(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】化粧シートおよび化粧シート巻回体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241216BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20241216BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B32B27/00 E
E04F13/07 B
E04F13/08 A
(21)【出願番号】P 2021545731
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2021008049
(87)【国際公開番号】W WO2021177329
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2021-08-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2020036669
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020060642
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020060873
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】中谷 正樹
(72)【発明者】
【氏名】田村 耕作
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊明
(72)【発明者】
【氏名】古川 剛
【合議体】
【審判長】金丸 治之
【審判官】木原 裕二
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-91487(JP,A)
【文献】特開2015-205505(JP,A)
【文献】特開2015-187378(JP,A)
【文献】特開平7-205387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65H18/00-18/28
E04F13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隠蔽層と、
印刷層と、
透明フィルムと、
艶消しフィラーを含む
メラミン樹脂コート層と、をこの順で備え、
前記艶消しフィラーはメラミン系樹脂またはシリカを含
み、
前記
メラミン樹脂コート層は、その表面に前記艶消しフィラー形状に追随した凸部を備え、前記表面の上面視において当該表面の前記艶消しフィラーの面積比が5~60%である、化粧シート。
【請求項2】
前記艶消しフィラーの平均粒子径は、前記
メラミン樹脂コート層の平均膜厚よりも大きい、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記
メラミン樹脂コート層の凸部を備える表面の表面粗さは、0.1~10μmである、請求項1または2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記艶消しフィラーの平均粒子径は3~100μmである、請求項1~
3のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項5】
前記艶消しフィラーは、メラミン系樹脂を含む場合、
前記
メラミン樹脂コート層を構成する樹脂の屈折率と前記艶消しフィラーの屈折率との差は、0.2以下である、請求項1~
4のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項6】
前記艶消しフィラーは、メラミン系樹脂を含む場合、
前記
メラミン樹脂コート層を構成する
メラミン樹脂の線膨張係数と前記艶消しフィラーの線膨張係数との差は10×10
-5/℃以下である、請求項1~
5のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項7】
前記透明フィルムはポリエチレンテレフタレートを含む、請求項1~
6のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項8】
前記隠蔽層は、ポリ塩化ビニルフィルムを含む、請求項1~
7のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項9】
剥離層と、
隠蔽層と、
印刷層と、
透明フィルムと、
メラミン系樹脂および艶消しフィラ
ーを含み、その表面に前記艶消しフィラー形状に追随した凸部を備え、前記表面の上面視において当該表面の前記艶消しフィラーの面積比が5~60%である、
メラミン樹脂コート層と、
をこの順で備える帯状である化粧シートを巻芯に巻き付けた化粧シート巻回体であって、
前記艶消しフィラーはメラミン系樹脂またはシリカを含み、
前記化粧シートの長尺方向の長さが4m以上である、化粧シート巻回体。
【請求項10】
前記巻芯の外径が190mm以下である、請求項
9に記載の化粧シート巻回体。
【請求項11】
剥離層と、
隠蔽層と、
印刷層と、
透明フィルムと、
艶消しフィラーを含む
メラミン樹脂コート層と、
をこの順で備える帯状である化粧シートを巻芯に巻き付けた化粧シート巻回体であって、
前記艶消しフィラーはメラミン系樹脂またはシリカ粒子を含み、
前記
メラミン樹脂コート層
は、層厚が12μm以下であり、その表面に前記艶消しフィラー形状に追随した凸部を備え、前記表面の上面視において当該表面の前記艶消しフィラーの面積比が5~60%である、化粧シート巻回体。
【請求項12】
帯状の前記化粧シートの長尺方向の長さが4m以上であり、前記巻芯の外径が190mm以下である、請求項
11に記載の化粧シート巻回体。
【請求項13】
前記透明フィルムはポリエチレンテレフタレートを含む、請求項
9~
12のいずれかに記載の化粧シート巻回体。
【請求項14】
前記隠蔽層は、ポリ塩化ビニルまたはポリエチレンテレフタレートを含む、請求項
9~
13のいずれかに記載の化粧シート巻回体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートおよび当該化粧シートを巻芯に巻き付けた巻回体に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅やビル等の内壁や外装の施工においては、壁の意匠性を高めるために化粧シートを施す場合がある。化粧シートの表面にエンボスを形成することで、表面の艶を抑えて意匠性を付与したり、指紋等の汚染を抑制することが行われている。特許文献1には、表面に成形型の凹凸模様が転写された化粧シートが開示されている。
【0003】
また、化粧シートは、従来からプレス機により成型されて生産されている。プレス機の特性上、化粧シートの長さは最大10尺(3m)までの制限があり、さらに施工面が平面に限られ、曲面部分に施行(曲面貼り)することができなかった。近年、曲面部分に施行することができる化粧シートも開発されているが、施行可能な曲率半径が大きく、施工面が限定されていた。特許文献2には、メラミン樹脂を含むコート層を備える化粧シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-128217号公報
【文献】特開2018-24238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の技術においては、成形型の凹凸を表面層に押圧してエンボス形状を作成しているため、押圧力が不足した場合や、エンボス加工を施す化粧シートが水平に載置されていない場合には、エンボス形状が形成されない箇所が存在したり、エンボス形状の加工深さが浅い箇所が存在することがあった。そのため、従来の化粧シートは、その表面の艶の抑制や指紋等の汚染の抑制に改善の余地があった。
【0006】
化粧シートを巻芯に巻き付けた巻回体として提供することができれば、施行作業性に優れ、運搬や搬入等も容易となる。特許文献2には、化粧シートを巻回体とすることについても記載されておらず、曲面部分への施行に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、樹脂コート層の表面を特定の形状とすることによって、化粧シートにおける表面の艶の抑制や指紋等の汚染の抑制という課題を解決できることを見出し、以下に提供される発明を完成させた。
【0008】
本発明によれば、
隠蔽層と、
印刷層と、
透明フィルムと、
艶消しフィラーを含む樹脂コート層と、をこの順で備え、
前記艶消しフィラーはメラミン系樹脂またはシリカを含み、
前記樹脂コート層は、その表面に前記艶消しフィラー形状に追随した凸部を備える、化粧シートが提供される。
【0009】
さらに、本発明者らは、長尺方向に所定の長さを備える帯状のメラミン化粧シートを巻芯に巻き付けた巻回体とすることによって、施行作業性や運搬や搬入等を改善するという課題を解決できることを見出し、以下に提供される発明を完成させた。
【0010】
本発明によれば、
剥離層と、
隠蔽層と、
印刷層と、
透明フィルムと、
メラミン系樹脂および艶消しフィラーを含み、その表面に前記艶消しフィラー形状に追随した凸部を備える樹脂コート層と、
をこの順で備える帯状である化粧シートを巻芯に巻き付けた化粧シート巻回体であって、
前記艶消しフィラーはメラミン系樹脂またはシリカを含み、
前記化粧シートの長尺方向の長さが4m以上である、化粧シート巻回体が提供される。
【0011】
本発明者らは、特定の層構成からなる化粧シートにおいてコート層を所定の厚みとし、この化粧シートを巻回体とすることによって、、施行作業性や運搬や搬入等を改善するという上記の課題を解決できることを見出し、以下に提供される発明を完成させた。
【0012】
本発明によれば、
剥離層と、
隠蔽層と、
印刷層と、
透明フィルムと、
艶消しフィラーを含む樹脂コート層と、
をこの順で備える帯状である化粧シートを巻芯に巻き付けた化粧シート巻回体であって、
前記艶消しフィラーはメラミン系樹脂またはシリカ粒子を含み、
前記樹脂コート層はメラミン系樹脂または熱可塑性樹脂を含み、層厚が12μm以下であり、その表面に前記艶消しフィラー形状に追随した凸部を備える、化粧シート巻回体、が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表面の艶の抑制効果、防汚効果および耐指紋性に優れた化粧シートを提供することができる。さらに、本発明の化粧シートは、艶消しフィラーを樹脂コート層に含有させることにより当該効果を有する化粧シートを得ることができ、製造安定性に優れる構成を備える。
さらに、本発明によれば、曲面部分への施行が容易であり、広範囲を一度に施行することができ施行作業性に優れとともに、施工面積に対して必要となる巻回体の数を減らすことができ運搬や搬入等も容易な化粧シート巻回体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態における化粧シートを模式的に示す概略断面図である。
【
図2】実施形態に係る化粧シート巻回体の構造を例示する概略斜視図である。
【
図3】実施形態に係る化粧シート巻回体を構成する化粧材シートの概略断面図である。
【
図4】実施形態に係る化粧シート巻回体の製造方法を示す概略工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「~」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
【0016】
<化粧シート>
図1は本実施形態の化粧シートの構造を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の化粧シート10は、隠蔽層12と、印刷層14と、透明フィルム16と、艶消しフィラー18を含む樹脂コート層20と、をこの順で備える。樹脂コート層20は、その表面に艶消しフィラー18の形状に追随した凸部20aを備える。
化粧シート10の全体としての層厚は、0.1mm~2mm程度である。
【0017】
[隠蔽層12]
隠蔽層12により、14と対向する面の裏面側に位置する施工面を隠蔽することができ、当該施工面が樹脂コート層20側から視認されることがない。さらに、隠蔽層12は、樹脂コート層20側から見る場合において、後述する印刷層14との組み合わせにより、印刷層14の模様の視認性を向上させたり、色彩を変化させることができる。
隠蔽層12は、樹脂フィルム12aと金属蒸着層12bとから構成することができる。
【0018】
樹脂フィルム12aは、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂材料等を含むことができ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン(COP)、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6-12、ナイロン6-66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリパラキシリレン(poly-para-xylylene)、ポリモノクロロパラキシリレン(poly-monochloro-para-xylylene)、ポリジクロロパラキシリレン(poly-dichloro-para-xylylene)、ポリモノフルオロパラキシリレン(poly-monofluoro-para-xylylene)、ポリモノエチルパラキシリレン(poly-monoethyl-para-xylylene)等のポリパラキシリレン樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等を挙げることができ、これらから選択される少なくとも1種を含むことができる。本実施形態においては、ポリ塩化ビニルフィルムであることが好ましい。
【0019】
金属蒸着層12bは、樹脂フィルム12aの一方の面に形成され、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素の少なくとも1種を含むことができる。
隠蔽層12の層厚は、全体として10μm~300μm程度である。
隠蔽層12の印刷層14と対向する面とは反対側の面に図示しない接着層を備え、施工面(壁面等)に貼り付けることができるように構成することができる。
【0020】
[印刷層14]
印刷層14は、木目調模様、石材調模様、幾何学模様等の各種模様を備え、ユーザーが樹脂コート層20側から見る場合において、当該模様が視認される。
【0021】
印刷層14は、樹脂と、顔料、染料等の着色剤とを含むことができ、当該着色剤により各種模様が形成される。印刷層14に含まれる樹脂としては、樹脂フィルム12aで例示した樹脂を挙げることができる。
印刷層14の層厚は、0.1~15μm、好ましくは1~5μmである。
【0022】
[透明フィルム16]
本実施形態の化粧シートは、透明フィルム16を備えることにより、可撓性に優れる。さらに、印刷層14で反射した光を透過し、ユーザーに印刷層14の模様を視認させることができる。
【0023】
透明フィルム16に含まれる樹脂としては、樹脂フィルム12aで例示した樹脂を挙げることができ、ポリエチレンテレフタレートを含むことが好ましい。
透明フィルム16の厚みは、10μm~300μm程度である。
【0024】
[樹脂コート層20]
樹脂コート層20は、その表面に艶消しフィラー18の形状に追随した凸部20aを備える。本実施形態の化粧シート10は、凸部20aを有する樹脂コート層20を備えることにより、艶が抑制され審美性に優れるとともに汚染材料が付き難く防汚効果および耐指紋性にも優れる。
【0025】
本発明の効果の観点から、艶消しフィラー18の平均粒子径は、樹脂コート層20の平均膜厚よりも大きいことが好ましい。
艶消しフィラー18の平均粒子径は3μm~100μm、好ましくは5~70μm、さらに好ましくは5~50μmである。樹脂コート層20の平均膜厚は、2μm~80μm、好ましくは4~50μm、さらに好ましくは5~30μmである。
【0026】
また、樹脂コート層20表面の表面粗さ(算術平均高さ(μm)Sa)は、0.1~10μm、好ましくは0.2~7μm、より好ましくは0.5~5μmである。樹脂コート層20表面の表面粗さが上記範囲であれば、表面の艶の抑制効果、防汚効果および耐指紋性により優れた化粧シートを提供することができる。
【0027】
さらに、本実施形態の化粧シート10は、樹脂コート層20の凸部を備える面の上面視において、樹脂コート層20表面の面積(100%)における艶消しフィラー18の面積の比(艶消しフィラー18の面積占有率)が、5~60%、好ましくは10~50%、さらに好ましくは15~40%である。艶消しフィラー18の面積比が上記範囲であれば、表面の艶の抑制効果、防汚効果および耐指紋性により優れた化粧シートを提供することができる。
艶消しフィラー18の面積比は、レーザ顕微鏡による樹脂コート層20表面の画像を2値化処理し、樹脂コート層20(100%)における艶消しフィラー18の面積比を算出することで得ることができる。
【0028】
本発明の効果の観点からは、樹脂コート層20表面の表面粗さおよび艶消しフィラー18の面積比がいずれも上記範囲にあることがより好ましい。
【0029】
樹脂コート層20に含まれる樹脂としては、樹脂フィルム12aで例示した樹脂を挙げることができる。当該樹脂としては、熱可塑性樹脂またはメラミン系樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂が好ましい。
【0030】
艶消しフィラー18は、アクリル樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂およびシリカから選択される少なくとも1種を含む。艶消しフィラー18としては、アクリル樹脂粒子、メラミン系樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、シリカ粒子、これらの樹脂とシリカとの複合粒子等を挙げることができる。本実施形態においては、印刷層14の視認性の観点から、アクリル樹脂またはメラミン系樹脂を含むことが好ましい。
【0031】
艶消しフィラー18としては、メタブレン(アクリル樹脂粒子、三菱ケミカル社製)、タフチック(アクリル樹脂粒子、東洋紡社製)、テクポリマー(アクリル樹脂粒子、積水化成品工業社製)、テクポリマー(ポリスチレン樹脂粒子、積水化成品工業社製)、シリカ粒子(デンカ社製)、エポスター(メラミン系樹脂粒子、日本触媒社製)、オプトビーズ(メラミン系樹脂・シリカ複合粒子、日産化学社製)等を挙げることができる。
【0032】
艶消しフィラー18の屈折率が、樹脂コート層20を構成する樹脂層(樹脂コート層20の艶消しフィラー18以外の部分)の屈折率と著しく相違していると、樹脂コート層20の透明度が低下することから、樹脂コート層20の艶消し効果が十分に発揮されず、外観の意匠性が低下する。従って、外観の意匠性を改善する観点から、艶消しフィラー18は、樹脂コート層20を構成する樹脂との屈折率差が0.2以下の透明な材質からなるものを使用することが好ましい。
【0033】
樹脂コート層20を構成する樹脂の屈折率は、1.4~1.7程度であり、好ましく用いられるメラミン樹脂は1.6程度であるので、艶消しフィラー18の屈折率の範囲は、1.3~1.8程度となる。
【0034】
樹脂コート層20を構成する樹脂の線膨張係数と艶消しフィラー18の線膨張係数との差は10×10-5/℃以下、好ましくは8×10-5/℃以下、より好ましくは5×10-5/℃以下である。当該範囲であれば、温度変化に対する艶消しフィラー18と樹脂コート層20を構成する樹脂との伸縮度合いの差が小さく、樹脂コート層20の複数の凸部20aを維持することができ、ひいては艶の抑制効果、防汚効果および耐指紋性を安定して得ることができる。
【0035】
本実施形態において、樹脂コート層20は、ベース樹脂がメラミン系樹脂であり、艶消しフィラー18に含まれる樹脂がアクリル樹脂である組み合わせ、またはベース樹脂が熱可塑性樹脂であり、艶消しフィラー18に含まれる樹脂がメラミン系樹脂である組み合わせであることが好ましい。
【0036】
[化粧シートの製造方法]
本実施形態の化粧シート10は、隠蔽層12と、印刷層14と、透明フィルム16と、艶消しフィラー18を含む樹脂コート層20と、をこの順で積層することにより製造することができる。
【0037】
本実施形態においては、具体的には、透明フィルム16の一方の面に印刷層14を形成する印刷工程aと、透明フィルム16の他方の面に樹脂コート層20を形成する工程bと、印刷層14を隠蔽層12の一方の面に積層する工程cと、を含む。さらに、隠蔽層12の他方の面に剥離層を形成する工程dを含むこともできる。
【0038】
印刷工程aにおいては、透明フィルム16の一方の面に、各種印刷法により印刷層14を形成することができる。印刷法としては、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、タコ印刷法等を挙げることができる。インクは、固形分として、通常、着色剤を含む。着色剤としては、例えば、各種顔料や各種染料等を用いることができる。インクは、溶剤を含んでいてもよい。
【0039】
工程bにおいては、透明フィルム16の印刷層14が形成された面とは反対側の面に樹脂コート層20を形成する。
樹脂コート層20は、例えば、浸漬法(ディッピング)、スプレー法、キスコーター、コンマコーター、ロールコーター、ナイフコーター、ブレードコーター等の各種コーターを用いたコート法、各種印刷法等の各種方法により、樹脂コート層形成用組成物からなる層を透明フィルム16の面上に形成する。その後、硬化反応を行うことにより樹脂コート層20を形成することができる。
【0040】
樹脂コート層20の形成に用いる樹脂コート層形成用組成物は、樹脂コート層20を構成する上述の樹脂および/またはその前駆体と、艶消しフィラー18とを含む。
【0041】
艶消しフィラー18の容量は、上述の樹脂および/またはその前駆体の容量に対して0.1~10倍、好ましくは0.5~8倍、さらに好ましくは1~5倍とすることができる。これにより、樹脂コート層20は、その表面に艶消しフィラー18の形状に追随した凸部20aを効率的に形成することができ、表面の艶の抑制効果、防汚効果および耐指紋性に優れた化粧シートを得ることができる。
【0042】
樹脂コート層形成用組成物は、樹脂および/またはその前駆体と、艶消しフィラー18と、必要に応じて溶剤等とを、公知の方法により混合して得ることができる。溶剤を用いることにより、当該組成物が艶消しフィラー18の形状に容易に追随し、凸部20aを効率的に形成することができ、さらに樹脂やその前駆体が溶解または分散するため、樹脂コート層形成用組成物の取り扱いが容易となる。また、透明フィルム16と樹脂コート層20との密着性を向上させることもできる。
樹脂コート層形成用組成物中に含まれる溶剤としては、極性溶媒を好適に用いることができる。
【0043】
具体的には、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール性溶媒;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド系溶媒等が挙げられる。
【0044】
樹脂コート層形成用組成物は、必要に応じて、触媒、離型剤、重合開始剤、スリップ剤(レベリング剤)、分散剤、重合促進剤、重合禁止剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、着色剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤( 増感色素)等を含むことができる。
【0045】
工程cにおいては、印刷層14を隠蔽層12の金属蒸着層12b上に積層する。印刷層14と金属蒸着層12bとは、接着層を介して積層することもできる。さらに、隠蔽層12の樹脂フィルム12a上に接着層および剥離層を積層することもできる。化粧シート10を壁面等に施行する際に、剥離層を剥がし、接着層を介して施工面に貼り付けることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
本実施形態においては、隠蔽層12を、樹脂フィルム12aと金属蒸着層12bとから構成した例によって示したが、樹脂フィルム12aと、別途準備された金属層とを積層した積層体から構成することができ、または着色された樹脂フィルム12aのみから構成することができ、内部空隙により白色化した樹脂フィルム12aから構成することもできる。
【0047】
<化粧シート巻回体>
本発明の化粧シート巻回体について、第1実施形態または第2実施形態により説明する。
【0048】
[第1実施形態]
図2に示すように、本実施形態の化粧シート巻回体(メラミン化粧シート巻回体)30は、帯状のメラミン化粧シート10を巻芯20に巻き付けた構造を備える。メラミン化粧シート10の長尺方向の長さは4m以上、好ましくは8m以上、さらに好ましくは12m以上とすることができる。本実施形態の化粧シート巻回体30により、長尺方向に長い化粧シート10を提供することができ、施工面に発生する化粧シート10間のつなぎ目の数を減少させることができるため、施工面の意匠性が向上する。さらに、曲面部分への施行が容易であり施行作業性に優れ、運搬や搬入等も容易な化粧シート巻回体を提供することができる。
なお、メラミン化粧シート10の長尺方向の長さの上限値は、施行作業性や施工面積の観点から50m以下程度である。
さらに、本実施形態の化粧シート巻回体30は、巻芯20の外径が190mm以下である。これにより、施行作業性により優れ、さらに巻回体の外径が小さくなることから運搬や搬入等もより容易な化粧シート巻回体を提供することができる。さらに、保管スペースを確保することもできる。
【0049】
メラミン化粧シート10は、後述するメラミン樹脂コート層22が内側(巻芯20側)に、剥離層11が外側となるように、巻芯20にロール状に巻き回されている構成とすることができる。
【0050】
図3に、化粧シート巻回体を構成する化粧材シートの概略断面図を示す。
図3に示すように、本実施形態のメラミン化粧シート10は、剥離層11と、隠蔽層12と、印刷層14と、透明フィルム16と、メラミン樹脂コート層22と、をこの順で備える。
特定の層構成からなるメラミン化粧シートを用いることによって、本実施形態の化粧シート巻回体30を好適に提供することができる。
【0051】
メラミン樹脂コート層22の層厚は12μm以下であることが好ましい。
このように、特定の層構成からなる化粧シートにおいてメラミン樹脂コート層22を所定の厚みとすることによって、化粧シートが薄膜化され可撓性に優れることから、曲面部分への施行が容易であり施工性に優れるとともに、長尺方向に長い化粧シートを巻回して巻回体を製造することができる。したがって、本発明の巻回体は、巻回された化粧シートで広範囲を一度に施行することができ施行作業性に優れとともに、施工面積に対して必要となる巻回体の数を減らすことができ運搬や搬入等も容易となる。
【0052】
さらに、本実施形態の化粧シート10を用いることにより、化粧シート巻回体30において、帯状の化粧シート10の長尺方向の長さを4m以上とすることができ、さらに巻芯20の外径を190mm以下とすることもできる。これにより、施行作業性により優れ、さらに巻回体の外径が小さくなることから運搬や搬入等もより容易な化粧シート巻回体を提供することができる。
以下、メラミン化粧シート10を構成する各層について説明する。
【0053】
(剥離層11)
メラミン化粧シート10の、意匠面(メラミン樹脂コート層22の面)側とは反対面に、剥離自在な剥離層11を備える。剥離層11としては、例えば、クラフト紙等の紙、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンビニルアセテート、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルを含むポリマー材料で構成された樹脂フィルムなどが挙げられる。剥離層11の厚さは、5μm以上300μm以下程度である。
剥離層11の剥離面においては、必要に応じて、シリコーン含有材料又はフルオロカーボン含有材料などの剥離剤でコーティングされていてもよい。
【0054】
(隠蔽層12)
隠蔽層12により、印刷層14と対向する面の裏面側に位置する施工面を隠蔽することができ、当該施工面がメラミン樹脂コート層22側から視認されることがない。
【0055】
さらに、隠蔽層12は、メラミン樹脂コート層22側から見る場合において、後述する印刷層14との組み合わせにより、印刷層14の模様の視認性を向上させたり、色彩を変化させることができる。
隠蔽層12の構成材料としては、樹脂材料、金属材料、金属酸化物等の金属化合物等が挙げられる。
【0056】
樹脂材料としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂材料等を含むことができ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン(COP)、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6-12、ナイロン6-66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリパラキシリレン(poly-para-xylylene)、ポリモノクロロパラキシリレン(poly-monochloro-para-xylylene)、ポリジクロロパラキシリレン(poly-dichloro-para-xylylene)、ポリモノフルオロパラキシリレン(poly-monofluoro-para-xylylene)、ポリモノエチルパラキシリレン(poly-monoethyl-para-xylylene)等のポリパラキシリレン樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等を挙げることができ、これらから選択される少なくとも1種を含むことができる。本実施形態においては、ポリ塩化ビニルフィルムまたはポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0057】
また、隠蔽層12は、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料;カーボンブラック等の黒色顔料;その他の顔料;各種染料;各種金属材料等を含むことができる。
【0058】
このような成分を含むことにより、隠蔽層12の隠蔽性以外の特性(例えば、印刷層14との密着性、靭性、可撓性等)の低下をより効果的に防止しつつ、隠蔽層12による隠蔽性をより向上させることができる。
【0059】
隠蔽層12が、樹脂材料に加え、酸化チタンおよび酸化亜鉛のうちの少なくとも一方を含む材料で構成されていることが好ましい。これにより、化粧シート10の耐久性を向上させることができるとともに、隠蔽層12を、明度の高い白色または金属光沢を呈する構成とすることができる。
隠蔽層12の膜厚は、10μm~300μm程度である。
【0060】
隠蔽層12が上述の顔料や染料等を含まない場合は、隠蔽層12は印刷層14との間に金属蒸着層を備えていてもよい。金属蒸着層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素の少なくとも1種を含むことができる。
【0061】
隠蔽層12の剥離層11と対向する面には、図示しない接着層を備え、剥離層11を剥がし、接着層を介して施工面(壁面等)に貼り付けることができるように構成することができる。
【0062】
(印刷層14)
印刷層14は、木目調模様、石材調模様、幾何学模様等の各種模様を備え、ユーザーがメラミン樹脂コート層22側から見る場合において、当該模様が視認される。
【0063】
印刷層14は、樹脂と、顔料、染料等の着色剤とを含むことができ、当該着色剤により各種模様が形成される。印刷層14に含まれる樹脂としては、隠蔽層12で例示した樹脂を挙げることができる。
印刷層14の層厚は、全体として1μm~10μm程度である。
【0064】
(透明フィルム16)
本実施形態の化粧シートは、透明フィルム(印刷基材層)16を備えることにより、印刷層14の模様を固定することができ、さらに可撓性を付与することもできる。さらに、印刷層14で反射した光を透過し、ユーザーに印刷層14の模様を視認させることができる。
透明フィルム16に含まれる樹脂としては、隠蔽層12で例示した樹脂を挙げることができ、ポリエチレンテレフタレートを含むことが好ましい。
透明フィルム16の厚みは、10μm~300μm程度である。
【0065】
(メラミン樹脂コート層22)
メラミン樹脂コート層22の層厚は12μm以下、好ましくは10μm以下とすることができる。メラミン樹脂コート層22の層厚の下限値は5μm以上程度である。
【0066】
メラミン樹脂コート層22は艶消しフィラーを含み、その表面に艶消しフィラーの形状に追随した凸部を備えることもできる。本実施形態のメラミン化粧シート10は、凸部を有するメラミン樹脂コート層22を備えることにより、艶が抑制され審美性に優れるとともに指紋等が付き難く防汚効果にも優れる。
【0067】
艶消しフィラーの平均粒子径は、メラミン樹脂コート層22の平均膜厚(12μm以下)よりも大きいことが好ましい。
艶消しフィラーの平均粒子径は3μm~100μm、好ましくは5~70μm、さらに好ましくは5~50μmである。
【0068】
また、メラミン樹脂コート層22表面の表面粗さ(算術平均高さ(μm)Sa)は、0.1~10μm、好ましくは0.2~7μm、より好ましくは0.5~5μmである。メラミン樹脂コート層22表面の表面粗さが上記範囲であれば、表面の艶の抑制効果や防汚効果により優れた化粧シートを提供することができる。
【0069】
さらに、本実施形態のメラミン化粧シート10は、メラミン樹脂コート層22の凸部を備える面の上面視において、メラミン樹脂コート層22表面の面積(100%)における艶消しフィラーの面積の比(艶消しフィラーの面積占有率)が、5~60%、好ましくは10~50%、さらに好ましくは15~40%である。艶消しフィラーの面積比が上記範囲であれば、表面の艶の抑制効果や防汚効果により優れた化粧シートを提供することができる。
【0070】
艶消しフィラーの面積比は、レーザ顕微鏡によるメラミン樹脂コート層22表面の画像を2値化処理し、メラミン樹脂コート層22(100%)における艶消しフィラーの面積比を算出することで得ることができる。
【0071】
艶消しフィラーは、アクリル樹脂、メラミン系樹脂およびシリカから選択される少なくとも1種を含む。艶消しフィラーとしては、アクリル樹脂粒子、メラミン系樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、シリカ粒子、これらの樹脂とシリカとの複合粒子等を挙げることができる。本実施形態においては、印刷層14の視認性の観点から、アクリル樹脂またはメラミン系樹脂を含むことが好ましい。
【0072】
艶消しフィラーとしては、メタブレン(アクリル樹脂粒子、三菱ケミカル社製)、タフチック(アクリル樹脂粒子、東洋紡社製)、テクポリマー(アクリル樹脂粒子、積水化成品工業社製)、テクポリマー(ポリスチレン樹脂粒子、積水化成品工業社製)、シリカ粒子(デンカ社製)、オプトビーズ(日産化学社製、メラミン系樹脂・シリカ複合粒子)、エポスター(メラミン系樹脂粒子、日本触媒社製)等を挙げることができる。
【0073】
艶消しフィラーの屈折率が、メラミン樹脂コート層22を構成する樹脂層(メラミン樹脂コート層22の艶消しフィラー以外の部分)の屈折率と著しく相違していると、メラミン樹脂コート層22の透明度が低下することから、メラミン樹脂コート層22の艶消し効果が十分に発揮されず、外観の意匠性が低下する。従って、外観の意匠性を改善する観点から、艶消しフィラーは、メラミン樹脂コート層22を構成する樹脂との屈折率差が0.2以下の透明な材質からなるものを使用することが好ましい。
【0074】
メラミン樹脂コート層22を構成するメラミン樹脂の屈折率は1.6程度であるので、艶消しフィラーの屈折率の範囲は、1.4~1.8程度となる。
【0075】
メラミン樹脂コート層22を構成する樹脂の線膨張係数と艶消しフィラーの線膨張係数との差は5×10-5/℃以下である。当該範囲であれば、温度変化に対する艶消しフィラーとメラミン樹脂コート層22を構成する樹脂との伸縮度合いの差が小さく、メラミン樹脂コート層22の複数の凸部を維持することができ、ひいては艶の抑制効果や防汚効果を安定して得ることができる。
【0076】
本実施形態において、メラミン樹脂コート層22は、ベース樹脂がメラミン系樹脂であり、艶消しフィラーに含まれる樹脂がアクリル樹脂である組み合わせであることが好ましい。
【0077】
メラミン樹脂コート層22の層厚が12μm以下でありメラミン化粧シート10全体が薄膜化され、可撓性が向上しているので、壁等の施工面の形状に容易に追随することができる。
本実施形態において、メラミン化粧シート10の曲げ抵抗は0.5以上10以下、好ましくは1以上7以下とすることができる。
これにより、メラミン化粧シート10が、施工面の角等から浮き上がったり、剥がれたりすることがなく、特に経時的にその効果を発揮することができる。
曲げ抵抗の試験方法は以下のとおりである。
試験法:
デジタルフォースゲージ(日本電産シンポ社製)に化粧シートを折り曲げた状態で押し当て、折り曲げた端部のシート間距離が2mm(1R)になった時の表示値を読み取った。
【0078】
[巻芯20]
巻芯20は、円柱状または円筒状の形状を有する。本実施形態の化粧シート巻回体30は、メラミン樹脂コート層22の層厚が12μm以下でありメラミン化粧シート10全体が薄膜化され、可撓性が向上しているので、巻芯20の外径を、190mm以下、好ましくは90mm以下とすることができる。なお、巻芯20の外径の下限値は60mm以上程度である。
【0079】
巻芯20の外径が190mm以下であることで、化粧シート巻回体30の直径が小さくなり軽量化されるため、施行作業や運搬作業が容易になり、保管スペースを確保することもできる。
【0080】
さらに、メラミン化粧シート10の可撓性が向上しているので、巻芯20への巻き数を増やすことができ、帯状のメラミン化粧シート10の長尺方向の長さを4m以上にすることができる。本実施形態の化粧シート巻回体30により、長尺方向に長いメラミン化粧シート10を提供することができ、施工面に発生するメラミン化粧シート10間のつなぎ目の数を減少させることができるため、施工面の意匠性が向上する。
【0081】
巻芯20の長さ(軸方向の長さ)は、特に制限されないものの、メラミン化粧シート10の幅と同じであってもよく、作業性の面から若干大きいことが好ましい。
巻芯20を構成する材料としては、十分な強度を有していれば特に制限されず、例えば、金属、樹脂、木材等が挙げられる。これらの材料の中でも、強度と軽量化の観点から樹脂が好ましい。
【0082】
<化粧シート巻回体の製造方法>
本実施形態の化粧シート巻回体は、例えば
図4の工程フロー図のように製造することができる。
【0083】
まず、長尺状の透明フィルム(印刷基材層)16の巻回体から、透明フィルム(印刷基材層)16を供給し、その一方の面に印刷層14を形成する(印刷工程S10)。
印刷層14は、例えばグラビア印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷等により形成することができる。
【0084】
それと同時に、透明フィルム(印刷基材)16の印刷層14が形成された面とは異なる面に、メラミン樹脂コート層22を形成する。具体的には、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含有する塗布液を準備し(塗布液準備工程S20)、この塗布液を透明フィルム(印刷基材)16の印刷層14が形成された面とは異なる面に所定の膜厚となるように連続的に塗工し、次いで硬化させる(樹脂コート層形成工程S30)。
【0085】
塗工方法としては、各種の方法を用いることができるが、具体的には、ダイコート法、リップコート法、グラビアコート法、インクジェット法、スピンコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法などが挙げられる。長尺状の巻回体から印刷層14付き透明フィルム16を連続的に供給し、塗布液の塗工および硬化工程を連続的に行うことができる。工程S10~工程S30は連続的に行うことができる。
以上の工程により、印刷層14と、透明フィルム16と、メラミン樹脂コート層22とが順に積層された長尺状の第1積層体を得ることができる。
【0086】
また、別途、隠蔽層12を準備し、前工程で得られた第1積層体の印刷層14にラミネートする(隠蔽層ラミネート工程S40)。
【0087】
具体的には、まず隠蔽層12となる長尺状のフィルムを巻回体から供給し、その表面に、接着層を形成する。接着層はウレタン樹脂から形成することができ、膜厚は1~10μm程度である。長尺状の巻回体から隠蔽層12を連続的に供給し、接着層の形成を連続的に行うことができる。そして、第1積層体の印刷層14表面に、接着層を介して隠蔽層12を連続的にラミネートし、長尺状の第2積層体を得ることができる。
【0088】
なお、隠蔽層12が樹脂フィルムと金属蒸着層とから構成される場合には、樹脂フィルムの一方の面に酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、または酸化窒化ケイ素を蒸着し、金属蒸着層を形成する。樹脂フィルムと金属蒸着層とが積層された隠蔽層12は長尺状の巻回体として提供することができる。
【0089】
次いで、第2積層体の隠蔽層12に剥離層11をラミネートする(剥離層ラミネート工程S50)。
具体的には、剥離紙に粘着剤を塗布し、粘着層付き剥離紙を準備する。粘着層の膜厚は30μm程度である。剥離紙は長尺状の巻回体として提供することができ、巻回体から供給された剥離紙に連続的に粘着層を形成し、該粘着層を介して第2積層体の樹脂フィルム12a表面に剥離紙(剥離層11)をラミネートする。これにより、メラミン樹脂コート層22と、透明フィルム16と、印刷層14と、隠蔽層12と、剥離層11とが順に積層された長尺状のメラミン化粧シート10を得ることができる。
【0090】
最後に、メラミン化粧シート10を所定の幅のスリットを通過させて膜厚を均一に補正するとともに、巻芯20に巻回し、本実施形態の化粧シート巻回体30が製造される(化粧シート巻回し工程S60)。
本実施形態の化粧シート巻回体の製造方法は、以上の工程を連続的に行うことができる。
【0091】
[第2実施形態]
図2に示すように、本実施形態の化粧シート巻回体30は、帯状の化粧シート10を巻芯20に巻き付けた構造を備える。化粧シート10は、後述する樹脂コート層22が内側(巻芯20側)に、剥離層11が外側となるように、巻芯20にロール状に巻き回されている。
【0092】
図3に、化粧シート巻回体を構成する化粧材シートの概略断面図を示す。
図3に示すように、本実施形態の化粧シート10は、剥離層11と、隠蔽層12と、印刷層14と、透明フィルム16と、メラミン系樹脂または熱可塑性樹脂を含む層厚12μm以下の樹脂コート層22と、をこの順で備える。
【0093】
このように、特定の層構成からなる化粧シートにおいて樹脂コート層を所定の厚みとすることによって、化粧シートが薄膜化され可撓性に優れることから、曲面部分への施行が容易であり施工性に優れるとともに、長尺方向に長い化粧シートを巻回して巻回体を製造することができる。したがって、本発明の巻回体は、巻回された化粧シートで広範囲を一度に施行することができ施行作業性に優れとともに、施工面積に対して必要となる巻回体の数を減らすことができ運搬や搬入等も容易となる。
【0094】
さらに、本実施形態の化粧シート10を用いることにより、化粧シート巻回体30において、帯状の化粧シート10の長尺方向の長さを4m以上とし、巻芯20の外径を190mm以下とすることができる。これにより、施行作業性により優れ、さらに巻回体の外径が小さくなることから運搬や搬入等もより容易な化粧シート巻回体を提供することができる。
以下、化粧シート10を構成する各層について説明する。なお、剥離層11、隠蔽層12、印刷層14、および透明フィルム16は第1実施形態と同一であり説明を省略する。
【0095】
(樹脂コート層22)
樹脂コート層22は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含む。樹脂コート層22の層厚は12μm以下、好ましくは10μm以下とすることができる。樹脂コート層22の層厚の下限値は5μm以上程度である。
【0096】
樹脂コート層22を構成する樹脂としては、第1実施形態の隠蔽層12で例示した樹脂を挙げることができ、熱可塑性樹脂およびメラミン樹脂が好ましい。
【0097】
樹脂コート層22は艶消しフィラーを含み、その表面に艶消しフィラーの形状に追随した凸部を備えることもできる。本実施形態の化粧シート10は、凸部を有する樹脂コート層22を備えることにより、艶が抑制され審美性に優れるとともに指紋等が付き難く防汚効果にも優れる。
【0098】
艶消しフィラーの平均粒子径は、樹脂コート層22の平均膜厚(12μm以下)よりも大きいことが好ましい。
艶消しフィラーの平均粒子径は3μm~100μm、好ましくは5~70μm、さらに好ましくは5~50μmである。
【0099】
また、樹脂コート層22表面の表面粗さ(算術平均高さ(μm)Sa)は、0.1~10μm、好ましくは0.2~7μm、より好ましくは0.5~5μmである。樹脂コート層22表面の表面粗さが上記範囲であれば、表面の艶の抑制効果や防汚効果により優れた化粧シートを提供することができる。
【0100】
さらに、本実施形態の化粧シート10は、樹脂コート層22の凸部を備える面の上面視において、樹脂コート層22表面の面積(100%)における艶消しフィラーの面積の比(艶消しフィラーの面積占有率)が、5~60%、好ましくは10~50%、さらに好ましくは15~40%である。艶消しフィラーの面積比が上記範囲であれば、表面の艶の抑制効果や防汚効果により優れた化粧シートを提供することができる。
【0101】
艶消しフィラーの面積比は、レーザ顕微鏡による樹脂コート層22表面の画像を2値化処理し、樹脂コート層22(100%)における艶消しフィラーの面積比を算出することで得ることができる。
【0102】
艶消しフィラーは、アクリル樹脂、メラミン系樹脂およびシリカから選択される少なくとも1種を含む。艶消しフィラーとしては、アクリル樹脂粒子、メラミン系樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、シリカ粒子、これらの樹脂とシリカとの複合粒子等を挙げることができる。本実施形態においては、印刷層14の視認性の観点から、アクリル樹脂またはメラミン系樹脂を含むことが好ましい。
【0103】
艶消しフィラーとしては、メタブレン(アクリル樹脂粒子、三菱ケミカル社製)、タフチック(アクリル樹脂粒子、東洋紡社製)、テクポリマー(アクリル樹脂粒子、積水化成品工業社製)、テクポリマー(ポリスチレン樹脂粒子、積水化成品工業社製)、シリカ粒子(デンカ社製)、オプトビーズ(日産化学社製、メラミン系樹脂・シリカ複合粒子)、エポスター(メラミン系樹脂粒子、日本触媒社製)等を挙げることができる。
【0104】
艶消しフィラーの屈折率が、樹脂コート層22を構成する樹脂層(樹脂コート層22の艶消しフィラー以外の部分)の屈折率と著しく相違していると、樹脂コート層22の透明度が低下することから、樹脂コート層22の艶消し効果が十分に発揮されず、外観の意匠性が低下する。従って、外観の意匠性を改善する観点から、艶消しフィラーは、樹脂コート層22を構成する樹脂との屈折率差が0.2以下の透明な材質からなるものを使用することが好ましい。
【0105】
樹脂コート層22を構成する樹脂の屈折率は、1.4~1.7程度であり、好ましく用いられるメラミン樹脂は1.6程度であるので、艶消しフィラーの屈折率の範囲は、1.4~1.8程度となる。
【0106】
樹脂コート層22を構成する樹脂の線膨張係数と艶消しフィラーの線膨張係数との差は5×10-5/℃以下である。当該範囲であれば、温度変化に対する艶消しフィラーと樹脂コート層22を構成する樹脂との伸縮度合いの差が小さく、樹脂コート層22の複数の凸部20aを維持することができ、ひいては艶の抑制効果や防汚効果を安定して得ることができる。
【0107】
本実施形態において、樹脂コート層22は、ベース樹脂がメラミン系樹脂であり、艶消しフィラーに含まれる樹脂がアクリル樹脂である組み合わせ、またはベース樹脂が熱可塑性樹脂であり、艶消しフィラーに含まれる樹脂がメラミン系樹脂である組み合わせであることが好ましい。
【0108】
樹脂コート層22の層厚が12μm以下であり化粧シート10全体が薄膜化され、可撓性が向上しているので、壁等の施工面の形状に容易に追随することができる。
本実施形態において、化粧シート10の曲げ抵抗は0.5以上10以下、好ましくは1以上7以下とすることができる。
これにより、化粧シート10が、施工面の角等から浮き上がったり、剥がれたりすることがなく、特に経時的にその効果を発揮することができる。
曲げ抵抗の試験方法は以下のとおりである。
試験法:
デジタルフォースゲージ(日本電産シンポ社製)に化粧シートを折り曲げた状態で押し当て、折り曲げた端部のシート間距離が2mm(1R)になった時の表示値を読み取った。
【0109】
[巻芯20]
巻芯20は、円柱状または円筒状の形状を有する。本実施形態の化粧シート巻回体30は、樹脂コート層22の層厚が12μm以下であり化粧シート10全体が薄膜化され、可撓性が向上しているので、巻芯20の外径を、190mm以下、好ましくは90mm以下とすることができる。なお、巻芯20の外径の下限値は60mm以上程度である。
【0110】
巻芯20の外径が190mm以下であることで、化粧シート巻回体30の直径が小さくなることから施行作業性により優れ、さらに巻回体の外径が小さくなることから運搬や搬入等もより容易な化粧シート巻回体を提供することができる。さらに、保管スペースを確保することもできる。
【0111】
さらに、化粧シート10の可撓性が向上しているので、巻芯20への巻き数を増やすことができ、帯状の化粧シート10の長尺方向の長さを4m以上、好ましくは8m以上、さらに好ましくは12m以上とすることができる。本実施形態の化粧シート巻回体30により、長尺方向に長い化粧シート10を提供することができ、施工面に発生する化粧シート10間のつなぎ目の数を減少させることができるため、施工面の意匠性が向上する。さらに、曲面部分への施行が容易であり施行作業性に優れ、運搬や搬入等も容易な化粧シート巻回体を提供することができる。
なお、化粧シート10の長尺方向の長さの上限値は、施行作業性や施工面積の観点から50m以下程度である。
【0112】
巻芯20の長さ(軸方向の長さ)は、特に制限されないものの、化粧シート10の幅と同じであってもよく、作業性の面から若干大きいことが好ましい。
巻芯20を構成する材料としては、十分な強度を有していれば特に制限されず、例えば、金属、樹脂、木材、紙等が挙げられる。これらの材料の中でも、強度と軽量化の観点から樹脂が好ましい。
【0113】
<化粧シート巻回体の製造方法>
本実施形態の化粧シート巻回体は、
図4の工程フロー図にしたがって第1実施形態と同様に製造することができることから説明を省略する。
【0114】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例】
【0115】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0116】
<実施例A>
[使用材料]
・樹脂コート層20を構成するメラミン系樹脂
メラミン系樹脂は、次の方法で合成した。まず、反応釜に原料メラミンとホルマリンとを所定配合比率で仕込み、触媒を添加後、沸点まで昇温して還流反応させた。メラミン溶解が完了したことを確認した上で、反応終点に達した後、脱水処理にて樹脂固形分を調製し冷却した。かかる方法によりメラミン系樹脂が合成された。
・樹脂コート層20を構成するアクリル樹脂:DIC株式会社製ルクシディアWLS-373を用いた。
【0117】
・樹脂コート層20を構成する艶消しフィラー
アクリル樹脂粒子(製品名:メタブレン(三菱ケミカル社製)、平均粒径:18μm、屈折率:1.5、線膨張係数(10-5/℃):8.3)
メラミン系樹脂粒子(製品名:エポスター(日本触媒社製)、平均粒径:9μm、屈折率:1.68、線膨張係数(10-5/℃):4)
【0118】
[物性測定方法]
・樹脂コート層20の平均膜厚(μm)
電子顕微鏡(製品名JSM-7401F、日本電子社製)にて断面観察を行い、計測した。
【0119】
・表面粗さ(算術平均高さ(μm):Sa)
レーザ顕微鏡(製品名:VK-X1100、キーエンス社製)の対物レンズ20倍の画像において計測した。
【0120】
・樹脂コート層20の艶消しフィラー18面積比(面積占有率)
レーザ顕微鏡(製品名:VK-X1100、キーエンス社製)の対物レンズ20倍の画像を2値化処理し、樹脂コート層20(100%)における艶消しフィラー18の面積比を算出した。
【0121】
・審美性評価(艶消し)
隠蔽層12が載置板に接触するように、化粧シートを石膏ボード(吉野石膏社製)上に載置した。すなわち、隠蔽層12が設けられた面とは反対の面(外表面)が上方を向くように、化粧シートを石膏ボード(吉野石膏社製)上に載置した。この状態で、化粧シートを外表面側から観察し、その審美性を以下の基準に従い評価した。
A:化粧板は非常に優れた外観を有している。
B:化粧板は優れた外観を有している。
C:化粧板は良好な外観を有している。
D:化粧板の審美性がやや劣っている。
E:化粧板の審美性が非常に劣っている。
【0122】
・防汚性評価
JIS K 6902の耐汚染性試験に準拠した方法で化粧シートの処理を行い、化粧シートの外表面の汚染材料の残りの状態を確認し、以下の基準に従い評価した。
A:化粧板の外表面に汚染材料の残りが全く認められない。
B:化粧板の外表面に汚染材料の残りがほとんど認められない。
C:化粧板の外表面に汚染材料の残りがわずかに認められる。
D:化粧板の外表面に汚染材料の残りがはっきりと認められる。
E:化粧板の外表面に汚染材料の残りが顕著に認められる。
【0123】
・耐指紋性
各実施例および比較例の化粧シートの外表面に、指紋を付着させ、目視で観察し、以下の基準に従い評価した。
A:比較例A1よりも、明らかに指紋が目立たない。
B:比較例A1よりも、指紋が目立たない。
C:指紋が目立つ(比較例A1と同等以下)。
【0124】
(実施例A1)
まず、透明フィルム16として、インク受容層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。この透明フィルムは、厚さが38μmであった。
次に、この透明フィルム16のインク受容層が設けられた面側に、インクジェット法により、所定のパターン(木目調のパターン)で印刷層14を形成した。
印刷層14の形成に際しては、着色剤と、紫外線硬化型樹脂としてのアクリル系樹脂とを含むインクを用いた。また、インクジェット法によるインクの吐出後、透明フィルム16に着弾したインクに対して、紫外線を照射して硬化させた。これにより、厚さが3μmの印刷層が形成された。
【0125】
次に、透明フィルム16の印刷層14が設けられた面とは反対の面側に、メラミン系樹脂(反応モル比:1.4、樹脂固形分:50質量%)100質量部に対して、艶消しフィラー18(アクリル樹脂粒子、製品名:メタブレン(三菱ケミカル社製))6質量部と、を含む樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成した。その後、120℃の熱風乾燥機にて90秒間、塗膜を乾燥し、Bステージ層(Bステージの硬化性樹脂(メラミン系樹脂)および艶消しフィラー18(アクリル樹脂粒子)を含む材料で構成された樹脂コート層20)を得た。
以上により、印刷層14と、透明フィルム16と、Bステージ層(艶消しフィラー18を含む樹脂コート層20)とが積層された積層体を得た。
【0126】
一方、酸化チタンを含む材料で構成された白色のポリ塩化ビニルフィルム(80μm、樹脂フィルム12a)の表面に、アルミニウムを抵抗加熱蒸着法で蒸着し金属蒸着層12b(厚み0.1μm)を形成し、隠蔽層12を得た。
次に、得られた積層体の印刷層14を隠蔽層12の金属蒸着層12b上に積層し、140℃、2MPaの条件で40分間、得られた積層体を加熱加圧成形した。これにより、硬質樹脂材料で構成された樹脂コート層20(平均膜厚:6μm)、透明フィルム16(厚さ:38μm)、印刷層14(厚さ:3μm)、および隠蔽層12(厚さ:80μm)がこの順で積層されてなる化粧シート10(メラミン化粧シート)を得た(
図1参照)。
樹脂コート層(D)は、その表面に前記艶消しフィラー形状に追随した凸部20aを備えていた。
化粧シート10の審美性評価(艶消し)および防汚性評価の評価結果を表-1に示す。
【0127】
(実施例A2~A5、比較例A1)
各層の構成を表-1に示すように変更した以外は、実施例A1と同様にして化粧シートを製造した。
【0128】
【0129】
表-1に記載のように、樹脂コート層に艶消しフィラーを含み、その表面に前記艶消しフィラー形状に追随した凸部を備える実施例Aの化粧シートは、審美性(表面の艶の抑制効果)、防汚効果および耐指紋性の何れにも優れていた。
【0130】
<実施例B>
[実施例B1]
長尺方向の長さ50m、厚み38μmの長尺状のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材層)が巻かれた巻回体から、PETフィルムを連続的に供給しながら、その一方の面に、グラビア印刷により、厚み3μmの印刷層を連続的に形成した。それと同時に、メラミン系樹脂を含有する塗布液(樹脂:住友ベークライト社製、溶剤:水)を準備し、PETフィルム(基材層)の印刷層を備える面とは反対側の面に、塗布液をダイコート法で連続的に塗工し、次いで硬化させて膜厚6μmの樹脂コート層を積層した。以上により、印刷層と、PETフィルム(基材層)と、樹脂コート層とが順に積層された長尺状の第1積層体を得た。
一方、別途、長尺方向の長さ50m、膜厚25μmの長尺状のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材層)が巻かれた巻回体から、当該PETフィルムを連続的に供給し、その一方の面に、酸化アルミニウムを蒸着して、PETフィルムに金属蒸着層(厚み0.1μm)が積層された積層体(隠蔽層)を作成した。さらに、PETフィルムの他方の面に、ウレタン樹脂からなる接着層を形成し、当該接着層を介して第1積層体の印刷層に連続的にラミネートし、長尺状の第2積層体を得た。
次いで、長尺状の巻回体から剥離紙を供給し、当該剥離紙に粘着剤を塗布し、粘着層付き剥離紙を準備した。そして、該粘着層を介して第2積層体の隠蔽層表面に剥離紙をラミネートし、樹脂コート層と、透明フィルム(基材層)と、印刷層と、隠蔽層と、剥離層とが順に積層された、長尺方向の長さ50mの長尺状の化粧シートを得た。
最後に、化粧シートを、スリットを通過させてシート幅を均一に補正するとともに、外径71mmの巻芯に巻回し、化粧シート巻回体を製造した。
【0131】
[実施例B2~B4]
表-2に記載の層構成とする以外は実施例B1と同様にして化粧シート巻回体を製造した。
【0132】
[比較例B1~B2]
表-2に記載の層構成とし、各フィルムの長尺方向の長さを2.4mとした以外は実施例B1と同様にして化粧シート巻回体を製造した。
【0133】
【0134】
表-2に記載のように、実施例Bの巻回体は、長尺方向の長さが4m以上の化粧シートが巻回されており、広範囲を一度に施行できることから施行作業性に優れていた。さらに、長尺方向の長さが短い化粧シートが巻かれていた比較例Bの巻回体と比較して、実施例Bの巻回体は、施工面積に対する巻回体の数を減らすことができ運搬や搬入等も容易であった。
【0135】
<実施例C>
[実施例C1]
長尺方向の長さ50m、厚み38μmの長尺状のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材層)が巻かれた巻回体から、PETフィルムを連続的に供給しながら、その一方の面に、グラビア印刷により、厚み3μmの印刷層を連続的に形成した。それと同時に、メラミン系樹脂を含有する塗布液(樹脂:住友ベークライト社製、溶剤:水)を準備し、PETフィルム(基材層)の印刷層を備える面とは反対側の面に、塗布液をダイコート法で連続的に塗工し、次いで硬化させて膜厚6μmの樹脂コート層を積層した。以上により、印刷層と、PETフィルム(基材層)と、樹脂コート層とが順に積層された長尺状の第1積層体を得た。
一方、別途、長尺方向の長さ50m、膜厚25μmの長尺状のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材層)が巻かれた巻回体から、当該PETフィルムを連続的に供給し、その一方の面に、酸化アルミニウムを蒸着して、PETフィルムに金属蒸着層(厚み0.1μm)が積層された積層体(隠蔽層)を作成した。さらに、PETフィルムの他方の面に、ウレタン樹脂からなる接着層を形成し、当該接着層を介して第1積層体の印刷層に連続的にラミネートし、長尺状の第2積層体を得た。
次いで、長尺状の巻回体から剥離紙を供給し、当該剥離紙に粘着剤を塗布し、粘着層付き剥離紙を準備した。そして、該粘着層を介して第2積層体の隠蔽層表面に剥離紙をラミネートし、樹脂コート層と、透明フィルム(基材層)と、印刷層と、隠蔽層と、剥離層とが順に積層された、長尺方向の長さ50mの長尺状の化粧シートを得た。
最後に、化粧シートを、スリットを通過させてシート幅を均一に補正するとともに、外径71mmの巻芯に巻回し、化粧シート巻回体を製造した。
【0136】
[実施例C2~C5]
表-3に記載の層構成とする以外は実施例C1と同様にして化粧シート巻回体を製造した。
【0137】
[比較例C1~C2]
表-3に記載の層構成とし、各フィルムの長尺方向の長さを2.4mとした以外は実施例C1と同様にして化粧シート巻回体を製造した。
【0138】
【0139】
表-3に記載のように、実施例Cの化粧シートは、樹脂コート層の層厚が12μm以下に薄膜化されていることから、長尺方向の長さ50mの化粧シートを巻回して巻回体を製造することができた。さらに、化粧シートは曲面部分への施行が容易であり施行性に優れていた。巻回体は長尺方向の長さ50mの化粧シートが巻かれており、広範囲を一度に施行できることから施行作業性に優れ、さらに長尺方向の長さが短い化粧シートが巻かれていた比較例Cの巻回体と比較して、施工面積に対する巻回体の数が少なくなり運搬や搬入等も容易であった。
【0140】
この出願は、2020年3月4日に出願された日本出願特願2020-036669号、2020年3月30日に出願された日本出願特願2020-060642、および、2020年3月30日に出願された日本出願特願2020-060873を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0141】
10 化粧シート
12 隠蔽層
12a 樹脂フィルム
12b 金属蒸着層
14 印刷層
16 透明フィルム
18 艶消しフィラー
20、22 樹脂コート層
20a 凸部
30 化粧シート巻回体