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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】質量非対称タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20241216BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20241216BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20241216BHJP
   B60C 3/06 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B60C13/00 H
B60C9/08 N
B60C5/00 H
B60C3/06
B60C13/00 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022580444
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2020025613
(87)【国際公開番号】W WO2022003804
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】福田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】バボー ジャック
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-005808(JP,U)
【文献】特開2008-143305(JP,A)
【文献】特表2014-520729(JP,A)
【文献】米国特許第05591282(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着リム(W)に装着されることが意図されタイヤ(1)であって、前記タイヤ(1)が、装着リム(W)と協働するように提供されたビード(4)内で終端する側面部分(3)によって両側で取り囲まれた頂点(2)を備え、タイヤ(1)が、該頂点(2)及び該側面部分(3)内を延びてその両端で該ビード(4)内に固着された少なくとも1つのカーカス補強体(5)を備え、該少なくとも1つのカーカス補強体(5)には、複数の補強プライ(61)で構成される頂点補強体(6)が外側で半径方向に載っており、該頂点補強体(6)には、転動中に地面と接触するように意図されたトレッド(7)が外側で半径方向に載っており、
タイヤ(1)がその標準的な装着リムの上に装着されてその公称圧で膨脹している時に、各前記側面部分(3)が、3つの点、すなわち、
タイヤ(1)の外形上の点から延びるカーカス補強体(5)に垂直な仮想線が最も幅広の補強プライ(61)の軸線方向先端から延びる仮想水平線と交差する該半径方向最外カーカス補強体(5)上の点として定められる上側側面点(33)と、
タイヤ(1)の外形上の点から延びるカーカス補強体(5)に垂直な仮想線がリムフランジ(RF)の半径方向最外部に接触する仮想水平線と交差する該半径方向最外カーカス補強体(5)上の点として定められる底部側面点(35)と、
カーカス補強体(5)に沿った前記底部側面点(35)からの長さが該カーカス補強体(5)に沿った前記上側側面点(33)と該底部側面点(35)間の長さの60%である該半径方向最外カーカス補強体(5)上の点として定められる中間側面点と、
を有し、
前記側面部分(3)が、
前記上側側面点(33)を通過する仮想線によってかつ前記中間側面点(34)を通過する仮想線によって区切られた前記半径方向最外カーカス補強体(5)の外側の前記側面部分(3)の一部分として定められる上側側面部分(31)と、
前記底部側面点(35)を通過する仮想線によってかつ前記中間側面点(34)を通過する前記仮想線によって区切られた前記半径方向最外カーカス補強体(5)の外側の前記側面部分(3)の一部分として定められる底部側面部分(32)と、
を備え、
1つの側面部分(3)に対する前記底部側面部分(32)の重量が、別の側面部分(3)に対する該底部側面部分(32)の重量よりも少なくとも15%軽く、
前記タイヤ(1)が、意図する装着側(内側-外側)を有し、
前記より軽い底部側面部分(32)は、前記意図する装着側の内側に位置付けられ、
前記より軽い底部側面部分(32)のない前記上側側面部分(31)の重量が、該より軽い底部側面部分(32)が設けられた該上側側面部分(31)の重量よりも軽く、
2つの側面部分(3)間のタイヤ(1)の外形が対称である、
ことを特徴とするタイヤ(1)。
【請求項2】
1つの側面部分(3)に対する前記底部側面部分(32)の前記重量は、別の側面部分(32)に対する該底部側面部分(32)の該重量よりも最大で50%軽いことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ、特に、1つの側から別の側まで非対称な質量を有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の高級化及び品質改善は、特に車両の電化に向けて乗員の快適性及び環境的配慮の観点から様々な騒音低減に対する要望に至っている。
【0003】
タイヤからの騒音は様々な成分を含むことは公知であり、それは、外部騒音からの成分と内部騒音からの成分である。内部騒音は、転動中のトレッド部分の励振に起因する振動を含み、この振動は、車両のホイールリム、軸線、サスペンション、及び車体に伝達され、次に、車両の内部で騒音として聞かれる。
【0004】
そのような騒音を改善するために、タイヤの振動特性の変更が有効であることが公知である。様々なソリューションが、そのような騒音を改善するために提案されている。
【0005】
特開平05-193310号公報は、Hoが、外側側壁の平均厚みGoと損失正接tanデルタoとから計算される外側側壁の減衰係数(Go×tanデルタo)であり、Hiが、内側側壁の平均厚みGiと損失正接tanデルタiとから計算される内側側壁の減衰係数(Gi×tanデルタi)である時に、減衰係数の比(Ho/Hi)を有する空気タイヤを開示しており、それは、ハンドリング性能を低減することなく快適性能を改善するために1.2-6.5の範囲に設定される。
【0006】
特開平05-193311号公報は、タイヤの最大幅部分に対応する位置からトレッドに向けて延びる側壁の各々の領域の平均厚みGUと同じ位置からビードに向けて延びる側壁の領域のGLとを有してそれらが互いに異なるように設定された空気タイヤを開示しており、側壁の切断抵抗を低減することなくタイヤ質量を低減するために、トレッド側領域の平均厚みGUは、2.5mmよりも小さくないように設定され、ビード側領域の平均厚みGLは、2.5mm未満かつ1mmよりも小さくないように設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平05-193310号公報
【文献】特開平05-193311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これらの文献に開示するソリューションでは、騒音性能の改善は満足に足るものではない。同じく同時に、ハンドリング性能の低下も許容レベルではない。すなわち、ハンドリング性能に対して妥当なレベルを維持しながら騒音性能を更に改善する要望が存在する。
【0009】
従って、ハンドリング性能に対して妥当なレベルを維持しながら騒音性能の改善を提供するタイヤに対する必要性が存在する。
【0010】
定義
【0011】
「半径方向/向き」は、タイヤの回転軸に垂直な方向/向きである。この方向/向きは、トレッドの厚み向きに対応する。
【0012】
「軸線方向/向き」は、タイヤの回転軸と平行な方向/向きである。
【0013】
「円周方向/向き」は、回転軸を中心とするいずれの円にもタンジェンシャルである方向/向きである。この方向/向きは、軸線方向/向き及び半径方向/向きの両方に垂直である。
【0014】
「タイヤ」は、内圧を受けるか否かに関わらず、全てのタイプの弾性タイヤを意味する。
【0015】
「プライ」又は「補強プライ」は、スチール、ポリエステル、又はナイロンのような金属ワイヤ又は繊維ワイヤの平行に配置された複数のシングル及び/又はストランドワイヤで構成されてゴム組成物で覆われた材料の層を意味する。そのような金属又は繊維ワイヤの延在方向は、タイヤ回転方向とは異なる場合がある。
【0016】
すなわち、ハンドリング性能に対して妥当なレベルを維持しながら騒音性能に対する改善を提供するタイヤを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、装着リム上に装着されるように意図されたタイヤを提供し、タイヤは、装着リムと協働するように提供されたビード内で終端する側面部分によって両側を取り囲まれた頂点を備え、タイヤは、頂点及び側面部分内を延びてビード内のその2つの端部で固着された少なくとも1つのカーカス補強体を備え、少なくとも1つのカーカス補強体には、複数の補強プライで構成された頂点補強体が外側で半径方向に載っており、頂点補強体には、転動中に地面と接触するように意図されたトレッドが外側で半径方向に載っており、タイヤがその標準的な装着リムの上に装着され、その公称圧で膨張している時に、各側面部分は、3つの点、すなわち、タイヤの外形上の点から延びるカーカス補強体に垂直な仮想線が最も幅広の補強プライの軸線方向先端から延びる仮想水平線と交差する半径方向最外カーカス補強体上の点として定められる上側側面点、タイヤの外形上の点から延びるカーカス補強体に垂直な仮想線がリムフランジの半径方向最外部に接触する仮想水平線と交差する半径方向最外カーカス補強体上の点として定められ底部側面点、及びカーカス補強体に沿った底部側面点からの長さがカーカス補強体に沿った上側側面点と底部側面点間の長さの60%である半径方向最外カーカス補強体上の点として定められる中間側面点を有し、各側面部分は、上側側面点を通過する仮想線と中間側面点を通過する仮想線とによって区切られた半径方向最外カーカス補強体の外側の側面部分の一部分として定められる上側側面部分と、底部側面点を通過する仮想線と中間側面点を通過する仮想線とによって区切られた半径方向最外カーカス補強体の外側の側面部分の一部分として定められる底部側面部分とを備え、1つの側面部分に対する底部側面部分の重量は、別の側面部分に対する底部側面部分の重量よりも少なくとも15%軽い。
【0018】
この配置は、ハンドリング性能に対して妥当なレベルを維持しながら騒音性能に対する改善を提供する。
【0019】
1つの側面部分に対する底部側面部分の重量が、別の側面部分に対する底部側面部分の重量よりも少なくとも15%軽いので、地面からの振動を伝達するタイヤの動的剛性の一成分であるタイヤ1の動的捩り剛性を実質的に低減することができる。従って、騒音性能を改善することが可能である。
【0020】
2つの底部側面部分間の重量差が15%未満である場合に、動的捩り剛性の不十分な低減に起因して騒音性能の改善が不十分であるリスクがある。2つの底部側面部分間の重量のこの差を少なくとも15%に設定することにより、騒音性能を改善することが可能である。
【0021】
1つの側面部分に対する底部側面部分の重量は、別の側面部分に対する底部側面部分の重量よりも少なくとも20%軽いことが好ましい。
【0022】
底部側面部分は、タイヤの外形上の点から延びるカーカス補強体に垂直な仮想線がリムフランジの半径方向最外部に接触する仮想水平線と交差する半径方向最外カーカス補強体上の点として定められる底部側面点と、カーカス補強体に沿った底部側面点からの長さがカーカス補強体に沿った上側側面点と底部側面点間の長さの60%である半径方向最外カーカス補強体上の点として定められる中間側面点との間で半径方向最外カーカス補強体の外側の側面部分の一部分として定められるので、側面部分は、ハンドリング性能に対して妥当なレベルを発揮するのに十分な材料容積を維持することができると考えられる。従って、ハンドリング性能に対して妥当なレベルを維持しながら騒音性能を改善することが可能である。
【0023】
中間側面点が、カーカス補強体に沿った上側側面点と底部側面点間の長さの60%を超えるカーカス補強体に沿った底部側面点からの長さに位置付けられる場合に、側面部分は、全体としてハンドリング性能に対する妥当なレベルを発揮するのに十分な材料容積を維持することができないと考えられるリスクがある。カーカス補強体に沿った底部側面点からの長さでのこの中間側面点をカーカス補強体に沿った上側側面点と底部側面点間の長さの60%であるように設定することにより、ハンドリング性能に対して妥当なレベルを維持しながら騒音性能を改善することが可能である。
【0024】
別の好ましい実施形態では、1つの側面部分に対する底部側面部分の重量は、別の側面部分に対する底部側面部分の重量よりも最大で50%軽い。
【0025】
1つの側面部分に対する底部側面部分の重量が別の側面部分に対する底部側面部分の重量よりも50%を超えて軽い場合に、底部側面部分の不十分なゴム容積に起因してハンドリング性能低下又は耐久性能の低下のリスクがある。1つの側面部分に対する底部側面部分のこの重量を別の側面部分に対する底部側面部分の重量よりも最大で50%軽く設定することにより、耐久性能とハンドリング性能に対する妥当なレベルとを同時に維持しながら騒音性能を改善することが可能である。
【0026】
1つの側面部分に対する底部側面部分の重量は、好ましくは、別の側面部分に対する底部側面部分の重量よりも最大で45%軽く、より好ましくは、別の側面部分に対する底部側面部分の重量よりも最大で40%軽い。
【0027】
別の好ましい実施形態では、タイヤは、意図する装着側(内側-外側)を有し、より軽い底部側面部分は、意図する装着側の内側に位置付けられる。
【0028】
この配置により、底部側面部分の剛性が内側よりも外側で重要であるので、効率的にハンドリング性能に対する妥当なレベルを維持しながら騒音性能を改善することが可能である。
【0029】
別の好ましい実施形態では、より軽い底部側面部分のない上側側面部分の重量は、より軽い底部側面部分が設けられた上側側面部分の重量よりも軽い。
【0030】
この配置により、より軽い底部側面部分のないより軽い上側側面部分が動的捩り剛性低下に寄与するので、騒音性能を更に改善することが可能である。
【0031】
別の好ましい実施形態では、2つの側面部分間のタイヤの外形は非対称である。
【0032】
この配置により、より低い原材料消費によりそのようなタイヤを製造することが可能であり、すなわち、タイヤの対費用効果を改善することが可能である。
【0033】
別の好ましい実施形態では、2つの側面部分間のタイヤの外形は対称である。
【0034】
この配置により、側面部分に対する標準的なプロファイルを有する既存のモールドを使用してそのようなタイヤを製造することが可能であり、すなわち、タイヤの対費用効果を改善することが可能である。
【0035】
発明の有利な効果
上述の配置により、ハンドリング性能に対する妥当なレベルを維持しながら騒音性能に対する改善を提供することが可能である。
【0036】
本発明の他の特徴及び利点は、非制限的な例として本発明の実施形態を示す添付図面を参照して以下に行う説明から生じる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第1の実施形態によるタイヤの概略断面図である。
図2図1にIIとして示す部分を示す拡大概略図である。
図3】本発明の第2の実施形態によるタイヤの概略断面図である。
図4図3にIVとして示す部分を示す拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0039】
本発明の第1の実施形態によるタイヤ1について、図1及び2を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態によるタイヤの概略断面図である。図2は、図1ではIIで示した部分を表す拡大概略図である。
【0040】
タイヤ1は、装着リムW上に装着されるように意図された寸法235/45R18を有し、装着リムWと協働するように提供されたビード4内で終端する側面部分3で両側を取り囲まれた頂点2を有するタイヤである。タイヤ1は、頂点2及び側面部分3内を延びて、その両端がビード4に固着された少なくとも1つのカーカス補強体5を含む。装着リムWは、軸線方向両側がリムフランジRFで終端する。この第1の実施形態では、タイヤ1は、1つのカーカス補強体5を有する。
【0041】
図1に示すように、少なくとも1つのカーカス補強体5には、複数の補強プライ61から構成される頂点補強体6が外側で半径方向に載っており、頂点補強体6には、転動中に地面と接触するように意図されたトレッド7が外側で半径方向に載っている。この第1の実施形態では、頂点補強体6は2つの補強プライ61から構成される。
【0042】
図1及び2に示すように、タイヤ1がその標準的な装着リム上に装着され、その公称圧力で膨脹している時に、各側面部分3は3つの点、すなわち、タイヤ1の外形上の点から延びるカーカス補強体5に垂直な仮想線VU1が最も幅広の補強プライ61の軸線方向先端から延びる仮想水平線VU2と交差する半径方向最外カーカス補強体5上の点として定められる上側側面点33、タイヤ1の外形上の点から延びるカーカス補強体5に垂直な仮想線VB1がリムフランジRFの半径方向最外部に接触する仮想水平線VB2と交差する半径方向最外カーカス補強体5上の点として定められる底部側面点35、及びカーカス補強体5に沿った底部側面点35からの長さがカーカス補強体5に沿った上側側面点33と底部側面点35間の長さの60%である半径方向最外カーカス補強体5上の点として定められる中間側面点34を有する。ETRTO規格マニュアル2020により、標準的な装着リムサイズは8.0インチであり、公称圧力は、エクストラロードの場合は290kPa、非エクストラロードの場合は250kPaである。
【0043】
図1及び2に示すように、各側面部分3は、上側側面点33を通過する仮想線と中間側面点34を通過する仮想線とによって区切られた半径方向最外カーカス補強体5の外側の側面部分3の一部分として定められる上側側面部分31と、底部側面点35を通過する仮想線と中間側面点34を通過する仮想線とによって区切られた半径方向最外カーカス補強体5の外側の側面部分3の一部分として定められる底部側面部分32とを含む。1つの側面部分3に対する底部側面部分32の重量は、別の側面部分3に対する底部側面部分32の重量よりも少なくとも15%軽い。
【0044】
図1及び2に示すように、1つの側面部分3に対する底部側面部分32の重量を別の側面部分3に対する底部側面部分32の重量よりも少なくとも15%軽くするために、2つの側面部分3間のタイヤ1の外形は非対称である。より軽い底部側面部分32を有する側面部分3の外形は、より軽い底部側面部分32のない側面部分3の外形から凹んでいる。1つの側面部分3に対する底部側面部分32の重量は、別の側面部分3に対する底部側面部分32の重量よりも最大で50%軽い。同じくより軽い底部側面部分32のない上側側面部分31の重量は、より軽い底部側面部分32を有する上側側面部分31の重量よりも軽い。
【0045】
底部側面部分32の重量及び/又は上側側面部分31の重量を比較する時に、上側側面部分31は、上側側面点33を通過する仮想線と、中間点34を通過する仮想線と、最外カーカス補強体5とによって区切られなければならず、底部側面部分32は、底部側面点35を通過する仮想線と、中間点34を通過する仮想線と、最外カーカス補強体5とによって区切られなければならない。上側側面点33、中間側面点34、及び底部側面点35を通過する仮想線は、例えば、上側側面点33を通過する仮想線としての仮想線VU1、中間側面点34を通過する仮想線としてのカーカス補強体5に垂直な仮想線VM、及び底部側面点35を通過する仮想線としての仮想線VB1のように側面部分3毎にそれぞれ同等であるべきである。
【0046】
底部側面部分32の重量及び/又は上側側面部分31の重量の比較は、底部側面部分32及び/又は上側側面部分31の全重量を比較することで行うべきである。底部側面部分32の重量及び/又は上側側面部分31の重量が円周方向に均一と見なせる場合に、それらの重量比較は、軸線方向断面に沿って抽出した部分の重量を比較することで行うことができる。
【0047】
図1及び2に示すように、タイヤ1は、意図する装着側(内側-外側)を有し、本事例では、外側が図面上左側で、内側が右側であり、より軽い底部側面部分32は、意図する装着側の内側に位置付けられる。意図する装着側は、例えば、「OUTSIDE」、「INSIDE」のような文字、又は類似の表示(図示せず)を通じて側面部分(側壁)の面に表示される場合が多い。
【0048】
1つの側面部分3に対する底部側面部分32の重量が、別の側面部分3に対する底部側面部分32の重量よりも少なくとも15%軽いので、地面からの振動を伝達するタイヤの動的剛性の一成分であるタイヤ1の動的捩り剛性を実質的に低減することができる。従って、騒音性能を改善することが可能である。
【0049】
2つの底部側面部分32間の重量差が15%未満である場合に、動的捩り剛性の低減が不十分であることに起因して騒音性能の改善が不十分であるリスクがある。2つの底部側面部分32間のこの重量差を少なくとも15%に設定することにより、騒音性能を改善することが可能である。
【0050】
1つの側面部分3に対する底部側面部分32の重量は、別の側面部分3に対する底部側面部分32の重量よりも少なくとも20%軽いことが好ましい。
【0051】
底部側面部分32は、タイヤ1の外形上の点から延びるカーカス補強体5に垂直な仮想線がリムフランジRFの半径方向最外部に接触する仮想水平線と交差する半径方向最外カーカス補強体5上の点として定められる底部側面点35と、カーカス補強体5に沿った底部側面点35からの長さがカーカス補強体5に沿った上側側面点33と底部側面点35間の長さの60%である半径方向最外カーカス補強体5上の点として定められる中間側面点34との間で半径方向最外カーカス補強体5の外側の側面部分3の一部分として定められるので、側面部分3は、ハンドリング性能に対する妥当なレベルを発揮するのに十分な材料容積を維持することができる。従って、ハンドリング性能に対する妥当なレベルを維持しながら騒音性能を改善することが可能である。
【0052】
中間側面点34が、カーカス補強体5に沿った上側側面点33と底部側面点35間の長さの60%を超えるカーカス補強体5に沿った底部側面点35からの長さに位置付けられる場合に、側面部分3は、全体としてハンドリング性能に対する妥当なレベルを発揮するのに十分な材料容積を維持することができなくなるリスクがある。この中間側面点34をカーカス補強体5に沿った上側側面点33と底部側面点35間の長さの60%であるカーカス補強体5に沿った底部側面点35からの長さに設定することにより、ハンドリング性能に対する妥当なレベルを維持しながら騒音性能を改善することが可能である。
【0053】
1つの側面部分に対する底部側面部分32の重量は、別の側面部分に対する底部側面部分32の重量よりも最大で50%軽いので、耐久性能とハンドリング性能に対する妥当なレベルとを同時に維持しながら騒音性能を改善することが可能である。
【0054】
1つの側面部分に対する底部側面部分32の重量が別の側面部分3に対する底部側面部分32の重量よりも50%を超えて軽い場合に、底部側面部分32の不十分なゴム容積に起因して、ハンドリング性能の低下又は耐久性能の低下のリスクがある。
【0055】
1つの側面部分3に対する底部側面部分32の重量は、別の側面部分3に対する底部側面部分32の重量よりも好ましくは最大で45%軽く、より好ましくは最大で40%軽い。
【0056】
より軽い底部側面部分32のない上側側面部分31の重量は、より軽い底部側面部分32を有する上側側面部分31の重量よりも軽いので、より軽い底部側面部分32のない上側側面部分31が動的捩り剛性の低下に寄与するので騒音性能を更に改善することが可能である。
【0057】
タイヤ1が意図する装着側(内側-外側)を有し、より軽い底部側面部分32が意図する装着側の内側に位置付けられるので、底部側面部分32の剛性が内側よりも外側で重要であるのでハンドリング性能に対する妥当なレベルを効率的に維持しながら騒音性能を改善することが可能である。
【0058】
2つの側面部分3間のタイヤ1の外形が非対称であるので、より低い原材料消費でそのようなタイヤを製造することができ、従って、タイヤ1の対費用効果を改善することが可能である。
【0059】
タイヤ1を装着リムWの上に装着する場合に、有効な騒音性能改善のためには、ゼロセット(装着リムWの取り付けディスク部が装着リムWの軸線方向中心と同一平面上にある)又はアウトセット(装着リムWの取り付けディスク部が装着リムWの軸線方向中心より軸線方向内方にオフセットしている)を有する装着リムWではなく、装着リムWの取り付けディスク部が装着リムWの軸線方向中心から軸線方向外方にオフセットするインセットを有するものを使用することが好ましい。
【0060】
複数のカーカス補強体5を設ける場合に、上側側面点33、中間側面点34、及び底部側面点35は、ビード4の周りを回った後のカーカス補強体5の部分を除外して半径方向最外カーカス補強体5に対して考察されるべきである。
【0061】
底部側面部分32の1つの側の重量を軽くする代わりに、底部側面部分32の1つの側に重量を加えても類似の効果を達成することができる場合があるが、エネルギ及び原材料の消費を考慮すると底部側面部分32の1つの側の重量を軽くする方が好ましい。
【0062】
妥当な耐久性能を維持するために、カーカス補強体5よりも外側の軽量化された底部側面部分32に対して、少なくとも1.0mmに等しい最小厚みを保つことが好ましい場合がある。
【0063】
本発明の第2の実施形態によるタイヤ21に関して図3及び4を参照して説明する。図3は、本発明の第2の実施形態によるタイヤの概略断面図である。図4は、図3にIVで示した部分を表す拡大概略図である。この第2の実施形態の構成は、図3及び4に示す配置以外は第1の実施形態と同様であるので、以下では図3及び4を参照して説明する。
【0064】
図3及び4に示すように、タイヤ21は、装着リムW上に装着されるように意図され、装着リムWと協働するように提供されたビード24内で終端する側面部分23で両側を取り囲まれた頂点22を含む。タイヤ21は、頂点22及び側面部分23内を延びてその両端がビード24に固着された少なくとも1つのカーカス補強体25を含む。装着リムWは、軸線方向両側がリムフランジRFで終端する。この第2の実施形態では、タイヤ21は、1つのカーカス補強体25を有する。
【0065】
図3に示すように、少なくとも1つのカーカス補強体25には、複数の補強プライ261から構成される頂点補強体26が外側で半径方向に載っており、頂点補強体26には、転動中に地面と接触するように意図されたトレッド27が外側で半径方向に載っている。この第2の実施形態では、頂点補強体26は、2つの補強プライ261から構成される。
【0066】
図3及び4に示すように、タイヤ21がその標準的な装着リムの上に装着され、その公称圧力で膨脹している時に、各側面部分23は、3つの点、すなわち、タイヤ21の外形上の点から延びるカーカス補強体25に垂直な仮想線VU1が最も幅広の補強プライ261の軸線方向先端から延びる仮想水平線VU2と交差する半径方向最外カーカス補強体25上の点として定められる上側側面点233、タイヤ21の外形上の点から延びるカーカス補強体25に垂直な仮想線VB1がリムフランジRFの半径方向最外部に接触する仮想水平線VB2と交差する半径方向最外カーカス補強体25上の点として定められる底部側面点235、及びカーカス補強体25に沿った底部側面点235からの長さがカーカス補強体25に沿った上側側面点233と底部側面点235間の長さの60%である半径方向最外カーカス補強体25上の点として定められる中間側面点234を有する。ETRTO規格マニュアル2020により、標準的な装着リムサイズは8.0インチであり、公称圧力は、エクストラロードの場合は290kPa、非エクストラロードの場合は250kPaである。
【0067】
図3及び4に示すように、各側面部分23は、上側側面点233を通過する仮想線と中間側面点234を通過する仮想線とによって区切られた半径方向最外カーカス補強体25の外側の側面部分23の一部分として定められる上側側面部分231と、底部側面点235を通過する仮想線と中間側面点234を通過する仮想線とによって区切られた半径方向最外カーカス補強体25の外側の側面部分23の一部分として定められる底部側面部分232とを含む。軽量の底部側面部分2321に起因して、1つの側面部分23に対する底部側面部分232の重量は、別の側面部分23に対する底部側面部分232の重量よりも少なくとも15%軽く、2つの側面部分23の間のタイヤ21の外形は対称である。
【0068】
2つの側面部分23間のタイヤ21の外形が対称であるので、側面部分23に標準的なプロファイルを有する既存のモールドを使用してそのようなタイヤ21を製造することが可能であり、すなわち、タイヤ21の対費用効果を改善することが可能である。
【0069】
軽量の底部側面部分2321は、発泡ゴム、プラスチック、又は樹脂のような比重の小さい材料、低い密度を有する材料、又はこれらの混合物で製造することができる。
【0070】
軽量の底部側面部分2321を使用する代わりに、底部側面部分232の1つの側に重量を加えても類似の効果を達成することができる場合があるが、エネルギ及び原材料の消費を考慮すると、軽量の底部側面部分2321によって底部側面部分232の1つの側の重量を軽くする方が好ましい。
【0071】
本発明は、説明して表現した実施例に限定されず、そのフレームワークを離れることなくそこに様々な修正を加えることができる。
【実施例
【0072】
本発明の効果を確認するために本発明を適用する2つのタイプの実施例と他のタイプの参照例とを準備した。
【0073】
実施例1は、仮想線VM及び仮想線VB1で区切られる領域を考慮した場合に底部側面部分の1つの側が底部側面部分の別の側よりも25.4%軽い上述の第1の実施形態に説明するタイヤである。実施例2は、実施例1と同等の領域を考慮した場合に底部側面部分の1つの側が底部側面部分の別の側よりも32.3%軽い実施例1と類似のタイヤである。参照例は、2つの底部側面部分に対して同等の重量を有するタイヤである。各実施例及び参照例に関して、仮想線VU1及び仮想線VMで区切られる領域を考慮した場合に、上側側面部分の重量は、2つの側面部分間で同等であった。実施例及び参照例は、全てが同じタイヤサイズ235/45R18であり、同じ材料を使用する標準的な空気ラジアルタイヤと内部構造が同じであった。
【0074】
騒音性能試験:
【0075】
未使用試験タイヤを2500cc後輪駆動式ハイブリッド車両の4輪全てに装着した。この車両は、エンジンを止めた状態で風上に向けてアスファルトの直線路上を時速105kmから時速50kmまで惰性走行した。内部騒音は、窓に近い乗員の耳に位置決めしたマイクロフォンを使用して測定した。時速85kmから時速75kmまで50~500HzでのA特性重み付け音圧レベルの平均値を計算した。
【0076】
その結果を表1に示している。この表1では、結果を参照例に対するdB(A)の差で表現しており、値が小さいほど性能が良いことを表している。
【0077】
ハンドリング性能試験:
【0078】
標準的なリムの上に装着され、公称内圧まで膨脹した未使用試験タイヤのコーナリング機能が平坦ベルトタイヤ試験機を使用して測定された。タイヤを時速80kmの一定速度で駆動しながら460kgの負荷を加えてスリップ角±1°での横力を測定し、+1°と-1°で測定した横力を平均した。
【0079】
その結果も表1に示している。この表1では、参照例を100とした指数で結果を表しており、数値が大きいほど性能が良いことを示している。
【0080】
【表1】
【0081】
表1から見られるように、実施例は、ハンドリング性能を維持しながら騒音性能の改善を示している。
【0082】
参照符号リスト
1、21 タイヤ
2、22 頂点
3、23 側面部分
31、231 上側側面部分
32、232 底部側面部分
33、233 上側側面点
34、234 中間側面点
35、235 底部側面点
2321 軽量底部側面部分
4、24 ビード
5、25 カーカス補強体
6、26 頂点補強体
61、261 補強プライ
7、27 トレッド
図1
図2
図3
図4