(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
B62D6/00
(21)【出願番号】P 2023025798
(22)【出願日】2023-02-22
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】澤田 拳
(72)【発明者】
【氏名】泉 佳範
(72)【発明者】
【氏名】大庭 吉裕
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-14369(JP,A)
【文献】特開2017-61264(JP,A)
【文献】特許第6825527(JP,B2)
【文献】特開2019-59363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外界状況を認識する外界認識部と、
前記車両の操舵支援を行う操舵支援部と、を備え、
前記操舵支援部は、
前記外界認識部により認識された外界状況に基づいて、前記操舵支援部による操舵支援の目標舵角速度を算出する舵角速度算出部と、
前記舵角速度算出部により算出された目標舵角速度が所定舵角速度を超えた期間の継続時間が所定継続時間を超えると、前記目標舵角速度を制限舵角速度まで減少させることで前記操舵支援部による操舵支援を制限する支援制限部と、を有し、
前記支援制限部は、さらに、前記操舵支援部による操舵支援の開始からの前記車両の舵角の変化量が所定値以下となるように前記操舵支援部による操舵支援を制限することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記所定値は、前記継続時間が前記所定継続時間を超えないように定められることを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記支援制限部は、前記操舵支援部による操舵支援の開始から所定期間経過後までの前記変化量が前記所定値以下となるように前記操舵支援部による操舵支援を制限することを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記所定値は、前記車両の走行速度が大きいほど小さい値に定められることを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記制限舵角速度は、ゼロであることを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転機能や運転支援機能を有する車両の操舵支援を行う車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車線維持や路外逸脱抑制等の操舵支援を行うようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の装置では、画像情報に基づいて第1の目標操舵角を算出し、自車位置情報と地図情報とに基づいて第2の目標操舵角を算出し、第2の目標操舵角を基準として目標操舵角制限値および目標操舵角速度制限値を算出し、第1の目標操舵角を目標操舵角制限値および目標操舵角速度制限値で制限し、制限された第1の目標操舵角で操舵制御を実行する。
【0003】
自動運転機能や運転支援機能を有する車両が普及することで、交通社会全体の安全性や利便性が向上し、持続可能な輸送システムを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の装置では、地図情報に基づいて舵角や舵角速度を制限するため、地図情報が存在しない場合や正確でない場合には適切な操舵支援を行うことが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様である車両制御装置は、車両の周辺領域の外界状況を認識する外界認識部と、車両の操舵支援を行う操舵支援部と、を備える。操舵支援部は、外界認識部により認識された外界状況に基づいて、操舵支援部による操舵支援の目標舵角速度を算出する舵角速度算出部と、舵角速度算出部により算出された目標舵角速度が所定舵角速度を超えた期間の継続時間が所定継続時間を超えると、目標舵角速度を制限舵角速度まで減少させることで操舵支援部による操舵支援を制限する支援制限部と、を有する。支援制限部は、さらに、操舵支援部による操舵支援の開始からの車両の舵角の変化量が所定値以下となるように操舵支援部による操舵支援を制限する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、地図情報によらず適切な操舵支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両制御装置の要部構成の一例を概略的に示すブロック図。
【
図2】目標舵角速度のみを制限する場合の、操舵支援の制限について説明するためのタイムチャート。
【
図3】目標舵角速度のみを制限する操舵支援の制限が機能しない場合について説明するためのタイムチャート。
【
図4】目標舵角速度と舵角の変化量とを制限する、
図1の支援制限部による操舵支援の制限について説明するためのタイムチャート。
【
図5】走行速度と過大な横移動量との関係について説明するための図。
【
図6】走行速度と舵角の変化量の閾値との関係について説明するための図。
【
図7】本発明の実施形態に係る車両制御装置により実行される処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図7を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る車両制御装置は、車両の運転者に対し少なくとも操舵支援を含む運転支援を行うないし車両を自動運転するように走行用アクチュエータを制御する運転支援機能を有する車両に適用される。本実施形態の「運転支援」は、運転者の操舵等の運転操作を支援する運転支援と、運転者の運転操作によらず車両を自動運転する自動運転とを含み、SAEにより定義されるレベル1~レベル4の自動運転に相当し、「自動運転」は、レベル5の自動運転に相当する。
【0010】
運転支援中ないし自動運転中は、カメラ等による車両周辺の認識結果に基づいて、車両が走行車線内を走行するように車両の転舵機構を制御する操舵支援が行われる。操舵支援では、カメラ等による車両周辺の認識結果に基づいて、車両が走行車線を逸脱した、あるいは逸脱しつつあると判定されると、車両が走行車線内に戻るように転舵機構が制御される。
【0011】
しかしながら、このような操舵支援により運転者の意図しない車両の挙動が発生すると、その程度によっては運転者に不安を感じさせたり、予期しない事象につながったりするおそれがある。そこで、本実施形態では、このような車両の挙動を抑制しつつ、適切な操舵支援を行うことができるよう、以下のように車両制御装置を構成する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置(以下、装置)100の要部構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、装置100は、主に電子制御ユニット(ECU)10により構成される。ECU10は、CPU、RAM、ROM、I/Oインタフェース、その他の周辺回路を有するコンピュータを含んで構成される。ECU10は、例えば車両1に搭載されて車両1の動作を制御する複数のECU群の一部として構成される。
【0013】
ECU10には、車両1に搭載された走行用アクチュエータ2と、車速センサ3と、外界センサ4とが接続される。走行用アクチュエータ2には、車両1を転舵させるステアリングギア等の転舵機構が含まれる。車速センサ3は、例えば車輪の回転速度を検出する車輪速センサにより構成され、車両1の走行速度Vを検出する。
【0014】
外界センサ4は、車両1の周辺領域の物体の位置を含む外界状況を検出する。外界センサ4は、CCDやCMOS等の撮像素子を有し、車両1の周辺領域を撮像するカメラを含む。外界センサ4は、車両1から周辺領域の物体までの距離を検出する距離検出部を含んでもよい。距離検出部は、例えば、ミリ波(電波)を照射し、照射波が物体に当たって戻ってくるまでの時間から、その物体までの距離や方向を測定するミリ波レーダにより構成される。距離検出部は、レーザ光を照射し、照射光が物体に当たって戻ってくるまでの時間から、その物体までの距離や方向を測定するライダ(LiDAR)により構成されてもよい。
【0015】
ECU10は、機能的構成として外界認識部11と操舵支援部12とを有し、外界認識部11と操舵支援部12として機能する。
【0016】
外界認識部11は、外界センサ4からの信号に基づいて、車両1の進行方向を中心とする周辺領域の外界状況を認識する。特に、道路上の区画線、縁石、ガードレール等の位置を認識することで、車両1が走行する走行車線を認識する。また、認識結果に基づいて、車両1が走行車線を逸脱したか否か、あるいは車両1が走行車線を逸脱しつつあるか否かを判定する。
【0017】
操舵支援部12は、機能的構成として舵角速度算出部13と支援制限部14とを有し、舵角速度算出部13と支援制限部14として機能する。外界認識部11により認識された外界状況に基づいて車両1の操舵支援を行う。特に、車両1が走行車線を逸脱した、あるいは逸脱しつつあると判定されると、外界認識部11により認識された外界状況に基づいて、車両1が走行車線内に戻るように転舵機構を制御することで操舵支援を行う。操舵支援部12は、機能的構成として舵角速度算出部13と支援制限部14とを有し、舵角速度算出部13と支援制限部14として機能する。
【0018】
舵角速度算出部13は、外界認識部11による認識結果に基づいて、操舵支援部12による操舵支援の目標舵角速度ωを算出する。舵角速度算出部13により算出された目標舵角速度ωに基づいて、転舵機構に付与すべき操舵トルク(アシストトルク)が算出され、転舵機構が制御される。
【0019】
支援制限部14は、所定の演算周期毎に、舵角速度算出部13により算出された目標舵角速度ωが、運転者に不安を感じさせたり予期しない事象につながったりするような過大な操舵となり得る所定舵角速度ω1を超えているか否かを判定する。目標舵角速度ωが所定舵角速度ω1を超えていると判定されると、所定舵角速度ω1を超えた期間の継続時間Tを算出する。そして、算出された継続時間Tが、運転者に不安を感じさせたり予期しない事象につながったりするような過大な横移動量D1を発生させ得る所定継続時間T1を超えたか否か判定する。
【0020】
継続時間Tが所定継続時間T1を超えたと判定されると、目標舵角速度ωを制限舵角速度ω2まで減少させることで操舵支援部12による操舵支援を制限する(目標舵角速度制限)。制限舵角速度ω2は、例えば0[deg/秒]に設定され、この場合、転舵機構に付与すべき操舵トルクが0[Nm]に設定され、操舵支援部12による操舵支援が中止される。
【0021】
支援制限部14は、さらに、操舵支援部12による操舵支援の開始から所定期間T2経過後まで、所定の演算周期毎に、車両1の舵角θの変化量Δθを算出し、算出された変化量Δθが所定値θ1以下となるように操舵支援部12による操舵支援を制限する(目標舵角制限)。より具体的には、操舵支援開始時の舵角θ(t0)と今回の演算周期における目標舵角θ(tn)との差(|θ(tn)-θ(t0)|)を変化量Δθ(tn)として算出し、算出された変化量Δθ(tn)が所定値θ1以下であるか否かを判定する。そして、変化量Δθ(tn)が所定値θ1を超えると判定されると、今回の演算周期における目標舵角θ(tn)を、操舵支援開始時の舵角θ(t0)に所定値θ1を加算した値(θ(t0)+θ1)、あるいは操舵支援開始時の舵角θ(t0)から所定値θ1を減算した値(θ(t0)-θ1)に制限する。この場合、制限された目標舵角θ(tn)に基づいて目標舵角速度ω(tn)を算出し、舵角速度算出部13により算出された目標舵角速度ωに基づいて転舵機構に付与すべき操舵トルクを算出して転舵機構を制御するフィードバック制御が行われる。
【0022】
図2~
図4は、操舵支援の制限について説明するためのタイムチャートであり、操舵支援開始から所定期間T2の目標舵角速度ω、継続時間T、舵角θの変化量Δθ、および操舵支援開始からの車両1の横移動量Dの時間変化を示す。車両1の横移動量Dは、車両1の進行方向に直交する車幅方向における車両1の移動距離である。
【0023】
図2は、目標舵角速度ωのみを制限する場合の、操舵支援の制限について説明するためのタイムチャートである。
図2に示すように、時刻t
1で操舵支援が開始され、時刻t
2で目標舵角速度ωが所定舵角速度ω1を超えると、継続時間Tの算出が開始される。その後、時刻t
3で継続時間Tが所定継続時間T1を超えると、目標舵角速度ωが制限舵角速度ω2(ω2=0)まで減少され、転舵機構に操舵トルクが付与されなくなり、操舵支援が中止される(目標舵角速度制限)。
【0024】
この場合、時刻t3以降、舵角θが徐々に初期状態(例えば車両1の直進状態に相当する0[deg])に戻り、横移動量Dの増加が緩やかになることで、時刻t4における横移動量D、すなわち操舵支援による所定期間T2の横移動量Dが抑制される。このように目標舵角速度ωのみに着目して操舵支援を制限する場合、所定期間T2の横移動量Dを過大な横移動量D1未満に抑制できる反面、適切な操舵支援を行うために必要な横移動量D2を確保できなくなるおそれがある。
【0025】
図3は、目標舵角速度ωのみを制限する操舵支援の制限が機能しない場合について説明するためのタイムチャートである。カメラ等の外界センサ4を用いて車両1の進行方向の走行車線を認識する場合、操舵支援が開始し、車両1が走行車線の内側に向かうと、走行車線を規定する区画線等が外界センサ4の画角から外れ、外界認識部11による走行車線の認識精度が低下することがある。あるいは、区画線等そのものの途切れや変形等により、外界認識部11による走行車線の認識精度が低下することもある。
【0026】
このような場合、
図3に示すように、操舵支援開始後、時刻t
5で外界認識部11による走行車線の誤認識が発生し、一時的に目標舵角速度ωが所定舵角速度ω1を下回ることがある。この場合、継続時間Tが所定継続時間T1を超えず、目標舵角速度ωの制限が行われないため、操舵支援が継続され、操舵支援開始から所定期間T2の時刻t
6における横移動量Dが過大な横移動量D1を上回るおそれがある。
【0027】
図4は、目標舵角速度ωと舵角θの変化量Δθとを制限する、
図1の支援制限部14による操舵支援の制限について説明するためのタイムチャートである。
図4に示すように、時刻t
1で操舵支援が開始され、時刻t
2で目標舵角速度ωが所定舵角速度ω1を超え、継続時間Tの算出が開始された後、時刻t
7で舵角θの変化量Δθが所定値θ1に達すると、舵角θの変化量Δθが所定値θ1に制限される(目標舵角制限)。
【0028】
図5は、車両1の走行速度Vと過大な横移動量D1との関係について説明するための図である。
図5に示すように、運転者に不安を感じさせたり予期しない事象につながったりするような過大な横移動量D1(基準値)は、走行速度Vが大きいほど大きい値に設定される。このような基準値は、例えば車両1を用いた試験により定めることができる。
【0029】
車両1の横移動量Dは、車両1の走行速度Vと舵角θの変化量Δθとに応じて変化する。横移動量Dは、同一の走行速度Vでも舵角θの変化量Δθが大きいほど大きくなり、同一の舵角θの変化量Δθでも走行速度Vが大きいほど大きくなる。したがって、舵角θの変化量Δθの閾値である所定値θ1を走行速度Vに応じて適当な値に設定することで、目標舵角制限による操舵支援の制限中の横移動量Dを抑制し、操舵支援開始から所定期間T2の横移動量Dを過大な横移動量D1未満に抑制することができる。
【0030】
図6は、車両1の走行速度Vと舵角θの変化量Δθの閾値である所定値θ1との関係について説明するための図である。
図6に示すように、所定値θ1は、操舵支援開始から所定期間T2の車両1の横移動量Dが過大な横移動量D1未満となるように、車両1の走行速度Vが大きいほど小さい値に設定される。このように、操舵支援による横移動量Dが過大な横移動量D1に達しないように所定値θ1を定める場合、目標舵角速度ωが所定舵角速度ω1を超えた期間の継続時間Tが所定継続時間T1を超えないため、目標舵角速度制限により操舵支援が中止されることがない。
【0031】
また、所定値θ1は、適切な操舵支援を行うために必要な横移動量D2を確保するため、横移動量Dが過大な横移動量D1未満となる範囲で十分大きい値(例えば最大値)に設定される。所定値θ1は、外界認識部11による認識結果に基づいて算出される必要な横移動量D2を確保するために十分な値(例えば最小値)に設定されてもよい。この場合、操舵支援による車両1の横移動量Dが最小限に抑制される。
【0032】
図4に示すように、時刻t
7で舵角θの変化量Δθが所定値θ1に達するまでは操舵支援が制限されないため、操舵支援の初期段階では目標舵角速度ωに応じた大きい操舵トルクを転舵機構に付与し、車両1の走行車線からの逸脱等を早期に抑制することができる。また、時刻t
7で目標舵角制限による操舵支援の制限が開始された後も、所定値θ1に応じて制限された目標舵角θ(t
n)に基づいて転舵機構のフィードバック制御が行われ、操舵支援が継続される。これにより、操舵支援開始からの所定期間T2に必要な横移動量D2が確保され、車両1の走行車線からの逸脱等を確実に抑制することができる。
【0033】
目標舵角制限による操舵支援の制限は、所定期間T2経過後は行われない。よって、所定期間T2経過後は、目標舵角速度制限による操舵支援の制限のみが行われる。したがって、所定期間T2経過後、外界認識部11による認識結果に基づいて算出される目標舵角速度ωが所定舵角速度ω1を超え、そのような期間の継続時間Tが所定継続時間T1を超えた場合には、目標舵角速度制限により操舵支援が制限(中止)される。
【0034】
図7は、装置100のECU10により実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば、車両1が始動してECU10が起動されると開始され、所定の演算周期Δt毎に繰り返し実行される。
【0035】
図7に示すように、先ずステップS1で、外界センサ4からの信号に基づいて走行車線が認識され、認識結果に基づいて必要な横移動量D2およびそれを達成するための目標舵角速度ωが算出される。次いでステップS2で、ステップS1で算出された目標舵角速度ωが所定舵角速度ω1以下であるか否かが判定される。ステップS2で否定されると、ステップS3で継続時間T(t
n)がカウントアップされ(T(t
n)=T(t
n-1)+Δt)、ステップS4で継続時間T(t
n)が所定継続時間T1を超えたか否かが判定される。ステップS4で否定されると、ステップS5で目標舵角速度制限により操舵支援が制限(中止)される。
【0036】
一方、ステップS2またはステップS4で肯定されると、ステップS6で舵角θの変化量Δθ(tn)が算出され(Δθ(tn)=|θ(tn)-θ(t0)|)、算出された舵角θの変化量Δθ(tn)が所定値θ1以下であるか否かが判定される。ステップS6で否定されると、ステップS7で目標舵角制限により操舵支援が制限される。一方、ステップS6で肯定されると、ステップS8で、ステップS1で算出された目標舵角速度ωに基づく操舵支援が行われる(制限なし)。
【0037】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)装置100は、車両1の周辺領域の外界状況を認識する外界認識部11と、車両1の操舵支援を行う操舵支援部12と、を備える(
図1)。操舵支援部12は、外界認識部11により認識された外界状況に基づいて、操舵支援部12による操舵支援の目標舵角速度ωを算出する舵角速度算出部13と、舵角速度算出部13により算出された目標舵角速度ωが所定舵角速度ω1を超えた期間の継続時間Tが所定継続時間T1を超えると、目標舵角速度ωを制限舵角速度ω2まで減少させることで操舵支援部12による操舵支援を制限する支援制限部14と、を有する(
図1、
図7のステップS2~S5)。支援制限部14は、さらに、操舵支援部12による操舵支援の開始からの車両1の舵角θの変化量Δθが所定値θ1以下となるように操舵支援部12による操舵支援を制限する(
図7のステップS6~S7)。
【0038】
所定舵角速度ω1を超えた期間の継続時間Tが所定継続時間T1を超えるまで、あるいは舵角θの変化量Δθが所定値θ1を超えるまでは操舵支援が制限されないため、過大な車両挙動を抑制しつつ操舵支援の初期段階で効果的に操舵支援を行うことができる。また、車両1の舵角θや舵角速度ωを監視する簡易な構成により操舵支援の制限を行うため、地図情報等の外部情報の有無にかかわらず、適切な操舵支援を行うことができる。
【0039】
(2)所定値θ1は、継続時間Tが所定継続時間T1を超えないように定められる(
図4)。この場合、少なくとも所定期間T2は目標舵角速度制限により操舵支援が中止されることがないため、必要な横移動量D2が確保され、適切な操舵支援を確実に行うことができる。
【0040】
(3)支援制限部14は、操舵支援部12による操舵支援の開始から所定期間T2経過後までの変化量Δθが所定値θ1以下となるように操舵支援部12による操舵支援を制限する(
図4)。したがって、所定期間T2経過後、外界認識部11による認識結果に基づいて算出される目標舵角速度ωが所定舵角速度ω1を超え、そのような期間の継続時間Tが所定継続時間T1を超えた場合には、目標舵角速度制限により操舵支援が制限(中止)される。これにより、操舵支援による過大な車両挙動を確実に抑制することができる。
【0041】
(4)所定値θ1は、車両1の走行速度Vが大きいほど小さい値に定められる(
図6)。操舵支援による車両1の横移動量Dは、走行速度Vが大きいほど大きくなるが、所定値θ1を走行速度Vに応じて適当な値に設定することで、走行速度Vにかかわらず操舵支援による過大な車両挙動を確実に抑制することができる。
【0042】
(5)制限舵角速度ω2は、ゼロである(ω2=0)。この場合、目標舵角速度制限により操舵支援が中止されるため、操舵支援による過大な車両挙動を一層確実に抑制することができる。
【0043】
上記実施形態では、車両1の周辺領域における外界状況の認識結果に基づいて、車両1が走行車線を逸脱した、あるいは逸脱しつつあると判定されると操舵支援を行う例を説明したが、車両の操舵支援を行う操舵支援部は、このようなものに限定されない。例えば、車両1が走行車線の中央から外れた、あるいは外れつつあると判定されると操舵支援を行うものであってもよく、車両1の進行方向における障害物を回避する必要があると判定されると操舵支援を行うものであってもよい。
【0044】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 車両、2 走行用アクチュエータ、3 車速センサ、4 外界センサ、10 電子制御ユニット(ECU)、11 外界認識部、12 操舵支援部、13 舵角速度算出部、14 支援制限部、100 車両制御装置(装置)