(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】画像ガイドワイヤを有する医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20241216BHJP
A61B 1/01 20060101ALI20241216BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20241216BHJP
A61B 1/04 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
A61M25/09
A61B1/01 512
A61B1/00 716
A61B1/00 650
A61B1/04 520
(21)【出願番号】P 2022511694
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2021008367
(87)【国際公開番号】W WO2021199881
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2020060745
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】丸山 智司
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-525638(JP,A)
【文献】国際公開第2011/121695(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0290377(US,A1)
【文献】特表2008-535630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
A61B 1/01
A61B 1/00
A61B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ部と、前記ワイヤ部に配置され管腔器官の画像を取得する画像センサと、前記ワイヤ部の手元側の後端部に露出して配置され前記画像センサに電気的に接続される電気的接点部と、を有する画像ガイドワイヤ、
前記画像ガイドワイヤの前記後端部
に取り付けられ前記電気的接点部を覆うキャップ、および
前記画像ガイドワイヤの前記後端部に抜き差し可能に取り付けられ前記電気的接点部と電気的に接続されるコネクタを有し、
前記コネクタは、前記管腔器官の画像を取得するときに前記画像ガイドワイヤの前記後端部に取り付けられ、
前記キャップは、前記画像ガイドワイヤの前記後端部を収納する貫通孔と、前記画像ガイドワイヤに取り付けたときに異物が前記電気的接点部に達することを抑制するシール機構を有し、
前記シール機構は、前記電気的接点部を覆う部位よりも基端側に配置した弁体を含み、
前記弁体は、前記弁体の開口部を常時閉じる方向に弾発力を付勢しており、
前記コネクタは、前記弁体の前記開口部を通して、前記画像ガイドワイヤの前記後端部に接続されてなる、画像ガイドワイヤを有する医療デバイス。
【請求項2】
前記キャップは、前記コネクタを前記画像ガイドワイヤに取り付けるときまで、前記画像ガイドワイヤに取り付けられた状態に維持されてなる、請求項1に記載の画像ガイドワイヤを有する医療デバイス。
【請求項3】
前記キャップは、前記画像ガイドワイヤから取り外せない構成を有する、請求項1に記載の画像ガイドワイヤを有する医療デバイス。
【請求項4】
前記キャップは、前記電気的接点部に付着した異物を除去可能な除去層を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の画像ガイドワイヤを有する医療デバイス。
【請求項5】
前記画像センサは、複数のセンサ素子をリング状に配置したフェーズドアレイから構成されてなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の画像ガイドワイヤを有する医療デバイス。
【請求項6】
前記キャップの外径のうち最も大きい部分は、前記ワイヤ部の外径のうち最も大きい部分以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の画像ガイドワイヤを有する医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像ガイドワイヤを有する医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
血管および脈管などの管腔器官に生じる狭窄部または閉塞部の治療では、これらの性状を観察するため、または治療後の状態を観察するため、超音波または光等の検査波を利用して管腔器官の画像が取得される。管腔器官の画像を比較的低コストに取得することを可能にするために、画像センサを備える画像ガイドワイヤを有する医療デバイスが提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
画像ガイドワイヤは、ワイヤ部と、ワイヤ部に配置され管腔器官の画像を取得する画像センサと、ワイヤ部の手元側の後端部に露出して配置され画像センサに電気的に接続される電気的接点部と、を有する。制御装置に接続されたコネクタは、画像ガイドワイヤの後端部に抜き差し可能に接続される。電気的接点部とコネクタとが電気的に接続されることによって、画像センサと制御装置との間で信号の授受が行われる。治療用のカテーテルは、画像ガイドワイヤが挿通される管腔を有し、画像ガイドワイヤに沿って管腔器官の生体管腔の所定の位置まで挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カテーテルを交換する作業においては、コネクタを画像ガイドワイヤの後端部から抜かなければならない。コネクタを抜くことによって電気的接点部が露出するため、カテーテルを交換するときに、血液等の異物が電気的接点部に付着することがある。このような場合に、コネクタを画像ガイドワイヤに再度接続して管腔器官の画像を取得すると、電気的接点部に付着した異物によるノイズが生じ、管腔器官の画像を正確に取得できない恐れがある。
【0006】
上記の特許文献1においては、画像ガイドワイヤの後端部からコネクタを抜いたときに生じ得る上記課題に対する解決策については何ら開示されていない。
【0007】
本発明は、画像ガイドワイヤの後端部からコネクタを抜いたときに画像ガイドワイヤの電気的接点部への異物の付着を抑制することが可能な、画像ガイドワイヤを有する医療デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る画像ガイドワイヤを有する医療デバイスは、画像ガイドワイヤ、キャップ、およびコネクタを有する。前記画像ガイドワイヤは、ワイヤ部と、前記ワイヤ部に配置され管腔器官の画像を取得する画像センサと、前記ワイヤ部の手元側の後端部に露出して配置され前記画像センサに電気的に接続される電気的接点部と、を有する。前記キャップは、前記画像ガイドワイヤの前記後端部に取り付けられ前記電気的接点部を覆う。前記コネクタは、前記画像ガイドワイヤの前記後端部に抜き差し可能に取り付けられ前記電気的接点部と電気的に接続される。この医療デバイスでは、前記コネクタは、前記管腔器官の画像を取得するときに前記画像ガイドワイヤの前記後端部に取り付けられる。前記キャップは、前記画像ガイドワイヤの前記後端部を収納する貫通孔と、前記画像ガイドワイヤに取り付けたときに異物が前記電気的接点部に達することを抑制するシール機構を有する。前記シール機構は、前記電気的接点部を覆う部位よりも基端側に配置した弁体を含み、前記弁体は、前記弁体の開口部を常時閉じる方向に弾発力を付勢する。前記コネクタは、前記弁体の前記開口部を通して、前記画像ガイドワイヤの前記後端部に接続される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る画像ガイドワイヤを有する医療デバイスによれば、画像ガイドワイヤの後端部からコネクタを抜いたときには、画像ガイドワイヤの後端部に取り付けられたキャップによって画像ガイドワイヤの電気的接点部が覆われるため、電気的接点部への異物の付着を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】画像ガイドワイヤを有する医療デバイスの構成を示す模式図である。
【
図2】画像ガイドワイヤを有する医療デバイスの使用状況を示す模式図である。
【
図3】画像ガイドワイヤを有する医療デバイスの使用例において、画像ガイドワイヤをカテーテルの管腔に挿通した状態を示す模式図である。
【
図4】
図4(A)は、画像ガイドワイヤの後端部からキャップを抜いたときの状態を示す要部断面図、
図4(B)は、画像ガイドワイヤの後端部にキャップを差し込んで取り付けたときの状態を示す要部断面図である。
【
図5】
図5(A)は、画像ガイドワイヤの後端部からコネクタを抜いたときの状態を示す要部断面図、
図5(B)は、画像ガイドワイヤの後端部にコネクタを差し込んで取り付けたときの状態を示す要部断面図である。
【
図6】
図6(A)は、画像ガイドワイヤの後端部から変形例に係るキャップを抜いたときの状態を示す要部断面図、
図6(B)は、画像ガイドワイヤの後端部に変形例に係るキャップを差し込んで取り付けたときの状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基いて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、以下の説明において、画像ガイドワイヤの手元側(
図1中の右側)を「基端」、体腔内へ挿通される側(
図1中の左側)を「先端」と称す。また、理解を容易にするため、画像ガイドワイヤの長さ方向を短縮し、画像ガイドワイヤの太さ方向を誇張して模式的に図示しており、長さ方向と太さ方向の比率は実際とは異なる。
【0012】
図1は、画像ガイドワイヤ100を有する医療デバイス10の構成を示す模式図、
図2は、画像ガイドワイヤ100を有する医療デバイス10の使用状況を示す模式図である。
【0013】
図1および
図2を参照して、実施形態に係る、画像ガイドワイヤ100を有する医療デバイス10を概説する。この医療デバイス10は、画像ガイドワイヤ100、キャップ200、およびコネクタ300を有する。画像ガイドワイヤ100は、ワイヤ部110と、ワイヤ部110に配置され管腔器官の画像を取得する画像センサ120と、ワイヤ部110の手元側の後端部130に露出して配置され画像センサ120に電気的に接続される電気的接点部140と、を有する。キャップ200は、画像ガイドワイヤ100の後端部130に抜き差し可能に取り付けられ電気的接点部140を覆う。コネクタ300は、画像ガイドワイヤ100の後端部130に抜き差し可能に取り付けられ電気的接点部140と電気的に接続される。この医療デバイス10では、コネクタ300は、管腔器官の画像を取得するときに画像ガイドワイヤ100の後端部130に取り付けられる。そして、キャップ200は、画像ガイドワイヤ100の後端部130からコネクタ300を抜いたときに、コネクタ300に代えて画像ガイドワイヤ100の後端部130に取り付けられる。医療デバイス10はまた、画像ガイドワイヤ100が接続される制御装置400を有する。医療デバイス10は、画像ガイドワイヤ100のワイヤ部110の長さを変更するときに使用する延長ワイヤ500も有する。以下、医療デバイス10の構成について詳述する。
【0014】
(画像ガイドワイヤ100)
画像ガイドワイヤ100は、ワイヤ部110と、ワイヤ部110に配置され管腔器官の画像を取得する画像センサ120と、ワイヤ部110の手元側の後端部130に露出して配置され画像センサ120に電気的に接続される電気的接点部140と、を有する。
【0015】
ワイヤ部110は、先端側に配置された先端部材111と、先端部材111の基端側に配置された本体部材112とを備えている。ワイヤ部110の全長は、特に限定されないが、例えば、200~5000mm程度である。先端部材111は、柔軟性または弾性を有する芯線によって構成されたコア材と、コア材の周囲に固着させた柔軟性に富む樹脂材料とを有する。先端部材111は、その外径が長手方向に沿って一定である円柱状をなし、先端は、丸みを帯びて形成されている。先端部材111の樹脂材料中には、造影性を有する材料(X線不透過材料等)によるフィラーが分散され、これにより造影部を構成する。本体部材112は、柔軟性または弾性を有する芯線によって構成されている。先端部材111のコア材と本体部材112のコア材とは、例えば溶接によって接合されている。コア材の構成材料は、可撓性を有するものであれば特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、ピアノ線、コバルト系合金、超弾性合金などの各種金属材料を使用することができる。先端部材111の外径は、本体部材112の外径より小さい。ワイヤ部110は、その先端側である先端部材111が柔軟性に富み、基端側である本体部材112が比較的剛性が高いものとなる。これにより、ワイヤ部110は、先端の柔軟性と優れた操作性(押し込み性、トルク伝達性等)とを両立する。
【0016】
画像センサ120は、ワイヤ部110における本体部材112の先端に配置されている。画像センサ120は、複数のセンサ素子をリング状に配置したフェーズドアレイから構成されている。このようなフェーズドアレイ型の画像センサ120を用いることによって、画像センサ120を回転させることなく、管腔器官の画像を周方向の広範囲にわたって一度に取得できる。センサ素子は、特に限定されないが、血管内超音波(IVUS)センサ素子や、光干渉断層法(OCT)センサ素子などである。本体部材112には、センサ素子が臨む位置に窓部(不図示)が形成され、センサ素子からの検査波を窓部を通して管腔器官に照射し、反射した検査波を窓部を通して受信する。
【0017】
ワイヤ部110の後端部130は、本体部材112の基端側に突出して形成されている。後端部130は、円筒形状を有する。後端部130の外径は、本体部材112の外径より小さい。後端部130は、電気絶縁性の樹脂材料から形成され、本体部材112のコア材に固着されている。
【0018】
電気的接点部140は、複数の端子部141を有する。それぞれの端子部141は、長方形形状を有し、後端部130の周面上に露出して配列されている。隣り合う端子部141は、電気的に絶縁されている。画像センサ120のセンサ素子と端子部141とは、対をなして配置されている。対をなすセンサ素子と端子部141とは、信号線142を介して電気的に接続されている。
【0019】
(キャップ200)
キャップ200は、画像ガイドワイヤ100の後端部130に基端側から差し込むように取り付けられる。キャップ200は、凹所210が形成された略円筒形状を有し、基端側が丸みを帯びている。キャップ200の先端側の外径は、本体部材112の基端側の外径とほぼ等しい。キャップ200の先端側の外径は、本体部材112の基端側の外径より小さくてもよい。キャップ200の外径のうち最も大きい部分は、画像ガイドワイヤ100のワイヤ部110の外径のうち最も大きい部分以下である。キャップ200の最大外径がワイヤ部110最大外径(例えば、本体部材112の最大外径)以下であると、カテーテルの管腔と画像ガイドワイヤ100との間のクリアランスが微小な場合であっても、画像ガイドワイヤ100およびカテーテルの使い勝手が悪くならないからである。さらに、キャップ200の長さは特に限定されるものではなく、交換するカテーテルに応じて長さの長いキャップ200としたり、長さの短いキャップ200としたりできる。キャップ200を画像ガイドワイヤ100の後端部130に取り付けると、後端部130がキャップ200の凹所210内に嵌まり込み、電気的接点部140が覆われる。
【0020】
キャップ200の詳細な構成について、
図4(A)および
図4(B)を参照しつつさらに説明する。
【0021】
図4(A)は、画像ガイドワイヤ100の後端部130からキャップ200を抜いたときの状態を示す要部断面図、
図4(B)は、画像ガイドワイヤ100の後端部130にキャップ200を差し込んで取り付けたときの状態を示す要部断面図である。
【0022】
キャップ200は、画像ガイドワイヤ100に取り付けたときに異物が電気的接点部140に達することを抑制するシール機構220を有する。シール機構220は、キャップ200のシール面221と、画像ガイドワイヤ100の後端部130に保持したOリング222とから構成される。キャップ200を画像ガイドワイヤ100に取り付けたときには(
図4(B))、画像ガイドワイヤ100の後端部130とキャップ200のシール面221との間でOリング222が弾性圧縮される。これによって、画像ガイドワイヤ100とキャップ200との間の微小な隙間を通って異物が電気的接点部140に達することが抑制される。
【0023】
キャップ200はさらに、電気的接点部140に付着した異物を除去可能な除去層230を有する。除去層230は、キャップ200の凹所210のうち、電気的接点部140に接触する部位に配置されている。キャップ200を抜き差しすることによって、除去層230は、電気的接点部140に付着した異物をふき取ったり、吸着したりする。これによって、電気的接点部140に付着した異物が除去される。除去層230を構成する部材は、異物をふき取ったり、吸着したりする機能を発揮する限りにおいて限定されないが、例えば、樹脂材料から形成された多孔板や不織布を例示することができる。キャップ200を抜き差ししたときに除去層230の材料の一部が電気的接点部140に残存する恐れがあるため、除去層230の材料は電気絶縁性であることが好ましい。
【0024】
キャップ200の凹所210は、画像ガイドワイヤ100の後端部130に形成した環状凸部131に嵌まり込む環状凹部211が形成されている。画像ガイドワイヤ100の後端部130にキャップ200を差し込んで取り付けたとき、環状凹部211と環状凸部131とが嵌まり合う。これによって、画像ガイドワイヤ100の後端部130へのキャップ200の取り付けが確実なものとなる。
【0025】
なお、図中符号132は、Oリング222の抜けを防止するリング部材132を示し、符号133は、電気的接点部140の端子部141を保持する電気絶縁性の保持部材133を示している。
【0026】
(コネクタ300)
図2に示すように、コネクタ300は、画像ガイドワイヤ100の後端部130に基端側から差し込むように取り付けられる。コネクタ300は、凹所310が形成された略円筒形状を有する。凹所310の内面に、電気的接点部140のそれぞれの端子部141に電気的に接続される後述する導通部320(
図2において不図示)が配置されている。コネクタ300の先端側の外径は、本体部材112の外径とほぼ等しい。コネクタ300を画像ガイドワイヤ100の後端部130に取り付けると、後端部130がコネクタ300の凹所310内に嵌まり込み、電気的接点部140と電気的に接続される。
【0027】
コネクタ300の詳細な構成について、
図5(A)および
図5(B)を参照しつつさらに説明する。
【0028】
図5(A)は、画像ガイドワイヤ100の後端部130からコネクタ300を抜いたときの状態を示す要部断面図、
図5(B)は、画像ガイドワイヤ100の後端部130にコネクタ300を差し込んで取り付けたときの状態を示す要部断面図である。
【0029】
コネクタ300は、凹所310の内面に、電気的接点部140のそれぞれの端子部141に電気的に接続される導通部320がインサート成形されている。それぞれの導通部320に接続された信号線321もインサート成形されている。電気的接点部140の端子部141と導通部320とは、対をなして配置されている。コネクタ300を画像ガイドワイヤ100に取り付けると(
図5(B))、対をなす端子部141と導通部320とが接触し、電気的に接続される。なお、対をなす端子部141と導通部320とを接触させるため、画像ガイドワイヤ100の後端部130とコネクタ300との相対的な位置を規制する規制部(不図示)が配置されている。規制部は、例えば、画像ガイドワイヤ100およびコネクタ300に、コネクタ300の抜き差し方向に沿って伸びる凹凸嵌合部を形成することによって構成できる。
【0030】
コネクタ300は、キャップ200と同様に、画像ガイドワイヤ100に取り付けたときに異物が電気的接点部140に達することを抑制するシール機構330を有する。シール機構330は、コネクタ300のシール面331と、画像ガイドワイヤ100の後端部130に保持したOリング222とから構成される。
【0031】
コネクタ300の凹所310は、キャップ200の凹所210と同様に、画像ガイドワイヤ100の後端部130に形成した環状凸部131に嵌まり込む環状凹部311が形成されている。画像ガイドワイヤ100の後端部130にコネクタ300を差し込んで取り付けたとき、環状凹部311と環状凸部131とが嵌まり合う。これによって、画像ガイドワイヤ100の後端部130へのコネクタ300の取り付けが確実なものとなる。
【0032】
(制御装置400)
図2に示すように、制御装置400は、ケーブル410を介して画像ガイドワイヤ100と接続される。ケーブル410は、その一端に画像ガイドワイヤ100に接続するコネクタ300が取り付けられ、他端に制御装置400に接続する他のコネクタ420が取り付けられている。ケーブル410(コネクタ300、420を含む)は、ディスポーザブル部品である。制御装置400は、本体部430と、モニター440とを有する。本体部430は、CPU、メモリ、入出力部を主体に構成され、医療デバイス10全体の制御を司る。例えば、本体部430は、画像センサ120に検査波を出射させる制御信号を出力し、画像センサ120からの検出信号を入力し、検出信号に基いて画像データを取得する。また、本体部430は、取得した画像データに基づく情報をモニター440に表示する。
【0033】
(延長ワイヤ500)
図1に示すように、延長ワイヤ500は、画像ガイドワイヤ100のワイヤ部110の長さを変更するときに使用される。延長ワイヤ500は、画像ガイドワイヤ100の後端部130に基端側から差し込むように取り付けられる。延長ワイヤ500の基端側は、ワイヤ部110の後端部130と同様に構成されている。延長ワイヤ500の先端側は、コネクタ300と同様に構成され、電気的接点部140のそれぞれの端子部141に電気的に接続される導通部510が配置されている。
【0034】
(画像ガイドワイヤ100を有する医療デバイス10の使用例)
図3は、画像ガイドワイヤ100を有する医療デバイス10の使用例において、画像ガイドワイヤ100をカテーテル600の管腔610に挿通した状態を示す模式図である。
【0035】
図3に示す状態では、延長ワイヤ500が使用され、画像ガイドワイヤ100のワイヤ部110の長さを長くなるように変更している。画像ガイドワイヤ100を生体管腔に挿入するとき、まず、キャップ200を、画像ガイドワイヤ100の後端部130に基端側から差し込むように取り付ける(
図4(B))。これによって、後端部130がキャップ200の凹所210内に嵌まり込み、電気的接点部140が覆われる。したがって、画像ガイドワイヤ100を挿入する作業時に、異物が電気的接点部140に付着することを低減できる。また、シール機構220によって、異物が電気的接点部140に達することが一層抑制される。
【0036】
画像ガイドワイヤ100を生体管腔の所定位置まで挿入すると、
図3に左向き矢印によって示すように、カテーテル600を画像ガイドワイヤ100に沿って生体管腔の所定の位置まで挿入する。
【0037】
コネクタ300を画像ガイドワイヤ100に取り付けるときまで、キャップ200は画像ガイドワイヤ100に取り付けられた状態に維持される。したがって、コネクタ300を画像ガイドワイヤ100に取り付けるときまでに行う作業時(画像ガイドワイヤ100の挿入作業時や、カテーテル600の挿入作業時、画像ガイドワイヤ100の長さ変更作業時など)において、異物が電気的接点部140に付着することを防止できる。
【0038】
次に、画像ガイドワイヤ100の後端部130からキャップ200を抜き(
図4(A))、コネクタ300を、画像ガイドワイヤ100の後端部130に基端側から差し込むように取り付ける(
図5(B))。これによって、対をなす電気的接点部140の端子部141とコネクタ300の導通部320とが接触し、電気的に接続される。ケーブル410の他のコネクタ420を、制御装置400に接続する(
図2)。
【0039】
制御装置400の本体部430は、画像センサ120に検査波を出射させる制御信号を出力し、画像センサ120からの検出信号を入力し、検出信号に基いて画像データを取得する。また、本体部430は、取得した画像データに基づく情報をモニター440に表示する。
【0040】
画像センサ120からの信号によって管腔器官の画像を取得した後、カテーテル600を交換し、管腔器官の画像を再び取得する作業を行う場合がある。この作業を行う場合には、まず、画像ガイドワイヤ100の後端部130からコネクタ300を抜き(
図5(A))、キャップ200を、画像ガイドワイヤ100の後端部130に基端側から差し込むように取り付ける(
図4(B))。これによって、後端部130がキャップ200の凹所210内に嵌まり込み、電気的接点部140が覆われる。さらに、キャップ200を取り付けるときに、キャップ200の除去層230が、電気的接点部140に付着した異物をふき取ったり、吸着したりする。これによって、電気的接点部140に付着した異物が除去される。
【0041】
図3に右向き矢印によって示すように、カテーテル600を画像ガイドワイヤ100に沿って生体管腔から抜去する。画像ガイドワイヤ100のワイヤ部110の長さを変更する必要がある場合には、延長ワイヤ500をさらに追加して使用したり、使用していた延長ワイヤ500を外したりする。
【0042】
その後、新たなカテーテル600を画像ガイドワイヤ100に沿って生体管腔の所定の位置まで挿入する。コネクタ300を画像ガイドワイヤ100に取り付けるときまで、キャップ200は画像ガイドワイヤ100に取り付けられた状態に維持される。したがって、カテーテル600の交換作業時において、異物が電気的接点部140に付着することを防止できる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の医療デバイス10は、画像ガイドワイヤ100と、キャップ200と、コネクタ300とを有し、キャップ200は、画像ガイドワイヤ100の後端部130からコネクタ300を抜いたときに、コネクタ300に代えて画像ガイドワイヤ100の後端部130に取り付けられている。
【0044】
このように構成することによって、キャップ200によって電気的接点部140が覆われるため、画像ガイドワイヤ100の後端部130からコネクタ300を抜いたときに画像ガイドワイヤ100の電気的接点部140への異物の付着を抑制することができる。したがって、コネクタ300を画像ガイドワイヤ100に再度接続して管腔器官の画像を取得するときに、電気的接点部140に付着した異物によるノイズが生じることを抑えて、管腔器官の画像を正確に取得できる。
【0045】
キャップ200は、コネクタ300を画像ガイドワイヤ100に取り付けるときまで、画像ガイドワイヤ100に取り付けられた状態に維持されている。このように構成すれば、コネクタ300を画像ガイドワイヤ100に取り付けるときまでに行う作業時(画像ガイドワイヤ100の挿入作業時、カテーテル600の挿入作業時、カテーテル600の交換作業時、画像ガイドワイヤ100の長さ変更作業時など)において、異物が電気的接点部140に付着することを低減できる。
【0046】
キャップ200は、画像ガイドワイヤ100に取り付けたときに異物が電気的接点部140に達することを抑制するシール機構220を有する。このように構成すれば、シール機構220によって、異物が電気的接点部140に達することが一層抑制される。
【0047】
キャップ200は、電気的接点部140に付着した異物を除去可能な除去層230を有する。このように構成すれば、キャップ200の除去層230が、電気的接点部140に付着した異物をふき取ったり、吸着したりする。これによって、電気的接点部140に付着した異物が除去され、安定的に電気的接続の状態を維持することができる。その結果、管腔器官の画像をより正確に安定的に取得できる。
【0048】
画像センサ120は、複数のセンサ素子をリング状に配置したフェーズドアレイから構成されている。このように構成すれば、画像センサ120を回転させることなく、管腔器官の画像を周方向の広範囲にわたって一度に取得できる。
【0049】
キャップ200の外径のうち最も大きい部分は、画像ガイドワイヤ100のワイヤ部110の外径のうち最も大きい部分以下である。このように構成すれば、カテーテル600の管腔610と画像ガイドワイヤ100との間のクリアランスが微小な場合であっても、画像ガイドワイヤ100およびカテーテル600の使い勝手が悪くならない。
【0050】
(キャップの変形例)
図6(A)は、画像ガイドワイヤ100の後端部130から変形例に係るキャップ201を抜いたときの状態を示す要部断面図、
図6(B)は、画像ガイドワイヤ100の後端部130に変形例に係るキャップ201を差し込んで取り付けたときの状態を示す要部断面図である。
【0051】
変形例のキャップ201は、形状およびシール機構250の構成を改変した点において、実施形態のキャップ200と相違する。
【0052】
変形例のキャップ201は、先端から基端まで貫通する貫通孔240が形成された円筒形状を有している。キャップ201の先端側の外径は、本体部材112の外径とほぼ等しい。キャップ201を画像ガイドワイヤ100の後端部130に取り付けると、後端部130がキャップ200の貫通孔240内に収納され、電気的接点部140が覆われる。
【0053】
キャップ201のシール機構250は、キャップ201を画像ガイドワイヤ100に取り付けたときに異物が電気的接点部140に達することを抑制する機能を発揮する限りにおいて適宜の構成に改変できる。改変例においては、シール機構250は、電気的接点部140を覆う部位よりも基端側に配置した弁体260から構成される。弁体260は、開口部261を有するが、この開口部261を常時閉じる方向に弾発力を付勢している。電気的接点部140を覆う部位よりも先端側においては、画像ガイドワイヤ100の後端部130に形成した環状凸部131と、キャップ201の環状凹部241とが嵌まり合うことによって、シール性が維持される。このような構成によっても、画像ガイドワイヤ100とキャップ201との間の微小な隙間を通って異物が電気的接点部140に達することが抑制される。
【0054】
変形例のキャップ201は、弁体260の開口部261を通して、コネクタを画像ガイドワイヤ100の後端部130に接続できる。また、変形例のキャップ201は、画像ガイドワイヤ100から取り外せない構成としてもよい。
【0055】
本出願は、2020年3月30日に出願された日本国特許出願第2020-060745号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【符号の説明】
【0056】
10 医療デバイス、
100 画像ガイドワイヤ、
110 ワイヤ部、
111 先端部材、
112 本体部材、
120 画像センサ、
130 後端部、
140 電気的接点部、
141 端子部、
142 信号線、
200、201 キャップ、
210 凹所、
220 シール機構、
221 シール面、
222 Oリング、
230 除去層、
240 貫通孔、
250 シール機構、
260 弁体、
261 開口部、
300 コネクタ、
310 凹所、
320 導通部、
321 信号線、
330 シール機構、
331 シール面、
400 制御装置、
410 ケーブル、
420 他のコネクタ、
430 本体部、
440 モニター、
500 延長ワイヤ、
510 導通部、
600 カテーテル、
610 管腔。