領域の前記軽鎖定常領域は、ヒト抗体κおよびλ鎖定常領域ならびにそれらの従来のバリアントからなる群から選択される;いくつかの他の実施形態では、前記抗体定常領域は、S228P、F234AおよびL235Aのうちの1つ以上の変異が導入されるIgG4重鎖定常領域を含み、例えば、S228P、F234AおよびL235Aの3つのアミノ酸変異を有するIgG4重鎖定常領域を含む;いくつかの他の実施形態では、前記抗体は、配列番号72または79に示される重鎖定常領域、および配列番号73に示される軽鎖定常領域を含む。
【0030】
前述の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントのいくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体は、配列番号78に示される軽鎖および配列番号77もしくは82に示される重鎖を含むか、または前記抗PD-1抗体は、配列番号75に示される軽鎖および配列番号74、76、80もしくは81に示される重鎖を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体は、
配列番号74に示される重鎖および配列番号75に示される軽鎖、または
配列番号77に示される重鎖および配列番号78に示される軽鎖
を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記抗体は、前述の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントのいずれか1つと競合的にヒトPD-1に結合するまたは同じヒトPD-1エピトープに結合する、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0033】
前述の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントのいくつかの実施形態では、前記抗体は、二重特異性抗体または多重特異性抗体である。
【0034】
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントのいくつかの実施形態では、前記抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(ダイアボディ)およびジスルフィド結合安定化V領域(dsFv)からなる群から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態では、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記抗体は、前述のいずれか1つに記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントと競合的にヒトPD-1に結合する、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントが開示される。
【0036】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、治療有効量の前述のいずれか1つに記載の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは治療有効量の前述の単離されたモノクローナル抗体もしくはその抗原結合フラグメントと、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、緩衝液または賦形剤とを含む、医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、前述の治療有効量とは、0.1~3000mgの前記抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントを含む組成物の単位用量を指す。
【0037】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、前述のいずれか1つに記載の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメントをコードするか、または前述の単離されたモノクローナル抗体もしくはその抗原結合フラグメントをコードする、核酸分子を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、前述の核酸分子を含む宿主細胞を提供する。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、前述のいずれか1つに記載の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメントを使用するステップ、または前述の単離されたモノクローナル抗体もしくはその抗原結合フラグメントを使用するステップを含む、PD-1の免疫検出または決定のための方法を提供する。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、前述の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは前述の単離されたモノクローナル抗体もしくはその抗原結合フラグメントを含む、キットを提供する。
【0041】
いくつかの実施形態では、PD-1関連疾患の診断用薬剤を調製する際の前述の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントの使用が提供される。
【0042】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、治療有効量の前述のいずれか1つに記載の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または前述の単離されたモノクローナル抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または前述の医薬組成物、または前述の核酸分子を対象に投与することを含む、疾患を処置するための方法を提供する。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記疾患は腫瘍である。
【0044】
いくつかの他の実施形態では、前記疾患は、頭頸部扁平上皮癌(head and neck squamous cell carcinoma)、頭頸部癌、脳腫瘍、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系癌、神経内分泌腫瘍、咽頭癌、鼻咽頭癌、食道癌、甲状腺癌、悪性胸膜中皮腫、肺癌、乳癌、肝臓癌、ヘパトーマ(hepatoma)、肝細胞癌、肝胆道癌、膵臓癌、胃癌、胃腸癌、腸癌、結腸癌、結腸直腸癌、腎臓癌、淡明細胞型腎細胞癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、皮膚癌、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨肉腫、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮癌、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイドーシスおよびメルケル細胞癌からなる群から選択される;これらの実施形態のいくつかでは、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫(T-cell/histiocyte rich large B-cell lymphoma)およびリンパ形質細胞性リンパ腫からなる群から選択され、前記肺癌は、非小細胞肺癌および小細胞肺癌からなる群から選択され、前記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病および骨髄性白血病からなる群から選択される;いくつかの他の実施形態では、前記疾患は、PD-L1陽性黒色腫(PD-L1 positive melanoma)、肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、腸癌および結腸癌からなる群から選択される。
【0045】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、疾患の処置または予防のための薬剤を調製する際の、前述のいずれか1つに記載の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または前述の単離されたモノクローナル抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または前述の医薬組成物、または前述の核酸分子の使用を提供する。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記疾患は腫瘍である。
【0047】
いくつかの他の実施形態では、前記疾患は、頭頸部扁平上皮癌(head and neck squamous cell carcinoma)、頭頸部癌、脳腫瘍、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系癌、神経内分泌腫瘍、咽頭癌、鼻咽頭癌、食道癌、甲状腺癌、悪性胸膜中皮腫、肺癌、乳癌、肝臓癌、ヘパトーマ(hepatoma)、肝細胞癌、肝胆道癌、膵臓癌、胃癌、胃腸癌、腸癌、結腸癌、結腸直腸癌、腎臓癌、淡明細胞型腎細胞癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、皮膚癌、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨肉腫、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮癌、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイドーシスおよびメルケル細胞癌からなる群から選択される;これらの実施形態のいくつかでは、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫(T-cell/histiocyte rich large B-cell lymphoma)およびリンパ形質細胞性リンパ腫からなる群から選択され、前記肺癌は、非小細胞肺癌および小細胞肺癌からなる群から選択され、前記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病および骨髄性白血病からなる群から選択される;いくつかの他の実施形態では、前記疾患は、PD-L1陽性黒色腫(PD-L1 positive melanoma)、肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、腸癌および結腸癌からなる群から選択される。
【0048】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、薬剤として使用するための、前述のいずれか1つに記載の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または前述の単離されたモノクローナル抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または前述の核酸分子、または前述の医薬組成物を提供する。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記薬剤は、PD-1関連疾患の処置または予防のために使用される。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記疾患は腫瘍である。
【0051】
いくつかの他の実施形態では、前記疾患は、頭頸部扁平上皮癌(head and neck squamous cell carcinoma)、頭頸部癌、脳腫瘍、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系癌、神経内分泌腫瘍、咽頭癌、鼻咽頭癌、食道癌、甲状腺癌、悪性胸膜中皮腫、肺癌、乳癌、肝臓癌、ヘパトーマ(hepatoma)、肝細胞癌、肝胆道癌、膵臓癌、胃癌、胃腸癌、腸癌、結腸癌、結腸直腸癌、腎臓癌、淡明細胞型腎細胞癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、皮膚癌、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨肉腫、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮癌、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイドーシスおよびメルケル細胞癌からなる群から選択される;これらの実施形態のいくつかでは、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫(T-cell/histiocyte rich large B-cell lymphoma)およびリンパ形質細胞性リンパ腫からなる群から選択され、前記肺癌は、非小細胞肺癌および小細胞肺癌からなる群から選択され、前記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病および骨髄性白血病からなる群から選択される;いくつかの他の実施形態では、前記疾患は、PD-L1陽性黒色腫(PD-L1 positive melanoma)、肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、腸癌および結腸癌からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】PD-1のそのリガンドへの結合を遮断する抗PD-1抗体の試験結果。
【
図2】PBMC細胞からのIFNγの分泌に対する抗PD-1抗体の効果。
【
図3】マウスにおける結腸癌MC38の異種移植腫瘍に対する抗PD-1抗体の有効性。
【
図4】マウスにおける結腸癌MC38の腫瘍体積に対する抗PD-1抗体の効果。
【発明を実施するための形態】
【0053】
<概要>
本開示をより容易に理解できるようにするために、特定の技術的および科学的用語を以下に具体的に定義する。本明細書で別に明確に定義されていない限り、本明細書で使用される他のすべての技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。
【0054】
「programmed death 1」、「programmed cell death 1」、「タンパク質PD-1」、「PD-1」、「PDCD1」および「hPD-1」という用語は互換的に使用され、ヒトPD-1バリアント、アイソタイプ、種ホモログ(species homologs)、およびPD-1と共通の少なくとも一つのエピトープを有する類似体(analogs)を含む。完全なPD-1配列は、GenBankアクセッション番号(GenBank accession number)U64863で見つけることができる。
【0055】
「programmed death ligand-1 (PD-L1)」という用語は、PD-1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンドの1つ(もう1つはPD-L2)であり、PD-1に結合するとT細胞活性化およびサイトカイン分泌をダウンレギュレートする。本明細書で使用される「PD-L1」という用語は、ヒトPD-L1(hPD-L1)、hPD-L1バリアント、アイソタイプおよび種間ホモログ、ならびにhPD-1と共通の少なくとも1つのエピトープを有する5つの類似体を含む。完全なhPD-L1配列は、GenBankアクセッション番号Q9NZQ7で見つけることができる。
【0056】
「サイトカイン」という用語は、細胞の集団によって放出され、細胞間メディエーターとして他の細胞に作用するタンパク質の一般的な用語である。このようなサイトカインの例には、リンホカイン、モノカイン、ケモカインおよび従来のポリペプチドホルモンが含まれる。例示的なサイトカインには、ヒトIL-2、IFN-γ、IL-6、TNFα、IL-17およびIL-5が含まれる。
【0057】
本開示で使用されるアミノ酸の3文字コードおよび1文字コードは、J. biol. chem, 243, 3558頁(1968年)に記載されるとおりである。
【0058】
本開示に記載される「抗体」は、一般に免疫グロブリンを指す。天然のインタクト抗体は、鎖間ジスルフィド結合によって連結された2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖から構成されるテトラペプチド鎖構造である。免疫グロブリン重鎖定常領域のアミノ酸組成および配列が異なるため、それらの抗原性も異なる。これにより、免疫グロブリンは5つのクラスに分類されるか、または免疫グロブリンのアイソタイプ、すなわちIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEと命名され得、それらの対応する重鎖はそれぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖およびε鎖である。同じクラスのIgは、ヒンジ領域のアミノ酸組成の違いならびに重鎖ジスルフィド結合の数および位置に応じて、異なるサブクラスに分類することができる。例えば、IgGはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4に分類することができる。軽鎖は、定常領域の違いによりκ鎖またはλ鎖に分類される。Igの5つクラスのそれぞれは、κ鎖またはλ鎖を有し得る。本開示で言及される抗体には、抗体またはその抗原結合フラグメントが含まれ、抗原に結合する能力を保持しながら免疫グロブリンに基づいて改変された抗体またはその抗原結合フラグメントを含み;単一特異性抗体、二重特異性抗体または多重特異性抗体を含み;一価抗体、二価抗体または多価抗体も含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、少なくとも1つのVH-CH1および少なくとも1つのVL-CL構造を含むものであり得、当該VHおよびVL構造は、鎖間相互作用に基づいて互いに接近することができ、抗原結合能力を保持することができる。いくつかの実施形態では、抗体の抗原結合フラグメントは、一価のFabフラグメント(Fab1フラグメント)、二価のFabフラグメント(F(ab)2)、三価のFabフラグメント(F(ab)3)、多価(2価以上)のFabフラグメントであり、少なくとも1つのFabフラグメントを含む他の単一特異性、二重特異性または多重特異性抗原結合フラグメントであり得る。
【0059】
「二重特異性抗体」とは、2つの異なる抗原または同じ抗原の2つの異なるエピトープに特別に結合することができる抗体(抗体またはその抗原結合フラグメント、例えば一本鎖抗体を含む)を指す。先行技術は、さまざまな構造を有する二重特異性抗体を開示している。IgG分子の完全性(integrity)に応じて、それらはIgG様二重特異性抗体と抗体フラグメント型二重特異性抗体に分類することができる。抗原結合領域の数および構成に応じて、それらは二価、三価、四価、またはより多価の二重特異性抗体に分類することができる。構造が対称であるかどうかに応じて、それらは対称構造二重特異性抗体と非対称構造二重特異性抗体に分類することができる。それらの中で、抗体フラグメントベースの二重特異性抗体、例えば、Fcフラグメントを欠くFabフラグメントは、1つの分子内の2つ以上のFabフラグメントに結合することによって二重特異性抗体を形成する。これらの抗体は、免疫原性が低く、分子量が小さく、腫瘍組織透過性が高い。このタイプの典型的な抗体構造は、F(ab)2、scFv-Fab、(scFv)2-Fabなどの二重特異性抗体である;IgG様二重特異性抗体(例えば、Fcフラグメントを含む)の場合、このタイプの抗体はより大きな分子量を有する。Fcフラグメントは、後の段階での抗体の精製を助け、その溶解性および安定性を向上させる。Fc部分はまた受容体FcRnに結合し、抗体の血清半減期を増加させ得る。典型的な二重特異性抗体構造モデルは、例えば、KiH、CrossMAb、Triomab quadroma、FcΔAdp、ART-Ig、BiMAb、Biclonics、BEAT、DuoBody、Azymetric、XmAb、2:1 TCBs、1Fab-IgG TDB、FynomAb、two-in-one/DAF、scFv-Fab-IgG、DART-Fc、LP-DART、CODV-Fab-TL、HLE-BiTE、F(ab)2-CrossMAb、IgG-(scFv)2、Bs4Ab、DVD-Ig、Tetravalent-DART-Fc、(scFv)4-Fc、CODV-Ig、mAb2、F(ab)4-CrossMAbおよび他の二重特異性抗体などである(Aran F. Labrijn et al., Nature Reviews Drug Discovery 第18巻,585-608頁(2019年);Chen S1 et al., J Immunol Res. 2019年2月11日;2019年:4516041頁参照)。
【0060】
「一価」、「二価」、「三価」または「多価」という用語は、抗体またはポリペプチド複合体における特定の数の抗原結合部位の存在を指す。例えば、「一価抗体」は、当該抗体に1つの抗原結合部位があることを意味し、「一価ポリペプチド複合体」は、当該ポリペプチド複合体に1つの抗原結合部位があることを意味する;「二価抗体」は、当該抗体に2つの抗原結合部位があることを意味し、「二価ポリペプチド複合体」は、当該ポリペプチド複合体に2つの抗原結合部位があることを意味する;「三価抗体」は、当該抗体に3つの抗原結合部位があることを意味し、「三価ポリペプチド複合体」は、当該ポリペプチド複合体に3つの抗原結合部位があることを意味する;「多価抗体」は、当該抗体に複数(3つ以上)の抗原結合部位があることを意味し、「多価ポリペプチド複合体」は、当該ポリペプチド複合体に複数(2つ以上)の抗原結合部位があることを意味する。
【0061】
「抗体融合タンパク質」という用語は、目的のタンパク質(ポリペプチド)を免疫グロブリンに連結することによって形成される、生物学的に活性な融合タンパク質を指す。融合タンパク質は、連結されたタンパク質と免疫グロブリンの両方の生物学的活性を有する。
【0062】
抗体の重鎖および軽鎖のN末端付近の約110アミノ酸の配列は大きく変化し、可変領域(Fv領域)である;C末端付近の残りのアミノ酸配列は比較的安定しており、定常領域である。可変領域は、3つの超可変領域(HVR)と比較的保存的な配列を有する4つのフレームワーク領域(FR)を含む。抗体の特異性を決定する3つの超可変領域は、相補性決定領域(CDR)としても知られている。軽鎖可変領域(VL)および重鎖可変領域(VH)のそれぞれは、3つのCDR領域と4つのFR領域からなる。アミノ末端からカルボキシル末端への順序は、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4である。軽鎖の3つのCDR領域は、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を指し、重鎖の3つのCDR領域は、HCDR1、HCL2およびHDR3を指す。
【0063】
本開示の抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および完全ヒト抗体、好ましくはヒト化抗体を含む。
【0064】
本開示における「マウス抗体」という用語は、当技術分野の知識および技術に従って調製された、ヒトPD-1に対するモノクローナル抗体である。調製中に、試験対象にPD-1抗原を注射し、次に、所望の配列または機能特性を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離する。本開示の好ましい実施形態では、マウス抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントは、マウスκ、λ鎖もしくはそれらのバリアントの軽鎖定常領域をさらに含むことができるか、またはマウスIgG1、IgG2、IgG3もしくはそれらのバリアントの重鎖定常領域をさらに含むことができる。
【0065】
「キメラ抗体」は、マウス抗体の可変領域をヒト抗体の定常領域と融合させることによって形成される抗体であり、マウス抗体によって誘導される免疫応答を軽減することができる。キメラ抗体を確立することは、まずマウスの特定のモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを確立すること、次にマウスハイブリドーマ細胞から可変領域遺伝子をクローニングすること、次に必要に応じてヒト抗体の定常領域遺伝子をクローニングすること、該マウス可変領域遺伝子を該ヒト定常領域遺伝子に連結してキメラ遺伝子を形成すること、該キメラ遺伝子を発現ベクターに挿入すること、および、最後に真核生物システムまたは原核生物システムでキメラ抗体分子を発現させることを必要とする。本開示の好ましい実施形態では、PD-L1キメラ抗体の抗体軽鎖は、ヒトκ、λ鎖またはそれらのバリアントの軽鎖定常領域をさらに含む。PD-1キメラ抗体の抗体重鎖は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはそれらのバリアントの重鎖定常領域をさらに含み、好ましくは、ヒトIgG1、IgG2もしくはIgG4の重鎖定常領域を含むか、またはアミノ酸変異(例えば、L234Aおよび/もしくはL235A変異、ならびに/またはS228P変異)を有するIgG1、IgG2もしくはIgG4バリアントを含む。
【0066】
CDR移植抗体としても知られる「ヒト化抗体」という用語は、マウスCDR配列をヒト抗体可変領域のフレームワークに移植することによって産生される抗体、すなわち、異なるタイプのヒト生殖細胞系列抗体フレームワーク配列で産生される抗体を指す。ヒト化抗体は、大量のマウスタンパク質成分を保有するため、キメラ抗体によって誘導される異種反応を克服することができる。そのようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベースまたは公開された参考文献から入手することができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系列配列データベース(インターネットwww.mrccpe.com.ac.uk/vbaseで入手可能)およびKabat, EA, et al. 1991年 Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版に見出すことができる。免疫原性の低下によって同時に引き起こされる活性の低下を回避するために、ヒト抗体可変領域フレームワーク配列を最小限の逆変異または復帰変異に供して、活性を維持することができる。本開示のヒト化抗体は、酵母ディスプレイによるCDR親和性成熟をさらに受けたヒト化抗体も含む。
【0067】
抗原と接触している残基のために、CDR移植は、抗原と接触しているフレームワーク残基のために、産生された抗体またはその抗原結合フラグメントの抗原に対する親和性の低下をもたらす可能性がある。このような相互作用は体細胞超変異の結果である可能性がある。したがって、そのようなドナーフレームワークアミノ酸をヒト化抗体のフレームワークに移植することが依然として必要であるかもしれない。抗原結合に関与し、非ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに由来するアミノ酸残基は、動物のモノクローナル抗体可変領域の配列および構造を調べることによって同定することができる。生殖細胞系列とは異なるCDRドナーフレームワークの残基は、関連していると見なすことができる。最も近い生殖細胞系列を決定することができない場合、その配列は、サブクラスまたは高い類似性パーセンテージを有する動物抗体配列のコンセンサス配列と比較され得る。まれなフレームワーク残基は、体細胞超変異の結果と考えられ、したがって結合において重要な役割を果たしている。
【0068】
本開示の一実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒトまたはマウスのκ、λ鎖またはそれらのバリアントの軽鎖定常領域をさらに含むことができるか、あるいはヒトまたはマウスのIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはそれらのバリアントの重鎖定常領域をさらに含むことができ、好ましくは、ヒトIgG1、IgG2もしくはIgG4、またはアミノ酸変異(例えば、L234Aおよび/もしくはL235A変異、ならびに/またはS228P変異)を有するIgG1、IgG2もしくはIgG4バリアントの重鎖定常領域を含むことができる。
【0069】
本開示に記載されるヒト抗体重鎖定常領域およびヒト抗体軽鎖定常領域の「従来のバリアント」は、先行技術において開示されており、抗体可変領域の構造および機能を変化させない、重鎖定常領域または軽鎖定常領域のバリアントを指す。例示的なバリアントには、重鎖定常領域の部位特異的改変およびアミノ酸置換を伴うIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4重鎖定常領域バリアントが含まれる。具体的な置換は、YTE変異、L234Aおよび/もしくはL235A変異、S228P変異、ならびに/または当技術分野で既知のノブ-イントゥ-ホール(knob-into-hole)構造を得る(抗体重鎖がノブ-Fcおよびホール-Fcの組み合わせを有するようにする)ための変異などである。これらの変異は、抗体に新しい特性をもたらすことが確認されているが、抗体可変領域の機能は変化させない。
【0070】
「HuMAb」、「ヒト抗体」、「完全ヒト抗体(fully human antibody)」および「完全ヒト抗体(complete human antibody)」は互換的に使用することができ、ヒト由来の抗体、または抗原刺激に応答して特定のヒト抗体を産生するように「操作」された遺伝子改変生物から得られる抗体を指すことができ、当技術分野で既知の任意の方法によって産生することができる。いくつかの技術では、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子座の要素が胚性幹細胞株に由来する生物の細胞株に導入され、ここで、内因性重鎖および軽鎖遺伝子座はこれらの細胞に含まれる当該内因性重鎖および軽鎖遺伝子座を標的とするものによって標的破壊されている。トランスジェニック生物は、ヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、該生物は、ヒト抗体を分泌するハイブリドーマを産生するために使用することができる。ヒト抗体はまた、重鎖および軽鎖が1つ以上のヒトDNA供給源に由来するヌクレオチド配列によってコードされる抗体であり得る。完全ヒト抗体はまた、伝子または染色体トランスフェクション法およびファージディスプレイ技術によって構築され得るか、またはin vitroで活性化されたB細胞から構築され得、これらはすべて当技術分野で知られている。
【0071】
「全長抗体(full-length antibody)」、「インタクト抗体(intact antibody)」、「完全抗体(complete antibody)」および「全抗体(whole antibody)」という用語は、本明細書では互換的に使用され、以下に定義される抗原結合フラグメントとは区別される、実質的に無傷の形態(intact form)の抗体を指す。これらの用語は、具体的には、重鎖がFc領域を含む抗体を指す。
【0072】
抗体の「抗原結合フラグメント」または「機能的フラグメント」という用語は、抗原(例えば、PD-1)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを指す。全長抗体のフラグメントを使用して、抗体の抗原結合機能を実行できることが示されている。抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に含まれる結合フラグメントの例には、以下が含まれる:(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結された2つのFabフラグメントの二価フラグメントを含む、F(ab’)2フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなる、Fdフラグメント;(iv)抗体の片方のアームのVHおよびVLドメインから構成される、Fvフラグメント;(v)VHドメインからなる、単一ドメインまたはdAbフラグメント(Ward et al.,(1989年)Nature 341:544-546頁);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)または(vii)任意に合成リンカーによって連結された2つ以上の単離されたCDRの組み合わせ。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされているが、組換え法を使用して、合成リンカーによってそれらを連結して、VLおよびVH領域がペアになって一価分子を形成した一本のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)と呼ばれる;例えば、Bird et al.(1988年)Science 242:423-426頁;およびHuston et al(1988年)Proc. Natl. Acad. Sci USA85:5879-5883頁を参照)として生成できるようにすることができる。そのような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に含まれることが意図されている。このような抗体フラグメントは、当技術分野で既知の従来技術を使用することによって得られ、フラグメントの機能は、インタクト抗体の機能と同じ方法でスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術によって、またはインタクト免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的切断によって生成され得る。抗体は、異なるアイソタイプの抗体、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgM抗体であり得る。
【0073】
本開示の抗原結合フラグメントには、Fab、F(ab’)2、Fab’、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(ダイアボディ)、ジスルフィド結合安定化V領域(dsFv)、CDR含有ペプチドなどが含まれる。
【0074】
Fabは、約50,000の分子量を有し、抗原結合活性を有する抗体フラグメントであり、IgG抗体分子をプロテアーゼのパパイン(H鎖の位置224のアミノ酸残基を切断する)で処理することによって得られ、H鎖のN末端側の約半分とL鎖全体がジスルフィド結合によって結合している。
【0075】
本開示のFabは、パパインを使用して、ヒトPD-1を特異的に認識し、細胞外領域のアミノ酸配列またはその三次元構造に結合する本開示のモノクローナル抗体を処理することによって産生され得る。さらに、Fabは、抗体のFabをコードするDNAを原核生物発現ベクターまたは真核生物発現ベクターに挿入すること、および該ベクターを原核生物または真核生物に導入してFabを発現させることによって産生され得る。
【0076】
F(ab’)2は、約100,000の分子量を有し、抗原結合活性を有し、ヒンジ位置で連結された2つのFab領域を含む抗体フラグメントであり、IgGのヒンジ領域における2つのジスルフィド結合の下部(lower part)を酵素ペプシンで消化することによって得られる。
【0077】
本開示のF(ab’)2は、ペプシンを使用して、ヒトPD-1を特異的に認識し、細胞外領域のアミノ酸配列またはその三次元構造に結合する本開示のモノクローナル抗体を処理することによって産生され得る。さらに、F(ab’)2は、以下に説明するFab’をチオエーテル結合またはジスルフィド結合で連結することによって産生され得る。
【0078】
Fab’は、約50,000の分子量を有し、抗原結合活性を有する抗体フラグメントであり、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる。本開示のFab’は、ジチオスレイトールなどの還元剤を使用して、PD-1を特異的に認識し、細胞外領域のアミノ酸配列またはその立体構造に結合する本開示のF(ab’)2を処理することによって産生され得る。
【0079】
さらに、Fab’は、抗体のFab’フラグメントをコードするDNAを原核生物発現ベクターまたは真核生物発現ベクターに挿入すること、および、次いで該ベクターを原核生物または真核生物に導入してFab’を発現させることによって産生され得る。
【0080】
「一本鎖抗体」、「一本鎖Fv」、または「scFv」という用語は、リンカーによって連結された抗体重鎖可変ドメイン(または領域;VH)および抗体軽鎖可変ドメイン(または領域;VL)を含む分子を指す。このようなscFv分子は、NH2-VL-リンカー-VH-COOHまたはNH2-VH-リンカー-VL-COOHという一般構造を有し得る。先行技術における適切なリンカーは、繰り返しGGGGSアミノ酸配列またはそのバリアント、例えば1~4個の繰り返し配列を有するバリアントからなる(Holliger et al.(1993年),Proc Natl Acad Sci USA.90:6444-6448頁)。本開示で使用され得る他のリンカーは、Alfthan et al.(1995年),Protein Eng.8:725-731頁、Choi et al.(2001年),Eur J Immuno.31:94-106頁、Hu et al.(1996年),Cancer Res.56:3055-3061頁、Kipriyanov et al.(1999年),J Mol Biol.293:41-56頁、およびRoovers et al.(2001年),Cancer Immunol.に記載されている。
【0081】
本開示のscFvは、以下のステップによって産生され得る:ヒトPD-1を特異的に認識し、細胞外領域のアミノ酸配列またはその三次元構造に結合する本開示のモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得するステップ、scFvをコードするDNAを構築するステップ、該DNAを原核生物発現ベクターまたは真核生物発現ベクターに挿入するステップ、および、次いで該発現ベクターを原核生物または真核生物に導入してscFvを発現させるステップ。
【0082】
ダイアボディは、scFvが二量体化した抗体フラグメントであり、二価の抗原結合活性を有する抗体フラグメントである。二価の抗原結合活性において、2つの抗原は同じであっても異なっていてもよい。
【0083】
本開示のダイアボディは、以下のステップによって産生され得る:ヒトPD-1を特異的に認識し、細胞外領域のアミノ酸配列またはその三次元構造に結合する本開示のモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得するステップ、ペプチドリンカーの長さが8アミノ残基以下になるようにscFvをコードするDNAを構築するステップ、該DNAを原核生物発現ベクターまたは真核生物発現ベクターに挿入するステップ、および、次いで該発現ベクターを原核生物または真核生物に導入してダイアボディを発現させるステップ。
【0084】
dsFvは、VHおよびVLのそれぞれの1つのアミノ酸残基がシステイン残基で置換されたポリペプチドを、それら2つのシステイン残基間のジスルフィド結合を介して連結することによって得られる。システイン残基で置換されるアミノ酸残基は、抗体の三次元構造の予測に基づいて、既知の方法(Protein Engineering,7,697(1994年))に従って選択することができる。
【0085】
本開示のdsFvは、以下のステップによって産生され得る:ヒトPD-1を特異的に認識し、細胞外領域のアミノ酸配列またはその三次元構造に結合する本開示のモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得するステップ、dsFvをコードするDNAを構築するステップ、該DNAを原核生物発現ベクターまたは真核生物発現ベクターに挿入するステップ、および、次いで該発現ベクターを原核生物または真核生物に導入してdsFvを発現させるステップ。
【0086】
CDR含有ペプチドは、VHまたはVLのCDRを含む1つ以上の領域によって構築される。複数のCDRを含有するペプチドは、直接的にまたは適切なペプチドリンカーを介して連結され得る。
【0087】
本開示のCDR含有ペプチドは、以下のステップによって産生され得る:ヒトPD-1を特異的に認識し、細胞外領域のアミノ酸配列またはその三次元構造に結合する本開示のモノクローナル抗体のVHおよびVLのCDRをコードするDNAを構築するステップ、該DNAを原核生物発現ベクターまたは真核生物発現ベクターに挿入するステップ、および、次いで該発現ベクターを原核生物または真核生物に導入してペプチドを発現させるステップ。CDR含有ペプチドは、化学合成法、例えばFmoc法またはtBoc法によっても産生され得る。
【0088】
「アミノ酸差異」または「アミノ酸変異」という用語は、元のタンパク質またはポリペプチドと比較した、タンパク質またはポリペプチドバリアントにおけるアミノ酸の変化または変異の存在を指し、元のタンパク質またはポリペプチドに基づいて1つ、2つ、3つまたはそれ以上のアミノ酸挿入、欠失または置換を有することを含む。
【0089】
「抗体フレームワーク」または「FR領域」という用語は、可変ドメインの抗原結合ループ(CDR)のためのスキャフォールドとして機能する、可変ドメインVLまたはVHの部分を指す。基本的に、それはCDRのない可変ドメインである。
【0090】
「相補性決定領域」、「CDR」または「超可変領域」という用語は、主に抗原結合に寄与する抗体の可変ドメイン内の6つの超可変領域のうちの1つを指す。一般に、各重鎖可変領域には3つのCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)かあり、各軽鎖可変領域には3つのCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)がある。「Kabat」番号付け基準(Kabat et al.(1991年)、“Sequences of Proteins of Immunological Interest”、第5版、アメリカ公衆衛生局、米国国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州を参照)、「Chothia」番号付け基準(Al-Lazikani et al.,(1997年)JMB 273:927-948頁を参照)およびImmunoGenTics(IMGT)番号付け基準(Lefranc M. P., Immunologist、7、132-136頁(1999年);Lefranc, M. P., et al., Dev. Comp. Immunol., 27、55-77頁(2003年))などを含む、よく知られたスキームのいずれか1つを使用して、CDRのアミノ酸配列境界を決定することができる。例えば、古典的なフォーマットの場合、Kabat基準に従うと、重鎖可変ドメイン(VH)のCDRアミノ酸残基の番号付けは31-35(HCDR1)、50-65(HCDR2)および95-102(HDR3)であり、軽鎖可変ドメイン(VL)のCDRアミノ酸残基の番号付けは24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)および89-97(LCDR3)である。Chothia基準に従うと、VHのCDRアミノ酸残基の番号付けは26-32(HDR1)、52-56(HDR2)および95-102(HDR3)であり、VLのアミノ酸残基の番号付けは26-32(LCDR1)、50-52(LCDR2)および91-96(LCDR3)である。KabatとChothiaの両方のCDR定義の組み合わせによると、CDRは、ヒトVHのアミノ酸残基26-35(HCL1)、50-65(HCR2)、および95-102(HDR3)と、ヒトVLのアミノ酸残基24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)および89-97(LCDR3)とからなる。IMGT基準に従うと、VHのCDRアミノ酸残基の番号付けはおよそ26-35(CDR1)、51-57(CDR2)および93-102(CDR3)であり、VLのCDRアミノ酸残基の番号付けはおよそ27-32(CDR1)、50-52(CDR2)および89-97(CDR3)である。IMGT基準に従って、抗体のCDR領域は、IMGT/DomainGap Alignプログラムを使用して決定することができる。
【0091】
「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原上の部位(例えば、PD-L1分子上の特定の部位)を指す。エピトープは、通常、固有の空間コンホメーション中に、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個の連続または非連続アミノ酸を含む。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、第66巻、G.E. Morris編(1996年)を参照されたい。
【0092】
「特異的に結合する(specifically binds)」、「選択的に結合する(selectively binds)」、「選択的に結合する(binds selectively)」および「特異的に結合する(binds specifically)」という用語は、所定の抗原上のエピトープへの抗体の結合を指す。一般に、抗体は、約10-8M未満、例えば、約10-9M、10-10Mもしくは10-11M未満またはそれ以下の親和性(KD)で結合する。
【0093】
「KD」または「KD」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。一般に、本開示の抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用してBIACORE装置で測定した場合、約10-7M未満、例えば約10-8Mまたは10-9M未満の解離平衡定数(KD)でPD-1に結合する。
【0094】
「競合」という用語が同じエピトープに対して競合する抗原結合タンパク質(例えば、中和抗原結合タンパク質または中和抗体)との関連において使用される場合、それは抗原結合タンパク質間の競合を指し、以下のアッセイによって決定することができる:当該アッセイでは、試験される抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその免疫学的に機能的なフラグメント)が、共通抗原(例えば、PD-1またはそのフラグメント)への参照抗原結合タンパク質(例えば、リガンドまたは参照抗体)の特異的結合を防止または阻害する(例えば、低減する)。ある抗原結合タンパク質が別の抗原結合タンパク質と競合するかどうかを決定するために、多数のタイプの競合結合アッセイを使用することができる。これらのアッセイは、例えば、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al, 1983年, Methods in Enzymology 9: 242-253頁を参照);固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Kirkland et al, 1986年, J. Immunol. 137: 3614-3619頁)、固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane, 1988年, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Pressを参照);I-125標識を用いた固相直接標識RIA(例えば、Morel et al, 1988年, Molec. Immunol. 25: 7-15頁);固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Cheung et al., 1990年, Virology 176: 546-552頁を参照);および直接標識RIA(Moldenhauer et al, 1990年, Scand. J. Immunol. 32: 77-82頁)である。一般に、アッセイは、試験される非標識抗原結合タンパク質または標識参照抗原結合タンパク質のいずれかを保有する固体表面または細胞に結合した精製抗原を使用することを含む。競合阻害は、試験される抗原結合タンパク質の存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を測定することによって測定される。通常、試験されている抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合アッセイによって同定される抗原結合タンパク質(競合抗原結合タンパク質)には、以下のものが含まれる:参照抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質;および参照抗原結合タンパク質の結合エピトープに十分に近い隣接するエピトープに結合する抗原結合タンパク質(ここで、それら2つのエピトープは互いに立体的に結合を妨げる)。競合的結合を決定するために使用される方法に関するさらなる詳細は、本明細書の実施例に提供されている。通常、競合抗原結合タンパク質が過剰に存在する場合、それは、共通抗原への参照抗原結合タンパク質の特異的結合を少なくとも40~45%、45~50%、50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~75%または75%以上阻害(例えば、低減)する。場合によっては、結合は、少なくとも80~85%、85~90%、90~95%、95~97%、または97%以上阻害される。
【0095】
本明細書で使用される「核酸分子」という用語は、DNA分子およびRNA分子を指す。核酸分子は一本鎖または二本鎖であり得、好ましくは二本鎖DNAまたは一本鎖mRNAもしくは修飾mRNA(modified mRNA)である。核酸が別の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合、その核酸は「作動可能に連結」されている。例えば、プロモーターまたはエンハンサーがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、該プロモーターまたはエンハンサーはそのコード配列に作動可能に連結されている。
【0096】
「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。一実施形態では、ベクターは「プラスミド」であり、プラスミドとは、追加のDNAセグメントが連結され得る環状の二本鎖DNAループを指す。別の実施形態では、ベクターは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムに連結され得るウイルスベクターである。本明細書に開示されるベクターは、それらが導入された宿主細胞において自律的に複製することができるか(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)、または宿主細胞に導入された後に宿主細胞のゲノムに組み込まれて、宿主ゲノムと一緒に複製することができる(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)。
【0097】
抗体および抗原結合フラグメントを産生および精製するための方法は、先行技術において周知である。例えば、Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor、第5~8章および第15章。例えば、マウスをヒトPD-1またはそのフラグメントで免疫化することができ、得られた抗体を再生、精製することができ、アミノ酸配列決定を従来の方法で行うことができる。抗原結合フラグメントも、従来の方法で調製することができる。遺伝子工学的方法を使用することによって、1つ以上のヒトFR領域が、本発明の抗体または抗原結合フラグメントの非ヒトCDR領域に付加される。ヒトFR生殖細胞系列配列は、ImmunoGeneTics(IMGT)Webサイトhttp://imgt.cines.frから、IMGTヒト抗体可変領域生殖細胞系列遺伝子データベースおよびMOEソフトウェアを比較することによって取得され得るか、またはThe Immunoglobulin FactsBook、2001ISBN012441351から取得され得る。
【0098】
「宿主細胞」という用語は、発現ベクターが導入された細胞を指す。宿主細胞には、細菌、微生物、植物または動物細胞が含まれ得る。容易に形質転換され得る細菌には、腸内細菌科のメンバー、例えば大腸菌(Escherichia coli)またはサルモネラ菌株;バチルス科、例えば枯草菌;肺炎球菌;連鎖球菌およびインフルエンザ菌が含まれる。適切な微生物には、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)が含まれる。適切な動物宿主細胞株には、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞株)およびNS0細胞が含まれる。
【0099】
本開示の操作された抗体または抗原結合フラグメントは、従来の方法によって調製および精製することができる。例えば、重鎖および軽鎖をコードするcDNA配列をクローニングし、GS発現ベクターに組み込むことができる。組換え免疫グロブリン発現ベクターをCHO細胞に安定的にトランスフェクトすることができる。より推奨される先行技術として、哺乳動物発現系は、特にFc領域の高度に保存されたN末端部位において、抗体のグリコシル化をもたらすことができる。安定なクローンは、ヒトPD-1に特異的に結合する抗体を発現させることによって得られる。陽性クローンをバイオリアクターの無血清培地で増殖させて、抗体を産生する。抗体が分泌された培養培地は、従来の技術により精製することができる。例えば、精製用に調整された緩衝液を含むAまたはGセファロースFFカラムを使用する。非特異的に結合する成分は洗い流される。次に、結合抗体をpH勾配法で溶出し、抗体フラグメントをSDS-PAGEで検出して回収する。抗体は、従来の方法によってろ過および濃縮することができる。可溶性混合物およびポリマーは、従来の方法、例えばモレキュラーシーブおよびイオン交換によって除去することもできる。得られた産物は、-70℃などで直ちに凍結するか、または凍結乾燥する必要がある。
【0100】
「投与する」、「与える」および「処置する」とは、動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、臓器または生体液に適用される場合、外因性の薬剤、治療用薬剤、診断用薬剤または組成物と、当該動物、ヒト、対象、細胞、組織、臓器または生体液との接触を指す。「投与する」、「与える」および「処置する」は、例えば、処置、薬物動態、診断、研究および実験方法を指すことができる。細胞の処置(処理)は、試薬と細胞との接触、および試薬と流体との接触を含み、ここで当該流体は細胞と接触している。「投与する」、「与える」および「処置する」はまた、例えば、試薬、診断、結合組成物によって、またはin vitroおよびex vivoで別の細胞によって、細胞を処置することを指す。「処置する」とは、ヒト、獣医または研究対象に適用される場合、治療的処置、予防または予防的措置(preventing or preventive measures)、研究および診断へのアプリケーションを指す。
【0101】
「処置」とは、内部または外部治療用薬剤、例えば本開示の結合化合物のいずれか1つを含む組成物を、該治療用薬剤が治療効果を有することが知られている疾患の1つ以上の症状を有する患者に投与することを指す。一般に、治療用薬剤は、処置された患者または集団における疾患の1つ以上の症状を軽減して、そのような症状の退行を誘発するか、またはそのような症状の発症を任意の臨床的に測定される程度まで抑制するのに有効な量で投与される。任意の特定の疾患症状を軽減するのに有効な治療用薬剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、さまざまな因子、例えば患者の病状、年齢および体重、ならびに患者において所望の治療効果を生み出す薬物の能力、に応じて変動する可能性がある。疾患症状が軽減されたかどうかは、その症状の重症度または進行を評価するために医師または他の医療従事者によって一般的に使用される任意の臨床試験方法によって評価することができる。本開示の実施形態(例えば、処置方法または製品)は、各標的疾患症状を軽減するのに効果的ではないかもしれないが、スチューデントのt検定、カイ2乗検定、マンおよびホイットニー(Mann and Whitney)のU検定、クラスカル-ウォリス(Kruskal-Wallis)検定(H検定)、ヨンクヒール-タプストラ(Jonckheere-Terpstra)検定およびウィルコクソン検定などの当技術分野で既知の任意の統計的検定によって決定した場合、統計的に有意な数の患者の標的疾患症状を軽減するはずである。
【0102】
「保存的改変」または「保存的置換」とは、タンパク質の生物学的活性を変化させることなく頻繁にその変更を行うことができるように、タンパク質中のアミノ酸を類似の特徴(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、主鎖コンホメーションおよび剛性など)を有する他のアミノ酸で置換することを指す。当業者は、一般的に言って、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換が生物学的活性を実質的に変化させないことを認識している(例えば、Watson et al.(1987年)Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings出版社、224頁(第4版)を参照)。さらに、類似の構造または機能を有するアミノ酸の置換が生物学的活性を破壊する可能性は低い。例示的な保存的置換は、以下の表「例示的なアミノ酸保存的置換」に示されている。
【0103】
【0104】
「有効量」または「有効用量」とは、任意の1つ以上の有益なまたは所望の治療結果を得るために必要な薬物、化合物または医薬組成物の量を指す。予防的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患の生化学、組織学および行動症状、その合併症、ならびに疾患の発生過程中に発生する中間の病理学的表現型を含む、リスクの排除または低減、重症度の低減または疾患の発症の遅延が含まれる。治療用途の場合、有益なまたは所望の結果には、臨床結果、例えば、本開示のさまざまな標的抗原関連障害の発生率を低下させることまたは該障害の1つ以上の症状を改善すること、該障害を処置するために必要な他の薬剤(agents)の投与量を減少させること、別の薬剤(agent)の効果を増強すること、および/または患者の本開示の標的抗原関連障害の進行を遅らせることが含まれる。
【0105】
「外因性」とは、状況に応じて、生物、細胞または人体の外部で産生される物質を指す。「内因性」とは、状況に応じて、細胞、生物または人体の内部で産生される物質を指す。
【0106】
「相同性」とは、2つのポリヌクレオチド配列間または2つのポリペプチド間の配列類似性を指す。比較される2つの配列中の位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットによって占められている場合、例えば、2つのDNA分子の各位置がアデニンによって占められている場合、それらの分子はその位置で相同である。2つの配列間の相同性パーセンテージは、2つの配列によって共有される一致したまたは相同な位置の数を、比較した位置の数で割ってから、100を掛けた(×100)関数である。例えば、最適な配列アラインメントにおいて、2つの配列中の10個の位置のうち6個が一致または相同である場合、それらの2つの配列は60%相同である;2つの配列中の100個の位置のうち95個が一致または相同である場合、それらの2つの配列は95%相同である。一般に、2つの配列がアラインメントされているとき、比較は最大の相同性パーセテージを与えるように行われる。例えば、比較はBLASTアルゴリズムによって行うことができ、当該BLASTアルゴリズムでは、各参照配列の全長にわたって各配列間の最大の一致を与えるようにアルゴリズムのパラメータが選択される。以下の参考文献は、配列分析によく使用されるBLASTアルゴリズムに関する:BLAST ALGORITHMS:Altschul, S. F. et al.,(1990年)J. Mol. Biol.215:403-410頁;Gish, W. et al.,(1993年)Nature Genet.3:266-272頁;Madden, T. L. et al.,(1996年)Meth. Enzymol.266:131-141頁;Altschul, S. F. et al.,(1997年)Nucleic Acids Res.25:3389-3402頁;Zhang, J. et al.,(1997年)Genome Res.7:649-656頁。NCBI BLASTによって提供されるような他の従来のBLASTアルゴリズムもまた、当業者によく知られている。
【0107】
本明細書で使用される「細胞」、「細胞株」および「細胞培養物」という表現は互換的に使用することができ、そのような名称はすべて子孫を含む。したがって、「形質転換体」および「形質転換細胞」という用語は、継代数に関係なく、初代試験細胞およびそれに由来する培養物を含む。意図的または非意図的な変異のために、すべての子孫がDNAの内容(DNA content)に関して完全に同じであるとは限らないことも理解されるべきである。元の形質転換細胞でスクリーニングされたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫が含まれる。別の名称が参照される場合、それは文脈から明確に理解される。
【0108】
本明細書で使用される「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」とは、例えば米国特許第4,683,195号に記載されるように、核酸、DNAおよび/またはDNAの特定部分の微量が増幅される手順または技術を指す。一般的に言えば、オリゴヌクレオチドプライマーを設計できるように、標的領域の末端または外側から配列情報を取得する必要がある;これらのプライマーは、増幅されるテンプレートの対応する鎖と配列が同一または類似である。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅される材料の末端と同一であり得る。PCRは、特定のRNA配列、全ゲノムDNAからの特定のDNA配列、および全細胞RNAから転写されたcDNA、ファージまたはプラスミド配列などを増幅するために使用され得る。一般的には、Mullis et al.(1987年)Cold Spring Harbor, Symp. Ouant. Biol. 51:263頁;Erlich編(1989年)PCR TECHNOLOGY(Stockton出版社、ニューヨーク)を参照されたい。本明細書で使用されるPCRは、核酸試験サンプルを増幅するための核酸ポリメラーゼ反応方法の一例と見なされるが、唯一の例ではなく、当該方法は、プライマーとしての既知の核酸および核酸ポリメラーゼを使用して、核酸の特定の部分を増幅または生成することを含む。
【0109】
「単離された」とは、精製された状態を指し、この場合、指定された分子が他の生体分子(例えば、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物)または他の材料(例えば、細胞残屑および増殖培地)を実質的に含まないことを意味する。一般に、「単離された」という用語は、本明細書に記載の化合物の実験的または治療的使用を著しく妨害する量で存在しない限り、これらの材料が完全に存在しないこと、または水、緩衝液もしくは塩が存在しないことを意味するものではない。
【0110】
「任意の」または「任意に」とは、続いて記載した出来事または状況が発生する可能性があるが、必ずしも発生するとは限らないことを意味し、その記載には、出来事または状況が発生する場合と発生しない場合が含まれる。例えば、「任意に1~3個の抗体重鎖可変領域を含む」とは、特定の配列の抗体重鎖可変領域が存在し得るが、存在する必要はないことを意味する。
【0111】
「医薬組成物」とは、本明細書に記載の化合物の1つ以上、またはその生理学的/薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグと、他の化学成分(例えば、生理学的/薬学的に許容される担体および賦形剤)とを含む混合物を意味する。医薬組成物の目的は、生物への投与を促進することであり、これは、有効成分の吸収を促進し、それによって生物学的活性を発揮する。
【0112】
「薬学的に許容される担体」という用語は、抗体または抗原結合フラグメントの送達のための製剤での使用に適した任意の不活性物質を指す。担体は、接着防止剤、結合剤、コーティング剤、崩壊剤、充填剤または希釈剤、防腐剤(抗酸化剤、抗菌剤または抗真菌剤など)、甘味料、吸収遅延剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝液などであり得る。適切な薬学的に許容される担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロパンジオール、ポリエチレングリコールなど)、デキストロース、植物油(例えば、オリーブ油)、生理食塩水、緩衝液、緩衝生理食塩水(buffered saline)、および等張剤(例えば、糖、ポリオール、ソルビトールおよび塩化ナトリウム)が含まれる。
【0113】
さらに、本開示は、標的抗原(例えばPD-1)陽性細胞に関連する疾患を処置するための薬剤であって、本開示の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントを有効成分として含む、薬剤を含む。
【0114】
本開示におけるPD-1に関連する疾患は、PD-1に関連する疾患である限り、限定されない。例えば、本開示の分子によって誘導される治療反応は、ヒトPD-1に結合し、次にPD-1ならびにそのリガンドPD-L1およびPD-L2の結合を阻害すること、またはPD-1を過剰発現する細胞を殺傷することによって達成され得る。したがって、治療用途に適した調製物および製剤において、本開示の分子は、腫瘍または癌、好ましくは黒色腫、結腸癌、乳癌、肺癌、胃癌、腸癌、腎臓癌、非小細胞肺癌、膀胱癌などを有する人々にとって非常に有用である。
【0115】
さらに、本開示は、標的抗原(例えば、ヒトPD-1)を特異的に認識して細胞外領域のアミノ酸配列またはその三次元構造に結合し、有効成分として使用される本開示の抗体または抗体フラグメントを含む、標的抗原(例えばPD-1)の免疫検出または決定のための方法、標的抗原(例えばPD-1)の免疫検出または決定のための試薬、標的抗原(例えばPD-1)を発現する細胞の免疫検出または決定のための方法、および標的抗原(例えばPD-1)陽性細胞に関連する疾患を診断するための診断用薬剤に関する。
【0116】
本開示において、標的抗原(例えばPD-1)の量を検出または測定するために使用される方法は、任意の既知の方法であり得る。例えば、免疫検出または測定方法が挙げられる。
【0117】
免疫検出または測定方法は、標識された抗原または抗体を使用して抗体または抗原の量を検出または測定する方法である。免疫検出または測定方法の例には、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIAまたはELISA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、発光イムノアッセイ、ウェスタンブロッティング、物理化学的方法などが含まれる。
【0118】
PD-1陽性細胞に関連する前述の疾患は、本開示の抗体または抗体フラグメントを使用してPD-1発現細胞を検出または測定することによって診断され得る。
【0119】
ポリペプチドを発現する細胞を検出するために、既知の免疫検出方法が使用され得、好ましくは免疫沈降、蛍光細胞染色、免疫組織化学的染色などが使用される。さらに、FMAT8100HTSシステム(Applied Biosystem)を用いた蛍光抗体染色法も使用され得る。
【0120】
本開示において、標的抗原(例えばPD-1)の検出または測定に使用されるin vivoサンプルは、標的抗原(例えばPD-1)を発現する細胞を含む可能性がある限り、特に制限はなく、例えば、組織球、血液、血漿、血清、膵液、尿、糞便、組織液または培養液である。
【0121】
必要な診断方法に応じて、本開示のモノクローナル抗体またはその抗体フラグメントを含む診断用薬剤はまた、抗原抗体反応を行うための試薬または当該反応を検出するための試薬を含むことができる。抗原抗体反応を行うために使用される試薬には、緩衝液、塩などが含まれる。検出に使用される試薬には、免疫検出または測定方法で一般的に使用される試薬、例えば、モノクローナル抗体、その抗体フラグメントまたはそのコンジュゲートを認識する標識された二次抗体、および当該標識に対応する基質などが含まれる。
【0122】
<抗原の調製>
1.抗原の構築
ヒトPD-1-IgG1Fc融合タンパク質は、N末端にヒトPD-1の細胞外領域の150アミノ酸、C末端にヒトIgG1のFcフラグメント(hIgG1Fc)を含むように設計および合成される。高純度の組換えPD-1-Fcタンパク質は、プロテインAアフィニティーカラムで精製した後に得ることができ、抗原への抗PD-1抗体の結合を検出するために使用される。
【0123】
ヒトPD-1-IgG1Fc(配列番号1):
【化1】
【0124】
注:下線部分はシグナルペプチドであり、通常部分はヒトPD-1の細胞外領域であり、斜体部分はhIgG1Fcである(シグナルペプチド+細胞外領域+hIgG1Fc)。
【0125】
【0126】
細胞にトランスフェクトされた核酸によってコードされるPD-1抗原(配列番号3):
【化3】
【0127】
<抗体の調製>
抗ヒトPD-1抗体は、マウスを免疫化することによって産生することができ、抗ヒトPD-1ファージマウス免疫化ライブラリー(anti-human PD-1 phage mouse immunization library)から入手することもできる。
【0128】
マウスを免疫化することによって抗ヒトPD-1抗体を調製する方法は、次のとおりである:
【0129】
1.免疫化:実験用SJL白色マウス、雌、6~8週齢、およびBalb/c白色マウス、雌、6~8週齢。飼育環境:SPFレベル。マウスは、購入後、温度20~25℃、湿度40~60%、12/12時間の明/暗サイクルの調整下、実験室環境で1週間飼育された。環境に適応したマウスは、各群に6~10匹のマウスを使用して、さまざまなプロトコルに従って免疫化された。免疫抗原は、精製された組換えタンパク質PD-1-IgG1Fc(配列番号1を参照)、PD-1-his(配列番号2を参照)、または抗原としてPD-1をトランスフェクトしたJurkat/CHO-PD-1細胞(配列番号3を参照)である可能性がある。異なる免疫アジュバントまたは異なるタイプの免疫原と組み合わせた単一抗原を交差免疫に使用することができる。免疫化部位は、腹腔もしくは背中の皮膚の下であるか、または2つの部位で交互に免疫化を行うことができる。免疫アジュバントTiterMax(登録商標)Gold Adjuvant(以下、Titermaxと呼ぶ、Sigmaから購入、カタログ番号T2684)およびImject Alum Adjuvant(以下、アジュバントと呼ぶ、Pierceから購入、カタログ番号77161)を交差免疫に使用した。抗原とアジュバント(Titermax)の比率は1:1であり、抗原とアジュバント(Alum)の比率は3:1であり、25~50μg/動物(最初の免疫化)、50μg/動物(ブースター免疫化)、または1×107Jurkat/CHO-PD-1細胞/動物であった。0日目に25~50μg/動物の乳化抗原(emulsified antigen)を腹腔内注射し、最初の免疫化後、週に1回または2週間に1回、TitermaxとAlumを交互に合計5~8回使用した。
【0130】
2.細胞融合:脾臓細胞融合のために、血清中の抗体価が高いマウスを選択した。スプリント免疫化(sprint immunization)の72時間後にマウスの眼から出血させた。首を引っ張ってマウスを犠牲にし、消毒のために75%エタノールに入れた。脾臓リンパ球を骨髄腫細胞Sp2/0細胞(中国科学院)に融合させ、最適化されたPEGを介した融合手順を適用してハイブリドーマ細胞を得た。融合したハイブリドーマ細胞をHAT完全培地(20%FBS、1×HATおよび1×OPIを含むRPMI-1640培地)に再懸濁し、96ウェル細胞培養プレート(1×105/150μl/ウェル)に分注し、37℃、5%CO2でインキュベートし、合計で約10~30枚のプレートに播種した。融合後5日目に、HAT完全培地を50μl/ウェルで添加し、37℃、5%CO2でインキュベートした。融合後7日目から8日目まで、細胞増殖密度に応じて、培地を200μl/ウェルで完全に交換し、37℃、5%CO2でインキュベートした。
【0131】
3.ハイブリドーマ細胞スクリーニング:融合後7~9日目に、細胞増殖密度に応じて、PD-1への抗体の結合を検出するためにELISA法を実施し、PD-1/PDL1結合の遮断を検出するために陽性ウェルの細胞をELISAでさらに検出した。陽性ウェルの培地を交換し、細胞密度に応じて細胞を24ウェルプレートに時間内に増殖させた。24ウェルプレートに移した細胞株を再試験した後、保存して、初めてサブクローン化した。最初のサブクローニングスクリーニングで陽性となったものは保存され、単一細胞クローンが得られるまで2回目または3回目のサブクローニングが実施された。PD-1とPDL1の結合を遮断する効果を有するハイブリドーマ細胞は、複数の融合によって得られた。
【0132】
抗ヒトPD-1ファージマウス免疫ライブラリーを介して抗ヒトPD-1抗体を得る方法は、以下のとおりである:
【0133】
1.抗ヒトPD-1ファージマウス免疫ライブラリーの構築:血清中の抗体価が高いマウスの脾臓を選択し、Trizol(Invitrogen、カタログ番号15596-018)を使用して組織のトータルRNAを抽出した。PrimeScript(商標)II 1st Strand cDNA合成キット(Takara、カタログ番号6210A)を逆転写に使用してcDNAを得た。ライブラリーを構築するためのプライマーは、IMGTデータベースに従って設計および合成された。一本鎖抗体フラグメントは、3ラウンドのPCR反応によって得られた。一本鎖抗体フラグメントと改変ライブラリー構築ベクターpCantab5E(Amersham Biosciences/GE、カタログ番号27-9400-01)をSfi1(NEB、カタログ番号R0123L)で消化し、電気泳動後にE. Z. N. A.(登録商標)ゲル抽出キット(Omega、カタログ番号D2500-02)で精製および回収した。次に、T4DNAリガーゼ(NEB、カタログ番号M0202L)を使用して16℃で16~18時間ライゲーションし、上記のキットを使用して精製および回収を行い、最後に脱イオン水で溶出した。1μgのライゲーション産物を採取し、エレクトロポレーション用のコンピテントTG1(Lucigen、カタログ番号60502-2)の1バイアルと混合し、エレクトロポレーター(Bio Rad Micropulser)を使用して、パラメータを2.5kV,200Ωおよび25uFに設定してエレクトロポレーションを行った。トランスフォーメーションを10回繰り返した。産物をプレート上に広げ、37℃で16~18時間上下逆さまに培養した。次に、すべてのコロニーを分離して混合し、最終濃度15%のグリセリンを添加し、使用するために-80℃で保存した。
【0134】
2.抗ヒトPD-1ファージマウス免疫ライブラリーのスクリーニング:パッケージ化された抗ヒトPD-1ファージ免疫ライブラリー(1×1012~1×1013)と100μlのストレプトマイシンマイクロビーズ(Milenvi Biotec、オーバーン、カリフォルニア州)を、2%スキムミルク(MPBS)を含む1mlのリン酸緩衝生理食塩水に加え、室温で1時間インキュベートし、磁気スタンド上に置き、上清を回収した。10μg/mlのビオチン化ヒトPD-1-ECD-hisタンパク質(Sino Biologicalから購入)を上清に加え、室温で1時間インキュベートした。次に、ストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズ100μl(1mlのMPBSでプレインキュベートされた)を加え、室温で1時間インキュベートした。そして、これを選別用の磁気スタンドシステムにロードし、上清を吸引した。1mlのPBST(0.1%Tween-20を含むリン緩衝液)を加え、数回反転させた。完全に吸引した後に新しい洗浄溶液を加え、これを11回繰り返して未結合の抗体フラグメントを除去し、0.5mlの溶出溶液(450μlのPBSに50μlの10mg/mlトリプシンストック溶液を加えたもの)を加えた。これを室温で15分間振とうし、磁気スタンド上に置き、上清を新しいEPチューブに吸引した。TG1を2YT培地に播種し、培養菌密度OD600=0.4になるまで増殖させた。1.75mlのTG1(OD600=0.4)を各チューブに加え、250μlの溶出ファージ(ファージ)を加え、37℃の水浴で30分間インキュベートし、力価を試験するために勾配希釈してプレート上に広げた。残りのTG1溶液を遠心分離し、プレート上に広げ、37℃で一晩インキュベートした。
【0135】
ファージマウス免疫ライブラリーは、MACSスクリーニング(ストレプトマイシン磁気ビーズ、Invitrogen)と共にビオチン化ヒトPD-1-ECD-his抗原を使用して2~3ラウンドスクリーニングされ、PD-1に結合でき且つPD-1のPD-L1への結合を遮断できるモノクローナル抗体が最終的に得られ、シーケンシングによって検証された。抗体の可変領域配列が得られた。
【0136】
<組換え抗原タンパク質/抗体の精製>
1.ハイブリドーマ上清/プロテインGアフィニティークロマトグラフィーの分離および精製:
マウスハイブリドーマ上清の精製には、アフィニティークロマトグラフィー用のプロテインGが最初の選択肢であった。培養したハイブリドーマを遠心分離して上清を回収し、上清の体積に応じて10~15%の量の1M Tris-HCl(pH8.0~8.5)を添加して、上清のpHを調整した。プロテインGカラムについては、6M塩酸グアニジンを使用してカラム体積の3~5倍洗浄した後、純水を使用してカラム体積の3~5倍を洗浄した;平衡化緩衝液として1×PBS(pH7.4)などの緩衝液系を使用して、カラム体積の3~5倍でカラムを平衡化した;保持時間が約1分以上になるように制御された低流速を使用して、細胞上清をロードおよび結合させた;1×PBS(pH7.4)を使用して、UV吸収がベースラインに低下するまで、クロマトグラフィーカラムをカラム体積の3~5倍洗浄した;サンプル溶出には0.1M酢酸/酢酸ナトリウム(pH3.0)緩衝液を使用し、UV検出に従って溶出ピークを収集し、一時保存のために1M Tris-HCl(pH8.0)を使用して溶出生成物のpHを5~6に素早く調整した。溶出生成物については、限外ろ過および濃縮用の限外ろ過チューブを使用して、溶液を必要な緩衝液系に交換する、またはG-25などの分子排除を使用して脱塩し、必要な緩衝液系に交換する、またはSuperdex200などの高分解能分子排除カラムを使用して、溶出生成物中の凝集した成分を除去し、サンプルの純度を向上させるなどの、当業者に周知の方法によって溶液交換が実施され得る。
【0137】
2.タンパク質または抗体のプロテインAアフィニティークロマトグラフィー精製:
まず、抗原タンパク質または抗体を発現している細胞培養物の上清を高速で遠心分離して、上清を回収した。プロテインAアフィニティーカラムについては、6M塩酸グアニジンを使用してカラム体積の3~5倍洗浄した後、純水を使用してカラム体積の3~5倍を洗浄した。平衡緩衝液として1×PBS(pH7.4)などの緩衝液系を使用して、カラム体積の3~5倍でクロマトグラフィーカラムを平衡化した。保持時間が約1分以上になるように制御された低流速を使用して、細胞上清をロードおよび結合させた。結合が完了した後、1×PBS(pH7.4)を使用して、UV吸収がベースラインに低下するまで、クロマトグラフィーカラムをカラム体積の3~5倍洗浄した。サンプル溶出には0.1M酢酸/酢酸ナトリウム(pH3.0~3.5)緩衝液を使用し、UV検出に従って溶出ピークを収集し、一時保存のために1M Tris-HCl(pH8.0)を使用して溶出生成物のpHを5~6に素早く調整した。溶出生成物については、限外ろ過および濃縮用の限外ろ過チューブを使用して、溶液を必要な緩衝液系に交換する、またはG-25などの分子排除を使用して脱塩し、必要な緩衝液系に交換する、またはSuperdex200などの高分解能分子排除カラムを使用して、溶出生成物中の凝集した成分を除去し、サンプルの純度を向上させるなどの、当業者に周知の方法によって溶液交換が実施され得る。
【実施例】
【0138】
本開示は実施例と組み合わせて以下にさらに記載されるが、これらの実施例は本開示の範囲を限定するものではない。本開示の実施例において条件が具体的に示されていない実験方法は、通常、Antibodies: A Laboratory Manual and Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harborなどの従来の条件に従うか、または原材料または製品の製造業者によって推奨される条件に従う。出所が具体的に示されていない試薬は、市販の従来の試薬である。
【0139】
(実施例1)抗ヒトPD-1マウス抗体の取得
前述の方法で得られた抗ヒトPD-1マウス抗体を抗原結合実験に供し、スクリーニングして、良好な活性を有する抗体の複数の株を得た:その中に、M23、M32およびM33が含まれていた。単一細胞クローンを増殖および培養し、RNAを抽出し、マウス-Igの縮重プライマー(degenerate primers)を使用して逆転写増幅(RT-PCR)を行い、抗体の可変領域配列を得た。マウス抗体の可変領域配列をヒト抗体の定常領域配列に連結した。マウスモノクローナル抗体のキメラ抗体をクローニングし、組換え発現させ、in vitro活性実験を行って、得られたモノクローナル抗体の可変領域配列が正しいことを確認した。
【0140】
マウス抗体M23、M32およびM33の可変領域配列は、以下のように決定される:
【0141】
マウス抗体M23の重鎖可変領域(配列番号4):
【化4】
【0142】
マウス抗体M23の軽鎖可変領域(配列番号5):
【化5】
【0143】
マウス抗体M32の重鎖可変領域(配列番号6):
【化6】
【0144】
マウス抗体M32の軽鎖可変領域(配列番号7):
【化7】
【0145】
マウス抗体M33の重鎖可変領域(配列番号19):
【化8】
【0146】
マウス抗体M33の軽鎖可変領域(配列番号20):
【化9】
【0147】
注:上記の抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域配列において、下線が引かれているのは、Kabat番号付けシステムによって決定されたCDR配列であり、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の順序である。
【0148】
表4.マウス抗体M23、M32およびM33の重鎖および軽鎖CDR領域配列
【表4】
【0149】
注:表中の抗体CDR配列は、Kabat番号付けシステムに従って決定されている。
【0150】
(実施例2)抗ヒトPD-1モノクローナル抗体のヒト化
IMGTヒト抗体重鎖および軽鎖可変領域生殖細胞系列遺伝子データベースに対してアラインメントすることおよびMOEソフトウェア分析によって、M23、M32およびM33軽鎖および重鎖配列と高い同一性を有するヒト生殖細胞系列重鎖および軽鎖可変領域の生殖細胞系列遺伝子が、テンプレートとして選択された。これら3つのマウス抗体のCDRを対応するヒト抗体テンプレートに移植して、それぞれ対応するヒト化抗体を構築した。
【0151】
1.マウス抗体M23のヒト化
1.1 マウス抗体M23のヒト化フレームワークの選択
マウス抗体M23のヒト化軽鎖テンプレートはIGKV2-40*01およびIGKJ4*01であり、ヒト化重鎖テンプレートはIGHV1-69*02およびIGHJ6*01である。ヒト化後の可変領域の配列は、次のとおりである(下線はCDR配列である):
【0152】
Hu23VH-CDR移植:(配列番号27)
【化10】
Hu23VL-CDR移植:(配列番号28)
【化11】
【0153】
1.2 マウス抗体M23のヒト化テンプレート選択および復帰変異設計
【0154】
表5.マウス抗体M23ヒト化抗体の復帰変異
【表5】
【0155】
注:移植(Grafted)とは、マウス抗体CDRがヒト生殖細胞系列FR領域配列に移植されることを意味する。アミノ酸残基は、Kabat番号付けシステムによって決定および注釈される。例えば、I2Gは、Kabat番号付けの位置2のIがKabat番号付けシステムに従ってGに戻される(mutated back to G)ことを意味する。
【0156】
M23のヒト化抗体の軽鎖/重鎖可変領域配列は、次のとおりである:
【化12】
【0157】
1.3 マウス抗体M23のヒト化配列の組み合わせ
マウス抗体M23のヒト化により得られた抗体およびその可変領域の組み合わせを以下の表に示す。
【0158】
表6.ヒト化Hu23抗体可変領域の組み合わせ
【表6】
【0159】
注:例えば、「Hu23-1」は、軽鎖可変領域がHu23VL1であり、重鎖可変領域がHu23VH1である抗体を指し、以下同様である。
【0160】
上記の表において参照される抗体の軽鎖/重鎖可変領域の組み合わせ(例えば、Hu23-1)は、抗体の軽鎖/重鎖定常領域とそれぞれ連結され、全長抗体を形成することができる;本開示において別段の定めがない限り、全長抗体を形成するとき、軽鎖可変領域は、配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域に連結されて抗体軽鎖を形成し、重鎖可変領域は、配列番号72に示されるIgG4-AA重鎖定常領域または配列番号79に示されるIgG4-P重鎖定常領域に連結されて抗体重鎖を形成し、抗体の軽鎖/重鎖可変領域の組み合わせ(例えば、Hu23-1)+接尾語「.IgG4AA」を参照する表中の名称は、IgG4-AA重鎖定常領域とのライゲーションによって形成された全長抗体を意味し、+接尾語「.IgG4P」は、IgG4-P重鎖定常領域とのライゲーションによって形成された全長抗体を意味する。例えば、「Hu23-1.IgG4AA」とは、Hu23VH1重鎖可変領域と配列番号72に示されるIgG4-AA重鎖定常領域とを連結して形成される重鎖と、Hu23VL1軽鎖可変領域と配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域とを連結して形成される軽鎖とを連結することによって形成される全長抗体を意味する。「Hu23-1.IgG4P」とは、Hu23VH1重鎖可変領域と配列番号79に示されるIgG4-P重鎖定常領域とを連結して形成される重鎖と、Hu23VL1軽鎖可変領域と配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域とを連結して形成される軽鎖とを連結することによって形成される全長抗体を意味する。
【0161】
2.マウス抗体M32のヒト化
2.1 マウス抗体M32のヒト化フレームワークの選択
マウス抗体M32のヒト化軽鎖テンプレートはIGKV2-40*01およびIGKJ4*01であり、ヒト化重鎖テンプレートはIGHV1-69*02およびIGHJ6*01である。ヒト化可変領域の配列は、次のとおりである(下線はCDR配列である):
【化13】
【0162】
2.2 マウス抗体M32のヒト化テンプレート選択および復帰変異設計
【0163】
表7.マウス抗体M32ヒト化抗体の復帰変異
【表7】
【0164】
注:移植(Grafted)とは、マウス抗体CDRがヒト生殖細胞系列FR領域配列に移植されることを意味する。アミノ酸残基は、Kabat番号付けシステムによって決定および注釈される。例えば、I2Vは、Kabat番号付けの位置2のIがKabat番号付けシステムに従ってVに戻される(mutated back to V)ことを意味する。
【0165】
マウス抗体M32のヒト化抗体の軽鎖/重鎖可変領域配列は、次のとおりである:
【化14】
【0166】
2.3 マウス抗体M32のヒト化配列の組み合わせ
マウス抗体M32のヒト化により得られた抗体およびその可変領域の組み合わせ。
【0167】
表8.ヒト化抗体Hu32の軽鎖/重鎖可変領域の組み合わせ
【表8】
【0168】
注:表中、例えば、「Hu32-1」は、Hu32VL1の抗体軽鎖可変領域とHu32VH1の重鎖可変領域との組み合わせを有する抗体を指し、以下同様である。
【0169】
上記の表において参照される抗体の軽鎖/重鎖可変領域の組み合わせ(例えば、Hu32-1)は、抗体の軽鎖/重鎖定常領域とそれぞれ連結され、全長抗体を形成することができる;本開示において別段の定めがない限り、全長抗体を形成するとき、軽鎖可変領域は、配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域に連結されて抗体軽鎖を形成し、重鎖可変領域は、配列番号72に示されるIgG4-AA重鎖定常領域または配列番号79に示されるIgG4-P重鎖定常領域に連結されて抗体重鎖を形成し、抗体の軽鎖/重鎖可変領域の組み合わせ(例えば、Hu32-1)+接尾語「.IgG4AA」を参照する表中の名称は、IgG4-AA重鎖定常領域とのライゲーションによって形成された全長抗体を意味し、+接尾語「.IgG4P」は、IgG4-P重鎖定常領域とのライゲーションによって形成された全長抗体を意味する。例えば、「Hu32-1.IgG4AA」とは、Hu32VH1重鎖可変領域と配列番号72に示されるIgG4-AA重鎖定常領域とを連結して形成される重鎖と、Hu32VL1軽鎖可変領域と配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域とを連結して形成される軽鎖とを連結することによって形成される全長抗体を意味する。「Hu32-1.IgG4P」とは、Hu32VH1重鎖可変領域と配列番号79に示されるIgG4-P重鎖定常領域とを連結して形成される重鎖と、Hu32VL1軽鎖可変領域と配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域とを連結して形成される軽鎖とを連結することによって形成される全長抗体を意味する。
【0170】
3.マウス抗体M33のヒト化
3.1 マウス抗体M33のヒト化フレームワークの選択
マウス抗体M33のヒト化軽鎖テンプレートはIGKV1-39*01およびIGKJ4*01であり、ヒト化重鎖テンプレートはIGHV3-7およびIGHJ6*01である。ヒト化可変領域の配列は、次のとおりである(下線はCDR配列である):
【化15】
【0171】
3.2 マウス抗体M33のヒト化テンプレート選択および復帰変異設計
【0172】
表9.マウス抗体M33ヒト化抗体の復帰変異
【表9】
【0173】
注:移植(Grafted)とは、マウス抗体CDRがヒト生殖細胞系列FR領域配列に移植されることを意味する。アミノ酸残基は、Kabat番号付けシステムによって決定および注釈される。例えば、F71Yは、Kabat番号付けの位置71のFがKabat番号付けシステムに従ってYに戻される(mutated back to Y)ことを意味する。
【0174】
マウス抗体M33のヒト化抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の配列は、次のとおりである:
【化16】
【0175】
3.3 マウス抗体M33のヒト化配列の組み合わせ
【0176】
表10.ヒト化抗体の軽鎖および重鎖可変領域の組み合わせ
【表10】
【0177】
注:表中、例えば、「Hu33-6」は、Hu33VL2の抗体軽鎖可変領域とHu33VH3の重鎖可変領域との組み合わせを有する抗体を指し、以下同様である。
【0178】
上記の表において参照される抗体の軽鎖/重鎖可変領域の組み合わせ(例えば、Hu33-6)は、抗体の軽鎖/重鎖定常領域とそれぞれ連結され、全長抗体を形成することができる;本開示において別段の定めがない限り、全長抗体を形成するとき、軽鎖可変領域は、配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域に連結されて抗体軽鎖を形成し、重鎖可変領域は、配列番号72に示されるIgG4-AA重鎖定常領域または配列番号79に示されるIgG4-P重鎖定常領域に連結されて抗体重鎖を形成し、抗体の軽鎖/重鎖可変領域の組み合わせ(例えば、Hu33-6)+接尾語「.IgG4AA」を参照する表中の名称は、IgG4-AA重鎖定常領域とのライゲーションによって形成された全長抗体を意味し、+接尾語「.IgG4P」は、IgG4-P重鎖定常領域とのライゲーションによって形成された全長抗体を意味する。例えば、「Hu32-6.IgG4AA」とは、Hu33VH3重鎖可変領域と配列番号72に示されるIgG4-AA重鎖定常領域とを連結して形成される重鎖と、Hu33VL2軽鎖可変領域と配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域とを連結して形成される軽鎖とを連結することによって形成される全長抗体を意味する。「Hu33-6.IgG4P」とは、Hu33VH3重鎖可変領域と配列番号79に示されるIgG4-P重鎖定常領域とを連結して形成される重鎖と、Hu33VL2軽鎖可変領域と配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域とを連結して形成される軽鎖とを連結することによって形成される全長抗体を意味する。
【0179】
4.ヒト化抗体の変異体
4.1 Hu23ヒト化抗体の変異抗体
コンピューターシミュレーションにより、Hu23ヒト化抗体の軽鎖LCDR1(配列番号11)の特定の部位のアミノ酸を部位特異的変異に供し、その特定の変異を表11に示す。
【0180】
表11.Hu23軽鎖LCDR1の変異配列:
【表11】
【0181】
注:Hu23LCDR1(N28Q)は、Hu23ヒト化抗体軽鎖可変領域Hu23VL1またはHu23VL2のKabat番号付け基準による位置28のNがQに変異しているLCDR1変異配列を意味し、Hu23LCDR1(G29A)は、Hu23ヒト化抗体軽鎖可変領域Hu23VL1またはHu23VL2のKabat番号付け基準による位置29のGがAに変異しているLCDR1変異配列を意味する(CDRは、Kabat番号付けシステムによって決定される)。
【0182】
LCDR1変異後のHu23ヒト化抗体軽鎖可変領域の配列は、次のとおりである:
【化17-1】
【化17-2】
【0183】
表12.Hu23ヒト化抗体の軽鎖および重鎖可変領域の組み合わせ
【表12-1】
【表12-2】
【0184】
注:表中、例えば、「Hu23-11」は、Hu23VL1(N28T)の抗体軽鎖可変領域とHu23VH1の重鎖可変領域との組み合わせを有する抗体を指し、以下同様である。
【0185】
上記の表において参照される抗体の軽鎖/重鎖可変領域の組み合わせ(例えば、Hu23-11)は、抗体の軽鎖/重鎖定常領域とそれぞれ連結され、全長抗体を形成することができる;本開示において別段の定めがない限り、全長抗体を形成するとき、軽鎖可変領域は、配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域に連結されて抗体軽鎖を形成し、重鎖可変領域は、配列番号72に示されるIgG4-AA重鎖定常領域または配列番号79に示されるIgG4-P重鎖定常領域に連結されて抗体重鎖を形成し、抗体の軽鎖/重鎖可変領域の組み合わせ(例えば、Hu23-11)+接尾語「.IgG4AA」を参照する表中の名称は、IgG4-AA重鎖定常領域とのライゲーションによって形成された全長抗体を意味し、+接尾語「.IgG4P」は、IgG4-P重鎖定常領域とのライゲーションによって形成された全長抗体を意味する。例えば、「Hu23-11.IgG4AA」とは、Hu23VH1重鎖可変領域と配列番号72に示されるIgG4-AA重鎖定常領域とを連結して形成される重鎖と、Hu23VL1(N28T)軽鎖可変領域と配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域とを連結して形成される軽鎖とを連結することによって形成される全長抗体を意味する。「Hu23-11.IgG4P」とは、Hu23VH1重鎖可変領域と配列番号79に示されるIgG4-P重鎖定常領域とを連結して形成される重鎖と、Hu23VL1(N28T)軽鎖可変領域と配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域とを連結して形成される軽鎖とを連結することによって形成される全長抗体を意味する。
【0186】
実験結果は、部位変異後、ヒト化抗体Hu23LCDR1(N28Q)、Hu23LCDR1(N28L)、Hu23LCDR1(N28T)、Hu23LCDR1(N28D)、Hu23LCDR1(G29A)およびHu23LCDR1(G29V)がいずれもPD-1に結合する能力を維持することを示した(表16)。
【0187】
4.2 Hu32ヒト化抗体の変異抗体
M23に由来する一連のヒト化抗体Hu23およびM32に由来する一連のヒト化抗体Hu32は、配列分析によって高い配列同一性を有していた。Hu23軽鎖可変領域およびHu32重鎖可変領域は、新しい軽鎖および重鎖可変領域の組み合わせに組み合わされた。実験結果は、新しい軽鎖および重鎖可変領域の組み合わせを含むヒト化抗体が、PD-1抗原に結合する能力を維持することを示した(表16)。
【0188】
表13.Hu32およびHu23抗体可変領域コンセンサス配列の一般式
【表13】
【0189】
表14.Hu32重鎖可変領域とHu23軽鎖可変領域の組み合わせ
【表14】
【0190】
注:表中、例えば、「Hu32a-85」は、Hu23VL1(N28T)の抗体軽鎖可変領域およびHu32VH6の重鎖可変領域を有する抗体を指し、以下同様である。
【0191】
上記の表において参照される抗体の軽鎖/重鎖可変領域の組み合わせ(例えば、Hu32a-85)は、抗体の軽鎖/重鎖定常領域とそれぞれ連結され、全長抗体を形成することができる;本開示において別段の定めがない限り、全長抗体を形成するとき、軽鎖可変領域は、配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域に連結されて抗体軽鎖を形成し、重鎖可変領域は、配列番号72に示されるIgG4-AA重鎖定常領域または配列番号79に示されるIgG4-P重鎖定常領域に連結されて抗体重鎖を形成し、抗体の軽鎖/重鎖可変領域の組み合わせ(例えば、Hu32a-85)+接尾語「.IgG4AA」を参照する表中の名称は、IgG4-AA重鎖定常領域とのライゲーションによって形成された全長抗体を意味し、+接尾語「.IgG4P」は、IgG4-P重鎖定常領域とのライゲーションによって形成された全長抗体を意味する。例えば、「Hu32a-85.IgG4AA」とは、Hu32VH6重鎖可変領域と配列番号72に示されるIgG4-AA重鎖定常領域とを連結して形成される重鎖と、Hu23VL1(N28T)軽鎖可変領域と配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域とを連結して形成される軽鎖とを連結することによって形成される全長抗体を意味する。「Hu32a-85.IgG4P」とは、Hu32VH6重鎖可変領域と配列番号79に示されるIgG4-P重鎖定常領域とを連結して形成される重鎖と、Hu23VL1(N28T)軽鎖可変領域と配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域とを連結して形成される軽鎖とを連結することによって形成される全長抗体を意味する。
【0192】
表15.Hu23重鎖可変領域とHu32軽鎖可変領域の組み合わせ
【表15】
【0193】
注:表中、例えば、「Hu23a-57」は、Hu32VL1の抗体軽鎖可変領域とHu23VH1の重鎖可変領域との組み合わせを有する抗体を指し、以下同様である。
【0194】
上記の表において参照される抗体の軽鎖/重鎖可変領域の組み合わせ(例えば、Hu23a-57)は、抗体の軽鎖/重鎖定常領域とそれぞれ連結され、全長抗体を形成することができる;本開示において別段の定めがない限り、全長抗体を形成するとき、軽鎖可変領域は、配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域に連結されて抗体軽鎖を形成し、重鎖可変領域は、配列番号72に示されるIgG4-AA重鎖定常領域または配列番号79に示されるIgG4-P重鎖定常領域に連結されて抗体重鎖を形成し、抗体の軽鎖/重鎖可変領域の組み合わせ(例えば、Hu32a-85)+接尾語「.IgG4AA」を参照する表中の名称は、IgG4-AA重鎖定常領域とのライゲーションによって形成された全長抗体を意味し、+接尾語「.IgG4P」は、IgG4-P重鎖定常領域とのライゲーションによって形成された全長抗体を意味する。例えば、「Hu23a-57.IgG4AA」とは、Hu23VH1重鎖可変領域と配列番号72に示されるIgG4-AA重鎖定常領域とを連結して形成される重鎖と、Hu32VL1軽鎖可変領域と配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域とを連結して形成される軽鎖とを連結することによって形成される全長抗体を意味する。「Hu23a-57.IgG4P」とは、Hu23VH1重鎖可変領域と配列番号79に示されるIgG4-P重鎖定常領域とを連結して形成される重鎖と、Hu32VL1軽鎖可変領域と配列番号73に示されるカッパ鎖定常領域とを連結して形成される軽鎖とを連結することによって形成される全長抗体を意味する。
【0195】
5.ヒト化抗体のスクリーニング
さまざまなヒト化抗体の親和性検出をBiacoreによって行い(方法については試験例3を参照)、その結果を表16に示した。結果は、さまざまなヒト化抗体がPD-1に結合する能力を維持し、いくつかのヒト化抗体はそのマウス抗体の親和性にさえ実質的に近い親和性を有することを示した。
【0196】
表16.ヒトPD-1に対するHu23ヒト化抗体の親和性
【表16】
【0197】
(実施例3)PD-1ヒト化抗体の構築および発現
各ヒト化抗体VH/VK遺伝子フラグメントは、PCRを介して設計されたプライマーを用いて構築され、次に発現ベクターpHr(シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-Fc/CL)フラグメントを含む)との相同組換えにより全長抗体発現ベクターVH-CH1-Fc-pHr/VK-CL-pHrを構築するために使用された。IgG4-Pは、S228P(配列番号72または配列番号79の位置108に対応する)変異を表し、IgG4-AAは、F234A(配列番号72または配列番号79の配列の位置114に対応する)、L235A(配列番号72または配列番号79の位置115に対応する)およびS228P(配列番号72または配列番号79の位置108に対応する)変異を表す。IgG4-AAおよびIgG4-P抗体フォーマットは、IgG4抗体フォーマットにおける単純な点変異によって得ることができる。
【0198】
IgG4-AA重鎖定常領域の配列は、以下のとおりである(配列番号72):
【化18】
【0199】
抗体軽鎖(カッパ鎖)定常領域の配列は、以下のとおりである(配列番号73):
【化19】
【0200】
構築されたIgG4AA形式の全長抗体の配列は、以下のように例示される:
【化20-1】
【化20-2】
【0201】
IgG4-P重鎖定常領域の配列は、以下のとおりである(配列番号79):
【化21】
【0202】
構築されたIgG4-Pフォームの全長抗体の配列は、以下のように例示される:
【化22-1】
【化22-2】
【試験例】
【0203】
(試験例1)in vitroでのPD-1リガンドへの抗PD-1抗体の結合および結合遮断のELISA実験
腫瘍細胞表面のPD-L1はT細胞表面のPD-1に結合し、それによってT細胞の増殖を抑制する。PD-1抗体は、PD-1に結合することによってPD-L1/PD-1シグナル伝達経路を遮断することができ、それによってT細胞の増殖を刺激する。PD-1/PD-L1結合遮断実験を使用して、シグナル伝達経路に対する抗PD-1抗体の遮断活性を検出した。
【0204】
この実験では、PD-1-Hisタンパク質(カタログ番号10377H08H、Sino Biological)を96ウェルプレートにコーティングした後、試験する抗PD-1抗体(抗体:Hu23-11.IgG4AA、Hu32a-85.IgG4AAおよびHu33-6.IgG4AA、ポジティブコントロール抗体:H005-1(WO2015085847のH005-1抗体を参照)を含む)を別々に加え、反応をインキュベートした;その後、HRP標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体(カタログ番号109-035-003、Jackson ImmunoResearch)を加え、インキュベートした。プレートを洗浄した後、HRP標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)の結合量を検出し、リガンドPD-1への抗PD-1抗体の結合のEC50値を算出した。
【0205】
この実験では、細胞外領域でFcと融合したPD-1タンパク質(PD-1-Fc、配列については配列番号1を参照)を96ウェルプレートにコーティングした後、試験する抗PD-1抗体(抗体:Hu23-11.IgG4AA、Hu32a-85.IgG4AAおよびHu33-6.IgG4AA、ポジティブコントロール抗体:H005-1(WO2015085847のH005-1抗体を参照)を含む)を別々に加えてインキュベートした;その後、ビオチン標識PD-L1/PD-L2を加え、インキュベートした。プレートを洗浄した後、ビオチン標識PD-L1/PD-L2の結合量を検出し、PD-L1/PD-L2へのリガンドの結合を遮断する抗PD-1抗体のIC50値を算出した。
【0206】
pH9.6のCB緩衝液(1Lの蒸留水に1.59gのNa2CO3と2.93gのNaHCO3を溶解したもの)を使用してPD-1-Fcを1μg/mlに希釈し、これを96ウェルプレートに100μl/ウェルの容量で添加し、4℃で16時間~20時間静置した。PBS緩衝液を96ウェルプレートから吸引し、プレートをPBST(0.05%tween20を含むpH7.4のPBS)緩衝液で1回洗浄した。120μl/ウェルのPBST/1%ミルクを加え、ブロッキングのために室温で1時間インキュベートした。ブロッキング溶液を取り除き、PBST緩衝液で1回洗浄した。サンプル希釈液(5%BSA、0.05%Tween20を含むpH7.4のPBS)で適切な濃度に希釈した試験対象の抗PD-1抗体90μlを加え、4℃で1時間プレインキュベートした。10倍濃度のビオチン標識PD-L1/PD-L2(Beijing Sino Biological株式会社)(10μg/ml)を10μl/ウェルの容量で加え、シェーカーで十分に振とうおよび混合し、37℃で1時間インキュベートした。反応系を取り除き、プレートをPBSTで6回洗浄した。PBST緩衝液で希釈した100μl/ウェルのストレプトアビジン-ペルオキシダーゼポリマー1:400を添加し、室温で50分間振とうしながらインキュベートした。プレートをPBSTで6回洗浄した。100μl/ウェルのTMBを添加し、室温で5~10分間インキュベートした。100μl/ウェルの1M H2SO4を加えて反応を停止させた。マイクロプレートリーダーを使用して450nmでの吸光度値を読み取り、PD-L1/PD-L2へのリガンドの結合を遮断する抗PD-1抗体のIC50値を算出した。データを以下の表17に詳細に示す。
【0207】
表17.PD-1に結合し、PD-L1/PD-L2へのリガンドの結合を遮断する本開示の抗PD-1抗体のELISA
【表17】
【0208】
本開示の例示的な抗PD-1抗体Hu23-11.IgG4AA、Hu32a-85.IgG4AAおよびHu33-6.IgG4AAはいずれも、PD-L1/PD-L2へのPD-1の結合を効果的に遮断することができ、それらの遮断活性は、ポジティブコントロール抗体の遮断活性と類似している。
【0209】
(試験例2)例示的な抗体のリガンド遮断試験
PD-1とPD-L1の結合に対する抗体の遮断効果を検討した。実験プロセスを以下に簡単に説明する:
【0210】
CHOK1/PD-L1細胞(Promega)を消化し、100μl/ウェルで96ウェルプレートに加え、37℃、5%CO
2のインキュベーターに入れて24時間インキュベートした。コントロールおよびサンプルは、PBSを使用して所望の濃度に希釈された。Jurkat/PD-1細胞(PD-1で安定的にトランスフェクトされたJurkat細胞)をカウントし、CHOK1/PD-L1細胞を含む細胞培養プレートに一定の割合(90μl/ウェル)で播種し、10μl/ウェルの希釈抗体(抗体:Hu23-11.IgG4AA、Hu32a-85.IgG4AAおよびHu33-6.IgG4AA、ポジティブコントロール抗体:H005-1、ネガティブコントロール:IgG4タンパク質、抗体勾配希釈濃度:0.3mg/ml、3mg/ml、30mg/ml)を添加して、37℃、5%CO
2のインキュベーターに入れて5時間インキュベートした。細胞培養プレートを取り出し、室温で5分間置いた。次に、50μlのBio-Glo
(商標)試薬を各ウェルに添加し、プレートを読み取る前に室温で5分間インキュベートした。実験結果を
図1に示す。
【0211】
結果は、本開示における例示的な抗PD-1抗体Hu23-11.IgG4AA、Hu32a-85.IgG4AAおよびHu33-6.IgG4AAが、PD-1とPD-L1の結合を効果的に遮断できることを示した。
【0212】
(試験例3)例示的な抗体のBIAcore抗体親和性実験
IgGは、プロテインAバイオセンサーチップ(カタログ番号29127556、GE)を使用してアフィニティーキャプチャーされた。ヒトPD-1抗原(カタログ番号10377H08H、Sino Biological)およびCyno PD-1抗原(Sino Biologicalから購入)がチップの表面を横切って流れ、結合および解離曲線が、Biacore T200装置によるPD-1抗体および抗原PD-1反応シグナルのリアルタイム検出によって得られた。各実験サイクルの解離が完了した後、バイオセンサーチップを洗浄し、10mMグリシン-HCl(pH1.5)緩衝液で再生した。実験用緩衝液系は1×HBS-EP緩衝溶液(カタログ番号BR-1001-88、GE)であった。実験後、GE Biacore T200 Evaluationバージョン3.0ソフトウェアを使用して、データを(1:1)Langmuirモデルに適合させ、親和性値を取得した。結果を表18に示す。
【0213】
表18.ヒトPD1およびサルPD-1に対する抗PD-1抗体の親和性
【表18】
【0214】
結果は、本開示の例示的な抗PD-1抗体Hu23-11.IgG4AA、Hu32a-85.IgG4AAおよびHu33-6.IgG4AAはいずれも、ヒトPD-1およびサルPD-1に結合できることを示した。
【0215】
(試験例4)PBMC-Tリンパ球活性化実験における細胞によるIFNγ分泌に対する抗体の効果
ヒト初代Tリンパ球の機能に対する抗PD-1抗体の効果を検討するために、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を収集および精製し、ツベルクリン(TB)で5日間刺激し、サイトカインIFNγの分泌レベルを検出した。実験プロセスを以下に簡単に説明する:
【0216】
PBMCは密度勾配遠心分離用のFicoll-Hypaque(17-5442-02、GE)を使用して新鮮な血液から得られ(Stem Cell Technologies)、37℃および5%CO2で10%(v/v)FBS(10099-141、Gibco)を添加したRPMI1640(SH30809.01、GE)培地で培養された。
【0217】
新たに単離および精製されたPBMCをRPMI1640培地で2×106細胞/mlの密度に調整した。40μlのツベルクリン(97-8800、Synbiotics)を20mLの細胞懸濁液に加え、37℃、5%CO2のインキュベーターで5日間培養した。5日目に、上記の培養細胞を遠心分離によって収集し、新鮮なRPMI1640培地に再懸濁し、1.1×106細胞/mlの密度に調整し、96ウェル細胞培養プレートに90μl/ウェルで播種した。同時に、PBS(B320、Shanghai BasalMedia Technologies株式会社)で勾配希釈した抗体サンプル(本開示の抗体:Hu23-11.IgG4AA、Hu32a-85.IgG4AAおよびHu33-6.IgG4AA、ポジティブコントロール抗体H005-1、ならびにネガティブコントロールIgG4タンパク質を含む、抗体勾配希釈濃度0.3mg/ml、3mg/mlおよび30mg/ml)を10μl/ウェルで添加した。細胞培養プレートを37℃、5%CO2のインキュベーターに入れ、3日間インキュベーションした。細胞培養プレートを取り出し、遠心分離(4000rpm、10分)によって細胞培養上清を回収した。ELISA法(ヒトIFN-γ検出キット(EHC102g.96、Neobioscience))を使用してIFN-γレベルを検出した。具体的な操作については、試薬の説明書を参照した。
【0218】
試験結果を
図2に示す。結果は、本開示の抗PD-1抗体Hu23-11.IgG4AA、Hu32a-85.IgG4AAおよびHu33-6.IgG4AAがいずれも、IFN-γ分泌を効果的に活性化できることを示した。
【0219】
(試験例5)トランスジェニックPD-1マウスにおける結腸癌モデルMC38に対する抗PD-1抗体の効果
MC38細胞を5×105細胞/マウス/100μlで90匹のhPD-1 TGマウス(Biocytogen)の右肋骨の皮下に接種した。10日後、腫瘍が大きすぎるか小さすぎる動物は除外された。約120mmの3の平均腫瘍体積に基づいて、マウスを合計7つの群にランダムに分け、各群には8匹の動物を入れた:ブランクコントロールビヒクル(PBS)、ポジティブコントロールH005-1 3mpk、Hu32a-85.IgG4AA 1mpk、Hu32a-85.IgG4AA 3mpk、Hu23-11.IgG4AA 1mpk、Hu23-11.IgG4AA 3mpkおよびHu33-6.IgG4AA 3mpk。各群の抗体は、0日目から週に3回腹腔内注射された。投与1週目以降、腫瘍は有意に抑制されることが見出された。2週目および3週目には、投与頻度を週1回、合計5回の投与になるよう調整した。腫瘍体積と動物の体重を週に2回モニターし、データを記録した。腫瘍体積が2000mm3を超えたとき、またはほとんどの腫瘍が潰瘍化したように見えたとき、または体重が20%減少したとき、担癌動物を実験のエンドポイントとして安楽死させた。
腫瘍体積(TV)=1/2×Llong×Lshort
2
腫瘍成長率(T/C%)=(T-T0)/(C-C0)×100%
腫瘍成長抑制率(TGI%)=1-T/C%
【0220】
式中、TおよびT0は、それぞれ、抗体投与群における試験終了時および試験開始時の腫瘍体積を表し、CおよびC0は、それぞれ、ブランクコントロール群における試験終了時および試験開始時の腫瘍体積を表す。
【0221】
試験結果を表19と
図3に示す。試験結果は、ブランクコントロールと比較して、本開示の抗体がいずれもマウス結腸癌MC38異種移植腫瘍の成長を有意に抑制できることを示した。その中で、Hu32a-85.IgG4AA-3mpk群が最も高い腫瘍抑制率を示し、最終測定時の腫瘍抑制率は77.64%であった。投与頻度が3回の投与で週3回であった場合、7日目の測定において、結果は、本開示の抗体の腫瘍抑制率がいずれもポジティブコントロール抗体H005-1の腫瘍抑制率よりも有意に優れていることを示した;その後、投与頻度は週1回に減らされ、2回の投与後(21日目)、本開示の抗体の有効性の差は徐々に増加し、用量依存的な様式を示し、その中でHu32a-85.IgG4AAは同じ用量のH005-1よりも有意に優れていた(p<0.05)。さらに、担癌マウスは、すべての抗PD-1抗体に十分に耐えることができ、投与プロセス全体を通して体重は着実に増加し、明らかな薬物誘発性の体重減少およびその他の症状は発生しなかった。
【0222】
表19.マウス結腸癌MC38s(mm
3)の腫瘍成長抑制率に対する抗PD-1抗体の効果
【表19】
【0223】
(試験例6)トランスジェニックPD-1マウスにおける結腸癌モデルMC38に対する抗PD-1抗体の効果
トランスジェニックPD-1マウスは、ISIS INNOVATION LIMITED, University Offices, Wellington Square, Oxford OX1 2JD, Englandから購入し、Cephrim Biosciences株式会社で飼育して、第5世代のマウスを得た。MC38細胞を5×105細胞/100μl/動物で、hPD-1トランスジェニックマウス(半分が雌で半分が雄)の右後肋骨の皮下に接種した。マウスの平均腫瘍体積が80~100mm3に達したとき、体重または腫瘍が大きすぎるか小さすぎる動物は除外された。腫瘍体積に従って、担癌マウスを5つの群(各群に8匹の動物)にランダムに分けた:ネガティブコントロールhIgGコントロール 30mpk、H005-1 10mpk、H005-1 30mpk、Hu33-6.IgG4AA 10mpkおよびHu33-6.IgG4AA 30mpk。群分けおよび投与の日を0日目に設定した。群分け後、各薬物を22日間、2日に1回、合計11回腹腔内投与した。腫瘍体積を週に2回測定し、体重を測定し、データを記録した。各群の動物の体重および腫瘍体積はすべて、平均±標準偏差(Mean±SEM)として表され、グラフ化にはGraphpad Prism 5とExcelソフトウェアを使用し、統計分析にはスチューデントのt検定を使用した。
腫瘍体積(TV)=0.5236×Llong×Lshort
2
腫瘍成長率T/C%=(T-T0)/(C-C0)×100%
腫瘍成長抑制率%TGI=1-T/C%
【0224】
式中、TおよびT0は、それぞれ、抗体投与群における試験終了時および試験開始時の腫瘍体積を表し、CおよびC0は、それぞれ、ブランクコントロール群における試験終了時および試験開始時の腫瘍体積を表す。
【0225】
試験結果を表20および
図4に示す。試験結果は、コントロール群と比較して、本開示の抗体がマウス結腸癌MC38の異種移植腫瘍の成長を有意に抑制できることを示した。その中で、Hu33-6.IgG4AA-30mpk群が最も高い腫瘍抑制率を示し、20日目の腫瘍抑制率は80.4%である。低用量群(10mpk)では、Hu33-6.IgG4AA-10mpkの有効性は、ポジティブコントロールH005-1-10mpkの有効性よりも優れている。
【0226】
表20.マウス結腸癌MC38の腫瘍体積に対する抗PD-1抗体の効果
【表20】
【0227】
注:表中の各群の平均腫瘍体積の単位はmm3である。
【0228】
(試験例7)カニクイザルにおける抗PD-1抗体の薬物動態試験
実験に使用したカニクイザルは、広東フロンティアバイオテクノロジー(Guangdong Frontier Biotechnology)株式会社から購入した2~5歳、2~5kgの雄6匹で、ライセンス番号:SCXK(広東)2015-0037、動物証明書番号:44613900000219であった。
【0229】
飼育環境:室温は18℃~26℃に制御され、相対湿度は40%~70%であり、照明は12時間の明暗を交互にした。絶食が必要な場合を除いて、マウスは食物および水への自由なアクセスが許可された。
【0230】
投与前に動物の体重を測定し、体重は2.81~3.52kgであった。前肢または後肢に皮下静脈内注入用の注射ポンプを使用して投与を行った。各群の投与量はいずれも1mg/kg(1mpk)であり、約30分の投与期間にわたって0.1mL/kg/分の速度で単回静脈内注射によって投与された。投与前と静脈内注入開始後5分、0.25時間、0.5時間(投与終了直後)、1時間、2時間、4時間、8時間、1日、2日、3日、4日、5日、7日、10日、13日、14日、21日および28日に、動物の全血を後肢静脈で採取し、血清を分離した。このうち、投与前と静注内注入開始後14日、21日および28日に約2mLの全血を採取し、残りの採血時点で約1mLの全血を採取した。血清中の血中薬物濃度をELISAで検出し、PK分析を行った。結果を表21に示す。
【0231】
表21.カニクイザルにおけるヒト化抗PD1抗体の薬物動態
【表21】
【0232】
結果は、Hu23-11.IgG4AAおよびHu33-6.IgG4AAが良好な薬物動態活性を有することを示した。
【0233】
明確な理解のために、上述の発明は、図面および例の助けを借りて詳細に説明されてきたが、当該説明および例は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書で引用されているすべての特許および科学文献の開示は、参照により完全かつ明確に援用される。
【配列表】