(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】光検出装置、及び光センサの駆動方法
(51)【国際特許分類】
H04N 25/76 20230101AFI20241216BHJP
G01S 7/4863 20200101ALI20241216BHJP
H04N 25/621 20230101ALI20241216BHJP
H04N 25/77 20230101ALI20241216BHJP
【FI】
H04N25/76
G01S7/4863
H04N25/621
H04N25/77
(21)【出願番号】P 2021566909
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2020042671
(87)【国際公開番号】W WO2021131397
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2019236239
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】島田 明洋
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 光人
(72)【発明者】
【氏名】平光 純
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/083790(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/216400(WO,A1)
【文献】特開2016-206135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/76
H04N 25/77
H04N 25/621
G01S 7/4863
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光センサと、
前記光センサを制御する制御部と、を備え、
前記光センサは、
入射光に応じて電荷を発生させる電荷発生領域と、
電荷蓄積領域と、
オーバーフロー領域と、
前記電荷発生領域と前記電荷蓄積領域との間の領域上に配置された転送ゲート電極と、
前記電荷蓄積領域とオーバーフロー領域との間の領域上に配置されたオーバーフローゲート電極と、を有し、
前記制御部は、
前記転送ゲート電極の直下の領域のポテンシャルが前記電荷発生領域のポテンシャルよりも低くなるように前記転送ゲート電極に電位を与えることにより、前記電荷発生領域で発生した電荷を前記電荷蓄積領域に転送する第1電荷転送処理と、
前記第1電荷転送処理の後に、前記電荷蓄積領域に蓄積された電荷量を読み出す第1読出処理と、を実行し、
前記第1電荷転送処理においては、前記オーバーフローゲート電極の直下の領域のポテンシャルが前記電荷発生領域のポテンシャルよりも低くなるように前記オーバーフローゲート電極に電位を与える、光検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1電荷転送処理を複数回実行した後に、前記第1読出処理を実行する、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記電荷発生領域は、アバランシェ増倍領域を含む、請求項1又は2に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1読出処理の後に、前記オーバーフローゲート電極の直下の領域のポテンシャルが低下するように前記オーバーフローゲート電極に電位を与えることにより、前記電荷蓄積領域に蓄積された電荷を前記オーバーフロー領域に転送する第2電荷転送処理と、
前記第2電荷転送処理の後に、前記電荷蓄積領域及び前記オーバーフロー領域に蓄積された総電荷量を読み出す第2読出処理と、を実行する、請求項1~3のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記光センサは、
不要電荷排出領域と、
前記電荷発生領域と前記不要電荷排出領域との間の領域上に配置された不要電荷転送ゲート電極と、を更に有し、
前記制御部は、前記第1電荷転送処理が実行される期間以外の期間に、前記不要電荷転送ゲート電極の直下の領域のポテンシャルが前記電荷発生領域のポテンシャルよりも低くなるように前記不要電荷転送ゲート電極に電位を与えることにより、前記電荷発生領域で発生した電荷を前記不要電荷排出領域に転送する不要電荷転送処理を実行する、請求項1~4のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項6】
検出光を出射する光源を更に備え、
前記制御部は、対象物での前記検出光の反射光が前記電荷発生領域に入射する期間に、前記第1電荷転送処理を実行する、請求項1~5のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記電荷発生領域上に配置されたフォトゲート電極を更に備え、
前記制御部は、前記第1電荷転送処理において、前記転送ゲート電極の直下の領域のポテンシャルが前記電荷発生領域のポテンシャルよりも低く、且つ前記オーバーフローゲート電極の直下の領域のポテンシャルが前記電荷発生領域のポテンシャルよりも低くなるように、前記フォトゲート電極及び前記オーバーフローゲート電極に電位を与える、請求項1~6のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項8】
前記オーバーフロー領域は、前記電荷蓄積領域の電荷蓄積容量よりも大きな電荷蓄積容量を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項9】
光センサの駆動方法であって、
前記光センサは、
入射光に応じて電荷を発生させる電荷発生領域と、
電荷蓄積領域と、
オーバーフロー領域と、
前記電荷発生領域と前記電荷蓄積領域との間の領域上に配置された転送ゲート電極と、
前記電荷蓄積領域とオーバーフロー領域との間の領域上に配置されたオーバーフローゲート電極と、を備え、
前記光センサの駆動方法は、
前記転送ゲート電極の直下の領域のポテンシャルが前記電荷発生領域のポテンシャルよりも低くなるように前記転送ゲート電極に電位を与えることにより、前記電荷発生領域で発生した電荷を前記電荷蓄積領域に転送する電荷転送ステップと、
前記電荷転送ステップの後に、前記電荷蓄積領域に蓄積された電荷量を読み出す読出ステップと、を含み、
前記電荷転送ステップにおいては、前記オーバーフローゲート電極の直下の領域のポテンシャルが前記電荷発生領域のポテンシャルよりも低くなるように前記オーバーフローゲート電極に電位を与える、光センサの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、光センサを備える光検出装置、及び光センサの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入射光に応じて電荷を発生させるフォトダイオードと、フォトダイオードからの電荷を蓄積するフローティング領域と、フローティング領域から溢れた電荷を蓄積する蓄積容量素子と、を備える光センサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の光センサでは、フローティング領域から溢れた電荷を蓄積容量素子に蓄積することができるが、蓄電容量素子へ溢れ出る程度にまでフローティング領域に電荷が蓄積された場合には、電荷の一部がフォトダイオードに残存してしまう。この場合、フォトダイオードに残存した電荷に起因して光の検出精度が低下するおそれがある。特に、或る期間の全体にわたって光を検出するのではなく、所定のタイミングで到来した光のみを検出するゲーティング機能を光センサに持たせた場合において上記事態が生じると、一の期間においてフォトダイオードに残存した電荷が他の期間において発生した電荷として読み出されることで、所定のタイミングで発生した電荷量を精度良く検出することができないおそれがある。
【0005】
本開示の一側面は、検出精度を向上することができる光検出装置及び光センサの駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る光検出装置は、光センサと、光センサを制御する制御部と、を備え、光センサは、入射光に応じて電荷を発生させる電荷発生領域と、電荷蓄積領域と、オーバーフロー領域と、電荷発生領域と電荷蓄積領域との間の領域上に配置された転送ゲート電極と、電荷蓄積領域とオーバーフロー領域との間の領域上に配置されたオーバーフローゲート電極と、を有し、制御部は、転送ゲート電極の直下の領域のポテンシャルが電荷発生領域のポテンシャルよりも低くなるように転送ゲート電極に電位を与えることにより、電荷発生領域で発生した電荷を電荷蓄積領域に転送する第1電荷転送処理と、第1電荷転送処理の後に、電荷蓄積領域に蓄積された電荷量を読み出す第1読出処理と、を実行し、第1電荷転送処理においては、オーバーフローゲート電極の直下の領域のポテンシャルが電荷発生領域のポテンシャルよりも低くなるようにオーバーフローゲート電極に電位を与える。
【0007】
この光検出装置では、光センサが、オーバーフロー領域と、電荷蓄積領域とオーバーフロー領域との間の領域上に配置されたオーバーフローゲート電極と、を有している。これにより、電荷蓄積領域から溢れた電荷をオーバーフロー領域に蓄積することができ、蓄積容量の飽和を抑制することができる。更に、電荷発生領域で発生した電荷を電荷蓄積領域に転送する第1電荷転送処理の実行中に、オーバーフローゲート電極の直下の領域のポテンシャルが、電荷発生領域のポテンシャルよりも低くされる。これにより、オーバーフロー領域へ溢れ出る程度にまで電荷蓄積領域に電荷が蓄積された場合でも、電荷が電荷発生領域に残存するのを抑制することができる。よって、この光検出装置によれば、検出精度を向上することができる。
【0008】
制御部は、第1電荷転送処理を複数回実行した後に、第1読出処理を実行してもよい。この場合、S/N比を向上することができる。
【0009】
電荷発生領域は、アバランシェ増倍領域を含んでいてもよい。この場合、電荷発生領域においてアバランシェ増倍を引き起こすことができ、光センサの検出感度を高めることができる。一方、電荷発生領域にアバランシェ増倍領域が含まれる場合、発生する電荷量が極めて多くなる。この光検出装置では、そのような場合でも、蓄積容量の飽和を十分に抑制することができると共に、電荷発生領域への電荷の残存を十分に抑制することができる。
【0010】
制御部は、第1読出処理の後に、オーバーフローゲート電極の直下の領域のポテンシャルが低下するようにオーバーフローゲート電極に電位を与えることにより、電荷蓄積領域に蓄積された電荷をオーバーフロー領域に転送する第2電荷転送処理と、第2電荷転送処理の後に、電荷蓄積領域及びオーバーフロー領域に蓄積された総電荷量を読み出す第2読出処理と、を実行してもよい。この場合、第1読出処理において電荷蓄積領域に蓄積された電荷量が読み出されるだけでなく、第2読出処理において電荷蓄積領域及びオーバーフロー領域に蓄積された総電荷量が読み出されるため、電荷量の検出精度を向上することができる。
【0011】
光センサは、不要電荷排出領域と、電荷発生領域と不要電荷排出領域との間の領域上に配置された不要電荷転送ゲート電極と、を更に有し、制御部は、第1電荷転送処理が実行される期間以外の期間に、不要電荷転送ゲート電極の直下の領域のポテンシャルが電荷発生領域のポテンシャルよりも低くなるように不要電荷転送ゲート電極に電位を与えることにより、電荷発生領域で発生した電荷を不要電荷排出領域に転送する不要電荷転送処理を実行してもよい。この場合、第1電荷転送処理が実行される期間以外の期間に電荷発生領域で発生した電荷を不要電荷排出領域に転送することができ、電荷発生領域への電荷の残存を一層抑制することができる。
【0012】
本開示の一側面に係る光検出装置は、検出光を出射する光源を更に備え、制御部は、対象物での検出光の反射光が電荷発生領域に入射する期間に、第1電荷転送処理を実行してもよい。この場合、対象物での検出光の反射光が電荷発生領域に入射する期間に電荷発生領域で発生した電荷量を精度良く検出することができる。
【0013】
本開示の一側面に係る光検出装置は、電荷発生領域上に配置されたフォトゲート電極を更に備え、制御部は、第1電荷転送処理において、転送ゲート電極の直下の領域のポテンシャルが電荷発生領域のポテンシャルよりも低く、且つオーバーフローゲート電極の直下の領域のポテンシャルが電荷発生領域のポテンシャルよりも低くなるように、フォトゲート電極及びオーバーフローゲート電極に電位を与えてもよい。この場合、ポテンシャルの高さを精度良く調整することができる。
【0014】
オーバーフロー領域は、電荷蓄積領域の電荷蓄積容量よりも大きな電荷蓄積容量を有していてもよい。この場合、蓄積容量の飽和を効果的に抑制することができる。
【0015】
本開示の一側面に係る光センサの駆動方法は、光センサの駆動方法であって、光センサは、入射光に応じて電荷を発生させる電荷発生領域と、電荷蓄積領域と、オーバーフロー領域と、電荷発生領域と電荷蓄積領域との間の領域上に配置された転送ゲート電極と、電荷蓄積領域とオーバーフロー領域との間の領域上に配置されたオーバーフローゲート電極と、を備え、光センサの駆動方法は、転送ゲート電極の直下の領域のポテンシャルが電荷発生領域のポテンシャルよりも低くなるように転送ゲート電極に電位を与えることにより、電荷発生領域で発生した電荷を電荷蓄積領域に転送する電荷転送ステップと、電荷転送ステップの後に、電荷蓄積領域に蓄積された電荷量を読み出す読出ステップと、を含み、電荷転送ステップにおいては、オーバーフローゲート電極の直下の領域のポテンシャルが電荷発生領域のポテンシャルよりも低くなるようにオーバーフローゲート電極に電位を与える。
【0016】
この光センサの駆動方法では、光センサが、オーバーフロー領域と、電荷蓄積領域とオーバーフロー領域との間の領域上に配置されたオーバーフローゲート電極と、を有している。これにより、電荷蓄積領域から溢れた電荷をオーバーフロー領域に蓄積することができ、蓄積容量の飽和を抑制することができる。更に、電荷発生領域で発生した電荷を電荷蓄積領域に転送する電荷転送ステップの実行中に、オーバーフローゲート電極の直下の領域のポテンシャルが、電荷発生領域のポテンシャルよりも低くされる。これにより、オーバーフロー領域へ溢れ出る程度にまで電荷蓄積領域に電荷が蓄積された場合でも、電荷が電荷発生領域に残存するのを抑制することができる。よって、この光センサの駆動方法によれば、検出精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一側面によれば、検出精度を向上することができる光検出装置及び光センサの駆動方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る測距装置の構成図である。
【
図3】
図2に示されるIII-III線に沿っての断面図である。
【
図5】測距センサの動作例を示すタイミングチャートである。
【
図6】(a)~(d)は、測距センサの動作例を説明するためのポテンシャル分布図である。
【
図7】比較例に係るイメージセンサの動作例を示すタイミングチャートである。
【
図8】(a)~(d)は、比較例に係るイメージセンサの動作例を説明するためのポテンシャル分布図である。
【
図9】第1変形例に係る測距センサの一部分の平面図である。
【
図10】第1変形例に係る測距センサの動作例を示すタイミングチャートである。
【
図11】第2変形例に係る測距センサの一部分の平面図である。
【
図12】第2変形例に係る測距センサの動作例を示すタイミングチャートである。
【
図13】第3変形例に係る測距センサの回路図である。
【
図14】第2実施形態に係る光検出装置の構成図である。
【
図15】第2実施形態に係るイメージセンサの一部分の平面図である。
【
図16】第2実施形態に係るイメージセンサの動作例を示すタイミングチャートである。
【
図17】第2実施形態に係る光検出装置のゲーティング機能を説明するための図である。
【
図18】第2実施形態の変形例に係るイメージセンサの動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
[測距装置の構成]
【0020】
図1に示されるように、測距装置(光検出装置)1は、光源2と、測距センサ(測距イメージセンサ、光センサ)10Aと、信号処理部3と、制御部4と、表示部5と、を備えている。測距装置1は、間接TOF方式を利用して対象物OJの距離画像(対象物OJまでの距離dに関する情報を含む画像)を取得する装置である。
【0021】
光源2は、パルス光(検出光)Lを出射する。光源2は、例えば赤外LED等によって構成されている。パルス光Lは、例えば近赤外光であり、パルス光Lの周波数は、例えば10kHz以上である。測距センサ10Aは、光源2から出射されて対象物OJで反射されたパルス光Lを検出する。測距センサ10Aは、画素部11及びCMOS読出回路部12が半導体基板(例えばシリコン基板)にモノリシックに形成されることで、構成されている。測距センサ10Aは、信号処理部3上に実装されている。
【0022】
信号処理部3は、測距センサ10Aの画素部11及びCMOS読出回路部12を制御する。信号処理部3は、測距センサ10Aから出力された信号に所定の処理を施して検出信号を生成する。制御部4は、光源2及び信号処理部3を制御する。制御部4は、信号処理部3から出力された検出信号に基づいて対象物OJの距離画像を生成する。表示部5は、制御部4によって生成された対象物OJの距離画像を表示する。
[測距センサの構成]
【0023】
図2及び
図3に示されるように、測距センサ10Aは、画素部11において、半導体層20と、電極層40と、を備えている。半導体層20は、第1表面20a及び第2表面20bを有している。第1表面20aは、半導体層20の厚さ方向における一方の側の表面である。第2表面20bは、半導体層20の厚さ方向における他方の側の表面である。電極層40は、半導体層20の第1表面20aに設けられている。半導体層20及び電極層40は、第1表面20aに沿って配置された複数の画素11aを構成している。測距センサ10Aでは、複数の画素11aは、第1表面20aに沿って2次元に配列されている。以下、半導体層20の厚さ方向をZ方向といい、Z方向に垂直な一方向をX方向といい、Z方向及びX方向の両方向に垂直な方向をY方向という。また、Z方向における一方の側を第1側といい、Z方向における他方の側(第1側とは反対側)を第2側という。なお、
図2では、後述する電荷蓄積領域P1~P4、オーバーフロー領域Q1~Q4、不要電荷排出領域R、フォトゲート電極PG、転送ゲート電極TX1~TX4、オーバーフローゲート電極OV1~OV4及び不要電荷転送ゲート電極RGの配置が模式的に示されており、その他の要素は適宜省略されている。
【0024】
各画素11aは、半導体層20において、半導体領域21と、アバランシェ増倍領域22と、電荷振分領域23と、第1電荷蓄積領域P1と、第2電荷蓄積領域P2と、第3電荷蓄積領域P3と、第4電荷蓄積領域P4と、第1オーバーフロー領域Q1と、第2オーバーフロー領域Q2と、第3オーバーフロー領域Q3と、第4オーバーフロー領域Q4と、2つ不要電荷排出領域Rと、ウェル領域31と、バリア領域32と、を有している。各領域21~23,P1~P4,Q1~Q4,R,31及び32は、半導体基板(例えばシリコン基板)に対して各種処理(例えば、エッチング、成膜、不純物注入等)を実施することにより形成されている。
【0025】
半導体領域21は、p型(第1導電型)の領域であって、半導体層20において第2表面20bに沿って設けられている。半導体領域21は、光吸収領域(光電変換領域)として機能する。一例として、半導体領域21は、1×1015cm-3以下のキャリア濃度を有するp型の領域であり、その厚さは、10μm程度である。なお、アバランシェ増倍領域22等も光吸収領域(光電変換領域)として機能する。
【0026】
アバランシェ増倍領域22は、第1増倍領域22a及び第2増倍領域22bを含んでいる。第1増倍領域22aは、p型の領域であって、半導体層20において半導体領域21の第1側に形成されている。一例として、第1増倍領域22aは、1×1016cm-3以上のキャリア濃度を有するp型の領域であり、その厚さは、1μm程度である。第2増倍領域22bは、n型(第2導電型)の領域であって、半導体層20において第1増倍領域22aの第1側に形成されている。一例として、第2増倍領域22bは、1×1016cm-3以上のキャリア濃度を有するn型の領域であり、その厚さは、1μm程度である。第1増倍領域22a及び第2増倍領域22bは、pn接合を形成している。アバランシェ増倍領域22は、アバランシェ増倍を引き起こす領域である。所定値の逆方向バイアスが印加された場合にアバランシェ増倍領域22に生じる電界強度は、例えば3×105~4×105V/cmである。
【0027】
電荷振分領域23は、n型の領域であって、半導体層20において第2増倍領域22bの第1側に形成されている。一例として、電荷振分領域23は、5×1015~1×1016cm-3のキャリア濃度を有するn型の領域であり、その厚さは、1μm程度である。
【0028】
各電荷蓄積領域P1~P4は、n型の領域であって、半導体層20において第2増倍領域22bの第1側に形成されている。各電荷蓄積領域P1~P4は、電荷振分領域23と接続されている。一例として、各第1電荷蓄積領域P1~P4は、1×1018cm-3以上のキャリア濃度を有するn型の領域であり、その厚さは、0.2μm程度である。
【0029】
各オーバーフロー領域Q1~Q4は、n型の領域であって、半導体層20において第2増倍領域22bの第1側に形成されている。第1オーバーフロー領域Q1の電荷蓄積容量は、第1電荷蓄積領域P1の電荷蓄積容量よりも大きい。第2オーバーフロー領域Q2の電荷蓄積容量は、第2電荷蓄積領域P2の電荷蓄積容量よりも大きい。第3オーバーフロー領域Q3の電荷蓄積容量は、第3電荷蓄積領域P3の電荷蓄積容量よりも大きい。第4オーバーフロー領域Q4の電荷蓄積容量は、第4電荷蓄積領域P4の電荷蓄積容量よりも大きい。例えば、電荷蓄積領域P1~P4の電荷蓄積容量は互いに等しく、オーバーフロー領域Q1~Q4の電荷蓄積容量は互いに等しい。電荷蓄積領域P1~P4ではPN接合容量が用いられるのに対し、オーバーフロー領域Q1~Q4では追加の容量が設けられることで、電荷蓄積領域P1~P4と比べて蓄積容量が大きくされている。追加される容量としては、MIM(Metal Insulator Metal)容量、MOS容量、トレンチ容量、PIP容量等が挙げられる。
【0030】
各不要電荷排出領域Rは、n型の領域であって、半導体層20において第2増倍領域22bの第1側に形成されている。各不要電荷排出領域Rは、電荷振分領域23と接続されている。不要電荷排出領域Rは、例えば電荷蓄積領域P1~P4と同様の構成を有している。
【0031】
ウェル領域31は、p型の領域であって、半導体層20において第2増倍領域22bの第1側に形成されている。ウェル領域31は、Z方向から見た場合に電荷振分領域23を包囲している。ウェル領域31は、複数の読出回路(例えば、ソースフォロワアンプ、リセットトランジスタ等)を構成している。複数の読出回路は、それぞれ、電荷蓄積領域P1~P4及びオーバーフロー領域Q1~Q4と電気的に接続されている。一例として、ウェル領域31は、1×1016~5×1017cm-3のキャリア濃度を有するp型の領域であり、その厚さは、1μm程度である。
【0032】
バリア領域32は、n型の領域であって、半導体層20において第2増倍領域22bとウェル領域31との間に形成されている。バリア領域32は、Z方向から見た場合にウェル領域31を含んでいる。つまり、ウェル領域31は、Z方向から見た場合にバリア領域32内に位置している。バリア領域32は、電荷振分領域23を包囲している。バリア領域32のn型不純物の濃度は、第2増倍領域22bのn型不純物の濃度よりも高い。一例として、バリア領域32は、第2増倍領域22bのキャリア濃度から第2増倍領域22bのキャリア濃度の倍程度までのキャリア濃度を有するn型の領域であり、その厚さは、1μm程度である。バリア領域32が第2増倍領域22bとウェル領域31との間に形成されていることにより、アバランシェ増倍領域22に高電圧が印加されることで、アバランシェ増倍領域22に形成された空乏層がウェル領域31に向かって広がったとしても、空乏層がウェル領域31に至ることが防止される。つまり、空乏層がウェル領域31に至ることに起因してアバランシェ増倍領域22とウェル領域31との間において電流が流れるのを防止することができる。
【0033】
ここで、各領域の位置関係について説明する。第1電荷蓄積領域P1は、電荷振分領域23を挟んで、X方向において第2電荷蓄積領域P2と向かい合っている。第1オーバーフロー領域Q1は、第1電荷蓄積領域P1に対して電荷振分領域23とは反対側に配置されている。第2オーバーフロー領域Q2は、第2電荷蓄積領域P2に対して電荷振分領域23とは反対側に配置されている。
【0034】
第3電荷蓄積領域P3は、電荷振分領域23を挟んで、X方向において第4電荷蓄積領域P4と向かい合っている。第3オーバーフロー領域Q3は、第3電荷蓄積領域P3に対して電荷振分領域23とは反対側に配置されている。第4オーバーフロー領域Q4は、第4電荷蓄積領域P4に対して電荷振分領域23とは反対側に配置されている。第1電荷蓄積領域P1と第4電荷蓄積領域P4は、Y方向に並んでいる。第2電荷蓄積領域P2と第3電荷蓄積領域P3は、Y方向に並んでいる。第1オーバーフロー領域Q1と第4オーバーフロー領域Q4は、Y方向に並んでいる。第2オーバーフロー領域Q2と第3オーバーフロー領域Q3は、Y方向に並んでいる。2つの不要電荷排出領域Rは、電荷振分領域23を挟んで、Y方向において互いに向かい合っている。
【0035】
各画素11aは、電極層40において、フォトゲート電極PGと、第1転送ゲート電極TX1と、第2転送ゲート電極TX2と、第3転送ゲート電極TX3と、第4転送ゲート電極TX4と、第1オーバーフローゲート電極OV1と、第2オーバーフローゲート電極OV2と、第3オーバーフローゲート電極OV3と、第4オーバーフローゲート電極OV4と、2つの不要電荷転送ゲート電極RGと、を有している。各ゲート電極PG,TX1~TX4,OV1~OV4,RGは、絶縁膜41を介して半導体層20の第1表面20a上に形成されている。絶縁膜41は、例えばシリコン窒化膜、シリコン酸化膜等である。
【0036】
フォトゲート電極PGは、電荷振分領域23上に配置されている。フォトゲート電極PGは、導電性及び光透過性を有する材料(例えばポリシリコン)によって形成されている。一例として、フォトゲート電極PGは、Z方向から見た場合に、X方向において向かい合う2辺、及びY方向において向かい合う2辺を有する矩形状を呈している。半導体領域21、アバランシェ増倍領域22及び電荷振分領域23のうち、フォトゲート電極PGの直下の領域は、入射光に応じて電荷を発生させる電荷発生領域24として機能する。換言すれば、フォトゲート電極PGは、電荷発生領域24上に配置されている。電荷発生領域24においては、半導体領域21において発生した電荷が、アバランシェ増倍領域22において増倍され、電荷振分領域23において振り分けられる。実施形態とは異なり対向電極50側からパルス光Lが半導体層20に入射する場合(裏面入射の場合)、フォトゲート電極PGは光透過性を有していなくてもよい。フォトゲート電極PGの直下の領域とは、Z方向から見た場合にフォトゲート電極PGと重なる領域である。この点は他のゲート電極TX1~TX4,OV1~OV4,RGについても同様である。
【0037】
第1転送ゲート電極TX1は、電荷振分領域23における電荷発生領域24と第1電荷蓄積領域P1との間の領域上に配置されている。第2転送ゲート電極TX2は、電荷振分領域23における電荷発生領域24と第2電荷蓄積領域P2との間の領域上に配置されている。第3転送ゲート電極TX3は、電荷振分領域23における電荷発生領域24と第3電荷蓄積領域P3との間の領域上に配置されている。第4転送ゲート電極TX4は、電荷振分領域23における電荷発生領域24と第4電荷蓄積領域P4との間の領域上に配置されている。
【0038】
各転送ゲート電極TX1~TX4は、導電性を有する材料(例えばポリシリコン)によって形成されている。一例として、各転送ゲート電極TX1~TX4は、Z方向から見た場合に、X方向において向かい合う2辺、及びY方向において向かい合う2辺を有する矩形状を呈している。
【0039】
第1オーバーフローゲート電極OV1は、ウェル領域31における第1電荷蓄積領域P1と第1オーバーフロー領域Q1との間の領域上に配置されている。第2オーバーフローゲート電極OV2は、ウェル領域31における第2電荷蓄積領域P2と第2オーバーフロー領域Q2との間の領域上に配置されている。第3オーバーフローゲート電極OV3は、ウェル領域31における第3電荷蓄積領域P3と第3オーバーフロー領域Q3との間の領域上に配置されている。第4オーバーフローゲート電極OV4は、ウェル領域31における第4電荷蓄積領域P4と第4オーバーフロー領域Q4との間の領域上に配置されている。
【0040】
各オーバーフローゲート電極OV1~OV4は、導電性を有する材料(例えばポリシリコン)によって形成されている。一例として、各オーバーフローゲート電極OV1~OV4は、Z方向から見た場合に、X方向において向かい合う2辺、及びY方向において向かい合う2辺を有する矩形状を呈している。
【0041】
不要電荷転送ゲート電極RGの一方は、電荷振分領域23における電荷発生領域24と一対の不要電荷排出領域Rの一方との間の領域上に配置されている。不要電荷転送ゲート電極RGの他方は、電荷振分領域23における電荷発生領域24と一対の不要電荷排出領域Rの他方との間の領域上に配置されている。各不要電荷転送ゲート電極RGは、導電性を有する材料(例えばポリシリコン)によって形成されている。一例として、各不要電荷転送ゲート電極RGは、Z方向から見た場合に、X方向において向かい合う2辺、及びY方向において向かい合う2辺を有する矩形状を呈している。
【0042】
測距センサ10Aは、画素部11において、対向電極50と、配線層60と、を更に備えている。対向電極50は、半導体層20の第2表面20b上に設けられている。対向電極50は、Z方向から見た場合に複数の画素11aを含んでいる。対向電極50は、Z方向において電極層40と向かい合っている。対向電極50は、例えば金属材料によって形成されている。配線層60は、電極層40を覆うように半導体層20の第1表面20aに設けられている。配線層60は、各画素11a及びCMOS読出回路部12(
図1参照)と電気的に接続されている。配線層60のうち各画素11aのフォトゲート電極PGと向かい合う部分には、光入射開口60aが形成されている。
【0043】
図4には、各画素11aの回路構成の例が示されている。
図4に示されるように、各画素11aは、オーバーフロー領域Q1~Q4にそれぞれ接続された複数の(この例では4つの)リセットトランジスタRSTと、画素11aの選択に用いられる複数の(この例では4つの)選択トランジスタSELと、を有している。
[測距センサの駆動方法]
【0044】
図5及び
図6を参照しつつ、測距センサ10Aの動作例を説明する。以下の動作は、制御部4が測距センサ10Aの駆動を制御することにより実現される。測距センサ10Aの各画素11aにおいては、フォトゲート電極PGの電位を基準として負の電圧(例えば-50V)が対向電極50に印加されて(つまり、アバランシェ増倍領域22に形成されたpn接合に逆方向バイアスが印加されて)、アバランシェ増倍領域22に3×10
5~4×10
5V/cmの電界強度が発生する。この状態で、光入射開口60a及びフォトゲート電極PGを介して半導体層20にパルス光Lが入射すると、パルス光Lの吸収によって発生した電子が、アバランシェ増倍領域22で増倍されて電荷振分領域23に高速で移動する。
【0045】
対象物OJ(
図1参照)の距離画像の生成に際しては、まず、各画素11aの各リセットトランジスタRSTにリセット電圧を印加するリセット処理(リセットステップ)が実行される。リセット電圧は、フォトゲート電極PGの電位を基準として正の電圧である。これにより、電荷蓄積領域P1~P4及びオーバーフロー領域Q1~Q4に蓄積された電荷が外部に排出され、電荷蓄積領域P1~P4及びオーバーフロー領域Q1~Q4に電荷が蓄積されていない状態となる(時刻T1、
図6(a))。電荷の外部への排出は、例えば、ウェル領域31等によって構成された読出回路、及び配線層60を介して行われる。以下では、選択された1つの画素11aに着目して動作を説明する。
【0046】
リセット処理の後に、蓄積期間T2において、電荷蓄積領域P1~P4及びオーバーフロー領域Q1~Q4に電荷が蓄積される(
図6(b))。蓄積期間T2においては、互いに異なる位相を有する電荷転送信号が転送ゲート電極TX1~TX4に与えられる。これにより、電荷発生領域24で発生した電荷を電荷蓄積領域P1~P4の間で振り分ける電荷振分処理(電荷振分ステップ)が実行される。
【0047】
一例として、第1転送ゲート電極TX1に印加される電荷転送信号は、フォトゲート電極PGの電位を基準として正の電圧及び負の電圧が交互に繰り返される電圧信号であって、光源2(
図1参照)から出射されるパルス光Lの強度信号と周期、パルス幅及び位相が同一の電圧信号である。第2転送ゲート電極TX2、第3転送ゲート電極TX3、第4転送ゲート電極TX4に印加される電荷転送信号は、位相がそれぞれ90°,180°,270°ずれている点を除き、第1転送ゲート電極TX1に印加されるパルス電圧信号と同一の電圧信号である。
【0048】
第1転送ゲート電極TX1に正の電圧が与えられている第1期間においては、第1転送ゲート電極TX1の直下の領域のポテンシャルφ
TX1が、フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域24)のポテンシャルφ
PGよりも低くされる。換言すれば、第1期間においては、ポテンシャルφ
TX1がポテンシャルφ
PGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び第1転送ゲート電極TX1に電位が与えられる。これにより、電荷発生領域24で発生した電荷が第1電荷蓄積領域P1に転送される(第1電荷転送処理、第1電荷転送ステップ)。
図6(b)では、第1転送ゲート電極TX1に正の電圧が与えられているときのポテンシャルφ
TX1が破線で示されており、第1転送ゲート電極TX1に負の電圧が与えられているときのポテンシャルφ
TX1が実線で示されている。また、第1電荷蓄積領域P1及び第1オーバーフロー領域Q1に蓄積された電荷がハッチングで示されている。
【0049】
なお、ゲート電極の直下の領域のポテンシャルの大きさの調整にあたっては、ゲート電極に与えられる電位の大きさを調整してもよいし、これに代えて又は加えて、ゲート電極の直下の領域のキャリア濃度を調整してもよい。フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域24)のポテンシャルφPGがキャリア濃度の調整により予め所定の高さとされている場合、フォトゲート電極PGは設けられなくてもよい。この場合、上述した負の電圧は必ずしも加えられなくてもよい。
【0050】
第1期間においては、第2~第4転送ゲート電極TX2~TX4には負の電圧が与えられており、第2転送ゲート電極TX2の直下の領域のポテンシャルφTX2、第3転送ゲート電極TX3の直下の領域のポテンシャルφTX3、及び第4転送ゲート電極TX4の直下の領域のポテンシャルφTX4が、ポテンシャルφPGよりも高くされる。これにより、電荷発生領域24と第2~第4電荷蓄積領域P2~P4との間にはポテンシャル障壁が生じ、電荷発生領域24で発生した電荷が第2~第4電荷蓄積領域P2~P4に転送されない。換言すれば、第1期間においては、各ポテンシャルφTX2,φTX3及びφTX4がポテンシャルφPGよりも高くなるように、フォトゲート電極PG及び第2~第4転送ゲート電極TX2~TX4に電位が与えられる。
【0051】
更に、第1期間においては、第1オーバーフローゲート電極OV1の直下の領域のポテンシャルφ
OV1がフォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域24)のポテンシャルφ
PGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び第1オーバーフローゲート電極OV1に電位が与えられる。換言すれば、第1期間において第1オーバーフローゲート電極OV1に与えられる電位は、ポテンシャルφ
OV1がポテンシャルφ
PGよりも低くなるように、フォトゲート電極PGの電位を基準として、設定されている。これにより、
図6(b)に示されるように、第1電荷蓄積領域P1が電荷で飽和した場合でも、第1電荷蓄積領域P1から溢れた電荷が、第1オーバーフロー領域Q1に流れ込み、第1オーバーフロー領域Q1に蓄積される。
【0052】
第2転送ゲート電極TX2に正の電圧が与えられている第2期間においては、第2転送ゲート電極TX2の直下の領域のポテンシャルφTX2が、フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域24)のポテンシャルφPGよりも低くされる。換言すれば、第2期間においては、ポテンシャルφTX2がポテンシャルφPGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び第2転送ゲート電極TX2に電位が与えられる。これにより、電荷発生領域24で発生した電荷が第2電荷蓄積領域P2に転送される(第1電荷転送処理、第1電荷転送ステップ)。第2期間においては、各ポテンシャルφTX1,φTX3及びφTX4がポテンシャルφPGよりも高くなるように、フォトゲート電極PG並びに第1、第3及び第4転送ゲート電極TX1,TX3及びTX4に電位が与えられる。
【0053】
更に、第2期間においては、第2オーバーフローゲート電極OV2の直下の領域のポテンシャルφOV2がフォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域24)のポテンシャルφPGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び第2オーバーフローゲート電極OV2に電位が与えられる。これにより、第2電荷蓄積領域P2が電荷で飽和した場合でも、第2電荷蓄積領域P2から溢れた電荷が第2オーバーフロー領域Q2に流れ込み、第2オーバーフロー領域Q2に蓄積される。
【0054】
第3転送ゲート電極TX3に正の電圧が与えられている第3期間においては、第3転送ゲート電極TX3の直下の領域のポテンシャルφTX3が、フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域24)のポテンシャルφPGよりも低くされる。換言すれば、第3期間においては、ポテンシャルφTX3がポテンシャルφPGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び第3転送ゲート電極TX3に電位が与えられる。これにより、電荷発生領域24で発生した電荷が第3電荷蓄積領域P3に転送される(第1電荷転送処理、第1電荷転送ステップ)。第3期間においては、各ポテンシャルφTX1,φTX2及びφTX4がポテンシャルφPGよりも高くなるように、フォトゲート電極PG並びに第1、第2及び第4転送ゲート電極TX1,TX2及びTX4に電位が与えられる。
【0055】
更に、第3期間においては、第3オーバーフローゲート電極OV3の直下の領域のポテンシャルφOV3がフォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域24)のポテンシャルφPGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び第3オーバーフローゲート電極OV3に電位が与えられる。これにより、第3電荷蓄積領域P3が電荷で飽和した場合でも、第3電荷蓄積領域P3から溢れた電荷が第3オーバーフロー領域Q3に流れ込み、第3オーバーフロー領域Q3に蓄積される。
【0056】
第4転送ゲート電極TX4に正の電圧が与えられている第4期間においては、第4転送ゲート電極TX4の直下の領域のポテンシャルφTX4が、フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域24)のポテンシャルφPGよりも低くされる。換言すれば、第4期間においては、ポテンシャルφTX4がポテンシャルφPGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び第4転送ゲート電極TX4に電位が与えられる。これにより、電荷発生領域24で発生した電荷が第4電荷蓄積領域P4に転送される(第1電荷転送処理、第1電荷転送ステップ)。第4期間においては、各ポテンシャルφTX1~φTX3がポテンシャルφPGよりも高くなるように、フォトゲート電極PG及び第1~第3転送ゲート電極TX1~TX3に電位が与えられる。
【0057】
更に、第4期間においては、第4オーバーフローゲート電極OV4の直下の領域のポテンシャルφOV4がフォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域24)のポテンシャルφPGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び第4オーバーフローゲート電極OV4に電位が与えられる。これにより、第4電荷蓄積領域P4が電荷で飽和した場合でも、第4電荷蓄積領域P4から溢れた電荷が第4オーバーフロー領域Q4に流れ込み、第4オーバーフロー領域Q4に蓄積される。
【0058】
蓄積期間T2における電荷振分処理の後に、各電荷蓄積領域P1~P4に蓄積された電荷量を読み出す第1読出処理(高感度読出処理)(第1読出ステップ)が実行される(時刻T3、
図6(c))。電荷発生領域24で発生した電荷が第1電荷蓄積領域P1に転送される処理、電荷発生領域24で発生した電荷が第2電荷蓄積領域P2に転送される処理、電荷発生領域24で発生した電荷が第3電荷蓄積領域P3に転送される処理、及び、電荷発生領域24で発生した電荷が第4電荷蓄積領域P4に転送される処理の各々が複数回実行された後に、第1読出処理が実行される。
【0059】
第1読出処理の後に、上記第1期間において与えられた電圧よりも大きな電圧を第1オーバーフローゲート電極OV1に与えて第1オーバーフローゲート電極OV1の直下の領域のポテンシャルφ
OV1を低下させることにより、第1電荷蓄積領域P1に蓄積された電荷を第1オーバーフロー領域Q1に転送する電荷転送処理(電荷転送ステップ)(第2電荷転送処理、第2電荷転送ステップ)が実行される(
図6(d))。換言すれば、電荷転送処理においては、ポテンシャルφ
OV1が低下するように第1オーバーフローゲート電極OV1に電位を与えることにより、第1電荷蓄積領域P1に蓄積された電荷が第1オーバーフロー領域Q1に転送される。
【0060】
同様に、電荷転送処理においては、第2オーバーフローゲート電極OV2の直下の領域のポテンシャルφOV2が低下するように第2オーバーフローゲート電極OV2に電位を与えることにより、第2電荷蓄積領域P2に蓄積された電荷が第2オーバーフロー領域Q2に転送される。第3オーバーフローゲート電極OV3の直下の領域のポテンシャルφOV3が低下するように第3オーバーフローゲート電極OV3に電位を与えることにより、第3電荷蓄積領域P3に蓄積された電荷が第3オーバーフロー領域Q3に転送される。第4オーバーフローゲート電極OV4の直下の領域のポテンシャルφOV4が低下するように第4オーバーフローゲート電極OV4に電位を与えることにより、第4電荷蓄積領域P4に蓄積された電荷が第4オーバーフロー領域Q4に転送される。
【0061】
電荷転送処理の後に、第1電荷蓄積領域P1及び第1オーバーフロー領域Q1に蓄積された総電荷量を読み出す第2読出処理(低感度読出処理)(第2読出ステップ)が実行される(時刻T4、
図6(d))。同様に、第2読出処理においては、第2電荷蓄積領域P2及び第2オーバーフロー領域Q2に蓄積された総電荷量が読み出される。第3電荷蓄積領域P3及び第3オーバーフロー領域Q3に蓄積された総電荷量が読み出される。第4電荷蓄積領域P4及び第4オーバーフロー領域Q4に蓄積された総電荷量が読み出される。第2読出処理の後に上述したリセット処理が再び実行され(時刻T1、
図6(a))、上述した一連の処理が繰り返し実行される。
【0062】
また、上記第1~第4期間以外の期間においては、電荷発生領域24で発生した電荷を不要電荷排出領域Rに転送する不要電荷転送処理(不要電荷転送ステップ)が実行される。不要電荷転送処理においては、不要電荷転送ゲート電極RGに正の電圧を与えることにより、不要電荷転送ゲート電極RGの直下の領域のポテンシャルφRGが、フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域24)のポテンシャルφPGよりも低くされる。換言すれば、ポテンシャルφRGがポテンシャルφPGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び不要電荷転送ゲート電極RGに電位が与えられる。これにより、電荷発生領域24で発生した電荷が不要電荷排出領域Rに転送される。不要電荷排出領域Rに転送された電荷は外部に排出される。例えば、不要電荷排出領域Rは、固定電位に接続されており、不要電荷排出領域Rに転送された電荷は、読み出し回路を介することなく外部に排出される。
【0063】
図1に示されるように、パルス光Lが光源2から出射されて、対象物OJで反射されたパルス光Lが測距センサ10Aで検出されると、測距センサ10Aで検出されるパルス光Lの強度信号の位相は、光源2から出射されるパルス光Lの強度信号の位相に対して、対象物OJまでの距離dに応じてずれることになる。したがって、電荷蓄積領域P1~P4及びオーバーフロー領域Q1~Q4に蓄積された電荷量(すなわち、第1読出処理及び第2読出処理において読み出された電荷量)に基づく信号を画素11aごとに取得することで、対象物OJの距離画像を生成することができる。
[第1実施形態の作用及び効果]
【0064】
測距装置1では、測距センサ10Aが、第1電荷蓄積領域P1の電荷蓄積容量よりも大きな電荷蓄積容量を有する第1オーバーフロー領域Q1と、第2電荷蓄積領域P2の電荷蓄積容量よりも大きな電荷蓄積容量を有する第2オーバーフロー領域Q2と、第1電荷蓄積領域P1と第1オーバーフロー領域Q1との間の領域上に配置された第1オーバーフローゲート電極OV1と、第2電荷蓄積領域P2と第2オーバーフロー領域Q2との間の領域上に配置された第2オーバーフローゲート電極OV2と、を有している。これにより、第1電荷蓄積領域P1から溢れた電荷を第1オーバーフロー領域Q1に蓄積することができると共に、第2電荷蓄積領域P2から溢れた電荷を第2オーバーフロー領域Q2に蓄積することができる。その結果、蓄積容量の飽和を抑制することができる。更に、電荷振分処理における第1期間に、第1オーバーフローゲート電極OV1の直下の領域のポテンシャルφOV1が電荷発生領域24のポテンシャルφPGよりも低くされ、電荷振分処理における第2期間に、第2オーバーフローゲート電極OV2の直下の領域のポテンシャルφOV2が電荷発生領域24のポテンシャルφPGよりも低くされる。これにより、第1オーバーフロー領域Q1へ溢れ出る程度にまで第1電荷蓄積領域P1に電荷が蓄積された場合、及び、第2オーバーフロー領域Q2へ溢れ出る程度にまで第2電荷蓄積領域P2に電荷が蓄積された場合でも、電荷が電荷発生領域24に残存するのを抑制することができる。よって、測距装置1によれば、距離測定の精度を向上することができる。また、高感度化及び高ダイナミックレンジ化を図ることができる。
【0065】
この点について、
図7及び
図8に示される比較例を参照しつつ更に説明する。比較例のイメージセンサでは、蓄積期間T2の全体にわたって、転送ゲート電極TXの直下の領域のポテンシャルφ
TXが、フォトゲート電極PGの直下の領域のポテンシャルφ
PGよりも高くされる(
図8(b))。また、蓄積期間T2の全体にわたって、オーバーフローゲート電極OVの直下の領域のポテンシャルφ
OVがフォトゲート電極PGの直下の領域のポテンシャルφ
PGよりも高くされる。蓄積期間T2の後に、転送ゲート電極TXの直下の領域のポテンシャルφ
TXが、フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域)のポテンシャルφ
PGよりも低くされ、電荷発生領域に蓄積された電荷が電荷蓄積領域Pに転送される。その後、電荷蓄積領域Pに蓄積された電荷量が読み出される(時刻T3、
図8(c))。
【0066】
比較例のイメージセンサでは、蓄積期間T2においてオーバーフローゲート電極OVの直下の領域のポテンシャルφ
OVがフォトゲート電極PGの直下の領域のポテンシャルφ
PGよりも高いため、
図8(c)に示されるように、オーバーフロー領域Qへ溢れ出る程度にまで電荷蓄積領域Pに電荷が蓄積された場合に、電荷の一部がフォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域)に残存してしまう。この場合、電荷蓄積領域に残存した電荷に起因して距離測定の精度が低下するおそれがある。
【0067】
これに対し、上述したとおり、測距装置1では、電荷振分処理の実行中に、第1オーバーフローゲート電極OV1の直下の領域のポテンシャルφOV1及び第2オーバーフローゲート電極OV2の直下の領域のポテンシャルφOV2が電荷発生領域24のポテンシャルφPGよりも低くされる。これにより、第1オーバーフロー領域Q1又は第2オーバーフロー領域Q2へ溢れ出る程度にまで第1電荷蓄積領域P1又は第2電荷蓄積領域P2に電荷が蓄積された場合でも、電荷が電荷発生領域24に残存するのを抑制することができる。
【0068】
制御部4が、電荷発生領域24で発生した電荷を第1電荷蓄積領域P1に転送する第1電荷転送処理を複数回実行した後に、電荷蓄積領域P1に蓄積された電荷量を読み出す第1読出処理を実行する。これにより、S/N比を向上することができる。
【0069】
電荷発生領域24が、アバランシェ増倍領域22を含んでいる。この場合、電荷発生領域24においてアバランシェ増倍を引き起こすことができ、測距センサ10Aの検出感度を高めることができる。一方、電荷発生領域24にアバランシェ増倍領域22が含まれる場合、発生する電荷量が極めて多くなる。測距装置1では、そのような場合でも、蓄積容量の飽和を十分に抑制することができると共に、電荷発生領域24への電荷の残存を十分に抑制することができる。
【0070】
制御部4が、第1電荷蓄積領域P1及び第2電荷蓄積領域P2に蓄積された電荷量を読み出す第1読出処理と、第1電荷蓄積領域P1に蓄積された電荷を第1オーバーフロー領域Q1に転送すると共に第2電荷蓄積領域P2に蓄積された電荷を第2オーバーフロー領域Q2に転送する第2電荷転送処理と、第1電荷蓄積領域P1及び第1オーバーフロー領域Q1に蓄積された総電荷量を読み出すと共に第2電荷蓄積領域P2及び第2オーバーフロー領域Q2に蓄積された総電荷量を読み出す第2読出処理と、を実行する。これにより、第1読出処理において第1及び第2電荷蓄積領域P2に蓄積された電荷量が読み出されるだけでなく、第2読出処理において第1電荷蓄積領域P1及び第1オーバーフロー領域Q1に蓄積された総電荷量並びに第2電荷蓄積領域P2及び第2オーバーフロー領域Q2に蓄積された総電荷量が読み出されるため、電荷量の検出精度を向上することができる。
【0071】
制御部4が、第1期間及び第2期間以外の期間(すなわち、第1電荷転送処理が実行される期間以外の期間)に、電荷発生領域24で発生した電荷を不要電荷転送ゲート電極RGによって不要電荷排出領域Rに転送する不要電荷転送処理を実行する。これにより、第1及び第2期間以外の期間に電荷発生領域24で発生した電荷を不要電荷排出領域Rに転送することができ、電荷発生領域24への電荷の残存を一層抑制することができる。不要電荷転送処理は、外乱光が多い環境下において特に有用である。
【0072】
制御部4が、第1期間において、第1転送ゲート電極TX1の直下の領域のポテンシャルφTX1がフォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域24)のポテンシャルφPGよりも低く、且つ第1オーバーフローゲート電極OV1の直下の領域のポテンシャルφOV1がフォトゲート電極PGの直下の領域のポテンシャルφPGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び第1転送ゲート電極TX1に電位を与える。制御部4が、第2期間において、第2転送ゲート電極TX2の直下の領域のポテンシャルφTX2がフォトゲート電極PGの直下の領域のポテンシャルφPGよりも低く、且つ第2オーバーフローゲート電極OV2の直下の領域のポテンシャルφOV2がフォトゲート電極PGの直下の領域のポテンシャルφPGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び第2転送ゲート電極TX2に電位を与える。制御部4が、第3期間において、第3転送ゲート電極TX3の直下の領域のポテンシャルφTX3がフォトゲート電極PGの直下の領域のポテンシャルφPGよりも低く、且つ第3オーバーフローゲート電極OV3の直下の領域のポテンシャルφOV3がフォトゲート電極PGの直下の領域のポテンシャルφPGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び第3転送ゲート電極TX3に電位を与える。制御部4が、第4期間において、第4転送ゲート電極TX4の直下の領域のポテンシャルφTX4がフォトゲート電極PGの直下の領域のポテンシャルφPGよりも低く、且つ第4オーバーフローゲート電極OV4の直下の領域のポテンシャルφOV4がフォトゲート電極PGの直下の領域のポテンシャルφPGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び第4転送ゲート電極TX4に電位を与える。これにより、各ポテンシャルの高さを精度良く調整することができる。
【0073】
測距センサ10Aが、第1及び第2電荷蓄積領域P1,P2、第1及び第2オーバーフロー領域Q1,Q2、第1及び第2転送ゲート電極TX1,TX2、並びに第1及び第2オーバーフローゲート電極OV1,OV2だけでなく、第3及び第4電荷蓄積領域P3,P4、第3及び第4オーバーフロー領域Q3,Q4、第3及び第4転送ゲート電極TX3,TX4、並びに第3及び第4オーバーフローゲート電極OV3,OV4を有している。そして、制御部4が、電荷振分処理において、互いに異なる位相を有する電荷転送信号を転送ゲート電極TX1~TX4に与えることにより、電荷発生領域24で発生した電荷を電荷蓄積領域P1~P4の間で振り分ける。これにより、第1~第4転送ゲート電極TX1~TX4による電荷振分を実現することができ、距離測定の精度を向上することができる。
[第1実施形態の変形例]
【0074】
図9に示される第1変形例に係る測距センサ10Bでは、各画素部11には、不要電荷排出領域R及び不要電荷転送ゲート電極RGが設けられていない。第3電荷蓄積領域P3は、電荷発生領域24(フォトゲート電極PG)を介して、Y方向において第4電荷蓄積領域P4と向かい合っている。測距センサ10Bは、例えば
図10に示されるように駆動される。この駆動方法では、電荷発生領域24で発生した電荷を不要電荷排出領域Rに転送する不要電荷転送処理が実行されない。第1変形例によっても、上記実施形態と同様に、蓄積容量の飽和及び電荷発生領域24への電荷の残存を抑制し、距離測定の精度を向上することができる。
【0075】
図11に示される第2変形例に係る測距センサ10Cでは、各画素部11には、第3及び第4電荷蓄積領域P3,P4、第3及び第4オーバーフロー領域Q3,Q4、第3及び第4転送ゲート電極TX3,TX4、並びに第3及び第4オーバーフローゲート電極OV3,OV4が設けられていない。各画素部11は、4つの不要電荷排出領域R1,R2,R3,R4と、4つの不要電荷転送ゲート電極RGと、を有している。不要電荷排出領域R1,R2は、電荷発生領域24(フォトゲート電極PG)を介して、X方向において互いに向かい合っている。不要電荷排出領域R3,R4は、電荷発生領域24を介して、X方向において互いに向かい合っている。不要電荷排出領域R1,R4は、第1電荷蓄積領域P1を介して、Y方向において互いに向かい合っている。不要電荷排出領域R2,R3は、第2電荷蓄積領域P2を介して、Y方向において互いに向かい合っている。
【0076】
測距センサ10Cは、例えば
図12に示されるように駆動される。この駆動方法では、蓄積期間T2においては、第1転送ゲート電極TX1に正の電圧が与えられる第1期間と、第2転送ゲート電極TX2に正の電圧が与えられる第2期間と、電荷発生領域24で発生した電荷が不要電荷排出領域Rに転送される不要電荷転送処理が実行される期間と、がこの順序で繰り返される。このような駆動方法によっても、対象物OJの距離画像を生成することができる。第2変形例によっても、上記実施形態と同様に、蓄積容量の飽和及び電荷発生領域24への電荷の残存を抑制し、距離測定の精度を向上することができる。
【0077】
図13に示される第3変形例のように、リセットトランジスタRSTは、実施形態とは異なる位置に配置されていてもよい。
図13では、画素11aの一部分の回路構成のみが示されている。第3変形例によっても、上記実施形態と同様に、蓄積容量の飽和及び電荷発生領域24への電荷の残存を抑制し、距離測定の精度を向上することができる。
[第2実施形態]
【0078】
図14に示されるように、光検出装置100は、光源2と、イメージセンサ10Dと、制御部4と、光学系6と、を備えている。光検出装置100は、所定のタイミングで(所定の期間に)到来した光を検出するゲーティング機能(シャッタ機能)を備えたレンジゲートカメラとして構成されている。光学系6は、光源2から出射されて対象物OJで反射されたパルス光Lをイメージセンサ10Dの画素部11へ導光する。
【0079】
図15に示されるように、イメージセンサ10Dは、第2~第4電荷蓄積領域P2~P4、第2~第4オーバーフロー領域Q2~Q4、第2~第4転送ゲート電極TX2~TX4、並びに第2~第4オーバーフローゲート電極OV2~OV4が設けられていない点で、上述した測距センサ10Aと相違する。イメージセンサ10Dでは、第1電荷蓄積領域P1及び不要電荷排出領域Rが電荷発生領域24(フォトゲート電極PG)に対してX方向における一方の側に配置されている。第1電荷蓄積領域P1と不要電荷排出領域Rは、Y方向に並んでいる。第1転送ゲート電極TX1と不要電荷転送ゲート電極RGは、Y方向に並んでいる。
【0080】
光検出装置100は、例えば
図16に示されるように駆動される。この駆動方法では、蓄積期間T2において、電荷振分処理に代えて、電荷発生領域24で発生した電荷を第1電荷蓄積領域P1に転送する第1電荷転送処理(第1電荷転送ステップ)が繰り返し実行される。一例として、第1転送ゲート電極TX1に印加される電荷転送信号は、フォトゲート電極PGの電位を基準として正の電圧及び負の電圧が交互に繰り返される電圧信号であって、位相が所定量だけずれている点を除き、光源2から出射されるパルス光Lの強度信号と周期及びパルス幅が同一の電圧信号である。
【0081】
第1転送ゲート電極TX1に正の電圧が与えられている期間においては、第1転送ゲート電極TX1の直下の領域のポテンシャルφTX1が、フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域24)のポテンシャルφPGよりも低くされる。換言すれば、当該期間においては、ポテンシャルφTX1がポテンシャルφPGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び第1転送ゲート電極TX1に電位が与えられる。これにより、電荷発生領域24で発生した電荷が第1電荷蓄積領域P1に転送される。
【0082】
一方、第1転送ゲート電極TX1に負の電圧が与えられている期間においては、第1転送ゲート電極TX1の直下の領域のポテンシャルφTX1が、フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域24)のポテンシャルφPGよりも高くされる。換言すれば、当該期間においては、ポテンシャルφTX1がポテンシャルφPGよりも高くなるように、フォトゲート電極PG及び第1転送ゲート電極TX1に電位が与えられる。これにより、電荷発生領域24と第1電荷蓄積領域P1との間にはポテンシャル障壁が生じ、電荷発生領域24で発生した電荷が第1電荷蓄積領域P1に転送されない。
【0083】
更に、蓄積期間T2においては、第1オーバーフローゲート電極OV1の直下の領域のポテンシャルφOV1がフォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域24)のポテンシャルφPGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び第1オーバーフローゲート電極OV1に電位が与えられる。これにより、第1電荷蓄積領域P1が電荷で飽和した場合でも、第1電荷蓄積領域P1から溢れた電荷が、第1オーバーフロー領域Q1に流れ込み、第1オーバーフロー領域Q1に蓄積される。
【0084】
また、第1電荷転送処理が実行される期間以外の期間においては、電荷発生領域24で発生した電荷を不要電荷排出領域Rに転送する不要電荷転送処理(不要電荷転送ステップ)が実行される。不要電荷転送処理においては、不要電荷転送ゲート電極RGの直下の領域のポテンシャルφRGが、フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域24)のポテンシャルφPGよりも低くなるように、フォトゲート電極PG及び不要電荷転送ゲート電極RGに電位が与えられる。これにより、電荷発生領域24で発生した電荷が不要電荷排出領域Rに転送される。
【0085】
蓄積期間T2において電荷転送処理が複数回実行された後に、第1電荷蓄積領域P1に蓄積された電荷量を読み出す第1読出処理(高感度読出処理)(第1読出ステップ)が実行される(時刻T3)。第1読出処理の後に、蓄積期間T2において与えられた電圧よりも大きな電圧を第1オーバーフローゲート電極OV1に与えて第1オーバーフローゲート電極OV1の直下の領域のポテンシャルφOV1を低下させることにより、第1電荷蓄積領域P1に蓄積された電荷を第1オーバーフロー領域Q1に転送する第2電荷転送処理(第2電荷転送ステップ)が実行される。換言すれば、第2電荷転送処理においては、ポテンシャルφOV1が低下するように第1オーバーフローゲート電極OV1に電位を与えることにより、第1電荷蓄積領域P1に蓄積された電荷が第1オーバーフロー領域Q1に転送される。第2電荷転送処理の後に、第1電荷蓄積領域P1及び第1オーバーフロー領域Q1に蓄積された総電荷量を読み出す第2読出処理(低感度読出処理)(第2読出ステップ)が実行される(時刻T4)。
【0086】
図17を参照しつつ、上記動作によって実現可能なゲーティング機能について説明する。
図17に示される(1)の例のように、イメージセンサ10Dから距離d1だけ離れた対象物OJ1の近傍で反射したパルス光Lを検出する場合、距離d1に対応する量だけ位相がずれた電圧信号が第1転送ゲート電極TX1に印加される。これにより、対象物OJ1の近傍(すなわち、イメージセンサ10Dから所定距離だけ離れた範囲)で反射したパルス光Lが電荷発生領域24に入射する期間に、電荷発生領域24で発生した電荷を第1電荷蓄積領域P1に転送する第1電荷転送処理を実行することができる。その結果、対象物OJ1の近傍で反射したパルス光Lのみを検出することが可能となる。同様に、
図17に示される(2)~(4)の例のように、イメージセンサ10Dから所定距離だけ離れた範囲で反射したパルス光Lを検出する場合、当該距離に対応する量だけ位相がずれた電圧信号が第1転送ゲート電極TX1に印加される。このように、光検出装置100によれば、所定のタイミングで到来した光のみを検出するゲーティング機能を実現することができる。ゲーティング機能は、例えば蛍光寿命の測定などに好適に用いることができる。
[第2実施形態の作用及び効果]
【0087】
光検出装置100では、イメージセンサ10Dが、第1電荷蓄積領域P1の電荷蓄積容量よりも大きな電荷蓄積容量を有する第1オーバーフロー領域Q1と、第1電荷蓄積領域P1と第1オーバーフロー領域Q1との間の領域上に配置された第1オーバーフローゲート電極OV1と、を有している。これにより、第1電荷蓄積領域P1から溢れた電荷を第1オーバーフロー領域Q1に蓄積することができ、蓄積容量の飽和を抑制することができる。更に、電荷発生領域24で発生した電荷を第1電荷蓄積領域P1に転送する第1電荷転送処理の実行中に、第1オーバーフローゲート電極OV1の直下の領域のポテンシャルφOV1が、電荷発生領域24のポテンシャルφPGよりも低くされる。これにより、第1オーバーフロー領域Q1へ溢れ出る程度にまで第1電荷蓄積領域P1に電荷が蓄積された場合でも、電荷が電荷発生領域24に残存するのを抑制することができる。よって、光検出装置100によれば、検出精度を向上することができる。
【0088】
制御部4が、第1電荷転送処理を複数回実行した後に、第1読出処理を実行する。これにより、S/N比を向上することができる。
【0089】
電荷発生領域24が、アバランシェ増倍領域22を含んでいる。これにより、電荷発生領域24においてアバランシェ増倍を引き起こすことができ、イメージセンサ10Dの検出感度を高めることができる。一方、電荷発生領域24にアバランシェ増倍領域22が含まれる場合、発生する電荷量が極めて多くなるが、光検出装置100では、その場合でも、蓄積容量の飽和を十分に抑制することができると共に、電荷発生領域24への電荷の残存を十分に抑制することができる。
【0090】
制御部4が、第1電荷蓄積領域P1に蓄積された電荷を第1オーバーフロー領域Q1に転送する第2電荷転送処理と、第1電荷蓄積領域P1及び第1オーバーフロー領域Q1に蓄積された総電荷量を読み出す第2読出処理と、を実行する。これにより、第1読出処理において第1電荷蓄積領域P1に蓄積された電荷量が読み出されるだけでなく、第2読出処理において第1電荷蓄積領域P1及び第1オーバーフロー領域Q1に蓄積された総電荷量が読み出されるため、電荷量の検出精度を向上することができる。
【0091】
制御部4は、第1電荷転送処理が実行される期間以外の期間に、電荷発生領域24で発生した電荷を不要電荷転送ゲート電極RGによって不要電荷排出領域Rに転送する不要電荷転送処理を実行する。これにより、第1電荷転送処理が実行される期間以外の期間に電荷発生領域24で発生した電荷を不要電荷排出領域Rに転送することができ、電荷発生領域24への電荷の残存を一層抑制することができる。不要電荷転送処理は、外乱光が多い環境下において特に有用である。
【0092】
制御部4が、対象物OJで反射したパルス光Lが電荷発生領域24に入射する期間に、第1電荷転送処理を実行する。これにより、対象物OJで反射したパルス光Lが電荷発生領域24に入射する期間に電荷発生領域24で発生した電荷量を精度良く検出することができる。
[第2実施形態の変形例]
【0093】
変形例として、イメージセンサ10Dにおいて、各画素部11には、不要電荷排出領域R及び不要電荷転送ゲート電極RGが設けられていなくてもよい。この変形例のイメージセンサは、例えば
図18に示されるように駆動される。この駆動方法では、電荷発生領域24で発生した電荷を不要電荷排出領域Rに転送する不要電荷転送処理が実行されない。この変形例によっても、上記第2実施形態と同様に、蓄積容量の飽和及び電荷発生領域24への電荷の残存を抑制し、検出精度を向上することができる。この変形例のイメージセンサは、例えば、第1電荷転送処理が実行されている期間以外の期間に外乱光が電荷発生領域24に入射し難い場合に好適に用いることができる。そのような場合の一例としては、例えば暗室中において光検出が行われる場合が挙げられる。
【0094】
本開示は、上述した実施形態及び変形例に限定されない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。測距センサ10A,10C及びイメージセンサ10Dにおいて、不要電荷排出領域R,R1~R4に転送された電荷が、外部に排出されずに蓄積されて読み出されてもよい。すなわち、不要電荷排出領域R,R1~R4が電荷蓄積領域として機能してもよい。この場合、信号光以外の光(距離情報を含まない光)を読み出して利用することができる。
【0095】
半導体層20にアバランシェ増倍領域22が形成されていなくてもよい。すなわち、電荷発生領域24は、アバランシェ増倍領域22を含んでいなくてもよい。半導体層20にウェル領域31及びバリア領域32の少なくとも一方が形成されていなくてもよい。信号処理部3が省略され、制御部4が測距センサ10A~10Cに直接に接続されてもよい。第2電荷転送処理及び第2読出処理は、実行されなくてもよい。第1電荷転送処理が一回実行された後に、第1読出処理が実行されてもよい。
【0096】
測距センサ10A~10C及びイメージセンサ10Dでは、第1側及び第2側のいずれからも半導体層20に光を入射させることが可能である。例えば、第2側から半導体層20に光を入射させる場合には、対向電極50が導電性及び光透過性を有する材料(例えばポリシリコン)によって形成されてもよい。測距センサ10A~10C及びイメージセンサ10Dのいずれにおいても、p型及びn型の各導電型は、上述したものに対して逆であってもよい。測距センサ10A~10C及びイメージセンサ10Dのいずれにおいても、複数の画素11aは、半導体層20の第1表面20aに沿って1次元に配列されたものであってもよい。測距センサ10A~10C及びイメージセンサ10Dのいずれも、単一の画素11aのみを有していてもよい。第1オーバーフロー領域Q1の電荷蓄積容量は、第1電荷蓄積領域P1の電荷蓄積容量以下であってもよい。第2オーバーフロー領域Q2の電荷蓄積容量は、第2電荷蓄積領域P2の電荷蓄積容量以下であってもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…測距装置(光検出装置)、100…光検出装置、2…光源、4…制御部、10A,10B,10C…測距センサ(イメージセンサ、光センサ)、10D…イメージセンサ(光センサ)、22…アバランシェ増倍領域、24…電荷発生領域、P1…第1電荷蓄積領域、P2…第2電荷蓄積領域、P3…第3電荷蓄積領域、P4…第4電荷蓄積領域、Q1…第1オーバーフロー領域、Q2…第2オーバーフロー領域、Q3…第3オーバーフロー領域、Q4…第4オーバーフロー領域、R,R1,R2,R3,R4…不要電荷排出領域、PG…フォトゲート電極、TX1…第1転送ゲート電極、TX2…第2転送ゲート電極、TX3…第3転送ゲート電極、TX4…第4転送ゲート電極、OV1…第1オーバーフローゲート電極、OV2…第2オーバーフローゲート電極、OV3…第3オーバーフローゲート電極、OV4…第4オーバーフローゲート電極、RG…不要電荷転送ゲート電極。