(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】溶融金属の温度を測定するための装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01J 5/0821 20220101AFI20241216BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20241216BHJP
G01J 5/00 20220101ALI20241216BHJP
【FI】
G01J5/0821
F27D21/00 G
G01J5/00 101D
(21)【出願番号】P 2023505378
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2021068543
(87)【国際公開番号】W WO2022037839
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-01-25
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598083577
【氏名又は名称】ヘレーウス エレクトロ-ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro-Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B-3530 Houthalen,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハラム、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】リー、マーク
(72)【発明者】
【氏名】プロジャー、ロス
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、ポール エー.
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-176954(JP,A)
【文献】米国特許第06395975(US,B1)
【文献】特開昭60-163305(JP,A)
【文献】特開平10-021762(JP,A)
【文献】特表2004-502029(JP,A)
【文献】特表2019-532269(JP,A)
【文献】特開2007-309932(JP,A)
【文献】特開2017-97336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 5/00 - G01J 5/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属浴の温度を測定するための装置であって、
(a)浸漬端及び反対端を有するコアワイヤであって、
(a1)光ファイバ、
(a2)前記光ファイバを収容する第1の金属管、
(a3)前記第1の金属管を取り囲む充填材層、及び
(a4)前記充填材層を収容する第2の金属管、を含む、コアワイヤと、
(b)前記光ファイバによって伝送された信号を受信する検出器であって、前記コアワイヤの前記反対端に連結されている検出器と、を備え、
前記第1の金属管が、少なくとも140Nの降伏力を有し、
前記第1の金属管は、前記第1の金属管の壁厚によって画定された断面積(CW1)と、前記第1の金属管の外径によって画定された総断面積(TC1)とを有し、前記第1の金属管の壁厚によって画定された前記断面積(CW1)は、前記第1の金属管の前記総断面積(TC1)の45%未満であり、
前記充填材層が、0.3~1.1g/cm
3の範囲内の密度を有し、10質量%以下の灰分を有する有機材料である充填材層材料を含
み、
前記充填材層材料が、繊維から形成されている、
装置。
【請求項2】
前記光ファイバが、前記コアワイヤの中心に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記充填材層が、少なくとも2つの充填材層材料を含む、請求項1又は2に記載の装
置。
【請求項4】
前記充填材層が、少なくとも2つの副層から形成されている、請求項1~
3のいずれ
か一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の金属管は、第1の壁厚(T1)及び第1の外径(D1)を有し、前記第1の壁厚(T1)と前記第1の外径(D1)との割合は15%未満である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の金属管が、ガス透過性である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記光ファイバの断面が、前記総断面積(TC1)を4%以下だけ占めている、請求項1~
6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の金属管は、前記第2の金属管内に同心円状に配置される、請求項1~
7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の金属管の線密度が、前記第2の金属管の線密度の10%未満である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第2の金属管の金属の融点が、前記第1の金属管の金属の融点よりも高い、請求項1~
9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記充填材層の厚さは、前記第1の金属管の前記第1の壁厚よりも大きい、請求項
5に記載の装置。
【請求項12】
前記充填材層の厚さが、前記第2の金属管の壁厚よりも大きい、請求項1
~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の装置と、前記装置の前端を溶融金属浴内に供給するための供給手段と、を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属浴の温度を測定するための装置及びシステムに関する。
【0002】
金属製造プロセス中に冶金容器内の溶融金属浴の温度を測定するために利用可能ないくつかの手段及び方法がある。溶融金属浴、特に電気アーク炉(EAF)の融解環境における鉄又は鋼の温度を測定するためのこれらの手段のうちの1つは、金属管によって囲まれた光ファイバを溶融金属中に浸漬することを含む。金属管によって囲まれた光ファイバは、しばしば、コアワイヤとも呼ばれる。光ファイバは、熱放射を受け取り、溶融金属からの熱放射を検出器、例えばパイロメータに伝達することができる。溶融金属浴の温度を求めるために、適切な計器を検出器と関連付けることができる。
【0003】
溶融金属浴の温度を測定するために、コアワイヤを溶融金属浴内に供給することができ、ここでコアワイヤは所定の時間にわたって消耗され得る。光学コアワイヤの前端は、冶金容器内に浸漬され、溶融金属浴に向かう途中でまず高温雰囲気に遭遇し、続いてスラグ層に遭遇し、次に溶融金属浴に遭遇する。融解プロセスの状態により、浴はまた、例えばスクラップにから得た残りの未溶融部分を含み得る。コアワイヤの浸漬された部分は溶融金属浴中で融解する。温度測定が終了すると、光学コアワイヤの先端を溶融金属浴から部分的に引き出すことができる。引き出された光学コアワイヤの先端は、次の温度測定のための新しい前端となる。したがって、このような装置は、一連の浸漬サイクルの形態における半連続温度測定に適している。
【0004】
正確な温度測定のためには、ガラス化されていない光ファイバの利用が不可欠であることが一般的に分かっている。特に、前端の状態が重要である。
【0005】
従来技術で知られている装置の多くは、一般に、管内に設置された光ファイバを使用することによって構成されている。光ワイヤと金属管との間の間隙は、一般に、浸漬中に溶融金属浴の熱から光ファイバを保護するために充填材料で充填される。層状構造は、比較的長時間にわたって光ファイバを低温に保つのに役立つ。光ファイバを破壊する高温による失透が遅延される。
【0006】
米国特許第7748896(B2)号明細書は、横方向に取り囲むカバーを有する光ファイバを含む装置を開示しており、このカバーは複数の層で光ファイバを取り囲み、1つの層は、金属管と、金属管の下に配置された無機材料から形成された中間層とを含む。この管を液体金属浴内に浸漬する間に、外側管が融解し、緩く保持された充填材が表面に浮遊する傾向があり、中心に配置された光ファイバを液体金属浴にさらす。
【0007】
さらに、追加の保護構造を備える消耗型光ファイバが提案されている。例えば、特開平10-176954号公報には、金属管によって間隔をあけて取り囲まれたファイバが記載されている。この金属管の周囲には断熱コーティングで作製された管が配置されており、この断熱コーティングは外側の金属管によって取り囲まれている。この構造は、内側の金属管が過度に急速に融解することを防止する。断熱材料で作製されたコーティングは、炭素粒子を含んでいてもよく、そのため、内側の金属管は、対応する管部分が溶融金属浴に浸漬されるまで融解しない。
従来技術で提案された装置は、測定前に光ファイバを過酷な条件から隔離するのに役立つが、この装置は、特定の条件下で断熱コーティングの制御されない分解を経る可能性がある。
【0008】
浸漬された光ファイバによる正確な温度測定の技術分野では、光学コアの失透速度に等しいかそれより速い速度で、光ファイバが消耗されなければならないことがよく知られている。失透速度は、溶融金属浸漬中の光学コアへの入熱量及び、周囲環境への曝露からの光学コアへの入熱量の結果である。したがって、コア光ファイバは、浸漬位置での輻射熱、スラグ温度、並びに特定の炉の融解温度などの事前曝露条件に比例して消耗されなければならない。
【0009】
いずれの場合も、長いコアワイヤは、前回の測定中に既に炉内にある。光学コアワイヤの連続特性のために、光学コアワイヤの隣接する未使用部分は、炉内部からの輻射熱、製鋼プロセスの発生ガスからの対流加熱、又は溶融スラグカバーとの一時的接触からの伝導、及び/又は光学コアワイヤコイルの高温部分から低温部分への途切れない金属カバーに沿った熱伝達、のいずれかによる高温に起因して熱的に変化し得る。使用されないが損傷した部分を切り取ることは、例えば、特開平10-176954号公報によって教示された解決策であった。そのような機械的な追加のプロセスステップは、測定機器に対するさらなる要求を生み出し、コアワイヤの消耗が大幅に増加する。
【0010】
欧州特許第3156835(A1)明細書及び欧州特許第3156834(A2)明細書には、コアワイヤに対するさらなる改良が開示されている。溶融金属浴にさらされると制御された方法で融解する低密度耐火材料を含む中間層は、温度測定値を得る前に失透することを回避するのに十分長く光ファイバを保護するために使用される。中間層の材料はゴブを形成し、溶融金属浴の表面に向かって浮遊する。提案される装置は、中間層のより制御された分解のための解決策を提供するが、それらの装置は、応答時間の増加を被る場合があり、これは、特定のアプリケーションシナリオにとって問題となり得る。
【0011】
上述したように、従来技術から知られている構造は、全適用範囲にわたって必要な応答時間において必要な品質を有する正確な測定値を提供することができない。適用範囲という用語は、溶融金属浴の温度測定が行われる温度範囲を意味する。この用語はまた連続的な複数回の測定も意味しており、測定において、コアワイヤは、適用環境により異なる影響を受ける可能性がある。
【0012】
本発明の目的は、上述の問題の少なくとも1つを解決する、溶融金属浴の温度を測定するための改良された装置及びシステムを提供することである。具体的には、本発明の目的の1つは、広い適用範囲にわたってより信頼性の高い温度測定値を得るための改善された装置を提供することである。さらに具体的には、本発明の目的は、測定中及び測定後の装置の融解及び分解挙動を改善することである。別の目的は、コアワイヤの消耗を最小限に抑えることを可能にする装置を提供することである。
【0013】
これらの目的は、独立請求項に記載の溶融金属浴の温度を測定するための装置及びシステムによって達成される。より好ましい実施形態は、従属請求項に定義されている。
【0014】
本発明に係る装置は、
(a)浸漬端及び反対端を有するコアワイヤであって、
(a1)光ファイバ、
(a2)光ファイバを収容する第1の金属管、
(a3)第1の金属管を取り囲む充填材層、及び
(a4)充填材層を収容する第2の金属管、を含む、コアワイヤと、
(b)光ファイバによって伝送された信号を受信するための検出器であって、コアワイヤの反対端に連結されている検出器と、を備え、第1の金属管が、少なくとも140Nの降伏力を有し、充填材層が、0.3~1.1g/cm3の範囲内の密度を有し、10質量%以下の灰分を有する有機材料である充填材層材料を含む。
【0015】
驚くべきことに、先行技術において生じる問題は、第1の金属管及び充填材層の特性を適切に選択することによって克服され得ることが見出された。具体的には、少なくとも140Nの降伏力を有する第1の金属管と、0.3~1.1g/cm3の範囲内の密度を有する充填材層と、を使用することによって、光ファイバをより制御可能に浴にさらすことができ、得られる測定品質を改善し得ることが見出された。
【0016】
本発明は、溶融金属浴の温度を測定するための装置を提供する。本明細書で使用される場合、浴という用語は、容器内の融解物を説明するために使用され、ここで融解物の特定の物理的パラメータが決定されると想定される。溶融金属浴の溶融金属は特に限定されない。好ましい実施形態によれば、溶融金属は溶鋼である。溶融金属浴という用語は、固体又は気体部分の存在を除外するものではない。
【0017】
金属溶融物の温度は異なってもよく、通常、金属の組成及び融解プロセスの段階に依存する。典型的には、溶融金属浴の温度は1500~1700℃である。
【0018】
本発明は、コアワイヤを含む。ここで、「コアワイヤ」という用語は、ケーシング、特に金属管内に含まれる光ファイバを指すために使用することができる。ケーシングは、光ファイバを完全に取り囲むことができる、又はケーシングが光ファイバを完全に取り囲まないように少なくとも部分的に開放することができる。
【0019】
本発明によるコアワイヤは、浸漬端と反対端とを有する。コアワイヤの浸漬端は、前端を適用時に溶融金属浴内に浸漬するように構成されている装置の一部として理解されるべきである。好ましい実施形態によれば、コアワイヤは消耗型コアワイヤである。好ましくは、温度を測定するために使用されるとき、コアワイヤは浸漬端から反対端に向かう方向に消耗され、各測定シーケンスの後、装置の別の部分が浸漬端になる。反対端は検出器に接続され、測定中に消耗されない。
【0020】
コアワイヤは光ファイバを含む。光ファイバは、柔軟で透明なファイバである。光ファイバは、ファイバの2つの端間で光を伝送するための手段として最もよく使用される。光ファイバは、ガラス又はプラスチック、好ましくは石英ガラスから形成されてもよい。最も一般的に、グレーデッドインデックスファイバは、意図した用途に使用される。
【0021】
好ましい実施形態によれば、装置は、単一の光ファイバを含むことができる。
【0022】
さらなる実施形態では、装置は、複数の光ファイバを備えてもよい。
【0023】
光ファイバは、第1の金属管に収容されている。
【0024】
浸漬されている間、コアワイヤは、浸漬された装置に対して作用する溶融金属による浮力を受ける。信頼性の高い測定のためには、測定が行われるときに光ファイバがある深さまで溶融金属浴内に浸漬されることが重要である。第1の金属管は、確実に溶解するまで浸漬方向に沈められた光コアを維持しながら、これらの曲げ力に抵抗しなければならず、これは、第1の金属管の一定の機械的剛性を必要とする。
【0025】
本発明によれば、第1の金属管の降伏力は少なくとも140Nである。
【0026】
第1の金属管は、第1の管壁厚さ(T1)、外径(D1)、内径(I1)、第1の金属管の壁の厚さによって画定される断面積(CW1)、外径によって画定される総断面積(TC1)、及び内径によって画定される内側断面積(IC1)によって画定され得る。
【0027】
本発明の文脈における降伏力は、第1の金属管の降伏応力と第1の金属管の断面積(CW1)との積として定義される。
【0028】
一般的な材料では、降伏応力値は当該技術分野で知られている。例えば、ステンレス鋼SS304の降伏応力は、195MPaであることが分かる。
【0029】
第1の金属管は、0.15~0.3mmの壁厚(T1)、好ましくは0.2~0.25mmの壁厚(T1)を有することができる。
【0030】
第1の金属管は、金属のシートから形成されてもよい。好ましい実施形態では、金属は、鉄又は鋼、好ましくはステンレス鋼であってもよい。
【0031】
好ましい実施形態では、第1の管の金属は、1400~1500℃の範囲内の融点を有することができ、さらにより好ましくは1430~1480℃の範囲内の融点を有することができる。
【0032】
好ましい実施形態では、第1の金属管の線密度は、5~12g/m、さらにより好ましくは8~10g/mの範囲内であってもよい。装置の線密度は、単位長さ当たりのその質量によって定義される。
【0033】
第1の金属管は、1.5~2.5mmの範囲内の外径(D1)を有することができる。さらに好ましい実施形態によれば、第1の金属管は、1.2~2.2mmの範囲内の内径(I1)を有することができる。
【0034】
好ましい実施形態によれば、第1の金属管壁厚(T1)は、第1の金属管外径(D1)の15%未満である。
【0035】
さらに好ましい実施形態では、第1の金属管の壁厚によって画定される断面積(CW1)は、第1の金属管の総断面積(TC1)の45%未満である。
【0036】
好ましくは、第1の金属管の内径によって画定される内側断面積(IC1)は、1.4~3.5mm2の範囲内にある。
【0037】
好ましい実施形態では、光ファイバの断面積は、第1の金属管の外径によって画定される総断面積(TC1)を4%以下だけ占めてもよい。
【0038】
本発明によるコアワイヤの第1の金属管は、充填材層によって取り囲まれている。好ましい実施形態では、充填材層は複数の要素を含んでもよく、より好ましくは、充填材層は繊維を含んでもよい。
【0039】
好ましい実施形態では、充填材層の繊維は、ロープを形成してもよい。複数の群の繊維から形成されたロープは、コアワイヤが融解物内に供給されるときに、予め繊維がコアワイヤの開放端から放出され得ないことを確実にするので、有利であり得ることが見出された。本発明の文脈におけるロープは、繊維の群であり、より大きくより強い形態へと組み合わせるために一緒に撚られている、又は編まれている。
【0040】
さらなる実施形態では、充填材層材料は、ウェブ、ネット、織物又は編物構造の形態を有してもよい。
【0041】
別の好ましい実施形態において、充填材層は、少なくとも2つの副層から形成され得る。
【0042】
好ましい実施形態によれば、充填材層は、接着剤もしくは樹脂を含んでもよい、又は接着剤もしくは樹脂を含まなくてもよい。好ましくは、接着剤又は樹脂の量は、充填材層の総質量に基づいて2質量ー%未満である。
【0043】
本発明によれば、充填材層は有機材料を含む。
【0044】
本発明の文脈における有機材料は、少なくとも30質量%の範囲の元素レベルにおける炭素(C)を含有する材料として理解されるべきである。例えば、キチンの基本単位の合計式は、モル質量203.2g/molを有する、C8H13NO5であり、結果として炭素含有量は47.3質量%となる。
【0045】
好ましくは、有機材料は、天然由来材料、天然又は合成ポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。より好ましくは、有機材料は多糖であってもよく、最も好ましくはリグニン、キチン、セルロース及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。さらにより好ましくは、有機材料は、綿、羊毛、ジュート、麻、コイア、サイザルアサ、木材、亜麻及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0046】
好ましい実施形態では、充填材層は、少なくとも2つの充填材層材料を含む。
【0047】
さらなる実施形態では、充填材層の少なくとも2つの材料のうちの1つは、難燃剤であってもよい。このような材料の組み合わせは、充填材層の分解挙動の制御を助けることができる。
【0048】
有機材料は、10質量%以下の灰分、好ましくは8質量%以下の灰分、さらにより好ましくは6質量%以下の灰分を有する。
【0049】
灰分は、材料が完全に燃焼した後に残っている材料の不燃性成分を表す。有機材料は、100%未満の灰分を有することができる。対照的に、無機材料、例えばガラスは、100%以下の不燃性含有量を有することができる。材料の灰分は、現在有効なバージョンのASTM1131に従って熱重量分析によって求められる。
【0050】
本発明による低灰分の有機材料は、非スラグ形成可燃性材料であることが分かっている。非スラグ形成は、材料が溶融金属浴内で溶融しない、又は実質的に溶解せず、かつ、典型的には溶融金属浴を覆うスラグ層内に残らないことと理解されるべきである。対照的に、無機材料は融解する傾向があり、長期間にわたって光学コアの周りに残り、最終的に溶融金属浴を覆うスラグ層になる。
しかしながら、そのような有機材料は、測定サイクル後に装置が溶融金属浴と接触した後で燃焼を止められないことが見出された。このような充填材層の長期にわたる分解を経た装置は、新しい前端を有する光ファイバが保護されない状態のままになり、失透する傾向にあるため、連続する測定サイクルで正確な温度測定値を得るのに適さない。損傷した部分は除去されなければならず、その結果、装置の消耗が増加する。
【0051】
驚くべきことに、充填材層材料の密度が、この不利な分解挙動に影響を及ぼし得ることが見出された。
【0052】
本発明によれば、充填材層は、0.3~1.1g/cm3の範囲内の密度、好ましくは0.4~1.0g/cm3の範囲内の密度、さらにより好ましくは0.4~0.8g/cm3の範囲内の密度を有する。
【0053】
充填材層の密度は、コアワイヤ内に配置されたときの、第1の金属管と第2の金属管との間の体積を占める充填材層材料の密度として理解されるべきである。充填材層の密度は、一般に、コアワイヤに適用する前の充填材層材料の密度とは異なっていてもよい。充填材層の密度は、第1の金属管と第2の金属管との間で充填材層材料を圧縮することによって達成され得る。好ましくは、充填材層の密度は、適用前の充填材層材料の密度よりも高い。
【0054】
材料は、その最大密度によって特徴付けられてもよく、それは、材料が可能な限り圧縮されたときに得られる最も高い密度である。
【0055】
好ましい実施形態では、充填材層材料の最大密度は、0.5~3g/cm3であり、さらにより好ましくは1.0~2.0g/cm3である。
【0056】
充填材層の層密度は、充填材層材料の最大密度の50%以下であり、さらにより好ましくは40%以下であり、最も好ましくは30%以下であることが有利であり得る。充填材層の層密度は、充填材層材料の最大密度の10%超であり、さらにより好ましくは20%超であることが有利であり得る。充填材層の密度は、充填材層材料の最大密度の10~50%の範囲内にあることが好ましく、20~40%の範囲内にあることがより好ましい場合がある。
【0057】
有利には、第1の金属管及び充填材層は、直接接触しており、すなわち、追加の層又は間隙がない。
【0058】
好ましい実施形態では、充填材層の厚さは、第1の金属管の壁厚(T1)よりも大きい。
【0059】
本発明によれば、第2の金属管が充填材層を収容する。
【0060】
典型的な測定シーケンスの間に、コアワイヤは溶融金属浴内の特定の位置に到達する。浸漬されると、第2の金属管は融解し、金属浴中に溶解する。充填材層は、第1の金属管及び光ファイバを直の加熱から遮断する。溶融金属と接触すると、充填材層は分解し、第1の金属管を露出させる。第1の金属管が融解する間、光ファイバは、溶融金属浴に直接さらされ、温度測定を行うことができる。
【0061】
第2の金属管は、第2の管壁厚(T2)、外径(D2)、内径(I2)、第2の金属管の壁厚によって画定される断面積(CW2)、外径によって画定される総断面積(TC2)、及び内径によって画定される内側断面積(IC2)によって画定されてもよい。
【0062】
第2の金属管は、0.5~1.0mmの壁厚(T2)を有することができ、好ましくは0.7~0.9mmの壁厚(T2)を有することができる。
【0063】
第2の金属管は、金属のシートから形成されてもよい。好ましい実施形態では、金属は、鉄(Fe)含有量が50%超の鋼であってもよく、好ましくは低炭素(C)鋼又はステンレス鋼であってもよい。
【0064】
さらに好ましい実施形態において、第2の金属管の金属は、1450~1550℃の融点を有することができ、さらにより好ましくは1480~1520℃の範囲内の融点を有することができる。
【0065】
さらに好ましい実施形態では、第2の金属管の線密度は、200~300g/mの範囲内にあってもよく、さらにより好ましくは220~260g/mの範囲内にあってもよい。
【0066】
好ましい実施形態では、横方向における第2の金属管のシートの縁部は、重複部分を形成しなくてもよい。横方向は、装置の浸漬端から反対端に向かう軸によって定義される。
【0067】
さらに好ましい実施形態では、横方向における第2の金属管のシートの縁部は、重なり合って継ぎ目部分を構築することができる。さらにより好ましくは、継ぎ目部分は機械的に形成されてもよく、最も好ましくは、継ぎ目部分は接着剤、糊、又は溶接によって閉じられなくてもよい。
【0068】
第2の金属管は、9~14mmの範囲内の外径(D2)を有することができる。さらに好ましい実施形態によれば、第2の金属管は、8~13mmの範囲内の内径(I2)を有する。
【0069】
有利には、第2の金属管は、ガス透過性であってもよい。そのような設計によって、コアワイヤの内部構造内のガスが金属管の内側から離れることを可能にする。充填材層の分解中にガスが発生することがあり、このガスは逃げる可能性がある。ガス透過性設計によってまた、環境からのガス、例えば、周囲空気中に含有する酸素が、コアワイヤに進入することが可能である。
【0070】
好ましい実施形態では、光ファイバは、測定結果の品質及び信頼性をさらに改善するコアワイヤの中心に配置される。
【0071】
好ましい実施形態において、充填材層は、第1の金属管と第2の金属管との間の空間を均一に充填することができる。
【0072】
有利には、光ファイバは、横方向に均一に熱的に隔離される。
【0073】
さらに、好ましい実施形態において、第1の金属管が第2の金属管内に同心円状に配置されることが見出された。好ましくは、第2の金属管は、第1の金属管と直接接触していない。
【0074】
第2の金属管の金属の融点が第1の金属管の金属の融点よりも高いことが有利であり得る。好ましい実施形態では、第2の金属管の金属の融点は、第1の金属管の金属の融点よりも少なくとも20℃高く、より好ましくは40℃超高く、最も好ましくは60℃超高い。
【0075】
好ましい実施形態において、第1の金属管の外径(D1)は、第2の金属管の外径(D2)の30%以下であり、より好ましくは20%以下である。
【0076】
さらに、第1の金属管の外径(D1)は、第2の金属管の外径(D2)の10~30%の範囲内にあることが好ましく、さらにより好ましくは15~25%の範囲内にあることが好ましい場合がある。
【0077】
第1の金属管の線密度が、第2の金属管の線密度の10%未満であることが有利であり得ることが見出された。
【0078】
一実施形態では、充填材層の厚さは、第1の金属管の壁厚(T1)よりも大きくてもよい。さらなる実施形態では、充填材層の厚さは、第2の金属管の壁厚(T2)よりも大きくてもよい。
【0079】
好ましい実施形態では、充填材層の厚さは、第1の金属管によって形成される層の厚さ及び第2の金属管によって形成される層の厚さよりも大きい。
【0080】
さらなる実施形態によると、装置は、複数の光ファイバを備えてもよく、ファイバのそれぞれは、第1の金属管によって取り囲まれていてもよい。別の好ましい実施形態によれば、別個の第1の金属管によってそれぞれ取り囲まれた複数の光ファイバが、第2の金属管内に配置されている。
【0081】
本発明によれば、装置は、光ファイバによって伝送された信号を受信するための検出器を備え、この検出器は、コアワイヤの反対端に連結されている。
【0082】
本発明の文脈における検出器は、パイロメータであってもよい。
【0083】
本発明はまた、本明細書に記載の装置と、溶融金属浴内に装置の前端を供給するための供給手段とを備えるシステムに関する。本発明に関する装置の前端は、装置の浸漬端の先端として理解されてもよい。
【0084】
本発明の文脈において、供給手段は、溶融金属浴内へのコアワイヤの供給を可能にする手段として理解され得る。このような手段は、コイル、フィーダ、ストレートナー、ガイド管及び吹き込みランスからなる群から選択することができる。
【0085】
システムは、装置用の入り口を有し、かつ溶融金属浴を保持する炉をさらに備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
本発明の根底にある概念は、図面に示された実施形態に関してより詳細に後述される。本発明を説明する目的で、現在好ましい実施形態が図面に示されている。しかしながら、本発明は、示される正確な構成及び手段に限定されないことが理解されるべきである。ここで、
【
図2】本発明の異なる実施形態によるコアワイヤの概略図である。
【
図3】溶融金属浴の温度を測定するためのシステムに組み込まれた装置の概略図である。
【0087】
図1は、外側の金属管5(第2の金属管)と、充填材層4と、光ファイバ2を収容する内側の金属管3(第1の金属管)とを備える、断面図におけるコアワイヤ1の概略断面図を示す。
図示の実施形態では、外側の金属管は、ガス透過性構造を可能にする通気孔6を備える。
【0088】
図2A~
図2Eは、本発明のいくつかの実施形態によるコアワイヤ1’~1’’’’’の概略図を示す。本発明によれば、図示された実施形態の組み合わせもまた可能であることを理解されたい。
【0089】
図2Aは、外側の金属管5’を形成するシートの縁部が重なり合わない、第1の実施形態によるコアワイヤ1’の断面を示す。充填層材料4’は、第1の管3’と外側管5’との間の空間を均一に充填している。
図2Bは、充填材層4’’が繊維を含む、第2の実施形態によるコアワイヤ1’’の断面を示す。
図2Cは、充填材層4’’’がいくつかの副層を含む、第4の実施形態によるコアワイヤ1’’’の断面を示す。
図2Dは、充填材層4’’’’が2つの異なる繊維性の材料を含む、第3の実施形態によるコアワイヤ1’’’’の断面を示す。
図2Eは、好ましい外側管閉鎖部を有する第5の実施形態によるコアワイヤ1’’’’’の断面を示し、外側管閉鎖部において、外側の金属管5’’’’’を形成するシートの縁部が重なり、継ぎ目部分7を形成している。
【0090】
図3は、溶融金属浴の温度を測定するためのシステムに組み込まれた装置8の概略図を示す。このシステムは、コアワイヤ1と、パイロメータ12と、を備える装置8を含み、コアワイヤ1が、コイル9上に少なくとも部分的に設置されて、測定を行うためにコイル9から少なくとも部分的に巻き出される。装置10の一端は、パイロメータ12に接続されており、パイロメータ12は、装置8で得られたデータを処理するためにコンピュータシステム(図示せず)に接続されることができる。装置8は、入り口15を有し、かつ、溶融金属浴16を収容している容器内に、ガイド管14を通して、フィーダ13によって導かれる浸漬端11が供給される。コイル9から入り口15まで延びている装置8の一部の温度は低いと考えられ、室温から100℃までの範囲の温度であり得る。入り口15を溶融金属浴16の方向に通過すると、最初に最高1700℃又はそれ以上の高温雰囲気に遭遇し、次にスラグ層17に遭遇し、次に溶融金属浴16に遭遇する。容器への入り口15には、ガイド管14内への金属及びスラグの侵入を防止するために吹き込みランス18を設けることができる。その後、コアワイヤは、測定が行われ得る必要な浸漬深さまで溶融金属浴16内に供給される。
測定シーケンスのこの時点まで、光ファイバ2及びその前端は、それを取り囲む層によって機械的に保護され、断熱される。装置8の前端が1850℃までの温度の溶融金属浴16に沈められると、最初に外側管が融解して、充填材層が溶融金属浴16にさらされる。有機材料を含む充填材層は、そのような条件にさらされると燃え始め、前端が溶融金属にさらされる。
測定シーケンスの後、溶融金属浴に浸漬されたコアワイヤの部分19は溶融され、したがって、消耗される。
測定が行われた後、高温雰囲気内に設置され、スラグ層を通って延びている装置の部分20は、コイル9の方向に送り戻され、次の測定のために再使用され得る。
【0091】
有機材料は、溶融金属にさらされると大部分が分解するので、一般に充填材層材料として適している。コアワイヤ内の充填材層として利用される場合、この燃焼挙動は注意深く制御されなければならない。溶融金属浴中に浸漬されるコアワイヤの部分よりも、コアワイヤの反対端の方向において、劣化がさらに防止されなければならない。
【0092】
充填材層のそのような長期にわたる分解を経た装置は、新しい前端を有する光ファイバが溶融金属浴容器内の過酷な環境に対して保護されない状態のままになるため、正確な温度測定値を得るのに適さない可能性がある。
試験は、充填材層の密度及び構造並びに外側の金属管のガス透過性が、この望ましくない分解挙動に顕著に影響を及ぼすことを示した。
【0093】
本発明によるコアワイヤの例示的な構造(実施例1)は、0.2mmの厚さ及び200MPaの降伏応力を有するステンレス鋼(SS316)管に埋め込まれたグレーデッドインデックス型62.5/125μmジャケット光ファイバを含み、結果として238Nの降伏力をもたらす。0.5g/cm3の密度を有する綿繊維の断熱層が、第1の金属管を包囲している。このアセンブリは、10~16mmの外径を有する0.8mm厚のステンレス鋼の外側層によって取り囲まれている。
【0094】
先行技術による実施例(実施例2)では、コアワイヤは、光ファイバを収容する管が0.13mmの厚さを有し、結果として94Nの降伏力をもたらしたことを除いて、実施例1に従って構成された。
【0095】
先行技術によるさらなる実施例(実施例3)では、充填材層の密度が0.2g/cm3であったことを除いて、実施例1に従ってコアワイヤを構成した。
【0096】
例示的な構造の測定性能を試験するために、コアワイヤをパイロメータに接続し、電気アーク炉内の溶融金属浴に導入した。得られた温度データを、従来の浸漬熱電対で受信したデータと比較した。
表1に示すように、得られるデータの品質は改善された。
【0097】
【0098】
さらに、そのような改善された温度測定値は、コアワイヤのコイル全長にわたって得られた。
【符号の説明】
【0099】
1、1’~1’’’’’ コアワイヤ
2、2’~2’’’’’ 光ファイバ
3、3’~3’’’’’ 第1の(内側)金属管
4、4’~4’’’’’ 充填材層
5、5’~5’’’’’ 第2の(外側)金属管
6 ベント
7 外側管継ぎ目
8 装置
9 コイル
10 反対端
11 浸漬端
12 パイロメータ
13 フィーダ
14 ガイド管
15 入り口
16 溶融金属浴
17 スラグ層
18 吹き込みランス
19 溶融金属浴に浸漬されたコアワイヤの部分
20 高温雰囲気及びスラグにさらされたコアワイヤの部分
T1 第1の金属管の壁厚
D1 第1の金属管の外径
I1 第1の金属管の内径
CW1 第1の金属管の壁の断面積
IC1 第1の金属管の内部断面積
T2 第2の金属管の壁厚
D2 第2の金属管の外径
I2 第2の金属管の内径
CW2 第2の金属管の壁の断面積
IC2 第2の金属管の内部断面積