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特許7604539磁石材料、永久磁石、回転電機、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】磁石材料、永久磁石、回転電機、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/055 20060101AFI20241216BHJP
   H01F 1/059 20060101ALI20241216BHJP
   H01F 1/057 20060101ALI20241216BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20241216BHJP
   C22C 19/07 20060101ALI20241216BHJP
   C22C 38/52 20060101ALI20241216BHJP
   C22C 38/12 20060101ALI20241216BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20241216BHJP
   H02K 1/276 20220101ALI20241216BHJP
【FI】
H01F1/055 110
H01F1/059 130
H01F1/057 110
C22C38/00 303D
C22C19/07 D
C22C38/52
C22C38/12
B22F3/00 F
H02K1/276
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023038542
(22)【出願日】2023-03-13
(62)【分割の表示】P 2020042956の分割
【原出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2023085304
(43)【公開日】2023-06-20
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2019046978
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 将也
(72)【発明者】
【氏名】桜田 新哉
(72)【発明者】
【氏名】岡本 佳子
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-213384(JP,A)
【文献】特開2018-125512(JP,A)
【文献】特開平09-074006(JP,A)
【文献】特開平11-003812(JP,A)
【文献】特開平07-066021(JP,A)
【文献】特開2000-114017(JP,A)
【文献】国際公開第2011/030387(WO,A1)
【文献】特開2000-114016(JP,A)
【文献】特開2001-035714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/055
H01F 1/059
H01F 1/057
C22C 38/00
C22C 19/07
C22C 38/52
C22C 38/12
B22F 3/00
H02K 1/276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式2:(R1-uNb100-x-y-t
(Rは希土類元素からなる群より選ばれる少なくともの一つの元素であり、MはFe及びCoからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、xは4≦x≦11原子%を満足する数であり、yは1.0≦y≦6.5原子%を満足する数であり、tは0≦t<12原子%を満足する数であり、uは0.01≦u≦0.5を満足する数である)
により表され、
TnMn12型結晶構造及びTbCu型結晶構造からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造を具備し、
z=(100-x-y-t)/(x+y)により定義されるzは、7.5≦z≦12を満足する数であり、
固有保磁力が500kA/m以上であり且つ残留磁化が0.84T以上である、磁石材料。
【請求項2】
zは、9<z≦12を満足する数である、請求項1に記載の磁石材料。
【請求項3】
固有保磁力が600kA/m以上である、請求項1または請求項2に記載の磁石材料。
【請求項4】
残留磁化が0.91T以上である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の磁石材料。
【請求項5】
前記少なくとも一つの構造を具備する主相を有する、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の磁石材料。
【請求項6】
前記主相の平均結晶粒径は、0.1nm以上100nm以下である、請求項5に記載の磁石材料。
【請求項7】
R元素の50原子%以上がSmである、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の磁石材料。
【請求項8】
Nb元素の50原子%以下がZr、Hf、Taからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素により置換されている、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の磁石材料。
【請求項9】
M元素の50原子%以上がFeである、請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の磁石材料。
【請求項10】
M元素の20原子%以下がNi、Cu、V、Cr、Mn、Al、Si、Ga、Ta、W、Ti、及びMoからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素により置換されている、請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の磁石材料。
【請求項11】
yは、1.5≦y≦6.5原子%を満足する数である、
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の磁石材料。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の磁石材料と、
バインダと、
を具備する、永久磁石。
【請求項13】
前記永久磁石の密度は、6.45g/cm以上である、請求項12に記載の永久磁石。
【請求項14】
前記永久磁石の密度は、6.53g/cm以上である、請求項12に記載の永久磁石。
【請求項15】
請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の磁石材料の焼結体を具備する、永久磁石。
【請求項16】
ステータと、
ロータと、を具備し、
前記ステータ又は前記ロータは、請求項12ないし請求項15のいずれか一項に記載の永久磁石を具備する、回転電機。
【請求項17】
前記ロータは、シャフトを介してタービンに接続されている、請求項16に記載の回転電機。
【請求項18】
請求項16に記載の回転電機を具備する、車両。
【請求項19】
前記ロータは、シャフトに接続されており、前記シャフトに回転が伝達される、請求項18に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、磁石材料、永久磁石、回転電機、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石は、例えばモータ、発電機等の回転電機、スピーカ、計測機器等の電気機器、自動車、鉄道車両等の車両を含む広範な分野の製品に用いられている。近年、上記製品の小型化や高効率化が要求されており、高磁化及び高保磁力を有する高性能な永久磁石が求められている。
【0003】
高性能な永久磁石の例としては、例えばSm-Co系磁石やNd-Fe-B系磁石等の希土類磁石が挙げられる。これらの磁石では、FeやCoが飽和磁化の増大に寄与している。また、これらの磁石にはNdやSm等の希土類元素が含まれており、結晶場中における希土類元素の4f電子の挙動に由来して大きな磁気異方性をもたらす。これにより、大きな保磁力を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4320701号公報
【文献】特開2004-263232号公報
【文献】特開平9-74006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、磁石材料の保磁力を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の磁石材料は、組成式2:(R1-uNb100-x-y-t(Rは希土類元素からなる群より選ばれる少なくともの一つの元素であり、MはFe及びCoからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、xは4≦x≦11原子%を満足する数であり、yは1.0≦y≦6.5原子%を満足する数であり、tは0≦t<12原子%を満足する数であり、uは0.01≦u≦0.5を満足する数である)により表され、TnMn12型結晶構造及びTbCu型結晶構造からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造を具備し、z=(100-x-y-t)/(x+y)により定義されるzは、7.5≦z≦12を満足する数であり、固有保磁力が500kA/m以上であり且つ残留磁化が0.84T以上である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】永久磁石モータの例を示す図である。
図2】可変磁束モータの例を示す図である。
図3】発電機の例を示す図である。
図4】鉄道車両の構成例を示す模式図である。
図5】自動車の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は模式的なものであり、例えば厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
実施形態の磁石材料は、希土類元素と、M元素(MはFe及びCoからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素)と、Nb元素と、B元素とを含有する。上記磁石材料は、高濃度のM元素を含む結晶相を主相とする金属組織を具備する。主相中のM元素濃度を高めることにより飽和磁化を向上させることができる。主相は、磁石材料中の各結晶相及び非晶質相のうち、最も体積占有率が高い相である。上記磁石材料は副相を含んでいてもよい。副相は例えば主相の結晶粒間に存在する粒界相や微細結晶相、不純物相等である。高濃度のM元素を含む結晶相としては、例えばThMn12型結晶相やTbCu型結晶相が挙げられる。
【0010】
希土類元素及びM元素に加え、Nb元素とB元素とを添加することにより非晶質の形成能を高め、保磁力を高めることができる。上記磁石材料の用途の一つにボンド磁石とそれを用いたモータがある。近年、モータの小型化や高速化の需要が増加しており、それに伴い磁石の耐熱性向上に対する要求が高まっている。耐熱性向上のためには保磁力の向上が必要である。
【0011】
大きな磁気異方性を有する磁石材料において、保磁力を発現させるための有効な方法の一つに磁石材料中の結晶粒を微細化する方法がある。よって、主相は、微結晶を有することが好ましい。微結晶は、例えば液体急冷法を用いて非晶質の薄帯を作製してその後に適切な熱処理を施して結晶粒の析出と成長を行うことにより形成される。
【0012】
磁気異方性が高い主相を微細化することにより、個々の結晶粒が単磁区状態となりやすくなり、逆磁区発生と磁壁伝播を抑制して高い保磁力を発現する。結晶粒径が微細すぎる場合も粗大すぎる場合も保磁力が低くなるため、主相の平均結晶粒径は、0.1nm以上100nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.5nm以上80nm以下であり、さらに好ましくは1nm以上60nm以下であり、さらに好ましくは3nm以上50nm以下である。また、主相の粒径分布を狭くすることにより角型比を向上させることができる。
【0013】
粒界相として非磁性又は弱磁性の粒界相を形成してもよい。これにより結晶粒間の磁気的な結合が切断され、逆磁区の発生や磁壁の伝播を抑制する効果が高まり、保磁力を向上させることができる。
【0014】
保磁力を高めるためには希土類元素、M元素、Nb元素、B元素の各添加量を制御する必要がある。実施形態の磁石材料は、例えば組成式1:RNb100-x-y-tにより表される。なお、磁石材料は、不可避不純物を含んでいてもよい。
【0015】
R元素は希土類元素であり、磁石材料に大きな磁気異方性をもたらし、永久磁石に高い保磁力を付与することができる元素である。R元素は具体的には、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pr)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、特に、Smを用いることが好ましい。例えば、R元素としてSmを含む複数の元素を用いる場合、Sm濃度をR元素として適用可能な元素全体の50原子%以上とすることにより、磁石材料の性能、例えば保磁力を高めることができる。
【0016】
R元素の添加量xは、例えば6.2<x≦8原子%を満足する数であることが好ましい。xが少なすぎる場合も多すぎる場合も異相が析出して保磁力が低下する。R元素の添加量xは、6.3≦x≦7.7原子%を満足する数、さらには6.4≦x≦7.5原子%を満足する数、さらには6.5≦x≦7.4原子%を満足する数であることがより好ましい。
【0017】
ニオブ(Nb)は、高濃度のM元素を含む結晶相の安定化に有効な元素である。また、非晶質化の促進に有効な元素である。Nb元素の添加量yは、R元素の添加量xとの間で特定の関係式を満たすように調整することにより、磁石材料の性能、例えば保磁力を高めることができる。Nb元素の添加量yは、例えば0.75≦x/(x+y)≦0.95を満足する数であることが好ましい。
【0018】
x/(x+y)が0.75未満の場合、結晶構造中のSm濃度が低下し、磁石材料の磁気異方性が低下することや、主相の安定性が低下し、例えばα-Fe相とRFe14B相に分解しやすくなる等の理由により高い保磁力を得にくくなる。
【0019】
x/(x+y)が0.95より大きい場合、Nbの量が少なくなりすぎて非晶質化が困難となり、保磁力が低下する。より好ましくは0.76≦x/(x+y)≦0.93を満足する数であり、さらに好ましくは0.77≦x/(x+y)≦0.9を満足する数である。
【0020】
Nb元素の50原子%以下は、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、及びハフニウム(Hf)からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素に置換されてもよい。Zr元素、Ta元素、及びHf元素は、結晶相の安定化や非晶質化に有効な元素である。
【0021】
M元素は、Fe及びCoからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、磁石材料の高い飽和磁化を担う元素である。FeとCoではFeのほうがより磁化が高いことからM元素の50原子%以上がFeであることが好ましい。M元素にCoを入れることにより磁石材料のキュリー温度が上昇し、高温領域での飽和磁化の低下を抑制することができる。また、Coを少量入れることによりFe単独の場合よりも飽和磁化を高めることができる。一方、Co比率を高めると異方性磁界の低下を招く。さらに、Co比率が高すぎると飽和磁化の低下も招く。このため、FeとCoの比率を適切に制御することにより、高い飽和磁化、高い異方性磁界、高いキュリー温度を同時に実現することができる。組成式1のMを(Fe1-yCo)と表記すると、好ましいyの値は0.01≦y<0.7であり、より好ましくは0.01≦y<0.5であり、さらに好ましくは0.01≦y≦0.3である。M元素の20原子%以下は、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、銅(Cu)、タンタル(Ta)タングステン(W)、モリブデン(Mo)、及びガリウム(Ga)からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素に置換されてもよい。上記元素は、例えば主相を構成する結晶粒の成長に寄与する。
【0022】
ホウ素(B)は、非晶質化の促進に有効な元素である。B元素の添加量tを適切に制御することにより、単ロール急冷法等の工業生産性の高い手法で非晶質な薄帯を得ることができる。B元素の添加量tは、例えば0≦t<12原子%を満足する数であることが好ましい。B元素が多すぎる場合にはRFe14B相等の異相が形成されやすくなり、保磁力が低下する。B元素を実質的に含まなくても非晶質化は可能であるが、単ロール法を用いる場合には、ロール周速を速めて冷却速度を高める必要があり、工業生産性が低下する。B元素の添加量tは0.5≦t≦11原子%を満足する数であることがより好ましく、さらに好ましくは1≦t≦10.8原子%を満足する数であり、さらに好ましくは2≦t≦10.5原子%を満足する数である。
【0023】
R元素の一部はY元素により置換されてもよい。このとき、磁石材料は、例えば組成式2:(R1-uNb100-x-y-tにより表される。なお、磁石材料は、不可避不純物を含んでいてもよい。R元素、Nb元素、B元素、M元素の説明については、上記説明を適宜援用することができる。
【0024】
Y元素は高濃度のM元素を含む結晶相、例えばThMn12型結晶相やTbCu型結晶相の安定化に有効な元素である。高濃度のM元素を含む結晶相はM元素濃度を高めるほど飽和磁化が高くなり、磁石特性を高めることができるが、M元素濃度が高くなると結晶構造が不安定になり、主相の分解や、α-Fe又はα-(Fe,Co)相の析出により保磁力が低下する。これに対し、R元素の一部をY元素で置換することにより、高濃度のM元素を含む結晶相の安定性を高めることができ、よりM元素濃度を高めることができる。これにより、高い保磁力と高い磁化を両立することができる。Y元素の添加量uは0.01≦u≦0.5原子%を満足する数であることが好ましい。uが少なすぎる場合には安定化の効果が少なく、uが大すぎる場合には磁気異方性が低下し、保磁力が低下する。uは0.02≦u≦0.4原子%を満足する数であることがより好ましく、さらに好ましくは0.05≦u≦0.3原子%である。
【0025】
なお、組成式1又は組成式2により表される磁石材料において、(100-x-y-t)/(x+y)により定義されるzの値は、M元素の添加量に比例し、zの値が大きいほど高い磁化が得られる。zは7.5≦z≦12を満足する数であることが好ましい。zが7.5未満の場合にはM元素濃度が低くなり、磁化が低下する。zが12より大きい場合にはα-Fe又はα-(Fe,Co)相の析出が避けられず、保磁力が低下する。zは8≦z≦12を満足する数であることがより好ましく、さらに好ましくは8.5≦z≦12であり、さらに好ましくは9<z≦12を満足する数であり、さらに好ましくは9.5≦z≦12を満足する数である。組成式2により表される磁石材料の場合、好ましくは9<z≦12を満足する数であり、さらに好ましくは9.5≦z≦12を満足する数である。Rの一部をYで置換することにより、高濃度のM元素を含む結晶相の安定性が向上し、zの値が大きい組成で保磁力を高めやすくなる。
【0026】
組成式2により表される磁石材料において、R元素とY元素の添加量xとNbの添加量yは、4≦x≦11原子%、0≦y≦6.5原子%をそれぞれ満足する数であることが好ましいが、yが0.75≦x/(x+y)≦0.95を満足する数であることがより好ましい。さらに好ましくは0.76≦x/(x+y)≦0.93を満足する数であり、さらに好ましくは0.77≦x/(x+y)≦0.9を満足する数である。また、xは6.2<x≦8原子%を満足する数であることがより好ましく、さらに好ましくは6.3≦x≦7.7原子%を満足する数であり、さらに好ましくは6.4≦x≦7.5原子%を満足する数であり、さらに好ましくは6.5≦x≦7.4原子%を満足する数である。
【0027】
実施形態の磁石材料は、さらにA元素を含んでいてもよい。A元素は窒素(N)、炭素(C)、水素(H)、及びリン(P)からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素である。A元素は結晶格子内に侵入し、例えば結晶格子を拡大させること及び電子構造を変化させることの少なくとも一つを生じさせる機能を有する。これにより、キュリー温度、磁気異方性、飽和磁化を変化させることができる。A元素は、不可避不純物を除き必ずしも添加されなくてもよい。
【0028】
実施形態の磁石材料は、液体急冷法(メルトスパン法)で作製された急冷合金薄帯の形態であってもよいし、急冷合金薄帯を原料素材とした、例えば粉末状等であってもよい。薄帯は平均厚さが10μm以上60μm以下であることが好ましい。薄帯が薄すぎる場合には表面劣化層の割合が増え、磁石特性、例えば磁化が低下する。また、薄帯が厚すぎる場合には、薄帯内で冷却速度の分布が生じやすくなり、保磁力が低下する。薄帯の平均厚さは、好ましくは15μm以上50μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上40μm以下である。
【0029】
実施形態の磁石材料の固有保磁力は、300kA/m以上2500kA/m以下である。耐熱性を高めるために、より好ましくは500kA/m以上2500kA/m以下であり、さらに好ましくは600kA/m以上2500kA/m以下であり、さらに好ましくは610kA/m以上2500kA/m以下であり、さらに好ましくは620kA/m以上2500kA/m以下であり、さらに好ましくは640kA/m以上2500kA/m以下である。
【0030】
実施形態の磁石材料の残留磁化は、0.7T以上1.6T以下である。残留磁化が高いほどモータの小型化等に効果的である。残留磁化は、好ましくは0.75T以上1.6T以下であり、さらに好ましくは0.8Tよりも高く1.6T以下である。
【0031】
磁石材料の組成は、例えば高周波誘導結合プラズマ-発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectroscopy:ICP-AES)、走査電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(Scanning Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:SEM-EDX)、透過電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:TEM-EDX)、走査型透過電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(Scanning Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:STEM-EDX)等により測定される。各相の体積比率は、電子顕微鏡や光学顕微鏡による観察とX線回折等とを併用して総合的に判断される。
【0032】
主相の平均粒径は次のように求められる。磁石材料の断面においてSTEM-EDXを用いて特定した主相結晶粒に対し、任意の粒を選択し、選択した粒に対し、両端が別の相に接する最も長い直線Aを引く。次に、この直線Aの中点において、直線Aに垂直であり、かつ両端が別の相に接する直線Bを引く。この直線Aと直線Bの長さの平均を相の径Dとする。上記手順で1個以上の任意の相のDを求める。一つのサンプルに対して5視野で上記Dを算出し、各Dの平均を相の径(D)と定義する。磁石材料の断面としては、試料の最大面積を有する表面の実質的に中央部の断面が用いられる。
【0033】
急冷合金薄帯の平均厚さは例えば次のように求められる。10mm以上の薄帯片に対し、マイクロメータを用いて厚さを測定する。10個以上の薄帯片について厚さを測定し、最大値と最小値を除いた値の平均値を求めることにより、薄帯の平均厚さが算出される。
【0034】
磁石材料の保磁力や磁化等の磁石特性は、例えば振動試料型磁力計(Vibrating Sample Magetometer:VSM)を用いて算出される。
【0035】
次に、実施形態の磁石材料の製造方法例について説明する。まず、磁石材料に必要な所定の元素を含む合金を製造する。例えば、アーク溶解法、高周波溶解法、金型鋳造法、メカニカルアロイング法、メカニカルグラインディング法、ガスアトマイズ法、還元拡散法等を用いて合金を製造することができる。
【0036】
上記合金を溶解して急冷する。これにより、合金を非晶質化する。溶解された合金は、例えば液体急冷法(メルトスパン法)を用い冷却される。液体急冷法では、合金溶湯を高速回転するロールに射出する。ロールは単ロール型でも双ロール型でもよく、材質は主に銅等が使用される。射出する溶湯の量や、回転するロールの周速を制御することにより溶湯の冷却速度を制御することができる。合金の非晶質化の程度は組成と冷却速度により制御できる。また、上記の合金作製時にガスアトマイズ法等を用いることにより既に非晶質合金が得られている場合は改めて急冷工程を実施しなくてもよい。
【0037】
上記非晶質化した合金又は合金薄帯に対して熱処理を施す。これにより、主相を結晶化し、微結晶を有する主相を備える金属組織を形成することができる。例えば、Ar中や真空中等の不活性雰囲気下で500℃以上1000℃以下の温度で5分以上300時間以下加熱する。
【0038】
温度が低すぎる場合には結晶化や均一化が不十分となり保磁力が低下する。また、温度が高すぎる場合には主相の分解等により異相が生成され、保磁力や角型性が低下する。加熱温度は例えば520℃以上800℃以下がより好ましく、さらに好ましくは540℃以上700℃以下であり、さらに好ましくは550℃以上650℃以下である。加熱時間が短すぎる場合には結晶化や均一化が不十分となり保磁力が低下する。
【0039】
加熱時間が長すぎる場合には主相の分解等により異相が生成され、保磁力や角型性が低下する。好ましい加熱時間は15分以上150時間以下であり、さらに好ましくは30分以上120時間以下であり、さらに好ましくは1時間以上120時間以下であり、さらに好ましくは2時間以上100時間以下であり、さらに好ましくは3時間以上80時間以下である。
【0040】
加熱後には炉冷又は水中急冷、ガス急冷、オイル中急冷等の方法により結晶化した合金又は薄帯を冷却する。
【0041】
上記合金にA元素を侵入させてもよい。A元素を合金へ侵入させる工程の前に、合金を粉砕して粉末にしておくことが好ましい。A元素が窒素の場合、約0.1気圧以上100気圧以下の窒素ガスやアンモニアガス等の雰囲気中で、200℃以上700℃以下の温度で合金を1時間以上100時間以下加熱することにより、合金を窒化させ、N元素を合金に侵入させることができる。A元素が炭素の場合、約0.1気圧以上100気圧以下のC、CH、C、又はCOガスもしくはメタノールの加熱分解ガスの雰囲気中で、300℃以上900℃以下の温度範囲で合金を1時間以上100時間以下加熱することにより、合金を炭化させ、C元素を合金に侵入させることができる。A元素が水素の場合、約0.1~100気圧の水素ガスやアンモニアガス等の雰囲気中で、200~700℃の温度範囲で合金を1~100時間加熱することにより、合金を水素化させ、H元素を合金に侵入させることができる。A元素がリンの場合、合金をリン化させ、P元素を合金に侵入させることができる。
【0042】
上記工程により磁石材料が製造される。また、上記合金又は薄帯を粉砕することにより磁石粉末が製造される。さらに、上記磁石材料や磁石粉末を用いて永久磁石が製造される。磁石製造工程の一例を示す。
【0043】
磁石材料を加圧焼結することにより、焼結体を有する永久磁石を形成することができる。加圧焼結の方法としては、プレス成型機で加圧した後に、加熱して焼結する方法や、放電プラズマ焼結法を用いる方法、ホットプレスを用いる方法、熱間加工法を用いる方法等が適用できる。例えば、磁石材料をジェットミルやボールミル等の粉砕装置を用いて粉砕し、1~2T程度の磁場中で1トン程度の圧力で磁場配向プレスすることにより成型体を得る。得られた成型体をAr中や真空中等の不活性ガス雰囲気で加熱し焼結を行うことにより焼結体を作製する。焼結体に不活性雰囲気中等で適宜熱処理を加えることにより永久磁石を製造することができる。
【0044】
また、上記磁石材料を粉砕し、粉砕物をバインダで固着させて混合することによりボンド磁石を製造することができる。バインダとしては、例えば熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、低融点合金、ゴム材料等を用いることができる。成型方法としては、例えば圧縮成型法や射出成型法を用いることができる。
【0045】
ボンド磁石の磁気特性、特に残留磁化と最大磁気エネルギー積は、ボンド磁石の密度を高めることにより高めることができる。また、高密度化によりボンド磁石の空隙を減少させることにより耐食性を向上させることができる。
【0046】
高密度化されたボンド磁石は、例えば組成式3:RNb100-x-y-tにより表される磁石材料を有していてもよい。Rは希土類元素からなる群より選ばれる少なくともの一つの元素であり、MはFe及びCoからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、xは4.0<x≦11.0原子%を満足する数であり、yは0≦y≦6.5を満足する数であり、tは0≦t<12原子%を満足する数である。磁石材料のその他の説明は、上記磁石材料の説明を適宜援用できる。
【0047】
薄帯形状を有する磁石材料では、成型時に材料間に生じる摩擦や、材料自体のスプリングバック等の要因により高密度化が困難である。
【0048】
ボンド磁石の高密度化のために、圧縮成型工程において、6×10MPa以上のプレス圧力を印加する加圧ステップと、続いて加圧ステップのプレス圧力の90%以下の圧力までプレス圧力を下げる脱圧ステップと、を交互に切り替えることが有効である。加圧と脱圧とを切り替えることにより、スプリングバックによる局所的な残留応力の開放や材料の塑性変形を伴いながら、内部応力を均質化する方向でバインダや材料の流動が進行し、ボンド磁石の空隙を減少させて高密度化を実現できる。ボンド磁石の密度は、例えば6.45g/cm以上7.8g/cm以下である。ボンド磁石の密度は、より好ましくは、6.53g/cmである。
【0049】
加圧ステップの圧力は、6.0×10MPa以上3.0×10MPa以下が好ましい。6.0×10MPa未満の圧力の場合、材料及びバインダを流動させる力が不十分であるため空隙を減少させる効果が低い。3.0×10MPaを超える圧力の場合、加圧力が強すぎて、特殊な金型や装置を必要とし、生産性を低下させる。加圧ステップの圧力は、より好ましくは、8.0×10MPa以上2.5×10MPa以下であり、さらに好ましくは、10.0×10MPa以上2.0×10MPa以下である。
【0050】
脱圧ステップでは、大気圧まで圧力を開放することが好ましいが、工業的には、大気圧以上の圧力を残存させることにより、リードタイムを短縮でき、生産性を向上させることができる。脱圧ステップの圧力は、加圧ステップの圧力の90%以下が好ましい。加圧ステップの圧力の90%を超える圧力では、脱圧ステップで十分に残留応力が開放されず、材料及びバインダの流動が進行しにくい。脱圧ステップの圧力は、より好ましくは加圧ステップの圧力の60%以下であり、さらに好ましくは加圧ステップの圧力の30%以下である。脱圧ステップの圧力の下限は大気圧であり、大気圧未満、すなわち減圧状態では、別途減圧装置を必要とし、生産性を著しく低下させる。
【0051】
加圧ステップ及び脱圧ステップとの切り替えは、2回以上繰り返すことが好ましい。1回では、残留応力解放後の流動が少なく、空隙を減少させる効果が低い。切り替え回数は、より好ましくは3回以上であり、さらに好ましくは5回以上であり、さらに好ましくは10回以上である。切り替え回数の上限は、例えば20回以下が好ましい。20回を超えると、残存空隙が少なすぎるため、材料及びバインダの流動が起こらず、高密度化の効果が低い。
【0052】
ボンド磁石に用いられる磁石材料の平均長さは、5μm以上1mm以下が好ましい。5μm未満では、加圧及び脱圧による材料及びバインダの流動が起こりづらく、密度向上が困難である。1mmを超えると、ボンド磁石の表面粗さが大きくなり、寸法精度を低下させる。平均長さの下限は、例えば20μm以上がより好ましく、さらに好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上、さらに好ましくは150μm以上、さらに好ましくは200μm以上である。平均長さの上限は、例えば800μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは500μm以下である。平均長さを適切に制御することにより、加圧ステップ及び脱圧ステップの繰り返しによる密度向上効果を高めることができ、例えば6.53g/cm以上の高い密度を有するボンド磁石を実現できる。
【0053】
ボンド磁石の密度は、成型体の寸法及び重量から求められる。より寸法精度を高めるために、ボンド磁石に研削加工等を施してから測定してもよい。磁石材料は、例えば篩い分けによって、平均長さを制御できる。カッターミルやハンマーミル等の各種粉砕装置の粉砕時間やスクリーン径等の粉砕条件を調整することにより平均長さを制御してもよい。平均長さは、例えばSEM像から50個以上の粉末の長辺方向の長さを求め、その平均値により定義できる。
【0054】
圧縮成型時に杵や臼等の成型用金型に回転運動又は往復運動を加えて、プレス圧力を印加してもよい。これによりせん断力等の力が加わり、高密度化を実現できる。
【0055】
ボンド磁石のバインダは、例えばエポキシ系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂等の樹脂を含む。樹脂は、粉末状樹脂、液状樹脂、又はこれらの形状の樹脂の混合物でもよいが、特に液状樹脂を用いるとボンド磁石を高密度化させやすい。液状樹脂の粘度は、1ポアズ以上500ポアズ以下が好ましい。
【0056】
バインダの含有量は、0.5質量%以上5質量%以下が好ましい。5質量%を超えると磁気特性を著しく低下させる。0.5質量%未満では結着力が不足し、十分な強度を得られない。バインダの含有量は、好ましくは1質量%以上4質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上3質量%以下である。
【0057】
ボンド磁石は、例えばチタン系カップリング材やシリコン系カップリング材等のカップリング材を含んでいてもよい。カップリング剤は、粉末の分散性を向上させる効果を有し、磁石密度の向上に有効である。磁石材料は、脂肪酸、脂肪酸塩類、アミン類、アミン酸類等の滑剤により表面処理されることにより密度を向上できる。
【0058】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の磁石材料を具備する永久磁石は、各種モータや発電機に使用することができる。また、可変磁束モータや可変磁束発電機の固定磁石や可変磁石として使用することも可能である。第1の実施形態の永久磁石を用いることによって、各種のモータや発電機が構成される。第1の実施形態の永久磁石を可変磁束モータに適用する場合、可変磁束モータの構成やドライブシステムには、例えば特開2008-29148号公報や特開2008-43172号公報に開示されている技術を適用することができる。
【0059】
次に、上記永久磁石を具備するモータと発電機について、図面を参照して説明する。図1は永久磁石モータを示す図である。図1に示す永久磁石モータ11では、ステータ(固定子)12内にロータ(回転子)13が配置されている。ロータ13の鉄心14中には、第1の実施形態の永久磁石である永久磁石15が配置されている。第1の実施形態の永久磁石を用いることにより、各永久磁石の特性等に基づいて、永久磁石モータ11の高効率化、小型化、低コスト化等を図ることができる。また、上記永久磁石は同期リラクタンスモータのフラックスバリア部分に挿入することもできる。これにより、同期リラクタンスモータの力率を高めることができる。
【0060】
図2は可変磁束モータを示す図である。図2に示す可変磁束モータ21において、ステータ(固定子)22内にはロータ(回転子)23が配置されている。ロータ23の鉄心24中には、第1の実施形態の永久磁石が固定磁石25及び可変磁石26として配置されている。可変磁石26の磁束密度(磁束量)は可変することが可能とされている。可変磁石26はその磁化方向がQ軸方向と直交するため、Q軸電流の影響を受けず、D軸電流により磁化することができる。ロータ23には磁化巻線(図示せず)が設けられている。この磁化巻線に磁化回路から電流を流すことによって、その磁界が直接に可変磁石26に作用する構造となっている。
【0061】
第1の実施形態の永久磁石によれば、固定磁石25に好適な保磁力を得ることができる。第1の実施形態の永久磁石を可変磁石26に適用する場合には、製造条件を変更することによって、例えば保磁力を100kA/m以上500kA/m以下の範囲に制御すればよい。なお、図2に示す可変磁束モータ21においては、固定磁石25及び可変磁石26のいずれにも第1の実施形態の永久磁石を用いることができるが、いずれか一方の磁石に第1の実施形態の永久磁石を用いてもよい。可変磁束モータ21は、大きなトルクを小さい装置サイズで出力可能であるため、モータの高出力・小型化が求められるハイブリッド車や電気自動車等のモータに好適である。
【0062】
図3は発電機を示している。図3に示す発電機31は、上記永久磁石を用いたステータ(固定子)32を備えている。ステータ(固定子)32の内側に配置されたロータ(回転子)33は、発電機31の一端に設けられたタービン34とシャフト35を介して接続されている。タービン34は、例えば外部から供給される流体により回転する。なお、流体により回転するタービン34に代えて、自動車の回生エネルギー等の動的な回転を伝達することによって、シャフト35を回転させることも可能である。ステータ32とロータ33には、各種公知の構成を採用することができる。
【0063】
シャフト35はロータ33に対してタービン34とは反対側に配置された整流子(図示せず)と接触しており、ロータ33の回転により発生した起電力が発電機31の出力として相分離母線及び主変圧器(図示せず)を介して、系統電圧に昇圧されて送電される。発電機31は、通常の発電機及び可変磁束発電機のいずれであってもよい。なお、ロータ33にはタービン34からの静電気や発電に伴う軸電流による帯電が発生する。このため、発電機31はロータ33の帯電を放電させるためのブラシ36を備えている。
【0064】
以上のように、上記永久磁石を発電機に適用することにより、高効率化、小型化、低コスト化等の効果が得られる。
【0065】
上記回転電機は、例えば、鉄道交通に利用される鉄道車両(車両の一例)に搭載されてよい。図4は、回転電機101を具備する鉄道車両100の一例を示す図である。回転電機101としては、上記図1、2のモータ、図3の発電機等を用いることができる。回転電機101として上記回転電機が搭載された場合、回転電機101は、例えば、架線から供給される電力や、鉄道車両100に搭載された二次電池から供給される電力を利用することによって駆動力を出力する電動機(モータ)として利用されてもよいし、運動エネルギーを電力に変換して、鉄道車両100内の各種負荷に電力を供給する発電機(ジェネレータ)として利用されてもよい。実施形態の回転電機のような高効率な回転電機を利用することにより、省エネルギーで鉄道車両を走行させることができる。
【0066】
上記回転電機は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の自動車(車両の他の例)に搭載されてもよい。図5は、回転電機201を具備する自動車200の一例を示す図である。回転電機201としては、上記図1、2のモータ、図3の発電機等を用いることができる。回転電機201として上記回転電機が搭載された場合、回転電機201は、自動車200の駆動力を出力する電動機、又は自動車200の走行時の運動エネルギーを電力に変換する発電機として利用してもよい。また、上記回転電機は、例えば産業機器(産業用モータ)、空調機器(エアコンディショナ・給湯器コンプレッサモータ)、風力発電機、又はエレベータ(巻上機)に搭載されてもよい。
【実施例
【0067】
(実施例1-4)
原料を適量秤量し、アーク溶解法を用いて合金を作製した。次に、合金を溶解し、得られた溶湯を単ロール法により急冷し、急冷合金薄帯を作製した。上記合金薄帯をAr雰囲気下において650℃の温度で4時間加熱し、ガス急冷した。磁石材料の組成はICP-AESを用いて評価した。また、VSMを用いて永久磁石の保磁力を評価した。磁石材料の組成、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。
【0068】
(実施例5-9)
原料を適量秤量し、アーク溶解法を用いて合金を作製した。次に、合金を溶解し、得られた溶湯を単ロール法により急冷し、急冷合金薄帯を作製した。上記合金薄帯をAr雰囲気下において630℃の温度で12時間加熱し、ガス急冷した。磁石材料の組成はICP-AESを用いて評価した。また、VSMを用いて永久磁石の保磁力及び残留磁化を評価した。磁石材料の組成、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。
【0069】
(実施例10-16)
原料を適量秤量し、アーク溶解法を用いて合金を作製した。次に、合金を溶解し、得られた溶湯を単ロール法により急冷し、急冷合金薄帯を作製した。上記合金薄帯をAr雰囲気下において600℃の温度で30時間加熱し、ガス急冷した。磁石材料の組成はICP-AESを用いて評価した。また、VSMを用いて永久磁石の保磁力及び残留磁化を評価した。磁石材料の組成、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。
【0070】
(比較例1-3)
原料を適量秤量し、アーク溶解法を用いて合金を作製した。次に、合金を溶解し、得られた溶湯を単ロール法により急冷し、急冷合金薄帯を作製した。上記合金薄帯をAr雰囲気下において640℃の温度で1時間加熱し、ガス急冷した。磁石材料の組成はICP-AESを用いて評価した。また、VSMを用いて永久磁石の保磁力及び残留磁化を評価した。磁石材料の組成、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。磁石材料の組成、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示すように、実施例1-16の磁石材料は、組成式1又は組成式2により表され、z=(100-x-y-t)/(x+y)により定義されるzが7.5≦z≦12を満足する数である。また、実施例1-16の磁石材料は、TnMn12型結晶相及びTbCu型結晶相からなる群より選ばれる少なくとも一つの結晶相を有する主相を具備する。さらに、実施例1-16の磁石材料は、固有保磁力が610kA/m以上であり、残留磁化は0.80Tを超える。
【0073】
(実施例17-19)
実施例10-16と同様の方法で磁石材料を作製したのち、平均長さが200μm以上500μm以下となるように磁石材料を粉砕した。粉砕粉、エポキシ系樹脂、チタン系カップリング剤を、それぞれ97.0質量%、2.5質量%、0.5質量%となるよう秤量し、アセトンを適量加えて混合した。その後、アセトンを揮発させて混合粉を作製した。得られた混合粉を金型に充填した後に、10.0×10MPaの圧力を印加して充填物を加圧する加圧ステップと、その後大気圧まで脱圧する脱圧ステップと、を交互に切り替えて5回繰り返し、成型体を作製した。得られた成型体を130℃の温度で1時間熱処理してボンド磁石を作製し、密度及び磁気特性を評価した。磁石材料の組成、ボンド磁石の密度、残留磁化、及び最大磁気エネルギー積の評価結果を表2に示す。残留磁化及び最大磁気エネルギー積は、B-Hトレーサーを用いて測定した。
【0074】
(実施例20、21)
実施例10-16と同様の方法で磁石材料を作製し、平均長さが100μm以上200μm以下となるように磁石材料を粉砕した。粉砕粉、エポキシ系樹脂、チタン系カップリング剤を、それぞれ97.0質量%、2.5質量%、0.5質量%となるよう秤量し、アセトンを適量加えて混合した。その後、アセトンを揮発させて混合粉を作製した。得られた混合粉を金型に充填した後に、10.0×10MPaの圧力を印加して充填物を加圧する加圧ステップと、その後大気圧まで脱圧する脱圧ステップと、を交互に切り替えて5回繰り返し、成型体を作製した。得られた成型体を130℃の温度で1時間熱処理してボンド磁石を作製し、密度及び磁気特性を評価した。磁石材料の組成、ボンド磁石の密度、残留磁化、及び最大磁気エネルギー積の評価結果を表2に示す。残留磁化及び最大磁気エネルギー積は、B-Hトレーサーを用いて測定した。
【0075】
(比較例4)
実施例10-16と同様の方法で磁石材料を作製し、平均長さが200μm以上500μm以下となるように磁石材料を粉砕した。粉砕粉、エポキシ系樹脂、チタン系カップリング剤を、それぞれ97.0質量%、2.5質量%、0.5質量%となるよう秤量し、アセトンを適量加えて混合した。その後、アセトンを揮発させて混合粉を作製した。得られた混合粉を金型に充填した後に、10.0×10MPaの圧力を印加して充填物を加圧する加圧ステップと、その後大気圧まで脱圧する脱圧ステップと、を1回ずつ行い、成型体を作製した。得られた成型体を130℃の温度で1時間熱処理してボンド磁石を作製し、密度及び磁気特性を評価した。磁石材料の組成、ボンド磁石の密度、残留磁化、及び最大磁気エネルギー積の評価結果を表2に示す。残留磁化及び最大磁気エネルギー積は、B-Hトレーサーを用いて測定した。
【0076】
(比較例5)
実施例10-16と同様の方法で磁石材料を作製し、平均長さが100μm以上200μm以下となるように磁石材料を粉砕した。粉砕粉、エポキシ系樹脂、チタン系カップリング剤を、それぞれ97.0質量%、2.5質量%、0.5質量%となるよう秤量し、アセトンを適量加えて混合した。その後、アセトンを揮発させて混合粉を作製した。得られた混合粉を金型に充填した後に、10.0×10MPaの圧力を印加して充填物を加圧する加圧ステップと、その後大気圧まで脱圧する脱圧ステップと、を1回ずつ行い、成型体を作製した。得られた成型体を130℃の温度で1時間熱処理してボンド磁石を作製し、密度及び磁気特性を評価した。磁石材料の組成、ボンド磁石の密度、残留磁化、及び最大磁気エネルギー積の評価結果を表2に示す。残留磁化及び最大磁気エネルギー積は、B-Hトレーサーを用いて測定した。
【0077】
【表2】
【0078】
表2に示すように、実施例17-21のボンド磁石の6.45g/cm以上の高い密度を有する。このことから、ボンド磁石の製造条件を調整することによりボンド磁石の密度を向上できることがわかる。
【0079】
なお、上記実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
11…永久磁石モータ、13…ロータ、14…鉄心、15…永久磁石、21…可変磁束モータ、23…ロータ、24…鉄心、25…固定磁石、26…可変磁石、31…発電機、32…ステータ、33…ロータ、34…タービン、35…シャフト、36…ブラシ、100…鉄道車両、101…回転電機、200…自動車、201…回転電機。
図1
図2
図3
図4
図5