(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】移動端末試験装置及び移動端末試験方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/17 20150101AFI20241216BHJP
H04W 24/06 20090101ALI20241216BHJP
H04B 17/29 20150101ALI20241216BHJP
【FI】
H04B17/17
H04W24/06
H04B17/29 200
(21)【出願番号】P 2022194094
(22)【出願日】2022-12-05
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 周作
(72)【発明者】
【氏名】山崎 徹
(72)【発明者】
【氏名】荒山 昌豊
(72)【発明者】
【氏名】吉戸 章人
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-168444(JP,A)
【文献】特開2019-029741(JP,A)
【文献】特開2002-368677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/60
H04B 3/46-3/493
H04B 17/00-17/40
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動端末(2)の試験を行う移動端末試験装置(1)であって、
前記移動端末と通信を行う基地局を模擬する擬似基地局部(16)と、
前記移動端末から前記基地局へのアップリンクに用いられる第1キャリア及び第2キャリアのいずれか一方を前記アップリンクのスロットごとに指定するスケジューリング情報を設定する設定部(12)と、
前記スケジューリング情報に基づいて前記擬似基地局部を制御する制御部(13)と、
前記第1キャリアを用いて前記移動端末から前記擬似基地局部に送信された第1のアップリンク信号を、前記スケジューリング情報に基づいて測定する第1の測定部(14)と、
前記第2キャリアを用いて前記移動端末から前記擬似基地局部に送信された第2のアップリンク信号を、前記スケジューリング情報に基づいて測定する第2の測定部(15)と、
を備える、移動端末試験装置。
【請求項2】
前記第1キャリアは、周波数分割複信(FDD)の第1セルのキャリアであり、前記第2キャリアは、時分割複信(TDD)の第2セルのキャリアである、請求項1に記載の移動端末試験装置。
【請求項3】
前記第1キャリアは、時分割複信(TDD)の第1周波数バンドのキャリアであり、前記第2キャリアは、前記第1周波数バンドと同一セルの第2周波数バンドのキャリアである、請求項1に記載の移動端末試験装置。
【請求項4】
前記第1の測定部により測定された前記第1のアップリンク信号の時間波形と、前記第2の測定部により測定された前記第2のアップリンク信号の時間波形とを同一時間軸上に表示する表示部(18)をさらに備える、請求項1に記載の移動端末試験装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記アップリンクにおける前記第1キャリアと前記第2キャリアとの切り替えが、前記第1キャリアと前記第2キャリアのいずれか一方のスロット内で行われるように、前記スケジューリング情報を設定し、前記表示部は、前記切り替えが行われた前記スロットの範囲を前記同一時間軸上にさらに表示する、請求項4に記載の移動端末試験装置。
【請求項6】
移動端末(2)と通信を行う基地局を模擬する擬似基地局部(16)を備え、前記移動端末の試験を行う移動端末試験装置(1)が、
前記移動端末から前記基地局へのアップリンクに用いられる第1キャリア及び第2キャリアのいずれか一方を前記アップリンクのスロットごとに指定するスケジューリング情報を設定し、
前記スケジューリング情報に基づいて前記擬似基地局部を制御し、
前記第1キャリアを用いて前記移動端末から前記擬似基地局部に送信された第1のアップリンク信号を、前記スケジューリング情報に基づいて測定し、
前記第2キャリアを用いて前記移動端末から前記擬似基地局部に送信された第2のアップリンク信号を、前記スケジューリング情報に基づいて測定する
ことを含む移動端末試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末の試験を行なう移動端末試験装置及び移動端末試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、データ通信端末、車載通信端末などの移動端末を開発した場合、この開発した移動端末が正常に通信を行なえるか否かを試験する必要がある。このため、実際の基地局の機能を擬似する擬似基地局として動作する試験装置に試験対象の移動端末を接続し、試験装置と移動端末との間で通信を行ない、この通信の内容を確認する試験を行なっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、移動端末試験において、多重化信号を構成する各被多重化信号に対する設定情報を1画面上に表示し、選択した設定情報を変更することができる移動端末試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移動端末から基地局へのアップリンク(UL:Uplink)の容量、レイテンシなどを改善するために、スロット単位でUL信号を送信するセル又は周波数バンドを切り替える「アップリンク送信スイッチング(Uplink Tx Switching)」(以下、ULスイッチングという)技術又は機能が知られている。例えば、3GPP(3rd Generation Partnership Project)TS38.214 6.1.6参照。このため、移動端末のULスイッチング機能を試験する必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の移動端末試験装置では、ULスイッチングのようにスロットごとにUL信号を送信するセルや周波数バンドなどULキャリアが変化するようなケースの試験を行うことができないという課題があった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、ULスイッチングのようにスロット単位でUL信号を送信するセルや周波数バンドなどULキャリアが変化するようなケースの試験を行うことができる移動端末試験装置及び移動端末試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の移動端末試験装置は、移動端末(2)の試験を行う移動端末試験装置(1)であって、前記移動端末と通信を行う基地局を模擬する擬似基地局部(16)と、前記移動端末から前記基地局へのアップリンクに用いられる第1キャリア及び第2キャリアのいずれか一方を前記アップリンクのスロットごとに指定するスケジューリング情報を設定する設定部(12)と、前記スケジューリング情報に基づいて前記擬似基地局部を制御する制御部(13)と、前記第1キャリアを用いて前記移動端末から前記擬似基地局部に送信された第1のアップリンク信号を、前記スケジューリング情報に基づいて測定する第1の測定部(14)と、前記第2キャリアを用いて前記移動端末から前記擬似基地局部に送信された第2のアップリンク信号を、前記スケジューリング情報に基づいて測定する第2の測定部(15)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成により、本発明の移動端末試験装置は、ULスイッチングのようにスロット単位でULキャリアが変化するようなケースの試験であっても、設定部が試験に適合したスケジューリング情報を設定することができる。また、第1キャリアに対応した第1の測定部と第2キャリアに対応した第2の測定部とを個別に備え、試験に適合したスケジューリング情報に基づいて第1のUL信号と第2のUL信号とを同時に又は並行して測定することができるので、ULスイッチングのようにスロット単位でULキャリアが変化するようなケースの試験であっても実施することができる。
【0010】
また、本発明の移動端末試験装置において、前記第1キャリアは、周波数分割複信(FDD:Frequency Division Duplex)の第1セルのキャリアであり、前記第2キャリアは、時分割複信(TDD:Time Division Duplex)の第2セルのキャリアであってもよい。
【0011】
この構成により、本発明の移動端末試験装置は、キャリアアグリゲーション(CA:Carrier Aggregation)ベースのULスイッチングのようにスロット単位でUL信号を送信するセルが変化するようなケースの試験を行うことができる。例えば、FDDのプライマリセル(PCell:Primary Cell)のプライマリコンポーネントキャリア(PCC:Primary Component Carrier)とTDDのセカンダリセル(SCell:Secondary Cell)のセカンダリコンポーネントキャリア(SCC:Secondary Component Carrier)の両方が使用できるエリアにおいて、バンド間2CA(inter-band 2 Carrier Aggregation)に対応した移動端末がULキャリアをPCCとSCCの間で切り替えるULスイッチング機能を試験することができる。
【0012】
また、本発明の移動端末試験装置において、前記第1キャリアは、時分割複信(TDD)の第1周波数バンドのキャリアであり、前記第2キャリアは、前記第1周波数バンドと同一セルの第2周波数バンドのキャリアであってもよい。
【0013】
この構成により、本発明の移動端末試験装置は、ULスイッチングのようにスロット単位でUL信号を送信する周波数バンドが変化するようなケースの試験を行うことができる。例えば、TDDのノーマルアップリンク(NUL:Normal Uplink)スロットが割り当てられていないスロットでサプリメンタリアップリンク(SUL:Supplementary Uplink)を使用するように、ULキャリアをSULとNUL間で切り替えてULの容量及びレイテンシを改善するULスイッチング機能を試験することができる。
【0014】
また、本発明の移動端末試験装置は、前記第1の測定部により測定された前記第1のアップリンク信号の時間波形と、前記第2の測定部により測定された前記第2のアップリンク信号の時間波形とを同一時間軸上に表示する表示部(18)をさらに備える構成であってもよい。
【0015】
この構成により、本発明の移動端末試験装置は、第1のUL信号と第2のUL信号の切り替わりに要したスイッチング期間を容易に確認することができる。これにより、ULスイッチング機能の試験においてもタイムマスク測定を容易に実施することができる。
【0016】
また、本発明の移動端末試験装置において、前記設定部は、前記アップリンクにおける前記第1キャリアと前記第2キャリアとの切り替えが、前記第1キャリアと前記第2キャリアのいずれか一方のスロット内で行われるように、前記スケジューリング情報を設定し、前記表示部は、前記切り替えが行われた前記スロットの範囲を前記同一時間軸上にさらに表示する構成であってもよい。
【0017】
この構成により、本発明の移動端末試験装置は、ULスイッチングが実施されたスロット又はキャリアの適否を容易に判断することができる。
【0018】
また、本発明の移動端末試験方法において、移動端末(2)と通信を行う基地局を模擬する擬似基地局部(16)を備え、前記移動端末の試験を行う移動端末試験装置(1)が、前記移動端末から前記基地局へのアップリンクに用いられる第1キャリア及び第2キャリアのいずれか一方を前記アップリンクのスロットごとに指定するスケジューリング情報を設定し、前記スケジューリング情報に基づいて前記擬似基地局部を制御し、前記第1キャリアを用いて前記移動端末から前記擬似基地局部に送信された第1のアップリンク信号を、前記スケジューリング情報に基づいて測定し、前記第2キャリアを用いて前記移動端末から前記擬似基地局部に送信された第2のアップリンク信号を、前記スケジューリング情報に基づいて測定することを含むことを特徴とする。
【0019】
この構成により、本発明の移動端末試験方法は、ULスイッチングのようにスロット単位でULキャリアが変化するようなケースの試験であっても、試験に適合したスケジューリング情報を設定することができる。また、第1キャリアにより送信された第1のUL信号と第2キャリアにより送信された第2のUL信号とを、試験に適合したスケジューリング情報に基づいて同時に又は並行して測定することができるので、ULスイッチングのようにスロット単位でULキャリアが変化するようなケースの試験であっても実施することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ULスイッチングのようにスロット単位でUL信号を送信するセルや周波数バンドなどULキャリアが変化するようなケースの試験を行うことができる移動端末試験装置及び移動端末試験方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る移動端末試験装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】移動端末のアンテナ構成の例を示す図であり、(a)はアップリンクにFDDが使用されているとき、(b)はアップリンクにTDDが使用されているときのアンテナ構成を示す。
【
図3】スロット単位で使用セルを切り替えるULスイッチング(CAベースのULスイッチング)を説明する図である。
【
図4】
図3に示すULスイッチングにおける、上り又は下りのリンク方向の各スロットへの割り当ての例を示す図である。
【
図5】スロット単位で周波数バンドを切り替えるULスイッチング(SULベースのULスイッチング)を説明する図である。
【
図6】
図5に示すULスイッチングにおける、上り又は下りのリンク方向の各スロットへの割り当ての例を示す図である。
【
図7】キャリア切り替えにおけるスイッチング期間Tsの時間位置を示す図であり、(a)はキャリア1上でULスイッチングが実施され、(b)はキャリア2上でULスイッチングが実施されるケースを示す。
【
図8】スロット単位で使用セルを切り替えるULスイッチング(CAベースのULスイッチング)でのスケジューリング情報の例を示す図である。
【
図9】スロット単位で周波数バンドを切り替えるULスイッチング(SULベースのULスイッチング)でのスケジューリング情報の例を示す図である。
【
図10】CAベースのULスイッチング機能の試験における移動端末から移動端末試験装置への信号経路を示す図であり、(a)はプライマリセルのUL信号の信号経路、(b)はセカンダリセルのUL信号の信号経路を示す。
【
図11】SULベースのULスイッチング機能の試験における移動端末から移動端末試験装置への信号経路を示す図であり、(a)はNUL信号の信号経路、(b)はSUL信号の信号経路を示す。
【
図12】本発明の一実施形態に係る移動端末試験装置の表示部に表示される画像例を示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る移動端末試験方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る移動端末試験装置1の構成を示すブロック図である。移動端末試験装置1は、スケジューリング情報に従って移動通信の基地局を模擬して移動端末2を試験するものである。
図1に示すように、移動端末試験装置1は、処理部10と、擬似基地局部16と、操作部17と、表示部18と、記憶部19とを備えている。以下、各構成要素について説明する。
【0024】
処理部10は、試験の準備、実行、測定、解析、評価などの処理を行うものであり、
図1に示すように、試験制御部11と、設定部12と、基地局制御部13と、第1のRF測定部14と、第2のRF測定部15とを備えている。なお、第1のRF測定部14と第2のRF測定部15が、本発明の第1の測定部と第2の測定部にそれぞれ対応し、基地局制御部13(試験制御部11を含めてもよい)が、本発明の制御部に対応する。
【0025】
試験制御部11は、移動端末2の試験を実行するためのシナリオ情報及び/又はスケジューリング情報に基づき試験の実行を制御し、試験の実行結果を取得し、必要に応じて評価するものである。試験では、例えば、後で説明する移動端末2のULスイッチング機能が調べられる。評価は、試験ごとに設けられた評価基準に基づいて行われる。
【0026】
設定部12は、移動端末2の試験を実行するために必要な情報を生成又は設定するものであり、シナリオ情報設定部12aとスケジューリング情報設定部12bとを備えている。
【0027】
シナリオ情報設定部12aは、シナリオ情報を生成又は設定する。シナリオ情報には、移動端末試験装置1の動作が設定された動作シーケンスや、移動端末2との送受信信号が設定された通信シーケンスの情報が含まれる。
【0028】
スケジューリング情報設定部12bは、スケジューリング情報を生成又は設定する。スケジューリング情報は、移動端末2から基地局へのアップリンクに用いられる通信リソース(セル、周波数バンドなど)としての第1キャリア及び第2キャリアのいずれか一方をアップリンクのスロットごとに指定する情報である。スケジューリング情報設定部12bは、ユーザから操作部17を介して入力された、試験項目などを示す試験パラメータに基づいて、スケジューリング情報を生成又は設定する。
図8及び
図9は、後で説明するように、スケジューリング情報設定部12bにより設定されるスケジューリング情報の例を示す。
【0029】
具体的には、通信リソースとしての第1キャリアは、例えば、FDDの第1セルのULキャリアであり、通信リソースとしての第2キャリアは、例えば、TDDの第2セルのULキャリアである。より具体的には、第1セルは、PCellであり、第2セルは、SCellである。
【0030】
また、通信リソースとしての第1キャリアは、例えば、TDDの第1周波数バンドのULキャリアであり、第2キャリアは、例えば、第1周波数バンドと同一セルの第2周波数バンドのULキャリアであってもよい。具体的には、第1周波数バンドは、NULであり、第2周波数バンドは、SULであってもよい。
【0031】
また、スケジューリング情報設定部12bは、アップリンクにおける第1キャリアと第2キャリアとの切り替えが、第1キャリアと第2キャリアのいずれか一方のスロット内で行われるように、スケジューリング情報を設定してもよい。
【0032】
基地局制御部13は、シナリオ情報及び/又はスケジューリング情報に基づいて擬似基地局部16を制御し、擬似基地局部16と移動端末2との通信を行わせて試験を実行するようになっている。具体的には、基地局制御部13は、シナリオ情報及び/又はスケジューリング情報に基づいて、RRC(Radio Resource Control)メッセージ、DCI(Downlink Control Information)などの送信データを生成又は取得し、擬似基地局部16から移動端末2に送信させ、擬似基地局部16と移動端末2との間で呼接続の確立や所定の通信シーケンスの実行を行わせる。
【0033】
擬似基地局部16は、基地局制御部13又は試験制御部11の制御下で移動端末2と通信を行う基地局を模擬するものである。擬似基地局部16は、例えば、5G(5th Generation)NR(New Radio)通信規格又は4G(LTE(Long Term Evolution)又はLTE-A)通信規格に従って動作する基地局を模擬するようになっている。擬似基地局部16は、同軸ケーブルなどを介して有線、あるいはアンテナを介して無線で移動端末2と信号を送受信する。擬似基地局部16は、移動端末2から受信した信号に対し、ダウンコンバート、A/D(Analog-to-digital)変換、直交復調などを行なって、I/Q(In-Phase/Quadrature-Phase)データを取得する。I/Qデータは、第1のRF測定部14と第2のRF測定部15に送られる。
【0034】
第1のRF測定部14は、第1キャリアを用いて移動端末2から擬似基地局部16に送信された第1のUL信号を、スケジューリング情報に基づいて測定し、測定結果を試験制御部11に送るようになっている。第2のRF測定部15は、第2キャリアを用いて移動端末2から擬似基地局部16に送信された第2のUL信号を、スケジューリング情報に基づいて測定し、測定結果を試験制御部11に送るようになっている。具体的には、第1のRF測定部14及び第2のRF測定部15は、例えば、擬似基地局部16からI/Qデータをそれぞれ取得し、I/Qデータに対して復調処理、解析(測定)処理を行なう。また、第1のRF測定部14及び第2のRF測定部15は、第1のUL信号及び第2のUL信号のパワーをそれぞれ測定する。第1のRF測定部14及び第2のRF測定部15は、スケジューリング情報に基づいて、ULスイッチング前、ULスイッチング中、及びULスイッチング後における第1のUL信号及び第2のUL信号それぞれのパワー又は信号波形を測定するようにしてもよい(
図12参照)。測定結果は、試験制御部11に送られる。
【0035】
操作部17は、例えば、タッチパネルを構成するタッチパッド、マウス又はトラッキングボールなどのポインティングデバイス、キーボード装置などを任意の組み合わせで含んで構成される。操作部17は、試験項目の選択、試験の実行指示、試験パラメータの設定、試験結果の表示指示など試験制御部11に対する操作を受け付ける。試験パラメータとして、例えば、ULスイッチング機能の試験の実施の有無、スイッチング期間、スイッチング期間が配置されるキャリアなどを示すパラメータが挙げられる。操作部17により入力された情報は、試験制御部11に送られる。
【0036】
表示部18は、液晶ディスプレイなどの画像表示機器を備え、シナリオ情報やスケジューリング情報の設定内容、試験結果などを表示するようになっている。表示部18は、第1のRF測定部14により測定された第1のUL信号の時間波形と、第2のRF測定部15により測定された第2のUL信号の時間波形とを同一時間軸上に表示する。また、表示部18は、これらの時間波形に加えてキャリア又はスロットの範囲、例えばULスイッチングが行われたスロットの範囲を同一時間軸上にさらに表示するようになっている。
【0037】
記憶部19は、例えばRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Memory)、フラッシュメモリなどで構成され、試験に関する情報を記憶する。記憶部19は、シナリオ情報記憶部19aとスケジューリング情報記憶部19bとを備える。シナリオ情報記憶部19aは、シナリオ情報設定部12aにより生成又は設定されたシナリオ情報、試験パラメータ、試験結果の情報などを格納する。シナリオ情報として、ULスイッチング機能の試験の実施の有無を示す試験パラメータが含まれる。スケジューリング情報記憶部19bは、スケジューリング情報設定部12bにより生成又は設定されたスケジューリング情報を格納する。
【0038】
移動端末試験装置1は、移動端末2と通信を行なうための通信モジュールが設けられた図示しないコンピュータ装置によって構成される。このコンピュータ装置は、例えば、それぞれ図示しないCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAMと、HDDやフラッシュメモリなどの外部記憶装置と、入出力ポートと、タッチパネルとを有する。
【0039】
このコンピュータ装置のROM及び外部記憶装置には、コンピュータ装置を移動端末試験装置1として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMなどに格納されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータ装置は、移動端末試験装置1として機能する。
【0040】
このように、本実施形態において、記憶部19は、RAM又は外部記憶装置によって構成され、処理部10は、CPUなどによって構成され、擬似基地局部16は、通信モジュールによって構成される。擬似基地局部16は、処理部10などを構成するコンピュータ装置とは別機器として構成されていてもよい。
【0041】
<移動端末>
一般的な商用の移動端末(UE:User Equipment)では、ハードウェア制限によりアップリンクに最大2個の送信機(Tx)しか使用できないものがある。
図2は、このような移動端末2のアンテナ構成の例を示す図である。
図2(a)は、FDDのセルにおいて、アップリンクとダウンリンクのためにアンテナ2aが例えば2.1GHz帯で使用される場合を示す。
図2(b)は、TDDのセルにおいて、アップリンクのためにアンテナ2aとアンテナ2bの両方が例えば3.5GHz帯で使用される場合を示す。このように、移動端末2のアンテナ2aは、2.1GHz帯と3.5GHz帯で切り替えて使用できるようになっている。
【0042】
TDDが使える領域であれば、高い周波数でMIMO(Multi Input Multi Output)にした方がデータレートを稼げる。また、一般に、TDDバンドの方がFDDバンドより周波数帯が高く、バンド幅的に優位である(周波数帯が高いほどバンド幅が大きく取れる)。一方、TDDは周波数帯が高いので信号が届く領域は狭い。また、TDDはダウンリンクとアップリンクが同じ周波数なので、ダウンリンクが割り当てられているスロットでは基本的にアップリンクを出せない。これらの特徴を考慮して、TDDとFDDの間でのULスイッチングのスケジューリングが決められる。
【0043】
<ULスイッチング>
次に、ULスイッチングについて説明する。
【0044】
ULスイッチング(Uplink Tx Switching)とは、アップリンクで送信するスロットをPCellとSCell間、もしくはNULとSUL間で切り替えることで、アップリンクのデータレートを増大させる仕組みである。ULスイッチングには、例えば、キャリアアグリゲーション(CA)ベースのULスイッチングとSULベースのULスイッチングとがある。
【0045】
1.CAベースのULスイッチング(NUL+NUL)
「CAベースのULスイッチング」は、非スタンドアローン(NSA:Non-Stand Alone)やスタンドアローン(SA:Stand Alone)モードにおいてバンド間2CAに対応したNR無線通信システムのULキャリアをスロット単位で切り替えることによりアップリンクのスループットを増やす機能である。別言すれば、このタイプのULスイッチングは、スロット単位で使用セルを切り替えるものである。
【0046】
図3は、スロット単位で使用セルを切り替えるULスイッチングを説明する図であり、
図4は、
図3に示すULスイッチングにおける、上り又は下りのリンク方向の各スロットへの割り当ての例を示す図である。
図4中、「D」は、スロットがDL信号に割り当てられている場合、「U」は、UL信号に割り当てられている場合、「S」は、スペシャルリンク信号に割り当てられている場合を示す。
図3及び
図4に示すように、例えば、FDDのプライマリセル(PCell)のPCCとTDDのセカンダリセル(SCell)のSCCの両方が使用できるエリアにおいて、バンド間2CAに対応した移動端末2が、TDDのULスロットを2x2MIMOでアップリンクに出力し、アップリンクの容量(データレート、スループットなど)及びレイテンシを改善することが可能である。
【0047】
2. SULベースのULスイッチング(NUL+SUL)
「SULベースのULスイッチング」は、非スタンドアローン(NSA)やスタンドアローン(SA)モードにおいてSULとTDDのNUL間でULスロットをスロット単位で切り替えることによりアップリンクのスループットを増やす機能である。別言すれば、このタイプのULスイッチングは、スロット単位で周波数バンドを切り替えるものである。
【0048】
図5は、同一セルにおいてスロット単位で周波数バンドを切り替えるULスイッチングを説明する図であり、
図6は、
図5に示すULスイッチングにおける、上り又は下りのリンク方向の各スロットへの割り当ての例を示す図である。
図5及び
図6に示すように、SULが使用できる場合においては、TDDのULスロットが割り当てられていないスロットでSULを使用することにより、アップリンクの容量及びレイテンシを改善することが可能である。
【0049】
ULスイッチングについては、例えば、3GPP TS38.214 6.1.6にて機能の概要が記載され、TS38.521-1 6.3A.3にてタイムマスク測定の方法が規定されている。タイムマスク測定は、ULスイッチング時において移動端末2から上記規格に準じた信号が出力されている否かを確認するための測定又は試験である。
【0050】
図7は、キャリア切り替えにおけるスイッチング期間Tsの時間位置を示す図であり、
図7(a)は、キャリア1の範囲内でULスイッチングを実施するケースを示し、
図7(b)は、キャリア2の範囲内でULスイッチングを実施するケースを示す。具体的には、RRCメッセージによって、ULスイッチングが実施されるキャリアやスイッチング期間の指定が可能である。
【0051】
5G NRでは、1つの無線フレーム(10ms)が10個のサブフレーム(1ms)によって構成され、1つのサブフレームが1以上のスロットによって構成され、1つのスロットが14個のOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)シンボルによって構成される。
【0052】
<スケジューリング情報>
図8は、スロット単位で使用セルを切り替えるULスイッチングでのスケジューリング情報の例を示す図である。スケジューリング情報設定部12bは、ULスイッチング機能の試験の実施の有無を示す試験パラメータがONに設定されている場合、
図8に示すスケジューリング情報を生成又は設定する(スイッチング期間=140μsの場合)。
【0053】
スケジューリング情報は、FDDのプライマリセルに関して、「Subframe No.」、「Slot No.」、「Slot Type」、「UL DCI」、「K2」、「UL Type」、「UL S」及び「UL L」の項目を含み、TDDのセカンダリセルに関して、「Slot Type」、「UL DCI」、「K2」、「UL Type」、「UL S」及び「UL L」の項目を含む。
【0054】
「Subframe No.」は、サブフレーム番号を表す。「Slot No.」は、スロット番号を表す。「Slot Type」は、スロットがUL信号に割り当てられているか、DL信号に割り当てられているか、スペシャルリンク信号に割り当てられているかを表す。具体的には、「Slot Type」の「U」は、スロットがUL信号に割り当てられている場合を示し、「D」は、スロットがDL信号に割り当てられている場合を示し、「S」は、スペシャルリンク信号に割り当てられている場合を示す。
【0055】
「UL DCI」は、PUCCH(Physical Uplink Control Channel)のスケジューリング情報を有効にするか否かを表す。「UL DCI」には、PUSCHスケジューリング情報が有効な場合には「ON」が表示されている。「K2」は、PUSCHの送信タイミングを表す。「UL Type」は、3GPPで定義されたUL信号のDMRS(Demodulation Reference Signal)のマッピングタイプを表す。「UL S」は、UL信号のスロットのスタートシンボルを表す。「UL L」は、UL信号のスロットのシンボル長を表す。
【0056】
図9は、スロット単位で周波数バンドを切り替えるULスイッチングでのスケジューリング情報の例を示す図である。スケジューリング情報設定部12bは、ULスイッチング機能の試験の実施の有無を示す試験パラメータがONに設定されている場合、
図9に示すようなスケジューリング情報を設定する(スイッチング期間=140μsの場合)。
【0057】
スケジューリング情報は、TDDのNULに関して、「Slot No.」、「Slot Type」、「UL DCI」、「K2」、「UL Type」、「UL S」及び「UL L」の項目を含み、SULに関して、「Slot No.」、「Slot Type」、「UL DCI」、「K2」、及び「UL Type」の項目を含む。各項目の意味は上述した通りである。
【0058】
<移動端末試験方法>
次に、移動端末試験方法について、図面を参照して説明する。
【0059】
図13は、移動端末試験方法の手順を示すフローチャートである。まず、ユーザが操作部17を操作して試験パラメータを入力する(ステップS1)。試験パラメータは、試験を実施するために必要な情報を示すパラメータであり、例えば、ULスイッチング機能の試験の実施の有無、CAベースのULスイッチング機能の試験の実施の有無、SULベースのULスイッチング機能の試験の実施の有無、スイッチング期間、スイッチング期間が存在するキャリア又はスロットなどを示す試験パラメータが挙げられる。操作部17は、入力された試験パラメータを試験制御部11に送る。試験制御部11は、試験パラメータを設定部12に送るとともに、記憶部19に格納する。
【0060】
次に、設定部12のシナリオ情報設定部12aは、試験パラメータを基にシナリオ情報を生成又は設定する。シナリオ情報設定部12aは、生成したシナリオ情報を試験制御部11に送る。試験制御部11は、そのシナリオ情報をシナリオ情報記憶部19aに送って格納させる。
【0061】
また、設定部12のスケジューリング情報設定部12bは、試験パラメータを基にスケジューリング情報を生成又は設定する(ステップS2)。スケジューリング情報設定部12bは、生成したスケジューリング情報を試験制御部11に送る。試験制御部11は、スケジューリング情報を基地局制御部13、第1のRF測定部14、及び第2のRF測定部15に送り、必要に応じてスケジューリング情報記憶部19bに送って格納させる。
【0062】
基地局制御部13は、シナリオ情報を基に擬似基地局部16を制御して、移動端末2と呼接続を行なわせる(ステップS3)。
【0063】
次に、基地局制御部13は、試験パラメータ、シナリオ情報、スケジューリング情報など必要な情報を基にRRCメッセージやDCIを生成又は取得し、擬似基地局部16から移動端末2へ送信させる。RRCメッセージは、ULスイッチングが実施されるキャリアやスイッチング期間を指定する情報を含むことができる。DCIは、ダウンリンク(DL)で送信する制御情報であり、DL/ULのスロット配置をスケジューリングする情報を含む。擬似基地局部16は、DCIを移動端末2に送ることで、移動端末2におけるDL/ULのスロット配置をスケジューリングする(ステップS4)。
【0064】
次に、擬似基地局部16は、移動端末2からUL信号を受信する。UL信号は、例えば、第1キャリア(FDDのプライマリセルのPCC)を用いて送信された第1のUL信号と、第2キャリア(TDDのセカンダリセルのSCC)を用いて送信された第2のUL信号とがスロット単位で切り替えられて構成される。または、UL信号は、例えば、第1キャリア(TDDのNUL)を用いて送信された第1のUL信号と、第2キャリア(SUL)を用いて送信された第2のUL信号とがスロット単位で切り替えられて構成される。
【0065】
次に、第1のRF測定部14は、スケジューリング情報を基に、第1キャリアを用いて送信された第1のUL信号を測定する(ステップS5)。それと同時に、あるいは並行して、第2のRF測定部15は、スケジューリング情報を基に、第2キャリアを用いて送信された第2のUL信号を測定する(ステップS6)。
【0066】
具体的には、例えば、CAベースのULスイッチング機能を試験している場合は、第1のRF測定部14は、PCC側の信号を測定し、第2のRF測定部15は、SCC側の信号を測定する。また、SULベースのULスイッチング機能を試験している場合は、第1のRF測定部14は、NUL側の信号を測定し、第2のRF測定部15は、SUL側の信号を測定する。
【0067】
図10は、CAベースのULスイッチング機能の試験における移動端末2から移動端末試験装置1への信号経路を示す図である。
図10(a)に示すように、FDDのプライマリセルのUL信号として、移動端末2の送信機TX1から2.1GHz帯の信号(PCC側の信号)が、コンバイナ20を経由して移動端末試験装置1のモジュール1aに入力される(2.1GHz帯SISO)。また、
図10(b)に示すように、TDDのセカンダリセルのUL信号として、移動端末2の送信機TX1から3.5GHz帯の信号(SCC側の信号)が、コンバイナ20を経由して移動端末試験装置1のモジュール1bに入力されるとともに、移動端末2の送信機TX2から3.5GHz帯の信号が、移動端末試験装置1のモジュール1bに入力される(3.5GHz帯MIMO)。
【0068】
図11は、SULベースのULスイッチングにおける移動端末2から移動端末試験装置1への信号経路を示す。NUL信号は、
図11(a)に示すように、移動端末2の送信機TX1からコンバイナ20を経由して移動端末試験装置1のモジュール1aに入力されるとともに、移動端末2の送信機TX2からモジュール1aに入力される(2x2MIMO)。SUL信号は、
図11(b)に示すように、移動端末2の送信機TX1からコンバイナ20を経由して移動端末試験装置1のモジュール1bに入力される(SISO)。なお、コンバイナ20は、移動端末試験装置1が備えていてもよい。
【0069】
次に、表示部18は、第1のRF測定部14による第1のUL信号の測定で得られた時間波形と、第2のRF測定部15による第2のUL信号の測定で得られた時間波形とを同一時間軸上に表示する(ステップS7)。具体的には、例えば、CAベースのULスイッチング機能を試験している場合は、表示部18は、PCC側の信号の時間波形と、SCC側の信号の時間波形とを同一時間軸上に表示する。また、SULベースのULスイッチング機能を試験している場合は、表示部18は、NUL側の信号の時間波形と、SUL側の信号の時間波形とを同一時間軸上に表示する。また、表示部18は、これら時間波形に加えて、同一時間軸上にスロット範囲をさらに表示する。
【0070】
図12は、移動端末試験装置1の表示部18の表示画像の例を示す図である。
図12は、CAベースのULスイッチング機能の試験において、測定されたPCC波形とSCC波形を同一時間軸上に表示している。また、同一時間軸上にスロット範囲をさらに表示している。
図12では、スロット3とスロット4の範囲が示されている。
図12から、PCC波形とSCC波形の切り替え領域において、UL信号が存在しないスイッチング期間(Switching period)を確認することができる。また、スイッチング期間がスロット3内に存在していることも分かる。
【0071】
試験制御部11は、時間波形以外の各種測定結果を表示部18に表示させるようにしてもよく、測定結果を評価し、評価結果を表示部18に表示させるようにしてもよい。移動端末試験装置1は、例えば、スループット測定、Tx測定、及びタイムマスク測定を選択的に実施することができる。アップリンクのスループット測定では、2フレーム分についてPCCとSCC、もしくはNULとSULの合計値を算出するようにしてもよい。
【0072】
<作用・効果>
以上に説明したように、本実施形態に係る移動端末試験装置1は、スケジューリング情報設定部12bが、移動端末2から基地局へのアップリンクに用いられる第1キャリア及び第2キャリアのいずれか一方をUL信号のスロットごとに指定するスケジューリング情報を設定し、第1のRF測定部14が、第1キャリアを用いて移動端末2から擬似基地局部16に送信された第1のUL信号を、スケジューリング情報に基づいて測定し、第2のRF測定部15が、第2キャリアを用いて移動端末2から擬似基地局部16に送信された第2のUL信号を、スケジューリング情報に基づいて測定するようになっている。
【0073】
この構成により、本実施形態の移動端末試験装置1は、ULスイッチングのようにスロット単位でULキャリアが変化するようなケースの試験であっても、スケジューリング情報設定部12bが試験に適合したスケジューリング情報を設定することができる。また、第1キャリアに対応した第1のRF測定部14と第2キャリアに対応した第2のRF測定部15とを個別に備え、試験に適合したスケジューリング情報に基づいて第1のUL信号と第2のUL信号とを同時に又は並行して測定することができるので、ULスイッチングのようにスロット単位でULキャリアが変化するようなケースの試験(例えばタイムマスク測定)であっても実施することができる。
【0074】
また、本実施形態の移動端末試験装置1において、第1キャリアは、FDDのプライマリセル(PCell)のキャリアであり、第2キャリアは、TDDのセカンダリセル(SCell)のキャリアである。この構成により、CAベースのULスイッチングのようにスロット単位でUL信号を送信するセルが変化するようなケースの試験を行うことができる。例えば、FDDのプライマリセル(PCell)のPCCとTDDのセカンダリセル(SCell)のSCCの両方が使用できるエリアにおいて、バンド間2CAに対応した移動端末2が、ULキャリアをPCCとSCCの間で切り替えるULスイッチング機能を試験することができる。
【0075】
また、本実施形態の移動端末試験装置1において、第1キャリアは、TDDのNULのキャリアであり、第2キャリアは、NULと同一セルのSULのキャリアである。この構成により、ULスイッチングのようにスロット単位でUL信号を送信する周波数バンドが変化するようなケースの試験を行うことができる。例えば、TDDのNULスロットが割り当てられていないスロットにおいてSULを使用するように、ULキャリアをSULとNUL間で切り替えてアップリンクの容量及びレイテンシを改善するULスイッチング機能を試験することができる。
【0076】
また、本実施形態の移動端末試験装置1は、第1のRF測定部14により測定された第1のUL信号の時間波形と、第2のRF測定部15により測定された第2のUL信号の時間波形とを同一時間軸上に表示する表示部18を備えている。この構成により、第1のUL信号と第2のUL信号の切り替わりに要したスイッチング期間を容易に確認することができる。これにより、ULスイッチング機能の試験においてもタイムマスク測定を容易に実施することができる。
【0077】
また、本実施形態の移動端末試験装置1では、スケジューリング情報設定部12bは、アップリンクにおける第1キャリアと第2キャリアとの切り替えが、第1キャリアと第2キャリアのいずれか一方のスロット内で行われるように、スケジューリング情報を設定することができる。また、表示部18は、該切り替えが行われたスロットの範囲を同一時間軸上にさらに表示するようになっている。この構成により、ULスイッチングが実施されたスロット又はキャリアの適否を容易に判断することができる。
【0078】
上記説明では、5G NRの規格に準拠した移動端末の試験を行う移動端末試験装置及び移動端末試験方法を例として、本発明の実施形態を説明したが、適用される規格は5G NRに限定されず、他の規格であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明したように、本発明は、ULスイッチングのようにスロット単位でUL信号を送信するセルや周波数バンドなどULキャリアが変化するようなケースの試験を行うことができるという効果を有し、移動端末試験装置及び移動端末試験方法の全体に有用である。
【符号の説明】
【0080】
1 移動端末試験装置
2 移動端末
10 処理部
11 試験制御部
12 設定部
12a シナリオ情報設定部
12b スケジューリング情報設定部
13 基地局制御部(制御部)
14 第1のRF測定部(第1の測定部)
15 第2のRF測定部(第2の測定部)
16 擬似基地局部
17 操作部
18 表示部
19 記憶部
19a シナリオ情報記憶部
19b スケジューリング情報記憶部
20 コンバイナ