(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】表示装置、表示方法、制御装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20241216BHJP
G06F 16/908 20190101ALI20241216BHJP
【FI】
G05B23/02 301X
G06F16/908
(21)【出願番号】P 2022557319
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2021034868
(87)【国際公開番号】W WO2022080106
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2020173138
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】門脇 正法
(72)【発明者】
【氏名】明渡 豊
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 建聖
(72)【発明者】
【氏名】藤井 大也
(72)【発明者】
【氏名】青木 七海
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-49532(JP,A)
【文献】特開2019-179395(JP,A)
【文献】特開2000-331015(JP,A)
【文献】特開2017-199060(JP,A)
【文献】特開2006-330074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G06F 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面を備える表示装置であって、
プラントの運転状況に関する警告
の発生時に表示されるガイド情報を
前記表示画面の第1領域に表示し、同時に、前記ガイド情報を追加させるための領域を、前記表示画面
の第2領域に表示
し、同時に、前記プラントの過去の運転状況を記載した情報に含まれ
、前記警告に対して重要度が高い少なくとも1つの単語を前記表示画面
の異なる領域に表示するように構成され、
前記単語は、前記単語の特徴量に基づいて算出される、少なくとも1つの前記単語の
前記重要度に基づいて抽出されたものであることを特徴とする
表示装置。
【請求項2】
前記ガイド情報を追加させるための前記
第2領域を、前記表示画面の前記第1領域に並置
して表示するように構成された、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
選択された前記単語を含む、前記プラントの過去の運転状況を記載した前記情報を、前記表示画面に表示するように構成された、
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記単語は、
前記プラントの過去の運転状況を記載した情報に基づいて少なくとも一つの前記単語の特徴量を算出するステップと、
前記単語の特徴量に基づいて少なくとも一つの前記単語の前記重要度を算出するステップと、を実行することにより抽出されたものであり、
前記単語をその単語の前記重要度と共に、前記表示画面に表示するように構成された、
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
プラントの運転状況に関する警告
の発生時に表示されるガイド情報を
表示装置の表示画面の第1領域に表示させ、同時に、前記ガイド情報を追加させるための領域を、
前記表示画面
の第2領域に表示させ
、同時に、前記プラントの過去の運転状況を記載した情報に含まれ
、前記警告に対して重要度が高い少なくとも1つの単語を前記表示画面
の異なる領域に表示させるステップ
を含み、
前記単語は、前記単語の特徴量に基づいて算出される、少なくとも1つの前記単語の
前記重要度に基づいて抽出されたものであることを特徴とする
表示方法。
【請求項6】
表示画面を備える表示装置を制御する制御装置であって、
プラントの運転状況に関する警告
の発生時に表示されるガイド情報を
前記表示画面の第1領域に表示させ、同時に、前記ガイド情報を追加させるための領域を、前記表示画面
の第2領域に表示
させ、同時に、前記プラントの過去の運転状況を記載した情報に含まれ
、前記警告に対して重要度が高い少なくとも1つの単語を前記表示画面
の異なる領域に表示させるように構成され、
前記単語は、前記単語の特徴量に基づいて算出される、少なくとも1つの前記単語の
前記重要度に基づいて抽出されたものであることを特徴とする
制御装置。
【請求項7】
表示画面を備える表示装置を制御するためのコンピュータに、
プラントの運転状況に関する警告
の発生時に表示されるガイド情報を
前記表示画面の第1領域に表示させ、同時に、前記ガイド情報を追加させるための領域を、前記表示画面
の第2領域に表示させ
、同時に、前記プラントの過去の運転状況を記載した情報に含まれ
、前記警告に対して重要度が高い少なくとも1つの単語を前記表示画面
の異なる領域に表示させるステップとを実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記単語は、前記単語の特徴量に基づいて算出される、少なくとも1つの前記単語の重要度に基づいて抽出されたものであることを特徴とする
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、表示方法、制御装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラント等の監視対象設備にセンサを設置して、センサが取得するデータに基づいて、監視対象設備の稼働状況を監視することが行われている。監視対象設備に異常が発生した際には、アラームを発報するとともに、その対処方針が記載されたガイド情報を表示することにより、運転員を支援することが行われる。ガイド情報は、熟練員が自身の知識と経験に基づいて様々な情報を精査して多大な時間を費やすことによって、作成される。
【0003】
又、特許文献1には、「各運転状態において行われた操作を記録する」「プラント操作履歴保存部」(段落[0038])と、「操作履歴を所定の運転状態毎に分類し、運転状態毎の推奨動作である操作ガイドデータ」(段落[0040])を作成し、表示する「プラント監視装置」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熟練員の知識等に基づいて作成されるガイド情報は、自ずと属人性が高いものとならざるを得ない。このため、経験の浅い運転員は、同様のガイド情報を容易に作成することができない。
【0006】
又、特許文献1記載のプラント監視装置は、そもそも、点検中の機器を監視対象から除外する、といったルーティン作業において行うべき推奨操作を、過去の操作履歴に基づいて表示するものに過ぎない。一方で、アラーム発報時の対処方針は、プラント操作を伴わない場合が少なくない。このため、プラントの過去の操作履歴に基づいてアラーム発報時におけるガイド情報を作成することは困難である。
【0007】
更に、特許文献1記載のプラント監視装置は、「操作ガイド選択パターンリスト」「から参照したい操作ガイドパターンを選択」(段落[0047]、
図6)することを開示するものであるところ、操作ガイドパターンは、過去のプラント操作履歴から取得されたものに過ぎないから、新規な情報の追加を許容するものではない。
【0008】
そこで本発明は、経験の浅い運転員でも容易に新規なガイド情報を追加することが可能となる、表示装置、表示方法、制御装置及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、表示画面を備える表示装置であって、プラントの運転状況に関する警告発生時に表示されるガイド情報を追加させるための領域を、前記表示画面に表示するように構成された、表示装置を提供する。
【0010】
さらに、前記ガイド情報を前記表示画面の第1領域に表示し、前記ガイド情報を追加させるための前記領域を、前記表示画面の前記第1領域に並置される第2領域に表示するように構成してもよい。
【0011】
さらに、前記プラントの過去の運転状況を記載した情報に含まれる少なくとも一つの単語を表示し、選択された前記単語を含む前記情報を、前記表示画面に表示するように構成してもよい。
【0012】
さらに、前記単語は、前記プラントの過去の運転状況を記載した情報に基づいて少なくとも一つの前記単語の特徴量を算出するステップと、前記単語の特徴量に基づいて少なくとも一つの前記単語の重要度を算出するステップと、を実行することにより抽出されたものであり、前記単語をその単語の前記重要度と共に、前記表示画面に表示するように構成してもよい。
【0013】
本開示は、プラントの運転状況に関する警告発生時に表示されるガイド情報を追加させるための領域を、表示装置の表示画面に表示させるステップを含む、表示方法を提供する。
【0014】
本開示は、表示画面を備える表示装置を制御する制御装置であって、プラントの運転状況に関する警告発生時に表示されるガイド情報を追加させるための領域を、前記表示画面に表示させるように構成された、制御装置を提供する。
【0015】
本開示は、表示画面を備える表示装置を制御するためのコンピュータに、プラントの運転状況に関する警告発生時に表示されるガイド情報を追加させるための領域を、前記表示画面に表示させるステップを実行させる、コンピュータプログラムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、プラントの全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、プラント、DCS及び運転支援システムの機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、表示装置の表示画面に表示されるガイド情報の一例である。
【
図4】
図4は、重要ワード抽出部の機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、運転日誌等の抜粋リストと自由記入枠とを並置表示された一例である。
【
図6】
図6は、運転支援システム30の物理的構成を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る表示方法を含む運転支援方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。
本発明が適用される監視対象設備は、プラントを含む。プラントは、例えば、ボイラを含む発電プラント、焼却プラント、化学プラント、排水処理プラント等、プロセスデータが取得できるものを対象としている。下記実施形態に記載する発電プラントにおけるプロセスデータの例示の他、廃棄物等の焼却プラントにおけるプロセスデータは、例えば、焼却炉への投入空気量及び投入空気温度、炉出口のガス温度及び組成因子、センサ等により計測される各部位の温度、圧力、流量、燃焼状態等の計測データ、等を含む。化学プラントにおけるプロセスデータは、例えば、プロセス間または2つ以上の熱電対間の温度差、動作圧力、生成物流パラメータ(速度、密度など)、冷却水の流量、出力測定値、バルブセンサデータ、等を含む。排水処理プラントにおけるプロセスデータは、例えば、各センサ及び各電力量計から出力される、タンクの原水流出入量、水位、処理水質、各種ポンプ等の機器運転の操作量、等を含む。
【0018】
[プラントの説明]
図1は、本発明が適用される監視対象の一例であるプラント1の全体構成を示す概略図である。本実施形態に係るプラント1は、例えば、高温で流動する珪砂等の循環材を循環させながら燃料を燃焼して蒸気を発生させる循環流動層ボイラ(Circulating Fluidized Bed型)を備える発電プラントである。プラント1の燃料としては、石炭等の化石燃料の他、例えば非化石燃料(木質バイオマス、廃タイヤ、廃プラスチック、スラッジ等)を使用することができる。プラント1で発生した蒸気は、タービン100の駆動に用いられる。
【0019】
プラント1は、火炉2内で燃料を燃焼させ、固気分離装置として機能するサイクロン3によって排ガスから循環材を分離し、分離された循環材を火炉2内に戻して循環させるように構成されている。分離された循環材は、サイクロン3の下方に接続された循環材回収管4を経由して火炉2の下部に返送される。なお、循環材回収管4の下部と火炉2の下部とは、流路が絞られたループシール部4aを介して接続されている。これにより、循環材回収管4の下部には所定量の循環材が貯められた状態となる。サイクロン3によって循環材が取り除かれた排ガスは、排ガス流路3aを経由して後部煙道5に供給される。
【0020】
ボイラは、燃料を燃焼させるための火炉2と、燃焼により得られた熱を用いて水蒸気等を発生させるための熱交換器を備える。火炉2の中間部には、燃料を供給する燃料供給口2aが設けられており、火炉2の上部には、燃焼ガスを排出するガス出口2bが設けられている。図示されていない燃料供給装置から火炉2に供給される燃料は、燃料供給口2aを介して火炉2の内部に供給される。又、火炉2の炉壁には、ボイラ給水を加熱するための炉壁管6が設けられている。炉壁管6を流れるボイラ給水は、火炉2での燃焼によって加熱される。
【0021】
火炉2内では、下部の給気ライン2cから導入される燃焼・流動用の空気により、燃料供給口2aから供給された燃料を含む固形物が流動し、燃料は流動しながら例えば約800~900℃で燃焼する。サイクロン3には、火炉2で発生した燃焼ガスが循環材を同伴しながら導入される。サイクロン3は、遠心分離作用により循環材と気体とを分離し、循環材回収管4を介して分離された循環材を火炉2に戻すとともに、循環材が除かれた燃焼ガスを排ガス流路3aから後部煙道5へと送出する。
【0022】
火炉2では、底部に炉内ベッド材と呼ばれる循環材の一部が滞留する。このベッド材には、循環流動に不適な粗い粒径を有するベッド材や排燃夾雑物が含まれることがあり、これらの循環材として不適なベッド材によって流動不良が発生することがある。そのため、流動不良を抑制するために、火炉2では、底部の排出口2dから炉内ベッド材が連続的又は断続的に外部に排出されている。排出されたベッド材は、図示されていない循環ライン上で金属や粗大粒径等の不適物を取り除いた後、再び火炉2に供給されるか、若しくはそのまま廃棄される。火炉2の循環材は、火炉2、サイクロン3及び循環材回収管4で構成される循環系内を循環する。
【0023】
後部煙道5は、サイクロン3から排出されたガスを後段へ流す流路を有している。後部煙道5は、排ガスの熱を回収する排熱回収部として、過熱蒸気を発生させる過熱器10と、ボイラ給水を予熱する節炭器12と、を有している。後部煙道5を流れる排ガスは、過熱器10及び節炭器12を流通する蒸気やボイラ給水と熱交換されて冷却される。又、節炭器12を通過したボイラ給水が貯留される蒸気ドラム8を有し、蒸気ドラム8は炉壁管6にも接続されている。
【0024】
節炭器12は、排ガスの熱をボイラ給水に伝熱して、ボイラ給水を予熱するものである。節炭器12は、管21によってポンプ7と接続される一方、管22によって蒸気ドラム8と接続されている。ポンプ7から管21を経由して節炭器12に供給され、節炭器12によって予熱されたボイラ給水は、管22を経由して蒸気ドラム8に供給される。
【0025】
蒸気ドラム8には、降水管8a及び炉壁管6が接続されている。蒸気ドラム8内のボイラ給水は、降水管8aを下降し、火炉2の下部側で炉壁管6に導入されて蒸気ドラム8へ向かって流通する。炉壁管6内のボイラ給水は、火炉2内で発生する燃焼熱によって加熱されて、蒸気ドラム8内で蒸発し蒸気となる。
【0026】
蒸気ドラム8には、内部の蒸気を排出する飽和蒸気管8bが接続されている。飽和蒸気管8bは、蒸気ドラム8と過熱器10とを接続している。蒸気ドラム8内の蒸気は、飽和蒸気管8bを経由して過熱器10に供給される。過熱器10は、排ガスの熱を用いて蒸気を過熱して過熱蒸気を生成するものである。過熱蒸気は、管10aを通り、プラント1外のタービン100に供給されて発電に利用される。
【0027】
タービン100から排出された蒸気の圧力と温度は、過熱器10から排出される蒸気の圧力と温度よりも低い。特に限定されるものではないが、タービン100へ供給される蒸気の圧力は、約10~17MPa程度であり、温度は約530~570℃程度となる。タービン100から排出される蒸気の圧力は、約3~5MPa程度であり、温度は約350~400℃程度となる。
【0028】
タービン100の下流には復水器102が設けられている。タービン100から排出された蒸気は復水器102に供給され、復水器102において凝縮して飽和水に戻された上でポンプ7へと供給される。タービン100には、タービン100の回転により得られる運動エネルギーを電気エネルギーに変換するジェネレータが接続される。
【0029】
ポンプ7aは、復水器102の水位を一定に保つように、補給水を供給する。
図1では、ポンプ7aにより補給される補給水流量u1(「プロセスデータ」の一例)を示している。
【0030】
本実施形態で取り扱うプロセスデータは、プラント1に関する任意のデータであってよいが、例えば、プラント1の状態をセンサで測定したデータ(「プロセスデータ」の一例)であってよく、より具体的には、プラント1の温度、圧力及び流量等の測定値を含んでよい。
図1では、ポンプ7から節炭器12に供給されるボイラ給水流量u2(「プロセスデータ」の一例)を示している。さらに、
図1では、過熱器10からタービン100に供給されるボイラ出口蒸気流量u3(「プロセスデータ」の一例)を示し、蒸気ドラム8から過熱器10に供給される飽和蒸気流量u4(「プロセスデータ」の一例)を示している。なお、補給水流量u1は、飽和蒸気流量u4に追従するように制御されてよい。又、ボイラ出口蒸気流量u3(又は過熱蒸気流量)と、蒸気ドラム8の液面レベルの双方を監視しながら、ボイラ給水流量u2を調整するように制御されてよい。
【0031】
プラント1を構成する管系統に破孔が生じた場合、補給水流量u1が上昇したり、ボイラ給水流量u2とボイラ出口蒸気流量u3の流量差が増大したりする。DCS(Distributed Control System、
図2)20は、補給水流量u1、ボイラ給水流量u2、ボイラ出口蒸気流量u3及び飽和蒸気流量u4等のプラント1のプロセスデータをプラント1から受信し、プラント1の稼働状況を監視し、プラント1に異常が生じていないか監視する。後述するように、監視装置40は、異常の種類ごとに設定されるアラーム判定ロジックに基づいてプロセスデータを評価し、異常が発生したと判断した場合、表示装置50にアラームを発報させる。
【0032】
なお、プロセスデータとして補給水流量u1、ボイラ給水流量u2、ボイラ出口蒸気流量u3及び飽和蒸気流量u4を例示したが、プラント1に関するプロセスデータは、他のデータであってもよい。プラント1に関するプロセスデータは、温度、圧力等の他のデータ、又は、複数のプロセスデータに基づいて算出されたデータであってもよいし、センサ等から取得された計算処理されていないデータであってもよい。
【0033】
図2は、本実施形態に係るプラント1、DCS20及び運転支援システム30の機能ブロック図である。
【0034】
DCS20は、プラント1を制御するための分散制御システムである。DCS20は、プラント1に設置されるセンサ等からプロセスデータを取得し、これに基づいてプラント1を制御するための制御信号をプラント1に供給する。
【0035】
運転支援システム30は、DCS20からプロセスデータを取得するエッジ/クラウドコンピューティング部32と、エッジ/クラウドコンピューティング部32からプロセスデータを取得し、プロセスデータに基づいてプラント1を監視する監視装置40と、運転員のためにプラント1の稼働状況を表示する表示装置50とを備える。監視装置40(「制御装置」の一例)は、表示装置50を制御する制御装置としても機能する。具体的には、監視装置40は、プロセスデータを取得しこれに基づいて異常の有無を判断し、異常が発生していると判断された場合、表示装置50にアラーム(「警告」の一例)を発報させる。アラームを発報させる際、監視装置40は、ガイド情報(後述)等アラーム発報の際に表示させる情報を後述するデータベースから取得し、表示装置50の表示画面に表示させる。
【0036】
エッジ/クラウドコンピューティング部32は、ネットワーク網の周縁部に分散配置された複数のエッジサーバと、複数のエッジサーバからプロセスデータを収集し監視装置40に提供するクラウドデータサーバを備える。エッジ/クラウドコンピューティング部32を備えることにより、大規模な監視装置や、複数に分散される監視装置から、好適にプロセスデータを収集することが可能である。ただし、運転支援システム30は、必ずしも、エッジ/クラウドコンピューティング部32を備えなくてもよい。その場合、運転支援システム30は、ネットワークを介して、DCS20からプロセスデータを取得する。
【0037】
監視装置40は、アラーム表示制御部42と、記憶部44とを備える。
アラーム表示制御部42は、エッジ/クラウドコンピューティング部32からプロセスデータを取得するプロセスデータ取得部42Aと、プロセスデータ取得部42Aによって取得されたプロセスデータに基づいてアラームの発報要否を判定するアラーム判定部42Bと、アラーム判定部42Bによりアラームの発報が必要と判定された場合に、アラームの発報とともにアラーム発報時の対応方法をガイドするためのガイド情報を含むアラーム関連情報を表示装置50に表示させるアラーム情報表示部42Cと、表示装置50に表示させる標準ガイド情報を設定するための標準ガイド設定部42Dとを備える。
【0038】
更にアラーム表示制御部42は、ガイド情報を追加可能に構成されている。具体的には、運転日報DB44Cから重要ワード(「単語」の一例)を抽出するための重要ワード抽出部42Eと、抽出された重要ワードの重要度及びその重要ワードを含む運転日報の一部を追加すべきガイド情報の候補として表示装置50に表示させるとともに、標準ガイド情報に追加される追加ガイド情報の入力を受け付けるガイド追加設定部42Fとを備える。
【0039】
監視装置の記憶部44は、アラーム情報DB44A、ガイド情報DB44B及び運転日報DB44Cとを備える。まず、記憶部44の各データベースについて説明する。
【0040】
アラーム情報DB44Aは、プロセスデータに基づいて、プラント1の異常等を示すアラームの発生有無を判断するためのアラーム判定ロジック(判断基準)及び過去に発報されたアラーム履歴情報(アラームの識別情報及びアラームの発生日時等を含む情報)を格納する。具体的には、アラーム判定ロジックは、アラームの識別情報、アラームの分類情報、アラームに関連するプロセスデータの評価項目名に関連付けられて、アラームごとに格納されている。アラーム判定ロジックは、単一のセンサから取得されるプロセスデータに基づいて、プロセスデータの値が閾値を越えるか否かという判断基準を規定するものであってもよいし、所定のアルゴリズム(機械学習によって生成された所定の学習済みモデルに基づくもの、及び、複数のセンサのプロセスデータを多変量解析等することにより導かれる数式又は数理モデルに基づくものを含む。)に従って、複数種類のセンサから取得されたプロセスデータに基づく判断基準を規定するものであってもよい。
【0041】
ガイド情報DB44Bは、アラーム発報時の対応方法をガイドするためのガイド情報を格納する。ガイド情報は、標準ガイド設定部42Dにより予め設定された標準ガイド情報と、ガイド追加設定部42Fにより追加された追加ガイド情報を含む。
【0042】
例えば、ガイド情報DB44Bには、アラームごとに「1.監視ポイント(グラフの見方)」と題されたグラフから事象を捉える方法を説明する文章と、「2.対応方法」と題されたプロセスデータの状態を適正化するための方法を説明する文章が記録される。なお、プロセスデータの状態を適正化するための方法とは、例えば、注目しているプロセスデータが閾値を超えている状態を適正化し、閾値以内とするための方法である。
【0043】
図3には、発報されたアラームが「循環系温度差1」のときに、表示装置50の表示画面に表示されたガイド情報の一例が示される。「1.監視ポイント(グラフの見方)」には、炉内温度差の定義と、算出式とが記載されている。このような説明文によって、運転員は、グラフから事象を捉える方法を確認することができ、どのような事象が発生しているのか理解しやすくなる。「2.対応方法」には、炉内温度差の大小に応じて運転員が確認すべき項目が列挙されている。このような説明文によって、プロセスデータの状態を適正化するための方法を確認することが可能となる。なお、ガイド情報は、文字情報や数式等のほか画像や凡例グラフ等を含んでもよい。さらに、同一のアラームが過去に発報された時刻を表示する機能を備えてもよい。
【0044】
運転日報DB44Cは、プラント1の実際の稼働状況に関する情報を格納する。プラント1の実際の稼働状況に関する情報とは、例えば、運転員がプラント1の担当設備の稼働状況を観察した結果を、次の運転員への引き継ぎのために記録する運転日誌(運転日報)が含まれる。運転日報は、ボイラ、タービン等の機器ごとに作成される場合もあるし、プラント全体について作成される場合もある。又、運転日報は、好ましくは、定期的に(例えば、少なくとも1日1回)作成される。プラント1の実際の稼働状況に関する情報は、運転月報、担当設備の維持管理情報、点検記録、修繕情報、故障来歴を含んでもよい。
【0045】
次いでアラーム表示制御部42の各機能ブロックについて説明する。
プロセスデータ取得部42Aは、エッジ/クラウドコンピューティング部32からプロセスデータを取得する。
【0046】
アラーム判定部42Bは、プロセスデータに基づいて、プラント1の異常等の発生有無を判断し、異常が発生したと判断した場合、表示装置50にアラームを発報させる。具体的には、アラーム判定部42Bは、アラーム情報DB44Aに記録されているアラーム判定ロジック(判断基準)を読み出し、このアラーム判定ロジックに従ってプロセスデータを評価する。例えば、アラーム判定部42Bは、所定のプロセスデータをアラーム判定ロジックに基づいて評価し、噴破(ボイラチューブリークのように、ボイラを構成するチューブ及びパイプ等の金属材料が損傷して破孔し、内部の蒸気が外部に漏洩する状態。将来噴破が発生する可能性が高い状態を含む。以下同じ)というプラント1に生じ得る異常の発生有無を判断し、噴破が発生したと判断した場合、表示装置50にアラームを発報させる。同時に、アラーム判定部42Bは、異常が発生したことをアラーム情報DB44Aに記録する。
【0047】
アラーム情報表示部42Cは、アラーム判定部42Bによりアラームの発報が必要と判定されると、運転員がアラームの適否を確認するための情報を、表示装置50に表示させる。表示装置50の表示画面には、アラーム判定部42Bから取得した過去及び現在のアラームに関する情報がリスト形式で表示される。又、運転員が所定のアラームをダブルクリック(選択)すると、アラーム情報表示部42Cは、選択されたアラームに対応するガイド情報を取得し、表示画面に表示させる。
【0048】
標準ガイド設定部42Dは、アラームの対処方針(アラーム発報時にアラームの適否を判断するために、運転員が確認すべきプロセスデータ等を特定する情報を含む)に相当するガイド情報のうち、予め設定されたガイド情報である標準ガイド情報を設定する。標準ガイド情報は、典型的には、熟練の運転員が自身の知識と経験に基づいてプラントを稼働する前に設定する(又は、プラントを稼働する前に設定可能な情報)汎用性の高い情報である。
【0049】
重要ワード抽出部42Eは、運転員による追加ガイド情報の設定を補助するために、運転日報DB44Cから重要ワード(「単語」の一例)を抽出する。本実施形態に示される重要ワード抽出部42Eは、知られた自然言語処理の手法を用いて、運転日報等から複数の単語を抽出し、その重要度を算出することによって重要ワードを抽出する。
図4は、重要ワード抽出部42Eの機能ブロック図を示す。同図に示されるように、重要ワード抽出部42Eは、運転日報から重要ワードとなり得る単語を抽出する情報抽出部42E1と、情報抽出部42E1によって抽出された各単語の統計情報を算出する特徴量算出部42E2と、各単語の統計情報に基づいて、各単語の重要度を算出する重要度算出部42E3とを備える。
【0050】
情報抽出部42E1は、自然言語である運転日報その他の情報を、形態素に分割し、品詞が単語である形態素を特定する形態素解析と、形態素のうち、助詞その他の品詞及び重要ワードとなり得ない不要な単語を取り除く不要品詞フィルタリング及び不要ワードフィルタリングを実行する。
【0051】
特徴量算出部42E2は、情報抽出部42E1によって抽出された単語の出現回数等の統計情報を算出する。具体的には、各単語の出現頻度(「特徴量」の一例)、n-gram共起頻度(「特徴量」の一例)及び頻度分布(「特徴量」の一例)を算出する。なお、n-gram共起頻度は、N個の隣接する単語の共起頻度である。
【0052】
重要度算出部42E3は、特徴量算出部42E2によって算出された各単語の統計情報に基づいて各単語の重要度を示す情報を算出する。重要度算出部42E3は、例えば、TF(Term Frequency)、IDF(Inverse Document Frequency)、TF-IDF、又は、連接頻度の少なくとも一つに基づいて重要度を示す情報を算出する。
【0053】
ここでTF(「重要度」の一例)は、1つの文書
j(又は文章
j)に含まれる所定の単語の出現回数を、その文書
j(又は文章
j)に含まれる総単語数で除算することにより算出される値である。IDF(「重要度」の一例)は、総文書数(又は総文章数)を所定の単語が出現する文書数(又は文章数)で除算した値の対数値として算出される値である。TFは、文書ごと(又は文章ごと)の所定の単語の出現頻度を示す。IDFは、複数の文書(又は文章)に亘って横断的に使用される単語について低い値を示す。TF-IDFは、TFにIDFを乗じた値である。従って、TF-IDF(「重要度」の一例)は、横断的に汎用される単語ではなく、一部の文書(又は文章)にのみ重点的に出現する単語について高い値を示す指標である。重要度算出部42E3は、例えば、TF-IDFが高い値を有する単語を重要ワードとして抽出し、TF-IDFの値(「重要度」の一例)と共に表示装置50に表示させる。数1は、TF(tf
i,j)、IDF(idf
i)及びTF-IDF(tfidf)を算出するための式の一例を示す。
【数1】
【0054】
重要度算出部42E3は、連接頻度(「重要度」の一例)に基づいて各単語の重要度を示す情報を算出してもよい。例えば、ある単語と他の単語がセットで使用された頻度をカウントするFLR法に基づいて連接頻度を算出し、高い値を有する単語を重要ワードとして抽出してもよい。重要度が高い単語(例えば、「循環粒子」)は、他の重要度が高い単語(例えば、「下炉下部温度」)とセットで使用されることが多いため、連接頻度を用いることにより重要度が高い単語を抽出することも可能である。
図4には、重要ワード抽出部42Eによって抽出された重要ワード及びその重要度(スコア)の一例である重要ワードリストL1の一例が示される。
【0055】
ガイド追加設定部42Fは、標準ガイド情報に追加される追加ガイド情報を設定する。追加ガイド情報は、典型的には、プラントの稼働開始後に運転員がプラントを観察等することにより得られた情報に基づくガイド情報である。プラントを実際に稼働することにより得られた情報であることから、追加ガイド情報は、プラント特有の事情を反映した情報に相当する。
【0056】
従って、標準ガイド情報がプラント1以外の他のプラントにも適用できる可能性が高いガイド情報に相当する一方で、追加ガイド情報は、プラント1以外の他のプラントに適用できない可能性を有するガイド情報である。
【0057】
ガイド追加設定部42Fは、表示装置50の表示画面に、追加ガイド情報を受け付けるための自由記入枠FL(「ガイド情報を追加させるための領域」の一例)を表示させる。ガイド追加設定部42Fは、運転員がこの自由記入枠に入力した情報を追加ガイド情報として受け付け、ガイド情報DB44Bに記録する。
【0058】
本実施形態に係るガイド追加設定部42Fは、更に、運転員による追加ガイド情報の入力を補助するために、表示装置50の表示画面の異なる領域に、標準ガイド情報と、重要ワード及びその重要度を示すリストL1(
図4)とを表示させる。
【0059】
加えてガイド追加設定部42Fは、運転員によって重要ワードの一つが選択された場合、運転日報DB44Cにアクセスし、選択された重要ワードを含む運転日報等の一部を読み取り、表示装置50の表示画面の異なる領域に表示させる。
【0060】
従って運転員が追加ガイド情報を入力するとき、ガイド追加設定部42Fは、追加前のガイド情報に相当する標準ガイド情報(
図3)と、重要ワード及びその重要度を示すリストL1(
図4)と、選択された重要ワードを含む運転日誌等の抜粋部分と、自由記入枠とを同時に表示可能に構成される。
【0061】
標準ガイド情報(
図3)と、自由記入枠は、並置して(すなわち、表示画面の縦方向又は横方向の同じ位置となるように並べて)表示可能に構成することが好ましい。例えば標準ガイド情報を表示画面の左側の領域(「第1領域」の一例)の表示し、自由記入枠を表示画面の右側の領域(「第2領域」の一例)に表示させてもよい。このように表示させることにより、標準ガイド情報を確認しながら、標準ガイド情報に矛盾しない内容を追加ガイド情報として入力させることが可能となる。
【0062】
また、ガイド追加設定部42Fは、リストL1の異なる重要ワードが運転員によって選択された場合、運転日報DB44Cにアクセスし、新たに選択された重要ワードを含む運転日報等の一部を読み取り、表示装置50の表示画面の異なる領域に表示させる。このように表示させることにより、複数の重要ワードに関する運転日報等を参照しながら、追加ガイド情報を入力させることが可能となる。
【0063】
図5には、運転員が「循環粒子」という重要ワードを選択した場合に、「循環粒子」を含む運転日誌等の抜粋のリストL2と、自由記入枠FL(ガイド記入欄)を、表示装置50の表示画面に並置させた一例を示す。同図に示されるように、ガイド追加設定部42Fは、選択された重要ワードを強調表示させてもよい。
【0064】
同図に示されるように、ガイド追加設定部42Fは、運転日誌等から、複数の日時について、重要ワードを含む文章を抜粋するように、リストL2を作成してもよい。複数の日時について、重要ワードを含む文章を抜粋することにより、関連する文章を効率良く発見することが可能になる。
【0065】
又、ガイド追加設定部42Fは、重要度に貢献した文章(例えば、TFが大きい文章)を上位に表示するようにリストL2を作成してもよい。
【0066】
更に、ガイド追加設定部42Fは、アラーム情報DB44Aにアクセスし、追加ガイド情報に対応するアラームが発生した日(又はその前後)に作成された文章等を上位に表示するようにリストL2を作成してもよい。この態様に係る表示装置は、プラントの運転状況に関する警告発生時に表示されるガイド情報を追加させるための領域を表示画面に表示するとともに、この警告と同一(又は同一カテゴリ)の警告発生時における過去のプラントの運転状況に関する情報を、同時に表示する。
【0067】
図6は、本実施形態に係る運転支援システム30を実現するための物理的構成を示す図である。但し、エッジ/クラウドコンピューティング部32は、知られた物理的構成を採用することが可能であるため、説明を省略し、以下では、エッジ/クラウドコンピューティング部32を除いた運転支援システム30の物理的構成について説明する。
【0068】
運転支援システム30は、演算部に相当するCPU(Central Processing Unit)30Aと、記憶部に相当するRAM(Random Access Memory)30B及びROM(Read only Memory)30Cと、通信部30Dと、入力部30Eと、表示部30Fとを有する。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。なお、本例では運転支援システム30が一台のコンピュータで構成される場合について説明するが、運転支援システム30は、複数台のコンピュータから構成されてもよい。例えば、表示部30Fは、複数台のディスプレイから構成されてもよい。また、
図6で示す構成は一例に過ぎず、これらの構成のうち一部を有さなくてもよい。さらに、構成の一部が遠隔地に設けられてもよい。例えば、ROM30Cの一部を遠隔地に設け、通信ネットワークを介して通信可能に構成してもよい。
【0069】
CPU30Aは、ROM30C等に記録されたコンピュータプログラム等を実行することにより、本開示に含まれる制御処理及び演算処理等を行う演算部である。CPU30Aは、プロセッサを備える。CPU30Aは、RAM30B、ROM30C、通信部30D及び入力部30E等から種々の情報(プロセスデータを含む)を受け取り、演算処理結果等を表示部30Fに表示させたり、RAM30BまたはROM30Cに格納させたりする。
【0070】
RAM30Bは、記憶部のうちキャッシュメモリとして機能するものであり、例えばSRAM及びDRAM等の揮発性半導体記憶素子で構成されてよい。
【0071】
ROM30Cは、記憶部のうちメインメモリとして機能するものであり、例えばフラッシュメモリ等の電気的に情報を書き換え可能な不揮発性半導体記憶素子又は磁気的に情報を書き換え可能なHDDで構成されてよい。ROM30Cは、例えば、本開示に示される各制御及び各演算処理を含む処理を実行するためのコンピュータプログラム及びデータを記憶してよい。
【0072】
通信部30Dは、運転支援システム30をDCS20等の他の装置に接続するためのインターフェースである。通信部30Dは、インターネット等の通信ネットワークに接続されてよい。
【0073】
入力部30Eは、運転員からデータの入力等(本開示における重要ワードの選択及び追加ガイド情報の入力を含む)を受け付けるものであり、例えば、マウス、キーボード及びタッチパネルを含んでよい。
【0074】
表示部30Fは、CPU30Aによる演算結果を視覚的に表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)から構成されてよい。
【0075】
上記のような物理的構成において、主としてCPU30Aがコンピュータプログラムを実行することにより監視装置40のアラーム表示制御部42を構成する各機能を実現することが可能であり、主としてROM30Cから記憶部44を構成する各データベースを実現することが可能であり、主として表示部30Fから表示装置50を実現することが可能である。
【0076】
[表示方法]
以下、運転支援システム30を用いて運転員にアラームを発報する際に表示されるガイド情報を作成するための表示方法を含む、一連の運転支援方法について説明する。
図7は、このような表示方法を含むフローチャートである。
【0077】
まず、標準ガイド情報が作成される。熟練の運転員は、運転支援システム30の標準ガイド設定部42Dに基づいて、アラームごとに、その対処方針(アラーム発報時にアラームの適否を判断するために、運転員が確認すべきプロセスデータ等を特定する情報を含む)をまとめた標準ガイド情報を入力する。標準ガイド情報は、典型的には、プラント1の稼働を開始する前に予め作成される汎用性の高いガイド情報であり、同種の他のプラントにも利用可能な情報を含む場合がある。入力された標準ガイド情報は、ガイド情報DB44Bに登録される。
【0078】
その後、プラント1の稼働が開始される。運転員は、プラント1の実際の稼働状況に基づいて、毎日、運転日誌を記録する。運転日報DB44Cには、運転日誌が格納され、蓄積される。また、アラーム判定部42Bは、所定のプロセスデータをアラーム判定ロジックに基づいて評価し、異常の発生有無を判断する。異常が発生したと判断された場合、監視装置40は、表示装置50に、アラームを発報させると共にガイド情報を表示させる。このとき表示されるガイド情報は、予め設定された標準ガイド情報に相当する。運転員は、標準ガイド情報に基づいてアラームに対処する。
【0079】
十分な期間が経過した後、運転員は、所定のアラームについて、追加ガイド情報の設定に着手する。まず、重要ワード抽出部42Eは、運転日報DB44Cにアクセスし、運転日誌等の実際の稼働状況に関する情報を取得する(ステップS71)。
【0080】
次いで重要ワード抽出部42Eは、取得した情報に基づいて重要ワードを抽出する(ステップS72)。表示装置50の表示画面には、重要ワード及び重要度のリストと、現時点におけるガイド情報と、自由記入枠FLとが表示される。ガイド情報と自由記入枠FLは、例えば、表示画面の水平方向に並置して表示される。
【0081】
なお、重要ワード抽出部42Eは、アラームの内容に応じて、抽出する重要ワードが異なるように構成されてもよい。例えば、重要度算出部42E3は、所定のアラームに対し、予め所定のワードの重要度が高くなるように重要度を算出するように構成されてもよい。また、情報抽出部42E1は、アラームの内容に応じて、そのアラームとの関連性が低い単語をフィルタリングして重要ワードから除外されるように構成されてもよい。
【0082】
運転員は、重要ワード及び重要度のリストを確認し(ステップS73)、重要度(スコア)を参考に重要ワードを選択する(ステップS74)。ガイド追加設定部42Fは、運転員によって重要ワードの一つが選択された場合、運転日報DB44Cにアクセスし、選択された重要ワードを含む運転日報等の一部を読み取り、表示装置50の表示画面の異なる領域に表示させる。このとき、重要ワードを含む文章を複数候補表示することにより、追加ガイド情報にふさわしい情報を効率良く発見することが可能になる。
【0083】
運転員は、ガイド情報及び運転日報等の抜粋を確認しながら(ステップS75)、ガイド情報に追加すべき情報の有無を判定する(ステップS76)。
【0084】
ガイド情報に追加すべき情報が有ると判定された場合(YES)、運転員は、運転日報等の抜粋等に基づいて、自由記入枠FLに追加すべき追加ガイド情報を入力する(ステップS77)。ガイド追加設定部42Fは、運転員が自由記入枠FLに入力した情報を追加ガイド情報として受け付け、ガイド情報DB44Bに記録する。その後、アラーム発報の際には、追加ガイド情報を含むガイド情報が表示装置50の表示画面に表示される。
【0085】
ここで追加ガイド情報は、プラントの機器の仕様の相違に基づいた情報であってもよい。プラントの機器の仕様はプラントの発電規模等に応じて異なるところ、標準ガイド情報は、このような機器の仕様の相違を考慮することなく、ボイラ一般にあてはまる対処方針のみが記載されている場合がある。例えば、プラントの機器の一つであるボイラは、仕様に応じて、硫黄酸化物(SOx)及び窒素酸化物(NOx)の規制値が異なる。これに従って、ボイラによって、脱硝装置及び脱硫装置を有するものと、有さないものがある。また、ボイラによって、必要とされる温度及び圧力が異なる場合もある。本出願の発明者らは、この点に着目し、ガイド情報を固定化するのではなく、ガイド情報を追加可能にすることにより、プラントの機器の仕様の相違など、プラント特有の事情を反映したガイド情報を作成することに着想した。
【0086】
更に、運転日誌等のように異なる目的で作成され、蓄積されている情報に着目し、ガイド情報の追加の際、これらプラントの実際の稼働状況に関する情報にアクセスし、同時に表示されるように構成した。このため、ガイド情報の作成の負荷を低減するとともに、経験の浅い運転員であっても、容易に、プラント特有の事情を考慮した新規なガイド情報を追加することが可能となる。
【0087】
また、プラントの実際の稼働状況に関する情報を単に表示するのではなく、重要度が高い情報を絞り込んで運転員等のガイド作成者に閲覧させるように構成したから、ガイド情報の作成負荷を一層低減することが可能になる。
【0088】
又、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。例えば、重要ワードの抽出及び重要度の算出には、機械学習の手法を用いてもよい。その際、実際に追加ガイド情報に加えられたことを報酬とする教師データを作成してもよい。また、運転日誌を作成した運転員の識別情報を一つの因子としてもよい。機械学習モデルは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)等のニューラルネットワークを用いるもの、ガウス過程回帰等の回帰モデルを用いるもの、決定木等の木アルゴリズムを用いるものを含む。機械学習のための情報を収集する際には、エッジ/クラウドコンピューティング部32を使用することも可能である。その他、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。又、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 プラント
2a 燃料供給口
2b ガス出口
2c 給気ライン
2d 排出口
3 サイクロン
3a 排ガス流路
4 循環材回収管
4a ループシール部
5 後部煙道
6 炉壁管
7 ポンプ
30 運転支援システム
30D 通信部
30E 入力部
30F 表示部
32 クラウドコンピューティング部
40 監視装置
42 アラーム表示制御部
42A プロセスデータ取得部
42B アラーム判定部
42C アラーム情報表示部
42D 標準ガイド設定部
42E 重要ワード抽出部
42F ガイド追加設定部
44 記憶部
50 表示装置
100 タービン
102 復水器