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特許7604405触覚コンテンツを制御するための方法およびシステム
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  • 特許-触覚コンテンツを制御するための方法およびシステム 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】触覚コンテンツを制御するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20241216BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20241216BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20241216BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R1/00 317
G06F3/01 560
G06F3/01 510
G01C21/26 P
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021577046
(86)(22)【出願日】2020-08-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 US2020045543
(87)【国際公開番号】W WO2021061291
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】16/580,544
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515046968
【氏名又は名称】メタ プラットフォームズ テクノロジーズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】META PLATFORMS TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】弁理士法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリオ パリーゼ, チェザーレ
(72)【発明者】
【氏名】カレギメーボディ, モルテザ
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ゴットリーブ, ピーター
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-531930(JP,A)
【文献】特表2019-523498(JP,A)
【文献】特開2006-199094(JP,A)
【文献】国際公開第2018/204745(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 1/00
G06F 3/01
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザにオーディオコンテンツを提示しながら、トランスデューサアレイ中の少なくとも1つのトランスデューサの作動を介して前記ユーザに与えられる触覚コンテンツを制御するように構成されたコントローラと、
前記ユーザに前記触覚コンテンツを伴う前記オーディオコンテンツを提示するように構成された前記トランスデューサアレイと
を備え
前記コントローラが、前記触覚コンテンツを使用して前記ユーザにナビゲーション命令を提供するようにさらに構成され、
前記少なくとも1つのトランスデューサが、複数の軟骨伝導トランスデューサとして実装され、前記複数の軟骨伝導トランスデューサのうちの少なくとも1つの軟骨伝導トランスデューサが、前記ユーザの対応する耳に取り付けられ、
前記コントローラが、前記ユーザに前記ナビゲーション命令を提供するために、前記少なくとも1つの軟骨伝導トランスデューサを介して前記対応する耳に前記触覚コンテンツを選択的に適用するようにさらに構成された、
ーディオシステム。
【請求項2】
前記コントローラが、前記触覚コンテンツを制御することによって、前記ユーザに提示される前記オーディオコンテンツについての音声了解度を増加させるようにさらに構成され、および/または前記コントローラが、前記触覚コンテンツを制御することによって、定義されたレベルの近接場効果を伴う前記オーディオコンテンツを生成するようにさらに構成された、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項3】
前記コントローラが、
知覚モデルに基づいて、入力オーディオ信号のスペクトルコンテンツを変えることによって前記オーディオコンテンツを生成するときに前記触覚コンテンツを制御する
ようにさらに構成された、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項4】
前記トランスデューサアレイによって作り出された音を検出するように構成されたセンサーアレイ
をさらに備え、
前記コントローラが、検出された前記音に少なくとも部分的に基づいて前記知覚モデルを生成するようにさらに構成された、
請求項に記載のオーディオシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記ユーザへの提示のために前記オーディオコンテンツを生成するときにオーディオ信号の周波数スペクトルの一部分を拡張することによって前記触覚コンテンツを制御すること、および/または
前記触覚コンテンツを制御することによって、音ソースを拡張することであって、前記音ソースが、前記ユーザからリモートにあるロケーションに位置し、随意に、前記音ソースが仮想音ソースである、音ソースを拡張すること
を行うようにさらに構成された、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項6】
前記コントローラが、
前記ユーザへの提示のために前記触覚コンテンツを伴う前記オーディオコンテンツを作成するためにオーディオ信号に対して触覚拡張を実施する
ようにさらに構成された、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのトランスデューサによって作り出された音を検出するように構成されたセンサーアレイ
をさらに備え、
前記コントローラが、
出された前記音の劣化のレベルを検出することと、
検出された前記劣化のレベルに基づいて、前記ユーザへの提示のために前記オーディオコンテンツ中の音響コンテンツの劣化を軽減するようにオーディオ信号を処理することと
を行うようにさらに構成された、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項8】
前記トランスデューサアレイが、1つまたは複数の軟骨伝導トランスデューサを含むか、または、前記トランスデューサアレイが、1つまたは複数の空気伝導トランスデューサと、1つまたは複数の骨伝導トランスデューサと、1つまたは複数の軟骨伝導トランスデューサとのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項9】
前記オーディオシステムがヘッドセットの一部である、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項10】
方法であって、
ユーザにオーディオコンテンツを提示しながら、トランスデューサアレイ中の少なくとも1つのトランスデューサの作動を介して前記ユーザに与えられるべき触覚コンテンツの量を制御することと、
前記トランスデューサアレイに、前記ユーザに前記オーディオコンテンツを提示するように命令することであって、前記オーディオコンテンツが前記触覚コンテンツを含む、前記ユーザに前記オーディオコンテンツを提示するように命令することと
前記触覚コンテンツを使用して前記ユーザにナビゲーション命令を提供することと
を含み、
前記少なくとも1つのトランスデューサが、複数の軟骨伝導トランスデューサとして実装され、前記複数の軟骨伝導トランスデューサのうちの少なくとも1つの軟骨伝導トランスデューサが、前記ユーザの対応する耳に取り付けられ、
前記方法が、
前記ユーザに前記ナビゲーション命令を提供するために、前記少なくとも1つの軟骨伝導トランスデューサを介して前記対応する耳に前記触覚コンテンツを選択的に適用すること
をさらに含む、方法。
【請求項11】
記オーディオコンテンツ内の前記触覚コンテンツを制御することによって、前記ユーザに提示される前記オーディオコンテンツについての音声了解度を増加させることと、
前記オーディオコンテンツ内の前記触覚コンテンツを制御することによって、定義されたレベルの近接場効果を伴う前記オーディオコンテンツを生成することと
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
知覚モデルに基づいて、入力オーディオ信号のスペクトルコンテンツを変えることによって前記オーディオコンテンツを生成するときに前記触覚コンテンツを制御すること、または
前記ユーザへの提示のために前記オーディオコンテンツを生成するときにオーディオ信号の周波数スペクトルの一部分を拡張することによって前記触覚コンテンツを制御すること
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
命令が符号化された非一時的コンピュータ可読記憶媒体を備えるコンピュータプログラム製品であって、前記命令は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されたとき、前記1つまたは複数のプロセッサに、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法を実施させる
ンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、人工現実システムに関し、より詳細には、オーディオシステムのユーザへの提示のために触覚コンテンツ(tactile content)を制御するように構成されたオーディオシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工現実システムにおけるヘッドマウントディスプレイは、しばしば、ヘッドマウントディスプレイのユーザにオーディオコンテンツを提供するためのスピーカーまたはパーソナルオーディオデバイスなどの特徴を含む。いくつかの事例では、従来のヘッドマウントディスプレイは、ユーザにオーディオコンテンツを提供するために骨伝導および/または軟骨伝導を使用し得る。しかしながら、ある周波数および振幅においては、オーディオコンテンツを聞くことに加えて、オーディオコンテンツは、触覚刺激として(たとえば、組織中に埋め込まれた機械受容器(mechanoreceptor)を介して)ユーザによって知覚され得る。
【発明の概要】
【0003】
本開示の実施形態は、添付の特許請求の範囲による、コンテンツをユーザ、たとえば、ヘッドセットの装着者に提供するためのオーディオシステム、方法、およびコンピュータ可読媒体をサポートする。オーディオシステムは、トランスデューサアレイと、コントローラとを含む。コントローラは、トランスデューサアレイ中の少なくとも1つのトランスデューサの作動を介してユーザに与えられる触覚コンテンツを制御するように構成される。トランスデューサアレイは、ユーザに触覚コンテンツを提示するように構成される。オーディオシステムは、ヘッドセットの一部として組み込まれ得る。
【0004】
本発明の一態様では、オーディオシステムが、ユーザにオーディオコンテンツを提示しながら、トランスデューサアレイ中の少なくとも1つのトランスデューサの作動を介してユーザに与えられる触覚コンテンツを制御するように構成されたコントローラを備え得、トランスデューサアレイは、ユーザに触覚コンテンツを伴うオーディオコンテンツを提示するように構成される。
【0005】
本発明によるシステムの一実施形態では、コントローラは、触覚コンテンツを使用してユーザにナビゲーション命令を提供するようにさらに構成され得る。さらに、少なくとも1つのトランスデューサは、複数の軟骨伝導トランスデューサとして実装され得、軟骨伝導トランスデューサのうちの少なくとも1つが、ユーザの対応する耳に取り付けられ、コントローラは、ユーザにナビゲーション命令を提供するために、少なくとも1つの軟骨伝導トランスデューサを介して、対応する耳に触覚コンテンツを選択的に適用するようにさらに構成され得る。
【0006】
本発明によるシステムの一実施形態では、コントローラは、触覚コンテンツを制御することによって、ユーザに提示されるオーディオコンテンツについての音声了解度を増加させるようにさらに構成される。
【0007】
本発明によるシステムの一実施形態では、コントローラは、触覚コンテンツを制御することによって、定義されたレベルの近接場効果(near field effect)を伴うオーディオコンテンツを生成するようにさらに構成され得る。
【0008】
本発明によるシステムの一実施形態では、コントローラは、知覚モデルに基づいて、入力オーディオ信号のスペクトルコンテンツを変えることによってオーディオコンテンツを生成するときに触覚コンテンツを制御するようにさらに構成され得る。さらに、システムは、トランスデューサアレイによって作り出された音を検出するように構成されたセンサーアレイをさらに備え得、コントローラは、検出された音に少なくとも部分的に基づいて知覚モデルを生成するようにさらに構成され得る。
【0009】
本発明によるシステムの一実施形態では、コントローラは、ユーザへの提示のためにオーディオコンテンツを生成するときにオーディオ信号の周波数スペクトルの一部分を拡張することによって触覚コンテンツを制御するようにさらに構成され得る。
【0010】
本発明によるシステムの一実施形態では、コントローラは、触覚コンテンツを制御することによって音ソースを拡張するようにさらに構成され得、音ソースは、ユーザからリモートにあるロケーションに位置する。さらに、音ソースは仮想音ソースであり得る。
【0011】
本発明によるシステムの一実施形態では、コントローラは、ユーザへの提示のために触覚コンテンツを伴うオーディオコンテンツを作成するためにオーディオ信号に対して触覚拡張を実施するようにさらに構成され得る。
【0012】
本発明によるシステムの一実施形態では、本システムは、少なくとも1つのトランスデューサによって作り出された音を検出するように構成されたセンサーアレイをさらに備え得、コントローラは、検出された音の劣化のレベルを検出することと、劣化の検出されたレベルに基づいて、ユーザへの提示のためにオーディオコンテンツ中の音響コンテンツの劣化を軽減するためにオーディオ信号を処理することとを行うようにさらに構成され得る。
【0013】
本発明によるシステムの一実施形態では、トランスデューサアレイは、1つまたは複数の軟骨伝導トランスデューサを含み得る。
【0014】
本発明によるシステムの一実施形態では、トランスデューサアレイは、1つまたは複数の空気伝導トランスデューサと、1つまたは複数の骨伝導トランスデューサと、1つまたは軟骨伝導トランスデューサとのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0015】
本発明によるシステムの一実施形態では、オーディオシステムはヘッドセットの一部であり得る。
【0016】
一態様では、本発明は、ユーザにオーディオコンテンツを提示しながら、トランスデューサアレイ中の少なくとも1つのトランスデューサの作動を介してユーザに与えられるべき触覚コンテンツの量を制御することと、トランスデューサアレイに、ユーザにオーディオコンテンツを提示するように命令することであって、オーディオコンテンツが触覚コンテンツを含む、ユーザにオーディオコンテンツを提示するように命令することとを含む方法を対象とする。
【0017】
本発明による方法の一実施形態では、本方法は、触覚コンテンツを使用してユーザにナビゲーション命令を提供することと、オーディオコンテンツ内の触覚コンテンツを制御することによって、ユーザに提示されるオーディオコンテンツについての音声了解度を増加させることと、オーディオコンテンツ内の触覚コンテンツを制御することによって、定義されたレベルの近接場効果を伴うオーディオコンテンツを生成することとのうちの少なくとも1つをさらに含み得る。さらに、本方法は、さらに含み得る
【0018】
本発明による方法の一実施形態では、本方法は、知覚モデルに基づいて、入力オーディオ信号のスペクトルコンテンツを変えることによってオーディオコンテンツを生成するときに触覚コンテンツを制御することをさらに含み得る。
【0019】
本発明による方法の一実施形態では、本方法は、ユーザへの提示のためにオーディオコンテンツを生成するときにオーディオ信号の周波数スペクトルの一部分を拡張することによって触覚コンテンツを制御することをさらに含み得る。
【0020】
一態様では、本発明は、命令が符号化された非一時的コンピュータ可読記憶媒体を備えるコンピュータプログラム製品であって、命令は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されたとき、1つまたは複数のプロセッサに、本発明による方法を実施させるか、または、ユーザにオーディオコンテンツを提示しながら、トランスデューサアレイ中の少なくとも1つのトランスデューサの作動を介してユーザに与えられるべき触覚コンテンツの量を制御することと、トランスデューサアレイに、ユーザにオーディオコンテンツを提示するように命令することであって、オーディオコンテンツが触覚コンテンツを含む、ユーザにオーディオコンテンツを提示するように命令することとを行わせる、コンピュータプログラム製品を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】1つまたは複数の実施形態による、アイウェアデバイスとして実装されるヘッドセットの斜視図である。
図1B】1つまたは複数の実施形態による、ヘッドマウントディスプレイとして実装されるヘッドセットの斜視図である。
図2A】1つまたは複数の実施形態による、オーディオシステムのブロック図である。
図2B】1つまたは複数の実施形態による、周波数の関数としての、図2Aのオーディオシステムにおけるトランスデューサの作動についての触覚性(tactility)しきい値レベルを示す例示的なグラフである。
図3】1つまたは複数の実施形態による、オーディオコンテンツを提示しながら、触覚コンテンツのレベルを調整するためのプロセスを示すフローチャートである。
図4】1つまたは複数の実施形態による、ユーザに提示される触覚コンテンツを制御するためのプロセスを示すフローチャートである。
図5】1つまたは複数の実施形態による、ヘッドセットを含むシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図は、単に例示の目的で様々な実施形態を示す。本明細書で説明される原理から逸脱することなく、本明細書で示される構造および方法の代替実施形態が採用され得ることを、当業者は以下の説明から容易に認識されよう。
【0023】
外耳の近傍に置かれたトランスデューサが、人によって音として知覚され得る耳道内の音響圧力波を(たとえば、ある組織を励起することによって)作成することができる。ある周波数において、励起レベルが増加するとき、人は、(たとえば、組織中に埋め込まれた機械受容器を介して)触覚感覚(すなわち、タッチの感覚)を検知することを開始し得る。本開示の実施形態は、オーディオシステムのユーザに提示される触覚コンテンツのレベルを制御および調整するオーディオシステムに関する。
【0024】
提示されたコンテンツのモダリティ(すなわち、オーディオのみ、触覚のみまたはオーディオ/触覚の組合せ)を制御するためのオーディオシステムが本明細書に同封される。オーディオシステムは、トランスデューサアレイと、センサーアレイと、オーディオコントローラとを含む。トランスデューサアレイは、たとえば、軟骨伝導、骨伝導、空気伝導、またはそれらの何らかの組合せを介してユーザにコンテンツを提示する。センサーアレイは、トランスデューサアレイによって作り出された音を検出する。センサーアレイは、少なくとも1つの音響センサーおよび/または少なくとも1つの振動センサー(すなわち、加速度計)を含み得る。オーディオコントローラは、検出された音に基づいて、コンテンツを提示しながら、トランスデューサアレイ中の1つまたは複数のトランスデューサの作動を介してユーザに与えられ得る触覚フィードバックのレベルを調整するように、トランスデューサアレイを制御し得る。いくつかの実施形態では、オーディオコントローラは、ユーザがいかなる触覚コンテンツをも知覚しないように、触覚フィードバックのレベルを調整する。オーディオコントローラは、たとえば、ユーザに固有であり、較正プロセスを介して取得され得る、知覚モデルを使用して、触覚フィードバックのレベルを調整し得る。いくつかの実施形態では、オーディオコントローラは、トランスデューサアレイ中の1つまたは複数のトランスデューサの作動を介してユーザに与えられる触覚コンテンツを制御するようにトランスデューサアレイを制御する。1つまたは複数の実施形態では、トランスデューサアレイ中の少なくとも1つのトランスデューサが、触覚感覚(たとえば、タッチ)として感じられるのに十分に強い組織振動(たとえば、皮膚振動)を誘起するように構成される。ユーザによって知覚されるように意図的に制御された触覚コンテンツは、たとえば、ユーザにナビゲーション命令を提供すること、音声了解度を増加させること、近接場効果を提供すること、それらの何らかの組合せなどを行うために利用され得る。
【0025】
本明細書で提示されるオーディオシステムは、ヘッドセットの一部であり得る。ヘッドセットは、たとえば、ニアアイディスプレイ(NED)、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、または何らかの他のタイプのヘッドセットであり得る。ヘッドセットは、人工現実システムの一部であり得る。ヘッドセットは、ディスプレイと光学アセンブリとをさらに含む。ヘッドセットのディスプレイは、画像光を放出するように構成される。ヘッドセットの光学アセンブリは、画像光を、ユーザの眼のロケーションに対応するヘッドセットのアイボックス(eye box)に向けるように構成される。いくつかの実施形態では、画像光は、ヘッドセットの周囲のローカルエリアについての深度情報を含み得る。代替または追加として、本明細書で提示されるオーディオシステムは、(1つまたは複数の)軟骨伝導アクチュエータおよび/または(1つまたは複数の)骨伝導アクチュエータを有するスマートヘッドフォンのセットとともに動作し得る。
【0026】
本明細書で提示されるオーディオシステムは、オーディオシステムのユーザに提示される触覚コンテンツのレベルを制御および調整する。触覚コンテンツは、しばしば、迷惑なものと見なされることがある。本明細書で提示されるオーディオシステムは、触覚コンテンツをユーザにとって有用な情報にするように構成される。本明細書で提示されるオーディオシステムは、触覚コンテンツがユーザによって知覚されないように触覚コンテンツを軽減するようにも構成され得る。
【0027】
本発明の実施形態は、人工現実システムを含むか、または人工現実システムに関連して実装され得る。人工現実は、ユーザへの提示の前に何らかの様式で調整された形式の現実であり、これは、たとえば、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)、ハイブリッド現実、あるいはそれらの何らかの組合せおよび/または派生物を含み得る。人工現実コンテンツは、完全に生成されたコンテンツ、またはキャプチャされた(たとえば、現実世界の)コンテンツと組み合わせられた生成されたコンテンツを含み得る。人工現実コンテンツは、ビデオ、オーディオ、触覚フィードバック、またはそれらの何らかの組合せを含み得、それらのいずれも、単一のチャネルまたは複数のチャネルにおいて提示され得る(観察者に3次元効果をもたらすステレオビデオなど)。さらに、いくつかの実施形態では、人工現実は、人工現実におけるコンテンツを作成するために使用される、および/または人工現実において別様に使用される、アプリケーション、製品、アクセサリ、サービス、またはそれらの何らかの組合せにも関連し得る。人工現実コンテンツを提供する人工現実システムは、ホストコンピュータシステムに接続されたウェアラブルデバイス(たとえば、ヘッドセット)、独立型ウェアラブルデバイス(たとえば、ヘッドセット)、モバイルデバイスまたはコンピューティングシステム、あるいは、1人または複数の観察者に人工現実コンテンツを提供することが可能な任意の他のハードウェアプラットフォームを含む、様々なプラットフォーム上に実装され得る。
【0028】
図1Aは、1つまたは複数の実施形態による、アイウェアデバイスとして実装されるヘッドセット100の斜視図である。いくつかの実施形態では、アイウェアデバイスはNEDである。概して、ヘッドセット100は、コンテンツ(たとえば、メディアコンテンツ)が、ディスプレイアセンブリおよび/またはオーディオシステムを使用して提示されるように、ユーザの顔に装着され得る。しかしながら、ヘッドセット100はまた、メディアコンテンツが異なる様式でユーザに提示されるように使用され得る。ヘッドセット100によって提示されるメディアコンテンツの例は、1つまたは複数の画像、ビデオ、オーディオ、またはそれらの何らかの組合せを含む。ヘッドセット100は、フレームを含み、構成要素の中でも、1つまたは複数のディスプレイ要素120を含むディスプレイアセンブリと、深度カメラアセンブリ(DCA)と、オーディオシステムと、位置センサー190とを含み得る。図1Aは、ヘッドセット100上の例示的なロケーションにおけるヘッドセット100の構成要素を示すが、構成要素は、ヘッドセット100上の他の場所に、ヘッドセット100とペアリングされた周辺デバイス上に、またはそれらの何らかの組合せで位置し得る。同様に、図1Aに示されているものよりも多いまたは少ない構成要素がヘッドセット100上にあり得る。
【0029】
フレーム110は、ヘッドセット100の他の構成要素を保持する。フレーム110は、1つまたは複数のディスプレイ要素120を保持する前面部と、ユーザの頭部に付けるためのエンドピース(たとえば、テンプル)とを含む。フレーム110の前面部は、ユーザの鼻の上をまたいでいる。エンドピースの長さは、異なるユーザにフィットするように調整可能(たとえば、調整可能なテンプルの長さ)であり得る。エンドピースはまた、ユーザの耳の後ろ側で湾曲する部分(たとえば、テンプルの先端、イヤピース)を含み得る。
【0030】
1つまたは複数のディスプレイ要素120は、ヘッドセット100を装着しているユーザに光を提供する。図1Aに示されているように、ヘッドセット100は、ユーザの各眼のためのディスプレイ要素120を含む。いくつかの実施形態では、ディスプレイ要素120は、ヘッドセット100のアイボックスに提供される画像光を生成する。アイボックスは、ヘッドセット100を装着している間にユーザの眼が占有する空間中のロケーションである。たとえば、ディスプレイ要素120は導波路ディスプレイであり得る。導波路ディスプレイは、光ソース(たとえば、2次元ソース、1つまたは複数の線ソース、1つまたは複数の点ソースなど)と、1つまたは複数の導波路とを含む。光ソースからの光は、1つまたは複数の導波路中に内部結合され、1つまたは複数の導波路は、ヘッドセット100のアイボックス中に瞳複製(pupil replication)があるような様式で光を出力する。1つまたは複数の導波路からの光の内部結合および/または外部結合が、1つまたは複数の回折格子を使用して行われ得る。いくつかの実施形態では、導波路ディスプレイは、光ソースからの光が1つまたは複数の導波路中に内部結合されるときにその光を走査する走査要素(たとえば、導波路、ミラーなど)を含む。いくつかの実施形態では、ディスプレイ要素120の一方または両方が不透明であり、ヘッドセット100の周りのローカルエリアからの光を透過しないことに留意されたい。ローカルエリアは、ヘッドセット100の周囲のエリアである。たとえば、ローカルエリアは、ヘッドセット100を装着しているユーザが中にいる部屋であり得、または、ヘッドセット100を装着しているユーザは外にいることがあり、ローカルエリアは外のエリアである。このコンテキストでは、ヘッドセット100はVRコンテンツを生成する。代替的に、いくつかの実施形態では、ARおよび/またはMRコンテンツを作り出すために、ローカルエリアからの光が1つまたは複数のディスプレイ要素からの光と組み合わせられ得るように、ディスプレイ要素120の一方または両方は少なくとも部分的に透明である。
【0031】
いくつかの実施形態では、ディスプレイ要素120は、画像光を生成せず、代わりに、ローカルエリアからの光をアイボックスに透過するレンズである。たとえば、ディスプレイ要素120の一方または両方は、補正なしのレンズ(非処方)であるか、または、ユーザの視力の欠損を補正するのを助けるための処方レンズ(たとえば、単焦点、二焦点、および三焦点、または累進多焦点(progressive))であり得る。いくつかの実施形態では、ディスプレイ要素120は、太陽からユーザの眼を保護するために、偏光および/または色付けされ得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、ディスプレイ要素120は追加の光学ブロック(図示せず)を含み得ることに留意されたい。光学ブロックは、ディスプレイ要素120からの光をアイボックスに向ける1つまたは複数の光学要素(たとえば、レンズ、フレネルレンズなど)を含み得る。光学ブロックは、たとえば、画像コンテンツの一部または全部における収差を補正するか、画像の一部または全部を拡大するか、あるいはそれらの何らかの組合せを行い得る。
【0033】
DCAは、ヘッドセット100の周囲のローカルエリアの一部分についての深度情報を決定する。DCAは、1つまたは複数のイメージングデバイス130と、DCAコントローラ(図1Aに図示せず)とを含み、照明器140をも含み得る。いくつかの実施形態では、照明器140は、ローカルエリアの一部分を光で照明する。光は、たとえば、赤外線(IR)における構造化光(たとえば、ドットパターン、バーなど)、飛行時間についてのIRフラッシュなどであり得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のイメージングデバイス130は、照明器140からの光を含むローカルエリアの一部分の画像をキャプチャする。図示のように、図1Aは、単一の照明器140と2つのイメージングデバイス130とを示す。代替実施形態では、照明器140がなく、少なくとも2つのイメージングデバイス130がある。
【0034】
DCAコントローラは、キャプチャされた画像と1つまたは複数の深度決定技法とを使用して、ローカルエリアの一部分についての深度情報を算出する。深度決定技法は、たとえば、直接飛行時間(ToF)深度検知、間接ToF深度検知、構造化光、パッシブステレオ分析、アクティブステレオ分析(照明器140からの光によってシーンに追加されたテクスチャを使用する)、シーンの深度を決定するための何らかの他の技法、またはそれらの何らかの組合せであり得る。
【0035】
オーディオシステムはオーディオコンテンツを提供する。オーディオシステムは、トランスデューサアレイと、センサーアレイと、オーディオコントローラ150とを含む。ただし、他の実施形態では、オーディオシステムは、異なるおよび/または追加の構成要素を含み得る。同様に、いくつかの場合には、オーディオシステムの構成要素に関して説明される機能性は、ここで説明されるものとは異なる様式で構成要素の間で分散され得る。たとえば、オーディオコントローラ150の機能の一部または全部が、リモートサーバによって実施され得る。
【0036】
トランスデューサアレイは、ユーザに音を提示する。トランスデューサアレイは、複数のトランスデューサを含む。トランスデューサは、スピーカー160または組織トランスデューサ170(たとえば、骨伝導トランスデューサまたは軟骨伝導トランスデューサ)であり得る。図1Aに示されているように、スピーカー160は、フレーム110に囲まれ得る。いくつかの実施形態では、各耳のための個々のスピーカーの代わりに、ヘッドセット100は、たとえば、ビームフォーミングアレイ処理を使用して、提示されたオーディオコンテンツの方向性を改善するためにフレーム110に組み込まれた複数のスピーカーを備えるスピーカーアレイを含む。組織トランスデューサ170は、ユーザの頭部に結合し、ユーザの組織(たとえば、骨または軟骨)を直接振動させて、音を生成する。トランスデューサの数および/またはロケーションは、図1Aに示されているものとは異なり得る。
【0037】
センサーアレイは、ヘッドセット100のローカルエリア内の音を検出する。いくつかの実施形態では、センサーアレイは、複数の音響センサー180を含む。音響センサー180は、ローカルエリア(たとえば、部屋)中の1つまたは複数の音ソースから発せられた音をキャプチャする。各音響センサーは、音を検出し、検出された音を電子フォーマット(アナログまたはデジタル)に変換するように構成される。音響センサー180は、音響波センサー、マイクロフォン、音トランスデューサ、または音を検出するのに好適である同様のセンサーであり得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の音響センサー180は、各耳の耳道中に置かれ得る(たとえば、バイノーラルマイクロフォンとして働く)。いくつかの実施形態では、音響センサー180は、ヘッドセット100の外面上に置かれるか、ヘッドセット100の内面上に置かれるか、ヘッドセット100とは別個(たとえば、何らかの他のデバイスの一部)であるか、またはそれらの何らかの組合せであり得る。音響センサー180の数および/またはロケーションは、図1Aに示されているものとは異なり得る。たとえば、収集されたオーディオ情報の量ならびにその情報の感度および/または精度を増加させるために、音響検出ロケーションの数が増加され得る。音響検出ロケーションは、マイクロフォンが、ヘッドセット100を装着しているユーザの周囲の広範囲の方向における音を検出することが可能であるように、配向され得る。
【0039】
いくつかの他の実施形態では、センサーアレイは、複数の振動センサー、たとえば、加速度計を含む。加速度計は、音信号の振幅レベルを制御および/または調整するために使用される振動の加速度に関する情報をキャプチャする。加速度計は、フレーム110に埋め込まれ得る。代替的に、加速度計は、トランスデューサ、たとえば、組織トランスデューサ170の近傍において組織と接触しているように配置され得る。さらに、組織トランスデューサ170(たとえば、軟骨伝導トランスデューサ)が適切なロケーションにあることを保証するために近接度センサーも使用され得る。
【0040】
オーディオコントローラ150は、センサーアレイによって検出された音を表す、センサーアレイからの情報を処理する。オーディオコントローラ150は、プロセッサとコンピュータ可読記憶媒体とを備え得る。オーディオコントローラ150は、到来方向(DOA)推定値を生成するか、音響伝達関数(たとえば、アレイ伝達関数および/または頭部伝達関数)を生成するか、音ソースのロケーションを追跡するか、音ソースの方向にビームを形成するか、音ソースを分類するか、スピーカー160のための音フィルタを生成するか、またはそれらの何らかの組合せを行うように構成され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、オーディオコントローラ150は、たとえば、ユーザにオーディオコンテンツを提示しながら、トランスデューサ(たとえば、組織トランスデューサ170)のうちの少なくとも1つの作動を介してヘッドセット100を装着しているユーザに与えられる触覚コンテンツのレベルを調整するようにトランスデューサアレイを制御する。触覚コンテンツは、概して、オーディオコンテンツの副産物であり、オーディオを作り出す(1つまたは複数の)同じトランスデューサが、触覚コンテンツをも作り出すことができる。オーディオコントローラ150は、ユーザへの提示のために異なるモダリティのコンテンツを生成するように構成され得る。オーディオコントローラ150は、オーディオのみ、触覚のみ、またはオーディオと触覚との組合せであるコンテンツを生成するように構成され得る。さらに、オーディオコントローラ150は、コンテンツがユーザに提示されないように、オーディオコンテンツと触覚コンテンツの両方を軽減するように構成され得る。
【0042】
オーディオコントローラ150は、トランスデューサのうちの少なくとも1つの1つまたは複数の作動パラメータを調整することによって、触覚コンテンツを調整し得る。トランスデューサのための作動パラメータは、トランスデューサを作動させるために使用される信号(たとえば、機械的または電気的)であり得る。作動パラメータは、たとえば、電圧、電流、機械的圧力、何らかの他の作動信号、またはそれらの何らかの組合せであり得る。オーディオコントローラ150は、触覚性しきい値レベルに対する周波数帯域についての少なくとも1つのトランスデューサの作動パラメータを調整し得る。しきい値レベルを下回る作動パラメータの値は、周波数帯域についての触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚されない作動の範囲に対応し、しきい値レベルにあるかまたはそれを上回る値は、触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚される範囲に対応する。音響センサー180は、トランスデューサアレイ、たとえば、組織トランスデューサ170および/またはスピーカー160によって作り出された音を検出し得る。オーディオコントローラ150は、周波数帯域内の検出された音の一部分に基づいて、周波数帯域についての組織トランスデューサ170の作動パラメータについての触覚性しきい値レベルを導出し得る。オーディオコントローラ150は、次いで、周波数帯域内の触覚コンテンツの一部分の提示のために組織トランスデューサ170を作動させるとき、触覚性しきい値レベルを下回るように作動パラメータを調整し得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、オーディオコントローラ150は、制御された触覚コンテンツがある時間においてユーザによって知覚されるように、ユーザにオーディオコンテンツを提示しながら、トランスデューサ(たとえば、組織トランスデューサ170)のうちの少なくとも1つの作動を介してヘッドセット100を装着しているユーザに与えられる触覚コンテンツを制御する。そのような場合、トランスデューサアレイは、ユーザにオーディオコンテンツおよび制御された触覚コンテンツを提示する。1つまたは複数の実施形態では、オーディオコントローラ150は、ユーザにナビゲーション命令を提供するために、制御された触覚コンテンツを使用する。たとえば、オーディオコントローラ150は、ユーザにナビゲーション命令を提供するために、ユーザの対応する耳に取り付けられた対応する組織トランスデューサ170(たとえば、軟骨伝導トランスデューサ)に触覚コンテンツを適用する。別の実施形態では、オーディオコントローラ150は、ユーザに提示されるオーディオコンテンツについての音声了解度を増加させるように触覚コンテンツを制御する。また別の実施形態では、オーディオコントローラ150は、定義されたレベルの近接場効果を伴うオーディオコンテンツを生成するように触覚コンテンツを制御する。オーディオシステムのオーディオコントローラ150および他の構成要素の動作に関する追加の詳細は、図2A図3および図4に関して以下で提供される。
【0044】
位置センサー190は、ヘッドセット100の運動に応答して1つまたは複数の測定信号を生成する。位置センサー190は、ヘッドセット100のフレーム110の一部分に位置し得る。位置センサー190は、慣性測定ユニット(IMU)を含み得る。位置センサー190の例は、1つまたは複数の加速度計、1つまたは複数のジャイロスコープ、1つまたは複数の磁力計、運動を検出する別の好適なタイプのセンサー、IMUの誤差補正のために使用されるタイプのセンサー、またはそれらの何らかの組合せを含む。位置センサー190は、IMUの外部に、IMUの内部に、またはそれらの何らかの組合せで位置し得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、ヘッドセット100は、ヘッドセット100の位置のための同時位置特定およびマッピング(SLAM)と、ローカルエリアのモデルの更新とを提供し得る。たとえば、ヘッドセット100は、カラー画像データを生成するパッシブカメラアセンブリ(PCA)を含み得る。PCAは、ローカルエリアの一部または全部の画像をキャプチャする1つまたは複数のRGBカメラを含み得る。いくつかの実施形態では、DCAのイメージングデバイス130の一部または全部が、PCAとしても機能し得る。PCAによってキャプチャされた画像と、DCAによって決定された深度情報とは、ローカルエリアのパラメータを決定するか、ローカルエリアのモデルを生成するか、ローカルエリアのモデルを更新するか、またはそれらの何らかの組合せを行うために使用され得る。さらに、位置センサー190は、部屋内のヘッドセット100の位置(たとえば、ロケーションおよび姿勢)を追跡する。ヘッドセット100の構成要素に関する追加の詳細は、図5に関して以下で説明される。
【0046】
図1Bは、1つまたは複数の実施形態による、HMDとして実装されるヘッドセット105の斜視図である。ARシステムおよび/またはMRシステムについて説明する実施形態では、HMDの前側の部分は、可視帯域(約380nm~750nm)内で少なくとも部分的に透明であり、HMDの前側とユーザの眼との間にあるHMDの部分は、少なくとも部分的に透明である(たとえば、部分的に透明な電子ディスプレイ)。HMDは、前面剛体115とバンド175とを含む。ヘッドセット105は、図1Aを参照しながら上記で説明された同じ構成要素の多くを含むが、HMDフォームファクタと一体化するように修正される。たとえば、HMDは、ディスプレイアセンブリと、DCAと、オーディオシステムと、位置センサー190とを含む。図1Bは、照明器140と、複数のスピーカー160と、複数のイメージングデバイス130と、複数の音響センサー180と、位置センサー190とを示す。
【0047】
図2Aは、1つまたは複数の実施形態による、オーディオシステム200のブロック図である。図1Aまたは図1B中のオーディオシステムは、オーディオシステム200の一実施形態であり得る。オーディオシステム200は、ユーザのための1つまたは複数の音響伝達関数を生成する。オーディオシステム200は、次いで、ユーザのためのオーディオコンテンツを生成するために1つまたは複数の音響伝達関数を使用し得る。図2Aの実施形態では、オーディオシステム200は、トランスデューサアレイ210と、センサーアレイ220と、オーディオコントローラ230とを含む。オーディオシステム200のいくつかの実施形態は、ここで説明されるものとは異なる構成要素を有する。同様に、いくつかの場合には、機能は、ここで説明されるものとは異なる様式で構成要素の間で分散され得る。
【0048】
トランスデューサアレイ210は、コンテンツを提示するように構成される。提示されたコンテンツは、オーディオコンテンツ、触覚コンテンツ、またはそれらの何らかの組合せであり得る。トランスデューサアレイ210は、複数のトランスデューサを含む。トランスデューサは、コンテンツ、たとえば、オーディオコンテンツ、触覚コンテンツ、またはそれらの何らかの組合せを提供するデバイスである。トランスデューサは、たとえば、スピーカー(たとえば、スピーカー160)、組織トランスデューサ(たとえば、組織トランスデューサ170)、コンテンツを提供する何らかの他のデバイス、またはそれらの何らかの組合せであり得る。組織トランスデューサは、骨伝導トランスデューサまたは軟骨伝導トランスデューサとして機能するように構成され得る。トランスデューサアレイ210は、空気伝導を介して(たとえば、1つまたは複数のスピーカーを介して)、骨伝導を介して(1つまたは複数の骨伝導トランスデューサを介して)、軟骨伝導オーディオシステムを介して(1つまたは複数の軟骨伝導トランスデューサを介して)、またはそれらの何らかの組合せでコンテンツを提示し得る。いくつかの実施形態では、トランスデューサアレイ210は、周波数範囲の異なる部分をカバーするための1つまたは複数のトランスデューサを含み得る。たとえば、周波数範囲の第1の部分をカバーするために圧電トランスデューサが使用され得、周波数範囲の第2の部分をカバーするために可動コイルトランスデューサが使用され得る。
【0049】
骨伝導トランスデューサは、ユーザの頭部における骨/組織を振動させることによって音響圧力波を生成する。骨伝導トランスデューサは、ヘッドセットの一部分に結合され得、耳介の後ろでユーザの頭蓋骨の一部分に結合されるように構成され得る。骨伝導トランスデューサは、オーディオコントローラ230から振動命令を受信し、受信された命令に基づいてユーザの頭蓋骨の一部分を振動させる。骨伝導トランスデューサからの振動は、鼓膜を迂回して、ユーザの蝸牛のほうへ伝搬する組織伝搬音響圧力波を生成する。
【0050】
軟骨伝導トランスデューサは、ユーザの耳の耳介軟骨の1つまたは複数の部分を振動させることによって音響圧力波を生成する。軟骨伝導トランスデューサは、ヘッドセットの一部分に結合され得、耳の耳介軟骨の1つまたは複数の部分に結合されるように構成され得る。たとえば、軟骨伝導トランスデューサは、ユーザの耳の耳介の背面に結合し得る。軟骨伝導トランスデューサは、外耳の周りの耳介軟骨に沿ったどこか(たとえば、耳殻、耳珠、耳介軟骨の何らかの他の部分、またはそれらの何らかの組合せ)に位置し得る。耳介軟骨の1つまたは複数の部分を振動させることは、耳道外の空気伝搬音響圧力波、耳道のいくつかの部分を振動させ、それにより、耳道内に空気伝搬音響圧力波を生成させる、組織伝搬音響圧力波、またはそれらの何らかの組合せを生成し得る。生成された空気伝搬音響圧力波は、耳道に沿って鼓膜のほうへ伝搬する。
【0051】
トランスデューサアレイ210は、オーディオコントローラ230からの命令に従ってコンテンツを生成する。いくつかの実施形態では、コンテンツが空間化される。空間化されたコンテンツは、特定の方向および/またはターゲット領域(たとえば、ローカルエリア中のオブジェクトおよび/または仮想オブジェクト)から発生するように思われるコンテンツである。たとえば、空間化されたコンテンツは、オーディオシステム200のユーザから部屋の向こうの仮想歌手から音が発生しているように思わせることができる。トランスデューサアレイ210は、ウェアラブルデバイス(たとえば、ヘッドセット100またはヘッドセット105)に結合され得る。代替実施形態では、トランスデューサアレイ210は、ウェアラブルデバイスとは別個である(たとえば、外部コンソールに結合された)複数のスピーカーであり得る。
【0052】
センサーアレイ220は、センサーアレイ220の周囲のローカルエリア内の音を検出する。センサーアレイ220は、各々音波の空気圧力変動を検出し、検出された音を電子フォーマット(アナログまたはデジタル)に変換する、複数の音響センサーを含み得る。複数の音響センサーは、ヘッドセット(たとえば、ヘッドセット100および/またはヘッドセット105)上に、ユーザ上に(たとえば、ユーザの耳道中に)、ネックバンド上に、またはそれらの何らかの組合せで配置され得る。音響センサーは、たとえば、マイクロフォン、振動センサー、加速度計、またはそれらの任意の組合せであり得る。いくつかの実施形態では、センサーアレイ220は、複数の音響センサーのうちの少なくともいくつかを使用して、トランスデューサアレイ210によって生成されたオーディオコンテンツを監視するように構成される。センサーの数を増加させることは、トランスデューサアレイ210によって作り出された音場および/またはローカルエリアからの音を表す情報(たとえば、方向性)の精度を改善し得る。いくつかの実施形態では、センサーアレイ220の少なくとも1つのセンサーが、機械受容器がアクティブであるときにニューロンの発火を検知するように構成された非侵襲性電極またはユーザの組織内のインプラントとして実装され得る。センサーアレイ220の(1つまたは複数の)そのような実装されたセンサーは、ユーザからのいかなる手動フィードバックもなしに、ユーザの触覚感覚を検出することができる。
【0053】
オーディオコントローラ230は、オーディオシステム200の動作を制御する。図2Aの実施形態では、オーディオコントローラ230は、データストア235と、DOA推定モジュール240と、伝達関数モジュール250と、追跡モジュール260と、ビームフォーミングモジュール270と、音フィルタモジュール280と、触覚性制御モジュール285とを含む。オーディオコントローラ230は、いくつかの実施形態では、ヘッドセット内に位置し得る。オーディオコントローラ230のいくつかの実施形態は、ここで説明されるものとは異なる構成要素を有する。同様に、機能は、ここで説明されるものとは異なる様式で構成要素の間で分散され得る。たとえば、コントローラのいくつかの機能が、ヘッドセットの外部で実施され得る。
【0054】
データストア235は、オーディオシステム200による使用のためのデータを記憶する。データストア235中のデータは、オーディオシステム200のローカルエリアにおいて録音された音、コンテンツ(すなわち、オーディオコンテンツ、触覚コンテンツ、またはそれらの組合せ)、頭部伝達関数(HRTF)、1つまたは複数のセンサーのための伝達関数、音響センサーのうちの1つまたは複数のためのアレイ伝達関数(ATF)、音ソースロケーション、ローカルエリアの仮想モデル、到来方向推定値、音フィルタ、1つまたは複数の知覚モデル、作動パラメータ、およびオーディオシステム200による使用のために関連する他のデータ、またはそれらの任意の組合せを含み得る。
【0055】
トランスデューサアレイ210を介してユーザにコンテンツを提示するとき、触覚コンテンツのレベルを調整するために、データストア235に記憶された知覚モデルが、たとえば、触覚性制御モジュール285によって使用され得る。知覚モデルは、トランスデューサアレイ210中の1つまたは複数のトランスデューサを作動させるための周波数(または周波数帯域)の関数としての少なくとも1つの作動パラメータ(たとえば、入力電圧、入力電流など)についての触覚性しきい値レベルに関する情報を含み得る。周波数帯域についてのしきい値レベルを下回る作動パラメータの値は、周波数帯域についての触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚されない作動の範囲に対応し、しきい値レベルにあるかまたはそれを上回る値は、触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚される範囲に対応する。データストア235中の各知覚モデルが、特定のユーザおよび/または特定の音響環境(たとえば、屋内環境、屋外環境、空の部屋、占有された部屋など)について固有であり得る。代替的に、データストア235中の単一の知覚モデルが、複数のユーザおよび/または複数の音響環境について共通であり得る。いくつかの実施形態では、オーディオシステム200が位置する特定のユーザおよび/または特定の音響環境についてトランスデューサアレイ210の較正を実施することによって、データストア235中の知覚モデルが、たとえば、触覚性制御モジュール285によって取得され得る。
【0056】
DOA推定モジュール240は、センサーアレイ220からの情報に部分的に基づいて、ローカルエリアにおける音ソースの位置を特定するように構成される。位置特定は、オーディオシステム200のユーザに対して音ソースがどこに位置するかを決定するプロセスである。DOA推定モジュール240は、ローカルエリア内の1つまたは複数の音ソースの位置を特定するためにDOA分析を実施する。DOA分析は、音が発生した方向を決定するために、センサーアレイ220において、各音の強度、スペクトル、および/または到来時間を分析することを含み得る。いくつかの場合には、DOA分析は、オーディオシステム200が位置する周囲音響環境を分析するための任意の好適なアルゴリズムを含み得る。
【0057】
たとえば、DOA分析は、センサーアレイ220から入力信号を受信し、入力信号にデジタル信号処理アルゴリズムを適用して、到来方向を推定するように設計され得る。これらのアルゴリズムは、たとえば、入力信号がサンプリングされ、サンプリングされた信号の得られた重み付けおよび遅延されたバージョンが、DOAを決定するために一緒に平均化される、遅延和アルゴリズムを含み得る。適応フィルタを作成するために、最小2乗平均(LMS:least mean squared)アルゴリズムも実装され得る。この適応フィルタは、次いで、たとえば信号強度の差、または到来時間の差を識別するために使用され得る。これらの差は、次いで、DOAを推定するために使用され得る。別の実施形態では、DOAは、入力信号を周波数ドメインに変換し、処理すべき時間周波数(TF)ドメイン内の特定のビンを選択することによって決定され得る。各選択されたTFビンは、そのビンが、直接経路オーディオ信号をもつオーディオスペクトルの一部分を含むかどうかを決定するために、処理され得る。直接経路信号の一部分を有するビンは、次いで、センサーアレイ220が直接経路オーディオ信号を受信した角度を識別するために、分析され得る。決定された角度は、次いで、受信された入力信号についてのDOAを識別するために使用され得る。上記に記載されていない他のアルゴリズムも、DOAを決定するために、単独でまたは上記のアルゴリズムと組み合わせて使用され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、DOA推定モジュール240は、ローカルエリア内のオーディオシステム200の絶対位置に関するDOAをも決定し得る。センサーアレイ220の位置は、外部システム(たとえば、ヘッドセット、人工現実コンソール、マッピングサーバ、位置センサー(たとえば、位置センサー190)などの何らかの他の構成要素)から受信され得る。外部システムは、ローカルエリアとオーディオシステム200の位置とがマッピングされる、ローカルエリアの仮想モデルを作成し得る。受信された位置情報は、オーディオシステム200の一部または全部(たとえば、センサーアレイ220)のロケーションおよび/または配向を含み得る。DOA推定モジュール240は、受信された位置情報に基づいて、推定されたDOAを更新し得る。
【0059】
伝達関数モジュール250は、1つまたは複数の音響伝達関数を生成するように構成される。概して、伝達関数は、各可能な入力値についての対応する出力値を与える数学関数である。検出された音のパラメータに基づいて、伝達関数モジュール250は、オーディオシステムに関連する1つまたは複数の音響伝達関数を生成する。音響伝達関数は、アレイ伝達関数(ATF)、頭部伝達関数(HRTF)、他のタイプの音響伝達関数、またはそれらの何らかの組合せであり得る。ATFは、マイクロフォンが空間中の点からどのように音を受信するかを特徴づける。
【0060】
ATFは、音とセンサーアレイ220中の音響センサーによって受信された対応する音との間の関係を特徴づけるいくつかの伝達関数を含む。したがって、音ソースについて、センサーアレイ220中の音響センサーの各々についての対応する伝達関数がある。また、まとめて、伝達関数のセットはATFと呼ばれる。音ソースは、たとえば、ローカルエリアにおける音を生成する誰かまたは何か、ユーザ、あるいはトランスデューサアレイ210の1つまたは複数のトランスデューサであり得ることに留意されたい。センサーアレイ220に対する特定の音ソースロケーションについてのATFは、音が人の耳に進むときに音に影響を及ぼす人の解剖学的構造(たとえば、耳形状、肩など)により、ユーザによって異なり得る。したがって、センサーアレイ220のATFは、オーディオシステム200の各ユーザのために個人化される。
【0061】
いくつかの実施形態では、伝達関数モジュール250は、オーディオシステム200のユーザのための1つまたは複数のHRTFを決定する。HRTFは、耳が空間中の点からどのように音を受信するかを特徴づける。人に対する特定のソースロケーションについてのHRTFは、音が人の耳に進むときに音に影響を及ぼす人の解剖学的構造(たとえば、耳形状、肩など)により、人の各耳に固有である(および人に固有である)。いくつかの実施形態では、伝達関数モジュール250は、較正プロセスを使用してユーザのためのHRTFを決定し得る。いくつかの実施形態では、伝達関数モジュール250は、ユーザに関する情報をリモートシステムに提供し得る。リモートシステムは、たとえば、機械学習を使用して、ユーザにカスタマイズされたHRTFのセットを決定し、HRTFのカスタマイズされたセットをオーディオシステム200に提供する。
【0062】
追跡モジュール260は、1つまたは複数の音ソースのロケーションを追跡するように構成される。追跡モジュール260は、現在のDOA推定値を比較し、それらを、前のDOA推定値の記憶された履歴と比較し得る。いくつかの実施形態では、オーディオシステム200は、1秒当たり1回、または1ミリ秒当たり1回など、周期的スケジュールでDOA推定値を再計算し得る。追跡モジュールは、現在のDOA推定値を前のDOA推定値と比較し得、音ソースについてのDOA推定値の変化に応答して、追跡モジュール260は、音ソースが移動したと決定し得る。いくつかの実施形態では、追跡モジュール260は、ヘッドセットまたは何らかの他の外部ソースから受信された視覚情報に基づいてロケーションの変化を検出し得る。追跡モジュール260は、経時的に1つまたは複数の音ソースの移動を追跡し得る。追跡モジュール260は、各時点において音ソースの数と各音ソースのロケーションとについての値を記憶し得る。音ソースの数またはロケーションの値の変化に応答して、追跡モジュール260は、音ソースが移動したと決定し得る。追跡モジュール260は、位置特定分散(localization variance)の推定値を計算し得る。位置特定分散は、移動の変化の各決定についての信頼性レベルとして使用され得る。
【0063】
ビームフォーミングモジュール270は、あるエリア内の音ソースからの音を選択的に強調するが、他のエリアからの音を強調しないように、1つまたは複数のATFを処理するように構成される。センサーアレイ220によって検出された音を分析する際に、ビームフォーミングモジュール270は、ローカルエリアの特定の領域からの関連する音を強調するが、領域の外側からのものである音を強調しないために、異なる音響センサーからの情報を組み合わせ得る。ビームフォーミングモジュール270は、たとえば、DOA推定モジュール240および追跡モジュール260からの異なるDOA推定値に基づいて、ローカルエリアにおける他の音ソースから、特定の音ソースからの音に関連するオーディオ信号を切り離し得る。したがって、ビームフォーミングモジュール270は、ローカルエリアにおける個別の音ソースを選択的に分析し得る。いくつかの実施形態では、ビームフォーミングモジュール270は、音ソースからの信号を拡張し得る。たとえば、ビームフォーミングモジュール270は、いくつかの周波数を上回る信号、それらを下回る信号、またはそれらの間の信号を除去する、音フィルタを適用し得る。信号拡張は、センサーアレイ220によって検出された他の音に対して所与の識別された音ソースに関連する音を拡張するように働く。
【0064】
音フィルタモジュール280は、トランスデューサアレイ210のための音フィルタを決定する。いくつかの実施形態では、音フィルタは、オーディオコンテンツがターゲット領域から発生するように思われるように、オーディオコンテンツが空間化されることを引き起こす。音フィルタモジュール280は、音フィルタを生成するためにHRTFおよび/または音響パラメータを使用し得る。音響パラメータは、ローカルエリアの音響プロパティを表す。音響パラメータは、たとえば、残響時間、残響レベル、室内インパルス応答などを含み得る。いくつかの実施形態では、音フィルタモジュール280は、音響パラメータのうちの1つまたは複数を計算する。いくつかの実施形態では、音フィルタモジュール280は、(たとえば、図5に関して以下で説明されるように)マッピングサーバに音響パラメータを要求する。
【0065】
音フィルタモジュール280は、トランスデューサアレイ210に音フィルタを提供する。いくつかの実施形態では、音フィルタは、周波数に応じて音の正または負の増幅を引き起こし得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、触覚性制御モジュール285は、トランスデューサアレイ210を介してユーザにコンテンツを提示しながら、トランスデューサアレイ210中の少なくとも1つのトランスデューサ(たとえば、軟骨伝導トランスデューサ)の作動を介してユーザに与えられる触覚コンテンツのレベルを調整するようにトランスデューサアレイ210を制御する。コンテンツは、オーディオコンテンツのみ、触覚コンテンツのみ、またはオーディオコンテンツと触覚コンテンツとの組合せを含むことができる。オーディオコンテンツのみを配信するために、触覚性制御モジュール285は、周波数帯域についての触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚されないように、周波数帯域についての少なくとも1つのトランスデューサの作動パラメータ(たとえば、入力信号レベル)を触覚性しきい値レベルを下回るように調整し得る。触覚性しきい値レベルを下回る作動パラメータの値は、周波数帯域についての触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚されない作動の範囲に対応し、触覚性しきい値レベルにあるかまたはそれを上回る値は、触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚される範囲に対応することに留意されたい。
【0067】
1つまたは複数の実施形態では、触覚性制御モジュール285は、たとえば、トランスデューサ感度に基づいて、固定作動しきい値手法を適用することによって触覚コンテンツのレベルを調整する。トランスデューサ感度は、トランスデューサを介してユーザに配信される音圧波の複数の周波数帯域についての作動パラメータ(すなわち、入力電圧など、作動入力信号のレベル)と出力音圧との間の伝達関数として定義され得る。オーディオのみのコンテンツの場合、周波数帯域は、たとえば、ほぼ20Hzから20,000Hzの間の、人間的に知覚される音響スペクトルをカバーする一般的な周波数帯域である。触覚のみのコンテンツの場合、周波数帯域は、機械受容器が、主に、たとえば、500Hzを下回る周波数について敏感であるので、低い周波数、たとえば、ほぼ500Hzを下回る周波数に限定される。トランスデューサアレイ210中のトランスデューサの感度が、経時的におよび複数のユーザにわたって(たとえば、経時的におよび複数のユーザにわたって)一定である場合、触覚性制御モジュール285は、たとえば、人間によって知覚される音響スペクトルをカバーする複数の周波数帯域の各定義された周波数帯域における作動パラメータ(たとえば、作動信号)についての固定触覚性しきい値レベルを導出し得る。触覚性制御モジュール285は、導出された触覚性しきい値レベルに関連する特定の周波数帯域についての触覚性感覚を回避するために、トランスデューサアレイ210中の少なくとも1つのトランスデューサの作動のための作動パラメータのレベルが、導出された触覚性しきい値レベルを下回ることを保証するために、たとえば、標準ダイナミックレンジ圧縮方式を適用し得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、センサーアレイ220は、トランスデューサアレイ210中の少なくとも1つのトランスデューサが、周波数帯域のセットについての初期値のセットを有する作動パラメータを介して作動させられたとき、トランスデューサアレイ210によって作り出された音(すなわち、オーディオ/触覚を含むコンテンツ)を検出する。触覚性制御モジュール285は、周波数帯域内の検出された音の一部分に基づいて、そのセット中の各周波数帯域についての作動パラメータについての触覚性しきい値レベルを導出し得る。周波数帯域内の検出されたコンテンツの部分は、(たとえば、周波数帯域についての作動パラメータの初期値およびユーザの知覚に応じて)周波数帯域についてユーザによって知覚されるのに十分である触覚コンテンツの最小レベルよりも大きいかまたはそれよりも小さくなり得るある量の触覚性コンテンツを含み得る。触覚性制御モジュール285は、たとえば、周波数帯域についての作動パラメータの初期値に対して作動パラメータのレベルを調整することによって、周波数帯域についてのトランスデューサアレイ210によって作り出されたコンテンツの一部分が、ほぼ最小レベルの触覚コンテンツを含むように、周波数帯域についての作動パラメータについての触覚性しきい値レベルを決定し得る。触覚性制御モジュール285は、次いで、ユーザにコンテンツ(すなわち、オーディオのみ、触覚のみ、またはオーディオと触覚との組合せ)を提示しながら少なくとも1つのトランスデューサを作動させるとき、触覚性しきい値レベルに対して作動パラメータを調整し得る。作動パラメータが触覚性しきい値レベルにあるかまたはそれを上回るとき、周波数帯域についての触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚される。そうではなく、作動パラメータが触覚性しきい値レベルよりも低い場合、周波数帯域についての触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚されない。
【0069】
触覚性制御モジュール285は、データストア235からの知覚モデルを使用することによって、触覚性しきい値レベルに対する周波数帯域についての少なくとも1つのトランスデューサの作動パラメータを調整することによって触覚コンテンツのレベルを調整し得る。知覚モデルは、複数のユーザおよび/または音響環境について共通であり得る。代替的に、データストア235中の各知覚モデルが、各ユーザおよび/または音響環境について固有であり得る。代替的に、知覚モデルが、人々の特定のグループについて固有であり得、たとえば、ある知覚モデルが高齢者に好適であり得、別の知覚モデルが若者に好適であり得る。触覚性制御モジュール285は、トランスデューサアレイ210中の少なくとも1つのトランスデューサを較正することによって、特定のユーザおよび/または音響環境のための知覚モデルを生成し得る。較正中に、触覚性制御モジュール285は、周波数帯域の各々についての触覚コンテンツの知覚されるレベルに関するユーザからのフィードバック応答に基づいて、複数の周波数帯域についての触覚性しきい値レベルを決定する。たとえば、ユーザは、知覚モデルが生成される特定の音響環境中に位置し得る。1つまたは複数の実施形態では、知覚された触覚コンテンツに関するユーザの手動フィードバックに依拠する代わりに、触覚性感覚が、たとえば、ユーザのニューロンの発火を検知することが可能な、非侵襲性電極および/またはユーザの組織内のインプラントとして実装される、センサーアレイ220の1つまたは複数のセンサーによって自動的に検出され得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、触覚性制御モジュール285は、定義されたしきい値周波数を下回る周波数帯域内のセンサーアレイ220によって検出された音の一部分に基づいて、ユーザのためのトランスデューサアレイ210中の最小1つのトランスデューサの感度のレベルを推定する。触覚性制御モジュール285は、次いで、周波数帯域についての推定されたトランスデューサ感度に基づいて、周波数帯域についての少なくとも1つのトランスデューサの作動パラメータについての触覚性しきい値レベル(たとえば、入力電圧または何らかの他の作動信号のレベル)を導出し得る。触覚性制御モジュール285は、たとえば、周波数帯域についての触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚されないように、触覚性しきい値レベルを下回るように作動パラメータを調整する。代替的に、触覚性制御モジュール285は、周波数帯域についての触覚コンテンツの特定のレベルがユーザによって知覚されるように、触覚性しきい値レベルにあるかまたはそれを上回るように作動パラメータを調整する。
【0071】
触覚コンテンツのレベルを調整するためのこの特定の手法は、入力電圧しきい値が、たとえば、ユーザごとにおよび/または経時的に変動することがある推定されたトランスデューサ感度に基づいて調整されるので、適応入力電圧しきい値手法と呼ばれることがある。1つまたは複数の実施形態では、トランスデューサアレイ210中の少なくとも1つのトランスデューサの感度が、ユーザごとに変動するが、経時的に変動しないとき、触覚性制御モジュール285は、定義された周波数帯域についてのトランスデューサ感度、すなわち、各周波数帯域についての出力音圧と入力電圧との間の関数関係を測定するために、たとえば、インイヤーマイクロフォンを利用することによって、各ユーザについてワンタイム較正を適用し得る。測定されたトランスデューサ感度に基づいて、触覚性制御モジュール285は、次いで、周波数帯域についての触覚コンテンツの一部分を知覚するようにまたは知覚しないように、少なくとも1つのトランスデューサを作動させるための作動パラメータについての触覚性しきい値レベルを導出し得る。トランスデューサアレイ210中の少なくとも1つのトランスデューサの感度が同様に経時的に変動する場合、触覚性制御モジュール285は、特定の周波数帯域についての触覚性しきい値レベルを更新するために、定義された時間期間中に特定の回数、較正プロセスを繰り返すように構成され得る。
【0072】
1つまたは複数の他の実施形態では、インイヤーマイクロフォンの代わりに、軟骨伝導トランスデューサのいくつかの固有のプロパティが、眼鏡のフレーム上のマイクロフォン、たとえば、図1Aのフレーム110上に付けられた音響センサー180を使用して較正を実施するために活用され得る。たとえば、説明されるように、トランスデューサアレイ210中の1つまたは複数のトランスデューサが軟骨伝導トランスデューサとして実装され得る。触覚性感覚は、一般に、低周波数帯域中で生じる。軟骨伝導トランスデューサが、たとえば、ユーザの耳の耳介軟骨との良好な接触を有する場合、空気中の音響圧力波の放射パターンは、主に指向性である。しかしながら、軟骨伝導トランスデューサと耳介軟骨との間の直接接触がない場合、空気中の音響圧力波の放射パターンは、むしろ全方向性であり得る。したがって、触覚性制御モジュール285は、トランスデューサアレイ210の軟骨伝導トランスデューサの両側上のマイクロフォン(たとえば、音響センサー180)からの信号を比較することによって、低周波数帯域中のトランスデューサ感度を推定することが可能であり得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、感度ベース較正の代わりに、触覚性制御モジュール285は、異なる入力信号(たとえば、電圧)における触覚性感覚に関するユーザのフィードバックに基づいて、周波数の範囲についての入力信号しきい値曲線を測定するように構成され得る。ユーザの手動フィードバックの代わりに、触覚性感覚が、たとえば、非侵襲性電極および/またはユーザの組織内のインプラントとして実装され、機械受容器がアクティブであるときにニューロンの発火を検知するように構成された、センサーアレイ220の1つまたは複数のセンサーによって検出され得る。触覚性制御モジュール285は、ユーザにおいて検出された触覚性感覚に基づいて、周波数の範囲についてのトランスデューサアレイ210中の少なくとも1つのトランスデューサの作動パラメータについての触覚性しきい値レベルを導出し得る。触覚性制御モジュール285は、触覚コンテンツの少なくとも一部分がユーザによって知覚されないように、少なくとも1つのトランスデューサについての作動パラメータをしきい値レベルを下回るように調整し得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、センサーアレイ220の少なくとも1つのセンサー(たとえば、マイクロフォンおよび/または加速度計)が、ユーザにオーディオ信号を提示するとき、トランスデューサアレイ210中の少なくとも1つのトランスデューサによって生成された音圧および/または加速度を監視する。触覚性制御モジュール285は、次いで、特定の周波数についてのオーディオコンテンツの振幅がしきい値レベルを下回るように、音圧および加速度の少なくとも一方または両方に基づいて、ユーザに提示されたオーディオコンテンツを制御し得る。(触覚性)しきい値レベルを下回る振幅の値は、周波数についての触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚されないオーディオコンテンツに対応し、しきい値レベルにあるかまたはそれを上回る値は、触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚されるオーディオコンテンツに対応する。したがって、そのような場合、触覚性制御モジュール285は、センサーアレイ220とともに、触覚なしオーディオコンテンツを達成するためにトランスデューサアレイ210のアクティブ制御を実施する。一実施形態では、周波数(または周波数帯域)についての触覚性感覚についてのしきい値レベルが、たとえば、平均触覚性しきい値曲線が対象のグループについて取得されたユーザスタディから取得され得る。別の実施形態では、ユーザが、たとえば、聴覚およびオーディオメーター適用例と実質的に同様の、それ自身のカスタム触覚性しきい値曲線を作成することができる適用例を使用して、周波数(または周波数帯域)についての触覚性感覚についてのしきい値レベルが取得され得る。
【0075】
本開示のいくつかの実施形態によれば、オーディオシステム200の1つの目的は、触覚刺激を通してオーディオ体験を増補することであり得る。オーディオ信号を配信するための、耳の耳殻における1つまたは複数の軟骨伝導トランスデューサをもつトランスデューサアレイ210を有するオーディオシステム200の場合、1つまたは複数の軟骨伝導トランスデューサは、触覚感覚をも作り出し得る。触覚感覚は、オーディオ配信の副産物であり得る。代替的に、触覚感覚は、触覚のみの信号、たとえば、定義されたしきい値を下回る振幅をもつ信号としてアクティブに制御され得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、触覚性制御モジュール285は、視覚を混乱させることなしに、または他のオーディオコンテンツ、たとえば、通話を中断することなしに、ナビゲーション信号を配信するために、トランスデューサアレイ210中の少なくとも1つのトランスデューサの作動を介してユーザに与えられる触覚コンテンツを制御する。ナビゲーション情報を伴う制御された触覚コンテンツは、ユーザに配信される唯一のコンテンツであり得るか、またはオーディオコンテンツとともに配信され得る。1つまたは複数の実施形態では、運転者の対応する耳に結合された少なくとも1つの軟骨伝導に適用される触覚信号が、適切なナビゲーション命令を提供することができる。たとえば、右耳上の鳴動が、右折命令を伝え得、左耳上の鳴動が、左折命令を伝え得、両方の耳上の鳴動が、「直進運転」命令を伝え得る。鳴動は、間欠的または連続的であり得る。一実施形態では、鳴動は、弱く開始し、ユーザが、曲がるべきである交差点のより近くに移動するにつれて、より強くなり得る。対応する耳に適用される(たとえば、経時的に弱くなる)断続する鳴動は、ユーザが曲がり損ねたという情報を伝え得る。触覚性制御モジュール285は、たとえば、ユーザのモバイルデバイス上で利用可能なサードパーティナビゲーションアプリからのユーザロケーションおよび移動方向に関する情報を有し得る。代替的に、触覚性制御モジュール285は、ロケーションを活用し、マッピングサーバからマッピングし得、マッピングサーバは、触覚コンテンツを適宜に制御する触覚性制御モジュール285へのナビゲーション命令を生成し、提供し得る。
【0077】
いくつかの他の実施形態では、触覚性制御モジュール285は、たとえば、オーディオコンテンツとともに、ユーザに提示される触覚コンテンツを制御することによって音声了解度を拡張する。たとえば、触覚刺激が、「b」および「p」のような無気音音節(non-aspirated syllable)の聴覚を改善するために配信され得る。そのような場合、触覚刺激は、たとえば、聴覚を増補するための振動触覚インターフェースによって配信され得る。
【0078】
いくつかの他の実施形態では、アクティブに制御される触覚信号は、近接場効果を作り出すために使用され得る。触覚性制御モジュール285は、触覚コンテンツを制御することによって、定義されたレベルの近接場効果を伴うオーディオコンテンツを生成するように構成され得る。一実施形態では、触覚性制御モジュール285は、耳の周りでブンブン飛ぶ仮想蚊のより現実的な知覚対象(percept)としての近接場効果を作り出すように触覚コンテンツを制御し得る。別の実施形態では、触覚性制御モジュール285は、ユーザの耳の近くでささやく誰か、たとえば、何らかの他の人または仮想アシスタントの呼吸としての近接場効果を作り出すように触覚コンテンツを制御し得る。
【0079】
一般に、聴力(すなわち、聞く行為)は、音声知覚のためにタッチと統合される。たとえば、「b」のような無気音音節は、首または手首上の空気パフ(air-puff)と同期されたとき、有気音(aspirated)「p」として聞かれる可能性が高くなる。現実のシナリオでは、聴覚を増補するために、触覚刺激が、空気パフの代わりに振動触覚インターフェースによって配信され得る。雑音が多い環境では、たとえば、音声知覚を改善するために、慎重に配信された触覚刺激が使用され得る。したがって、好ましいレベルの触覚刺激を配信するために、触覚性制御モジュール285は、ユーザが注意を払っている音声信号を復号するために自然言語処理(NLP)を実施し得る。次いで、触覚性制御モジュール285は、復号された音声信号に基づいて適宜に触覚刺激を調節し得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、触覚刺激は、聴力のために設計されたデバイスによっても配信され得る。たとえば、トランスデューサアレイ210中の軟骨および骨伝導トランスデューサが、触覚感覚を誘起する(たとえば、特に周波数スペクトルのローエンドにおける)振動を配信し得る。そのような寄生信号は、音声知覚を増補するためにも活用され得る。触覚性制御モジュール285は、触覚感覚の強度を増加させるかまたは低減するために、たとえば、スペクトルのローエンドを、「p」をより理解可能にするために高め、それを「b」のために低減するために、特定の音響信号のスペクトルコンテンツを変えることによって、ユーザへの提示のために触覚コンテンツを制御し得る。1つまたは複数の実施形態では、触覚性制御モジュール285は、たとえば、データストア235に記憶され、センサーアレイ220によって検出された音に少なくとも部分的に基づいて生成された、知覚モデルに基づいて、スペクトルコンテンツを変えることを実施する。
【0081】
1つまたは複数の他の実施形態では、触覚性制御モジュール285は、オーディオ信号の周波数スペクトルの一部分を拡張することによって、ユーザへの提示のために触覚コンテンツを制御する。耳における接触トランスデューサ(たとえば、組織トランスデューサ170)をもつ頭部装着型AR眼鏡の場合、マイクロフォンアレイ(たとえば、音響センサー180のアレイ)によってキャプチャされた信号が、音響コンテンツと触覚コンテンツとの定義された組合せを用いて自然音ソース(たとえば、別の話者)を補強するために触覚性制御モジュール285によって使用され得る。代替的に、触覚性制御モジュール285は、自然音ソースを補強するために1つのモダリティのみ(音響または触覚)を通して周波数スペクトルの一部分の選択的拡張を実施し得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、触覚性制御モジュール285は、触覚コンテンツを制御することによって、たとえば、テレプレゼンスにおいて音ソースを拡張する。たとえば、触覚性制御モジュール285は、(現実のささやきは触覚感覚を誘起しないことがあるが)ささやきを知覚的により没入型および現実的にするように触覚コンテンツを制御し得る。触覚性制御モジュール285によって拡張された音ソースは、ユーザからリモートにあるロケーションに位置し得る。音ソースは、仮想音ソース、たとえば、ユーザの肩上の仮想アシスタントまたは仮想の飛んでいる虫であり得る。代替的に、音ソースは、ユーザに方向性情報を提供するための触覚鳴動など、抽象的であり得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、触覚性制御モジュール285は、ユーザへの提示のために触覚コンテンツを伴うオーディオコンテンツを生成するためにオーディオ信号に対して触覚拡張を実施する。第1に、音響信号が(たとえば、センサーアレイ220によって)記録されるか、または(たとえば、触覚性制御モジュール285によって)生成され得る。その後、触覚性制御モジュール285は、たとえば、音声セグメンテーション、周波数選択性フィルタ処理、特徴抽出、何らかの他の処理技法、またはそれらの組合せを適用することによって、触覚拡張のために音響信号を処理し得る。触覚性制御モジュール285は、次いで、処理された音響信号に基づいて触覚刺激を作成し得る。代替的に、触覚性制御モジュール285は、オーディオコンテンツがユーザに配信されるとき、触覚感覚を作り出すためにオーディオ信号をフィルタ処理し得る。触覚信号が、音響信号とともに、たとえば、耳珠または耳殻に結合された軟骨伝導トランスデューサによって、または骨伝導トランスデューサによって、耳の近くに位置するトランスデューサアレイ210の接触トランスデューサを介して配信され得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、センサーアレイ220は、ユーザにオーディオコンテンツを提示するときにトランスデューサアレイ210中の少なくとも1つのトランスデューサ(たとえば、軟骨伝導トランスデューサ)によって作り出された音を検出する。触覚性制御モジュール285は、たとえば、音響圧力波の軟骨伝導により、検出された音の劣化のレベルを検出し得る。触覚性制御モジュール285は、次いで、劣化の検出されたレベルに基づいて、オーディオ信号中の音響コンテンツの劣化を軽減するためにオーディオ信号を処理し得る。いくつかの実施形態では、触覚性制御モジュール285は、分類器をトレーニングするために、検出された音に対して機械学習を実施する。触覚性制御モジュール285は、検出された音のタイプおよび特徴に基づいて、検出された音を異なるクラス(すなわち、劣化の異なるタイプ)に分類するために、トレーニングされた分類器を適用し得る。触覚性制御モジュール285はまた、特定のタイプの劣化がしきい値レベルを上回る場合、ユーザにアラートし得る。
【0085】
図2Bは、1つまたは複数の実施形態による、周波数の関数としての、たとえば、オーディオシステム200中のトランスデューサアレイ210のトランスデューサについての平均触覚性しきい値レベルを示す例示的なグラフ290である。図2Bに示されている曲線295が、触覚コンテンツの周波数の関数としての(たとえば、音圧レベル(SPL)として表される)平均触覚性しきい値レベルを表す。グラフ290は、提示されたコンテンツの可聴性と触覚感覚の両方についてのしきい値レベルを示す。曲線295を下回るSPLの値は、特定の周波数についての触覚コンテンツの一部分が「平均ユーザ」によって知覚されない場合に対応する。曲線295にあるかまたはそれを上回るSPLの値は、触覚コンテンツの一部分が「平均ユーザ」によって知覚される場合に対応する。たとえば、グラフ290は、200Hzにおいて、軟骨伝導トランスデューサによって作成されるSPLがほぼ80dBを上回る場合、「平均ユーザ」がオーディオと触覚の両方を同時に知覚する、すなわち、そのユーザが、聞くだけでなく感覚を感じることを示す。
【0086】
触覚性しきい値曲線295は、ユーザのグループのための触覚性しきい値を平均化することによってユーザのグループのために収集された触覚性しきい値データに基づく。示されている実施形態では、SPLのdBレベルによって表される触覚性しきい値データは、各ユーザの耳上の同じロケーションに置かれた固有の(たとえば、カスタムメイドの)軟骨伝導トランスデューサを使用して取得される。また、軟骨伝導トランスデューサについての励起レベルが、知覚されるオーディオがバイモーダルになるまで、すなわち、オーディオコンテンツと触覚コンテンツとを含むまで、増分的に増加される。たとえば、各ユーザの皮膚と空中とに送信されたエネルギーの量に基づいて、異なる軟骨伝導トランスデューサを利用することによって、図2Bの触覚性しきい値曲線とは異なる触覚性しきい値曲線が生成され得ることに留意されたい。さらに、SPLと触覚性感覚との間の関係は、SPLが、異なるトランスデューサデバイスを使用して測定されるとき、変動し得る。
【0087】
図2Bの触覚性しきい値曲線295は、より低い周波数において、より高い周波数の場合よりも、触覚ドメイン中にある確率がより高いことを示す。グラフ290に示されている触覚性しきい値データは、たとえば、耳道への入口に置かれたマイクロフォンを使用して取得される。耳殻と接触している加速度計が使用される場合、同様のしきい値曲線が取得され得る。そのような場合、触覚性しきい値データは、コンテンツが聞かれ得るとともに感じられ得るときについての加速度しきい値を表すことになる。加速度しきい値は、(たとえば、積分によって)速度に関する情報にまたは(たとえば、二重積分によって)組織の変位に関する情報に変換され得ることに留意されたい。(図2Bに示されていない)他の実施形態では、同様の曲線が骨伝導および空気伝導について取得され得る。
【0088】
図3は、1つまたは複数の実施形態による、オーディオコンテンツを提示しながら、触覚コンテンツのレベルを調整するための方法300のフローチャートである。図3に示されているプロセスは、オーディオシステム(たとえば、オーディオシステム200)の構成要素によって実施され得る。他のエンティティが、他の実施形態において図3中のステップの一部または全部を実施し得る。実施形態は、異なるおよび/または追加のステップを含むか、あるいは異なる順序でステップを実施し得る。オーディオシステムは、ヘッドセットの一部であり得る。
【0089】
オーディオシステムは、310において、トランスデューサアレイのトランスデューサによって作り出された音を(たとえば、センサーアレイ220を介して)検出する。オーディオシステムは、たとえば、ユーザの組織に結合されたまたはユーザの組織に配置された1つまたは複数のセンサーを介して、ユーザの組織内の触覚性感覚を検出し得る。代替または追加として、オーディオシステムは、ユーザにオーディオを提示するときにトランスデューサによって生成された音圧および/または加速度を監視し得る。オーディオシステムは、定義された周波数についてのオーディオコンテンツの振幅が触覚性しきい値レベルを下回るように、監視された音圧および/または加速度に基づいて、ユーザに提示されたオーディオを制御し得る。しきい値レベルを下回る振幅の値は、周波数についての触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚されないオーディオに対応し、しきい値レベルにあるかまたはそれを上回る値は、触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚されるオーディオに対応する。
【0090】
オーディオシステムは、320において、周波数帯域内の検出された音の一部分に基づいて、周波数帯域についてのトランスデューサの作動パラメータについての触覚性しきい値レベルを導出する。触覚性しきい値レベルを下回る作動パラメータの値は、周波数帯域についての触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚されない作動の範囲に対応し、しきい値レベルにあるかまたはそれを上回る値は、触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚される範囲に対応する。いくつかの実施形態では、オーディオシステムは、定義されたしきい値周波数を下回る周波数帯域中の検出された音の一部分に基づいて、ユーザのためのトランスデューサの感度のレベルを推定する。オーディオシステムは、感度の推定されたレベルに基づいて、作動パラメータについてのしきい値レベルを導出する。いくつかの他の実施形態では、オーディオシステムは、たとえば、ユーザの組織内に位置するセンサーアレイ220の1つまたは複数のセンサーによって、検出された触覚性感覚に基づいて、作動パラメータについてのしきい値レベルを導出する。
【0091】
いくつかの実施形態では、配信された触覚コンテンツの複数の周波数帯域についての特定のユーザおよび/または音響環境についての検出された触覚性感覚に基づいて、オーディオシステムは、知覚モデルを生成するために較正される。知覚モデルは、トランスデューサを作動させるための周波数帯域(または周波数)の関数としての作動パラメータ(たとえば、入力電圧)についての触覚性しきい値レベルに関する情報を含み得る。知覚モデルは、複数のユーザおよび/または複数の音響環境について同等であり得る。代替的に、知覚モデルは、特定のユーザおよび/または特定の音響環境について固有であり得る。
【0092】
オーディオシステムは、330において、ユーザにオーディオコンテンツを提示しながら、トランスデューサアレイ中のトランスデューサの作動を介してユーザに与えられるべき触覚コンテンツのレベルを(たとえば、触覚性制御モジュール285を介して)調整する。オーディオシステムは、特定の周波数帯域についての触覚性しきい値レベルに対してトランスデューサの作動パラメータ(すなわち、電圧または電流など、作動信号のレベル)を調整することによって触覚コンテンツのレベルを調整し得る。いくつかの実施形態では、オーディオシステムは、特定の周波数帯域についての触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚されないように、トランスデューサを作動させるとき、触覚性しきい値レベルを下回るように作動パラメータを調整する。オーディオシステムは、知覚モデルに基づいて触覚コンテンツのレベルを調整し得る。
【0093】
オーディオシステムは、340において、トランスデューサに、ユーザにオーディオコンテンツを提示するように命令し、オーディオコンテンツは、触覚コンテンツの調整されたレベルを含む。オーディオシステム(たとえば、触覚性制御モジュール285)は、ユーザが周波数帯域についてのいかなる触覚感覚をも知覚しないように、周波数帯域についての作動パラメータのレベル(たとえば、入力電圧レベル)を、周波数帯域についての触覚性しきい値レベルを下回るトランスデューサのアクチュエータに適用し得る。
【0094】
図4は、1つまたは複数の実施形態による、ユーザに提示される触覚コンテンツを制御するための方法400のフローチャートである。図4に示されているプロセスは、オーディオシステム(たとえば、オーディオシステム200)の構成要素によって実施され得る。他のエンティティが、他の実施形態において図4中のステップの一部または全部を実施し得る。実施形態は、異なるおよび/または追加のステップを含むか、あるいは異なる順序でステップを実施し得る。オーディオシステムは、ヘッドセットの一部であり得る。
【0095】
オーディオシステムは、410において、ユーザにオーディオコンテンツを提示しながら、トランスデューサアレイ中の少なくとも1つのトランスデューサの作動を介してユーザに与えられるべき触覚コンテンツの量を(たとえば、触覚性制御モジュール285を介して)制御する。オーディオシステムは、制御された触覚コンテンツを使用することによってナビゲーション情報を提供し得る。さらに、オーディオシステムは、提示されるオーディオコンテンツ内の触覚コンテンツの量を制御することによって、ユーザに提示されるオーディオコンテンツについての音声了解度を増加させ得る。代替または追加として、オーディオシステムは、提示されるオーディオコンテンツ内の触覚コンテンツの量を制御することによって、定義されたレベルの近接場効果を伴うオーディオコンテンツを生成し得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、オーディオシステムは、(たとえば、データストア235において記憶された)知覚モデルに基づいて、入力オーディオ信号のスペクトルコンテンツを変えることによってオーディオコンテンツを生成するときに触覚コンテンツの量を制御する。オーディオシステムは、トランスデューサアレイによって作り出された音を(たとえば、センサーアレイを介して)検出し得る。オーディオシステムは、触覚コンテンツのレベルを調整するために、検出された音に関する情報を知覚モデルに入力し得る。いくつかの他の実施形態では、オーディオシステムは、ユーザへの提示のためにオーディオコンテンツを生成するときにオーディオ信号の周波数スペクトルの一部分を拡張することによって触覚コンテンツを制御する。またいくつかの他の実施形態では、オーディオシステムは、触覚コンテンツを制御することによって音ソースを拡張し、音ソース(たとえば、仮想音ソース)は、ユーザからリモートにあるロケーションに位置する。
【0097】
いくつかの実施形態では、オーディオコントローラは、ユーザへの提示のために触覚コンテンツを伴うオーディオコンテンツを作成するために入力オーディオ信号に対して触覚拡張を実施する。いくつかの他の実施形態では、オーディオシステムは、少なくとも1つの軟骨伝導トランスデューサを含むトランスデューサアレイによって作り出された音を(たとえば、センサーアレイを介して)検出する。オーディオシステムは、たとえば、音響圧力波の軟骨伝導により、検出された音の劣化のレベルを検出し得る。オーディオシステムは、劣化の検出されたレベルに基づいて、ユーザへの提示のためにオーディオコンテンツ中の音響コンテンツの劣化を軽減するためにオーディオ信号を処理し得る。
【0098】
オーディオシステムは、420において、トランスデューサアレイに、ユーザにオーディオコンテンツを提示するように命令し、オーディオコンテンツは、触覚コンテンツを含む。いくつかの実施形態では、オーディオシステムは、触覚コンテンツを使用してユーザにナビゲーション命令を提供する。トランスデューサアレイは、複数の軟骨伝導トランスデューサを含み得、軟骨伝導トランスデューサのうちの少なくとも1つが、ユーザの対応する耳に取り付けられる。オーディオシステムは、たとえば、ユーザにナビゲーション命令を提供するために、少なくとも1つの軟骨伝導トランスデューサを介して対応する耳に触覚コンテンツを適用する。
【0099】
システム環境
図5は、1つまたは複数の実施形態による、ヘッドセット505を含むシステム500である。いくつかの実施形態では、ヘッドセット505は、図1Aのヘッドセット100または図1Bのヘッドセット105であり得る。システム500は、人工現実環境(たとえば、仮想現実環境、拡張現実環境、複合現実環境、またはそれらの何らかの組合せ)において動作し得る。図5によって示されているシステム500は、ヘッドセット505と、コンソール515に結合された入出力(I/O)インターフェース510と、ネットワーク520と、マッピングサーバ525とを含む。図5は、1つのヘッドセット505と1つのI/Oインターフェース510とを含む例示的なシステム500を示すが、他の実施形態では、任意の数のこれらの構成要素が、システム500中に含まれ得る。たとえば、各々が、関連するI/Oインターフェース510を有する、複数のヘッドセットがあり得、各ヘッドセットおよびI/Oインターフェース510はコンソール515と通信する。代替構成では、異なるおよび/または追加の構成要素が、システム500中に含まれ得る。さらに、図5に示されている構成要素のうちの1つまたは複数に関して説明される機能性は、いくつかの実施形態では、図5に関して説明されるものとは異なる様式で構成要素の間で分散され得る。たとえば、コンソール515の機能性の一部または全部がヘッドセット505によって提供され得る。
【0100】
ヘッドセット505は、ディスプレイアセンブリ530と、光学ブロック535と、1つまたは複数の位置センサー540と、DCA545とを含む。ヘッドセット505のいくつかの実施形態は、図5に関して説明されるものとは異なる構成要素を有する。さらに、図5に関して説明される様々な構成要素によって提供される機能性は、他の実施形態ではヘッドセット505の構成要素の間で別様に分散されるか、またはヘッドセット505からリモートにある別個のアセンブリにおいて取り込まれ得る。
【0101】
ディスプレイアセンブリ530は、コンソール515から受信されたデータに従ってユーザにコンテンツを表示する。ディスプレイアセンブリ530は、1つまたは複数のディスプレイ要素(たとえば、ディスプレイ要素120)を使用してコンテンツを表示する。ディスプレイ要素は、たとえば、電子ディスプレイであり得る。様々な実施形態では、ディスプレイアセンブリ530は、単一のディスプレイ要素または複数のディスプレイ要素(たとえば、ユーザの各眼のためのディスプレイ)を備える。電子ディスプレイの例は、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、アクティブマトリックス有機発光ダイオードディスプレイ(AMOLED)、導波路ディスプレイ、何らかの他のディスプレイ、またはそれらの何らかの組合せを含む。いくつかの実施形態では、ディスプレイ要素120は光学ブロック535の機能性の一部または全部をも含み得ることに留意されたい。
【0102】
光学ブロック535は、電子ディスプレイから受光された画像光を拡大し得、画像光に関連する光学誤差を補正し、補正された画像光をヘッドセット505の一方または両方のアイボックスに提示する。様々な実施形態では、光学ブロック535は、1つまたは複数の光学要素を含む。光学ブロック535中に含まれる例示的な光学要素は、アパーチャ、フレネルレンズ、凸レンズ、凹レンズ、フィルタ、反射面、または画像光に影響を及ぼす任意の他の好適な光学要素を含む。その上、光学ブロック535は、異なる光学要素の組合せを含み得る。いくつかの実施形態では、光学ブロック535中の光学要素のうちの1つまたは複数は、部分反射コーティングまたは反射防止コーティングなど、1つまたは複数のコーティングを有し得る。
【0103】
光学ブロック535による画像光の拡大および集束は、電子ディスプレイが、より大きいディスプレイよりも、物理的により小さくなり、重さが減じ、少ない電力を消費することを可能にする。さらに、拡大は、電子ディスプレイによって提示されるコンテンツの視野を増加させ得る。たとえば、表示されるコンテンツの視野は、表示されるコンテンツが、ユーザの視野のほとんどすべて(たとえば、対角約110度)、およびいくつかの場合にはすべてを使用して提示されるようなものである。さらに、いくつかの実施形態では、拡大の量は、光学要素を追加することまたは取り外すことによって調整され得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、光学ブロック535は、1つまたは複数のタイプの光学誤差を補正するように設計され得る。光学誤差の例は、たる形ひずみまたは糸巻き形ひずみ、縦色収差、あるいは横色収差を含む。他のタイプの光学誤差は、球面収差、色収差、またはレンズ像面湾曲による誤差、非点収差、または任意の他のタイプの光学誤差をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、表示のために電子ディスプレイに提供されるコンテンツは予歪され、光学ブロック535が、そのコンテンツに基づいて生成された画像光を電子ディスプレイから受光したとき、光学ブロック535はそのひずみを補正する。
【0105】
位置センサー540は、ヘッドセット505の位置を示すデータを生成する電子デバイスである。位置センサー540は、ヘッドセット505の運動に応答して1つまたは複数の測定信号を生成する。位置センサー190は、位置センサー540の一実施形態である。位置センサー540の例は、1つまたは複数のIMU、1つまたは複数の加速度計、1つまたは複数のジャイロスコープ、1つまたは複数の磁力計、運動を検出する別の好適なタイプのセンサー、またはそれらの何らかの組合せを含む。位置センサー540は、並進運動(前/後、上/下、左/右)を測定するための複数の加速度計と、回転運動(たとえば、ピッチ、ヨー、ロール)を測定するための複数のジャイロスコープとを含み得る。いくつかの実施形態では、IMUは、測定信号を迅速にサンプリングし、サンプリングされたデータからヘッドセット505の推定位置を計算する。たとえば、IMUは、加速度計から受信された測定信号を経時的に積分して速度ベクトルを推定し、その速度ベクトルを経時的に積分して、ヘッドセット505上の基準点の推定位置を決定する。基準点は、ヘッドセット505の位置を表すために使用され得る点である。基準点は、概して空間中の点として定義され得るが、実際には、基準点は、ヘッドセット505内の点として定義される。
【0106】
DCA545は、ローカルエリアの一部分についての深度情報を生成する。DCAは、1つまたは複数のイメージングデバイスとDCAコントローラとを含む。DCA545は照明器をも含み得る。DCA545の動作および構造は、図1Aに関して上記で説明された。
【0107】
オーディオシステム550は、ヘッドセット505のユーザにオーディオコンテンツを提供する。オーディオシステム550は、上記で説明するオーディオシステム200と実質的に同じである。オーディオシステム550は、1つまたは音響センサーと、1つまたは複数のトランスデューサと、オーディオコントローラとを備え得る。オーディオシステム550は、空間化されたオーディオコンテンツをユーザに提供し得る。いくつかの実施形態では、オーディオシステム550は、ネットワーク520を介してマッピングサーバ525に音響パラメータを要求し得る。音響パラメータは、ローカルエリアの1つまたは複数の音響プロパティ(たとえば、室内インパルス応答、残響時間、残響レベルなど)を表す。オーディオシステム550はまた、マッピングサーバ525にナビゲーション命令を要求し得る。たとえば、ヘッドセット505を装着しているユーザが、宛先情報を提供し得、マッピングサーバ525は、ユーザロケーションと、提供された宛先と、エリアのモデルとを使用して、ナビゲーション命令を生成し得る。オーディオシステム550は、たとえば、DCA545からのローカルエリアの少なくとも一部分を表す情報、および/または位置センサー540からのヘッドセット505についてのロケーション情報を提供し得る。オーディオシステム550は、マッピングサーバ525から受信された音響パラメータの1つまたは複数を使用して、1つまたは複数の音フィルタを生成し、音フィルタを使用して、ユーザにオーディオコンテンツを提供し得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、オーディオシステム550は、たとえば、ユーザにオーディオコンテンツを提示しながら、1つまたは複数のトランスデューサの作動を介してユーザに与えられる触覚コンテンツのレベルを調整するように1つまたは複数のトランスデューサを制御する。オーディオシステム550は、しきい値レベルに対する周波数帯域についての1つまたは複数のトランスデューサの作動パラメータを調整することによって、触覚コンテンツのレベルを調整し得る。しきい値レベルを下回る作動パラメータの値は、周波数帯域についての触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚されない作動の範囲に対応し、しきい値レベルにあるかまたはそれを上回る値は、触覚コンテンツの一部分がユーザによって知覚される範囲に対応する。
【0109】
いくつかの他の実施形態では、オーディオシステム550は、トランスデューサアレイ中の少なくとも1つのトランスデューサの作動を介してユーザに与えられる触覚コンテンツを制御する。オーディオシステム550は、たとえば、1つまたは複数のトランスデューサを介して、ユーザに、制御された触覚コンテンツを提示する。オーディオシステム550は、たとえば、耳に取り付けられた少なくとも1つの軟骨伝導トランスデューサを介してユーザの対応する耳に触覚コンテンツを適用することによって、触覚コンテンツを使用してユーザにナビゲーション命令を提供し得る。オーディオシステム550はまた、触覚コンテンツを制御することによって、ユーザに提示されるオーディオコンテンツについての音声了解度を増加させ得る。代替または追加として、オーディオシステム550は、触覚コンテンツを制御することによって、定義されたレベルの近接場効果を伴うオーディオコンテンツを生成し得る。
【0110】
I/Oインターフェース510は、ユーザがアクション要求を送り、コンソール515から応答を受信することを可能にするデバイスである。アクション要求は、特定のアクションを実施するための要求である。たとえば、アクション要求は、画像データまたはビデオデータのキャプチャを開始または終了するための命令、あるいはアプリケーション内で特定のアクションを実施するための命令であり得る。I/Oインターフェース510は、1つまたは複数の入力デバイスを含み得る。例示的な入力デバイスは、キーボード、マウス、ゲームコントローラ、またはアクション要求を受信し、そのアクション要求をコンソール515に通信するための任意の他の好適なデバイスを含む。I/Oインターフェース510によって受信されたアクション要求は、コンソール515に通信され、コンソール515は、そのアクション要求に対応するアクションを実施する。いくつかの実施形態では、I/Oインターフェース510は、I/Oインターフェース510の初期位置に対するI/Oインターフェース510の推定位置を示す較正データをキャプチャするIMUを含む。いくつかの実施形態では、I/Oインターフェース510は、コンソール515から受信された命令に従って、ユーザに触覚フィードバックを提供し得る。たとえば、アクション要求が受信されたときに触覚フィードバックが提供されるか、または、コンソール515がアクションを実施するときに、コンソール515が、I/Oインターフェース510に命令を通信して、I/Oインターフェース510が触覚フィードバックを生成することを引き起こす。
【0111】
コンソール515は、DCA545とヘッドセット505とI/Oインターフェース510とのうちの1つまたは複数から受信された情報に従って処理するためのコンテンツをヘッドセット505に提供する。図5に示されている例では、コンソール515は、アプリケーションストア555と、追跡モジュール560と、エンジン565とを含む。コンソール515のいくつかの実施形態は、図5に関して説明されるものとは異なるモジュールまたは構成要素を有する。同様に、以下でさらに説明される機能は、図5に関して説明されるものとは異なる様式でコンソール515の構成要素の間で分散され得る。いくつかの実施形態では、コンソール515に関して本明細書で説明される機能性は、ヘッドセット505、またはリモートシステムにおいて実装され得る。
【0112】
アプリケーションストア555は、コンソール515が実行するための1つまたは複数のアプリケーションを記憶する。アプリケーションは、プロセッサによって実行されたとき、ユーザへの提示のためのコンテンツを生成する命令のグループである。アプリケーションによって生成されたコンテンツは、ヘッドセット505またはI/Oインターフェース510の移動を介してユーザから受信された入力に応答したものであり得る。アプリケーションの例は、ゲームアプリケーション、会議アプリケーション、ビデオ再生アプリケーション、または他の好適なアプリケーションを含む。
【0113】
追跡モジュール560は、DCA545からの情報、1つまたは複数の位置センサー540からの情報、またはそれらの何らかの組合せを使用して、ヘッドセット505またはI/Oインターフェース510の移動を追跡する。たとえば、追跡モジュール560は、ヘッドセット505からの情報に基づいて、ローカルエリアのマッピングにおいてヘッドセット505の基準点の位置を決定する。追跡モジュール560は、オブジェクトまたは仮想オブジェクトの位置をも決定し得る。さらに、いくつかの実施形態では、追跡モジュール560は、ヘッドセット505の将来のロケーションを予測するために、位置センサー540からのヘッドセット505の位置を示すデータの部分ならびにDCA545からのローカルエリアの表現を使用し得る。追跡モジュール560は、ヘッドセット505またはI/Oインターフェース510の推定または予測された将来の位置をエンジン565に提供する。
【0114】
エンジン565は、アプリケーションを実行し、追跡モジュール560から、ヘッドセット505の位置情報、加速度情報、速度情報、予測された将来の位置、またはそれらの何らかの組合せを受信する。受信された情報に基づいて、エンジン565は、ユーザへの提示のためにヘッドセット505に提供すべきコンテンツを決定する。たとえば、受信された情報が、ユーザが左を見ていることを示す場合、エンジン565は、仮想ローカルエリアにおいて、またはローカルエリアを追加のコンテンツで拡張するローカルエリアにおいて、ユーザの移動をミラーリングする、ヘッドセット505のためのコンテンツを生成する。さらに、エンジン565は、I/Oインターフェース510から受信されたアクション要求に応答して、コンソール515上で実行しているアプリケーション内でアクションを実施し、そのアクションが実施されたというフィードバックをユーザに提供する。提供されるフィードバックは、ヘッドセット505を介した視覚または可聴フィードバック、あるいはI/Oインターフェース510を介した触覚フィードバックであり得る。
【0115】
ネットワーク520は、ヘッドセット505および/またはコンソール515をマッピングサーバ525に結合する。ネットワーク520は、ワイヤレス通信システムおよび/またはワイヤード通信システムの両方を使用する、ローカルエリアネットワークおよび/またはワイドエリアネットワークの任意の組合せを含み得る。たとえば、ネットワーク520は、インターネット、ならびに携帯電話網を含み得る。一実施形態では、ネットワーク520は、標準通信技術および/またはプロトコルを使用する。したがって、ネットワーク520は、イーサネット、802.11、ワールドワイドインターオペラビリティフォーマイクロウェーブアクセス(WiMAX)、2G/3G/4Gモバイル通信プロトコル、デジタル加入者回線(DSL)、非同期転送モード(ATM)、InfiniBand、PCI Expressアドバンストスイッチングなどの技術を使用するリンクを含み得る。同様に、ネットワーク520上で使用されるネットワーキングプロトコルは、マルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)、伝送制御プロトコル/インターネットプロトコル(TCP/IP)、ユーザデータグラムプロトコル(UDP)、ハイパーテキストトランスポートプロトコル(HTTP)、簡易メール転送プロトコル(SMTP)、ファイル転送プロトコル(FTP)などを含むことができる。ネットワーク520を介して交換されるデータは、2進形式(たとえばポータブルネットワークグラフィックス(PNG))の画像データ、ハイパーテキストマークアップ言語(HTML)、拡張可能マークアップ言語(XML)などを含む、技術および/またはフォーマットを使用して表され得る。さらに、リンクの全部または一部は、セキュアソケットレイヤ(SSL)、トランスポートレイヤセキュリティ(TLS)、仮想プライベートネットワーク(VPN)、インターネットプロトコルセキュリティ(IPsec)など、従来の暗号化技術を使用して暗号化され得る。
【0116】
マッピングサーバ525は、複数の空間を表す仮想モデルを記憶するデータベースを含み得、仮想モデル中の1つのロケーションが、ヘッドセット505のローカルエリアの現在の構成に対応する。マッピングサーバ525は、ヘッドセット505からネットワーク520を介して、ローカルエリアおよび/またはローカルエリアについてのロケーション情報の少なくとも一部分を表す情報を受信する。マッピングサーバ525は、受信された情報および/またはロケーション情報に基づいて、ヘッドセット505のローカルエリアに関連する仮想モデル中のロケーションを決定する。マッピングサーバ525は、仮想モデル中の決定されたロケーションおよび決定されたロケーションに関連する任意の音響パラメータに部分的に基づいて、ローカルエリアに関連する1つまたは複数の音響パラメータを決定する(たとえば、取り出す)。マッピングサーバ525は、ローカルエリアのロケーションおよびローカルエリアに関連する音響パラメータの任意の値をヘッドセット505に送信し得る。マッピングサーバ525は、オーディオシステム550にナビゲーション命令を提供し得る。マッピングサーバ525は、ユーザロケーションと、ユーザによって提供された宛先と、エリアのモデルとを使用して、ナビゲーション命令を生成し得る。
【0117】
追加の構成情報
実施形態の上記の説明は、説明のために提示されており、網羅的であること、または開示される正確な形態に特許権を限定することは意図されない。当業者は、上記の開示を考慮して多くの修正および変形が可能であることを諒解することができる。
【0118】
本明細書のいくつかの部分は、情報に関する動作のアルゴリズムおよび記号表現に関して実施形態について説明する。これらのアルゴリズム説明および表現は、データ処理技術分野の当業者が、他の当業者に自身の仕事の本質を効果的に伝えるために通常使用される。これらの動作は、機能的に、算出量的に、または論理的に説明されるが、コンピュータプログラムまたは等価な電気回路、マイクロコードなどによって実装されることが理解される。さらに、一般性の喪失なしに、動作のこれらの仕組みをモジュールと呼ぶことが時々好都合であることも証明された。説明される動作およびそれらの関連するモジュールは、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの任意の組合せにおいて具現され得る。
【0119】
本明細書で説明されるステップ、動作、またはプロセスのいずれも、1つまたは複数のハードウェアまたはソフトウェアモジュールで、単独でまたは他のデバイスとの組合せで実施または実装され得る。一実施形態では、ソフトウェアモジュールは、コンピュータプログラムコードを含んでいるコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品で実装され、コンピュータプログラムコードは、いずれかまたはすべての説明されるステップ、動作、またはプロセスを実施するためにコンピュータプロセッサによって実行され得る。
【0120】
実施形態はまた、本明細書の動作を実施するための装置に関し得る。この装置は、必要とされる目的のために特別に構築され得、および/あるいは、この装置は、コンピュータに記憶されたコンピュータプログラムによって選択的にアクティブ化または再構成される汎用コンピューティングデバイスを備え得る。そのようなコンピュータプログラムは、非一時的有形コンピュータ可読記憶媒体、または電子命令を記憶するのに好適な任意のタイプの媒体に記憶され得、それらの媒体はコンピュータシステムバスに結合され得る。さらに、本明細書で言及される任意のコンピューティングシステムは、単一のプロセッサを含み得るか、または増加された算出能力のために複数のプロセッサ設計を採用するアーキテクチャであり得る。
【0121】
実施形態はまた、本明細書で説明されるコンピューティングプロセスによって製造される製品に関し得る。そのような製品は、コンピューティングプロセスから生じる情報を備え得、その情報は、非一時的有形コンピュータ可読記憶媒体に記憶され、本明細書で説明されるコンピュータプログラム製品または他のデータ組合せの任意の実施形態を含み得る。
【0122】
最終的に、本明細書において使用される言い回しは、主に読みやすさおよび教育目的で選択されており、本明細書において使用される言い回しは、特許権を定めるかまたは制限するように選択されていないことがある。したがって、特許権の範囲はこの詳細な説明によって限定されるのではなく、むしろ、詳細な説明に基づく適用例に関して生じる請求項によって限定されることが意図される。したがって、実施形態の開示は、以下の特許請求の範囲に記載される特許権の範囲を例示するものであり、限定するものではない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5