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特許7604433親水性の注射型皮膚充填組成物及びその調製方法と使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】親水性の注射型皮膚充填組成物及びその調製方法と使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20241216BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20241216BHJP
   C08L 5/08 20060101ALI20241216BHJP
   C08L 89/00 20060101ALI20241216BHJP
   C08J 3/03 20060101ALI20241216BHJP
   C08J 3/09 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
C08L67/04
C08L71/02
C08L5/08
C08L89/00
C08J3/03 CFD
C08J3/09 CEZ
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022166948
(22)【出願日】2022-10-18
(65)【公開番号】P2023064714
(43)【公開日】2023-05-11
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】2021112485215
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522408289
【氏名又は名称】エヌケイディー ファーマ シーオー., エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】NKD PHARMA CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ミン
(72)【発明者】
【氏名】シゥ,シャオユ
(72)【発明者】
【氏名】レン,ホンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】タオ,シィウメイ
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-509935(JP,A)
【文献】特開2004-167229(JP,A)
【文献】特表2022-550581(JP,A)
【文献】特表2016-520141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/04
C08L 71/02
C08L 5/08
C08L 89/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマイクロスフェアと、ポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレートと、分散液とを含み、
前記ポリマーマイクロスフェアがポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体であり、
前記分散液が架橋ヒアルロン酸ナトリウムとタンパク質とを含み、
前記タンパク質がイガイ接着タンパク質またはフィブロインタンパク質である
ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記タンパク質と前記架橋ヒアルロン酸ナトリウムとの質量比が1:(15~25)であり、
及び/または、前記架橋ヒアルロン酸ナトリウムと前記ポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレートとの質量比が(80~120):1である
ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレートと前記分散液との合計質量と、前記ポリマーマイクロスフェアの質量との比が(6~9):(1~4)である
ことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記分散液がさらにりん酸塩緩衝液とグリセロールとを含み、浸透圧が250~350mOsm/Lであり、前記分散液における前記架橋ヒアルロン酸ナトリウムの濃度が15~30mg/mlであり、
及び/または、前記分散液における前記グリセロールの質量分率が0.48~2%である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーマイクロスフェアの固有粘度が0.15~1.5dl/gであり、PCLのポリマーにおける割合が40~70wt%であり、
及び/または、前記ポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレートが4アームのものであり、分子量が5000~40000であり、
及び/または、前記架橋ヒアルロン酸ナトリウムの分子量が1000000~2500000である
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物を調製する方法であって、
せん断乳化法、膜乳化法または噴霧乾燥法によってポリマーマイクロスフェアを製造する工程を備え
前記ポリマーマイクロスフェアを製造する工程は、有機溶媒をポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体と混合することにより、油相を得る工程を備え、
前記有機溶媒がジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルムのうちの1種または2種以上である
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記有機溶媒がジクロロメタン、またはテトラヒドロフランとジクロロメタンが(1~2):(8~10)の体積比でなる混合溶媒である
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
乳化法によって製造を行う場合、さらに、乳化剤を水と混合することにより、水相を得る工程0.1~0.4kPaの圧力で前記油相を膜透過させ、それを水相と4~8℃で撹拌しながら混合させ(前記撹拌の速度が200~500r/minであり、前記膜の孔径が10~20μmである)、前記油相の膜透過が完了した後、引き続き撹拌して10~60分間乳化させ、次いで、15~25℃で引き続き撹拌することにより、油相の溶媒を揮発させる工程とを備え、
せん断乳化法によって製造を行う場合、乳化剤を水と混合することにより、水相を得る工程と、4~8℃で撹拌しながら前記水相に前記油相を滴下して混合させ(前記撹拌の速度が800~1000r/minであり、時間が20~40分間である)、次いで、15~25℃で引き続き400~500r/minの速度で3~5時間撹拌する工程とを備え、
噴霧乾燥法によって製造を行う場合、前記油相を噴霧乾燥し、噴霧乾燥過程の入口温度が60~85℃であり、出口温度が25~50℃であり、供給速度が10~25ml/minであり、高圧空気流量が400~600L/時間であり、
前記乳化剤がポリビニルアルコール、スパン、ツィーン(登録商標)、カルボキシメチルセルロースのうちの1種または2種以上であり、
及び/または、前記油相と前記水相との体積比が1:(4~10)である
ことを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記乳化剤がポリビニルアルコール、またはポリビニルアルコールとツィーン80(登録商標)が(9~10):1の質量比でなる混合溶媒である
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記油相におけるポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体の質量分率が2~15%であり、前記水相における乳化剤の質量分率が0.1~3%であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物、または請求項6~10のいずれか一項に記載の方法で調製した組成物の、注射型皮膚充填製品における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の技術分野に関するものであり、具体的には、親水性の注射型皮膚充填組成物及びその調製方法と使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、美容医療における注射充填材は、美容医療業界の拡大に伴って急速に発展しており、そして、人々の美意識および安全や健康を重視する程度が高まっているため、安全且つ有効な注射製品が広く注目されている。しかし、現在、市場に出回る注射充填に用いられるマイクロスフェアやヒアルロン酸ナトリウムのような充填製品は、ヒトの皮膚との親和性が悪く、注射位置がずれやすく、マイクロスフェアの分散性が悪く、沈降・凝集が発生しやすい等の要因により、注射後の長時間にわたる安定的な効果を保証することが困難である。
【0003】
人工的に化学合成された高分子ポリマーマイクロスフェアは、動物由来の充填材より、感染のリスクが低減され、比較的良好な安全性を有し、保持時間が長いが、良好な生体適合性に欠ける。ヒアルロン酸ナトリウムは、生体適合性が良好で、かつ用途が比較的広い充填材であるが、その充填時のずれ問題も頻繁に提起されており、注射位置のずれのため、充填の効果も大幅に低下してしまう。すなわち、ヒアルロン酸ナトリウムは、生体適合性が良好であるが、ヒト細胞との接着効果が劣っているため、最適な注射充填材ではない。
【0004】
中国特許出願201980018465.0では、コラーゲンペプチドを含むポリカプロラクトンマイクロスフェア充填物及びその製造方法が開示されているが、ポリカプロラクトンが塊状に凝集しやすいため、マイクロスフェアのコラーゲン発生を刺激する効果が低下し、そして結節等の有害反応を引き起こすことがあり、それも望ましい注射充填材ではない。
上記の問題に対して、新規の注射型皮膚充填組成物を開発することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の課題に鑑みて、生体適合性が良好で、注入後の皮下結節及び炎症性等の有害反応の発生率を低減することが可能であり、即時充填効果が良好で、ずれにくい親水性の注射型皮膚充填組成物及びその調製方法と使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の技術案は下記の通りである。
本発明は、ポリマーマイクロスフェアと、ポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレート(PEG-SG)と、分散液とを含み、前記ポリマーマイクロスフェアがポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体であり、前記分散液が架橋ヒアルロン酸ナトリウムとタンパク質とを含み、前記タンパク質がイガイ接着タンパク質またはフィブロインタンパク質である、組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、特定の両親媒性を有するポリマーマイクロスフェアを、特定の成分を含む分散液と併用することにより、タンパク質、PEG-SGおよび架橋ヒアルロン酸ナトリウムを相互に配合し、組成物系を液状から特定の固液相互侵入ゲルの生体模倣細胞外マトリクス構造へ速やかに変換させることができ、これにより、本発明のポリマーマイクロスフェアは特定の分散形態で組成物系に安定的に存在することが可能となり、このように得られた組成物はずれにくく、膨潤率が低く、標的に対する即時充填効果および良好な生体適合性を有するものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
広域の細胞接着および局在、局所的な抗酸化、抗炎症、占位充填及び注射痕の回復効果をより良好に実現するために、前記タンパク質がイガイ接着タンパク質であることが好ましい。
【0009】
本発明では、前記タンパク質と前記架橋ヒアルロン酸ナトリウムとの質量比は1:(15~25)であり、好ましくは1:20であり、
及び/または、前記架橋ヒアルロン酸ナトリウムと前記ポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレートとの質量比は(80~120):1であり、好ましくは100:1である。
本発明では、より良好な標的に対する即時充填効果及び増殖に対する持続的な刺激効果を実現するために、前記ポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレートおよび前記分散液の合計質量と、前記ポリマーマイクロスフェアの質量との比は(6~9):(1~4)であり、好ましくは7.5:2.5である。
本発明の上述の物質の好ましい割合であれば、マイクロスフェアのより良好な均一分散性及び即時充填効果を有する。
【0010】
本発明では、より良好な低膨潤の充填効果を獲得するために、前記分散液は、さらにりん酸塩緩衝液及びグリセロールを含み、浸透圧が250~350mOsm/Lであり、前記架橋ヒアルロン酸ナトリウムの前記分散液における濃度が15~30mg/mlであり、好ましくは24mg/mlであり、
及び/または、より良好に流動性と保湿性とを両立させるために、前記分散液における前記グリセロールの質量分率は0.48~2%であり、好ましくは1%である。
本発明の分散液中のりん酸塩緩衝液は、本発明の組成物の人体との等張を可能にする。そのpHは7.3であることが好ましい。
【0011】
本発明では、前記ポリマーマイクロスフェアの固有粘度は0.15~1.5dl/g(中国薬局方20200663の粘度測定法を参考にし、25℃で0.5%のクロロホルム溶液を調製する)であり、PCLのポリマーにおける割合は40~70wt%であり、コラーゲンの増殖に対する刺激効果および親水性効果をより好適に両立させるために、前記ポリマーマイクロスフェアの固有粘度が1.2dl/gであり、PCLのポリマーにおける割合が50wt%であることが好ましく、
及び/または、前記ポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレートは4アームのものであり、その分子量は5000~40000であり、好ましくは10000であり、
及び/または、前記架橋ヒアルロン酸ナトリウムの分子量は1000000~2500000であり、好ましくは1500000である。
本発明では、前記架橋ヒアルロン酸ナトリウムにおける架橋剤はジビニルスルホンであり、具体的な架橋方法としては、ヒアルロン酸ナトリウム1gを質量分率10%の水酸化ナトリウム溶液に溶解し、ジビニルスルホン5mgを加えて撹拌し、架橋ヒアルロン酸ナトリウムを得、最後に1mol/Lの塩酸溶液を加えることでpH値を7.0~7.4までに調整する。
本発明では、異なる分解時間(分解周期が1年から5年であってもよい)を達成するために、ポリマーマイクロスフェアの使用部位および回復効果に対する需要に応じて、主原料の分子量、粘度及び配合比率を調整することができる。
本発明の上述のポリマーマイクロスフェアの粘度、タンパク質及び架橋ヒアルロン酸ナトリウムの分子量、ならびに各物質の配合比率での配合であれば、組成物の分散性、注射性、分解性及び局在性能を両立させることができる。
本発明のポリマーマイクロスフェアは粒径が35~45μmの範囲にあることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、せん断乳化法、膜乳化法または噴霧乾燥法によってポリマーマイクロスフェアを製造する工程を含む、上記組成物を調製する方法を提供する。
より良好な目標となる粒度分布及びマイクロスフェアの収率を達成するために、ポリマーマイクロスフェアの製造方法は膜乳化法であることが好ましい。
具体的には、ポリマーマイクロスフェアの製造方法は、有機溶媒をポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体と混合することにより、油相を得る工程を備え、前記有機溶剤はジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルムのうちの1種または2種以上であり、ジクロロメタン、またはテトラヒドロフランとジクロロメタンが(1~2):(8~10)の体積比でなる混合溶媒が好ましい。
【0013】
本発明では、せん断乳化法または膜乳化法によって製造を行う場合、さらに、乳化剤を水と混合することにより、水相を得る工程を備え、前記乳化剤はポリビニルアルコール、スパン、ツィーン(tween)、カルボキシメチルセルロースのうちの1種または2種以上であり、ポリビニルアルコール、またはポリビニルアルコール(粘度5~50mPa・s)とツィーン80が(9~10):1の質量比でなる混合溶媒が好ましく、
及び/または、前記油相と前記水相との体積比は1:(4~10)である。
本発明では、前記油相におけるポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体の質量分率は2~15%であり、前記水相における前記乳化剤の質量分率は0.1~3%である。
【0014】
本発明は、ポリマーマイクロスフェアを製造する際、特定の油相の濃度、水相の組成及び濃度により、乳化後に得られるマイクロスフェアのより良好な物理的形態を保証することができる。具体的には、得られるマイクロスフェアを、粒径の真球度が良く、粒度分布が狭く、表面が滑らかで、理想的な収率を有するものとすることができる。
好ましい態様として、膜乳化法によって製造を行う場合、より良好な目標となるマイクロスフェアの収率を兼ねて達成するために、前記有機溶媒はテトラヒドロフランとジクロロメタンが1:9の体積比でなるものであり、前記油相におけるポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体の質量分率は8%であり、前記水相における前記乳化剤の質量分率は1%であり、また、前記油相と前記水相との体積比は1:6である。
膜乳化法によって製造を行う場合、0.1~0.4kPaの圧力で前記油相を膜透過させ、それを水相と4~8℃で撹拌しながら混合させ(前記撹拌の速度が200~500r/minであり、前記膜の孔径が10~20μmである)、油相の膜透過が完了した後、引き続き撹拌(200~500r/min)して10~60分間乳化させ、次いで、15~25℃で引き続き撹拌(200~500r/min)することにより、油相の溶媒を揮発させる。
製造されたマイクロスフェアを、水相の溶媒が残留しなくなる(水洗い3~5回)までに複数回洗浄し、さらに、それを篩分けした後、目標となる粒径を有するマイクロスフェアを得ることが好ましい。
油相の膜透過が完了した後、引き続き攪拌して乳化(4~8℃で)させる時、および15~25℃で引き続き攪拌することにより油相の溶媒を揮発させる時に用いる攪拌の速度は、油相と水相とを混合させる時に用いる速度と同じである。
油相を膜透過させ、それを水相と4~8℃で撹拌しながら混合させる時、引き続き撹拌して乳化させる時、および、15~25℃で引き続き撹拌することにより油相の溶媒を揮発させる時の速度は250r/minであり、油相を押出する圧力は0.2kPaであり、前記膜の孔径は20μmであり、そして、15~25℃で引き続き4時間撹拌することにより油相の溶媒を揮発させることが好ましい。
【0015】
せん断乳化法によって製造を行う場合、4~8℃で撹拌しながら前記水相に前記油相を滴下して混合させ(前記撹拌の速度が800~1000r/minであり、時間が20~40分間である)、次いで、15~25℃で引き続き400~500r/minの速度で3~5時間撹拌する。混合する際に、前記撹拌の速度が1000r/minであり、時間が30分間であり、次いで、15~25℃で引き続き500r/minの速度で5時間撹拌することが好ましい。
【0016】
噴霧乾燥法によって製造を行う場合、前記油相を噴霧乾燥し、噴霧乾燥過程の入口温度は60~85℃であり、出口温度は25~50℃であり、供給速度は10~25ml/minであり、高圧空気流量は400~600L/時間である。入口温度が85℃であり、出口温度が25℃であり、供給速度が25ml/minであり、高圧空気流量が600L/時間であることが好ましい。
【0017】
本発明のポリマーマイクロスフェアの製造方法では、各条件を組み合わせて使用することで、マイクロスフェアを製造するための原材料の特性を効果的に組み合わせることができ、理想的な製造効果を実現することができる。
本発明では、得られたポリマーマイクロスフェアを一次篩分けした後、それを規定の割合で分散液及びPEG-SGと均一に混合することにより、上記組成物を得ることができる。
【0018】
また、本発明は、上記組成物、または上記方法によって調製した組成物の注射型皮膚充填製品における使用を提供する。
本発明で得られる組成物は、疾患の診断または治療を目的としない皮下充填注射に用いることができ、皮膚自身の深層にあるコラーゲンの発生を刺激することにより比較的に長期間の持続的な回復効果をもたらすことができる。具体的には、顔面、頸部に適用することで、美容の効果を実現できる。
【0019】
本発明は少なくとも下記の有益な効果を有する。
本発明の組成物は、再溶解性が良好で、生体適合性が高く、材料を注入した後の炎症性反応を低減でき、抗酸化作用および注射痕の回復効果を有し、本発明の特定のゲル系におけるタンパク質の細胞に対する接着作用によって、注射位置の精確さと固定を実現し、充填物ずれのリスクを解決でき、且つ本発明の組成物は特定の相互侵入網目構造がマイクロスフェアの懸濁分散効果を維持することができ、即時充填効果を提供することができる。
また、本発明の方法で製造したポリマーマイクロスフェアは、粒度分布が狭く、真球度が高く、表面が滑らかで、注入後の分解ムラ、皮下結節および赤腫れなどの有害反応の発生率をより効果的に低減することができる。
【実施例
【0020】
以下、実施例を使用して本発明の好ましい実施の形態を詳しく説明する。なお、以下の実施例が、説明のためのものにすぎず、本発明の範囲を限定するためのものではないことは理解されるべきである。当業者は、本発明の趣旨および思想から逸脱しない限り、本発明に対して様々な修正及び変更を施すことができる。
特に断りがない限り、下記の実施例で使用される試験方法は、いずれも慣用の方法である。特に断りがない限り、下記の実施例で使用される材料、試薬などは、いずれも商業ルートから入手できるものである。
【0021】
実施例1
本実施例は、具体的には、下記の工程を含む本発明の組成物の調製方法を提供する。
工程1:マイクロスフェアの製造
ポリカプロラクトンのブレンド変性:質量比として2:1:1:2の比率でε-カプロラクトン、ラクチド、ポリエチレングリコール(分子量2000)、トルエンを反応容器に加え、触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴滴下し、125℃で減圧を繰り返し、窒素導入で酸素を除き、密封後、この温度で48時間反応させて生成物を得、当該生成物をクロロホルムに溶解し再洗浄して精製し、さらに真空乾燥した後、ポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体を得た。
テトラヒドロフラン及びジクロロメタンを溶媒(2種類の溶媒の体積比が1:9である)とし、それを上記で製造したポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体(PCLの占める割合が50wt%であり、粘度が1.2dl/gである)と混合して油相を調製し、ここで、ポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体の質量分率は8%であった。
ポリビニルアルコール(粘度が25mPa・sである)及びツィーン80を溶質(2種類の溶質の質量比は10:1である)とし、純水を加えて水相を調製し、ここで、溶質の質量分率は1%であった。
油相と水相との体積比は1:6であった。
【0022】
膜乳化法によるマイクロスフェアの製造:油相を0.2kPaの圧力で押出し、それを孔径20μmの膜に透過させ、撹拌しながら水相(4~8℃の氷浴条件下で)と混合し(撹拌の速度は250r/minである)、油相の膜透過が完了した後、引き続き同じ速度で30分間撹拌して乳化させた後、氷浴を除去し、次いで、21℃で引き続き250r/minで4時間撹拌することにより、油相の溶媒を揮発させた。製造したマイクロスフェアを水で3~5回洗った。得られたマイクロスフェアは粒径が30~50μmの範囲にあった。
上記で得られたマイクロスフェアを篩分けし、粒径35~45μmのマイクロスフェア(マイクロスフェアの合計質量の75.6%を占める)を得た。
【0023】
工程2:分散液の調製
架橋ヒアルロン酸ナトリウム(分子量1500000)240mg、イガイ接着タンパク質12mg、グリセロール100mgを取り、りん酸塩緩衝液(中国薬局方20208002に準じて調製したもの、pH7.3)を加えて溶解し、10mlとなるように定容した。塩化ナトリウムで浸透圧を300mOsm/Lに調整し、ゲル分散液Aを得た。
【0024】
工程3:組成物の調製
PEG-SG(4アーム、分子量10000)2.4mgに水を加えることで質量分率15%の溶液を調製した後、凍結乾燥し、凍結乾燥粉末(予め-40℃で3時間凍結した後、真空度を0.2mbarとし、-28℃、-18℃、10℃及び30℃の温度勾配でそれぞれ20時間、8時間、2時間及び2時間乾燥し、凍結乾燥粉末とする)を得、それを工程1における篩分けした後のマイクロスフェアとともに、工程2で得られたゲル分散液Aに加えて均一に混合させ、均一な組成物を得た。PEG-SGおよびゲル分散液Aの合計質量と、マイクロスフェアの質量との比は7.5:2.5であった。
【0025】
実施例2
本実施例は、具体的には、下記の工程を含む本発明の組成物の調製方法を提供する。
工程1:マイクロスフェアの製造
ポリカプロラクトンのブレンド変性:質量比として4:3:3:10の比率でε-カプロラクトン、ラクチド、ポリエチレングリコール(分子量2000)、トルエンを反応容器に加え、触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴滴下し、125℃で減圧を繰り返し、窒素導入で酸素を除き、密封後、この温度で60時間反応させて生成物を得、当該生成物をクロロホルムに溶解し再洗浄して精製し、さらに真空乾燥した後、ポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体を得た。
テトラヒドロフラン及びジクロロメタンを溶媒(2種類の溶媒の体積比が2:8である)とし、それを上記で製造したポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体(PCLの占める割合が40wt%であり、粘度が1.5dl/gである)と混合して油相を調製し、ここで、ポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体の質量分率は15%であった。
ポリビニルアルコール(粘度が5mPa・sである)及びツィーン80を溶質(2種類の溶質の質量比は9:1である)とし、純水を加えて水相を調製し、ここで、溶質の質量分率は3%であった。
油相と水相との体積比は1:10であった。
【0026】
膜乳化法によるマイクロスフェアの製造:油相を0.4kPaの圧力で押出し、それを孔径10μmの膜に透過させ、撹拌しながら水相(4~8℃の氷浴条件下で)と混合し(撹拌の速度は200r/minである)、油相の膜透過が完了した後、引き続き同じ速度で10分間撹拌して乳化させた後、氷浴を除去し、次いで、22℃で引き続き200r/minで4時間撹拌することにより、油相の溶媒を揮発させた。製造したマイクロスフェアを水で3~5回洗った。得られたマイクロスフェアは粒径が20~60μmの範囲にあった。
上記で得られたマイクロスフェアを篩分けし、粒径35~45μmのマイクロスフェア(マイクロスフェアの合計質量の49.6%を占める)を得た。
【0027】
工程2:分散液の調製
架橋ヒアルロン酸ナトリウム(分子量1500000)240mg、イガイ接着タンパク質12mg、グリセロール100mgを取り、りん酸塩緩衝液(中国薬局方20208002に準じて調製したもの、pH7.3)を加えて溶解し、10mlとなるように定容した。塩化ナトリウムで浸透圧を310mOsm/Lに調整し、ゲル分散液Aを得た。
【0028】
工程3:組成物の調製
PEG-SG(4アーム、分子量10000)2.4mgの凍結乾燥粉末(実施例1と同様にして調製したもの)を工程1における篩分けした後のマイクロスフェアとともに、工程2で得られたゲル分散液Aに加えて均一に混合させ、均一な組成物を得た。PEG-SGおよびゲル分散液Aの合計質量と、マイクロスフェアの質量との比は7.5:2.5であった。
【0029】
実施例3
工程1:マイクロスフェアの製造
ポリカプロラクトンのブレンド変性:質量比として2:1:1:2の比率でε-カプロラクトン、ラクチド、ポリエチレングリコール(分子量2000)、トルエンを反応容器に加え、触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴滴下し、125℃で減圧を繰り返し、窒素導入で酸素を除き、密封後、この温度で48時間反応させて生成物を得、当該生成物をクロロホルムに溶解し再洗浄して精製し、さらに真空乾燥した後、ポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体を得た。
純ジクロロメタンを溶媒とし、それを上記で製造したポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体(PCLの占める割合が50wt%であり、粘度が1.2dl/g)と混合して油相を調製し、ここで、ポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体の質量分率は2%であった。
ポリビニルアルコール(粘度が50mPa・sである)を溶質とし、純水を加えて水相を調製し、ここで、溶質の質量分率は0.1%であった。
油相と水相との体積比は1:4であった。
【0030】
膜乳化法によるマイクロスフェアの製造:油相を0.1kPaの圧力で押出し、それを孔径20μmの膜に透過させ、撹拌しながら水相(4~8℃氷浴の条件下で)と混合し(撹拌の速度は500r/minである)、油相の膜透過が完了した後、引き続き500r/minで60分間撹拌して乳化させた後、氷浴を除去し、次いで、18℃で引き続き500r/minで4.5時間撹拌することにより、油相の溶媒を揮発させた。製造したマイクロスフェアを水で3~5回洗った。得られたマイクロスフェアは粒径が25~60μmの範囲にある。
上記で得られたマイクロスフェアを篩分けし、粒径35~45μmのマイクロスフェア(マイクロスフェアの合計質量の61.7%を占める)を得た。
【0031】
工程2:分散液の調製
架橋ヒアルロン酸ナトリウム(分子量1500000)240mg、イガイ接着タンパク質12mg、グリセロール100mgを取り、りん酸塩緩衝液(中国薬局方20208002に準じて調製したもの、pH7.3)を加えて溶解し、10mlとなるように定容した。塩化ナトリウムで浸透圧を280mOsm/Lに調整し、ゲル分散液Aを得た。
【0032】
工程3:組成物の調製
PEG-SG(4アーム、分子量10000)2.4mgの凍結乾燥粉末(実施例1と同様にして調製したもの)を工程1における篩分けした後のマイクロスフェアとともに、工程2で得られたゲル分散液Aに加えて均一に混合させ、均一な組成物を得た。PEG-SGおよびゲル分散液Aの合計質量と、マイクロスフェアの質量との比は7.5:2.5であった。
【0033】
実施例4
本実施例は、具体的には、下記の工程を含む本発明の組成物の調製方法を提供する。
工程1:マイクロスフェアの製造
ポリカプロラクトンのブレンド変性:質量比として2:1:1:2の比率でε-カプロラクトン、ラクチド、ポリエチレングリコール(分子量2000)、トルエンを反応容器に加え、触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴滴下し、125℃で減圧を繰り返し、窒素導入で酸素を除き、密封後、この温度で48時間反応させて生成物を得、当該生成物をクロロホルムに溶解し再洗浄して精製し、さらに真空乾燥した後、ポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体を得た。
テトラヒドロフラン及びジクロロメタンを溶媒(2種類の溶媒の体積比が1:9である)とし、それを上記で製造したポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体(PCLの占める割合が50wt%であり、粘度が1.2dl/gである)と混合して油相を調製し、ここで、ポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体の質量分率は8%であった。
ポリビニルアルコール(粘度が25mPa・sである)及びツィーン80を溶質(2種類の溶質の質量比は10:1である)とし、純水を加えて水相を調製し、ここで、溶質の質量分率は1%であった。
油相と水相との体積比は1:6であった。
【0034】
膜乳化法によるマイクロスフェアの製造:油相を0.2kPaの圧力で押出し、それを孔径20μmの膜に透過させ、撹拌しながら水相(4~8℃の氷浴条件下で)と混合し(撹拌の速度は250r/minである)、油相の膜透過が完了した後、引き続き250r/minで30分間撹拌して乳化させた後、氷浴を除去し、次いで、16℃で引き続き250r/minで5時間撹拌することにより、油相の溶媒を揮発させた。製造したマイクロスフェアを水で3~5回洗った。得られたマイクロスフェアは粒径が30~50μmの範囲にある。
上記で得られたマイクロスフェアを篩分けし、粒径35~45μmのマイクロスフェア(マイクロスフェアの合計質量の72.4%を占める)を得た。
【0035】
工程2:分散液の調製
架橋ヒアルロン酸ナトリウム(分子量1000000)300mg、イガイ接着タンパク質12mg、グリセロール50mgを取り、りん酸塩緩衝液(中国薬局方20208002に準じて調製したもの、pH7.3)を加えて溶解し、10mlとなるように定容した。塩化ナトリウムで浸透圧を320mOsm/Lに調整し、ゲル分散液Aを得た。
【0036】
工程3:組成物の調製
PEG-SG(4アーム、分子量5000)2.5mgの凍結乾燥粉末(実施例1と同様にして調製したもの)を工程1における篩分けした後のマイクロスフェアとともに、工程2で得られたゲル分散液Aに加えて均一に混合させ、均一な組成物を得た。PEG-SGおよびゲル分散液Aの合計質量と、マイクロスフェアの質量との比は6:4であった。
【0037】
実施例5
本実施例は、具体的には、下記の工程を含む本発明の組成物の調製方法を提供する。
工程1:マイクロスフェアの製造
ポリカプロラクトンのブレンド変性:質量比として2:1:1:2の比率でε-カプロラクトン、ラクチド、ポリエチレングリコール(分子量2000)、トルエンを反応容器に加え、触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴滴下し、125℃で減圧を繰り返し、窒素導入で酸素を除き、密封後、この温度で48時間反応させ、生成物を得、当該生成物をクロロホルムに溶解し再洗浄して精製し、さらに真空乾燥した後、ポリ 乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体を得た。
テトラヒドロフラン及びジクロロメタンを溶媒(2種類の溶媒の体積比が1:9である)とし、それを上記で製造したポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体(PCLの占める割合が50wt%であり、粘度が1.2dl/gである)と混合して油相を調製し、ここで、ポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体の質量分率は8%であった。
ポリビニルアルコール(粘度が25mPa・sである)及びツィーン80を溶質(2種類の溶質の質量比は10:1である)とし、純水を加えて水相を調製し、ここで、溶質の質量分率は1%であった。
油相と水相との体積比は1:6であった。
【0038】
膜乳化法によるマイクロスフェアの製造:油相を0.2kPaの圧力で押出し、それを孔径20μmの膜に透過させ、撹拌しながら水相(4~8℃の氷浴条件下で)と混合し(撹拌の速度は250r/minである)、油相の膜透過が完了した後、引き続き250r/minで30分間撹拌して乳化させた後、氷浴を除去し、次いで、19℃で引き続き250r/minで4時間撹拌することにより、油相の溶媒を揮発させた。製造したマイクロスフェアを水で3~5回洗った。得られたマイクロスフェアは粒径が30~50μmの範囲にあった。
上記で得られたマイクロスフェアを篩分けし、粒径35~45μmのマイクロスフェア(マイクロスフェアの合計質量の74.3%を占める)を得た。
【0039】
工程2:分散液の調製
架橋ヒアルロン酸ナトリウム(分子量2500000)150mg、イガイ接着タンパク質10mg、グリセロール200mgを取り、りん酸塩緩衝液(中国薬局方20208002に準じて調製したもの、pH7.3)を加えて溶解し、10mlとなるように定容した。塩化ナトリウムで浸透圧を300mOsm/Lに調整し、ゲル分散液Aを得た。
【0040】
工程3:組成物の調製
PEG-SG(4アーム、分子量40000)1.88mgの凍結乾燥粉末(実施例1と同様にして調製したもの)を工程1における篩分けした後のマイクロスフェアとともに、工程2で得られたゲル分散液Aに加えて均一に混合させ、均一な組成物を得た。PEG-SGおよびゲル分散液Aの合計質量と、マイクロスフェアの質量との比は9:1であった。
【0041】
実施例6
本実施例は、具体的には、下記の工程を含む本発明の組成物の調製方法を提供する。
工程1:マイクロスフェアの製造
ポリカプロラクトンのブレンド変性:質量比として4:1:1:4の比率でε-カプロラクトン、ラクチド、ポリエチレングリコール(分子量2000)、トルエンを反応容器に加え、触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴滴下し、125℃で減圧を繰り返し、窒素導入で酸素を除き、密封後、この温度で12時間反応させて生成物を得、当該生成物をクロロホルムに溶解し再洗浄して精製し、さらに真空乾燥した後、ポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体を得た。
テトラヒドロフラン及びジクロロメタンを溶媒(2種類の溶媒の体積比が1:9である)とし、それを上記で製造したポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体(PCLの占める割合が70wt%であり、粘度が0.15dl/gである)と混合して油相を調製し、ここで、ポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体の質量分率は8%であった。
ポリビニルアルコール(粘度が25mPa・sである)及びツィーン80を溶質(2種類の溶質の質量比は10:1である)とし、純水を加えて水相を調製し、ここで、溶質の質量分率は1%であった。
油相と水相との体積比は1:6であった。
【0042】
膜乳化法によるマイクロスフェアの製造:油相を0.2kPaの圧力で押出し、それを孔径20μmの膜に透過させ、撹拌しながら水相(4~8℃の氷浴条件下で)と混合し(撹拌速度は250r/minである)、油相の膜透過が完了した後、引き続き250r/minで30分間撹拌して乳化させた後、氷浴を除去し、次いで、20℃で引き続き250r/minで4時間撹拌することにより、油相の溶媒を揮発させた。製造したマイクロスフェアを水で3~5回洗った。得られたマイクロスフェアの粒径は20~60μmの範囲にあった。
上記で得られたマイクロスフェアを篩分けし、粒径35~45μmのマイクロスフェア(マイクロスフェアの合計質量の53.5%を占める)を得た。
【0043】
工程2:分散液の調製
架橋ヒアルロン酸ナトリウム(分子量1500000)240mg、フィブロインタンパク質12mg、グリセロール100mgを取り、りん酸塩緩衝液(中国薬局方20208002に準じて調製したもの、pH7.3)を加えて溶解し、10mlとなるように定容した。塩化ナトリウムで浸透圧を300mOsm/Lに調整し、ゲル分散液Aを得た。
【0044】
工程3:組成物の調製
PEG-SG(4アーム、分子量40000)2.4mgの凍結乾燥粉末(実施例1と同様にして調製したもの)を工程1における篩分けした後のマイクロスフェアとともに、工程2で得られたゲル分散液Aに加えて均一に混合させ、均一な組成物を得た。PEG-SGおよびゲル分散液Aの合計質量と、マイクロスフェアの質量との比は7.5:2.5であった。
【0045】
実施例7
本実施例は、組成物の調製方法を提供し、具体的な調製方法は実施例1と同じであり、両者の相違点は、マイクロスフェアの製造方法を膜乳化法からせん断乳化法に変更したことのみである。
せん断乳化法によるマイクロスフェアの製造:具体的な機械撹拌のパラメータは1000r/minであり、5℃の氷浴の条件下で、水相を撹拌しながら油相を滴下し、30分間撹拌して乳化させ、次いで、氷浴を除去し、22℃で回転速度を下げて、引き続き500r/minの速度で撹拌することにより、溶媒を5時間揮発させ、製造されたマイクロスフェアを水で3~5回洗った。得られたマイクロスフェアは粒径が10~80μmの範囲にあった。
上記で得られたマイクロスフェアを篩分けし、粒径35~45μmのマイクロスフェア(マイクロスフェアの合計質量の36.6%を占める)を得た。
【0046】
実施例8
本実施例は、組成物の調製方法を提供し、具体的な調製方法は実施例1と同じであり、両者の相違点は、マイクロスフェアの製造方法を膜乳化法から噴霧乾燥法に変更したことのみである。
噴霧乾燥法によるマイクロスフェアの製造:ポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体の質量分率が15%である油相を調製した。油相を噴霧乾燥装置に仕込み、具体的には、入口温度が85℃、出口温度が25℃、供給速度が25ml/min、高圧空気流量が600L/時間となるようにパラメータを設定した。得られたマイクロスフェアは粒径が5~60μmの範囲にあった。
上記で得られたマイクロスフェアを篩分けし、粒径35~45μmのマイクロスフェア(マイクロスフェアの合計質量の38.2%を占める)を得た。
【0047】
比較例1
本比較例は、組成物の調製方法を提供し、具体的な調製方法は実施例1と同じであり、両者の相違点は、ポリマーマイクロスフェアの製造原料としてポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体の代わりに、ポリカプロラクトン(分子量8000)を使用したことのみである。具体的には、得られたマイクロスフェアは粒径が5~65μmの範囲にあった。上記で得られたマイクロスフェアを篩分けし、粒径35~45μmのマイクロスフェア(マイクロスフェアの合計質量の38.7%を占める)を得た。
【0048】
比較例2
本比較例は、組成物の調製方法を提供し、具体的な調製方法は実施例1と同じであり、両者の相違点は、ポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレートの凍結乾燥粉末の代わりに、ポリエチレングリコール-プロピオンアルデヒド(4アーム、分子量10000)の凍結乾燥粉末を組成物の調製に用いたことのみである。
【0049】
比較例3
本比較例は、組成物の調製方法を提供し、具体的な調製方法は実施例1と同じであり、両者の相違点は、ゲル分散液Aの成分として、実施例1における架橋ヒアルロン酸ナトリウムを、CMC-Na(分子量700000)に変更したことのみである。
【0050】
比較例4
本比較例は、組成物の調製方法を提供し、具体的な調製方法は実施例1と同じであり、両者の相違点は、PEG-SGおよびゲル分散液Aの合計質量と、マイクロスフェアの質量との比が10:1であったことのみである。
【0051】
比較例5
本比較例は、組成物の調製方法を提供し、具体的な調製方法は実施例1と同じであり、両者の相違点は、架橋ヒアルロン酸ナトリウム(分子量1500000)の使用量が100mgであり、架橋ヒアルロン酸ナトリウムとイガイ接着タンパク質との質量比が30:1であり、イガイ接着タンパク質の質量が3.3mgであり、ポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレートの質量が1mgであったことのみである。
【0052】
比較例6
本比較例は、組成物の調製方法を提供し、具体的な調製方法は実施例1と同じであり、両者の相違点は、油相におけるポリ乳酸-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体の質量分率が1%であり、水相における乳化剤の質量分率が4%であったことのみである。他の工程は実施例1と同じであり、得られたマイクロスフェアは粒径が1~45μmの範囲にあった。上記で得られたマイクロスフェアを篩分けし、粒径35~45μmのマイクロスフェア(マイクロスフェアの合計質量の34.8%を占める)を得た。
【0053】
試験例1
本試験例では、上記の実施例および比較例で調製した組成物の性能を測定した。具体的な方法および結果は、下記の通りである。
マイクロスフェアの形態の観察:
洗浄し、自然乾燥した後のマイクロスフェアを少量取り、走査型電子顕微鏡を用いて倍率が200、500のレンズでマイクロスフェアの外観を観察した。
【0054】
膨潤率の測定:
組成物を塊状にした後、組成物を規定の形状に裁断し、その質量を精密に測定してM1とした。また、それを摺合三角フラスコに移し、37℃まで予熱したpH7.2~7.4のりん酸塩緩衝液を加え(溶液の使用量は少なくとも試験サンプルの質量の10倍である)、24時間後にサンプルを取り出し、ろ紙でその表面の水分を吸収し、ゲルの質量を精密に測定してM2とした。質量膨潤率=(M2-M1)/M1×100%。
【0055】
分解周期の考察:
サンプルを密封して37℃の恒温振とう水槽に入れ、1ヶ月おきにサンプルを取り出し、マイクロスフェアの分解程度を観察した。
【0056】
親水性試験:
組成物からマイクロスフェアを分離してジクロロメタンで溶解させた後、スライドガラス上で自然に揮発させてポリマーフイルムを形成し、フイルム付きのスライドガラスを接触角計にセットしてポリマーフイルムの接触角を測定した。
【0057】
保存安定性の考察:
サンプルをシリンジに密封充填し、室温・遮光環境下でシリンジを垂直に置き、1日おきにサンプル中のマイクロスフェアの沈降・凝集の状況を観察した。
【0058】
細胞適合性試験:
平滑筋細胞(蘇州北納創聯生物技術有限公司から購入したもの)を蘇生して培養し、80%コンフルエントに達したタイミングで継代し、同じ重量で実施例、比較例で調製した組成物を接種し、次いで、接種後の平滑筋細胞を消化して細胞懸濁液とし、5×103個/ウェルの細胞密度となるように懸濁液を加え、平滑筋細胞の培地を100μlまでに加え、37℃、5%CO2の細胞培養インキュベーターで7日培養し、各群のサンプルに4個の重複ウェルを設け、走査型電子顕微鏡で細胞の成長状態を観察し、蛍光染色によって生/死細胞を計数し、CCK8法によって450nmの波長における吸光度の値を検出することで、測定材料における細胞の増殖状況を測定した。細胞の相対増殖率=生細胞/死細胞。
【0059】
動物の生体内試験:
(1)体重210~215gの4~6ヶ月齢の純種のニュージーランド白色種ウサギ48匹を試験動物とし、それをランダムに8群に分け、1群あたり6匹とした。第1群は実施例1の組成物に対して試験を行い、第2群は実施例4の組成物に対して試験を行い、第3群は実施例5の組成物に対して試験を行い、第4群は実施例6の組成物に対して試験を行い、第5群は比較例3の組成物に対して試験を行い、第6群は比較例4の組成物に対して試験を行い、第7群は比較例5の組成物に対して試験を行い、第8群は比較例6の組成物に対して試験を行った。
(2)注入を行う当日に、ウサギの背部の毛を剃り、ヨードチンキ、エタノールで通常に消毒し、脊椎の両側の皮下の間隔2cmの合計10箇所(0.5mL/1箇所)に注射し、次いで、注射箇所をクマシーブリリアントブルーで標識した。代謝による褪色を防止するために、2週間おきに注射箇所に対して着色を補充した。
(3)それぞれ注入後の3つのタイミング(1週、1ヶ月、3ヶ月)で、全ての動物を観察し、そして、3ヶ月のタイミングで試験動物を殺処分し、注入材料を含む皮下組織を切り取り、体積分率10%のホルムアルデヒド溶液中に浸漬し、48時間固定させた後、通常の脱水、透明化、パラフィン浸透、包埋、通常の切片を行い、切片の厚みを3μmとした。注入直後および1週間の時点で全ての皮丘の直径(横半径、縦半径及び2つの傾斜半径、ならびに中央部の厚みを測定し、その平均値を半球の半径rとする)、体積(体積=2/3πr3)を測定した。注射直後に体積試験を行った結果、全ての実施例及び比較例の体積がいずれも0.48~0.5cm3であり、顕著な違いがなかった。注入した1ヶ月後に、動物を殺処分せずに、局所の外観反応及び注射部位の炎症反応を観察した。試験の結果を表1および表2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
以上、一般的な説明及び具体的な実施の形態により本発明を詳しく説明したが、本発明に基づき、いくつかの補正や改善を行い得ることは、当業者にとって明らかである。従って、本発明の趣旨から逸脱しない上で行ったこれらの補正や改善は、すべて本発明の保護しようとする範囲に属するものである。