(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】抗体および使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241216BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241216BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241216BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241216BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241216BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241216BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241216BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241216BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241216BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241216BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20241216BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K45/00
C12N15/13 ZNA
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2021573883
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 GB2020051588
(87)【国際公開番号】W WO2021001653
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-06-21
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515114740
【氏名又は名称】オックスフォード バイオセラピューティックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OXFORD BIOTHERAPEUTICS LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】アーニマ ビーシュト
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ アクロイド
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-520671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C07K 16/00-46
C12N 1/00-38
C12N 5/00-28
C12P 21/00-08
A61K 39/395
A61K 45/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SLAMF6に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
配列番号5を含むCDR-H1配列と、
配列番号6または配列番号15を含むCDR-H2配列と、
配列番号7を含むCDR-H3配列と、
を含む重鎖可変領域
、および
配列番号8
または配列番号1
6を含むCDR-L1配列と、
配列番号9
または配列番号1
7を含むCDR-L2配列と、
配列番号10を含むCDR-L3配列と
、
を含む軽鎖可変領域
、
を含む
、抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記重鎖可変領域が、
配列番号5の配列を含むCDR-
H1と、
配列番号15の配列を含むCDR-
H2と、
配列番号7の配列を含むCDR-
H3と、
を含む、請求項
1に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記軽鎖可変領域が、
配列番号16の配列を含むCDR-L1と、
配列番号17の配列を含むCDR-L2と、
配列番号10の配列を含むCDR-L3と、
を含む、請求項
1または請求項
2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項4】
SLAMF6に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
配列番号5を含むCDR-H1と、
配列番号15を含むCDR-H2と、
配列番号7を含むCDR-H3と、
を含む重鎖可変領域、および
配列番号16を含むCDR-L1と、
配列番号17を含むCDR-L2と、
配列番号10を含むCDR-L3と、
を含む軽鎖可変領域
を含む、抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項5】
SLAMF6に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントであって、
i)配列番号1
の3つの重鎖CDRおよび配列番号2
の3つの軽鎖CDR、または
ii)配列番号13
の3つの重鎖CDRおよび配列番号14
の3つの軽鎖CDR
を含み、
前記CDRはKabatまたはChothiaナンバリングシステムによって定義される、抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項6】
配列番号13と少なくと
も90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号14と少なくと
も90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列を含む軽鎖可変領域と、
を含む、
請求項4に記載のSLAMF6に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
配列番号13を含む重鎖可変領域と、配列番号14を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項
6に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗体または抗原結合フラグメントがモノクローナル抗体である、請求項1~
7のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記抗体または抗原結合フラグメントが、キメラ、ヒト化、
もしくは二重特異
性抗体、または抗原結合フラグメントである、請求項1~
8のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
前記抗体または抗原結合フラグメントが、Fcサイレンシングされた操作されたIgG1抗体である、または、1つ以上のFcレセプターへの結合を低減されているもしくは全く有さない抗原結合フラグメントである、請求項1~
9のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記抗体または抗原結合フラグメントが、T細胞の細胞毒性を誘導および/または増強することができる、請求項1~
10のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
前記抗原結合フラグメントが、Fab、Fab’、F(ab)
2、F(ab’)
2、Fv、FV-TCRフラグメント、
およびscF
vからなる群より選択される、請求項1~
11のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
i)請求項1~
12のいずれかに記載の抗体または抗原結合フラグメントの重鎖可変領域、および/または
ii)請求項1~
12のいずれかに記載の抗体または抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域、
をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項
13に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項15】
i.請求項
13に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター、または
ii.請求項
13に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドを含む第一の発現ベクターと、請求項
13に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドとを含む第二の発現ベクターと、
を含む宿主細胞。
【請求項16】
抗体またはその抗原結合フラグメントを製造する方法であって、請求項
15に記載の宿主細胞を、前記抗体または前記抗原結合フラグメントが前記宿主細胞中で発現される条件下で培養することを
含む、方法。
【請求項17】
前記抗体または抗原結合フラグメントを単離することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項19】
癌の治療に使用するための医薬組成物の製造における、請求項1~
12または
18のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、または医薬組成物の使用。
【請求項20】
癌の治療に使用するための、請求項1~
12または
18のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、または医薬組成物。
【請求項21】
前記癌が、小細胞肺癌、扁平上皮癌および腺癌を含む非小細胞肺癌、メラノーマを含む皮膚癌、TNBCを含む乳癌、結腸直腸癌、胃(gastric)癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、腎臓癌、肝細胞癌を含む肝臓癌、膵臓癌、頭頸部癌、鼻咽頭癌、食道癌、膀胱癌および他の尿路上皮癌、胃(stomach)癌、神経膠腫、神経膠芽腫、精巣癌、甲状腺癌、骨癌、胆嚢癌および胆管癌、子宮癌、副腎癌、肉腫、GIST、神経内分泌腫瘍および血液悪性腫瘍からなる群より選択される、請求項
19または20に記載
の使用。
【請求項22】
前記医薬組成物または医薬が、有効量の第2の治療薬をさらに含む、請求項
19~
21のいずれか一項に記載
の使用。
【請求項23】
治療に使用するためのまたは医薬として使用するための、請求項1~
12もしくは
18のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SLAMF6タンパクに結合することができる抗体、およびその使用に関する。
【0002】
はじめに
本発明の態様には、NTB-AまたはCD352としても知られるSLAMファミリーメンバー6(SLAMF6)に対する抗体および他の治療用タンパク、かかる抗体および治療用タンパクをコードする核酸、抗体および他の治療用タンパクを調製する方法、ならびにSLAMF6に対する抗体および他の治療用タンパクを用いることによる癌などの疾患の治療方法が含まれる。
【背景技術】
【0003】
標的抗原SLAMF6はシングルパスタイプI膜タンパクであり、免疫グロブリンスーパーファミリーおよびCD2サブファミリーのメンバーである(J Exp Med. 2001 Aug 6;194(3):235-46)。その活性は、小さな細胞質アダプタータンパク、SH2D1A/SAPおよび/またはSH2D1B/EAT-2の有無によって制御されている。このタンパクは、天然細胞毒性レセプター(J. Exp. Med. 194:235-246(2001))の高表面密度を発現するナチュラルキラー細胞(NK)においてのみ細胞溶解活性を誘発する。NK細胞における正のシグナル伝達はVAV1のリン酸化を意味する。NK細胞活性化はSH2D1Bに依存し、SH2D1Aには依存しないようである。SLAMF1と共に、SLAMF6は、胸腺細胞ナチュラルキラーT(NKT)細胞系列のポジティブセレクションとその後の増殖と分化との間の移行を制御する。
【0004】
SLAMF6はまた、IL‐17分泌の増加につながるヘルパーT細胞Th17表現型へのT細胞分化を促進し、共刺激活性はSH2D1A(J. Immunol. 177:3170-3177(2006))を必要とする。さらに、IL-17促進剤(J. Biol. Chem. 287:38168-38177(2012))へのRORCのリクルートメントを促進する。SLAMF1およびCD84/SLAMF5とともに、SLAMF6は体液性免疫応答の負の調節因子である可能性がある。SH2D1A/SAPが存在しない場合、SLAMF6はCD4+T細胞およびNKT細胞に負のシグナルを伝達することができる。また、T細胞:B細胞の接着を阻害することによって胚中心形成を負に調節するし、この機能は、おそらくSH2D1A/SAPが存在しない場合にITSMを介してPTPN6/SHP-1との会合が増加することを示唆している。
【0005】
WO2008/027739は、抗NTB-A抗体および上記抗体を含む医薬組成物を開示している。また、NTB-Aに結合し、NTB-Aの発現によって特徴づけられる血液悪性腫瘍などの疾患を治療するために、上記抗体を使用する方法も記載されている。
【0006】
WO2014/100740およびWO2017/004330は、NTB-Aに特異的に結合する抗体薬物結合体を含む抗体、およびこれらをNTB-A発現細胞の活性を検出または調節するために使用する方法を開示している。また、NTB-A発現細胞に関連する疾患、例えば多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫および急性骨髄性白血病の治療方法も開示される。
【0007】
WO2015/104711は、ex vivoおよびin vivoでの改良されたT細胞調節のための、ならびに癌および他の病理の治療のための組成物および方法を記載している。より具体的には、本発明の実施形態は、癌患者の治療、感受性患者における血球減少症の予防および治療、ならびに改善された細胞組成物のex vivo調製のための水溶性NTB-Aポリペプチドまたはそのアゴニストの使用を対象とする。
【発明の概要】
【0008】
本発明の態様は、SLAMF6に対する特異的抗体、SLAMF6および腫瘍関連抗原に対する二重特異性抗体、本発明のこのような抗体をコードする核酸、本発明の抗体をコードする宿主細胞、本発明の抗体を調製するための方法、および小細胞肺癌、非小細胞肺癌(扁平上皮癌および腺癌を含む)、メラノーマを含む皮膚癌、乳癌(TNBCを含む)、結腸直腸癌、胃(gastric)癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、腎臓癌、肝細胞癌を含む肝臓癌、膵臓癌、頭頸部癌、鼻咽頭癌、食道癌、膀胱癌および他の尿路上皮癌、胃(stomach)癌、神経膠腫、神経膠芽腫、精巣、甲状腺、骨、胆嚢および胆管、子宮、副腎癌、肉腫、GIST、神経内分泌腫瘍、および血液悪性腫瘍を含むがこれらに限定されないヒトの癌などの疾患の治療方法を含む。
【0009】
本明細書に記載される抗体は、SLAMF6(配列番号11)に結合する抗体を提供する。好ましくは、前記抗体は、SLAMF6(配列番号12)の細胞外ドメインに結合する。本発明の態様は、本明細書に記載される抗体によって認識されるSLAMF6タンパク上のエピトープに結合するか、または本明細書に記載される抗体との結合に関してクロス競合(cross-compete、クロスコンピート)し、好ましくは、本明細書に記載される抗体のヒトSLAMF6に対する結合親和性の少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%を保持する抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態において、抗体は単離された抗体である。
【0010】
本発明の態様は、SLAMF6に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、前記抗体は、重鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、配列番号5の配列を含むCDR-H1配列、配列番号6または配列番号15の配列を含むCDR-H2配列、および配列番号7の配列を含むCDR-H3配列を含み、いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号8または配列番号16の配列のいずれか1つを含むCDR-L1、配列番号9または配列番号17の配列のいずれか1つを含むCDR-L2、および配列番号10の配列を含むCDR-L3からなる群から選択される少なくとも1つのCDR配列を含む軽鎖可変領域をさらに含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、SLAMF6に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、表1に示されるように、重鎖および軽鎖CDRの8つの組合せのうちの1つを含む重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0012】
【0013】
いくつかの好ましい態様において、SLAMF6に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号5を含むCDR-H1、配列番号6を含むCDR-H2、および配列番号7を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、配列番号8を含むCDR-L1、配列番号9を含むCDR-L2、および配列番号10を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0014】
別の好ましい実施形態では、SLAMF6に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号5を含むCDR-H1、配列番号15を含むCDR-H2、および配列番号7を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、配列番号16を含むCDR-L1、配列番号17を含むCDR-L2、および配列番号10を含むCDR-L3を含む。
【0015】
さらなる態様において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、本明細書に記載される親抗体と比較して可変CDRを含む。したがって、本発明は、親抗体の変異体可変領域を含む変異体抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、親抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号5の配列を含むCDR-H1配列、配列番号15の配列を含むCDR-H2配列、および配列番号7の配列を含むCDR-H3配列を含む重鎖可変領域と、配列番号16の配列を含むCDR-L1、配列番号17の配列を含むCDR-L2、および配列番号10の配列を含むCDR-L3とを含む軽鎖可変領域とを含み、一実施形態では、変異抗体またはその抗原結合フラグメントは、特定の用途の1から5個もしくは1から4個もしくは1から3個の置換、付加もしくは欠失を有するCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のセットにおいて、集合的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個のアミノ酸の置換、付加、および/もしくは欠失いずれか1つまたは複数において、1、2、3、4、5もしくは6個のアミノ酸の置換、付加、および/もしくは欠失を有し、抗体またはその抗原結合フラグメントがSLAMF6に特異的な結合を保持する。好ましくは、バリエーションは置換であり、好ましくは、置換は、保存的置換または可変領域中のアミノ酸をヒト生殖細胞系からの対応するアミノ酸に戻すための置換である。さらなる実施形態において、本発明の変形例抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号5の配列を含むCDR-H1配列;配列番号15の配列を含むCDR-H2配列;および配列番号7の配列を含むCDR-H3配列;ならびに配列番号16の配列を含むCDR-L1;配列番号17の配列を含むCDR-L2;および配列番号10の配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域を含み、前記CDR配列の1つ以上は、上記に列挙した対応する親CDR配列と約70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるように改変される。
【0016】
いくつかの実施形態において、配列番号1もしくは配列番号13に記載される重鎖可変領域、または配列番号1もしくは配列番号13に記載される配列と約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である配列、および/または配列番号2もしくは配列番号14に記載される軽鎖可変領域、または配列番号2もしくは配列番号14と約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である配列を含む抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらなる実施形態では、配列番号1もしくは配列番号13と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個のアミノ酸置換、付加および/または欠失を含む重鎖可変領域、および/または配列番号2もしくは配列番号14と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個のアミノ酸置換および/または欠失を含む軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、変異体は置換、より好ましくは保存的置換を含む。
【0017】
アミノ酸置換、付加および/または欠失は、フレームワーク領域内および/またはCDR内にあり得ることがさらに明らかであろう。
【0018】
一実施形態では、配列番号1の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号2の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0019】
一実施形態では、配列番号13の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号14の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0020】
一実施形態では、配列番号18を含む重鎖配列および配列番号19を含む軽鎖配列を含む全長抗体が提供される。
【0021】
本発明のさらに別の態様において、配列番号1または配列番号13の3つの重鎖CDRおよび配列番号2または配列番号14の3つの軽鎖CDRを含む、SLAMF6に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが提供され、CDRはKabatによって定義されるか、または、Chothiaナンバリングシステムによって定義される。好ましくは、前記抗体、またはSLAMF6に特異的に結合するその抗原結合フラグメントは、KabatまたはChothiaナンバリングシステムによって定義される、配列番号13の3つの重鎖CDRおよび配列番号14の3つの軽鎖CDRを含む。
【0022】
配列番号13~19は、配列番号1および2の配列に基づくヒト化抗体配列である。当業者は、配列番号18~19は、完全長の機能的抗体、すなわち定常領域およびFc領域を産生するのに必要な可変領域以外の領域を含む完全長の重鎖および軽鎖配列であることを容易に理解するであろう。当業者は、抗体が産生される生物の可変領域由来のアミノ酸をヒト生殖細胞系配列由来のアミノ酸で置き換えることにより、これらをヒト対象に投与したときの抗体の免疫原性効果を最小限にするために、配列がヒト化されることを理解するであろう。アミノ酸置換の大部分はフレームワーク領域で起こるが、非臨界位置で起こるCDRからの多数のアミノ酸は置換され得、そのような置換は、好ましくは、性質において保存的であるか、または特定の位置のアミノ酸を対応するヒト生殖細胞系に存在するアミノ酸に戻す。この場合、置換されたCDRからのアミノ酸は、構造モデルを用いて、CDR領域におけるパラトープ面残基と非パラトピック残基とを識別することにより同定された。これにより、抗体を単純なCDRグラフトよりも高度にヒト化することができる。
【0023】
本発明において、配列番号13は、配列番号1のCDR2(配列番号6)と比較した場合、CDR2(配列番号15)における2つのアミノ酸置換を含んでいる。具体的には、配列番号6の16位にK-Q置換があり、配列番号6の17位にD-G置換がある。
【0024】
本発明において、配列番号14は、配列番号2のCDR1(配列番号8)と比較した場合、CDR1(配列番号16)における3つのアミノ酸置換を含んでいる。具体的には、配列番号8の1位にS-Q置換;配列番号8の4位にS-Q置換;および配列番号8の5位にS-D置換がある。配列番号14は、配列番号2(配列番号9)のCDR2と比較すると、CDR2(配列番号17)における1個のアミノ酸置換をさらに含む。具体的には、配列番号9の7位にS-T置換が存在する。
【0025】
これらのヒト化配列は、親抗体と比較した場合、異なる、選択的な抗体を表すものではなく、免疫原性を最小限にするために構造モデリングを用いてヒト生殖細胞系により密接に対応するように改変されただけの同じ特性を有する同じ抗体に関するものであることが、当業者には理解されるであろう。
【0026】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM以下の結合親和性(KD)を有する。
【0027】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体である。いくつかの態様において、抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体である。いくつかの実施形態において、重鎖可変領域は、フレームワーク配列を含む。いくつかの実施形態において、フレームワーク配列の少なくとも一部は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列を含む。いくつかの実施形態において、軽鎖可変領域は、フレームワーク配列を含む。いくつかの実施形態において、フレームワーク配列の少なくとも一部は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列を含む。
【0028】
また、L234AやL235A(LALA)のような抗体低ヒンジ内の残基の置換を含む、抗体エフェクター機能を緩和するための代替的ストラテジーも採用されている。これらの残基はCH2ドメイン上のFc-γ受容体結合部位の一部を形成し、これらの残基の抗体アイソタイプ間の交換は、ADCCにおけるそれらの重要性を同定する、より大きなまたはより小さなエフェクター機能を有した。これらの位置でのアラニン置換は、ヒトおよびマウス抗体の両方においてADCCを減少させるのに効果的であるが、これらの置換はCDC活性を減少させるのにあまり効果的ではない(Lo M et al, J Biol Chem. 2017 Mar 3;292(9):3900-3908)。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、FCガンマレセプターへの結合を減少させるように操作されたFc変異体であり、それにより低減されたエフェクター機能およびADCC活性がもたらされる。
【0029】
いくつかの実施形態において、抗体、または抗原結合フラグメントは、Fcサイレンシングされた操作されたIgG1抗体、または1つ以上のFcレセプターへの結合を減少させた、または、全く有さない抗原結合フラグメントである。別の実施形態では、抗体はIgG4抗体である。
【0030】
いくつかの実施形態において、抗体、または抗原結合フラグメントは、T細胞細胞傷害性および/またはNK細胞傷害性を媒介する二重特異性抗体または抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、免疫細胞の活性化を誘導および/または増強することができる。一実施形態では、免疫細胞は好ましくはT細胞である。別の実施形態では、免疫細胞は好ましくはNK細胞である。当業者は、用語誘導および/または増強とは、免疫細胞によるサイトカイン放出を誘導および/または増強し、および/または前記免疫細胞の増殖を誘導および/または増強し、および/または細胞殺傷活性を誘導および/または増強することを指すことができることを理解するであろう。本文脈において使用されるように、「誘導する」または「誘導」という用語は、免疫細胞の活性化を引き起こすこと、または抗体または抗原結合フラグメントの非存在下で見られる活性化レベルを上回るように免疫細胞の活性化を増加させることを意味することは、当業者には容易に明らかであろう。本文脈において使用される「増強する」という用語は、すでに活性化された免疫細胞の活性化レベルを増加させることを指す。
【0031】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、SLAMF6タンパク(例えば、配列番号11)に結合し、1つまたは複数の追加の結合標的に結合する、二重特異性または多重特異性抗体または抗原結合フラグメントであり、好ましくは、前記追加の結合標的は、1つまたは複数の腫瘍抗原である。さらなる実施形態において、1つ以上のさらなる結合標的は、免疫調節分子である。一実施形態では、追加の結合標的はPD-L1である。一実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは2価である。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは4価である。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは3価である。
【0032】
いくつかの実施形態において、抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab)2、F(ab’)2、Fv、FVTCR、scFv、dAbおよび単一ドメイン抗体からなる群より選択される。
【0033】
本発明の別の態様では、本発明の抗体の重鎖および/または本発明の抗体の軽鎖をコードする1以上の核酸が提供される。本発明の抗体の重鎖および軽鎖は、単一の核酸分子上に、または2つの別個の核酸分子によって一緒にコードされ得ることが理解されるであろう。
【0034】
別の態様では、本発明の核酸の1つ以上を含むベクターが提供される。
本発明の別の態様では、本発明の抗体の重鎖および/または軽鎖、またはその両方をコードする1以上の核酸を含有する宿主細胞が提供される。いくつかの実施形態において、該宿主細胞は、核酸が発現される条件下で増殖される。他の実施形態において、本発明の抗体を回収する方法が提供される。
【0035】
本発明の態様は、抗体、またはその抗原結合フラグメントを作製する方法を含み、該方法は、該抗体、または抗原結合フラグメントが宿主細胞中で発現される条件下で宿主細胞を培養すること、および任意に該抗体または抗原結合フラグメントを単離することを含む。
【0036】
本発明の態様は、本明細書に記載されるような抗体または抗原結合フラグメントと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を含む。
ある態様において、医薬組成物または医薬は、有効量の第2の治療薬をさらに含む。
【0037】
本発明のさらなる態様において、障害を治療する方法が提供され、該方法は、それを必要とする患者に、SLAMF6(配列番号11)に結合する本発明の抗体または抗原結合フラグメントを投与することを含む。一実施形態では、障害は癌である。
【0038】
さらなる態様において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントの有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、癌を治療する方法が提供される。
【0039】
一実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号5を含むCDR-H1、配列番号6または配列番号15を含むCDR-H2、および配列番号7を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、配列番号8または配列番号16を含むCDR-L1、配列番号9または配列番号17を含むCDR-L2、および配列番号10を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0040】
好ましくは、重鎖可変領域は、配列番号5を含むCDR-H1、配列番号15を含むCDR-H2、および配列番号7を含むCDR-3を含む。
【0041】
好ましくは、軽鎖可変領域は、配列番号16を含むCDR-L1、配列番号17を含むCDR-L2、および配列番号10を含むCDR-L3を含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、癌を治療する方法が提供され、ここで、それを必要とする患者に本発明の抗体または抗原結合フラグメントが投与され、本発明の前記抗体または抗原結合フラグメントが、免疫反応、例えば、細胞傷害性T細胞応答および/またはNK細胞応答を誘導しおよび/または増強する。
【0043】
さらなる実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、SLAMF6(配列番号11)および腫瘍特異的抗原に結合する二重特異性または多重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、癌は、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(扁平上皮癌および腺癌を含む)、メラノーマを含む皮膚癌、乳癌(TNBCを含む)、結腸直腸癌、胃(gastric)癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、腎臓癌、肝細胞癌を含む肝臓癌、膵臓癌、頭頸部癌、鼻咽頭癌、食道癌、膀胱癌および他の尿路上皮癌、胃(stomach)癌、神経膠腫、神経膠芽腫、精巣、甲状腺、骨、胆嚢および胆管、子宮、副腎癌、肉腫、GIST、神経内分泌腫瘍、および血液悪性腫瘍からなる群より選択される。
【0045】
本発明のさらなる態様によれば、予防または治療に使用するための本発明の抗体または抗原結合フラグメントが提供される。
【0046】
好ましくは、抗体または抗原結合フラグメントは、癌の予防または治療に使用するためのものである。
【0047】
本発明のさらなる態様によれば、癌の治療のための医薬の製造における本発明による抗体または抗原結合フラグメントの使用が提供される。
いくつかの実施形態において、これまでの態様に係る癌は、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(扁平上皮癌および腺癌を含む)、メラノーマを含む皮膚癌、乳癌(TNBCを含む)、結腸直腸癌、胃(gastric)癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、腎臓癌、肝細胞癌を含む肝臓癌、膵臓癌、頭頸部癌、鼻咽頭癌、食道癌、膀胱癌および他の尿路上皮癌、胃(stomach)癌、神経膠腫、神経膠芽腫、精巣、甲状腺、骨、胆嚢および胆管、子宮、副腎癌、肉腫、GIST、神経内分泌腫瘍、および血液悪性腫瘍からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1aは、親マウス1B3抗体(配列番号1)の重鎖の可変領域のアミノ酸配列を示す。
図1bは、親マウス1B3抗体(配列番号2)の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を示す。
【
図2】
図2aは、ヒト化抗体Hu_1B3(配列番号13)の重鎖の可変領域のアミノ酸配列を示す。
図2bは、ヒト化抗体Hu_1B3(配列番号14)の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を示す。
【
図3】
図3aは、1B3親マウス抗体配列の重鎖可変領域およびヒト化重鎖可変領域1B3配列の配列アラインメントを示す。
図3bは、1B3親マウス抗体配列の軽鎖可変領域およびヒト化軽鎖可変領域Hu_1B3配列の配列アラインメントを示す。
【
図4】
図4は、Raji細胞を発現する1B3に対する抗体1B3の特異的用量依存的結合を示す。
【
図5】
図5は、別の臨床段階のSLAMF6抗体と比較して、抗体Hu_1B3がT細胞活性化時にIFNγ産生を媒介する能力を増強したことを示す。
【
図6】
図6は、抗体1B3が、原発性NSCLC腫瘍サンプルから単離された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を誘導して、ex vivoアッセイにおいてインターフェロンガンマを産生し得ることを示す。
【
図7】
図7は、抗体1B3が、原発性乳癌試料から単離されたTILを誘導して、ex vivoアッセイにおいてインターフェロンガンマを産生し得ることを示す。このアッセイは、抗体1B3がペンブロリズマブと比較した場合、活性が増強されることを示す。
【
図8】
図8は、抗体1B3が、原発性結腸直腸癌試料から単離されたTILを誘導して、ex vivoアッセイにおいてインターフェロンガンマを産生し得ることを示す。このアッセイは、抗体1B3がペンブロリズマブと比較した場合、活性が増強されることを示す。
【
図9】
図9は、抗体Hu_1B3を用いて単離されたT細胞上に存在するSLAMF6を活性化すると、CD8+T細胞の増殖が誘導されることを示す。
【
図10】
図10は、MLRアッセイであり、抗体Hu_1B3が、IFNy放出の増加によって強調されるように、DC媒介T細胞活性化を誘導し得ることを示す。
【
図11】
図11は、抗SLAMF6抗体Hu_1B3が活性化T細胞を誘導し、用量依存的にグランザイムBを産生することができることを示す。
【
図12】
図12は、抗体Hu_1B3がCD8+T細胞上のパーフォリン発現を用量依存的にアップレギュレートすることを示している。
【
図13】
図13は、Hu_1B3抗体が、ヒトSLAMF6 ECD-mIgG2a Fc融合タンパクの存在下で、PBMCの表面上のレセプターへの結合を遮断されることを示す。
【
図14】
図14は、Seattle Geneticsによって産生される抗SLAMF6抗体よりも有意に少ないSLAMF6発現細胞へのヒト化抗体Hu_1B3盛り込みを示す。
【
図15】
図15は、Hu_1B3の添加が、抗her2抗CD3Bi特異的抗体と共に使用される場合、SKBR-3細胞に対するリンパ球細胞毒性を増強することを示す。
【
図16】
図16は、Hu_1B3の添加が、抗her2抗CD3Bi特異的抗体と共に使用される場合、SKBR-3細胞に対するリンパ球細胞毒性を増強することを示す。
【
図17】
図17は、Hu_1B3の添加が、抗her2抗CD3二重特異的抗体とともに用いた場合のHCT116細胞に対するリンパ球細胞毒性を増強することを示す。
【
図18】
図18は、Hu_1B3の添加が、抗her2抗CD3二重特異性抗体と共に使用される場合、MDA-MB-231細胞に対するリンパ球細胞毒性を増強することを示す。
【
図19】
図19は、各種抗体で96時間リンパ球を活性化した後、抗体HU_1B3はウレルマブ(抗CD137)またはアイソタイプのいずれよりも有意に多くのSKBR-3細胞の死をもたらすことを示している。
【
図20】
図20は、固定濃度の抗Her2/抗CD3二重特異性抗体と共に使用した場合、Hu_1B3の添加がSKBR-3細胞に対するリンパ球細胞毒性を用量依存的に増強することを示す。
【
図21】
図21aおよび21bは、可能な(enabling)二重特異性抗体の非存在下でのHu_1B3の添加は、SKBR-3細胞に対するリンパ球細胞毒性も増強することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の態様としては、SLAMF6に対する抗体、このような抗体をコードする核酸、本願の抗体をコードするこのような核酸を含む宿主細胞、抗SLAMF6抗体を調製するための方法、および、SLAMF6を介した障害、例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(扁平上皮癌および腺癌を含む)、メラノーマを含む皮膚癌、乳癌(TNBCを含む)、結腸直腸癌、胃(gastric)癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、腎臓癌、肝細胞癌を含む肝臓癌、膵臓癌、頭頸部癌、鼻咽頭癌、食道癌、膀胱癌および他の尿路上皮癌、胃(stomach)癌、神経膠腫、神経膠芽腫、精巣、甲状腺、骨、胆嚢および胆管、子宮、副腎癌、肉腫、GIST、神経内分泌腫瘍、および血液悪性腫瘍を含むが、これらに限定されないヒトの癌などの疾患の治療方法が挙げられる。
【0050】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の参照を含むことに留意されたい。そのように、特許請求の範囲は、任意の任意の要素を除外するようにドラフトすることができることにさらに留意されたい。そのように、この記述は、特許請求の範囲の要素の記載に関連して、「唯一の」、「のみ」などのような排他的な用語の使用、または「否定的である」限定の使用のための先行する基礎として役立つことを意図している。
【0051】
本開示を読むことにより当業者には明らかであるように、本明細書に記載され図示された個々の態様の各々は、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの態様のいずれかの特徴から容易に分離または組み合わせることができる個別の構成要素および特徴を有する。引用した方法のいずれも、引用した事象の順序で、または、論理的に可能なその他任意の順序で、実行することができる。
【0052】
定義
本明細書を解釈するために、以下の定義が適用され、適切な場合はいつでも、単数形で使用される用語も複数形を含み、その逆も同様である。
【0053】
「SLAMF6」という用語は、本明細書で使用する場合、特に明記しない限り、霊長類(例えば、ヒト、霊長類、およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット))などの哺乳類を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然SLAMF6タンパクを指す。SLAMF6タンパクは、SLAMF6様タンパクとも呼ばれる。ヒトSLAMF6のアミノ酸配列は、本明細書中で配列番号11に提供される。
【0054】
「SLAMF6」という用語は、「全長」の未処理SLAMF6ならびに細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のSLAMF6を包含する。この用語はまた、SLAMF6の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体、対立遺伝子変異体およびアイソフォームを包含する。この用語は、SLAMF6ポリペプチドの天然に存在する切断型または分泌型(例えば、細胞外ドメイン配列)を包含する。本明細書に記載のSLAMF6ポリペプチドは、ヒト組織タイプまたは別の供給源などの様々な供給源から単離することができ、または組換えまたは合成の方法によって調製することができる。「天然配列SLAMF6ポリペプチド」は、自然由来の対応するSLAMF6ポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。そのような天然配列SLAMF6ポリペプチドは、自然から単離することができ、または組換えまたは合成手段によって産生することができる。本明細書で使用される「SLAMF6エピトープ」という用語は、本明細書に記載のCDR配列の少なくとも1つまたは複数を含む抗体によって結合される、および/または実施例に示されるような抗SLAMF6抗体の結合プロファイルによって例示されるエピトープを指す。
【0055】
「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、例えば、1つの抗SLAMF6モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、全長または完全なモノクローナル抗体を含む)、ポリエピトピー特異性を有する抗SLAMF6抗体組成物、ポリクローナル抗体、多価抗体、少なくとも2つのインタクト抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、所望の生物学的活性を示す限り、二重特異性抗体)、一本鎖抗SLAMF6抗体、およびFab、Fab’、F(ab’)2およびFvおよびFV-TCRフラグメントを含む抗SLAMF6抗体の抗原結合フラグメント、ダイアボディ、単一ドメイン抗体(sdAb)を、それらが所望の生物学的または免疫学的活性を示す限り、具体的に包含する。用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書中の用語「抗体」と交換可能に使用される。抗体は、キメラ、ヒト、ヒト化および/または親和性成熟させたものであり得る。いくつかの実施形態において、少なくとも抗体は、本明細書で定義されるような6つのCDRのセットを含むことが当業者によって理解され、それらには、従来の抗体(モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の両方を含む)、ヒト化、ヒトおよび/またはキメラ抗体、抗体フラグメント、操作された抗体(例えば、以下に概説されるようなアミノ酸修飾を伴う)、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、および当技術分野で知られ、本明細書で論じられる他の類似体が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
他の実施形態では、本明細書で使用される用語「抗体」は、限定されないが、Nanobody(登録商標)、Unibody(登録商標)およびscFvフラグメントを含む、6つのCDRを含まない構造を指すことが理解されるであろう。
【0057】
「抗SLAMF6抗体」、「SLAMF6抗体」、または「SLAMF6に結合する抗体」という用語は、SLAMF6を標的とする診断および/または治療薬として有用であるような十分な親和性でSLAMF6に結合することができる抗体を指す。特定の実施形態では、抗SLAMF6抗体は、異なる種由来のSLAMF6の間で保存されているSLAMF6のエピトープに結合する。
【0058】
「単離された抗体」は、その環境の成分から同定されおよび分離され、並びに/または回収されたものである。その環境の混入(汚染)成分は、抗体の治療的使用を妨げる材料であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク性または非タンパク性溶質を含むことができる。
【0059】
標的分子への抗体の結合に関して、「特異的結合」または特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープに対して「特異的に結合する」もしくは「特異的」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子(一般に、結合活性を有さない類似の構造の分子である)の結合と比較して、分子の結合を決定することによって測定することができる。
【0060】
用語「アンタゴニスト」は、最も広い意味で使用され、天然のSLAMF6ポリペプチドの生物学的活性を部分的または完全にブロック、阻害、または中和する任意の分子を含む。適切なアンタゴニスト分子としては、具体的に、アンタゴニスト抗体または抗体フラグメント、天然SLAMF6ポリペプチド、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子有機分子などのフラグメントまたはアミノ酸配列変異体、が挙げられる。SLAMF6ポリペプチドのアンタゴニストを同定するための方法は、SLAMF6ポリペプチドを候補アンタゴニスト分子と接触させ、SLAMF6ポリペプチドに通常関連する1つ以上の生物学的活性の検出可能な変化を測定することを含み得る。
【0061】
「アゴニスト」という用語は、最も広い意味で使用され、天然のSLAMF6ポリペプチドの生物学的活性を増強する任意の分子を含む。適切なアゴニスト分子には、SLAMF6リガンドポリペプチド、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子有機分子などの、アゴニスト抗体または抗体フラグメント、フラグメントまたはアミノ酸配列変異体が具体的に含まれる。SLAMF6ポリペプチドのアゴニストを同定するための方法は、SLAMF6ポリペプチドを候補アゴニスト分子と接触させ、SLAMF6ポリペプチドと通常関連する1つ以上の生物学的活性の検出可能な変化を測定することを含み得る。
【0062】
「腫瘍」とは、本明細書で使用する場合、悪性または良性を問わず、すべての新生物細胞の成長および増殖、ならびにすべての前癌性および癌性の細胞および組織を指す。
【0063】
本明細書で使用される「予測的」および「予後的」という用語はまた、予測または予後判定のための方法が、本方法を実施する者が、抗SLAMF6抗体を含む抗癌剤による治療に反応する可能性がより高いとみなされる患者を(通常、治療の前に、しかし必ずしもそうではない)選択することを可能にすることを意味する場合において、交換可能である。
【0064】
SLAMF6タンパク
UNIPROTによれば、SLAMF6は、免疫グロブリンスーパーファミリーおよびCD2サブファミリーのシングルパスタイプI膜タンパクである。タンパクは、配列番号11のアミノ酸22~226の間の細胞外ドメイン、アミノ酸227~247の間の1つの膜貫通領域、およびアミノ酸248~331の間の1つの細胞質領域からなる。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、ヒトSLAMF6に結合する。本明細書で使用される「ヒトSLAMF6」または「ヒトSLAMF6タンパク」は、本明細書で定義される配列番号11のタンパクを指す。
【0066】
本発明の実施形態による抗体は、ある場合には、ヒト以外の種由来のSLAMF6タンパクと交差反応し得る。例えば、前臨床試験および毒性試験を容易にするために、本発明の抗体は、ネズミまたは霊長類のSLAMF6タンパクと交差反応し得る。あるいは、特定の実施形態では、抗体は、ヒトSLAMF6タンパクに特異的であってもよく、種または他のタイプの非ヒト交差反応性を示さなくてもよい。
【0067】
抗体
本発明の態様は、本明細書に記載されるように、抗SLAMF6抗体、一般的に治療抗体および/または診断抗体を含む。本発明の方法における使用を見出す抗体は、本明細書にさらに記載されるように、伝統的な抗体ならびに抗体誘導体、抗原結合フラグメントおよび模倣物を含む、本明細書に記載されるような多数のフォーマットのいずれかをとることができる。いくつかの実施形態において、抗体は、本明細書に定義される6つのCDRのセット(本明細書に記載される少数のアミノ酸変化を含む)から選択される1つまたは複数のCDRを有する。上記でレビューしたように、本明細書で使用される用語「抗体」は、種々の構造を指す。
【0068】
いくつかの実施形態において、IgGアイソタイプは、本発明において使用される。一実施形態では、FcサイレンシングされたIgG1アイソタイプ抗体が使用される。別の実施形態では、IgG4アイソタイプ抗体が使用される。
【0069】
抗体の各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識に主に関与する約100~110個以上のアミノ酸の可変領域を含む。可変領域では、重鎖および軽鎖のVドメインのそれぞれに対して3つのループが集まり、抗原結合部位を形成する。各ループは相補性決定領域(以下、「CDR」という。)と呼ばれ、アミノ酸配列の変異が最も顕著である。「可変」とは、可変領域の特定のセグメントが抗体間で配列が大きく異なることを意味する。可変領域内の可変性は均等に分布していない。その代わり、V領域は、15~30個のアミノ酸からなるフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の伸長領域からなり、それぞれ9~15個のアミノ酸からなる「超可変領域」と呼ばれる極端な可変性を有する短い領域によって隔てられている。
【0070】
各VHおよびVLは、3つの超可変領域(「相補的決定領域」、「CDR」)および4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へ、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の順に配列される。
【0071】
超可変領域は、一般に、軽鎖可変領域における24-34(CDR-L1;「L」は軽鎖)、50-56(CDR-L2)および89-97(CDR-L3)並びに重鎖可変領域における約31-35B(CDR-H1;「H」は重鎖、50-65(CDR-H2)および95-102(CDR-H3)由来のアミノ酸残基、Kabat et al., SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991) および/または超可変ループ(例えば、軽鎖可変領域における残基26-32(CDR-L1)、50-52(CDR-L2)および91-96(CDR-L3)、および重鎖可変領域において26-32(CDR-H1)、53-55(CDR-H2)および96-101(CDR-H3)を形成するこれらの残基、Chothia and Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917を包含する。本発明の具体的なCDRを以下に記載する。
【0072】
本明細書全体を通して、Kabatナンバリングシステムは、可変ドメイン中の残基(およそ、軽鎖可変領域の残基1~107および重鎖可変領域の残基1~113)を参照する場合に、一般に使用される(例えば、上記Kabat et al., (1991))。
【0073】
CDRは、抗体の抗原結合部位、より具体的にはエピトープ結合部位の形成に寄与する。1つの抗原が複数のエピトープをもつことがある。
【0074】
免疫グロブリンのIgGサブクラスには、重鎖にいくつかの免疫グロブリンドメインがある。本明細書における「免疫グロブリン(Ig)ドメイン」とは、別個の三次構造を有する免疫グロブリンの領域を意味する。本発明において興味深いのは、定常重鎖(CH)ドメインおよびヒンジドメインを含む重鎖ドメインである。IgG抗体との関連では、IgGアイソタイプはそれぞれ3つのCH領域をもつ。
【0075】
重鎖の別のタイプのIgドメインはヒンジ領域である。本明細書における「ヒンジ」または「ヒンジ領域」または「抗体ヒンジ領域」または「免疫グロブリンヒンジ領域」とは、抗体の第1および第2の定常ドメイン間のアミノ酸を含むフレキシブル(柔軟性)ポリペプチドを意味する。
【0076】
本発明において特に興味深いのは、Fc領域である。本明細書で使用される「Fc」または「Fc領域」または「Fcドメイン」とは、第1の定常領域免疫グロブリンドメインおよび場合によってはヒンジの一部を除く抗体の定常領域を含むポリペプチドを意味する。したがって、Fcは、IgA、IgD、およびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、IgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、およびこれらのドメインに対するフレキシブルヒンジN末端を指す。IgAおよびIgMについては、FcはJ鎖を含むことができる。IgGについては、Fcドメインは、免疫グロブリンドメインCγ2およびCγ3(Cγ2およびCγ3)と、Cγ1(Cγ1)とCγ2(Cγ2)の間の下部ヒンジ領域とを含む。Fc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、そのカルボキシル末端への残基C226またはP230を含むように定義され、ここで、番号付けは、KabatにおけるようなEUインデックスに従う。いくつかの実施形態において、アミノ酸改変は、例えば、1以上のFcγRレセプターまたはFcRnレセプターへの結合を改変するために、Fc領域に対して行われる。
【0077】
いくつかの実施形態において、抗体は完全長である。本明細書における「全長抗体」とは、本明細書に概説されるような1つ以上の修飾を任意に含む可変領域および定常領域を含む、抗体の天然の生物学的形成を構成する構造を意味する。
【0078】
あるいは、抗体は、抗原結合フラグメント、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディー、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書では「抗体模倣物」と呼ばれることもある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体溶融物(「抗体コンジュゲート」と呼ばれることもある)、およびそれぞれの抗原結合フラグメントを含むが、これらに限定されない様々な構造とすることができ、一セットのCDRの使用に依存する構造は、「抗体」の定義内に含まれる。
【0079】
1つの実施形態において、抗体は抗原結合フラグメントである。特異的抗原結合抗体フラグメントとしては、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFabフラグメント、(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント、(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(iv)単一可変領域からなるdAbフラグメント(参照により全体が組み込まれるWard et al., 1989, Nature 341:544-546)、(v)単離されたCDR領域、(vi)F(ab’)2フラグメント、2つの連結されたFabフラグメントを含む2価フラグメント、(vii)単鎖Fv分子(scFv)であって、VHドメインおよびVLドメインが、2つのドメインが結合して抗原結合部位を形成することを可能にするペプチドリンカーによって連結されるもの(参照により全体が組み込まれるBird et al., 1988, Science 242:423-426, Huston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:5879-5883)、(viii)二重特異性一本鎖Fv(参照により全体が組み込まれる国際公開第03/11161号、)および(ix)「ダイアボディー」または「トリアボディー」、遺伝子融合により構築された多価または多重特異的フラグメント(それらの全体において参照により組み込まれるTomlinson et. al., 2000, Methods Enzymol. 326:461-479; WO94/13804; Holliger et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6444-6448)が含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
キメラおよびヒト化抗体
いくつかの実施形態において、抗体は、異なる種、例えば、キメラ抗体および/またはヒト化抗体からの混合物であり得る。すなわち、本発明において、CDRセットは、本明細書中の配列によって具体的に記載されるもの以外のフレームワークおよび定常領域と共に使用することができる。
【0081】
一般に、「キメラ抗体」と「ヒト化抗体」とは、複数の種からの領域を結合する抗体をいい、例えば、「キメラ抗体」は、典型的に、マウス(またはラット、場合によっては)からの可変領域およびヒトからの定常領域を含む。「ヒト化抗体」とは、一般に、ヒト抗体に見られる配列について交換された可変ドメインフレームワーク領域を有する非ヒト抗体をいう。一般に、ヒト化抗体において、CDRを除く抗体全体は、ヒト起源のポリヌクレオチドによってコードされるか、またはそのCDR内を除いてそのような抗体と同一である。CDRは、その一部または全部が非ヒト生物に由来する核酸によってコードされており、ヒト抗体可変領域のベータシートフレームワークに移植されて抗体を作製し、その特異性は生着されたCDRによって決定される。このような抗体の作製は、例えば、WO 92/11018, Jones, 1986, Nature 321:522-525, Verhoeyen et al., 1988, Science 239:1534-1536に記載されており、全て参照により完全に組み込まれている。1つの実施形態において、本発明の抗体は、多重特異性抗体、特に二重特異性抗体であり得、時に「ダイアボディ」とも呼ばれる。これらは、2つ(またはそれ以上)の種々の抗原、または同じ抗原上の異なるエピトープに結合する抗体である。ダイアボディーは、当技術分野で公知の種々の方法(Holliger and Winter, 1993, Current Opinion Biotechnol. 4:446-449、参照により完全に組み込まれる)で製造することができ、例えば、化学的に、またはハイブリッドハイブリドーマから製造することができる。
【0082】
一実施形態においては、抗体はミニボディである。ミニボディーは、CH3ドメインに結合したscFvを含む抗体様タンパクを最小化する。参照により完全に援用する、Hu et al., 1996, Cancer Res. 56:3055-3061。場合によっては、scFvは、Fc領域に結合することができ、ヒンジ領域の一部または全体を含むことができる。ミニボディは、CDRの完全なセットを有していないにもかかわらず、「抗体」の定義内に含まれることに留意されたい。
【0083】
本発明の抗体は、一般に、単離または組換え体である。
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、組換えタンパク、単離タンパクまたは実質的に純粋なタンパクである。「単離された」タンパクは、それが通常その天然状態で会合している物質の少なくともいくつかを伴わず、例えば、所与の試料中の全タンパクの少なくとも約5重量%、または少なくとも約50重量%を構成する。単離されたタンパクは、状況に応じて、全タンパク含量の5~99.9重量%を構成し得ることが理解される。例えば、タンパクは、誘導性プロモーターまたは高発現プロモーターを使用することによって、かなり高い濃度で作製され得、その結果、タンパクは、増加した濃度レベルで作製される。組換えタンパクの場合、その定義は、それが天然に産生されない当該技術分野で公知である広範な生物および/または宿主細胞における抗体の産生を含む。通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製工程によって調製される。「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す。例えば、SLAMF6に特異的に結合する単離された抗体は、SLAMF6以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない。
【0084】
異なる特異性を有する単離されたモノクローナル抗体は、明確に定義された組成物中で組み合わせることができる。したがって、例えば、本発明の抗体は、以下にさらに論じられるように、任意に、および個別に、製剤中に含まれ得るか、または除外され得る。
【0085】
特定の抗原またはエピトープに対する特異的結合は、例えば、少なくとも約10-4M、少なくとも約10-5M、少なくとも約10-6M、少なくとも約10-7M、少なくとも約10-8M、少なくとも約10-9M、あるいは少なくとも約10-10M、少なくとも約10-11M、少なくとも約10-12M以上の抗原またはエピトープについてのKDを有する抗体によって示すことができ、ここで、KDは、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指す。典型的には、抗原に特異的に結合する抗体は、対照分子と比較して抗原またはエピトープについて20-、50-、100-、500-、1000-、5000-、10,000-倍以上低いKDを有するであろう。
【0086】
また、特定の抗原またはエピトープに対する特異的結合は、例えば、KAまたはKaが特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指す場合、対照と比較してエピトープに対して少なくとも20-、50-、100-、500-、1000-、5000-、10,000-倍以上の抗原またはエピトープに対するKAまたはKaを有する抗体によって示すことができる。
【0087】
SLAMF6に対する抗体の結合能力を評価するための標準的なアッセイは、タンパクまたは細胞レベルで行うことができ、例えば、ELISA、ウェスタンブロット、RIA、オクテット(登録商標)、BIAcore(登録商標)アッセイおよびフローサイトメトリー分析を含み、当該分野で公知である。適切なアッセイは、実施例に詳細に記載される。抗体の結合動態(例えば、結合親和性)はまた、Biacore(登録商標)またはOctet(登録商標)システム解析などにより、当技術分野で公知の標準的アッセイにより評価することができる。
【0088】
SLAMF6抗体
本発明は、SLAMF6ポリペプチドまたはその一部に結合するSLAMF6抗体を提供する。SLAMF6アミノ酸配列の実施例は、配列番号11に提供される。主題のSLAMF6抗体は、腫瘍における免疫応答を増強するために、免疫細胞活性化、例えば、T細胞活性化および/またはNK細胞活性化を誘導または増強することができる。これらの抗体は、本明細書では、「抗SLAMF6」抗体、または説明を容易にするために、「SLAMF6抗体」と称される。
【0089】
いくつかの態様において、主題のSLAMF6抗体は、T細胞、特にその表面にSLAMF6を発現するCD4+またはCD8+T細胞と接触すると、サイトカイン放出または増殖を誘導および/または増強することができる。この状況におけるサイトカイン放出またはT細胞増殖は、いくつかの方法で測定することができる。1つの実施形態において、本発明のSLAMF6抗体は、ELISAなどの標準アッセイを使用して、活性化T細胞と接触される。さらなる実施形態において、対象のSLAMF6抗体は、NK細胞活性化および殺傷を誘導および/または増強することができる。
【0090】
一実施形態では、抗体は、以下のCDRを含む抗体であり;加えて、以下で論じるように、これらのCDR配列はまた、以前に記載されたように、限られた数のアミノ酸変異体を含有することができる:
【表2】
【0091】
いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号5、15、7、16、17および10に提供される少なくとも1つ以上のCDR配列のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号5、15、7、16、17および10で提供されるCDR配列の1つまたは複数のアミノ酸配列と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0092】
本明細書には、本発明のCDRセットを含む可変重鎖および軽鎖、ならびに全長重鎖および軽鎖(例えば、定常領域も含む)も開示される。当業者には理解されるように、本発明のCDRセットは、マウス、ヒト化またはヒト定常領域(フレームワーク領域を含む)に組み込むことができる。本発明の態様は、本明細書に開示される重鎖可変領域配列(配列番号13)および軽鎖可変領域配列(配列番号14)と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載される本発明のSLAMF6モノクローナル抗体(すなわち、本明細書に記載される本発明のモノクローナル抗体とSLAMF6タンパクと結合するためにクロス競合する能力を有する抗体)として、ヒトSLAMF6上の同じエピトープに結合するか、またはそれとクロス競合する抗体を提供する。交差競合すると考えられる抗体については、参照抗体のブロック結合を必ずしも完全に遮断するわけではないことが理解されるであろう。いくつかの実施形態において、参照抗体の結合は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、95、97、98または99%減少する。
【0094】
抗体修飾
本発明はさらに、「抗体誘導体」または「抗体類似体」と呼ばれることもある変異体抗体を提供する。すなわち、CDRにおけるアミノ酸修飾(親和性成熟)、Fc領域におけるアミノ酸修飾、グリコシル化変異体、および他のタイプの共有結合修飾(例えば、薬物結合体の結合などのための)を含むが、これらに限定されない、本発明の抗体に対して行うことができる多くの修飾がある。
【0095】
「変異体」とは、少なくとも1つのアミノ酸の改変により親ポリペプチドの配列とは異なるポリペプチド配列を意味する。いくつかの実施形態において、親ポリペプチドは、配列番号1もしくは2、13もしくは14に列挙される全長可変重鎖または軽鎖のいずれかであるか、または配列番号5~10、15、16もしくは17のいずれかに開示されるCDR配列の1つもしくは複数である。いくつかの実施形態において、アミノ酸の改変は、置換、挿入および/または欠失を含むことができ、前者が多くの場合に好ましい。いくつかの実施形態において、置換は、保存的置換であり得る。
【0096】
一般に、変異体は、本明細書中に記載されるように、抗体の機能が依然として存在する限り、任意の数の改変を含むことができる。例えば、抗体はヒトSLAMF6に特異的に結合するはずである。同様に、アミノ酸変異体がFc領域内で生成される場合、例えば、変異体抗体は、抗体の特定用途または表示のために必要な受容体結合機能を維持すべきである。
【0097】
主題の抗体の「変異体」は、本明細書に記載されるように、列挙されたCDR配列の1つまたは複数、1つまたは複数のフレームワーク領域、または抗体の1つまたは複数の定常領域(例えば、Fc領域)のいずれかにおいて、アミノ酸変異を有するようにすることができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、親配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸の改変が一般的に利用され、その目的は、最小数の改変で機能を改変することであることが多い。いくつかの実施形態において、1~5個(1、2、3、4または5個)の修飾(例えば、個々のアミノ酸置換、挿入および/または欠失)があり、1~2、1~3および1~4からも多くの実施形態において使用が見出される。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の抗体のCDR配列の1つ以上は、1つ以上、例えば、1、2、3、4または5個のアミノ酸改変、好ましくは1-4、1-3、1または2個の改変を個々に含み得る。一般に、4、5、6、7、8、9、または10個以下の変化は、CDRのセット内で行われる。
【0099】
アミノ酸修飾の数は、例えば、野生型または遺伝子操作されたタンパクのFc領域に1~5個の修飾、ならびに例えばFv領域に1~5個の修飾を有することが望ましいであろうことに留意されたい。変異体ポリペプチド配列は、好ましくは、親配列(例えば、可変領域配列、定常領域配列、および/または例えば抗体1B3のCDRおよび/または重鎖および軽鎖配列)に対して少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するであろう。
【0100】
本明細書中の「アミノ酸置換」または「置換」とは、親ポリペプチド配列中の特定の位置のアミノ酸を別のアミノ酸と置換することを意味し、本明細書中で使用される「アミノ酸挿入」または「挿入」とは、親ポリペプチド配列中の特定の位置のアミノ酸を付加することを意味する。本明細書中で使用される「アミノ酸欠失」または「欠失」とは、親ポリペプチド配列中の特定の位置のアミノ酸を除去することを意味する。
【0101】
本明細書で用いられる「親ポリペプチド」、「親タンパク」、「前駆体ポリペプチド」、または「前駆体タンパク」とは、変異体を生成するためにその後修飾される未修飾ポリペプチドを意味する。一般に、本明細書で用いられる親ポリペプチドは、1B3ポリペプチド、例えば1B3 VH鎖もしくはVlまたはCDR配列を指すこととしてもよい。したがって、本明細書で用いられる場合、「親抗体」とは、変異体抗体を生成するために修飾される抗体を意味する。
【0102】
本明細書における「野生型」または「WT」または「ナイーブ(天然型)」とは、対立遺伝子変異を含む、天然に見出されるアミノ酸配列または核酸配列を意味する。WTタンパク、ポリペプチド、抗体、免疫グロブリン、IgGなどは、意図的に修飾されていないアミノ酸配列または核酸配列を有する。
【0103】
本明細書における「変異型(変異体)Fc領域」とは、少なくとも1つのアミノ酸の改変により野生型Fc配列とは異なるFc配列を意味する。Fc変異体は、Fcポリペプチド自体、Fc変異体ポリペプチドを含む組成物、またはアミノ酸配列を意味し得る。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明の抗SLAMF6抗体は、変異型Fcドメインから構成される。当技術分野で知られているように、抗体のFc領域は、多数のFcレセプターおよびリガンドと相互作用し、エフェクター機能と呼ばれる重要な機能能力のアレイを付与する。適当な修飾は、1つ以上の位置で、特にFcレセプターへの結合を減少または沈黙(サイレンス)する特定のアミノ酸置換に対して行うことができる。
【0105】
上記に概説した変更に加えて、他の変更を加えることができる。例えば、分子は、VHおよびVLドメインを連結するジスルフィド架橋の取り込みによって安定化され得る(参照により完全に組み込まれる、Reiter et al., 1996, Nature Biotech. 14:1239-1245)。
【0106】
さらに、システインでの修飾は、以下にさらに記載される抗体-薬物結合体(ADC)適用において特に有用である。いくつかの態様において、抗体の定常領域は、薬物部分のより特異的かつ制御された配置を可能にするように、特に「チオール反応性」である1つ以上のシステインを含有するように操作することができる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,521,541号を参照されたい。
【0107】
さらに、以下に概説するように、抗体の様々な共有結合修飾がなされ得る。
抗体の共有結合的修飾は、本発明の範囲内に含まれ、一般的には翻訳後に行われるが、必ずしも行われるわけではない。例えば、抗体の特定のアミノ酸残基を、選択された側鎖またはN-またはC-末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることによって、抗体のいくつかの種類の共有結合修飾が分子に導入される。
【0108】
加えて、当業者には理解されるように、標識(蛍光、酵素、磁気、放射性などを含む)は、抗体(ならびに本発明の他の組成物)にすべて加えることができる。
【0109】
二重特異的分子
別の態様では、本発明は、本発明の抗SLAMF6抗体またはそのフラグメントを含む二重特異性および多重特異性分子を含む。本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、別の機能的分子、例えば別のペプチドまたはタンパク(例えば、受容体に対する別の抗体またはリガンド)に誘導体化または連結して、2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を生成することができる。いくつかの実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも2つの機能的分子、例えば、他のペプチドまたはタンパク(例えば、受容体に対する他の抗体またはリガンド)に誘導体化または連結して、少なくとも3つの異なる結合部位または標的分子に結合する多特異的分子を生成することができる。本発明の二重特異性または多重特異性分子を作製するために、本発明の抗体は、機能的に(例えば、化学的カップリング、遺伝的溶融、非共有結合またはその他により)、二重特異性または多重特異性分子が生じるように、別の抗体、抗体フラグメント、ペプチドまたは結合模倣物などの1つまたは複数の他の結合分子に連結することができる。
【0110】
したがって、本発明は、第1の標的エピトープ(すなわち、SLAMF6)のための少なくとも1つの第1の結合ドメインと、第2の標的エピトープのための第2の結合ドメインとを含む二重特異性分子を含む。第2の標的エピトープは、第1の結合特異性によって結合されたものと同じ標的タンパク上に存在してもよく、または第2の標的エピトープは、第1の結合特異性によって結合されたものとは異なる標的タンパク上に存在してもよい。第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープ(すなわち、SLAMF6)と同じ細胞上に存在してもよく、または第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープを示す細胞によって示されない標的上に存在してもよい。本明細書で使用される場合、用語「結合特異性」は、少なくとも1つの抗体可変ドメインを含む部分を指す。
【0111】
本発明の別の実施形態では、第2の標的エピトープは腫瘍細胞上に存在する。したがって、本発明の態様は、SLAMF6発現エフェクター細胞(例えば、SLAMF6発現細胞傷害性T細胞)および第2の標的エピトープを発現する腫瘍細胞の両方に結合することができる二重特異性分子を含む。
【0112】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性抗体は、合計2つまたは3つの抗体可変ドメインを有することができ、ここで、二重特異性抗体の第1の部分は、ヒト免疫エフェクター細胞上に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することによってヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員することができ、エフェクター抗原はSLAMF6であり、第1の部分は、少なくとも1つの抗体可変ドメインからなり、二重特異性抗体の第2の部分は、エフェクター抗原以外の標的抗原に特異的に結合することができ、標的抗原は、ヒト免疫エフェクター細胞以外の標的細胞上に位置し、第2の部分は、少なくとも1つの抗体可変ドメインを含む。
【0113】
結合タンパクが多特異的である本発明の実施形態において、分子は、抗腫瘍、結合特異性および抗SLAMF6結合特異性に加えて、第3の結合特異性をさらに含むことができる。1つの実施形態において、第3の結合特異性は、抗増強因子(EF)部分、例えば、細胞傷害活性に関与する表面タンパクに結合し、それによって標的細胞に対する免疫応答を増加させる分子である。「抗増強因子部分」は、抗体、機能性抗体フラグメント、所定の分子、例えば抗原または受容体に結合し、それによって標的細胞抗原に対する結合決定基の効果の増強をもたらすリガンドであり得る。「抗増強因子部分」は、標的細胞抗原に結合し得る。あるいは、抗増強因子部分は、第1および第2の結合特異性が結合する実体(エンティティ)とは異なる実体に結合することができる。例えば、抗増強因子部分は、細胞傷害性T細胞(例えば、標的細胞に対する増加した免疫応答をもたらすCD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40、ICAM-1または他の免疫細胞を介して)と結合することができる。
【0114】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性タンパクは、結合特異性として、少なくとも1つの抗体、またはその抗原結合フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、FVTCR、Fd、dAbもしくは一本鎖Fvを含む)を含む。抗体はまた、軽鎖もしくは重鎖二量体、またはその任意の最小フラグメント、例えば、米国特許第4,946,778号に記載されているようなFvもしくは単鎖構築物であってもよく、その含有量は参照により明示的に組み込まれる。
【0115】
いくつかの実施形態において、本発明の二重特異性分子に用いることができる抗体は、ラット、マウス、ヒト、キメラまたはヒト化モノクローナル抗体である。
【0116】
二重特異性分子の特異的標的への結合は、例えば、酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、成長抑制)、またはウェスタンブロットアッセイによって確認することができる。これらのアッセイの各々は、一般に、目的の複合体に特異的な標識された試薬(例えば、抗体)を用いることによって、目的のタンパク-抗体複合体の存在を検出する。
【0117】
本発明の1つの実施形態において、二重特異性抗体は、4つの抗原結合領域を含有する四価抗体である。好ましい態様において、抗体は、第1の抗原を標的とする2つのFabドメインを含み、それぞれが重鎖および軽鎖Fab領域からなる。これらは天然IgGのFabsと同じ立体配座で配列されている。抗体はさらに、第2の抗原を標的とする2つのキメラFabドメインを含み、これらは、それぞれが可変重鎖ドメインを含むキメラ「重鎖」鎖を含む2つのキメラポリペプチドドメインからなり、これは、そのC末端を介して、T細胞受容体(TCR)のアルファ鎖またはベータ鎖の定常領域のN末端、および可変軽鎖ドメインを含むキメラ「軽」鎖に連結され、これは、そのC末端を介してTCRのベータ鎖またはアルファ鎖の定常領域のN末端にそれぞれ連結されている。
キメラの「重鎖」および「軽鎖」は、キメラFabドメインに配置され、これらは、キメラ「重鎖」鎖のTCRのアルファ鎖またはベータ鎖の定常領域のC末端を、天然Fabドメインの重鎖の可変領域のN末端に結合することによって天然Fabドメインに連結されている。したがって、全体的なシンメトリー構造は、2つの異なる抗原の各々を二価の様式で標的とする二重特異性抗体を生成し、したがって、第1の抗原を標的とする天然のFabドメインおよび第2の抗原を標的とするキメラFabドメインは、そのような四価抗体の両アームに存在する。
【0118】
別の実施形態では、キメラFabドメインはFcドメインの近位に位置し、その結果、キメラ「重」鎖を含むTCRの定常領域のα鎖またはβ鎖の定常領域のC末端が天然ヒンジのN末端に結合し、天然FabドメインがFcドメインの先端に位置し、その結果、天然Fabドメインを含む重鎖のCH1ドメインのC末端がキメラFabドメインを含む可変重鎖のN末端に結合する。
【0119】
別の実施形態では、2つの異なる抗体アームから構成される非対称三価フォーマットが使用され、その結果、1つのアームが単一のFabドメイン(天然またはキメラ)を有し、二重特異性抗体の第2のアームが上記のようにFabドメイン(天然およびキメラ)の両方を有する。2つの異なるアームのヘテロ二量体化は、当技術分野(例えば、ノブ-イントゥ-ホール(knobs-into-wholes)、静電ステアリングなど)に記載されているように、Fcドメインにおける抗体工学を介して可能にされる。
【0120】
さらに別の実施形態では、2つの異なる抗体アームから構成される非対称二価フォーマットを使用して、一方のアームが単一のFabドメイン、天然またはキメラを有し、他方のアームがそれぞれ単一のFab結合ドメイン、キメラまたは天然を有するようにしてもよい。2つの異なるアームのヘテロ二量体化は、当技術分野で十分に記載されているFcドメインにおける抗体工学(例えば、ノブ-イントゥ-ホール(knobs-into-wholes)、静電ステアリングなど)を介して可能である。
【0121】
グリコシル化
共有結合による修飾のもう一つのタイプは、グリコシル化の変化である。例えば、アグリコシル化された抗体(すなわち、グリコシル化を欠く抗体)を作製することができる。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増大させるように変化させることができる。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1以上の部位を変化させることによって達成することができる。例えば、1つ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の除去をもたらし、それによってその部位でのグリコシル化を除去する1つ以上のアミノ酸置換を行うことができる。このようなグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増大させる可能性がある。このようなアプローチは、Coらにより米国特許第5,714,350号および第6,350,861号にさらに詳細に記載されており、位置297でアスパラギンを除去することにより達成することができる。
【0122】
抗体の別のタイプの共有結合修飾は、例えば、すべて参照により完全に組み込まれる、NektarTherapeuticsの2005-2006PEGカタログ(Nektar Webサイトで入手可能)、米国特許第4,640,835号、第4,496,689号、第4,301,144号、第4,670,417号、第4,791,192号、または第4,179,337号に記載されている方法で、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンなどの様々なポリオールを含むがこれらに限定されない様々な非タンパク質性ポリマーに抗体を結合することを含む。さらに、当技術分野で公知であるように、アミノ酸置換は、PEGなどのポリマーの添加を容易にするために、抗体内の様々な位置で行われ得る。例えば、参照により全体的に組み込まれる、米国特許出願公開第2005/0114037号を参照のこと。
【0123】
さらなる実施形態において、例えば、診断または検出目的のための本発明の抗体の使用において、抗体は、標識を含み得る。本明細書において「標識された」とは、化合物が、6th Edition of the Molecular Probes Handbook by Richard P. Hauglandに記載されているような化合物の検出を可能にするために結合された少なくとも1つの部分、元素、同位体または化学化合物を有することを意味する。
【0124】
本発明の抗体の製造方法
本発明はさらに、開示された抗SLAMF6抗体を産生するための方法を提供する。これらの方法は、本発明の抗体をコードする単離核酸を含有する宿主細胞を培養することを包含する。当業者には理解されるように、これは、抗体の性質に応じて、様々な方法で行うことができる。いくつかの実施形態において、本発明の抗体が全長の伝統的抗体である場合、例えば、宿主細胞は、抗体が産生され、単離され得るような条件下で培養され得る、重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードする核酸を含有する。
【0125】
本発明の抗体の可変重鎖および軽鎖は、本明細書に開示され(タンパクおよび核酸配列の両方);当技術分野で理解されるように、これらを容易に増強して、完全長の重鎖および軽鎖を生成することができる。すなわち、本明細書に概説されるように、VHおよびVLセグメントをコードするDNAフラグメントを提供した場合、これらのDNAフラグメントは、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子に、Fabフラグメント遺伝子に、またはscFv遺伝子に変換するために、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作することができる。これらの操作において、VLまたはVHををコードする核酸を含有し、するDNAフラグメントは、抗体定常領域または柔軟なリンカーなどの別のタンパクをコードする別のDNAフラグメントに動作可能に(作動的に)連結される。この文脈で使用される「動作可能に連結された」という用語は、2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように、2つのDNAフラグメントが連結されることを意味することを意図している。
【0126】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを重鎖定常領域をコードする別のDNA分子(CH1、CH2およびCH3)に動作可能に連結することによって、全長重鎖遺伝子に変換することができる。ラット重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, US Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅で得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であり得る。1つの好ましい態様において、重鎖定常領域は、IgG1またはIgG4定常領域である。Fabフラグメント重鎖遺伝子の場合、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子と動作可能に連結することができる。
【0127】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを軽鎖定常領域をコードする別のDNA分子、CLに動作可能に連結することによって、完全長軽鎖遺伝子(およびFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ラット軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, US Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅により得ることができる。1つの好ましい態様において、軽鎖定常領域はカッパまたはラムダ定常領域である。
【0128】
scFv抗体フラグメントをコードするポリヌクレオチド配列を作製するために、VH-およびVLをコードするDNAフラグメントは、VLおよびVH配列が、柔軟性リンカーによって連結されたVLおよびVH領域を有する、連続する一本鎖タンパクとして発現され得るように、柔軟性リンカーをコードする別のフラグメント、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする別のフラグメントに動作可能に連結される(例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426; Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-554)。
【0129】
本発明の態様は、本発明の抗体をコードする核酸を含む。そのようなポリヌクレオチドは、重鎖および軽鎖の各々の可変領域および定常領域の両方をコードするが、本明細書に記載の組成物に従って本発明によって他の組合せも企図される。本発明の態様は、開示されたポリヌクレオチドに由来するオリゴヌクレオチドフラグメント、およびこれらのポリヌクレオチドに相補的な核酸配列を含む。
【0130】
本発明の実施形態によるポリヌクレオチドは、RNA、DNA、cDNA、ゲノムDNA、核酸アナログ、および合成DNAの形態であってもよいし、またはこれらを含むこととしてもよい。いくつかの実施形態において、DNA分子は、二本鎖または一本鎖であってもよく、一本鎖の場合、コード(センス)鎖または非コード(アンチセンス)鎖であってもよい。ポリペプチドをコードするコード配列は、本明細書に提供されるコード配列と同一であってもよく、または、遺伝コードの冗長性または縮重の結果として、本明細書に提供されるDNAと同一のポリペプチドをコードする異なるコード配列であってもよい。
【0131】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体をコードする核酸は、染色体外であるか、またはそれが導入される宿主細胞のゲノムに組み込まれるように設計され得る発現ベクターに組み込まれる。発現ベクターは、任意の数の適切な調節配列(転写および翻訳制御配列、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、複製起点などを含むが、これらに限定されない)、または他の成分(選択遺伝子など)を含有することができ、これらの全ては当技術分野で周知であるように作動可能に連結されている。場合によっては、2つの核酸が使用され、それぞれが異なる発現ベクター(例えば、第1の発現ベクター中の重鎖、第2の発現ベクター中の軽鎖)に入れられるか、あるいはそれらを同じ発現ベクター中に入れることができる。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、宿主細胞の選択、所望のタンパクの発現レベルなどの因子に依存し得ることは、当業者には理解されよう。
【0132】
一般に、核酸および/または発現は、選択された宿主細胞に適宜任意の方法(例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、感染)を用いて組換え宿主細胞を作製するために適宜宿主細胞に導入することができ、その結果、核酸分子は、1以上の発現制御要素(例えば、ベクターにおいて、細胞内の処理によって作製された構築物において、宿主細胞ゲノムに組み込まれる)に作動可能に連結される。得られた組換え宿主細胞は、発現に適した条件下(例えば、誘導物質の存在で、適切な非ヒト動物中で、適切な塩、成長因子、抗生物質、栄養的サプリメントなどを添加した適切な培養培地中で)で維持することができ、それによりコードされたポリペプチドが産生される。いくつかの実施形態において、重鎖および軽鎖は、同じ宿主細胞において産生される。いくつかの実施形態において、重鎖は、1つの宿主細胞において産生され、軽鎖は、別の宿主細胞において産生される。
【0133】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当技術分野で公知であり、American Type Culture Collection(ATCC)、Manassas、VAから入手可能な多くの不死化細胞株を含み、これには、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HEK293細胞、FS293、Expi293、NSO細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHepG2)、および多くの他の細胞株が含まれるが、これらに限定されない。細菌、酵母、昆虫、および植物を含むがこれらに限定されない非哺乳動物細胞も、組換え抗体を発現するために使用することができる。いくつかの実施形態において、抗体は、ウシまたはニワトリのようなトランスジェニック動物において産生され得る。
【0134】
抗体分子生物学、発現、精製、およびスクリーニングのための一般的な方法は、例えば、米国特許第4,816,567号、第4,816,397号、第6,331,415号および第7,923,221号、ならびに、Antibody Engineering, edited by Kontermann & Dubel, Springer, Heidelberg, 2001 and 2010 Hayhurst & Georgiou, 2001, Curr Opin Chem Biol 5:683-689; Maynard & Georgiou, 2000, Annu Rev Biomed Eng 2:339-76; and Morrison, S. (1985) Science 229:1202を参照のこと。
【0135】
医薬組成物
本発明の態様は、薬学的に許容される担体と共に製剤化された、本発明の1つ以上(またはその組み合わせ)の抗体、またはその抗原結合フラグメントを含有する組成物、例えば、医薬組成物を含む。そのような組成物は、本発明の抗体または二重特異性分子の1つまたは組み合わせ(例えば、2つ以上の異なる)を含むことができる。例えば、本発明の医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合するか、または相補的活性を有する抗体の組合せを含むことができる。
【0136】
本発明の医薬組成物は、併用療法、すなわち、他の薬剤と組み合わせて投与することもできる。例えば、併用療法は、少なくとも1つの他の抗腫瘍剤、または抗炎症性もしくは免疫抑制剤と組み合わせた本発明の抗体を含むことができる。併用療法において使用され得る治療薬の例は、本発明の抗体の使用に関するセクションにおいて以下により詳細に記載される。
【0137】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」は、生理学的に適合する任意のおよびすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および防黴剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適している。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、抗体または抗体フラグメントは、化合物を不活性化し得る酸および他の自然状態の動作から化合物を保護するために、物質中にコーティングされ得る。
【0138】
本発明の薬学的化合物は、1種以上の薬学的に許容される塩を含むことができる。「薬学的に許容可能な塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、いかなる望ましくない毒性学的効果も付与しない塩を指す(例えば、Berge, S.M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19)。本発明の薬学的組成物はまた、薬学的に受容可能な抗酸化剤を含み得る。本発明の医薬組成物に使用され得る適切な水性および非水性担体の実施例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、植物油(オリーブ油など)、ならびに注射可能な有機エステル(オレイン酸エチルなど)が挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング物質を使用することにより、分散剤の場合は必要な粒子サイズを維持することにより、および界面活性剤を使用することにより維持される。
【0139】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントも含んでよい。微生物の存在の予防は、上記の滅菌手順と、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの含有との両方によって確保され得る。砂糖、塩化ナトリウムおよび類似物などの等張剤を組成物中に含むことも望ましい。さらに、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる薬剤を含有させることによって、注射可能な医薬形態の長期吸収がもたらされ得る。
【0140】
薬学的に許容可能な担体には、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質のための上記媒体および薬剤の使用は、当技術分野において公知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と相溶しない場合を除き、本発明の医薬組成物におけるその使用が企図される。補足的な活性化合物も組成物に組み込むことができる。
【0141】
投与計画は、最適な所望の反応(例えば、治療反応)を提供するように調節される。例えば、ボーラスを単回投与しても、時間をかけ数回に分けて投与してもよいし、あるいは治療状況の緊急性によって示されるように、用量は比例して減少または増加させてもよい。投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、投薬単位形態で非経口組成物を処方することは特に有利である。本明細書で使用される場合、「投与単位形態」は、治療される対象のための単一の投与量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の投与単位形態についての説明は、(a)活性化合物の特有の特徴および達成されるべき特定の治療効果、および(b)個人の感受性の治療のためにそのような活性化合物を配合する技術に固有の制限によって方向づけられ、それに直接依存する。
【0142】
抗体の投与のためには、投与量は、宿主体重の約0.0001~100mg/kg、約0.001~50mg/kg、約0.001~10mg/kg、約0.01~10mg/kg、および、より通常には、0.01~5mg/kgの範囲であり得る。例えば、投与量は、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、4mg/kg体重、5mg/kg体重、7.5mg/kg体重もしくは10mg/kg体重、または0.1~5mg/kgの範囲内または1~10mg/kgの範囲内であり得る。治療レジメンの実施例としては、毎日、隔日、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月に1回、または3~6ヶ月に1回の投与がある。本発明の抗SLAMF6抗体のための好ましい投薬計画は、静脈内投与を介して1mg/kg体重、3mg/kg、5mg/kgまたは10mg/kg体重を含み、抗体は、以下の投薬計画の1つを用いて与えられる:(i)6つの投薬のために毎週、その後は毎月;(ii)毎週;(iii)3mg/kg体重を1回、続いて毎週1mg/kg体重。
【0143】
いくつかの方法では、異なる結合特異性を有する2つ以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、その場合、投与される各抗体の用量は、示される範囲内に収まる。いくつかの実施形態において、抗体は、複数回投与される。単回投与の間隔は、例えば、週単位、月単位、3ヶ月ごと、または年単位とすることができる。間隔は、患者の標的抗原に対する抗体の血中濃度を測定することによって示されるように、不規則であってもよい。いくつかの実施形態では、投与量は、約1~1000μg/mlのプラズマ抗体濃度を達成するように調整され、いくつかの方法では、約25~300μg/mlである。
【0144】
いくつかの実施形態において、抗体は、徐放性製剤として投与することができ、その場合、それほど頻繁ではない投与が必要である。投与量および頻度は、患者における抗体の半減期によって異なる。一般に、ヒト抗体は最も長い半減期を示し、次いでヒト化抗体、キメラ抗体、および非ヒト抗体が続く。投与量および投与頻度は、処理が予防的であるか治療的であるかによって異なり得る。予防的適用では、比較的低用量が長期間にわたって比較的頻繁ではない間隔で投与される。患者によっては、生涯にわたって処理を受け続ける場合もある。治療的適用では、疾患の進行が減少または終了するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い用量が時に必要とされる。その後、患者は予防レジメンを投与され得る。
【0145】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に毒性であることなく、特定の患者、組成物、および投与様式について所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るように変更され得る。選択される投与量レベルは、使用される本発明の特定の組成物、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄速度、治療の期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康および既往歴、ならびに医学分野で周知の同様の因子を含む様々な薬物動態学的因子に依存する。
【0146】
本発明の抗体の「治療的に有効な投与量」は、好ましくは、疾患症状の重症度の減少、疾患無症状期間の頻度および期間の増加、または疾患苦痛による機能障害もしくは身体障害の予防をもたらす。例えば、「治療的に有効な投与量」は、好ましくは、未治療の対象と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約40%、少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、少なくとも約70%、さらにより好ましくは少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%細胞成長または腫瘍増殖を阻害する。腫瘍増殖を阻害する化合物の能力は、ヒト腫瘍における有効性を予測する動物モデル系において評価することができる。あるいは、組成物のこの特性は、細胞増殖を阻害する化合物の能力を試験することによって評価することができ、このような阻害は、当業者に公知のアッセイによってインビトロで測定することができる。治療的に有効な量の治療用化合物は、対象における腫瘍サイズを減少させるか、または他の方法で症状を改善することができる。当業者は、対象の大きさ、対象の症状の重症度、および選択された特定の組成物または投与経路のような因子に基づいて、そのような量を決定することができる。
【0147】
本発明の組成物は、当技術分野で公知の様々な方法の1つ以上を使用して、1つ以上の投与経路を介して投与することができる。当業者には理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に応じて変化する。本発明の抗体のための好ましい投与経路は、例えば注射または注入による静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または他の非経口投与経路を含む。本明細書中で使用される「非経口投与」という表現は、通常注射による、経腸および局所投与以外の投与様式を意味し、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管内、皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および注入を含む。
【0148】
あるいは、本発明の抗体は、局所、表皮または粘膜経路のような非経口経路を介して、例えば、鼻腔内、経口、膣内、直腸内、舌下または局所的に投与することができる。
【0149】
活性化合物は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤などの、化合物を急速放出から保護する担体を用いて調製することができる。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような、生分解性の、生体適合性ポリマーを使用することができる。上記製剤の調製のための多くの方法は、特許化されているか、または当業者に一般的に知られている(Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems (1978) J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., N.Yを参照)。
【0150】
特定の実施形態において、本発明のモノクローナル抗体は、インビボでの適切な分布を確実にするように製剤化することができる。例えば、血液脳関門(BBB)は多くの親水性の高い化合物を排除する。本発明の治療用化合物がBBBを通過することを確実にするために(所望であれば)、例えばリポソーム中に製剤化することができる。リポソームを製造する方法については、例えば、米国特許第4,522,811号;第5,374,548号;および第5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞または器官に選択的に輸送され、したがって標的化薬物送達を増強する1以上の部分を含み得る(例えば、V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685参照)。例示的な標的部分には、葉酸またはビオチン(例えば、米国特許第5,416,016号参照);マンノシド(Umezawa et al. (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180);サーファクタントタンパクAレセプター(Briscoe et al. (1995) Am. J. Physiol. 1233:134); p120 (Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090);K. Keinanen;M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123; J.J. Killion; I.J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273も参照のこと。
【0151】
用途と方法
本発明の抗体、抗体組成物および方法は、免疫介在性障害の診断および治療を含む多数のインビトロおよびインビボの診断および治療的有用性を有する。
【0152】
いくつかの態様において、これらの分子は、様々な障害を治療、予防および/または診断するために、培養、インビトロまたはエクスビボで細胞に、またはヒト対象に、例えばインビボで投与することができる。本明細書で使用される場合、用語「対象」は、ヒトおよび非ヒト動物を含むことを意図する。非ヒト動物には、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、および非哺乳動物が含まれる。好ましい対象には、ヒト患者が含まれる。本発明の抗体を別の薬剤と一緒に投与する場合、2つは、順序を決めてまたは同時に投与することができる。
【0153】
SLAMF6に対する本発明の抗体の特異的結合を考えると、本発明の抗体は、免疫細胞の表面上のSLAMF6発現を特異的に検出するために使用することができ、さらに、免疫親和性精製を介してSLAMF6を精製するために使用することができる。
【0154】
さらに、免疫細胞上のSLAMF6の発現を考慮すると、本発明の抗体、抗体組成物および方法は、腫瘍形成性疾患、例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(扁平上皮癌および腺癌を含む)、メラノーマを含む皮膚癌、乳癌(TNBCを含む)、結腸直腸癌、胃(gastric)癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、腎臓癌、肝細胞癌を含む肝臓癌、膵臓癌、頭頸部癌、鼻咽頭癌、食道癌、膀胱癌および他の尿路上皮癌、胃(stomach)癌、神経膠腫、神経膠芽腫、精巣、甲状腺、骨、胆嚢および胆管、子宮、副腎癌、肉腫、GIST、神経内分泌腫瘍、および血液悪性腫瘍などの腫瘍細胞の存在を特徴とする疾患を有する対象を治療するために使用することができる。
【0155】
1つの実施形態において、本発明の抗体は、癌、例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(扁平上皮癌および腺癌を含む)、メラノーマを含む皮膚癌、乳癌(TNBCを含む)、結腸直腸癌、胃(gastric)癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、腎臓癌、肝細胞癌を含む肝臓癌、膵臓癌、頭頸部癌、鼻咽頭癌、食道癌、膀胱癌および他の尿路上皮癌、胃(stomach)癌、神経膠腫、神経膠芽腫、精巣、甲状腺、骨、胆嚢および胆管、子宮、副腎癌、肉腫、GIST、神経内分泌腫瘍、および血液悪性腫瘍の治療に使用される。
【0156】
さらなる実施態様において、本発明の抗体は、例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(扁平上皮癌および腺癌を含む)、メラノーマを含む皮膚癌、乳癌(TNBCを含む)、結腸直腸癌、胃(gastric)癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、腎臓癌、肝細胞癌を含む肝臓癌、膵臓癌、頭頸部癌、鼻咽頭癌、食道癌、膀胱癌および他の尿路上皮癌、胃(stomach)癌、神経膠腫、神経膠芽腫、精巣、甲状腺、骨、胆嚢および胆管、子宮、副腎癌、肉腫、GIST、神経内分泌腫瘍、および血液悪性腫瘍のような癌の治療のための医薬の製造に使用される。
【0157】
1つの実施形態において、本発明の抗体(例えば、モノクローナル抗体、抗体フラグメント、Nanobody(商標)、多重特異性および二重特異性分子および組成物など)は、SLAMF6の量(レベル)、またはその膜表面にSLAMF6を含有する免疫細胞の量を検出するために使用することができ、これらの量は、その後、診断のために特定の疾患症状と関連させることができる。
【0158】
別の実施形態では、本発明の抗体(例えば、モノクローナル抗体、多重特異性および二重特異性分子および組成物)は、最初に、インビトロでの治療的または診断的使用に関連する結合活性について試験することができる。例えば、本発明の組成物は、以下の実施例に記載されるフローサイトメトリーアッセイを使用して試験され得る。
【0159】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体(例えば、モノクローナル抗体、多重特異性および二重特異性分子および組成物)は、疾患の治療および診断においてさらなる有用性を有する。例えば、モノクローナル抗体、多重特異性または二重特異性分子は、以下の生物学的活性の1つ以上をインビボまたはインビトロで誘発するために使用することができる:免疫細胞の活性化を誘発および/または増強すること;SLAMF6を発現するヒトエフェクター細胞の存在下で細胞のファゴサイトーシスまたはADCCを媒介すること、またはSLAMF6リガンドのSLAMF6への結合を遮断すること。
【0160】
特定の実施形態では、抗体(例えば、モノクローナル抗体、多重特異性および二重特異性分子および組成物)は、様々な疾患を治療、予防または診断するためにインビボで使用される。関連する疾患の実施例としては、とりわけ、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(扁平上皮癌および腺癌を含む)、メラノーマを含む皮膚癌、乳癌(TNBCを含む)、結腸直腸癌、胃(gastric)癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、腎臓癌、肝細胞癌を含む肝臓癌、膵臓癌、頭頸部癌、鼻咽頭癌、食道癌、膀胱癌および他の尿路上皮癌、胃(stomach)癌、神経膠腫、神経膠芽腫、精巣、甲状腺、骨、胆嚢および胆管、子宮、副腎癌、肉腫、GIST、神経内分泌腫瘍、および血液悪性腫瘍に示されるヒトの癌組織が挙げられる。
【0161】
本発明の抗体組成物(例えば、モノクローナル抗体、多重特異性および二重特異性分子および組成物)をインビボおよびインビトロで投与する適切な経路は、当業者に周知であり、当業者によって選択することができる。例えば、抗体組成物は、注射(例えば、静脈内または皮下)によって投与することができる。使用される分子の適切な投与量は、対象の年齢および重量、ならびに抗体組成物の濃度および/または製剤に依存する。
【0162】
前述のように、本発明の抗体は、1つ以上の追加の治療剤、例えば、免疫賦活剤、細胞毒性剤、放射性毒性剤または免疫抑制剤と同時投与することができる。抗体は、(免疫複合体として)作用物質に連結され得るか、または作用物質から分離して投与され得る。後者の場合(別々の投与)、抗体は、薬剤の前、後、または薬剤と同時に投与することができ、または他の既知の治療、例えば、抗癌療法、例えば放射線療法と同時投与することができる。そのような治療薬剤には、とりわけ、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチンブレオマイシン硫酸塩、カルムスチン、クロラムブシル、およびシクロフォスファミドヒドロキシ尿素のような抗腫瘍薬が含まれ、これらは、それ自体が、患児に対して毒性または亜毒性である水準でのみ効果的である。本発明の抗体との同時投与に適した他の薬剤には、癌の治療に使用される他の薬剤、例えばアバスチン(登録商標)、5FUおよびゲムシタビンが含まれる。本発明の抗SLAMF6抗体またはその抗原結合フラグメントと化学療法剤との同時投与は、ヒト腫瘍細胞に対して細胞毒性効果をもたらす異なるメカニズムを介して作用する2つの抗癌剤を提供する。このような同時投与は、薬物に対する耐性の発生または腫瘍細胞の抗原性の変化による問題を解決することができる。
【0163】
標的特異的エフェクター細胞、例えば、本発明の組成物(例えば、モノクローナル抗体、多重特異性および二重特異性分子)に連結されたエフェクター細胞も、治療剤として使用することができる。標的化のためのエフェクター細胞は、マクロファージ、好中球または単球などのヒト白血球であり得る。他の細胞には、好酸球、ナチュラルキラー細胞および他のIgGまたはIgAレセプターを有する細胞が含まれる。必要に応じて、エフェクター細胞を、処置される対象から得ることができる。標的特異的エフェクター細胞は、生理学的に許容される溶液中の細胞の懸濁液として投与することができる。管理されるセルの個数は、108~109のオーダーでよいが、治療目的によって異なる。
【0164】
標的特異的エフェクター細胞を用いた治療は、他の技術と併せて行うことができる。例えば、本発明の組成物(例えば、モノクローナル抗体、多重特異性および二重特異性分子)および/またはこれらの組成物を装備したエフェクター細胞を使用する抗腫瘍療法は、化学療法と併用することができる。さらに、組み合わせ免疫療法は、2つの異なる細胞傷害性エフェクター集団を腫瘍細胞拒絶に向けるために使用され得る。
【0165】
本発明の二重特異性および多重特異性分子はまた、細胞表面上のレセプターのキャッピングおよび除去などにより、エフェクター細胞上のFcγRまたはFcγR量を調節するために使用することができる。抗Fcレセプターの混合物も、この目的のために使用することができる。
【0166】
本発明の態様は、本発明の抗体組成物(例えば、モノクローナル抗体、二重特異性または多重特異性分子)を含むキット、および、例えば、癌の治療におけるそれらの使用のための命令を含む。キットは、さらに、免疫抑制試薬、細胞毒性剤または放射性毒性剤などの1つ以上の追加の試薬、または本発明の1つ以上の追加の抗体(例えば、第1の抗体とは別のSLAMF6抗原中のエピトープに結合する相補的活性を有する抗体)を含有することができる。
【0167】
したがって、本発明の抗体組成物で治療された患者は、抗体の治療効果を増強または増大する、細胞傷害性または放射毒性剤などの別の治療薬剤を追加投与することができる(本発明の抗体の投与の前、同時、またはその後)。
【0168】
他の実施形態において、対象は、例えば、サイトカインで対象を処置することにより、FcγまたはFcγレセプターの発現または活性を調節、例えば、増強または阻害する薬剤で追加的に処置され得る。多特異的分子による治療中の投与に好ましいサイトカインには、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、および腫瘍壊死因子(TNF)が含まれる。
【0169】
本発明の組成物(例えば、抗体、多重特異性および二重特異性分子)はまた、例えば、そのような細胞を標識するために、FcγRまたはSLAMF6を発現する細胞を標的化するために使用され得る。そのような使用のために、結合剤は、検出され得る分子に連結され得る。したがって、本発明は、FcγRまたはSLAMF6などのFcレセプターを発現するex vivoまたはin vitro細胞を局在化する方法を提供する。検出可能な標識は、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子であり得る。
【0170】
特定の実施形態において、本発明は、抗体またはその一部とSLAMF6との間の複合体の形成を可能にする条件下で、試料中のSLAMF6抗原の存在を検出する方法、または試料および対照試料を、SLAMF6に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させることを含む、SLAMF6抗原の量を測定する方法を提供する。次いで、複合体の形成が検出され、ここで、対照試料と比較した試料間の複合体形成の差異は、試料中のSLAMF6抗原の存在を示す。
【0171】
他の実施態様において、本発明は、対象における免疫性炎症性疾患、例えば、ヒト癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(扁平上皮癌および腺癌を含む)、メラノーマを含む皮膚癌、乳癌(TNBCを含む)、結腸直腸癌、胃(gastric)癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、腎臓癌、肝細胞癌を含む肝臓癌、膵臓癌、頭頸部癌、鼻咽頭癌、食道癌、膀胱癌および他の尿路上皮癌、胃(stomach)癌、神経膠腫、神経膠芽腫、精巣、甲状腺、骨、胆嚢および胆管、子宮、副腎癌、肉腫、GIST、神経内分泌腫瘍、および血液悪性腫瘍を治療するための方法を提供する。
【0172】
本明細書において引用されるすべての参考文献は、それらの全体において本明細書に参照により組み込まれているもの、すべての論文、出版物、特許、特許出願、発表、教科書、報告書、原稿、パンフレット、書籍、インターネット投稿、ジャーナル記事、定期刊行物、製品ファクトシートなどを含むが、これらに限定されない。本明細書中の参考文献の議論は、単にそれらの著者によってなされた主張を要約することを意図しており、いかなる参考文献も先行技術を構成することを認めるものではなく、出願人が引用された参考文献の正確性と適切性に異議を申し立てる権利を留保することを認めるものではない。
【0173】
前述の発明は、理解を明確にするために、例示および例として、いくつかの詳細に記載されているが、従属請求項の趣旨または範囲から逸脱することなく、特定の変更および修正をこれらに加えることができることは、本発明の教示に照らして、当業者には容易に明らかであろう。
【0174】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらはさらに限定するものと解釈されるべきではない。以下の実施例、配列および図は、本発明の理解を助けるために提供され、その真の範囲は添付の特許請求の範囲に記載されている。本発明の趣旨から逸脱することなく、記載された手順に変更を加えることができることが理解される。
【0175】
実施例:
実施例1:抗体の生成とスクリーニング。
ハイブリドーマ生成
組み換えECDタンパクを、Alere, San Diego.-SLAMF6-humにて、SLAMF6 ECD(配列番号12)に対するマウスFabの生成のためのマウスの免疫化に使用した。免疫化されたマウス由来のECD脾細胞を用いて、工業標準技術を使用してfabのライブラリーを作製した。
【0176】
二次スクリーニング
Fab上澄みを、Raji細胞の表面に発現されたSLAMF6タンパクおよび活性化PBMCとの結合について試験した。上清をFACS緩衝液で10分の1に希釈した。
【0177】
実施例2:SLAMF6に対するモノクローナル抗体の構造特性
モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードするcDNA配列は、標準的なPCR技術を用いて得られ、標準的なDNA配列決定技術を用いて配列決定された。画面から選択された1B3の重鎖および軽鎖可変領域は、
図1に見ることができる。
【0178】
1B3の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号3および1に示す。
【0179】
1B3の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号4および2に示す。
【0180】
CDR領域判定のKabatシステムを用いた1B3 VH配列のさらなる分析は、配列番号5、6および7にそれぞれ示されるような重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域の描出を導いた。
図1aは、CDR1、CDR2、およびCDR3をボックスで囲んだ1B3 VH配列を示している。
【0181】
CDR領域判定のKabatシステムを用いた1B3 VL配列のさらなる分析は、配列番号8、9および10にそれぞれ示されるように、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域の描出をもたらした。
図1bは、CDR1、CDR2、およびCDR3をボックスで囲んだ1B3 VL配列を示す。
【0182】
実施例3:フローサイトメトリー分析により測定したSLAMF6に対するFab上清モノクローナル抗体の特異性
5×10個の
6Raji細胞を96ウェルプレートの各ウェルに入れ、FACS緩衝液(DPBS、2%FBS)で1回洗浄した。細胞を1200rpmで5分間スピニングすることによりペレット化した。ペレットをFACS緩衝液(DPBS、2%FBS)で1回洗浄し、再び1200rpmで5分間スピニングすることによってペレット化し、FACS緩衝液に再懸濁した。試験抗体をFACS緩衝液中で30nM/lに希釈し、
図4に示すように増加量を各ウェルに添加し、これを氷上で30分間インキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液(DPBS、2%FBS)で1回洗浄し、ペレット化し、洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。二次ヤギ抗マウス抗体を1μg.mlに希釈し、各ウェルに100μlを添加し、プレートを氷上で30分間インキュベートし、次いでFACS緩衝液(DPBS、2%FBS)で1回洗浄した。細胞をペレット化し、200ul FACS緩衝液に再懸濁した。試料はGuava Easycyte Plus HTフローサイトメーターを用いて読み取り、結果はGuava Cytosoftソフトウェアスイートを用いて分析した。
【0183】
図4から分かるように、抗体1B3は、SLAMF6発現Raji細胞への用量特異的依存的結合を示す。
【0184】
実施例4:抗SLAMF6抗体がT細胞を活性化し、IFNγ産生を刺激する能力
96ウェルの非組織培養プレートには、一晩4℃での250ng/mlのOKT3および異なった抗SLAMF6抗体/アイソタイプ濃度をコーティングした。プレートをPBSで2回洗浄し、続いてR10培地(10%FBS、1%L-グルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシンによるRPMI)で30分間ブロックした。ブロック後、10万個のT細胞を100μlのR10培地に再懸濁し、プレート上に添加した(製造者の指示に従って、Miltenyiキットコード:130-096-535を用いてPBMCから単離されたT細胞)。プレートを37℃で72時間インキュベートし、上清を集め、IFNγ ELISAアッセイに使用するために希釈した。
【0185】
IFNγは、IFN-ガンマ DuoSet ELISAキット(R&Dシステムズ 製品番号DY285B)を用いて、製造元の指示に従って測定した。
結果
【0186】
ヒト化抗体Hu_1B3は、WO2017/004330に記載されているSLAMF6に対するSeatle Gnenetics抗体と比較して、低い抗体濃度でのIFNγ産生の増加に反映された、OKT3前活性化T細胞における活性の増加を示した(
図5)。このIFNγ産生の誘導は、SLAMF6に向けられた抗体が、免疫系が阻害された患者において治療効果を有することを示す。
【0187】
実施例5:抗体1B3のヒト化。
CDR移植技術を用いてマウス1B3モノクローナル抗体のヒト化を行った。ヒト化プロセスをガイドし、親マウス残基を保存するか、またはそれらをヒト生殖細胞系対応物で置換するかの決定を助けるために、1B3マウスモノクローナル抗体のFvの相同分子モデルを構築した。
【0188】
CDRの定義は、Kabat命名法に基づいている。1B3ラットCDR領域が移植されるヒトフレームワーク受容体領域の選択は、免疫グロブリンV領域配列の分析を容易にするためにNCBIで開発されたIgBLASTを用いて、1B3マウス可変領域配列を入力として、IMGTマウスおよびヒトV遺伝子データベースを検索することによって達成された。適用されたストラテジーは、個々のヒト抗体配列に見られる特異体細胞突然変異を含まない天然のヒト配列であるヒト生殖細胞系配列を用いることであった。
【0189】
重鎖設計
マウス1B3ハイブリドーマから単離されたVHのアミノ酸配列(KabatナンバリングスキームによるCDR領域は太字で示されている)を以下に示す。
【化1】
【0190】
ヒトフレームワーク受容体VH領域の選択
マウスVH領域アミノ酸配列を入力としてIgBLASTを用いてIMGTヒトVH遺伝子データベースを検索することにより、1B3マウスCDR領域が移植されるヒトフレームワーク受容体VH領域の選択を達成した。ヒト生殖細胞系に対する親抗体の配列アラインメントに基づいて、最も近い一致エントリを同定した。受容体としての最適なヒト生殖細胞系の同定は、Kabatによって定義されるようなフレームワーク間の配列同一性、および/または鎖間界面残基および支持ループと親CDRの標準的立体配座との同一性および/または相溶性の順序付けられた基準に基づいた。ヒト生殖細胞系IGHV1‐2*02を最も適切な重鎖として選択した。
【0191】
IGHV1‐2*02ヒト生殖細胞系をフレームワーク受容体領域として用いる設計
ヒト化バージョン
Kabat命名法により定義されるマウスCDR(太字)をIGHV1-2*02に移植し、以下の詳細な配列を得た。多くの残基はフレームワークマウス残基(CDR残基の外側)であり、すなわち、親マウスの1B3 VH配列から保存されており、それらは抗体の完全な活性を維持するために構造的に重要である可能性があるため、保存されている。
【化2】
【0192】
IGHV1-2*02ヒト生殖細胞系を用いたヒト化バージョン(OBT577-12-VHB)の86.7%の同一性(V遺伝子の合計98残基のうち85個の同一残基)。
【0193】
軽鎖設計
マウス1B3 VLのアミノ酸配列(Kabat命名法により定義されるCDR領域を強調する)を以下に示す。
【化3】
【0194】
ヒトフレームワーク受容体VL領域の選択
マウスVL領域アミノ酸配列を入力としてIgBLASTを用いてIMGTヒトVL遺伝子データベースを検索することにより、1B3 VLマウスCDR領域が移植されるヒトフレームワーク受容体VL領域の選択を達成した。ヒト生殖細胞系に対する親抗体の配列アラインメントに基づいて、最も近い一致エントリを同定した。受容体としての最適なヒト生殖細胞系の同定は、Kabatによって定義されるようなフレームワーク間の配列同一性、並びに、鎖間界面残基および支持ループと親CDRの標準的立体配座との同一性および/または適合性(互換性)の順序付けられた基準に基づいた。この分析から、ヒト生殖細胞系、IGKV1‐33*01はヒトフレームワーク受容体領域として最良の選択であると考えられた。したがって、このヒト生殖細胞系は、ヒト化バージョンの設計に使用された。
【0195】
IGKV1-33*01ヒト生殖細胞系をフレームワーク受容体領域として用いる設計
ヒト化バージョン
Kabat番号付けによって定義されるマウスCDRをIGKV1-33*01に移植し、以下の詳細な配列を得た。抗体の完全な活性を維持するために構造的に重要な多数の残基が保持されている。これにより、86.3%の同一性を有するヒト化バージョン(95中82アミノ酸残基)が得られた。
【化4】
ヒト化バージョンとIGKV1-33*01ヒト生殖細胞系との86.3%の同一性(82/95)
【0196】
実施例6 腫瘍浸潤リンパ球を伴うELISPOT
NSCLC(
図6)、乳癌(
図7)またはCRC(
図8)腫瘍由来の原発腫瘍由来腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を、マウス1B3またはペムブロリズマブを10μg/ml、OKT3を完全IMDM培養培地で1μg/mlに希釈して96時間刺激した。刺激後、TILを回収し、計数し、IFNγ ELISPOTプレート(Mabtech)上で100000細胞/ウェルでプレーティング(平板培養)した。プレートを37℃で24時間インキュベートし、その後、製造業者の指示に従って開発した。スポット数は、ImmunoSpot(登録商標)シリーズ5ELISPOTアナライザーを用いて読み取り、データはGraphPad Prismソフトウェアを用いて分析した。
【0197】
図6は、抗体1B3が、アイソタイプ抗体よりも有意に高いIFNγ産生を反映してNSCLC由来TILを活性化することを示す。
【0198】
図7は、抗体1B3がペムブロリズマブよりも有意に多い数の乳癌由来TILを活性化してIFNγを産生することを示す。
【0199】
図8は、抗体1B3が、ペムブロリズマブよりも有意に多い数の結腸直腸癌由来TILを活性化してIFNγを産生することを示す。
【0200】
実施例7 ヒト化1B3抗体の結合親和性
Biacore T‐200の結合親和性実験を25℃で行った。CM5チップのフローセル2、3および4を、ヤギ抗ヒトIgGの最大量500RUで被覆した。試験抗体をフローセル2、3および4に捕捉した。フローセル1をブランクに保ち、参照減算に使用した。チップの上に抗原を流した。抗体への抗原の結合をリアルタイムでモニターした。観測されたkonとkoffから、KDを決定した。
【0201】
【0202】
実施例8 抗SLAMF6抗体1B3を用いたin vitro増殖アッセイ
方法。
非組織培養処理96ウェルプレート(BD Falcon, USA)を抗ヒトCD3(eBioscience, USA)抗体250ng/ml単独またはヒト化抗SLAMF6抗体(Hu_1B3)またはアイソタイプ対照抗体0、0.2、0.4、0.6、0.9、1.2ug/ml)の濃度でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした翌日、プレートを洗浄し、AIM V媒体でブロックした。健康なドナーから作製したPBMCから単離したT細胞を、細胞増殖色素eFluor(商標)670(eBioscience, USA)で染色し、洗浄し、FCS、ペニシリン-ストレプトマイシンを含むAIM V(Thermofisher Scientific, USA)培地入りの抗体被覆プレート(100μl中100,000細胞/ウェル)に播種し、組織培養インキュベーター中で37℃で72時間培養した。3日目に細胞を収集し、抗ヒトCD8と標識されたFITC、抗ヒトCD4と標識されたBrilliant Violet 711(商標)、抗ヒトCD69(Biolegend, USA)と標識されたPE、および固定可能生存性染料eFluor(商標)506(eBioscience, USA)で染色した。試料をアチューンNxTフローサイトメーター(Thermofisher Scientific, USA)で分析し、FlowJoソフトウェア(TreeStar, USA)を用いてデータを分析した。
【0203】
図9は、CD3の存在下で抗SLAMF6抗体を用いて単離されたT細胞上に存在するSLAMF6を刺激すると、アイソタイプまたはCD3単独と比較して、T細胞増殖が有意に増加することを示す。
【0204】
実施例9 抗SLAMF6抗体Hu_1B3を用いた同種PBMCとの一方向混合リンパ球反応(MLR)。
方法:
1つのドナー(ドナー1)から単離されたT細胞を、10%補充ウシ血清および2mM L-グルタミン(培養培地)を含むRPMI 1640培地に再懸濁した。
【0205】
第2ドナー(ドナー2)由来の凍結保存PBMCを、培養培地中で2E6細胞/mlの密度で50ug/mlのマイトマイシンCで処理した。培養培地で洗浄してミトマイシンCを除去する前に、細胞を37℃で90分間処理した。
【0206】
次いで、ドナー1からの100,000細胞を、96ウェル、U底プレート中のドナー2からのマイトマイシンC処理細胞100,000個と組み合わせた。組み合わされた細胞は、ヒト化抗体Hu_1B3の種々の濃度の溶液と対照の溶液中で処理し、6日間、合計量100ulの培地/ウェルで培養した。アイソタイプを陰性対照として、抗CD137mAbと同様に用い、比較に含めた。
【0207】
培養上清を6日目に採取し、ELISA(R&D Systems:DY285B)によりIFN-γの濃度について、製造業者の指示に従って分析した。
図10は、抗SLAMF6抗体Hu_1B3がサイトカイン放出の用量依存性増加を示し、T細胞が抗体の存在によって活性化されていることを示す。また、SLAMF6の活性化は、CD137を介した活性化よりも、単離T細胞からのより高いサイトカイン放出をもたらすことを示している。
【0208】
実施例10 T細胞からのSLAMF6媒介グランザイムBおよびパーフォリン放出
PBMC単離
T細胞単離の第一段階として、PBMCはバフィーコート(Stanford Blood CenterからのLeucopak)から単離される。血液をPBS中で1:4の比率(血液10ml+PBS30ml)で希釈し、希釈した血液30mlを15mlのFicoll-Hypaque(GE-Healthcare cat.No.17-1440-03)上に注意深く置く。チューブは、400g(1400rpm)、RTで30分間、ブレーキオフでsorvall遠心装置で遠心される。単球は密度勾配によって分離される。全てのチューブからの細胞白色分画の約10mlを単一の50mlチューブにプールし、洗浄し、Cellometerオート2000を用いて計数する。バフィーコートから生成したPBMCは、T細胞単離に使用される。
【0209】
T細胞単離
PBMCからのPan T細胞単離は、CD4およびCD8 T細胞を除き、残りのすべての免疫細胞サブセットがビオチン結合抗体で標識され、高磁場中でストレプトアビジンで被覆されたマイクロビーズによって捕捉されるネガティブセレクションプロセスである。バフィーコートから単離したPBMCを洗浄し、FACS選別緩衝液(PBS中0.1%BSA)中に2.5e7細胞/mLの濃度で再懸濁し、Pan T細胞ビオチン-抗体カクテルを細胞に添加し、抗体細胞懸濁液を1mlピペットを用いて混合し、氷上で5分間インキュベートする。Pan T細胞マイクロビーズ単離カクテルを混合物に添加し、氷上でさらに10分間インキュベートする。MACS分離法は、未処理のT細胞を単離するために用いられる。PBMCのビオチン標識マイクロビーズ混合物を、高磁場MACSセパレーター中でLSカラム(Miltneyi Biotec、Cat#130-042-401)上で流し、非T細胞を枯渇させたフロースルーを回収し、FACSソーティングバッファーで1回洗浄し、5%FBSでAIMV完全培地に再懸濁する。
【0210】
グランザイムB ELISA
グランザイムB機能アッセイのために、非組織培養処理した96ウェルプレートを、250ng/mlの抗ヒトCD3(OKT3クローン化)(Thermofisher Scientific Cat#16-0031-85)と組み合わせて、ヒトHu_1B3またはアイソタイプ対照抗体でコーティングする。各試験抗体を、4.2μg/mlで開始し、100μlのPBS中で10点滴定のための2:3希釈物で3回コーティングする。プレートを密封し、4℃で一晩インキュベートする。グランザイムB機能アッセイセットアップの日に、プレートを洗浄し、5%FCSを含むAIMV完全培地で20分間ブロックし、非特異的結合を減少させる。
【0211】
グランザイムB免疫測定は、R&Dシステム(Cat# DY2906-05)のHuman Granzyme B DuoSet ELISAキットを使用してセットアップされる。Nunc-イムノアッセイプレートをPBS中で1:60に希釈したグランザイムB捕獲抗体でコーティングし、プレートを4℃で一晩インキュベートする。翌日、プレートをELISA洗浄バッファー(PBS+0.05%tween20)で洗浄し、1%BSA入りPBS中でブロッキングする。希釈緩衝液中で1:60で希釈した試料100μlをブロッキングした後、それぞれのウェルに標準液を加え、4℃で一晩インキュベートする。次の日にプレートを開発し、VersaMaxチューナブルマイクロプレートリーダーでOD値を捕捉した。グランザイムB放出を定量し、Graphpad Prism 8ソフトウェアを用いてプロットする
【0212】
結論
グランザイム介在性アポトーシスは、細胞傷害性リンパ球が形質転換細胞を排除するために用いる主要な機構の1つである。このデータは、抗体Hu_1B3が腫瘍抑制に重要な細胞毒性機能を誘導できることを示している。抗体Hu_1B3は活性化T細胞からグランザイムBを用量依存的に上昇させ(
図11)、EC
50は0.51μg/mlである。
【0213】
パーフォリン細胞内アッセイ
パーフォリン細胞内定量アッセイセットアップ非組織培養処理96ウェルプレートを、250ng/mlの抗ヒトCD3(OKT3クローン化)(Thermofisher Scientific Cat#16-0031-85)と組み合わせて、ヒトHu_1B3またはアイソタイプ対照抗体でコート(被覆)する。各試験抗体を、4.2μg/mlで開始し、100μlのPBS中で10点滴定のための2:3希釈物でコートする。プレートを密封し、4℃で一晩インキュベートする。グランザイムB機能アッセイセットアップの日に、プレートを洗浄し、5%FCSを含むAIMV完全培地で20分間ブロッキングし、非特異的結合を減少させる。このアッセイのために、5%FBSを含む100μlのAIMV培養培地中でウェル当たり200,000個のパンT細胞を添加し、組織培養インキュベーター中で37℃で3日間培養する。アッセイの日に、タンパク輸送阻害剤カクテル(Thermofisher Scientific、Cat# 00-4980-93)を全てのウェルに添加し、細胞外空間へのパーフォリン輸送を防止するために4時間培養する。細胞を回収し、T細胞表面マーカーCD3、CD4、およびCD8について染色し、続いてFIX&PERM(商標)細胞透過化キット(Thermofisher Scientific、Cat# GAS-004)を用いて細胞内パーフォリン染色を行う。細胞をAttune NxT FACSアナライザー(Thermofisher Scientific、MD)で分析し、データをFlowJoソフトウェア(BD Biosciences、San Jose)で分析した。
【0214】
結論
パーフォリン介在性壊死は、細胞傷害性Tリンパ球によって誘導される殺傷の別の主要なメカニズムであり、Hu_1B3は、0.44μg/mlのEC
50で、用量依存的にCD8+T細胞におけるパーフォリンのアップレギュレーションを増強する(
図12)
【0215】
実施例11 抗体1B3の結合エピトープを評価するための競合的結合アッセイ
凍結保存したヒトPBMCを解凍し、FACS緩衝液(2%FCSを含むDPBS)に懸濁液により一度洗浄し、続いて1200rpmで5分間遠心分離して細胞をペレット化し、上清を廃棄した(その後の洗浄に使用したのと同じ方法)。細胞を、FACS緩衝液中でウェル当たり100,000細胞で96ウェルアッセイプレートに分注し、その後、再度洗浄した。次に、洗浄前の1時間氷上の100μlFACSバッファーでのSLAMF6レセプターブロッキングについて、細胞をSLAMF6 ECD-mIgG2a Fc融合タンパク100nMまたは300nMで1時間ブロッキングした。ヒト化Hu_1B3抗体またはヒトIgG1アイソタイプコントロールを、最高濃度10nMで、1/3連続希釈で滴定し、次いで、ブロックされたPBMCに添加し、細胞を氷上で1時間インキュベートし、その後、2回洗浄した。次いで、FACS緩衝液中1μg/mLの濃度の二次抗体、ヤギ抗ヒト-IgG-RPE(Southern Biotech、Ref: 2040-05)を、氷上で30分間処理細胞に適用した。細胞を含有する未処理のウェルの1つも二次抗体で染色され、もう1つは二次抗体結合の対照として作用するために染色されていないままにされた。この最終インキュベーションの後、細胞を再び2回洗浄し、最終細胞ペレットをFACS緩衝液に再懸濁した。二次抗体の平均蛍光強度は、業界標準プロトコルに従って96ウェルプレートフォーマットでAttune NxT Flow Cytometer(ThermoFischer Scientific)を用いて各サンプルについて測定され、生のデータはFlowJo解析ソフトを用いて分析された。
【0216】
図13に見られるように、Hu_1B3抗体は、ヒトSLAMF6 ECD-mIgG2a Fc融合タンパクの存在下でPBMCの表面上のレセプターへの結合を遮断され、Hu_1B3がヒトSLAMF6 ECDと競合的に結合することを示している。したがって、Hu_1B3はSLAMF6のホモ二量体化エピトープに結合し、アゴニスト抗体として機能するSAP媒介活性化経路を介して細胞傷害性T細胞機能を増強すると考えられる。
【0217】
実施例12 Hu_1B3抗体の内在化
RAJI、ヒトバーキット(Burkitt)リンパ腫細胞(Cat No CCL-86, American Type Culture Collection [ATCC], Manassas VA)を、RPMI-1640培地(Cellgro, Cat No 10-041-CM, Mediatech, Manassas VA)中で、10%ウシ胎児血清(HyClone* Cosmic Calf Serum, Cat No SH30087-03, Thermo Scientific, Waltham, MA)および1%ピルビン酸ナトリウム(Cellgro, Cat. # 25-000-Cl)を業界標準の無菌技術を使用して添加した。RAJI細胞は、24ウェル用ガラスボトム培養プレートでウェルあたり5×105細胞の密度でプレートされ、増殖培地中で、37℃で48時間増殖できた。ウェルは以下のサンプルについて0時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間および24時間後に調製した:2次抗体のみの対照、ヒトIgGアイソタイプ対照、抗体Hu_1B3、Seattle genetics由来の臨床抗SLAMF6抗体(陽性対照)。蛍光対照としては、二次のみの対照ウェル、抗体対照ウェルを用いなかった。
【0218】
続いて、すべての抗体インキュベーションおよび洗浄工程を氷冷試薬を用いて氷上で行った。培養培地をウェルから吸引し、IF緩衝液(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS, Thermo Scientific, Waltham VA, Cat. # SH30028-03))+2%FBS)で2回洗浄した。一次抗体(精製されたOBTヒト化Hu_1B3;アイソタイプまたは陽性対照抗体(Seattle genetics)をIF緩衝液で2ug/mlに希薄化し、適宜ウェルに200μlを15分間適用した。同じ容量のIF緩衝液のみを、二次抗体対照のために指定されたウェルに添加した。二次抗体(ヤギ抗ヒトIgG-Alexa Fluor 488, Invitrogen Cat. #A11013)をIF緩衝液中で2ug/mLの濃度に希釈し、さらに15分間の一次インキュベーションに加えた。
【0219】
一次および二次抗体標識後、ヒトIgGアイソタイプ対照、二次抗体のみ対照、および0分後の試験および陽性対照を処理した。細胞をIF緩衝液で2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド(DPBSで半分に希釈した4%、Cat No 19943, Affymetrix, Santa Clara, CA)を含む第2の24ウェルプレート中に氷上で配置し、内部移行を停止させ、細胞を固定した。
【0220】
残りの細胞をIF緩衝液で2回洗浄し、1mLの温めた増殖培地を、37℃インキュベーターに入れる前に各ウェルに添加した。0時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、24時間の細胞を、対照試料について記載したように氷上でパラホルムアルデヒド中に固定した。
【0221】
全ての細胞は氷上で少なくとも15分間固定液中に留まった。細胞をIF緩衝液で洗浄し、核カウンター染色として、2~3滴のProlong Gold Anti-Fade試薬+DAPI(Cat No P-36931, Invitrogen, Grand Island, NY)と共にカバースリップを各ウェルに添加した。細胞画像は、Leicaマイクロスコープ(Leica DMI600B)、Leicaモノクロカメラ(Leica DFC350FX)、DAPI用フィルターセットおよびAlexa Fluor488およびオイル液浸レンズ63xを用いて取得した。画像はTIFFフォーマットで保存し、ImageJを用いて解析した。
【0222】
図14は、ヒト化抗体Hu_1B3は、臨床のSeattleGenetics抗体よりも有意に少ないSLAMF6発現細胞に内在化することを示す。このことは、抗体Hu_1B3に結合すると、レセプターが細胞表面に長時間残るため、T細胞においてより持続性のある応答を誘導することを示しており、したがって、より有効なアゴニストとなるであろう。
【0223】
実施例13 細胞毒性アッセイ
SKBr3 HCT116およびMDA-MB-231をATCCから購入した。細胞株は、標準的な無菌技術を用いて製造業者(ATCC)の指示に従って維持した。細胞培養培地は、2mM L‐グルタミンおよび25mM HEPES(コーニング)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma‐Aldrich)、および10%熱不活化FCS(HyClone)を含むRPMI‐1640から構成された。細胞線は指数関数的フェーズで維持され、5%CO2を含む37℃インキュベータで増殖させた。SKBr3は、高コピー数のHer2(約5×106コピー/細胞)を発現する乳癌細胞株である。HCT116は低コピー数のHer2を発現する大腸癌細胞株である。MDA-MB-231は、低コピー数のHer2を発現する乳癌細胞系である。
【0224】
標的およびエフェクター(PBMC)細胞を、以下の条件下で調製した。アッセイの前日に、標的細胞をPBSで洗浄し、0.25%トリプシンと共にインキュベートし、細胞培養培地に再懸濁した。生存率および細胞濃度は色素排除法により測定した。標的細胞を96ウェル組織培養処理プレート中で10,000細胞/ウェルでプレーティングした。細胞は、5%CO2を用いた37℃インキュベーターで一晩増殖させた。
【0225】
アッセイの前日に、凍結したPBMCを37℃水浴中で解凍し、細胞培養培地で洗浄し、そして5%CO2と共に37℃インキュベーター中で一晩培養した。翌日、生存率および細胞濃度を色素排除により測定した。PBMCを標的細胞に10:1のE:T比で添加した。10,000標的細胞を100,000個のエフェクター細胞と混合した。
【0226】
二重特異性抗体Cris7‐Her2を細胞毒性アッセイに用いた。抗体はHer2とCD3εの両方を検出する。Cris7-Her2二重特異性(Bispecific)抗体を100ng/mlに希薄化し、次いで3倍~0.0012ng/mlにまで連続的に希薄した。さらに、Cris7-Her2+アゴニスト抗体を検査した。アゴニスト抗体による増強された細胞毒性を観察するために、Cris7‐Her2二重特異性抗体とアゴニスト抗体の組合せを含めた。陽性対照として、4-1BBに対する抗体であるウレルマブ(Urelumab)を用いた。アイソタイプ(Isotype)を陰性対照として用いた。Hu_1B3が被験物質であった。最終濃度2.5ug/mlで、ウレルマブ、アイソタイプ、およびHu_1B3を用いた。すべての試料を3回実施した。対照には、標的細胞単独または標的細胞+エフェクター細胞が含まれた。さらなる対照には、標的細胞およびエフェクター細胞+Hu_1B3、または、標的細胞およびエフェクター細胞+アイソタイプ対照を含んだ。
【0227】
細胞毒性アッセイを、細胞株に応じて48~96時間インキュベートした。インキュベーション後、標的細胞の生存性を測定した。生存能力はATPの定量に基づいており、ATPは代謝活性細胞の存在を知らせるシグナルとなる。このアッセイは発光ベースであり、Cell Titer-Glo(登録商標)(Promega, Madison, WI)は生細胞を測定するために使用される試薬であった。アッセイ条件については、製造業者の指示に従い、全ての工程を室温で行った。簡単に述べると、96ウェルプレートおよびCell Titer-Glo(登録商標)試薬を室温に30分間平衡化した。30分後、細胞培養媒体を取り除き、PBSの200ulで標的セルを洗浄し、洗浄ステップをさらに1回繰り返した。次に、Cell Titer-Glo(登録商標)試薬の100ulをすべてのウェルに加えた。プレートを軌道振盪機上に置き、250rpmで2分間混合し、細胞溶解を誘導した。プレートを軌道振盪機から取り出し、暗所で10分間インキュベートして、発光シグナルを安定化させた。10分後、試料を不透明壁の96ウェルプレートに移し、発光を記録した。
【0228】
標的細胞の生存率は、生成された発光シグナルに比例した。すべての試料を3回繰り返して行い、各アッセイ条件について平均を計算した。試料の細胞毒性パーセントを対照に対して正規化し、対照はエフェクター細胞(標的+エフェクター)の存在下での標的細胞の生存性であった。生存率を計算するために、試料の発光信号を対照の発光信号で割った。細胞毒性は、残った非生存細胞の割合に基づいて計算された。
図15に見られるように、SKBr3細胞では、二重特異性抗体のみ、または二重特異性抗体+アイソタイプ対照は、0.8~100ng/mlのより高い濃度で効果的な細胞毒性を有する。ウレルマブを添加すると、細胞毒性曲線はわずかに左方に移動するが、5%以下である。しかしながら、2.5ug/mlのHu_1B3の添加はSKBR‐3細胞の細胞毒性を10~40%増強した。
【0229】
図16は、第2のPBMCドナーにおいて同様の結果が見られることを示している。
【0230】
図17は、HCT116細胞に対するHu_1B3による増強された細胞毒性を示す。結腸癌細胞株であるHCT116細胞は、細胞表面に低レベルのHer2を発現する。細胞毒性アッセイは、PBMC、およびT細胞係合二重特異性抗体、Cris7-Her2とともにHCT116細胞を用いて行った。上述のように、Hu_1B3をアッセイに添加して、それがPBMCに存在するT細胞またはNK細胞の機能を増強するかどうかを決定し、T細胞およびNK細胞は共活性化受容体であるSLAMF6を共に発現する。データは、T細胞係合(engaging)二重特異性抗体、Cris7‐Her2による用量依存性細胞毒性を、試験した種々の濃度で示す。さらに重要なことに、データはHu_1B3を添加した場合、細胞毒性の増加が観察されたことを示している。Cris7-Her2特殊単独または二重特異性抗体+アイソタイプ対照のEC50は約0.25ng/mlであるのに対し、二重特異性抗体+Hu_1B3のEC50は約0.07ng/mlである。これは細胞毒性の約3.6倍の増加を示す。
【0231】
図18は、MDA-MB-231細胞に対するHu_1B3による増強された細胞毒性を示す。乳癌細胞株であるMDA-MB-231細胞は、細胞表面に低レベルのHer2を発現する。細胞毒性アッセイは、上記のように、MDA-MB-231細胞を、PBMC、およびT細胞係合二重特異性抗体、Cris7-Her2とともに用いて行った。再び、Hu_1B3は、試験した種々の濃度で、Cris7-Her2二重特異性の細胞毒性を増強する。具体的には、アイソタイプ対照と比較して、Cris7の1ng/mLで細胞毒性の40%の増加が観察された。
【0232】
図19は、96時間のインキュベーション後、二重特異性とHu_1B3の組合せが、二重特異性抗体濃度の最低レベルでさえもSKBR-3細胞の高いレベル(量)の殺傷を示したことを示す。一方、これらのレベルでは、二重特異性単独または二重特異性とウレルマブ(Urelumab)の併用、またはアイソタイプ対照のいずれかが、非常に低いレベル(量)の細胞死をもたらし、または、細胞死をもたらさなかったことから、Hu_1B3がリンパ球の強力な活性化をもたらすことが示唆された。
【0233】
図20は、上記の細胞毒性アッセイにおいて、検査抗体の濃度が7.5ug/mlから0.0034ug/mlの範囲で1/3の希薄化で滴定されるという条件で、二重特異性Cris7-Her2抗体が一定水準(0.0457ng/ml)に維持されることを示している。SKBR-3細胞の用量依存的な殺傷が、ウレルマブまたはアイソタイプ対照と比較して観察され、さらに、細胞傷害性リンパ球を活性化するHu_1B3の能力を示した。
【0234】
実施例14 Cris7二重特異性の非存在下における細胞毒性アッセイ
別の細胞毒性アッセイを上記のように設定したが、二重特異性抗体は使用しなかった。単剤のSKBR-3による細胞毒性試験には、Hu_1B3、アイソタイプ対照、およびウレルマブのみを用いた。アッセイで使用した濃度範囲は、1ドナーによる1/3希釈で33ug/ml~0.13ug/mlであった。第2ドナーについては、試験抗体をさらに0.0152ug/mlに希釈した(
図21b)。
【0235】
図21aおよび21bは、CD3-Her2二重特異的抗体Hu_1B3の非存在下で、リンパ球を活性化してSKBR-3細胞の細胞死を誘導することができることを示す。これは、細胞殺傷がほとんどみられないウレルマブまたはアイソタイプ対照とは対照的である。
【0236】
【配列表】