IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デ ノラ ホールディングス ユーエス インコーポレイテッドの特許一覧

特許7604483種々の組成を有するハロゲン水溶液を製造するためのシステム
<>
  • 特許-種々の組成を有するハロゲン水溶液を製造するためのシステム 図1
  • 特許-種々の組成を有するハロゲン水溶液を製造するためのシステム 図2
  • 特許-種々の組成を有するハロゲン水溶液を製造するためのシステム 図3
  • 特許-種々の組成を有するハロゲン水溶液を製造するためのシステム 図4
  • 特許-種々の組成を有するハロゲン水溶液を製造するためのシステム 図5
  • 特許-種々の組成を有するハロゲン水溶液を製造するためのシステム 図6
  • 特許-種々の組成を有するハロゲン水溶液を製造するためのシステム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】種々の組成を有するハロゲン水溶液を製造するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/50 20230101AFI20241216BHJP
   C02F 1/76 20230101ALI20241216BHJP
【FI】
C02F1/50 550D
C02F1/50 531P
C02F1/50 531L
C02F1/76 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022526050
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 US2020058931
(87)【国際公開番号】W WO2021092048
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】62/931,303
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522176698
【氏名又は名称】デ ノラ ホールディングス ユーエス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DE NORA HOLDINGS US,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ボール、アンドリュー
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0276222(US,A1)
【文献】特表2010-536540(JP,A)
【文献】特開2005-066386(JP,A)
【文献】特表2014-534954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/50、1/70-1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの別個のハロゲン種を有する混合ハロゲン水溶液を製造するためのシステムであって
1の貯蔵タンクであって、ハロゲン水溶液を収容するように構成され、前記ハロゲン水溶液が塩素を含まない、第1の貯蔵タンクと
記第1の貯蔵タンクの下流に配置される第1の混合タンクであって、流動妨害構造を含む第1の混合タンクと
記第1の混合タンクまで次亜塩素酸塩水溶液のストリームを移動させるための配管と、
前記次亜塩素酸塩水溶液を収容する第2の貯蔵タンクであって、前記配管が、前記次亜塩素酸塩水溶液を前記第2の貯蔵タンクから前記第1の混合タンクまで移動させるように構成され、前記第2の貯蔵タンクが前記第1の混合タンクの上流に配置される第2の貯蔵タンクと、
pH調整化学物質を貯蔵するための第3の貯蔵タンクと、
前記第1の混合タンクに送る前に、前記次亜塩素酸塩水溶液を前記pH調整化学物質と混合するためのスタティックミキサーと、
第1のセンサー群であって、前記第1の混合タンクに移動させる前にpH調整された次亜塩素酸塩水溶液のpHを測定するための少なくともpHセンサーを含む第1のセンサー群と、
前記第1の混合タンクの下流に配置された第2のセンサー群であって、前記混合ハロゲン水溶液の1つ以上のパラメータを測定するための1つ以上のセンサーを含む第2のセンサー群と、
前記第1のセンサー群及び前記第2のセンサー群に接続される制御システムであって、前記配管と前記第1の貯蔵タンクとに接続された第1のポンプ、前記配管と前記第2の貯蔵タンクとに接続された第2のポンプ、及び前記配管と前記第3の貯蔵タンクとに接続された第3のポンプをそれぞれ制御する制御システムと
を含、システム。
【請求項2】
前記流動妨害構造が1つ以上のバッフルを含み、
少なくとも2つの別個のハロゲン種を有する前記混合ハロゲン水溶液を製造するために、前記バッフルが、(a)前記次亜塩素酸塩水溶液若しくは前記pH調整された次亜塩素酸塩水溶液、及び(b)塩素を含まない前記ハロゲン水溶液の十分な混合を促進するように構成される、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記ハロゲン水溶液が臭素含有流体である、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記ハロゲン水溶液が臭素及びヨウ素を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記パラメータが、pH、酸化還元電位(ORP)、UV-Vis吸収プロファイル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
第4の貯蔵タンクをさらに含み、前記第4の貯蔵タンクは前記第2のセンサー群に流体的に接続され、前記第4の貯蔵タンクがハロゲン安定化化合物を収容するように構成される、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記混合ハロゲン水溶液及び前記ハロゲン安定化化合物を第2の混合タンクまで移動させるための配管をさらに含む、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2の混合タンクが1つ以上のバッフルを含み、少なくとも2つの別個のハロゲン種を有する安定化混合ハロゲン水溶液を製造するために、前記バッフルが、(a)前記混合ハロゲン水溶液、及び(b)前記ハロゲン安定化化合物の十分な混合を促進するように構成される、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2の混合タンクの下流に配置された第5の貯蔵タンクをさらに含み、前記安定化混合ハロゲン水溶液が前記第5の貯蔵タンクに送られる、請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御された方法でのハロゲン化物水溶液の製造に関する。特に、本発明は、少なくとも2つの水性ハロゲン種を有する種々の組成の水溶液を製造するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン水溶液は、飲料水、廃水、工業用冷却塔に使用される水、灌漑用水、並びに油及びガスの生産作業に使用される水の消毒などの多くの水処理プロセスにおいて殺生物剤として使用される。これらの用途では次亜塩素酸イオンの水溶液が最も一般的に使用されているが、安定化臭素溶液などの他の水性ハロゲン種が使用されることも多い。改善された、相補的な、若しくは相乗的な殺菌特性、又は腐食性の低下やハロゲン安定性の向上などの二次的な利点となりうる性質など、水処理プロセスにおいて多くの利点を得ることができるという点で、2つ以上の水性ハロゲン成分を有する水溶液が望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の1つ以上の実施形態は、少なくとも2つの水性ハロゲン種を有するハロゲン水溶液の制御された製造のための方法及びシステムに関する。一実施形態によると、少なくとも2つの水性ハロゲン種を有するハロゲン水溶液の製造を制御するシステムが提供される。このシステムは、初期の次亜塩素酸塩溶液、初期の次亜塩素酸塩溶液のpHを制御するための化学物質、少なくとも1つの追加のハロゲン化物イオンを供給し、希望するなら少なくとも1つのハロゲン安定化化合物を供給するように構成される1つ以上の成分を含む。このシステムは、水溶液の化学的性質及び物理的性質を監視可能な多数のセンサーを有する制御システムと、コンピュータ制御システムと、上記コンピュータ制御システムによって減衰される種々の圧送機構とをさらに含む。このシステムは、少なくとも2つの水性ハロゲン種で構成される所望の溶液の製造を最適化し、望ましくない化学種の生成を最小化にする若しくは排除するための制御システムをさらに含む。
【0004】
別の一実施形態によると、少なくとも2つの水性ハロゲン種を有するハロゲン水溶液の製造を制御する方法が提供される。この方法は、pH調整化学物質、ハロゲン化物イオン、及びハロゲン安定化化合物を逐次添加することによって、次亜塩素酸イオンの水溶液を改質することを含む。種々の化学反応の影響のために変化するときの溶液の物理的性質及び化学的性質を測定するためのセンサーが、制御システムに連結され、次にこの制御システムは、1つ以上の化学物質の投入量を制御することができる。制御システムによって、pH、特定のハロゲンの組成、ハロゲン安定化の程度、及び臭素酸イオンなどの望ましくない副生成物の生成の制限に関して所望の特性を有する溶液の製造が容易になる。
【0005】
一実施形態によると、少なくとも2つの別個のハロゲン種を有する混合ハロゲン水溶液を製造するためのシステムは、(i)塩素を含まないハロゲン水溶液を収容する第1の貯蔵タンクと;(ii)流動妨害構造を含む1つ以上の混合タンクであって、第1の混合タンクは第1の貯蔵タンクの下流に配置される混合タンクと;(iii)次亜塩素酸塩水溶液のストリームを第1の混合タンクまで移動させるための配管とを含む。流動妨害構造は1つ以上のバッフルを含むことができる。ハロゲン水溶液は臭素含有流体である。代わりに、ハロゲン水溶液は臭素及びヨウ素を含む。システムは、次亜塩素酸塩水溶液を収容するための第2の貯蔵タンクをさらに含むことができる。配管は、次亜塩素酸塩水溶液を第2の貯蔵タンクから第1の混合タンクまで移動させるように構成される。第2の貯蔵タンクは第1の混合タンクの上流に配置される。
【0006】
別の一実施形態では、システムは、次亜塩素酸塩水溶液を生成するためのその場(in situ)装置を有する。この装置は、従来の電解槽を含むことができる。配管は、この装置から次亜塩素酸塩水溶液を移動させるように構成される。この装置は、第1の混合タンクの上流に配置される。
【0007】
システムは、pH調整化学物質を収容する任意選択の第3の貯蔵タンクをさらに含むことができる。
第1の混合タンクに送る前に、次亜塩素酸塩水溶液を、pH調整化学物質と混合するためのスタティックミキサーが配置される。
【0008】
システムは、第1のセンサー群を含むことができる。第1のセンサー群は、スタティックミキサーに流体的に接続される。第1のセンサー群は、第1の混合タンクに送る前の、次亜塩素酸塩水溶液のpH、又はpH調整された次亜塩素酸塩水溶液のpHを少なくとも測定するための1つ以上のセンサーを含む。
【0009】
第1の混合タンク中、バッフルは、少なくとも2つの別個のハロゲン種を有する混合ハロゲン水溶液を製造するために、(a)次亜塩素酸塩水溶液、又はpH調整された次亜塩素酸塩水溶液と、(b)塩素を含まないハロゲン水溶液との十分な混合が促進されるように構成される。
【0010】
システムは、第1の混合タンクの下流に配置される第2のセンサー群をさらに含む。第2のセンサー群は、混合ハロゲン水溶液の1つ以上のパラメータを測定するための1つ以上のセンサーを含む。これらのパラメータは、pH、酸化還元電位(ORP)、UV-Vis吸収プロファイル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0011】
システムは、第4の貯蔵タンクをさらに含む。第4の貯蔵タンクは、第2のセンサー群に流体的に接続される。第4の貯蔵タンクは、ハロゲン安定化化合物を収容するように構成される。
【0012】
配管手段によって、混合ハロゲン水溶液及びハロゲン安定化化合物を第2の混合タンクまで移動させる。第2の混合タンクは、1つ以上のバッフルを含む。これらのバッフルは、少なくとも2つの別個のハロゲン種を有する安定化混合ハロゲン水溶液を製造するために、(a)混合ハロゲン水溶液と、(b)ハロゲン安定化化合物との十分な混合が促進されるように構成される。
【0013】
第2の混合タンクの下流には第5の貯蔵タンクが配置される。安定化混合ハロゲン水溶液が第5の貯蔵タンクに送られる。
別の一実施形態によると、少なくとも2つの別個のハロゲン種を有する混合ハロゲン水溶液の製造方法は、次亜塩素酸塩水溶液のストリームを第1の混合タンクに圧送するステップと;ハロゲン水溶液を第1の混合タンクに圧送するステップであって、ハロゲン水溶液が塩素を含まないステップと;少なくとも2つの別個のハロゲン種を有する混合ハロゲン水溶液を製造するために、第1の混合タンク内での次亜塩素酸塩水溶液と塩素を含まないハロゲン水溶液との十分な混合を促進するステップとを含む。
【0014】
この方法は、(i)第1の混合タンクに送る前の次亜塩素酸塩水溶液の少なくともpHと;(ii)混合ハロゲン水溶液の1つ以上のパラメータとを測定するステップをさらに含み、これらのパラメータは、pH、酸化還元電位(ORP)、UV-Vis吸収プロファイル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
これらの測定値は、次亜塩素酸塩水溶液の第1の混合タンクへの流量を制御するために処理される。これらの測定値は、次亜塩素酸塩水溶液及びハロゲン水溶液の少なくとも一方の圧送速度を制御して、第1の混合タンク内の次亜塩素酸イオンと非塩化物のハロゲン化物イオンとの間の反応を制御するために使用することもできる。
【0016】
本発明の目的、利点、及び新規な特徴、並びにさらなる適用範囲は、部分的には、添付の図面とともに以下の詳細な説明に記載されるであろうし、部分的には、以下の実験によって当業者には明らかとなるであろうし、又は本発明の実施によって知ることができる。本発明の目的及び利点は、特に以下の説明に示される手段及び組み合わせによって実現及び達成が可能である。
【0017】
本明細書に組み込まれ本明細書の一部を形成する添付の図面は、本発明の幾つかの実施形態を示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。図面は、単に本発明の好ましい一実施形態を示すことを目的としており、本発明を限定するものとして解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、混合ハロゲン水溶液を製造するためのシステムの一実施形態を示している。
図2図2は、安定化混合ハロゲン水溶液を製造するためのシステムの一実施形態を示している。
図3図3は、初期ハロゲン源として電気分解システムによって生成した次亜塩素酸ナトリウムを用いた混合ハロゲン水溶液を製造するためのシステムの一実施形態を示している。
図4図4は、初期ハロゲン源として電気分解システムによって生成した次亜塩素酸ナトリウムを用いた安定化混合ハロゲン水溶液を製造するためのシステムの一実施形態を示している。
図5図5は、UVセンサーシステムの一実施形態を示している。
図6図6は、pH調整された混合ハロゲン化物ブラインを電気分解して水性遊離ハロゲンの混合物を生成し、次にこれをハロゲン安定化化合物と反応させる電気分解プロセスを用いて安定化混合ハロゲン水溶液を製造するためのシステムの一実施形態を示している。
図7図7は、実施例2に記載のように調製したハロゲン水溶液の紫外-可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態、及び本発明の実施は、2つ以上の水性ハロゲン種の間のあらゆる所望の比率で少なくとも2つ以上の異なる水性ハロゲン種を有する水溶液を製造することが意図される。本発明の範囲内で、「水性ハロゲン種」という用語は、溶解したハロゲン(分子塩素、分子臭素、及び分子ヨウ素)、次亜ハロゲン酸(次亜塩素酸、次亜臭素酸、及び次亜ヨウ素酸)、次亜ハロゲン酸イオン(次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、及び次亜ヨウ素酸塩)、及びハロアミン種(窒素原子が、少なくとも1つのハロゲン原子に対する少なくとも1つの化学結合を含む、少なくとも1つの窒素原子を有するあらゆる化合物)を含む。
【0020】
次亜塩素酸イオンによる臭化物イオン及びヨウ化物イオンの酸化は、当技術分野においてよく知られており、以下の式により進行する。
ClO+Br→BrO+Cl
ClO+I→IO+Cl
示されるように、次亜塩素酸イオン(ClO)は、臭化物イオン(Br)を酸化させて次亜臭素酸イオン(BrO)を生成するか、又はヨウ化物イオン(I)を酸化させて次亜ヨウ素酸イオン(IO)を生成するかのいずれかであり、両方の場合で次亜塩素酸イオンは還元されて塩化物イオン(Cl)となる。
【0021】
実際には、水性ハロゲン、特に水性臭素及びヨウ素は、水性ハロゲンをハロゲン安定化化合物と混合することによって安定化する。本明細書において使用される場合、「ハロゲン安定化化合物」という用語は、少なくとも1つの窒素原子を含み、少なくとも1つの窒素と水素との結合を含む有機又は無機のアミン化合物を含んでいる。水性ハロゲンとハロゲン安定化化合物とが混ぜ合わされると、水性ハロゲンがハロゲン安定化化合物と反応して、窒素と水素との結合が窒素とハロゲンとの結合に変換され、効果的にN-ハロアミン化合物が生成される。ハロゲン安定化化合物としては、スルファミン酸、スルファミン酸塩、ヒダントイン、5,5-ジメチルヒダントイン、タウリン、及びシアヌル酸を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本発明の実施において、初期の次亜塩素酸イオン、追加のハロゲン化物イオン、及びハロゲン安定化化合物の間の反応が、溶液のpH、酸化還元電位(ORP)、並びに紫外及び可視(UV-Vis吸収プロファイル)範囲の波長(本明細書においては、この波長範囲は200~800nmの間である)における溶液の吸収プロファイルの変化などの溶液の物理的性質及び科学的性質に影響を与えることが示されている。1つ以上の実施形態によると、これらの変化は、全体的なプロセスとプロセスによって製造される溶液との両方を制御するための機構を見出すために測定することができる(例えば、センサーを使用)。これは、プロセスに使用されるすべての化学物質を最適に利用し、臭素酸イオン(BrO )などのあらゆる望ましくない化学種の望ましくない生成を回避するために望ましい。
【0023】
図1は、混合ハロゲン水溶液の制御された製造のためのシステム100の概略図を示している。新しい水がパイプ2によってシステム100に送られる。本明細書において使用される場合、「パイプ」という用語は、流体及び溶液を運ぶための管又はラインを意味する。タンク4は、次亜塩素酸塩水溶液を収容し、この溶液はポンプ6の作用によってパイプ2中に注入される。好ましくは、タンク4内に収容される次亜塩素酸塩水溶液は、電気化学的に生成され、希釈されたストリーム中の次亜塩素酸イオンの濃度は約3,000mg/L以下である。一実施形態では、タンク4内に収容される次亜塩素酸塩水溶液は、次亜塩素酸ナトリウムを含むことができる。しかし、主として少なくとも1つの次亜塩素酸塩含有化合物で構成されるあらゆる溶液をここで使用できることは理解されよう。
【0024】
一実施形態では、この段階で溶液のpHを調整することができる。例えば、タンク8は、水中に溶解させた少なくとも1つのpH調整化学物質を有する溶液を収容することができ、この溶液は、ポンプ10の作用によってパイプ2中の次亜塩素酸塩水溶液と混ぜ合わせることができる。一実施形態によると、タンク8内に収容される溶液は、水中に溶解させた水酸化ナトリウムを含むことができる。しかし、次亜塩素酸イオン含有溶液のpHを所望のpHに調整可能なあらゆるpH調整化学物質を使用できることは理解されよう。1つ以上の実施形態では、pH調整化学物質によって、次亜塩素酸塩溶液のpHを10~12の間に調整することができる。別の一実施形態では、次亜塩素酸塩溶液のpHを10.5~11.5の間に調整することができる。
【0025】
結果として希釈された次亜塩素酸塩溶液は、次にスタティックミキサー12に通され、ここで完全に混合される。これは次に第1のセンサー群14に通される。一実施形態によると、センサー群14は、希釈された次亜塩素酸塩溶液のpHを少なくとも測定するように構成される。しかし、センサー群14は、他の溶液パラメータを測定するように構成できることは理解されよう。
【0026】
タンク16は、少なくとも1つのハロゲン化物イオンを有するハロゲン化物水溶液を収容する。ハロゲン化物水溶液は、ポンプ18の作用によってパイプ2中に注入される。一実施形態によると、タンク16内に収容されるハロゲン化物水溶液は、水中に溶解させた臭化ナトリウム又はヨウ化ナトリウムのいずれかであってよい。しかし、これら2つの化合物の組み合わせ、又は限定するものではないが臭化第4級アンモニウム及びヨウ化第4級アンモニウム化合物などの少なくとも1つの臭化物イオン成分又はヨウ化物イオン成分を有する少なくとも1つの化合物を含有するあらゆる溶液を使用できることは理解されよう。
【0027】
混ぜ合わされたハロゲン溶液は、混合タンク20内に送ることができる。1つ以上の実施形態では、混合タンク20は流動妨害構造を含むことができる。一実施形態では、流動妨害構造は一連のバッフル22である。バッフル22は、ポリ塩化ビニル、又はシステム中で形成される混ぜ合わされたハロゲン溶液に適合するあらゆる他の適切な材料などの材料で構成することができる。バッフル22は、所望の混合時間を得るために、タンク20を通過する混ぜ合わされたハロゲン溶液の流れを妨害するように設計される。1つ以上の実施形態では、タンク20を流出する溶液が十分に混合されるように、タンクを通過する混ぜ合わされたハロゲン溶液の流れを妨害する又は遅くすることができる、板又はその他の従来構造をバッフル22は含むことができる。この混合時間によって、タンク4からの次亜塩素酸イオンと、タンク16からの少なくとも1つのハロゲン化物イオンとの間で生じるであろう化学反応を完了できることが望ましい。混合時間は1分~10分の間であってよい。
【0028】
十分に反応/混合された溶液は、次にパイプ24に沿ってタンク20を出て、第2のセンサー群26を通過し、タンク28内に移動する。一実施形態によると、第2のセンサー群26は、希釈された混合ハロゲン溶液のpH、ORP、又はUV-Vis吸収プロファイルを少なくとも測定するように構成することができる。しかし、第2のセンサー群26は、他の溶液パラメータを測定するように構成することができる。混合ハロゲン溶液は、ポンプ32の作用によってパイプ30に沿ってタンク28を出て、パイプ34中に送られる。パイプ34は、混合ハロゲン溶液を使用場所(図示せず)に送出するように構成することができる。当業者は認識できるように、使用場所は、水処理プロセスの詳細によって変化しうる。1つ以上の実施形態では、これは、冷却塔のベイスン、スイミングプールの再循環ラインなどを含むことができる。
【0029】
混合ハロゲン溶液の組成は、タンク4からの次亜塩素酸イオンと、タンク8からのpH調整化学物質と、タンク16からの少なくとも1つのハロゲン化物イオンとの間で生じる化学反応を制御することによって調節することができる。第1のセンサー群14及び第2のセンサー群26は、制御システム(図示せず)に接続することができる。制御システムは、(i)パイプ2中への水の流量;並びに(ii)ポンプ6、10、及び18のポンプ速度などの1つ以上の特徴を制御することができる。流量を制御することによって、システム100中に加えられる化学物質の相対量が効率的に制御され、それによって、所望の組成の溶液を製造するための正確な量の臭化ナトリウムを加えることが可能となる。制御システムによって、特定の相対濃度の水性ハロゲン種を有する混合水性ハロゲンの溶液の製造が容易になりうる。
【0030】
或いは、別の一実施形態では、非塩化物のハロゲン化物イオンとハロゲン安定化化合物との両方を、次亜塩素酸ナトリウムを含有するストリームに同時に導入することができる。例えば、タンク16は、少なくとも1つの非塩化物のハロゲン化物イオンと、少なくとも1つのハロゲン安定化化合物との両方を有する溶液を収容することができ、これらはパイプ2中に存在する次亜塩素酸ナトリウムストリーム中に注入される。少なくとも1つの非塩化物のハロゲン化物イオンと、少なくとも1つのハロゲン安定化化合物との両方を次亜塩素酸塩ストリームに同時に加えることで、所望の混合ハロゲン溶液の製造の簡略化などのプロセスの利点を得ることができる。例えば、2つの投入量の独立した制御が必要となる代わりに、1つ以上の実施形態によると、非塩化物のハロゲン化物溶液とハロゲン安定剤との組み合わせの注入では、1回のみの注入の制御が必要となる。また、これによって、2つの代わりに1つの消耗品を有することによって本発明の実施中のロジスティックスを簡略化することができ、コストを低下させることもできる。
【0031】
図1に関する上記議論の詳細の多くは、図2図4中に示される他の実施形態に適用される。例えば、図2図4中、同様の番号は、同様の要素を意味し、同じ機能を行うために使用される。したがって、簡潔にするため、以下の説明は、図1において議論される本発明の実施形態と、図2図4に関して以下に議論される本発明の概念の実施形態との間の相違点に重点を置いている。
【0032】
図2は、水性ハロゲンの安定化混合物を製造するために構成されたシステム200の別の一実施形態を示している。図1中に示されるように、混ぜ合わされて十分に混合されたハロゲン溶液は、パイプ24によって送られ、第2のセンサー群26を通過する。タンク66は、少なくとも1つのハロゲン安定化化合物の水溶液を収容し、この水溶液はポンプ68の作用によってパイプ24中に注入される。少なくとも1つのハロゲン安定化化合物の水溶液は、水中に溶解させたスルファミン酸ナトリウムを含むことができる。しかし、限定するものではないが、スルファミン酸、スルファミン酸カリウム、タウリン、グリシン、ヒダントイン、5,5-ジメチルヒダントイン、シアヌル酸、又はそれらのあらゆる組み合わせなどのあらゆる他のハロゲン安定化化合物を、本発明の1つ以上の実施形態により用いることができる。混合ハロゲン水溶液とハロゲン安定化化合物との混ぜ合わされた溶液は、次に第2の混合タンク70内に移動する。第2の混合タンク70は、(混合タンク22に類似の)一連のバッフル72を含む。バッフル72は、タンク70を通過する混ぜ合わされた溶液の流れを調節して所望の混合時間が得られるように構成される。この混合時間によって、混合ハロゲン水溶液とタンク66から導入されるハロゲン安定化化合物との間で生じるであろう化学反応を完了できることが望ましい。
【0033】
十分に反応/混合された溶液は、次にパイプ74に沿ってタンク70を出て、溶液は第3のセンサー群76を通過する。一実施形態によると、第3のセンサー群76は、希釈された次亜塩素酸塩溶液のpH、ORP、又はUV-Vis吸収プロファイルを少なくとも測定するように構成することができる。しかし、第3のセンサー群76は、他の溶液パラメータを測定するように構成することもできる。安定化溶液は、次にタンク78内に移動し、ここをポンプ82の作用によってパイプ80に沿ってパイプ84まで排出されることができ、そこから使用場所(図示せず)まで送出される。
【0034】
第1、第2、及び第3のセンサー群14、26、及び76からの遠隔測定データは、制御システムに接続することができる。制御システムは、(i)パイプ2中への水の流れ;並びに(ii)ポンプ6、10、18、68、及び82のポンプ速度を制御することができる。したがって、システム200は、タンク4からの次亜塩素酸イオンと、タンク8からのpH調整化学物質と、タンク16からの少なくとも1つのハロゲン化物イオンと、タンク66内の少なくとも1つのハロゲン安定化化合物との間で生じる化学反応を場合により制御するように構成される。制御システムによって、特定の相対濃度の水性ハロゲン種と、上記水性ハロゲン種の安定化程度とを有する混合水性ハロゲンの安定化溶液の製造が促進される。流量を制御することによって、システム200中に加えられる化学物質の相対量が効率的に制御され、それによって、所望の組成の安定化溶液を製造するための正確な量の次亜塩素酸イオン、臭化ナトリウム、及びスルファミン酸(又は他のハロゲン安定剤)を加えることが可能となる。すなわち、使用場所に送られる前に最終生成物/溶液が所望のFAC量及び遊離残留臭素FAB量を有するように、混ぜ合わされる次亜塩素酸塩、臭化物(又は非塩化物のハロゲン化物)、及びスルファミン酸(又は他のハロゲン安定剤)の量を変化させることによって、溶液の組成が自動的にリアルタイムで調節される。
【0035】
図3は、混合ハロゲン溶液を製造するためのシステム300の別の一実施形態を示しており、次亜塩素酸イオンを得るために電解槽又は電気分解システムを使用することができる。示されるように、システム300は、次亜塩素酸イオンストリームを生成するための現場(on-site)/その場(in situ)電気分解システム/次亜塩素酸塩生成システム90を含む。図1中に示される実施形態とは異なり、図3中に示される実施形態300を用いると、電気分解システム90を用いて安定化次亜塩素酸塩の溶液を直接製造することができる。システム300は、少なくとも1つの塩化物含有塩、好ましくは塩化ナトリウムと、少なくとも1つのハロゲン安定化化合物、好ましくはスルファミン酸とのブライン溶液の電気分解に関与する。このブラインが電気分解されると、安定化ハロゲン溶液が生成され、次にこれは、電気分解システム90の下流の溶液に導入される臭化物イオン又はヨウ化物イオンとさらに反応させることができる。
【0036】
一実施形態によると、次亜塩素酸イオン濃度は約3,000mg/L以下である。残りの要素及びプロセスは、図1中に示される通りであるため、簡潔にするため本明細書では繰り返さない。
【0037】
或いは、この実施形態は、非塩化物のハロゲン化物イオンとハロゲン安定化化合物との両方を同時に、次亜塩素酸ナトリウムで構成されるストリームに導入するために用いることができる。例えば、タンク16は、少なくとも1つの非塩化物のハロゲン化物イオンと、少なくとも1つのハロゲン安定化化合物との両方を含有する溶液を収容することができ、次にこの溶液を、電気分解システム90によって製造した次亜塩素酸ナトリウム溶液中に注入することができる。少なくとも1つの非塩化物のハロゲン化物イオンと少なくとも1つのハロゲン安定化化合物との両方を同時に次亜塩素酸塩ストリームに加えることで、所望の混合ハロゲン溶液の製造が簡略化されるなどのプロセスの利点を得ることができた。
【0038】
図4は、安定化混合ハロゲン溶液を製造するためのシステム400の一実施形態を示しており、次亜塩素酸イオンを得るために現場電気分解システムを使用することができる。この実施形態では、その場次亜塩素酸塩生成システム90によって、好ましくは約3,000mg/L以下の次亜塩素酸イオン濃度を有する水性次亜塩素酸イオンストリームが得られる。システム400中に示されるように、現場次亜塩素酸塩生成システム90としては、少なくとも1つのハロゲン化物含有塩を有する水性ブラインの電気分解によって少なくとも1つの次亜塩素酸塩種を含有する酸化剤溶液が得られるように構成されたあらゆる従来の電気化学セルが挙げられる。このプロセスに用いられるハロゲン化物含有塩は塩化ナトリウムであるが、少なくとも1つの塩化物イオン成分を含有するあらゆる塩を使用することができる。残りのプロセス及び要素は、図2中に示される通りであるため、簡潔にするため本明細書では繰り返さない。
【0039】
本発明の1つ以上の実施形態では、内部バッフルを有する混合タンクは、ハロゲン水溶液の徹底的な混合と、あらゆる所望の化学反応を生じさせるのに十分な時間との両方を得ることが意図される。混合ループ又はインラインミキサーなどの他の同等の物理的構造を、本明細書に記載のバッフルと同じ目的に使用できることは、当業者には明らかとなるであろう。
【0040】
本発明の1つ以上の実施形態では、センサー群は、所望の成果の実現を保証するためにプロセスのすべての側面を制御するための遠隔測定データを提供する。例えば、この望ましい成果は、少なくとも2つのハロゲン種を有し、これらのハロゲン種の化学安定性を示す又は示さない水溶液の製造であってよい。1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のセンサー群による遠隔測定データは、制御システムに自動的に伝送される。制御システムは、臭素対塩素の比及び/又は安定化ハロゲン対遊離ハロゲンの比などの、溶液の組成を調節するために溶液の1つ以上の特性の監視及び分析を行う。特性としては、水溶液のpH、温度、酸化剤濃度、酸化/還元電位(ORP)、及び紫外吸光度プロファイルを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。制御システムは、プロセスに使用される種々の化学物質の(i)流量;及び/又は(ii)注入速度などの機能的側面を調節することによって、例えば混ぜ合わされる次亜塩素酸イオン、臭化物(又は他の非塩素のハロゲン化物)イオン、及びスルファミン酸(又は他のハロゲン安定剤)の量を変化させることによって、溶液の組成を自動的にリアルタイムで調節するように構成することができる。これらの側面を制御することによって、使用場所に送られる前に最終生成物/溶液が、所望の遊離残留塩素(free available chlorine)(FAC)量及び遊離残留臭素(free available bromine)(FAB)量を有することを保証できる。例えば、センサー群によって得られる遠隔測定データは、直接的又は間接的のいずれかで、存在するハロゲンの種類に関する溶液の組成、及び安定化の程度に関する情報を得るために用いることができる。
【0041】
例えば、センサーは、1つ以上の実施形態において製造されるハロゲン水溶液のUV-Vis吸収プロファイルの測定に使用することができる。種々の水性ハロゲン種は異なるUV-Vis吸収プロファイルを有するので、このセンサーからの遠隔測定データは、溶液中に存在する水性ハロゲン及び安定化水性ハロゲンの相対濃度を求めるために用いることができる。例えば、図7中に示されるように、2つのピークの相対強度を用いて、製造された溶液中の臭素及び塩素の両方の量を求めることができる。センサーは、生成物溶液の吸収プロファイルを測定して、それを制御システムに伝送する。制御システムは、プロセッサ及びメモリを含むことができる。プロセッサは、吸収プロファイルを所望の生成物溶液の組成に関するあらかじめ決定されたデータと関連付けるために、メモリ内にロードされたソフトウェアを処理するように構成される。1つ以上の実施形態では、測定されたpH又はORPは、所望の生成物溶液の組成に関するあらかじめ決定されたデータと関連付けることができる。次にこのデータは、例えば最終生成物溶液中にどの程度の量の臭素が望ましいかによって、より多いか又はより少ないかのいずれかの臭化物を注入するために、制御システムによって使用することができる。
【0042】
1つ以上の実施形態を用いて測定可能な水性ハロゲン種及び安定化水性ハロゲン種としては、溶解分子塩素、溶解分子臭素、溶解分子ヨウ素、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、次亜塩素酸イオン、次亜臭素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、N-クロロスルファメート、N-ブロモスルファメート、N-ヨードスルファメート、N-クロロスルファミン酸、N-ブロモスルファミン酸、N-ヨードスルファミン酸、N-クロロタウリン、N-ブロモタウリン、N-ヨードタウリン、N,N-ジクロロタウリン、N,N-ジブロモタウリン、N,N-ジヨードタウリン、N-ブロモ-N-クロロタウリン、N-ブロモ-N-ヨードタウリン、N-クロロ-N-ヨードタウリン、1-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1-ブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、1-ヨード-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン、1-クロロ-3-ブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、1-クロロ-3-ヨード-5,5-ジメチルヒダントイン、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1-ブロモ-3-ヨード-5,5-ジメチルヒダントイン、1-ヨード-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1-ヨード-3-ブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
本発明の別の一実施形態が図5中に示される。この実施形態は、混合ハロゲン溶液の組成を特徴づけるためにUV-Vis分光法を使用できるようにするために最終生成物ストリームを希釈する方法を開示している。示されるように、パイプ180は、分析すべき溶液の全体/主要な流れを運ぶ。バルブ182は、パイプ180中の全流量の好ましくは1%以下の流量の小さい副流に分流するように構成される。1つ以上の実施形態では、全流量の約0.1%~約1%である。この主流の副流は、パイプ184に沿って、分析のための分析器186中に送られる。パイプ188に沿って希釈水が運ばれ、そこでタンク190内に収容される水酸化ナトリウムなどのpH調整化学物質と混ぜ合わされる。溶液のpHは、水性ハロゲンの吸収スペクトルに影響を与える。したがって、希釈された溶液のpHが、分析される溶液のスペクトルプロファイルの測定を妨害する値まで低下しないように、溶液のpHが制御される。1つ以上の実施形態では、このpHは10を超えることができ、好ましくは11を超えることができる。希釈された溶液は、ポンプ192の作用によってパイプ188中に注入された後に、分析器186に入る。希釈水のpHが分析される溶液のpHに一致するように、pH調整化学物質が加えられる。分析器186内では、希釈された溶液中に含まれる全酸化剤が50~250mg/Lの間の濃度となるように、パイプ184及び188からの流れが混ぜ合わされる。混ぜ合わされた流れは、次に、200~800nmの範囲内の溶液の吸光度を測定するように構成された紫外センサーに通される。混ぜ合わされた流れは、次にパイプ194に沿って分析器186を出てバルブ196中に入り、そこで溶液は、ライン180からの元の全体の流れと混ぜ合わされる。
【0044】
1つ以上の実施形態において使用される制御システムは、種々の化学反応の望ましくない副生成物の形成をさらに防止するように構成される。例えば、次亜塩素酸イオンと臭化物イオンとの間の反応によって、ある反応条件下、特にこの反応が約10未満のpHで行われる場合に、臭素酸イオン(BrO )が生成しうることが知られている。したがって、本実施形態において用いられるセンサー群の機能の1つは、追加のハロゲン化物イオンを導入する前に、次亜塩素酸イオン溶液のpHが10を超えるように調整することである。
【0045】
図6は、混合遊離ハロゲンを有する溶液を製造するための電気分解プロセスを有するシステム600の一実施形態を示しており、これらのハロゲンは後にハロゲン安定化化合物を加えることによって安定化される。この実施形態では、パイプ201は、ポンプ手段(図示せず)によってシステム600に水を送り出すために用いられる。タンク202は、水中に溶解した少なくとも1つのハロゲン化物イオン含有塩を有する溶液を収容する。一実施形態によると、水中に溶解した少なくとも1つのハロゲン化物イオン含有塩は塩化ナトリウムである。しかし、ハロゲン化物イオンを含有するあらゆる塩をこの実施形態又は他の実施形態において場合により使用可能なことは理解されよう。ポンプ204は、タンク202内に収容される溶液をパイプ201に移動させるために用いられる。
【0046】
タンク206は、第2のあるハロゲン化物イオン含有塩で構成される溶液を収容し、このハロゲン化物イオンは、タンク202内の水に溶解させた塩のハロゲン化物イオンとは異なる。一実施形態によると、タンク206内の水中に溶解させた第2のハロゲン化物イオン含有塩は臭化ナトリウムであるが、タンク202内の水中に溶解させた塩のハロゲン化物イオンとは異なるあらゆるハロゲン化物イオン含有塩を、この実施形態に場合により用いることができる。ポンプ208は、タンク206内に収容される溶液をパイプ200に移動させるために用いられる。
【0047】
一実施形態では、この段階で溶液のpHを調整することができる。例えば、タンク210は、水中に溶解した少なくとも1つのpH調整化学物質を有する溶液を収容する。一実施形態によると、タンク210内の水に溶解したpH調整化学物質は水酸化ナトリウムである。しかし、水溶液のpHを調整可能なあらゆる化学物質をこの実施形態により用いることができることは理解されよう。ポンプ212は、タンク210内に収容される溶液をパイプ201に移動させるために用いられる。混ぜ合わされた溶液は次に、インラインスタティックミキサー214に通され、センサー群216を通過し、電気分解システム218中に送られる。
【0048】
一実施形態によると、センサー群216は、希釈された次亜塩素酸塩溶液のpHを少なくとも測定するように構成される。しかし、センサー群216は、他の溶液パラメータを測定するように構成することができる。センサー群216によって、パイプ200中に含まれる混合ハロゲン化物ブラインが所望のpHになるように保証することができ、センサー群216からの遠隔測定データは、制御システム(図示せず)に送られ、この制御システムは、ポンプ212を用いてタンク210からライン200に注入されるpH調整化学物質の量を変化させるように構成される。
【0049】
電気分解システム218は、混合水性ハロゲンを有する溶液を製造するために混合ハロゲン化物イオンブラインを電気分解できる電解槽(図示せず)を含む。この溶液は、パイプ220に沿って電気分解システム218を出て、第2のセンサー群220を通過する。一実施形態によると、センサー群220は、希釈された次亜塩素酸塩溶液のpH、ORP、又はUV-Vis吸収プロファイルを少なくとも測定するように構成される。しかし、センサー群220は他の溶液パラメータを測定するように構成することができる。
【0050】
タンク224は、水中に溶解した少なくとも1つのハロゲン安定化化合物を有する溶液を収容する。一実施形態によると、タンク202内の水中に溶解した少なくとも1つのハロゲン安定化化合物はスルファミン酸であるが、あらゆるハロゲン安定化化合物、又はそれらの混合物を用いることができる。ポンプ226を用いて、タンク224内に収容される溶液をパイプ220に移動させることができる。混ぜ合わされた溶液は、次に、一連のバッフル230を含む混合タンク228内に移動する。バッフル230は、所望の混合時間を得るためにタンクを通過する溶液の流れを調節するように構成される。この混合時間は、混合ハロゲン水溶液と、タンク224から導入されるハロゲン安定化化合物との間で生じる化学反応を完了させることが可能なことが望ましい。
【0051】
十分に反応した溶液は、次にタンク228を出て、その溶液は第3のセンサー群232を通過する。一実施形態によると、センサー群232は、希釈された次亜塩素酸塩溶液のpH、ORP、又はUV-Vis吸収プロファイルを少なくとも測定するように構成される。しかし、センサー群232は、他の溶液パラメータを測定するように構成することもできる。
【0052】
センサー群232によって得られる遠隔測定データは、好ましくは、所望の安定化ハロゲン溶液の形成が実現されたことを保証するために溶液の性質を測定するために用いられる。センサー群232からの遠隔測定データは、安定化ハロゲン溶液が実現されたことを保証するために、タンク224内に収容されるハロゲン安定化化合物溶液の流量及び注入速度などのシステムの側面を制御するために、本明細書には特に示されない制御システムによってさらに用いられる。次に溶液はタンク234内まで移動され、溶液は次にポンプ238の作用によってライン236に沿って出てライン240まで移動し、ここから溶液は使用場所まで送出される。
【実施例
【0053】
種々の実施例を以下に示す。これらの実施例におけるデータによって、ORP及びpHなどの測定され監視された溶液の特性と、臭素及び塩素並びに安定化された及び安定化されていないハロゲンに関する溶液の組成との間の相関が得られる。
【0054】
実施例1
塩化ナトリウムブラインの電気分解により現場(on-site)次亜塩素酸塩生成システムを用いて次亜塩素酸ナトリウム溶液を調製して、3450mg/Lの遊離残留塩素(FAC)濃度、8.94のpH、及び813mVの酸化還元電位(ORP)を有する溶液を得た。この溶液の4つの200mLの試料を調製し、0.1g、0.2g、0.4g、及び2.0gの臭化ナトリウムと反応させて、一連の混合ハロゲン溶液を製造した。各溶液のpH、ORP、FAC量、及び遊離残留臭素(FAB)量を測定し、以下の表中に報告する。
【0055】
【表1】
実施例2
塩化ナトリウムブラインの電気分解により現場(on-site)生成システムを用いて次亜塩素酸ナトリウム溶液を調製した。電気分解後、水酸化ナトリウムを加えることによって溶液のpHを11.16に調整して、3375mg/LのFAC濃度及び427mVのORPを有する溶液を得た。この溶液の4つの200mLの試料を調製し、0.098g、0.2g、0.398g、及び1.98gの臭化ナトリウムと反応させて、一連の混合ハロゲン溶液を製造した。各溶液のpH、ORP、FAC量、及びFAB量を測定し、以下の表中に報告する。初期の次亜塩素酸ナトリウム溶液、及び生成物溶液を、95~105mg/LのFAC濃度まで脱イオン水で希釈し、次に得られた溶液の紫外-可視(UV-Vis)吸収スペクトルを記録した。225~450nmの波長範囲におけるこれらのスペクトルの変化を示すグラフを図7中に示す。
【0056】
【表2】
実施例3
FAC濃度が3800mg/Lの塩素水溶液を電気分解によって調製した。この溶液のORP値を測定すると795mVであり、pHは9.04であった。この溶液の3つの200mLの試料を調製し、0.3g、1.3g、及び2.6gのスルファミン酸ナトリウムと反応させて、スルファメート安定化ハロゲン溶液を製造した。各溶液のpH、ORP、FAC量、FAB量、及び全塩素(TC)量を測定し、以下の表中に報告する。
【0057】
【表3】
実施例4
0.76gの臭化ナトリウムを、電気分解によって調製したFAC濃度が3800mg/Lの塩素水溶液700mLに加えることによって、水性塩素及び水性臭素で構成される混合ハロゲン水溶液を調製した。この溶液のORP値を測定すると796mVであり、pHは9.26であった。この溶液の3つの200mLの試料を調製し、0.3g、1.3g、及び2.6gのスルファミン酸ナトリウムと反応させて、スルファメート安定化ハロゲン溶液を製造した。各溶液のpH、ORP、FAC量、FAB量、及び全塩素(TC)量を測定し、以下の表中に報告する。
【0058】
【表4】
実施例5
7.6gの臭化ナトリウムを、電気分解によって調製したFAC濃度が3800mg/Lの塩素水溶液700mLに加えることによって、水性塩素及び水性臭素で構成される混合ハロゲン水溶液を調製した。この溶液のORP値を測定すると786mVであり、pHは9.68であった。この溶液の3つの200mLの試料を調製し、0.3g、1.3g、及び2.6gのスルファミン酸ナトリウムと反応させて、スルファメート安定化ハロゲン溶液を製造した。各溶液のpH、ORP、FAC量、FAB量、及び全塩素(TC)量を測定し、以下の表中に報告する。
【0059】
【表5】
実施例6
FAC濃度が3600mg/Lの塩素水溶液を電気分解によって調製し、pHを10.98に調製し、結果として得られる溶液は585mVのORP値を有した。この溶液の3つの200mLの試料を調製し、0.25g、1.3g、及び2.5gのスルファミン酸ナトリウムと反応させて、スルファメート安定化ハロゲン溶液を製造した。各溶液のpH、ORP、FAC量、FAB量、及び全塩素(TC)量を測定し、以下の表中に報告する。
【0060】
【表6】
実施例7
0.72gの臭化ナトリウムを、電気分解によって調製したFAC濃度が3600mg/Lの塩素水溶液700mLに加えることによって、水性塩素及び水性臭素で構成される混合ハロゲン水溶液を調製した。次亜塩素酸塩と臭化物との間の反応を完了するまで進行させ、次に混合ハロゲン溶液のpHを10.85に調整した。この溶液は649mVのORP値を有した。この溶液の3つの200mLの試料を調製し、0.25g、1.3g、及び2.5gのスルファミン酸ナトリウムと反応させて、スルファメート安定化ハロゲン溶液を製造した。各溶液のpH、ORP、FAC量、FAB量、及び全塩素(TC)量を測定し、以下の表中に報告する。
【0061】
【表7】
実施例8
7.2gの臭化ナトリウムを、電気分解によって調製したFAC濃度が3600mg/Lの塩素水溶液700mLに加えることによって、水性塩素及び水性臭素で構成される混合ハロゲン水溶液を調製した。次亜塩素酸塩と臭化物との間の反応を完了するまで進行させ、次に混合ハロゲン溶液のpHを10.83に調整した。この溶液は657mVのORP値を有した。この溶液の3つの200mLの試料を調製し、0.25g、1.3g、及び2.5gのスルファミン酸ナトリウムと反応させて、スルファメート安定化ハロゲン溶液を製造した。各溶液のpH、ORP、FAC量、FAB量、及び全塩素(TC)量を測定し、以下の表中に報告する。
【0062】
【表8】
実施例9
50g/Lの濃度のスルファミン酸を含有する飽和塩化ナトリウムブラインの電気分解によって、次亜塩素酸ナトリウム及びN-クロロスルファメート種で構成される混合ハロゲン水溶液を調製した。この混合ハロゲン溶液のpHは11.15であることが分かり、TC濃度は2475mg/Lであった。この溶液の4つの200mLの試料を調製し、0.101g、0.205g、0.410g、及び2.043gの臭化ナトリウムと反応させて、一連の混合ハロゲン溶液を製造した。各溶液のpH、FAC量、及びFAB量を測定し、以下の表中に報告する。
【0063】
【表9】
実施例10
100g/Lの濃度のスルファミン酸を含有する飽和塩化ナトリウムブラインの電気分解によって、次亜塩素酸ナトリウム及びN-クロロスルファメート種で構成される混合ハロゲン水溶液を調製した。この混合ハロゲン溶液のpHは11.03であることが分かり、TC濃度は3725mg/Lであった。この溶液の4つの200mLの試料を調製し、0.116g、0.235g、0.469g、及び2.337gの臭化ナトリウムと反応させて、一連の混合ハロゲン溶液を製造した。各溶液のpH、FAC量、及びFAB量を測定し、以下の表中に報告する。
【0064】
【表10】
実施例11
FAC濃度が3625mg/Lの塩素水溶液を電気分解によって調製した。この溶液のORP値を測定すると804mVであり、pHは8.96であった。この溶液9つの200mLの試料を調製し、最初の塩素水溶液に加える前に20mLの水中に溶解させた臭化ナトリウム及びスルファミン酸ナトリウムと反応させた。各溶液のpH、ORP、FAC量、FAB量、及び全塩素(TC)量を測定し、以下の表中に報告する。
【0065】
【表11】
したがって、本発明は、記載の目的及び利点、並びにそれらに固有のものを実現するために十分に適応している。以上の説明は、本発明の限定を意図したものではなく、それらは本発明の範囲から逸脱することなく異なる態様又は実施形態により使用することができる。行為、ステップ、化学物質、装置、成分、要素などの議論は、本発明の状況を示すことのみを目的として本明細書中に含まれる。あらゆるこれらの事柄が、従来技術の基礎の一部を形成したり、又は本発明に関連する技術分野において共通の一般的な知識であったりすることを示唆したり又は意味したりするものではない。
【0066】
さらに、上記開示の特定の説明的実施形態は、変更又は修正が可能であり、そのようなすべての変形形態は、本発明の範囲及び意図に含まれると見なされる。システム及び方法が、種々の装置/構成要素又はステップを「含む(comprising)」、「含む(containing)」、又は「含む(including)」として記載されるが、それらのシステム及び方法は、それらの種々の構成要素及びステップ「から本質的になる」又は「からなる」こともできることは理解されよう。下限及び上限を有する数値範囲が開示される場合はいつも、その範囲内にあるあらゆる数及びあらゆる含まれる範囲が明確に開示される。特に、本明細書に開示される(「約a~約b」、又は同様に「おおよそa~b」の形態の)それぞれの値の範囲は、より広い値の範囲内に含まれるそれぞれの数及び範囲を記載するものと理解すべきである。本明細書、請求項、並びに参照により本明細書に援用することができる1つ以上の特許又はその他の文献における単語又は用語の使用において矛盾が生じる場合は、本明細書に一致する定義を採用するものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7