IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】車両用灯具システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 45/347 20200101AFI20241216BHJP
   H05B 45/46 20200101ALI20241216BHJP
   H05B 45/375 20200101ALI20241216BHJP
   H05B 47/155 20200101ALI20241216BHJP
【FI】
H05B45/347
H05B45/46
H05B45/375
H05B47/155
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022530575
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2021021725
(87)【国際公開番号】W WO2021251375
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2020100450
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020100451
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020100452
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】太田 優
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昌司
(72)【発明者】
【氏名】柳津 翔平
(72)【発明者】
【氏名】菊池 賢
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-009564(JP,A)
【文献】特開2018-032553(JP,A)
【文献】特開2016-203863(JP,A)
【文献】特開2013-030458(JP,A)
【文献】特開2007-242477(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008030365(DE,A1)
【文献】特開2015-147445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 39/00-39/10
H05B 45/00-45/59
H05B 47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置される複数の画素回路を含む、アレイ型発光デバイスと、
前記アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源回路と、
を備え、
前記電源回路は、
出力が電源ケーブルを介して前記アレイ型発光デバイスと接続されるDC/DCコンバータと、
配光パターンに応じて目標値を設定し、制御対象電圧が前記目標値に近づくように、前記DC/DCコンバータを制御する電源制御回路と、
を備え、
前記電源制御回路は、前記配光パターンの変更に先立って、前記目標値を変更することを特徴とする灯具システム。
【請求項2】
前記配光パターンに応じて前記複数の画素回路を制御するコントロールユニットをさらに備え、
前記電源制御回路は、前記コントロールユニットから受信する前記配光パターンに関する第1データに応じて、前記目標値を設定することを特徴とする請求項に記載の灯具システム。
【請求項3】
前記電源制御回路は、
前記配光パターンに応じた補正電圧を生成する電圧設定回路と、
前記制御対象電圧と前記補正電圧とにもとづいて、フィードバック電圧を生成するフィードバック回路と、
前記フィードバック電圧をフィードバックピンに受け、前記フィードバック電圧が所定の基準電圧に近づくように、前記DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の灯具システム。
【請求項4】
電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置される複数の画素回路を含む、アレイ型発光デバイスと、
前記アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源回路と、
を備え、
前記電源回路は、
出力が電源ケーブルを介して前記アレイ型発光デバイスと接続されるDC/DCコンバータと、
配光パターンに応じて目標値を設定し、制御対象電圧が前記目標値に近づくように、前記DC/DCコンバータを制御する電源制御回路と、
を備え、
前記電源制御回路は、
前記配光パターンに応じた補正電圧を生成する電圧設定回路と、
前記制御対象電圧と前記補正電圧とにもとづいて、フィードバック電圧を生成するフィードバック回路と、
前記フィードバック電圧をフィードバックピンに受け、前記フィードバック電圧が所定の基準電圧に近づくように、前記DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、
を含むことを特徴とする灯具システム。
【請求項5】
前記電圧設定回路は、
前記配光パターンに応じたデジタルの設定値を生成するマイクロコントローラと、
前記設定値をアナログの前記補正電圧に変換するD/Aコンバータと、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の灯具システム。
【請求項6】
前記電源制御回路は、
前記配光パターンに応じた基準信号を生成する電圧設定回路と、
前記制御対象電圧に応じたフィードバック電圧を受けるフィードバックピンと、前記基準信号を受ける基準電圧設定ピンを有し、前記フィードバック電圧が前記基準信号にもとづく基準電圧に近づくように、前記DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の灯具システム。
【請求項7】
電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置される複数の画素回路を含む、アレイ型発光デバイスと、
前記アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源回路と、
を備え、
前記電源回路は、
出力が電源ケーブルを介して前記アレイ型発光デバイスと接続されるDC/DCコンバータと、
配光パターンに応じて目標値を設定し、制御対象電圧が前記目標値に近づくように、前記DC/DCコンバータを制御する電源制御回路と、
を備え、
前記電源制御回路は、
前記配光パターンに応じた基準信号を生成する電圧設定回路と、
前記制御対象電圧に応じたフィードバック電圧を受けるフィードバックピンと、前記基準信号を受ける基準電圧設定ピンを有し、前記フィードバック電圧が前記基準信号にもとづく基準電圧に近づくように、前記DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、
を含むことを特徴とする灯具システム。
【請求項8】
前記電圧設定回路は、前記配光パターンに応じたデジタルの設定値を生成するマイクロコントローラを含み、前記基準電圧は、前記設定値に応じていることを特徴とする請求項6または7に記載の灯具システム。
【請求項9】
前記電源回路は、前記電源ケーブルと独立した検出ラインを介して、前記アレイ型発光デバイスの電源端子と接続される検出端子をさらに備え、
前記制御対象電圧は、前記検出端子に生ずる検出電圧であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の灯具システム。
【請求項10】
電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置される複数の画素回路を含む、アレイ型発光デバイスと、
前記アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源回路と、
を備え、
前記電源回路は、
出力が電源ケーブルを介して前記アレイ型発光デバイスと接続されるDC/DCコンバータと、
配光パターンに応じて目標値を設定し、制御対象電圧が前記目標値に近づくように、前記DC/DCコンバータを制御する電源制御回路と、
前記電源ケーブルと独立した検出ラインを介して、前記アレイ型発光デバイスの電源端子と接続される検出端子と、
を備え、
前記制御対象電圧は、前記検出端子に生ずる検出電圧であることを特徴とする灯具システム。
【請求項11】
前記制御対象電圧は、前記DC/DCコンバータの出力電圧であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項12】
前記アレイ型発光デバイスは、前記複数の画素回路に含まれる複数の発光素子の電圧降下に関する第2データを取得し、外部に送信可能に構成されており、
前記電源制御回路は、前記配光パターンに加えて、前記第2データにもとづいて、前記目標値を設定することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項13】
電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置される複数の画素回路を含む、アレイ型発光デバイスと、
前記アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源回路と、
を備え、
前記電源回路は、
出力が電源ケーブルを介して前記アレイ型発光デバイスと接続されるDC/DCコンバータと、
配光パターンに応じて目標値を設定し、制御対象電圧が前記目標値に近づくように、前記DC/DCコンバータを制御する電源制御回路と、
を備え、
前記アレイ型発光デバイスは、前記複数の画素回路に含まれる複数の発光素子の電圧降下に関する第2データを取得し、外部に送信可能に構成されており、
前記電源制御回路は、前記配光パターンに加えて、前記第2データにもとづいて、前記目標値を設定することを特徴とする灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、一般にロービームとハイビームとを切りかえることが可能である。ロービームは、自車近傍を所定の照度で照明するものであって、対向車や先行車にグレアを与えないよう配光規定が定められており、主に市街地を走行する場合に用いられる。一方、ハイビームは、前方の広範囲および遠方を比較的高い照度で照明するものであり、主に対向車や先行車が少ない道路を高速走行する場合に用いられる。したがって、ハイビームはロービームと比較してより運転者による視認性に優れているが、車両前方に存在する車両の運転者や歩行者にグレアを与えてしまうという問題がある。
【0003】
近年、車両の周囲の状態にもとづいて、ハイビームの配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)が提案されている。ADB技術は、車両の前方
の先行車、対向車や歩行者の有無を検出し、車両あるいは歩行者に対応する領域を減光あるいは消灯するなどして、車両あるいは歩行者に与えるグレアを低減するものである。
【0004】
ADBランプとして、LED(発光ダイオード)ストリングとバイパス回路を組み合わせたバイパス方式の構成が実用化されている。図1は、バイパス方式のランプ1Rのブロック図である。
【0005】
ADBランプ1Rは、LEDストリング(LEDバー)50と、定電流ドライバ70、バイパス回路80を備える。LEDストリング50は、直列に接続された複数のLED52_1~52_n(n≧2)を含む。ADBランプ1Rは、複数のLED52_1~52_nそれぞれの出射ビームが、車両前方の仮想鉛直スクリーン40上において、異なる領域を照射するように構成されている。
【0006】
定電流ドライバ70は、所定の電流量に安定化された駆動電流ILEDを生成し、LEDストリング50に供給する電流源72を含む。バイパス回路80は、複数のLED52_1~52_nと並列に設けられた複数のスイッチSW1~SWnを含む。
【0007】
バイパス回路80のあるスイッチSWi(1≦i≦n)がオフの状態では、電流源72が生成する電流ILEDは、LED52_iに流れるため、LED52_iは点灯する。スイッチSWiがオンの状態では、電流源72が生成する電流ILEDは、スイッチSWiに迂回して流れるため、LED52_iは消灯する。
【0008】
仮想鉛直スクリーン40上には、複数のバイパススイッチSW1~SWnのオン、オフに応じた配光パターン42が形成される。
【0009】
図1のバイパス方式のランプでは、LED52の個数n、すなわちオン、オフ制御可能な領域の分割数は、数個から多くて十数個程度である。より多くの分割数を実現するため、LED(発光ダイオード)アレイ方式のADBランプが提案されている。図2は、LEDアレイ方式のADBランプ1Sのブロック図である。ADBランプ1Sは、LEDアレイデバイス10と、配光コントローラ20、電源回路30を備える。LEDアレイデバイス10は、アレイ状に配置される複数のLED12と、複数のLED12を駆動するLEDドライバ14を備え、1パッケージ化されたデバイス(アレイ型発光デバイスという)である。1画素(画素回路ともいう)は、LED12とLEDドライバ14で構成され、LEDドライバ14は、LED12と直列に接続される電流源(スイッチ)を含み、電流源のオンオフを制御することで、各画素のオン(点灯)、オフ(消灯)を切り替える。
【0010】
電源回路30は、LEDアレイデバイス10に電源電圧VDDを供給する。電源回路30は、DC/DCコンバータ32と、そのコントローラ34を含む。コントローラ34には、DC/DCコンバータ32の出力電圧VOUTにもとづくフィードバック電圧VFBがフィードバックされており、フィードバック電圧VFBが目標値VREFに近づくように、DC/DCコンバータ32を制御する。
【0011】
配光コントローラ20は、複数の画素のオン、オフを指定する制御信号を生成し、LEDアレイデバイス10に送信する。LEDアレイデバイス10の出射ビームは、図示しない光学系を経て、仮想鉛直スクリーン40上に照射される。仮想鉛直スクリーン40には、複数の発光素子12のオン、オフに対応した配光パターン42が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2018-172038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
課題1. 本発明者は、図2のADBランプ1Sについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0014】
図2の回路では、複数(N個)の画素回路が並列に接続されるため、電源回路30の出力電流IOUTは、最大でIOUT(MAX)=ILED×Nとなる。現状では、数千から1万を超えるような画素数Nを持つLEDアレイデバイス10が開発されている。
【0015】
たとえば、ILED=10mA,LEDの個数N=3000とした場合、電源回路30の最大出力電流IOUT(MAX)は30Aに達する。
【0016】
電源ケーブル16やコネクタは、直流抵抗成分Rを有しており、大電流が流れることにより、電圧降下VDROP(=R×IOUT)が生ずる。電源回路30の出力端の電圧をVOUTとするとき、LEDアレイデバイス10の電源端子に供給される電源電圧(負荷入力端電圧ともいう)VDDは、
DD=VOUT-R×IOUT
となる。画素回路が正常動作するためには、負荷入力端電圧VDDは、VDD(MIN)=Vf+VSAT+αより大きくなければならない。Vfは、LEDの順方向電圧であり、VSATはLEDドライバ14の両端間電圧(最低動作電圧)であり、αは電圧マージンである。
【0017】
したがって、電源回路30においては、出力電圧VOUTの目標電圧VOUT(REF を、
OUT(REF)>VDD(MIN)+R×IOUT
を満たすように、コントローラ34を設計する必要がある。
【0018】
図3(a)、(b)は、図2のADBランプ1Sの動作波形図である。出力電流IOU は、0~IOUT(MAX)の範囲で変化する。最大出力電流IOUT(MAX)を想定して出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)を、
OUT(REF)=VDD(MIN)+R×IOUT(MAX)
を満たすように定めたとする。この場合、IOUT≒0の状況で、負荷入力端電圧VDDが最小電圧VDD(MIN)に比べて大きくなる。(VDD-VDD(MIN))×I UTは、無駄な電力消費となる。目標値VOUT(REF)を低く定めると、負荷入力端電圧VDDが、最低動作電圧VDD(MIN)を下回る可能性が高くなり、ちらつきや消灯の原因となる。
【0019】
また、図3(a)の時刻tに示すように、出力電流IOUTが急峻に変化したときに、コントローラ34の応答遅れが存在すると、出力電圧VOUTが低下し、電源電圧V が低下する。電源電圧VDDが最低動作電圧VDD(MIN)を下回ると、ちらつきが発生する。
【0020】
課題2. 市販されるLEDアレイデバイス10は、その最低動作電圧VDD(MIN)が仕様で規定されている。最低動作電圧VDD(MIN)は、画素の最低動作電圧にもとづいており、具体的には、LED12の順方向電圧Vと電流源の電圧降下Vの和にもとづく。
【0021】
画素ごとの最低動作電圧は、プロセスばらつきの影響を受けるため、LEDアレイデバイス10の同一チップ内の画素毎に異なり、LEDアレイデバイス10の個体毎に異なる。また最低動作電圧VDD(MIN)は、温度の影響も受ける。一般的に、仕様で規定される値VDD(SPEC)は、LEDアレイデバイス10の個体ばらつきや温度変動を考慮したものであり、最低動作電圧VDD(MIN)の真値よりもマージンを加味して高めに定められる。したがって、電源回路30の動作条件を、仕様で規定される値VDD(S PEC)にもとづいて設計すると、実際に使用する多くのLEDアレイデバイス10に対しては、過剰な電圧を供給することとなり、消費電力が増加する要因となる。
【0022】
本開示のある態様は課題1に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、アレイ型発光デバイスに安定的に電力を供給可能な灯具システムの提供にある。
【0023】
本開示のある態様は課題1に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、アレイ型発光デバイスの消費電力を低減可能な灯具システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
1. 本開示のある態様は、灯具システムに関する。灯具システムは、電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置される複数の画素回路を含む、アレイ型発光デバイスと、アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源回路と、を備える。電源回路は、出力が電源ケーブルを介してアレイ型発光デバイスと接続されるDC/DCコンバータと、配光パターンに応じて目標値を設定し、制御対象電圧が目標値に近づくように、DC/DCコンバータを制御する電源制御回路と、を備える。
【0025】
2. 本開示のある態様は、灯具システムに関する。灯具システムは、電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置される複数の画素回路を含む、アレイ型発光デバイスと、アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源回路と、電源回路とアレイ型発光デバイスを接続する電源ケーブルを含む接続手段と、を備える。電源回路は、出力が電源ケーブルを介してアレイ型発光デバイスと接続されるDC/DCコンバータと、電源ケーブルの電圧降下を取得し、電源ケーブルの電圧降下に応じて目標値を設定し、DC/DCコンバータの出力電圧が目標値に近づくように、DC/DCコンバータを制御する電源制御回路と、を備える。
【0026】
3. 本開示のある態様は灯具システムに関する。灯具システムは、アレイ型発光デバイスを含む配光可変光源と、アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源回路と、を備える。アレイ型発光デバイスは複数の画素回路を備える。複数の画素回路は、電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置され、それぞれが直列に接続される発光素子および電流源を含む。アレイ型発光デバイスは、複数の画素回路に含まれる複数の発光素子の電圧降下に関するデータを取得し、外部に送信可能に構成される。電源回路は、出力が電源ケーブルを介してアレイ型発光デバイスに接続されるDC/DCコンバータと、制御対象電圧が、データに応じた目標値に近づくように、DC/DCコンバータを制御する電源制御回路と、を備える。
【0027】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、本開示の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0028】
本開示のある態様によれば、消費電力を削減できる。本開示のある態様によれば、アレイ型発光デバイスに安定的に電力を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】バイパス方式のランプのブロック図である。
図2】LEDアレイ方式のADBランプのブロック図である。
図3図3(a)、(b)は、図2のADBランプの動作波形図である。
図4】実施形態1に係る灯具システムのブロック図である。
図5図4の灯具システムの制御例1に係る動作を示す図である。
図6図4の灯具システムの制御例2に係る動作を示す図である。
図7図7(a)、(b)は、順方向電圧Vにもとづく目標値の制御を説明する図である。
図8】灯具システムの動作を示す図である。
図9】実施例1.1に係るヘッドランプのブロック図である。
図10図9のヘッドランプの動作波形図である。
図11】フィードバック回路の構成例を示す回路図である。
図12】電圧設定回路の構成例を示す回路図である。
図13】実施例1.2に係るヘッドランプのブロック図である。
図14】制御例2を採用するヘッドランプの動作波形図である。
図15】制御例4を採用するヘッドランプの動作波形図である。
図16】実施例1.3に係るヘッドランプのブロック図である。
図17】フィードバック回路の機能ブロック図である。
図18】実施例1.4に係るヘッドランプの回路図である。
図19】変形例1.1に係るヘッドランプを示す図である。
図20】変形例1.2に係るヘッドランプを示す図である。
図21】実施形態2に係る灯具システムのブロック図である。
図22図21の灯具システムの動作を説明する図である。
図23】実施例2.1に係るヘッドランプのブロック図である。
図24】フィードバック回路の構成例を示す回路図である。
図25】実施例2.2に係るヘッドランプのブロック図である。
図26】実施例2.3に係るヘッドランプのブロック図である。
図27】実施例2.4に係るヘッドランプのブロック図である。
図28】変形例2.1に係るヘッドランプを示す図である。
図29】変形例2.2に係るヘッドランプを示す図である。
図30】実施形態3に係る灯具システムのブロック図である。
図31図31(a)、(b)は、灯具システムの動作を示す図である。
図32】灯具システムの動作を示す図である。
図33】実施例3.1に係るヘッドランプのブロック図である。
図34図33のヘッドランプの動作波形図である。
図35】フィードバック回路の構成例を示す回路図である。
図36】電圧設定回路の構成例を示す回路図である。
図37】実施例3.2に係るヘッドランプのブロック図である。
図38図37のヘッドランプの動作波形図である。
図39】実施例3.3に係るヘッドランプのブロック図である。
図40】フィードバック回路の機能ブロック図である。
図41】実施例3.4に係るヘッドランプの回路図である。
図42】マイクロコントローラの構成を示すブロック図である。
図43】マイクロコントローラ内蔵のA/Dコンバータのキャリブレーションを説明する図である。
図44】変形例3.1に係るヘッドランプを示す図である。
図45】変形例3.2に係る灯具システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0031】
1. 一実施形態に係る灯具システムは、電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置される複数の画素回路を含む、アレイ型発光デバイスと、アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源回路と、を備える。電源回路は、出力が電源ケーブルを介してアレイ型発光デバイスと接続されるDC/DCコンバータと、配光パターンに応じて目標値を設定し、制御対象電圧が目標値に近づくように、DC/DCコンバータを制御する電源制御回路と、を備える。
【0032】
アレイ型発光デバイスに流れる電流は、配光パターンに応じて変化する。そこで配光パターンに応じて、制御対象電圧の目標値を、動的、適応的に変化させることにより、アレイ型発光デバイスに供給される電源電圧が、最低動作電圧を下回るのを防止できる。また無駄な消費電力を削減できる。
【0033】
電源制御回路は、配光パターンの変更に先立って、目標値を変更してもよい。
【0034】
一実施形態に係る灯具システムは、配光パターンに応じて複数の画素回路を制御するコントロールユニットをさらに備えてもよい。電源制御回路は、コントロールユニットから受信する配光パターンに関する第1データに応じて、目標値を設定してもよい。
【0035】
一実施形態において、電源制御回路は、配光パターンに応じた補正電圧を生成する電圧設定回路と、制御対象電圧と補正電圧とにもとづいて、フィードバック電圧を生成するフィードバック回路と、フィードバック電圧をフィードバックピンに受け、フィードバック電圧が所定の基準電圧に近づくように、DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、を含んでもよい。内部の基準電圧を外部から設定できないコンバータコントローラを採用する場合に、補正電圧に応じてフィードバック電圧をシフトさせることで、制御対象電圧の目標値を設定できる。
【0036】
一実施形態において、電圧設定回路は、配光パターンに応じたデジタルの設定値を生成するマイクロコントローラと、設定値をアナログの補正電圧に変換するD/Aコンバータと、を含んでもよい。これにより、制御対象電圧の目標値を、ソフトウェア制御することが可能となる。
【0037】
一実施形態において、電源制御回路は、配光パターンに応じた基準信号を生成する電圧設定回路と、制御対象電圧に応じたフィードバック電圧を受けるフィードバックピンと、基準信号を受ける基準電圧設定ピンを有し、フィードバック電圧が基準信号にもとづく基準電圧に近づくように、DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、を含んでもよい。内部の基準電圧を外部から制御可能なコンバータコントローラを採用する場合には、データに応じて、コンバータコントローラの内部の基準電圧を直接制御することで、制御対象電圧の目標値を設定できる。
【0038】
一実施形態において、電圧設定回路は、配光パターンに応じたデジタルの設定値を生成するマイクロコントローラを含み、基準電圧は、設定値に応じていてもよい。これにより、制御対象電圧の目標値を、ソフトウェア制御することが可能となる。
【0039】
一実施形態において、電源回路は、電源ケーブルと独立した検出ラインを介して、アレイ型発光デバイスの電源端子と接続される検出端子をさらに備えてもよい。制御対象電圧は、検出端子に生ずる検出電圧であってもよい。この構成によれば、アレイ型発光デバイスの電源端子に、適切な電源電圧が供給されるようにフィードバックループが形成される。したがって、無駄な消費電力を削減できる。
【0040】
一実施形態において、制御対象電圧は、DC/DCコンバータの出力電圧であってもよい。この構成によれば、DC/DCコンバータの出力電圧が目標値に近づくようにフィードバックループが形成されるため、DC/DCコンバータに要求される応答速度を低くできる。
【0041】
アレイ型発光デバイスは、複数の画素回路に含まれる複数の発光素子の電圧降下に関する第2データを取得し、外部に送信可能に構成されてもよい。電源制御回路は、配光パターンに加えて、第2データにもとづいて、目標値を設定してもよい。実動作中の発光素子の電圧降下を監視することで、アレイ型発光デバイスの最低動作電圧を正確に見積もることができる。そして、発光素子の電圧降下をリアルタイムで電源回路のフィードバック制御に反映させることで、消費電力を削減できる。
【0042】
2. 一実施形態に係る灯具システムは、電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置される複数の画素回路を含む、アレイ型発光デバイスと、アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源回路と、電源回路とアレイ型発光デバイスを接続する電源ケーブルを含む接続手段と、を備える。電源回路は、出力が電源ケーブルを介してアレイ型発光デバイスと接続されるDC/DCコンバータと、電源ケーブルの電圧降下を取得し、電源ケーブルの電圧降下に応じて目標値を設定し、DC/DCコンバータの出力電圧が目標値に近づくように、DC/DCコンバータを制御する電源制御回路と、を備える。
【0043】
電源ケーブルの電圧降下を監視し、電圧降下に応じて出力電圧の目標値を、動的、適応的に変化させることにより、アレイ型発光デバイスに供給される電源電圧が、最低動作電圧を下回るのを防止できる。また無駄な消費電力を削減できる。
【0044】
一実施形態において、電源ケーブルは、DC/DCコンバータの正極出力端子とアレイ型発光デバイスの電源端子を接続する電源ラインを含んでもよい。電源制御回路は、電源ラインの電圧降下を取得し、電源ラインの電圧降下に応じて、目標値を設定してもよい。
【0045】
一実施形態において、電源ケーブルは、DC/DCコンバータの正極出力端子とアレイ型発光デバイスの電源端子を接続する電源ラインと、DC/DCコンバータの負極出力端子とアレイ型発光デバイスの接地端子を接続する接地ラインと、を含んでもよい。電源制御回路は、電源ラインと接地ラインの電圧降下を取得し、電源ラインおよび接地ラインの電圧降下に応じて、目標値を設定してもよい。
【0046】
一実施形態において、電源回路は、DC/DCコンバータの出力電流に応じた電流検出信号を生成する電流センサをさらに備えてもよい。電源制御回路は、電流検出信号に応じて、目標値を設定してもよい。
【0047】
一実施形態において、電源回路は、電源ケーブルと独立した検出ラインを介して、アレイ型発光デバイスの電源端子と接続される検出端子をさらに備えてもよい。電源制御回路は、DC/DCコンバータの出力電圧と検出端子の検出電圧の差分にもとづいて、接続手段の電圧降下を取得してもよい。
【0048】
一実施形態において、電源制御回路は、DC/DCコンバータの出力電圧と、接続手段の電圧降下に応じた補正電圧とにもとづいて、フィードバック電圧を生成するフィードバック回路と、フィードバック電圧をフィードバックピンに受け、フィードバック電圧が所定の基準電圧に近づくように、DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、を含んでもよい。
【0049】
一実施形態において、電源制御回路は、接続手段の前記電圧降下に応じた基準信号を生成する電圧設定回路と、出力電圧に応じたフィードバック電圧を受けるフィードバックピンと、基準信号を受ける基準電圧設定ピンを有し、フィードバック電圧が基準信号にもとづく基準電圧に近づくように、DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、を含んでもよい。
【0050】
3. 一実施形態に係る灯具システムは、アレイ型発光デバイスを含む配光可変光源と、アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源回路と、を備える。アレイ型発光デバイスは複数の画素回路を備える。複数の画素回路は、電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置され、それぞれが直列に接続される発光素子および電流源を含む。アレイ型発光デバイスは、複数の画素回路に含まれる複数の発光素子の電圧降下に関するデータを取得し、外部に送信可能に構成される。電源回路は、出力が電源ケーブルを介してアレイ型発光デバイスに接続されるDC/DCコンバータと、制御対象電圧が、データに応じた目標値に近づくように、DC/DCコンバータを制御する電源制御回路と、を備える。
【0051】
実動作中の発光素子の電圧降下を監視することで、アレイ型発光デバイスの最低動作電圧を正確に見積もることができる。そして、発光素子の電圧降下をリアルタイムで電源回路のフィードバック制御に反映させることで、消費電力を削減できる。
【0052】
一実施形態において、目標値は、複数の発光素子の電圧降下の最大値にもとづいていてもよい。
【0053】
一実施形態において、電源制御回路は、データに応じた補正電圧を生成する電圧設定回路と、制御対象電圧と補正電圧とにもとづいて、フィードバック電圧を生成するフィードバック回路と、フィードバック電圧をフィードバックピンに受け、フィードバック電圧が所定の基準電圧に近づくように、DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、を含んでもよい。内部の基準電圧を外部から設定できないコンバータコントローラを採用する場合に、補正電圧に応じてフィードバック電圧をシフトさせることで、制御対象電圧の目標値を設定できる。
【0054】
一実施形態において、電圧設定回路は、データに応じたデジタルの設定値を生成するマイクロコントローラと、設定値をアナログの補正電圧に変換するD/Aコンバータと、を含んでもよい。これにより、制御対象電圧の目標値を、ソフトウェア制御することが可能となる。
【0055】
一実施形態において、電源制御回路は、データに応じた設定信号を生成する電圧設定回路と、制御対象電圧に応じたフィードバック電圧を受けるフィードバックピンと、設定信号を受ける基準電圧設定ピンと、を有し、フィードバック電圧が基準信号にもとづく基準電圧に近づくように、DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、を含んでもよい。内部の基準電圧を外部から制御可能なコンバータコントローラを採用する場合には、データに応じて、コンバータコントローラの内部の基準電圧を直接制御することで、制御対象電圧の目標値を設定できる。
【0056】
一実施形態において、電圧設定回路は、データに応じたデジタルの設定値を生成するマイクロコントローラを含んでもよい。基準電圧は、設定値に応じていてもよい。これにより、制御対象電圧の目標値を、ソフトウェア制御することが可能となる。
【0057】
一実施形態において、電源回路は、電源ケーブルと独立した検出ラインを介して、アレイ型発光デバイスの電源端子に接続される検出端子をさらに備えてもよい。制御対象電圧は、検出端子に生ずる検出電圧であってもよい。この構成によれば、アレイ型発光デバイスの電源端子に、適切な電源電圧が供給されるようにフィードバックループが形成される。したがって、無駄な消費電力を削減できる。
【0058】
一実施形態において、制御対象電圧は、DC/DCコンバータの出力電圧であってもよい。この構成によれば、DC/DCコンバータの出力電圧が目標値に近づくようにフィードバックループが形成されるため、DC/DCコンバータに要求される応答速度を低くできる。
【0059】
一実施形態において灯具システムは、アレイ型発光デバイスのインタフェース回路と接続され、アレイ型発光デバイスの複数の画素回路のオン、オフを制御するコントロールユニットをさらに備えてもよい。電源制御回路は、コントロールユニットを介して、データを受信してもよい。
【0060】
一実施形態において、マイクロコントローラは、制御対象電圧と、データにもとづく目標値の誤差を取得してもよい。コンバータコントローラによって、制御対象電圧が目標値から逸脱している状況を検出できない場合には、マイクロコントローラによって、制御対象電圧と目標値の誤差を監視することにより、異常状態を検出できる。
【0061】
一実施形態において、マイクロコントローラは、制御対象電圧と目標値の誤差が所定のしきい値を超えると、異常と判定してもよい。
【0062】
一実施形態において、マイクロコントローラにより異常と判定されると、設定値が、所定値に固定されてもよい。所定値を高く定めておくことにより、異常状態において、強制的に高い電圧が、アレイ型発光デバイスに供給されることになり、点灯を維持することができる。
【0063】
一実施形態において、マイクロコントローラは、データの履歴を保存してもよい。電子デバイスに、ログを残しておくと、当該電子デバイスのベンダーや、電子デバイスを搭載する機器のメーカによる故障解析や新製品開発に活用することができる。特に、発光素子の電圧降下は、効率や温度の指標となる重要なパラメータであるため、それをログとして残しておくことは、有用である。
【0064】
一実施形態において、灯具システムは、温度センサをさらに備えてもよい。マイクロコントローラは、温度センサが取得した温度に関する情報を保存してもよい。
【0065】
(実施形態)
以下、好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0066】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0067】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0068】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0069】
(実施形態1)
図4は、実施形態1に係る灯具システム100のブロック図である。灯具システム100は、ADBランプシステムであり、バッテリ102、上位コントローラ104およびヘッドランプ200を備える。
【0070】
上位コントローラ104は、ヘッドランプ200に対する配光指令を生成する。配光指令は、点灯指令と追加情報を含みうる。点灯指令は、ハイビームやロービームのオン、オフを指示する信号を含みうる。点灯指令に応じて、ヘッドランプ200が形成すべき基本配光が決定される。また追加情報は、ハイビームを照射すべきでない範囲(遮光領域)に関するデータや、車速、ステアリング角などの情報を含みうる。追加情報に応じて、基本配光が修正され、最終的な配光が決定される。上位コントローラ104は、車両側のECUとして構成してもよいし、ヘッドランプ200に内蔵される灯具側のECUとして構成してもよい。
【0071】
ヘッドランプ200は、配光可変光源210、電源回路220、コントロールユニット260を備えるADBランプである。
【0072】
配光可変光源210は、アレイ状に配置される複数の画素を備え、画素毎にオン、オフが個別制御可能となっている。ヘッドランプ200において、所望の配光が得られるように、複数の画素のオン、オフが制御される。
【0073】
より具体的には配光可変光源210は、アレイ型発光デバイス212を備える。アレイ型発光デバイス212は、n個の画素回路PIX1~PIXnと、複数の画素回路PIX1~PIXnと接続される電源端子VDDと、を有する。
【0074】
画素回路PIXj(1≦j≦n)は、電源端子VDDと接地端子(接地ライン)GNDの間に直列に設けられる発光素子213_jおよび電流源214_jを含む。複数の発光素子213_1~213_nは、LEDやLD(半導体レーザ)、有機EL素子などの半導体発光素子であり、空間的にアレイ状(マトリクス状)に配置されている。
【0075】
複数の電流源214_1~214_nは個別にオン、オフが制御可能となっており、j番目の電流源214_jがオンのとき、対応する発光素子213_jが発光し、その画素回路PIXjが点灯状態となる。
【0076】
インタフェース回路216は、コントロールユニット260からの制御信号S2に応じて、電流源214_1~214_nのオン、オフを制御する。インタフェース回路216は、コントロールユニット260と高速シリアルインタフェースを介して接続され、全画素のオン、オフを指示する制御信号S2を受信する。
【0077】
電源回路220は、配光可変光源210に電力を供給する。電源回路220は、定電圧出力のコンバータを含み、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDに対して、安定化された電源電圧VDDを供給する。電源電圧VDDは、V+VSATにもとづいて定められ、典型的には4~5V程度である。Vは発光素子213の順方向電圧、VSATは電流源214の最低動作電圧である。したがって電源回路220は、12V(あるいは24V)程度のバッテリ電圧VBATを降圧する降圧コンバータ(Buckコンバータ)で構成することができる。
【0078】
コントロールユニット260は、上位コントローラ104からの配光指令S1を受け、配光指令S1に応じた制御信号S2を生成し、配光可変光源210に対して送信する。コントロールユニット260は描画ECUとも称される。たとえばコントロールユニット260は、アレイ型発光デバイス212の複数の画素回路PIX1~PIXnをPWM制御し、配光を制御する。PWM周波数は、数百Hz(たとえば100~400Hz)であり、したがってPWM周期は、数ミリ秒~数十ミリ秒(ms)である。
【0079】
続いて電源回路220の構成を説明する。電源回路220は、出力端子AP/AN、接地端子GND、DC/DCコンバータ224および電源制御回路225を備える。
【0080】
出力端子AP/ANは、電源ケーブル204を介してアレイ型発光デバイス212の電源端子VDDおよび接地端子GNDと接続される。電源ケーブル204は、電源ラインLVDDと接地ラインLGNDを含む。DC/DCコンバータ224の正極出力OUTPは、出力端子AP、電源ラインLVDDを介して、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDと接続され、DC/DCコンバータ224の負極出力OUTNは、出力端子AN、接地ラインLGNDを介して、アレイ型発光デバイス212の接地端子GNDと接続される。DC/DCコンバータ224の入力には、バッテリからの電圧VBATが供給される。
【0081】
電源制御回路225は、配光パターンに応じて制御対象電圧VCNTの目標値VCNT (REF)を設定し、制御対象電圧VCNTが目標値VCNT(REF)に近づくように、DC/DCコンバータ224を制御する。たとえば電源制御回路225は、コントロールユニット260から配光に関する情報を含むデータS4を受信する。
【0082】
詳しくは後述するように、制御対象電圧VCNTは、アレイ型発光デバイス212の電源電圧VDDであってもよいし、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTであってもよい。
【0083】
以上が灯具システム100の構成である。本開示は、図4のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0084】
続いて灯具システム100の動作を、いくつかの制御例を参照して説明する。
【0085】
(制御例1)
図5は、図4の灯具システム100の制御例1に係る動作を示す図である。制御例1では、制御対象電圧VCNTが、アレイ型発光デバイス212の電源電圧VDDであるものとし、電源制御回路225は、電源電圧VDDの目標値VDD(REF)を、配光パターンに応じて制御するものとする。
【0086】
時刻tに、配光パターンが、第1パターンPTN1から第2パターンPTN2に変更されるものとし、第2パターンPTN2の電流IOUT2が、第1パターンPTN1の電流IOUTより大きいものとする。たとえば、第1パターンPTN1は、タウンモードの配光であり、ロービームの領域が照射される。第2パターンPTN2は、アクティブモードの配光であり、ハイビームの領域も照射されるため、点灯画素数が相対的に多く、出力電流IOUTも相対的に大きい。
【0087】
定常状態において、電源電圧VDDの目標値VDD(REF)は、最低動作電圧VDD (MIN)と同程度に設定される。
【0088】
電源制御回路225は、配光パターンPTNの変更に先立って、言い換えると電流I UTの増加のタイミングに先立つ時刻tに、電源電圧VDDの目標値VDD(REF)をΔV、増大させる。電源電圧VDDは目標値VDD(REF)に追従して上昇する。目標値の増加幅ΔVは、電流変動にともなう電源電圧VDDのスパイク状の電圧低下の低下幅にもとづいて定めればよい。目標値VDD(REF)を増加させるタイミングtは、コントロールユニット260から与えることができる。
【0089】
時刻tに配光パターンPTNが切り替わると、電流IOUTが増加する。その結果、電源制御回路225の応答遅れによって、瞬間的に電源電圧VDDが低下し、目標値V D(REF)との誤差が大きくなり、その後、目標値VDD(REF)に戻っていく。
【0090】
電源制御回路225は、時刻tに、目標値VDD(REF)を元の電圧レベルに戻す。目標値VDD(REF)に追従して、電源電圧VDDはもとの電圧レベルまで低下する。
【0091】
なお、制御例1では、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTは、VOUT=VDD+VDROPに応じて変化する。VDROPは、電源ラインLVDDやコネクタにおける電圧降下であり、VDROP=IOUT×Rで表される。
【0092】
以上が制御例1に係る動作である。この制御例によれば、配光パターンの変更に先立って、電源電圧VDDの目標電圧VDD(REF)をΔV、増加することにより、電源電圧VDDを最低動作電圧VDD(MIN)より高く維持でき、ちらつきを防止できる。
【0093】
(制御例2)
図6は、図4の灯具システム100の制御例2に係る動作を示す図である。制御例2では、制御対象電圧VCNTが、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTであり、電源制御回路225は、出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)を、配光パターンに応じて制御するものとする。制御例2では、電源制御回路225の応答速度が十分に速く、出力電流IOUTの急峻な変化が発生しても、出力電圧VOUTを一定に維持できるものとする。
【0094】
電源制御回路225は、配光パターンPTN#の電流量IOUT#にもとづいて、目標値VOUT(REF)#を設定する。配光パターンごとの目標値は、以下の式(A)で表される。
OUT(REF)#=VDD(MIN)+R×IOUT# …(A)
【0095】
以上が制御例2に係る動作である。この制御例によれば、出力電圧VOUTを制御対象電圧VCNTとする構成において、出力電流IOUTに応じて、目標値VOUT(REF を設定することにより、電源電圧VDDを最低動作電圧VDD(MIN)付近に維持することができ、無駄な消費電力を削減できる。
【0096】
(制御例3)
制御例3では、制御例2と同様に、制御対象電圧VCNTが、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTである。制御例3では、制御例2と同様に、式(A)にもとづいて、目標値VOUT(REF)を設定する。それに加えて制御例3では、制御例1と同様に、急峻な電流変動を伴う配光パターンの切替が発生する場合に、それに先だって、目標値VOUT(REF)を所定電圧幅ΔV、増加させる。
【0097】
制御例3によれば電源制御回路225の応答速度が遅い場合に、ちらつきが生ずるのを防止できる。
【0098】
(制御例4)
制御例4では、制御例2と同様に、制御対象電圧VCNTが、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTである。制御例4では、式(A)にもとづく目標値VOUT(R EF)の設定は行わず、制御例1と同様に、急峻な電流変動を伴う配光パターンの切替が発生する場合に、それに先だって、目標値VOUT(REF)を所定電圧幅ΔV、増加させる。
【0099】
制御例4によれば電源制御回路225の応答速度が遅い場合に、ちらつきが生ずるのを防止できる。
【0100】
(デバイス情報にもとづく制御)
図4に戻る。灯具システム100は、さらに以下の特徴を備えてもよい。
【0101】
アレイ型発光デバイス212のインタフェース回路216は、複数の画素回路PIX1~PIXnそれぞれの発光素子213の電圧降下(すなわち順方向電圧)VF1~VFnを監視し、順方向電圧VF1~VFnに関する情報を含むデータS3Aを生成可能に構成される。本実施形態では、このデータS3Aは、コントロールユニット260を経由して、データS3Bとして電源回路220に送信される。
【0102】
電源制御回路225は、データS3Bを、制御対象電圧VCNTの目標値VCNT(R EF)に反映させる。制御対象電圧VCNTの目標値VCNT(REF)は、全チャンネルの発光素子213の順方向電圧VF1~VFnの最大値VF(MAX)に応じていてもよい。たとえば電源制御回路225が受信するデータS3Bは、全チャンネルの発光素子213の順方向電圧VF1~VFnを含んでもよい。この場合、電源制御回路225は、順方向電圧VF1~VFnの最大値VF(MAX)を取得し、最大値VF(MAX)にもとづいて、目標値VCNT(REF)を生成してもよい。あるいは、コントロールユニット260が、順方向電圧VF1~VFnの最大値VF(MAX)を取得し、最大値VF( MAX)を含むデータS3Bを、電源制御回路225に送信するようにしてもよい。
【0103】
図7(a)、(b)は、順方向電圧Vにもとづく目標値の制御を説明する図である。図7(a)、(b)は、灯具システム100の異なる個体の動作を示している。図7(a)では、アレイ型発光デバイス212のi番目の画素PIXiの順方向電圧VFiが最大値VF(MAX)となっている。制御対象電圧VCNTである電源電圧VDDの目標値VDD(REF)は、
DD(REF)=V+VFi(MAX)+α
にもとづいて定めてもよい。Vは電流源214の電圧降下であり、αはマージンである。
【0104】
図7(b)では、アレイ型発光デバイス212のj番目の画素PIXjの順方向電圧VFjが最大値VF(MAX)となっている。制御対象電圧VCNTである電源電圧VDDの目標値VDD(REF)は、
DD(REF)=V+VFj+α
にもとづいて定められる。
【0105】
図7(a)、(b)に示すように、実際の製品ごとに測定された順方向電圧Vを用いて、目標値VDD(REF)を決定することで、仕様で規定される値VDD(SPEC)よりも電源電圧VDDを下げることができる。これにより、アレイ型発光デバイス212の消費電力を下げることができる。
【0106】
図8は、灯具システム100の動作を示す図である。図8は、ひとつの灯具システム100が異なる温度環境で動作する様子を示す。LEDの順方向電圧Vは温度依存性を有しており、温度が高いほど小さくなる。本実施形態によれば、温度に応じて、制御対象電圧VDDの目標値VDD(REF)を適応的に設定できるため、消費電力を削減できる。
【0107】
以上がデバイス情報にもとづく制御である。この灯具システム100によれば、データS3Bに含まれる電圧降下Vに関する情報をリアルタイムで電源回路220のフィードバック制御に反映させることで、消費電力を削減できる。具体的には、実動作中の発光素子213の順方向電圧Vを監視することで、アレイ型発光デバイス212の実際の最低動作電圧VDD(MIN)を正確に見積もることができる。こうして見積もった最低動作電圧VDD(MIN)は、アレイ型発光デバイス212の個体ばらつきや温度変動を反映したものとなっており、仕様に規定される値VDD(SPEC)よりも低くなる。したがって、正確な最低動作電圧VDD(MIN)にもとづいて、電源回路220の動作条件を動的に決定することで、アレイ型発光デバイス212に供給される電源電圧VDDを下げることができ、消費電力を削減できる。
【0108】
続いてヘッドランプ200の具体的な構成例を説明する。以下では、順方向電圧Vに関するデータS3にもとづく目標値の制御の説明は省略する。
【0109】
(実施例1.1)
図9は、実施例1.1に係るヘッドランプ200Aのブロック図である。ヘッドランプ200Aは、配光可変光源210、電源回路220A、コントロールユニット260を備える。
【0110】
電源回路220Aは、出力端子OUT、検出端子SNS、DC/DCコンバータ224および電源制御回路225Aを備える。電源制御回路225Aは、フィードバック回路226A、コンバータコントローラ228、電圧設定回路230を備える。
【0111】
コンバータコントローラ228は、市販のDC/DCコンバータの制御IC(Integrated Circuit)を用いることができる。コンバータコントローラ228は、フィードバックピンFBに入力されたフィードバック電圧VFBが、内部で生成される基準電圧VREFに近づくように、パルス幅や周波数、デューティサイクルの少なくともひとつが調節されるパルス信号を生成し、パルス信号に応じてDC/DCコンバータ224をフィードバック制御する。
【0112】
電圧設定回路230には、アレイ型発光デバイス212が生成するデータS4が入力される。電圧設定回路230は、受信したデータS4にもとづいて、補正電圧VCMPを生成する。フィードバック回路226Aは、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOU に応じた制御対象電圧VCNTと補正電圧VCMPとにもとづいて、フィードバック電圧VFBを生成し、コンバータコントローラ228のフィードバックピンFBに供給する。フィードバック電圧VFBは、制御対象電圧VCNTと補正電圧VCMPそれぞれに応じて変化する信号であり、式(1)で表される。
FB=K・VCNT+K・VCMP …(1)
>0の定数であり、Kは、非ゼロの定数である。ここではK<0とする。コンバータコントローラ228によって、このフィードバック信号VFBが目標値VREFに近づくようにDC/DCコンバータ224が制御される。
【0113】
系が安定した定常状態において、
・VCNT+K・VCMP=VREF
が成り立つ。したがって定常状態において、制御対象電圧VCNTは、目標値VCNT( REF)に安定化される。
CNT(REF)=(VREF-K・VCMP)/K …(2)
【0114】
この実施例1.1において、制御対象電圧VCNTは、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDである。
【0115】
電源回路220Aの検出端子SNSは、電源ケーブル204(電源ラインLVDD)と独立した検出ライン(ジカ線)LSNSを介して、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDと接続される。フィードバック回路226Aの入力インピーダンスは十分に高く、検出ラインLSNSには電流は流れない。したがって検出電圧VSNSは、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDと等しい。フィードバック回路226Aには、検出端子SNSに発生する検出電圧VSNSが、制御対象電圧VCNTとして入力される。したがって、電源電圧VDDの目標値VDD(REF)は、式(3)で表される。
DD(REF)=(VREF-K・VCMP)/K …(3)
つまり、データS4に応じて補正電圧VCMPを変化させることで、電源電圧VDDの目標値VDD(REF)を変化させることができる。
【0116】
以上がヘッドランプ200Aの構成である。続いてその動作を説明する。図10は、図9のヘッドランプ200Aの動作波形図である。この動作は、上述の制御例1に対応する。
【0117】
定常状態において、補正電圧VCMPは定常値(この例では0V)である。時刻tに、配光パターンPTN1からPTN2への切替が指示される。それに先立つ時刻tに、電圧設定回路230は、補正電圧VCMPを増大する。その結果、式(3)で表される目標値VDD(REF)を高電位側にシフトさせることができる。その後、電圧設定回路230は、補正電圧VCMPを定常値に戻す。
【0118】
時刻tに、電流IOUTの減少をともなう配光パターンの変更が発生する。この場合には、電圧設定回路230は、補正電圧VCMPを定常値のまま維持すればよい。
【0119】
以上がヘッドランプ200Aの動作である。このヘッドランプ200Aによれば、データS4にもとづいて、補正電圧VCMPを変化させることで、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDの目標値VDD(REF)を動的に制御することが可能となる。
【0120】
続いて電圧設定回路230およびフィードバック回路226Aの構成例を説明する。
【0121】
図11は、フィードバック回路226Aの構成例を示す回路図である。このフィードバック回路226Aは、オペアンプを有する減算回路であり、抵抗R31~R34およびオペアンプOA3を含む。このフィードバック回路226Aの入出力特性は、式(5)で表される。
FB=(R31+R32)/R31×{R34/(R33+R34)×VCNT-R32/(R31+R32)×VCMP …(5)
【0122】
式(1)と(5)を対比すると、
=(R31+R32)/R31×R34/(R33+R34)
=-(R31+R32)/R31×R32/(R31+R32)
を得る。
【0123】
なお、フィードバック回路226Aを、オペアンプを用いた加算回路で構成してもよい。この場合、K>0,K>0となる。補正電圧VCMPが正であるとき、補正電圧VCMPに応じて、制御対象電圧VCNTの目標値を、低電位側にシフトさせることができる。
【0124】
図12は、電圧設定回路230の構成例を示す回路図である。電圧設定回路230は、マイクロコントローラ240、D/Aコンバータ234、バッファ236を含む。マイクロコントローラ240は、発光素子213の順方向電圧Vに関するデータS4に応じて、補正電圧VCMPを指定するデジタルの設定値DCMPを生成する。マイクロコントローラ240を用いることで、補正電圧VCMPを、ソフトウェア制御することが可能となる。
【0125】
D/Aコンバータ234は、マイクロコントローラ240が生成した設定値DCMPを、アナログの補正電圧VCMPに変換する。補正電圧VCMPは、バッファ236を介してフィードバック回路226Aに供給される。なお、D/Aコンバータ234の出力インピーダンスが十分に低い場合、バッファ236は省略できる。またD/Aコンバータ内蔵のマイクロコントローラ240を用いる場合、D/Aコンバータ234は、マイクロコントローラ240の内部に存在することとなる。
【0126】
(実施例1.2)
図13は、実施例1.2に係るヘッドランプ200Bのブロック図である。ヘッドランプ200Bの構成について、実施例1.1との相違点を中心に説明する。ヘッドランプ200Bは、配光可変光源210、電源回路220B、コントロールユニット260を備える。実施例1.2では、電源回路220Bの構成が、実施例1.1の電源回路220Aと異なっている。
【0127】
電源回路220Bは、出力端子OUT、DC/DCコンバータ224および電源制御回路225Bを備える。電源制御回路225Bは、フィードバック回路226B、コンバータコントローラ228、電圧設定回路230を備える。
【0128】
実施例1.2では、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTが、制御対象電圧VCNTである。フィードバック回路226Bには、出力端子OUTに発生する出力電圧VOUTが制御対象電圧VCNTとして入力される。したがって、出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)は、式(6)で表される。フィードバック回路226Bは、実施例1.1におけるフィードバック回路226Aと同様に、減算回路であってもよい。
OUT(REF)=(VREF-K・VCMP)/K …(6)
【0129】
続いてヘッドランプ200Bの動作を説明する。実施例1.2では、上述の制御例2~4のいずれかの制御を採用することができる。
【0130】
図14は、制御例2を採用するヘッドランプ200Bの動作波形図である。期間T~Tにおいて、配光パターンPTN1~PTN3が設定され、出力電流IOUTはIOU T1,IOUT2,IOUT3のように変化する。
【0131】
各配光パターンPTN1~PTN3において、補正電圧VCMPは、出力電流IOUTに実質的に比例している。この制御によれば、出力電流IOUTに応じて目標値VOUT (REF)を変化させることで、電源電圧VDDを一定に保つことができる。
【0132】
図15は、制御例4を採用するヘッドランプ200Bの動作波形図である。補正電圧VCMPは、出力電流IOUTに実質的に比例する成分と、配光パターンの変更の前後の一定期間、発生する成分(ハッチングを付す)と、を含む。前者は、図14に示す補正電圧VCMPに対応する。
【0133】
制御例4によれば、電流の増加をともなう配光パターンの変更が発生したときに、一時的に出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)を増大させることができる。
【0134】
以上がヘッドランプ200Bの動作である。このヘッドランプ200Bによれば、補正電圧VCMPを応じて、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTの目標値を設定することができる。
【0135】
(実施例1.3)
図16は、実施例1.3に係るヘッドランプ200Cのブロック図である。ヘッドランプ200Cの構成について、実施例1.2との相違点を中心に説明する。
【0136】
ヘッドランプ200Cは、配光可変光源210、電源回路220C、コントロールユニット260を備える。実施例1.3では、電源回路220Cの構成が、実施例1.2の電源回路220Bと異なっている。
【0137】
電源回路220Cの構成を説明する。電源回路220Cは、出力端子OUT、検出端子SNS、DC/DCコンバータ224、電源制御回路225Cを備える。
【0138】
電源制御回路225Cは、フィードバック回路226C、コンバータコントローラ228、電圧設定回路230を備える。
【0139】
フィードバック回路226Cには、制御対象電圧VCNTとして、出力電圧VOUTが入力される。また、フィードバック回路226Cには、検出ラインLSNSを介して、電源電圧VDDが入力される。さらにフィードバック回路226Cには、電圧設定回路230が生成する補正電圧VCMPが入力される。
【0140】
電圧設定回路230が生成する補正電圧VCMPは、定常状態において定常値をとる。電流の増加を伴う配光パターンの切り替えが発生するとき、電圧設定回路230は、補正電圧VCMPを増大する。
【0141】
フィードバック回路226Cは、3つの電圧VOUT,VSNS,VCMPにもとづいて、フィードバック電圧VFBを生成する。フィードバック回路226Cは、VOUTとVSNSの差分にもとづいて、電源ラインLVDDにおける電圧降下VDROP=VOU -VSNSを検出する。
【0142】
フィードバック回路226Cが生成するフィードバック電圧VFBは式(8)で表される。
FB=K・VOUT+K・VCMP+K・VDROP …(8)
【0143】
以上がヘッドランプ200Cの構成である。このヘッドランプ200Cにおいて、制御対象電圧である出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)は、式(9)で表される。
OUT(REF)=(VREF-K・VCMP-K・VDROP)/K …(9)
<0,K<0とすれば、
OUT(REF)=(VREF+|K|・VCMP+|K|・VDROP)/K …(9’)
となる。|K|=Kが成り立つとき、
OUT(REF)=(VREF+|K|・VCMP)/K+VDROP …(9'')
【0144】
実施例1.3によれば、実際に検出した電圧降下VDROPにもとづいて、出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)を最適化できるため、消費電力を削減できる。また補正電圧VCMPによって、応答遅れに起因する電圧低下をリカバーすることができる。またゲインK3を適切に定めることにより、接地ラインLGNDの電圧降下も補正可能である。
【0145】
図17は、フィードバック回路226Cの機能ブロック図である。フィードバック回路226Cは、3個の減算回路SUB1~SUB3を含んでもよい。減算回路SUB1は、出力電圧VOUTから検出電圧VSNSを減算し、電圧降下VDROPを算出する。減算回路SUB2は、出力電圧VOUTから電圧降下VDROPを減算する。減算回路SUB3は、減算回路SUB2の出力電圧VOUT-VDROPから、補正電圧VCMPを減算する。減算の順序は入れ替えてもよい。
【0146】
(実施例1.4)
図18は、実施例1.4に係るヘッドランプ200Dの回路図である。ヘッドランプ200Dは、配光可変光源210、電源回路220D、コントロールユニット260を備える。
【0147】
電源回路220Dの構成を説明する。電源回路220Dは、出力端子OUT、検出端子SNS、DC/DCコンバータ224、電源制御回路225Dを備える。
【0148】
電源制御回路225Dは、フィードバック回路226D、コンバータコントローラ228D、電圧設定回路230Dを備える。この実施例において、コンバータコントローラ228Dは、基準電圧設定ピンREFを有し、基準電圧設定ピンREFに入力される基準信号SREFに応じて、基準電圧VREFが設定可能となっている。コンバータコントローラ228Dは、基準信号SREFをデジタル信号として受け、内部の電圧源によって、基準電圧VREFを生成してもよい。あるいは、コンバータコントローラ228Dは、アナログの基準信号SREFを受け、それをそのまま内部の基準電圧VREFとして利用してもよい。コンバータコントローラ228Dは、フィードバックピンFBの電圧VFBが、基準信号SREFにもとづく基準電圧VREFに近づくように、DC/DCコンバータ224をフィードバック制御する。
【0149】
電圧設定回路230Dは、データS4に応じて、基準信号SREFを生成し、コンバータコントローラ228Dの基準電圧設定ピンREFに供給する。基準信号SREFがアナログ電圧である場合、電圧設定回路230Dは、図12と同様に構成することができ、補正電圧VCMPを基準信号SREFと読み替えればよい。基準信号SREFがデジタル信号である場合、電圧設定回路230Dは、図12のマイクロコントローラ240のみで構成することができ、設定値DCMPを、基準信号SREFと読み替えればよい。
【0150】
フィードバック回路226Dは、制御対象電圧VCNTに応じたフィードバック電圧VFBを生成し、コンバータコントローラ228DのフィードバックピンFBに供給する。
【0151】
実施例1.2と同様に、制御対象電圧VCNTは、出力電圧VOUTであってもよい。この場合、フィードバック電圧VFBは、式(10)で表される。
FB=K・VOUT …(10)
【0152】
実施例1.1と同様に、電源回路220Dと配光可変光源210Dを、検出ラインLSNSで接続し、検出電圧VSNS(=VDD)を制御対象電圧VCNTとしてもよい。この場合のフィードバック電圧VFBは、式(11)で表される。
FB=K・VSNS=K1・VDD …(11)
【0153】
実施例1.3と同様に、出力電圧VOUTを制御対象電圧VCNTとし、電源ラインLVDDにおける電圧降下VDROPを補正した電圧を、フィードバック電圧VFBとしてもよい。この場合のフィードバック電圧VFBは、式(12)で表される。
FB=K・VOUT+K・VDROP …(12)
【0154】
実施例1.3で説明したように、電圧降下VDROPは、電源回路220Dと配光可変光源210Dを、検出ラインLSNSで接続し、VOUTとVSNSの差分を計算すれば得ることができる。
【0155】
実施例1.4によれば、実施例1.1~1.3と同様の効果が得られる。
【0156】
続いて実施形態1に関連する変形例を説明する。
【0157】
(変形例1.1)
図19は、変形例1.1に係るヘッドランプ200を示す図である。これまでの説明では、配光可変光源210が1個のアレイ型発光デバイス212を備えることとしたが、配光可変光源210は、複数のアレイ型発光デバイス212を備えてもよい。その場合、電源回路220をユニット化し(電源ユニット222と称する)、複数のアレイ型発光デバイス212に対応して、複数の電源ユニット222を設けてもよい。各電源ユニット222の出力端子は、個別の電源ケーブルLVDDを介して、対応するアレイ型発光デバイス212の電源端子と接続される。また必要に応じて、電源ユニット222とアレイ型発光デバイス212のペアごとに、検出ラインLSNSを設ければよい。この変形例において、マイクロコントローラ240は、複数の電源ユニットで共通化してもよい。
【0158】
この変形例1.1では、配光可変光源210が、電源端子が独立した複数のアレイ型発光デバイス212に分割して構成される。そして、アレイ型発光デバイス212ごとに電源ユニット222を設け、アレイ型発光デバイス212と電源ユニットを電源ケーブルで1対1で接続することとしている。これにより、配光可変光源210に流れる電流を、複数の系統のDC/DCコンバータに分散させることができ、各DC/DCコンバータにおける電圧降下の影響を小さくでき、負荷応答性を改善できる。加えてDC/DCコンバータの構成部品、電源ケーブル、コネクタの選択肢が多くなり、設計の自由度が高くなる。
【0159】
(変形例1.2)
図20は、変形例1.2に係るヘッドランプ200を示す図である。アレイ型発光デバイス212は、内部の複数の発光画素が、複数のセグメントSEG1~SEGnに分割されており、複数のセグメントSEG1~SEGnに対応して、複数の電源端子VDDが設けられてもよい。電源回路220には、複数の電源端子VDDに対応して、複数の電源ユニット222が設けられる。各電源ユニット222の出力端子OUTは、個別の電源ケーブルLVDDを介して、アレイ型発光デバイス212の対応する電源端子VDDと接続される。また必要に応じて、電源ユニット222ごとに、検出ラインLSNSを設ければよい。
【0160】
この変形例1.2においても、配光可変光源210に流れる電流を、複数系統のDC/DCコンバータに分散させることができ、変形例1.1と同様の効果を得ることができる。
【0161】
(変形例1.3)
電源ユニット222は、フェーズシフト型のコンバータで構成してもよい。フェーズシフト型のコンバータを採用することで、シングルフェーズのコンバータに比べて、出力電圧VOUTiや出力電流IOUTiのリップルを小さくでき、また効率を改善できる。さらに、アレイ型発光デバイス212の画素回路においてPWM制御が行われる場合、電源ユニット222の出力電流IOUTiは複数の画素回路の点灯率に応じて高速に変動するところ、フェーズシフト型コンバータを採用することで、負荷変動に対する追従性(応答性)を高めることができる。
【0162】
(変形例1.4)
電源回路220やコントロールユニット260が、ヘッドランプ200に内蔵される場合を説明したが、それらの一方、あるいは両方は、ヘッドランプ200のボディの外側に設けられてもよい。配光可変光源210は発熱体であるため、熱を忌避するコントロールユニット260は、配光可変光源210から遠ざけて車室内に配置した方が、熱設計の観点からは有利である。
【0163】
(変形例1.5)
電源制御回路225は、配光パターンに関する情報を、コントロールユニット260を経由せずに上位コントローラ104から直接受信してもよい。
【0164】
(変形例1.6)
電源制御回路225は、複数の画素回路PIXの点消灯を問わずに、全画素の順方向電圧VF1~VFnの最大値にもとづいて、目標値を決定してもよい。電源制御回路225は、複数の画素回路PIXのうち、実際に点灯している画素の順方向電圧Vの最大値にもとづいて、目標値を決定してもよい。
【0165】
(変形例1.7)
アレイ型発光デバイスは、内部の複数の発光素子の順方向電圧Vの最大値がVF(M AX)予め測定され、内部の不揮発メモリに保持していてもよい。順方向電圧VF(MA X)は、全画素、全温度範囲の最大値であってもよい。あるいは、温度範囲ごとに順方向電圧VF(MAX)を保持し、現在の温度に応じた最大値を含むデータを送信してもよい。
【0166】
(実施形態2)
図21は、実施形態2に係る灯具システム100のブロック図である。灯具システム100は、ADBランプシステムであり、バッテリ102、上位コントローラ104およびヘッドランプ200を備える。
【0167】
上位コントローラ104は、ヘッドランプ200に対する配光指令を生成する。配光指令は、点灯指令と追加情報を含みうる。点灯指令は、ハイビームやロービームのオン、オフを指示する信号を含みうる。点灯指令に応じて、ヘッドランプ200が形成すべき基本配光が決定される。また追加情報は、ハイビームを照射すべきでない範囲(遮光領域)に関するデータや、車速、ステアリング角などの情報を含みうる。追加情報に応じて、基本配光が修正され、最終的な配光が決定される。上位コントローラ104は、車両側のECU(Electronic Control Unit)として構成してもよいし、ヘッドランプ200に内蔵さ
れる灯具側のECUとして構成してもよい。
【0168】
ヘッドランプ200は、配光可変光源210、電源回路220、接続手段202、コントロールユニット260を備えるADBランプである。
【0169】
配光可変光源210は、アレイ状に配置される複数の画素を備え、画素毎にオン、オフが個別制御可能となっている。ヘッドランプ200において、所望の配光が得られるように、複数の画素のオン、オフが制御される。
【0170】
より具体的には配光可変光源210は、アレイ型発光デバイス212を備える。アレイ型発光デバイス212は、n個の画素回路PIX1~PIXnと、複数の画素回路PIX1~PIXnと接続される電源端子VDDと、を有する。
【0171】
画素回路PIXj(1≦j≦n)は、電源端子VDDと接地端子(接地ライン)GNDの間に直列に設けられる発光素子213_jおよび電流源214_jを含む。複数の発光素子213_1~213_nは、LEDやLD(半導体レーザ)、有機EL素子などの半導体発光素子であり、空間的にアレイ状(マトリクス状)に配置されている。
【0172】
複数の電流源214_1~214_nは個別にオン、オフが制御可能となっており、j番目の電流源214_jがオンのとき、対応する発光素子213_jが発光し、その画素回路PIXjが点灯状態となる。
【0173】
インタフェース回路216は、コントロールユニット260からの制御信号S2に応じて、電流源214_1~214_nのオン、オフを制御する。インタフェース回路216は、コントロールユニット260と高速シリアルインタフェースを介して接続され、全画素のオン、オフを指示する制御信号S2を受信する。
【0174】
電源回路220は、配光可変光源210に電力を供給する。電源回路220は、定電圧出力のコンバータを含み、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDに対して、安定化された電源電圧VDDを供給する。電源電圧VDDは、V+VSATにもとづいて定められ、典型的には4~5V程度である。Vは発光素子213の順方向電圧、VSATは電流源214の最低動作電圧である。したがって電源回路220は、12V(あるいは24V)程度のバッテリ電圧VBATを降圧する降圧コンバータ(Buckコンバータ)で構成することができる。
【0175】
コントロールユニット260は、上位コントローラ104からの配光指令S1を受け、配光指令S1に応じた制御信号S2を生成し、配光可変光源210に対して送信する。コントロールユニット260は描画ECUとも称される。たとえばコントロールユニット260は、アレイ型発光デバイス212の複数の画素回路PIX1~PIXnをPWM制御し、配光を制御する。PWM周波数は、数百Hz(たとえば100~400Hz)であり、したがってPWM周期は、数ミリ秒~数十ミリ秒(ms)である。
【0176】
電源回路220とアレイ型発光デバイス212の間は、電源ケーブル204を含む接続手段202を介して接続される。接続手段202は、電源ケーブル204に加えて、コネクタ(カプラ)206A,206Bなどを含んでもよい。
【0177】
続いて電源回路220の構成を説明する。電源回路220は、DC/DCコンバータ224および電源制御回路225を備える。
【0178】
電源ケーブル204は、電源ラインLVDDおよび接地ラインLGNDを含む。DC/DCコンバータ224の正極出力端子OUTPは、電源ラインLVDDを介してアレイ型発光デバイス212の電源端子VDDと接続される。また、DC/DCコンバータ224の負極出力端子OUTNは、接地ラインLGNDを介してアレイ型発光デバイス212の接地端子GNDと接続される。
【0179】
電源ラインLVDDおよび接地ラインLGNDそれぞれのインピーダンスをRVDD,RGNDとする。
【0180】
DC/DCコンバータ224の入力には、バッテリからの電圧VBATが供給され、その出力は、接続手段202を介してアレイ型発光デバイス212と接続される。電源制御回路225は、接続手段202の電圧降下VDROPを取得する。
【0181】
接続手段202の電圧降下VDROPは、電源ケーブル204における電圧降下、コネクタ206における電圧降下を含みうる。より詳しくは、接続手段202の電圧降下V ROPは、電源ラインLVDDの電圧降下V、接地ラインLGNDの電圧降下V、コネクタ206Aの電圧降下V、コネクタ206Bの電圧降下Vを含みうる。電源制御回路225は、これらの電圧降下V~Vの合計を、接続手段202の電圧降下VDR OPとして取得してもよい。
DROP=V+V+V+V
【0182】
あるいは、コネクタ206における電圧降下が電源ケーブル204のそれに比べて相対的に小さい場合、電源ケーブル204の電圧降下V,Vのみを電圧降下VDROPとして取得してもよい。
DROP=V+V
【0183】
あるいは、接地ラインLGNDとしてボディアースを利用するような場合、そのインピーダンスは十分に低い。その場合には、電源ケーブル204の電源ラインLVDDの電圧降下Vのみを、電圧降下VDROPとして取得してもよい。
【0184】
電源制御回路225は、取得した電圧降下VDROPに応じて目標値VOUT(REF を設定する。
OUT(REF)=VDD(MIN)+VDROP
そして、電源制御回路225は、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTが目標値VOUT(REF)に近づくように、DC/DCコンバータ224を制御する。
【0185】
以上が灯具システム100の構成である。続いて灯具システム100の動作を説明する。
【0186】
図22は、図21の灯具システム100の動作を説明する図である。出力電流IOUTは、時々刻々と変化する。接続手段202には、出力電流IOUTに比例する電圧降下VDROPが発生する。
DROP=R×IOUT
Rは、接続手段202のインピーダンスである。
【0187】
電源制御回路225は、電圧降下VDROPを取得し、取得した電圧降下VDROPに応じた目標値VOUT(REF)を設定する。そして電源制御回路225は、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTを上の式で表される目標値VOUT(REF)に安定化する。
【0188】
アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDと接地端子GND間に印加される入力電圧Vは、DC/DCコンバータ224の正負の出力OUTP-OUTN間の電圧V、すなわちDC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTよりも、接続手段202における電圧降下VDROP分だけ低くなる。本実施形態では、電源回路220は、接続手段202の電圧降下VDROP分、上乗せした出力電圧VOUTを生成することになるから、アレイ型発光デバイス212の入力電圧Vは、電圧降下VDROPの大きさにかかわらず、一定に保たれる。したがって、電源電圧VDDは、出力電流IOUTの大きさにかかわらず、最低動作電圧VDD(MIN)付近に維持することができ、無駄な消費電力を削減できる。
【0189】
本発明は、図21のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0190】
(実施例2.1)
図23は、実施例2.1に係るヘッドランプ200Aのブロック図である。ヘッドランプ200Aは、配光可変光源210、電源回路220A、コントロールユニット260を備える。
【0191】
電源回路220Aは、DC/DCコンバータ224、電流センサ223および電源制御回路225Aを備える。
【0192】
電流センサ223は、DC/DCコンバータ224の出力電流IOUTに応じた電流検出信号VCSを生成する。たとえば電流センサ223は、センス抵抗Rsと、アンプAMP1を含む。センス抵抗Rsは、出力電流IOUTの経路上に設けられる。なお、センス抵抗Rsは、図23では正極出力端子OUTP側に設けられるが、負極出力端子OUTN側に設けてもよい。アンプAMP1は、センス抵抗Rsに発生する電圧降下を増幅し、電流検出信号VCSを出力する。この電流検出信号VCSは、出力電流IOUTに比例しており、したがって、接続手段202の電圧降下VDROPに応じた信号である。電流センサ223の検出利得をAとするとき、以下の式が成り立つ。
CS=A×IOUT
【0193】
電源制御回路225Aは、電圧降下VDROPと相関を有する電流検出信号VCSにもとづいて、目標値VOUT(REF)を設定し、DC/DCコンバータ224を制御する。
【0194】
実施例2.1において、電源制御回路225Aは、フィードバック回路226Aおよびコンバータコントローラ228を備える。コンバータコントローラ228は、市販のDC/DCコンバータの制御IC(Integrated Circuit)を用いることができる。コンバータコントローラ228は、フィードバックピンFBに入力されたフィードバック電圧VFBが、内部で生成される基準電圧VREFに近づくように、パルス幅や周波数、デューティサイクルの少なくともひとつが調節されるパルス信号を生成し、パルス信号に応じてDC/DCコンバータ224をフィードバック制御する。
【0195】
フィードバック回路226Aは、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTから、電流検出信号VCSにもとづく補正電圧VCMPを減算し、フィードバック電圧VFBを生成する。そしてフィードバック電圧VFBを、コンバータコントローラ228のフィードバックピンFBに供給する。
【0196】
フィードバック電圧VFBは、出力電圧VOUTと補正電圧VCMPそれぞれに応じて変化する信号であり、式(1)で表される。
FB=K・VOUT-K・VCMP …(1)
,K>0
【0197】
コンバータコントローラ228によって、このフィードバック信号VFBが目標値V EFに近づくようにDC/DCコンバータ224が制御される。
【0198】
系が安定した定常状態において、
・VOUT-K・VCMP=VREF
が成り立つ。したがって定常状態において、出力電圧VOUTは、式(2)で表される目標値VOUT(REF)に安定化される。
OUT(REF)=(VREF+K・VCMP)/K …(2)
【0199】
したがってVCMP=VCS=A×IOUTであるとき、
OUT(REF)=(VREF+K・A×IOUT)/K …(2’)
を得る。
/K・Aが接続手段202のインピーダンスRとなり、VREF/KがVDD (MIN)となるように、回路定数を定めれば、
OUT(REF)=VDD(MIN)+IOUT×R=VDD(MIN)+VDRO
とすることができる。
【0200】
図24は、フィードバック回路226Aの構成例を示す回路図である。このフィードバック回路226Aは、オペアンプを有する減算回路227を含む。減算回路227は、抵抗R31~R34およびオペアンプOA3を含む。この減算回路227の入出力特性は、式(3)で表される。
Vx=(R31+R32)/R31×{R34/(R33+R34)×VCNT-R32/(R31+R32)×VCMP …(3)
【0201】
減算回路227の出力電圧Vxを、フィードバック電圧VFBとしてもよい。あるいは、電圧Vxを抵抗R35,R36によって分圧し、分圧後の電圧VFB’をフィードバック電圧として出力してもよい。
【0202】
Vx=VFBである場合、式(1)と式(3)を比較すると、
=(R31+R32)/R31×R34/(R33+R34)
=(R31+R32)/R31×R32/(R31+R32)
を得る。
【0203】
(実施例2.2)
図25は、実施例2.2に係るヘッドランプ200Bのブロック図である。ヘッドランプ200Bは、配光可変光源210、電源回路220B、コントロールユニット260を備える。
【0204】
電源回路220Bは、DC/DCコンバータ224、電源制御回路225Bおよび検出端子SNSを備える。
【0205】
検出端子SNSは、接続手段202と独立した検出ライン(ジカ線)LSNSを介して、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDと接続される。電源制御回路225Bの入力インピーダンスは十分に高く、検出ラインLSNSには電流は流れない。したがって検出端子SNSに生ずる検出電圧VSNSは、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDと等しい。
【0206】
電源制御回路225Bは、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTと検出端子SNSの検出電圧VSNSの差分ΔV=VOUT-VSNSにもとづいて、接続手段202の電圧降下VDROPを取得する。この差分ΔVは、接続手段202の電源ラインLVDDおよび正極側のコネクタの電圧降下を表す。
【0207】
たとえば接続手段202の正極側のインピーダンスと、負極側のインピーダンスが等しい場合、ΔV×2が、接続手段202の電圧降下VDROPを表す。電源制御回路225Bは、アンプAMP2、フィードバック回路226Bおよびコンバータコントローラ228を備える。アンプAMP2は、出力電圧VOUTと検出電圧VSNSの差分を増幅し、補正電圧VCMPを生成する。この補正電圧VCMPは、出力電流IOUTに比例する。
CMP=B×(VOUT-VSNS)=A×IOUT
【0208】
フィードバック回路226Bは、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTから補正電圧VCMPを減算し、フィードバック電圧VFBを生成する。そしてフィードバック電圧VFBを、コンバータコントローラ228のフィードバックピンFBに供給する。
【0209】
フィードバック電圧VFBは、出力電圧VOUTと補正電圧VCMPそれぞれに応じて変化する信号であり、式(1)で表される。
FB=K・VOUT-K・VCMP …(再1)
【0210】
コンバータコントローラ228によって、このフィードバック信号VFBが目標値V EFに近づくようにDC/DCコンバータ224が制御される。定常状態では、出力電圧VOUTは、式(2)で表される目標値VOUT(REF)に安定化される。
OUT(REF)=(VREF+K・VCMP)/K …(再2)
【0211】
したがってVCMP=A×IOUTであるとき、
OUT(REF)=(VREF+K・A×IOUT)/K …(2’)
を得る。
/K・Aが接続手段202のインピーダンスRとなり、VREF/KがVDD (MIN)となるように、回路定数を定めれば、
OUT(REF)=VDD(MIN)+IOUT×R=VDD(MIN)+VDRO
とすることができる。
【0212】
(実施例2.3)
図26は、実施例2.3に係るヘッドランプ200Cのブロック図である。ヘッドランプ200Cは、配光可変光源210、電源回路220C、コントロールユニット260を備える。
【0213】
電源回路220Cは、DC/DCコンバータ224、電流センサ223および電源制御回路225Cを備える。
【0214】
電流センサ223は、DC/DCコンバータ224の出力電流IOUTに応じた電流検出信号VCSを生成する。
CS=A×IOUT
【0215】
電源制御回路225Cは、電圧設定回路230Cおよびコンバータコントローラ228Cを含む。コンバータコントローラ228Cは、フィードバックピンFBに加えて、基準電圧設定ピンREFを有しており、基準電圧設定ピンREFに入力される基準信号SRE に応じて、基準電圧VREFが設定可能となっている。コンバータコントローラ228Cは、アナログの基準信号SREFを受け、それをそのまま内部の基準電圧VREFとして利用する。コンバータコントローラ228Cは、フィードバックピンFBの電圧VFBが、基準信号SREFにもとづく基準電圧VREFに近づくように、DC/DCコンバータ224をフィードバック制御する。
【0216】
コンバータコントローラ228CのフィードバックピンFBには、出力電圧VOUTに応じたフィードバック電圧VFBが入力される。この例では、フィードバック電圧VFBは、出力電圧VOUTを分圧した電圧であり、以下の式(4)で表される。
FB=K×VOUT …(4)
【0217】
電圧設定回路230Cは、接続手段202の電圧降下VDROPに応じた基準信号S EFを生成し、コンバータコントローラ228Cの基準電圧設定ピンREFに供給する。この実施例において、電圧設定回路230Cは、所定の電圧VREGと、電流検出信号VCSにもとづく補正電圧VCMPを加算し、アナログの基準電圧VREFを生成する。
REF=K・VREG+K・VCMP …(5)
【0218】
定常状態では、VREF=VFBが成り立つから、式(6)を得る。
・VREG+K・VCMP=K×VOUT …(6)
【0219】
したがって、出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)は、式(7)で表される。
OUT(REF)=(K・VREG+K・VCMP)/K …(7)
【0220】
式(7)に、VCMP=VCS=A×IOUTを代入すると、式(8)を得る。
OUT(REF)=(K・VREG+K・A×IOUT)/K …(8)
したがって、K/K×VREG=VDD(MIN)、K・A/K=Rとなるように、回路定数を定めることで、
OUT(REF)=VDD(MIN)+R×IOUT
とすることができる。
【0221】
(実施例2.4)
図27は、実施例2.4に係るヘッドランプ200Dのブロック図である。ヘッドランプ200Dは、配光可変光源210、電源回路220D、コントロールユニット260を備える。
【0222】
電源回路220Dは、DC/DCコンバータ224、電源制御回路225Dおよび検出端子SNSを備える。検出端子SNSは、接続手段202と独立した検出ライン(ジカ線)LSNSを介して、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDと接続される。
【0223】
電源制御回路225Dは、アンプAMP3、電圧設定回路230Dおよびコンバータコントローラ228Dを含む。コンバータコントローラ228Dは、フィードバックピンFBに加えて、基準電圧設定ピンREFを有しており、基準電圧設定ピンREFに入力される基準信号SREFに応じて、基準電圧VREFが設定可能となっている。コンバータコントローラ228Dのフィードバックピンには、VFB=K×VOUTが入力される。
【0224】
アンプAMP3は、出力電圧VOUTと検出電圧VSNSの差分を増幅し、補正電圧VCMPを生成する。この補正電圧VCMPは、出力電流IOUTに比例する。
CMP=B×(VOUT-VSNS)=A×IOUT
【0225】
電圧設定回路230Dは、接続手段202の電圧降下VDROPに応じた基準信号S EFを生成し、コンバータコントローラ228Dの基準電圧設定ピンREFに供給する。この実施例において、電圧設定回路230Dは、所定の電圧VREGと補正電圧VCMPを加算し、アナログの基準電圧VREFを生成する。
REF=K・VREG+K・VCMP …(9)
【0226】
この電源回路220Dにおいて、出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)は、式(10)で表される。
OUT(REF)=(K・VREG+K・VCMP)/K …(10)
【0227】
式(10)に、VCMP=A×IOUTを代入すると、式(11)を得る。
OUT(REF)=(K・VREG+K・A×IOUT)/K …(11)
したがって、K/K×VREG=VDD(MIN)、K・A/K=Rとなるように、回路定数を定めることで、
OUT(REF)=VDD(MIN)+R×IOUT
とすることができる。
【0228】
実施形態2に関連する変形例を説明する。
【0229】
(変形例2.1)
図28は、変形例2.1に係るヘッドランプ200を示す図である。これまでの説明では、配光可変光源210が1個のアレイ型発光デバイス212を備えることとしたが、配光可変光源210は、複数のアレイ型発光デバイス212を備えてもよい。その場合、電源回路220をユニット化し(電源ユニット222と称する)、複数のアレイ型発光デバイス212に対応して、複数の電源ユニット222を設けてもよい。各電源ユニット222の出力端子は、個別の電源ケーブルLVDDを介して、対応するアレイ型発光デバイス212の電源端子と接続される。また必要に応じて、電源ユニット222とアレイ型発光デバイス212のペアごとに、検出ラインLSNSを設ければよい。この変形例において、マイクロコントローラ240は、複数の電源ユニットで共通化してもよい。
【0230】
この変形例2.1では、配光可変光源210が、電源端子が独立した複数のアレイ型発光デバイス212に分割して構成される。そして、アレイ型発光デバイス212ごとに電源ユニット222を設け、アレイ型発光デバイス212と電源ユニットを電源ケーブルで1対1で接続することとしている。これにより、配光可変光源210に流れる電流を、複数の系統のDC/DCコンバータに分散させることができ、各DC/DCコンバータにおける電圧降下の影響を小さくでき、負荷応答性を改善できる。加えてDC/DCコンバータの構成部品、電源ケーブル、コネクタの選択肢が多くなり、設計の自由度が高くなる。
【0231】
(変形例2.2)
図29は、変形例2.2に係るヘッドランプ200を示す図である。アレイ型発光デバイス212は、内部の複数の発光画素が、複数のセグメントSEG1~SEGnに分割されており、複数のセグメントSEG1~SEGnに対応して、複数の電源端子VDDが設けられてもよい。電源回路220には、複数の電源端子VDDに対応して、複数の電源ユニット222が設けられる。各電源ユニット222の出力端子OUTは、個別の電源ケーブルLVDDを介して、アレイ型発光デバイス212の対応する電源端子VDDと接続される。また必要に応じて、電源ユニット222ごとに、検出ラインLSNSを設ければよい。
【0232】
この変形例2.2においても、配光可変光源210に流れる電流を、複数系統のDC/DCコンバータに分散させることができ、変形例2.1と同様の効果を得ることができる。
【0233】
(変形例2.3)
電源ユニット222は、フェーズシフト型のコンバータで構成してもよい。フェーズシフト型のコンバータを採用することで、シングルフェーズのコンバータに比べて、出力電圧VOUTiや出力電流IOUTiのリップルを小さくでき、また効率を改善できる。さらに、アレイ型発光デバイス212の画素回路においてPWM制御が行われる場合、電源ユニット222の出力電流IOUTiは複数の画素回路の点灯率に応じて高速に変動するところ、フェーズシフト型コンバータを採用することで、負荷変動に対する追従性(応答性)を高めることができる。
【0234】
(変形例2.4)
電源回路220やコントロールユニット260が、ヘッドランプ200に内蔵される場合を説明したが、それらの一方、あるいは両方は、ヘッドランプ200のボディの外側に設けられてもよい。配光可変光源210は発熱体であるため、熱を忌避するコントロールユニット260は、配光可変光源210から遠ざけて車室内に配置した方が、熱設計の観点からは有利である。
【0235】
(変形例2.5)
実施例2.1~2.4では、電源制御回路225をアナログ回路で構成したが、その一部あるいは全部を、デジタル回路で構成してもよい。たとえば、電源制御回路225はマイクロコントローラを含んでもよい。マイクロコントローラは電流検出信号VCSあるいはアンプAMP3の出力電圧をデジタル値に変換し、接続手段202の電圧降下VDRO を取得し、デジタル信号処理によって出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)を設定してもよい。
【0236】
(変形例2.6)
実施例2.2あるいは実施例2.4において、検出端子SNSを、検出ラインLSNSを介してアレイ型発光デバイス212の接地端子GNDと接続してもよい。この場合、アンプAMP2あるいはAMP3は、検出端子SNSの電圧VSNSと、DC/DCコンバータ224の負極出力OUTNの電圧との差分を増幅すればよい。
【0237】
(実施形態3)
図30は、実施形態3に係る灯具システム100のブロック図である。灯具システム100は、ADBランプシステムであり、バッテリ102、上位コントローラ104およびヘッドランプ200を備える。
【0238】
上位コントローラ104は、ヘッドランプ200に対する配光指令を生成する。配光指令は、点灯指令と追加情報を含みうる。点灯指令は、ハイビームやロービームのオン、オフを指示する信号を含みうる。点灯指令に応じて、ヘッドランプ200が形成すべき基本配光が決定される。また追加情報は、ハイビームを照射すべきでない範囲(遮光領域)に関するデータや、車速、ステアリング角などの情報を含みうる。追加情報に応じて、基本配光が修正され、最終的な配光が決定される。上位コントローラ104は、車両側のECUとして構成してもよいし、ヘッドランプ200に内蔵される灯具側のECUとして構成してもよい。
【0239】
ヘッドランプ200は、配光可変光源210、電源回路220、コントロールユニット260を備えるADBランプである。
【0240】
配光可変光源210は、アレイ状に配置される複数の画素を備え、画素毎にオン、オフが個別制御可能となっている。ヘッドランプ200において、所望の配光が得られるように、複数の画素のオン、オフが制御される。
【0241】
より具体的には配光可変光源210は、アレイ型発光デバイス212を備える。アレイ型発光デバイス212は、n個の画素回路PIX1~PIXnと、複数の画素回路PIX1~PIXnと接続される電源端子VDDと、を有する。
【0242】
画素回路PIXj(1≦j≦n)は、電源端子VDDと接地端子(接地ライン)GNDの間に直列に設けられる発光素子213_jおよび電流源214_jを含む。複数の発光素子213_1~213_nは、LEDやLD(半導体レーザ)、有機EL素子などの半導体発光素子であり、空間的にアレイ状(マトリクス状)に配置されている。
【0243】
複数の電流源214_1~214_nは個別にオン、オフが制御可能となっており、j番目の電流源214_jがオンのとき、対応する発光素子213_jが発光し、その画素回路PIXjが点灯状態となる。
【0244】
インタフェース回路216は、コントロールユニット260からの制御信号S2に応じて、電流源214_1~214_nのオン、オフを制御する。インタフェース回路216は、コントロールユニット260と高速シリアルインタフェースを介して接続され、全画素のオン、オフを指示する制御信号S2を受信する。
【0245】
またインタフェース回路216は、複数の画素回路PIX1~PIXnそれぞれの発光素子213の電圧降下(すなわち順方向電圧)VF1~VFnを監視し、順方向電圧V ~VFnに関する情報を含むデータS3Aを生成可能に構成される。本実施形態では、このデータS3Aは、コントロールユニット260を経由して、データS3Bとして電源回路220に送信される。
【0246】
電源回路220は、配光可変光源210に電力を供給する。電源回路220は、定電圧出力のコンバータを含み、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDに対して、安定化された電源電圧VDDを供給する。電源電圧VDDは、V+VSATにもとづいて定められ、典型的には4~5V程度である。Vは発光素子213の順方向電圧、VSATは電流源214の最低動作電圧である。したがって電源回路220は、12V(あるいは24V)程度のバッテリ電圧VBATを降圧する降圧コンバータ(Buckコンバータ)で構成することができる。
【0247】
コントロールユニット260は、上位コントローラ104からの配光指令S1を受け、配光指令S1に応じた制御信号S2を生成し、配光可変光源210に対して送信する。コントロールユニット260は描画ECUとも称される。たとえばコントロールユニット260は、アレイ型発光デバイス212の複数の画素回路PIX1~PIXnをPWM制御し、配光を制御する。PWM周波数は、数百Hz(たとえば100~400Hz)であり、したがってPWM周期は、数ミリ秒~数十ミリ秒(ms)である。
【0248】
続いて電源回路220の構成を説明する。電源回路220は、出力端子AP/AN、接地端子GND、DC/DCコンバータ224および電源制御回路225を備える。
【0249】
出力端子AP/ANは、電源ケーブル204を介してアレイ型発光デバイス212の電源端子VDDおよび接地端子GNDと接続される。電源ケーブル204は、電源ラインLVDDと接地ラインLGNDを含む。DC/DCコンバータ224の正極出力OUTPは、出力端子AP、電源ラインLVDDを介して、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDと接続され、DC/DCコンバータ224の負極出力OUTNは、出力端子AN、接地ラインLGNDを介して、アレイ型発光デバイス212の接地端子GNDと接続される。DC/DCコンバータ224の入力には、バッテリからの電圧VBATが供給される。
【0250】
電源制御回路225は、コントロールユニット260から、データS3Bを受信する。電源制御回路225は、受信したデータS3Bにもとづいて、制御対象電圧VCNTの目標値VCNT(REF)を決定し、制御対象電圧VCNTが目標値VCNT(REF)に近づくように、DC/DCコンバータ224を制御する。
【0251】
詳しくは後述するように、制御対象電圧VCNTは、アレイ型発光デバイス212の電源電圧VDDであってもよいし、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTであってもよい。
【0252】
制御対象電圧VCNTの目標値VCNT(REF)は、全チャンネルの発光素子213の順方向電圧VF1~VFnの最大値VF(MAX)に応じていてもよい。たとえば電源制御回路225が受信するデータS3Bは、全チャンネルの発光素子213の順方向電圧VF1~VFnを含んでもよい。この場合、電源制御回路225は、順方向電圧VF1~VFnの最大値VF(MAX)を取得し、最大値VF(MAX)にもとづいて、目標値VCNT(REF)を生成してもよい。あるいは、コントロールユニット260が、順方向電圧VF1~VFnの最大値VF(MAX)を取得し、最大値VF(MAX)を含むデータS3Bを、電源制御回路225に送信するようにしてもよい。
【0253】
以上が灯具システム100の構成である。図31(a)、(b)は、灯具システム100の動作を示す図である。ここでは、制御対象電圧VCNTが、アレイ型発光デバイス212の電源電圧VDDであるとする。
【0254】
図31(a)と(b)は、灯具システム100の異なる個体の動作を示している。図31(a)では、アレイ型発光デバイス212のi番目の画素PIXiの順方向電圧VFiが最大値VF(MAX)となっている。制御対象電圧VCNTである電源電圧VDDの目標値VDD(REF)は、
DD(REF)=V+VFi(MAX)+α
にもとづいて定めてもよい。Vは電流源214の電圧降下であり、αはマージンである。
【0255】
図31(b)では、アレイ型発光デバイス212のj番目の画素PIXjの順方向電圧VFjが最大値VF(MAX)となっている。制御対象電圧VCNTである電源電圧V の目標値VDD(REF)は、
DD(REF)=V+VFj+α
にもとづいて定められる。
【0256】
図31(a)、(b)に示すように、実際の製品ごとに測定された順方向電圧Vを用いて、目標値VDD(REF)を決定することで、仕様で規定される値VDD(SPEC よりも電源電圧VDDを下げることができる。これにより、アレイ型発光デバイス212の消費電力を下げることができる。
【0257】
図32は、灯具システム100の動作を示す図である。図32は、ひとつの灯具システム100が異なる温度環境で動作する様子を示す。LEDの順方向電圧Vは温度依存性を有しており、温度が高いほど小さくなる。本実施形態によれば、温度に応じて、制御対象電圧VDDの目標値VDD(REF)を適応的に設定できるため、消費電力を削減できる。
【0258】
以上が灯具システム100の動作である。この灯具システム100によれば、データS3Bに含まれる電圧降下Vに関する情報をリアルタイムで電源回路220のフィードバック制御に反映させることで、消費電力を削減できる。具体的には、実動作中の発光素子213の順方向電圧Vを監視することで、アレイ型発光デバイス212の実際の最低動作電圧VDD(MIN)を正確に見積もることができる。こうして見積もった最低動作電圧VDD(MIN)は、アレイ型発光デバイス212の個体ばらつきや温度変動を反映したものとなっており、仕様に規定される値VDD(SPEC)よりも低くなる。したがって、正確な最低動作電圧VDD(MIN)にもとづいて、電源回路220の動作条件を動的に決定することで、アレイ型発光デバイス212に供給される電源電圧VDDを下げることができ、消費電力を削減できる。
【0259】
本発明は、図30のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0260】
(実施例3.1)
図33は、実施例3.1に係るヘッドランプ200Aのブロック図である。ヘッドランプ200Aは、配光可変光源210、電源回路220A、コントロールユニット260を備える。
【0261】
電源回路220Aは、出力端子OUT、検出端子SNS、DC/DCコンバータ224および電源制御回路225Aを備える。電源制御回路225Aは、フィードバック回路226A、コンバータコントローラ228、電圧設定回路230を備える。
【0262】
コンバータコントローラ228は、市販のDC/DCコンバータの制御IC(Integrated Circuit)を用いることができる。コンバータコントローラ228は、フィードバックピンFBに入力されたフィードバック電圧VFBが、内部で生成される基準電圧VREFに近づくように、パルス幅や周波数、デューティサイクルの少なくともひとつが調節されるパルス信号を生成し、パルス信号に応じてDC/DCコンバータ224をフィードバック制御する。
【0263】
電圧設定回路230には、アレイ型発光デバイス212が生成するデータS3Bが入力される。電圧設定回路230は、受信したデータS3Bにもとづいて、補正電圧VCMPを生成する。フィードバック回路226Aは、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTに応じた制御対象電圧VCNTと補正電圧VCMPとにもとづいて、フィードバック電圧VFBを生成し、コンバータコントローラ228のフィードバックピンFBに供給する。フィードバック電圧VFBは、制御対象電圧VCNTと補正電圧VCMPそれぞれに応じて変化する信号であり、式(1)で表される。
FB=K・VCNT+K・VCMP …(1)
>0の定数であり、Kは、非ゼロの定数である。ここではK<0とする。コンバータコントローラ228によって、このフィードバック信号VFBが目標値VREFに近づくようにDC/DCコンバータ224が制御される。
【0264】
系が安定した定常状態において、
・VCNT+K・VCMP=VREF
が成り立つ。したがって定常状態において、制御対象電圧VCNTは、目標値VCNT( REF)に安定化される。
CNT(REF)=(VREF-K・VCMP)/K …(2)
【0265】
この実施例3.1において、制御対象電圧VCNTは、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDである。
【0266】
電源回路220Aの検出端子SNSは、電源ケーブル204(電源ラインLVDD)と独立した検出ライン(ジカ線)LSNSを介して、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDと接続される。フィードバック回路226Aの入力インピーダンスは十分に高く、検出ラインLSNSには電流は流れない。したがって検出電圧VSNSは、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDと等しい。フィードバック回路226Aには、検出端子SNSに発生する検出電圧VSNSが、制御対象電圧VCNTとして入力される。したがって、電源電圧VDDの目標値VDD(REF)は、式(3)で表される。
DD(REF)=(VREF-K・VCMP)/K …(3)
つまり、データS3Bに応じて補正電圧VCMPを変化させることで、電源電圧VDDの目標値VDD(REF)を変化させることができる。
【0267】
以上がヘッドランプ200Aの構成である。続いてその動作を説明する。図34は、図33のヘッドランプ200Aの動作波形図である。期間Tにおいて補正電圧VCMPは0Vである。この期間Tの電源電圧VDDは、
DD(REF)_0=VREF/K
に安定化される。DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTは、電源電圧VDDよりも、電源ラインLVDDおよびコネクタ等における電圧降下VDROPだけ高い電圧となり、式(4)で表される。
OUT=VDD+VDROP=VDD+R×IOUT …(4)
Rは、電源ラインLVDDおよびコネクタのインピーダンスである。ヘッドランプ200Aの点灯中、アレイ型発光デバイス212の動作電流IOUTは変動する。長い時間スケールでみると、出力電流IOUTの平均値は、ヘッドランプ200Aが形成する配光に応じて変化する。また短い時間スケールでみると、出力電流IOUTの瞬時値は、PWM制御の周期で変動する。図34には、長いあるいは短い時間スケールで、出力電流IOU が変動する様子が示されている。実施例3.1では、電源電圧VDDが安定化され、出力電圧VOUTは出力電流IOUTに応じて変化する。
【0268】
期間Tにおいて、補正電圧VCMPが正の値VCMP1に設定される。この期間Tの、電源電圧VDDの目標値VDD(REF)_1は、
DD(REF)_1=(VREF-K・VCMP1)/K
となる。Kは負の定数であるから、電源電圧VDDの目標値VDD(REF)は、
DD(REF)_1=(VREF+|K|・VCMP1)/K
となり、期間Tの目標値VDD(REF)_0から、|K|・VCMP1/Kだけ正方向にオフセットさせた電圧となる。
【0269】
期間Tにおいて、補正電圧VCMPをさらに高い値VCMP2に設定すると、この期間Tの、電源電圧VDDの目標値VDD(REF)_2は、
DD(REF)_2=(VREF-K・VCMP2)/K
となり、期間Tの目標値VDD(REF)_0から、|K|・VCMP2/Kだけ正方向にオフセットさせた電圧となる。
【0270】
以上がヘッドランプ200Aの動作である。このヘッドランプ200Aによれば、データS3Bにもとづいて、補正電圧VCMPを変化させることで、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDの目標値VDD(REF)を柔軟に設定することができる。
【0271】
続いて電圧設定回路230およびフィードバック回路226Aの構成例を説明する。
【0272】
図35は、フィードバック回路226Aの構成例を示す回路図である。このフィードバック回路226Aは、オペアンプを有する減算回路であり、抵抗R31~R34およびオペアンプOA3を含む。このフィードバック回路226Aの入出力特性は、式(5)で表される。
FB=(R31+R32)/R31×{R34/(R33+R34)×VCNT-R32/(R31+R32)×VCMP …(5)
【0273】
式(1)と(5)を対比すると、
=(R31+R32)/R31×R34/(R33+R34)
=-(R31+R32)/R31×R32/(R31+R32)
を得る。
【0274】
なお、フィードバック回路226Aを、オペアンプを用いた加算回路で構成してもよい。この場合、K>0,K>0となる。補正電圧VCMPが正であるとき、補正電圧VCMPに応じて、制御対象電圧VCNTの目標値を、低電位側にシフトさせることができる。
【0275】
図36は、電圧設定回路230の構成例を示す回路図である。電圧設定回路230は、マイクロコントローラ240、D/Aコンバータ234、バッファ236を含む。マイクロコントローラ240は、発光素子213の順方向電圧Vに関するデータS3Bに応じて、補正電圧VCMPを指定するデジタルの設定値DCMPを生成する。マイクロコントローラ240を用いることで、補正電圧VCMPを、ソフトウェア制御することが可能となる。
【0276】
D/Aコンバータ234は、マイクロコントローラ240が生成した設定値DCMPを、アナログの補正電圧VCMPに変換する。補正電圧VCMPは、バッファ236を介してフィードバック回路226Aに供給される。なお、D/Aコンバータ234の出力インピーダンスが十分に低い場合、バッファ236は省略できる。またD/Aコンバータ内蔵のマイクロコントローラ240を用いる場合、D/Aコンバータ234は、マイクロコントローラ240の内部に存在することとなる。
【0277】
(実施例3.2)
図37は、実施例3.2に係るヘッドランプ200Bのブロック図である。ヘッドランプ200Bの構成について、実施例3.1との相違点を中心に説明する。ヘッドランプ200Bは、配光可変光源210、電源回路220B、コントロールユニット260を備える。実施例3.2では、電源回路220Bの構成が、実施例3.1の電源回路220Aと異なっている。
【0278】
電源回路220Bは、出力端子OUT、DC/DCコンバータ224および電源制御回路225Bを備える。電源制御回路225Bは、フィードバック回路226B、コンバータコントローラ228、電圧設定回路230を備える。
【0279】
実施例3.2では、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTが、制御対象電圧VCNTである。フィードバック回路226Bには、出力端子OUTに発生する出力電圧VOUTが制御対象電圧VCNTとして入力される。したがって、出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)は、式(6)で表される。フィードバック回路226Bは、実施例3.1におけるフィードバック回路226Aと同様に、減算回路であってもよい。
OUT(REF)=(VREF-K・VCMP)/K …(6)
【0280】
補正電圧VCMPは、目標値VOUT(REF)が、VF(MAX)+V+α+V ROPとなるように生成される。VDROPは、電源ラインLVDDおよびコネクタにおける電圧降下であり、VDROP=IOUT×Rである。IOUTは、時々刻々と変動するから、電圧降下VDROPの値は、最大電流IOUT(MAX)を想定して決めてもよい。
【0281】
あるいは、実施例3.3で説明するように、電圧降下VDROPを検出し、実測した電圧降下VDROPを、補正電圧VCMPに反映させてもよい。
【0282】
以上がヘッドランプ200Bの構成である。続いてその動作を説明する。図38は、図37のヘッドランプ200Bの動作波形図である。期間Tにおいて補正電圧VCMPは0Vである。この期間Tの出力電圧VOUTは、
OUT(REF)_0=VREF/K
に安定化される。
【0283】
アレイ型発光デバイス212に供給される電源電圧VDDは、出力電圧VOUTよりも電源ラインLVDDおよびコネクタ等における電圧降下VDROPだけ低い電圧となり、式(7)で表される。
DD=VOUT-VDROP=VOUT-R×IOUT …(7)
Rは、電源ラインLVDDおよびコネクタのインピーダンスである。ヘッドランプ200Bの点灯中、アレイ型発光デバイス212の動作電流IOUTは変動する。したがって実施例3.2では、出力電圧VOUTが安定化され、電源電圧VDDは出力電流IOUTに応じて変動する。
【0284】
期間Tにおいて、補正電圧VCMPが正の値VCMP1に設定される。この期間Tの、出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)_1は、
OUT(REF)_1=(VREF-K・VCMP1)/K
となる。Kは負の定数であるから、出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)は、
OUT(REF)_1=(VREF+|K|・VCMP1)/K
となり、期間Tの目標値VOUT(REF)_0から、|K|・VCMP1/Kだけ正方向にオフセットさせた電圧となる。
【0285】
期間Tにおいて、補正電圧VCMPをさらに高い値VCMP2に設定すると、この期間Tの、出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)_2は、
OUT(REF)_2=(VREF-K・VCMP2)/K
となり、期間Tの目標値VDD(REF)_0から、|K|・VCMP2/Kだけ正方向にオフセットさせた電圧となる。
【0286】
以上がヘッドランプ200Bの動作である。このヘッドランプ200Bによれば、補正電圧VCMPを応じて、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTを柔軟に設定することができ、ひいてはアレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDを柔軟に設定できる。
【0287】
(実施例3.3)
図39は、実施例3.3に係るヘッドランプ200Cのブロック図である。ヘッドランプ200Cの構成について、実施例3.2との相違点を中心に説明する。
【0288】
ヘッドランプ200Cは、配光可変光源210、電源回路220C、コントロールユニット260を備える。実施例3.3では、電源回路220Cの構成が、実施例3.2の電源回路220Bと異なっている。
【0289】
電源回路220Cの構成を説明する。電源回路220Cは、出力端子OUT、検出端子SNS、DC/DCコンバータ224、電源制御回路225Cを備える。
【0290】
電源制御回路225Cは、フィードバック回路226C、コンバータコントローラ228、電圧設定回路230を備える。
【0291】
フィードバック回路226Cには、制御対象電圧VCNTとして、出力電圧VOUTが入力される。また、フィードバック回路226Cには、検出ラインLSNSを介して、電源電圧VDDが入力される。さらにフィードバック回路226Cには、電圧設定回路230が生成する補正電圧VCMPが入力される。
【0292】
フィードバック回路226Cは、3つの電圧VOUT,VSNS,VCMPにもとづいて、フィードバック電圧VFBを生成する。フィードバック回路226Cは、VOUTとVSNSの差分にもとづいて、電源ラインLVDDにおける電圧降下VDROP=VOU -VSNSを検出する。
【0293】
フィードバック回路226Cが生成するフィードバック電圧VFBは式(8)で表される。
FB=K・VOUT+K・VCMP+K・VDROP …(8)
【0294】
以上がヘッドランプ200Cの構成である。このヘッドランプ200Cにおいて、制御対象電圧である出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)は、式(9)で表される。
OUT(REF)=(VREF-K・VCMP-K・VDROP)/K …(9)
<0,K<0とすれば、
OUT(REF)=(VREF+|K|・VCMP+|K|・VDROP)/K …(9’)
となる。|K|=Kが成り立つとき、
OUT(REF)=(VREF+|K|・VCMP)/K+VDROP …(9'')
【0295】
実施例3.3によれば、実際に検出した電圧降下VDROPにもとづいて、出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)を最適化できるため、消費電力を削減できる。ゲインK3を適切に定めることにより、接地ラインLGNDの電圧降下も補正可能である。
【0296】
図40は、フィードバック回路226Cの機能ブロック図である。フィードバック回路226Cは、3個の減算回路SUB1~SUB3を含んでもよい。減算回路SUB1は、出力電圧VOUTから検出電圧VSNSを減算し、電圧降下VDROPを算出する。減算回路SUB2は、出力電圧VOUTから電圧降下VDROPを減算する。減算回路SUB3は、減算回路SUB2の出力電圧VOUT-VDROPから、補正電圧VCMPを減算する。減算の順序は入れ替えてもよい。
【0297】
(実施例3.4)
図41は、実施例3.4に係るヘッドランプ200Dの回路図である。ヘッドランプ200Dは、配光可変光源210、電源回路220D、コントロールユニット260を備える。
【0298】
電源回路220Dの構成を説明する。電源回路220Dは、出力端子OUT、検出端子SNS、DC/DCコンバータ224、電源制御回路225Dを備える。
【0299】
電源制御回路225Dは、フィードバック回路226D、コンバータコントローラ228D、電圧設定回路230Dを備える。この実施例において、コンバータコントローラ228Dは、基準電圧設定ピンREFを有し、基準電圧設定ピンREFに入力される基準信号SREFに応じて、基準電圧VREFが設定可能となっている。コンバータコントローラ228Dは、基準信号SREFをデジタル信号として受け、内部の電圧源によって、基準電圧VREFを生成してもよい。あるいは、コンバータコントローラ228Dは、アナログの基準信号SREFを受け、それをそのまま内部の基準電圧VREFとして利用してもよい。コンバータコントローラ228Dは、フィードバックピンFBの電圧VFBが、基準信号SREFにもとづく基準電圧VREFに近づくように、DC/DCコンバータ224をフィードバック制御する。
【0300】
電圧設定回路230Dは、データS3Bに応じて、基準信号SREFを生成し、コンバータコントローラ228Dの基準電圧設定ピンREFに供給する。基準信号SREFがアナログ電圧である場合、電圧設定回路230Dは、図36と同様に構成することができ、補正電圧VCMPを基準信号SREFと読み替えればよい。基準信号SREFがデジタル信号である場合、電圧設定回路230Dは、図36のマイクロコントローラ240のみで構成することができ、設定値DCMPを、基準信号SREFと読み替えればよい。
【0301】
フィードバック回路226Dは、制御対象電圧VCNTに応じたフィードバック電圧VFBを生成し、コンバータコントローラ228DのフィードバックピンFBに供給する。
【0302】
実施例3.2と同様に、制御対象電圧VCNTは、出力電圧VOUTであってもよい。この場合、フィードバック電圧VFBは、式(10)で表される。
FB=K・VOUT …(10)
【0303】
実施例3.1と同様に、電源回路220Dと配光可変光源210Dを、検出ラインLSNSで接続し、検出電圧VSNS(=VDD)を制御対象電圧VCNTとしてもよい。この場合のフィードバック電圧VFBは、式(11)で表される。
FB=K・VSNS=K1・VDD …(11)
【0304】
実施例3.3と同様に、出力電圧VOUTを制御対象電圧VCNTとし、電源ラインLVDDにおける電圧降下VDROPを補正した電圧を、フィードバック電圧VFBとしてもよい。この場合のフィードバック電圧VFBは、式(12)で表される。
FB=K・VOUT+K・VDROP …(12)
【0305】
実施例3.3で説明したように、電圧降下VDROPは、電源回路220Dと配光可変光源210Dを、検出ラインLSNSで接続し、VOUTとVSNSの差分を計算すれば得ることができる。
【0306】
実施例3.4によれば、実施例3.1~3.3と同様の効果が得られる。
【0307】
上述のいくつかの実施例において、マイクロコントローラは、以下の機能を備えてもよい。図42は、マイクロコントローラ240の構成を示すブロック図である。
【0308】
(異常検出機能)
マイクロコントローラ240は、制御対象電圧VCNTと、データS3Bにもとづく目標値VCNT(REF)の誤差ΔVを取得してもよい。コンバータコントローラ228によって、制御対象電圧VCNTがその目標値VCNT(REF)から逸脱している状況を検出できない場合には、マイクロコントローラ240によって、制御対象電圧VCNTと目標値VCNT(REF)の誤差を監視することにより、異常状態を検出できる(フェール判定)。
【0309】
マイクロコントローラ240は、複数のアナログ入力ピンAN1~ANX、マルチプレクサMUX、A/Dコンバータ242、プロセッサ(コア)244、インタフェース回路246を有している。
【0310】
内蔵のA/Dコンバータ242の入力は、マルチプレクサMUXによって切り替え可能となっており、任意のアナログ入力ピンの電圧を、デジタル値に変換可能となっている。またインタフェース回路246は、データS3Bを受信可能である。このA/Dコンバータ242には、外部のアナログ電圧に加えて、マイクロコントローラ240の内部の基準電圧や電源電圧を入力可能としてもよい。
【0311】
マイクロコントローラ240のアナログ入力ピンANのひとつには、制御対象電圧V NTが入力される。制御対象電圧VCNTは、上述のように、出力電圧VOUTであってもよいし、電源電圧VDDであってもよい。A/Dコンバータ242は、制御対象電圧VCNTのデジタル値Dxを生成する。
【0312】
プロセッサ244は、ソフトウェアプログラムを実行し、インタフェース回路246が受信したデータS3Bに応じた設定値DCMP(あるいは基準信号SREF)を生成し、デジタル出力ピンDOUTから出力する。
【0313】
さらにプロセッサ244は、データS3Bにもとづいて、制御対象電圧VCNTの目標値VCNT(REF)を示すデジタル値Dyを計算する。そしてA/Dコンバータ242により得られたデジタル値Dxと、計算により得られたデジタル値Dyの差分を計算し、しきい値と比較する。プロセッサ244は、Dx-Dyが、しきい値を超えると、異常と判定する。プロセッサ244は、異常判定を行うと、汎用出力ピンGPIOから、異常を示すフラグを出力してもよい。
【0314】
一実施形態において、マイクロコントローラ240により異常と判定されると、設定値DCMP(基準信号SREF)が、所定値に固定されてもよい。所定値を高く定めておくことにより、制御対象電圧VCNTの目標値VCNT(REF)を強制的に上昇させることができる。これにより、異常状態において、強制的に高い電圧が、アレイ型発光デバイスに供給されることになり、点灯を維持することができ、フェールセーフとして機能する。
【0315】
(A/Dコンバータのキャリブレーション)
マイクロコントローラ240に内蔵されるA/Dコンバータ242の精度はそれほど高くない場合が多い。精度が低いA/Dコンバータ242は、上述のフェールセーフ機能の性能低下に繋がる。そこで、ヘッドランプ200の製造工程あるいは検査工程において、以下の処理を実行してもよい。
【0316】
図43は、マイクロコントローラ内蔵のA/Dコンバータのキャリブレーションを説明する図である。アナログ入力ピンANに、電圧レベルが既知であるアナログ信号を入力し、その電圧レベルを少なくとも2値AV,BVで切り替える。そして、2つの電圧レベルAV,BVを、A/Dコンバータ242によってデジタル値Aad,Badに変換する。
【0317】
そして、デジタル値Aad,Badの差分Δadを算出する。2つのアナログ値AV,BVの差分ΔVを、デジタル値の差分Δadで除算した値ΔV/Δadを、補正パラメータαとして不揮発的に保存する。また、図43におけるオフセット値ZEROadを取得し、補正パラメータβとして不揮発的に保存する。オフセット値ZEROadは、2点の測定結果から求めてもよいし、A/Dコンバータ242に0Vを入力して取得してもよい。
【0318】
ヘッドランプ200の出荷後、マイクロコントローラ240のプロセッサ244は、A/Dコンバータ242の出力xを、パラメータα,βを用いて補正する。補正後の真値yは、以下の式で求めることができる。
y=(x-β)×α
【0319】
マイクロコントローラ240は、ヘッドランプ200の解析や新製品の開発に有用な情報をログとして残してもよい。以下、マイクロコントローラ240がログとして保持すべき情報の例を説明する。
【0320】
・温度情報
マイクロコントローラ240は、外付けの、あるいは内蔵の温度センサから得られた温度情報をログとして残す。温度情報は、最大温度、最低温度、平均温度を含みうる。
【0321】
・電源電圧情報
マイクロコントローラ240は、外部から供給される、および/または内蔵の電源回路が生成する各種電源電圧の情報をログとして残す。電圧情報は、最大電圧、最低電圧、平均電圧を含みうる。
【0322】
・異常検出時の計測情報
マイクロコントローラ240は、異常検出が発生した際に、異常の発生時刻、異常の種類を履歴として残す。この際に、異常発生時の温度、電源電圧などの付随情報をログとして残す。
【0323】
・累積稼働時間の情報
マイクロコントローラ240は、工場出荷からの累積稼働時間の情報を記録する。累積稼働時間は、外部から供給される、および/または内蔵の電源回路が生成する各種電源電圧によって、電源回路220が稼働した時間の累積、アレイ型発光デバイス212を含む配光可変光源210が稼働した時間の累積などの情報を含みうる。
【0324】
実施形態3に関連する変形例を説明する。
【0325】
(変形例3.1)
図44は、変形例3.1に係るヘッドランプ200を示す図である。これまでの説明では、配光可変光源210が1個のアレイ型発光デバイス212を備えることとしたが、配光可変光源210は、複数のアレイ型発光デバイス212を備えてもよい。その場合、電源回路220をユニット化し(電源ユニット222と称する)、複数のアレイ型発光デバイス212に対応して、複数の電源ユニット222を設けてもよい。各電源ユニット222の出力端子は、個別の電源ケーブルLVDDを介して、対応するアレイ型発光デバイス212の電源端子と接続される。また必要に応じて、電源ユニット222とアレイ型発光デバイス212のペアごとに、検出ラインLSNSを設ければよい。この変形例において、マイクロコントローラ240は、複数の電源ユニットで共通化してもよい。
【0326】
この変形例3.1では、配光可変光源210が、電源端子が独立した複数のアレイ型発光デバイス212に分割して構成される。そして、アレイ型発光デバイス212ごとに電源ユニット222を設け、アレイ型発光デバイス212と電源ユニットを電源ケーブルで1対1で接続することとしている。これにより、配光可変光源210に流れる電流を、複数の系統のDC/DCコンバータに分散させることができ、各DC/DCコンバータにおける電圧降下の影響を小さくでき、負荷応答性を改善できる。加えてDC/DCコンバータの構成部品、電源ケーブル、コネクタの選択肢が多くなり、設計の自由度が高くなる。
【0327】
(変形例3.2)
図45は、変形例3.2に係るヘッドランプ200を示す図である。アレイ型発光デバイス212は、内部の複数の発光画素が、複数のセグメントSEG1~SEGnに分割されており、複数のセグメントSEG1~SEGnに対応して、複数の電源端子VDDが設けられてもよい。電源回路220には、複数の電源端子VDDに対応して、複数の電源ユニット222_1~222_nが設けられる。各電源ユニット222の出力端子OUTは、個別の電源ケーブルLVDDを介して、アレイ型発光デバイス212の対応する電源端子VDDと接続される。また必要に応じて、電源ユニット222ごとに、検出ラインLSNSを設ければよい。
【0328】
この変形例3.2においても、配光可変光源210に流れる電流を、複数系統のDC/DCコンバータに分散させることができ、変形例3.1と同様の効果を得ることができる。
【0329】
(変形例3.3)
電源ユニット222は、フェーズシフト型のコンバータで構成してもよい。フェーズシフト型のコンバータを採用することで、シングルフェーズのコンバータに比べて、出力電圧VOUTiや出力電流IOUTiのリップルを小さくでき、また効率を改善できる。さらに、アレイ型発光デバイス212の画素回路においてPWM制御が行われる場合、電源ユニット222の出力電流IOUTiは複数の画素回路の点灯率に応じて高速に変動するところ、フェーズシフト型コンバータを採用することで、負荷変動に対する追従性(応答性)を高めることができる。
【0330】
(変形例3.4)
電源回路220やコントロールユニット260が、ヘッドランプ200に内蔵される場合を説明したが、それらの一方、あるいは両方は、ヘッドランプ200のボディの外側に設けられてもよい。配光可変光源210は発熱体であるため、熱を忌避するコントロールユニット260は、配光可変光源210から遠ざけて車室内に配置した方が、熱設計の観点からは有利である。
【0331】
(変形例3.5)
電源制御回路225は、インタフェース回路216から出力されるデータS3をコントロールユニット260を経由せずに直接受信してもよい。
【0332】
(変形例3.6)
電源制御回路225は、複数の画素回路PIXの点消灯を問わずに、全画素の順方向電圧VF1~VFnの最大値にもとづいて、目標値を決定してもよい。電源制御回路225は、複数の画素回路PIXのうち、実際に点灯している画素の順方向電圧Vの最大値にもとづいて、目標値を決定してもよい。
【0333】
(変形例3.7)
アレイ型発光デバイスは、内部の複数の発光素子の順方向電圧Vの最大値がVF(M AX)予め測定され、内部の不揮発メモリに保持していてもよい。順方向電圧VF(MA X)は、全画素、全温度範囲の最大値であってもよい。あるいは、温度範囲ごとに順方向電圧VF(MAX)を保持し、現在の温度に応じた最大値を含むデータを送信してもよい。
【0334】
実施形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0335】
本開示は、車両用灯具に関する。
【符号の説明】
【0336】
100…灯具システム,102…バッテリ,104…上位コントローラ,200…ヘッドランプ,202…接続手段,204…電源ケーブル,206…コネクタ,210…配光可変光源,212…アレイ型発光デバイス,PIX…画素回路,213…発光素子,214…電流源,216…インタフェース回路,220…電源回路,222…電源ユニット,224…DC/DCコンバータ,225…電源制御回路,226…フィードバック回路,228…コンバータコントローラ,230…電圧設定回路,234…D/Aコンバータ,236…バッファ,240…マイクロコントローラ,260…コントロールユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45