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特許7604517自己層化ハードコートによって封入された表面微小構造を有するレンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】自己層化ハードコートによって封入された表面微小構造を有するレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20241216BHJP
   G02B 1/10 20150101ALI20241216BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20241216BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20241216BHJP
   G02B 1/16 20150101ALI20241216BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20241216BHJP
   G02B 3/08 20060101ALI20241216BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G02B3/00 Z
G02B1/10
G02B1/111
G02B1/14
G02B1/16
G02B1/18
G02B3/08
G02C7/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022562303
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2021060478
(87)【国際公開番号】W WO2021214197
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】20305401.0
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】598142955
【氏名又は名称】エシロール アンテルナショナル
【氏名又は名称原語表記】ESSILOR INTERNATIONAL
【住所又は居所原語表記】147,rue de Paris,F-94277 Charenton-le-Pont,France
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ビトー
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03640714(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/124204(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/124352(WO,A1)
【文献】特開2010-204456(JP,A)
【文献】特開2009-175226(JP,A)
【文献】特開2011-065028(JP,A)
【文献】特開2011-039332(JP,A)
【文献】特開平10-314662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/02 - 7/06
G02B 1/111
G02B 1/14
G02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学物品であって、
-対向する第1及び第2のレンズ面を有するベースレンズ基材と、
-対向する第1及び第2の保護面を有する保護層であって、前記第1の保護面は前記第2のレンズ面上に配置される、保護層と、
-少なくとも1つ又は複数の光学素子であって、各々が
前記第1の保護面及び前記第2のレンズ面の一方の一部分を画定し、
0.1ミリメートル(mm)以下である、前記光学素子を担持する前記第2のレンズ面に直交する方向において測定される最大高さ及び2.0mm以下である直径を有する、少なくとも1つ又は複数の光学素子と、
を含み、
前記保護層は、
少なくとも2つの別個の層を有する自己層化コーティングで構成され、前記少なくとも2つの別個の層は、
-前記保護層の最内部に対応し、2つの対向する表面を有し、一方の表面は第1の保護面に対応する、第1の層LSSC1及び
-前記保護層の最外部に対応し、2つの対向する表面を有し、一方の表面は第2の保護面に対応する、第2の層LSSC2であり、
前記自己層化コーティングは、少なくとも2つ樹脂組成物1及び樹脂組成物2を含む自己層化組成物の重合化から生成され、
前記第1の層LSSC1は、前記少なくとも2つの樹脂組成物の一方である樹脂組成物1、硬化後は硬化樹脂1で構成され、前記硬化樹脂1は、
前記少なくとも1つ又は複数の光学素子の屈折率nよりも低い屈折率nSSC1を示し、差n-nSSC1は0.045よりも大きく、
前記第2の層LSSC2は、前記少なくとも2つの樹脂組成物のうちの他方である樹脂組成物2、硬化後は硬化樹脂2で構成され、前硬化樹脂2は、
前記屈折率nSSC1と同様又はそれよりも高い屈折率nSSC2を示す、光学物品。
【請求項2】
前記少なくとも1つ又は複数の光学素子は、マイクロレンズ、フレネル構造、回折構造、永久的な技術的バンプ、及び位相シフト要素からなる群から選ばれる、請求項1に記載の光学物品。
【請求項3】
前記保護層は、前記光学素子の各々の最大高さの少なくとも2倍~多くとも10倍の、前記第1の保護面と前記第2の保護面との間の前記第1の保護面に直交する方向において測定される前記最大高さを有する、請求項1又は2に記載の光学物品。
【請求項4】
前記層LC1は、前記光学素子の各々の最大高さの少なくとも1倍~多くとも5倍の、前記第1の保護面と前記第2の保護面との間の前記第1の保護面に直交する方向において測定される前記最大高さを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学物品。
【請求項5】
前記層LC2は、前記光学素子の各々の最大高さの少なくとも1倍~多くとも5倍の、前記第1の保護面と前記第2の保護面との間の前記第1の保護面に直交する方向において測定される前記最大高さを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学物品。
【請求項6】
前記少なくとも1つ又は複数の光学素子は、2マイクロメートル(μm)~20μmである、前記第2のレンズ面に直交する方向において測定される最大高さ及び0.8ミリメートル(mm)~2.0mmである直径を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学物品。
【請求項7】
前記少なくとも2つの樹脂組成物の各々は異なる表面張力を有し、前記少なくとも2つの樹脂組成物の前記表面張力の差は、4mN/mよりも大きく、前記樹脂組成物1の前記表面張力は、前記レンズ基材の前記表面張力よりも大きい、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学物品。
【請求項8】
前記硬化樹脂1は、架橋剤C1の存在下且つナノ粒子の存在下での有機ポリマー、モノマー、又は両方の混合物の硬化から生成され、
前記硬化樹脂2は、ナノ粒子の存在下での有機ポリマー、モノマー、又は両方の混合物の硬化から生成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学物品。
【請求項9】
前記自己層化組成物は、
エポキシ化合物、架橋剤、シリカナノ粒子、シロキサン化合物、及び溶媒又は溶媒の混合物を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学物品。
【請求項10】
前記エポキシ化合物は、少なくとも1つの環状脂肪族基又はアリール基及び3以上のC/O比を有するエポキシ化合物の群から選択され、
前記架橋剤は、ポリアミン、ポリチオール、ポリオール、及びポリカルボン酸の群から選択され、
前記シリカナノ粒子は、官能化シリカナノ粒子又は溶媒若しくは溶媒の混合物中に分散したシリカナノ粒子であり、
前記シロキサン化合物は、有機シロキサン樹脂又はポリシロキサンから選択される、請求項9に記載の光学物品。
【請求項11】
前記ベースレンズ基材及び前記光学素子は両方とも、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリ(エチレンテレフタレート)のコポリマーのポリカーボネート;ポリオレフィン、特にポリノルボルネン、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のホモポリマー及びコポリマー、(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー、特にビスフェノールA由来の(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー、チオ(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー、ポリウレタン及びポリチオウレタンホモポリマー又はコポリマー、エポキシポリマー及びコポリマーのポリカーボネート、エピスルフィドポリマー及びコポリマーから選択される熱可塑性又は熱硬化性プラスチックで作られる、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学物品。
【請求項12】
前記ベースレンズ基材は半製品レンズである、請求項1~11のいずれか1項に記載の光学物品。
【請求項13】
前記保護層の前記第2の表面は、以下:反射防止コーティング、フォトクロミックコーティング、防汚コーティング、防曇コーティング、着色コーティング、自己修復コーティング、撥水コーティング、帯電防止コーティング、抗UVコーティング、又はブルーライトカットコーティングの1つ又は複数を含む少なくとも1つの追加のコーティングで覆われる、請求項1~12のいずれか1項に記載の光学物品。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の光学物品の製造方法であって、
1)対向する第1及び第2のレンズ面を有するベースレンズ基材を提供することであって、前記ベースレンズ基材は、
前記第2のレンズ面上に、0.1ミリメートル(mm)以下である、前記第2のレンズ面に直交する方向において測定される最大高さ及び2.0mm以下の直径を有する少なくとも1つ又は複数の光学素子を備える、提供することと、
2)湿式堆積により、前記少なくとも1つ又は複数の光学素子を含む前記ベースレンズ基材の前記第2のレンズ面上に、対向する第1及び第2の保護面を有する保護層を形成するのに適した硬化性自己層化組成物を塗布することと、
3)前記保護層を形成する前記硬化性自己層化組成物を硬化させることと、
4)任意選択的にステップ2又はステップ2及びステップ3を繰り返すことと、
を含み、
ステップ3又は4から生成される前記保護層は、光学素子のないレンズの前記第2のレンズ面に平行する第2の保護面を呈し、
前記保護層は、前記少なくとも1つ又は複数の光学素子を封入する、方法。
【請求項15】
前記ベースレンズ基材及び前記少なくとも1つ又は複数の光学素子は、単一ステップで形成される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面から突出する、マイクロレンズ、フレネル構造等の少なくとも1つの光学素子又は複数の光学素子を有するベースレンズ基材を備えた光学物品及びそのような光学物品を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ等の光学物品は一般に、所望の屈折力を提供するような形状のベースレンズ基材と、ベースレンズ基材の少なくとも1つの表面を覆い、擦過によるダメージを受けないようにする摩耗防止コーティングとを備える。
【0003】
摩耗防止コーティングは、ハードコーティングとしても知られ、二層構造を有する好ましい実施形態によれば、ベースレンズ基材から摩耗防止コーティングの自由表面への硬度勾配を提供する。コーティングの上層は、自由表面におけるコーティングの最も硬度の高い部分を定義し、薄い粒子及び薄い擦過に対する保護を可能にし、一方、コーティングの下層は、その下にある硬度がより低い部分を定義し、より大きな粒子によって提供される衝撃を吸収し、より大きな擦過の形成を阻止することができる。ベースレンズ基材の硬度に伴う遷移も提供して、基材と摩耗防止コーティングとの間の境界面におけるひびの形成を阻止する。
【0004】
幾つかの用途では、ベースレンズ基材上に、マイクロレンズ等の複数の光学素子を提供して、光学物品の屈折力の局所変化を提供することが望ましいことがわかっている。例えば、米国特許出願公開第2017/0131567号明細書から、レンズの表面上に形成された複数のマイクロレンズを備えたレンズであって、マイクロレンズによって提供される屈折力の局所変化によって近視の進行を抑制又は遅らせることができる、レンズが既知である。
【0005】
文献:国際公開第2016/168746号パンフレットから、第1の屈折力を有するレンズであって、レンズは、第2の屈折力を有するマイクロレンズのアレイを備え、マイクロレンズにより、レンズの曲率が制限される場合であってもレンズによって提供される矯正を高めることができ、又はマイクロ規模で目に見える急な段差を示すことなく屈折力の異なる大きな領域を有する多焦点レンズを形成できるようにする、レンズも既知である。
【0006】
図1a及び図1bを参照すると、摩耗防止コーティングを有するマイクロレンズを有するレンズの被覆は、マイクロレンズの屈折力を変え、それ故、マイクロレンズによって提供される効果を低下させ、又は損なう。実際に、マイクロレンズの厚さは通常、約1μmから2μmであり、一方、摩耗防止コーティングの典型的な厚さは約3μmである。それ故、マイクロレンズ等の突出要素を備えた表面は、摩耗防止コーティングによって覆われ(典型的には浸漬によって塗布される)、摩耗防止コーティングの自由表面は厳密には、コーティングが覆うレンズの曲率と異なる。その代わり、突出要素の存在は、上記自由表面に表面の局所変形を生じさせる。
【0007】
図1bに示すように、そのような1つの変形に入射した光線は、摩耗防止コーティングに入る際、第1の屈折を受け、ベースレンズ基材のマイクロレンズとの境界面において第2の屈折を受け、したがって、光線の経路は、摩耗防止コーティングがない場合(図1a)の経路と比較して変わる。
【0008】
摩耗防止コーティングの厚さを低下させて、マイクロレンズ屈折力のこの変化を低減することで構成される解決策が提案されている。しかしながら、このコーティングで被覆されたマイクロレンズの局所屈折力P’は約P-0.5(Pはコーティングなしのマイクロレンズの初期屈折力)であるため、屈折力の変更がまだ残っていることが測定されている。さらに、コーティングの擦過に対する保護の性質は大幅に低下し、したがって、この解決策は満足のいくものではない。
【0009】
同じ類い又は問題が、ベースレンズ基材上に存在する他の光学構造で生じる。例えば、フレネルリング等の構造も、摩耗防止コーティングによって被覆された場合、屈折力の摂動を受ける。
【0010】
したがって、良好な光学的性質のみならず良好な機械的性質も有するマイクロレンズ等のマイクロ構造を有する光学レンズがなお必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術の短所の解決策を提供することである。
【0012】
特に、本発明の一目的は、ベースレンズ基材と、上記基材を保護する保護層と、少なくとも1つの光学素子(マイクロレンズ等)又は複数の光学素子とを備えた光学物品であって、摩耗防止コーティングが表面マイクロ構造を幾分か再現する場合、従来技術とは対照的に、保護層は光学素子の光学効果を低下又は抑制せず、良好な摩耗防止を保証する、光学物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的は、独立請求項に記述されている特徴の組合わせによって達成され、従属請求項は、本発明の特定の有利な例を提供する。
【0014】
光学物品及びその製造方法が開示される。
【0015】
それ故、一実施形態において、光学物品が開示され、本光学物品は、
-対向する第1及び第2のレンズ面を有するベースレンズ基材と、
-対向する第1及び第2の保護面を有する保護層と、
-少なくとも1つ又は複数の光学素子であって、各々が
第1の保護面及び第2のレンズ面の一方の一部分を画定し、
0.1ミリメートル(mm)以下である、光学素子を担持する第2のレンズ面に直交する方向において測定される最大厚及び2.0mm以下である直径を有する、少なくとも1つ又は複数の光学素子と、
を含み、
保護層は、
少なくとも2つの別個の層を有する自己層化コーティングで構成され、少なくとも2つの別個の層は、
-保護層の最内部に対応し、2つの対向する表面を有し、一方の表面は第1の保護面に対応する、第1の層LSSC1及び
-保護層の最外部に対応し、2つの対向する表面を有し、一方の表面は第2の保護面に対応する、第2の層LSSC2であり、
自己層化コーティングは、少なくとも2つ、好適には2つの非相溶性樹脂組成物である樹脂組成物1及び樹脂組成物2を含む自己層化組成物の重合化から生成され、
第1の層LSSC1は、少なくとも2つの樹脂組成物の一方である樹脂組成物1、硬化後は硬化樹脂1で構成され、上記硬化樹脂1は、
少なくとも1つ又は各光学素子の屈折率nよりも低い屈折率nSSC1を示し、差n-nSSC1は0.045よりも大きく、好適には0.10よりも大きく、又は更には0.15よりも大きく、
第2の層LSSC2は、少なくとも2つの樹脂組成物のうちの他方である樹脂組成物2で構成され、硬化後、硬化した上記樹脂2は、
屈折率nSSC1と同様又はそれよりも高い屈折率nSSC2を示す。
【0016】
本発明の別の目的は、光学物品又は本発明による光学物品を製造する方法であり、本方法は、
1)対向する第1及び第2のレンズ面を有するベースレンズ基材を提供することであって、ベースレンズ基材は、
第2のレンズ面上に、0.1ミリメートル(mm)以下である、第2のレンズ面に直交する方向において測定される最大高さ及び2.0mm以下の直径を有する少なくとも1つ又は複数の光学素子を備える、提供することと、
2)湿式堆積により、少なくとも1つ又は複数の光学素子を含むベースレンズ基材の第2のレンズ面上に、対向する第1及び第2の保護面を有する保護層を形成するのに適した硬化性自己層化組成物を塗布することと、
3)保護層を形成する硬化性自己層化組成物を硬化させることと、
4)任意選択的にステップ2又はステップ2及びステップ3を繰り返すことと、
を含み、
ステップ3又は4から生成される保護層は、光学素子のないレンズの第2のレンズ面に平行する第2の保護面を呈し、
上記保護層は、少なくとも1つ又は各光学素子を封入する。
【0017】
本発明の保護層は、自己層化コーティングで構成される。換言すれば、保護層は、1つのみの堆積ステップで少なくとも2つの別個の層LSSC1及びLSSC2を得られるようにする自己層化組成物を硬化させることによって得られる。
【0018】
保護層は、層LSSC1のおかげで光学素子の光学機能を保証するために、光学素子との屈折率のコントラストを呈する役割を有する。その役割は、層LSSC2のおかげで擦過及び摩耗からベースレンズ基材を保護することでもある。保護層は、各光学素子(マイクロレンズ等)を封入することができる厚さである。
【0019】
さらに、保護層(即ち最外表面LSSC2又は表空気に接する表面LSSC2にも対応する保護層のうちの第2の保護層)の自由表面は、保護層が覆うベースレンズ基材の表面(即ち光学素子のないレンズの第2のレンズ表面)のものと全く同じであり、同じベースカーブを有する。換言すれば、第2の保護表面は光学素子のないレンズの第2のレンズ表面と平行し、又は保護層は、光学素子のないベースレンズ基材の第2のレンズ表面のベースカーブと同じベースカーブを示す。保護層は平滑な自由表面(即ち平滑な第2の保護層)を含む。保護層のうちの第2の保護層は、第1の保護表面に存在する高さ変化を複製しない。その結果として、各光学素子の形状及びその屈折力は、コーティングによって損なわれず、したがって、コーティングの堆積に関連して先に開示した有害効果は生じない。さらに、保護層は、先に触れた二層構造のみならず、平滑な表面のおかげで良好な摩耗耐性を示す。コーティングが表面マイクロ構造を再現する場合、レンズの表面上の擦られた偶発的な窪みは、窪みの先端部とコーティングの表面との間の角度の複数の急激な変化に直面し、ハードコート表面を擦過するより高い擦過確率に繋がる。
【0020】
保護層の平滑な自由表面はまた、反射防止、防汚、又は防曇コーティング、美的、及び快適性等の他の機能的コーティングの続く堆積に特に有利である。
【0021】
保護層の層LSSC1及び光学素子をそれぞれ形成する材料は、0.045よりも大きい、好適には少なくとも0.1の屈折率ギャップを提供するように選択され、保護層材料は、光学素子を形成する材料の屈折率よりも低い屈折率を有する。この屈折率ギャップは、レンズ表面上に光学素子を生産するために当業者によって使用される種々の技術に妥当な物理的高さを有しながら、光学素子に大きな物理的厚さを必要とせず且つ光学素子の巨視的可視性若しくは不快な見た目を誘導せず又は一般的なコーティング技法による被覆を難しくせずに、光学素子に所望の屈折力を得られるようにする。
【0022】
別段の規定がない限り、本発明における屈折率は、589nmの波長において25℃で表される。
【0023】
本明細書の説明及び利点のより詳細な理解のために、ここで、同様の参照符号が同様の要素を表す添付の図面及び詳細な説明に関する以下の簡単な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1a-1b】既に説明されており、入射光線の経路上に光学素子(マイクロレンズ)を備えた機材を覆う保護層の影響を示す。
図2a-2d】本発明の光学物品の例を模式的に示す。
図3】一実施形態による光学物品を製造する方法のスピンコート又は噴霧コートステップを模式的に示す。
図4】一実施形態による光学物品を製造する方法のロッドマイヤーコーティングステップを模式的に示す。
図5】これも一実施形態による光学物品を製造する方法のロッドマイヤーコーティングステップに関連する。
図6】一実施形態による光学物品を製造する方法のインクジェットコーティングステップを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
光学素子を含む光学物品
本発明による光学物品についてこれより説明する。
【0026】
光学物品は、
-対向する第1及び第2のレンズ面を有するベースレンズ基材と、
-対向する第1及び第2の保護面を有する保護層であって、第1の保護面は第2のレンズ面上に配置される、保護層と、
-少なくとも1つ又は複数の光学素子であって、各々が第1の保護面及び第2のレンズ面の一方の一部分を画定する、少なくとも1つ又は複数の光学素子とを含む。
【0027】
ベースレンズ基材
ベースレンズ基材10は、単層を含んでもよく、又は積層で形成されてもよい。ベースレンズ基材10は好適には、少なくとも、平面ウェハ11、屈折力を提供するベースレンズ12、又は両方、即ち屈折力を提供するベースレンズ12及び後述する光学機能でベースレンズ12を補うウェハ11を有する。図2aに示す例では、ベースレンズ基材10は平面ウェハ11及びベースレンズ12を有する。図2bに示す例では、ベースレンズ基材10はベースレンズ12のみを有する。
【0028】
平面ウェハ11は屈折力を有さず、したがって、矯正を装着者に提供せず、他の層の機械的支持として作用し、任意選択的に以下の光学機能の中の少なくとも1つ等の1つ又は複数の光学的性質を最終光学物品に提供もする:
-振幅濾波機能、
-スペクトル濾波機能(ショートパス若しくはロングパス等のエッジパス若しくはバンドパス濾波又は例えば着色による若しくはフォトクロミック若しくはエレクトロミック機能の組み込みによる特定の色の濾波、UV吸収、ミラー等)、
-偏光機能。
【0029】
平面ウェハ11は、単一のフィルム層で形成されたフィルム構造又は互いに付着された複数のフィルム層で形成されたフィルム積層構造を指す。より正確には、平面ウェハ11は1つ又は幾つかの眼科用グレード機能フィルム(例えば、偏光性若しくはフォトクロミック性を有する)で形成され得、上記眼科用グレード機能フィルムは任意選択的に、その眼科用機能フィルムの片面又は両面に眼科用グレード保護フィルムを有する。
【0030】
平面ウェハ11は、20μmから700μm、好適には30μmから600μmの範囲の厚さを示し得る。保護層は、存在する場合、約50μmの厚さを有し得る。
【0031】
平面ウェハ(機能フィルム及び保護フィルムを含む)の形成に好適な透明樹脂フィルム又はシート材料は、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)又はセルロースアシレート系材料、例えばセルロースジアセテート及びセルローストリアセテート(TAC)を含む。他の使用可能なウェハ材料は、ポリカーボネート、ポリスルホン、セルロースアセテートブチレート(CAB)、又は環状オレオフィンコポリマー(COC)、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリスチレン、アクリレートとスチレンとのコポリマー、及びポリ(ビニルアルコール)(PVA)を含むことができる。ポリカーボネート系材料は、例えば、ポリビスフェノール-Aカーボネート;ホモポリカーボネート、例えば1,1’-ジヒロキシジフェニル(dihroxydiphenyl)-フェニルメチルメタン、1,1’-ジヒロキシジフェニル-ジフェニルメタン、1,1’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニル-2,2-プロパン、それらの相互コポリマーポリカーボネート及びビスフェノールAを有するコポリマーポリカーボネートを含む。
【0032】
ベースレンズ12は、例えば熱可塑性又は熱硬化性プラスチックで作られた光学樹脂で形成し得る。特に、熱硬化性材料は、例えば、ポリアミド;ポリイミド;ポリスルホン;ポリカーボネート及びそのコポリマー;ポリ(エチレンテレフタレート)、並びにポリメチルメタクリレート(PMMA)から選択することができる。
【0033】
熱硬化性材料は、例えば、エチレン/ノルボルネン又はエチレン/シクロペンタジエンコポリマーなどのシクロオレフィンコポリマー;ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(CR 39(登録商標))のホモポリマーなどの直鎖又は分岐の脂肪族又は芳香族のポリオールのアリルカーボネートのホモポリマー及びコポリマー;ビスフェノールAから誘導することができる(メタ)アクリル酸及びそのエステルのホモポリマー及びコポリマー;チオ(メタ)アクリル酸及びそのエステルのポリマー及びコポリマー、ビスフェノールA又はフタル酸とスチレンなどのアリル芳香族とから誘導することができるアリルエステルのポリマー及びコポリマー、ウレタン及びチオウレタンのポリマー及びコポリマー、エポキシのポリマー及びコポリマー並びにスルフィド、ジスルフィド及びエピスルフィドのポリマー及びコポリマー並びにこれらの組み合わせから選択することができる。本明細書で使用される場合、(コ)ポリマーは、コポリマー又はポリマーを意味することが意図されている。本明細書で使用される場合、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味することが意図されている。
【0034】
本発明で適宜使用し得る基材の例には、MR6(登録商標)、MR7(登録商標)、MR8(登録商標)、MR1.74(登録商標)、及びMR10(登録商標)樹脂(熱硬化性ポリチオウレタン系樹脂)がある。ポリチオウレタン樹脂に基づく種々の基材は、Mitsui Toatsu Chemicals Companyによって市販されており、これらの基材及びそれらの準備に使用されるモノマーは特に米国特許第4,689,387号明細書、米国特許第4,775,733号明細書、米国特許第5,059,673号明細書、米国特許第5,087,758号明細書、及び米国特許第5,191,055号明細書に記載されている。
【0035】
ベースレンズ基材10又はベースレンズ12は有利なことには、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリ(エチレンテレフタレート)のコポリマーのポリカーボネート;ポリオレフィン、特にポリノルボルネン、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のホモポリマー及びコポリマー、(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー、特にビスフェノールAから誘導される(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー、チオ(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー、ポリウレタン及びポリチオウレタンホモポリマー及びコポリマー、エポキシポリマー及びコポリマーのポリカーボネート;好適にはポリカーボネート、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)ポリマー、又は1.60の屈折率を有する熱硬化性ポリチオウレタン樹脂若しくは1.67の屈折率を有する熱硬化性ポリチオウレタン樹脂で作られ、より好適にはポリカーボネートで作られたエピスルフィドポリマー及びコポリマーから選択される光学樹脂、好適には熱可塑性又は熱硬化性プラスチックから作ることができる。
【0036】
例えば、Sabicによって販売されている、特に屈折率1.586を有するLexan OQ3820(登録商標)等のポリカーボネート、PPG Industriesによって販売されている、特に屈折率1.5を有するCR39(登録商標)等のジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、又はMitsui Toatsuによって販売されている、特に屈折率1.66を有するMR7(登録商標)等の他のポリチオウレタンを使用することが可能である。
【0037】
ベースレンズ12は好適には、装着者の屈折異常、例えば近視又は遠視の矯正に適した屈折力を提供するような形状である。ベースレンズ12は、完成品レンズ、単焦点レンズ、又は多焦点累進レンズ等の多焦点レンズであり得る。
【0038】
ベース基材10は、ベースレンズ12及び/又は平面ウェハ11に加えて、例えば、フォトクロミックtrans-bonding(登録商標)層等の他の層をベースレンズ12の前面に含み得んでもよく、又はベースレンズ若しくは平面ウェハ上に堆積することができ、
-振幅濾波機能、
-スペクトル濾波機能(ショートパス若しくはロングパス等のエッジパス若しくはバンドパス濾波又は例えば着色による若しくはフォトクロミック若しくはエレクトロミック機能の組み込みによる特定の色の濾波、UV吸収、ミラー等)、
-偏光機能
のような光学機能を組み込んだ任意の追加の層を含んでもよい。
【0039】
ベースレンズ12は半製品レンズであってもよく、つまり、半製品レンズから製造されるレンズの、標的屈折力とも呼ばれる最終屈折力を提供しなくてもよい。標的屈折力ではない屈折力を提供してもよく、上記標的屈折力は、半製品レンズの後の表面加工によって得られる。
【0040】
ベースレンズ12はトリミングされていないレンズであってもよく、つまり、周縁形状が、挿入されることになるフレームの形状に調整されていなくてもよい。
【0041】
図2a~図2dに示すように、ベースレンズ基材10は2つの対向する第1及び第2のレンズ表面を有し、2つの対向する主面は後面101及び前面102を構成する。図2aの例では、ベースレンズ基材10の前面102は平面ウェハ11の前面によって形成され、一方、図2bの例では、ベースレンズ表面10の前面102はレンズ12の前面によって形成される。
【0042】
光学素子又は複数の光学素子
光学物品1は、対向する第1及び第2の保護表面を有し、例えばベースレンズ基材10の主面の一方から突出する、第2のレンズ表面上に配置された第1の保護表面を画定する少なくとも1つの光学素子30又は複数の光学素子を更に備える。好ましい実施形態では、各光学素子30は、ベースレンズ基材10の前面102から突出する。
【0043】
「突出する」により、各光学素子がベースレンズ基材10の表面から外側に、即ち上記基材から離れて突き出ることを意味する。それ故、各光学素子は凸状である。
【0044】
一実施形態において、各光学素子30は、ベースレンズ基材10と同じ材料で形成され、ベースレンズ基材10-と一体形成し得る。ベースレンズ基材10が積層である場合、各光学素子30は、突出元の層と同じ材料で形成し得る。
【0045】
一実施形態において、各光学素子30は、ベースレンズ基材10と同じ材料で形成され、上記材料は例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリ(エチレンテレフタレート)のコポリマーのポリカーボネート;ポリオレフィン、特にポリノルボルネン、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のホモポリマー及びコポリマー、(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー、特にビスフェノールA由来の(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー、チオ(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー、ポリウレタン及びポリチオウレタンホモポリマー及びコポリマー、エポキシポリマー及びコポリマーのポリカーボネート;好適にはポリカーボネート、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)ポリマー、又は1.60の屈折率を有する熱硬化性ポリチオウレタン樹脂若しくは1.67の屈折率を有する熱硬化性ポリチオウレタン樹脂で作られ、より好適にはポリカーボネートで作られたエピスルフィドポリマー及びコポリマーから、好適には熱可塑性又は熱硬化性プラスチックの中から選ばれる。
【0046】
以下、光学素子は、光学デバイスの屈折力の局所変化を誘導する、微視的規模の離散光学素子である。
【0047】
一実施形態において、光学素子は、少なくともレンズの1個の断面に沿って、光学素子の平均球面度数が上記断面の一点から上記断面の周縁に向かって増加するように構成されている。
【0048】
一実施形態によれば、光学素子は更に、少なくともレンズの1個の断面、例えば少なくとも光学素子の平均球面度数が増加する断面と同じ断面に沿って、平均円柱度数が、上記断面の一点、例えば平均球面度数の場合と同じ点から上記断面の周縁部に向かって増加するように構成されている。
【0049】
一実施形態によれば、光学素子又は複数の光学素子はマイクロレンズである。マイクロレンズは球面、トーリックであってよく、又は非球面形を有してよい。マイクロレンズは、単焦点、円柱度数、又は非焦点を有し得る。好ましい実施形態において、マイクロレンズは、近視又は遠視の進行を阻止するために使用することができる。その場合、ベースレンズ基材は、近視又は遠視を矯正する屈折力を提供するベースレンズ12を備え、マイクロレンズはそれぞれ、装着者が近視を有する場合、ベースレンズ12の屈折力よりも大きな屈折力を提供し得、装着者が遠視を有する場合、ベースレンズ12の屈折力よりも低い屈折力を有し得る。
【0050】
本開示の意味において、「マイクロレンズ」は、0.8mm以上且つ3.0mm以下の直径を有する円形に刻印可能な輪郭形状を有する。
【0051】
例えば、マイクロレンズは、屈折領域の光学中心に中心を有する円に沿って等間隔に分布していてよい。
【0052】
異なるマイクロレンズの平均円柱度数は、人の網膜の形状に基づいて調整することができる。
【0053】
屈折領域は、遠方視基準点、近方視基準点、及び遠方視基準点と近方視基準点を接合する経線を含んでいてよい。例えば、屈折領域は、人の処方箋に適合又はレンズ要素を装着する人の眼の以上屈折の進行を遅らせるように適合された累進付加レンズを含み得る。
【0054】
経線は、主注視方向とレンズの表面の交線の軸跡に対応している。
【0055】
好適には、このような実施形態によれば、マイクロレンズは、レンズの任意の水平方向断面に沿って、標準装着条件下で、マイクロレンズの平均球面度数及び/又は平均円柱度数が上記水平方向断面と経線の交線からレンズの周縁部に向かって増加するように構成されている。
【0056】
断面に沿った平均球面度数及び/又は平均円柱度数増加関数は、経線に沿って上記断面の位置に応じて異なり得る。
【0057】
特に、断面に沿った平均球面度数及び/又は平均円柱度数増加関数は非対称的である。例えば、平均球面度数及び/又は平均円柱度数増加関数は標準装着条件下で垂直断面及び/又は水平断面に沿って非対称である。
【0058】
マイクロレンズの少なくとも1つは、レンズ要素が標準装着条件下で装着されているとき、人の眼の網膜上で結像しない光学機能を有する。
【0059】
有利なことには、処方箋の屈折力と異なる少なくとも1つの屈折力を有する屈折領域と組み合わせたマイクロレンズのそのような光学機能は、レンズ要素を装着している人の眼の異常屈折の進行を遅らせることができる。
【0060】
マイクロレンズは非隣接であり得る。
【0061】
本開示の意味において、2つのマイクロレンズを連結する全ての経路について、各経路の少なくとも一部に沿って人の眼の処方箋に基づく屈折力を測定し得る場合、2つのマイクロレンズは隣接していない。
【0062】
2つのマイクロレンズは、球面上にある場合、2つの光学素子を連結する全ての経路について、各経路の少なくとも一部に沿って上記球面の曲率を測定し得るとき、隣接していない。
【0063】
一実施形態によれば、複数のマイクロレンズの少なくとも1つは、網膜以外の位置に結像させる光学機能を有している。
【0064】
好適には、マイクロレンズの少なくとも50%、例えば少なくとも80%、例えば全ては、網膜以外の位置に結像する光学機能を有する。
【0065】
一実施形態によれば、マイクロレンズの少なくとも1つは非球面光学機能を有する。
【0066】
好適には、マイクロレンズの少なくとも50%、例えば少なくとも80%、例えば全ては、非球面光学機能を有する。
【0067】
本開示の意味において、「非球面光学機能」は、単焦点を持たないものとして理解されるべきである。
【0068】
非球面光学機能を有する少なくとも1つのマイクロレンズは透明である。
【0069】
これらのマイクロレンズは、円形、正方形、若しくは六角形のような定義されたアレイ又はランダム等で追加することができる。
【0070】
マイクロレンズは、中心又は他の任意の領域と同様に、レンズ要素の特定のゾーンを覆うことができる。
【0071】
光学素子密度すなわち屈折力の量はベースレンズ基材のゾーンに応じて調整することができる。通常、マイクロレンズはベースレンズ基材の周縁に位置して、近視制御への光学素子の効果を上げ、例えば、網膜の周縁形状に起因した周縁焦点ボケを補償し得る。
【0072】
一実施形態によれば、複数のマイクロレンズの少なくとも1つ、例えば全部は、人の眼の網膜の前方に焦線を形成すべく構成された形状を有している。換言すれば、そのようなマイクロレンズは、上記マイクロレンズを透過する光束が集中するあらゆる断面平面が、存在する場合、平面において規則的に又はそれらの断面平面のいずれでも決して規則的にではなく、人の眼の網膜の前方に配置されるように構成される。
【0073】
一実施形態によれば、非球面光学機能を有するマイクロレンズの少なくとも1つ、例えば全部は多焦点屈折マイクロレンズである。
【0074】
本開示の意味において、「多焦点屈折マイクロレンズ」であるマイクロレンズは、二焦点(2つの焦点屈折力を有する)、三焦点(3つの焦点屈折力を有する)、連続変化する焦点屈折力を有する累進付加レンズ、例えば非球面累進表面レンズを含む。
【0075】
一実施形態によれば、少なくとも1つの多焦点屈折マイクロレンズはトーリック面を有している。トーリック面は、その曲率中心を通過しない回転軸の回りに円又は弧を回転させることにより形成可能な(最終的に無限遠に配置される)回転面である。
【0076】
トーリック面レンズは互いに直交する2つの異なる半径方向プロファイルを有しているため、2つの異なる焦点屈折力を生成する。
【0077】
トーリックレンズのトーリック及び球面表面要素は、単一点焦点とは逆に、非点収差光ビームを生成する。
【0078】
一実施形態によれば、非球面光学機能を有するマイクロレンズの少なくとも1つ、例えば光学素子の全部はトーリック屈折マイクロレンズである。例えば、球面度数値が0ジオプタ(δ)以上且つ+5のジオプタ(δ)以下、円柱度数値は0.25ジオプタ(δ)以上のトーリック屈折マイクロレンズである。
【0079】
具体的な実施形態として、トーリック屈折マイクロレンズは純粋な円柱であり得、つまり、最小経線屈折力がゼロである一方、最大経線屈折力は厳密に正、例えば5ジオプタ未満であり得る。
【0080】
一実施形態によれば、マイクロレンズの少なくとも1つ、例えば全部は、高次光学収差を有する光学機能を有する。例えば、マイクロレンズは、ゼルニケ多項式によって定義される連続面で構成される。
【0081】
本発明の光学素子、典型的にはマイクロレンズは、0.1ミリメートル(mm)以下、好適には2マイクロメートル(μm)~20μmである、光学素子を担持する第2のレンズ面に直交する方向において測定される最大高さ及び2.0mm以下、0.8ミリメートル(mm)~2.0mmである直径を有する。
【0082】
図2a及び図2bに戻ると、マイクロレンズ30を展示するベースレンズ基材の表面、典型的には前面102が凸であり、2種類の外面によって形成されることに気づくことができ、第1の外面は、マイクロレンズの形状に起因して局所曲率変動を有する各光学素子の外面である一方、第2の外面は、局所曲率変動が少ないか、又は局所曲率変動がない、マイクロレンズ間に配置されるベースレンズ基材の表面である。好適には、周囲の第2の種類の表面と比較したマイクロレンズの局所曲率変動によって誘導される差は、少なくとも1Dである。
【0083】
したがって、ベースレンズ基材は、マイクロレンズから離れた場所よりもマイクロレンズにおいて大きな平均厚を示し、基材の最大厚は、マイクロレンズの最大厚点で達せられる。
【0084】
別の実施形態によれば、少なくとも1つの光学素子又は複数の光学素子はフレネル構造、各フレネル構造を定義するマイクロレンズ等の回折構造、永久的な技術的バンプ、又は位相シフト要素である。マイクロプリズム等の屈折光学素子及び小さな突起若しくはキャビティ等の光分散光学素子又は基材上に凹凸を生み出す任意のタイプの素子であることもできる。
【0085】
保護層
本発明の保護層は、少なくとも1つ又は複数の光学素子を完全に封入する。
【0086】
保護層は、光学素子のないレンズの第2のレンズ面に平行する第2の保護面を示す。
保護層は、少なくとも2つの別個の層で構成される自己層化コーティングで構成される:
保護層の最内部に対応し、第1の保護面に対応する一表面を有する第1の層LSSC1
及び
保護層の最外部に対応し、第2の保護面に対応する一表面を有する第2の層LSSC2
【0087】
保護層は、少なくとも2つの別個の層LSSC1及びLSSC2を1つのみの堆積ステップで取得できるようにする自己層化組成物を硬化させることによって得られる。自己層化組成物の重合化から生成された自己層化コーティングは、少なくとも2つ、好適には2つの非相溶性樹脂組成物である樹脂組成物1及び樹脂組成物2を含む。
【0088】
少なくとも2つの樹脂組成物は異なる表面張力を有し、少なくとも2つの樹脂組成物の表面張力の差は4mN/m超、好適には10mN/m超であり、樹脂組成物1の表面張力はレンズ基材の表面張力よりも大きい。表面エネルギーは本出願では、KRUSS-DSA100からの画像取得及び解析と共に半自動ゴニオメータを使用して、以下の引用文献に記載されるオーエンス-ウェント法によって計算される:“Estimation of a surface force energy of polymers”OWENS D.K.,WENDT R.G.(1969)J.Appl.Polym.Sci,13,1741-1747。
【0089】
「不溶性樹脂組成物」という表現は、固体フィルムの形成後、「ワンポット」で二層混合物/少なくとも2つの別個の位相若しくは2つの別個の層を生じさせることを意味する。2つの不溶性樹脂組成物は、互いと完全には混和しない。換言すれば、本発明に有用な自己層化コーティングは、溶媒混合物中で混合され、上記自己層化コーティングの塗布及び溶媒蒸発直後の硬化後、自然に分離する2つの不溶性樹脂組成物、少なくとも部分的に不溶性の樹脂組成物を含む。分離が生じ、ベースレンズ基材及び/又は被覆される少なくとも1つの光学素子との親和性がより高い層及び表面又は空気との親和性がより高い別の層を生成する。
【0090】
本発明において、ベースレンズ基材及び/又は被覆される少なくとも1つの光学素子との親和性がより高い樹脂組成物は、樹脂組成物1又は硬化性樹脂組成物1である。これは低屈折率に主に寄与する。他方、表面又は空気との親和性がより高い樹脂組成物は、樹脂組成物2又は硬化性樹脂組成物2である。樹脂組成物2は、良好な機械的強度、良好な摩耗耐性、及び良好な擦過耐性に主に寄与する。それ故、第1の層LSSC1は、硬化後の樹脂組成物1、即ち硬化樹脂1で構成され、上記硬化樹脂1は、差n-nSSC1が0.045超、好適には0.10超、又は更には0.15超であるように、少なくとも1つ又は各光学素子の屈折率nよりも低い屈折率nSSC1を示す。第2の層LSSC2は、硬化後の樹脂組成物2、即ち硬化樹脂2で構成され、上記硬化樹脂2は、屈折率nSSC1と同様又はそれよりも高い屈折率SSC2を示す。
【0091】
一実施形態において、保護層の第1の層LSSC1を形成する材料の屈折率又は屈折の率nSSC1は、差n-nSSC1が0.16超、好適には0.2超、0.3超、又は更には0.5超であるように、マイクロ構造又はマイクロレンズ等の少なくとも1つ又は複数の光学素子を形成する材料の屈折率nmよりも低い。実際には、所与の直径及び所与の所望の屈折力のマイクロレンズ等の光学素子について、摩耗耐性コーティングの付加は、上記屈折力の達成に必要な光学素子の最大高さを上げる傾向を有する。他方、摩耗耐性コーティングを形成する材料と光学素子を形成する材料との差が重要であるほど、必要とされる上記最大高さは低くなり、そしてベースレンズ基材及びそのマイクロレンズの製造は容易になる。
【0092】
本発明における保護層は、光学素子との屈折率コントラストを呈して、層LSSC1のおかげで光学素子の光学機能を保証する役割を有する。その役割は、層LSSC2のおかげで擦過及び摩耗からベースレンズ基材を保護することでもある。
【0093】
基材との親和性がより高い樹脂組成物、即ち樹脂組成物1は、良好な接着、機械的性質、及び凝集性のためにレンズベース基材及び少なくとも1つ又は複数の光学素子との良好な化学的親和性も示すべきである。他方、表面/空気との親和性がより高い樹脂組成物、即ち樹脂組成物2は、硬化後、樹脂組成物1の層と樹脂組成物2の層との間に良好な接着を生み出すように、樹脂組成物1との十分な化学的親和性を示さなければならず、且つ硬化樹脂2/空気境界面に平滑面を生じさせなければならない。
【0094】
低屈折率を有する硬化樹脂1は、有機ポリマー、モノマー、又は両方の混合物と、任意選択的に架橋剤C1及び/又は無機ナノ粒子NP1とを含む樹脂組成物1の硬化から生じることができ、
良好な摩耗耐性を示す硬化樹脂2は、有機ポリマー、モノマー、又は両方の混合物と、任意選択的に架橋剤C2及び/又は無機ナノ粒子NP2とを含む樹脂組成物2の硬化から生じることができ、
但し、
-樹脂組成物1及び2は互いと完全には混和せず、異なる表面張力を有し、少なくとも2つの樹脂組成物の表面張力の差は4mN/m超、好適には10mN/m超であり、樹脂組成物1の表面張力はレンズ基材の表面張力よりも大きく、且つ少なくとも1つ又は複数の光学素子の表面張力よりも大きく、
-樹脂組成物2は、樹脂組成物1との十分な化学的親和性を示して、これらの2つの層間に良好な接着を生み出し、硬化後、平滑面を生成することを条件とする。
【0095】
樹脂組成物1及び2は、眼用レンズの分野で摩耗耐性コーティングとして従来使用されている任意の層であることができ、但し、
-樹脂組成物1及び2は互いと完全には混和せず、異なる表面張力を有し、少なくとも2つの樹脂組成物の表面張力の差は4mN/m超、好適には10mN/m超であり、樹脂組成物1の表面張力はレンズ基材の表面張力よりも大きく、且つ少なくとも1つ又は複数の光学素子の表面張力よりも大きく、
-樹脂組成物2は、樹脂組成物1との十分な化学的親和性を示して、硬化後、これらの2つの層間に良好な接着を生み出し、硬化樹脂2/空気挙界面に平滑面を生成しなければならず、
-そして好適には、樹脂組成物1及び2の両方を含む自己層化組成物が、コーティングされる光学素子上に湿式堆積によって塗布することができることを条件とする。
【0096】
硬化樹脂1及び2は例えば、両方とも2つの異なるナノ複合材料、即ち任意選択的に架橋された硬化マトリックス及びナノ粒子で作ることができる。これらの樹脂1又は2の一方又は両方は架橋することができる。良好な機械的強度、良好な摩耗耐性、及び良好な擦過耐性に主に寄与する樹脂2は、好適には架橋される。
【0097】
硬化樹脂1若しくは2の硬化マトリックス又は硬化樹脂1若しくは2の架橋マトリックスは例えば、アクリル化合物、エポキシアクリル化合物、シラン化合物、アクリルポリウレタン化合物、シロキサン化合物、及び上記化合物の任意の混合物から独立して作られる。
【0098】
ナノ粒子は、樹脂の屈折率を下げ、又は樹脂の硬度を上げるように選ばれる。両方の場合において、本発明に有用なナノ粒子は70nm未満、好適には50nm未満、更に好適には30nm未満の直径を示し、マトリックスの形成に使用される化合物と化学的相溶性の表面を呈さなければならない。
【0099】
樹脂組成物1に有用なナノ粒子は典型的には、1.04から1.5の範囲の屈折率を有するシリカナノ粒子(SiO2)、例えば1.05から1.4の範囲の屈折率を有する中空シリカナノ粒子、官能化又は表面修飾されたシリカナノ粒子、官能化又は表面修飾された中空ナノ粒子、及びそれらの混合物から選ぶことができる。相溶性中空シリカナノ粒子の一例は、JGC C&C製のThrulyaコロイド状中空シリカナノ粒子であることができる。
【0100】
1.4から1.5の範囲の屈折率のシリカ粒子(Nanocryl C-150(トリメチロールプロパントリアクリレート-TMPTA又はIPA-ST-に分散した50%ナノシリカ(30重量%でイソプロパノールに分散した10nm~15nmシリカ粒子等)が使用可能である。
【0101】
市販の溶媒又はモノマー中に分散した表面処理されたSiO2粒子の他の非限定的な例には、Evonik Industries,Inc.(独国)からのNanocryl(登録商標)C-140(50%ヘキサンジオールジアクリラート中の50%SiO2)、Nanocryl(登録商標)C-165(ペンタエリスリトールテトラアクリレート中の50%SiO2)、及びNissan Chemical America(Pasadena,TX,USA)からのIPA-AC-2101(70重量%イソプロピルアルコール中に分散した30重量%SiO2及びPM-AC-2101(70重量%1-メトキシ-2-プロパノール中に分散した30重量%SiO2がある。
【0102】
市販の溶媒又はモノマー中に分散した表面処理されたSiO2粒子の他の非限定的な例には、Evonik Industries,Inc.(独国)からのNanocryl(登録商標)C-140(50%ヘキサンジオールジアクリラート中の50%SiO2)、Nanocryl(登録商標)C-165(ペンタエリスリトールテトラアクリレート中の50%SiO2)、及びNissan Chemical America(Pasadena,TX,USA)からのIPA-AC-2101(70重量%イソプロピルアルコール中に分散した30重量%SiO2及びPM-AC-2101(70重量%1-メトキシ-2-プロパノール中に分散した30重量%SiO2がある。
【0103】
実施形態において、薬剤と相溶性であり、樹脂組成物に含まれる有機ポリマー、モノマー、及び任意選択的な架橋剤との粒子の親和性及び/又は化学的相溶性を保証するように、無機ナノ粒子を官能化する必要があり得る。それ故、実施形態において、樹脂組成物1中の無機ナノ粒子NP1は、薬剤A1を用いて官能化されて、樹脂組成物1に含まれる有機ポリマー、モノマー、及び/又は任意選択的な架橋剤C1との粒子NP1の親和性及び/又は化学的相溶性を保証することができる。無機ナノ粒子NP2は、薬剤A2を用いて官能化されて、樹脂組成物2に含まれる有機ポリマー、モノマー、及び任意選択的な架橋剤との粒子NP2の親和性及び/又は化学的相溶性を保証することができる。例えば、中空シリカ粒子は、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Glymo(登録商標))を用いて官能化することができる。コロイド形態で溶媒中に分散したシリカナノ粒子は、例えばフェニルトリエトキシシラン(PhTES)を用いて官能化することもできる。
【0104】
一実施形態において、硬化樹脂1は、架橋剤C1の存在下且つナノ粒子、好適にはシリカナノ粒子、より好適には1.04から1.5の範囲の屈折率を有するシリカナノ粒子、例えば1.04から1.4の範囲の屈折率を有する中空シリカナノ粒子、官能化シリカナノ粒子、官能化中空ナノ粒子、及びそれらの混合物の存在下での有機ポリマー、モノマー、又は両方の混合物の硬化から生成され、硬化樹脂2は、架橋剤C1の存在下及び好適にはナノ粒子、より好適には官能化シリカナノ粒子、及び任意選択的に架橋剤C1の存在下での有機ポリマー、モノマー、又は両方の混合物の硬化から生成される。
【0105】
自己層化コーティング組成物は有利なことには、エポキシ化合物、架橋剤、シリカナノ粒子、シロキサン化合物、より具体的にはシルセスキオキサン、及び溶媒又は溶媒の混合物を含むことができる。
【0106】
この実施形態によれば、エポキシ化合物は有利なことには、少なくとも1つの環状脂肪族基又はアリール基及び3以上のC/O比を有するエポキシ化合物の群から、例えば、CibaからのTactix(登録商標)556等のジシクロペンタジエン及びフェノールの縮合物のグリシジルエーテル、Shell ChemicalからのEpon(登録商標)155、160、861、862又はCVC Specialty ChemicalsからのEpalloy(登録商標)8230、8240、8250、8330、8350等のエポキシフェノールノボラック、Shell ChemicalからのEpon(登録商標)164、RSS-2350又はCibaからのAraldite(登録商標)ECN 1235、1871、9699等のエポキシクレゾールノボラック、Shell ChemicalからのSU(登録商標)樹脂等のエポキシビスフェノールAノボラック、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、Shell ChemicalからのEpon(登録商標)828等のビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂、及び4-グリシジルオキシ-N,N-ジグリシジルアニリン、より好適にはビスフェノールAジグリシジルエーテルの群から選択される。
【0107】
なおこの実施形態によれば、架橋剤は、ジエチレントリアミン等のポリアミン、ポリチオール、ポリオール、ポリカルボン酸、好適にはポリアミンの群から選択することができる。ナノ粒子は好適には、官能化シリカナノ粒子又は溶媒若しくは溶媒の混合物中に分散したシリカナノ粒子、例えば1.04から1.4の範囲の屈折率を有する中空シリカナノ粒子、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシリコーン結合剤を用いて官能化された中空シリカナノ粒子、又はγ-フェニルトリエトキシシラン等のシリコーン結合剤を用いて官能化されたシリカナノ粒子、又はそれらの混合物である。シロキサン化合物は、アリールシロキサン若しくはアルキルシロキサン等の有機シロキサン樹脂若しくはポリシロキサン又はそれらの混合物、好適にはシルセスキオキサン、より好適にはフェニルシルセスキオキサンから選択される。一般に自己層化組成物の準備に使用される溶媒は、高表面エネルギー樹脂(本発明では上層又は樹脂組成物2)に使用される高い揮発性及び極性を有する溶媒であり、好適には低表面エネルギー樹脂(本発明では下層又は樹脂組成物1)に対して低い揮発性及び極性を有する溶媒である。溶媒又は溶媒の混合物は有利なことには、酢酸ブチル及びキシレンの混合物である。この特定の場合において、光学物品は、
-例えば1.43~1.49(樹脂組成物中のナノ粒子の性質に依存する)の屈折率を示す硬化樹脂1で構成される第1の層LSSC1及び
-例えば1.51~1.53(樹脂組成物中のナノ粒子の性質に依存する)の屈折率を示す硬化樹脂2で構成される第2の層LSSC2
で組成される保護層を有する。この実施形態は、レンズベース基材及び少なくとも1つ又は複数の光学素子(マイクロレンズ等)が、Sabicによって販売されるポリカーボネート(PC)Lexan OQ3820(登録商標)等のポリカーボネートで作られ、屈折率1.586を有する場合、特に有利である。
【0108】
別の実施形態において、自己層化コーティングは第1の層LC1として、いかなるナノ粒子も有さない架橋樹脂を含むことができる。この実施形態によれば、自己層化コーティングの形成に有用な自己層化コーティング組成物は、ポリオール、ポリウレタンデンドリマー、架橋剤、及び溶媒又は溶媒の混合物を含むことができる。
【0109】
なおこの実施形態によれば、ポリオールは例えば、フッ素化ポリエーテル、フルオロエチレンアルキルビニルエーテル、及びそれらの組み合わせ、好適にはフルオロエチレンアルキルビニルエーテルからなる群から選択され、ポリウレタンデンドリマーは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、イソホロントリイソシアネート(IPTI)、及びそれらの組み合わせ、好適にはイソホロンジイソシアネート(IPDI)からなる群から選択することができ、架橋剤は、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、ヘキサメチレントリスイソシアナート(HTI)、メチレンビス-(4-シクロヘキシルイソシアナート)(HMDI)、HDIビウレット、HDIイソシアヌレート、及びそれらの組み合わせ、好適にはヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)又はHDIビウレットからなる群から選択されるイソシアネート官能性化合物であることができる。
【0110】
実施形態において、保護層は、2つの別個の層LSSC1及びLSSC2を有する自己層化コーティング構成される(例えば図2a及び図2bに示されるように、保護層20、LSSC120a及びLSSC220b参照)。
【0111】
他の実施形態において、保護層は、少なくとも2つの別個の層LSSC1及びLSSC2に加えて、第1の層LSSC1の樹脂組成物1の構成要素の混合物と、第2の層LSSC2の樹脂組成物2の構成要素の混合物とを含む中間分散境界層を有する自己層化コーティング構成され、中間分散境界位相は、上記第1の層と上記第2の層とを分け、いずれがその組成の大半を構成するかに従って樹脂1又は樹脂2のいずれかの属性を示す(例えば図2c及び図2dに示されるように、保護層20、LSSC120a、LSSC220b、及び中間分散境界位相20c参照)。
【0112】
保護層は光学素子を完全に封入する。
【0113】
保護層は、各光学素子の最大高さの少なくとも2倍且つ多くとも10倍、好適には少なくとも2.5倍且つ多くとも5倍の、第1の保護面と第2の保護面との間で第1の保護面に直交する方向において測定される最大厚を有する。
【0114】
本発明における保護層の最大厚は、第1の保護面と第2の保護面との間の第1の保護面に直交する方向において測定される。そのような厚さは、表面における任意の点における最高厚に対応する。保護層は光学素子間にも存在するため、光学素子の上の厚さに対応せず、総厚(光学素子の高さを含む)に対応する。
【0115】
典型的には、保護層の最大厚は、200マイクロメートル(μm)、150μm、100μm、90μm、80μm、70μm、60μm、50μm、40μm、30μm、20μm、10μm以下又はそれらの任意の2つの間であることができる一方、1つの光学素子又は複数の光学素子の最大高さの好適には少なくとも2倍、より好適には少なくとも5倍、例えば2.5倍~10倍又は2.5倍~8倍であることができる。
【0116】
さらに、保護層の最小厚は、光学素子、より具体的には光学素子の最大高さのポイントで測定される。このポイントにおいて、光学素子の最大高さのポイントにおいて、そのポイントから測定される保護層の最小厚は、そのポイントにおける光学素子の高さ又は10μmの高さのうちのいずれか高い方の値以下であり、好適には光学素子の高さの2/3以下又は更には半分以下、好適には2μm以下、例えば1μm~5μmであり得る。
【0117】
保護層LC1は、各光学素子の最大高さの少なくとも1倍且つ多くとも5倍、好適には少なくとも1.1倍且つ多くとも3倍の、第1の保護面と第2の保護面との間で第1の保護面に直交する方向において測定される最大高さを有する。
【0118】
本発明における層LC1の最大厚は、第1の保護面と第2の保護面との間で第1の保護面に直交する方向において測定される。そのような厚さは、表面における任意の点における最高厚に対応する。光学素子の上の厚さに対応しない。
【0119】
典型的には、層LC1の最大厚は、100μm以下であることができる一方、1つの光学素子又は複数の光学素子のいずれか低い方の最大高さの好適には少なくとも1.2倍、より好適には少なくとも1.4倍、例えば1.4倍~3倍である。
【0120】
保護層LSCC2は、各光学素子の最大高さの少なくとも1倍且つ多くとも5倍、好適には少なくとも1.1倍且つ多くとも3倍の、第1の保護面と第2の保護面との間で第1の保護面に直交する方向において測定される最大厚を有する。
【0121】
本発明における層LSCC2の最大厚は、第1の保護面と第2の保護面との間で第1の保護面に直交する方向において測定される。そのような厚さは、表面における任意の点における最高厚に対応する。保護層は光学素子間にも存在するため、光学素子の上の厚さに対応せず、総厚(光学素子の高さを含む)に対応する。
【0122】
典型的には、層LSCC2の最大厚は、100μm以下であることができる一方、1つの光学素子又は複数の光学素子の最大高さのいずれか低い方の好適には少なくとも1.2倍、より好適には少なくとも1.4倍、例えば1.4倍~3倍であることができる。
【0123】
特定の実施形態において、少なくとも2つの層LSSC1(20a)及びLSSC2(20b)で構成される保護層20は、各光学素子が保護層20によって完全に封入されるように、各光学素子(典型的にはマイクロレンズ)30が突出するベースレンズ基材10の表面を覆う。したがって、保護層20は、ベースレンズ基材10及びそこから突出する各光学素子と接する層LSSC1の内面に対応する第1の保護面22と、第1の保護面と対向する、層LSSC2の外面又は空気と接する表面に対応する第2の保護面21とを有する。
【0124】
実施形態において、図2a及び図2bに示すように、保護層30はベースレンズ基材の全面又は第2のレンズ面102を覆う。したがって、その場合、保護層20とベースレンズ基材10との間の境界面は、保護層20の後面即ち第1の保護面22及びベースレンズ基材の全面即ち第2のレンズ面102によって形成される。
【0125】
一実施形態において、ベースレンズ基材との境界における保護層の表面は凹状である。他方、保護層20の自由表面であり、層LSSC2の外面即ち空気に接する表面にも対応する保護層21の第2の保護面は、凹且つ平滑であり、特に、より詳細に以下に開示するように、保護層の製造方法のおかげで、ベースレンズ基材10の表面、即ち光学素子の内第2のレンズ面のベースカーブと同じベースカーブを示す。
【0126】
保護層20と光学素子30との屈折率差は、保護層と光学素子を担持した表面との境界において反射を誘導し得る。その場合、光学物品1は好適には、反射量を低下させるのに適した1/4波長層40をベースレンズ基材10と光学素子30との間に備える。例えば、屈折率RI=(n,n1/2を有する1/4波長層(λ/4層とも記される)が使用可能である。
【0127】
λ/4層の詳細な例は、本出願人の特許である米国特許第7008690号明細書に開示されている。
【0128】
最後に、特に図2bを参照すると、光学物品1は、その前面及び後面の各々に1つ又は複数のコーティングを有することができる。例えば、保護層の前面又は第2の表面は、以下の1つ又は複数を含む少なくとも1つの追加のコーティング50で覆うことができる:反射防止コーティング、フォトクロミックコーティング、防汚コーティング、防曇コーティング、着色コーティング、自己修復コーティング、撥水コーティング、帯電防止コーティング、抗UVコーティング、又はブルーライトカットコーティング。
【0129】
光学物品の製造方法
図3図6を参照して、上述した光学物品を形成する方法についてこれより開示する。
【0130】
本発明は、光学物品、特に本明細書において先に開示した光学物品を製造する方法にも関する。
【0131】
光学物品を製造する上記方法は、
1)対向する第1及び第2のレンズ面を有するベースレンズ基材を提供することであって、ベースレンズ基材は、
第2のレンズ面上に、0.1ミリメートル(mm)以下である、第2のレンズ面に直交する方向において測定される最大高さ及び2.0mm以下の直径を有する少なくとも1つ又は複数の光学素子を備える、提供することと、
2)湿式堆積により、少なくとも1つ又は複数の光学素子を含むベースレンズ基材の第2のレンズ面上に、対向する第1及び第2の保護面を有する保護層を形成するのに適した硬化性自己層化組成物を塗布することと、
3)保護層を形成する硬化性自己層化組成物を硬化させることと、
4)任意選択的にステップ2又はステップ2及びステップ3を繰り返すことと、
を含み、
ステップ3又は4から生成される保護層は、光学素子のないレンズの第2のレンズ面に平行する第2の保護面を呈し、
上記保護層は、少なくとも1つ又は各光学素子を封入する。
【0132】
本発明の保護層は自己層化コーティングで構成される。換言すれば、保護層は、自己層化組成物を硬化させることによって得られ、1つのみの堆積ステップで少なくとも2つの別個の層LSSC1及びLSSC2を得られるようにする。
【0133】
本方法に有用な保護層を形成するのに適した硬化性組成物
本方法に有用な保護層を形成するのに適した硬化性組成物は、光学物品に関して上述したもののいずれか1つである。より一般には、光学物品に関連して上述した全ての特性は、上記物品又は上記光学物品を製造する方法にも該当し、上記方法は本発明のもう1つの目的である。逆に、本方法に関連して以下説明する全ての特性は、光学物品にも該当する。
【0134】
湿式堆積技法を使用した硬化性コーティングの堆積
本発明の方法において、保護層の形成に適した硬化性組成物は、湿式堆積技法によって被覆する少なくとも1つ又は複数の光学素子上に塗布される。
【0135】
特に、硬化性組成物は、最終的に硬化したコーティング、即ち保護層が、光学素子又はマイクロ構造のないベースレンズ基材の表面に平行する平滑面を呈するように、スピンコーティングのステップ、噴霧コーティングのステップ、ロッドコーティングのステップ、又はインクジェットコーティングのステップによって塗布される。保護層の第2の保護層は、第1の保護面に存在する高さ変化を複製しない。
【0136】
スピンコーティングのステップを用いる場合、大量のコーティングがレンズの全面に堆積し、レンズは回転して、厚さを標的値に整える。
【0137】
スピンコーティング又は噴霧コーティングのステップを用いる場合、コーティングは、基材の構造化表面を複製する傾向(スピンコーティング、カーテンコーティング等)又は堆積技法それ自体(噴霧コーティング)(図3)に起因して非平滑面を示し得る。そのような実施形態において、平滑面(平滑な第2の保護面)を有する保護層を得ることを確実にするために、組成物の厚い層が堆積した後(即ち本発明の方法目的のステップ3とステップ4との間)、塗布された硬化性コーティングの低温での続く加熱ステップを実行することができる。主溶媒/モノマーの沸点よりも低い温度でのそのような低温加熱ステップにより、硬化性組成物の粘度を下げることができる。
【0138】
代替的には、平滑面を有する保護層を得ることを確実にするために、レベリング剤を硬化性組成物に添加して、湿式コーティング組成物の表面張力を一様にすることができる。
【0139】
硬化性コーティングは、マイヤーロッド(又はワイヤが巻かれたロッド)コーティング手法を使用して塗布することができる。大量のコーティングがレンズ上に堆積し、マイヤーロッド(可撓性コアを用いて構築される)がレンズの表面にわたって巻かれる。5μmを超える、より好適には10μmを超えるハードコート厚を得るために、固形物に応じてロッド番号は#6~#15である(図5)。
【0140】
マイヤーロッド(又はワイヤが巻かれたロッド)コーティング手法の利点は、光学素子間又はマイクロレンズ間のスペースを充填し、表面S1上にコーティング厚を塗布することである。表面S1は、S0からの距離h1における光学素子の最高点によって定義されるレンズS0の均一面(即ち第2のレンズ面)(光学素子がない)に平行する。距離h1は光学素子の高さを表す。距離h3は、マイヤーロッドに巻かれたワイヤ間の、液体硬化性コーティングによって充填される最高距離である。距離h3は、マイヤーロッドのジオメトリによって定義され、ワイヤが巻かれたロッドの場合、ロッドの周囲に巻かれたワイヤの直径によって定義される。厚さh2は、レベリング後のh3によって定義される。コーティングの最終的な厚さは、h2及び固形物(図4に示されるように)に依存する。この実施形態において、コーティングの塗布に使用されるロッドは、表面S1に平行又は略平行する軸を有する。非常に平坦なベース(例えば強度近視処方箋に使用される半製品レンズ)の場合、剛性、典型的には金属のロッドを使用することができる。しかしながら、好適には、ロッドは、S1によって定義される曲率に従うのに十分な可撓性を有する。
【0141】
硬化性組成物は、インクジェットコーティング技法を使用して塗布することもできる。そのような実施形態において、硬化性コーティングの堆積は、高さマイクロ構造の相補的パターンであるパターンで実行される。典型的には、湿式堆積のステップは、図6に示すように以下を含む:
-限られた又は測定された量の硬化性コーティング組成物を光学素子の下部のみに堆積させて(マイクロ構造を部分的にのみ覆う)、第1の層を生成する第1のステップ又は第1のパス、
-別の限られた量の硬化性コーティング組成物を第1の層上に堆積させて、光学素子をより完全に覆う第2のステップ又は第2のパス、そして
-妥当な厚さに達するまで、典型的には第2のベースレンズ基材に直交する方向において測定される硬化性組成物の最大厚又は最大高さが、光学素子の最大高さの2倍を超え、好適には5倍を超えるまでの任意選択的な追加のパス又は幾つかの追加のパス。
【0142】
なおこの実施形態において、湿式堆積のステップは、少なくとも1つの光学素子の局所的な有無に応じて保護層を形成するのに適した硬化性組成物の量を変更することを含む。そのような制御は、欧州特許第19306294.0号明細書に開示されている等のコンピュータによって実施される方法を介して可能である。
【0143】
光学素子
光学物品に関連して、特にマイクロ構造を有するレンズ基材の製造に関して以下説明する全ての特性は方法にも該当する。
【0144】
第1の実施形態によれば、ベースレンズ基材及び少なくとも1つ又は複数の光学素子は、単一のステップで、好適には射出成形又は鋳造によって形成される。第2の実施形態において、複数の光学素子は、第2のレンズ面の表面加工ステップ又は好適には成形又はインクジェットによって第2のレンズ面への堆積材料ステップによって行うことができる。第1の実施形態が好適である。
【0145】
実施形態において、光学物品を製造する方法は、少なくとも1つの追加のコーティングを摩耗耐性コーティング及び恐らくは、光学素子(マイクロレンズ)のないベースレンズ基材10の主面に堆積させる等の追加のステップを更に含み得、上記追加のコーティングは反射防止コーティング、フォトクロミックコーティング、防汚コーティング、防曇コーティング、着色コーティング、自己修復コーティング、撥水コーティング、帯電防止コーティング、抗UVコーティング、又はブルーライトカットコーティングを含む。マイクロレンズのないベースレンズ基材の主面を摩耗防止コーティングで被覆することもできる。
【0146】
ベースレンズ基材10が半製品レンズであるか、又は半製品レンズを含む場合、方法は、半製品レンズを表面加工して、所望の標的屈折力を取得した且つ/又は得られたレンズをトリミングすることを含む仕上げステップを更に含み得る。
【実施例
【0147】
以下の全ての例で使用されるマイクロレンズを有するレンズは、Sabicによって販売されているポリカーボネート(PC)Lexan OQ3820(登録商標)で作られ、屈折率1.586を有する。
【0148】
実施例1
硬化性自己層化樹脂(保護層)の準備:
成分:
モノマー樹脂1:Sigma Aldrichによって販売されているビスフェノールAジグリシジルエーテル(エポキシ当量172~176)(屈折率1.57を有する)
架橋剤C1:Sigma Aldrichによって販売されているジエチレントリアミン
樹脂1の屈折率を低下させるように選ばれたナノ粒子1(NP1):中空シリカ粒子-メチルイソブチルケトン分散溶(Thrulya(登録商標)4320、JGC C&C Co.,Ltd.、20重量%)
樹脂1との粒子NP1の親和性及び/又は化学的相溶性を保証するための薬剤A1:Gelestによって販売されているγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Glymo(登録商標))
樹脂2:Dow Corningによって販売されているフェニルシルセスキオキサン樹脂(屈折率1.56を有する)
ナノ粒子2:Nissan Chemicalsによって販売されている、屈折率1.45を有する溶媒中のシリカナノ粒子IPA-ST(イソプロパノール中に30重量%で分散した10~15nmシリカ粒子)
樹脂2との粒子NP1の親和性及び/又は化学的相溶性を保証するための薬剤A2:フェニルトリエトキシシラン(PhTES)
他の溶媒:
酢酸ブチル及びキシレン
プロセス:
-Eslami-Farsaniらによる“International Journal of Chemical and Molecular Engineering Vol:9,No:12,2015に記載の手順に従ってA1(Glymo)を用いてNP1を官能化した(これらの官能化されたNP1/A1の屈折率=1.30)。
-NP1/A1をBuAcに移し、次いで、BuAc:キシレン(1:1)でキシレンを添加した。
-樹脂1をBuAc:キシレン(1:1)中に溶解させた。
-樹脂1及びNP1/A1を混合して、30重量%溶液=溶液1を得た。
-Eslami-Farsaniらによる“International Journal of Chemical and Molecular Engineering Vol:9,No:12,2015に記載される手順に従ってA2(PhTES)を用いてNP2を官能化した(これらの官能化されたNP2/A2の屈折率=1.45)。
-NP2/A2をBuAcに移し、次いで、BuAc:キシレン(1:1)でキシレンを添加した。
-樹脂2をBuAc:キシレン(1:1)中に溶解させた。
-樹脂2とNP2/A2を混合して、30重量%溶液(樹脂2溶液)を得た。
-C1を樹脂1の化学量論比対エポキシで樹脂2溶液に添加する前に50%で溶解させた(溶液2)。
-溶液2を溶液1にゆっくりと添加した。
-約5分間混合してから、塗布した。
マイクロレンズを含むレンズ上への噴霧コーティングによる硬化性自己層化組成物堆積後(湿式コーティング厚:約200μm)、硬化性コーティング組成物を室温で24時間加熱し、次いで110℃で2時間加熱した。
最終コーティング厚:約50μm~70μm
タイプ1の自己層化:2つの別個で均質な層
層屈折率:(PC=1.596)
-層1LSSC1:1.43(約50%BPAエポキシド@1.57+約50%中空シリカ@1.30)
-層2LSSC2:1.51(約50%シリコーン樹脂@1.56+約50%シリカ@1.45)
【0149】
実施例2
タイプ1の自己層化:2つの別個で均質な層
実施例1と同じであるが、30%のみのNP
-層1LSSC1:1.49(約70%BPAエポキシド@1.57+約30%中空シリカ@1.30)
-層2LSSC2:1.53(約70%シリコーン樹脂@1.56+約30%シリカ@1.45)
【0150】
実施例3
硬化性自己層化樹脂(保護層)の準備:
成分:
ポリマー1:キシレン中のAGC Chemicals Americasによって販売されているLumiflon(登録商標)LF200、架橋性フッ素化ポリマー、フルオロエチレンビニルエーテル樹脂50重量%(屈折率=1.43)
架橋剤C1:NCO含有率16.5%の1-メトキシ-2-酢酸プロピル/キシレン1:1vol/vol混合物中のCovestroによって販売されているDesmodur(登録商標)N75 MPA/X、硬化剤脂肪族イソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネート75%wt/wt
樹脂2:イソプロパノール/トルエン/2-メトキシ-1-酢酸プロピルの50:37:13vol/vol混合物中のCovestroによって販売されているDesmolac(登録商標)4125、非機能性線状ポリウレタン25%wt/wt (屈折率=1.49)
プロセス:
3.15gのDesmodur(登録商標)N75 MPA/X(C1)を49.5gのDesmolac(登録商標)4125溶液(樹脂2)に添加し、Flacktekからの高速ミキサDAC150により2700rpmで45秒間の混合が保証される。
次いで20gのLumiflon LF200溶液(樹脂1)をDesmolac(登録商標)4125及びDesmodur(登録商標)N75で作られた溶液に添加し、Flacktekからの高速ミキサDAC150を用いて2700rpmで45秒間混合した。
マイクロレンズを含むレンズ上へのロッドコーティングによる硬化性自己層化組成物堆積後(湿式コーティング厚:150μm)、硬化性コーティング組成物を室温で24時間加熱し、次いで80℃で2時間加熱した。
最終コーティング厚:50μm
タイプ2の自己層化:空気/樹脂境界(層LSSC2)がDesmolac 4125で豊富。レンズ/樹脂境界(層LSSC1)がLF200で豊富(低屈折率のフッ素樹脂)。
本開示の実施態様の一部を以下の[項目1]-[項目15]に記載する。
[項目1]
光学物品であって、
-対向する第1及び第2のレンズ面を有するベースレンズ基材と、
-対向する第1及び第2の保護面を有する保護層であって、前記第1の保護面は前記第2のレンズ面上に配置される、保護層と、
-少なくとも1つ又は複数の光学素子であって、各々が
前記第1の保護面及び前記第2のレンズ面の一方の一部分を画定し、
0.1ミリメートル(mm)以下である、前記光学素子を担持する前記第2のレンズ面に直交する方向において測定される最大厚及び2.0mm以下である直径を有する、少なくとも1つ又は複数の光学素子と、
を含み、
前記保護層は、
少なくとも2つの別個の層を有する自己層化コーティングで構成され、前記少なくとも2つの別個の層は、
-前記保護層の最内部に対応し、2つの対向する表面を有し、一方の表面は第1の保護面に対応する、第1の層L SSC1 及び
-前記保護層の最外部に対応し、2つの対向する表面を有し、一方の表面は第2の保護面に対応する、第2の層L SSC2 であり、
前記自己層化コーティングは、少なくとも2つ、好適には2つの非相溶性樹脂組成物である樹脂組成物1及び樹脂組成物2を含む自己層化組成物の重合化から生成され、
前記第1の層L SSC1 は、前記少なくとも2つの樹脂組成物の一方である樹脂組成物1、硬化後は硬化樹脂1で構成され、前記硬化樹脂1は、
前記少なくとも1つ又は各光学素子の屈折率n よりも低い屈折率n SSC1 を示し、差n -n SSC1 は0.045よりも大きく、好適には0.10よりも大きく、又は更には0.15よりも大きく、
前記第2の層L SSC2 は、前記少なくとも2つの樹脂組成物のうちの他方である樹脂組成物2で構成され、硬化後、硬化した前記樹脂2は、
前記屈折率n SSC1 と同様又はそれよりも高い屈折率n SSC2 を示す、光学物品。
[項目2]
前記少なくとも1つ又は各光学素子は、マイクロレンズ、フレネル構造、各フレネル構造を定義するマイクロレンズ等の回折構造、永久的な技術的バンプ、及び位相シフト要素からなる群から選ばれ、好適にはマイクロレンズである、項目1に記載の光学物品。
[項目3]
前記保護層は、前記光学素子の各々の前記最大高さの少なくとも2倍~多くとも10倍、好適には少なくとも2.5倍~多くとも5倍の、前記第1の保護面と前記第2の保護面との間の前記第1の保護面に直交する方向において測定される最大厚を有する、項目1又は2に記載の光学物品。
[項目4]
前記層L SSC1 は、前記光学素子の各々の前記最大高さの少なくとも1倍~多くとも5倍、好適には少なくとも1.1倍~多くとも3倍の、前記第1の保護面と前記第2の保護面との間の前記第1の保護面に直交する方向において測定される最大厚を有する、項目1~3のいずれか1項に記載の光学物品。
[項目5]
前記層L SCC2 は、前記光学素子の各々の前記最大高さの少なくとも1倍~多くとも5倍、好適には少なくとも1.1倍~多くとも3倍の、前記第1の保護面と前記第2の保護面との間の前記第1の保護面に直交する方向において測定される最大厚を有する、項目1~4のいずれか1項に記載の光学物品。
[項目6]
前記少なくとも1つ又は各光学素子は、2マイクロメートル(μm)~20μmである、前記第2のレンズ面に直交する方向において測定される最大高さ及び0.8ミリメートル(mm)~2.0mmである直径を有する、項目1~5のいずれか1項に記載の光学物品。
[項目7]
前記少なくとも2つの樹脂組成物の各々は異なる表面張力を有し、前記少なくとも2つの樹脂組成物の前記表面張力の差は、4mN/mよりも大きく、好適には10mN/mよりも大きく、前記樹脂組成物1の前記表面張力は、前記レンズ基材の前記表面張力よりも大きい、項目1~6のいずれか1項に記載の光学物品。
[項目8]
前記硬化樹脂1は、架橋剤C1の存在下且つナノ粒子、好適にはシリカナノ粒子、より好適には1.04から1.5の範囲の屈折率を有するシリカナノ粒子、例えば1.04から1.4の範囲の屈折率を有する中空シリカナノ粒子、官能化シリカナノ粒子、官能化中空ナノ粒子、及びそれらの混合物の存在下での有機ポリマー、モノマー、又は両方の混合物の硬化から生成され、
前記硬化樹脂2は、ナノ粒子、より好適には官能化シリカナノ粒子、及び任意選択的に架橋剤C1の存在下での有機ポリマー、モノマー、又は両方の混合物の硬化から生成される、項目1~7のいずれか1項に記載の光学物品。
[項目9]
前記自己層化コーティング組成物は、
エポキシ化合物、架橋剤、シリカナノ粒子、シロキサン化合物、より具体的にはシルセスキオキサン、及び溶媒又は溶媒の混合物を含む、項目1~8のいずれか1項に記載の光学物品。
[項目10]
前記エポキシ化合物は、少なくとも1つの環状脂肪族基又はアリール基及び3以上のC/O比を有するエポキシ化合物の群から、例えば、ジシクロペンタジエン及びフェノールの縮合物のグリシジルエーテル、エポキシフェノールノボラック、エポキシクレゾールノボラック、エポキシビスフェノールAノボラック、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂、及び4-グリシジルオキシ-N,N-ジグリシジルアニリン、より好適にはビスフェノールAジグリシジルエーテルの群から選択され、
前記架橋剤は、ポリアミン、ポリチオール、ポリオール、ポリカルボン酸、好適にはジエチレントリアミン等のポリアミンの群から選択され、
前記ナノ粒子は、官能化シリカナノ粒子又は溶媒若しくは溶媒の混合物中に分散したシリカナノ粒子、例えば1.04から1.4の範囲の屈折率を有する中空シリカナノ粒子、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシリコーン結合剤を用いて官能化された中空シリカナノ粒子、又はγ-フェニルトリエトキシシラン等のシリコーン結合剤を用いて官能化されたシリカナノ粒子、又はそれらの混合物であり、
前記シロキサン化合物は、アリールシロキサン若しくはアルキルシロキサン等の有機シロキサン樹脂若しくはポリシロキサン又はそれらの混合物、好適にはシルセスキオキサン、より好適にはフェニルシルセスキオキサンから選択される、項目1~9のいずれか1項に記載の光学物品。
[項目11]
前記ベースレンズ基材及び前記光学素子は両方とも、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリ(エチレンテレフタレート)のコポリマーのポリカーボネート;ポリオレフィン、特にポリノルボルネン、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のホモポリマー及びコポリマー、(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー、特にビスフェノールA由来の(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー、チオ(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー、ポリウレタン及びポリチオウレタンホモポリマー又はコポリマー、エポキシポリマー及びコポリマーのポリカーボネート;好適にはポリカーボネート、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)ポリマー、又は1.60の屈折率を有する熱硬化性ポリチオウレタン樹脂若しくは1.67の屈折率を有する熱硬化性ポリチオウレタン樹脂で作られたエピスルフィドポリマー及びコポリマーから選択される熱可塑性又は熱硬化性プラスチックで作られる、項目1~10のいずれか1項に記載の光学物品。
[項目12]
前記ベースレンズ基材は半製品レンズである、項目1~11のいずれか1項に記載の光学物品。
[項目13]
前記保護層の前記第2の表面は、以下:反射防止コーティング、フォトクロミックコーティング、防汚コーティング、防曇コーティング、着色コーティング、自己修復コーティング、撥水コーティング、帯電防止コーティング、抗UVコーティング、又はブルーライトカットコーティングの1つ又は複数を含む少なくとも1つの追加のコーティングで覆われる、項目1~12のいずれか1項に記載の光学物品。
[項目14]
項目1~13のいずれか1項に記載の光学物品の製造方法であって、
1)対向する第1及び第2のレンズ面を有するベースレンズ基材を提供することであって、前記ベースレンズ基材は、
前記第2のレンズ面上に、0.1ミリメートル(mm)以下である、前記第2のレンズ面に直交する方向において測定される最大高さ及び2.0mm以下の直径を有する少なくとも1つ又は複数の光学素子を備える、提供することと、
2)湿式堆積、好適にはスピンコーティングのステップ、噴霧コーティングのステップ、ロッドコーティングのステップ、又はインクジェットコーティングのステップにより、前記少なくとも1つ又は複数の光学素子を含む前記ベースレンズ基材の前記第2のレンズ面上に、対向する第1及び第2の保護面を有する保護層を形成するのに適した硬化性自己層化組成物を塗布することと、
3)前記保護層を形成する前記硬化性自己層化組成物を硬化させることと、
4)任意選択的にステップ2又はステップ2及びステップ3を繰り返すことと、
を含み、
ステップ3又は4から生成される前記保護層は、光学素子のないレンズの前記第2のレンズ面に平行する第2の保護面を呈し、
前記保護層は、前記少なくとも1つ又は各光学素子を封入する、方法。
[項目15]
前記ベースレンズ基材及び前記少なくとも1つ又は複数の光学素子は、好適には射出成形又は鋳造によって単一ステップで形成される、項目14に記載の方法。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
図6