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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】農業機械
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20241216BHJP
   G05D 1/00 20240101ALI20241216BHJP
   B60W 50/10 20120101ALI20241216BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20241216BHJP
【FI】
A01B69/00 303J
G05D1/00
B60W50/10
B60W30/09
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022512077
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012614
(87)【国際公開番号】W WO2021200568
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2020065145
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】新谷 晃市
(72)【発明者】
【氏名】森本 孝紀
(72)【発明者】
【氏名】木下 知洋
(72)【発明者】
【氏名】作田 建
(72)【発明者】
【氏名】吉村 史也
(72)【発明者】
【氏名】原田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 翔
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-147553(JP,A)
【文献】特開2019-175318(JP,A)
【文献】特開2020-000141(JP,A)
【文献】特開2019-187352(JP,A)
【文献】特開2018-174891(JP,A)
【文献】特開2019-192024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/43
B60W 50/10
B60W 30/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、
障害物を検出可能な障害物検出装置と、
前記車体の自動走行を実行し、且つ当該自動走行時において前記障害物検出装置が検出した障害物に関する検知情報に基づいて前記車体の走行を停止する自動走行制御部と、
前記自動走行時において、前記検知情報に基づいて前記車体の走行を停止可能な有効モードと、前記検知情報に基づいての前記車体の走行停止を行わない無効モードとのいずれかに前記自動走行制御部を切り換えるモード切換部と、
を備えている農業機械。
【請求項2】
前記障害物検出装置が取り付けられた支持部材であって、当該障害物検出装置を、前記障害物を検出可能な検出位置と前記障害物を検出不能な退避位置とに位置変更可能な支持部材を備え、
前記自動走行制御部は、前記無効モードであって且つ前記障害物検出装置が前記退避位置にあるときに、前記自動走行を実行可能である請求項1に記載の農業機械。
【請求項3】
運転席への着座を検出する着座検出装置を備え、
前記自動走行制御部は、前記着座検出装置が着座を検出しているときは、前記自動走行を実行可能である請求項2に記載の農業機械。
【請求項4】
前記障害物検出装置が取り付けられた支持部材であって、当該障害物検出装置を、前記障害物を検出可能な検出位置と前記障害物を検出不能な退避位置とに位置変更可能な支持部材と、
前記障害物検出装置が前記退避位置ある場合に前記モード切換部による前記有効モードから前記無効モードへの切換を許容し且つ前記障害物検出装置が前記検出位置ある場合に前記モード切換部による前記有効モードから前記無効モードへの切換を許容しない切換牽制部と、
を備えている請求項1に記載の農業機械。
【請求項5】
運転席に着座しているか否かを検出する着座検出装置と、
前記着座検出装置が着座していると検出している場合に前記モード切換部における前記有効モードから前記無効モードへの切換を許容し且つ前記着座検出装置が着座していないと検出した場合に前記有効モードから前記無効モードへの切換を許容しない切換牽制部と、
を備えている請求項1又は4に記載の農業機械。
【請求項6】
運転席に着座しているか否かを検出する着座検出装置を備え、
前記自動走行制御部は、前記自動走行時に前記着座検出装置が着座していると検出している場合は前記自動走行を継続し且つ、前記着座検出装置が着座していないと検出した場合は前記自動走行を停止する請求項1~5のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項7】
前記障害物検出装置が取り付けられた支持部材であって、当該障害物検出装置を、前記障害物を検出可能な検出位置と前記障害物を検出不能な退避位置とに位置変更可能な支持部材を備え、
前記自動走行制御部は、前記無効モードの前記自動走行時に前記障害物検出装置が前記退避位置ある場合は前記自動走行を継続し且つ、前記障害物検出装置が前記退避位置から前記検出位置に位置変更した場合は前記自動走行を停止する請求項1~6のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項8】
原動機と、
前記原動機の駆動のON及びOFFのいずれかの切換を行うイグニッションスイッチと、
を備え、
前記モード切換部は、前記イグニッションスイッチをOFFからONに切り換えた状態では前記有効モードをデフォルトとして設定し、前記無効モードの状態で前記イグニッションスイッチをONからOFFに切り換えた状態では前記有効モードに切り換える請求項1~7のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項9】
前記有効モード及び前記無効モードのいずれかであることを表示する表示装置を備えている請求項1~8のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項10】
前記自動走行制御部は、前記有効モードであるときに前記検知情報として前記障害物検出装置が障害物を検出したことを取得した場合に、前記車体を停止する請求項1~9のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項11】
前記障害物検出装置は、前記無効モードであるときは前記障害物を検出したとしても前記障害物を検出したことを前記自動走行制御部に出力しない請求項1~10のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項12】
前記障害物検出装置は、前記自動走行制御部が前記有効モードであるときに、前記自動走行時における前記障害物の検出を前記自動走行制御部に通知し、前記自動走行制御部が前記無効モードであるときに、前記障害物の検出を前記自動走行制御部に通知しない請求項1~11のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項13】
前記障害物検出装置が取り付けられた支持部材であって、当該障害物検出装置を、前記障害物を検出可能な検出位置と前記障害物を検出不能な退避位置とに位置変更可能な支持部材を備え、
前記自動走行制御部は、前記自動走行制御部が前記有効モードであって且つ前記障害物検出装置が前記検出位置にあるときに前記自動走行を開始可能であり、前記自動走行制御部が前記有効モードであって且つ前記障害物検出装置が前記退避位置にあるときに前記自動走行を停止可能であり、前記自動走行制御部が前記無効モードであって且つ前記障害物検出装置が前記検出位置にあるときに前記自動走行を停止可能であり、前記自動走行制御部が前記無効モードであって且つ前記障害物検出装置が前記退避位置にあるときに前記自動走行を開始可能である請求項1に記載の農業機械。
【請求項14】
運転席への着座を検出する着座検出装置を備え、
前記自動走行制御部は、前記着座検出装置が着座を検出しているときは、前記自動走行を実行可能である請求項13に記載の農業機械。
【請求項15】
前記障害物検出装置が前記退避位置ある場合に前記モード切換部による前記有効モードから前記無効モードへの切換を許容し且つ前記障害物検出装置が前記検出位置ある場合に前記モード切換部による前記有効モードから前記無効モードへの切換を許容しない切換牽制部備えている請求項13に記載の農業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トラクタ、コンバイン、田植機等の農業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された農業機械が知られている。特許文献1に開示の農業機械(農用作業車)は、自律走行可能であって、車体の前部に存在する障害物を検出可能な障害物検出装置(障害物検出手段)を備えており、障害物を検出した場合には自律走行を停止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許公開公報「特開2008-92818号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の農業機械にあっては、障害物検出装置が障害物を検出すると車体を停止することができるものの、圃場によっては作物などを障害物として検出し、車体を不必要に停止してしまうことがあった。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みて、状況に応じて自動走行の停止条件を変更することができる農業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
農業機械は、走行可能な車体と、障害物を検出可能な障害物検出装置と、前記車体の自動走行を実行し、且つ当該自動走行時において前記障害物検出装置が検出した障害物に関する検知情報に基づいて前記車体の走行を停止する自動走行制御部と、前記自動走行時において、前記検知情報に基づいて前記車体の走行を停止可能な有効モードと、前記検知情報に基づいての前記車体の走行停止を行わない無効モードとのいずれかに前記自動走行制御部を切り換えるモード切換部と、を備えている。
【0007】
上述の農業機械は、前記障害物検出装置が取り付けられた支持部材であって、当該障害物検出装置を、前記障害物を検出可能な検出位置と前記障害物を検出不能な退避位置とに位置変更可能な支持部材を備え、前記自動走行制御部は、前記無効モードであって且つ前記障害物検出装置が前記退避位置にあるときに、前記自動走行を実行可能である。
【0008】
上述の農業機械は、運転席への着座を検出する着座検出装置を備え、前記自動走行制御部は、前記着座検出装置が着座を検出しているときは、前記自動走行を実行可能である。
【0009】
上述の農業機械は、前記障害物検出装置が取り付けられた支持部材であって、当該障害物検出装置を、前記障害物を検出可能な検出位置と前記障害物を検出不能な退避位置とに位置変更可能な支持部材と、前記障害物検出装置が前記退避位置ある場合に前記モード切換部による前記有効モードから前記無効モードへの切換を許容し且つ前記障害物検出装置が前記検出位置ある場合に前記有効モードから前記無効モードへの切換を許容しない切換牽制部と、を備えている。
【0010】
上述の農業機械は、運転席に着座しているか否かを検出する着座検出装置と、前記着座検出装置が着座していると検出している場合に前記モード切換部における前記有効モードから前記無効モードへの切換を許容し且つ前記着座検出装置が着座していないと検出した場合に前記有効モードから前記無効モードへの切換を許容しない切換牽制部と、を備えている。
【0011】
農業機械は、運転席に着座しているか否かを検出する着座検出装置を備え、前記自動走行制御部は、前記自動走行時に前記着座検出装置が着座していると検出している場合は前記自動走行を継続し且つ、前記着座検出装置が着座していないと検出した場合は前記自動走行を停止する。
【0012】
上述の農業機械は、前記障害物検出装置が取り付けられた支持部材であって、当該障害物検出装置を、前記障害物を検出可能な検出位置と前記障害物を検出不能な退避位置とに位置変更可能な支持部材を備え、前記自動走行制御部は、前記無効モードの前記自動走行時に前記障害物検出装置が前記退避位置ある場合は前記自動走行を継続し且つ、前記障害物検出装置が前記退避位置から前記検出位置に位置変更した場合は前記自動走行を停止する。
【0013】
上述の農業機械は、原動機と、前記原動機の駆動のON及びOFFのいずれかの切換を行うイグニッションスイッチと、を備え、前記モード切換部は、前記イグニッションスイッチをOFFからONに切り換えた状態では前記有効モードをデフォルトとして設定し、前記無効モードの状態で前記イグニッションスイッチをONからOFFに切り換えた状態では前記有効モードに切り換える。
【0014】
上述の農業機械は、前記有効モード及び前記無効モードのいずれかであることを表示する表示装置を備えている。
【0015】
前記自動走行制御部は、前記有効モードであるときに前記検知情報として前記障害物検出装置が障害物を検出したことを取得した場合に、前記車体を停止する。
【0016】
前記障害物検出装置は、前記無効モードであるときは前記障害物を検出したとしても前記障害物を検出したことを前記自動走行制御部に出力しない。
【0017】
前記障害物検出装置は、前記自動走行制御部が前記有効モードであるときに、前記自動走行時における前記障害物の検出を前記自動走行制御部に通知し、前記自動走行制御部が前記無効モードであるときに、前記障害物の検出を前記自動走行制御部に通知しない。
【0018】
上述の農業機械は、前記障害物検出装置が取り付けられた支持部材であって、当該障害物検出装置を、前記障害物を検出可能な検出位置と前記障害物を検出不能な退避位置とに位置変更可能な支持部材を備え、前記自動走行制御部は、前記自動走行制御部が前記有効モードであって且つ前記障害物検出装置が前記検出位置にあるときに前記自動走行を開始可能であり、前記自動走行制御部が前記有効モードであって且つ前記障害物検出装置が前記退避位置にあるときに前記自動走行を停止可能であり、前記自動走行制御部が前記無効モードであって且つ前記障害物検出装置が前記検出位置にあるときに前記自動走行を停止可能であり、前記自動走行制御部が前記無効モードであって且つ前記障害物検出装置が前記退避位置にあるときに前記自動走行を開始可能である。
【0019】
上述の農業機械は、運転席への着座を検出する着座検出装置を備え、前記自動走行制御部は、前記着座検出装置が着座を検出しているときは、前記自動走行を実行可能である。
【0020】
上述の農業機械は、前記障害物検出装置が前記退避位置ある場合に前記モード切換部による前記有効モードから前記無効モードへの切換を許容し且つ前記障害物検出装置が前記検出位置ある場合に前記有効モードから前記無効モードへの切換を許容しない切換牽制部備えている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、状況に応じて自動走行の停止条件を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態によるトラクタの全体平面図である。
図2】本実施形態によるトラクタの全体側面図である。
図3】本実施形態によるトラクタの前部の拡大側面図である。
図4】本実施形態による障害物検出装置が検出位置である場合のトラクタの正面図である。
図5】本実施形態による障害物検出装置が退避位置である場合のトラクタの正面図である。
図6】本実施形態によるトラクタの制御系のブロック図である。
図7】本実施形態による障害物検出装置を検出位置としてカバーを仮想線で示した平面図である。
図8】本実施形態による障害物検出装置が検出位置である場合のトラクタの前部の側面図である。
図9】本実施形態によるカバー本体から分離カバーを取り外した状態の斜視図である。
図10】本実施形態による支持部材、位置変更機構等の前方斜視図である。
図11】本実施形態による支持部材、位置変更機構等の後方斜視図である。
図12】本実施形態による位置変更機構等の前方斜視図である。
図13】本実施形態による支持部材、持ち手等の平面図である。
図14】本実施形態による前支持板及び一方板を省略した位置変更機構等の前方斜視図である。
図15】本実施形態による障害物検出装置が検出位置である場合の位置変更機構等の正面図である。
図16】本実施形態による障害物検出装置が退避位置である場合の位置変更機構等の正面図である。
図17】本実施形態による作成画面M1の一例を示す図である。
図18】本実施形態による設定画面M2の一例を示す図である。
図19A】本実施形態による自動走行の動作フローを示す図である。
図19B】本実施形態による図19Aとは異なる自動走行の動作フローを示す図である。
図19C】本実施形態による図19A及び図19Bとは異なる自動走行の動作フローを示す図である。
図20】本実施形態による自動走行時の表示装置の画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0024】
図1図2は本発明に係る農業機械1の一実施形態を示している。本実施形態では、農業機械1がトラクタ1であるとして説明する。但し、農業機械1は、トラクタの他、コンバイン、田植機等の他の農業機械(農業車両)であってもよい。
【0025】
以下、説明の便宜上、図1図2の矢印A1の方向を前方、矢印A2の方向を後方、矢印B1の方向を左方、矢印B2の方向を右方、矢印Dの方向を車体幅方向(又は幅方向)という。また、車体幅方向であって車体幅方向の中心から離れる方向(矢印D1方向)を車体幅方向外方(又は外方)、車体幅方向であって車体幅方向の中心に近づく方向(矢印D2方向)を車体幅方向内方(又は内方)という。
【0026】
以下、トラクタについて説明する。図1図2に示すように、トラクタ1は、車体3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。車体3には、走行装置7が設けられている。走行装置7は、車体3を走行可能に支持しており、前輪7F及び後輪7Rを有している。前輪7F及び後輪7Rは、本実施形態の場合はタイヤ型であるが、クローラ型であってもよい。原動機4は、エンジン(ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン)、電動モータ等である。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切り換え可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切り換えが可能である。車体3には運転席10が設けられている。運転席10は、保護装置9により保護されている。本実施形態の場合、保護装置9は、運転席10の前方、後方、上方及び側方を取り囲むことにより運転席10を保護するキャビンであるが、少なくとも運転席10の上方を覆うことにより運転席10を保護するロプス等であってもよい。保護装置9の下方には、フェンダ13が取り付けられており、フェンダ13は後輪7Rの上部を覆っている。
【0027】
車体3の後部には、3点リンク機構等で構成された連結部(図示略)が設けられている。連結部には、作業装置(インプルメント等)を着脱可能に連結することができる。作業装置を連結部に連結することによって、車体3によって作業装置を牽引することができる。作業装置は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
【0028】
車体3は、車体フレーム20を有している。図1に示すように、車体フレーム20は、左側に設けられた車体フレーム20Lと、右側に設けられた車体フレーム20Rとを含む。車体フレーム20L及び車体フレーム20Rは、それぞれは変速装置5側から前方に延設されていて、原動機4の下部を支持している。車体フレーム20Lと車体フレーム20Rとは車体幅方向に離間している。車体フレーム20Lの前端部と車体フレーム20Rの前端部とは、前連結板20Fにより連結されている。車体フレーム20Lの中途部と車体フレーム20Rの中途部とは、中途連結板20Mにより連結されている。車体フレーム20L及び車体フレーム20Rは、前車軸ケース29を支持している。前車軸ケース29内には、前輪7Fを回転自在に支持する前車軸15(図6参照)が収容されている。つまり、本実施形態の場合、車体フレーム20は、前車軸15を支持する前車軸フレームである。なお、車体フレーム20は、前車軸ケース29以外の構造体を支持するフレーム(前車軸フレーム以外のフレーム)であってもよい。
【0029】
図1図3に示すように、車体フレーム20の上方にはボンネット25が設けられている。ボンネット25は、車体フレーム20に沿って前後方向に延設されている。ボンネット25は、保護装置9の幅方向の中央部の前方に配置されている。ボンネット25は、左側に設けられた左側壁25Lと、右側に設けられた右側壁25Rと、左側壁25Lと右側壁25Rとの上部を連結する上壁部25Uとを有している。左側壁25L、右側壁25R及び上壁部25Uによってエンジンルームが形成され、エンジンルームに原動機4、冷却ファン、ラジエータ、バッテリ等が収容されている。左側壁25Lの左側方と右側壁25Rの右側方には、それぞれ前輪7Fが配置されている。
【0030】
ボンネット25の前側、即ち、車体フレーム20L、20Rの前側には、ウエイト26が設けられている。ウエイト26は、車体3の前部に設けられたウエイトブラケット(ウエイト取付部)27に取り付けられている。ウエイトブラケット27は、車体フレーム20Lの前連結板20Fにボルト等の締結具により取り付けられている。ウエイト26の周囲は、ウエイトカバー100により覆われている。
【0031】
図6に示すように、トラクタ1は、操舵装置11を備えている。操舵装置11は、ハンドル(ステアリングホイール)11aと、ハンドル11aの回転に伴って回転する回転軸(操舵軸)11bと、ハンドル11aの操舵を補助する補助機構(パワーステアリング機構)11cと、を有している。補助機構11cは、油圧ポンプ21と、油圧ポンプ21から吐出した作動油が供給される制御弁22と、制御弁22により作動するステアリングシリンダ23とを含む。制御弁22は、制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁22は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。また、制御弁22は、操舵軸11bの操舵によっても切り換え可能である。ステアリングシリンダ23は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)24に接続されている。
したがって、ハンドル11aを操作すれば、ハンドル11aに応じて制御弁22の切換位置及び開度が切り換わり、制御弁22の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ23が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。なお、上述した操舵装置11は一例であり、操舵装置11の構成は上述した構成に限定されない。
【0032】
以下、位置検出装置及び制御装置について説明する。図1図2に示すように、トラクタ1は、位置検出装置30を備えている。位置検出装置30は、保護装置9の天板の前方に装着体31を介して装着されている。但し、位置検出装置30の装着位置は、図示の位置には限定されず、保護装置9の天板上に装着してもよいし、車体3の別の場所に装着してもよい。また、位置検出装置30は、上述した耕耘装置等の作業装置に装着されていてもよい。
【0033】
位置検出装置30は、衛星測位システムによって自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出する装置である。即ち、位置検出装置30は、測位衛星から送信された信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、受信した信号に基づいて位置(緯度、経度)を検出する。位置検出装置30は、測位衛星からの信号を受信可能な基地局(基準局)からの補正等の信号に基づいて補正した位置を、自己の位置(緯度、経度)として検出してもよい。また、位置検出装置30がジャイロセンサや加速度センサ等の慣性計測装置を有し、慣性計測装置によって補正した位置を、自己の位置として検出してもよい。位置検出装置30によって、トラクタ1の車体3の位置(走行位置)を検出することができる。
【0034】
以下、制御装置及び表示装置について説明する。図6に示すように、トラクタ1は、制御装置40と表示装置80とを備えている。制御装置40は、CPU、電気回路、電子回路等で構成されていて、トラクタ1の様々な制御を行う。表示装置80は、液晶パネル、有機ELパネル等を有していて様々な情報を表示する。
【0035】
制御装置40には、トラクタ1の駆動状態等を検出する状態検出装置41と、イグニッションスイッチ42とが接続されている。
【0036】
状態検出装置41は、例えば、走行系の状態を検出する装置等であって、例えば、クランクセンサ、カムセンサ、エンジン回転センサ、アクセルセンサ、車速センサ、操舵角センサ、位置検出装置30)等の状態を検出する。なお、状態検出装置41は、走行系の状態以外を検出する装置、例えば、昇降レバー検出センサ、PTO回転検出センサ等であってもよい。
【0037】
イグニッションスイッチ42は、運転席10の周囲に設置され、運転者が操作可能なスイッチである。イグニッションスイッチ42は、ON/OFFに切り換え可能なスイッチであって、ONにすると原動機4が駆動し、OFFにすると原動機4の駆動が停止する。なお、イグニッションスイッチ42において、電装品への電力の供給を行うためのアクセサリスイッチを含んでいてもよく、この場合には、イグニッションスイッチ42は、原動機4を駆動する第1のONの位置と、電動品に電力を供給する第2のONの位置と、OFFの位置とに切り換え可能となる。
【0038】
また、制御装置40には、着座検出装置43が接続されている。着座検出装置43は、運転席10に着座しているか否かを検出する装置である。着座検出装置43は、運転席10の座部、背もたれ等に設置された圧力センサ又は振動センサ、運転席10の周囲に設置されたカメラ等である。着座検出装置43が圧力センサ又は振動センサである場合、所定以上の圧力(振動)を検出した場合に着座を検出し、所定未満の圧力(振動)を検出した場合に着座していないことを検出する。着座検出装置43がカメラである場合、運転席10に人が居ることを検出した場合に着座を検出し、運転席10に人が居ないことを検出した場合に着座をしていないことを検出する。着座検出装置43は、一例であり限定されない。
【0039】
制御装置40は、トラクタ1における走行系の制御、作業系の制御を行う。制御装置40は、例えば、状態検出装置41が検出した検出状態に基づいてエンジン回転数、車速、操舵装置11の操舵角等を制御する。また、制御装置40は、状態検出装置41が検出した検出状態に基づいて、自動走行の制御を行う。具体的には、制御装置40は、自動走行制御部40Aを備えている。自動走行制御部40Aは、制御装置40に設けられた電気電子回路、制御装置40に格納されたプログラム等から構成されている。
【0040】
自動走行を行うにあたっては、図17に示すように、表示装置80等を用いて、走行ルート(走行予定ルート)L1を作成する。まず、走行予定ルートL1の作成について説明する。
【0041】
図17に示すように、運転者等が表示装置80に対して所定の操作を行うと、当該表示装置80は、走行予定ルートL1を作成する作成画面M1を表示する。例えば、作成画面M1の圃場入力部86に所定の圃場名を入力すると、表示装置80は、当該圃場入力部86に入力された圃場マップ(圃場マップMP2)を作成画面M1に表示する。また、運転者等が表示装置80に対して所定の操作を行うと、圃場マップMP2上に車体3の走行ルート(走行予定ルート)L1を作成することができる。走行予定ルートL1の作成においては、例えば、圃場マップMP2内に、走行予定ルートL1として直進を示す直進部L1aと、旋回を示す旋回部L1bとを作成することができる。直進部L1aの幅方向の間隔、本数等は、任意に設定することができる。つまり、表示装置80では、圃場H1内において、自動走行を行うための、走行予定ルートL1を設定(作成)することが可能である。なお、サーバ等の外部機器で作成した走行予定ルートL1をトラクタ1で取得して表示装置80に表示してもよい。
【0042】
自動走行制御部40Aは、走行予定ルートL1の作成が完了し且つ、自動走行の開始の指令が行われると、自動走行の制御(自動走行制御)を実行する。図6に示すように、自動走行の開始の指令は、遠隔操作を行うリモコン81で行ってもよいし、トラクタ1の運転席等の周辺に設置されたスイッチ82で行ってもよい。
【0043】
自動走行制御部40Aは、自動走行制御において、少なくとも車体3の走行位置(位置検出装置30で検出された位置)と、予め設定された走行ルート(走行経路)が一致するように、即ち、車体3と走行予定ルートL1とが一致するように、制御弁22の切換位置及び開度を設定する。言い換えれば、制御装置40は、トラクタ1の走行位置と走行予定ルートL1とが一致するように、ステアリングシリンダ23の移動方向及び移動量(前輪7Fの操舵方向及び操舵角)を設定する。
【0044】
詳しくは、自動走行制御部40Aは、車体3の走行位置と、走行予定ルートL1で示された位置(走行予定位置)とを比較し、走行位置と走行予定位置とが一致している場合は、操舵装置11におけるハンドル11aの操舵角及び操舵方向(前輪7Fの操舵角及び操舵方向)を変更せずに保持する(制御弁22の開度及び切換位置を変更せずに維持する)。自動走行制御部40Aは、走行位置と走行予定位置とが一致していない場合、当該走行位置と走行予定位置との偏差(ズレ量)が零となるように、操舵装置11におけるハンドル11aの操舵角及び/又は操舵方向を変更する(制御弁22の開度及び/又は切換位置を変更する)。
【0045】
なお、上述した実施形態では、自動走行制御部40Aは、自動走行制御において、走行位置と走行予定位置との偏差に基づいて操舵装置11の操舵角を変更するものであるが、走行予定ルートL1の方位とトラクタ1(車体3)の進行方向(走行方向)の方位(車体方位)とが異なる場合、自動走行制御部40Aは、車体方位が走行予定ルートL1の方位に一致するように操舵角を設定してもよい。また、自動走行制御部40Aは、自動走行制御において、偏差(位置偏差)に基づいて求めた操舵角と、方位偏差に基づいて求めた操舵角とに基づいて、自動走行制御における最終の操舵角を設定してもよい。また、上記した自動走行制御における操舵角の設定方法とは異なる方法で操舵角を設定してもよい。
【0046】
また、自動走行制御部40Aは、自動走行制御において、トラクタ1(車体3)の実際の車速が、予め設定された走行予定ルートL1に対応する車速に一致するように、走行装置7、即ち、前輪7F及び/又は後輪7Rの回転数を制御してもよい。
【0047】
また、自動走行制御部40Aは、障害物検出装置45による障害物の検出結果に基づいて自動走行を制御する。例えば、障害物検出装置45が障害物を検出していない場合は自動走行を継続して行い、障害物検出装置45が障害物を検出した場合に自動走行を停止する。より具体的には、障害物検出装置45が障害物を検出した場合に、自動走行制御部40Aは、障害物とトラクタ1との距離が予め定められた閾値(停止閾値)以下である場合に、トラクタ1の走行を停止することで自動走行を停止する。
【0048】
また、自動走行制御部40Aは、自動走行時において着座検出装置43が着座していると検出している場合は自動走行を継続し且つ、着座検出装置43が着座していないと検出した場合は自動走行を停止する。
【0049】
図20に示すように、自動走行時(自動走行中)には、表示装置80には、トラクタ1(車体3)を示す図形G1と、走行予定ルートL1とを表示する。
【0050】
以下、障害物検出装置の詳細について説明する。図1に示すように、トラクタ1は、複数の障害物検出装置45を備えている。複数の障害物検出装置45のそれぞれは、トラクタ1の周囲に存在する物体、即ち、障害物を検出可能である。複数の障害物検出装置45のうち、少なくとも1つは、保護装置9の前方で且つボンネット25の外方に設けられている。即ち、少なくとも1つの障害物検出装置45は、トラクタ1の保護装置9の前方の領域において、ボンネット25の左側壁25Lよりも左側の領域、或いは、ボンネット25の右側壁25Rよりも右側の領域に配置されている。本実施形態の場合、複数の障害物検出装置45は、車体3の左側(ボンネット25の左側)に設けられた障害物検出装置45Lと、車体3の右側(ボンネット25の右側)に設けられた障害物検出装置45Rとを含む。
【0051】
また、障害物検出装置45は、前輪7Fの前方であって且つ前輪7Fよりも外方に設けられている。障害物検出装置45Lは、左側の前輪7Fの前方であって且つ左側の前輪7よりも外方(左方)に設けられている。障害物検出装置45Rは、右側の前輪7Fの前方であって且つ右側の前輪7Fよりも外方(右方)に設けられている。言い換えれば、障害物検出装置45Lは左側の前輪7Fの左前方に設けられており、障害物検出装置45Rは、右側の前輪7Fの右前方に設けられている
【0052】
障害物検出装置45は、レーザスキャナ45A、ソナー45B等である。レーザスキャナ45Aは、検出波としてレーザを照射することによって物体(障害物)を検出する。レーザスキャナ45Aは、レーザの照射から受光までの時間に基づいて障害物までの距離を検出する。図9図10に示すように、レーザスキャナ45Aは、投受光部45A1と収容体45A2とを含んでいる。投受光部45A1は、レーザを照射し且つ、照射したレーザが障害物に当たって反射したレーザ(反射光)を受光する。つまり、投受光部45A1は、レーザ(検出波)を照射する照射部と、障害物に当たって反射したレーザ(検出波)を受信する受信部とを含んでいる。収容体45A2は、投受光部45A1を収容して支持するケースである。収容体45A2は、投受光部45A1の上方に配置された上部体45A3と、投受光部45A1の下方に配置された下部体45A4とを有している。上部体45A3と下部体45A4との間、即ち投受光部45A1の周囲は、全部又は一部が開放されており、レーザ(検出波)が通過可能である。
【0053】
ソナー45Bは、検出波として音波を照射することによって物体(障害物)を検出する。図9図10に示すように、ソナー45Bは、投受音部45B1と収容体45B2とを含んでいる。投受音部45B1は、音波を照射し且つ、当該照射した音波が障害物に当たって反射した反射音を受ける。つまり、投受音部45B1は、音波(検出波)を照射する照射部と、障害物に当たって反射した音波(検出波)を受信する受信部とを含んでいる。収容体45B2は、投受音部45B1を収容して支持するケースである。ソナー45Bは、音波の照射から反射音の受音までの時間に基づいて、障害物までの距離を検出する。
【0054】
図1に示すように、レーザスキャナ45A及びソナー45Bは、前輪7Fの前方であって、前輪7Fよりも外方に配置されている。より詳しくは、レーザスキャナ45A及びソナー45Bは、少なくとも受信部(投受光部45A1、投受音部45B1)が前輪7Fの前方且つ前輪7Fよりも外方に配置されている。
【0055】
図4に示すように、レーザスキャナ45A及びソナー45Bは、ボンネット25の上壁部25Uよりも下方であって、前輪7Fの上端部よりも低い位置に設置されている。そのため、レーザスキャナ45Aの投受光部45A1及びソナー45Bの投受音部45B1も、ボンネット25の上壁部25Uよりも下方であって、前輪7Fの上端部よりも低い位置に設置されている。また、レーザスキャナ45A(投受光部45A1)及びソナー45B(投受音部45B1)は、前輪7Fの上端部よりも下方であって且つ前車軸15よりも上方に位置している。
【0056】
図1図4に示すように、レーザスキャナ45Aは、ソナー45Bよりも外方に配置されている。具体的には、図1に示すように、レーザスキャナ45A(投受光部45A1)は、前輪7Fが車体3を直進させる位置にある状態(ハンドル11aが切られていない状態)において、前輪7Fの幅方向外端から前輪7Fの幅(トレッド幅)W1の分だけ外方に位置する仮想線X1よりも更に外方に配置されている。ソナー45Bは、仮想線X1よりも内方に配置されている。
【0057】
図7に示すように、障害物検出装置45は、支持部材50によって車体3に支持されている。支持部材50は、障害物検出装置45を検出位置(図4図15参照)と退避位置(図5図16参照)とに位置変更可能である。支持部材50は、障害物検出装置45を車体3の左方に支持する支持部材50Lと、障害物検出装置45を車体3の右方に支持する支持部材50Rとを含む。支持部材50Lと支持部材50Rとは、車体幅方向の中心線CL1を挟んで対称形である点以外は同じ構成である。
【0058】
支持部材50は、車体フレーム(前車軸フレーム)20側から外方に延びている。具体的には、支持部材50Lは、車体フレーム20Lから左方に延びている。支持部材50Rは、車体フレーム20Rから右方に延びている。
【0059】
図7図10図11図13に示すように、支持部材50は、第1支持部50A、第2支持部50B、第3支持部50Cを有している。
【0060】
第1支持部50Aは、取付アーム51、取付板52、前支持板53、後支持板54を有している。取付アーム51は、車体フレーム20の側面前部から前方且つ外方に向けて延びている。取付アーム51は、取付アーム51Lと取付アーム51Rとを含む。取付アーム51Lは、車体フレーム20Lの左側面の前部に取り付けられており、当該前部から左前方に向けて延びている。取付アーム51Rは、車体フレーム20Rの右側面の前部に取り付けられており、当該前部から右前方に向けて延びている。取付板52は、取付アーム51L,51Rの前端部に取り付けられており、一方の面が外方、他方の面が内方を向いている。取付アーム51Lに取り付けられた左側の取付板52と、取付アーム51Rに取り付けられた右側の取付板52とは、連結部材49により連結されている。連結部材49は、パイプから構成されており、ウエイトカバー100の上方を通って左側の取付板52の上部と右側の取付板52の上部とを連結している。
【0061】
前支持板53と後支持板54は、同形状であって、前後方向に間隔をあけて互いに平行に対向配置されている。前支持板53及び後支持板54は、取付板52の一方の面に取り付けられており、外方に延びている。図12に示すように、前支持板53の下縁及び後支持板54の下縁には、下支持板56が当接している。前支持板53の上縁及び後支持板54の上縁には、上支持板57が当接している。下支持板56及び上支持板57は、取付板52に固定されている。尚、図12では、前支持板53を仮想線で示している。
【0062】
図10図12に示すように、前支持板53には、第1前孔53a及び第2前孔53bが形成されている。後支持板54には、第1後孔54a及び第2後孔54bが形成されている。第1後孔54aは第1前孔53aと対向する位置にあり、第2後孔54bは第2前孔53bと対向する位置にある。図10図11図12に示すように、後支持板54の上部には、筒体58及び受け部材59が固定されている。筒体58は、中心孔の軸心方向が前後方向に延びている。筒体58の中心孔の軸心と第2後孔54bの中心とは同一直線上に配置されている。前支持板53の下部及び後支持板54の下部には、受け部材59が固定されている。受け部材59は、U字状の部材であって、前支持板53の前面に固定された前部分59aと、後支持板54の後面に固定された後部分59bと、前部分59aと後部分59bとを連絡する下部分59cとを有している。受け部材59の下部分59cには、ノブボルト60が螺着されている。ノブボルト60のねじ軸の軸心は上下方向を向いている。図14に示すように、ノブボルト60のねじ軸には、先端部材61が取り付けられている。先端部材61の位置(高さ)は、ノブボルト60を回転することにより調整することができる。
【0063】
図10図11図12等に示すように、第2支持部50Bは、前支持板53と後支持板54との間に支持されている。第2支持部50Bは、一方板65、他方板66、連結板67、支持アーム55を有している。
【0064】
一方板65と他方板66とは同形状であって、前後方向に間隔をあけて互いに平行に対向配置されている。一方板65は前支持板53と対向しており、他方板66は後支持板54と対向している。図12に示すように、一方板65には、第1一方孔65a、第2一方孔65b、第3一方孔65cが形成されている。図12図14に示すように、他方板66には、第1他方孔66a、第2他方孔66b、第3他方孔66cが形成されている。第1他方孔66aは、第1一方孔65aと対向する位置にある。第2他方孔66bは、第2一方孔65bと対向する位置にある。第3他方孔66cは、第3一方孔65cと対向する位置にある。尚、図14では、前支持板53及び一方板65を省略している。連結板67は、L字状に屈曲された帯状の板であって、一方板65と他方板66とを連結している。
【0065】
図12図14に示すように、第1一方孔65a及び第1他方孔66aには、円筒状のボス68が嵌め入れられている。具体的には、ボス68の前端側が第1一方孔65aに嵌め入れられ、ボス68の後端側が第1他方孔66aに嵌め入れられている。ボス68の中心孔68aは、第1前孔53a及び第1後孔54aと同一直線上に配置されており、これらの孔を貫通するようにボルトBL1(図13図11参照)のねじ軸が挿通されている。ボルトBL1のねじ軸にはナットNT1が螺合されている。これらボルトBL1及びナットNT1によって、前支持板53と後支持板54との間に、第2支持部50B(一方板65、他方板66、連結板67)が挟まれて支持されている。第2支持部50Bは、ボルトBL1のねじ軸を支点として第1支持部50Aに対して回動可能となっている。言い換えれば、ボルトBL1のねじ軸は、第2支持部50Bを回動可能に支持する支軸として機能する。
【0066】
図14図15に示すように、一方板65と他方板66との間には、第1当接部材69と第2当接部材70が固定されている。第1当接部材69と第2当接部材70は、支軸(ボルトBL1のねじ軸)を中心とした同一円上に配置されている。つまり、第1当接部材69と第2当接部材70は、支軸(ボルトBL1のねじ軸)からの距離が等しい。第1当接部材69と第2当接部材70は、支軸(ボルトBL1のねじ軸)を中心として90°離れた位置に配置されている。
【0067】
図10図11に示すように、支持アーム55は、第1支持部50Aから車体外方側に延びている。支持アーム55の一端部は、後述する当て部材71と共に連結板67に接続されている。支持アーム55の他端部には、第3支持部50Cが接続されている。
【0068】
第3支持部50Cは、障害物検出装置45を支持している。図10図11等に示すように、第3支持部50Cは、支持ブラケット75及び支持ステー76を有している。支持ブラケット75は、レーザスキャナ45Aを支持している。支持ブラケット75は、上横部位75a、下横部位75b、縦部位75cから構成される略C字状の部材である。縦部位75cは、支持アーム55の他端部に固定されている。上横部位75aは、収容体45A2の上部体45A3を支持している。下横部位75bは、収容体45A2の下部体45A4を支持している。これにより、レーザスキャナ45Aが支持ブラケット75に支持されている。支持ステー76は、支持アーム55の中途部に固定されており、ソナー45Bを支持している。ソナー45Bは、投受音部45B1が前方且つ車体内方側を向くように支持ステー76に取り付けられている。
【0069】
上述した第1支持部50Aの取付板52、前支持板53、後支持板54(図10図12等を参照)等は、障害物検出装置45の位置を変更する位置変更機構63を構成している。位置変更機構63は、障害物検出装置45を、予め定められた位置であって障害物を検出する検出位置と、検出位置から車体3側に退避する退避位置とに位置変更する機構である。位置変更機構63は、支持部材50の第2支持部50B及び第3支持部50Cと共に障害物検出装置45の位置を変更可能である。
【0070】
図4図15は、障害物検出装置45が検出位置にある状態を示している。図5図16は、障害物検出装置45が退避位置にある状態を示している。この検出位置と退避位置との位置変更は、第1支持部50Aに対して第2支持部50BをボルトBL1のねじ軸(支軸)を支点として回動することにより行うことができる。
【0071】
図15に示すように、障害物検出装置45が検出位置にあるとき、支持アーム55は水平方向に延びる。具体的には、障害物検出装置45を車体3の左方に支持する支持部材50Lの支持アーム55は、水平に左方に延びる。障害物検出装置45を車体3の右方に支持する支持部材50Rの支持アーム55は、右方に水平に延びる。障害物検出装置45が検出位置にあるとき、投受光部45A1から照射されるレーザの照射方向が水平方向となる。
【0072】
障害物検出装置45が検出位置にあるとき、図12に示すように、第2前孔53b、第2一方孔65b、第2他方孔66b、第2後孔54bは、同一直線上に配置され、これらの孔及び筒体58を貫通するようにピン64が挿通される。ピン64を第2前孔53b、第2一方孔65b、第2他方孔66b、第2後孔54bに挿通することによって、前支持板53及び後支持板54に対して第2支持部50B(一方板65、他方板66、連結板67、支持アーム55)が回動不能となり、第2支持部50Bの位置が固定される。その結果、図4図14図15に示すように、支持アーム55は水平方向に延びた状態(検出姿勢)で車体3に対して位置決めされ、障害物検出装置45が検出位置に保持される。このとき、ノブボルト60のねじ軸に取り付けられた先端部材61は、第1当接部材69に当接している。
【0073】
障害物検出装置45が検出位置にある状態(図15参照)から、障害物検出装置45を退避位置(図16参照)とする場合、先ずピン64を孔から引き抜く。ピン64の引き抜きは、ピン64の一端部に設けられた環状の把持部64aを把持して行うことができる。ピン64を孔から引き抜くことによって、前支持板53及び後支持板54に対して第2支持部50B(一方板65、他方板66、連結板67、支持アーム55)が回動可能な状態となる。このとき、先端部材61が第1当接部材69に当接しているため、第2支持部50Bは下方に回動できず上方のみに回動可能な状態となる。
【0074】
ピン64を孔から引き抜いた後、支持アーム55に対して上向きの力を作用させると、第2支持部50B(一方板65、他方板66、連結板67、支持アーム55)が支軸(ボルトBL1のねじ軸)を支点として上方に回動する(図15の矢印U1参照)。支持アーム55の上向きの回動範囲は、当て部材71及び突出軸72(図12図14参照)により規制される。当て部材71は、支持アーム55の上部に固定されている。突出軸72は、上支持板57の上部に配置された軸支持体73から外方に向けて突出している。
【0075】
図16に示すように、支持アーム55の上向きの回動は、当て部材71が突出軸72に当接するまで行うことができる。当て部材71が突出軸72に当接したとき、支持アーム55が上方に向けて延びる状態(退避姿勢)となる。図16に示す状態において、第2前孔53b、第2後孔54b、第3一方孔65c、第3他方孔66cが同一直線上に配置されるため、これらの孔及び筒体58を貫通するようにピン64を挿通することにより、前支持板53及び後支持板54に対して第2支持部50B(一方板65、他方板66、連結板67、支持アーム55)が回動不能となり、第2支持部50Bの位置が固定される。その結果、図16図5に示すように、支持アーム55は上方向に延びた状態で車体3に対して位置決めされ、障害物検出装置45が退避位置に保持される。このとき、ノブボルト60のねじ軸に取り付けられた先端部材61は、第2当接部材70に当接する。
【0076】
上記したように、位置変更機構63によって、障害物検出装置45を検出位置と退避位置とに位置変更することができる。障害物検出装置45を検出位置とすることにより、車体3の周囲にある障害物を検出することができる。障害物検出装置45を使用しないときには、障害物検出装置45を検出位置から退避位置へと移動させる。
【0077】
なお、位置変更機構63は、支持アーム55が検出位置にあるか退避位置にあるかを検出する姿勢検出装置を有している。姿勢検出装置は、例えば、当て部材71が突出軸72に当接したときに退避位置を検出し、当て部材71が突出軸72から離反したときに検出位置を検出するものが使用される。姿勢検出装置の検出情報は、制御装置40に入力される。
【0078】
以下、有効モード及び無効モードについて説明する。さて、トラクタ1の自動走行において、自動走行制御部40Aは、障害物検出装置45が障害物を検出すると、当該障害物検出装置が検出した障害物に関する検知情報に基づいて車体3を停止することになっているが、圃場H1内の自動走行時において、検知情報に基づいて車体3の停止を実行する有効モードと、車体3の停止を行わない無効モードとのいずれかに切り換えることが可能である。
【0079】
有効モードでは、自動走行中において、障害物検出装置45が障害物を検出し、検出した検出情報が、障害物と車体3との距離が所定以下を示している場合、車体3を停止する。一方、無効モードでは、自動走行中において、障害物検出装置45が障害物を検出し、検出した検出情報が、障害物と車体3との距離が停止閾値以下を示している場合であっても、車体3を停止せずに、自動走行を継続する。或いは、無効モードでは、自動走行中において、障害物検出装置45は、障害物を検出したとしても障害物を検出したこと(検出情報)を自動走行制御部40Aに出力しないことによって、自動走行制御部40Aによる車体3の停止を行わせない。また、無効モードでは、自動走行中において、障害物検出装置45において、障害物の検出を停止することによって、自動走行中の車体3の停止を行わない。つまり、無効モードでは、圃場H1内の自動走行において、障害物の検出の有無に関わらず、障害物検出装置45の検出情報に基づく、車体3の停止を行わない。
【0080】
制御装置40は、モード切換部40Bを備えている。モード切換部40Bは、制御装置40に設けられた電気電子回路、制御装置40に格納されたプログラム等から構成されている。図18に示すように、運転者が表示装置80に対して所定の操作を行うと、モード切換部40Bは、設定画面M2を表示する。設定画面M2は、有効モードを選択する第1選択部101と、無効モードを選択する第2選択部102とを表示する。第1選択部101、第2選択部102との選択は、表示装置80に設けた操作部材、或いは、運転席10の周囲に設けた操作部材によって行うことができる。モード切換部40Bは、第1選択部101が選択されると有効モードに切り換え、第2選択部102が選択されると無効モードに切り換える。
【0081】
より詳しくは、イグニッションスイッチ42がOFFである場合、又は、イグニッションスイッチ42がOFFからONに切り換えた状態では、モード切換部40Bは、有効モードをデフォルトとして設定し、デフォルト状態(初期状態)では、表示装置80は、設定画面M2において、第1選択部101を選択された状態を表示する。つまり、原動機4の駆動が停止している状態、又は、原動機4の駆動が停止してから始動に切り換えた状態では、モード切換部40Bは、有効モードをデフォルトとして設定する。
【0082】
一方、原動機4を駆動した後、設定画面M2において、有効モードから無効モードに切り換えられた場合において、原動機4の駆動が停止すると、モード切換部40Bは、無効モードから有効モードに切り換える。つまり、モード切換部40Bは、無効モードが保持された状態でイグニッションスイッチ42をONからOFFに切り換えた状態では有効モードに切り換える。
【0083】
上述した実施形態では、表示装置80に表示した設定画面M2の操作に応じて、モード切換部40Bが有効モード又は無効モードの切換を行っていたが、モード切り換えを牽制してもよい。
【0084】
制御装置40は、切換牽制部40Cを備えている。切換牽制部40Cは、制御装置40に設けられた電気電子回路、制御装置40に格納されたプログラム等から構成されている。切換牽制部40Cは、障害物検出装置45が退避位置である場合に、モード切換部40Bにおける有効モードから無効モードへの切換を許容する。例えば、表示装置80に設定画面M2を表示している状態において、障害物検出装置45が退避位置である場合は、第2選択部102が選択されることによってモード切換部40Bが有効モードから無効モードに切り換えることを、切換牽制部40Cが許容(許可)する。
【0085】
一方、表示装置80に設定画面M2を表示している状態において、障害物検出装置45が検出位置である場合は、第2選択部102が選択されることによってモード切換部40Bが有効モードから無効モードに切り換えることを、切換牽制部40Cが許容しない。つまり、障害物検出装置45が退避位置においては、切換牽制部40Cは、モード切換部40Bが第2選択部102の選択を受け付けること許可しない。
【0086】
上述した実施形態では、障害物検出装置45が検出位置である場合には、切換牽制部40Cが有効モードから無効モードに切り換えることを許容していなかったが、これに代えて、運転者が着座しているか否かに基づいて有効モード、無効モードの牽制を行ってもよい。
【0087】
具体的には、制御装置40は、切換牽制部40Dを備えている。切換牽制部40Dは、制御装置40に設けられた電気電子回路、制御装置40に格納されたプログラム等から構成されている。
【0088】
切換牽制部40Dは、着座検出装置43が着座していると検出している場合に、モード切換部40Bにおける有効モードから無効モードへの切換を許容する。例えば、表示装置80に設定画面M2を表示している状態において、運転者が着座している場合は、第2選択部102が選択されることによってモード切換部40Bが有効モードから無効モードに切り換えることを、切換牽制部40Dが許容(許可)する。
【0089】
一方、表示装置80に設定画面M2を表示している状態において、着座検出装置43が着座していないと検出している場合は、第2選択部102が選択されることによってモード切換部40Bが有効モードから無効モードに切り換えることを、切換牽制部40Dが許容しない。つまり、運転者が運転席10に着座していない場合は、切換牽制部40Dは、モード切換部40Bが第2選択部102の選択を受け付けること許可しない。
【0090】
以下、自動走行フローの一つめの実施例について説明する。図19Aは、自動走行の動作フローを示している。図19Aでは、イグニッションスイッチ42がONの直後は、自動走行が行われていないことを前提に説明する。なお、図19Aは、無効モードにおける自動走行の動作フローである。
【0091】
図19Aに示すように、モード切換部40Bは、イグニッションスイッチ42がONであるか否かを判断する(S1)。例えば、イグニッションスイッチ42がON(原動機4が駆動又は電装品に電力が供給中)である場合(S1、Yes)、モード切換部40Bは、有効モードに設定をする(S2)。所定の操作が行われると、表示装置80は、設定画面M2を表示する(S3)。切換牽制部40Cは、障害物検出装置45が退避位置であるか否かを判断する(S4)。切換牽制部40Cは、障害物検出装置45が退避位置である場合(S4、Yes)、設定画面M2においてモード切換部40Bにおける有効モードから無効モードへの切換を許容し、無効モードを受け付ける(S5)。
【0092】
一方、切換牽制部40Cは、障害物検出装置45が退避位置でない場合(S4、No)、設定画面M2においてモード切換部40Bにおける有効モードから無効モードへの切換を許容せず、無効モードを受け付けない(S6)。加えて、障害物検出装置45が退避位置でない場合(S4、No)、自動走行制御部40Aは、表示装置80に異常(警告)を出力し、当該表示装置80は、設定画面M2などに退避位置でないことを示す異常(警告)を表示する(S7)。
【0093】
また、自動走行制御部40Aは、無効モードを受け付けた後(S5以降)、自動走行の開始の指令の取得を待ち、リモコン81、スイッチ82等の開始ボタンが押されて、開始の指令を取得する(S8)と、運転者が運転席に着座しているか否か判断する(S9)。運転者が運転席10に着座している場合(S9、Yes)、自動走行制御部40Aは、自動走行制御を実行、即ち、無効モードにおける自動走行を開始する(S10)。
【0094】
無効モードで自動走行を開始した場合は、自動走行制御部40Aは、障害物検出装置45の検出情報に関わらず、障害物の検知による車体3の停止を行わない。また、図20に示すように、無効モードにおいて、自動走行を行っている場合、表示装置80は、無効モードによる自動走行中であることを、メッセージ部88に表示する。なお、表示装置80は、有効モードによる自動走行中であることを、メッセージ部88に表示してもよい。
【0095】
一方、自動走行制御部40Aは、運転者が運転席に着座していない場合(S9、No)、表示装置80に異常(警告)を出力し、当該表示装置80は、着座していないことを示す異常(警告)を表示する(S11)。また、自動走行制御部40Aは、自動走行開始前で且つ着座していない場合(S8からS9、Noに移行した場合)は、自動走行の禁止を行う、一方で、自動走行中で且つ着座していない場合(S10からS9、Noに移行した場合)は、車体3の走行を停止する(S12)。自動走行制御部40Aは、自動走行の開始後の自動走行中に着座している場合(S10からS9、Yesに移行した場合)は、自動走行を継続する。
【0096】
以下に、自動走行フローの二つめの実施例について説明する。図19Bは、図19Aとは異なる自動走行の動作フローを示している。図19Bでも、イグニッションスイッチ42がONの直後は、自動走行が行われていないことを前提に説明する。なお、図19Bは、無効モードにおける自動走行の動作フローである。
【0097】
図19Bに示すように、モード切換部40Bは、イグニッションスイッチ42がONであるか否かを判断する(S1)。例えば、イグニッションスイッチ42がON(原動機4が駆動又は電装品に電力が供給中)である場合(S1、Yes)、モード切換部40Bは、有効モードに設定をする(S2)。所定の操作が行われると、表示装置80は、設定画面M2を表示する(S3)。切換牽制部40Dは、運転者が運転席に着座しているか否か判断する(S20)。切換牽制部40Dは、運転者が運転席に着座している場合(S20、Yes)、設定画面M2においてモード切換部40Bにおける有効モードから無効モードへの切換を許容し、無効モードを受け付ける(S21)。
【0098】
一方、切換牽制部40Dは、運転者が運転席に着座していない場合(S20、No)、設定画面M2においてモード切換部40Bにおける有効モードから無効モードへの切換を許容せず、無効モードを受け付けない(S22)。加えて、運転者が運転席に着座していない場合(S20、No)、自動走行制御部40Aは、表示装置80に異常(警告)を出力し、当該表示装置80は、設定画面M2などに運転者が着座していないことを示す異常(警告)を表示する(S23)。図19BのS8~S12は、図19Aと同様であるため説明を省略する。
【0099】
上述した実施形態では、障害物検出装置45が退避位置である場合、又は、運転者が運転席に着座している場合に、有効モードから無効モードへの切り換えを許容していたが、障害物検出装置45が退避位置且つ運転者が運転席に着座している場合に、有効モードから無効モードへの切り換えを許容してもよい。
【0100】
以下に、自動走行フローの三つめの実施例について説明する。さて、上述した実施形態では、障害物検出装置45の位置(検出位置、退避位置)、又は、運転席の状態(着座している、着座していない)に基づいて、有効モードから無効モードへの切り換えを牽制していたが、障害物検出装置45の位置及び運転席の状態に関わらず、有効モードから無効モードへ切り換えられるようにしてもよい。加えて、障害物検出装置45の位置に基づいて、自動走行の開始ができるか否かを設定してもよい。例えば、自動走行制御部40Aは、自動走行前において、無効モードであるときにおいて、障害物検出装置45が退避位置の状態であるときは、自動走行を開始することが可能であり、無効モードであるときにおいて、退避位置でないときは、当該無効モードにおける自動走行の開始は行わない。
【0101】
図19Cは、図19A及び図19Bとは異なる自動走行の動作フローを示している。図19Cでも、イグニッションスイッチ42がONの直後は、自動走行が行われていないことを前提に説明する。なお、図19Cは、無効モードにおける自動走行の動作フローである。
【0102】
図19Cに示すように、モード切換部40Bは、イグニッションスイッチ42がONであるか否かを判断する(S1)。例えば、イグニッションスイッチ42がON(原動機4が駆動又は電装品に電力が供給中)である場合(S1、Yes)、モード切換部40Bは、有効モードに設定をする(S2)。所定の操作が行われると、表示装置80は、設定画面M2を表示する(S3)。
【0103】
設定画面M2では、障害物検出装置45の位置及び運転席の状態に関わらず、有効モード、無効モードの切換が可能、即ち、有効モード、無効モードの受付が可能である。設定画面M2において、無効モードが設定された場合(S50)、自動走行制御部40Aは、障害物検出装置45が退避位置であるか否かを判断する(S51)。障害物検出装置45が退避位置でない場合(S51、No)、自動走行制御部40Aは、表示装置80に異常(警告)を出力し、当該表示装置80は、設定画面M2などに退避位置でないことを示す異常(警告)を表示する(S52)。図19CのS8~S12は、図19A及び図19Bと同様であるため説明を省略する。
【0104】
なお、上述した図19A図19Cにおいて、自動走行制御部40Aは、無効モードにおける自動走行中(自動走行時)に、退避位置になっている場合は自動走行を継続する一方、退避位置から検出位置に変化した場合は自動走行を停止する。
【0105】
以下に、有効モードにおける自動走行について説明する。上述した図19A図19Cにおいて、無効モードにおける自動走行について説明したが、有効モードにおける自動走行は、次の通りである。
【0106】
有効モードに設定されている場合、自動走行制御部40Aは、障害物検出装置45が検出位置であるか否かを判断する。自動走行制御部40Aは、障害物検出装置45が検出位置であり且つ、自動走行の開始を取得すると、自動走行を開始する。有効モードの自動走行において、自動走行制御部40Aは、障害物検出装置45が検出位置、自動走行の開始の取得、着座の3つの条件が揃った場合に、自動走行を開始してもよい。また、自動走行の開始前に、有効モードに設定された場合において、障害物検出装置45が退避位置であるときは、表示装置80に、障害物検出装置45が退避位置であることの異常(警告)を表示してもよい。
【0107】
農業機械1は、走行可能な車体3と、障害物を検出可能な障害物検出装置45と、車体3の自動走行を実行し且つ当該自動走行時において障害物検出装置45が検出した障害物に関する検知情報に基づいて車体3を停止する自動走行制御部40Aと、圃場内の自動走行時において検知情報に基づいて車体3の停止を実行する有効モードと車体3の停止を行わない無効モードとのいずれかに切り換えるモード切換部40Bと、を備えている。これによれば、農業機械1がモード切換部40Bを備えているため、圃場内の自動走行時において、有効モードであるときは、障害物検出装置45が検出した検出情報に基づいて車体3を停止することができる一方、無効モードであるときは、障害物検出装置45の検出情報に関わらず、車体3を停止することなく自動走行を行うことができる。即ち、圃場内の自動走行を前提として、車体3を停止させるための障害物の検出を停止することや、或いは、障害物の検出があったとしても当該検出によって車体3を停止することを行わないようにすることができる。つまり、状況に応じて自動走行の停止の有無を変更することができるようにする。
【0108】
農業機械1は、障害物検出装置45が取り付けられ且つ当該障害物検出装置45を検出位置と退避位置とに位置変更可能な支持部材50を備え、自動走行制御部40Aは、無効モード且つ障害物検出装置が退避位置であるときは、自動走行を開始可能である。これによれば、障害物検出装置45が退避位置であって、物理的に障害物等を検出できない位置であるときに、障害物の検出の有無に関わらず、自動走行を行うことができる。
【0109】
農業機械1は、運転席10に着座しているか否かを検出する着座検出装置43を備え、記自動走行制御部40Aは、着座検出装置43が着座していると検出しているときは、自動走行を開始可能である。これによれば、有人の自動走行時において、運転者が運転席10に着座していることを条件として、障害物の検出の有無に関わらず、自動走行を行うことができる。
【0110】
農業機械1は、障害物検出装置45が取り付けられ且つ当該障害物検出装置45を検出位置と退避位置とに位置変更可能な支持部材50と、退避位置である場合にモード切換部40Bにおける有効モードから無効モードへの切換を許容し且つ検出位置である場合に有効モードから無効モードへの切換を許容しない切換牽制部40Cと、を備えている。これによれば、障害物検出装置45が退避位置であって障害物の検出できないような状態(物理的に検出位置ではない状態)である場合に限って、有効モードから無効モードへの切換を行うことができる。即ち、運転者が障害物検出装置45を意図して退避位置にしたときに、無効モードにすることができるため、運転者の意思と異なるような状況を回避することができる。
【0111】
農業機械1は、運転席に着座しているか否かを検出する着座検出装置43と、着座検出装置43が着座していると検出している場合にモード切換部40Bにおける有効モードから無効モードへの切換を許容し且つ着座検出装置43が着座していないと検出した場合に有効モードから無効モードへの切換を許容しない切換牽制部40Dと、を備えている。これによれば、運転者が着座して、有人における自動走行であるときのみ、障害物検出装置45の検出情報に関わらず、車体3を停止することなく自動走行を行うことができる。
【0112】
農業機械1は、運転席に着座しているか否かを検出する着座検出装置43を備え、自動走行制御部40Aは、自動走行時に着座検出装置43が着座していると検出している場合は自動走行を継続し且つ、着座検出装置43が着座していないと検出した場合は自動走行を停止する。これによれば、有人の自動走行時において、運転者が運転席10から離れたときは自動的に自動走行を停止することができ、有人における自動走行の精度を向上させることができる。
【0113】
農業機械1は、障害物検出装置45が取り付けられ且つ障害物検出装置45を検出位置と退避位置とに位置変更可能な支持部材50を備え、自動走行制御部40Aは、無効モードの自動走行時に退避位置である場合は自動走行を継続し且つ、退避位置から検出位置に変化した場合は自動走行を停止する。これによれば、無効モードの自動走行中に、何らかの事情によって障害物検出装置45が退避位置から検出位置に変化してしまった場合には、自動走行を停止することができ、無効モードの自動走行において、障害物検出装置45が圃場の構造物(給排水設備)、作物等に当たりながら走行することを防止することができる。
【0114】
農業機械1は、原動機4と、原動機4の駆動のON及びOFFのいずれかの切換を行うイグニッションスイッチ42とを備え、モード切換部40Bは、イグニッションスイッチ42をOFFからONに切り換えた状態では有効モードをデフォルトとして設定し、無効モードの状態でイグニッションスイッチ42をONからOFFに切り換えた状態では有効モードに切り換える。これによれば、イグニッションスイッチ42をOFFからONに切り換えて原動機4を駆動した場合、或いは、イグニッションスイッチ42をONからOFFに切り換えて原動機4の駆動を停止した場合などは、確実に有効モードから開始することができる。
【0115】
農業機械1は、有効モード及び無効モードのいずれかであることを表示する表示装置80を備えている。これによれば、運転者に有効モードで自動走行を行っているか、無効モードで自動走行を行っているかを確実に把握させることができる。
【0116】
自動走行制御部40Aは、有効モードであるときに検知情報として障害物検出装置45が障害物を検出したことを取得した場合に、車体3を停止する。これによれば、有効モードにおける自動走行中では障害物を検出した場合は、確実に車体3を停止させることができる。
【0117】
障害物検出装置45は、無効モードであるときは障害物を検出したとしても障害物を検出したことを自動走行制御部40Aに出力しない。これによれば、障害物を検出したことを自動走行制御部40Aに出力しないようにすることによって、自動走行制御部40A側では、障害物の検出によって、車体3を停止してしまうようなことを確実に防止することができる。
【0118】
なお、無効モードでは、自動走行中において、障害物検出装置45は、障害物を検出したとしても障害物を検出したこと(検出情報)を自動走行制御部40Aに出力しない代わりに、自動走行制御部40A以外の制御装置40へ検出情報を出力し、検出情報を制御装置40へ記憶させるようにしてもよい。このような場合、障害物の検出を、車体3の停止には用いない一方で、どのようなものが障害物として検出したかを、検出情報を分析、解析することによって把握することができる。また、検出情報と車体の位置(走行位置)とを関連付けることで圃場の状態を把握することができる。
【0119】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0120】
1 :農業機械(トラクタ)
3 :車体
4 :原動機
10 :運転席
40A :自動走行制御部
40B :モード切換部
40C :切換牽制部
40D :切換牽制部
42 :イグニッションスイッチ
43 :着座検出装置
45 :障害物検出装置
50 :支持部材
80 :表示装置
H1 :圃場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図20