(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】可動プラテン
(51)【国際特許分類】
B29C 45/66 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
B29C45/66
(21)【出願番号】P 2023511430
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2022015703
(87)【国際公開番号】W WO2022210791
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2021062450
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田村 惇朗
(72)【発明者】
【氏名】森谷 知寛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽介
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-061075(JP,A)
【文献】特開平04-047914(JP,A)
【文献】特開2014-028478(JP,A)
【文献】特開2019-171732(JP,A)
【文献】特開2016-022658(JP,A)
【文献】特開2005-349836(JP,A)
【文献】特開2007-001047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トグルピン接続部と、
金型取付部と、
前記トグルピン接続部と前記金型取付部とを接続して型締力の伝達経路を形成する接続部と、を備え、
前記接続部は、
前記トグルピン接続部と接続される第1端部と、
前記金型取付部と接続され、前記第1端部との間に前記伝達経路を形成する第2端部と、
前記伝達経路から分岐する第3端部と、
前記トグルピン接続部から前記金型取付部を有する金型取付板の中央に向けて傾斜する傾斜部と、を有し、
前記傾斜部の上面は、前記トグルピン接続部から前記金型取付部を有する金型取付板の中央に向けて傾斜する傾斜面であり、
前記傾斜部の前記傾斜面から上側に突出する突出部を有し、
前記第3端部は、
前記突出部に取付部品が取り付けられる取付部を有する、
可動プラテン。
【請求項2】
前記取付部は、ねじ穴である、
請求項
1に記載の可動プラテン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締装置の可動プラテンに関する。
【背景技術】
【0002】
可動プラテンを可動させる型締装置を備える射出成形機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、型締の際、応力集中が発生すると、プラテンが損傷するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、応力集中を抑制する可動プラテンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様の可動プラテンは、トグルピン接続部と、金型取付部と、前記トグルピン接続部と前記金型取付部とを接続して型締力の伝達経路を形成する接続部と、を備え、前記接続部は、前記トグルピン接続部と接続される第1端部と、前記金型取付部と接続され、前記第1端部との間に前記伝達経路を形成する第2端部と、前記伝達経路から分岐する第3端部と、前記トグルピン接続部から前記金型取付部を有する金型取付板の中央に向けて傾斜する傾斜部と、を有し、前記傾斜部の上面は、前記トグルピン接続部から前記金型取付部を有する金型取付板の中央に向けて傾斜する傾斜面であり、前記傾斜部の前記傾斜面から上側に突出する突出部を有し、前記第3端部は、前記突出部に取付部品が取り付けられる取付部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、応力集中を抑制する可動プラテンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0010】
<射出成形機1>
まず、射出成形機1について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機1の幅方向である。Y軸方向負側を操作側と呼び、Y軸方向正側を反操作側と呼ぶ。
【0011】
図1~
図2に示すように、射出成形機1は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機1の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機1の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機1の各構成要素について説明する。
【0012】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0013】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。
【0014】
型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる移動機構102と、を有する。
【0015】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0016】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0017】
移動機構102は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0018】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0019】
尚、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0020】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0021】
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0022】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0023】
尚、トグル機構150の構成は、
図1および
図2に示す構成に限定されない。例えば
図1および
図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0024】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0025】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0026】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0027】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0028】
尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0029】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0030】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(
図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0031】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0032】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0033】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0034】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0035】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0036】
尚、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0037】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0038】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0039】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0040】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0041】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0042】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。尚、複数の型厚調整機構が組合わせて用いられてもよい。
【0043】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0044】
型締装置100は、金型装置800の温度を調節する金型温調器を有してもよい。金型装置800は、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調器は、金型装置800の流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800の温度を調節する。
【0045】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0046】
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0047】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0048】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0049】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120の貫通穴に進退自在に配置される。エジェクタロッド210の前端部は、可動金型820のエジェクタプレート826と接触する。エジェクタロッド210の前端部は、エジェクタプレート826と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0050】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0051】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、エジェクタプレート826を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、エジェクタプレート826を元の待機位置まで後退させる。
【0052】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0053】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0054】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0055】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0056】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0057】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0058】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0059】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0060】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0061】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0062】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0063】
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0064】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0065】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0066】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0067】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0068】
尚、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0069】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0070】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0071】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0072】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0073】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0074】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0075】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0076】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0077】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0078】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0079】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0080】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0081】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0082】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0083】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0084】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0085】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0086】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0087】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0088】
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0089】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、
図1~
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0090】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0091】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0092】
尚、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0093】
尚、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0094】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0095】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0096】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機1の設定、現在の射出成形機1の状態等の情報が表示されてもよい。また、タッチパネル770の画面には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機1の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機1の動作を行わせることができる。なお、射出成形機1の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機1の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0097】
尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0098】
<可動プラテン>
次に、可動プラテン120について、
図3から
図8を用いて更に説明する。
図3は、可動プラテン120の斜視図である。
図4は、可動プラテン120の斜視図である。
図5は、可動プラテン120の正面図である。
図6は、可動プラテン120の側面図である。
図7は、可動プラテン120の背面図である。
図8は、可動プラテン120の上面図である。なお、以下の説明において、可動プラテン120を正面視して、左右方向を操作反操作方向(操反方向)(±Y軸方向)ともいう。Y軸負方向側が操作側であり、Y軸正方向側が反操作側である。また、可動プラテン120を正面視して、前後方向を型開閉方向(±X軸方向)ともいう。また、可動プラテン120を正面視して、上方向を鉛直方向(+Z軸方向)ともいう。
【0099】
可動プラテン120は、金型取付板121と、支持台122と、一対の傾斜部123と、一対のトグルピン接続部124と、一対の枠部125と、一対の脚部126と、ストッパボルト取付部127と、を有する。
【0100】
金型取付板121は、金型取付部(金型取付面)121aに可動金型820が取り付けられる。金型取付板121の四隅には、タイバー140が挿通する貫通部121bが設けられている。
【0101】
支持台122は、金型取付板121の裏面中央に設けられる。
【0102】
一対の傾斜部123は、側面視して、金型取付板121の中心から上下方向にそれぞれ設けられている。傾斜部123の一端は支持台122と接続され、傾斜部123の他端はトグルピン接続部124と接続される。傾斜部123は、型開閉方向の中央に向けて傾斜する。換言すれば、一対の傾斜部123は、他端側(トグルピン接続部124の側)から一端側(支持台122の側)に向かって上下方向の幅が狭くなるように形成されている。
【0103】
一対のトグルピン接続部124は、側面視して、金型取付板121の中心から上下方向にそれぞれ設けられている。トグルピン接続部124は、連結ピンを介して第1リンク152と連結される。
【0104】
型締装置100の型締力は、トグルピン接続部124から、傾斜部123、支持台122を介して、金型取付板121の裏面中央に伝達される。換言すれば、傾斜部123、支持台122及び金型取付板121は、トグルピン接続部124から金型取付部121aとを接続して型締力の伝達経路を形成する接続部を形成する。
【0105】
一対の枠部125は、背面視して、金型取付板121の中心から操作反操作方向にそれぞれ設けられている。枠部125は、上下に配置される一対の傾斜部123の他端側を接続するように設けられている。型締装置100の型締力を生じさせる際、枠部125は、引っ張り方向の力を受け、一対の傾斜部123の他端側が上下に広がることを抑制する。
【0106】
脚部126は、ガイド101上をスライドするスライダが取り付けられる取付部126aを有する。取付部126aは、型開閉方向の一方に金型取付板121と接続される接続部126bを有する。取付部126aは、型開閉方向の他方に傾斜部123と接続される接続部126cを有する。接続部126cには、タイバー140が通る貫通部126dが設けられている。
【0107】
また、一方の傾斜部123には、可動プラテン120の移動を停止させるためのストッパボルト(図示せず)を取り付けるストッパボルト取付部127が設けられている。ストッパボルトがロックされることで、可動プラテン120は移動不能となる。
【0108】
<取付部>
また、可動プラテン120には、各種取付部品を取り付けるための取付部が設けられている。
【0109】
上側の傾斜部123の上面である傾斜面S1には、傾斜面S1から突出する分岐部11が設けられている。分岐部11には、取付部品(例えば、分配弁)をボルト固定するためのねじ穴(取付部)11aが形成されている。
図6に示すように、ねじ穴11aは、トグルピン接続部124から金型取付部121aへの型締力の伝達経路と異なる位置に設けられている。換言すれば、ねじ穴11aは、傾斜面S1に到達しないように形成されている。即ち、接続部は、トグルピン接続部124と接続される傾斜部123の他端側(第1端部)と、金型取付部121aと接続され、第1端部との間に型締力の伝達経路を形成する金型取付板121(第2端部)と、伝達経路から分岐する分岐部11(第3端部)と、を有し、第3端部に取付部品が取り付けられるねじ穴11a(取付部)を有する。傾斜面S1は、例えば、
図6に示すように、前方に向かうほど下方に傾斜している。分岐部11は、Y軸方向視で三角形の板を含み、水平な上面と、鉛直な前面と、前方に向かうほど下方に傾斜する後面と、を含む。ねじ穴11aは、分岐部11の上面に形成され、下方向に延びる。ねじ穴11aの下端は、傾斜面S1よりも上方に位置する。分岐部11の前面と、金型取付板121の後面との間には、隙間が形成される。分岐部11の上面は、例えば、金型取付板121の上面及びトグルピン接続部124の上面よりも下方に位置する。分岐部11は、例えば、傾斜部123の左右方向中央に設けられる。
【0110】
これにより、型締装置100に型締力を生じさせた際、分岐部11に設けたねじ穴11aに応力が集中することを回避することができる。また、応力集中を避けて強度を確保することが容易となり、型締力の伝達経路を形成する接続部の設計自由度を向上させることができる。また、上側の傾斜部123と下側の傾斜部123とで、型締力の伝達を均等とすることができ、面圧分布の均一性を向上させることができる。また、ねじ穴11aの追加工や修正をしても可動プラテン120の強度や品質(型締力の均一性)に影響を与えることを防止することができる。
【0111】
また、反操作側の枠部125の側面S2(Y軸正方向側の側面S2)には、側面S2から突出する分岐部12が設けられている。分岐部12には、取付部品(例えば、エジェクタ装置200のモータ保持ブラケット)をボルト固定するためのねじ穴(取付部)12aが形成されている。
図7に示すように、ねじ穴12aは、トグルピン接続部124から金型取付部121aへの型締力の伝達経路と異なる位置に設けられている。また、型締力を生じさせる際、引っ張り方向の力を受ける枠部125の側面S2に到達しないように形成されている。即ち、接続部は、トグルピン接続部124と接続される傾斜部123の他端側(第1端部)と、金型取付部121aと接続され、第1端部との間に型締力の伝達経路を形成する金型取付板121(第2端部)と、伝達経路から分岐する枠部125の分岐部12(第3端部)と、を有し、第3端部に取付部品が取り付けられるねじ穴12a(取付部)を有する。分岐部12は、
図8に示すようにZ軸方向視でL字状であり且つ
図3に示すようにY軸方向視でT字状の板を含む。ねじ穴12aは、
図7に示すように、分岐部12の枠部125とは反対側(Y軸正方向側)の側面に形成され、Y軸負方向に延びる。ねじ穴12aの先端は、枠部125の外側に位置する。分岐部12の上面は、例えば、枠部125の上面と面一である。分岐部12及びねじ穴12aは、上下一対のトグルピン接続部124を結ぶ仮想直線の左右方向外側(Y軸正方向側)に配置される。
【0112】
これにより、型締装置100に型締力を生じさせた際、分岐部12に設けたねじ穴12aに応力が集中することを回避することができる。また、応力集中を避けて強度を確保することが容易となり、設計自由度を向上させることができる。また、操作方向の枠部125と反操作方向とで、引っ張り力を均等とすることができる。これにより、傾斜部123の捻じれを防止して、型締力の面圧分布の均一性を向上させることができる。また、ねじ穴12aの追加工や修正をしても可動プラテン120の強度や品質(型締力の均一性)に影響を与えることを防止することができる。
【0113】
また、反操作側の枠部125の側面S3(Y軸正方向側の側面S3)には、側面S3から突出する分岐部13が設けられている。分岐部13には、取付部品(例えば、ケーブルベヤ(登録商標)を保持するブラケット)をボルト固定するためのねじ穴(取付部)13aが形成されている。分岐部13は、
図7に示すように、X軸方向視で矩形の板を含む。ねじ穴13aは、分岐部13の枠部125とは反対側(Y軸正方向側)の側面に形成され、Y軸負方向に延びる。分岐部13及びねじ穴13aは、上下一対のトグルピン接続部124を結ぶ仮想直線の左右方向外側(Y軸正方向側)に配置される。同様に、操作側の枠部125の側面S4(Y軸負方向側の側面S4)には、側面S4から突出する分岐部14が設けられている。分岐部14には、取付部品をボルト固定するためのねじ穴(取付部)14aが形成されている。分岐部14は、
図7に示すように、X軸方向視で矩形の板を含む。ねじ穴14aは、分岐部14の枠部125とは反対側(Y軸負方向側)の側面に形成され、Y軸正方向側に延びる。ねじ穴14aの先端は、上下一対のトグルピン接続部124を結ぶ仮想直線の左右方向外側(Y軸負方向側)に配置される。また、枠部125の背面S5には、背面S5から突出する分岐部15が設けられている。分岐部15には、取付部品(例えば、エジェクタ装置)をボルト固定するためのねじ穴(取付部)15aが形成されている。分岐部15は、
図7に示すように、X軸方向視で直角台形の板を含み、枠部125の内周面に沿って傾斜する傾斜面を含む。ねじ穴15aは、分岐部15の後面に形成され、前方に延びる。ねじ穴15aは、上下一対のトグルピン接続部124を結ぶ仮想直線の左右方向外側に配置される。
図7に示すように、ねじ穴13a,14aは、トグルピン接続部124から金型取付部121aへの型締力の伝達経路と異なる位置に設けられている。また、
図6に示すように、ねじ穴15aは、トグルピン接続部124から金型取付部121aへの型締力の伝達経路と異なる位置に設けられている。また、型締力を生じさせる際、引っ張り方向の力を受ける枠部125の側面S3,S4,背面S5に一部が到達するように形成されている。即ち、接続部は、トグルピン接続部124と接続される傾斜部123の他端側(第1端部)と、金型取付部121aと接続され、第1端部との間に型締力の伝達経路を形成する金型取付板121(第2端部)と、伝達経路から分岐する枠部125の分岐部13,14,15(第3端部)と、を有し、第3端部に取付部品が取り付けられるねじ穴13a,14a,15a(取付部)を有する。
【0114】
これにより、側面S3,S4,背面S5から突出する分岐部13,14,15にねじ穴13a,14a,15aを設けることにより、側面S3,S4,背面S5よりも枠部125の側に侵入するねじ穴13a,14a,15aを短くすることができる。これにより、分岐部13,14,15に設けたねじ穴13a,14a,15aによる応力集中を低減することができる。
【0115】
また、金型取付板121の上面S6には、上面S6から突出する分岐部16,17が設けられている。分岐部16には、取付部品(例えば、可動プラテン120を吊り上げるためのアイボルト)を固定するためのねじ穴(取付部)16aが形成されている。分岐部16は、
図8に示すように、Z軸方向視で矩形の板を含む。分岐部16は、例えば、左右方向(Y軸方向)に間隔をおいて一対設けられる。一対の分岐部16は、傾斜部123及びトグルピン接続部124の左右方向外側に設けられる。ねじ穴16aは、分岐部16の上面に形成され、下方に延びる。ねじ穴16aの下端は、例えば、トグルピン接続部124の下端よりも上方に配置される。分岐部17には、取付部品(例えば、エア機器)をボルト固定するためのねじ穴(取付部)17aが形成されている。分岐部17は、
図8に示すように、Z軸方向視で矩形の板を含む。分岐部17は、例えば左右方向(Y軸方向)に間隔をおいて一対設けられる。一対の分岐部17は、一対の分岐部16の間に設けられる。分岐部17は、金型取付板121の上面S6を前後方向(X軸方向)に二等分する中心線よりも後方に設けられる。ねじ穴17aは、分岐部17の上面に形成され、下方に延びる。ねじ穴17aの下端は、例えば、トグルピン接続部124の下端よりも上方に配置される。ここで、型締力は、金型取付板121の裏面中央に設けられた支持台122から金型取付板121の金型取付部121aに向かって印加される。換言すれば、金型取付板121の上面S6に設けられた分岐部16,17は、型締力の伝達経路から分岐した位置に設けられている。即ち、接続部は、トグルピン接続部124と接続される傾斜部123の他端側(第1端部)と、金型取付部121aと接続され、第1端部との間に型締力の伝達経路を形成する金型取付板121の表面(第2端部)と、伝達経路から分岐する金型取付板121の上面S6の分岐部16,17(第3端部)と、を有し、第3端部に取付部品が取り付けられるねじ穴16a,17a(取付部)を有する。これにより、分岐部16,17に設けたねじ穴16a,17aによる応力集中を低減することができる。
【0116】
また、金型取付板121の操作側の側面S8には、分岐部18が設けられている。分岐部18には、取付部品(例えば、コネクタ保持用のブラケット)をボルト固定するためのねじ穴(取付部)18aが形成されている。ねじ穴18aは、
図6に示すように、金型取付板121の側面S8を前後方向(X軸方向)に二等分する中心線よりも後方に設けられる。ねじ穴18aは、側面S8から左右方向内側(Y軸正方向側)に延びる。ねじ穴18aの先端は、例えば、支持台122よりも左右方向外側(Y軸負方向側)に配置される。また、金型取付板121の反操作側の側面S9には、分岐部19が設けられている。分岐部19には、取付部品(例えば、金型温調用のコンセント、熱電対、エア配管や水配管を保持するブラケット)をボルト固定するためのねじ穴(取付部)19aが形成されている。ねじ穴19aは、ねじ穴18aと同様に、金型取付板121の側面S9を前後方向(X軸方向)に二等分する中心線よりも後方に設けられる。ねじ穴19aは、側面S9から左右方向内側(Y軸負方向側)に延びる。ねじ穴19aの先端は、例えば、支持台122よりも左右方向外側(Y軸正方向側)に配置される。前述のように、型締力は、金型取付板121の裏面中央に設けられた支持台122から金型取付板121の金型取付部121aに向かって印加される。即ち、金型取付板121の側面S8,S9に設けられた分岐部18,19は、型締力の伝達経路から分岐した位置に設けられている。即ち、接続部は、トグルピン接続部124と接続される傾斜部123の他端側(第1端部)と、金型取付部121aと接続され、第1端部との間に型締力の伝達経路を形成する金型取付板121の表面(第2端部)と、伝達経路から分岐する金型取付板121の側面S8,S9の分岐部18,19(第3端部)と、を有し、第3端部に取付部品が取り付けられるねじ穴18a,19a(取付部)を有する。これにより、分岐部18,19に設けたねじ穴18a,19aによる応力集中を低減することができる。
【0117】
以上、射出成形機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0118】
本願は、2021年3月31日に出願した日本国特許出願2021-062450号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0119】
1 射出成形機
100 型締装置
120 可動プラテン
121 金型取付板
121a 金型取付部
122 支持台
123 傾斜部
124 トグルピン接続部
125 枠部
126 脚部
11~19 分岐部
11a~19a ねじ穴(取付部)