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特許7604430電子機器、車両、報知制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】電子機器、車両、報知制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
G08G1/09 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022151553
(22)【出願日】2022-09-22
(65)【公開番号】P2024046265
(43)【公開日】2024-04-03
【審査請求日】2022-10-19
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 崇
(72)【発明者】
【氏名】竹田 愛
(72)【発明者】
【氏名】関 正寛
【合議体】
【審判長】相崎 裕恒
【審判官】小池 堂夫
【審判官】伏本 正典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185739(JP,A)
【文献】特開2000-121370(JP,A)
【文献】国際公開第2021/002239(WO,A1)
【文献】特開2010-152444(JP,A)
【文献】特開2017-117040(JP,A)
【文献】特開2019-059359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が位置する道路の標識を撮像部で撮像して認識した、又は前記道路の地図情報から特定された制限速度に、前記車両のユーザによって調整された所定速度を加算した第1設定速度を取得する第1取得部と、
前記制限速度と連動せずに前記車両のユーザによって任意に設定された第2設定速度を取得する第2取得部と、
前記車両の速度が前記第1設定速度及び前記第2設定速度のうちの前記第1設定速度を超えた場合には、報知部に第1報知を行わせ、前記速度が前記第2設定速度を超えた場合には、前記報知部に前記第1報知と識別可能な第2報知を行わせる報知制御部と、
を備え
前記第1取得部は、前記制限速度が変化した場合に、前記第1設定速度を更新し、
前記報知制御部は、更新後の前記第1設定速度を前記第2設定速度が超える場合、前記報知部に第3報知を行わせる、
電子機器。
【請求項2】
前記所定速度として、複数の加算速度のうちの一の加算速度を受け付ける受付部を更に備え、
前記第1取得部は、前記制限速度に前記受付部が受け付けた前記一の加算速度を加算した前記第1設定速度を取得する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記報知部は、前記制限速度に関連する第1アイコンと、前記第2設定速度に関連する第2アイコンとを画面に表示する表示部を有し、
前記報知制御部は、
前記速度が前記第1設定速度を超えた場合には、前記第1アイコンの表示態様を変更し、
前記速度が前記第2設定速度を超えた場合には、前記第2アイコンの表示態様を変更する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記報知制御部は、
前記速度が前記第1設定速度を超えた場合には、前記第1アイコンを点滅させ、
前記速度が前記第2設定速度を超えた場合には、前記第2アイコンを点滅させる、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記報知部は、前記制限速度に関連する第1アイコンと、前記第2設定速度に関連する第2アイコンとを画面に表示する表示部を有し、
前記第1アイコンと前記第2アイコンは、前記画面において離れた位置に表示されている、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記表示部は、前記車両の速度に関する速度情報を表示する表示領域を含み、
前記第1アイコンと前記第2アイコンは、前記画面において前記表示領域を挟むように離れて位置している、
請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記第1取得部は、前記撮像部で撮像して認識した前記制限速度が変化する度に、前記第1設定速度を更新する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項8】
前記第2設定速度は、前記第1設定速度以下であり、
前記報知制御部は、前記速度が前記第1設定速度を超えた場合には、前記報知部に前記第1報知を行わせ、前記速度が前記第2設定速度を超え、かつ前記第1設定速度を超えない場合には、前記報知部に前記第2報知を行わせる、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の電子機器と、
前記道路の標識を撮像する撮像部と、
を含む、車両。
【請求項10】
プロセッサが実行する、
車両が位置する道路の標識を撮像部で撮像して認識した、又は前記道路の地図情報から特定された制限速度に、前記車両のユーザによって調整された所定速度を加算した第1設定速度を取得するステップと、
前記制限速度と連動せずに前記車両のユーザによって任意に設定された第2設定速度を取得するステップと、
前記車両の速度が前記第1設定速度及び前記第2設定速度のうちの前記第1設定速度を超えた場合には、報知部に第1報知を行わせ、前記速度が前記第2設定速度を超えた場合には、前記報知部に前記第1報知と識別可能な第2報知を行わせるステップと、
前記制限速度が変化した場合に、前記第1設定速度を更新するステップと、
更新後の前記第1設定速度を前記第2設定速度が超える場合、前記報知部に第3報知を行わせるステップと、
を有する、報知制御方法。
【請求項11】
プロセッサに、
車両が位置する道路の標識を撮像部で撮像して認識した、又は前記道路の地図情報から特定された制限速度に、前記車両のユーザによって調整された所定速度を加算した第1設定速度を取得するステップと、
前記制限速度と連動せずに前記車両のユーザによって任意に設定された第2設定速度を取得するステップと、
前記車両の速度が前記第1設定速度及び前記第2設定速度のうちの前記第1設定速度を超えた場合には、報知部に第1報知を行わせ、前記速度が前記第2設定速度を超えた場合には、前記報知部に前記第1報知と識別可能な第2報知を行わせるステップと、
前記制限速度が変化した場合に、前記第1設定速度を更新するステップと、
更新後の前記第1設定速度を前記第2設定速度が超える場合、前記報知部に第3報知を行わせるステップと、
を実行させるための、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、車両、報知制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載カメラで道路の標識を撮像して認識した制限速度又は地図情報から特定された制限速度に合わせて、車両を走行させる技術が提案されており、特許文献1には、車両の速度が制限速度に対応した警告速度を超えると、報知を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-60929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の技術では警告速度が道路の制限速度に対応しているが、運転者が運転中に警告等の報知を行いたい車両速度は、車両の状況によって変わりうるため、必ずしも制限速度と一致していない。このため、運転者が意図するタイミングで報知を行えないケースが生じる。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、運転者の意思を反映したタイミングでも報知を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、車両が位置する道路の標識を撮像部で撮像して認識した、又は前記道路の地図情報から特定された制限速度に基づいて設定された第1設定速度を取得する第1取得部と、前記車両のユーザによって設定された第2設定速度を取得する第2取得部と、前記車両の速度が前記第1設定速度を超えた場合には、報知部に第1報知を行わせ、前記速度が前記第2設定速度を超えた場合には、前記報知部に前記第1報知と識別可能な第2報知を行わせる報知制御部と、を備える、電子機器を提供する。
【0007】
また、前記第1設定速度は、前記制限速度に所定速度を加算した設定速度であることとしてもよい。
【0008】
また、前記所定速度として、複数の加算速度のうちの一の加算速度を受け付ける受付部を更に備え、前記第1取得部は、前記制限速度に前記受付部が受け付けた前記一の加算速度を加算した前記第1設定速度を取得することとしてもよい。
【0009】
また、前記報知部は、前記制限速度に関連する第1アイコンと、前記第2設定速度に関連する第2アイコンとを画面に表示する表示部を有し、前記報知制御部は、前記速度が前記第1設定速度を超えた場合には、前記第1アイコンの表示態様を変更し、前記速度が前記第2設定速度を超えた場合には、前記第2アイコンの表示態様を変更することとしてもよい。
【0010】
また、前記報知制御部は、前記速度が前記第1設定速度を超えた場合には、前記第1アイコンを点滅させ、前記速度が前記第2設定速度を超えた場合には、前記第2アイコンを点滅させることとしてもよい。
【0011】
また、前記報知部は、前記制限速度に関連する第1アイコンと、前記第2設定速度に関連する第2アイコンとを画面に表示する表示部を有し、前記第1アイコンと前記第2アイコンは、前記画面において離れた位置に表示されていることとしてもよい。
【0012】
また、前記表示部は、前記車両の速度に関する速度情報を表示する表示領域を含み、前記第1アイコンと前記第2アイコンは、前記画面において前記表示領域を挟むように離れて位置していることとしてもよい。
【0013】
また、前記第1取得部は、前記撮像部で撮像して認識した前記制限速度が変化する度に、前記第1設定速度を更新することとしてもよい。
【0014】
また、前記第2設定速度は、前記第1設定速度以下であり、前記報知制御部は、前記速度が前記第1設定速度を超えた場合には、前記報知部に前記第1報知を行わせ、前記速度が前記第2設定速度を超え、かつ前記第1設定速度を超えない場合には、前記報知部に前記第2報知を行わせることとしてもよい。
【0015】
また、前記報知制御部は、前記第2設定速度が前記第1設定速度を超える場合、前記報知部に第3報知を行わせることとしてもよい。
【0016】
本発明の第2の態様においては、上記の電子機器と、前記道路の標識を撮像する撮像部とを含む車両を提供する。
【0017】
本発明の第3の態様においては、プロセッサが実行する、車両が位置する道路の標識を撮像部で撮像して認識した、又は前記道路の地図情報から特定された制限速度に基づいて設定された第1設定速度を取得するステップと、前記車両のユーザによって設定された第2設定速度を取得するステップと、前記車両の速度が前記第1設定速度を超えた場合には、報知部に第1報知を行わせ、前記速度が前記第2設定速度を超えた場合には、前記報知部に前記第1報知と識別可能な第2報知を行わせるステップと、を有する、報知制御方法を提供する。
【0018】
本発明の第4の態様においては、プロセッサに、車両が位置する道路の標識を撮像部で撮像して認識した、又は前記道路の地図情報から特定された制限速度に基づいて設定された第1設定速度を取得するステップと、前記車両のユーザによって設定された第2設定速度を取得するステップと、前記車両の速度が前記第1設定速度を超えた場合には、報知部に第1報知を行わせ、前記速度が前記第2設定速度を超えた場合には、前記報知部に前記第1報知と識別可能な第2報知を行わせるステップと、を実行させるための、プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、運転者の意思を反映したタイミングでも報知を行えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】車両Vの構成を示す図である。
図2】表示部8の表示例を示す模式図である。
図3】複数の加算速度を説明するための図である。
図4】車速と第1設定速度S1と第2設定速度S2の関係を示す図である。
図5】電子機器10の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<車両の概要>
図1は、車両Vの構成を示す図である。車両Vは、ここではトラック等の大型車両であるが、これに限定されない。車両Vは、撮像部2と、地図ユニット3と、操作部5と、車速センサ6と、報知部7と、電子機器10を有する。
【0022】
撮像部2は、車両の周囲を撮像して撮像画像を生成する。例えば、撮像部2は、車両が位置する道路の標識を撮像して撮像画像を生成する。撮像部2は、生成した撮像画像を電子機器10に出力する。
【0023】
地図ユニット3は、地図データを提供する外部のサーバから地図データを受信し、受信した地図データを記憶する。地図ユニット3は、地図データが更新されたという通知を外部のサーバから受信すると、更新後の地図データを取得する。
【0024】
操作部5は、車両のユーザである運転者が操作を行う部分である。操作部5は、例えば、車両のハンドルに設けられたステアリングキーを含む。運転者は、操作部5を介して車両の設定速度の入力操作を行う。
【0025】
車速センサ6は、車両の速度(以下、車速とも呼ぶ)を検出する。車速センサ6は、検出した車速を電子機器10に出力する。
【0026】
報知部7は、電子機器10の指令により、報知を行う機能を有する。詳細は後述するが、報知部7は、車速が第1設定速度(道路の制限速度に基づいて設定された設定速度)を超えた場合には第1報知を行い、車速が第2設定速度(ユーザが設定した設定速度)を超えた場合には第1報知と識別可能な第2報知を行う。報知部7は、表示部8と、音出力部9を有する。
【0027】
表示部8は、車両の状態等に関する情報を表示する。表示部8は、車両が走行する道路の制限速度を表示する機能を有する。表示部8は、例えば車両のインストルメンタルパネルに設けられているが、これに限定されず、例えば運転者が使用する情報端末に設けられていてもよい。
【0028】
図2は、表示部8の表示例を示す模式図である。表示部8は、文字情報やアイコン等を表示する表示画面8aを有する。表示画面8aは、第1表示領域R1と、第2表示領域R2と、第3表示領域R3を含む。
【0029】
第1表示領域R1には、車両の現在の速度、燃料の残量、時刻又は温度等が表示されている。本実施形態では、第1表示領域R1が、車両の速度に関する速度情報を表示する表示領域に該当する。
【0030】
第2表示領域R2には、道路標識が表示される。ここでは、車両が走行中の道路の制限速度を示すアイコンG1が、表示されている。アイコンG1が、制限速度に関連するアイコンに該当する。表示部8は、車速が制限速度に基づく第1設定速度を超えると、アイコンG1を所定時間(一例として5秒)だけ点滅させる。
【0031】
第3表示領域R3には、ユーザが設定速度を設定したことを示すアイコンG2が表示されている。ユーザが設定速度を設定していない場合には、アイコンG2は第3表示領域R3に表示されない。アイコンG2が、第2設定速度に関連する第2アイコンに該当する。表示部8は、車速が第2設定速度を超えると、アイコンG2を所定時間(一例として5秒)点滅させる。
【0032】
アイコンG1とアイコンG2は、表示画面8aにおいて離れた位置に表示されている。ここでは、アイコンG1とアイコンG2は、表示画面8aにおいて第1表示領域R1を挟むように離れて位置している。具体的には、アイコンG1とアイコンG2は、表示画面8aの隅に配置されている。上記のようにアイコンG1及びアイコンG2を位置させることで、運転者は、アイコンG1とアイコンG2が点滅した際に、識別しやすくなる。
【0033】
音出力部9は、車両の速度が設定速度を超えた際に、第1報知や第2報知として音を出力する。音出力部9は、例えば車内に設けられたスピーカであり、運転者に聞こえるように音を出力する。
【0034】
電子機器10は、車両が走行中の道路の制限速度を認識し、表示部8に制限速度を表示させる。例えば、電子機器10は、表示画面8aに制限速度を示すアイコンG1を表示させる。また、電子機器10は、道路の制限速度に基づいて設定された第1設定速度を車速が超えた場合には、報知部7(具体的には、表示部8と音出力部9)に第1報知を行わせ、ユーザが設定した第2設定速度を車速が超えた場合には、報知部7に第2報知を行わせる。これにより、車両のユーザである運転者は、車速が第1設定速度と第2設定速度のいずれを超えたかを容易に把握できる。
【0035】
<電子機器の詳細構成>
電子機器10の詳細構成について、図1を参照しながら説明する。電子機器10は、記憶部20と制御部30を有する。
【0036】
記憶部20は、コンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)、作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含む。また、記憶部20は、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0037】
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサである。制御部30は、記憶部20に記憶されたプログラムを実行することによって、第1取得部32、受付部33、第2取得部34、判定部35及び報知制御部36として機能する。
【0038】
第1取得部32は、車両が位置する道路の制限速度に基づいて設定された第1設定速度を取得する。例えば、第1取得部32は、撮像部2が生成した撮像画像中の制限速度を示す標識を特定して、第1設定速度を取得する。別言すれば、第1取得部32は、車両が位置する道路の標識を撮像部2が撮像して認識した速度を、制限速度として取得する。第1取得部32は、地図ユニット3が記憶した地図データ(地図情報)から、車両が走行する道路の制限速度を特定して、第1設定速度を取得してもよい。別言すれば、第1取得部32は、道路の地図情報から特定された速度を、制限速度として取得する。なお、第1取得部32は、車両に設けられたGPS(Global Positioning System)ユニットにより自車の位置を特定し、特定した自車位置に基づいて走行する道路の制限速度を特定しうる。
【0039】
第1取得部32は、撮像部2で撮像して認識した制限速度が変化する度に、第1設定速度を更新しうる。車両が走行する道路は、区間に応じて制限速度が変わることがあるため、撮像部2で撮像して認識する制限速度も、道路の区間に応じて変化する。また、第1取得部32は、地図データから特定した制限速度が変化する度に、第1設定速度を更新してもよい。このため、第1取得部32は、区間に応じて制限速度が変わる道路を車両が走行する場合には、制限速度に基づく第1設定速度も更新することになる。
また、第1取得部32は、撮像部2で撮像して認識した制限速度に基づいて第1設定速度を設定した後で、地図データと車両の位置情報とに基づいて特定された制限速度が変化した場合に、地図データから特定された制限速度に基づいて第1設定速度を更新してもよい。例えば、車両が大通りから制限速度が低く定められた細い道に進入した場合、大通りを走行中に撮像部2で撮像して認識した制限速度に基づく第1設定速度を使用し続けると、車両が走行する道路(細い道)に対して適切な設定速度でないことがある。このような場合、地図データから制限速度の変更を検知したことに応じて、第1設定速度を更新することで適切な設定速度を使用することが可能となる。
【0040】
第1取得部32は、制限速度に所定速度を加算した速度を、第1設定速度として設定する。すなわち、第1設定速度は、制限速度を所定速度だけオフセットした速度である。これにより、報知を行う速度を運転者の意思に応じて、変更可能となる。所定速度は、運転者によって設定されうる。例えば、運転者は、制限速度に加算する速度の値を、操作部5に介して調整する。なお、第1取得部32は、制限速度に対して所定速度を減算した速度を第1設定速度として設定してもよい。言い換えると、所定速度として負の値を用いることも可能である。後述するように第1設定速度を超えたことに応じて警告をする場合、第1設定速度として制限速度よりもオフセット分だけ低い値を設定することで、制限速度に近づいたことを運転者に前もって通知することが可能となる。
【0041】
受付部33は、車両の運転者の操作部5を介した入力操作を受け付ける。受付部33は、制限速度に加算する所定速度として、複数の加算速度のうちの一の加算速度を受け付ける。
【0042】
図3は、複数の加算速度を説明するための図である。図3に示すテーブルは、例えば記憶部20に記憶されている。複数の加算速度は、ここでは、第1加算速度と、第2加算速度と、第3加算速度であるが、これに限定されない。第1加算速度は、制限速度に対するオフセット量を+2km/hに設定する速度であり、第2加算速度は、制限速度に対するオフセット量が+5km/hに設定する速度であり、第3加算速度は、制限速度に対するオフセット量を+10km/hに設定する速度である。運転者が、操作部5のステアリングキーを介して、第1加算速度、第2加算速度及び第3加算速度のうちの一の加算速度を選択すると、受付部33は、運転者が選択した一の加算速度を受け付ける。
【0043】
第1取得部32は、受付部33が受け付けた一の加算速度を制限速度に加算することで、第1設定速度を取得する。このように複数の加算速度の中から一の加算速度を選択することで、第1取得部32は、運転者の意思を反映した第1設定速度を取得できる。
【0044】
第2取得部34は、車両の運転者によって設定された第2設定速度を取得する。例えば、第2取得部34は、運転者が操作部5を介して選択した第2設定速度を受付部33が受け付けることで、第2設定速度を取得する。運転者は、車両の走行中だけでなく、走行開始前に第2設定速度を設定できる。また、運転者は、設定した第2設定速度を任意のタイミングで変更できる。このため、第2取得部34は、走行開始前に第2設定速度を取得したり、走行中に第2設定速度を取得したりする。
【0045】
第2設定速度は、運転者が設定した任意の速度である。例えば、制限速度が一定の道路(一例として、高速道路)を車両が走行する場合に、運転者が、道路の制限速度とは異なる速度(道路の制限速度よりも小さい速度)を第2設定速度に設定する。具体的には、道路の制限速度が100km/hである場合に、運転者は、90km/hを第2設定速度として設定する。特に、車両がトラックである場合には、積載量が多かったり、車高が高かったりするため、運転者は、安全面等を考慮して、第2設定速度を第1設定速度よりも低く設定する傾向にある。一方で、車両が乗用車であり、かつ走行する車両が少ない道路である場合には、運転者は、第2設定速度を第1設定速度よりも大きく設定しうる。このように、運転者は、自己の意思を反映するように第2設定速度を設定する。
【0046】
判定部35は、車両の速度(車速)が第1設定速度又は第2設定速度を超えたか否かを判定する。例えば、判定部35は、車速センサ6が検出した車速が、第1取得部32が取得した第1設定速度又は第2取得部34が取得した第2設定速度を超えたか否かを判定する。
【0047】
図4は、車速と第1設定速度S1と第2設定速度S2の関係を示す図である。ここでは、第2設定速度S2が第1設定速度S1よりも小さく、車両が加速して車速が次第に大きくなっているものとする。時刻t1のタイミングで車速が第2設定速度S2になり、時刻t2のタイミングで車速が第1設定速度S1になっている。判定部35は、時刻t1を過ぎた直後に車速が第2設定速度S2を超えたと判定し、その後、時刻t2を過ぎた直後に車速が第1設定速度S1を超えたと判定する。なお、図4では、第2設定速度S2が第1設定速度S1よりも小さいとしたが、これに限定されない。例えば、第2設定速度S2が第1設定速度S1よりも大きくてもよい。一例として、制限速度が80km/hである場合に、第1設定速度S1が82km/hであり、第2設定速度S2が90km/hである。
【0048】
報知制御部36は、判定部35による判定結果に基づいて、報知部7による報知を制御する。報知制御部36は、車速が第1設定速度を超えた場合には、報知部7に第1報知を行わせ、車速が第2設定速度を超えた場合には、報知部7に第1報知と識別可能な第2報知を行わせる。すなわち、報知制御部36は、判定部35によって車速が第1設定速度を超えたと判定された場合には、報知部7(具体的には、表示部8と音出力部9)に第1報知を行わせ、判定部35によって車速が第2設定速度を超えたと判定された場合には、報知部7に第2報知を行わる。報知部7が第1報知と第2報知を識別可能に行うため、車両の運転者は、車両が第1設定速度を超えたか、又は車両が第2設定速度を超えたかを判別しやすくなる。
【0049】
報知制御部36は、車速が第1設定速度を超えた場合には、第1報知として制限速度に関連する第1アイコン(図2のアイコンG1)の表示態様を変更し、車速が第2設定速度を超えた場合には、第2報知として第2設定速度に関連する第2アイコン(図2のアイコンG2)の表示態様を変更する。このように第1アイコンG1又は第2アイコンG2の表示態様を変更することで、運転者は、速度が第1設定速度又は第2設定速度を超えたかを容易に認識できる。
【0050】
報知制御部36は、車速が第1設定速度を超えた場合(図4の時間t1)には、表示部8の表示画面8aの第1アイコンG1を点滅させ、車速が第2設定速度を超えた場合(図4に示す時間t2)には、表示部8の表示画面8aの第2アイコンG2を点滅させてもよい。このように第1アイコンG1又は第2アイコンG2を点滅させることで、表示画面8a上で識別しやすくなる。
なお、上記では、報知制御部36は、第1アイコンG1と第2アイコンG2を点滅させるとしたが、これに限定されない。例えば、報知制御部36は、第1アイコンG1と第2アイコンG2の色を変化させてもよい。
【0051】
報知制御部36は、表示部8での第1アイコンG1及び第2アイコンG2の表示態様の変更と共に、音出力部9に音を出力させてもよい。この場合には、運転者が表示部8を見ないで運転している際に、車速が設定速度を超えた可能性があるとして、表示部8を注視する契機となる。なお、報知制御部36は、第1報知及び第2報知として、表示部8でのアイコンの表示態様の変更の代わりに、音出力部9で警報を出力させてもよい。すなわち、報知制御部36は、第1報知として第1警報と、第2報知として第1警報と識別可能な第2警報を行ってもよい。この場合、第2警報の音の大きさや音の種類が、第1警報と異なる。
【0052】
道路の標識の制限速度(法規の制限速度)を遵守する観点からすると、第2設定速度は、第1設定速度以下であることが望ましい。そこで、報知制御部36は、速度が第1設定速度を超えた場合には、報知部7に第1報知を行わせ、速度が第2設定速度を超え、かつ第1設定速度を超えない場合には、報知部7に第2報知を行わせることが望ましい。
【0053】
報知制御部36は、第2設定速度が第1設定速度を超える場合、報知部7に第3報知を行わせてもよい。車両が走行中の道路の制限速度が低くなった場合には、第1設定速度も小さくなるため、第2設定速度が第1設定速度を超えるケースが生じうる。この場合には、第3報知を行うことで、第2設定速度の変更を運転者に促すことができる。第3報知は、識別性の観点からすると第1報知及び第2報知と異なる報知態様が望ましいが、これに限定されず、第3報知は、第1報知又は第2報知と同じ態様の報知であってもよい。
また、車両の走行中に第2設定速度が第1設定速度を超える場合、第2取得部34は、第2設定速度を、第1設定速度を超えない値に更新してもよい。この場合は、例えば、第2取得部34は、第1設定速度に対して、あらかじめユーザが設定した1以下の係数を適用したものを第2設定速度として設定し得る。また、第2取得部34は、第2設定速度を更新した後に、ユーザにより設定された変更前の第2設定速度よりも第1設定速度が高くなったことを契機として、第2設定速度を、ユーザにより設定された当初の第2設定速度に戻す。
【0054】
なお、上記では、第2設定速度を設定するユーザが、車両の運転者であることとしたが、これに限定されない。車両の管理者が、第2設定速度を設定することも可能である。例えば、管理者が遠隔で車両を運行させる場合には、当該管理者が、第2設定速度を設定するユーザに該当する。
【0055】
<電子機器が行う処理の流れ>
図5は、電子機器10の動作を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは、車両が走行中に継続して行われる。なお、本フローチャートは第2設定速度が第1設定速度よりも低い場合に実行される処理を例示している。
【0056】
まず、第1取得部32は、車両が位置する道路の制限速度に基づいて設定された第1設定速度を取得する(ステップS102)。例えば、第1取得部32は、撮像部2が撮像した標識の制限速度、又は道路の地図情報から特定された制限速度に、所定速度を加算した第1設定速度を取得する。
【0057】
次に、第2取得部34は、車両のユーザによって設定された第2設定速度を取得する(ステップS104)。例えば、第2取得部34は、ユーザが操作部5を介して設定した第2設定速度を取得する。ステップS104の処理は、ステップS102の処理よりも前に実行されてもよい。
【0058】
次に、判定部35は、車速センサ6が検出した車速が第2設定速度を超えたか否かを判定する(ステップS106)。ステップS106で車速が第2設定速度を超えた場合には(Yes)、報知制御部36は、報知部7に第2報知を行わせる(ステップS108)。例えば、報知制御部36は、所定時間(例えば5秒)だけ、表示画面8aの第2アイコンG2を点滅させ、かつ音出力部9に音を発生させる。一方で、ステップS106で車速が第2設定速度を超えない場合には(No)、ステップS102の処理に戻る。
【0059】
その後、判定部35は、車速が第1設定速度を超えたか否かを判定する(ステップS110)。ステップS110で車速が第1設定速度を超えた場合には(Yes)、報知制御部36は、報知部7に第1報知を行わせる(ステップS112)。一方で、ステップS110で車速が第1設定速度を超えない場合には(No)、処理は、ステップS102の処理に戻る。例えば、報知制御部36は、所定時間(例えば5秒)だけ、表示画面8aの第1アイコンG1を点滅させ、かつ音出力部9に音を発生させる。
電子機器10は、車両の走行中に、上述したステップS102~S112の処理を繰り返し行う。
【0060】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態の電子機器10は、車両が位置する道路の制限速度に基づいて設定された第1設定速度と、車両のユーザによって設定された第2設定速度を取得する。そして、電子機器10は、車速が第1設定速度を超えた場合には、報知部7に第1報知を行わせ、車速が第2設定速度を超えた場合には、報知部7に第1報知と識別可能な第2報知を行わせる。
上記のように、第1設定速度に加えて第2設定速度に基づいて第1報知又は第2報知を行うことで、車速が道路の制限速度を超える場合に報知を行えるだけでなく、運転者の意思や車両の状況を反映したタイミングでも報知を行える。これにより、ユーザに適切なタイミングで注意喚起を行えることになり、車両の走行時の安全性を高められる。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0062】
2 撮像部
7 報知部
8 表示部
10 電子機器
32 第1取得部
33 受付部
34 第2取得部
36 報知制御部
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5