(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】スポット溶接設備
(51)【国際特許分類】
B23K 11/24 20060101AFI20241216BHJP
B23K 11/11 20060101ALI20241216BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B23K11/24 338
B23K11/11 593A
B23K11/24 340
B23K31/00 K
(21)【出願番号】P 2023105840
(22)【出願日】2023-06-28
【審査請求日】2024-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】591214527
【氏名又は名称】株式会社ジーテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】久田 桂司
(72)【発明者】
【氏名】星野 良和
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-183832(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110726773(CN,A)
【文献】特開2013-022605(JP,A)
【文献】特開平11-090641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/24
B23K 11/11
B23K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のワークに複数の打点からなるスポット溶接を施す溶接装置と、
この溶接装置から離れた位置に配置され、前記打点における溶接部が合格基準を満たしているか否を検査する検査子を有する検査装置と、前記ワークを前記溶接装置から前記検査装置を経由して集積場まで運搬する運搬装置とからなるスポット溶接設備であって、
前記複数の打点を第1グループ、第2グループを含むN個のグループに区分けしたときに、
前記第1グループの打点には予め選択した1個の第1選択打点が含まれ、前記第2グループの打点には予め選択した1個の第2選択打点が含まれるごとくに、前記N個のグループの各々には予め選択した1個の選択打点が含まれており、
前
記1個の
第1選択打点が前記検査子に対面するように
前記ワークを、運搬し、検
査し、次
に、前
記1個の
第2選択打点が前記検査子に対面するように
前記ワークを、運搬し、検
査する、ことを
N番目の第N選択打点ま
で繰り返し、
検査後に前記集積場まで運搬するように、制御する制御部を備えていることを特徴とするスポット溶接設備。
【請求項2】
請求項1記載のスポット溶接設備であって、
前記スポット溶接設備では、前記第1グループの溶接をするのに要する時間を第1所要時間、前記第Nグループの溶接をするのに要する時間を第N所要時間と定め、前記第1所要時間~前記第N所要時間のうちで、最も長い時間を最長所要時間と定め、前記最長所要時間を1打点当たりの検査時間で除した整数値を検査可能な打点数の最大とすることを特徴とするスポット溶接設備。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記溶接装置は、前記第1グループにスポット溶接を施す第1スポット溶接機及び前記第2グループにスポット溶接を施す第2スポット溶接機を含むN基のスポット溶接機を備え、
前記第1スポット溶接機で施した前記第1グループの打点には予め選択した1個の第1選択打点が含まれ、前記第2スポット溶接機で施した前記第2グループの打点には予め選択した1個の第2選択打点が含まれるごとくに、前記N個のグループの各々には予め選択した1個の選択打点が含まれていることを特徴とするスポット溶接設備。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記ワークは、第1ワークと第2ワークとからなり、
前記第1ワークは、第1ベース部材と、この第1ベース部材に付設される第1メイン付設部材及び第1サブ付設部材とからなり、
前記第2ワークは、第2ベース部材と、この第2ベース部材に付設される第2メイン付設部材及び第2サブ付設部材とからなることを特徴とするスポット溶接設備。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記検査装置において、回転軸を有するワーク載せ台に前記ワークを載せて傾ける、又は多軸ロボットに前記ワークを把持させて傾けることで、
前記検査子に前記ワークの検査部位が直交状態で対面しやすくしたことを特徴とするスポット溶接設備。
【請求項6】
請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記検査装置において、前記ワークを載せるワーク載せ台又は前記ワークを把持する多軸ロボットを備え、
前記ワーク載せ台又は前記多軸ロボットに検査部位を下方から受ける当て面を有することを特徴とするスポット溶接設備。
【請求項7】
請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記運搬装置で、前記第1選択打点と前記第2選択打点とがこの順に並ぶようにして、前記ワークを把持し、運搬することを特徴とするスポット溶接設備。
【請求項8】
請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記
検査子は、磁気センサヘッド又は超音波プローブであって、1打点当たりの検査時間が1打点当たりの溶接時間より長く設定されていることを特徴とするスポット溶接設備。
【請求項9】
請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記ワークは、フランジを備えており、
前記
運搬装置は、前記検査子に前記フランジが直交状態に対面するように制御されることを特徴とするスポット溶接設備。
【請求項10】
請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記
検査装置は、多軸ロボットと、この多軸ロボットのアームに設けた前記検査子と、前記ワークを載せるワーク載せ台とからなり、
前記ワーク載せ台に載っている前記ワークに対して、前記検査子を前記多軸ロボットで三次元的に移動しながら非破壊検査を実施することを特徴とするスポット溶接設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接部の検査装置を含むスポット溶接設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体などの溶接ラインに、スポット溶接に係る溶接部の検査装置が組み込まれ、この検査装置で溶接部の溶接品質を検査することが行われてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
スポット溶接による打点の数は、小型のワークでは数十、中型のワークでは数百、大型のワークでは千を超えることが知られている。
スポット溶接による打点の全てを検査装置で検査することは、理想であるが検査に要する時間(検査時間)が長くなる。
【0004】
1基の検査装置で全打点を検査するとき、検査時間がtであるとする。
検査装置の台数をn(nは2以上)に増やすと、検査時間はt/nとなり、検査時間を短縮することができる。
しかし、検査装置の台数を増やすと、溶接ラインの設備コストが嵩むと共に、溶接ラインの床面積が大きくなる。
【0005】
近年、コストダウンが求められる中、設備コストが圧縮できると共に設備面積が小さなスポット溶接設備が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、設備コストが圧縮できると共に設備面積が小さなスポット溶接設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者らはスポット溶接を施す溶接装置を詳細に検証した。検証の結果、以下に示す事項を知見した。
(1)スポット溶接における溶接不良の発生要因は、多岐にわたるが、それらのうちで溶接チップの状態に起因するものが主であった。
(2)溶接チップの状態に起因する溶接不良は、散発的に発生するのではなく、連続的に発生する。この発生の様子の一例を、
図1で説明する。
【0009】
図1は、横軸がスポット溶接されるワークの数で縦軸が不良率を示すグラフである。
図1に示すように、原点からa点までの間は、不良率が0である。a点以降に溶接不良が発生し始め、b点でワークの全数に溶接不良が認められた。
【0010】
溶接チップは、スポット溶接の際にワークに所定の力で押し付けられ、且つ高温になる。そのため、溶接チップは、不可避的に摩耗し形が崩れる。
溶接チップは、一定の回数だけ使用されると、ドレッサと称する研削機で形を整えられるが、この定期的な研削が実施される前に、溶接チップに異常があって、
図1の曲線のようになることがある。
溶接チップの異常は、微細なクラックが存在している場合や、不純物が混在している場合などに発生する。
【0011】
図1において、原点からa点までは、全数検査をしたとしても溶接不良は検出されない。
a点からb点までにおいて、全数検査であればa点の直後のc点で溶接不良の検出が可能であり、抜き取り検査であれば、c点より後のd点で溶接不良の検出が可能である。
【0012】
d点で不良を検出した場合には、d点より前に溶接された製品にさかのぼって検査することで溶接不良品が流出することはなくなる。
以上の知見から、本発明者らは抜き取り検査をベースとする発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、請求項1に係る発明は、金属製のワークに複数の打点からなるスポット溶接を施す溶接装置と、この溶接装置から離れた位置に配置され、前記打点における溶接部が合格基準を満たしているか否を検査する検査子を有する検査装置と、前記ワークを前記溶接装置から前記検査装置を経由して集積場まで運搬する運搬装置とからなるスポット溶接設備であって、
前記複数の打点を第1グループ、第2グループを含むN個のグループに区分けしたときに、
前記第1グループの打点には予め選択した1個の第1選択打点が含まれ、前記第2グループの打点には予め選択した1個の第2選択打点が含まれるごとくに、前記N個のグループの各々には予め選択した1個の選択打点が含まれており、
前記1個の第1選択打点が前記検査子に対面するように前記ワークを、運搬し、検査し、次に、前記1個の第2選択打点が前記検査子に対面するように前記ワークを、運搬し、検査する、ことをN番目の第N選択打点まで繰り返し、
検査後に前記集積場まで運搬するように、制御する制御部を備えていることを特徴とする。
【0014】
溶接をするのに要する時間とは、作業者がワークを治具などにセットしてから溶接完了し、作業者が次のワークを治具などにセットするまでの時間を言う。又は、溶接をするのに要する時間とは、運搬装置がワークを把持してから溶接完了し、運搬装置が次のワークを把持するまでの時間を言う(以下、同じ)。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のスポット溶接設備であって、
前記スポット溶接設備では、前記第1グループの溶接をするのに要する時間を第1所要時間、前記第Nグループの溶接をするのに要する時間を第N所要時間と定め、前記第1所要時間~前記第N所要時間のうちで、最も長い時間を最長所要時間と定め、前記最長所要時間を1打点当たりの検査時間で除した整数値を検査可能な打点数の最大とすることを特徴とする。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記溶接装置は、前記第1グループにスポット溶接を施す第1スポット溶接機及び前記第2グループにスポット溶接を施す第2スポット溶接機を含むN基のスポット溶接機を備え、
前記第1スポット溶接機で施した前記第1グループの打点には予め選択した1個の第1選択打点が含まれ、前記第2スポット溶接機で施した前記第2グループの打点には予め選択した1個の第2選択打点が含まれるごとくに、前記N個のグループの各々には予め選択した1個の選択打点が含まれていることを特徴とする。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記ワークは、第1ワークと第2ワークとからなり、
前記第1ワークは、第1ベース部材と、この第1ベース部材に付設される第1メイン付設部材及び第1サブ付設部材とからなり、
前記第2ワークは、第2ベース部材と、この第2ベース部材に付設される第2メイン付設部材及び第2サブ付設部材とからなることを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記検査装置において、回転軸を有するワーク載せ台に前記ワークを載せて傾ける、又は多軸ロボットに前記ワークを把持させて傾けることで、
前記検査子に前記ワークの検査部位が直交状態で対面しやすくしたことを特徴とする。
【0019】
請求項6に係る発明は、請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記検査装置において、前記ワークを載せるワーク載せ台又は前記ワークを把持する多軸ロボットを備え、
前記ワーク載せ台又は前記多軸ロボットに検査部位を下方から受ける当て面を有することを特徴とする。
【0020】
請求項7に係る発明は、請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記運搬装置で、前記第1選択打点と前記第2選択打点とがこの順に並ぶようにして、前記ワークを把持し、運搬することを特徴とする。
【0021】
請求項8に係る発明は、請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記検査子は、磁気センサヘッド又は超音波プローブであって、1打点当たりの検査時間が1打点当たりの溶接時間より長く設定されていることを特徴とする。
【0022】
請求項9に係る発明は、請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記ワークは、フランジを備えており、
前記運搬装置は、前記検査子に前記フランジが直交状態に対面するように制御されることを特徴とする。
【0023】
請求項10に係る発明は、請求項1又は請求項2記載のスポット溶接設備であって、
前記検査装置は、多軸ロボットと、この多軸ロボットのアームに設けた前記検査子と、前記ワークを載せるワーク載せ台とからなり、
前記ワーク載せ台に載っている前記ワークに対して、前記検査子を前記多軸ロボットで三次元的に移動しながら非破壊検査を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る発明では、ワークにおける複数の打点をN個のグループにグループ分けする。1個のグループにおける複数の打点のうち、1つの打点を選択打点と定める。運搬装置は選択打点を検査子に対面させ、検査後に集積場へ運搬する。
【0025】
すなわち、全てのワークに対して、必ず1点は検査されるため、検査漏れの心配はない。
仮に全数検査を行うとすると複数基の検査装置を設置する必要があるが、本発明によれば複数基のスポット溶接機に対して検査装置は1基で足りる。
検査装置を複数基並べる従来技術に比較して、本発明では検査装置が1基で足りるため、設備コストが圧縮できると共に設備面積が小さくなる。
すなわち、本発明により、設備コストが圧縮できると共に設備面積が小さなスポット溶接設備が提供される。
【0026】
ところで、溶接チップの状態に起因する溶接不良は、散発的に発生するのではなく、連続的に発生するものである。そのため、請求項1により、スポット溶接機で溶接された打点のうち少なくとも一つは検査打点(選択打点)となるよう制御することで溶接不良品の流出を防止できる。
【0028】
さらには、請求項1に係る発明では、ワークにおける複数の打点をN個のグループにグループ分けする。1個のグループにおける複数の打点のうち、1つの打点を選択打点と定める。運搬装置は選択打点を検査子に対面させる。
【0029】
すなわち、全てのワークに対して、必ず1点以上が検査されるため、検査漏れの心配はない。
仮に全数検査を行うとすると複数基の検査装置を設置する必要があるが、本発明によれば複数基のスポット溶接機に対して検査装置は1基で足りる。
検査装置を複数基並べる従来技術に比較して、本発明では検査装置が1基で足りるため、設備コストが圧縮できると共に設備面積が小さくなる。
すなわち、本発明により、設備コストが圧縮できると共に設備面積が小さなスポット溶接設備が提供される。
【0030】
請求項2により、運搬装置は、最長所要時間に収まるようにワークを検査装置に運搬する。検査装置は、最長所要時間に収まる範囲で選択打点を含む複数の打点を検査する。
すなわち、検査装置が最長所要時間に収まる範囲で選択打点を含む複数の打点を検査するため、1個の打点だけを検査することに比べて、複数の打点を検査することで、検査の精度向上及び信頼性向上が図れる。
【0031】
溶接チップの状態に起因する溶接不良は、散発的に発生するのではなく、連続的に発生するものである。そのため、請求項3により、スポット溶接設備内の各スポット溶接機で溶接された打点のうち少なくとも一つは検査打点となるよう制御することで溶接不良品の流出を防止できる。
【0032】
請求項4に係る発明では、ワークは、第1ワークと第2ワークとからなり、第1ワークは、第1ベース部材と第1メイン付設部材と第1サブ付設部材とからなり、第2ワークは、第2ベース部材と第2メイン付設部材と第2サブ付設部材とからなる。
十分に複雑な構造のワークに本発明の抜き取り検査が適用できる。第1ワークが車両用左側部品(例えば左クロスメンバー)で第2ワークが車両用右側部品(例えば右クロスメンバー)であれば、左右の車両用部品をセットで、溶接し、運搬し、検査することができ、生産性を高めることができる。
【0033】
請求項5に係る発明では、ワーク載せ台にワークを載せて傾ける、又は多軸ロボットにワークを把持させて傾けるため、検査子にワークの検査部位が直交状態で対面しやすくなり、直交させることで検査精度を高めることができる。
【0034】
請求項6に係る発明では、ワーク載せ台又は多軸ロボットに検査部位を下方から受ける当て面を備えるので、ワークの撓みが防止され、高精度の検査ができる。
【0035】
請求項7に係る発明では、運搬装置で、第1選択打点と第2選択打点とがこの順に並ぶようにして、ワークを運搬する。
【0036】
請求項8に係る発明では、検査時間が長いため、検査前にジェルを噴霧することができる。
【0037】
請求項9に係る発明では、検査子をフランジに直交状態で当てることで、溶接部の非破壊検査を行うことができる。
【0038】
請求項10に係る発明では、ワークに対する三次元的な検査が実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】スポット溶接におけるワークの数と不良率の相関を説明するグラフである。
【
図2】(a)はワークの分解斜視図、(b)はワークの平面図、(c)は打点の配置を示す図、(d)は付属部材の分解図、(e)は小組された付属部材の斜視図である。
【
図3】(a)は別のワークの分解斜視図、(b)は別のワークの平面図、(c)は打点の配置を示す図である。
【
図4】(a)は第1ワークの分解斜視図、(b)は第1ワークに施した打点の配置を示す図、(c)は第2ワークの分解斜視図、(d)は第2ワークに施した打点の配置を示す図、(e)~(l)は付属部材の分解図及び小組された付属部材を示す斜視図である。
【
図5】(a)は溶接装置の側面図、(b)は溶接装置の平面図、(c)は溶接装置の作用図である。
【
図6】(a)は検査装置の側面図、(b)は(a)のb部拡大図である。
【
図8】(a)は運搬装置の平面図、(b)は運搬装置の側面図、(c)は運搬装置の要部の平面図である。
【
図9】本発明に係るスポット溶接設備の平面図である。
【
図11】(a)~(d)は運搬装置の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0041】
[金属製のワーク]
図2(a)に示すように、金属製のワーク11Aは、例えば、ベース部材12Aと、このベース部材12Aに付設される付設部材13Aとからなる。付設部材13Aはフランジ19を備えている。
【0042】
付設部材13Aは、例えば、
図2(d)に示すように、第1部材13cに第2部材13dを載せ、
図2(e)にて、第1部材13cに第2部材13dをスポット溶接などにより接合し、一体化したものであってもよい。
図2(a)~
図2(c)では、付設部材13Aは簡略化して図示する。
【0043】
図2(b)に示すように、付設部材13Aは、例えば、ベース部材12Aの一端に配置される。
【0044】
金属は、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金が好適であり、スポット溶接が可能な材料であればよく、種類は問わない。
また、ベース部材12Aは、長方形の平板としたが、形状は任意である。
また、付設部材13Aは、金属の薄板をプレス成形してなるプレス品が好適であるが、これらの形状は任意である。
この段落の説明は、後に述べるワーク11B、第1ワーク11及び第2ワーク15にも適用する。
【0045】
[グループ分け]
図2(c)に示すように、付設部材13Aは、後述するスポット溶接機により、ベース部材12Aに溶接される。複数の打点を、第1グループG1~第4グループG4の4個のグループに区分する。
そして、第1グループG1における複数の打点のうち、1個を選択して第1選択打点61と呼ぶ。同様に、第2グループG2における複数の打点のうち、1個を選択して第2選択打点62と呼び、第3グループG3における複数の打点のうち、1個を選択して第3選択打点63と呼び、第4グループG4における複数の打点のうち、1個を選択して第4選択打点64と呼ぶ。
【0046】
なお、グループ分けするグループの数は「4」が好適であるが、2、3又は5以上であっても差し支えない。よって、一般化する場合には、グループ分けするグループの数は「N」(Nは2以上の整数)とする。
【0047】
すなわち、第1グループG1の複数の打点には予め選択した1個の第1選択打点61が含まれる。同様に、第2グループG2の複数の打点には予め選択した1個の第2選択打点62が含まれるごとくに、N個のグループの各々には予め選択した1個の選択打点が含まれている。
この段落の説明も、後に述べるワーク11B、第1ワーク11及び第2ワーク15に適用する。
【0048】
[別のワーク]
ワーク11Aより、複雑な構造のワーク11Bを、
図3に基づいて説明する。なお、詳しい説明は省略するが、メイン付設部材13B及びサブ付設部材14Bは、第1部材(
図2、(d)、(e)参照)に第2部材(
図2、(d)、(e)参照)を接合し一体化したものであってもよい。
【0049】
図3(a)に示すように、ワーク11Bは、例えば、ベース部材12Bと、このベース部材12Bに付設されるメイン付設部材13B及びサブ付設部材14Bとからなる。メイン付設部材13B及びサブ付設部材14Bはフランジ19を備えている。
図3(b)に示すように、メイン付設部材13Bは、例えば、ベース部材12Bの一端に配置され、サブ付設部材14Bは、例えば、ベース部材12Bの他端に配置される。
【0050】
図3(c)に示すように、メイン付設部材13B及びサブ付設部材14Bは、後述するスポット溶接機により、ベース部材12Bに溶接される。複数の打点を、第1グループG1~第4グループG4の4個のグループに区分する。
そして、第1グループG1における複数の打点のうち、1個を選択して第1選択打点61と呼ぶ。同様に、第2グループG2における複数の打点のうち、1個を選択して第2選択打点62と呼び、第3グループG3における複数の打点のうち、1個を選択して第3選択打点63と呼び、第4グループG4における複数の打点のうち、1個を選択して第4選択打点64と呼ぶ。
【0051】
[さらに別のワーク]
ワーク11Bより、複雑な構造のワークを、
図4(a)~(l)に基づいて説明する。
図4(a)~(d)に示すように、ワークは、第1ワーク11と第2ワーク15とからなる。
【0052】
[第1ワーク]
第1ワーク11は、例えば、車体部品の一種であって、車体中心より左に配置され左シートを支える左クロスメンバーである。この左クロスメンバーは2個のシートブラケットを有する。以下の実施例では、2個のシートブラケットの一方を第1メイン付設部材と呼び、他方を第1サブ付設部材と呼ぶことで、一般化する。
加えて、左クロスメンバーを模式化した上で、
図4(a)及び
図4(b)に示す。
【0053】
図4(a)に示すように、金属製の第1ワーク11は、第1ベース部材12と、この第1ベース部材12に付設される第1メイン付設部材13と、第1ベース部材12に付設される第1サブ付設部材14とを備えている。ただし、第1ワーク11にその他の付設部材を付設することは差し支えない。第1メイン付設部材13及び第1サブ付設部材14は、下端にフランジ19を備えている。
【0054】
第1メイン付設部材13は、例えば、
図4(e)に示すように、第1部材13cに第2部材13dを載せ、
図4(f)にて、第1部材13cに第2部材13dをスポット溶接などにより接合し、一体化したものであってもよい。
第1サブ付設部材14は、例えば、
図4(g)に示すように、第1部材14cに第2部材14dを載せ、
図4(h)にて、第1部材14cに第2部材14dをスポット溶接などにより接合し、一体化したものであってもよい。
図4(a)、(b)では、第1メイン付設部材13及び第1サブ付設部材14は簡略化して図示する。
【0055】
図4(b)に示すように、第1メイン付設部材13は第1ベース部材12の一端に配置され、第1サブ付設部材14は第1ベース部材12の他端に配置される。ただし、第1メイン付設部材13と第1サブ付設部材14との配置位置を変更することは差し支えない。
【0056】
第1メイン付設部材13及び第1サブ付設部材14は、後述するスポット溶接機により、第1ベース部材12に溶接される。複数の打点を、第1グループG1と第2グループG2の2個のグループに区分する。
そして、第1グループG1における複数の打点のうち、1個を選択して第1選択打点61と呼ぶ。同様に、第2グループG2における複数の打点のうち、1個を選択して第2選択打点62と呼ぶ。
【0057】
[第2ワーク]
第2ワーク15は、例えば、車体部品の一種であって、車体中心より右に配置され右シートを支える右クロスメンバーである。この右クロスメンバーは2個のシートブラケットを有する。一方のシートブラケットを第2メイン付設部材と呼び、他方のシートブラケットを第2サブ付設部材と呼ぶことで、一般化する。
加えて、左クロスメンバーを模式化した上で、
図4(c)及び
図4(d)に示す。
【0058】
図4(c)に示すように、金属製の第2ワーク15は、第2ベース部材16と、この第2ベース部材16に付設される第2メイン付設部材17と、第2ベース部材16に付設される第2サブ付設部材18とを備えている。ただし、第2ワーク15にその他の付設部材を付設することは差し支えない。第2メイン付設部材17及び第2サブ付設部材18は、下端にフランジ19を備えている。
【0059】
第2サブ付設部材18は、例えば、
図4(i)に示すように、第1部材18cに第2部材18dを載せ、
図4(j)にて、第1部材18cに第2部材18dをスポット溶接などにより接合し、一体化したものであってもよい。
第2メイン付設部材17は、例えば、
図4(k)に示すように、第1部材17cに第2部材17dを載せ、
図4(l)にて、第1部材17cに第2部材17dをスポット溶接などにより接合し、一体化したものであってもよい。
図4(c)、(d)では、第2メイン付設部材17及び第2サブ付設部材18は簡略化して図示する。
【0060】
図4(d)に示すように、第2メイン付設部材17は第2ベース部材16の一端に配置され、第2サブ付設部材18は第2ベース部材16の他端に配置される。ただし、第2メイン付設部材17と第2サブ付設部材18との配置位置を変更することは差し支えない。
【0061】
第2メイン付設部材17及び第2サブ付設部材18は、後述するスポット溶接機により、第2ベース部材16に溶接される。複数の打点を、第3グループG3と第4グループG4の2個のグループに区分する。
そして、第3グループG3における複数の打点のうち、1個を選択して第1選択打点63と呼ぶ。同様に、第4グループG4における複数の打点のうち、1個を選択して第4選択打点64と呼ぶ。
【0062】
図2、
図3及び
図4にて、3つの形態のワークを説明した。本発明は以上の3つの形態の何れにも適用される。
以下、3つの形態のうち、最も複雑な形態である
図4に示すワーク(第1ワーク11及び第2ワーク15からなる。)について、詳細な説明を行う。
【0063】
[スポット溶接機]
図5(a)に示すように、第1スポット溶接機22は、例えば、多軸ロボット23と、この多軸ロボット23のアーム24に取付けられたC形フレーム25と、このC形フレーム25に取付けられた下溶接チップ26及び上溶接チップ27とからなる。
【0064】
下溶接チップ26と上溶接チップ27の一方が静止し、他方が一方へ進退する。
第2スポット溶接機31、第3スポット溶接機32及び第4スポット溶接機33は、第1スポット溶接機22と同構造又は類似した構造であるため、符号を共用し、詳細な説明は省略する。
【0065】
図5(b)は、第1スポット溶接機22、第2スポット溶接機31、第3スポット溶接機32及び第4スポット溶接機33の平面図であり、
図5(a)の符号を流用し、詳細な説明は省略する。
【0066】
図5(c)に示すように、例えば、第1ベース部材12に第1メイン付設部材13を載せ、第1メイン付設部材13のフランジ19に上溶接チップ27を当て、第1ベース部材12の下面に下溶接チップ26を当て、下溶接チップ26を上溶接チップ27に接近させるようにして、第1ベース部材12にフランジ19を押し付ける。次に、下溶接チップ26と上溶接チップ27に通電する。通電によりジュール熱が発生し、金属が部分的に溶融する。通電を停止すると溶融部が凝固し溶接部34となる。この溶接部34はナゲットとも呼ばれる。
【0067】
溶接をするのに要する時間は、1打点当たり2~3秒である。
【0068】
[スポット溶接機の基数]
スポット溶接機の基数は、グループの数と同じであればよい。グループの数が「N」であるときには、スポット溶接機の基数は「N基」とする。なお、スポット溶接機の基数は、Nを上回っていなければよく、Nを下回ることは差し支えない。
【0069】
[検査装置]
図6(a)に示すように、検査装置40は、例えば、ベース41と、このベース41から立てたL字スタンド42と、このL字スタンド42の先端に取付けた検査子43とからなる。この例では検査子43は下向きとしたが、上向き、横向きであってもよい。
検査子43は、磁気センサヘッド又は超音波プローブが好適である。
【0070】
図6(b)に示す検査子43が磁気センサヘッドである場合、磁気センサヘッドは励磁コイルを内蔵する。励磁コイルで磁束を発生する。磁束の変化により、溶接部34の不具合が認識できる。
検査時間は、1打点当たり6秒である。
【0071】
図6(b)に示す検査子43が超音波プローブの場合、超音波プローブは超音波発振器を内蔵する。超音波発振器は超音波を発振する。超音波はフランジ19を通り、溶接部34に当たって反射する。反射波により、溶接部34の形状などが認識できる。
検査前にジェルを噴霧するため、検査時間は1打点当たり10秒~12秒である。
【0072】
なお、検査子43は、フランジ19に直交状態で当てることを原則とするが、若干の隙間をおいてもよい。
すなわち、
図6(b)に示すように、検査子43をフランジ19に直交状態で当てる又は接近させることで、溶接部34の非破壊検査を行う。なお、後述の運搬装置50が検査子43にフランジ19が直交状態に対面するように制御される。
【0073】
[別の検査装置]
図7に示すように、検査装置40は、例えば、多軸ロボット45と、この多軸ロボット45のアーム46に設けた検査子43と、第1ワーク11(又は第2ワーク15)を載せるワーク載せ台47とからなる。
ワーク載せ台47に載っている第1ワーク11(又は第2ワーク15)に対して、検査子43を多軸ロボット45で三次元的に移動しながら非破壊検査を実施する。ワークのワーク載せ台47へのセット、および搬出は運搬装置50が行う。
【0074】
好ましくは、ワーク載せ台47は回転軸48により、回転軸48回りに回転可能にする。検査子43がフランジ19に直交状態で当てやすくなるように、第1ワーク11(又は第2ワーク15)を傾けることができる。
フランジ19に検査子43を、直交状態で当てるようにすることが、検査精度を上げる上で必須となるが、回転軸48を採用することで、多軸ロボット45の負担を軽くすることができると共に、検査精度を容易に高めることができ、加えて、検査の迅速化も図れる。
【0075】
好ましくは、ワーク載せ台47に、検査部位(検査子43で押圧される部位)を下から受ける当て面49を有する。当て面49で受けるため、検査子43で強く押しても、ワーク(例えば、第1ワーク11)の撓み変形が防止され、検査精度が高まる。
【0076】
[運搬装置]
図8(a)に示すように、運搬装置50は、例えば、多軸ロボット51と、この多軸ロボット51のアーム52に取付けたコ字フレーム53と、このコ字フレーム53の先端に取付けたクランプパー54とからなる。
【0077】
図8(b)に示すように、クランプパー54は、上爪55と下爪56を有し、上爪55と下爪56とでワークを挟む。多軸ロボット51の可動範囲であればワークを運搬することができる。
【0078】
なお、
図2に示すワーク11Aや
図3に示すワーク11Bに対しては、コ字フレーム53を省いて、アーム52に直接的にクランパー54(上爪55、下爪56を含む。)を取付けてもよい。勿論、コ字フレーム53を用いて、
図2に示すワーク11Aや
図3に示すワーク11Bを把持させることは差し支えない。
【0079】
また、好ましくは、
図8(c)に示すように、クランパー54からサブアーム57を延ばし、このサブアーム57の先端に当て面49を設けてもよい。当て面49で受けるため、検査子43で強く押しても、ワーク(例えば、第1ワーク11)の撓み変形が防止され、検査精度が高まる。
サブアーム57はクランパー54の他、コ字フレーム53やアーム52から延ばしてもよい。すなわち、多軸ロボット51に検査部位を下から受ける当て面49を有するようにすることで、ワークの撓み変形が防止され、検査精度が高まる。
【0080】
さらに、好ましくは、
図8(c)に示す第1ワーク11を把持するときに、第1ワーク11の重心に
図8(b)に示す上爪55及び下爪56を位置決めするように、運搬装置50を制御する。
すなわち、運搬装置50は、ワーク(例えば第1ワーク11)の重心を支持する。結果、ワークの垂れ下がりが防止され、高精度の検出が可能となる。
【0081】
[スポット溶接設備]
以上に述べたスポット溶接機、検査装置、運搬装置を、好ましく配置することで、スポット溶接設備20が構成される。
図9にスポット溶接設備20の好適な一例を示す。ただし、スポット溶接設備20のレイアウトは
図9に限定されない。
【0082】
図9に示すように、スポット溶接設備20は、想像線で囲った領域で示される溶接装置21と、この溶接装置21で形成した溶接部が合格基準を満たしているか否を検査する検査装置40と、第1ワーク11及び第2ワーク15を溶接装置21から検査装置40を経由して集積場58まで運搬する運搬装置50と、この運搬装置50を制御する制御部60とからなる。
【0083】
溶接装置21は、例えば、
図4(e)、(f)に従って第1メイン付設部材13を小組(こぐみ)し、
図4(g)、(h)に従って第1サブ付設部材14を小組する第3スポット溶接機32と、
図4(i)、(j)に従って第2サブ付設部材18を小組し、
図4(k)、(l)に従って第2メイン付設部材17を小組する第4スポット溶接機33と、第1ベース部材12を載せる第1支持台35と、第2ベース部材16を載せる第2支持台36と、第1支持台35上の第1ベース部材12へ第1メイン付設部材13及び第1サブ付設部材14を移載し、第2支持台36上の第2ベース部材16へ第2メイン付設部材17及び第2サブ付設部材18を移載するハンドリングロボット38と、第1ベース部材12へ第1メイン付設部材13及び第1サブ付設部材14をスポット溶接する少なくとも1基の第1スポット溶接機22と、第2ベース部材16へ第2メイン付設部材17及び第2サブ付設部材18をスポット溶接する少なくとも1基の第2スポット溶接機31と、第1スポット溶接機22及び第2スポット溶接機31の下流側に配置される増し打ち用スポット溶接機37と、第1支持台35上の第1ワーク11及び第2支持台36上の第2ワーク15を移動し増し打ち用スポット溶接機37に臨ませるハンドリングロボット39とからなる。
【0084】
ハンドリングロボット38、39は、運搬装置(
図8、符号50)と別構造、同構造の何れであっても差し支えない。
【0085】
増し打ち用スポット溶接機37は、実施例では1基とするが、ワークの種類や形態によっては増し打ちが不要となり、このときは省かれる。
また、増し打ち用スポット溶接機37は、増し打ちの打点の数に応じて2基又はそれ以上の基数を配置してもよい。
【0086】
増し打ち後、すなわち溶接装置21の出口では、
図4(b)に示すように、第1ワーク11にスポット溶接による複数の打点が形成され、
図4(d)に示すように、第2ワーク15にスポット溶接による複数の打点が形成されている。
【0087】
図9の運搬装置50は、いわゆる手渡しの要領で、ハンドリングロボット39から
図4(b)に示す第1ワーク11と
図4(d)に示す第2ワーク15を受け取り、検査装置40に臨ませる。
運搬装置50は検査が終了した第1ワーク11と第2ワーク15を集積場58へ運搬する。
【0088】
すなわち、運搬装置50は、第1ワーク11と第2ワーク15を1セットとし、溶接装置21から検査装置40を経由して集積場58まで運搬する。
運搬装置50は、次の第1ワーク11と第2ワーク15を、溶接装置21から検査装置40を経由して集積場58まで運搬する。
このようにして、第1ワーク11と第2ワーク15のセットが運搬され、次の第1ワーク11と第2ワーク15のセットが運搬され、さらに次の第1ワーク11と第2ワーク15のセットが運搬される要領で、第1ワーク11と第2ワーク15のセットが順次運搬される。
【0089】
[制御部の作用]
図9に示す制御部60の作用を、
図10及び
図11に基づいて説明する。
図10において、ステップ番号(以下、STと記す。)01にて、フラグ番号(以下、Fnと記す。)が1であるか否かを確かめる。
否であれば、ST02にて、Fnを1に書き換える。
ST03にて、運搬装置で第1ワークと第2ワークとを運搬する。
ST04にて、Fnを確認する。Fnが1であれば、ST05へ進む。
【0090】
ST05にて、運搬装置で、第1選択打点を検査子に対面させる。すなわち、
図11(a)に示すように、第1ワーク11の第1選択打点61が検査子43に対面するように、運搬装置50で第1ワーク11と第2ワーク15とを運搬する。そして、検査子43により第1選択打点61に係る溶接部の検査を実施する(ST06)。
【0091】
ST07にて、溶接部が合格基準を満たしているか否か検査する。合格であれば、ST08にて、Fnを2に書き換える。合格でなければ、ST09にて、運転停止信号を発する。運転停止信号と共に「第1スポット溶接機異常」の表示信号を発するようにしてもよい。
【0092】
ST10にて、運転停止信号が有るか否かを調べる。運転停止信号が有るときには、ST11にて、スポット溶接設備の運転を停止する。運転停止信号が無ければ、運搬装置で第1ワークと第2ワークを集積場へ運搬し(ST12)、その後にST03へ戻る。
ST03にて、運搬装置は、次の第1ワークと第2ワークを溶接装置から検査装置まで運搬する。
【0093】
ST04にて、Fnを確認する。Fnが2であれば、ST13へ進む。ST13では、
図11(b)に示すように、第1ワーク11の第2選択打点62が検査子43に対面するように、運搬装置50で第1ワーク11と第2ワーク15とを運搬する。そして、検査子43により第2選択打点62に係る溶接部の検査を実施する(ST14)。
【0094】
ST15にて、溶接部が合格基準を満たしているか否か検査する。合格であればFnを3に書き換え(ST16)、合格でなければ運転停止信号を発する(ST17)。運転停止信号と共に「第1スポット溶接機異常」の表示信号を発するようにしてもよい。
ST10にて、運転停止信号が有るか否かを調べる。運転停止信号が有るときには、ST11にて、スポット溶接設備の運転を停止する。運転停止信号が無ければ、運搬装置で第1ワークと第2ワークを集積場へ運搬し(ST12)、その後にST03へ戻る。
ST03にて、運搬装置は、次の第1ワークと第2ワークを溶接装置から検査装置まで運搬する。
【0095】
ST04にて、Fnを確認する。Fnが3であれば、ST18へ進む。ST18では、
図11(c)に示すように、第2ワーク15の第4選択打点64が検査子43に対面するように、運搬装置50で第1ワーク11と第2ワーク15とを運搬する。そして、検査子43により第4選択打点64に係る溶接部の検査を実施する(ST19)。
【0096】
ST20にて、溶接部が合格基準を満たしているか否か検査する。合格であればFnを4に書き換え(ST21)、合格でなければ運転停止信号を発する(ST22)。運転停止信号と共に「第2スポット溶接機異常」の表示信号を発するようにしてもよい。
ST10にて、運転停止信号が有るか否かを調べる。運転停止信号が有るときには、ST11にて、スポット溶接設備の運転を停止する。運転停止信号が無ければ、運搬装置で第1ワークと第2ワークを集積場へ運搬し(ST12)、その後にST03へ戻る。
ST03にて、運搬装置は、次の第1ワークと第2ワークを溶接装置から検査装置まで運搬する。
【0097】
ST04にて、Fnを確認する。Fnが4であれば、ST23へ進む。ST23では、
図11(d)に示すように、第2ワーク15の第3選択打点63が検査子43に対面するように、運搬装置50で第1ワーク11と第2ワーク15とを運搬する。そして、検査子43により第3選択打点63に係る溶接部の検査を実施する(ST24)。
【0098】
ST25にて、溶接部が合格基準を満たしているか否か検査する。合格であればFnを1に書き換え(ST26)、合格でなければ運転停止信号を発する(ST27)。運転停止信号と共に「第2スポット溶接機異常」の表示信号を発するようにしてもよい。
ST10にて、運転停止信号が有るか否かを調べる。運転停止信号が有るときには、ST11にて、スポット溶接設備の運転を停止する。運転停止信号が無ければ、運搬装置で第1ワークと第2ワークを集積場へ運搬し(ST12)、その後にST03へ戻る。
ST03にて、運搬装置は、次の第1ワークと第2ワークを溶接装置から検査装置まで運搬する。
【0099】
すなわち、実施例では、
図11(a)~
図11(d)に示すように、運搬装置50で、第1選択打点61と、第2選択打点62と、第4選択打点64と、第3選択打点63とが、図面左から右へこの順で並ぶようにして、第1ワーク11及び第2ワーク15を把持し、運搬する。
【0100】
図11(c)と
図11(d)を入れ替えて、第1選択打点61と、第2選択打点62と、第3選択打点63と、第4選択打点64とをこの順で検査することは差し支えないが、この場合は、コ字フレーム53が行ったり来たりすることになるため、実施例よりは、運搬装置に係る制御が少し煩雑になる。よって、運搬装置(コ字フレーム53)で、第1選択打点61と、第2選択打点62と、第4選択打点64と、第3選択打点63とが、この順で並ぶようにして、第1ワーク11及び第2ワーク15を把持させ、この順で検査させることが好ましい。
【0101】
実施例では、グループの数Nを4としたが、グループの数Nは、2、3又は5以上であってもよい。この場合は、
図10において、ST04からの分岐の数をNにするだけで対応が可能となる。
【0102】
すなわち、制御部60で、第1選択打点から第N選択打点まで全ての打点を検査するまで繰り返し、第N選択打点を検査するまでの間に検査する打点が重複することのないよう制御する。重複することのないよう制御するため、従来の全数検査に比べて、検査時間の大幅な短縮化が実現する。
【0103】
また、ワークが、
図2に示すワーク11A又は
図3に示すワーク11Bであるときは、
図10のST03を「運搬装置でワークを運搬」と読み替えることで、対応が可能となる。
【0104】
次に本発明の優位性を確かめるために、従来広く行われている「全数検査」と、本発明に基づく「抜き取り検査」との比較をする。
【0105】
検査手法のうち、全数検査は理想である。
そこで、この比較検討では、
図4(b)及び
図4(d)に示す全ての打点(・印)を検査対象とする。
【0106】
また、既に述べたように、検査子(
図11、符号43)による検査時間は、磁気センサヘッドの場合でも1打点当たり6秒と長い。しかし、検査のトータル時間は、検査子の数を増すと短くなる。そこで、全数検査においては、検査子の数を、仮に4とする。
以上の条件による比較例を、表1に示す。
【0107】
【0108】
検査子1本当たりの検査時間は、20打点×6(秒/1打点)=120の計算により、120秒となる。または、18打点×6(秒/1打点)=108の計算により、108秒となる。この時間は溶接時間よりは長い。
その上、比較例の場合、
図9において、検査装置40を4基並べる必要があり、スポット溶接設備20の設備面積(床面積)が、1.5倍程度に拡大し、スポット溶接設備20の設備コストも同程度に増加する。
【0109】
本発明の抜き取り検査による実施例を、表2に示す。
【0110】
【0111】
抜き取った打点は、
図4(b)左部に示す第1選択打点61と、
図4(b)右部に示す第2選択打点62と、
図4(d)右部に示す第3選択打点63と、第4(d)左部に示す第4選択打点64との合計4点となる。検査子の数は全部に対して1である。
【0112】
検査時間は、4打点×6(秒/1打点)=24の計算により、24秒となる。この時間は比較例の108秒又は120秒より格段に短くなる。
この実施例では、
図9に示すように検査装置40が1基ですみ、スポット溶接設備20の設備面積(床面積)が小さくなり、スポット溶接設備20の設備コストを下げることができる。
【0113】
以上の説明では、グループ毎に1個の選択打点を定め、この選択打点を検査した。しかし、検査の精度向上や信頼性を高める観点から、グループ毎に複数の打点を検査することは、好ましいことである。そこで、検査が可能な複数の打点を検討する。
【0114】
【0115】
表3に示すように、溶接するに要する時間は、打点の数×3秒の計算により、60秒又は54秒となり、最長所要時間は60秒となる。そして、検査に要する時間は1打点当たり12秒であるから、60÷12=5の計算により、検査可能な打点数はmax5(最大5)となる。
【0116】
運搬装置(
図9、符号50)は、最長所要時間(この例では60秒)に収まるようにワークを検査装置(
図9、符号40)に運搬することで、生産が滞ることが無いようにする。
並行して、検査装置が最長所要時間に収まる範囲で選択打点を含む複数の打点(この例では最大5点)を検査するように制御する。
以上の操作及び制御を制御部(
図9、符号60)で実施させることで、検査の精度向上と信頼性向上が見込める。
【0117】
好ましくは、
図9に示すように、スポット溶接設備20に、検査子43が測定したデータを溶接状態の形態で表示するモニター66を配置する。生産現場で溶接状態を監視することが可能となる。
【0118】
また、
図9に示すように、スポット溶接設備20に、検査子43が測定したデータを蓄積するデータ蓄積部67を備える。データを蓄積することで、不良打点発生時の結果から、ドレッサでのチップ研削後、何打点目の溶接で不良が発生したかを算出し、チップの適切な研削頻度を決定することができる。
【0119】
[制御部の追加的作用]
図2~
図4で説明した第1選択打点61~第4選択打点64を含む第N選択打点は、ワークの形状を考慮して、制御部(
図9、符号60)へ入力することを原則とする。
この際に、制御部にはあらかじめ、検査子がワークに干渉しない打点が記憶されており、複数の打点に検査子が接近するときに、検査子がワークに干渉する打点は除外し、干渉しない打点の中から、選択打点を選択することを、制御部に委ねるようにしてもよい。
【0120】
すなわち、制御部は、検査子がワークに干渉しない打点を選択打点に選択する。結果、検査子がワークに干渉する心配はなく、安定して検査が実施できる。
【0121】
尚、本発明は、例えば、左シートを支える左クロスメンバーと右シートを支える右クロスメンバーのように、左部品と右部品がセットになる車両部品のスポット溶接に好適であるが、車両部品とは異なる一般の金属部品のスポット溶接に適用することは差し支えない。
【0122】
また、第1スポット溶接機22は、要は、第1ワーク11に所定のスポット溶接を施すことができればよく、構造を変更することは差し支えない。第2スポット溶接機31、第3スポット溶接機32及び第4スポット溶接機33も同様である。
【0123】
また、集積場58は、溶接部34の検査が終わった第1ワーク11及び第2ワーク15を集積することができればよく、パレットやトレイやコンベアであってもよく、形態は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明のスポット溶接設備は、左クロスメンバーと右クロスメンバーのように、左部品と右部品がセットになる車両部品の溶接及び検査に好適である。
【符号の説明】
【0125】
11A、11B…ワーク、11…第1ワーク、12A、12B…ベース部材、12…第1ベース部材、13A、13B…メイン付設部材、13…第1メイン付設部材、14B…サブ付設部材、14…第1サブ付設部材、15…第2ワーク、16…第2ベース部材、17…第2メイン付設部材、18…第2サブ付設部材、19…フランジ、20…スポット溶接設備、21…溶接装置、22…第1スポット溶接機、31…第2スポット溶接機、34…溶接部、40…検査装置、43…検査子、47…ワーク載せ台、48…回転軸、49…当て面、50…運搬装置、51…多軸ロボット、58…集積場、60…制御部、61…第1選択打点、62…第2選択打点、63…第3選択打点、64…第4選択打点、66…モニター、67…データ集積部、G1…第1グループ、G2…第2グループ、G3…第3グループ、G4…第4グループ。
【要約】
【課題】設備コストが圧縮できると共に設備面積が小さなスポット溶接設備を提供する。
【解決手段】2基のスポット溶接機22、31に対して、1基の検査装置40を配置してなるスポット溶接設備20である。運搬装置50で選択打点を検査子43に対面させることで、抜き取り検査を実施させる。検査装置40が1基ですむため、設備コストが圧縮できると共に設備面積が小さくなる。
【選択図】
図9